JP2022134543A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐摩耗性にすぐれ、高い耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具の提供。【解決手段】炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体の表面に、Tiの窒化物もしくは炭窒化物からなる平均層厚0.6~21.0μmの下部層と、NaCl型面心立方晶構造を有するAlとTiとの複合窒化物層または複合炭窒化物層を含む平均層厚0.5~20.0μmの上部層とを有する表面被覆切削工具において、工具基体の切れ刃逃げ面の炭化タングステン基超硬合金の残留応力をS1、切れ刃すくい面の残留応力をS2としたとき、α)S1>S2、β)S2≦-200MPa、γ)S1とS2の差の絶対値が250より大きいことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、連続高速切削加工に加え、断続切削加工においても、硬質被覆層がすぐれた耐欠損性と耐摩耗性とを備えることにより、すぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、単に「被覆工具」ということがある)に関するものである。
ステンレス鋼や溶断表面が残存する鋼材、あるいは、ニッケル基耐熱合金等の難削材の切削加工において、特に、CVD法によりAlTiNを被覆した切削工具においては、その皮膜硬さや耐酸化特性により、連続高速切削領域において、高い耐摩耗性を発揮することが知られている。
一方、被削材の靭性が高いステンレス鋼やニッケル基耐熱合金等の難削材、切り込み量が変動する溶断面の加工のような不安定加工、あるいは、断続性の高い切削領域での切削加工においては、その高い皮膜硬さのため、粒子の脱落が顕著に発生し、工具の欠損を伴う異常損傷が進行することで、本来の性能を発揮することができないという問題を有していた。
これに対して、例えば、特許文献1では、基材表面に化学蒸着法により成膜された硬質被覆層が、TiおよびAlの複合窒化物(TiAlN)層または複合炭窒化物(TiAlCN)層からなり、少なくとも90体積%の面心立方構造を有し、X線回折を行った際に、(111)面における配向性指数TC(111)が最大であり、その値は、少なくとも1.5以上であり、前記複合窒化物層または複合炭窒化物層の残留応力値が、0MPa以下、-5000MPa以上の残留圧縮状態であるときに、工具としての耐亀裂性および耐摩耗性に改善がみられるとされている。
なお、(111)面の配向性指数TC(111)の導出にあたっては、Ti、Alの複合炭窒化物の(111)、(200)、(220)および(311)の各結晶面に対するX線回折ピーク強度の測定値を用いている。
また、特許文献2では、すくい面および逃げ面を有し、それらの境界部分が切れ刃を成す表面被覆切削工具において、基材の表面にCVD法を用いて成膜された、特定組成のNaCl型結晶構造のTiAlN層の(111)面における配向性指数TC(111)が最大値を示し、その値が、1.0<TC(111)≦4.0を満たすときに、すぐれた耐摩耗性および耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具が得られることが記載されている。
なお、ここでは、(111)面の配向性指数TC(111)の導出にあたっては、Ti、Alの複合炭窒化物の結晶成長優先方位である、(111)、(200)、(220)、(311)および(222)の各結晶面に対するX線回折ピーク強度の測定値を用いている。
特表2018-522748号公報 特開2017-124463号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化等の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高効率化の傾向にあり、被覆工具では、粒子の脱落の発生により、工具の欠損を伴う異常損傷を生じることから、すぐれた耐欠損性が求められ、さらに、長期の使用に亘っては、すぐれた耐摩耗性が求められている。
そして、前記特許文献1および特許文献2では、被覆工具において、化学蒸着法を用いて硬質被覆層として形成される立方晶構造を有するAl、Ti複合炭窒化物の結晶粒の結晶面を(111)面に配向させることにより、すぐれた耐欠損性と耐摩耗性を兼ね備えた被覆工具が提案されている。
