JP2022117936A - 防炎シート、組電池及び電池パック - Google Patents
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Abstract
Description
組電池は、複数の電池セルが直列又は並列に接続されたものであり、例えば、ポリカーボネート等からなる電池ケースに各電池セルを格納して一体化され、電動工具の内部に収容される。
このような電池セルの変形は、組電池化した電池セルに対し充放電サイクルを行う場合(すなわち「通常使用時」の場合)においてもわずかに発生しており、充放電の際に電池セルの内圧の上昇及び低下が繰り返された場合に、電池セルに対して、ケースによる押圧及び緩和が繰り返され、電池の性能が低下する原因となる。
また、上記特許文献1に記載の組電池は、複数のブロックが必要であり、また、ブロックと電池セルとの隙間を変化させるため、組電池が搭載される電子機器や電動工具等に応じて、ブロックの設計が必要となる。したがって、ブロックの設計及び組電池の組立が煩雑になるという問題点がある。
一対の防炎材と、前記一対の防炎材の間に配置された弾性部材と、を有する、防炎シート。
前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることを特徴とする、[7]に記載の防炎シート。
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことを特徴とする、[7]に記載の防炎シート。
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の無機繊維である、[7]に記載の防炎シート。
前記電池セルと、
前記電池セルの外周面の少なくとも一部を被覆する防炎材と、
前記電池セルの外周面における前記防炎材により被覆された領域の少なくとも一部を被覆する弾性部材と、を有する、組電池。
その結果、本発明者は、各電池セルの外周面の少なくとも一部を防炎材により被覆し、防炎材により被覆された領域の少なくとも一部を弾性部材で被覆することにより、上記課題を解決できることを見出した。
図1は、本発明の実施形態に係る防炎シートを用いた組電池を模式的に示す断面図である。
各電池セル2は、電極3を有する電極面2aと、電極面2aに直交する面である外周面2bとを有し、各電池セル2は、その外周面2b同士が対向するように配置され、電極3及び不図示のコネクタ等を介して直列又は並列に接続されている。
複数の電池セル2の間には、防炎シート10が配置されている。防炎シート10は、一対の防炎材4と、この一対の防炎材4の間に配置された弾性部材5とを有する。すなわち、図1に示すように、防炎材4は、電池セル2の外周面の少なくとも一部を被覆しており、弾性部材5は、防炎材4により被覆された領域の少なくとも一部を被覆している。そして、これら複数の電池セル2と防炎材4とが電池ケース30に収容されることにより、組電池100が構成されている。
本実施形態においては、通常使用時である充放電サイクルにおける電池セル2のわずかな変形に対しても、弾性部材5が柔軟に変形するため、電池セル2の電池性能の低下を抑制することができる。
また、本実施形態において、防炎シート10は、複数の電池セル2の間に配置されていたが、電池セル2の外周面2bを周方向に被覆していてもよい。例えば、電池セル2の外周面2bに周方向に巻回するように防炎材4が配置され、弾性部材5のみが隣り合う電池セル2の間に配置されるような防炎シート10を使用することができる。また、電池セル2の外周面2bに周方向に巻回するように防炎材4が配置され、さらに、弾性部材5が防炎材4の外周面2bに巻回するように配置されるものであってもよい。
図2は、本発明の実施形態に係る電池パックを模式的に示す断面図である。
電池パック1は、樹脂等により形成された電池ケース7に、以下に詳細に説明する組電池6が収容されたものである。
各電池セル2は、電極3を有する電極面2aと、電極面2aに直交する面である外周面2bとを有し、各電池セル2は、その外周面2b同士が対向するように配置され、電極3及び不図示のコネクタ等を介して直列又は並列に接続されている。
電池セル2の外周面2bは防炎材4により被覆され、さらに防炎材4の外周面は弾性部材5により被覆されており、これにより、組電池6が構成されている。なお、弾性部材5は、両端部が開口した筒状体であり、電池セル2及び防炎材4の外周面を周方向に被覆している。なお、本実施形態において弾性部材5(筒状体)の両端部とは、弾性部材5の長手方向(図2において上下方向)における一方の端部及び他方の端部の両方、すなわち、筒状体の開口端部を意味する。
さらに、異常時に、電池セル2が高温になり、内圧の上昇により破裂した場合であっても、電池セル2は弾性部材5により被覆されているため、例えば、電池セル2の破片や電池セル2に存在していた有機電解液などが、他の電池セル2に到達して悪影響を及ぼすことを防止することができる。
本実施形態においては、通常使用時である充放電サイクルにおける電池セル2のわずかな変形に対しても、弾性部材5が柔軟に変形するため、電池セル2の電池性能の低下を抑制することができる。
また、図2に示すように、防炎材4は電池セル2の外周面の全面を被覆し、電池セル2を押圧するように構成されていることも好ましいが、上記したような熱暴走の連鎖を抑制することができるものであれば、図1に示すように、必要に応じて、一部の領域が被覆されていない構成も好適に用いることができる。
さらに、弾性部材5は、防炎材4により被覆された電池セル2の外周面全面を被覆する必要はなく、上記したような弾性部材5が奏する効果が期待できるものであればよい。例えば、図1に示すように、電池セル2の外周面2bの一部が被覆されるものであってもよい。このような構成であっても、上述のとおり、弾性部材5による効果を十分に得ることができる。
