JP2022138254A - ホスホエノール化合物の製造方法 - Google Patents

ホスホエノール化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】副生成物の含有量が少ない、又は高収率で目的化合物が得られる、工業的規模で実施可能なホスホエノール化合物の製造方法を提供する。【解決手段】ピルビン酸誘導体と下記式[1]で表されるホスフィンオキシド化合物とを反応させる工程を含む、ホスホエノール化合物の製造方法。式中、R1は直鎖または分岐アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、トリアルキルシリルオキシ基、ジアルキルアミノ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。JPEG2022138254000006.jpg7170【選択図】なし

Description

本発明は、ホスホエノール化合物の製造方法に関する。
高エネルギーリン酸化合物、中でも生体物質中最も高エネルギーのリン酸結合を有するホスホエノールピルビン酸は生化学上重要な化合物である。本化合物と酵素であるピルビン酸キナーゼを用いることで、ADP(アデノシン二リン酸)をATP(アデノシン三リン酸)に再生することができる。また、アデニル酸キナーゼによりAMP(アデノシン一リン酸)とATPの混合物からADPを生成し、さらに上記方法でATPを再生することや、ポリリン酸と本化合物及びピルビン酸リン酸ジキナーゼを用いてATPを再生することなどにより、高価なATPを安価なADPまたはAMPから製造することができる。これらの反応はATPの製造ばかりではなく、衛生検査にも用いられている。その他にも、ホスホエノールピルビン酸は高エネルギーリン酸化合物の中で唯一細胞膜を通過するため、脆弱した臓器の活性化、細胞増殖因子の産生等、生きた細胞に対しても機能性があることが知られている。さらには、ホスホエノールピルビン酸生体内のシキミ酸経路の出発物質であり、本化合物を出発原料とし、代謝改変技術を用いて、シキミ酸や各種の芳香族アミノ酸、有機酸、芳香族化合物等が合成できる(非特許文献1)。
このようにホスホエノールピルビン酸に代表されるホスホエノール化合物は有用な物質ではあるが、その合成例は多くはなかった。例えば、ピルビン酸を臭素、次いで亜リン酸トリアアルキルと反応させるPerkow反応(非特許文献2)、ピルビン酸メチルとポリリン酸とを反応させるポリリン酸法(非特許文献3)、ピルビン酸をトリアルキルシリル化合物と反応させる方法(特許文献1)、ピルビン酸をキノリン存在下に塩化ホスホリルと反応させる方法(非特許文献4)が知られている。
特開昭56-113789公報
化学と生物 vol.55,No.10,690(2017) J.Org.chem.,1982,47,3765 Helvetica Chimica Acta Volumen XXXIX,Fasciculus V(1956), No.174-175,P1461 Chem.Pev.,Vol.61,607(1961)
しかしながら、非特許文献2に記載された方法では、Michaelis-Arbuzov反応により2-オキソアルキルリン酸エステルが副生成物として得られ、収率は中程度に留まることに加え、臭素を使うため装置が腐食される恐れがあり安全とは言い難い。非特許文献3に記載された方法は再現性が得られなかった。特許文献1に記載された方法では、用いるシリル化合物が高価なため、ホスホエノールピルビン酸を工業的規模で製造するのは非現実的である。非特許文献4に記載された方法では、収率が9%と非常に低く有用な方法とは言えなかった。
従って、本発明の主な目的は、副生成物の含有量が少ない、又は高収率で目的化合物が得られる、工業的規模で実施可能なホスホエノール化合物の製造方法を提供することにある。
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ピルビン酸誘導体とホスフィンオキシド化合物と反応させることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のホスホエノール化合物の製造方法に係る。
〔1〕ピルビン酸誘導体と下記式[1]で表されるホスフィンオキシド化合物とを反応させる工程を含む、ホスホエノール化合物の製造方法。
Figure 2022138254000001
(式中、R1は互いに独立して、置換されていてもよい、直鎖または分岐アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、トリアルキルシリルオキシ基、ジアルキルアミノ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。)
〔2〕塩基の存在下に反応を行う、〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記式[1]で表されるホスフィンオキシド化合物が、ハロゲン化ホスホリル、ハロゲン化リン酸モノエステル及びハロゲン化リン酸ジエステルから選ばれる少なくとも一種である、〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕(1)ピルビン酸誘導体とハロゲン化ホスホリルとを反応させてホスホエノールピルビン酸誘導体を製造する工程、及び
(2)得られたホスホエノールピルビン酸誘導体を加水分解反応に供し、ホスホエノールピルビン酸を製造する工程
を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕(1)ピルビン酸誘導体とハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステルとを反応させてホスホエノールピルビン酸誘導体を製造する工程、
(2)得られたホスホエノールピルビン酸誘導体中のリン酸エステル基を保護基変換する工程、及び
(3)(2)の工程で得られた化合物を加水分解反応に供し、ホスホエノールピルビン酸誘導体またはホスホエノールピルビン酸を製造する工程
を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法で得られたホスホエノール化合物を用いてADP及び/又はAMPからATPを生成する工程を含む、ATPの製造方法。
