JP2022121359A - シナプスおよび樹状突起棘の喪失を逆転させるための複数のケモカインレセプターの経口用ペプチドアンタゴニスト - Google Patents

シナプスおよび樹状突起棘の喪失を逆転させるための複数のケモカインレセプターの経口用ペプチドアンタゴニスト Download PDF

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Abstract

【課題】シナプスおよび樹状突起棘の喪失を逆転させるための複数のケモカインレセプターの経口用ペプチドアンタゴニストを提供すること。【解決手段】本発明は、広くは、シナプスおよび樹状突起棘の喪失の状況または状態から、シナプスおよび樹状突起棘の形成/再生のうちの一方へとニューロンをシフトさせる方法による認知の改善に関する。新規な機構は、ニューロンのストレス応答を制御し、シナプスおよび樹状突起棘ダイナミクスをそれらの形成に有利であるように再度均衡をとることによって記憶および学習を改善するようである。機能的なシナプスおよび樹状突起棘の数を高める方法が開示される。この方法は、全体的な認知機能を改善すると予測される。【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
発明の分野
本発明は、広くは、中枢神経系に入って、ニューロンのケモカインレセプターに結合し、ニューロンのリモデリングならびにシナプスおよび樹状突起棘形成を促進する組成物および化合物に関する。特に、ケモカインレセプターアンタゴニストは、正常な動物では記憶および学習を促進し、脳傷害の状態では認知および運動能力の回復のために、シナプスおよび樹状突起棘形成を促進することが見出されている。本発明は、シナプスおよび樹状突起棘の形成を促進し、正常な個体において、ならびにシナプスの喪失(例えば、加齢、またはシナプスおよび樹状突起棘喪失が加速され、認知機能もしくは運動機能の障害をもたらす疾患状態に起因する)を経験している個体において、記憶および学習を増強すると予測される。
背景
認知および精神機能の改善は、一般に求められる目的である。タンパク質翻訳、タンパク質分解、細胞骨格ダイナミクス、細胞外マトリクス相互作用、第2メッセンジャーシグナル伝達、ならびに神経伝達物質レセプターの輸送および機能の調節は、認知に必須のシナプスリモデリングの全構成要素である。これらのプロセスにおける特異的構成要素の選択的標的化は、認知欠損を処置するために有効なストラテジーとして役立ち得る。
薬理学的介入による認知増強は一般的であり、カフェイン、ニコチン、およびアンフェタミンのような精神刺激薬の自己投与は、認知能力を改善し得る。しかし、これらの刺激薬の使用は、最適ではない可能性があり、それらには副作用およびリスクがあり、それらは、全ての認知、記憶および学習の問題を改善するわけではない。より有効かつ特異的なストラテジーが必要とされている。認知、記憶および学習の問題の原因は数多く存在するが、認知能力を増強する1つのストラテジーは、認知機能に対して正の効果を有し得る(例えば、シナプスおよび樹状突起棘の構造、機能、形成、および再生を促進し得る)重要な機構を標的化することである。
シナプスの文脈において、アクチン細胞骨格は、シナプスリモデリングのプロセスにおいて、ならびにシナプス活動によって駆動される樹状突起棘およびニューロン成長円錐の構造を維持するために、重要な要素である。実際に、ニューロンの成長円錐および樹状突起棘の形状ならびにシナプス強度は、シナプス強度の短時間の変更を、安定な構造的改変から生じる長時間持続する変化へと変換するために、正確に制御される。これらの機能的および構造的な改変は、記憶および学習の生物学的な基礎と考えられる。シナプスリモデリングは、認知治療のための潜在的標的として考えられ得る多くのプロセスを含む。これらのプロセスは、細胞構築のコフィリン-アクチン調節に伴って起こるような、シグナル伝達機構およびタンパク質リン酸化/脱リン酸化によって高度に調節されている。これらの複雑なプロセスの協調は、認知機能の最適化にとって重要である。
細胞ストレスメディエーター(炎症、フリーラジカル、興奮毒性レベルのグルタメート、ミトコンドリアインヒビター(例えば、アンチマイシンA)、ペルオキシド、NO、Aβ(アミロイド)ペプチド、および炎症促進性サイトカイン)は、脳の主な機能単位であるシナプスを障害し、それらが記憶を保存し情報を処理する能力に悪影響を及ぼす。これらの結果は、正常状態における認知の改善が、シナプス形成を促進することによって達成され得るという考えを促した。記憶喪失、学習および情報処理の速度の障害、ならびに傷害後の運動機能の喪失という状態は、主に、シナプス不全、すなわち、「シナプトパチー(synaptopathy)」の状態である。多様なストレスメディエーターは、食事または後生的な変化であっても、明白であろうがなかろうが、ニューロンの軸索および樹状突起中にアクチン解重合因子(ADF)/コフィリンおよびアクチンを含む一過性または持続的なロッド様封入体の急速な形成を誘導して、シナプスの喪失を引きおこし得る。その知見の重要性は、ロッド形成が、シナプスを促進する介入の標的を提供するということである。なぜならそれは、皮質シナプスの喪失(時間を経てより明らかになるミニメンタルステート認知検査でのより低いスコアの原因)と相関するからである。自然なまたは疾患関連性の(例えば、脳傷害もしくは脳卒中の後、またはニューロパチー)の他の原因による一般的な認知障害はまた、シナプス不全および機能的なニューロンの結合を確立できない、という状態である。シナプスの機能およびリモデリングにおけるその多くの役割が原因で、アクチンダイナミクス調節は、記憶増強ストラテジーの魅力的な標的である。
