JP2022104777A - 高強度繊維補強コンクリート - Google Patents
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Abstract
【課題】 従来の繊維補強コンクリートにおいて、曲げ靱性の向上効果に注目されていたが、乾燥収縮ひずみや圧縮クリープひずみについてはほとんど検討されていなかった。曲げ靱性を高めるとともに、乾燥収縮ひずみ及び圧縮クリープひずみを抑制することができる高強度繊維補強コンクリートを提供することを課題とする。【解決手段】 繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートにおいて、該コンクリート材料に繊維補強材を0.1体積%~3.0体積%混入されることにより、圧縮クリープひずみが50×10-6/(N/mm2)以下を実現することを特徴とする高強度繊維補強コンクリートである。【選択図】 図2
Description
本発明は、繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートに関し、特に圧縮クリープひずみの抑制効果を有する高強度繊維補強コンクリートに関する。
コンクリートは、セメントなどの固化材に水と骨材を混合して、型枠内に充填して固化させるものである。構造物の建設で利用するコンクリートは,耐久性と経済性を兼ね備えた欠かすことのできない重要な材料である。
一般に、コンクリートは、圧縮には強いが引張りに弱いため、各種の補強が施されている。
鉄筋コンクリートを製造する際は、複数本の鉄筋により鉄筋構造体を作った後、この鉄筋構造体の外側を複数の型枠で取り囲むことでコンクリートを流し込む空間を形成し、この空間内にコンクリートを流し込み、このコンクリートが固化した後に脱枠を行うものである。
また、引張強度だけではなく、ひび割れなどの問題もある。コンクリートに繊維を練り混ぜた繊維補強コンクリートは、この問題を改善しコンクリートの曲げ靭性(ねばり)を高めた複合材料である。
コンクリートに練り混ぜて使用するのは、繊維素材を長さ数ミリから十数ミリに切断した「短繊維」と呼ばれており、材質は主に「鋼繊維」「ガラス繊維」「炭素繊維」「無機系繊維」及び「有機系繊維」に分かれており、それぞれの特性を活かして用途に応じて使い分けている。
近年、トンネルや橋梁などの構造物のコンクリート剥離事故が起こり、大きな社会問題となっている。その解決策のひとつとして繊維補強コンクリートが注目されている。
例えば、特開2012-1395では、有機短繊維を混合し、収縮ひび割れ抵抗性を高め、かつ、耐火性を兼ね備えた高強度コンクリートの技術が開示されている。
また、特開2019-64872では、有機繊維を混入させることによって耐荷性能を向上させ、プレキャスト製のプレストレストコンクリート床版を薄肉軽量化することができる繊維補強軽量コンクリートの技術が開示されている。
上記の従来のコンクリートに示すように、コンクリートの圧縮強度と鉄筋の引張強度を組み合わせた鉄筋コンクリートが広く普及しており、その欠点である、ひびの問題についても、繊維補強コンクリート等の補強により改善がなされている。
また、繊維補強コンクリートにおいても、混入させた繊維の分散、均一化が問題であり、補強のための繊維の分散配置が難しく、混入させた繊維が一部に偏った状態で固化してしまうという問題がある。
このため、繊維材による補強効果が求められているが、問題なく分散させるためには、混合量が制限されており、コンクリート材料の1.0体積%程度が限界とされている。
近年、コンクリート構造物の高性能化に伴い、コンクリートの乾燥収縮ひずみおよび圧縮クリープひずみは、コンクリート構造部材のたわみ、 ひび割れ、プレストレスの減退等と直接に関係するものであり、構造物の安全性、耐久性および使用性を検討する上で重要となっている。
従来の繊維補強コンクリートにおいては、曲げ靱性の向上効果に注目されていたが、乾燥収縮ひずみや圧縮クリープひずみについては、ほとんど検討されていなかった。本発明は、曲げ靱性を高めるとともに、乾燥収縮ひずみ及び圧縮クリープひずみを抑制することができる高強度繊維補強コンクリートを提供することを課題とする。
本発明は諸課題を解決するために、請求項1では、繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートにおいて、
該コンクリート材料に繊維補強材が0.1体積%~3.0体積%混入されており、圧縮クリープひずみが50×10-6/(N/mm2)以下であることを特徴とする高強度繊維補強コンクリートとするものである。
該コンクリート材料に繊維補強材が0.1体積%~3.0体積%混入されており、圧縮クリープひずみが50×10-6/(N/mm2)以下であることを特徴とする高強度繊維補強コンクリートとするものである。
該繊維補強材は、コンクリート材料において、0.1体積%~3.0体積%の混入するものであり、0.5体積%~2.0体積%程度が好ましい。
該繊維補強材の長さは、5mm~40mm程度が良く、10mm~20mm程度が好ましい。長さの異なる繊維補強材を用いても良い。また、断面積の異なる繊維補強材を用いても良い。
該圧縮クリープひずみは、50×10-6/(N/mm2)以下である。さらに好ましくは、40×10-6/(N/mm2)以下である。
請求項2では、前記のコンクリート材料におけるセメント混合量が550kg/m3以上であることを特徴とする高強度繊維補強コンクリートとするものである。
該セメント混合量は、550kg/m3以上である。好ましくは、600kg/m3以上である。さらに好ましくは、700kg/m3以上である。