本発明の製造方法によれば、短い工程にて副生成物なく良好な収率でホスホエノール化合物を得ることができる。
図1は、実施例1で得られた、ホスホエノールピルビン酸ナトリウム塩の1H NMRスペクトルである。 図2は、実施例3で得られた、ホスホエノールピルビン酸メチルの1H NMRスペクトルである。 図3は、実施例7で(中間生成物として)得られた、ホスホエノールピルビン酸メチルジエチルエステルの1H NMRスペクトルである。 図4は、実施例7で(目的物として)得られた、ホスホエノールピルビン酸カリウム塩の1H NMRスペクトルである。
(I)ホスホエノール化合物の製造方法
本発明のホスホエノール化合物の製造方法は、ピルビン酸誘導体と下記式[1]で表されるホスフィンオキシド化合物とを反応させて、ホスホエノール化合物を製造する。
Figure 2022138254000002
(式中、R1は互いに独立して、置換されていてもよい、直鎖若しくは分岐アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、トリアルキルシリルオキシ基、ジアルキルアミノ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。)
後述するように、本発明のホスホエノール化合物の製造方法には2つのルート(ルート1およびルート2)があり、いずれのルートでホスホエノール化合物を製造しても高収率で得られる、又は副生成物の量が少ない。
本明細書において、ホスフィンオキシド化合物は下記式[1]で表される化合物を指す。
Figure 2022138254000003
式中、R1は互いに独立して(つまり、3つのR1全てが同一であってもよいし、そのうちの1つが異なっていてもよいし、全てが異なっていてもよい)、直鎖若しくは分岐アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、トリアルキルシリルオキシ基、ジアルキルアミノ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。
より具体的には、置換基R1としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基等の直鎖若しくは分岐アルコキシ基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のシクロアルコキシ基;フェニルオキシ基、2-メチルフェニルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;トリメチルシリルオキシ基等のトリアルキルシリルオキシ基;ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;あるいはこれらの炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、アルコキシ基などで置換した有機基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子等が挙げられる。
本発明で使用するホスフィンオキシド化合物は、ハロゲン化ホスホリル、ハロゲン化リン酸モノエステル及びハロゲン化リン酸ジエステルからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。ハロゲン化ホスホリル、ハロゲン化リン酸モノエステル及びハロゲン化リン酸ジエステルの種類は、反応条件や目的とする化合物によって適宜選択することができ、その中でも、塩化ホスホリル、臭化ホスホリル、クロロリン酸モノエステル、ブロモリン酸モノエステル、クロロリン酸ジエステル及びブロモリン酸ジエステルが好ましい。
ハロゲン化リン酸モノエステル又はハロゲン化リン酸ジエステルが有するエステル置換基としては、直鎖または分岐アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、トリアルキルシリル基からなる群から選ばれ、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基等の直鎖または分岐アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、2-メチルフェニル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、トリチル基等のアラルキル基;トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基;あるいはこれらの炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、アルコキシ基などで置換した有機基等が挙げられる。
本明細書において、ホスホエノール化合物は、ホスホエノールピルビン酸及びその誘導体を含む、下記式[2]で表される化合物またはその塩を指す。
Figure 2022138254000004
式中、R1は上記式[1]と同義である。R2はカルボキシル基、エステル基、アミド基、アルデヒド基、アセタール基又はニトリル基を表す。R2は、カルボキシル基に誘導可能である(言い換えれば、式[2]で表される化合物としてカルボン酸に誘導可能である)官能基であればよいが、安定性や使いやすさ、ホスホエノール構造を保持したままカルボン酸へ誘導することの容易さ等から、カルボキシル基、エステル基、アミド基、アルデヒド基、アセタール基、ニトリル基が好ましく、特に加水分解によりホスホエノールピルビン酸に誘導できるカルボキシル基、エステル基、アミド基、ニトリル基がより好ましく、エステル基が特に好ましい。
また、本明細書において、ホスホエノールピルビン酸およびホスホエノールピルビン酸誘導体は、それぞれ塩を形成していてもよい。塩を除外することが明示されていない限り、ホスホエノールピルビン酸およびホスホエノールピルビン酸誘導体は、それぞれホスホエノールピルビン酸の塩およびホスホエノールピルビン酸誘導体の塩を含む用語として解釈することができる。
