JP2022103068A - 微生物体内での活性酸素の産生方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微生物の代謝によって生成する悪臭や着色の原因となる化合物、及びその生成に関与する酵素等を分解又は不活性化するために、人体や基材への影響がない化合物を微生物体内に取り込ませ、効率的に微生物体内で活性酸素を産生させる方法、微生物の代謝を制御する方法、及び微生物の代謝物を制御する方法を提供する。【解決手段】下記(a)成分を含む処理液を微生物と接触させて、(a)成分を微生物体内に取り込ませ、微生物体内において、微生物を構成するタンパク質構造体中に存在する鉄(III)イオン存在下、(a)成分と微生物中の溶存酸素により過酸化水素を生成する反応と、(a)成分と鉄(III)イオンにより鉄(II)イオンを生成する反応をおこなう工程(以下、工程1という)を有する、微生物体内での活性酸素の産生方法。(a)成分:アスコルビン酸、及びアスコルビン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物【選択図】なし

Description

本発明は、微生物体内での活性酸素の産生方法、微生物の代謝を制御する方法、及び微生物の代謝物を制御する方法に関する。
日常生活において、カビ、細菌、ウイルス等の微生物との関わりは、古くから多岐にわたり、微生物を用いた食品発酵や医薬品の産生等で利用されているが、一方で、カビ、細菌、ウイルス等の微生物は、それ自体或いはその代謝物によって病気の原因になったり、代謝物が悪臭や着色の原因となったりするなど、生活の質を低下させることもある。このような生活に及ぼす不利益を改善するために、殺菌剤や抗菌剤等によって微生物を殺傷することが検討されている。しかし、殺菌剤や抗菌剤は微生物の膜構造の破壊や構成タンパク質の破壊を行う為、例えば、人体の肌上の微生物の殺菌は同時に肌の損傷につながったり、硬質物質や衣料等の基材上の微生物の殺菌においても、基剤表面の変質につながったりすることがある。又、微生物においては、菌が死滅したとしても死滅した菌体が残留するような場合には、菌体内に多くの酵素が残留する為、悪臭や着色の原因となる化合物の生成反応が起こることもある。従って、微生物自体の殺菌だけではなく、死滅した後の菌体内における酵素群に対する不活性化やたとえ死滅菌の酵素系によって有害な化合物が産生されたとしてもその化合物の無毒化、無効化が望まれる。
非特許文献1には、アスコルビン酸の構造と殺菌活性の相関について開示されている。
非特許文献2には、アスコルビン酸脂肪酸エステルの抗菌作用について開示されている。
村田晃等著、ビタミン83巻2号(2月号)2009、p.49~52 加藤祥子等著、食衛誌、Vol.29、No.5、p.331~335
微生物に対する無効化アプローチは、菌体の外から、第4級アンモニウム塩等の抗菌剤、活性酸素、酵素阻害剤等の処理が考えられるが、微生物は膜構造で守られていることなどから、これらの物質の菌体内への移動には制限がある。またその対処から、これらの物質を高濃度で使用した場合、人体や基材への影響が考慮される。
そこで本発明者らは、人体や基材への影響が少ない化合物を微生物体内に取り込ませ、微生物体内で殺菌、酵素破壊への活性物質を発生させることができれば、微生物や微生物由来の生活に悪影響を起こす化合物を不活性化できることを見出し、本発明に至った。
微生物や微生物由来の生活に悪影響を起こす化合物に対して反応性が高い活性酸素は、微生物自体のタンパク質やRNA等に、又は微生物由来の産生化合物に対して、分解や酸化反応を起こすことが期待できる。ATP等の代謝系において一部微生物体内で活性酸素の生成は知られているものの、微生物体内で積極的に活性酸素を発生させる技術は知られていない。
本発明は、微生物の代謝によって生成する悪臭や着色の原因となる化合物、及びその生成に関与する酵素等を分解又は不活性化するために、人体や基材への影響が少ない化合物を微生物体内に取り込ませ、効率的に微生物体内で活性酸素を産生させる方法、微生物の代謝を制御する方法、及び微生物の代謝物を制御する方法を提供する。
本発明は、下記(a)成分を含む処理液を微生物と接触させて、(a)成分を微生物体内に取り込ませ、微生物体内において、微生物を構成するタンパク質構造体中に存在する鉄(III)イオン存在下、(a)成分と微生物中の溶存酸素により過酸化水素を生成する反応と、(a)成分と鉄(III)イオンにより鉄(II)イオンを生成する反応をおこなう工程(以下、工程1という)を有する、微生物体内での活性酸素の産生方法に関する。
(a)成分:アスコルビン酸、及びアスコルビン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物
また、本発明は、(a)成分を含む処理液を微生物と接触させて、微生物体内に存在する過酸化水素と、微生物に由来する鉄(II)イオンとを反応させてヒドロキシラジカルを生成する工程を有する、微生物体内での活性酸素の産生方法に関する。
また、本発明は、前記本発明の微生物体内での活性酸素の産生方法で産生された活性酸素によって、微生物体内の酵素を分解又は不活性化して微生物の代謝経路を遮断する、微生物の代謝を制御する方法に関する。
また、本発明は、前記本発明の微生物体内での活性酸素の産生方法で産生された活性酸素によって、微生物体内及び微生物体外に排出された微生物の代謝物を分解又は不活性化する、微生物の代謝物を制御する方法に関する。
本発明によれば、微生物の代謝によって生成する悪臭や着色の原因となる化合物、及びその生成に関与する酵素等を分解又は不活性化するために、人体や基材への影響が少ない化合物を微生物体内に取り込ませ、効率的に微生物体内で活性酸素を産生させる方法、微生物の代謝を制御する方法、及び微生物の代謝物を制御する方法が提供される。
