JP2022126959A - リグニンを含有する酵素組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、セルロース含有バイオマスに対する吸着性が低減した酵素組成物を提供する。【解決手段】p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有する未使用のセルラーゼ、リグニンおよび水を含有する酵素組成物であって、前記セルラーゼおよび前記リグニンは水に溶解し、ブラッドフォード法で測定される水溶液中のタンパク質の質量に対する前記リグニンの質量比率が1以上である、酵素組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース含有バイオマスに対する吸着性が低減した酵素組成物に関する。
近年、エネルギー消費量および環境負荷が少なく、かつ糖収量が多い方法として、セルラーゼを使用したセルロース含有バイオマスの糖化方法が広く検討されてきた。しかしながら、バイオマス中に含まれる結晶セルロースは、難分解性の不溶性基質であり、またバイオマス中に含まれるリグニンは、セルラーゼを非特異的に吸着させる性質を有している。そのため、セルロース含有バイオマスの分解には多くのセルラーゼが必要であり、糖製造工程におけるセルラーゼ費用が高くなるという課題があった。
上記の技術課題を解決する手法として、セルロース含有バイオマスの糖化反応後に、上清中に遊離しているセルラーゼを回収して再利用する方法が検討されている。例えば、特許文献1では糖化残渣に吸着した酵素を上清中に遊離させるために、無機塩類を添加する方法が開示されている。また、非特許文献1においては、セルロース含有バイオマスをセルラーゼで糖化反応させる際に、広葉樹木のエタノール熱抽出物に由来する非水溶性リグニンを添加することで、セルロース含有バイオマスに対するセルラーゼの吸着性をわずかに低減させる方法が開示されている。
特開2015-159755号公報
セルラーゼの活性を低下させることなく、セルロース含有バイオマスに対する吸着性が低減した酵素組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、セルロース含有バイオマスに対するセルラーゼの吸着性をさらに低減させることができれば、セルロース含有バイオマスの糖化反応後により高い効率でセルラーゼを回収することが可能になると考え、鋭意検討を行った。その結果、p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有する未使用のセルラーゼとリグニンとが溶解した水溶液の酵素組成物を調製すると、セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性は酵素組成物の調製後も維持されることがわかった。さらに、調製した酵素組成物で糖化反応を行った後にも、糖化反応後の糖化物回収したセルラーゼには、p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性が高く維持されていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)~(4)で構成される。
(1)p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有する未使用のセルラーゼ、リグニンおよび水を含有する酵素組成物であって、前記セルラーゼおよび前記リグニンは水に溶解し、ブラッドフォード法で測定される水溶液中のタンパク質の質量に対する前記リグニンの質量比率が1以上である、酵素組成物。
(2)前記水溶液のpHが6以下である、(1)に記載の酵素組成物。
(3)(1)または(2)に記載の酵素組成物を用いてセルロース含有バイオマスを糖化する工程を含む、糖の製造方法。
(4)前記糖化物を固液分離してp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有するセルラーゼを含む液成分を得る工程を含む、(3)に記載の糖の製造方法。
p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有する未使用のセルラーゼ、リグニンおよび水を含有する酵素組成物を調製すると、セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性は酵素組成物の調製後も維持される。さらに、調製した酵素組成物で糖化反応を行った後にも、糖化反応後の糖化物回収したセルラーゼには、p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性が高く維持される。