請求項3では、前記のコンクリート材料における水セメント比が30%以下であることを特徴とする高強度繊維補強コンクリートとするものである。。
該コンクリート材料における水セメント比は、30%以下である。さらに好ましくは、25%以下である。
請求項4では、前記の繊維補強材は、鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、無機系繊維、有機系繊維の中のいずれか1種類以上からなることを特徴とする繊維補強コンクリートとするものである。
例えば、炭素繊維のものと有機繊維のものとを組み合わせて、混入しても良く、混合割合は、いずれでも良く、同数でも良く、同重量、同体積としても良い。有機繊維として、取扱いが容易で、機械的強度の優れたポリプロピレンなどが好ましい。
該繊維補強材の断面積は、0.002mm2から5.0mm2程度が使用できる。例えば、0.2mm2のものと0.8mm2のものを組み合わせて、混入しても良く、混合割合は、いずれでも良く、同数でも良く、同容積としても良い。
請求項5では、前記の繊維補強材は、断面積は0.1mm2以上であることを特徴とする高強度繊維補強コンクリートとするものである。
繊維補強材の断面積が極端に小さくなると、繊維材同士が絡まり易くなる。0.1mm2未満では、繊維が細すぎ、絡まり易くなり、ファイバーボールなどが発生しやすくなる。0.1mm2以上であれば、繊維が細過ぎることに起因する絡まりの影響は無くなる。
請求項6では、前記のコンクリート材料に対して、コンクリート用膨張材が5~30kg/m3が混入されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の高強度繊維補強コンクリートとするものである。
該コンクリート用膨張材の混入量は、コンクリート材料に対して、5~30kg/m3が使用できる。好ましくは、15~25kg/m3程度である。
請求項7では、前記のコンクリート材料に対して、フライアッシュが50~100kg/m3が混入されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の高強度繊維補強コンクリートとするものである。
該フライアッシュの混入量は、コンクリート材料に対して、50~100kg/m3が使用できる。好ましくは、60~80kg/m3程度である。
本発明は以下の効果を奏する。
1)繊維補強材が0.1体積%~3.0体積%混入されていることにより、コンクリートの圧縮クリープひずみを抑制することができる。
1)繊維補強材が0.1体積%~3.0体積%混入されていることにより、コンクリートの圧縮クリープひずみを抑制することができる。
2)繊維補強材が0.1体積%~3.0体積%混入されていることにより、乾燥収縮ひずみを抑制することができる。
3)コンクリート構造物の安全性、耐久性および使用性を向上させることができる。
4)コンクリート材料におけるセメント混合量が550kg/m3以上とすることにより、乾燥収縮ひずみ及び圧縮クリープひずみの抑制効果を高めることができる。
5)コンクリート材料における水セメント比が30%以下とすることにより、乾燥収縮ひずみ及び圧縮クリープひずみの抑制効果を高めることができる。
6)コンクリート材料におけるコンクリート用膨張材の配合量を5~30kg/m3とすることにより、乾燥収縮ひずみ及び圧縮クリープひずみの抑制効果を高めることができる。
7)コンクリート材料におけるフライアッシュの配合量を50~100kg/m3とすることにより、乾燥収縮ひずみ及び圧縮クリープひずみの抑制効果を高めることができる。
本発明の実施の形態について説明する。
[コンクリート原料]
本実施例では、通常のコンクリートと、通常コンクリート材料に、棒状のポリプロピレン材をコンクリート材料に対して1.0体積%混入して試験体を用いた。
本実施例では、通常のコンクリートと、通常コンクリート材料に、棒状のポリプロピレン材をコンクリート材料に対して1.0体積%混入して試験体を用いた。
ポリプロピレン材は、
繊維材Aは、長さが18mm、径が0.5mm、断面積が0.2mm2 とした。
繊維材Aは、長さが18mm、径が0.5mm、断面積が0.2mm2 とした。
混合割合は、コンクリート材料に対して、繊維材1.0体積%として用いた。
[試験体1用コンクリート:本発明の繊維材の混合による高強度繊維補強コンクリート]
コンクリート材料に繊維材(1体積%)を混合し、適度水を混合し、十分に攪拌した。セメント混合量は、640Kg/m3であり、水セメント比は26%である。(セメント材は、ポルトランドセメント、混合セメントなどが使用できる。)
コンクリート材料に繊維材(1体積%)を混合し、適度水を混合し、十分に攪拌した。セメント混合量は、640Kg/m3であり、水セメント比は26%である。(セメント材は、ポルトランドセメント、混合セメントなどが使用できる。)
[試験体2用コンクリート:普通コンクリート]
普通コンクリート原料に適度水を混合し、十分に攪拌した。セメント混合量は、314Kg/m3であり、水セメント比は57%である。
普通コンクリート原料に適度水を混合し、十分に攪拌した。セメント混合量は、314Kg/m3であり、水セメント比は57%である。
[試験体]
[試験体1:繊維コンクリート]
サイズ φ50mm×長さ100mm
試験開始材齢:7日
試験環境:20℃、相対湿度60%
[試験体2:普通コンクリート]
サイズ φ100mm×長さ200mm
試験開始材齢:7日
試験環境:20℃、相対湿度60%
[乾燥収縮ひずみの測定]
乾燥収縮ひずみ測定結果を図1に示す。
