以下に、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
準ミリ波帯やミリ波帯の電波の利用が可能なアンテナとして、導波管を用いた導波管スロットアレーアンテナがある。導波管は、マイクロストリップなどに比べ、誘電損失や放射損がないため、高効率なアンテナとなる。導波管スロットアレーアンテナでは、複数個の導波管スロットである放射素子を直線状、平面状、又は曲面状などに配列し、その全部又は一部を励振し、所望の放射指向性を得るアンテナである。なお、放射指向性を放射パターンと表記することがある。以下では、本発明の実施の形態として、導波管スロットアレーアンテナをアレーアンテナの一例として説明するが、放射素子をダイポールとしたダイポールアレーアンテナなどにも適用できる。よって、アレーアンテナは、導波管スロットアレーアンテナに限らず、放射素子をダイポールとしたダイポールアレーアンテナなどを含むものとする。同様に、サブアレーは、導波管スロットを放射素子とするものに限らず、ダイポールを放射素子としたものを含むものとする。
なお、以下では、アンテナは、電波を放射するとして説明するが、アンテナの可逆性により、電波を受信することができる。分配回路は、電波を放射する場合には信号を分配し、電波を受信する場合には受信した信号を合成する。電波を放射する場合には信号を分配することを、信号のための電力を供給することから給電すると表記する。
[第1の実施の形態]
(導波管スロットアレーアンテナ)
図1は、第1の実施の形態が適用される導波管スロットアレーアンテナの一例を示す図である。図1(a)は、平面図、図1(b)は、一個のサブアレー10を残して給電回路20を示した斜視図である。図1(a)において、紙面の右方向がx方向、紙面の上方向がy方向、紙面の表面方向がz方向である。よって、図1(b)において、x方向、y方向及びz方向は、図中に示す方向となる。なお、x方向を水平方向、y方向を垂直方向と表記することがある。平面図とは、z方向から導波管スロットアレーアンテナを見た図である。他においても、同様とする。
図1(a)に示すように、導波管スロットアレーアンテナは、平面形状が四角形の板状に構成されている。ここで、四角形の一辺の方向がx方向、この辺に直交する方向がy方向となる。導波管スロットアレーアンテナは、z方向に電波を放射する。なお、平面形状とは、z方向から見た形状を言う。他においても、同様とする。
導波管スロットアレーアンテナは、サブアレー10がx方向に8個、y方向に8個、等間隔に配列されて構成されている。つまり、導波管スロットアレーアンテナは、64個(=8×8)のサブアレー10を備えている。なお、サブアレー10は、複数の放射素子60(後述する図2に示す放射素子61など)を含んで構成されている。なお、導波管スロットアレーアンテナが備えるサブアレー10は、上記以外の配列であってもよく、64個以外の数であってもよい。
図1(b)に示すように、導波管スロットアレーアンテナにおいて、サブアレー10は、給電回路20上に配列されている。給電回路20は、給電点(不図示)からトーナメント状に分岐するように設けられている。そして、サブアレー10は、給電回路20の分岐した端部に設けられている。つまり、図1(a)に示した導波管スロットアレーアンテナでは、給電回路20は64分岐されて並列給電される。給電回路20は、電波が伝播する空間である。給電回路20は、例えば、給電回路20の部分を開口とする導電性の板で構成される。つまり、給電回路20の開口部分が導波管として機能する。
並列給電される導波管スロットアレーアンテナにおいては、放射素子60に給電する給電回路20の電気的な寸法の制約、例えば導波管のカットオフなどにより、放射素子60に個別に給電することが難しい。よって、複数の放射素子60でサブアレー10を構成し、サブアレー10毎に給電されて、電波を放射する。つまり、サブアレー10に対して一体として電波(電力)が供給されることをいう。
以下では、実施の形態などに基づいて、サブアレー10をサブアレー11、12、13、…と表記し、放射素子60を放射素子61、62、63、…と表記する。なお、サブアレー11、12、13、…をそれぞれ区別しないときはサブアレー10と表記し、放射素子61、62、63、…をそれぞれ区別しないときは放射素子60と表記する。他の構成要素についても同様とする。
(従来のサブアレー11において生じうる課題)
次に、従来のサブアレー11において生じうる課題を説明する。
まず、第1の実施の形態が適用されない、従来のサブアレー11について説明する。
図2は、第1の実施の形態が適用されない、従来のサブアレー11の斜視図である。なお、図2には、サブアレー11が設けられる給電回路20を構成する支持基板100と給電回路層200とを合わせて示している。
ここで、後述する放射素子61の長手方向をx方向とし、短手方向をy方向とする。そして、z方向は、図1と同じである。ここでは、後述する各層をz方向に分離して示している。
支持基板100と、給電回路層200との上に設けられたサブアレー11は、下層(-z方向)側から、結合スロット層300と、キャビティ層400と、放射スロット層500と、放射素子層600とを備える。放射素子層600は、一例として、4個の放射素子60を備える。4個の放射素子60は、x方向に2個配列され、y方向に2個配列されている。つまり、放射素子60は、2×2に配列(2×2配列)されている。放射スロット層500は、放射素子層600の4個の放射素子61に対して各々設けられた4個の放射スロット51を備える。キャビティ層400は、4個の放射スロット50に対して共通に設けられた1個のキャビティ40を備える。そして、結合スロット層300は、キャビティ40に対して設けられた1個のカップリングスロット30を備える。
給電回路層200は、給電回路20の端部がカップリングスロット30に対向するように設けられている。
結合スロット層300に設けられたカップリングスロット30、キャビティ層400に設けられたキャビティ40、放射スロット層500に設けられた放射スロット51、及び、放射素子層600に設けられた放射素子61は、給電回路20と同様に、導電性部材で構成された結合スロット層300、キャビティ層400、放射スロット層500、及び、放射素子層600設けられた、開口である。つまり、開口部分が導波管として機能する。なお、給電回路層200、キャビティ層400、放射素子層600のz方向の厚さは、設計波長λ(設計周波数に対応する波長)に対して、1/4λ前後であって、概ね1/8λ以上且つ1/2λ以下に設定される。なお、設計周波数とは、導波管スロットアレーアンテナに対して想定する周波数帯域の中心周波数である。よって、設計周波数は、中心周波数と呼ばれることがある。
図3は、第1の実施の形態が適用されない、従来のサブアレー11をさらに説明する図である。図3(a)は、平面図、図3(b)は、サブアレー11を複数配列した導波管スロットアレーアンテナの一部を示す図である。ここで、x方向、y方向及びz方向は、図1(a)と同じである。図3(a)では、放射素子61を長方形で示し、図3(b)では、簡略化して放射素子61を〇で示す。他においても同様とする。