本発明の活性酸素の産生方法が、微生物体内において本発明の活性酸素である過酸化水素やヒドロキシラジカルを生成する作用機作は、必ずしも詳細に解明されている訳ではないが以下のように考えられる。尚、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の活性酸素の産生方法は、人体、防臭対象物及び環境への影響が少ない本発明の(a)成分を含む処理液を微生物と接触させることによって(a)成分を微生物体内に取り込ませることによって開始する。微生物体内には、高次に構造化しているタンパク質構造体のような比較的疎水的な部位と体液等水分が多い親水的な部位が存在すると考えられる。微生物体内に取り込まれた(a)成分は、その構造から固有の親水性/疎水性の性質を有しており、微生物体内の疎水的な部位と親水的な部位に特定の比率で分配して存在する。微生物内のタンパク質構造体には、鉄(III)イオンと錯形成していたり、水酸化鉄(III)等の状態で安定化していたりするものが存在する。タンパク質構造体が作る疎水的な部位では、本発明の工程1として、前記鉄(III)イオン存在下、疎水的な部位に分配された(a)成分及び微生物体内の溶存酸素が、鉄(III)イオンが触媒となり、酸素の還元反応を起こし過酸化水素が生成する。又、この疎水的な部位では、並行して微生物を構成するタンパク質構造体中に存在する鉄(III)イオンと(a)成分が還元反応し鉄(II)イオンを生成する。この還元された鉄(II)イオンの一部や過酸化水素は特にタンパク構造体との相互作用がないことから親水的な部位に移動する。
一方、微生物体内の親水的な部位では、存在する過酸化水素、例えば、工程1で生成した過酸化水素、と鉄(II)イオンがフェントン反応を起こし、ヒドロキシラジカルを生成する。この反応で鉄(II)イオンは酸化されて鉄(III)イオンとなる。酸化された鉄(III)イオンは親水的な部位に存在する(a)成分と還元反応を起こし鉄(II)イオンとなり、過酸化水素と反応することから、継続的にヒドロキシラジカルの生成反応を行うことができる。
本発明においては、微生物体内の疎水的な部位と親水的な部位の両方に(a)成分を存在させることができるため、本発明の工程1として微生物体内の疎水的な部位で過酸化水素が連続的に生成し、微生物体内の親水的な部位に過酸化水素が連続的に供給することができる為、工程2として効率的、連続的にヒドロキシラジカルの生成反応が進行する。
以上のように本発明の活性酸素の産生方法は、2つの活性酸素の産生が微生物体内の異なる環境下で起こること、微生物の疎水的な部位に鉄(III)イオンが微生物自身の構成要素として存在すること、疎水的な部位にも親水的な部位にも(a)成分が取り込まれて存在していること、が重要である。特に微生物体内では、効率的に、又、継続的にこの2つの活性酸素の産生反応を起こすことができるものである。さらに、(a)成分が特定のS(Oc)/S(H2O)比を有する場合、微生物体内に取り込まれた後、その疎水性部位と親水性部位にある比率に分配され、工程1と工程2が速やかに起こる環境になるため活性酸素の産生方法として好ましいものと考えらえる。
[微生物体内での活性酸素の産生方法]
本発明の「活性酸素」とは、容易に酸化反応やラジカル反応等を引き起こす酸素を有する分子のことであり、具体的には、過酸化水素及びヒドロキシラジカルを指す。
<工程1>
工程1は、下記(a)成分を含む処理液(以下、本発明の処理液という)を微生物と接触させて、(a)成分を微生物体内に取り込ませ、微生物体内において、微生物を構成するタンパク質構造体中に存在する鉄(III)イオン存在下、(a)成分と微生物中の溶存酸素により過酸化水素を生成する反応と、(a)成分と鉄(III)イオンにより鉄(II)イオンを生成する反応をおこなう工程である。
(a)成分:アスコルビン酸、及びアスコルビン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物
本発明において微生物とは、人の肉眼ではその個々の存在が識別できないような微小な生物を指し、例えば、細菌や放線菌などの原核生物、酵母やカビなどの真核生物、下等藻類、ウイルス等が含まれる。
また本発明の処理液と接触させる微生物としては、鉄(III)イオンを例えば錯形成していたり、水酸化鉄(III)等として安定化したりする高次構造を作るタンパク質など、鉄(III)イオンが存在するタンパク質を構成タンパク質として含む微生物であればよく、具体的には、大腸菌、黄色ブドウ球菌等のブドウ球菌、マイクロコッカス属菌、モラクセラ属菌、アシネトバクター属菌、プロピオニバクテリウム属菌、コリネバクテリウム属菌、レジオネラ属菌、ラクトバシラス属菌、クロストリジウム属菌、レンサ球菌、ヘモフィルス属菌、赤痢菌、青枯病菌、スフィンゴビウム属菌、シュードモナス属菌、キサントモナス属菌、及びアスペルギルス属菌から選ばれる1種以上が挙げられ、菌のニオイ産生能の観点から、好ましくは大腸菌、黄色ブドウ球菌等のブドウ球菌、マイクロコッカス属菌、モラクセラ属菌、アシネトバクター属菌、プロピオニバクテリウム属菌、及びコリネバクテリウム属菌から選ばれる1種以上であり、より好ましくは大腸菌、及び黄色ブドウ球菌等のブドウ球菌から選ばれる1種以上である。
本発明の処理液を微生物に接触させることで、(a)成分を微生物体内に取り込ませ、微生物体内で微生物を構成するタンパク質構造体に存在する鉄(III)イオン存在下、(a)成分と微生物中の溶存酸素とを反応させて、過酸化水素を発生させる。また、前記反応とは別に並行して(a)成分により鉄(III)イオンは還元され、微生物体内で、微生物に由来する鉄(II)イオンが発生する。
鉄(III)イオンが存在する構造体を形成するタンパク質としては、具体的には、フェリチン、メトヘモグロビン、トランスフェリン、及びラクトフェリンから選ばれる1種以上が挙げられ、過酸化水素生成反応への鉄(III)イオン供給の観点から、好ましくはフェリチン、メトヘモグロビンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはフェリチンである。
本発明において、「本発明の処理液を微生物に接触させる」とは、防臭対象物に付着する微生物に直接接触させる行為(例えば、微生物の付着した対象物に対して処理液に浸す、処理液を噴霧や塗布する等の行為)、対象物にあらかじめ処理液を用いて、洗浄、噴霧、塗布等の処理を行った後、乾燥等を行い、対象物表面に(a)成分を付着させておいた後、新たに微生物が対象物表面に付着、尿や汗等の水分を介して、対象物表面の(a)成分が溶解し、新たに付着した微生物と接触させる行為、を含む概念であり、(a)成分と微生物が接触できればよい。
<工程2>
本発明の微生物体内での活性酸素の産生方法は、更に、微生物体内において、工程1で得た過酸化水素と、微生物に由来する鉄(II)イオンとを反応させてヒドロキシラジカルを生成する工程を有することが好ましい。