本実施形態に係る組電池6に用いられる防炎材4としては、有機繊維及び無機繊維の少なくとも一方を含有することが好ましく、必要に応じて無機粒子を含有することがより好ましい。本実施形態においては、これらの材料を、例えばシート状に加工したものを使用することができる。防炎材4を構成する材料としては、断熱性を有することが重要であるため、断熱性能が高い材料から選択される。
無機粒子としては、耐熱性を有する化合物からなるものであることが好ましく、単一の材質の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の材質の無機粒子を組み合わせて使用してもよい。2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できるため、断熱性能を向上させることができる。2種以上の無機粒子が含有されている場合に、各無機粒子の好ましい材質、形状及び粒子径について、以下に説明する。
(酸化物粒子)
酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、無機粒子として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ムライト(Al6O13Si2)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)、ジルコン(ZrSiO4)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al2O3)等が挙げられるが、これに限定されない。すなわち、無機粒子として使用することができる上記酸化物粒子のうち、1種のみを使用してもよいし、2種以上の酸化物粒子を使用してもよい。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域において防炎材4内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。
一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、無機粒子としてナノ粒子を使用すると、更に空隙が細かく分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、防炎材4内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、防炎材4の断熱性を維持することができる。
なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化鉄(Fe(OH)2)、水酸化マンガン(Mn(OH)2)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)2)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)等が挙げられる。
2Al(OH)3→Al2O3+3H2O
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
また、第1の無機粒子41として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、防炎材4の中心付近にある第1の無機粒子41(無機水和物)が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、防炎材4の中心付近の第1の無機粒子41が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
窒化物粒子としては、窒化ホウ素(BN)等が好適に挙げられる。
炭化物粒子としては、炭化ホウ素(B4C)等が好適に挙げられる。
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
本発明に用いる防炎材4は、無機粒子として無機バルーンを含んでいてもよい。
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、防炎材4内における熱の対流伝熱または伝導伝熱を抑制することができ、防炎材4の断熱性をより一層向上させることができる。
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、およびガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
無機バルーンの含有量としては、防炎材全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
防炎材4に2種の無機粒子が含有されている場合に、第2の無機粒子12は、第1の無機粒子41と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子12としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。特に、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
金属酸化物からなる第2の無機粒子12を防炎材4に含有させる場合に、第2の無機粒子12の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子12の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