図3(a)に示すように、サブアレー11は、4個の放射素子61(図3(a)では、放射素子61a、61b、61c、61dと表記する。)を備える。そして、4個の放射素子61a、61b、61c、61dのそれぞれは、間隔Dの正方形の格子点に配列されている。つまり、放射素子61a、61bがx方向に中心間が距離Dで配列され、同様に放射素子61c、61dがx方向に中心間が距離Dで配列されている。そして、放射素子61aと放射素子61cとがy方向に中心間が距離Dで配列され、同様に放射素子61bと放射素子61dとがy方向に中心間が距離Dで配列されている。すなわち、x方向とy方向とに、それぞれ2個の放射素子61が配列されている。つまり、放射素子61は、2×2配列されている。なお、x方向の中心間の距離Dが距離D1で、y方向の中心間の距離Dが距離D2で、距離D1と距離D2とが異なってもよい。この場合には、放射素子61は、x方向が間隔D1、y方向が間隔D2の正四角形の格子点に配列されていることになる。よって、距離Dを間隔Dと表示することがある。ここで、x方向が第1の方向の一例であり、y方向が第2の方向の一例である。そして、x方向の中心間の距離D(距離D1)が、第1の間隔の一例であり、y方向の中心間の距離D(距離D2)が、第2の間隔の一例である。なお、第1の方向と第2の方向は、直交してなくてもよく、交差していればよい。他の場合も同様である。
放射素子61の平面形状は、図3(a)に示すように、x方向を長手方向、y方向を短手方向とする長方形である。そして、長手方向、つまりx方向とz方向とで作る面をH面とする電波を放射する。なお、放射素子61の長手方向の長さは、0.5λ以上且つ1.0λ以下に設定される。また、短手方向の幅は、0.5λ以下であって、特性に応じで調整される。後述する図13(a)に示すリッジ構造の放射素子63を除いて、他の放射素子についても同様である。
図3(b)に示すように、導波管スロットアレーアンテナにおいては、サブアレー11(図3(b)では、サブアレー11a、11b、11c、11d、11e、11fと表記する。)が、サブアレー11間における放射素子61間が距離Dとなるように配列される。サブアレー11bにのみ、放射素子61に符号を付しているが、他のサブアレー11も同様である。サブアレー11bに着目して説明すると、サブアレー11bの放射素子61aとサブアレー11aの放射素子61bとがx方向に距離Dで配置され、サブアレー11bの放射素子61cとサブアレー11eの放射素子61aとがy方向に距離Dで配置されている。他のサブアレー11についても同様である。よって、サブアレー11の平面形状は、一辺が長さ2Dの正方形である。
図4は、サブアレー11により構成される導波管スロットアレーアンテナの特性を説明する図である。図4(a)は、x方向における開口分布、図4(b)は、x方向とy方向とで作る面における指向性である。図4(a)において、横軸が放射素子の番号、縦軸が正規化した放射強度(正規化放射強度)、図4(b)において、横軸はz方向に対する角度[°]、縦軸が相対振幅[dB]である。図4(a)、(b)には、2×2配列のサブアレー11に給電して制御する場合、つまりx方向に2個の放射素子61を配置して制御する場合(以下では、2放射素子制御と表記する。)と、放射素子61毎に給電して制御する場合(以下では、1放射素子制御と表記する。)とを合わせて示す。
導波管スロットアレーアンテナは、放射素子61がx方向に16個、y方向に16個配列されているとする。つまり、2放射素子制御の場合は、サブアレー11がx方向に8個、y方向に8個配列されている。放射素子61の番号とは、x方向に配列された16個の放射素子61に順に番号を付したものである。
指向性は、開口分布におけるサイドローブレベルを-30dBとしたテイラー分布であるとしてアレー計算法により求めた。1放射素子制御の場合に対しても、アレー計算法により指向性を求めた。
図4(a)に示すように、1放射素子制御(黒丸)では、開口分布を理想的なテイラー分布に設定できる。しかし、2放射素子制御(白丸)では、2個の放射素子61が一体として給電されることから、2個毎に放射強度が設定される。このため、開口分布が、1放射素子制御における理想的なテイラー分布からずれてしまう。
図4(b)に示すように、1放射素子制御(破線)では、z方向(0°)からの角度が大きくなるにしたがって、サイドローブは、振幅が低下していく。しかし、2放射素子制御(実線)では、45°近傍において振幅の大きなサイドローブが見られる。これは、2放射素子制御では、2個の放射素子61が一体として給電されることによる。
以上説明したように、第1の実施の形態が適用されない、従来のサブアレー11では、特定の方向に振幅が大きなサイドローブが発生する。z方向(0°)からの角度が大きくなるにしたがってサイドローブの振幅が低下せず、特定の角度で振幅の大きなサイドローブが発生することは好ましくない。特定の角度で振幅の大きなサイドローブが発生することを、特定の方向にサイドローブが発生すると表記することがある。
(第1の実施の形態が適用されるサブアレー12)
図5は、第1の実施の形態が適用されるサブアレー12を説明する図である。図5(a)は、平面図、図5(b)は、サブアレー12を複数配列した導波管スロットアレーアンテナの一部を示す図である。ここで、x方向、y方向及びz方向は、図3(a)、(b)と同じである。
図5(a)に示すサブアレー12は、4個の放射素子62(図5(a)では、放射素子62a、62b、62c、62dと表記する。)を備える。放射素子62a、62bがx方向に中心間の距離Dで配列され、同様に放射素子62c、62dがx方向に中心間の距離Dで配列されている。そして、放射素子62bと放射素子62cとがy方向に中心間の距離Dで配列されている。つまり、サブアレー12は、図3(a)に示したサブアレー11において、放射素子61c、61dをx方向に距離Dずらした構成となっている。ここで、放射素子62a、62bの配列が第1列の一例であり、放射素子62c、62dの配列が第2列の一例である。なお、サブアレー12に対しても、放射素子62の配列を2×2配列と呼ぶことがある。
図5(b)に示すように、導波管スロットアレーアンテナにおいては、サブアレー12(図5(b)では、サブアレー12a、12b、12c、12d、12e、12fと表記する。)は、隣接するサブアレー12間において、放射素子62がx方向及びy方向に中心間の距離Dとなるように配置されている。サブアレー12bにのみ、放射素子62に符号を付しているが、他のサブアレー12も同様である。サブアレー12bに着目して説明すると、サブアレー12bの放射素子62aとサブアレー12aの放射素子62dとがy方向に中心間の距離Dで配列されている。サブアレー12bの放射素子62dとサブアレー12cの放射素子62aとがy方向に中心間の距離Dで配列されている。そして、サブアレー12bの放射素子62dとサブアレー12fの放射素子62aとがy方向に中心間の距離Dで配列されている。他のサブアレー12間においても同様である。このように配列すると、サブアレー12は、サブアレー12bに示すように、平面形状が一辺長2Dの正方形とみなせる。つまり、図5(a)に示す、第1の実施の形態が適用されるサブアレー12と、図3(a)に示す、第1の実施の形態が適用されないサブアレー11とで、平面形状における面積は同じである。なお、第1の間隔の一例である、x方向の中心間の距離D(距離D1)は、0.5λ以上且つ1λ以下であるとよい。