ホスホエノールピルビン酸およびホスホエノールピルビン酸誘導体が形成する塩は特に限定されるものではなく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩、銅塩等の金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩等のアミン塩等が挙げられ、ナトリウム塩、カリウム塩等が好ましい。ホスホエノールピルビン酸およびホスホエノールピルビン酸誘導体の塩は、公知の方法(反応)により目的とするものを得る、例えば遊離化合物を塩に変換したり、ある種類の塩を他の種類に変換したりすることができる。一例として、本発明のホスホエノール化合物の製造方法において用いられる塩基として、適切なものを選択し、適切な反応を行うことにより、ホスホエノールピルビン酸またはホスホエノールピルビン酸誘導体の塩を得ることができる。
ピルビン酸誘導体としては、例えば、ピルビン酸エステル、ピルビン酸アミド、メチルグリオキサール、ピルボニトリルが挙げられる。
ピルビン酸エステルの具体例としては、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸イソプロピル、ピルビン酸ブチル、ピルビン酸t-ブチル、ピルビン酸ヘキシル、ピルビン酸2-エチルヘキシル、ピルビン酸オクチル、ピルビン酸デシル等のピルビン酸の直鎖または分岐アルキルエステル;ピルビン酸シクロペンチル、ピルビン酸シクロヘキシル等のピルビン酸シクロアルキルエステル;ピルビン酸フェニル、ピルビン酸2-メチルフェニル等のピルビン酸アリールエステル;ピルビン酸ベンジル、ピルビン酸フェネチル、ピルビン酸トリチル等のピルビン酸アラルキルエステル;ピルビン酸トリメチルシリル等のピルビン酸トリアルキルシリルエステル;あるいはこれらのエステル部の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基などで置換したピルビン酸エステル等が挙げられる。
ピルビン酸アミドの具体例としては、N-メチルピルビン酸アミド、N-エチルピルビン酸アミド、N-2 -ヒドロキシエチルピルビン酸アミド、N-プロピルピルビン酸アミド、N-3-ヒドロキシプロピルピルビン酸アミド、N-ブチルピルビン酸アミド、N-ヘキシルピルビン酸アミド、N-オクチルピルビン酸アミド、N-デシルピルビン酸アミド、N,N-ジメチルピルビン酸アミド、N,N-ジエチルピルビン酸アミド等のピルビン酸の直鎖または分岐アルキルアミド;N-シクロペンチルピルビン酸アミド、N,N-ジシクロヘキシルピルビン酸アミド等のN-シクロアルキルピルビン酸アミド;N-フェニルピルビン酸アミド、N,N-ジフェニルピルビン酸アミド、N-2-メチルフェニルピルビン酸アミド等のN-アリールピルビン酸アミド;N-ベンジルピルビン酸アミド、N-フェネチルピルビン酸アミド、N-トリチルピルビン酸アミド等のN-アラルキルピルビン酸アミド;あるいはこれらのアミド部の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基などで置換したピルビン酸アミド等が挙げられる。
この中でも、分子量が小さい点、安価な点等から、ピルビン酸誘導体としてはピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸ベンジル等が特に好ましい。
本発明のホスホエノール化合物の製造方法のより具体的な実施形態としては、例えば、下記のルート1およびルート2に示す工程を含む製造方法が挙げられる。
(1)ルート1
本ルートには、(1-1)ピルビン酸誘導体と、ホスフィンオキシド化合物としてハロゲン化ホスホリルとを反応させて、ホスホエノールピルビン酸誘導体を製造する工程(以下「反応工程1」と呼ぶ、)、及び(1-2)得られたホスホエノールピルビン酸誘導体を加水分解に供し、ホスホエノールピルビン酸を製造する工程(以下「加水分解工程」と呼ぶ。)が含まれる。
なお、ルート1において、ハロゲン化ホスホリル以外のホスフィンオキシド化合物を用いたり、ホスホエノールピルビン酸以外のホスホエノール化合物(ホスホエノールピルビン酸誘導体)を得たりすることができる場合がある。そのような実施形態に関しては、以下のルート1に関する説明において、「ハロゲン化ホスホリル」や「ホスホエノールピルビン酸」を適宜それらの実施形態の化合物に読み替えることができ、さらに適切であれば「ホスフィンオキシド化合物」や「ホスホエノール化合物」に一般化して読み替えることができる。
(1-1)反応工程1
反応工程1では、まず、好ましくは溶媒中で塩基の存在下に、ピルビン酸誘導体と、ホスフィンオキシド化合物とを反応させて、ホスホエノールピルビン酸誘導体を得る。
反応工程1における反応溶媒は、活性水素を含有しない溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。溶媒の使用量(2種以上を混合して用いる場合はそれぞれの使用量)は、適宜選択することができる。
反応工程1における反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン等が好ましい。
反応工程1における塩基は、ブレンステッドの塩基が好ましい。そのような塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、モルホリン等の直鎖もしくは環式のアルキルアミン類;ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、イミダゾール等の窒素含有複素環化合物;1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等のアリールアミン類;水素化ナトリウム等の金属水素化物;ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド;ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等の有機金属類が挙げられる。これらの塩基は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
反応工程1における塩基としては、安全性および入手容易性の観点からトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の直鎖もしくは環式のアルキルアミン類が好ましい。
反応工程1の溶媒中に原料(ピルビン酸誘導体とハロゲン化ホスホリル)及び塩基を添加する順序は限定されず、まず塩基を添加してから原料を添加してもよいし、原料を添加してから塩基を添加してもよい。また、原料のうちピルビン酸誘導体とハロゲン化ホスホリルとはどちらを先に添加してもよいし、同時に添加してもよい。