第1の無機粒子41がシリカナノ粒子であり、第2の無機粒子12が金属酸化物である場合に、第1の無機粒子41の含有量が、第1の無機粒子41と第2の無機粒子12との合計質量に対して、60質量%以上95質量%以下であると、輻射伝熱の抑制に必要な金属酸化物粒子の量と、伝導・対流伝熱の抑制とクッション性に必要なシリカナノ粒子の量を最適化できる。
その結果、電池の通常使用時における温度から500℃以上の高温までの広い温度領域にわたって、外部から圧縮力が加わってもバランスよく高い断熱性が得られると考えられる。
無機繊維としては、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維、チタン酸カリウムウィスカ繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト等の鉱物系繊維等が挙げられる。
これらの無機繊維は、耐熱性、強度、入手容易性などの点で好ましい。無機繊維のうち、取り扱い性の観点から、特にシリカ-アルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維、ガラス繊維が好ましい。
防炎材4が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維31の平均繊維径が、第2の無機繊維32の平均繊維径よりも大きく、第1の無機繊維31が線状又は針状であり、第2の無機繊維32が樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。平均繊維径が大きい(太径の)第1の無機繊維31は、防炎材4の機械的強度や形状保持性を向上させる効果を有する。2種の無機繊維のうち一方、例えば、第1の無機繊維31を第2の無機繊維32よりも太径にすることにより、上記効果を得ることができる。防炎材4には、外部からの衝撃が作用することがあるため、防炎材4に第1の無機繊維31が含まれることにより、耐衝撃性が高まる。外部からの衝撃としては、例えば電池セルの膨張による押圧力や、電池セルの発火による風圧などである。
また、防炎材4の機械的強度や形状保持性を向上させるためには、第1の無機繊維31が線状又は針状であることが特に好ましい。なお、線状又は針状の繊維とは、後述の捲縮度が例えば10%未満、好ましくは5%以下である繊維をいう。
なお、第1の無機繊維31は長すぎても成形性や加工性が低下するおそれがあるため、繊維長を100mm以下とすることが好ましい。さらに、第1の無機繊維31は短すぎても形状保持性や機械的強度が低下するため、繊維長を0.1mm以上とすることが好ましい。
なお、第2の無機繊維32は、長くなりすぎると成形性や形状保持性が低下するため、第2の無機繊維32の繊維長は0.1mm以下であることが好ましい。
第2の無機繊維32が樹枝状である場合に、その平均繊維径は、SEMによって幹部及び枝部の径を数点測定し、これらの平均値を算出することにより得ることができる。
捲縮度(%)=(繊維長さ-繊維末端間距離)/(繊維長さ)×100
ここで、繊維長さ、繊維末端間距離ともに電子顕微鏡写真上での測定値である。すなわち、2次元平面上へ投影された繊維長、繊維末端間距離であり、現実の値よりも短くなっている。この式に基づき、第2の無機繊維32の捲縮度は10%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。捲縮度が小さいと、他の無機繊維や無機粒子等の保持能力や、第2の無機繊維32同士、第1の無機繊維31と第2の無機繊維32との絡み合い(ネットワーク)が形成されにくくなる。
防炎材4が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維31は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維32は、第1の無機繊維31よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。また、上記2種の無機繊維とともに、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含む第1の無機粒子41を使用することにより、さらに一層断熱性能を向上させることができる。
第1の無機繊維31としては、具体的には、融点が700℃未満である無機繊維が好ましく、多くの非晶質の無機繊維を用いることができる。中でも、SiO2を含む繊維であることが好ましく、安価で、入手も容易で、取扱い性等に優れることから、ガラス繊維であることがより好ましい。
第2の無機繊維32が結晶質の繊維からなるものであるか、又は第1の無機繊維31よりもガラス転移点が高いものであると、高温にさらされたときに、第1の無機繊維31が軟化しても、第2の無機繊維32は溶融又は軟化しない。したがって、電池セルの熱暴走時においても形状を維持し、電池セル間に存在し続けることができる。
また、第2の無機繊維32が溶融又は軟化しないと、防炎材4に含まれる各粒子間、粒子と繊維との間、及び各繊維間における微小な空間が維持されるため、空気による断熱効果が発揮され、優れた熱伝達抑制性能を保持することができる。
第2の無機繊維32として挙げられた繊維のうち、融点が1000℃を超えるものであると、電池セルの熱暴走が発生しても、第2の無機繊維32は溶融又は軟化せず、その形状を維持することができるため、好適に使用することができる。
なお、上記第2の無機繊維32として挙げられた繊維のうち、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維及びアルミナシリケート繊維等のセラミックス系繊維、並びに鉱物系繊維を使用することがより好ましく、この中でも融点が1000℃を超えるものを使用することが更に好ましい。
