JP2022099488A - 物理量センサー、慣性計測装置、及び物理量センサーの製造方法 - Google Patents

物理量センサー、慣性計測装置、及び物理量センサーの製造方法 Download PDF

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史隆 篠村
Fumitaka Shinomura
翔太 木暮
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Abstract

【課題】過度な衝撃に対する可動体のスティッキングを防止する物理量センサー、慣性計測装置、及び物理量センサーの製造方法を提供する。【解決手段】物理量センサー10は、基板11と、基板11に設けられた固定部13に固定され、所定方向に変位可能な可動体33と、可動体33に設けられた可動電極34,35,36と、基板11に設けられ、金属、前記金属の合金、又は窒化物からなる表面を有する固定電極37,38,39と、基板11とともに可動体33を収容する蓋体21と、基板11、又は蓋体21における、可動体33が接触可能な位置に設けられ、固定電極37,38,39の表面には設けられないように、選択的に配置されたアンチスティクション層53と、を備える。【選択図】図2

Description

本発明は、物理量センサー、慣性計測装置、及び物理量センサーの製造方法に関する。
近年、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて製造された物理量センサーが開発されている。このような物理量センサーとして、例えば特許文献1には、基板と、基板上に配置され、第1、第2質量部を有し、回転軸の周りにシーソー揺動する可動体と、基板上に設けられ、第1、第2質量部と対向する第1、第2固定電極と、を有し、可動体の互いに回転軸の周りの回転モーメントが異なる第1、第2質量部と、夫々に対向する位置に配置された第1、第2固定電極と、の間の静電容量の変化に基づいて鉛直方向の加速度を検出することができる物理量センサーが記載されている。
また、この物理量センサーは、可動体が過度にシーソー揺動した際に、可動体と第1、第2固定電極とが接触することを防ぐために、第1、第2質量部に向かって突出する突起部が基板に設けられている。
特開2020-24098号公報
しかしながら、特許文献1に記載された物理量センサーは、外部から強い振動や衝撃を受けると、過度のシーソー揺動によって可動体と突起部とが衝突し、可動体が1つの剛体として一定のエネルギーで衝突を繰り返すと、可動体と突起部との間で、スティクションと呼ばれる貼り付き現象が生じる虞があった。
物理量センサーは、基板と、前記基板に設けられた固定部に固定され、所定方向に変位可能な可動体と、前記可動体に設けられた可動電極と、前記基板に設けられ、金属、前記金属の合金、又は窒化物からなる表面を有する固定電極と、前記基板とともに前記可動体を収容する蓋体と、前記基板又は前記蓋体における、前記可動体が接触可能な位置に設けられ、前記固定電極の前記表面には設けられないように、選択的に配置されたアンチスティクション層と、を備える。
慣性計測装置は、上記に記載の物理量センサーと、前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、を備える。
物理量センサーの製造方法は、基板上に、前記基板に設けられた固定部に固定され、所定方向に変位可能な可動体と、前記可動体に設けられた可動電極と、前記基板に設けられ、金属、前記金属の合金、又は窒化物からなる表面を有する固定電極と、を形成する工程と、貫通孔を有する蓋体を準備する工程と、前記蓋体を前記基板に接合して、前記蓋体と前記基板との間に前記可動体を収容する工程と、前記貫通孔を介して、前記蓋体、前記可動体、及び前記基板の面にアンチスティクション層を形成する工程と、前記蓋体、前記可動体、前記基板を加熱して、前記固定電極上の前記アンチスティクション層を除去する工程と、前記貫通孔を塞ぐ工程と、を有する。
第1実施形態に係る物理量センサーの概略構造を示す平面図。 図1中のA-A線における断面図。 基板の概略構造を示す平面図。 シランカップリング剤を説明する図。 シランカップリング剤を説明する図。 シランカップリング剤を説明する図。 第1実施形態に係る物理量センサーの製造方法を示すフローチャート図。 物理量センサーの製造方法を示す断面図。 物理量センサーの製造方法を示す断面図。 物理量センサーの製造方法を示す断面図。 物理量センサーの製造方法を示す断面図。 物理量センサーの製造方法を示す断面図。 物理量センサーの製造方法を示す断面図。 物理量センサーの製造方法を示す断面図。 物理量センサーの製造方法を示す断面図。 第2実施形態に係る物理量センサーの概略構造を示す平面図。 図16中のB-B線における断面図。 基板の概略構造を示す平面図。 第3実施形態に係る物理量センサーの概略構造を示す平面図。 図19中のC-C線における断面図。 基板の概略構造を示す平面図。 第4実施形態に係る物理量センサーの概略構造を示す断面図。 第5実施形態に係る物理量センサーを備える慣性計測装置の概略構成を示す分解斜視図。 図23の基板の斜視図。
1.第1実施形態
1.1.物理量センサー
先ず、第1実施形態に係る物理量センサー10について、鉛直方向の加速度を検出する加速度センサーを一例として挙げ、図1、図2、及び図3を参照して説明する。
尚、図1において、物理量センサー10の内部の構成を説明する便宜上、蓋体21を取り外した状態を図示し、物理量センサー10の内部に設けられているアンチスティクション層53の図示を省略している。また、図1、図2、及び図3において、基板11に設けられている配線の図示を省略している。
また、説明の便宜上、以降の平面図、断面図、及び斜視図には互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、及びZ軸を図示している。また、X軸に沿った方向を「X方向」、Y軸に沿った方向を「Y方向」、Z軸に沿った方向を「Z方向」と言う。また、各軸方向の矢印先端側を「プラス側」、基端側を「マイナス側」、Z方向プラス側を「上」、Z方向マイナス側を「下」とも言う。また、Z方向は、鉛直方向に沿い、XY平面は、水平面に沿っている。
図1及び図2に示す物理量センサー10は、センサー素子30の鉛直方向であるZ方向の加速度を検出することができる。このような物理量センサー10は、基板11と、基板11上に配置されたセンサー素子30と、基板11に接合され、センサー素子30を覆う蓋体21と、を有する。
