JP2022117209A - ニキビ予防改善剤および特定のアクネ菌の増殖を抑制または促進する剤 - Google Patents

ニキビ予防改善剤および特定のアクネ菌の増殖を抑制または促進する剤 Download PDF

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Abstract

【課題】 アクネ菌のうち、ニキビの発症や悪化に関与しうる特定の菌型の増殖を抑制する剤を提供する。【解決手段】 エリスリトールを有効成分とする、リボタイプ4型(RT4)、5型(RT5)および8型(RT8)から選択される1以上のアクネ菌の増殖を抑制する剤。本発明によれば、皮膚への刺激性や安全性を全く懸念することなく、ニキビの発症や悪化に関与しうる特定の菌型の増殖を抑制し、あるいはニキビの発症や悪化に関与しない特定の菌型の増殖を促進することができる。【選択図】 図1

Description

本発明は、エリスリトールを有効成分とする、ニキビ予防改善剤および特定のアクネ菌の増殖を抑制または促進する剤に関する。
ニキビは、「尋常性?瘡」と呼ばれる皮膚の慢性疾患で、多くの場合、顔面、胸、肩、背中の皮膚に、黒色面皰(めんぽう)、白色面皰、吹き出物、嚢腫(のうしゅ)などの隆起が現れ、ときに膿瘍も生じる。ニキビは、死んだ皮膚細胞の堆積物や細菌、乾燥した皮脂などが皮膚の毛包をふさぐことによって生じる。ニキビの原因細菌としては、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes、以下「アクネ菌」という。)が知られている。アクネ菌は、リパーゼで皮脂成分のうち中性脂肪であるトリグリセリドを分解しつつ増殖し、さらに炎症の発生にかかわる成分も分泌する。
アクネ菌は、その16S リボソーマルRNA遺伝子(16S rDNA)の配列多型をもとに、RT1~10といったリボタイプ(RT)に分類される。近年、ニキビ患者と健常者(ニキビの症状を呈さない者)との間では、皮膚に存在するアクネ菌の総量は変わらない一方で、優勢なアクネ菌のリボタイプが異なるという報告がされている。それによると、RT1、RT2およびRT3は患者群と健常者群とに均一に分布するのに対して、RT6はほぼ健常者にのみ分布し、RT4、RT5、RT8およびRT10はニキビ患者群に多く分布する。また、RT2およびRT6のアクネ菌はリパーゼ遺伝子領域に変異を有し、リパーゼ活性が相対的に低い可能性が示唆されている(非特許文献1、非特許文献2)。すなわち、アクネ菌のうちリパーゼ遺伝子領域に変異を有する特定の菌型は、リパーゼ活性が低いゆえにニキビの発生や悪化に関与せず、その結果としてニキビ患者で劣勢となっている可能性が示唆されている。
Joseph McLaughlin et al., Propionibacterium acnes and Acne Vulgaris: New Insights from the Integration of Population Genetic, Multi-Omic, Biochemical and Host-Microbe Studies, Microorganisms 2019, 7(5), 128; https://doi.org/10.3390/microorganisms7050128 Shuta Tomida et al., Pan-Genome and Comparative Genome Analyses of Propionibacterium acnes Reveal Its Genomic Diversity in the Healthy and Diseased Human Skin Microbiome, mBio, May/June 2013 Volume 4 Issue 3 e00003-13
以上のことから、アクネ菌のうちでもニキビの発症や悪化に関与するのは、RT4、RT5およびRT8などの特定の菌型、あるいはリパーゼ遺伝子領域に変異を有さない特定の菌型であり、RT2やRT6、あるいはリパーゼ遺伝子領域に変異を有する菌型は、関与しないと考えられる。よって、これらニキビの発症や悪化に関与する菌型の増殖を抑制することにより、ニキビの予防または改善に寄与できると考えられる。