しかしながら、単に特定組成のNaCl型結晶構造のAl、Ti複合炭窒化物の結晶粒の結晶面を(111)面に配向させ、その配向性指数を特定の範囲に規定するのみでは、耐欠損性は向上するものの、耐摩耗性が低下するため、耐欠損性と耐摩耗性の両立を図ることはできず、その結果、長期の使用を実現することができないという問題を有していた。
そこで、本発明は、かかる課題を解決し、長期使用に際しても、早期の摩耗損傷を発生することなく耐摩耗性にすぐれ、あわせて高い耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述の観点から、AlとTiの複合炭窒化物からなる硬質被覆層を化学蒸着にて被覆形成した被覆工具の耐欠損性と耐摩耗性の改善および向上を両立して達成すべく、鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
すなわち、本発明者らは、炭化タングステン基超硬合金基体に対し、CVD-AlTiNから成る硬質被覆層の下部層を成膜するにあたり、例えば、基体の切れ刃すくい面に対し、ウェットブラストやドライブラスト等の前処理を行うこと、あるいは、硬質被覆層の成膜後に後処理としてウェットブラストやドライブラストを行うこと、さらには、その両者を実施することにより、基体の切れ刃すくい面および逃げ面のそれぞれに対して意図的に適切な値の残留応力を付与し、耐摩耗性を低下させることなく、耐欠損性にすぐれた表面被覆切削工具が得られることを知見した。
そして、具体的には、表面被覆工具の炭化タングステン基超硬合金基体の切れ刃すくい面における残留応力S2を、切れ刃逃げ面における残留応力S1より小さい値とし(S1>S2)、少なくとも-200MPa以下(S2≦-200MPa)の残留応力を付与し、前記基体の切れ刃逃げ面における残留応力S1を前記残留応力S2より大きな値(S1>S2)とし、S1とS2の差の絶対値を250より大きい値とすること、さらに好ましくは、前記切れ刃すくい面における残留応力S2を、-850MPa以下(S2≦-850MPa)の残留応力、すなわち、850MPa以上の残留圧縮応力を付与するとともに、前記基体の切れ刃逃げ面における残留応力S1を前記S2より大きな値(S1>S2)とし、S1とS2の差の絶対値を500より大きい値とすることにより、耐摩耗性を低下させることなく、耐欠損性にすぐれ、特に、旋削(ターニング)加工用に好適な表面被覆切削工具が得られることを知見してなされたものである。
なお、ここで、切れ刃すくい面における残留応力S2が、例えば、「-200MPa」であるとは、前記残留応力S2は、残留圧縮応力であって、残留圧縮応力値が200MPaであることをいい、また、「S2≦-200MPa」であるとは、「残留応力S2が、-200MPa以下」すなわち、「前記残留圧縮応力S2が、200MPa以上」であることをいう。
切れ刃逃げ面における残留応力S1においても同様である。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体の表面に、硬質被覆層を有してなる表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、前記工具基体最表面に直接接してなる下部層と、該下部層に直接接してなる上部層との少なくとも二層を有し、前記硬質被覆層の全平均層厚は、0.6~21.0μmであり、
(b)前記下部層は、Tiの窒化物もしくは炭窒化物からなり、その平均層厚は、0.05~2.0μmであり、
(c)前記上部層は、AlとTiとの複合窒化物層または複合炭窒化物を含む層であり、その平均層厚は、0.5~20.0μmであり、
組成式:(AlTi1-X)(C1-Y)で表した場合、前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層のTiとAlとの合量に対してAlが占める平均含有割合Xavgおよび前記複合窒化物または前記複合炭窒化物層のCとNの合量に対してCが占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavg はいずれも原子比)が、それぞれ、0.70≦Xavg≦0.90、0≦Yavg<0.05を満足し、NaCl型の面心立方晶構造を有する複合窒化物層または複合炭窒化物層からなり、
(d)表面被覆工具の切れ刃逃げ面の炭化タングステン基超硬合金の残留応力をS1、すくい面の残留応力S2としたとき、
α)S1>S2
β)S2≦-200MPa
γ)S1とS2の差の絶対値が250より大きいこと
をそれぞれ満たす表面被覆切削工具。
(2)前記上部層において、X線回折を行った際に、立方晶(111)面の回折線強度値に対する立方晶(200)面における回折線強度値、I(111)/I(200)が、
1.0≦I(111)/I(200)の関係を満たすことを特徴とする(1)に記載された表面被覆切削工具。