基板11は、図1及び図3に示すように、X方向及びY方向に広がりを有し、Z方向を厚さとする。また、基板11は、図2に示すように、下方に窪む凹部14が形成されている。この凹部14は、Z方向からの平面視で、センサー素子30を内側に内包し、センサー素子30よりも大きく形成されている。凹部14は、センサー素子30を揺動するための逃げ部として機能する。また、基板11は、凹部14の内底面15からセンサー素子30側に突出している固定部13を有し、固定部13の上にセンサー素子30が接合されている。これにより、センサー素子30を、凹部14の内底面15と離間させた状態で基板11に固定することができる。
また、凹部14の内底面15に、第1固定電極37と、第2固定電極38と、ダミー電極となる第3固定電極39と、が配置されている。第1固定電極37と第2固定電極38とは、略等しい面積を有する。また、第1固定電極37と第2固定電極38とは、図示しない外部装置のQVアンプにそれぞれ接続され、その静電容量差を差動検出方式により電気信号として検出する。従って、第1固定電極37と第2固定電極38とは、等しい面積であることが望ましい。
また、基板11は、凹部14が設けられてない領域の上面12に外部装置と、固定電極37,38,39と、を電気的に接続する接続端子16が設けられている。
基板11としては、例えば、Na+等の可動イオンであるアルカリ金属イオンを含むガラス材料、例えば、パイレックス(登録商標)ガラス、テンパックス(登録商標)ガラスのような硼珪酸ガラスで構成されたガラス基板を用いることができる。ただし、基板11としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板や石英基板を用いてもよい。
また、固定電極37,38,39は、Au、Pt、Ag、Cu、Al、Ti等の金属、これらの金属を含む合金、又はTiN、GaN、ZnN、InN等の窒化物等からなる表面を有する。特に、金属としては、表面張力や表面エネルギーが低いものが適しており、Au、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Ag等の貴金属が好ましい。例えば、Ptは、表面張力1.8mJ/m2程度であり、純水の接触角は、96°である。他の貴金属と純水との接触角は、例えば、Au、Pdでは、それぞれ95°、105°である。
蓋体21は、図2に示すように、上方に窪む凹部22が基板11の凹部14と重なる位置に形成されている。蓋体21は、凹部22内にセンサー素子30を収容して基板11の上に接合されている。そして、蓋体21及び基板11によって、その内側に、センサー素子30を収容する内部空間Sが形成されている。
蓋体21には、上面24と凹部22の内底面23とを厚み方向に連通する貫通孔25が設けられている。貫通孔25の側面に金属層26が設けられており、貫通孔25は、金属層26と接する封止部材52によって塞がれ封止されている。尚、金属層26は、貫通孔25と封止部材52との密着性を高めるために設けられている。また、金属層26の構成材料としては、Au、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Ag等の貴金属又はそれらを含んだ合金であることが好ましい。本実施形態においては、封止部材52としてAuGe合金、金属層26として貫通孔25との密着層としてTiと、封止部材52と合金を形成するためのAuのAu/Ti積層膜とした。
貫通孔25を封止部材52によって塞がれた内部空間Sは、気密空間であり、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが封入され、使用温度が-40℃~125℃程度で、ほぼ大気圧となっていることが好ましい。ただし、内部空間Sの雰囲気は、特に限定されず、例えば、減圧状態であってもよいし、加圧状態であってもよい。
尚、本実施形態では、封止部材52を溶融して貫通孔25を封止しているが、これに限定することはなく、封止部材52を用いず、レーザーによって貫通孔25を直接溶融し貫通孔25を封止しても構わない。
また、図2及び図3に示すように、内部空間Sにアンチスティクション層53が設けられている。アンチスティクション層53は、基板11又は蓋体21における、可動体33と接触可能な位置に選択的に設けられ、固定電極37,38,39、及び貫通孔25に設けられた金属層26の表面には、選択的に配置されていない。また、アンチスティクション層53は、基板11に設けられた凹部14の内底面15及び内側壁と、基板11に設けられた固定部13の側壁と、蓋体21に設けられた凹部22の可動体33側の面である内底面23及び内側壁と、に設けられている。また、アンチスティクション層53は、センサー素子30の固定部13との接合面及び蓋体21と基板11との接合部50には設けられないように、配置されている。
アンチスティクション層53は、オルガノシリコン化合物等の有機シリコン化合物のカップリング剤からなり、オルガノシリコン化合物は、アルキルシラン、フェニルシラン、フェニルアルキルシラン、アルコキシシラノール、アルキルシラノール、フェニルシラノール、フェニルアルキルシラノール、アルコキシシロキサン、アルキルシロキサン、フェニルシロキサン、フェニルアルキルシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等である。これらの有機シリコン化合物のカップリング剤は、表面エネルギーを低下させるため、スティクションの発生確率を低下させる効果がある。例えば、ヘキサメチルジシランを用いた場合は、表面エネルギーが20mJ/m2以下となり好適である。この時、表面状態は、疎水状態となり、純水との接触角は、約85°以上となる。また、本実施形態では、固定電極37,38,39の表面を除く、可動体33と接触する可能性のある全ての表面にアンチスティクション層53が形成されているので、接触する2つの表面の吸着力を小さくし、可動体33とのスティクションの発生を低減させることができる。
尚、アンチスティクション層53が固定電極37,38,39の表面に選択的に配置されていないのは、固定電極37,38,39と可動電極34,35,36との間に不要な容量を増やさないためである。また、アンチスティクション層53が貫通孔25に設けられた金属層26の表面に選択的に配置されていないのは、金属層26と封止部材52との密着性を高めるためである。
蓋体21としては、例えば、シリコン基板を用いることができる。ただし、これに特に限定されず、例えば、ガラス基板や石英基板を用いてもよい。また、基板11と蓋体21との接合方法としては、特に限定されず、基板11や蓋体21の材料によって適宜選択すればよく、例えば、陽極接合、プラズマ照射によって活性化させた接合面同士を接合させる活性化接合、ガラスフリット等の接合材による接合、基板11の上面及び蓋体21の下面に成膜した金属膜同士を接合する金属共晶接合等を用いることができる。