C1が普通コンクリートの状況を示し、C2が本願による高強度繊維補強コンクリートの状況を示す。本願の高強度繊維補強コンクリートは、乾燥期間75日において、普通コンクリートの乾燥収縮ひずみに対して27%程度減少している。
[圧縮クリープひずみの測定]
圧縮クリープひずみ測定結果を図2に示す。
D1が普通コンクリートの状況を示し、D2が本願による高強度繊維補強コンクリートの状況を示す。本願の高強度繊維補強コンクリートは、乾燥期間75日において、普通コンクリートの収縮クリープひずみに対して75%程度減少している。
[試験体1:繊維コンクリート]
サイズ φ50mm×長さ100mm
試験開始材齢:7日
試験環境:20℃、相対湿度60%
[試験体2:普通コンクリート]
サイズ φ100mm×長さ200mm
試験開始材齢:7日
試験環境:20℃、相対湿度60%
[乾燥収縮ひずみの測定]
乾燥収縮ひずみ測定結果を図1に示す。
C1が普通コンクリートの状況を示し、C2が本願による高強度繊維補強コンクリートの状況を示す。本願の高強度繊維補強コンクリートは、乾燥期間75日において、普通コンクリートの乾燥収縮ひずみに対して27%程度減少している。
[圧縮クリープひずみの測定]
圧縮クリープひずみ測定結果を図2に示す。
D1が普通コンクリートの状況を示し、D2が本願による高強度繊維補強コンクリートの状況を示す。本願の高強度繊維補強コンクリートは、乾燥期間75日において、普通コンクリートの収縮クリープひずみに対して75%程度減少している。
以上の結果に示されたように、コンクリートに繊維補強材を一定量、混合することにより、コンクリートにおける乾燥収縮ひずみ及び圧縮クリープひずみを抑制することができることが確認された。
従来より、繊維補強コンクリートでは、主に曲げ靱性の補強を実現していたが、コンクリート材料に繊維補強材が0.1体積%~3.0体積%混入することにより、さらに乾燥収縮ひずみ及び圧縮クリープひずみを抑制することができる高強度繊維補強コンクリートを実現できるものである。
また、本発明は、緊張材を用いたプレストレストコンクリートにも応用が可能である。プレストレストコンクリートでは、プレストレスの減退を抑制させることが期待できる。
C1 普通コンクリートのデータ
C2 本願繊維コンクリートのデータ
D1 普通コンクリートのデータ
D2 本願繊維コンクリートのデータ
C2 本願繊維コンクリートのデータ
D1 普通コンクリートのデータ
D2 本願繊維コンクリートのデータ
Claims (7)
- 繊維補強材を混入した繊維補強コンクリートにおいて、
該コンクリート材料に繊維補強材が0.1体積%~3.0体積%混入されており、圧縮クリープひずみが50×10-6/(N/mm2)以下であることを特徴とする高強度繊維補強コンクリート。 - 前記のコンクリート材料におけるセメント混合量が550kg/m3以上であることを特徴とする請求項1に記載の高強度繊維補強コンクリート。
- 前記のコンクリート材料における水セメント比が30%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高強度繊維補強コンクリート。
- 前記の線維補強材は、鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、無機系繊維、有機系繊維の中のいずれか1種類以上からなることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の高強度繊維補強コンクリート。
- 前記の繊維補強材は、断面積は0.1mm2以上であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の高強度繊維補強コンクリート。
- 前記のコンクリート材料に対して、コンクリート用膨張材が5~30kg/m3が混入されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の高強度繊維補強コンクリート。
- 前記のコンクリート材料に対して、フライアッシュが50~100kg/m3が混入されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の高強度繊維補強コンクリート。
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JP2001240451A (ja) * | 2000-02-29 | 2001-09-04 | Taiheiyo Cement Corp | 高速度交通システム構造物用高強度コンクリート部材 |
JP2003306366A (ja) * | 2002-04-10 | 2003-10-28 | Takenaka Komuten Co Ltd | 耐爆裂性コンクリート |
JP2019214493A (ja) * | 2018-06-13 | 2019-12-19 | 清水建設株式会社 | 超高強度コンクリートの調合方法 |
-
2021
- 2021-05-18 JP JP2021083655A patent/JP2022104777A/ja active Pending
Patent Citations (3)
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小倉大季ほか: "短繊維の配向に伴う繊維補強セメント系材料の曲げ特性のばらつき", コンクリート工学年次論文集, vol. 36, no. 1, JPN6022021494, 2014, JP, pages 280 - 285, ISSN: 0004960036 * |
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