(3)表面被覆工具の切れ刃逃げ面の炭化タングステン基超硬合金の残留応力S1、すくい面の残留応力S2としたとき、
α)S1>S2
β)S2≦-850MPa
γ)S1とS2の差の絶対値が500より大きいこと
をそれぞれ満たす(1)または(2)に記載された表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
なお、本明細書中において、数値範囲を示す際に、「~」あるいは「-」を用いる場合は、その数値範囲の下限および上限を含むことを意味する。
つぎに、本発明の被覆工具の工具基体および硬質被覆層について、具体的に説明する。
1.工具基体;
工具基体としては、炭化タングステン基超硬合金を用いる。本発明は、前記超硬合金基体の切れ刃すくい面において、-200MPa以下、より好ましくは、-850MPa以下の残留応力が付与されることにより、硬質被覆層との密着性が高まり、連続高速切削領域に加え、断続切削領域においても、耐欠損性および耐摩耗性にすぐれた切削性能を有する切削工具として用いることができる。
また、前記合金基体の切れ刃すくい面における残留応力値を-200MPa以下、より好ましくは、-850MPa以下とすることにより、加工中におけるクラックの進展を抑制し、高い耐欠損性を発揮させることができる。
他方、すくい面と同様に逃げ面における圧縮残留応力が高まり、すくい面の残留応力値と逃げ面の残留応力値の差の絶対値が250MPa以下になると、母材の塑性変形時に工具逃げ面を起点とした、皮膜剥離が発生しやすくなるため、すくい面における残留応力値に対する逃げ面における残留応力値の差の絶対値は、250MPaより大きい値、好ましくは500MPaより大きい値とすることが必要である。
前記工具基体への残留応力の付与は、ウェットブラストまたはドライブラストを用い、後記硬質被覆層の成膜前の前処理、あるいは、後記硬質被覆層の成膜後の後処理として行うことができる。
ウェットブラストまたはドライブラストを硬質被覆層の成膜前の前処理として行う場合には、成膜時の成膜温度を通常よりも低い温度とすることにより、残留応力の緩和を抑制できるため、工具の長寿命化を図ることができる。
例えば、ブラストによる基体への残留応力の付与は、硬質被覆層の成膜前もしくは成膜後に、アルミナや窒化ケイ素、ジルコニアの砥粒を用いたメディアにより、乾式または湿式のブラスト処理を工具表面へ投射することにより実施する。
ブラスト処理条件;
砥粒:ZrO粒、Al
砥粒形状:球形および/または多角形
砥粒サイズ(粒径):125-425μm(球形)/<125μm(多角形)
ブラスト圧力:0.1-0.4MPa
すくい面から70~90°にてブラスト投射
投射時間: 4-16秒
2.硬質被覆層;
硬質被覆層は、下部層と上部層を含んでなり、その他の層として、上部層の上に最上層を設けることができる。
硬質被覆層の平均層厚は、0.6μm未満では、密着性、耐摩耗性および耐欠損性を長期の使用に亘って十分に確保することはできないため、0.6μm以上とする。一方、その平均層厚が、21.0μmを超えると、剥離あるいは欠損が生じ易くなることから、21.0μm以下とすることが望ましい。
(a)下部層;
<平均層厚>
下部層は、Tiの窒化物もしくは炭窒化物からなり、工具基体の直上に直接接して設けられる。下部層の平均層厚は、0.05μm未満では、十分な密着性が得られないため、0.05μm以上とする。他方、2.0μmを超えると得られた硬質被覆層の変形が顕著となり、切削加工の早期段階にて工具基体からの剥離が生じ易くなるため、2.0μm以下とした。
<成分組成>
下部層の成分組成は、Tiの窒化物もしくは炭窒化物であれば、本発明の目的を阻害するものではないので、特に限定されないが、例えば、組成式TiC1-Zにて表現した場合、0≦Z≦0.05である範囲が好ましい。
すなわち、Zが、0.05より多く含まれると下部層の硬度が過度に上昇し、下部層と基材界面からの剥離が生じやすくなるためである。
(b)上部層
<平均層厚>
上部層は、TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物からなり、前記下部層の直上に直接接して設けられる。上部層の平均層厚は、0.5μm未満では、皮膜全体における硬質層が不十分であり、耐摩耗性に劣るため、0.5μm以上とする。他方、平均層厚が、20.0μmを超えると、硬質層の層厚が、過多となり加工中に剥離や欠損が生じ易くなるため、20.0μm以下とした。
<成分組成>
上部層は、AlとTiの複合窒化物層(AlTiN層)、または、複合炭窒化物層(AlTiCN層)にて構成され、層全体に亘り、均質な耐摩耗性や靱性を示し、Ti成分によって、高温強度を向上させ、Al成分によって、高温硬さと耐熱性を補完するため、高温切削条件下においても、低摩耗係数が維持され、すぐれた耐熱性を発揮することができる。