センサー素子30は、例えば、リン(P)、ボロン(B)、砒素(As)等の不純物がドープされた導電性のシリコン基板をエッチング、特に、深堀エッチング技術であるボッシュ・プロセスによって垂直加工することにより形成される。
センサー素子30は、図1に示すように、固定部13の上に接合されている保持部31と、基板11に対向して設けられ、保持部31に対して所定方向に変位可能な可動体33と、保持部31と可動体33とを接続し、Y方向に延在する支持梁32と、を有する。そして、Z方向に沿った加速度が作用すると、可動体33が支持梁32を回転軸J1として、支持梁32を捩り変形させながら揺動する。換言すれば、回転軸J1を中心軸として、可動体33が保持部31に対して、シーソー揺動可能に構成されている。
可動体33は、Z方向からの平面視で、X方向を長辺とする長方形状をなしている。そして、可動体33は、回転軸J1に対してX方向のマイナス側に位置する第1可動電極34と、回転軸J1に対してX方向のプラス側に位置する第2可動電極35と、第2可動電極35と連結する第3可動電極36と、を有する。第1可動電極34、第2可動電極35、及び第3可動電極36は、Z方向からの平面視で、基板11の内底面15に設けられた第1固定電極37、第2固定電極38、及び第3固定電極39とそれぞれ重なって配置されている。
また、回転軸J1に対してX方向のプラス側に位置する可動体33は、第2可動電極35と第3可動電極36とが連結しているため、回転軸J1に対してX方向のマイナス側に位置する可動体33である第1可動電極34よりもX方向に長く構成されている。従って、回転軸J1に対してX方向のプラス側に位置する可動体33は、平面視で回転軸J1に対してX方向のマイナス側に位置する可動体33よりも面積が大きくなり、質量が大きくなることから、加速度が加わったときの回転モーメントがX方向のマイナス側に位置する可動体33よりも大きい。この回転モーメントの差によって、加速度が加わると、可動体33が回転軸J1まわりにシーソー揺動する。尚、シーソー揺動とは、第1可動電極34がZ方向プラス側に変位すると、第2可動電極35がZ方向マイナス側に変位し、反対に、第1可動電極34がZ方向マイナス側に変位すると、第2可動電極35がZ方向プラス側に変位することを意味する。
また、可動体33は、第1可動電極34と第2可動電極35との間に開口を有し、開口内に保持部31及び支持梁32が配置されている。このような形状とすることにより、センサー素子30の小型化を図ることができる。
物理量センサー10の駆動時、センサー素子30に駆動信号が印加されることにより、第1可動電極34と第1固定電極37との間に静電容量Caが形成される。同様に、第2可動電極35と第2固定電極38との間に静電容量Cbが形成される。加速度が加わっていない自然状態では静電容量Ca,Cbが互いにほぼ等しい。
物理量センサー10に加速度が加わると、可動体33が回転軸J1を中心にしてシーソー揺動する。この可動体33のシーソー揺動により、第1可動電極34と第1固定電極37とのギャップと、第2可動電極35と第2固定電極38とのギャップと、が逆相で変化し、これに応じて静電容量Ca,Cbが互いに逆相で変化する。そのため、物理量センサー10は、静電容量Ca,Cbの容量値の差に基づいてZ方向の加速度を検出することができる。
次に、本実施形態の物理量センサー10に用いられたアンチスティクション層53について、図4、図5、及び図6を参照して説明する。
アンチスティクション層53を構成する有機シリコン化合物Gは、一般的にシランカップリング剤といわれ、ガラスや金属の無機基板の表面に撥水性・撥油性を有する有機薄膜を形成する際に用いられる。
シランカップリング剤の化学構造は、図4に示すように、Y-Si(OR)3であり、1つのケイ素(Si)原子が1つの有機官能基(Y)と3つの加水分解基(OR)と結合している。これを加水分解すると、加水分解基(OR)から生ずるOHとケイ素がシラノール(Si-OH)基を生成する。
生成されたシラノール(Si-OH)基は、他のシランカップリング剤のシラノール(Si-OH)基と脱水縮合し、連鎖状となる。この連鎖状となったシランカップリング剤のシラノール(Si-OH)基は、図5に示すように、無機材料のヒドロキシ(-OH)基と水素結合して無機材料の表面に定着する。その後、脱水縮合することで、強固な共有結合で無機物表面に密着する。
また、図6に示すように、ガラスやガラス上に形成した金属にも同様に、共有結合で表面に密着する。しかし、加熱すると、ガラス表面に密着したシランカップリング剤は、そのまま密着しているが、金属の種類によっては、金属表面上のシランカップリング剤が剥がれてしまう場合がある。加熱により表面上のシランカップリング剤が剥がれる金属としては、Au、Pt、Ag、Cu、Al等の金属又はこれらの金属を含む合金である。また、TiN、GaN、ZnN、InN等の窒化物についても同様に、加熱により表面上のシランカップリング剤を容易に剥がすことができる。特に、加熱により表面上のシランカップリング剤を剥がし易い金属としては、Au、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Ag等の貴金属である。
従って、本実施形態の物理量センサー10は、貫通孔25の封止前に、加熱することで、基板11に設けられた固定電極37,38,39の表面や蓋体21に設けられた金属層26の表面に設けられたアンチスティクション層53を取り除くことができる。尚、本実施形態のアンチスティクション層53では、シラノール(Si-OH)基を備えたシランカップリング剤を用いたが、金属の表面から脱離するような材料であれば良く、その他にフッ化シラン、フッ化エーテル、フッ化アクリル、等の材料であっても良い。
尚、アンチスティクション層53の厚さは、0.1nm以上10.0nm以下が好ましい。0.1nm未満の場合は、接触する2つの表面の吸着力を十分低減することができなくなり、10.0nmより厚い場合は、成膜時間が長いことや加熱による金属表面からの除去がし難くなるためである。
本実施形態の物理量センサー10は、基板11又は蓋体21における、可動体33が接触可能な位置に設けられ、固定電極37,38,39の表面には設けられないように、選択的にアンチスティクション層53を配置しているので、基板11又は蓋体21と可動体33とが接触してスティクションが生じるのを低減することができる。