なお、第2の無機繊維32としては、例示した種々の無機繊維を単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
したがって、第2の無機繊維32が非晶質の繊維である場合に、第2の無機繊維32のガラス転移点は、第1の無機繊維31のガラス転移点よりも100℃以上高いことが好ましく、300℃以上高いことがより好ましい。
防炎材4が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維31は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維32は、第1の無機繊維31よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、第1の無機繊維31の平均繊維径が、第2の無機繊維32の平均繊維径よりも大きいことが好ましい。
防炎材4が、2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維31の含有量は、防炎材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、第2の無機繊維32の含有量は、防炎材の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
有機繊維43としては、特に限定されないが、合成繊維、天然繊維、パルプなどが利用できる。合成繊維としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂からなる繊維が選択可能であり、例えば、変性されたポリエチレンテレフタラート(PET;PolyEthylene Terephthalate)繊維、ポリエチレン(PE;PolyEthylene)繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリブチレンテレフタラート繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリウレタン繊維、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリアセタール繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアミド繊維、ポリパラフェニルフタルアミド繊維等からなる合成繊維を使用することができる。
ビニロン(vinylon):ビニルアルコール単位を質量比で65%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ビニラール(vinylal):アセタール化の水準の異なるポリビニルアルコールの長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride,chlorofiber):塩化ビニル単位を主成分として形成された長鎖状合成高分子から成る繊維。
ビニリデン(polyvinylidene chloride,chlorofiber):塩化ビニリデン単位(-CH2-CCl2-)を主成分として形成された長鎖状合成高分子から成る繊維。
アクリル(acrylic):アクリロニトリル基の繰返し単位が質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
アクリル系(modacrylic):アクリロニトリル基の繰返し単位が質量比で35%以上、85%未満含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ナイロン(nylon,polyamide):繰り返しているアミド結合の85%以上が脂肪族又は環状脂肪族単位と結合している長鎖状合成高分子から成る繊維。
アラミド(aramid):2個のベンゼン環に直接結合しているアミド又はイミド結合が質量比で85%以上であり、イミド結合がある場合は、その数がアミド結合の数を超えない長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリエステル(polyester):テレフタル酸と2価アルコールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリエチレンテレフタラート(PET;polyethylene terephthalate):テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリトリメチレンテレフタラート(PTT;polytrimethylene terephthalate):テレフタル酸と1,3-プロパンジオールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリブチレンテレフタラート(PBT;polybutylene terephthalate):テレフタル酸と1,4-ブタンジオールとのエステル単位を質量比で85%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリエチレン(PE;polyethylene):置換基のない飽和脂肪族炭化水素で構成する高分子で、長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリプロピレン(PP;polypropylene):2個当たり1個の炭素原子にメチル基の側鎖がある飽和脂肪族炭化水素で構成する高分子で、立体規則性があり、他に置換基のない長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリウレタン(elastane,polyurethane):ポリウレタンセグメントを質量比で85%以上含み、張力をかけないときの長さの3倍に伸長したとき、張力を除くとすぐ元の長さに戻る長鎖状合成高分子から成る繊維。