シナプス変性に必須の3つの要因は、活性化コフィリンのレベルの上昇、ADP-アクチンのレベルの上昇、および高度に酸化的な環境である。エネルギー的にストレスを受けたニューロンは通常、3つ全ての要件を満たすが、これら要件は、特異的に疾患に関連するわけではない。リン酸化アクチン/コフィリンロッドの形成は、多くの原因によって誘導される早期のニューロン病理である。コフィリン活性化が持続的である場合、それは、神経変性の前にシナプス喪失をもたらす。培養されたニューロンでは、コフィリンがいったんロッドを形成したら、数日で死滅が起こる。機能的なシナプスが回復され得る程度および範囲は、ほとんど知られていない。シナプス喪失の経路が、どの程度シナプス逆転に関連するかは、同様に未知である。本発明者らは、選択したケモカインレセプターを通じて作用し、シナプス喪失とシナプス再生との間の均衡を制御するようである特異的ペプチドを発見した。そのペプチドは、機能的なシナプスに寄与する成長円錐構造を生じるニューロンの細胞構築を制御する細胞タンパク質の活性化を調節する。シナプス喪失を逆転させ、機能を回復させることは、能力を増強する精神刺激薬または単にシナプス喪失を遅らせるかもしくは停止させることを超える本発明の明確な利益である。なぜならこのような喪失は、数十年にもわたって気づかれないまま進行し得るからである。機能的なニューロンの喪失は、回復不能と考えられるが、そのような考えは、ゆっくりと変化してきているようである。シナプス形成を促進して、認知を改善する、または任意のシナプス喪失を克服することは、患者の利益にとってより望ましい効果である。
より近年の進歩によって、シナプス形成を支援することによって認知を改善するための新たな方法が解明され始めている。以下で詳細に説明されるように、近年の発見は、ニューロンの成長および再生の機構への新たな洞察を提供しており、これは、シナプス喪失の状態が、それらのニューロンに存在する先天的免疫系のレセプターを調節することによって、ニューロンにおいて直接神経再生を促進することによって今や処置され得ることを示唆する。上記方法は、実際には、記憶固定化(ときおり、「枝刈り(pruning)」といわれる)を支援するが、過剰または慢性的である場合には有害であるシナプス脱構築(deconstruction)および構築の通常のプロセスであるものから離れて、有益な再生に向かって再度均衡をとるための手段を提供する。
再生処置は、精神刺激薬または単なるシナプス喪失防止を超える利点を有する。1つには、精神刺激薬は、永続的な利益をもたらさない一方で、防止的な処置は、機能的喪失が進行することを妨げるにあたって有効性を示唆するに過ぎない。再生方法は、正常の認知を改善する、ならびに脳傷害、ニューロパチー、または認知症後のようなシナプス喪失の環境においては、認知、記憶、および学習を増強すると合理的に予測され得る。
神経炎症は、ニューロンと、サイトカイン、ケモカイン、およびミクログリア細胞活性のような先天的免疫系の構成要素との間の相互作用が関わり、多くの前臨床および臨床研究において標的とされており、その後の臨床試験は、認知をほとんど増強していなかった。1つの理由は、併用療法または早期に共有される疾患を引きおこす機構を標的化することのいずれかを必要とする傷害機構の複雑さおよび数の多さである。炎症の範囲を超える多くの作用が、シナプス喪失と形成との間の均衡を制御する。炎症の遮断自体は、臨床上の利益の期待をもたらすには十分でないようである。シナプスの喪失は、妨げられないままの場合には、最終的には認知障害として症状発現する多くの状態(必ずしも炎症ではない)において早期に起こる。現在では、疾患進行および増悪を停止するには、機能、認知または運動の喪失が例であり、限定的な目標である個人のクオリティー・オブ・ライフを大きく損なう前に、早期の介入が求められる。この理由から、本発明者らは、通常の日常生活、ならびにシナプトパチーおよび後に続く疾患または状態において認知を改善するための処置をもたらすことに再度焦点をあてて、機能的シナプスの形成を促進することによって認知または機能を増強することによってより大きな患者の利益をもたらすことを求めた。
認知障害は、代表的には、早期ステージでは明らかではないことから、シナプス喪失に寄与する正常プロセスおよび病的プロセスの両方は、認知障害が明らかになるまで、数十年ではないにしても、何年間も衰えずに継続し得る。認知障害が症状発現するときまでには、それが効果的に介入するには手遅れになり、永続的な機能喪失を生じる可能性があることを、現在の技術水準は示唆する。現在では、シナプス喪失を逆転させる処置は存在しないが、このような再生は、既存の認知欠損を克服および逆転させ、個人を正常な機能に近づけると予測される。従って、炎症を遮断するかまたはシナプス喪失をもたらす病原性のコフィリンロッド形成を妨げることによってシナプス喪失を防止することは、疾患進行をより遅くするかまたは阻止するという利益をもたらすが、別個のかつより困難な処置目的は、初発のまたは既に進行してしまったシナプス損傷または喪失を逆転させることである。