本発明は、p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有する未使用のセルラーゼ、リグニンおよび水を含有する酵素組成物であって、前記セルラーゼおよび前記リグニンは水に溶解し、ブラッドフォード法で測定される水溶液中のタンパク質の質量に対する前記リグニンの質量比率が1以上である、酵素組成物、および当該組成物を用いてセルロース含有バイオマスを糖化する工程を含む糖の製造方法である。
本発明で用いる「未使用のセルラーゼ」とは、糖化反応に用いられていない状態のセルラーゼを指し、具体的には、セルラーゼの基質と接触していない状態のセルラーゼである。セルラーゼの基質としては、セルラーゼの糖化対象となるグリコシド結合を有するセルロースやヘミセルロースなどの糖類の他、これらを含有するバイオマスも含まれる。したがって、糖化反応後に回収されたセルラーゼは、本発明の「未使用のセルラーゼ」に該当しない。
一般的にセルラーゼとは、セルロースを加水分解する酵素群の総称であるが、本発明で用いるセルラーゼは、p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有することを特徴とする。p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解するセルラーゼの具体例としては、エンドグルカナーゼ活性および/またはセロビオハイドロラーゼ活性を有するセルラーゼが挙げられる。また、本発明で用いるセルラーゼは、エンドグルカナーゼ活性および/またはセロビオハイドロラーゼ活性に加えて、エキソグルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β-キシロシダーゼ、キシログルカナーゼなど、一般的なセルラーゼに含まれる酵素活性が含まれるセルラーゼであってもよい。
エンドグルカナーゼとは、セルロース分子鎖の中央部分から加水分解することを特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.4としてエンドグルカナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
セロビオハイドロラーゼとは、セルロースの還元末端または非還元末端から持続的加水分解を開始し、セロビオースを放出する酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.91としてセロビオハイドロラーゼに帰属される酵素群が記載されている。
エキソグルカナーゼとは、セルロース分子鎖の末端部分から加水分解することを特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.74としてエキソグルカナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
β-グルコシダーゼとは、セロオリゴ糖あるいはセロビオースに作用することを特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.21としてβ-グルコシダーゼに帰属される酵素群が記載されている。
キシラナーゼとは、ヘミセルロースあるいは特にキシランに作用することを特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.8としてキシラナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
β-キシロシダーゼとは、キシロオリゴ糖に作用することを特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.37としてβ-キシロシダーゼに帰属される酵素群が記載されている。
キシログルカナーゼとは、ヘミセルロースあるいは特にキシログルカンに作用することを特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.4またはEC3.2.1.151としてキシログルカナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドの分解活性の測定には、本発明の酵素組成物を適当な濃度に希釈した酵素希釈液10μLを1mMp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシド(シグマアルドリッチジャパン社製)を含有する50mM酢酸バッファー90μLに添加し30℃で60分間反応させる。その後、2M炭酸ナトリウム10μLを加えてよく混合して反応を停止し、405nmの吸光度の増加を測定する。活性は、1分間あたり1μmolのp-ニトロフェノールを遊離する酵素量を1Uと定義する。上記酵素活性の測定方法で、酵素組成物調製後のp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドの分解活性として0.001U/mL以上の活性を有することが好ましい。より好ましくは、0.010U/mL以上、更に好ましくは、0.025U/mL以上である。