また、基板11に設けられたAu、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Ag等の貴金属からなる固定電極37,38,39の表面にアンチスティクション層53が配置されていないので、可動体33の可動電極34,35,36と固定電極37,38,39との間に不要な容量が生じない。そのため、加速度の検出精度の劣化を低減することができる。その一方で、凹部22、凹部14、センサー素子30の全ての表面を、表面エネルギーの低いアンチスティクション層53と、表面張力や表面エネルギーの低い金属である固定電極37,38,39と、で覆いつくすことができる。つまり、センサー素子30及びそれを覆う外周の空間を全て疎水状態の材料で取り囲むことができる。従って、一定のエネルギーで繰り返す衝突を起因とするスティクション現象を低減することができる。
1.2.物理量センサーの製造方法
次に、本実施形態の物理量センサー10の製造方法について、図7~図15を参照して説明する。
本実施形態の物理量センサー10の製造方法は、図7に示すように、基板準備工程、センサー素子用基板接合工程、センサー素子形成工程、蓋体準備工程、蓋体接合工程、アンチスティクション層形成工程、アンチスティクション層除去工程、及び封止工程を有する。
1.2.1.基板準備工程
先ず、ステップS101において、平板状の、例えば、アルカリ金属イオンを含むガラスを準備し、ガラスにフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により凹部14と固定部13とを形成する。その後、凹部14の内底面15や基板11の上面12にAu、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Ag等の貴金属をスパッタリング法で成膜し、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により凹部14の内底面15に固定電極37,38,39、及び図示しない配線を形成し、基板11の上面12に接続端子16と図示しない配線を形成する。但し、Ptでは、リフトオフ技術によってパターニングしても良い。これにより、図8に示すような基板11の準備を完了する。
1.2.2.センサー素子用基板接合工程
ステップS102において、図8に示すように、基板11の固定部13の上にシリコンであるセンサー素子用基板55を、例えば、陽極接合等で接合する。尚、センサー素子用基板55には、接続端子16とセンサー素子用基板55とが干渉しないように、凹部56を形成しておく。
1.2.3.センサー素子形成工程
ステップS103において、図9に示すように、センサー素子用基板55を薄板化した後に、センサー素子用基板55を深堀エッチング技術であるボッシュ・プロセスによって垂直加工することにより、可動電極34,35,36が形成された可動体33を有するセンサー素子30を形成する。
1.2.4.蓋体準備工程
ステップS104において、平板状のシリコン基板を準備し、シリコン基板にフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により凹部22と貫通孔25を形成する。その後、貫通孔25の側面や蓋体21の上面24にAu、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Ag等の貴金属をスパッタリング法で成膜し、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により貫通孔25の側面や蓋体21の上面24の一部に金属層26を形成する。これにより、図10に示すような蓋体21の準備を完了する。蓋体21に予め貫通孔25を形成しておくことで、後述する蓋体接合工程において発生する余分なガスを効率的に排出することができる。
1.2.5.蓋体接合工程
ステップS105において、図10に示すように、基板11の凹部14の内底面15と蓋体21の凹部22の内底面23とが対向し、基板11の凹部14と蓋体21の凹部22とが重なるように、基板11上に蓋体21を配置し、基板11と蓋体21とを、例えば、陽極接合等で接合する。この工程により、基板11と蓋体21との間に、可動体33を有するセンサー素子30を収容する。基板11と蓋体21との接合は、個片化する際に剥がれない強度を確保すれば良く、陽極接合の他に低融点ガラスフリット接合、金属共晶接合、直接接合等であって良い。但し、この接合過程において、基板11、蓋体21、或いは図示しない接合材から発生する脱離ガスを、貫通孔25から効率的に排出することができる。
1.2.6.アンチスティクション層形成工程
ステップS106において、図11に示すように、気相状態とした有機シリコン化合物Gを貫通孔25から基板11の凹部14と蓋体21の凹部22とで構成される内部空間Sに挿入する。気相状態とした有機シリコン化合物Gを内部空間Sに挿入することで、図12に示すように、基板11に設けられた凹部14の内底面15及び内側壁と、基板11に設けられた固定部13の側壁と、基板11に設けられた固定電極37,38,39の表面と、蓋体21に設けられた凹部22の内底面23及び内側壁と、センサー素子30の固定部13との接合面を除く可動体33の表面と、にアンチスティクション層53が形成される。また、貫通孔25に設けられた金属層26の表面にもアンチスティクション層53が形成される。尚、アンチスティクション層53は、蓋体21と基板11とを接合後に設けられるので、蓋体21と基板11との接合部50には配置されない。本実施形態においては、有機シリコン化合物Gとして、ヘキサメチルジシラザンを用いた。
1.2.7.アンチスティクション層除去工程
ステップS107において、例えば、恒温槽等の中にアンチスティクション層53が形成され、可動体33と蓋体21とが接合された基板11を設置し、加熱することで、図13に示すように、固定電極37,38,39及び金属層26の表面に付着したアンチスティクション層53のみを選択的に除去することができる。また、この時、内部空間S以外の蓋体21の外周に付着した有機シリコン化合物Gは、外気に晒されて脱離・昇華する。
1.2.8.封止工程
ステップS108において、図14に示すように、封止部材52を貫通孔25に配置し、その後、レーザー光Lを封止部材52に照射し、封止部材52を溶融することで、図15に示すように、貫通孔25を塞ぎ封止することができる。
本実施形態の物理量センサー10の製造方法は、センサー素子30及び蓋体21と基板11とを接合した後に、貫通孔25から有機シリコン化合物Gのカップリング剤を挿入し、可動体33の表面、基板11に設けられた凹部14の内底面15の表面、及び蓋体21に設けられた凹部22の内底面23の表面にアンチスティクション層53を形成しているので、基板11又は蓋体21と可動体33とが接触してスティクションが生じるのを低減することができる。即ち、センサー素子30及びそれを覆う外周の空間を全て疎水状態の材料で取り囲むことができる。従って、一定のエネルギーで繰り返す衝突を起因とするスティクション現象を低減することができる。