前記Al、Tiの複合窒化物層または複合炭窒化物層を構成する複合窒化物または複合炭窒化物は、具体的には、組成式:(AlTi1-X)(C1-Y)にて表すことができるが、Alの平均含有割合Xavg(原子比)の値が0.70未満になると、高温硬さが不足し耐摩耗性が低下するようになり、一方、Xavg(原子比)の値が0.90を超えると、相対的なTi含有割合の減少により、(AlTi1-X)(C1-Y)層自体の高温強度が低下し、チッピング、欠損を発生しやすくなるため、Alの平均含有割合Xavg(原子比)の値は、最大硬さに近く、特に高い効果が得られる、0.70以上0.90以下の範囲に規定した。
また、C成分には、硬さを向上させる作用があるが、C成分の平均含有割合Yavg(原子比)が0.05以上では、高温強度が低下するため、C成分の平均含有割合Yavg(原子比)は、0≦Yavg<0.05と規定した。
<結晶配向>
上部層を構成するAl、Tiの複合窒化物、または、複合炭窒化物(AlTi1-X)(C1-Y)は、NaCl型の面心立方構造(以下、単に「立方晶構造」という場合もある。)をとることによって硬さを向上させることができる。
すなわち、立方晶構造の(111)面に高配向性を有する、Al、Tiの複合窒化物層、または、複合炭窒化物層とすることにより、高硬度化することができる。
また、上部層における(200)面の回折線強度値I(200)に対する(111)面の回折線強度値I(111)の比I(111)/I(200)が、1.0以上であるとき、加工中の結晶粒の脱落が発生しにくくなるため、I(111)/I(200)≧1.0とすることが望ましい。
(c)最上層
本発明においては、上部層である前記AlTi複合窒化物層または前記AlTi複合炭窒化物層上に、耐摩耗性向上やより広い加工用途へ対応する等の観点により、必要に応じ、最上層を設けることができる。
具体的には、α-Alやκ-AlなどのAl酸化物からなる層や、Tiの窒化物層または炭窒化物層などを4.5μm以下の範囲内にて設けることができる。
3.硬質被覆層の成膜方法;
(a)工具基体への残留応力の付与方法
工具基体への残留応力の付与は、ブラスト処理(ウェットブラストまたはドライブラスト)を後記硬質被覆層の成膜前の前処理、あるいは、硬質被覆層の成膜後の後処理として行うことができる。
なお、ブラスト処理を後記硬質被覆層の成膜前の前処理として行う場合には、成膜温度を従来の処理温度よりも低温とすることにより、硬質被覆層の引張応力を抑制できるため、切削工具の長寿命化を図ることができる。
(b)下部層の成膜方法
硬質被覆層の下部層は、Tiと窒素から成る化合物層、もしくは、Tiと窒素および炭素から成る化合物層からなるものであり、第1工程として、化学蒸着法を用い、成膜する化合物層ごとに反応ガス組成(ガス群A)、および、圧力、温度等の反応雰囲気を適正範囲に調整することにより、密着性にすぐれたTiN層またはTiCN層を形成することができる。
[成膜条件]
1)TiN層;
処理方法;CVDを用いた成膜
反応ガス組成(容量%)
TiCl:3.0~6.0%、N:25.0~35.0%、H:残、
反応雰囲気圧力:4.0~12.0kPa、
反応雰囲気温度:780~900℃
2)TiCN層;
処理方法;CVDを用いた成膜
反応ガス組成(容量%)
TiCl:3.0~6.0%、N:15.0~30.0%、
CHまたはCHCN:0.6~2.0%,H:残、
反応雰囲気圧力:7.0~12.0kPa、
反応雰囲気温度:780~900℃
(c)上部層の成膜方法
次いで、本発明に係る上部層の成膜方法では、AlTi複合窒化物層またはAlTi複合炭窒化物層の成膜条件について、例えば、加熱温度の異なる二種類のNHガスを用い、高温のアンモニアガスにより核形成を抑制し、結晶化を促進させることにより、粗粒を得ることができる。
すなわち、本発明に係るAlTiN層またはAlTiCN層の成膜方法は、第2工程(初期核形成工程)、すなわち、AlTiN膜またはAlTiCN膜を形成するための初期核となるAlTiN結晶またはAlTiCN結晶を形成する工程と、第3工程(結晶成長工程)、すなわち、初期核である、前記AlTiN結晶またはAlTiCN結晶を成長させ、AlTiN膜またはAlTiCN膜を形成するための工程とを交互に繰り返すことにより、成膜を行うものである。