また、本発明の酵素組成物を調製する前の未使用のセルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドの分解活性は、酵素組成物を調製した後も高く維持される。具体的には、調製前の95%以上の酵素活性が調製後も維持されている。調製の前後の酵素活性の確認も上記の方法で測定すればよい。
上記の各種酵素は、ゲル濾過、イオン交換、二次元電気泳動などの公知の手法により分離し、分離した成分のアミノ酸配列(N末端分析、C末端分析、質量分析)を行い、データベースとの比較により同定することができる。
本発明で使用されるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有するセルラーゼは特に限定されないが、例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、セルロモナス属(Cellulomonas)、クロストリジウム属(Chlostridium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、フミコラ属(Humicola)、アクレモニウム属(Acremonium)、イルペックス属(Irpex)、ムコール属(Mucor)、タラロマイセス属(Talaromyces)、などの糸状菌由来セルラーゼを用いることができる。また、これら糸状菌に変異剤あるいは紫外線照射などで変異処理が施された変異株由来のセルラーゼであってもよい。
糸状菌は、培養液中にセルラーゼを生産するため、その培養液をセルラーゼとしてそのまま使用してもよく、公知の方法で精製し、製剤化したセルラーゼを使用してもよい。
本発明において、水溶液中のタンパク質の質量は、ブラッドフォード法によって測定する。
本発明の酵素組成物は、前記未使用のセルラーゼとリグニンとが溶解した水溶液であって、水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が1以上、好ましくは1~25、より好ましくは6.3~12.5であることを特徴とする。
前記水溶液中のリグニンの質量濃度は以下の通り測定を行う。水で適当な濃度に希釈したリグニン溶液の210nmにおける吸光度を測定する。クラフトリグニン(シグマアルドリッチジャパン製)を標準物質とし、検量線に基づいて溶液中に含まれるリグニンの質量濃度を算出する。
前記水溶液のpHは特に制限はないが、好ましくはpH6.0以下、より好ましくはpH3.0~6.0、特に好ましくはpH4.0~6.0である。
前記リグニンは前記水溶液に溶解しうるリグニンであれば特に制限はなく、試薬のリグニンを用いてもよいし、バイオマスから調製したリグニンを用いてもよい。
試薬のリグニンとしては、シグマアルドリッチジャパン社製のクラフトリグニンが挙げられる。
バイオマスからリグニンを調製する場合には、以下の方法でリグニンを調製することができる。最初に、バイオマスをアルカリ性条件下で熱水処理する。例えば、バガスを0.5%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液に浸し、90℃で2時間加熱処理後、放冷する。続いて、得られた熱水処理液を固液分離し、液体画分(以下、アルカリ処理液と記載する場合がある)と固形物(以下、アルカリ処理バガスと記載する場合がある)に分離する。次に得られたアルカリ処理液に1M希硫酸を加え、pHを5.0以下に調整し、遠心分離して上清を回収、回収した上清をリグニンとして本発明の酵素組成物に用いることができる。その他、上記アルカリ処理液に1M希硫酸を加え、pHを5.0に調整し、遠心分離して上清を回収後、回収した上清に1M希硫酸を加えpHを5.0未満に調整した際に沈殿するリグニンは、本発明の酵素組成物に使用することができる。例えば、上記のアルカリ処理液のpHを5.0に調整し、遠心分離して上清を回収した後、さらに1M希硫酸を加え、pHを4.0に調整した際に沈殿したリグニンは本発明の酵素組成物に用いることができる。
本発明の酵素組成物に用いるリグニンの原料は特に限定されないが、例えば、バガス、稲わら、モミなどの草本系由来、スギ、ヒノキ、マツなどの針葉樹由来、ブナ、ナラなどの広葉樹由来のリグニンを用いることができる。
前記リグニンの分子量は特に限定されない。なお、リグニンの一般的な分子量は、数千~数百万程度である。
本発明の酵素組成物には、未使用のセルラーゼ、リグニンおよび水以外に、プロテアーゼ阻害剤、分散剤、溶解促進剤、安定化剤などが添加されていてもよい。ただし、セルラーゼに吸着する物質や、上記のセルラーゼの基質となる物質を含まないものとする。セルラーゼに吸着する物質の具体例としては、セルロースやヘミセルロースなどの多糖類、水に溶解しない固形のリグニンの他、これらを含有するバイオマスなどが挙げられる。