また、貫通孔25の封止前に、基板11に設けられたAu、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Ag等の貴金属からなる固定電極37,38,39の表面に形成されたアンチスティクション層53を加熱により取り除いているので、可動体33の可動電極34,35,36と固定電極37,38,39との間に不要な容量が生じない。そのため、加速度の検出精度の劣化を低減することができる。
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る物理量センサー10aについて、図16、図17、及び図18を参照して説明する。尚、図16は、説明する便宜上、蓋体21を取り外した状態を図示し、物理量センサー10aの内部に設けられているアンチスティクション層53の図示を省略している。また、図16、図17、及び図18において、基板11aに設けられている配線の図示を省略している。
本実施形態の物理量センサー10aは、第1実施形態の物理量センサー10に比べ、基板11aに設けられた固定部13aの構造とセンサー素子30aの構造とが異なること以外は、第1実施形態の物理量センサー10と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
物理量センサー10aの基板11aは、図16及び図18に示すように、X方向及びY方向に広がりを有し、Z方向を厚さとする。また、基板11aは、図17に示すように、下方に窪む凹部14が形成され、凹部14の内底面15からセンサー素子30a側に突出している3つの固定部13aを有し、固定部13aの上にセンサー素子30aが接合されている。また、基板11aは、凹部14の内底面15に、Z方向からの平面視で、センサー素子30aと重なる位置に、3つの固定部13aを取り囲む固定電極47が配置されている。
基板11aは、凹部22を有する蓋体21と接合され、その内側に、センサー素子30aを収容する内部空間Sが形成されている。
センサー素子30aは、図16に示すように、基板11aに設けられた3つの固定部13aの上にそれぞれ接合されているX方向に並ぶ3つの保持部41と、保持部41を挟みY方向に並ぶ2つの連結部42と、を有し、2つの連結部42の間に3つの保持部41が配置され、中央の保持部41と連結部42とが連結している。また、Y方向プラス側に位置する連結部42と保持部41との間隔は、Y方向マイナス側に位置する連結部42と保持部41との間隔より長い。
2つの連結部42は、保持部41側とは反対側で、2つの連結部42と3つの保持部41とを囲む可動体43に連結している。可動体43は、Y方向プラス側に位置する連結部42と保持部41との間にX方向プラス側及びマイナス側にそれぞれ延在する複数の可動電極44を有している。尚、連結部42は、バネのようにY方向に弾性変形可能であるため、可動体43がY方向に変位可能となる。
中央の保持部41のX方向プラス側及びマイナス側に位置する2つの保持部41は、それぞれ、斜めY方向に延在する固定梁45と、固定梁45からX方向プラス側及びマイナス側にそれぞれ延在する複数の固定電極46と、を有している。尚、複数の固定電極46は、可動電極44のY方向プラス側又はY方向マイナス側に配置され、対応する可動電極44に対して間隔を隔てて噛み合う櫛歯状をなして並んでいる。
このようなセンサー素子30aは、Y方向の加速度が加わると、その加速度の大きさに基づいて、可動体43が、Y方向に変位する。この変位に伴って、可動電極44と固定電極46との間の静電容量の容量値が変化する。そのため、物理量センサー10aは、静電容量の容量値の差に基づいてY方向の加速度を検出することができる。尚、物理量センサー10a又はセンサー素子30aを平面視で90°回転した状態で配置することにより、X方向の加速度を検出することができる。
本実施形態の物理量センサー10aは、基板11aと蓋体21とにより構成され、センサー素子30aを収容する内部空間Sにおいて、図17及び図18に示すように、基板11aに設けられた凹部14の内底面15及び内側壁と、基板11aに設けられた固定部13aの側壁と、蓋体21に設けられた凹部22の可動体43側の面である内底面23及び内側壁と、センサー素子30aの固定部13aとの接合面を除く表面と、にアンチスティクション層53が設けられている。しかし、固定電極47の表面には、アンチスティクション層53が選択的に設けられていない。また、基板11aと蓋体21との接合部50aにもアンチスティクション層53は、設けられていない。
このような構成とすることで、Y方向の過度な加速度やZ方向からの衝撃に対して、可動体43と蓋体21との接触によるスティクションを低減することができる。また、可動電極44の表面と固定電極46の表面とにアンチスティクション層53が設けられているので、Y方向の過度な加速度による可動電極44と固定電極46とのスティクションを低減することができる。
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る物理量センサー10bについて、図19、図20、及び図21を参照して説明する。尚、図19は、説明する便宜上、蓋体21を取り外した状態を図示し、物理量センサー10bの内部に設けられているアンチスティクション層53の図示を省略している。また、図19、図20、及び図21において、基板11bに設けられている配線の図示を省略している。
本実施形態の物理量センサー10bは、第1実施形態の物理量センサー10に比べ、基板11bに設けられた固定部101,102,103の構造とセンサー素子30bの構造とが異なり、センサー素子30bがZ軸回りの角速度を検出する角速度センサー素子であること以外は、第1実施形態の物理量センサー10と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
物理量センサー10bの基板11bは、図19及び図21に示すように、X方向及びY方向に広がりを有し、Z方向を厚さとする。また、基板11bは、図20に示すように、下方に窪む凹部14が形成され、凹部14の内底面15からセンサー素子30b側に突出している複数の固定部101,102,103を有し、固定部101,102,103の上にセンサー素子30bが接合されている。また、基板11bは、凹部14の内底面15に、Z方向からの平面視で、センサー素子30bと重なる位置に、固定部101,102,103を取り囲む固定電極160が配置されている。
基板11bは、凹部22を有する蓋体21と接合され、その内側に、センサー素子30bを収容する内部空間Sが形成されている。尚、内部空間Sは、真空状態で保持されている。
