JP2022121823A - ディーゼルエンジンの排ガスを乾式法で同時に分解する方法及び分解装置 - Google Patents

ディーゼルエンジンの排ガスを乾式法で同時に分解する方法及び分解装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるPM、NOx、VOCを乾式法で同時に効率よく、安価で簡易な手法により分解する方法及び分解する装置を提供することを目的とする。【解決手段】ディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスが、酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度に加熱された状態で、酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を通過する際に、正孔の酸化力を利用して分解される。PMが構造体に付着するのを防止するために、多段に配置される構造体のうち、排ガス導入口に近い初段の構造体を集中的に加熱するように制御する。正孔の酸化力を利用してNOxから結合電子を引き抜き、NとOの間の3電子結合を不安定化することにより、NOxは窒素と酸素に分解される。【選択図】図1

Description

本発明はディーゼルエンジンの排ガスを乾式法で同時に分解する方法及び分解装置に関する。
ディーゼルエンジンの排ガスにはPM(Particulate Matter:黒色粒状物質)、NOx、VOC(Volatile Organic Compound:揮発性有機化合物)が含まれている。これらはいずれも人体に有害であるので、外部への排出には厳しい規制がなされている。実用化されている排ガスの浄化方法として代表的なものはPMの除去を目的としたDPF(Diesel Particle Filter:ディーゼル微粒子捕集フィルター)とNOxを還元浄化するSCR(Selective Catalyst Reduction:接触還元)装置を組み合わせた方法である(非特許文献1)。DPFはハニカムの一通路ごとに通路の端面を封じたものと、封じていない構造を持っている。排気ガスがハニカムに入ると、PM粒子は目封じした通路の端に集積される。一方、NOx等の分子状の排ガスは、壁の細孔を通って、隣りの目封じされていない通路に入り、PMを含まない排気ガス成分として排出される。つまり、DPFを通してPMとNOxを分離する。PMの集積により、内部圧力が高くなると、ハニカムの入口に外部から可燃ガスを導入し、ハニカム内で燃焼させ、ハニカム温度を 600℃以上にあげてPMを燃焼処理する。
SCR法は窒素酸化物のNOxをアンモニアで還元し、NとHOに無害化する方法である(非特許文献2)。まず、SCR装置の入口でNOx濃度を測定し、この濃度に見合ったアンモニア量を決定する。NOxの濃度計には通常、日本碍子のZrO検出器が使われている。ZrOは酸化ガスや還元ガスに対し、様々な電気伝導度を示すが、排ガス中にNOxのみが含まれていると仮定し、電気伝導度変化は総てNOx濃度に起因するとして濃度測定を行っている。
アンモニアが適量であれば、NOxの除去率は100%となるが、アンモニア量が少なければNOxが残存し、多ければ有毒なアンモニアが排気ガスと一緒に排出される(アンモニア・スリップ)。この場合、未反応のアンモニアの除去も別途必要となる。 NOxの除去反応はNOx分子とアンモニア分子の直接衝突に基づくガス反応であるため、両者の濃度が低いと衝突頻度が下がり、反応速度が格段に低下する。さらに、“気体/気体”の相互拡散速度は一般的に低い(i.e.混ざりにくい)ことが知られ、アンモニアを導入する位置や導入角度に特段の工夫が必要である。また、還元反応に用いるアンモニア水(35%)は燃料の3-7%も必要とされ、アンモニア(尿素と水を反応させてアンモニアとすることもある)を常備する必要もある。また、アンモニアは一般に300-350℃程度の温度領域では高い脱硝率が得られるが、350℃を越えると、アンモニア自身が酸化され除去能力が減少する。一方、200℃を下回る温度では、還元反応が不十分となる。さらに、反応促進のためにチタン、バナジウム、タングステン等の触媒を格子状ハニカムにして用いているが、ハニカム孔のピッチを細かくすると同一体積で高い脱硝率が得られるが、煤やダストによる目詰まりの問題点も抱えている。
このように現行のディーゼルエンジンの排ガス浄化装置は、緻密でかつ複雑な制御を必要とする高価な装置である。このような状況下にあって、100%乾式法でPM、NOx、VOCを同時に、かつ高い分解率で除去し、アンモニア等の常備物質も必要としないメンテナンス・フリーのシステムで、しかも簡易で安価な装置の到来が待たれていた。
本発明者の一人はポリマー、ガス体等の有機物からなる被処理物を分解する方法として、半導体を真性電気伝導領域となる温度に加熱し、この温度で顕著に起こるバンド間遷移により、電子・正孔キャリアーを大量に発生させ、被処理物を加熱処理により発現した強力な酸化力を持つ正孔に接触させ、酸素の存在下において被処理物を完全分解する「半導体の熱活性」(Thermal Activation of Semi-Conductors:以下TASCと略称)による処理方法について提案した(特許文献1、非特許文献3)。この現象は、半導体を350-500℃に加熱すると強い酸化作用(i.e.結合電子を引き抜く力が強い)を発現する効果で、ポリマーから結合電子を引き抜くと、不安定なラジカルがポリマー内に生成し、これがポリマー内を伝播してさらに増殖し、ポリマー全体を不安定化する。不安定化したポリマーは安定性を維持できずに、自滅するような形で裁断化が誘起され、プロパン等の小分子に裁断化される。続いて、裁断化された小分子は空気中の酸素と反応して、炭酸ガスと水に完全分解される。つまり、あらゆるポリマー(熱可塑性ならびに熱硬化性ポリマー)はTASC触媒により、酸素の存在下で、一瞬にして炭酸ガスと水に分解される。以上のように、TASC分解過程は、(1)酸化力によるラジカルの生成する過程、(2)ラジカルの伝播により、巨大分子が不安定化され小分子に分解される過程、(3)小分子化された分子が空気中の酸素と完全燃焼する過程の3つの素過程から構成されている。