ポリ乳酸(polylactide):乳酸エステル単位を質量比で50%以上含む長鎖状合成高分子から成る繊維。
有機繊維43の平均繊維長及び平均繊維径の好ましい範囲は、無機繊維と同様である。
本実施形態において用いることができる防炎材4は、上記第1の無機粒子41及び第2の無機粒子12、第1の無機繊維31及び第2の無機繊維32や有機繊維43の他に、結合材、着色剤等のように、防炎材に成形するために必要な成分を含んでいてもよい。以下、その他の成分についても詳細に説明する。
本発明の防炎材4は、バインダ9のような結合材を含まないものであっても、焼結等により形成されることができるが、特に防炎材4がシリカナノ粒子を含む場合には、防炎材4としての形状を保持するために、適切な含有量で結合材を添加することが好ましい。本発明において結合材とは、無機粒子を保持するために繋ぎ止めておくものであればよく、接着を伴うバインダ、粒子を物理的に絡める繊維、粘着力で付着する耐熱樹脂などその形態は問わない。上記第1の無機繊維31及び第2の無機繊維32も結合剤として機能する。
本実施形態に係る組電池6に用いられる弾性部材5としては、電池セル2の変形に対して柔軟に変形する弾性と、隣り合う電池セル2の間に防炎シート10を配置したときや、防炎材4で被覆された電池セル2に弾性部材5を装着した際に、電池セル2の膨張や収縮を吸収し、電池セル2を押圧する伸縮性とを有するものを使用することができる。このような弾性部材5としては、例えば、ゴム又はエラストマーを用いることができる。
なお、図2に示す弾性部材5は、両端部が開口した筒状体であり、外表面及び内表面は平滑に形成されたものであるが、弾性部材5の形状は上記図2に示す形状に限定されない。
図4に示すように、筒状体である弾性部材15の内表面には、弾性部材15の一端部15aから他端部15bに延びる複数の溝16が形成されている。なお、本実施形態において弾性部材5(筒状体)の一端部15a及び他端部15bとは、それぞれ弾性部材5の長手方向(図4において上下方向)における一方の端部及び他方の端部を意味し、すなわち、筒状体の開口端部を示す。
また、溝16は、必ずしも弾性部材15の長手方向に平行な方向に形成される必要はないが、電池セル2の熱を隣接する電池セル2に伝播させないようにするために、熱せられた気体は電池セル2の電極面2a側及び電極面2aに対向する面側に排出されることが好ましい。したがって、溝16を形成する場合は、弾性部材15の一端部15aから他端部15bに延びるように形成すればよい。
溝16が弾性部材15の長手方向に平行な方向ではなく、平行な方向に対して所定の角度を有するように形成された場合に、電池セル2の表面におけるより広い領域を冷却することができる。なお、溝16は螺旋状となるように形成されていてもよいし、曲線状に形成されていてもよい。
上記所定の角度とは、上記平行な方向に対して0°超であることが好ましい。一方、上記所定の角度が45°以下であると、熱せられた高温気体を効率よく排出することができる理由から好ましく、30°以下であることがより好ましい。
また、貫通孔27は、必ずしも弾性部材25の長手方向に平行な方向に形成される必要はなく、貫通孔27を形成する場合は、弾性部材25の一端部25aから他端部25bに延びるように形成すればよい。
貫通孔27が弾性部材25の長手方向に平行な方向ではなく、平行な方向に対して上記所定の角度を有するように形成された場合に、電池セル2の表面におけるより広い領域を冷却することができる。なお、貫通孔27は螺旋状となるように形成されていてもよいし、曲線状に形成されていてもよい。
また、上記弾性部材15及び弾性部材25の場合と同様に、溝36及び貫通孔37が弾性部材35の長手方向に平行な方向ではなく、平行な方向に対して上記所定の角度を有するように形成された場合に、電池セル2の表面におけるより広い領域を冷却することができる。溝36及び貫通孔37は螺旋状となるように形成されていてもよいし、曲線状に形成されていてもよい。
また、弾性部材5は、防炎材4に対向する面に直交する一端面から、この一端面に対向する他端面に貫通する複数の貫通孔を有していてもよい。
さらに、弾性部材5は、上記溝及び貫通孔を同時に有するものであってもよい。
シート状の弾性部材5を使用する場合に、溝及び貫通孔が延びる方向を、熱を放出させたい方向となるようにして、弾性部材5を配置することが好ましい。
上述のとおり、本実施形態に係る防炎シート10は、上記防炎材4と、例えば弾性部材5とを有するが、さらに、防炎材と弾性部材との間に、不図示の支持層が配置されることが好ましい。支持層とは、防炎材の形状を支持し、防炎シートの強度を保持する効果を有するものであり、防炎シート10が支持層を有することにより、電池セルの変形による押圧力が部分的に防炎材にかかることを防止することができ、防炎材の破壊を抑制することができる。
図2に示すような本実施形態に係る組電池6を収容する電池ケース7の材質及び形状は特に限定されない。電池ケース7の材質としては、ポリカーボネートの他、PP、PET、ポリアミド(PA;polyamide)、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS;Steel Use Stainless)等を使用することができる。また、電池ケース7の形状は、適用される電動工具等の機器に応じて、自由に選択することができる。