また、アクネ菌は皮膚常在菌であり、その総存在量はニキビ患者と健常者とで変わらないことから、ニキビの発症や悪化に関与しない特定の菌型(RT2やRT6、あるいはリパーゼ遺伝子領域に変異を有する菌型)の増殖を促進することにより、相対的にニキビの発症や悪化に関与する菌型の増殖を抑制でき、ニキビの予防または改善に寄与できると考えられる。
そこで、本発明は、アクネ菌のうち、ニキビの発症や悪化に関与しうる特定の菌型の増殖を抑制する技術を提供することを目的とする。また、本発明は、アクネ菌のうち、ニキビの発症や悪化に関与しない特定の菌型の増殖を促進する技術を提供することを目的とする。さらに、本発明は、ニキビの予防または改善に寄与する技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、エリスリトールが、ニキビの発症や悪化に関与しうる特定の菌型のアクネ菌の増殖を抑制する一方で、ニキビの発症や悪化に関与しない特定の菌型のアクネ菌の増殖を促進できることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
(1)本発明に係るニキビの予防または改善剤は、エリスリトールを有効成分とする。
(2)本発明に係るアクネ菌の増殖抑制剤の第1の態様は、リボタイプ4型(RT4)、5型(RT5)および8型(RT8)から選択される1以上のアクネ菌の増殖を抑制する剤であって、エリスリトールを有効成分とする。
(3)本発明に係るアクネ菌の増殖抑制剤の第2の態様は、配列番号11に示されるDNA領域に変異を有さないアクネ菌の増殖を抑制する剤であって、エリスリトールを有効成分とする。
(4)本発明に係るアクネ菌の増殖促進剤の第1の態様は、リボタイプ2型(RT2)および/またはリボタイプ6型(RT6)のアクネ菌の増殖を促進する剤であって、エリスリトールを有効成分とする。
(5)本発明に係るアクネ菌の増殖促進剤の第2の態様は、配列番号11に示されるDNA領域に変異を有するアクネ菌の増殖を促進する剤であって、エリスリトールを有効成分とする。
(6)本発明に係るアクネ菌の増殖促進剤の第2の態様において、配列番号11に示されるDNA領域における前記変異は下記(i)~(iii)から選択される1以上を含むものであってよい;
(i)配列番号11の138~143番目の6塩基の欠失、
(ii)配列番号11の288番目の1塩基の欠失、
(iii)配列番号11の370~372番目における終止コドンの出現。
(7)本発明に係るアクネ菌型選択的抗菌剤は、アクネ菌型選択的抗菌作用として、HL007PA1株、HL038PA1株、HL043PA2株、HL072PA1株、HL086PA1株およびHL110PA1株から選択される1以上のアクネ菌株に対しては増殖を抑制し、かつ、HL110PA3株に対しては増殖を抑制しないまたは促進する物性を有するものであって、エリスリトールを有効成分とする。
(8)本発明に係る剤は、外用剤として用いられるものであってもよい。
本発明によれば、アクネ菌のうち、ニキビの発症や悪化に関与しうる特定の菌型の増殖を抑制することができる。本発明によれば、アクネ菌のうち、ニキビの発症や悪化に関与しない特定の菌型の増殖を促進することができる。よって、本発明によれば、ニキビの予防または改善に寄与することができる。
また、本発明が有効成分とするエリスリトールは、食品としても用いられることから明かであるように、ヒトや動物にとって極めて安全な物質である。従って、本発明によれば、皮膚への刺激性や安全性を全く懸念することなく、ニキビの発症や悪化に関与しうる特定の菌型の増殖を抑制し、あるいはニキビの発症や悪化に関与しない特定の菌型の増殖を促進することができる。