TASC法で使用できる半導体は高温、酸素雰囲気で安定な半導体であれば良い。従って、酸化物半導体が好んで用いられる。酸化物半導体の例として、BeO、CaO、CuO、CuO、SrO、BaO、MgO、NiO、CeO、MnO、GeO、PbO、TiO、VO、ZnO、FeO、PdO、AgO、TiO、MoO、PbO、IrO、RuO、Ti、ZrO、Y、Cr、ZrO、WO、MoO、WO、SnO、Co、Sb、Mn、Ta、V、Nb、Mn、Fe、YS、MgFe、NiFe、ZnFe、ZnCo、MgCr、FeCrO、CoCrO、CoCrO、ZnCr、CoAl、NiAl等がある。この中で、酸化クロム(Cr)は高温安定性(融点:約2200℃)に優れ、さらにアルコール飲料のガラス瓶等の染色にも使われる安全な材料である。また、酸化鉄(α-Fe:ヘマタイト)は、安定性はCrには及ばないが、安全で廉価な材料であるので実用性が高い。
また、繊維強化プラスチックに同じTASC法を用いて、プラスチックを完全分解し、カーボン・ファイバーやグラス・ファイバー等の強化繊維をほぼ無傷で完全回収する方法を提案した(特許文献2、非特許文献4)。この方法は特にコストの高いカーボン・ファイバー等の繊維を切断するなどのダメージを与えることなく強化繊維を回収して再使用することができるので、非常に有用であり、強化繊維に限らず、無機物とポリマーを混合した複合材料から無機物だけを回収できる普遍性のある方法である。
さらに、加熱処理室にVOC(Volatile Organic Compounds、揮発性有機化合物)浄化装置を連結し、太陽光パネルや合わせガラスなどのプラスチックまたはプラスチック複合材料をTASC法により分解し、無害のガスに浄化する処理装置についても提案した(特許文献3、4)。
TASC法で用いる酸化物半導体をTASC触媒と呼ぶが、この触媒は「何回でも使うことが出来る」と言う意味で「触媒」に分類される。しかし、通常の化学触媒とは全く異なる機能を有する。化学触媒は、触媒と反応物質が活性錯合体を形成し、これにより活性化エネルギーが低下した反応パスを通して反応が進行する。これに対し、TASC触媒は、上述のメカニズムにより、ポリマー等の被分解物から結合電子を奪い、被分解物を“不安定化/小分子化”して、酸素下で完全燃焼させるものである。
このように、TASC効果を利用した有機物の気体(VOC、排煙、悪臭など)あるいはミスト状のタール、PM等の完全分解を実現してきた。具体的には、酸化物半導体を担持したブロック群を加熱し、この中を気体あるいは気体類似物を通過させる方法をとった。一方、被分解物が、ポリマー複合化合物のような固体の場合には、マトリックス・ポリマーのみを分解し、中から有価物を回収することに利用してきた。この場合には被分解物が触媒担持体と接触するような形態をとった。その例として、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)から炭素繊維、太陽電池パネルから、ガラス、シリコン・ウェーファー、電極、さらにボンド磁石からレア・アース粉体、合わせガラスからガラスの回収に及んでいる。
ディーゼルエンジンからのPM、NOx、VOCを含む排ガスのTASC法による乾式法で同時に分解することを試みた。
TASC法によるPMおよびVOC単独の分解については、上述に述べたように、酸素下で完全分解することが示されている。しかし、今回の3種類の物質を同時分解する際には、PM除去に関する留意点とNOxがTASC法で分解できる技術的な記載が必要である。
まずPMであるが、PM粒子が黒色であることから、炭素粒子と間違われることがある。しかし、PMは炭素粒子ではなく、タールと類似した有機化合物の不完全燃焼物の粒子である。タールはPMに比べて、分子量の小さな炭化水素化合物の集合体であり、室温では高い粘性物質となる。これに対し、タールよりも分子量が大きな集合体であれば、室温では固体となる。固体粒子の大きさにより、直径が2.5ミクロンであればPM2.5、10ミクロンであればPM10と表現される。
PMは通常、VOC等の分子群と一緒に浮遊しているので、これらを触媒担持ブロックの中を通過させて、酸化分解する。しかし、触媒担持ブロック群の初段のブロック温度が低いとPMはブロック上に凝縮し、ブロックの目詰りを起こす原因となる。初段ブロックの温度がPMの付着温度よりも高ければ、PMは触媒担持ハニカム群のバルク(すなわち、初段ブロック以降のブロック群 )に入り、バルクで二酸化炭素と水に完全分解される。これに対しで、初段ブロック温度が凝縮温度よりも低ければ、初段ブロック上に付着し、この量が多ければブロックは目詰まりを起こす。目詰りを避けて安定浄化を進行させるためには、初段ブロックを凝縮温度以上に加熱することが不可欠となる。
次にNOx分解の技術的な背景について説明する。TASC分解は熱活性化された半導体で生じる正孔の酸化力を利用する分解法である。まず、酸化の一般的な意味を説明し、その後で、酸化反応の「電子の引き抜き反応」を利用してNOxを分解できることを述べる。
化学変化を取り扱う際に、酸化/還元と言う言葉が用いられる。酸化は文字通り、酸素を与え、例えば、銅と化合する反応(2Cu+O=2CuO)等を意味し、逆に還元とは、例えば、水素で酸素を奪い取る反応(CuO+H=Cu+HO)である。ここで、水素は還元剤である。典型的な例として、本題のNOx処理に見られるように、NOxをアンモニアで還元して、NとHOを生成反応する方法は、脱硝法として広く用いられている。このような、酸化/還元の意味では、NOxを“酸化”して無害化する、あるいは無害化できるという概念は出てこない。
