JP2022099205A - 1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アルコキシシリル基官能性の加水分解性ないし加水分解縮合性ケイ素材料の中間体として、従来にない高い反応性を有するアルコキシ基を持つケイ素材料とその製造方法を提供する。【解決手段】テトラメトキシシランと1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを酸性触媒存在下で反応させることによって得られる1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサン。【効果】1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンは、シリコーンオイルの変性、室温硬化型シーリング材の原料、シランカップリング剤の原料などの中間体として有用である。【選択図】なし
Description
本発明は、アルコキシシリル基官能性の加水分解性ないし加水分解縮合性ケイ素材料の中間体として、従来にない高い反応性を有するアルコキシ基を持つケイ素材料とその製造方法を提供することに関する。
有機材料にアルコキシシリル基が付加した材料の代表例としてシランカップリング剤は広く知られており様々な分野で活用されている。一方、アルコキシシリル基の加水分解によって生ずるシラノールが縮合してシロキサン結合となり網目構造の硬化物を作ることができることから脱アルコールタイプのシリコーンシーラントやポリエーテルの両末端にメチルジメトキシシランで変性した変性シリコーンシーラントなどもアルコキシシリル基の応用として広く活用されている。
これらのアルコキシシリル基が付加した材料のうち、シランカップリング剤は複合材料の強度向上や、シリコーンポリマーやその他の有機材料の無機材料表面への接着強度を高めること、またシランカップリング剤の機能発現速度の向上など、シランカップリング剤の機能を高めるため新しいシランカップリング剤の開発などの努力が続けられている。また、湿気によって架橋する室温硬化型のアルコキシシリル基変性の組成物であるジメチルポリシロキサンを主鎖に持つシリコーンシーラントやポリエーテルを主鎖に持つ変性シリコーンシーラントなども接着性、硬化性、硬化速度などの性能向上の開発努力が続けられている。
シランカップリング剤やアルコキシ末端のシーラントのアルコキシ基の反応性を高めるために加水分解を推進する触媒を添加したりして機能の向上を図る検討はこれまでもされてきた。特にアルコキシ末端の室温硬化型ポリシロキサン材料では末端の構造をトリメトキシシロキシ基とすることで反応速度を従来型の末端メチルジメトキシシロキシ基に比べて各段に早めた高速硬化シーリング材が開発され[特許文献1]、電気電子材料分野における封止材料として製造ライン上で使用されるまでになっている。
トリメトキシシロキシ基のようなケイ素上の全ての置換基が酸素になっているアルコキシ基の加水分解速度、縮合速度はアルキル基が一部置換したメトキシシリル基の加水分解速度、縮合速度に比べて各段に早くなることが実証されているが、シランカップリング剤ではトリメトキシシリル基やトリエトキシシリル基がケイ素上の加水分解性官能基として用いられているのが一般的で、反応性の高いと考えられるトリメトキシシロキシ基を加水分解性官能基として持つシランカップリング剤はこれまで開発されてこなかった。
また、両末端にアルコキシ基を持つポリエーテルを主鎖とするアルコキシ変性ポリエーテルを主成分とする室温硬化型シーラントでは両末端オレフィンを有するポリエーテルに水素基を有するアルコキシシランをヒドロシリル化による付加反応で反応させてアルコキシ基官能性ポリエーテルを合成している。水素基を有するアルコキシシランとして一般式(1)が提案されている[特許文献2]、[特許文献3]が、商業的供給性から実際には主としてメチルジメトキシシランが提示されており、ケイ素上のアルコキシ官能基としてはメチルジメトキシシリル基の2官能メトキシシリル基となっている。
H-[Si(R1)2-b(Y)bO]m-Si(R2)3-a(Y)a (1)
さらに反応性を高めるための水素基を有するアルコキシシランの開発は進められており、トリアルコキシシランとしてはトリメトキシシランが考えられるが、供給性に難点があり現在までトリメトキシシランを用いたアルコキシ変性ポリエーテルは商業的に実現されていない。そこで、代替案として水素基を有し3官能アルコキシ基を有するアルコキシシランとして1-(トリアルコキシシリル)エチル-1,1,3,3-トリメチルジシロキサンが提案されており[特許文献4]、その3官能アルコキシシリル基を有する湿気硬化型樹脂組成物が提案されている[特許文献5]
トリメトキシシロキシ基のようなケイ素上の全ての置換基が酸素になっているアルコキシ基の加水分解速度、縮合速度はアルキル基が一部置換したメトキシシリル基の加水分解速度、縮合速度に比べて各段に早くなることが実証されているが、シランカップリング剤ではトリメトキシシリル基やトリエトキシシリル基がケイ素上の加水分解性官能基として用いられているのが一般的で、反応性の高いと考えられるトリメトキシシロキシ基を加水分解性官能基として持つシランカップリング剤はこれまで開発されてこなかった。