本発明は、シナプスの喪失を伴う多くの状態において、特に、学習および記憶形成の部位である海馬において現れる記憶、学習、認知および機能を改善するという高度に理解しづらくかつ長く求められてきた処置利益をもたらすと予測される。このような転帰は、認知減退または機能減退を遅らせるかまたは停止させることを超えたシナプス、スパインの喪失、および樹状突起の分枝の低減を経験する人々に利益があると予測される。本発明は、認知および記憶を改善し、認知症において認知機能を、脳卒中において運動機能を回復させるか、または傷害、外科手術、糖尿病、もしくは化学療法剤によって引きおこされる慢性疼痛状態を引きおこすニューロパチーにおけるワーラー変性を逆転させる、シナプス、樹状突起、および神経突起の回復に関する。本発明のペプチドは、初発のおよび容易に明らかではない両方の機能減退、ならびに日常生活において検出されるには十分重度になった機能減退を逆転させることによって、利益の改善を提供する。
本発明の低分子ペプチドケモカインアンタゴニスト化合物は、シナプス形成と破壊との均衡を制御し、よって、軽度認知障害およびより広範な認知障害の状態の両方においてシナプス喪失を逆転させるにあたって有用であり得る特異的ケモカインレセプターを標的化することによって、シナプス再生の必要性のあるまたはシナプトパチーを経験する個人においてシナプス喪失の新たな処置機会を提供する。
多くの研究から、ADの前駆期でもあり得る軽度認知障害(MCI)、および早期ADが、シナプスの喪失および結合性によって主に特徴づけられることが示されている。MCIにおけるシナプス喪失は、ADの中期および後期を特徴づける、ニューロンの広範囲にわたる喪失より前に起こる。Neuro-AIDS(HAND)、COVID19またはCNSの他の感染症、実際には、シナプスの喪失、およびさらには正常な加齢のシナプスの喪失のような非病的状態によって引きおこされる任意の神経変性状態が、助けられ得る。シナプス喪失によってまとめられる多くの多様な状態、シナプトパチーにおいて回復を促進するために開発された医学的治療は存在していなかった。
シナプトパチーを逆転し得る介入としてのケモカインアンタゴニストの価値は、HIV認知減退の動物モデルにおいて、本発明のペプチドの非経口アナログであるペプチドDala1-ペプチドT-アミド(「DAPTA」)による樹状突起棘形態の保護、樹状突起分枝の拡大および機能欠損の回復を示したHillら(1)による数十年前の研究によって暗示された。その知見は、ケモカインレセプターが未だ発見されていなかったことから、当時は十分に理解されていなかった。DAPTAは、HIV関連神経認知疾患(HAND)のフェーズ2ヒト治験において認知欠損を逆転させることができ、脳スキャンおよびその効果は、DAPTA作用の標的であるHIV侵入ケモカインレセプター(CCR2/CCR5/CCR8/CXCR4)のクラスターによって媒介されることが後に理解された。皮質の可塑性ならびに海馬の記憶および学習に関する抑制因子としてのCCR5の役割へのさらなる注意は、正常マウスにおいて、CCR5の過剰発現が記憶欠損を引きおこし、それがCCR5「ノックアウト」、または欠失によって防止することができることを示したZhou,2016(2)の研究に由来した。2019年には、Joyら.(3)は、CCR5が脳卒中よび外傷性脳傷害後の回復の治療標的であるという予測外のことを発見した。CCR5のノックダウン、またはアンタゴニストであるマラビロクでの薬理学的遮断は、樹状突起棘の保存および神経突起皮質突起の新たなパターンと関連した。HIVケモカイン侵入レセプターCXCR4はまた、外傷性脳傷害後の回復に対して負の影響を有するとして同定された。なぜならそのアンタゴニストAMD3100は、回復を改善したからである。
成体齧歯類の脳の長期間の海馬スライス培養物およびマウスから解離したニューロン培養物はともに、CXCR4およびCCR5を、活性化された場合に、シナプス喪失および認知障害をもたらす2つの重要なケモカインレセプターとして示す。他の結果は、本発明のペプチドが処置標的として標的化するHIV侵入レセプターのクラスターを同定する記憶機能障害においてCCR2およびCCR8に関係した。
まとめると、これらの研究は、本発明者らの調査を、マルチケモカインレセプターアンタゴニストペプチドがニューロンの成長円錐(機能的シナプスをもたらすニューロンの組織化構造)の形成を促進することによってシナプス喪失を逆転させるという利益に促した。多数のケモカイン経路の活性化が、脳傷害における回復の改善に関わることから、より良好な転帰が、複数のケモカインレセプターを拮抗して、シナプスおよび樹状突起棘の喪失を概して逆転させ得る薬剤によって予測される。
図1Aは、ケモカインレセプター2(CCR2)を遮断するクラスの4つの代表的ペプチドの活性を図示する。
図1Bは、いくつかの全てがD型であるペンタペプチドがケモカインレセプター2(CCR2)を遮断する活性を図示する。
図2Aは、コフィリンロッド形成によってシナプス喪失をもたらすHIVエンベロープタンパク質gp120によるケモカインレセプターCXCR4またはCCR5の直接的ニューロン活性化を図示する。
図2Bは、コフィリンロッド形成(シナプス喪失を引きおこす早期病理)が、AD関連ペプチドβアミロイド(Aβ-トリマー/ダイマー)によって引きおこされ、ニューロンのCCR5を特異的アンタゴニストであるマラビロクで遮断することによって防止され得ることを図示する。
図3は、マルチケモカインレセプターアンタゴニストペプチド(RAP-103(全てがD型であるTTNYT)またはRAP-310(全てがD型であるASTTTNYT))が、シナプス喪失を引きおこすAβ-トリマー/ダイマー病理を防止する用量応答を図示する。