0%、5(w/v)%または10(w/v)%のエリスリトールを含む培地でアクネ菌の各菌株を培養して、得られた培養液の濁度を示す棒グラフである。有意差検定で有意であったものを*で示す。 アクネ菌のリパーゼ遺伝子領域を模式的に示す図である。 アクネ菌の各菌株について、リパーゼ遺伝子領域をシークエンスして得られた塩基配列(1~320番目)を示す図である。 アクネ菌の各菌株について、リパーゼ遺伝子領域をシークエンスして得られた塩基配列(321~400番目)を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、ニキビの予防または改善剤、アクネ菌の増殖抑制剤(第1の態様および第2の態様)、アクネ菌の増殖促進剤(第1の態様および第2の態様)ならびにアクネ菌型選択的抗菌剤を提供する。本明細書では、これらの剤をまとめて、あるいはいずれかの剤を指して「本発明の剤」あるいは「本剤」という場合がある。
本発明において「リボタイプ」は、16S リボソーマルRNA遺伝子(16S rDNA)の配列多型をもとに分類した、アクネ菌のサブタイプ(菌型)をいう。16S rDNAの野生型配列(配列番号1)を有するアクネ菌をリボタイプ1型(RT1)、野生型配列において、T854C変異を有するサブタイプをリボタイプ2型(RT2)、T1007C変異を有するサブタイプをリボタイプ3型(RT3)、G1058CおよびA1201C変異を有するサブタイプをリボタイプ4型(RT4)、G1058C変異を有するサブタイプをリボタイプ5型(RT5)、T854CおよびC1336T変異を有するサブタイプをリボタイプ6型(RT6)、G1004AおよびT1007C変異を有するサブタイプをリボタイプ8型(RT8)と同定することができる(S Fitz-Gibbon et al., The Skin Microbiome Associated with Acne, Journal of Investigative Dermatology 133, 2152?2160; doi:10.1038/jid.2013.21; published online 28 February 2013)。
「配列番号11に示されるDNA領域」は、アクネ菌のリパーゼ遺伝子領域の一部領域である。ここで、当該リパーゼ遺伝子領域は、遺伝子間領域(intergenic region)を挟んで前後に縦列配置された2つのリパーゼ遺伝子(SK137株において遺伝子座HMPREF0675_4855およびHMPREF0675_4856で特定されるリパーゼコーディング領域)からなる。配列番号11は、当該リパーゼ遺伝子領域の、1つ目のリパーゼ遺伝子のカルボキシル末端側領域、遺伝子間領域および2つ目のリパーゼ遺伝子のアミノ末端側領域からなる。
配列番号11に示されるDNA領域における変異とは、配列番号11における塩基の欠失、挿入、置換および/または付加や、それに伴うコーディング領域内における終止コドンの出現などをいう。欠失、挿入、置換および/または付加される塩基の個数としては、例えば、1~40個、1~30個、1~20個、1~15個、1~10個、1~6個の任意の数を例示することができる。また、変異の具体例としては、下記(i)~(iii)を例示することができる。
(i)配列番号11の138~143番目の6塩基の欠失、
(ii)配列番号11の288番目の1塩基の欠失、
(iii)(塩基の欠失、挿入、置換および/または付加に伴う)配列番号11の370~372番目における終止コドンの出現。
アクネ菌の増殖が抑制されたか、それとも、促進されたかは、後述する実施例に示すように、培養試験により判断することができる。すなわち、一方は本剤を添加して、他方はこれを添加せずに、同種の培地を調製する。この両培地にアクネ菌を植菌して所定の期間培養した後、培地の菌量を測定する。菌量の測定は、簡便には濁度法により行うことができるが、乾燥菌体重量法や湿重量法、リアルタイムPCR法などの公知の手法を適宜選択することができる。その結果、本剤を添加したものの方が、これを添加しないものよりも菌量が小さければ、本剤によりアクネ菌の増殖が抑制されたと判断することができる。逆に、本剤を添加したものの方が、これを添加しないものよりも菌量が大きければ、本剤によりアクネ菌の増殖が促進されたと判断することができる。