本発明では、本発明の酵素組成物を用いてセルロース含有バイオマスを糖化して糖を製造する。本発明の酵素組成物は、糖化反応を行う際に用時調製してもよいし、あらかじめ調製し糖化反応に用いてもよい。あらかじめ調製する場合には、調製した酵素組成物が安定する条件下で保存することが望ましい。酵素組成物を保存する際の温度およびpHは、特に限定されないが、酵素の失活および微生物のコンタミネーションが抑制される、10℃以下およびpH3.0~6.0の範囲が好ましい。
本発明で用いるセルロース含有バイオマスは、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、ビートパルプ、綿実穀、パーム殻房、稲わら、麦わら、竹、笹、などの草本系バイオマス、あるいはシラカバ、ブナなどの樹木、廃建材などの木質系バイオマスを挙げることができる。セルロース含有バイオマスは糖から構成されるセルロースおよびヘミセルロースの他に、芳香族高分子であるリグニンなどを含有しているため、前処理を施すことにより本酵素組成物による糖化効率を向上させることができる。セルロース含有バイオマスの前処理方法としては、酸処理、硫酸処理、希硫酸処理、酢酸処理、アルカリ処理、苛性ソーダ処理、アンモニア処理、水熱処理、亜臨海水処理、微粉砕処理、蒸煮処理などが挙げられる。
本酵素組成物による糖化反応の温度およびpHは特に限定されないが、本酵素組成物に含まれるセルラーゼが高活性を示す40~60℃、および、pH4.0~6.0の範囲であることが好ましい。なお、糖化の過程でpHの変化が起きるため、反応液に緩衝液を添加する、あるいは酸やアルカリを用いて一定pHを保持しながら実施することが好ましい。また、糖化反応の時間は、十分な糖化物が得られ、本酵素組成物の活性が低下しない範囲であれば、特に限定されない。
本発明では、本発明の酵素組成物を用いてセルロース含有バイオマスを糖化して糖を製造した後、セルロース含有バイオマスを糖化した糖化物を固液分離してp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有するセルラーゼを含む液成分を回収すれば、回収した液成分をセルラーゼとして再利用することができる。固液分離の方法としては、固液分離はろ過や遠心分離など任意の方法で行えばよく、フィルタープレス、スクリューデカンタ、連続遠心分離機などを用いることができる。また、固液分離後の液成分を限外濾過膜に通じて濾過することで、透過液として糖を回収し、非透過液としてセルラーゼを回収することができる。
本発明の酵素組成物を用いてセルロース含有バイオマスの糖化を行えば、糖化反応時のセルロース含有バイオマスに対するセルラーゼに対する吸着性を低減させることができる。そのため、糖化反応後の糖化物からセルラーゼを高い収率で回収することが可能となる。さらに、回収したセルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性も、高く保持されている。具体的には、本発明の酵素組成物を用いない場合に比べて、酵素回収率が2%から25%程度向上する。
酵素組成物に含まれる前記セルラーゼの回収率は、上記の方法を用いて本発明の酵素組成物に含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性と、本発明の酵素組成物を用いてセルロース含有バイオマスを糖化した後の回収セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を測定して、それぞれ活性の測定結果を下記式(1)に代入して、酵素回収率を算出する。ただし、回収セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を測定する際には、酵素組成物に回収セルラーゼの容量を水で合わせて測定する。
酵素回収率(%)=糖化反応後の回収セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性(U/mL)/本発明の酵素組成物に含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性(U/mL)×100 ・・・式(1)。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
<参考例1>トリコデルマ属由来セルラーゼの調製
以下の試験で使用するセルラーゼは、市販されている酵素製剤以外は以下の方法により調製した。
(前培養)
表1の組成に従って調製した前培養培地100mLを500mL容バッフル付き三角フラスコに入れ121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。この前培養培地にTrichoderma reesei PC-3-7株(ATCC#66589)の胞子を1.0×105/mLになるよう植菌し、28℃、120rpmにて72時間振盪培養を行った。
Figure 2022126959000001
(本培養)