一方、酸化/還元反応を電子的な見方をすると、酸化とは電子を引き抜くことであり、還元とは逆に電子を与えることである。本発明では、我々が見出した「半導体の熱活性」現象に基づく強力な酸化力(i.e.電子を引き抜く力が強い)を使い、NOx分子から結合電子を引き抜き、当該分子を不安定化し、無害の窒素と酸素に分解することが可能であろうと考えるに至った。つまり、通常の還元物資を作用させるのではなく、全く逆転の発想として酸化力(電子の引き抜き作用)を利用することを思いついた。
そこで問題になるのが、NOx分子に、電子が引き抜かれやすい属性があるかどうかであり、まず、NOやNOの電子状態を精査した。まず、NOの電子構造を図6で考えて見る。Nと(Nと原子番号が隣り合わせのOとからなる)NOの電子構造は比較的類似しているが、大きな違いは、Nは、各々の結合軌道が2つの電子で占有され、完全な閉殻構造をとった安定分子である(総電子数:14個)。これに対し、NOは、電子が7個の窒素と電子が8個の酸素から構成される奇数分子(odd molecule;総電子数:15個)であり、不対電子(unpaired electron)を1つ持つラジカル分子である。言い換えれば、NOは閉殻構造をとらないフリー・ラジカルであり、その“ラジカル”の名が示すように原則的には不安定である。それにも拘わらず、NOは安定な分子である。ここで重要なことは、NOの安定化に3電子結合(非特許文献5)と言う特殊な結合様式が関与していることである。図6において3電子結合は3つの“点”(・・・)で示されている。つまり、NとOの間には、N=O(65%)とN=O(35%)の共鳴構造の寄与があり、その結果、NO間には3電子結合と呼ばれる単結合の半分程度の結合力が働いている。つまり、NO間には、二重結合に加えて3電子結合が作用している。これがNOの安定性を確保している機構である。しかし、その安定性はNには及ばない。これは、NとNOの結合エネルギー(それぞれ、945kJ/mole, 630kJ/mole)にも反映されている。電子を引き抜くエネルギーは、通常、イオン化ポテンシャルが目安となる。Nの15.58eVに対し、NOは9.2eVであるので、NOから電子を引き抜くのはNに比べると格段に容易であると考えられる。これが本発明の発想である。さらに、一般にベンゼン等の芳香族VOCは分解されにくいとされているが、TASC技術では問題なく分解されている。ベンゼンのイオン化ポテンシャルは9.52eV程度であるから、NOの9.2eVよりもやや大きい。従って、この点からもNO分子のTASC分解が可能であることが示唆される。
NOの場合にも同様なことが期待される。NOも奇数分子(総電子数:23個)であるから、ラジカルであり、この場合にも3電子結合で安定化が確保されている。しかし、NOの安定性は、NOには及ばない。NOの濃度が低い場合(例えば100ppm程度)に、分子同士の衝突頻度が低く、二量体を形成する確率は小さい。その為、NOは気体中でラジカル分子の単量体で存在する。
以上より、NO、NOは共に不安定なラジカル分子であり、結合電子を奪われやすい構造と言える。さらに、これが、結合電子の引抜き(酸化)でNOx分解が可能ではないかと考えた動機である。
NO分子のどの部位が最も酸化され易いかについて結合エネルギーの立場から考えてみる。結合エネルギーは、単結合(σ結合1本:349kJ/mole)、二重結合(σ結合1本+π結合1本:617kJ/mole)、三重結合(σ結合1本+π結合2本:815kJ/mole)であり、3電子結合は単結合の半分程度の結合エネルギーであるので、NO分子の結合の中では一番弱い部位である。従って、TASCによる電子引き抜き反応により、3電子結合の電子が奪われると考えよい。ラジカルであるNO分子の安定性を確保しているのは3電子結合であるので、3電子結合が崩れれば、NO分子は瞬時にして安定性を失い、窒素と酸素に分解すると考えられる。
一般的に、ラジカルはその名称が示すように、極めて不安定で、実際に室温状態で安定なラジカル分子の例は極めて少なくい。その例外として、ESR(電子スピン共鳴)の磁場較正用に使われるDPPH(ラジカル分子:α,α’-diphenyl-β-picrylhydrazyl)が知られている。
特許第4517146号 特許第5904487号 特開2016-93804号公報 特開2016-172246号公報 特許第6409222号
平田公一、岸 武行、仁木洋一:海上技術安全研究所報告、第12巻、第4号、43-50(2013) 石原義己:燃料協会誌、第51巻 第537号,3-10(1972) T. Shinbara, T. Makino, K. Matsumoto, and J. Mizuguchi: Complete decomposition of polymers by means of thermally generated holes at high temperatures in titanium dioxide and its decomposition mechanism, J. Appl. Phys. 98, 044909 1-5 (2005) 水口 仁:半導体の熱活性によるFRPの完全分解とリサイクル技術、加工技術 47巻, 37-47 (2012) L. Pauling: The Chemical Bond (Cornell University Press, 1967)第10章 186-192頁
本発明は、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるPM、NOx、VOCを、100%乾式法で、同時に、かつ高い分解率で除去し、さらにアンモニア等の常備物質も必要としないメンテナンス・フリーのシステムで、しかも安価で簡易な手法により完全分解する方法及び分解する装置を提供することを目的とする。