図4は、マルチケモカインレセプターアンタゴニストRAP-103(R103)が、アミロイドβ(Aβ)およびαシヌクレインの予備形成原線維(pre-formed fibrils)(PPF)によって引きおこされるシナプス損傷効果を遮断することを図示する。
図5は、アミロイドβ(Aβ)トリマーがシナプス喪失を引きおこす病理(ロッド形成)を引きおこす能力を図示する(左、矢印)。RAP-103(R103)の添加は、ロッドへのコフィリン活性化を抑制し、シナプス再生のための成長円錐の形成へとシフトする。
実施形態の説明
特定の実施形態において、本発明は、加齢、アルツハイマー病、ハンチントン病および他の状態(例えば、パーキンソン病、2型糖尿病、HIV関連神経認知障害(HAND)、および傷害、脳卒中もしくは外傷後の機能欠損を含む、多様なシナプトパチーおよびそれらの関連する神経変性状態、あるいはシナプスの喪失と関連するウイルス性脳症および他の脳症の処置に関する。本発明はまた、このような処置、ならびに/またはシナプスおよび樹状突起棘喪失の逆転において有用な薬学的組成物、ならびにある特定の経口で活性なペプチド自体に関する。
可溶性βアミロイドペプチドダイマー/トリマー(Aβd/t)(AD)、αシヌクレイン原線維(PFF)、HIVエンベロープgp120タンパク質(HAND)または炎症促進性サイトカイン(TNFα、IL-1β、IL-6)へのニューロンの持続性の曝露は、シナプス機能を撹乱し、シナプス喪失を生じさせる。シナプス喪失は、神経炎症、酸化的ストレス、およびエネルギーストレス、傷害、外傷、細菌/ウイルスもしくは他の感染性因子、細胞傷害性薬物療法もしくは放射線療法によって引きおこされるかにかかわらず、本発明のペプチドが逆転させ得る多くの神経変性状態の根底にある。
他の治療アプローチは、ニューロンのケモカインレセプターの活性化を遮断する(本発明のペプチドの以前は同定されていなかった活性)ことによって、シナプス喪失を逆転させる利益を有する、シナプス形成を促進することを求める。ニューロンのケモカインレセプターを標的化して、シナプスおよび成長円錐形成を本発明のペプチドで促進し、記憶および認知を改善することは、以前には未知であり、予測外の処置の進歩であり、処置が、ミクログリアおよびそれらが分泌するサイトカインを介して先天的免疫の炎症を遮断して、ニューロンの殺滅を防止するか、またはニューロンが死滅する直前にシナプス喪失をもたらすコフィリンロッドの形成を破壊することに焦点を当てていた先行技術とは異なる。ケモカインレセプター遮断の別個の効果を区別するために、本発明者らは、免疫細胞またはサイトカインの非存在下で、脳組織のスライスまたは動物全体と比較して、ニューロンの純粋培養物に対して実験を行った。NKkB経路によって、ミクログリアおよびサイトカインの活性化を示す無傷の動物またはCNS組織スライスにおけるケモカイン遮断の報告とは異なり、本発明者らの結果は、ニューロンのケモカインレセプターを遮断するというこれまで認識されていない直接的効果を示す。本発明者らは、ニューロンを、シナプス喪失をもたらすストレス応答から離し、神経突起伸長を駆動する成長円錐形成を介してそれらの再生を誘起し、シナプス喪失に苦しむ患者のシナプス、それらの結合性および機能を回復させる手段としてケモカインレセプター遮断を観察した。本開示は、広くは、シナプスおよび樹状突起棘の喪失の状況または状態から、シナプスおよび樹状突起棘の形成/再生のうちの一方へとニューロンをシフトさせる方法による認知の改善に関する。機構は、ニューロンのストレス応答を制御し、シナプスおよび樹状突起棘ダイナミクスをそれらの形成に有利であるように再度均衡をとることによって記憶および学習を改善するようである。機能的なシナプスおよび樹状突起棘の数を高める方法が開示される。この方法は、全体的な認知機能を改善すると予測される。
本発明のケモカインアンタゴニストペプチドは、特に、複数のケモカインレセプターがシナプス回復に関連するようであることから、pM用量において複数のニューロンのケモカインレセプターを遮断し得る(単一のレセプターアンタゴニストを上回る利点)。それらは、経口および非経口投与経路によって脳に効率的かつ迅速に入り、それらのタンパク質分解からの保護に起因して、利益を確立するために十分長い期間にわたって治療用量で、CNS中に持続する。これらの明確な特徴の全てが合わさって、シナプス喪失(シナプトパチー)の状態において処置使用を可能にし、シナプスの結合性を回復させて、欠損を逆転させ、機能的回復を促進する転帰をもたらす。本発明は、シナプス喪失および神経変性のこのような処置および/または逆転において有用な薬学的組成物、ならびにある特定の活性なペプチド自体に関する。
上記ペプチドは、シナプスの喪失と関連する持続性のまたは病的なコフィリン-アクチンロッド形成を生じる、生物、化合物または免疫機能不全によって引きおこされる任意の疾患または状態を処置および防止するための薬学的組成物および組成物において使用され得る。
上記ペプチドは、経口、口内、非経口、局所、直腸、膣、鼻内吸入スプレーによって、肺内吸入によって、または他の方法で投与され得る。特に、本発明に従うペプチドは、経口使用のために、スプレーもしくは散剤を用いる吸入のために、注射のために(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、関節内もしくは大槽内注射)、または注入のために製剤化され得、アンプルもしくは錠剤での単位用量形態において、または添加された保存剤を伴う複数用量バイアルもしくは他の容器において、提示され得る。