表2の組成に従って調製した本培養培地2.5Lを5L容ジャーファーメンターDPC-2A(ABLE製)に入れ、121℃で15分間オートクレーブ滅菌した。放冷後、前記の方法にて得た前培養液を250mL接種した。その後、28℃、700rpm、通気量1vvmにて96時間深部培養を行った。その後、得られた培養液の固液分離を行い、その上清を孔径0.22μmのフィルターで濾過して精製した。得られたろ液は、トリコデルマ属由来セルラーゼとして以下の試験に使用した。
Figure 2022126959000002
<参考例2>セルロース含有バイオマスとして用いるバガスの前処理
糖化反応の基質であるセルロース含有バイオマスとしてアルカリ性もしくは酸性条件下において熱水処理を行ったバガスを使用した。バガスを0.5%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液に浸し、90℃で2時間加熱処理した。放冷後、固液分離を行い、アルカリ処理液とアルカリ処理バガスに分離した。ここで得られたアルカリ処理液およびアルカリ処理バガスは、以下の試験に使用した。また、バガスを1.8%(w/v)希硫酸に浸し、121℃で30分間加熱処理した。放冷後、固液分離により固形物を回収した。ここで得られた固形物を希硫酸処理バガスとして、以下の試験に使用した。なお、前述の前処理を行っていないバガスは、平均粒径100μmに粉末化したものは未処理バガスとして以下の試験に使用した。
<参考例3>バガス由来リグニンの調製
参考例2で得たアルカリ処理液に1M希硫酸を加え、pHを5.0に調整した後、遠心分離により沈殿したリグニン(以降、非水溶性のリグニンと表記)と上清を回収した。次いで、得られた上清にさらに希硫酸を加え、pHを4.0に調整した後、沈殿したリグニン(以降、バガスリグニンAと表記)を遠心分離により回収した。最後に、得られた上清にさらに希硫酸を加え、pHを1.0に調整した後、沈殿したリグニン(以降、バガスリグニンBと表記)を遠心分離により回収した。ここで得られたリグニンは、バガス由来リグニンとして以下の実施例に使用した。得られたリグニンは、水で適当な濃度に希釈し、210nmにおける吸光度を測定した。クラフトリグニン(シグマアルドリッチジャパン製)を標準物質とし、検量線に基づいて溶液中に含まれるリグニンの質量濃度を算出した。
<参考例4>セルロース含有バイオマスの糖化反応
糖化反応の緩衝液として100mM酢酸ナトリウム(pH5.2)、バイオマスとして、前記の方法で得たアルカリ処理バガス、希硫酸処理バガス、または未処理バガスをそれぞれ固形分重量で50g/Lとなるよう添加し、セルラーゼを0.4g/Lとなるよう加えた。糖化反応は50℃で24時間行い、糖化物を遠心分離した上清を糖化液として回収した。糖化液は、参考例5では酵素液として使用した。
<参考例5>セルラーゼ活性の測定方法と酵素回収率の算出
酵素活性の測定には、測定対象となる酵素液を適当な濃度に希釈した酵素希釈液10μLを1mMp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシド(シグマアルドリッチジャパン社製)を含有する50mM酢酸バッファー90μLに添加し30℃で60分間反応させる。その後、2M炭酸ナトリウム10μLを加えてよく混合して反応を停止し、405nmの吸光度の増加を測定する。活性は、1分間あたり1μmolのp-ニトロフェノールを遊離する酵素量を1Uと定義する。酵素の回収率は、酵素活性の測定結果を上記式(1)に代入して算出した。
<参考例6>水溶液中のタンパク質の質量濃度の測定
タンパク質の質量濃度は、Quick Start Bradford プロテインアッセイ(Bio-Rad社製)250μLに、適当に希釈した測定対象のタンパク質溶液を5μL加えてよく混合し、室温で15分間静置後の595nmにおける吸光度を測定した。牛血清アルブミン溶液を標準液とし、検量線に基づいて水溶液中のタンパク質の質量濃度を算出した。
<実施例1>水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が1以上の酵素組成物
参考例1に記載の方法で調製したPC-3-7株由来セルラーゼと、クラフトリグニン(シグマアルドリッチジャパン)を水に溶解し、水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が1.3~25.0になるようにそれぞれ調整した。さらに、水溶液のpHを5.0に調整して、本発明の酵素組成物を調製した。また、PC-3-7由来セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性は、酵素組成物を調製する前後のいずれにおいても0.075U/mLで変化がないことを確認した。なお、酵素組成物を調製する前の酵素活性については、調製後の容量に合わせて酵素に水を添加して測定した。調製した酵素組成物を用いて参考例2に記載の方法で調整した未処理バガスをセルロース含有バイオマスとして用い糖化反応を行った。糖化反応は、参考例4に記載の方法で行い、糖化液を回収した。糖化反応前の酵素組成物と糖化液に含まれる酵素活性を参考例5に記載の方法で測定し酵素回収率を算出した。その結果を表3に示す。