本発明に係るディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する方法は、酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を、排ガス処理室内に多段に配置し、前記多段に配置された構造体は前記酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度に加熱され、かつ前記多段に配置された構造体の内、前記排ガス処理室の排ガス導入口側の初段に配置された前記構造体は、排ガス導入時においても前記PMの凝縮温度以上に保たれるように集中的に加熱されるように制御されることにより、前記PMが前記初段に配置された前記構造体に付着残存するのを防止しつつ、前記排ガス導入口から前記排ガス処理室内に導入された前記排ガスが前記多段に配置された構造体を通過する際に前記排ガスが前記酸化物半導体に接触し、酸素の存在下で前記正孔の酸化力を利用して前記PMと前記VOCは水と二酸化炭素に完全分解され、さらに前記NOxは前記正孔の酸化力により、結合電子を引き抜かれ、NO間の3電子結合が消滅されることにより、NO分子の不安定化が誘起され、窒素と酸素に分解され、発生したガスは前記排ガス処理室のガス排出口から排出されることを特徴とする。
本発明に係るディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する方法は、前記多段に配置された構造体の内、初段を含む複数の構造体には集中加熱のための複数のヒーターが埋め込まれており、かつ前記複数のヒーターの少なくともひとつは、前記初段に配置された前記構造体の前記排ガス導入口側の表面近くに埋め込まれていることにより、前記多段に配置された構造体の内、前記排ガス導入口側の前記初段に配置された構造体は、前記排ガス導入時においても前記PMの凝縮温度以上に保たれるように集中的に加熱されるように制御されることを特徴とする。
本発明に係るディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する装置は、排ガス導入口とガス排出口を有する排ガス処理室と前記排ガス処理室内に配置されたヒーターに通電する加熱システムを有し、酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を前記排ガス処理室内に多段に配置し、前記多段に配置された構造体を前記酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度に加熱し、かつ多段に配置された構造体の内、前記排ガス導入口側の初段に配置された前記構造体を、排ガス導入時においても前記PMの凝縮温度以上に保たれるように集中的に加熱することにより、前記PMが前記初段に配置された前記構造体に付着残存するのを防止しつつ、前記排ガス導入口から前記排ガス処理室内に導入された前記排ガスが前記多段に配置された構造体を通過する際に前記排ガスが前記酸化物半導体に接触し、酸素の存在下で前記正孔の酸化力を利用して、前記PMと前記VOCは水と二酸化炭素に完全分解し、前記NOxから前記正孔の酸化力を利用して結合電子を引き抜き、NO間の3電子結合を消滅させることにより、NO分子の不安定化を誘起し、前記NOxを窒素と酸素に分解し、発生したガスは前記ガス排出口から排出することを特徴とする。
本発明に係るディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する装置は、前記多段に配置された構造体の内、初段を含む複数の構造体には集中加熱のための複数のヒーターが埋め込まれており、かつ前記複数のヒーターの少なくともひとつは、前記初段に配置された前記構造体の前記排ガス導入口側の表面近くに埋め込まれていることにより、前記多段に配置された構造体の内、前記排ガス導入口側の前記初段に配置された前記構造体を、前記排ガス導入時においても前記PMの凝縮温度以上に保たれるように集中的に加熱することを特徴とする。
本発明により、ディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスが、酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度に加熱された状態で、酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を通過する際に、正孔の酸化力を利用して分解される。PMが構造体に付着残存するのを防止するために、複数個配置される構造体のうち、初段の構造体をPMの凝縮温度以上の温度にガス導入時においても保たれるように集中的に加熱するように複数のヒーターを配置し、ヒーターの少なくともひとつは初段に配置された前記構造体の前記ガス導入口側の表面近くに埋め込まれているように配置する。
排ガス処理室内のヒーターの集中的配置に替わり、ディーゼルエンジンの排出口に熱風発生器を配置し、加熱された排ガスを排ガス処理室に導入して初段の構造体がPMの凝縮温度以上に保たれるようにしても良い。
本発明のNOxを分解する方法及び装置に関しては、「半導体の熱活性」に基づいて、強力な酸化力(i.e.結合電子を引き抜く力が強い)を使い、NOx分子から結合電子を引き抜き、当該分子を不安定化し、無害の窒素と酸素に分解することが特徴である。これは従来のNOxの分解法に見られる還元反応と触媒を用いる化学的な反応や触媒を使って高温で分解する方法とは原理的に異なる。
「半導体の熱活性」はNOxの結合電子を引き抜く力が強く、高い効率でNOxを窒素と酸素に分解することができる。NOならびにNOは共に奇数分子のフリー・ラジカルであり、NO間には3電子結合がある。酸素下であっても「半導体の熱活性」に基づく強力な酸化力により、NOxから結合電子を引き抜き、NO間の3電子結合を不安定化することにより、これらの分子を窒素と酸素に分解する。