反応工程1における反応温度は、反応条件や目的とするホスホエノールピルビン酸誘導体の種類に応じて適宜選択することができる。反応液の温度は、例えば-10℃~80℃、好ましくは-5℃~60℃、より好ましくは0℃~40℃とすることができる。反応液の温度を-10℃以上とすることにより、反応を効率良く進めることができる。反応液の温度を80℃以下にすることにより、生成したホスホエノール結合が分解されるのを防ぐことができる。
反応工程1に用いるピルビン酸誘導体とハロゲン化ホスホリルの量は特には限定されないが、例えば、モル比でピルビン酸誘導体:ホスフィンオキシド化合物=1:3~3:1、好ましくは1:2~2:1、より好ましくは1:1.5~1.5:1とすることができる。使用する原料を、モル比でピルビン酸誘導体:ホスホリル化合物=1:3~3:1とすることにより、未反応の原料の量を抑えることができるため精製等にかかる負担を軽減することができる。
反応工程1に用いる塩基の量も特には限定されず、原料の量や目的とするホスホエノールピルビン酸誘導体の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、ピルビン酸誘導体又はハロゲン化ホスホリルの量に対して、モル比で0.3~10、好ましくは0.5~5、より好ましくは0.7~2とすることができる。ピルビン酸誘導体又はハロゲン化ホスホリルの量に対して、塩基を0.3以上使用することにより、反応を効率良く進めることができる。また、塩基を10以下とするのは、それ以上の反応促進の効果が得られにくくなること及び生成物の不純物量が増えるためである。
反応工程1における反応時間も特には限定されず、原料がなくなるまで又は所望の量の生成物が得られるまで反応を続ければよい。反応時間は、例えば0.1~100時間、好ましくは0.5~50時間、より好ましくは1~24時間とすることができる。
反応工程1は、必要に応じて撹拌下に行うことにより反応をより効率的に進めることもできる。
反応工程1における反応圧力は特に制限されず、減圧、常圧、加圧いずれの圧力下においても実施できる。また、反応雰囲気は特に制限されず、空気、窒素、アルゴン等いずれの雰囲気下においても実施できる。
(1-2)加水分解工程
反応工程1の後に行われる加水分解工程では、得られたホスホエノールピルビン酸誘導体を加水分解反応に供することにより、ホスホエノールピルビン酸を得ることができる。
加水分解工程では、反応工程1後の反応液中でそのまま加水分解反応を行ってもよいし、ホスホエノールピルビン酸誘導体を必要に応じて精製及び/又は洗浄してから加水分解反応に供してもよい。
ホスホエノールピルビン酸誘導体の加水分解は、塩基を用いて行えばよい。この際に使用することができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等を挙げることができ、この中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリム、炭酸カリウム等がその強度から特に好ましい。
加水分解工程に使用する塩基の量も特には限定されず、反応条件等に応じて適宜選択することができる。例えば、ホスホエノールピルビン酸誘導体1モルに対して、塩基を0.1~20モル、好ましくは0.3~15モル、より好ましくは0.5~10モルとすることができる。ホスホエノールピルビン酸誘導体1モルに対して、塩基を0.1モル以上用いることにより、効率良く加水分解反応を進めることができる。20モル以下とするのは、それ以上加水分解反応を促進させにくくなることと副反応による生成物分解を抑制するためである。
加水分解工程における反応液の温度は特には限定されず、例えば-10~80℃、好ましくは-5~70℃、より好ましくは0~60℃とすることができる。反応液の温度を-10℃以上とすることにより加水分解反応を効率良く進めることができる。反応液の温度を80℃以下とすることにより、生成したホスホエノール結合が分解されるのを防ぐことができる。
加水分解工程における反応時間も特には限定されず、ホスホエノールピルビン酸誘導体が十分に加水分解されればよいが、例えば0.1~100時間、好ましくは0.5~50時間、より好ましくは1~24時間とすることができる。
加水分解工程における反応圧力は特に制限されず、減圧、常圧、加圧いずれの圧力下においても実施できる。反応雰囲気は特に制限されず、空気、窒素、アルゴン等いずれの雰囲気下においても実施できる。この加水分解反応は、必要に応じて撹拌下に行うことができる。
(2)ルート2
本ルートには、(2-1)ピルビン酸誘導体と、ホスフィンオキシド化合物としてハロゲン化リン酸モノエステル又はハロゲン化リン酸ジエステルとを反応させ、ホスホエノールピルビン酸誘導体を製造する工程(以下「反応工程2」と呼ぶ。)、(2-2)得られたホスホエノールピルビン酸誘導体中のリン酸エステル基を保護基変換する工程(以下「保護基変換工程」と呼ぶ。)、及び(2-3)保護基変換工程で得られた化合物を脱保護および加水分解反応に供し、ホスホエノールピルビン酸誘導体またはホスホエノールピルビン酸を製造する工程(以下「脱保護・加水分解工程」と呼ぶ。)が含まれる。
なお、ルート2において、ハロゲン化リン酸モノエステル又はハロゲン化リン酸ジエステル以外のホスフィンオキシド化合物を用いることができる場合がある。そのような実施形態に関しては、以下のルート2に関する説明において、「ハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステル」を適宜それらの実施形態の化合物に読み替えることができ、さらに適切であれば「ホスフィンオキシド化合物」に一般化して読み替えることができる。「ホスホエノールピルビン酸誘導体またはホスホエノールピルビン酸」も、適切であれば「ホスホエノール化合物」に一般化して読み替えることができる。
(2-1)反応工程2
反応工程2における反応溶媒は、活性水素を含有しない溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒;トリエチルアミン、ピリジン等のアミン系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。溶媒の使用量(2種以上を混合して用いる場合はそれぞれの使用量)は、適宜選択することができる。