工程2では、工程1で得た過酸化水素の代わりに、微生物体内に存在する過酸化水素と、(a)成分と、微生物に由来する鉄(II)イオンとを反応させてヒドロキシラジカルを生成してもよい。
即ち、本発明は、(a)成分を含む処理液を微生物と接触させて、微生物体内に存在する過酸化水素と、微生物に由来する鉄(II)イオンとを反応させてヒドロキシラジカルを生成する工程(工程2)を有する、微生物体内での活性酸素の産生方法を提供する。
本発明において、「微生物に由来する鉄(II)イオン」とは、本発明の工程1の微生物体内のタンパク質構造体中に存在する鉄(III)イオンが(a)成分により還元されて生成する鉄(II)イオン、本発明の工程2におけるヒドロキシラジカル生成反応で鉄(II)イオンが酸化されて生成する鉄(III)イオンが更に近傍に存在する(a)成分によって還元された鉄(II)イオン、及び微生物が環境から体内に取り込んだ鉄(II)イオン等のことである。
工程2では、工程1で得た過酸化水素又は微生物体内に存在する過酸化水素と、微生物に由来する鉄(II)イオンが、微生物体内で、フェントン反応を起こし、活性酸素種であるヒドロキシラジカルを生成する。このヒドロキシラジカルが、微生物の代謝によって産生する臭い化合物、及び微生物が産生する臭い化合物の生成に関与する酵素等を分解又は不活性化することができる。
微生物が産生する臭い化合物としては、p-クレゾール等のフェノール類、スカトール等のインドール類、3-ヒドロキシ‐3-メチルヘキサン酸や3-メチル‐2-ヘキセン酸等の脂肪酸類、3-メルカプト-3-メチルヘキサノール等のチオアルコール類、アンモニア等のアミン類、及びアンドロステノン等のステロイド類から選ばれる1種以上が挙げられる。
微生物が産生する臭い化合物の産生に関与する酵素としては、β-グルクロニダーゼ、リパーゼ、アミノアシラーゼ、β-リア―ゼ、ウレアーゼ、及びアリールサルファターゼから選ばれる1種以上が挙げられる。
工程1と工程2は、本発明の処理液を微生物と接触させ、(a)成分が微生物体内に取り込まれることで、同時に行われる。すなわち、本発明の微生物体内での活性酸素の産生方法は、工程1と工程2を同時に行ってよい。
本発明の処理液を微生物と接触させる方法としては、繊維製品に存在する微生物に対して行う場合、例えば、本発明の処理液と水を混合して洗浄液を調製し、該洗浄液で繊維製品を洗濯機等で洗浄する方法が挙げられる。洗浄した繊維製品は、洗浄後、乾燥させる。この場合、工程1、工程2は、洗浄中又は洗浄後(乾燥時又は乾燥後)に行われる。
本発明の処理液を微生物と接触させる方法としては、繊維製品に存在する微生物に対して行う場合、例えば、本発明の処理液を繊維製品に噴霧又は塗布する方法が挙げられる。また本発明の処理液を微生物と接触させる方法は、本発明の処理液を繊維製品に噴霧又は塗布し、新たに微生物が繊維製品に付着した際に接触させる方法であってもよい。本発明の処理液を繊維製品に噴霧又は塗布する方法は、スプレーヤー付き容器に本発明の処理液を充填し、該処理液を繊維製品に噴霧することにより、処理液を繊維製品と接触させる方法が好ましい。また、布、ブラシ等の塗布具により本発明の処理液を繊維製品に塗布することにより、該処理液を繊維製品と接触させてもよい。本発明の処理液を繊維製品に噴霧又は塗布することで、工程1と工程2が行われる。
<処理液>
本発明の処理液は(a)成分を含有する。
(a)成分は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物であって、全ての(a)成分を等量のn-オクタノールと水の混合物に溶解させた時の20℃におけるアスコルビン酸骨格を基準にしたn-オクタノール相でのモル濃度S(Oc)と水相でのモル濃度S(HO)の分配割合S(Oc)/S(HO)、又は、(a)成分のlogP値から算出されるアスコルビン酸骨格を基準にしたn-オクタノール相でのモル濃度S(Oc)と水相でのモル濃度S(HO)の分配割合S(Oc)/S(HO)が0.0004以上7000以下である、化合物が好ましい。
(a)成分の分配割合S(Oc)/S(HO)は、活性酸素として過酸化水素及びヒドロキシラジカルを産生する観点(以下、活性酸素産生の観点)から、0.0004以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは1以上、より更に好ましくは10以上、そして、7000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下、より更に好ましくは25以下である。
(a)成分のn-オクタノール相でのモル濃度S(Oc)と水相でのモル濃度S(HO)の分配割合S(Oc)/S(HO)は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物に対して、20℃のn-オクタノール及び水混合溶液に溶解させた後、n-オクタノール相及び水相に存在するアスコルビン酸基を定量する方法、及び、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物のlogP値から算出する方法のいずれかによって求めることができる。
[n-オクタノール相及び水相に存在するアスコルビン酸基の定量から算出する方法]
(a)成分の分配割合S(Oc)/S(HO)は、JIS Z7260-107に基づいた方法により測定可能である。具体的には、20℃にて全ての(a)成分を等量のn-オクタノールと水の混合物に100mg/Lとなるよう溶解し、試験容器を振とう機又は手によって振とうする(5分間,約 100回)。浸とう後、遠心分離を行うことで相分離し、n-オクタノール相と水相をそれぞれサンプリングして高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等を用いて濃度を測定することで算出する。例えば、(a)成分の濃度測定は、255nmでのUV検出を用いた下記条件のHPLCにより行うことができる。
・溶離液A:1%v/vりん酸水溶液(pH3.0)
溶離液B:メタノール/アセトニトリル=1:1(v/v)混合物
・グラジエント条件: 35%溶離液B(0-5分)→ 35%-45%溶離液B(5-12分)→ 40-90%溶離液B(12分-15分)、流量:1.5mL/min、サンプル注入量:20μL、カラム:C18-ODSカラム
[アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体のlogP値から算出する方法]
(a)成分の分配割合S(Oc)/S(HO)は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物に対して、次式を用いて算出する。
Figure 2022103068000001
式中、Cは化合物iの全ての(a)成分中のモル濃度であり、LogPはCrippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))を用いてChemDraw Professional 17.1より算出される化合物iのLogPである。
(a)成分のアスコルビン酸誘導体としては、アスコルビン酸脂肪酸エステル、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、及びアスコルビン酸配糖体から選ばれる1種以上が挙げられ、具体例としては、エチルアスコルビン酸、カプリル酸アスコルビル、ラウリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、イソパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビル、ジイソパルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、イソステアリン酸アスコルビル、ジステアリン酸アスコルビル、ジイソステアリン酸アスコルビル、ミリスチン酸アスコルビル、イソミリスチン酸アスコルビル、ジミリスチン酸アスコルビル、ジイソミリスチン酸アスコルビル、2-エチルヘキサン酸アスコルビル、ジ2-エチルヘキサン酸アスコルビル、オレイン酸アスコルビル、ジオレイン酸アスコルビル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、グリセリルアスコルビン酸エステル、カプリリルアスコルビン酸-2-グリセリルエステル等のアスコルビン酸アルキル脂肪酸エステル、アスコルビン酸-2-リン酸エステル、アスコルビン酸-3-リン酸エステル、DL-α-トコフェロール-2-アスコルビン酸リン酸ジエステル、パルミチルアスコルビン酸―2リン酸エステル等のアスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸-2-硫酸エステル、アスコルビン酸-3-硫酸エステル等のアスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸-2-グルコシド等のアスコルビン酸配糖体等が挙げられ、これらは1種以上を用いることができる。(a)成分のアスコルビン酸誘導体は、これらの塩も使用可能であり、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が好適に用いられる。但し、これらのアスコルビン酸誘導体を用いる場合、(a)成分の分配割合S(Oc)/S(HO)が前記範囲を満たすことが好ましい。具体的には、アスコルビン酸及びこれらのアスコルビン酸誘導体を1種又は特定の2種以上の併用によって(a)成分の分配割合S(Oc)/S(HO)が前記範囲を満たすことができる。
(a)成分は、活性酸素産生の観点から、アスコルビン酸脂肪酸エステルから選ばれる1種以上が好ましい。アスコルビン酸脂肪酸エステルの原料脂肪酸の炭素数は、活性酸素産生の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、そして、好ましくは26以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。アスコルビン酸脂肪酸エステルは、モノエステル、ジエステル、又はトリエステルが挙げられ、好ましくはモノエステルである。
(a)成分が1種のアスコルビン酸脂肪酸エステルである場合には、原料脂肪酸の炭素数は、活性酸素産生の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは12以上、そして、好ましくは26以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。
(a)成分が2種以上のアスコルビン酸及びアスコルビン酸脂肪酸エステルから併用される場合には、(a)成分全体での分配割合S(Oc)/S(HO)が前記範囲を満たすことが好ましく、特に組み合わせに制限はない。(a)成分が2種のアスコルビン酸及びアスコルビン酸脂肪酸エステルから併用される場合、一方のアスコルビン酸及びアスコルビン酸脂肪酸エステルの分配割合S(Oc)/S(HO)は、活性酸素産生の観点から、好ましくは0.0004以上、そして、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.1以下であり、具体的には、アスコルビン酸及び原料脂肪酸の炭素数が2以上10以下であるアスコルビン酸脂肪酸エステルであり、活性酸素産生の観点から、アスコルビン酸が好ましい。他方のアスコルビン酸脂肪酸エステルの分配割合S(Oc)/S(HO)は、活性酸素産生の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは100以上、更に好ましく500以上、そして、好ましくは8000以下、より好ましくは1000以下、であり、具体的には、原料脂肪酸の炭素数が、活性酸素産生の観点から、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。
2種のアスコルビン酸及びアスコルビン酸脂肪酸エステルの添加量比率は、それぞれの分配割合S(Oc)/S(HO)を平均して算出されるn-オクタノール相でのモル濃度S(Oc)と水相でのモル濃度S(HO)の分配割合S(Oc)/S(HO)の値が、活性酸素産生の観点から、0.0004以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは1以上、より更に好ましくは10以上、そして、7000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下、より更に好ましくは25以下となるように調製することが好ましい。