本発明によれば、ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれるPM、NOx、VOCを同時に、かつ高い分解率で除去できるメンテナンス・フリーで、100%乾式のシステムの構築が可能となる。
図1は本発明に係るディーゼルエンジンの排ガスを分解する装置の排ガス処理室を示す図である。 図2はVOC浄化装置を示す図である 図3は触媒担持ブロックにヒーターが埋め込まれた触媒担持ユニットを示す図である。 図4は本発明に係るディーゼルエンジンの排ガスを分解するために3つの架台を使った装置の排ガス処理室を示す図である。 図5は排ガス処理室内温度を熱電対位置に対して表した図である。 図6はNOの共鳴構造と3電子結合を示す模式図である。
図2は株式会社ジンテクから市販されているVOC浄化装置14(モデル:標準MT-130-200)であり、ディーゼルエンジンの排ガスの内、VOCとNOxの分解を実施できる。酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体としては特許文献5に記載した方法で製造した触媒担持ブロックを使用する。ブロックの目の粗さは通常300cpsi(cells per square inch)程度を使用するが、荒すぎると排ガスの分解効率が落ち、細かすぎると圧力損失が大きくなるので、適宜調整して最適化すれば良い。ブロックに替えて、小径穴からなるハニカム担体を用いて触媒担持ハニカムとすることも可能である。図3は130(縦)×200(横)×30(厚み)mmの触媒担持ブロック4にM字型ヒーター7を埋め込んだCr触媒担持ユニットである。
図2のVOC浄化装置14には8段のCr触媒担持ユニット15,16を、長さ240mmと160mmの架台の上に組み込んである。ヒーターは総て300W/100Vである。VOC浄化装置14の排ガス導入口12とガス排出口13のダクトロ径は63.5mmである。通常はCr担持ユニット15のヒーターのみを結線し、熱電対17で制御する。本VOC浄化装置14は0.3m/min程度の流量下で、たばこ煙(4本)、タール気流、その他VOCを完全に無臭化できる。実装テストに近い大量(約2m/min)のVOC等を処理する場合には、Cr担持ユニット16のヒーターも点灯し、熱交換器と連結して用いる。しかし、熱交換器を接合しても、熱交換器で加熱されたタール気流等の温度がVOC浄化装置14の排ガス導入口12で、例えば250℃を下回る場合には、VOC浄化装置14内の初段のブロックにタールが沈着することがあるので、流量を下げるなどの処置を施し、気流温度を上げて凝縮を妨げる操作が必要となる。 本発明においては既に述べたNOx分解の技術的な背景に基づき、図2のVOC浄化装置14を用いて実施例1のNOx分解を行った。
図1はディーゼルエンジンからのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する装置の排ガス処理室1の上面図(装置を上部からみた図)である。本装置は図2に示す標準型MT-130-200を改造したもので、改造型MT-130-200と呼称する。本装置の排ガス導入口12とガス排出口13のダクトロ径は100mmである。改造型MT-130-200の特徴は装置の前段を集中的に加熱することであり、具体的には標準MT-130-200の160mmの架台を、前部の排気ガス導入部に配置し、240mmの架台を後部に移している。改造型MT-130-200は厚さ50mmの触媒担持ブロック(2枚)と厚さ30mmの触媒担持ブロック(9枚)の合計11枚から構成され、合計の長さは400mmである。図1の上面図の上と下には2点の黒丸が記されている。この2点のペアは1本の500W/100Vヒーター5,6に対応し、2つのヒーターの電極部が黒丸で表示されていることを示す。同様に、白丸のペアは1対の300W/100Vのヒーター7で、電極部は白丸である。さらに、黒丸と白丸の付いていない無印ブロックは電極が装備されていない触媒担持ブロックである。前記装置内の温度は、ヒーターの電極5ならびに6(合計500Wヒーターが4本)とヒーターの電極7(300Wヒーターが3本)を使用して、それぞれ熱電対8と9により、独立な2台の温度制御装置により制御される。熱電対10と11は温度モニターである。また、黒丸と白丸が付与されているCrを触媒として担持したブロックには図3に示すように、ヒーターが埋め込まれている。酸化物半導体として安定性に優れたCrを用いるのが良い。
改造型MT-130-200のさらなる特徴は、前段部にヒーターを集中させて加熱することである。特に、初段のブロック2は50mmのブロックの表と裏の両面にヒーターが配置され、1段目のヒーター5は排気ガスと対峙している。この配置により、ブロック2は標準型MT-130-200(図2)のヒーターの裏面配置のみの構造に比べて格段に加熱効果が高められる。
前段加熱の意味を詳しく説明する。排ガス処理室1内のヒーターに通電することにより、各ブロックは酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度(例えば350-500℃)に加熱される。しかし、PMの凝縮温度以下の温度の排ガスが大量に導入されると、排ガス導入口12に向き合っているブロック2の温度がPMの凝縮温度以下に下がり、PMが前記ブロック2の表面に付着残存して、ブロック2が目詰まりすることがある。これを防止する手段として、図1の装置においては、初段のブロック2がガス導入時においてもPMの凝縮温度以上の温度を保つ必要があり、その為にヒーター5(500W/100V)とヒーター6(500W/100V)を配置して集中加熱を施している。このうちヒーター5は初段のブロック2の排ガス導入口12側の表面近くに埋め込まれている。なお、PMの凝縮温度はPMの種類にもよるが約250-350℃程度であるので、いかなる排ガスの温度ならびに風量に対しても、凝縮温度以上の温度の確保が必須であり、余裕を見てこれより高めの温度に保てるような特段の処置が求められる。