<比較例1>水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が1未満の酵素組成物
参考例1に記載の方法で調製したPC-3-7株由来セルラーゼと、クラフトリグニン(シグマアルドリッチジャパン)を水に溶解し、水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が0、0.3、0.6になるようにそれぞれ調整した。さらに、水溶液のpHを5.0に調整して水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が1未満の酵素組成物を調製した。また、PC-3-7由来セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性は、酵素組成物を調製する前後のいずれにおいても0.075U/mLで変化がないことを確認した。なお、酵素組成物を調製する前の酵素活性については、調製後の容量に合わせて酵素に水を添加して測定した。比較例1で調製した酵素組成物を試験に用いた以外は、実施例1の同様の条件及び操作で試験を行い、酵素回収率を算出した。結果を表3に示す。
表3の結果から、水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が1以上の酵素組成物を用いた場合に酵素回収率が向上し、質量比率が1未満の酵素組成物を用いた場合に比べて、酵素回収率が最大で約13%向上することがわかった。
Figure 2022126959000003
<実施例2>クラフトリグニンを含む本発明の酵素組成物と各種セルロース含有バイオマスの糖化反応
参考例1の方法で調製したPC-3-7株由来セルラーゼと、クラフトリグニン(シグマアルドリッチジャパン)を水に溶解し、水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が2.5~12.5になるようにそれぞれ調整した。さらに、水溶液のpHの5.0に調整して本発明の酵素組成物を調製した。また、PC-3-7由来セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性は、酵素組成物を調製する前後のいずれにおいても0.061U/mLで変化がないことを確認した。なお、酵素組成物を調製する前の酵素活性については、調製後の容量に合わせて酵素に水を添加して測定した。調製した酵素組成物を試験に用いて、参考例2に記載の方法で調製した未処理バガス、アルカリ処理バガス、希硫酸処理バガスをセルロース含有バイオマスとして用い糖化反応を行った。その他は、実施例1と同様の条件及び操作で試験を行い、酵素回収率を算出した。結果を表4に示す。
<比較例2>リグニンを含まない酵素組成物を用いた糖化反応
クラフトリグニンの代わりに水を用いた以外は、実施例2に記載の方法で酵素組成物を調製した。セルロース含有バイオマスとして、参考例2に記載の希硫酸処理バガスを用いた。その他は、実施例2と同様の条件及び操作で試験を行い、酵素回収率を算出した。結果を表4、表5に示す。
表4の結果から、本発明の酵素組成物を用いて未処理バガス、アルカリ処理バガス、および希硫酸処理バガスを糖化した場合、リグニンを含まない酵素組成物を用いた場合に比べて、酵素回収率はそれぞれ最大で15%、7%、および10%程度向上した。したがって、本発明の酵素組成物を用いて糖化を行った場合の酵素回収率は、バイオマスの前処理方法に依らず向上することがわかった。
Figure 2022126959000004
<実施例3>各種リグニンを含む本発明の酵素組成物を用いた糖化反応
参考例1の方法で調製したPC-3-7株由来セルラーゼと、リグニンとしてクラフトリグニン(シグマアルドリッチジャパン)、参考例3に記載の方法により調製したバガスリグニンA、またはBを水に溶解し、水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が2.5、6.3、12.5になるようにそれぞれ調整した。さらに水溶液のpHを5.0に調整して、本発明の酵素組成物を調製した。また、PC-3-7由来セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性は、酵素組成物を調製する前後のいずれにおいても0.067U/mLで変化がないことを確認した。なお、酵素組成物を調製する前の酵素活性については、調製後の容量に合わせて酵素に水を添加して測定した。調製した酵素組成物を用いて、参考例2に記載の方法で調製した未処理バガスをセルロース含有バイオマスとして用い糖化反応を行った。その他は、実施例1と同様の条件及び操作で試験を行い、酵素回収率を算出した。結果を表5に示す。
<比較例3>pH5.0で非水溶性のリグニンを含む酵素組成物を用いた糖化反応