上記組成物は、懸濁物、溶液、またはエマルジョンのような形態をとり得、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような製剤化作用物質を含み得る。あるいは、上記活性成分は、直接投与するためにまたは使用前に適切なビヒクル(例えば、滅菌発熱物質非含有水、生理食塩水または5%デキストロース)で再構成するために、粉末および/または凍結乾燥形態にあり得る。ペプチドを含む薬学的組成物はまた、抗微生物剤、または保存剤のような他の活性成分を含み得る。
上記組成物は、0.001~99%(w/vまたは好ましくはw/w)の活性物質を含み得る。好ましい投与は、経口用の丸剤またはカプセル剤である。上記組成物は、治療上または予防上有効な用量、すなわち、1日あたり0.1~500mgのペプチド、特に、1日あたり5~50mgで投与される。本発明に従うペプチドは非毒性であることから、さらに大きな用量が使用されてもよい。しかし、通常は、これは要求されない。
上記組成物の注射または注入による投与のために、1日の投与量は、およそ70kgの体重の成人の処置のために使用される場合、しばしば0.2mg~20mgの活性物質の範囲に及び、これは、各日にわたって1~4用量の形態で投与され得る。本発明は、病気または医学的な状態、特に、軽度認知障害、認知症、前頭型認知症(pre-frontal dementia)、レビー小体病、アルツハイマー病、パーキンソン病、HAND、脳卒中回復または正常な加齢のようなシナプス喪失が関わる状態の防止または処置において有用であり得る。
本発明の第1の局面によれば、一般式1の直線状ペプチドの使用が提供され、ここで全てのアミノ酸は、Glyが存在しかつGlyがアキラルである場合を除いて、D-立体異性配置にある:
A-B-C-D-E-F-G-H。一般式1)
ここで
Aは、Alaであるかまたは存在しない、
Bは、Ser、Thrであるかまたは存在しない、
Cは、Ser、Thrであるかまたは存在しない、
Dは、Ser、Thr、Asn、Glu、Arg、Ile、Leuである、
Eは、Ser、Thr、Asp、Asnである、
Fは、Thr、Ser、Asn、Arg、Gln、Lys、Trpである、
Gは、Tyrである、
Hは、Thr、Ser、Arg、Glyである。
一般式1において言及されるアミノ酸の全ては、Glyが存在しかつGlyがアキラルである場合を除いて、D-立体異性配置にあり、Hの候補は、エステル化またはアミド化され得る。上記ペプチドは、少なくとも5個のアミノ酸を含む。一般式1の直線状ペプチドの全てがL型のアミノ酸バージョンは、ペプチドTと称され、その改変されたアナログは、以前の研究においてDAPTAと称されていた。
好ましいD-ペプチドは、以下である:
Thr Thr Asn Tyr Thr(配列番号1)、
Ser Ser Thr Tyr Arg(配列番号2)、
Thr Thr Ser Tyr Thr(配列番号3)、
Asn Thr Arg Tyr Arg(配列番号4)、
Ile Asp Asn Tyr Thr(配列番号5)、
Asn Thr Ser Tyr Arg(配列番号6)、
Ile Asn Asn Tyr Thr(配列番号7)、
Asn Thr Ser Tyr Gly(配列番号8)および
Glu Thr Trp Tyr Ser(配列番号9)。
方法
Aβd/tを、培養した7PA2細胞(家族性ADにおいて見出されるヒトAPPの形態を過剰発現するCHO細胞株)の培地から単離した。Aβd/tの量は、合成Aβモノマーの標準を用いたウェスタンブロットによって定量される。ニューロンの培養、固定、透過化、ブロッキングおよび免疫染色を、広い用途での一般的方法によってE16.5マウス海馬ニューロンで開始して行う。アッセイを、7および21 DIVの培養物に対して行い、薬物ありまたはなしで(ペプチドRAP-103およびRAP-310に関しては10-14~10-10M、ならびにマラビロク/AMD3100に関しては10-11~10-7M、約1nM Aβd/tありまたはなしで)6または20 DIVで処理した。GP120タンパク質を、CCR5指向性株CM、CXCR4指向性株MN、および二重指向性株MNから得た。処理後に、細胞を固定し、コフィリンに関しては発表されたように、および成長円錐に関しては2G13抗体で免疫染色し、DAPIで対比染色し、3枚のカバースリップを、ニューロン核抗原NeuNに関しても染色する。分析を、全ての核(DAPI)におけるニューロン(NeuN)のパーセンテージを得て、1ニューロンあたりのロッドを得る。
カバースリップ全体にわたって獲得した、コフィリン、成長円錐および核に関して免疫染色した固定したニューロンの画像を、ImageJにエクスポートした。コフィリン抗体および成長円錐抗体の両方に関して局所閾値および形状/サイズ分割を設定するために、マクロ関数を適用する。神経突起内に存在しなかったコフィリン染色された物質を、排除する。結果を、ロッド/核、面積当たりのロッドの数、全面積のうちのパーセントとしてのロッド、またはNeuN染色されるかもしくは形態的に同定された場合には、ニューロンあたりのロッドとして報告する。
本発明はここで、以下の非限定的な実施例によって例証される。実施例は、添付の図面に言及する。
実施例1