「アクネ菌型選択的抗菌剤」は、アクネ菌に対して選択的な抗菌作用を有する剤をいう。ここで、当該選択的抗菌作用とは、ニキビの発症や悪化に関与する菌型のアクネ菌の増殖を抑制し、かつ、ニキビの発症や悪化に関与しない菌型のアクネ菌の増殖は抑制しない、ないしは促進することを意味する。当該選択的抗菌作用を有するか否かは、例えば、HL007PA1株(HM496、BEI Resources、RT4)、HL038PA1株(HM512、BEI Resources、RT4)、HL043PA2株(HM514、BEI Resources、RT5)、HL072PA1株(HM531、BEI Resources、RT5)、HL086PA1株(HM539、BEI Resources、RT8)もしくはHL110PA1株(HM552、BEI Resources、RT8)に対しては増殖を抑制し、かつ、HL110PA3株(HM554、BEI Resources、RT6)に対しては増殖を抑制しないまたは促進する物性を有するか否かで、判断することができる。
エリスリトール(エリトリトール)は、ブドウやナシなどの果実、味噌や醤油、清酒などの発酵食品にも元来含まれている糖アルコールである。化学名は1,2,3,4-Butaneterolで四炭糖の単糖アルコールである。エリスロース(エリトロース)の還元体であるが、工業的には発酵により得られる。
エリスリトールは、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよく、簡便には、市販されているものを用いてもよい。また、エリスリトールは、液体、粉末状、顆粒状などいずれの形態のものも用いることができる。
本剤は、皮膚常在菌であるアクネ菌のうち、ニキビの発症や悪化に関与しうる特定の菌型の増殖を抑制し、あるいは、ニキビの発症や悪化に関与しない特定の菌型の増殖を促進して、ニキビの発症や悪化が起こりにくい皮膚環境にすることにより効果を発揮する。よって、本剤は、皮膚に作用する使用態様の製剤、すなわち外用剤として用いることができる。
本発明の外用剤としては、皮膚に直接塗布や貼付、噴霧等するもの(化粧品、医薬部外品、医薬品)の他、皮膚洗浄料や入浴料、消毒剤、殺菌剤などの衛生用品を例示することができる。製品の剤型としては、エアゾール剤、ロールオン、スティック、クリーム、シート剤、ローション、乳液、ジェル、粉剤、錠剤等の形態を例示することができる。本剤が配合された製品は、当該製品に通常用いられる原料(例えば、油、界面活性剤、アルコール、防腐剤、キレート剤、酸化防止剤、増粘剤、香料、殺菌剤等の成分)にエリスリトールを添加して、製造することができる。
エリスリトールの含有量は、製品の形態や用途に応じて適宜設定することができるが、例えば0.01~35質量%、好ましくは0.01~30質量%、より好ましくは0.5~25質量%、さらに好ましくは1~20質量%を例示することができる。
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
本実施例において、エリスリトールは、市販品(製品名:Erythritol、白色粒状、物産フードサイエンス(株))を用いた。また、アクネ菌は表1に記載のPropionibacterium acnes株を用いた。No.6~10、12および13の菌株はBEI Resources(アメリカ合衆国)から入手したものであり、表1にカタログ番号も示す。No.1~5および11の菌株は、遠藤明仁氏(東京農業大学 生物産業学部 食香粧化学科 准教授)から分譲された。
Figure 2022117209000002
No.6~10、12および13のリボタイプは、非特許文献2の表1に記載されたとおりである。No.1~5および11のリボタイプは、常法にしたがって各菌株の16S rDNAをシークエンスし、得られた配列に基づいて決定した。No.1~5および11の16S rDNA塩基配列を配列番号2~7にそれぞれ示す。表1のリボタイプのうちRT1、RT2およびRT3は、ニキビ患者群の皮膚と健常者(ニキビ症状が無い者)群の皮膚とで同程度に存在し、RT6は殆ど健常者群の皮膚のみに存在することが報告されている。また、RT4、RT5およびRT8は、殆どニキビ患者群の皮膚のみに存在することが報告されている(非特許文献2)。
<実施例1>アクネ菌の菌数に対する効果