本発明の(a)成分の使用態様として、水中での対象物への処理を行うことを目的にする態様の場合、対象物表面へ吸着する(a)成分の組成が変動する場合効果のばらつきが出る為、1種のアスコルビン酸脂肪酸エステルで本発明の処理液を構成することが好ましい。又、本発明の処理液を対象物表面へスプレー等で噴霧する、或いは塗布するような使用態様の場合には、対象表面に(a)成分はすべてが定着する為、1種のアスコルビン酸脂肪酸エステルであっても、2種以上から選ばれるアスコルビン酸及びアスコルビン酸脂肪酸エステルであってもよい。
本発明の処理液は、(b)成分として、界面活性剤を含有することができる。本発明の活性酸素の産生方法は、処理液として(a)成分の水溶液を用いることが多いが、(a)成分の構造によっては、水への溶解度が低いものや分散性の悪いものがあり、均一な処理、微生物体内への(a)成分に移動等の効率を低下させる原因となる。そこで、処理液への(a)成分の溶解性向上及び微生物体内への(a)成分の取り込みを向上させるために、更には本発明の防臭効果の向上、洗浄性等の防臭以外の価値付与のために、(b)成分を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、本発明の工程の進行や(a)成分の活性酸素産生効果に悪影響を与えなければ、特に限定されないが(b1)陰イオン界面活性剤(以下、(b1)成分ともいう)、(b2)陽イオン界面活性剤(以下、(b2)成分ともいう)、(b3)非イオン界面活性剤(以下、(b3)成分ともいう)、及び(b4)両性界面活性剤(以下、(b4)成分ともいう)から選ばれる1種以上が挙げられる。
(b1)陰イオン界面活性剤としては、炭素数8以上18以下の炭化水素基を1つ以上と、スルホン酸基、硫酸エステル基及びカルボン酸基からなる群から選ばれる基の1つ以上とを有する陰イオン界面活性剤が挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、炭素数8以上18以下のアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸又はその塩、炭素数8以上18以下のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル又はその塩、炭素数8以上18以下のアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩、炭素数8以上18以下の内部オレフィンスルホン酸又はその塩、及び脂肪酸又はその塩等が挙げられる。
陰イオン界面活性剤の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
(b2)陽イオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が挙げられる。第4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤としては、窒素原子に結合する基のうち、1つ又は2つが炭素数6以上、好ましくは8以上、そして、16以下、好ましくは14以下の炭化水素基であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基及びアリールアルキル基(ベンジル基等)からなる群から選ばれる基である4級アンモニウム塩型陽イオン界面活性剤が挙げられる。
(b3)非イオン界面活性剤としては、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、炭素数8以上18以下のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルグリコシド、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリコシド、炭素数8以上18以下の脂肪酸基を有するショ糖脂肪酸エステル、炭素数8以上18以下のアルキル基を有するアルキルポリグリセリルエーテル等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。(b3)成分は、炭素数8以上18以下のアルキル基を有しエチレンオキサイド平均付加モル数が2以上50以下であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
(b3)成分は、下記一般式(b3)で表される非イオン界面活性剤が好ましい。
31b-O-[(CO)(CO)]-H(b3)
〔式中、R31bは、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基であり、1級アルコール又は2級アルコールに由来する残基であってよい。s及びtは平均付加モル数であって、sは2以上、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上、そして、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは20以下の数、tは0以上、好ましくは1以上、そして、5以下、好ましくは3以下の数であり、tは0であってもよい。(CO)と(CO)はランダム重合体又はブロック重合体であってもよい。〕
(b4)両性界面活性剤としては、ベタイン型界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。(b4)成分は、具体的には、スルホベタイン、カルボベタイン及びアミンオキサイドから選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
スルホベタインとしては、アルキル基の炭素数が好ましくは10以上18以下、のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルキル基の炭素数が10以上18以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10以上18以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10以上18以下のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインが挙げられる。