反応工程2における反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン等が好ましい。
反応工程2における塩基は、ブレンステッドの塩基が好ましい。そのような塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、モルホリン等の直鎖もしくは環式のアルキルアミン類;ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、イミダゾール等の窒素含有複素環化合物;1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等のアリールアミン類;水素化ナトリウム等の金属水素化物;ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド;ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド等の有機金属類が挙げられる。これらの塩基を1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
反応工程2における塩基としては、安全性および入手容易性の観点からトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の直鎖もしくは環式のアルキルアミン類が好ましい。また、4-ジメチルアミノピリジン等のより求核性の強い塩基を併用することも好ましい。
反応工程2において、溶媒中に原料(ピルビン酸誘導体とハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステルと)及び塩基を添加する順序は限定されず、まず塩基を添加してから原料を添加してもよいし、原料を添加してから塩基を添加してもよい。また、原料のうちピルビン酸誘導体とハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステルとはどちらを先に添加してもよいし、同時に添加してもよい。
反応工程2における反応温度は、反応条件や目的とするホスホエノールピルビン酸誘導体の種類に応じて適宜選択することができる。反応液の温度は、例えば-10℃~80℃、好ましくは-5℃~60℃、より好ましくは0℃~40℃とすることができる。反応液の温度を-10℃以上とすることにより、反応を効率良く進めることができる。反応液の温度を80℃以下にすることにより、生成したホスホエノール結合が分解されるのを防ぐことができる。
反応工程2に用いるピルビン酸誘導体とハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステルの量は特には限定されないが、例えば、モル比でピルビン酸誘導体:ハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステル=1:3~3:1、好ましくは1:2~2:1、より好ましくは1:1.5~1.5:1とすることができる。使用する原料を、モル比でピルビン酸誘導体:ハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステル=1:3~3:1とすることにより、未反応の原料の量を抑えることができるため精製等にかかる負担を軽減することができる。
反応工程2に用いる塩基の量も特には限定されず、原料の量や目的とするホスホエノールピルビン酸誘導体の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、ピルビン酸誘導体又はハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステルの量に対して、モル比で0.3~10、好ましくは0.5~5、より好ましくは0.7~2とすることができる。ピルビン酸誘導体又はハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステルの量に対して、塩基を0.3以上使用することにより、反応を効率良く進めることができる。また、塩基を10以下とするのは、それ以上の反応促進の効果が得られにくくなること及び生成物の不純物量が増えるためである。
反応工程2における反応時間も特には限定されず、原料がなくなるまで又は所望の量の生成物が得られるまで反応を続ければよい。反応時間は、例えば0.1~100時間、好ましくは0.5~60時間、より好ましくは1~30時間とすることができる。
反応工程2における反応圧力は特に制限されず、減圧、常圧、加圧いずれの圧力下においても実施できる。また、反応雰囲気は特に制限されず、空気、窒素、アルゴン等いずれの雰囲気下においても実施できる。上記反応を行う際には、必要に応じて撹拌下に行うことにより反応をより効率的に進めることもできる。
(2-2)保護基変換工程
反応工程2の後に行われる保護基変換工程では、得られたホスホエノールピルビン酸誘導体中のリン酸エステル基を、ホスホエノール基を分解せずに脱保護できる、保護基へ変換する。
保護基変換工程では、反応工程2により得られた反応液に保護基および脱アルキル化剤等を添加して反応させることにより保護基を変換することもできるし、必要に応じて、得られたホスホエノールピルビン酸誘導体を洗浄及び/又は精製してから保護基を変換することもできる。
ホスホエノールピルビン酸誘導体中のリン酸エステルの保護基を変換する方法は、2ヶ所のリン酸エステルにおける脱離が容易な保護基を導入できれば、特には限定されない。
保護基変換工程における反応溶媒は、活性水素を含有しない溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。溶媒の使用量(2種以上を混合して用いる場合はそれぞれの使用量)は、適宜選択することができる。
保護基変換工程における溶媒としては、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等が好ましい。
保護基変換工程における保護基としては、ベンジル基、p-メトキシフェニルベンジル基、メトキシメチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、アセチル基、ベンゾイル基、トリチル基等が挙げられ、その中でも、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基等が好ましい。保護基変換工程では、そのような保護基を供給する原料となる化合物を用いればよい。