すると、サブアレー12bに示す正方形において、サブアレー12bの放射素子62aの-y方向側には、隣接するサブアレー12aの放射素子62dが配列されている。すなわち、隣接するサブアレー12aとサブアレー12bとの間、つまり隣接するサブアレー12aとサブアレー12bとの境界部分において、y方向に放射素子62が互い違いになるように配列されている。また、サブアレー12bの放射素子62dのy方向側には、隣接するサブアレー12cの放射素子62aが配列されている。すなわち、隣接するサブアレー12bとサブアレー12cとの間、つまり隣接するサブアレー12bとサブアレー12cとの境界部分において、y方向に放射素子62が互い違いになるように配列されている。
図6は、サブアレー12により構成される導波管スロットアレーアンテナの特性を説明する図である。図6(a)は、相対振幅、図6(b)は、±45°面における相対振幅、図6(c)は、三次元パターンである。+45°面とは、図5(a)に示したx方向からy方向に-45°ずれた方向とz方向とで作る面であり、-45°面とは、x方向からy方向に+45°ずれた方向とz方向とで作る面である。図6(a)、(b)において、横軸は角度[°]、縦軸は相対振幅[dB]である。ここでの三次元パターンとは、放射される電波の三次元像を、x方向とy方向とで作る面(x-y平面)に投影したものである。つまり、電波の放射がz方向に集中している場合は、x-y平面における原点(x軸とy軸との交点)近傍に電波の強い部分を示すパターン(放射パターン)が見られる。しかし、z方向以外の方向にサイドローブが発生する場合には、x-y平面において、その方向に電波の強い部分を示すパターン(放射パターン)が表れる。
ここでは、設計周波数を27GHzとし、放射素子62の中心間の距離Dを0.8λ(9mm)とした場合を示す。この導波管スロットアレーアンテナは、周波数帯域が24GHz~30GHz(比帯域22%)を想定したものである。なお、放射素子62の長手方向の長さは、8mmである。
図6(a)に示すように、x方向とz方向とで作る面、つまりH面の相対振幅(実線で示すH面)は、サイドローブが抑圧されている。一方、y方向とz方向とで作る面、つまりE面の相対振幅(破線で示すE面)においては、±45°の近傍に、サイドローブが見られる。このサイドローブは、図4(b)に示した2放射素子制御の場合と同様である。H面においてサイドローブが抑圧されるのは、図5(b)に示したように、放射素子62がy方向に互い違いに配列されることにより、H面(x方向)では、隣接するサブアレー12間において、放射強度が平均化されてサイドローブが抑圧されたと考えられる。しかし、図5(a)から分かるように、E面(y方向)においては、隣接する放射素子62間での放射強度が平均化されないため、サイドローブが抑圧されないと思われる。
なお、図6(b)に示すように、サブアレー12を用いた導波管スロットアレーアンテナでは、±45°面において、±60°近傍にサイドローブが表れることが分かる。
よって、図6(c)の三次元パターンに示すように、x方向(H面)では、サイドローブの発生が抑圧されるのに対して、y方向(E面)及び±45°方向(±45°面)では、サイドローブが現れることが分かる。
図7は、第1のサブアレー12における放射素子62の中心間の距離Dを異ならせた場合の導波管スロットアレーアンテナの特性を説明する図である。図7(a)は、H面における相対振幅、図7(b)は、±45°面における相対振幅、図7(c)は、三次元パターンである。ここでは、放射素子62の中心間の距離Dを、設計周波数27GHzに対して、0.8λと0.64λとした。なお、図7(c)に示す三次元パターンは、距離Dが0.64λの場合である。
図7(a)に示すように、H面における相対振幅において、距離Dが0.64λの場合(実線)が、距離Dが0.8λの場合(破線)に比べ、±70°近傍のサイドローブが抑圧されている。そして、図7(b)に示す±45°面における相対振幅は、距離Dが0.64λの場合(実線)が、距離Dが0.8λの場合(破線)に比べ、±60°近傍のサイドローブが大幅に抑圧されている。よって、図7(c)の三次元パターンにおいて、±45°方向において放射パターンがほとんど見られない。つまり、サブアレー12において、放射素子62の間隔Dを小さくすると、±45°方向に現れるサイドローブが抑圧される。
以上のことから、第1の実施の形態が適用されるサブアレー12は、y方向に互い違いに放射素子62を配置することにより、x方向(H面)において、振幅強度の大きいサイドローブの発生が抑圧される。つまり、サブアレー12において、一方向に放射素子60を互い違いに配置することより、その方向に垂直な方向とz方向とで作る面において、振幅の大きなサイドローブの発生が抑圧される。
図8は、第1の実施の形態が適用されるサブアレー12の構造を示す図である。ここでは、電波が透過する開口部分(空洞)のみを示している。なお、図8では、給電回路20を合わせて示している。x方向、y方向、z方向は、図5(a)と同様である。
サブアレー12は、図2に示したサブアレー11と同様に、給電回路20上に、下層(-z方向)側から、キャビティ40、Hブランチキャビティ72(図8では、Hブランチキャビティ72a、72b)と、放射素子62(放射素子62a、62b、62c、62d)の順に積層されて構成されている。Hブランチキャビティ72aは、x方向に配列された放射素子62a、62bに対応して設けられ、Hブランチキャビティ72bは、x方向に配列された放射素子62c、62dに対応して設けられている。なお、Hブランチキャビティ72は、ブランチキャビティ層700に開口として構成されている。なお、不図示であるが、給電回路20とキャビティ40との間には、カップリングスロット30(図2参照)が設けられ、キャビティ40とHブランチキャビティ72との間には、放射スロット52(後述する図9(a)参照)が設けられている。なお、ブランチキャビティ層700のz方向の厚さは、設計波長λに対して、1/4λ前後であって、概ね1/8λ以上且つ1/2λ以下に設定される。
Hブランチキャビティ72は、磁界(H)に基づいて電波を2個の放射素子62に分配(分岐)するので、Hブランチキャビティと表記する。なお、Hブランチキャビティ72は、ブランチキャビティの一例である。
図9は、第1の実施の形態が適用されるサブアレー12の構造を分解して示す図である。図9(a)~(c)は、積層された上下の関係を説明する図である。そして、図9(a)~(c)において、上側に斜視図、下側に平面図を示している。なお、上側の斜視図におけるx方向、y方向及びz方向は、図8と同様であり、下側の平面図におけるx方向、y方向及びz方向は、図5(a)、(b)と同様である。