また、両末端にアルコキシ基を持つポリエーテルを主鎖とするアルコキシ変性ポリエーテルを主成分とする室温硬化型シーラントでは両末端オレフィンを有するポリエーテルに水素基を有するアルコキシシランをヒドロシリル化による付加反応で反応させてアルコキシ基官能性ポリエーテルを合成している。水素基を有するアルコキシシランとして一般式(1)が提案されている[特許文献2]、[特許文献3]が、商業的供給性から実際には主としてメチルジメトキシシランが提示されており、ケイ素上のアルコキシ官能基としてはメチルジメトキシシリル基の2官能メトキシシリル基となっている。
H-[Si(R1)2-b(Y)bO]m-Si(R2)3-a(Y)a (1)
さらに反応性を高めるための水素基を有するアルコキシシランの開発は進められており、トリアルコキシシランとしてはトリメトキシシランが考えられるが、供給性に難点があり現在までトリメトキシシランを用いたアルコキシ変性ポリエーテルは商業的に実現されていない。そこで、代替案として水素基を有し3官能アルコキシ基を有するアルコキシシランとして1-(トリアルコキシシリル)エチル-1,1,3,3-トリメチルジシロキサンが提案されており[特許文献4]、その3官能アルコキシシリル基を有する湿気硬化型樹脂組成物が提案されている[特許文献5]
本発明は、従来のアルコキシ基官能性の材料に比べて各段に加水分解速度が早くなる、これまで合成されてこなかったケイ素上の置換基がすべて酸素のトリアルコキシシロキシ基を有する1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンと、その製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、テトラメトキシシランと1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを酸性触媒存在下反応させることにより1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンを製造できることを見出し、本発明をなすに至った。その際、副生物としてジメチルメトキシシランが同時に発生するが、蒸留分離することにより、高純度の1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンを得ることができる。
本発明のトリメトキシシロキシ基官能性の有機材料は従来のトリメトキシシリル基官能性有機材料にない早い加水分解速度を有する材料となるため広い応用分野で活用が可能となる。
本発明の1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンは沸点が125℃から126℃の新たに単離された無色透明の新規のジシロキサン化合物で、ガスクロマトグラフィーで単一物質であることが確認でき、その構造はNMRスペクトルとFT-IRスペクトルで同定することができた。
1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンはテトラメトキシシランと1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの混合物に酸性触媒を添加して加熱撹拌して副生してくるジメチルハイドロジェンメトキシシランとテトラメトキシシランを精留塔で蒸留留去し、残存する液体を精留することで沸点125℃~126℃の液体として得ることができる。この際、テトラメトキシシランは1,1,3,3-テトラメトキシシランに対して科学量論的に同モル以上5モル以下で用いることが好ましく、同モル以下の量で反応を行うとテトラメトキシシランのメトキシ基が2個ジメチルハイドロジェンシロキシ基に置換されたトリシロキサンが副生物として多く生成することとなり目的とする1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンの収量が落ちることとなる。
反応に用いられる酸性触媒は硫酸、リン酸、硝酸、トリフルオロ酢酸などの酸を用いることができるが特にはトリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。
1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンはアルケニル基を有する有機化合物とのヒドロシリル化反応により容易に高反応性を有するトリメトキシシロキシ基を官能基として持つ有機化合物を得ることができるが、代表的な例としてアリルグリシジルエーテルやビニルシクロヘキセンオキシドなどのエポキシ基を持つ化合物を挙げることができる。
アルケニル基を有する有機化合物として両末端にアルケニル基を有する高重合体を用いて2倍モルの1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンとヒドロシリル化反応を行うことで高反応性の両末端トリメトキシシロキシ基を持つ高重合体を得ることができるが、例として両末端にアルケニル基を有する高重合体として両末端ビニル基を有するポリジメチルシロキサンを用いれば両末端トリメトキシシロキシ基を持つポリジメチルシロキサンが得られるし、両末端アルケニル基含有ポリエーテルを用いれば両末端トリメトキシシロキシ基を持つポリエーテルが得られる。このようにして得られた両末端トリメトキシシロキシ基官能性重合体は加水分解縮合触媒として知られているジブチルスズジラウレートといったスズ触媒やチタンテトライソプロポキシドといったチタン系触媒を添加して湿気硬化室温硬化型の組成物を得ることができる。