図1Aは、式Iの大部分がL型のペプチドと比較して、全てがD型のものの活性を図示する。同一の一次配列を有するかもしくは部分配列を共有し、エナンチオマー形態においてのみ異なる一般式Iの3つの関連するペプチドが、CCL2化学走性を遮断することが示される。上記ペプチドは、CCR2およびCCR5両方のケモカインレセプターアンタゴニストとして機能する(4)。図1Bは、8種のさらなる全てがD型アミノ酸であるペンタペプチドがまた、CCL1/CCR2相互作用を遮断する知見の一般的性質を示す。
実施例2
ニューロンがシナプス再生を制御するCCR5およびCXCR4レセプターを発現することを図示する。図2Aは、添加された免疫細胞、ミクログリア、サイトカインまたは他の炎症性メディエーターを欠く、培養されたマウス海馬ニューロン中でのHIVエンベロープタンパク質gp120によるケモカインレセプターCXCR4またはCCR5の活性化を示し、これは、シナプス喪失および認知障害への直接的なニューロンのケモカインレセプターの関連性を確認する。HIV gp120のこれらのケモカインレセプターで媒介される効果は、シナプスの喪失(Hillら,(1)によって示される)(従って、特異的ケモカインレセプターアンタゴニストマラビロク(Mar、CCR5)またはAMD3100(AMD、CXC4)によって逆転され得る)によるneuro-AIDS(HAND)の認知上の症状発現をもたらす。
図2Aはまた、gp120で処理したニューロンが、異なるgp120指向性(CCR5 対 CXCR4)形態が、それらのレセプター特異的アンタゴニストであるマラビロク(CCR5)およびAMD3100(CXCR4)によって阻害されることから、CXCR4またはCCR5いずれかのレセプターを介してコフィリンロッド(シナプス破壊への早期移行)を形成することを示す。
図2Bは、AD関連ペプチドβアミロイド(Aβ-トリマー/ダイマー)によって誘導されるシナプス喪失の早期病理が逆転され得、シナプス再生経路が、ニューロンのCCR5をマラビロクで遮断することによって可能にされることを示し、これは、ニューロンのケモカインレセプターをシナプス再生を必要とする異なる(2B、ADと比較して2A、HIV)状態において重要であると同定する。
実施例3
マルチケモカインレセプター(CCR2/CCR5/CCR8/CXCR4)アンタゴニストRAP-103(全てがD型であるTTNYT)およびRAP-310(全てがD型であるASTTTNYT)が、pMおよびより低い濃度においてAβおよびTNF(示さず)のシナプス破壊の早期病理、培養したマウス海馬ニューロンにおけるコフィリンロッドの形成を遮断する能力を図示する。シナプス再生は、活性化コフィリン-アクチンロッドの文脈では起こり得ず、その結果は、マルチケモカインレセプターアンタゴニストペプチドが、コフィリン-ロッドを発現するニューロンのパーセントを低減することによって再生に向かってニューロンの状態をシフトすることを示す。従って、ケモカインレセプターCCR2/CCR5/CCR8またはCXCR4の遮断は、本発明のペプチドで早期AD病理を遮断し、シナプス喪失を逆転させる特異的方法である。シナプス喪失に関わる複数のケモカインレセプターの遮断は、本発明の現行の全てがD型であるペプチドの予測外の利点である。なぜならそれらは、単一のケモカインレセプターを標的化することより良好な保護を提供し得るからである。
実施例4
マルチケモカインレセプターアンタゴニストRAP-103が、アミロイドβ(Aβ)およびαシヌクレインの予備形成原線維(PPF)(それぞれ、アルツハイマー病およびパーキンソン病におけるシナプス喪失のメディエーター)の両方によって引きおこされるシナプス損傷または喪失を生じる早期ニューロン病理を遮断する能力を図示する。RAP-103の効果は、コフィリンロッドが占有するニューロン内の面積を低減することによって、ニューロンの状態をシナプス再生に向かってシフトさせることである。
実施例5
以下の実験は、RAP-103が、成長円錐形成、シナプス再生作用を促進する能力を図示する。アミロイドβ(Aβ)トリマーを、免疫細胞、ミクログリア、およびそれらの分泌する炎症性メディエーターを欠くマウス海馬ニューロンの純粋培養物に添加して、アクチンダイナミクスおよびコフィリンロッド形成を評価した。図5左パネル(RAP-103なし)において、シナプス病理(矢印は、免疫染色したロッドを同定する)は、AD関連システムに関して示される。樹状突起のほぼ全てに、特にそれらの伸長において、ロッド形成が示される。これらのニューロンは、3日目までに死滅する。その関連性は、ロッド病理が、人々に、認知症と関連するシナプス喪失をもたらすことである。本実施例はさらに、RAP-103がシナプス変性状態(ロッド)からシナプス再生状態(ロッドはないが、2G13抗体で染色される成長円錐を発現している)へとニューロンをシフトさせるという予測外の効果を示す(図5,右)。図5,右において、樹状突起の末端におけるコフィリンロッド様構造が、どのように排除され、優勢な表現型として樹状突起の拡がり(dendritic arbor)の長さ全体に沿って分布した活発な成長円錐様構造で置き換えられているかに注意のこと。RAP-103は、シナプス崩壊および喪失の状態から、シナプスの成長円錐拡大および再生へとニューロンをシフトさせる。