保護基変換工程における脱アルキル化剤としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化銅、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、臭化リチウム、臭化カリウム等が挙げられ、その中でも、ヨウ化ナトリウム、臭化リチウム等が好ましい。
保護基変換工程において、溶媒中にホスホエノールピルビン酸誘導体、保護基及び脱アルキル化剤を添加する順序は限定されず、まず保護基及び脱アルキル化剤を添加してからホスホエノールピルビン酸誘導体を添加してもよいし、ホスホエノールピルビン酸誘導体を添加してから塩基及び触媒を添加してもよい。また、保護基及び脱アルキル化剤はどちらを先に添加してもよいし、同時に添加してもよい。
保護基変換工程における反応温度は、反応条件や目的とするホスホエノール化合物の種類に応じて適宜選択することができる。例えは、反応液の温度を-10℃~80℃、好ましくは-5℃~60℃、より好ましくは0℃~40℃とすることができる。反応液の温度を-10℃以上とすることにより、反応を効率良く進めることができる。反応液の温度を80℃以下にすることにより、生成したホスホエノール結合が分解されるのを防ぐことができる。
保護基変換工程に用いるホスホエノールピルビン酸誘導体と保護基(の原料)の量は特には限定されないが、ホスホエノールピルビン酸誘導体に対し、例えば10倍モル以上、好ましくは5倍モル以上、より好ましくは3倍モル以上の保護基(の原料)を用いることが好ましい。使用する保護基の原料を、ホスホエノールピルビン酸誘導体に対してモル比で2倍以上とすることにより、ホスホエノールピルビン酸誘導体中の2ヶ所のリン酸エステルに保護基を導入しやすくなる。ホスホエノールピルビン酸誘導体に対してモル比で6倍以下とすることにより、未反応の保護基(の原料)を減らすことができる。
保護基変換工程に用いるホスホエノールピルビン酸誘導体と脱アルキル化剤の量も特に限定されないが、ホスホエノールピルビン酸誘導体に対し、例えば10倍モル以上、好ましくは5倍モル以上、より好ましくは3倍モル以上の脱アルキル化剤を用いることが好ましい。使用する脱アルキル化剤を、ホスホエノールピルビン酸誘導体に対してモル比で2倍以上とすることにより、ホスホエノールピルビン酸誘導体中の2ヶ所のリン酸エステルに保護基を導入しやすくなる。ホスホエノールピルビン酸誘導体に対してモル比で6倍以下とすることにより、未反応の脱アルキル化剤を減らすことができる。
(2-3)脱保護・加水分解工程
ルート2では、保護基変換工程の後、得られたホスホエノールピルビン酸誘導体を脱保護および加水分解に供することによって、ホスホエノールピルビン酸またはホスホエノールピルビン酸誘導体を得ることができる。
保護基変換工程において、ホスホエノールピルビン酸誘導体中の2ヶ所のリン酸エステルは分解しやすい保護基によって置換されているので、容易に脱保護される。例えば、保護基としてベンジル基が用いられている場合は、還元的に除去することができ、シリルエステルが用いられている場合は、水中で容易に分解する。
脱保護により得られたホスホエノールピルビン酸誘導体の加水分解は、塩基を用いて行えばよい。この際に使用することができる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等を挙げることができ、この中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリム、炭酸カリウム等がその強度から特に好ましい。
加水分解段階に使用する塩基の量も特には限定されず、反応条件等に応じて適宜選択することができる。例えば、ホスホエノールピルビン酸誘導体1モルに対して、塩基を0.1~10モル、好ましくは0.3~8モル、より好ましくは0.5~5モルとすることができる。ホスホエノールピルビン酸誘導体1モルに対して、塩基を0.1モル以上用いることにより、効率良く加水分解反応を進めることができる。10モル以下とするのは、それ以上加水分解反応を促進させにくくなるからである。
加水分解段階における反応液の温度は特には限定されず、例えば-10~80℃、好ましくは-5~70℃、より好ましくは0~60℃とすることができる。反応液の温度を-10℃以上とすることにより加水分解反応を効率良く進めることができる。反応液の温度を80℃以下とすることにより、ホスホエノール結合が分解されるのを防ぐことができる。
加水分解段階における反応時間も特には限定されず、ホスホエノールピルビン酸誘導体が十分に加水分解されればよいが、例えば0.1~100時間、好ましくは0.5~50時間、より好ましくは1~24時間とすることができる。
加水分解段階の反応は、必要に応じて撹拌下に行うことができる。
加水分解段階における反応圧力は特に制限されず、減圧、常圧、加圧いずれの圧力下においても実施できる。また、反応雰囲気は特に制限されず、空気、窒素、アルゴン等いずれの雰囲気下においても実施できる。
上記のようにして得られる、リン酸エステルの保護基を脱離させたホスホエノールピルビン酸誘導体およびホスホエノールピルビン酸(塩であってもよい。)の用途は特に限定されるものではないが、例えばいずれも次に記載するようにして、ADP又はAMPからATPを製造するために用いることができる。用途を考慮して、ホスホエノールピルビン酸誘導体またはホスホエノールピルビン酸(塩であってもよい。)のいずれを目的とするかによって、加水分解反応の時間やその他の条件を調整すればよい。
(II)ATPの製造(再生)方法
上述したような本発明のホスホエノール化合物の製造方法により得られたホスホエノール化合物(ホスホエノールピルビン酸、ホスホエノールピルビン酸の塩、ホスホエノールピルビン酸エステル、ホスホエノールピルビン酸エステルの塩等)はいずれも、ADP及び/又はAMPからATPを製造するために用いることができる。すなわち、本発明のATPの製造方法は、本発明のホスホエノール化合物の製造方法により得られたホスホエノール化合物を用いて、ADP及び/又はAMPからATPを製造する工程を含む。