ヒーター5、6、7に通電して触媒担持ブロック2がPMの凝縮温度よりも高い温度になると、PMは初段ブロック2に付着することなく、排ガス処理室1のバルク(i.e.初段ブロック以降のブロック群)に入る。バルク内の温度は通常350-500℃になっており、この温度領域では酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成しているので、PMは酸化分解される。触媒担持ブロック2の近傍の温度はヒーター5と6により加熱され、熱電対8によって制御される。また、ヒーター7による加熱温度は熱電対9により制御される。排ガス導入口12からPM、NOx、VOCを含む排ガスが導入され、NOxがブロックに担持された酸化物半導体(Cr)に接触すると、酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度において、正孔の酸化力を利用して排ガスが分解される。ガス排出口13から分解されたガスが排出される。
熱電対8によって制御されるブロック2の温度は500℃に設定されるが、排気ガスの風量やヒーターの容量にもよるが、500℃に到達することは稀である。しかし、いかなる排ガスの温度と風量に対しても、排ガス導入側のブロック2の表面温度は少なくともPMの凝縮温度(約250-350℃)以上を確保することが必須である。一方、排ガス処理室1内のバルク温度は500℃に設定され、この温度は、ヒーター7による加熱ばかりでなく、ブロック2から運ばれる高温ガスとTASC効果により小分子化された排ガスの燃焼熱等により熱電対9でモニターされ、個別の温度調節器で制御される。従って、ヒーターに投入する電力はかなり軽減される。
排ガスがNOxからなる場合は触媒担持ブロックに付着する問題は生じない。NOx分解は、酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度において、正孔の酸化力により結合電子を引き抜かれ、NO間の3電子結合が消滅されることにより、NOxが不安定化して、窒素と酸素に分解される。
以上より、排ガスがPM、NOx、VOCを含む場合に図1の構造体(ブロック)とヒーターの配置を採用することでPMが構造体(ブロック)に付着することを防ぎつつ、排ガスは分解されてガス排出口13より排出される。
図4は改造型MT-130-200(図1)と同様にディーゼルエンジンからのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する装置の排ガス処理室1を示す図であり、改造型MT-130-200-200と称する。本装置も図1と同様に、前段集中加熱の方式を取り、さらに排ガス導入口12とガス排出口13のダクトロ径も100mmである。改造型MT-130-200-200では、改造型MT-130-200で使用した2種類の架台(160mmと240mm)を、160mm、240mm、240mmの順序で配置した全長640mmの架台である。 触媒担持ブロックは、50mmブロックが2枚、30mmブロックが18枚で、合計20枚である。このうち、ヒーターが埋め込まれているブロックは12枚である。また、使用したヒーターは総て500W/200Vである。図1で使用した黒丸と白丸、ならびに無印の表示を図4でも踏襲している。
初段の50mmブロック2の表裏にヒーターを埋め込んで配置し、図1の装置と同様に集中加熱を行い、PMの凝縮温度(約250-350℃)以上を確保した。装置の加熱は、2本の独立した熱電対により、2台の温度調整装置で制御した。一番目の制御装置は、熱電対22で温度をモニターし、加熱ヒーター19(4本)で制御した。二番目の制御装置は、熱電対23で温度をモニターし、ヒーター20(4本)に通電した。ヒーター21は本実験では結線しなかった。熱電対24は温度モニターとして使用した。
PM,NOx、VOCの除去プロセスは図1の装置を使用した記載と同様である。
実施例1
分解設定温度を500℃に固定し、図2のVOC浄化装置14を使用してNO濃度を変化させた分解実験を行った。実験室内で行う実験であるので、風量を下げた。
(実験装置ならびに実験条件)
(1)Nベースの500ppm NOガスを使用した。ガス混合器を用いて、500ppmのNOガスをNで希釈し、250ppm、125ppm、62.5ppmのNOガスを調製した。VOC浄化装置14に導くガスは40L/minの一定流量とした。基本的には窒素下で行った実験である。
(2)検知管は北川式NO/NO検知管(174A)を使用した。本検知管は、1回の測定で、NOとNOの濃度を測定することができる。また、検知管は常温使用のものであり、VOC浄化装置14の出口温度が300℃程度となる為、ホット・エア・プロ―ブを介して測定を行った。
(3)装置内の設定温度は500℃で、使用した触媒はCrである。酸化物半導体であるCrは500℃の温度で、強力な酸化力(結合電子を引き抜く力)を発現し、NOから結合電子を引き抜いて、不安定化を誘起する。その結果、NOは自滅するような形で窒素と酸素に分解する。酸化物半導体の中で、最も安定なCrを好んで用いるが、NiO、Fe、TiO、ZnO等も使用することができる。
(4)NOの分解実験:
予め500℃に加熱されたVOC浄化装置14の排ガス導入口12に、所定の濃度に混合器内で希釈されたNOガスを導き、VOC浄化装置14のガス排出口13で、NO濃度を検知管で測定した。
(実験結果)