参考例1の方法で調製したPC-3-7株由来セルラーゼを水に溶解し、セルラーゼ水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が、2.5、6.3、12.5になるように、参考例3に記載の方法により調製した非水溶性のリグニンをそれぞれ添加して混合物を調製した。さらに混合物のpHを5.0に調整して、酵素組成物を調製した。また、PC-3-7由来セルラーゼに含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性は、酵素組成物を調製する前後のいずれにおいても0.067U/mLで変化がないことを確認した。なお、酵素組成物を調製する前の酵素活性については、調製後の容量に合わせて酵素に水を添加して測定した。比較例3で調製した酵素組成物を用いた以外は、実施例3と同様の条件及び操作で試験を行い、酵素回収率を算出した。結果を表5に示す。
表5の結果から、クラフトリグニン、バガスリグニンA、およびバガスリグニンBを用いて調製した本発明の酵素組成物は、表4に記載のリグニンを含まない比較例2の酵素組成物を用いた場合に比べて、酵素回収率がそれぞれ最大で14%、13%、および26%程度向上した。また、比較例3の非水溶性のリグニンで調製した酵素組成物を用いた場合は、酵素回収率の向上は確認できなかった。
Figure 2022126959000005
<実施例4>各種セルラーゼを含む本発明の酵素組成物を用いた糖化反応
参考例1の方法により調製したPC-3-7株由来セルラーゼ、GODOセルラーゼ(合同酒精株式会社)、セルクラスト1.5l(ノボザイムズジャパン株式会社)、スクラーゼX(三菱ケミカルフーズ株式会社)、またはメイセラーゼ(Meiji Seika ファルマ株式会社)とクラフトリグニン(シグマアルドリッチジャパン)を水に溶解し、水溶液中のタンパク質の質量に対するリグニンの質量比率が、6.3になるようにそれぞれ調整した。さらに水溶液のpHを5.0に調整して、本発明の酵素組成物を調製した。また、PC-3-7株由来セルラーゼ、GODOセルラーゼ(合同酒精株式会社)、セルクラスト1.5l(ノボザイムズジャパン株式会社)、スクラーゼX(三菱ケミカルフーズ株式会社)、およびメイセラーゼ(Meiji Seika ファルマ株式会社)に含まれるp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性は、酵素組成物を調製する前後のいずれにおいても、それぞれ0.058U/mL、0.054U/mL、0.060U/mL、0.039U/mL、および0.038U/mLで変化がないことを確認した。なお、酵素組成物を調製する前の酵素活性については、調製後の容量に合わせて、それぞれの酵素に水を添加して測定した。調製した酵素組成物を用いて、参考例2に記載の方法で調製した未処理バガスをセルロース含有バイオマスとして用い糖化反応を行った。その他は、実施例1と同様の条件及び操作で試験を行い、酵素回収率を算出した。その結果を表6に示す。
<比較例4>リグニンを含まない酵素組成物を用いた糖化反応
実施例4で用いた市販の各種セルラーゼを使用し、リグニンの代わりに水を添加してpHを5.0に調整し、リグニンを含まない酵素組成物を調製した。リグニンを含まない酵素組成物を用いた以外は、実施例4と同様の操作・条件で糖化反応を行い、酵素回収率を算出した。結果を表6に示す。表6の結果から、PC-3-7株由来セルラーゼ、GODOセルラーゼ、セルクラスト1.5l、スクラーゼX、またはメイセラーゼを用いて本発明の酵素組成物を調製し、それらを用いて糖化を行った結果、それらの酵素回収率は、リグニンを含まない酵素組成物を用いた場合に比べて、それぞれ19%、15%、8%、14%、および19%程度向上した。すなわち、本発明の酵素組成物の酵素回収率は、使用するセルラーゼの種類に依らず、向上することがわかった。
Figure 2022126959000006

Claims (4)

  1. p-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有する未使用のセルラーゼ、リグニンおよび水を含有する酵素組成物であって、前記セルラーゼおよび前記リグニンは水に溶解し、ブラッドフォード法で測定される水溶液中のタンパク質の質量に対する前記リグニンの質量比率が1以上である、酵素組成物。
  2. 前記水溶液のpHが6以下である、請求項1に記載の酵素組成物。
  3. 請求項1または2に記載の酵素組成物を用いてセルロース含有バイオマスを糖化する工程を含む、糖の製造方法。
  4. 前記糖化物を固液分離してp-ニトロフェニル-β-ラクトピラノシドを分解する酵素活性を有するセルラーゼを含む液成分を得る工程を含む、請求項3に記載の糖の製造方法。
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