なお、酵素反応等、何らかの反応によりATPが消費されて生成したADP又はAMPも、本発明で得られたホスホエノール化合物によりATPに再生することができるが、そのような再生方法も本発明のATPの製造方法に含まれるものとする。また、ふき取り検査などの衛生検査で感度を上げるために、本発明で得られたホスホエノール化合物を用いてADP又はAMPをATPに再生するような方法も、本発明のATPの製造方法に含まれる。
本発明のATPの製造方法における各種の条件は、ホスホエノール化合物を用いてADP又はAMPからATPを製造することができる限り、特には限定されない。
例えば、トリシン、リン酸塩等の緩衝液等を用いて酵素の至適pHにした水溶液に、ピルビン酸キナーゼ等の酵素と、本発明により製造したホスホエノール化合物(ホスホエノールピルビン酸及び/又はその誘導体)あるいはそれを含む液と、ADPとを加え、酵素の至適温度で反応させることにより、ATPが生成する。
酵素の添加量は、その活性で規定され1ユニットは、至適条件下(温度30℃で、最も化学反応が進む酸性度)で毎分1マイクロモル(μmol)の基質を変化されることができる酵素量(1マイクロモル毎分)と定義されており、それを目安に添加量を決める。
反応時間は、酵素の種類や量により異なり、適宜選択することができるが、好ましくは1分~100時間、より好ましくは30分~72時間、さらに好ましくは1時間~48時間である。衛生検査等、基質が少量の場合は酵素の量を増やし、反応時間をより短時間としても差し支えない。
本発明により製造したホスホエノール化合物は、精製して用いてもよいが、酵素反応を阻害する不純物が含まれない限り、未精製もしくは簡易な精製で用いてもよい。
ADPに対するホスホエノール化合物の量は適宜選択することができるが、酵素反応には当モルが必要であるので、通常はADP1モルに対してホスホエノール化合物を1モル以上用いるようにする。
酵素反応後は、ATPを回収(単離)してもよいし、反応溶液中に溶解しているATPをそのまま、他の目的のために、例えばATPを消費する酵素反応や別のリン酸化反応のために、用いてよい。
(III)ホスホエノールピルビン酸を用いる化学品の製造方法
ホスホエノールピルビン酸は生体内ではシキミ酸経路によるシキミ酸、コリスミ酸、芳香族アミノ酸等の出発物質であり、発酵法、酵素法等によりこれらの化合物を製造するための原料として用いることもできる。したがって、本発明の別の側面において、本発明のホスホエノール化合物の製造方法により得られたホスホエノール化合物を用いた、発酵法、酵素法等による、シキミ酸、コリスミ酸、芳香族アミノ酸等の製造方法も提供される。
具体的には、発酵法において、副生経路遺伝子を破壊した高生産株を用いてもよく、酵素法において、必要な酵素を取り出して反応に用いてもよい。また、ホスホエノールピルビン酸を本発明の製造方法により供給すれば、ホスホエノールピルビン酸を消費する他の代謝経路を残しておいても微生物による化学品生産が可能となる。
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
反応追跡は1HNMR(270MHz、CDCl3またはD2O)により実施した。
[実施例1]ルート1によるホスホエノールピルビン酸ナトリウム塩の合成(1ステップ)
攪拌機、温度計を備えたガラス製のフラスコに、トリエチルアミン0.50g(4.9mmol)、テトラヒドロフラン4.9mL、ピルビン酸メチル0.45mL(4.9mmol)を仕込み、0℃に冷却した。塩化ホスホリル0.40mL(4.4mmol)をテトラヒドロフラン0.62mLに溶解させ、滴下した。その後室温で3時間攪拌した。再び0℃に冷却し、10%水酸化ナトリウム水溶液12.4g(31mmol)を滴下した。その後室温で9時間攪拌した。反応終了後、1H NMRにてホスホエノールピルビン酸ナトリウム塩が生成したことを確認した。反応収率は81%であった。1H NMRスペクトルを図1に示す。
[実施例2]ルート1によるホスホエノールピルビン酸ナトリウム塩の合成(2ステップ)
攪拌機、温度計を備えたガラス製のフラスコに、トリエチルアミン1.74g(17.1mmol)、テトラヒドロフラン9.8mL、ピルビン酸メチル0.45mL(4.9mmol)を仕込み、0℃に冷却した。塩化ホスホリル0.68mL(7.5mmol)をテトラヒドロフラン1.0mLに溶解させ、滴下した。その後室温で5時間攪拌した。再び0℃に冷却し、10%水酸化ナトリウム水溶液4.91g(12mmol)を滴下した。その後室温で4時間攪拌した。水層を分離し、濃縮した後、エタノール20mLを加え、生じた固体をろ過した。得られた固体に5%水酸化ナトリウム水溶液2.84g(3.6mmol)を加え、室温で4時間撹拌した。エタノール20mLを加え、生じた固体をろ過した。得られた固体を減圧乾燥させ、ホスホエノールピルビン酸ナトリウム塩753mgを白色固体として得た。収率は73%であった。
[実施例3]ルート1によるホスホエノールピルビン酸メチルの合成
攪拌機、温度計を備えたガラス製のフラスコに、ジイソプロピルエチルアミン2.21g(17.1mmol)、テトラヒドロフラン9.8mL、ピルビン酸メチル0.45mL(4.9mmol)を仕込み、0℃に冷却した。塩化ホスホリル0.68mL(7.5mmol)をテトラヒドロフラン1.0mLに溶解させ、滴下した。その後室温で5時間攪拌した。再び0℃に冷却し、10%水酸化ナトリウム水溶液4.91g(12mmol)を滴下した。その後室温で4時間攪拌した。水層を分離し、濃縮した後、エタノール20mLを加え、生じた固体をろ過し、ホスホエノールピルビン酸メチルを得た。収率は97%であった。1H NMRスペクトルを図2に示す。
[実施例4]ルート1によるホスホエノールピルビン酸メチルの合成(反応工程1の塩基の変更)
攪拌機、温度計を備えたガラス製のフラスコに、トリエチルアミン0.50g(4.9mmol)、テトラヒドロフラン9.8mL、ピルビン酸メチル0.45mL(4.9mmol)を仕込み、0℃に冷却した。塩化ホスホリル0.40mL(4.4mmol)をテトラヒドロフラン0.62mLに溶解させ、滴下した。その後室温で3時間攪拌した。再び0℃に冷却し、10%水酸化ナトリウム水溶液3.53g(8.8mmol)を滴下した。その後室温で1時間攪拌した。反応終了後1H NMRにてホスホエノールピルビン酸メチルが生成したことを確認した。反応収率は98%であった。