カルボベタインとしては、アルキル基の炭素数が10以上18以下のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタインや下記一般式(b41)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2022103068000002
〔式中、R41bは炭素数7以上21以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、R42bはプロピレン基を示し、R43b及びR44bは、それぞれ独立に、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。〕
アミンオキサイドとしては、下記一般式(b42)の化合物が好適である。
Figure 2022103068000003
〔式中、R45bは炭素数7以上22以下の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基、より好ましくはアルキル基を示し、R46b及びR47bは、同一又は異なって、炭素数1以上3以下のアルキル基を示す。Dは-NHC(=O)-基又は-C(=O)NH-基を示し、Eは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。m及びpは、m=0かつp=0又はm=1かつp=1を示す。〕
本発明の処理液は、(a)成分を、活性酸素産生の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有する。
本発明の処理液は、(b)成分を、活性酸素産生の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下含有する。
本発明の処理液において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、活性酸素産生の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.3以上、そして、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下である。
本発明の処理液は、水を含有する。水は、イオン交換水、蒸留水、水道水、次亜塩素酸塩ナトリウムを1mg/kg以上5mg/kg以下含有する水などを使用することができる。本発明の処理液は、水を、処理液を構成する成分の残部として用いればよいが、具体的には、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下含有する。
本発明の処理液は、その目的によって適宜設定が可能だが、25℃におけるpHが、活性酸素産生の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、そして、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。該pHは、ガラス電極を用いて25℃で測定した値である。具体的には、以下の方法で測定されたものである。
<pHの測定方法>
堀場製作所製pHメーター D-52にpH電極(型式6367)をあらかじめフタル酸緩衝液(pH4.01)、リン酸標準液(pH6.84)、ホウ酸塩標準液(pH9.18)で校正し、イオン交換水で十分すすいでおく。温度を25℃に調整した処理液に、上記の通り校正、洗浄したpH電極を入れ、pHメーターのAUTO HOLDモードを用いて、測定値が一定になるまで測定する。
本発明の処理液の25℃における粘度は、スプレーヤーを備えた容器での噴霧適性の観点から、好ましくは15mPa・s以下、より好ましくは10mPa・s以下、更に好ましくは5mPa・s以下であり、そして、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは1.5mPa・s以上、更に好ましくは2mPa・s以上である。
処理液の粘度は、東京計器株式会社製、B型粘度計(モデル形式BM)に、No.1のローターを取り付け、防臭剤組成物を200mL容量のガラス製トールビーカーに充填し、ウォーターバスにて25±0.3℃に調製し、ローターの回転数を60r/minに設定し、測定を始めてから60秒後の指示値である。
[微生物の代謝を制御する方法、微生物の代謝物を制御する方法]
本発明は、本発明の微生物体内での活性酸素の産生方法で産生された活性酸素によって、微生物体内の酵素を分解又は不活性化して微生物の代謝経路を遮断する、微生物の代謝を制御する方法を提供する。
また本発明は、本発明の微生物体内での活性酸素の産生方法で産生された活性酸素によって、微生物体内及び微生物体外に排出された微生物の代謝物を分解又は不活性化する、微生物の代謝物を制御する方法に関する。
例えば、β-グルクロニダーゼ活性菌は、微生物体内の臭い化合物の産生に関与する酵素β-グルクロニダーゼを代謝して、当該酵素により臭い物質の前駆体を分解して、臭い物資を発生させる。
本発明では、β-グルクロニダーゼ活性菌に、本発明の活性酸素の産生方法により、微生物体内で活性酸素種であるヒドロキシラジカルを産生させ、このヒドロキシラジカルによって、β-グルクロニダーゼ活性菌の代謝物である酵素β-グルクロニダーゼを分解又は不活性化する。これにより、β-グルクロニダーゼ活性菌の代謝経路を遮断し、臭い物質の発生を抑制することができる。
下記成分を用い、表1~3に示す試験液を調製し、得られた組成物を用いて、下記の評価を行った。
(a)成分
・カプリル酸アスコルビル:合成品、LogP -0.39
・ラウリン酸アスコルビル:合成品、LogP 1.28
・パルミチン酸アスコルビル:東京化成製、LogP 2.95
・ステアリン酸アスコルビル:東京化成製、LogP 3.79
・アスコルビン酸:東京化成製、LogP -3.36
カプリル酸アスコルビル及びラウリン酸アスコルビルは、J Am Oil Chem Soc54: 308-312(1977)に準じて合成を行った。
<ラウリン酸アスコルビルの合成>
L-アスコルビン酸(8.0mmol)とラウリン酸(10mmol)を濃硫酸(25mL)に溶かし、25℃で24時間撹拌しエステル化反応を行った。反応液を氷水中(150mL)に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出を行った後、エバポレーターにより溶媒を留去することで粗生成物を得た。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄することで精製を行った。反応の経過および化合物の同定はTLC及びNMRスペクトルの測定により行ない、98%以上の純度であることを確認した。