その関連性は、成長円錐が、シナプス接触を探しだして形成する軸索の成長中の先端を含み、このような構造が、樹状突起棘形成、シナプス形成の部位の局面であることである。ケモカインレセプターの遮断は、シナプス破壊および喪失からシナプス保存、再構築、および再生へのアクチン-コフィリンダイナミクスにおける一連の複雑な経路の分岐点を制御するようである。その結果は、シナプス形成を促進する手段としてのCCR5遮断の他の報告と一致する(3)。その重要性は、シナプス喪失が全ての神経変性の根柢にあり、処置がほとんど乃至全くない多くの状態および疾患を引きおこすことである。本発明は、正常な加齢におけるような、シナプトパチーの非病的状態を含む広い用途のための新規で顕著な、かつ特有の処置介入を提供する。本発明者らは、確実に作用機序を知っているとは主張しないが、本発明者らは、本発明のペプチドによって引きおこされる2つの効果を示す本発明者らのデータを説明する助けとなる本発明者らの現行のモデルを提供する。第1は、コフィリンロッド形成を遮断することと、成長円錐形成を刺激するというさらなる相応の効果である。両方の特徴は、いずれか単独より良好であり、特有のニューロンの再生表現型を表し得る。
具体的実施形態:
多くの組成物、および方法が本明細書で開示される。これら組成物および方法の具体的な例示的実施形態は、以下で開示される。
実施形態1. シナプスおよび樹状突起棘形成を増強することによって、個人の認知機能を改善する方法において使用するための、Dペプチドマルチケモカインレセプターアンタゴニストを薬学的に受容可能なキャリア中に含む組成物であって;ここで前記Dペプチドは、一般構造: A-B-C-D-E-F-G-Hをさらに含み、ここで:
Aは、Alaであるかまたは存在しない、
Bは、Ser、Thrであるかまたは存在しない、
Cは、Ser、Thrであるかまたは存在しない、
Dは、Ser、Thr、Asn、Glu、Arg、Ile、Leuである、
Eは、Ser、Thr、Asp、Asnである、
Fは、Thr、Ser、Asn、Arg、Gln、Lys、Trpである、
Gは、Tyrである、および
Hは、Thr、Ser、Arg、Glyであり;
ここで前記Dペプチドは、Glyが存在しかつGlyがアキラルである場合を除いて、全てD立体異性配置にあるアミノ酸をさらに含み;そして
ここで前記組成物は、アクチン/コフィリンロッドの形成を防止するように作用し、シナプスおよび樹状突起棘の形成を増強し、従って、前記個人における認知機能を改善する、組成物。
実施形態2.
前記個人は、シナプスおよび樹状突起棘喪失の症状を経験している、実施形態1に従う使用のための組成物。
実施形態3.
前記シナプスおよび樹状突起棘喪失の症状は、加齢関連の認知機能喪失、軽度認知障害、認知症関連の認知機能喪失、脳外傷関連の認知機能喪失、ニューロパチーからなる群より選択される、前述の実施形態のいずれか1つに従う使用のための組成物。
実施形態4.
前記シナプスおよび樹状突起棘喪失の症状は、アルツハイマー病、前頭型認知症、ハンチントン病、シヌクレイノパチー、パーキンソン病、レビー小体病、neuro-AIDS/HAND、脱髄疾患、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病における認知減退、正常な加齢、または脳傷害、脳卒中、糖尿病、ニューロパチー、脳症およびウイルス性脳症の後に起こる病的な神経症状および行動からなる群より選択される、前述の実施形態のいずれか1つに従う使用のための組成物。
実施形態5.
前記組成物を患者に投与する工程は、経口投与、口内投与、非経口投与、局所投与、直腸投与、膣投与、鼻内吸入スプレーによる投与、肺内吸入による投与からなる群より選択される、前述の実施形態のいずれか1つに従う使用のための組成物。
実施形態6.
前記Dペプチドは、Glyが存在しかつGlyがアキラルである場合を除いて、多くても20個のDアミノ酸残基の長さであり、
Thr Thr Asn Tyr Thr(配列番号1)、
Ser Ser Thr Tyr Arg(配列番号2)、
Thr Thr Ser Tyr Thr(配列番号3)、
Asn Thr Arg Tyr Arg(配列番号4)、
Ile Asp Asn Tyr Thr(配列番号5)、
Asn Thr Ser Tyr Arg(配列番号6)、
Ile Asn Asn Tyr Thr(配列番号7)、
Asn Thr Ser Tyr Gly(配列番号8)、および
Glu Thr Trp Tyr Ser(配列番号9)
からなる群より選択される配列を有する5個連続するDアミノ酸残基を含む、
ことをさらに含む、前述の実施形態のいずれか1つに従う使用のための組成物。
実施形態7.
前記Dペプチド誘導体は、多くても12個のDアミノ酸残基の長さである、
ことをさらに含む、前述の実施形態のいずれか1つに従う使用のための組成物。
実施形態8.
前記Dペプチド誘導体は、多くても8個のDアミノ酸残基の長さである
ことをさらに含む、前述の実施形態のいずれか1つに従う使用のための組成物。
実施形態9.
前記Dペプチド誘導体は、多くても5個のDアミノ酸残基の長さである
ことをさらに含む、前述の実施形態のいずれか1つに従う使用のための組成物。
実施形態10.
シナプスおよび樹状突起棘喪失の1またはこれより多くの症状を経験している個人においてシナプスおよび樹状突起棘の喪失を処置する方法において使用するための、ペプチドアナログおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物であって、ここで
前記ペプチドアナログは、[D-Ala1]-Ser-Thr-Thr-Thr-Asn-Tyr-Thr-NH2
であり、ここで第1のアミノ酸は、D立体異性体であり、その残りのアミノ酸は、L立体異性体であり、そのN末端アミノ酸はアミドであり、ここで前記組成物は、患者において前記シナプスおよび樹状突起棘の喪失を処置するように作用する、組成物。
実施形態11.