[実施例5]ルート1によるホスホエノールピルビン酸メチルの合成(加水分解工程の塩基の変更)
実施例4で使用した10%水酸化ナトリウム水溶液を10%水酸化カリウム水溶液に変えた以外は実施例3と同様に実験を行い、反応終了後1H NMRにてホスホエノールピルビン酸メチルが生成したことを確認した。反応収率は103%であった。
[実施例6]ルート1によるホスホエノールピルビン酸ナトリウム塩の合成(加水分解工程の塩基の変更)
実施例4で使用した10%水酸化ナトリウム水溶液を20%炭酸カリウム水溶液に変えた以外は実施例2と同様に実験を行い、反応終了後1H NMRにてホスホエノールピルビン酸メチルが生成したことを確認した。反応収率は94%であった。
[実施例7]ルート2によるホスホエノールピルビン酸カリウム塩の合成
攪拌機、温度計を備えたガラス製のフラスコに、トリエチルアミン1.98g(20mmol)、4-ジメチルアミノピリジン0.24g(2.0mmol)、テトラヒドロフラン5.8mL、ピルビン酸メチル0.90mL(9.8mmol)を仕込み、0℃に冷却した。クロロリン酸ジエチル1.7mL(12mmol)を滴下し、0℃で1時間撹拌した後、室温で4.5時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチル20mL、飽和塩化アンモニウム水溶液10mLを加え、酢酸エチル20mLで2回抽出した。有機層を合わせて水10mLで2回、20%塩化ナトリウム水溶液10mLで洗浄し、濃縮後、1H NMRにてホスホエノールピルビン酸メチルジエチルエステル2.05gを褐色液体として得た。収率は88%であった。1H NMRスペクトルを図3に示す。
得られたホスホエノールピルビン酸メチルジエチルエステル0.40g(1.7mmol)、ヨウ化ナトリウム0.50g(3.4mmol)、アセトニトリル1.7mLを加え、クロロトリメチルシラン0.43mL(3.4mmol)を滴下した。室温で3時間撹拌した後、析出した固体を吸引ろ過し、ろ液を濃縮して茶色液体を得た。これをメタノール1.7mLに溶解せさ、20%炭酸カリウム水溶液2.32g(3.4mmol)を加え室温で2時間撹拌し、ホスホエノールピルビン酸メチルを得た。
反応液を濃縮し、20%炭酸カリウム水溶液3.48g(5.0mmol)に溶解させ室温で7時間撹拌した。反応終了後1H NMRにてホスホエノールピルビン酸カリウム塩が生成したことを確認した。1H NMRスペクトルを図4に示す。
[実施例8]ATP再生実験方法
100mMアデノシン2リン酸(ADP)(和光純薬製)水溶液10μL、ピルビン酸キナーゼ(オリエンタル酵母製、和光純薬品)8.3U/μL液10μL、合成サンプルを下記の量加え、pH8.5トリシンバッファー(トリシン ナカライデスク品)を加え100μLとした。混合後37℃インキュベーターで24時間保持したのち全量を濾過し純水で50倍希釈し高速液体クロマトグラフィー(波長260nm)でアデノシン3リン酸(ATP)(和光純薬品)、ADPを分析し、反応率を見た。ADP、ATPはあらかじめ試薬を用いて検量線を引き、定量した。
分析条件
カラム:InerSustain AQ-C18(5μm、4.6mm×150mm)
カラム温度:40℃
移動相:50mM リン酸カルシウム緩衝液KPB(pH7.0)
流速:1.5mL/min
検出:261nm
実施例1の生成物(ホスホエノールピルビン酸ナトリウム塩)を含む濃縮物25mgを0.2m
lの水に溶解し、得られた水溶液20μlを上記の系に添加し、反応を行ったところ、ATPの生成(転化率15%)を確認した。
実施例3の生成物(ホスホエノールピルビン酸メチル)を含む濃縮物19.6mgを0.2mlの
水に溶解し、得られた水溶液20μlを上記の系に添加し、反応を行ったところ、ATPの生成(転化率2.4%)を確認した。
実施例7の生成物(ホスホエノールピルビン酸カリウム塩)を含む濃縮物16mgを0.1mlの水に溶解し、得られた水溶液20μlを上記の系に添加し、反応を行ったところ、ATPの生成(転化率30%)を確認した。
なお、いずれの系でも生成物の濃縮物を添加せずに、水20μlを上記の系に添加した比較例では、ATPの生成は全く観測されなかった。

Claims (6)

  1. ピルビン酸誘導体と下記式[1]で表されるホスフィンオキシド化合物とを反応させる工程を含む、ホスホエノール化合物の製造方法。
    Figure 2022138254000005
    (式中、R1は互いに独立して、置換されていてもよい、直鎖若しくは分岐アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、トリアルキルシリルオキシ基、ジアルキルアミノ基及びハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。)
  2. 塩基の存在下に反応を行う、請求項1に記載の方法。
  3. 前記式[1]で表されるホスフィンオキシド化合物が、ハロゲン化ホスホリル、ハロゲン化リン酸モノエステル及びハロゲン化リン酸ジエステルから選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. (1)ピルビン酸誘導体とハロゲン化ホスホリルとを反応させてホスホエノールピルビン酸誘導体を製造する工程、及び
    (2)得られたホスホエノールピルビン酸誘導体を加水分解反応に供し、ホスホエノールピルビン酸を製造する工程
    を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. (1)ピルビン酸誘導体とハロゲン化リン酸モノエステル若しくはジエステルとを反応させてホスホエノールピルビン酸誘導体を製造する工程、
    (2)得られたホスホエノールピルビン酸誘導体中のリン酸エステル基を保護基変換する工程、及び
    (3)(2)の工程で得られた化合物を脱保護および加水分解反応に供し、ホスホエノールピルビン酸誘導体またはホスホエノールピルビン酸を製造する工程
    を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の方法で得られたホスホエノール化合物を用いてADP及び/又はAMPからATPを製造する工程を含む、ATPの製造方法。
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