図9(a)は、キャビティ40と放射スロット52a、52bとを示す。放射スロット52a、52bは、平面形状がx方向を長手方向とし、y方向を短手方向とする長方形であって、キャビティ40の-x方向側且つy方向側の角部と、x方向側且つ-y方向側の角部に配置されている。なお、放射スロット52a、52bは、x方向及びy方向に中心間の距離Dで配置されている。
図9(b)は、放射スロット52a、52bとHブランチキャビティ72a、72bとを示す。Hブランチキャビティ72a、72bは、平面形状がx方向を長手方向とし、y方向を短手方向とする長方形である。Hブランチキャビティ72a、72bのそれぞれの平面形状の中心が、放射スロット52a、52bの平面形状の中心に一致するように設けられている。よって、矢印に示すように、Hブランチキャビティ72により、放射スロット52からの電波が±x方向に伝播する。
図9(c)は、Hブランチキャビティ72a、72bと放射素子62a、62b、62c、62dとを示す。放射素子62a、62bは、Hブランチキャビティ72aに対してx方向に並ぶように設けられ、放射素子62c、62dは、Hブランチキャビティ72bに対してx方向に並ぶように設けられている。なお、放射素子62は、x方向及びy方向に中心間の距離Dとなるように配置されている。
上記に示したキャビティ40、Hブランチキャビティ72a、72b、及び放射素子62a、62b、62c、62dを重ね合わせることにより、図8に示したサブアレー12が構成される。そして、キャビティ40の上に、x方向に距離D離して2個の放射スロット52を設けるとともに、Hブランチキャビティ72a、72bを設けて、放射素子62a、62b、62c、62dが配置される位置をx方向に距離Dずらすことにより、導波管スロットアレーアンテナにおいて、y方向に放射素子62が互い違いに配列されるようにしている。
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態におけるサブアレー12をサブアレー13に置き換えたものである。他の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、同様の部分の説明を省略し、異なる部分であるサブアレー13を説明する。
(第2の実施の形態が適用されるサブアレー13)
図10は、第2の実施の形態が適用されるサブアレー13を説明する図である。図10(a)は、平面図、図10(b)は、サブアレー13を複数配列した導波管スロットアレーアンテナの一部を示す図である。ここで、x方向、y方向及びz方向は、図3(a)、(b)と同じである。
図10(a)に示すサブアレー13は、4個の放射素子63(図10(a)では、放射素子63a、63b、63c、63dと表記する。)を備える。放射素子63a、63cがx方向に中心間の距離Dで配列されている。また、放射素子63bが放射素子63cに対してy方向に中心間の距離Dで配列されている。そして、放射素子63dが放射素子63cからx方向に中心間の距離D、-y方向に中心間の距離D離れた位置に設けられている。つまり、一辺長2Dの正方形において、y方向側の辺の中点に放射素子63bが配列され、x方向側の辺の中点に放射素子63aが配列され、放射素子63aのx方向側に中心間の距離D離れた位置(正方形の中心)に放射素子63cが配列され、x方向側及び-y方向側の角に放射素子63dが配列されている。言い換えれば、サブアレー13は、図5(a)に示した第1の実施の形態が適用されるサブアレー12において、y方向に並ぶ放射素子62b、62cをy方向に距離Dずらした配列である。つまり、サブアレー13は、図3(a)に示したサブアレー11における放射素子61において、放射素子61c、61dをx方向(H面)に距離Dずらす(サブアレー12になる)とともに、放射素子61b、61cをy方向に距離Dずらしたものである。なお、放射素子63a、63cの配列が列の一例であり、放射素子63cは、一端部に設けられた放射素子63の一例である。
図10(b)に示すように、導波管スロットアレーアンテナにおいては、サブアレー10(図10(b)では、サブアレー13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h、13iと表記する。)が、サブアレー13間における放射素子63間がx方向及びy方向において中心間が距離Dとなるように配列される。サブアレー13eにのみ、放射素子63に符号を付しているが、他のサブアレー13も同様である。サブアレー13eに着目して説明すると、サブアレー13eの放射素子63aのy方向側に、サブアレー13aの放射素子63dが配列される。サブアレー13eの放射素子63aの-y方向側に、サブアレー13dの放射素子63dが配列されている。サブアレー13eの放射素子63bのx方向側に、サブアレー13bの放射素子63dが配列され、サブアレー13eの放射素子63bの-x方向側に、サブアレー13aの放射素子63dが配列されている。他のサブアレー13間においても同様である。このように配列すると、サブアレー13は、サブアレー13eに示すように、平面形状が一辺長2Dの正方形とみなせる。つまり、図10(a)に示す、第2の実施の形態が適用されるサブアレー13と、図3(a)に示す、第1の実施の形態が適用されないサブアレー11と、図5(a)に示す、第1の実施の形態が適用されるサブアレー12とで、平面形状における面積は同じである。
すると、サブアレー13eに示す正方形において、サブアレー13eの放射素子63aのy方向側には、隣接するサブアレー13aの放射素子63dが配列され、-y方向側には、隣接するサブアレー13dの放射素子63dが配列されている。すなわち、隣接するサブアレー13間、つまり隣接するサブアレー13の境界部分において、y方向に放射素子63が互い違いに配列されている。同様に、サブアレー13eの放射素子63bのx方向側には、サブアレー13bの放射素子63dが配列され、-x方向側にはサブアレー13aの放射素子63dが配列されている。すなわち、隣接するサブアレー13間、つまり隣接するサブアレー13の境界部分において、x方向に放射素子63が互い違いに配列されている。
図11は、サブアレー13により構成される導波管スロットアレーアンテナの特性を説明する図である。図11(a)は、相対振幅、図11(b)は、±45°面における相対振幅、図11(c)は、三次元パターンである。±45°面の定義などは、図6(a)、(b)、(c)と同じである。
ここでも、設計周波数を27GHzとし、放射素子62の中心間の距離Dを0.8λ(9mm)とした場合を示す。この導波管スロットアレーアンテナは、周波数帯域が24GHz~30GHz(比帯域22%)を想定したものである。
図11(a)に示すように、H面の相対振幅(実線で示すH面)及びE面の相対振幅(破線で示すE面)は、共に特定の角度におけるサイドローブが抑圧されている。H面及びE面において共にサイドローブが抑圧されるのは、図10(b)に示したように、放射素子63がx方向及びy方向に互い違いに配列されていることによる。つまり、放射素子63をx方向及びy方向に互い違いに配列することにより、隣接するサブアレー13間において、放射強度が平均化されてサイドローブが抑圧されたと考えられる。