下表に、入口NO濃度、出口NO濃度、NO分解率、生成したNOを示す。NOの分解率は平均して70%であった。また、僅かではあるが、NOの生成が認められた。
Figure 2022121823000002
本実験結果から、3電子結合で安定性を確保されていたNOから、結合電子がTASC効果で引き抜かれ、不安定化が誘起されて、NO分解が実現されていることが分かる。本実験は、NOガスをVOC浄化装置14に導くだけで良く、装置的にも、また化学的な処理も一切必要としないので、極めて簡便でかつ安価な乾式の脱硝法であると言える。
実施例2
NO濃度を250ppmに固定し、分解率の温度依存性を検討した
実験室内で行う実験であるので、風量を下げ、NO濃度を固定して測定を行った。使用した実験装置は図1に示すものである。但し、排ガス処理室1の排ガス導入口12の前には吸引ボックスを設けた。排ガス処理室1内の温度は図1に示す熱電対8、9、10、11の位置で測定した。500ppmのNOガスを混合ボックス内で空気と混合して混合ガス中のNO濃度を250ppmとし、予め加熱した排ガス処理室1内に導いた。本実験は基本的には空気下における実験である。
入口温度を示す図1の熱電対8の温度を、それぞれ、200、300、530℃と設定して混合ガスを排ガス処理室1に導入し、NOの分解率を測定した。図5に3種の温度設定に対する排ガス処理室1内の温度分布結果を示す。200℃設定におけるNOの分解率は約60%、また、300℃設定では88%であった。さらに、530℃設定ではほぼ100%のNO分解率が達成された。
実施例1及び2の結果から、NOx分解は、高流量の排気ガスの場合でも、VOC浄化装置14及び排ガス処理室1内で十分な温度さえ確保されていればNO分解は瞬時に確実に起こると考えられる。
実施例3
株式会社竹内製作所の重機TB225(Yanmar/3TNV80Fディーゼルエンジンを搭載)のマフラーを外し、シリンダー出口における温度ならびに排気流量を測定した。3段階の運転モード(アイドリング、通常作業モード、負荷モード)における温度と流量はそれぞれ以下の通りであった。
アイドリング時: 約150℃ 約1.5m/min
通常作業モード時: 約218℃ 約3.5m/min
負荷モード時: 約370℃ 約5.0m/min
シリンダー出口からの排ガスを図1の排ガス導入口12から排ガス処理室1に導入して分解する実験を行うために以下の検討を行った。TASC技術に基づく排ガス処理室1に求められる活性化温度は、何れの動作モードであっても350-500℃は必要である。さらに、初段の触媒担持ブロック2でPMの沈着(凝縮)を防ぐために、初段温度が少なくとも300℃程度とすることが必須である。そこで、重機の通常作業モードにおける218℃の排ガス温度を150℃上げ、排ガス処理室1内の温度を350-500℃としたいと考えた。これを達成するためには、排ガス処理室1に組み込まれたヒーターで排ガス処理室1を予め加熱する必要がある。どの程度のヒーターのパワーが必要であるかを概算した。排ガスを空気と見立て、空気温度を150℃上昇させるパワーを見積もった。
空気の密度(温度変化が大きい)から排ガスの単位時間当たりの総重量を計算し、これに空気の比熱(温度変化が小さい)と上昇させる温度を乗じて、毎秒あたりのkJ(つまりワット数)を計算した。一例を述べると、通常作業モード(3.5m/min)時の排ガス(計算では230℃の空気とした。)を150℃上昇させる熱量は約6kWとなる。現在の改造型MT-130-200(図1)は2.9kWなので、かなりパワー不足である。しかし、排ガス処理室1内で燃焼する排ガスの燃焼熱を考慮すれば、パワー不足もかなり補えると見込んだ。さらに、4kWの改造型MT-130-200-200(図4)の装置でもテストした(実施例4)。
重機TB225の排ガスを図1の装置に導入して排ガスの分解実験を実施し、NOx濃度の測定は、北川式検知管を用いた。PMのスモークテストは Hodaka 製のスモーク・テスター(白/黒の評価は 1-9 段階で評価)を使用した。VOC濃度(単位:ppmC)は日本サーモの炭化水素計(モデル:TVA)で測定した。計測は通常作業モードで行い、始動後30分での値を読んだ。排ガス処理室1内のヒーター5,6,7の加熱電源はTB225重機(株式会社竹内製作所)の始動と共にONとされた。
熱電対8,9の設定温度を500℃にして制御し、図1の熱電対8、9、10、11の温度はそれぞれ、245℃、304℃、305℃、307℃であった。NO濃度は約10-20ppm、PMのスモークテストは指標値1-2(ほぼ最低レベル)。VOC濃度は1.2ppmCであった。これらの結果はPM, NOx, VOCの浄化が良好に進行しているものと考え得られる。しかし、試験終了後に浄化装置を分解してみると、ごく僅かであったが、初段の触媒担持ブロック2(温度245℃)にはPMの付着が認められた。
比較例1
図2のVOC浄化装置14(標準型MT-130-200)を用いて、実施例3と同条件でPM、NOx、VOCの分解実験を実施した。標準型MT-130-200では8本の300W/100Vヒーターが装備され、この内触媒担持ユニット15のヒーターを熱電対17で制御する。熱電対の温度を500℃に設定した。
通常作業モードで、始動後30分のPM、NOx、VOCの値を測定した。熱電対17の温度は205℃程度に下がってしまい、VOC浄化装置14内の温度は、ほぼ排ガス温度に近い値に留まった。
NO濃度は約40ppm、PMのスモークテストは指標値3程度であり、VOC濃度は約7.5ppmCであった。実験終了後に、装置を分解し、PMの付着状況を調べた。初段のCr担持ブロック表面には、うっすらとPMの付着が観測されたが、2段以降のCr担持ブロックに付着していることはなかった。また、VOCの値を反映し、排ガスの臭気も多少認められた。
実施例4