このように1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンはアルケニル基を有する有機化合物にヒドロシリル化反応により高加水分解性官能基を付与する重要中間体としての役割を果たすことができるが、アルケニル基含有化合物はヒドロシリル化反応を阻害するような官能基を有しない化合物であればよく、ここに例示された化合物に限定されるわけではない。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
精留塔を設置した1L丸底フラスコに1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン268gと1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンと等モルのテトラメトキシシラン304gを混合し、撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸0.2gを添加した。磁気撹拌子で撹拌しながら加熱すると34℃の沸点の液体160gが留出してきた。この液体はNMRスペクトルと赤外線吸収スペクトルからジメチルハイドロジェンメトキシシランと同定された。一度室温まで冷却して炭酸ナトリウムを1g添加して反応系を中和した後ろ過し、ろ液を精留塔で精留分離を行った。少量のテトラメトキシシランが110℃で留出してきたのち、125℃~126℃で280gの液体を得た。ガスクロマトグラフィーで単一物質であることがわかり、NMRスペクトルと赤外線吸収スペクトルから1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンであることが確認された。
精留塔を設置した1L丸底フラスコに1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン336gと1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの1.3倍モルのテトラメトキシシラン495gを混合し、撹拌しながらトリフルオロメタンスルホン酸0.3gを添加した。磁気撹拌子で撹拌しながら加熱して、発生してくる34℃の沸点のジメチルハイドロジェンメトキシシラン220gを留去した。一度室温まで冷却して炭酸ナトリウムを1g添加して反応系を中和した後ろ過し、ろ液を精留塔で精留分離を行った。過剰に使用したテトラメトキシシランが110℃で留出してきたのち、125℃~126℃で450gの1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンを得た。
精留塔を設置した1L丸底フラスコに1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン336gと1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの1.3倍モルのテトラメトキシシラン495gを混合し、撹拌しながら硫酸0.5gを添加した。磁気撹拌子で撹拌しながら加熱して、発生してくる34℃の沸点のジメチルハイドロジェンメトキシシラン220gを留去した。一度室温まで冷却して炭酸ナトリウムを1g添加して反応系を中和した後ろ過し、ろ液を精留塔で精留分離を行った。過剰に使用したテトラメトキシシランが110℃で留出してきたのち、125℃~126℃で350gの1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンを得た。
本発明の1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンは、1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンとアルケニル基を有する有機化合物とのヒドロシリル化反応によって得られる高反応性の1,1,1-トリメトキシシロキシ基官能性の化合物を得るための中間体として有用であり、得られた高反応性の1,1,1-トリメトキシシロキシ基官能性の化合物は加水分解の速度が速く、高分子ポリマーに1,1,1-トリメトキシシロキシ基を導入して加水分解縮合触媒を添加した高速湿気硬化型の組成物を提供すれば電子電気材料の接着剤、ポッティング剤、保護コーティング剤、アンダーフィル剤などのライン製造における応用が可能となる。
Claims (3)
- 1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサン
- テトラメトキシシランと1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを全体量に対して0.01重量%から5重量%の酸性触媒存在下で反応させることによる1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンの製造方法
- 酸性触媒がトリフルオロメタンスルホン酸である請求項2の製造方法
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JP2020220028A JP2022099205A (ja) | 2020-12-22 | 2020-12-22 | 1,1,1-トリメトキシ-3,3-ジメチルジシロキサンとその製造方法 |
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- 2020-12-22 JP JP2020220028A patent/JP2022099205A/ja active Pending
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