なお、図11(b)に示すように、+45°面(図11(b)の実線)では、サイドローブが抑圧されているが、-45°面(図11(b)の破線)では、サイドローブが現れている。これは、図10(b)に示したように、サブアレー13は、+45°方向(x方向からy方向に-45°ずれた方向)では放射素子63が対称に配列されているのに対し、-45°方向(x方向からy方向に45°ずれた方向)では放射素子63が対称に配列されていないことによると考えられる。
よって、図11(c)の三次元パターンに示すように、x方向(H面)及びy方向(E面)では、サイドローブの発生が抑圧されている。そして、45°面に比べ、-45°面において、振幅の大きなサイドローブが生じていることが分かる。
図12は、第2のサブアレー13における放射素子63の中心間の距離Dを異ならせた場合の導波管スロットアレーアンテナの特性を説明する図である。図12(a)は、H面における相対振幅、図12(b)は、-45°面における相対振幅、図12(c)は、三次元パターンである。ここでは、放射素子63の中心間の距離Dを、設計周波数27GHzに対して0.8λと0.64λとした。なお、図12(c)に示す三次元パターンは、距離Dが0.64λの場合である。
図12(a)に示すように、H面における相対振幅において、距離Dが0.64λの場合(実線)が、距離Dが0.8λの場合(破線)に比べ、±70°近傍のサイドローブが抑圧されている。そして、図12(b)に示す-45°面における相対振幅は、距離Dが0.64λの場合(実線)が、距離Dが0.8λの場合(破線)に比べ、±60°近傍のサイドローブが大幅に抑圧されている。よって、図12(c)の三次元パターンにおいて、±45°方向に放射パターンがほとんど見られない。つまり、サブアレー13において、放射素子62の間隔Dを小さくすると、-45°方向に現れるサイドローブが抑圧される。
図13は、第2の実施の形態が適用されるサブアレー13の構造を示す図である。図13(a)は、斜視図、図3(b)は、キャビティ40とEブランチキャビティ80との間に設けられたEベント81との関係を説明する図である。ここでは、電波が透過する開口部分(空洞)のみを示している。なお、図13(a)では、給電回路20を合わせて示している。x方向、y方向、z方向は、図10(a)と同様である。
図13(a)に示すように、サブアレー13は、図2に示したサブアレー11と同様に、給電回路20上に、下層(-z方向)側から、キャビティ40、Eブランチキャビティ80(図13では、Eブランチキャビティ80a、80b)、放射素子63(放射素子63a、63b、63c、63d)の順に積層されて構成されている。Eブランチキャビティ80は、キャビティ40と接続される、L字型に構成されたEベント81(図13では、Eベント81a、81b)を備える。Eブランチキャビティ80aは、放射素子63a、63bに対応して設けられ、Eブランチキャビティ80bは、放射素子63c、63dに対応して設けられている。このため、Eブランチキャビティ80a、80bは、それぞれがx方向にずれて設けられている。なお、Eブランチキャビティ80は、Eブランチキャビティ層800に設けられている。Eブランチキャビティ層800のz方向の厚さは、設計波長λに対して、1/4λ前後であって、概ね1/8λ以上且つ1/2λ以下に設定される。
図13(b)に示すように、キャビティ40は、カップリングスロット41(図13(b)では、41a、41b)を備える。また、Eブランチキャビティ80aは、放射スロット82(図13(b)では、放射スロット82a、82b)を備え、Eブランチキャビティ80bは、放射スロット82(図13(b)では、放射スロット82c、82d)を備える。そして、L字型のEベント81aは、Eブランチキャビティ80aから延びて、キャビティ40のカップリングスロット41aと接続されている。同様に、L字型のあるEベント81bは、Eブランチキャビティ80bから延びて、キャビティ40のカップリングスロット41bと接続されている。Eベント81a、82bは、導電性部材で囲まれた空洞である。E面方向に±x方向に対して対称に折り曲げられたEブランチキャビティ80a、80bに対して、H面方向に放射素子63を分離して配置し、それらを逆相で給電する構成である。なお、図13(b)には、電界を実線の矢印で、磁界を破線の矢印で示している。Eブランチキャビティ80は、電界(E)に基づいて電波を分岐することから、Eブランチキャビティと表記する。なお、Eブランチキャビティ80が備えるEベント81も同様である。ここでは、Eベント81は、Eブランチキャビティ80の一部としたが、別の部材で構成してもよい。なお、Eブランチキャビティ80は、ブランチキャビティの他の一例である。
なお、図13(b)において、カップリングスロット30の長手方向をy方向にして、カップリングスロット41a、41bを±x方向の端部に設けるようにしてもよい。
図14は、Eブランチキャビティ80と放射素子63との積層関係を説明する図である。図14(a)、(b)は、積層された上下の関係を説明する図である。
図14(a)は、Eブランチキャビティ80a、80bを示す。Eブランチキャビティ80a、80bは、平面形状がx方向を長手方向とする概略長方形である。そして、Eブランチキャビティ80aは、-x方向側且つ-y方向側に放射スロット82aを有し、+x方向側且つ+y方向側に放射スロット82bを有する。一方、Eブランチキャビティ80bは、-x方向側且つ+y方向側に放射スロット82cを有し、+x方向側且つ-y方向側に放射スロット82dを有する。放射スロット82a、82b、82c、82dは、平面形状がx方向を長手方向とする長方形である。そして、Eブランチキャビティ80aの中心とEブランチキャビティ80bの中心とは、x方向に距離D離れ、y方向に距離D離れて配列されている。
図14(b)は、放射素子63a、63b、63c、63dを示す。放射素子63a、63b、63c、63dのそれぞれは、放射スロット82a、82b、82c、82dに対応して設けられている。放射素子63aと放射素子63cとは、x方向に配列されているが、放射素子63aに対応する放射スロット82aは、放射素子63aと放射素子63cとの中心を結ぶ線(一点鎖線)より、+y方向にΔy(+Δy)ずれて設けられている。また、放射素子63cに対応する放射スロット82cは、放射素子63aと放射素子63cとの中心を結ぶ線(一点鎖線)より、-y方向にΔy(-Δy)ずれて設けられている。同様に、放射素子63bに対応する放射スロット82bは、放射素子63bの中心から-y方向にΔy(-Δy)ずれて設けられ、放射素子63dに対応する放射スロット82dは、放射素子63dの中心から+y方向にΔy(+Δy)ずれて設けられている。
上記に示したキャビティ40、Eブランチキャビティ80a、80b、及び放射素子63a、63b、63c、63dを重ね合わせることにより、図13に示したサブアレー13が構成される。そして、キャビティ40の上に、Eブランチキャビティ80a、80bを設けて、放射素子63が配置される位置をx方向(H面)及びy方向(E面)にずらして配列している。