図4の装置を用いて、実施例3と同様の実験を行った。図4の熱電対22、23、24の温度はそれぞれ、312℃、373℃、442℃であった。NO濃度は約10ppm(測定限界)、PMのスモークテストは指標値1-2(ほぼ最低レベル)。VOC濃度は0.8ppmCであった。内蔵のヒーターによる加熱効果も認められ、温度分布も極めて安定しており、VOCの浄化も完璧であった。試験終了後に装置を分解した結果、初段の触媒担持ブロック2にはPMの付着は皆無であった。これらの結果はPM、NOx、VOCの浄化が良好に進行したことを示している。
本発明はこれまでの還元剤を使う湿式法に比べ、全く新規なTASC効果(i.e.結合電子の引き抜き)によるもので、完全な乾式システムである。分解システムも極めて簡便で、単にディーゼルエンジンからのPM、NOx、VOCを含む排ガスを導くだけで排ガスを分解でき、特段のメンテナンスも必要としない。これらの理由から、産業上の利用価値は非常に高い。
1 ディーゼルエンジンの排ガスを分解する装置の排ガス処理室
2 Cr担持ブロック
3 Cr担持ブロック
4 Cr担持ブロック
5 ヒーター(500W/100V)
6 ヒーター(500W/100V)
7 ヒーター(300W/100V)
8 熱電対
9 熱電対
10 熱電対
11 熱電対
12 排ガス導入口
13 ガス排出口
14 VOC浄化装置
15 Cr担持ユニット
16 Cr担持ユニット
17 熱電対
18 熱電対
19 ヒーター(500W/200V)
20 ヒーター(500W/200V)
21 ヒーター(500W/200V)
22 熱電対
23 熱電対
24 熱電対

Claims (4)

  1. ディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する方法であって、酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を、排ガス処理室内に多段に配置し、前記多段に配置された構造体は前記酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度に加熱され、かつ前記多段に配置された構造体の内、前記排ガス処理室の排ガス導入口側の初段に配置された前記構造体は、排ガス導入時においても前記PMの凝縮温度以上に保たれるように集中的に加熱されるように制御されることにより、前記PMが前記初段に配置された前記構造体に付着残存するのを防止しつつ、前記排ガス導入口から前記排ガス処理室内に導入された前記排ガスが前記多段に配置された構造体を通過する際に前記排ガスが前記酸化物半導体に接触し、酸素の存在下で前記正孔の酸化力を利用して前記PMと前記VOCは水と二酸化炭素に完全分解され、さらに前記NOxは前記正孔の酸化力により、結合電子を引き抜かれ、NO間の3電子結合が消滅されることにより、NO分子の不安定化が誘起され、窒素と酸素に分解され、発生したガスは前記排ガス処理室のガス排出口から排出されることを特徴とするディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する方法。
  2. 前記多段に配置された構造体の内、初段を含む複数の構造体には集中加熱のための複数のヒーターが埋め込まれており、かつ前記複数のヒーターの少なくともひとつは、前記初段に配置された前記構造体の前記排ガス導入口側の表面近くに埋め込まれていることにより、前記多段に配置された構造体の内、前記排ガス導入口側の前記初段に配置された構造体は、前記排ガス導入時においても前記PMの凝縮温度以上に保たれるように集中的に加熱されるように制御されることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する方法。
  3. ディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する装置であって、排ガス導入口とガス排出口を有する排ガス処理室と前記排ガス処理室内に配置されたヒーターに通電する加熱システムを有し、酸化物半導体を担持した通気性を有する構造体を前記排ガス処理室内に多段に配置し、前記多段に配置された構造体を前記酸化物半導体のバンド間遷移により大量の正孔と電子とが生成する温度に加熱し、かつ多段に配置された構造体の内、前記排ガス導入口側の初段に配置された前記構造体を、排ガス導入時においても前記PMの凝縮温度以上に保たれるように集中的に加熱することにより、前記PMが前記初段に配置された前記構造体に付着残存するのを防止しつつ、前記排ガス導入口から前記排ガス処理室内に導入された前記排ガスが前記多段に配置された構造体を通過する際に前記排ガスが前記酸化物半導体に接触し、酸素の存在下で前記正孔の酸化力を利用して、前記PMと前記VOCは水と二酸化炭素に完全分解し、前記NOxから前記正孔の酸化力を利用して結合電子を引き抜き、NO間の3電子結合を消滅させることにより、NO分子の不安定化を誘起し、前記NOxを窒素と酸素に分解し、発生したガスは前記ガス排出口から排出することを特徴とするディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する装置。
  4. 前記多段に配置された構造体の内、初段を含む複数の構造体には集中加熱のための複数のヒーターが埋め込まれており、かつ前記複数のヒーターの少なくともひとつは、前記初段に配置された前記構造体の前記排ガス導入口側の表面近くに埋め込まれていることにより、前記多段に配置された構造体の内、前記排ガス導入口側の前記初段に配置された前記構造体を、前記排ガス導入時においても前記PMの凝縮温度以上に保たれるように集中的に加熱することを特徴とする請求項3に記載のディーゼルエンジンのPM、NOx、VOCを含む排ガスを乾式法で同時に分解する装置。
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