表1の各菌株を変法CDC嫌気性菌用ヒツジ血液寒天培地(日本ベクトン・ディッキンソン)に塗布し、アネロパック・ケンキ(三菱ガス化学)を用いて30℃で4日間嫌気培養した。これらの菌株をチップですくい、変法GAMブイヨン「ニッスイ」(日水製薬)0.5mLに懸濁し、種母懸濁液とした。一方、変法GAMブイヨン「ニッスイ」に、エリスリトールを終濃度で0%、5質量%または10質量%となるよう添加して、これを本培養培地とした。本培養培地を96 Deep Well Plate (AxyGen Scientific, Inc., ) に分注し、ここに種母懸濁液20μLを植菌して、30℃で48時間嫌気培養(本培養)した。
本培養後の培養液について、濁度法により菌体濃度を測定した。具体的には、まず、96穴平底プレート(4845-96F、ワトソン)に水180μLを分注した。ここに、培養液20μLを入れ、マイクロプレートリーダー (SpectraMax(登録商標)M2、モレキュラーデバイスジャパン)を用いて波長660nmでの透過光強度を検出することにより、濁度(OD660)を測定した。OD660の値を10倍したものを濁度とし、同様の試験を4回行って平均値を算出した。本培養培地にエリスリトールを添加していないもの(対照群)と、エリスリトールを5質量%または10質量%となるよう添加したもの(5%群、10%群)との2群間でMann-Whitney のU検定により統計的有意差検定を行い、漸近有意確率p<0.05を有意とした。その結果を図1に示す。図1において、有意差検定で有意であったものを*で示す。
図1に示すように、RT2およびRT6の各菌株では、エリスリトールを添加した場合(5%群、10%群)に、添加しない場合(0%群)と比較して有意に濁度が増加した。これに対して、RT1、RT3、RT4、RT5およびRT8の各菌株では、エリスリトールを添加した場合(5%群、10%群)に、添加しない場合(0%群)と比較して有意に濁度が減少した。
すなわち、RT2およびRT6の各菌株はエリスリトールの添加により菌数が有意に増加したのに対して、RT1、RT3、RT4、RT5およびRT8の各菌株はエリスリトールの添加により菌数が有意に減少した。この結果から、エリスリトールは、P. acnesのRT2(ニキビ患者の皮膚と健常者の皮膚とで同程度に存在する菌型)およびRT6(ニキビ症状の無い健康な皮膚で優勢な菌型)の増殖を促進し、P. acnesのRT1およびRT3(ニキビ患者の皮膚と健常者の皮膚とで同程度に存在する菌型)、ならびに、RT4、RT5およびRT8(ニキビ患者の皮膚で優勢な菌型)の増殖を抑制できることが明らかになった。
<実施例2>リパーゼ遺伝子領域のシークエンス解析
P. acnesは、リパーゼとして機能すると推定されるタンパク質をコードする遺伝子を13種、有する。このうちの1種は、図2に示すように、遺伝子間領域(intergenic region)を挟んで前後に縦列配置された2つのリパーゼ遺伝子(SK137株において遺伝子座HMPREF0675_4855およびHMPREF0675_4856で特定されるリパーゼ遺伝子)からなる(全長2036bp、配列番号8)。当該リパーゼ遺伝子領域について、RT2、RT6およびRT8に属するアクネ菌では、遺伝子間領域および2つ目のリパーゼ遺伝子(HMPREF0675_4856)に欠失変異を有することが報告されている(非特許文献2)。そこで、表1の菌株について当該リパーゼ遺伝子領域における変異の有無を解析した。
具体的には、まず、滅菌水500μLと直径5μmのジルコニアビーズ2個とを入れた破砕用チューブに表1の各菌株を入れ、細胞破砕機Micro Smash(登録商標)MS-100(トミー精工)を用いて4000回転/分にて90秒間、菌体を破砕し、ゲノムDNAを得た。これを鋳型DNAとし、Quick Taq(商標)HS DyeMix(TOYOBO)を用いてPCR反応を行うことにより、上記リパーゼ遺伝子領域の一部領域のDNAを増幅した。プライマーは下記配列番号6、7に記載のものを用いた。反応条件は95℃10秒、63℃20秒および68℃60秒を32サイクルとした。
《リパーゼ遺伝子増幅用プライマー》
フォワード;5’-ACGAGCCTGGTGTCAAAAACATCCTCGTTCA-3’(配列番号9)