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、第1の実施の形態におけるサブアレー12又は第2の実施の形態におけるサブアレー13を、サブアレー14に置き換えたものである。他の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、同様の部分の説明を省略し、異なる部分であるサブアレー14を説明する。
(第3の実施の形態が適用されるサブアレー14)
図15は、第3の実施の形態が適用されるサブアレー14を説明する図である。図15(a)は、平面図、図15(b)は、サブアレー14を複数配列した導波管スロットアレーアンテナの一部を示す図である。ここで、x方向、y方向及びz方向は、図5(a)、(b)と同様である。
図15(a)に示すサブアレー14は、8個の放射素子64(図15(a)では、放射素子64a、64b、64c、64d、64e、64f、64g、64hと表記する。)を備える。放射素子64a、64b、放射素子64c、64d、放射素子64e、64f、放射素子64g、64hのそれぞれがx方向に中心間の距離Dで配列されている。また、放射素子64b、64c、64f、64gがy方向に中心間の距離D/2離れて配列されている。言い換えれば、サブアレー14は、図5(a)に示した第1の実施の形態が適用されるサブアレー12を、y方向に2個重ねた構成である。なお、y方向の中心間の距離は、D/2になっている。ここで、放射素子64a、64bの配列が第1列の他一例であり、放射素子64c、64dの配列が第2列の他一例であり、放射素子64e、64fの配列が第3列の一例であり、放射素子64g、64hの配列が第4列の一例である。なお、サブアレー14における放射素子62の配列を2×4配列と呼ぶことがある。
図15(b)に示すように、導波管スロットアレーアンテナにおいては、サブアレー14(図15(b)では、サブアレー14a、14b、14c、14d、14e、14fと表記する。)が、サブアレー14間において、放射素子63間がx方向では距離Dとなり、y方向では距離D/2となるように配列される。サブアレー14eにのみ、放射素子64に符号を付しているが、他のサブアレー14も同様である。サブアレー14eに着目して説明すると、サブアレー14eの放射素子64aのy方向側に、サブアレー14aの放射素子64hが配列され、サブアレー14eの放射素子64aの-y方向側に、サブアレー14dの放射素子64dが配列されている。また、サブアレー14eの放射素子64dのy方向側に、サブアレー14fの放射素子64aが配列され、サブアレー14eの放射素子64dの-y方向側に、サブアレー14fの放射素子64eが配列されている。他のサブアレー14間においても同様である。このように配列すると、サブアレー14は、サブアレー14eに示すように、平面形状が一辺長2Dの正方形とみなせる。つまり、図15(a)に示す、第3の実施の形態が適用されるサブアレー14と、図3(a)に示す、第1の実施の形態が適用されないサブアレー11と、図5(a)に示す、第1の実施の形態が適用されるサブアレー12と、図10(a)に示す、第2の実施の形態が適用されるサブアレー13とで、平面形状における面積は同じである。
すると、サブアレー14eに示す正方形において、サブアレー14aの放射素子64hと、サブアレー14eの放射素子64aと、サブアレー14dの放射素子64dと、サブアレー14eの放射素子64eと、サブアレー14dの放射素子64hとのように、隣接するサブアレー14a、14d、14eの間、つまり隣接するサブアレー14a、14d、14eの境界部分において、y方向で互い違いに配列されている。同様に、サブアレー14bの放射素子64hと、サブアレー14fの放射素子64aと、サブアレー14eの放射素子64dと、サブアレー14fの放射素子64eと、サブアレー14eの放射素子64hとのように、隣接するサブアレー14b、14e、14fの間、つまり隣接するサブアレー14b、14e、14fの境界部分において、放射素子64がy方向で互い違いに配列されている。
図16は、サブアレー14により構成される導波管スロットアレーアンテナの特性を説明する図である。図16(a)は、相対振幅、図16(b)は、±45°面における相対振幅、図14(c)は、三次元パターンである。±45°面の定義などは、図6(a)、(b)、(c)と同じである。
ここでも、設計周波数を27GHzとし、距離Dを0.8λ(9mm)とした場合を示す。この導波管スロットアレーアンテナは、周波数帯域が24GHz~30GHz(比帯域22%)を想定したものである。
図16(a)に示すように、H面の相対振幅(実線で示すH面)は、サイドローブが抑圧されている。一方、E面の相対振幅(破線で示すE面)においては、±45°の近傍に、サイドローブが見られる。このサイドローブは、図4(b)に示した2放射素子制御の場合と同様である。H面においてサイドローブが抑圧されるのは、図15(b)に示したように、y方向において放射素子64が互い違いに配列されていることによる。つまり、放射素子64をy方向に互い違いに配列することにより、隣接するサブアレー14間において、放射強度が平均化されてサイドローブが抑圧されたと考えられる。しかし、図15(a)から分かるように、x方向においては、隣接する放射素子62が互い違いに配列されていないため、サブアレー14間で放射強度が平均化されないため、E面におけるサイドローブが抑圧されないと思われる。
なお、図16(b)に示すように、サブアレー14を用いた導波管スロットアレーアンテナでは、±45°面において、サイドローブが抑圧されていることが分かる。
よって、図16(c)の三次元パターンに示すように、x方向(H面)及び±45°方向(±45°面)では、サイドローブの発生が抑圧されるのに対して、y方向(E面)では、サイドローブが現れていることが分かる。
図17は、第3の実施の形態が適用されるサブアレー14の構造を示す斜視図である。ここでは、電波が透過する開口部分(空洞)のみを示している。なお、図17では、給電回路20を合わせて示している。x方向、y方向、z方向は、図8と同様である。
サブアレー14は、図2に示したサブアレー11と同様に、給電回路20上に、下層(-z方向)側から、キャビティ40、オフセットキャビティ94(図17では、オフセットキャビティ94a、94b、94c、94d)、Hブランチキャビティ74(図17では、Hブランチキャビティ74a、74b、74c、74d)、放射素子64(図17では、放射素子64a、64b、64c、64d、64e、64f、64g、64h)が順に積層されて構成されている。なお、図17には、オフセットキャビティ94a、94bは、隠れていて表示されていない。また、オフセットキャビティ94はオフセットキャビティ層900に設けられている。オフセットキャビティ層900のz方向の厚さは、設計波長λに対して、1/4λ前後であって、概ね1/8λ以上且つ1/2λ以下に設定される。