<カプリル酸アスコルビルの合成>
ラウリン酸をカプリル酸に変更する以外は、ラウリン酸アスコルビルの合成方法と同様にしてカプリル酸アスコルビルの合成を行った。反応の経過および化合物の同定はTLC及びNMRスペクトルの測定により行ない、98%以上の純度であることを確認した。
表1~3の各試験液の(a)成分を等量のn-オクタノールと水の混合物に溶解させた時の20℃におけるアスコルビン酸骨格を基準にしたn-オクタノール相でのモル濃度S(Oc)と水相でのモル濃度S(HO)の分配割合である、S(Oc)/S(HO)は、次式を用いて算出した。
Figure 2022103068000004
式中、Cは各化合物iの全ての(a)成分中のモル濃度であり、LogPはCrippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))を用いてChemDraw Professional 17.1より算出される各化合物iのLogPである。
(b)成分
・非イオン界面活性剤1:ラウリルアルコールに順にエチレンオキシドを平均9、プロピレンオキシドを平均2、エチレンオキシドを平均9付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル
・非イオン界面活性剤2:炭素数12~14の二級アルコールにエチレンオキシドを平均7モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ソフタノール70H、株式会社日本触媒製)
・陽イオン界面活性剤1:N,N―ジデシル-N-エチル-N-メチルアンモニウム硫酸エチル塩(コータミンD10-ES、花王株式会社製)
・陽イオン界面活性剤2:N-エチル-N,Nジメチルテトラデシルアンモニウム硫酸エチル塩(コータミン40ES、花王株式会社製)
その他成分
・フェリチン:フェリチン(ウマ脾臓由来)(100mg/1mL)(東京化成工業(株)製)、鉄(III)イオンを保有するモデルタンパク質
・BSA:アルブミン, ウシ血清由来(BSA), プロテアーゼ不含(富士フイルム和光純薬(株)製)、鉄(III)イオンを保有しないモデルタンパク質
・アポフェリチン:アポフェリチン(ウマ脾臓由来)(Sigma―Aldrich製)、鉄(III)イオンを保有しないモデルタンパク質
・DPBS:Dulbecco`s Phosphate-BufferedSaline(DPBS,calcium, magnesium、Thermo FisherScientific)
・0.1M りん酸バッファ(pH6.0):0.1mol/L りん酸緩衝液, pH6.0(富士フイルム和光純薬(株)製)
<(a)成分の存在場所の確認>
表1に示す試験液を調製し、25℃で2時間静置した。静置後、AmiconUltra 100K Devicesを用いて限外ろ過することによりフェリチンを除去した。ろ液をメタノールで10倍に希釈し測定溶液とした。次に、用いた(a)成分を成分ごとにメタノールで希釈し0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、5.0ppm、10.0ppmの検量線用溶液をそれぞれ調製した。調製した検量線用溶液を下記条件の液体クロマトグラフ質量分析装置(以下、LCMS装置と省略)で定量して検量線を作成した。次に測定溶液をLCMS装置で定量して、検量線から測定溶液(水相)の(a)成分濃度を求めた。そして、フェリチン中の(a)成分濃度を下記の式より求めた。
フェリチン中の(a)成分濃度=(試験液の(a)成分の総濃度(25ppm))-(測定溶液の(a)成分濃度)
・LCMS装置:(株)島津製作所製 LCMS2020(ESI検出)
・測定モード:SIM
・測定イオン:アスコルビン酸:m/z(-)=175.0、カプリル酸アスコビル:m/z(-)=301.0、ラウリン酸アスコビル:m/z(-)=357.0、ミリスチン酸アスコビル:m/z(-)=413.2、ステアリン酸アスコビル:m/z(-)=441.2
・カラム:Imtakt Unison UK-C18 HT (50*2 mm) 3 μm
・溶離液A:0.1%ギ酸水溶液
溶離液B:メタノール:アセトニトリル=1:1
・グラジエント条件:50%溶離液B(0-2分)→ 50%-90%溶離液B(2-3.3分)→ 90%溶離液B(3.3-5.3分)→ 90%-50%溶離液B(5.3-6.0分)→ 90%溶離液B(6.0-8.0分)、流量:0.6mL/min、サンプル注入量5μl、カラム温度40℃
Figure 2022103068000005
表1に示すように、(a)成分は、試験液中で疎水性部位となるフェリチンが作る構造体の中と、水相の中とで特定の割合で分配されることが分かる。分配される比率は、フェリチンとn-オクタノールでは疎水度が異なるため本発明の指標とする分配割合S(Oc)/S(HO)値とは必ずしも一致しないが、分配割合S(Oc)/S(HO)値とフェリチンでの実測の分配率との間で傾向が一致する為、分配割合S(Oc)/S(HO)値は、細胞中での(a)成分の疎水性部位および親水性部位への分配挙動を示す尺度となる。
尚、フェリチンは、微生物内で疎水的な部位を形成する鉄(III)イオンを保有するタンパク質構造体のモデルであり、調製した試験液は、りん酸バッファ雰囲気であり、微生物内で親水的な部位のモデルとなり、全体として微生物菌体内のモデルとなる。
<過酸化水素の産生分析(工程1)>
上記成分を用い、表2に示す試験液を調製した。調製した試験液に、過酸化水素の検出のために蛍光プローブBES―H2O2―Ac(富士フイルム和光純薬(株)製)を20μMとなるように添加し、25℃30分間インキュベートした。マイクロプレートリーダーInfinite(R)200PRO(Tecan社)を用い、反応液の蛍光強度(Ex/Em:485/515)を測定した。比較例1を1とした場合の蛍光強度比を過酸化水素発生量として算出した。結果を表2に示す。
尚、前記蛍光プローブは過酸化水素と即座に反応し蛍光を発する。過酸化水素の分解や他の反応は生じないため、工程1の過酸化水素産生過程を示す。