リバース;5’-GCTTCCACAAGCGGATGTGTTTCCGGGTTGTA-3’(配列番号10)
増幅したDNA断片をFastGene(登録商標) Gel/PCR Extraction Kit(日本ジェネティクス)で精製した後、ファスマック株式会社(http://fasmac.co.jp/)にてシークエンス解析した。その結果を図3および図4に示す。また、図3~4に示すNo.1~13株の塩基配列を配列番号11~23に、それぞれ示す。
図3に示すように、No.3およびNo.4株(RT2)ならびにNo.10およびNo.11株(RT6)の塩基配列(配列番号13~14および20~21)には、下記(i)-(iii)の変異が確認された。
(i)遺伝子間領域の(1つ目のリパーゼ遺伝子のストップコドンの次の塩基から数えて)108~114番目(配列番号8の996~1001番目、配列番号11の138~143番目に相当)に6塩基の欠失、
(ii)2つ目のリパーゼ遺伝子の124番目(配列番号8の1146番目、配列番号11の288番目に相当)に1塩基の欠失、
(iii)2つ目のリパーゼ遺伝子の206~209番目(配列番号8の1228~1230番目、配列番号11の370~372番目に相当)に、上記(ii)の1塩基欠失に伴うフレームシフトによる終止コドンの出現。
一方、No.1~2、5~9および12~13株(RT1、RT3、RT4、RT5、RT8)の配列には変異は見られず、配列番号11~12、15~19および22~23は同一配列であった。
すなわち、実施例1でエリスリトールにより増殖が促進されたRT2およびRT6の菌株は、リパーゼ遺伝子領域の配列番号11に示されるDNA領域に変異を有するのに対して、実施例1でエリスリトールにより増殖が抑制されたRT1、RT3、RT4、RT5およびRT8の菌株は、当該DNA領域に変異を有さないことが明らかになった。この結果から、エリスリトールは、リパーゼ遺伝子領域の配列番号11に示されるDNA領域に変異を有するP. acnesの増殖を促進できることが明らかになった。また、エリスリトールは、当該DNA領域に変異を有さないP. acnesの増殖を抑制できることが明らかになった。

Claims (8)

  1. エリスリトールを有効成分とする、ニキビの予防または改善剤。
  2. エリスリトールを有効成分とする、リボタイプ4型(RT4)、5型(RT5)および8型(RT8)から選択される1以上のアクネ菌(Propionibacterium acnes)の増殖抑制剤。
  3. エリスリトールを有効成分とする、配列番号11に示されるDNA領域に変異を有さないアクネ菌(Propionibacterium acnes)の増殖抑制剤。
  4. エリスリトールを有効成分とする、リボタイプ2型(RT2)および/またはリボタイプ6型(RT6)のアクネ菌(Propionibacterium acnes)の増殖促進剤。
  5. エリスリトールを有効成分とする、配列番号11に示されるDNA領域に変異を有するアクネ菌(Propionibacterium acnes)の増殖促進剤。
  6. 前記変異が下記(i)~(iii)から選択される1以上を含む、請求項5に記載の剤;
    (i)配列番号11の138~143番目の6塩基の欠失、
    (ii)配列番号11の288番目の1塩基の欠失、
    (iii)配列番号11の370~372番目における終止コドンの出現。
  7. エリスリトールを有効成分とするアクネ菌型選択的抗菌剤であって、前記アクネ菌型選択的抗菌作用として、HL007PA1株、HL038PA1株、HL043PA2株、HL072PA1株、HL086PA1株およびHL110PA1株から選択される1以上のアクネ菌株に対しては増殖を抑制し、かつ、HL110PA3株に対しては増殖を抑制しないまたは促進する物性を有する前記剤。
  8. 外用剤として用いられることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の剤。
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