Hブランチキャビティ74aは、x方向に配列された放射素子64a、64bに対応して設けられ、Hブランチキャビティ74bは、x方向に配列された放射素子64c、64dに対応して設けられている。同様に、Hブランチキャビティ74cは、x方向に配列された放射素子64e、64fに対応して設けられ、Hブランチキャビティ74dは、x方向に配列された放射素子64g、64hに対応して設けられている。なお、不図示であるが、給電回路20とキャビティ40との間には、カップリングスロット30(図2参照)が設けられ、キャビティ40とオフセットキャビティ94との間には、放射スロット54が設けられている(後述する図18(a)参照)。
図18は、第3の実施の形態が適用されるサブアレー14の構造を分解して示す図である。図18(a)~(d)は、積層された上下の関係を説明する図である。そして、図18(a)~(d)において、上側に斜視図、下側に平面図を示している。なお、x方向、y方向及びz方向は、図9と同様である。なお、下側の平面図において、x方向に距離D/2の間隔で一点鎖線を表記し、y方向に距離D/4の間隔で一点鎖線を表記している。
図18(a)は、キャビティ40と放射スロット54a、54b、54c、54dとを示す。放射スロット54a、54b、54c、54dは、平面形状がx方向を長手方向とし、y方向を短手方向とする長方形であって、平面形状が四角形であるキャビティ40の四隅に配置されている。なお、放射スロット54a、54b、54c、54dは、それぞれがx方向及びy方向に距離Dで配置されている。
図18(b)は、放射スロット54a、54b、54c、54dとオフセットキャビティ94a、94b、94c、94dとを示す。オフセットキャビティ94a、94b、94c、94dは、それぞれが放射スロット54a、54b、54c、54dに対応して設けられている。放射スロット54a、54b、54c、54dは、平面形状が四角形である。そして、矢印で示すように、オフセットキャビティ94a、94cは、放射スロット54a、54cの中心に対して、それぞれの平面形状の中心が+y方向に距離D/4ずらして設けられ、オフセットキャビティ94b、94dは、放射スロット54b、54dの中心に対して、それぞれの平面形状の中心が-y方向に距離D/4ずらして設けられている。つまり、オフセットキャビティ94a、94b、94c、94dは、放射スロット54a、54b、54c、54dに対して、±y方向にあらかじめ定められた距離(ここでは、距離D/4)ずらしている(オフセットさせている)。よって、オフセットキャビティ94をオフセットキャビティと表記する。よって、図18(b)の下側の図において矢印で示すように、オフセットキャビティ94により、放射スロット54からの電波が+y方向又は-y方向に伝播する。
図18(c)は、オフセットキャビティ94a、94b、94c、94dとHブランチキャビティ74a、74b、74c、74dとを示す。Hブランチキャビティ74a、74b、74c、74dは、平面形状がx方向を長手方向とし、y方向を短手方向とする長方形である。Hブランチキャビティ74a、74b、74c、74dは、それぞれの平面形状における中心が、オフセットキャビティ94a、94b、94c、94dの平面形状における中心に一致するように設けられている。よって、図18(c)の下側の図に矢印で示すように、Hブランチキャビティ74により、オフセットキャビティ94からの電波が±y方向に電波が伝播する。
図18(d)は、Hブランチキャビティ74a、74b、74c、74dと放射素子64a、64b、64c、64d、64e、64f、64g、64hとを示す。放射素子64a、64bは、Hブランチキャビティ74aに対してx方向に並ぶように設けられ、放射素子64c、64dは、Hブランチキャビティ74bに対してx方向に並ぶように設けられている。放射素子64e、64fは、Hブランチキャビティ74cに対してx方向に並ぶように設けられ、放射素子64g、64hは、Hブランチキャビティ74dに対してx方向に並ぶように設けられている。なお、放射素子64の平面形状の中心間は、x方向が距離D、y方向が距離D/2となるように配置されている。
上記に示したキャビティ40、オフセットキャビティ94、Hブランチキャビティ74、及び放射素子64を重ね合わせることにより、図17に示したサブアレー14が構成される。キャビティ40に4個の放射スロット54を設け、放射スロット54に対して±y方向にずらしたオフセットキャビティ94を設け、オフセットキャビティ94に対して、Hブランチキャビティ74を設けることで、放射素子64が配置される位置がx方向(H面)に互い違いになるようにしている。
図19は、第3の実施の形態が適用されるサブアレー14をFDTD法で解析した結果を説明する図である。図19(a)は、サブアレー14の構成、図19(b)は、FDTD法での解析モデル、図19(c)は、反射特性である。図19(c)において、縦軸は反射特性を表すSパラメータS11[dB]、横軸は周波数[GHz]である。
図19(a)は、図15(a)と同じである。
図19(b)に示すように、解析は、サブアレー14が周期的に配列されているとした周期的境界条件(PBC:Periodic Boundary Condition)を用いて、時間領域差分(FDTD:Finite Difference Time Domain)法(ここでは、FDTD法と表記する。)で行った。ここで、設計周波数を24GHz~30GHz、比帯域22%とし、距離Dを周波数27GHzでの0.8λ(9mm)とした。
図19(c)に示すように、反射特性を表すSパラメータS11は、周波数範囲24GHz~30GHzにおいて、-18dB以下である。
図20は、サブアレー14を用いた導波管スロットアレーアンテナを解析した結果を説明する図である。図20(a)は、一個のサブアレー14を残して給電回路20を示した斜視図、図20(b)は、放射素子64の配列、図20(c)は、反射特性である。図20(c)において、縦軸は反射特性を表すSパラメータS11[dB]、横軸は周波数[GHz]である。
図20(a)では一個のサブアレー14のみを示すが、導波管スロットアレーアンテナは、給電回路20上にサブアレー14が8×8配列されて構成されている。よって、図20(b)に示すように、導波管スロットアレーアンテナは、放射素子64がx方向に16個、y方向に32個配列されて構成されている。
ここで、設計周波数を24GHz~30GHz、比帯域22%とし、距離Dを周波数27GHzでの0.8λ(9mm)とした。そして、給電される電力分布は、8×8分配とし、サイドローブレベルが-30dBのテイラー分布とした。よって、図20(b)に示すように、放射素子64が配列される領域は、放射素子64の中心間において、x方向が144mm、y方向が139.5mmとなる。
ここでは、給電回路20を含めたFDTD法によって解析した。電力分布は、給電回路20の性能に依存する。
図20(c)に示すように、反射特性を表すSパラメータS11は、周波数範囲24GHz~30GHzにおいて、-15dB以下である。給電回路20の特性が含まれることにより、反射特性は、図19(c)に示したサブアレー14の解析した結果に比べ高くなっている。