なお、図2に示す本実施形態に係る組電池6は、各電池セル2が独自に断熱性を有しているとともに、電池セル2の膨張及び収縮が他の領域に影響を与えないため、電池ケース7に収容されていなくてもよい。例えば、防炎材4及び弾性部材5により被覆された複数の電池セル2をまとめて、バンド等により固定して組電池とすることにより、そのままの形態で電動工具等の機器の内部に格納することもできる。このように、電池ケース7を使用しないで、防炎材4及び弾性部材5により被覆された複数の電池セル2を隣接して配置した場合に、隣り合う電池セル2間は、図1に示す防炎シート10と同様の構成となる。
図1に示す本実施形態に係る組電池は、電池セル2間に防炎シート10を介在させることにより、容易に組み立てることができる。また、図2に示す本実施形態に係る組電池6は、電池セル2を防炎材4で被覆し、これに、例えば筒状体である弾性部材5を被せるのみで、上記効果を有する組電池を容易に組み立てることができる。また、各電池セル2のそれぞれに、防炎材4及び弾性部材5を取り付けるため、電池ケース7の煩雑な設計が不要である。
さらに、本実施形態においては、防炎材4がシート状のものであると、電池セル2の形状及び大きさにかかわらず、容易に電池セル2の外周面を覆う大きさや、所望の大きさに加工することができる。また、弾性部材5が筒状である場合に、弾性部材5は伸縮性を有するため、電池セル2の形状及び大きさに影響されず、種々の電池セル2に取り付けることができる。
例えば、本実施形態に係る組電池は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置されることがある。この場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。
また、防炎シート10を、各電池セル間に介在させるだけでなく、電池セル2と電池ケースとの間に配置することができるため、新たに防炎材等を作製する必要がなく、容易に低コストで安全な組電池を構成することができる。
2 電池セル
2a 電極面
3 電極
4 防炎材
5,15,25,35 弾性部材
6 組電池
7 電池ケース
9 樹脂バインダ
10 防炎シート
12 第2の無機粒子
16,36 溝
27,37 貫通孔
31 第1の無機繊維
32 第2の無機繊維
41 第1の無機粒子
43 有機繊維
Claims (17)
- 電極を有する電極面と、前記電極面に直交する外周面と、を有し、前記外周面同士が対向するように配置された複数の電池セルが、直列又は並列に接続される組電池に用いられる防炎シートであって、
一対の防炎材と、前記一対の防炎材の間に配置された弾性部材と、を有する、防炎シート。 - 前記弾性部材は、前記防炎材に対向する面に直交する一端面から他端面に延びる複数の溝を有する、請求項1に記載の防炎シート。
- 前記弾性部材は、前記防炎材に対向する面に直交する一端面から他端面に貫通する複数の貫通孔を有する、請求項1又は2に記載の防炎シート。
- 前記弾性部材は、ゴム又はエラストマーにより形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の防炎シート。
- 前記防炎材は、無機粒子、有機繊維及び無機繊維の少なくとも1種を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の防炎シート。
- 前記無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子であることを特徴とする、請求項5に記載の防炎シート。
- 前記防炎材は、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の防炎シート。
- 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、
前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることを特徴とする、請求項7に記載の防炎シート。 - 前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことを特徴とする、請求項7に記載の防炎シート。 - 前記防炎材は、無機粒子を含有し、前記無機粒子が、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含み、
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の無機繊維である、請求項7に記載の防炎シート。 - 複数の電池セルと、請求項1~10のいずれか1項に記載の防炎シートと、を有し、前記複数の電池セルが直接又は並列に接続された、組電池。
- 電極を有する電極面と、前記電極面に直交する外周面と、を有し、前記外周面同士が対向するように配置された複数の電池セルが、直列又は並列に接続される組電池であって、
前記電池セルと、
前記電池セルの外周面の少なくとも一部を被覆する防炎材と、
前記電池セルの外周面における前記防炎材により被覆された領域の少なくとも一部を被覆する弾性部材と、を有する、組電池。 - 前記弾性部材は、前記防炎材により被覆された領域を前記電池セルの周方向に被覆し、前記電池セルを押圧する、請求項12に記載の組電池。
- 前記弾性部材は、両端部が開口した筒状体である、請求項13に記載の組電池。
- 前記弾性部材は、前記筒状体の内表面において、前記筒状体の一端部から他端部に延びる複数の溝を有する、請求項14に記載の組電池。
- 前記弾性部材は、前記筒状体の一端部から他端部に貫通する複数の貫通孔を有する、請求項14又は15に記載の組電池。
- 請求項11~16のいずれか1項に記載の組電池を電池ケースに収容した電池パック。
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