以下に、各成膜工程における成膜条件の概要を示すが、特に、第2工程における、微細なAlTiN結晶またはAlTiCN結晶の初期核の形成工程では、以下のガス群Bとガス群Cとを位相差を設けて交互に反応器に供給し成膜を行なう際に、高温(例えば、300~450℃)で予熱されたアンモニアガスを用いることにより、核形成を促進し、引き続いて実施する第3工程においては、以下のガス群Dとガス群Eとを位相差を設けて交互に反応器に供給し成膜を行なう際に、用いるアンモニアガスを低温(例えば、50~250℃)で予熱されたアンモニアガスに変更することにより、核形成を抑制し結晶化を促進し、所望の結晶を得ることができる。
なお、前記第2工程と前記第3工程との繰り返し数は、目標膜厚に合わせて調整する。
[成膜条件]
1)第2工程(初期核形成工程)
処理方法;CVD法を用いた成膜
反応ガス組成(容量%):
ガス群B:TiCl:0.01~0.04%、AlCl:0.01~0.05%、
:0~10%、C:0~0.5%、H:残
ガス群C:NH:0.1~0.8%、H:25.0~35.0%、
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa、
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:1~5秒、
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒、
ガス群Bの供給とガス群Cの供給の位相差:0.10~0.20秒
ガス群Cの予熱温度:300~450℃
2)第3工程(結晶成長工程)
処理方法;CVD法を用いた成膜
反応ガス組成(容量%):
ガス群D:TiCl:0.01~0.04%、AlCl:0.01~0.05%、
:0~10%、C:0~0.5%、H:残、
ガス群E:NH:0.1~0.8%、H:25.0~35.0%、
反応雰囲気圧力:4.0~5.0kPa、
反応雰囲気温度:700~850℃
供給周期:1~5秒、
1周期当たりのガス供給時間:0.15~0.25秒、
ガス群Dの供給とガス群Eの供給の位相差:0.10~0.20秒
ガス群Eの予熱温度:50~250℃
なお、第2工程および第3工程のそれぞれの反応ガス組成(容量%)における、各ガス成分の容量%は、第2工程においては、ガス群Bとガス群Cとの合計を100容量%として算出される各成分の容量%を示し、第3工程においては、ガス群Dとガス群Eとの合計を100容量%として算出される各成分の容量%を示す。
本発明に係る表面被覆切削工具は、工具基体のすくい面および逃げ面のそれぞれに所定範囲の残留応力を付与することにより、切削加工中における硬質被覆層の耐摩耗性を維持し、耐剥離効果を高めるとともに、クラックの進展を抑制し、耐欠損性、耐チッピング性を発揮させ、工具寿命の向上を図るものである。
特に、旋削加工(ターニング)においては、すくい面から逃げ面への亀裂の進展により欠損が発生するため、すくい面における残留応力を-200MPa以下、すなわち、高圧縮残留応力下に置くことにより、顕著な亀裂の進展抑制効果が発揮される。
他方、すくい面と同様に逃げ面における圧縮残留応力が高まり、すくい面の残留応力値と逃げ面の残留応力値の差の絶対値が250MPa以下になると、母材の塑性変形時に皮膜剥離が発生しやすくなるため、すくい面における残留応力値に対する逃げ面における残留応力値の差の絶対値は、250MPaより大きい値とすることが必要である。
本発明に係る被覆工具の工具基体と、硬質被覆層を構成する下部層(Ti(C)N層)、上部層(CVD-AlTiN(C)層)、および、最上層との関係を示す断面模式図である。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1~3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370~1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格DNMG150408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A~Cをそれぞれ作製した。
ついで、これらの工具基体A~Cのそれぞれを化学蒸着装置に装入し、以下の手順にて本発明被覆工具1~8をそれぞれ製造した。
なお、前記したとおり、本発明においては、工具基体A~Cに対し、硬質被覆層の成膜前の前処理、および、または、硬質被覆層の成膜後の後処理として、すくい面にブラスト処理が行われることにより、基体のすくい面および逃げ面に残留応力が付与されることを前提とする(表2を参照)。
次いで、第1工程として、化学蒸着装置内に工具基体A~Cのいずれかを配置し、表3に示される形成条件(形成記号)A~Hに記載された、温度条件および圧力条件の下、表3に示される成分組成を有するガス群A(TiCl、N、CH、CHCNおよび残部H)により、一定時間成膜を行なう。