シナプスおよび樹状突起棘喪失の症状は、アルツハイマー病、ハンチントン病、シヌクレイノパチー、パーキンソン病、脱髄疾患、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症、傷害または外傷、脳症およびウイルス性脳症後の病的な神経症状からなる群より選択される、前述の実施形態のいずれか1つに従う使用のための組成物。
開示の要旨
本発明は、広くは、シナプスおよび樹状突起棘の喪失の状況または状態から、シナプスおよび樹状突起棘の形成/再生のうちの一方へとニューロンをシフトさせる方法による認知の改善に関する。新規な機構は、ニューロンのストレス応答を制御し、シナプスおよび樹状突起棘ダイナミクスをそれらの形成に有利であるように再度均衡をとることによって、記憶および学習を改善するようである。機能的なシナプスおよび樹状突起棘の数を高める方法が開示される。この方法は、全体的な認知機能を改善すると予測される。
引用文献
Figure 2022121359000001

Claims (11)

  1. シナプスおよび樹状突起棘形成を増強することによって、個人の認知機能を改善する方法であって、前記方法は、
    薬学的に受容可能なキャリア中にDペプチドマルチケモカインレセプターアンタゴニストを含む組成物を投与する工程、
    を包含し、前記Dペプチドは、一般構造: A-B-C-D-E-F-G-Hをさらに含み、ここで:
    Aは、Alaであるかまたは存在しない、
    Bは、Ser、Thrであるかまたは存在しない、
    Cは、Ser、Thrであるかまたは存在しない、
    Dは、Ser、Thr、Asn、Glu、Arg、Ile、Leuである、
    Eは、Ser、Thr、Asp、Asnである、
    Fは、Thr、Ser、Asn、Arg、Gln、Lys、Trpである、
    Gは、Tyrである、および
    Hは、Thr、Ser、Arg、Glyであり、
    ここで前記Dペプチドは、Glyが存在しかつGlyがアキラルである場合を除いて、全てD立体異性配置にあるアミノ酸をさらに含み、前記投与する工程は、前記組成物を、治療上有効な用量において前記個人に投与することを包含し、前記組成物は、アクチン/コフィリンロッドの形成を防止するように作用し、シナプスおよび樹状突起棘の形成を増強し、従って、前記個人における認知機能を改善する、方法。
  2. 前記個人は、シナプスおよび樹状突起棘喪失の症状を経験している個人をさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記シナプスおよび樹状突起棘喪失の症状は、加齢関連の認知機能喪失、軽度認知障害、認知症関連の認知機能喪失、脳外傷関連の認知機能喪失、ニューロパチーからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
  4. 前記シナプスおよび樹状突起棘喪失の症状は、アルツハイマー病、前頭型認知症、ハンチントン病、シヌクレイノパチー、パーキンソン病、レビー小体病、neuro-AIDS/HAND、脱髄疾患、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病における認知減退、正常な加齢、または脳傷害、脳卒中、糖尿病、ニューロパチー、脳症およびウイルス性脳症の後に起こる病的な神経症状および行動からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
  5. 前記組成物を患者に投与する工程は、経口投与、口内投与、非経口投与、局所投与、直腸投与、膣投与、鼻内吸入スプレーによる投与、肺内吸入による投与からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  6. 前記Dペプチドは、Glyが存在しかつGlyがアキラルである場合を除いて、多くても20個のDアミノ酸残基の長さであり、
    Thr Thr Asn Tyr Thr(配列番号1)、
    Ser Ser Thr Tyr Arg(配列番号2)、
    Thr Thr Ser Tyr Thr(配列番号3)、
    Asn Thr Arg Tyr Arg(配列番号4)、
    Ile Asp Asn Tyr Thr(配列番号5)、
    Asn Thr Ser Tyr Arg(配列番号6)、
    Ile Asn Asn Tyr Thr(配列番号7)、
    Asn Thr Ser Tyr Gly(配列番号8)、および
    Glu Thr Trp Tyr Ser(配列番号9)からなる群より選択される配列を有する5個連続するDアミノ酸残基を含む、
    ことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記Dペプチド誘導体は、多くても12個のDアミノ酸残基の長さである
    ことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記Dペプチド誘導体は、多くても8個のDアミノ酸残基の長さである
    ことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
  9. 前記Dペプチドは、5個のDアミノ酸残基の長さである
    ことをさらに含む、請求項6に記載の方法。
  10. シナプスおよび樹状突起棘喪失の1またはこれより多くの症状を経験している個人においてシナプスおよび樹状突起棘の喪失を処置する方法であって、前記方法は、
    ペプチドアナログおよび薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を投与する工程を包含し、前記ペプチドアナログは、[D-Ala1]-Ser-Thr-Thr-Thr-Asn-Tyr-Thr-NHであり、
    第1のアミノ酸は、D立体異性体であり、その残りのアミノ酸は、L立体異性体であり、そのN末端アミノ酸はアミドであり、前記投与する工程は、前記ペプチドアナログを治療上有効な用量において患者に投与することを包含し、ここで前記組成物は、前記患者において前記シナプスおよび樹状突起棘の喪失を処置するように作用する、方法。
  11. シナプスおよび樹状突起棘喪失の症状は、アルツハイマー病、ハンチントン病、シヌクレイノパチー、パーキンソン病、脱髄疾患、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、多発性硬化症 (MS)、筋萎縮性側索硬化症、傷害または外傷、脳症およびウイルス性脳症後の病的な神経症状からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
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