センサー素子30bは、図19に示すように、可動体104と、駆動用固定電極130と、検出用固定電極140と、保持部150と、を有する。
可動体104は、基板11bに設けられた固定部103の上に固定された保持部150によって、支持されており、基板11bと離間して配置されている。可動体104は、第1可動体106と、第2可動体108と、を有する。第1可動体106及び第2可動体108は、X軸に沿って互いに連結されている。
第1可動体106及び第2可動体108は、両者の境界線T1に対して、対称となる形状を有する。境界線T1は、Y軸に沿った直線である。第1可動体106の構成について説明し、第2可動体108の構成の説明を省略する。
第1可動体106は、駆動部110と、検出部120と、を有する。駆動部110は、駆動用支持部112と、駆動用バネ部114と、駆動用可動電極116と、を有する。
駆動用支持部112は、例えば、フレーム状の形状を有し、駆動用支持部112の内側には、検出部120が配置されている。駆動用支持部112は、X方向に延在する第1延在部112aと、Y方向に延在する第2延在部112bと、により構成される。
駆動用バネ部114は、駆動用支持部112の外側に配置される。駆動用バネ部114の一端は、駆動用支持部112の角部の近傍に接続される。駆動用支持部112の角部は第1延在部112aと第2延在部112bとの接続部である。駆動用バネ部114の他端は、保持部150に接続される。
第1可動体106において、駆動用バネ部114は4つ設けられている。第1可動体106は4つの保持部150によって支持されている。
駆動用バネ部114は、Y方向に往復しながらX方向に延在する形状を有している。複数の駆動用バネ部114は、駆動用支持部112の中心を通るX軸に沿った図示しない仮想線、及び駆動用支持部112の中心を通るY軸に沿った図示しない仮想線に対して、対称に設けられている。駆動用バネ部114を上記のような形状とすることにより、駆動用バネ部114が、Y方向及びZ方向に変形することを抑制し、駆動用バネ部114を、駆動部110の振動方向であるX方向にスムーズに伸縮させることができる。そして、駆動用バネ部114の伸縮に伴い、駆動用支持部112をX方向に振動させることができる。
駆動用可動電極116は、駆動用支持部112の外側において駆動用支持部112の第1延在部112aに接続されて配置される。
駆動用固定電極130は、駆動用支持部112の外側に配置される。駆動用固定電極130の一部は、基板11bに設けられた固定部101の上に固定される。駆動用固定電極130は、複数設けられ、駆動用可動電極116と対向配置される。駆動用固定電極130は、櫛歯状の形状を有している。駆動用可動電極116は、駆動用固定電極130の櫛歯の間に挿入可能な突出部116aを有している。駆動用固定電極130と突出部116aとの距離を小さくすることにより、駆動用固定電極130と駆動用可動電極116との間に作用する静電力を大きくすることができる。
駆動用固定電極130及び駆動用可動電極116に電圧を印加すると、駆動用固定電極130と駆動用可動電極116との間に静電力を発生させることができる。これにより、駆動用バネ部114がX方向に伸縮し、駆動部110の駆動用支持部112をX方向に振動させることができる。
検出部120は、駆動部110に連結されている。図示の例では、検出部120は、駆動用支持部112の内側に配置されている。検出部120は、検出用支持部122と、検出用バネ部124と、検出用可動電極126と、を有する。
検出用支持部122は、例えば、フレーム状の形状を有している。図示の例では、検出用支持部122は、X方向に延在する第3延在部122aと、Y方向に延在する第4延在部122bと、によって構成されている。
検出用バネ部124は、検出用支持部122の外側に配置されている。検出用バネ部124は、検出用支持部122と駆動用支持部112とを接続している。より具体的には、検出用バネ部124の一端は、検出用支持部122の角部の近傍に接続されている。検出用支持部122の角部は第3延在部122aと第4延在部122bとの接続部である。検出用バネ部124の他端は、駆動用支持部112の第1延在部112aに接続されている。
検出用バネ部124は、X方向に往復しながらY方向に延在する形状を有している。図示の例では、検出用バネ部124は、第1可動体106において、4つ設けられている。複数の検出用バネ部124は、検出用支持部122の中心を通るX軸に沿った図示しない仮想線、及び検出用支持部122の中心を通るY軸に沿った図示しない仮想線に対して、対称に設けられている。検出用バネ部124を上記のような形状とすることにより、検出用バネ部124が、X方向及びZ方向に変形することを抑制し、検出用バネ部124を、検出部120の振動方向であるY方向にスムーズに伸縮させることができる。そして、検出用バネ部124の伸縮に伴い、検出部120の検出用支持部122をY方向に振動させることができる。
検出用可動電極126は、検出用支持部122の内側に、検出用支持部122に接続されて配置されている。図示の例では、検出用可動電極126は、X方向に延在しており、検出用支持部122の2つの第4延在部122bに、接続されている。
検出用固定電極140は、検出用支持部122の内側に配置されている。検出用固定電極140の一部は、基板11bに設けられた固定部102の上に固定されている。図示の例では、検出用固定電極140は、複数設けられ、検出用可動電極126を介して、対向配置されている。
検出用可動電極126及び検出用固定電極140の数及び形状は、検出用可動電極126と検出用固定電極140との間の静電容量の変化を検出することができれば、特に限定されない。
次に、Z軸回りの角速度を検出するセンサー素子30bの動作について説明する。
駆動用固定電極130及び駆動用可動電極116に、電圧を印加すると、駆動用固定電極130と駆動用可動電極116との間に静電力を発生させることができる。これにより、駆動用バネ部114をX方向に伸縮させることができ、駆動部110をX方向に振動させることができる。尚、検出部120は、駆動部110に連結されているため、検出部120も駆動部110の振動に伴い、X方向に振動する。また、第1可動体106及び第2可動体108は、互いに逆位相で且つ所定の周波数で、X方向に振動する。
第1可動体106及び第2可動体108が互いに逆位相でX方向に振動している状態で、センサー素子30bにZ軸回りの角速度ωが加わると、コリオリの力が働き、検出部120は、Y方向に変位する。例えば、第1可動体106の検出部120がY方向プラス側に変位すると、第2可動体108の検出部120は、Y方向マイナス側に変位する。すなわち、第1可動体106の検出部120と第2可動体108の検出部120とは、コリオリ力によって、互いに反対方向に変位する。第1可動体106の検出部120と第2可動体108の検出部120とは、コリオリ力を受けている間、この動作を繰り返す。