本発明被覆工具1~5については、前記第1工程に引き続き、第2工程(上部層初期核形成工程)として、表4に示される形成条件(形成記号)A~Eに記載された、ガス群Bとガス群Cのガス組成、供給条件、および、ガス反応条件(圧力、温度、工程時間(秒))に基づき、一定時間成膜を行ない、第3工程(上部層結晶成長工程)として、表5に示される形成条件(形成記号)A~Eに記載された、ガス群Dとガス群Eのガス組成、供給条件、および、ガス反応条件(圧力、温度、工程時間(秒))に基づき、一定時間成膜を行ない、表7に示す本発明被覆工具1~5を得た。
また、本発明被覆工具6~8については、前記第1工程(下部層成膜工程)に引き続き、第2工程(上部層初期核形成工程)にて、前記表4に示される形成条件(形成記号)F~Hにて成膜後、第3工程(上部層結晶成長工程)にて、前記表5に示される形成条件(形成記号)F~Hにて成膜した後、さらに、最上層として、それぞれ、κ-Al層、l-TiCN層またはα-Al層を表6に示される形成条件にて成膜することにより、表7に示す本発明被覆工具6~8として得た。
また、比較の目的で、比較被覆工具1~5については、表3、表4および表5に示される形成条件(形成記号)a~eにて成膜を行ない、表8に示す比較被覆工具1~5を得た。
また、比較被覆工具6~8については、表3、表4および表5に示される形成条件(形成記号)f~hにて成膜を行なった後、最上層として、表6に示される形成条件(形成記号)にて、それぞれ、κ-Al層、l-TiCN層またはα-Al層を成膜することにより、表8に示す比較被覆工具6~8を得た。
表7には、本発明被覆工具1~8の工具基体における逃げ面およびすくい面の残留応力値、硬質被覆層の目標平均全層厚、下部層の目標平均層厚および形成膜の種類、上部層の目標平均層厚、平均Al含有割合(Xavg)、平均C含有割合(Yavg)、結晶構造および回折線強度比(I(111)/I(200))、および、最上層の目標平均層厚および形成膜を示す。
同様に、表8には、比較被覆工具1~8について、工具基体における逃げ面およびすくい面の残留応力、硬質被覆層の目標平均全層厚、下部層の目標平均層厚および形成膜の種類、上部層の目標平均層厚、平均Al含有割合(Xavg)、平均C含有割合(Yavg)、結晶構造および回折線強度比(I(111)/I(200))、最上層の目標平均層厚を同様に示す。
なお、ここで、本発明被覆工具1~8、および、比較被覆工具1~8の硬質被覆層の膜厚の測定は、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて行った。
すなわち、工具基体に垂直な方向の断面が露出するように研磨を施し、5000~20000倍の視野にて各層を観察し、観察視野内の5点の層厚を測った平均値を平均層厚として、本発明被覆工具1~8については、表7に、比較被覆工具1~8については、表8に示した。
また、上部層のAlTiNまたはAlTiCNのAlの平均含有割合Xavg(原子比)およびC成分の平均含有割合Yavg(原子比)については、電子線マイクロアナライザ(EPMA,Electron-Probe-Micro-Analyser)を用い、表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均から求めた。
本発明被覆工具1~8については表7に、比較被覆工具1~8については表8に、XavgおよびYavgの値を示す。
また、本発明被覆工具および比較被覆工具の硬質被覆層の上部層のAlTiN層、AlTiCN層の結晶構造については、X線回折装置を用い、Cu-Kα線を線源として測定範囲(2θ):20~120度、スキャンステップ:0.013度、1ステップ辺り測定時間:0.48sec/stepの条件にて、例えば、工具基体表面に対して平行な硬質被覆層表面において、X線回折を行い、JCPDS00-038-1420立方晶TiNとJCPDS00-046-1200立方晶AlN、各々に示される同一結晶面の回折角度の間(例えば、36.66~38.53°、43.59~44.77°、61.81~65.18°)に現れるX線回折ピークにより、確認することができる。
また、測定された、(200)面、および、(111)面におけるX線回折ピーク強度の測定値I(hkl)より、(200)面の回折ピーク強度I(200)に対する(111)面の回折ピーク強度I(111)の比であるI(111)/I(200)を得ることができる。
また、工具基体の残留応力は、sinΨ法を用い、Cuκαを用いたX線回折装置を用いて測定する。測定には、WC(211)面の回折ピークを用い、ヤング率として534GPa、ポアソン比として0.22を使用して計算を実施する。
Figure 2022134543000002