図21は、サブアレー14を用いた導波管スロットアレーアンテナの24.0GHzにおける特性を示す図である。図21(a)は、H面指向性、図21(b)は、E面指向性、図21(c)は、45°面指向性、図21(d)は、三次元指向性である。図21(a)、(b)、(c)において、太い実線が時間領域差分法で解析した結果(FDTDと表記)、破線がアレー計算法で解析した結果(アレー計算と表記)、細い実線が比較のために示す2×2配列のサブアレー11を用いた導波管スロットアレーアンテナをアレー計算法で解析した結果(2×2配列)である。他の場合も同様である。
図22は、導波管スロットアレーアンテナの27.0GHzにおける特性を示す図である。図22(a)は、H面指向性、図22(b)は、E面指向性、図22(c)は、45°面指向性、図22(d)は、三次元指向性である。
図23は、導波管スロットアレーアンテナの30.0GHzにおける特性を示す図である。図23(a)は、H面指向性、図23(b)は、E面指向性、図23(c)は、45°面指向性、図22(d)は、三次元指向性である。
図21(a)、図22(a)、図23(a)に示す周波数24GHz、27GHz、30GHzのH面指向性において、サブアレー14を用いた導波管スロットアレーアンテナは、比較のために示したサブアレー11を用いた導波管スロットアレーアンテナに比べ、±45°近傍のサイドローブが抑圧されていることが分かる。そして、図21(b)、図22(b)、図23(b)に示す周波数24GHz、27GHz、30GHzのE面指向性において、サブアレー14を用いた導波管スロットアレーアンテナは、比較のために示したサブアレー11を用いた導波管スロットアレーアンテナに比べ、±45°近傍のサイドローブがやや抑圧されていることが分かる。さらに、図21(c)、図22(c)、図23(c)に示す周波数24GHz、27GHz、30GHzの45°面指向性において、サイドローブが抑圧されていることが分かる。
図21(d)、図22(d)、図23(d)に示す周波数24GHz、27GHz、30GHzの三次元指向性において、上記の特性が確認できる。
なお、図15(a)に示したように、第3の実施の形態が適用されるサブアレー14では、放射素子64は、y方向において、中心間が距離D/2で配列されている。よって、x方向の中心間の距離D(距離D1)を設計波長λに対して0.5λ以上且つ1λ以下とした場合、第2の間隔の一例であるy方向の中心間の距離D/2(距離D2)の最小値は、0.25λとなる。また、y方向に放射素子64をさらに2列追加した構成(2×6配列)とした場合には、放射素子64は、y方向において、中心間が距離D/3で配列される。この場合には、第2の間隔の一例であるy方向の中心間の距離D/3(距離D2)の最小値は、0.16λとなる。このように、y方向に配列される放射素子64の数に対応して、中心間の距離である第2の間隔を設定すればよい。つまり、第2の間隔の一例であるy方向の中心間の距離(距離D2)は、0.5λ以下であって、第2の方向の一例であるy方向に放射素子64が配列される間隔とすれば、サブアレー14の平面形状における面積は、従来のサブアレー11における平面形状の面積と同程度にできる。
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態では、第3の実施の形態におけるサブアレー14をサブアレー15に置き換えたものである。他の構成は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略し、異なるサブアレー15を説明する。
(第4の実施の形態が適用されるサブアレー15)
図24は、第4の実施の形態が適用されるサブアレー15を説明する図である。図24(a)は、平面図、図24(b)は、ダイポールで構成された放射素子65の側面図である。図24(a)におけるx方向、y方向及びz方向は、図15(a)と同じである。図24(b)は、図24(a)の放射素子65を-y方向からみた図である。
図24(a)に示すように、サブアレー15は、第3の実施の形態が適用されるサブアレー14の導波管スロットである放射素子64をダイポールで構成された放射素子65に置き換えたものである。
図24(b)に示すように、放射素子65は、対の放射部651a、651bを備える。そして、図24(a)に示すように、対の放射部651a、651bが、x方向に並ぶように配置される。この場合、x方向とz方向とで作る面がE面となり、y方向とz方向とで作る面がH面になる。
サブアレー15は、それぞれの放射素子65がマイクロストリップライン652により並列接続されることで構成することができる。そして、給電回路20(図20(a)参照)は、放射素子65を保持する基板に設けられたカップリングスロット653などを介して、マイクロストリップライン652に給電される。給電回路20はマイクロストリップラインでもよく、その場合は放射素子65を保持する基板などに設けられたスルーホールなどを介して、マイクロストリップライン652に給電される。給電回路20から放射素子65までのマイクロストリップライン652は、同じ長さに構成されている。サブアレー15のそれぞれのダイポール65は、一体として電力が供給される。
放射素子65であっても、第3の実施の形態と同様に、サブアレー15を複数配列したアレーアンテナにおいて、特定の方向に生じるサイドローブが抑制できる。
なお、ダイポールで構成される放射素子65を、第1の実施の形態が適用されるサブアレー12又は第2の実施の形態が適用されるサブアレー13に適用してもよい。
さらに、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な変形を行っても構わない。
本発明が適用されるアレーアンテナは、第1の方向に第1の間隔で、当該第1の方向と交差する第2の方向に当該第1の間隔と同じ又は異なる第2の間隔で設けられた格子点のそれぞれに放射素子が配列されるアレーアンテナであって、一体として放射する信号が供給又は受信した信号が合成される、複数の前記放射素子でそれぞれが構成される複数のサブアレーを備え、前記第1の方向において隣接する前記サブアレーの境界部分において、前記第2の方向に配列された前記放射素子が互い違いに配列され、前記サブアレーは、前記第1の方向に複数の前記放射素子が配列された第1列と、前記第1列と前記第2の方向側で隣接し、前記第1の方向に複数の前記放射素子が配列された第2列と、前記第2列と前記第2の方向側で隣接し、前記第1の方向に複数の前記放射素子が配列された第3列と、前記第3列と前記第2の方向側で隣接し、前記第1の方向に複数の前記放射素子が配列された第4列と、を備え、前記第1列に配列された複数の前記放射素子が、前記第2列に配列された複数の当該放射素子より、前記第1の方向に少なくとも前記第1の間隔ずれて設けられ、かつ、当該第1列に配列された複数の当該放射素子及び前記第3列に配列された複数の当該放射素子が、当該第2列に配列された複数の当該放射素子及び前記第4列に配列された複数の当該放射素子より、当該第1の方向に少なくとも当該第1の間隔ずれて設けられ、前記第1の間隔が、設計波長λに対し0.5λ以上且つ1λ以下であり、前記第2の間隔が、設計波長λに対し0.5λ以下であって、前記放射素子が前記第2の方向に配列される間隔である。