検出部120がY方向に変位することにより、検出用可動電極126と検出用固定電極140との間の距離が変化し、検出用可動電極126と検出用固定電極140との間の静電容量が変化する。センサー素子30bでは、検出用可動電極126及び検出用固定電極140に電圧を印加することにより、検出用可動電極126と検出用固定電極140との間の静電容量の変化量を検出し、Z軸回りの角速度を求めることができる。
本実施形態の物理量センサー10bは、基板11bと蓋体21とにより構成され、センサー素子30bを収容する内部空間Sにおいて、図20及び図21に示すように、基板11bに設けられた凹部14の内底面15及び内側壁と、基板11bに設けられた固定部101,102,103の側壁と、蓋体21に設けられた凹部22の可動体43側の面である内底面23及び内側壁と、センサー素子30bの固定部101,102,103との接合面を除く表面と、にアンチスティクション層53が設けられている。しかし、固定電極160の表面には、アンチスティクション層53が選択的に設けられていない。また、基板11bと蓋体21との接合部50bにもアンチスティクション層53は、設けられていない。
このような構成とすることで、Z軸回りの過度な角速度やX方向、Y方向、及びZ方向からの衝撃に対して、可動体104と蓋体21との接触によるスティクションを低減することができる。また、駆動用可動電極116、検出用可動電極126、駆動用固定電極130、及び検出用固定電極140の表面にアンチスティクション層53が設けられているので、X方向やY方向からの衝撃に対して、駆動用可動電極116と駆動用固定電極130とのスティクションや、検出用可動電極126と検出用固定電極140とのスティクションを低減することができる。
4.第4実施形態
次に、第4実施形態に係る物理量センサー10cについて、図22を参照して説明する。尚、図22は、基板11c及び固定基板201に設けられている配線の図示を省略している。
本実施形態の物理量センサー10cは、第1実施形態の物理量センサー10に比べ、基板11cと蓋体21cの構造が異なり、2つのセンサー素子30c1,30c2を有していること以外は、第1実施形態の物理量センサー10と同様である。尚、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
物理量センサー10cは、図22に示すように、平板状の基板11cと、2つの貫通部220を有する固定基板201と、加速度を検出するセンサー素子30c1と角速度を検出するセンサー素子30c2とが形成された素子基板202と、ガラスフリット51で接合された蓋体21cと、を有している。
基板11cは、シリコン基板であり、固定基板201の2つの貫通部220の位置で、2つのセンサー素子30c1,30c2にそれぞれ対向する位置にAu、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Ag等の貴金属からなる2つの固定電極210が配置されている。また、基板11cの上には、アルカリ金属イオンを含むガラス材料からなる固定基板201が陽極接合等で接合されている。
固定基板201は、センサー素子30c1の可動体301と対向する位置と、センサー素子30c2の可動体302と対向する位置と、に貫通部220が配置されている。また、固定基板201の上に2つのセンサー素子30c1,30c2が形成されたシリコン基板からなる素子基板202が陽極接合等で接合されている。
素子基板202のセンサー素子30c1,30c2のそれぞれの保持部303と、2つのセンサー素子30c1,30c2をそれぞれ囲む枠部304と、は固定基板201に接合されている。また、2つのセンサー素子30c1,30c2をそれぞれ囲む枠部304は、ガラスフリット51によって蓋体21cと接合されている。
そのため、基板11c、固定基板201、素子基板202、及び蓋体21cを積層し接合することで、センサー素子30c1を収容する内部空間S1とセンサー素子30c2を収容する内部空間S2とを形成することができる。センサー素子30c1の内部空間S1は、大気圧雰囲気、より具体的には10,000~120,000Pa、センサー素子30c2の内部空間S2は、真空雰囲気、より具体的には0.1~10Paの状態で封止されている。即ち、内部空間S1と内部空間S2の内部圧力は、異なっている。
尚、蓋体21cには、2つのセンサー素子30c1,30c2とそれぞれ対向する位置に、内部空間S1と内部空間S2とにそれぞれ連通する2つの貫通孔25が設けられている。貫通孔25の側面にAu、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Os、Ag等の貴金属からなる金属層26が設けられており、貫通孔25は、金属層26と接する封止部材52によって塞がれ封止されている。
内部空間S1及び内部空間S2の中の固定電極210、金属層26、及び封止部材52の表面を除き、内部空間S1及び内部空間S2に接する基板11c、固定基板201、素子基板202、及び蓋体21cの表面には、アンチスティクション層53が設けられている。
このような構成とすることで、過度な加速度や角速度、又はX方向、Y方向、及びZ方向からの衝撃に対して、可動体301,302と蓋体21cとの接触によるスティクションや可動体301,302と保持部303との接触によるスティクションを低減することができる。
5.第5実施形態
次に、第5実施形態に係る物理量センサー10~10cを備えている慣性計測装置2000について、図23及び図24を参照して説明する。尚、以下の説明では、物理量センサー10を適用した構成を例示して説明する。
図23に示す慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車や、ロボットなどの運動体の姿勢や、挙動などの慣性運動量を検出する装置である。慣性計測装置2000は、3軸に沿った方向の加速度Ax,Ay,Azを検出する加速度センサーと、3軸周りの角速度ωx,ωy,ωzを検出する角速度センサーと、を備えた、いわゆる6軸モーションセンサーとして機能する。
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、固定部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。尚、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンやデジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300と、を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。また、センサーモジュール2300は、インナーケース2310と、基板2320と、を有する。