<鉄(II)イオンの産生分析(工程1)>
上記成分を用い、表2に示す試験液を調製した。試験液を37℃24時間インキュベートした。鉄(II)イオンの検出のために蛍光プローブFerroOrange(同仁化学)1mM DMSO溶液1μLを試験液500μLへ加え25℃で30分間反応させた後、マイクロプレートリーダーInfiniteTM200PRO(Tecan社)を用い、反応液の蛍光強度(Ex/Em:543/580)を測定した。比較例1を1とした場合の蛍光強度比を鉄(II)イオン発生量として算出した。尚、前記蛍光プローブは鉄(II)イオンと特異的に反応し蛍光を発する。
Figure 2022103068000006
表2中、(a)成分と、鉄(III)イオンを保有するモデルタンパク質であるフェリチンとを反応させた実施例6~10では、(a)成分を含有しないで反応させた比較例1、2と比べて、過酸化水素を生成していることが分かる。一方、(a)成分と、鉄(III)イオンを保有しないモデルタンパク質であるBSAとを反応させた比較例3では、過酸化水素の生成は見られなかった。また、実施例6~10では、過酸化水素の生成と同時に、(a)成分と鉄(III)イオンにより鉄(II)イオンを生成する反応が行われていることが分かる。
尚、フェリチンは、微生物内で疎水的な部位を形成する鉄(III)イオンを保有するタンパク質構造体のモデルであり、調製した試験液は、りん酸バッファ雰囲気であり、微生物内で親水的な部位のモデルとなり、全体として微生物菌体内のモデルとなる。
<ヒドロキシラジカルの産生分析(工程1、2)>
上記成分を用い、表3に示す試験液を調製した。調製した試験液に、ヒドロキシラジカル検出のための蛍光プローブHPF試薬(Hydroxyphenyl Fluorescein(五陵化学(株)製))を10μMとなるように添加し、37℃で24時間インキュベートした。マイクロプレートリーダーInfinite(R)200PRO(Tecan社)を用い、蛍光強度(Ex/Em:492/525)を測定した。次式を用いて、比較例4を1とした場合の蛍光強度比からヒドロキシラジカル発生量を算出した。結果を表3に示す。
尚、前記蛍光プローブは、ヒドロキシルラジカルとのみ選択的に反応し、過酸化水素とは反応しないため、工程1で生成した過酸化水素を利用した、工程2のヒドロキシルラジカル産生過程を示す。
Figure 2022103068000007
Figure 2022103068000008
表3中、(a)成分と、鉄(III)イオンを保有するモデルタンパク質であるフェリチンとを反応させた実施例11~16では、(a)成分を含有しないで反応させた比較例4と比べて、活性酸素であるヒドロキシラジカルを生成していることが分かる。上記の結果と表2の結果から、実施例11~16では、工程1、工程2が行われて、ヒドロキシラジカルが生成したことが言える。一方、(a)成分と、鉄(III)イオンを保有しないモデルタンパク質であるアポフェリチンとを反応させた比較例6では、ヒドロキシラジカルの生成は比較例4と同じで程度であった。
尚、フェリチンは、微生物内で疎水的な部位を形成する鉄(III)イオンを保有するタンパク質構造体のモデルであり、調製した試験液は、りん酸バッファ雰囲気であり、微生物内で親水的な部位のモデルとなり、全体として微生物菌体内のモデルとなる。

Claims (9)

  1. 下記(a)成分を含む処理液を微生物と接触させて、(a)成分を微生物体内に取り込ませ、微生物体内において、微生物を構成するタンパク質構造体中に存在する鉄(III)イオン存在下、(a)成分と微生物中の溶存酸素により過酸化水素を生成する反応と、(a)成分と鉄(III)イオンにより鉄(II)イオンを生成する反応をおこなう工程(以下、工程1という)を有する、微生物体内での活性酸素の産生方法。
    (a)成分:アスコルビン酸、及びアスコルビン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物
  2. 更に、微生物体内において、工程1で得た過酸化水素と、微生物に由来する鉄(II)イオンとを反応させてヒドロキシラジカルを生成する工程(以下、工程2という)を有する、請求項1に記載の微生物体内での活性酸素の産生方法。
  3. 構造体中に鉄(III)イオンが存在する前記タンパク質がフェリチンである、請求項1又は2に記載の微生物体内での活性酸素の産生方法。
  4. (a)成分が、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体から選ばれる1種以上の化合物であって、全ての(a)成分を等量のn-オクタノールと水の混合物に溶解させた時の20℃におけるアスコルビン酸骨格を基準にしたn-オクタノール相でのモル濃度S(Oc)と水相でのモル濃度S(HO)の分配割合S(Oc)/S(HO)、又は、(a)成分のlogP値から算出されるアスコルビン酸骨格を基準にしたn-オクタノール相でのモル濃度S(Oc)と水相でのモル濃度S(HO)の分配割合S(Oc)/S(HO)が、0.0004以上7000以下である、化合物である、請求項1~3の何れか1項に
    記載の微生物体内での活性酸素の産生方法。
  5. (a)成分が、アスコルビン酸脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である、請求項1~4の何れか1項に記載の微生物体内での活性酸素の産生方法。
  6. 工程1と工程2を同時に行う、請求項2~5の何れか1項に記載の微生物体内での活性酸素の産生方法。
  7. 下記(a)成分を含む処理液を微生物と接触させて、微生物体内に存在する過酸化水素と、微生物に由来する鉄(II)イオンとを反応させてヒドロキシラジカルを生成する工程を有する、微生物体内での活性酸素の産生方法。
  8. 請求項1~7の何れか1項に記載の方法で産生された活性酸素によって、微生物体内の酵素を分解又は不活性化して微生物の代謝経路を遮断する、微生物の代謝を制御する方法。
  9. 請求項1~7の何れか1項に記載の方法で産生された活性酸素によって、微生物体内及び微生物体外に排出された微生物の代謝物を分解又は不活性化する、微生物の代謝物を制御する方法。
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