Figure 2022134543000003

Figure 2022134543000004

Figure 2022134543000005

Figure 2022134543000006

Figure 2022134543000007

Figure 2022134543000008
Figure 2022134543000009

つぎに、前記各種の被覆工具を工具鋼製カッターの先端部に固定治具にてクランプした状態にて、本発明被覆工具1~8、比較例被覆工具1~8について、以下に示す、インコネルの湿式断続切削試験を実施し、工具欠損にいたるまでの最大加工時間に関する評価を実施し、結果を表9に示した。
≪切削条件≫
切削試験 :湿式旋削外径断続、
被削材 :インコネル718 スリット材
外径200mm、長さ400mm(溝入り丸棒材)
(幅4mmのスリットが50mmピッチにて等間隔に存在)
回転速度 :80min-1
切削速度 :50m/sec.、
切り込み :0.5mm、
一刃送り量:0.6mm/rev、
切削時間 :刃先が欠損に至るまで加工
Figure 2022134543000010


表9に示される切削加工試験結果からも明らかなように、本発明被覆工具は、工具基体最表面において、300MPa以上、2000MPa以下の残留応力を有し、前記工具基体表面に直接接する硬質被覆層について、下部層としてTiの窒化物層もしくは炭窒化物層を備え、上部層としてNaCl型面心立方晶構造を有するAlとTiの複合窒化物層もしくは複合炭窒化物層を備えることにより、微細結晶粒の脱落に起因するチッピング等の発生を回避し、長期に亘ってすぐれた耐欠損性および耐摩耗性を発揮するものである。
前述のとおり、本発明の表面被覆切削工具は、通常の鋼種の連続切削加工や断続切削加工に加え、特に、ステンレス鋼や溶断表面が残存する鋼材、あるいは、ニッケル合金等の難削材の断続切削加工に用いた場合においても、すぐれた耐摩耗性に加え、耐欠損性、耐チッピング性を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらには、低コスト化を十分満足するものである。

Claims (3)

  1. 炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体の表面に、硬質被覆層を有してなる表面被覆切削工具において、
    (a)前記硬質被覆層は、前記工具基体最表面に直接接してなる下部層と、該下部層に直接接してなる上部層との少なくとも二層を有し、前記硬質被覆層の全平均層厚は、0.6~21.0μmであり、
    (b)前記下部層は、Tiの窒化物もしくは炭窒化物からなり、その平均層厚は、0.05~2.0μmであり、
    (c)前記上部層は、AlとTiとの複合窒化物層または複合炭窒化物を含む層であり、その平均層厚は、0.5~20.0μmであり、
    組成式:(AlTi1-X)(C1-Y)で表した場合、前記複合窒化物層または前記複合炭窒化物層のTiとAlとの合量に対してAlが占める平均含有割合Xavgおよび前記複合窒化物または前記複合炭窒化物層のCとNの合量に対してCが占める平均含有割合Yavg(但し、Xavg、Yavg はいずれも原子比)が、それぞれ、0.70≦Xavg≦0.90、0≦Yavg<0.05を満足し、NaCl型の面心立方晶構造を有する複合窒化物層または複合炭窒化物層からなり、
    (d)表面被覆工具の切れ刃逃げ面の炭化タングステン基超硬合金の残留応力をS1、すくい面の残留応力S2としたとき、
    α)S1>S2
    β)S2≦-200MPa
    γ)S1とS2の差の絶対値が250より大きいこと
    をそれぞれ満たすことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記上部層において、X線回折を行った際に、立方晶(111)面の回折線強度値に対する立方晶(200)面における回折線強度値、I(111)/I(200)が、
    1.0≦I(111)/I(200)の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載された表面被覆切削工具。
  3. (3)表面被覆工具の切れ刃逃げ面の炭化タングステン基超硬合金の残留応力S1、すくい面の残留応力S2としたとき、
    α)S1>S2
    β)S2≦-850MPa
    γ)S1とS2の差の絶対値が500より大きいこと
    をそれぞれ満たす請求項1または請求項2に記載された表面被覆切削工具。
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