アウターケース2100の外形は、慣性計測装置2000の全体形状と同様に、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、それぞれネジ穴2110が形成されている。また、アウターケース2100は、箱状であり、その内部にセンサーモジュール2300が収容されている。
インナーケース2310は、基板2320を支持する部材であり、アウターケース2100の内部に収まる形状となっている。また、インナーケース2310には、基板2320との接触を防止するための凹部2311や後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。このようなインナーケース2310は、接合部材2200を介してアウターケース2100に接合されている。また、インナーケース2310の下面には接着剤を介して基板2320が接合されている。
図24に示すように、基板2320の上には、コネクター2330、Z軸周りの角速度を検出す角速度センサー2340z、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサーユニット2350などが実装されている。また、基板2320の側面には、X軸周りの角速度を検出する角速度センサー2340x及びY軸周りの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。
加速度センサーユニット2350は、前述したZ方向の加速度を測定するための物理量センサー10を少なくとも含み、必要に応じて、一軸方向の加速度を検出したり、二軸方向や三軸方向の加速度を検出したりすることができる。尚、角速度センサー2340x、2340y、2340zとしては、特に限定されず、例えば、コリオリの力を利用した振動ジャイロセンサーを用いることができる。
また、基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。物理量センサー10から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部としての制御IC2360は、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測装置2000の各部を制御する。記憶部には、加速度、および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。尚、基板2320には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
このような慣性計測装置2000は、物理量センサー10を含む加速度センサーユニット2350を用いているため、耐衝撃性に優れ、信頼性の高い慣性計測装置2000が得られる。
10,10a,10b,10c…物理量センサー、11…基板、12…上面、13…固定部、14…凹部、15…内底面、16…接続端子、21…蓋体、22…凹部、23…内底面、24…上面、25…貫通孔、26…金属層、30…センサー素子、31…保持部、32…支持梁、33…可動体、34…第1可動電極、35…第2可動電極、36…第3可動電極、37…第1固定電極、38…第2固定電極、39…第3固定電極、50…接合部、52…封止部材、53…アンチスティクション層、55…センサー素子用基板、56…凹部、2000…慣性計測装置、G…有機シリコン化合物、J1…回転軸、L…レーザー光、S…内部空間。

Claims (9)

  1. 基板と、
    前記基板に設けられた固定部に固定され、所定方向に変位可能な可動体と、
    前記可動体に設けられた可動電極と、
    前記基板に設けられ、金属、前記金属の合金、又は窒化物からなる表面を有する固定電極と、
    前記基板とともに前記可動体を収容する蓋体と、
    前記基板又は前記蓋体における、前記可動体が接触可能な位置に設けられ、前記固定電極の前記表面には設けられないように、選択的に配置されたアンチスティクション層と、
    を備える、
    物理量センサー。
  2. 前記蓋体を厚み方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔の側面に設けられた金属層と、前記金属層に接しており且つ前記貫通孔を塞ぐ封止部材と、を有し、
    前記アンチスティクション層は、前記蓋体の前記可動体側の面に設けられ、前記金属層と前記封止部材との間には設けられないように、配置されている、
    請求項1に記載の物理量センサー。
  3. 前記アンチスティクション層は、前記蓋体と前記基板との接合部には設けられないように、配置されている、
    請求項1又は請求項2に記載の物理量センサー。
  4. 前記金属は、貴金属である、
    請求項2に記載の物理量センサー。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の物理量センサーと、
    前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、
    を備える、
    慣性計測装置。
  6. 基板上に、前記基板に設けられた固定部に固定され、所定方向に変位可能な可動体と、前記可動体に設けられた可動電極と、前記基板に設けられ、金属、前記金属の合金、又は窒化物からなる表面を有する固定電極と、を形成する工程と、
    貫通孔を有する蓋体を準備する工程と、
    前記蓋体を前記基板に接合して、前記蓋体と前記基板との間に前記可動体を収容する工程と、
    前記貫通孔を介して、前記蓋体、前記可動体、及び前記基板の表面にアンチスティクション層を形成する工程と、
    前記蓋体、前記可動体、前記基板を加熱して、前記固定電極上の前記アンチスティクション層を除去する工程と、
    前記貫通孔を塞ぐ工程と、
    を有する、
    物理量センサーの製造方法。
  7. 前記金属は、貴金属である、
    請求項6に記載の物理量センサーの製造方法。
  8. 前記蓋体を準備する工程において、前記貫通孔の側面に金属層を形成する工程をさらに有する、
    請求項6又は請求項7に記載の物理量センサーの製造方法。
  9. 前記金属層は、貴金属である、
    請求項8に記載の物理量センサーの製造方法。
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