JP2022093268A - 強化ガラスの応力特性推定方法及び応力特性推定用モデル作成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強化ガラスの応力特性を効率良く取得する。【解決手段】強化ガラスの応力特性推定方法は、複数回のイオン交換処理により形成された圧縮応力層2における複数の応力特性のうち、一部の応力特性に基づいて他の応力特性を推定する。応力特性推定方法は、サンプリング工程S4と、予測モデル作成工程S5と、測定工程S7と、推定工程S8と、を備える。他の応力特性は、圧縮応力層2の深さDOCを含む。【選択図】図4
Description
本発明は、圧縮応力層を有する強化ガラスの応力特性を推定する方法及び応力特性推定用モデルを作成する方法に関する。
携帯電話(特にスマートフォン)、タブレットコンピュータ、デジタルカメラ、車載インストルメントパネルデバイス、タッチパネルディスプレイ、非接触給電等のデバイス等は、益々普及する傾向にある。これらの用途の電子デバイスには、イオン交換処理された強化ガラスが用いられている。また、近年では、デジタルサイネージ、ポインティングデバイス、スマートフォン等の外装部品に強化ガラスを使用することが増えてきている。
強化ガラスは、イオン交換処理によって形成された圧縮応力層を表面に有することにより、表面におけるクラックの形成および進展を抑制し、高い強度を得られる。強化ガラスの強度は、このような圧縮応力層の形成態様を調整することにより向上できる。このため、強化ガラスの品質管理又は開発に際し、圧縮応力層の応力特性を精度良く測定することが必要となる。
特許文献1には、圧縮応力層の光導波効果を利用して、圧縮応力層の応力及び深さを測定する表面応力測定装置が開示されている。この表面応力測定装置は、強化ガラスの表面層内に単色光を入射させる光供給部材と、ガラスの表層内を伝播した光をガラス外へと射出させる光取出し部材と、光取出し部材から射出された光を、ガラスと光取出し部材との境界面に対して平行及び垂直に振動する2種の光成分に分離し、これらの光成分をそれぞれ輝線列として変換する光変換部材と、を備える(同文献の特許請求の範囲参照)。
この表面応力測定装置によれば、ガラスから取出された2種の光成分に係る輝線列の位置の差を求め、この輝線列の位置の差から、ガラスに対する2種の光成分に係る表面屈折率の差を求めることができる。そして、この表面屈折率の差からガラスの表面における圧縮応力を測定することができる。また、輝線列の数から圧縮応力層の深さ(厚さ)を測定することができる(同文献の第2頁第4欄及び第3頁第5欄参照)。
特許文献2には、強化ガラスの応力分布を測定するためにレーザの散乱光を利用する応力測定装置が開示されている。この応力測定装置によれば、レーザ光の偏向位相差を、偏向位相可変部材によってレーザ光の波長に対して1波長以上可変させ、可変されたレーザ光が強化ガラスに入射されたことにより発する散乱光を撮像素子によって複数回撮像する。そして、演算部により、撮像された複数の画像を用いて散乱光の周期的な輝度変化を測定し、輝度変化の位相変化を算出し、位相変化に基づき前記強化ガラスの表面からの深さ方向の応力分布を算出する(同文献の請求項1参照)。この応力測定装置では、屈折率分布に関係なく化学強化ガラス内部の応力を測定することができる。
近年、表面応力値が高く、応力層の深さを深くすることができるという理由から、リチウム・アルミノシリケート(LAS)系の強化ガラスが注目されている。
この強化ガラスを製造する場合、例えば、強化用ガラスを高温のNaNO3を含む溶融塩に浸漬して、1回目の化学強化処理を施す。これにより、強化用ガラス中のLiイオンと、溶融塩中のNaイオンとをイオン交換する。Naイオンは、強化ガラス中に拡散しやすいため、強化ガラスの表面からより深い領域にまで導入される。
その後、この強化用ガラスを、KNO3を含む溶融塩に浸漬して、2回目の化学強化処理を施す。これにより、Kイオンを、強化用ガラスに含まれるLiイオンまたはNaイオンとイオン交換する。これにより、1回目のイオン交換で形成されたNaイオンに起因する圧縮応力層より浅い表面領域に、Kイオンに起因する大きな圧縮応力を有する圧縮応力層を形成する。
ガラスの屈折率は、ガラス中のLiイオンが溶融塩中のNaイオンにイオン交換されると低くなり、ガラス中のNaイオンやLiイオンが溶融塩中のKイオンにイオン交換されると高くなる。すなわち、ガラス表面領域のKイオンに交換された領域ではガラス中のイオン交換されていない部分に比べて屈折率が高くなる。一方、それより深いNaイオンに交換された領域ではガラス中のイオン交換されていない部分に比べて屈折率が低くなり、屈折率と応力とが比例しない状態となる。
このため、特許文献1に開示される表面の光導波効果を利用した応力測定装置では、Kイオンに起因する圧縮応力層の応力値及び応力分布は測定できるものの、それより深いNaイオンに起因する圧縮応力領域における応力特性を測定することができなかった。
一方、特許文献2に開示される応力測定装置では、応力層に係る応力特性をより深い範囲で測定することができる。しかしながら、この応力測定装置では、レーザ光のビーム径が深さ方向における分解能となり、その値は例えば10μm程度である。そのため、ガラスの表面から内部の浅い領域(例えば表面から10μm以内の領域)では応力値を高精度で測定することができなかった。
以上のことから、LiイオンとNaイオンのイオン交換、およびNaイオンとKイオンのイオン交換が施されたリチウム・アルミノシリケート(LAS)系の強化ガラスにおいて表面から内部の深い領域までの応力特性を測定するには、特許文献1に係る応力測定装置と特許文献2に係る応力測定装置を併用する必要があった。このため、強化ガラスの品質管理及び開発を行うにあたり、多数の強化ガラスの応力特性を測定するために多大な時間を要していた。また、製造工程に複数種の測定装置を用意する必要が生じ、設備コストが増大していた。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、強化ガラスの応力特性を効率良く取得することを技術的課題とする。
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、複数回のイオン交換処理により形成された圧縮応力層における複数の応力特性のうち、一部の応力特性に基づいて他の応力特性を推定する、強化ガラスの応力特性推定方法であって、前記圧縮応力層を有するサンプル強化ガラスにおける前記複数の応力特性を教師データとして取得するサンプリング工程と、前記教師データに基づいて、前記一部の応力特性と前記他の応力特性との関係を示す予測モデルを演算処理装置により作成する予測モデル作成工程と、前記圧縮応力層を有する推定対象の強化ガラスにおける前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する入力データとして取得する測定工程と、前記測定工程によって取得された前記入力データを前記予測モデルに入力し、前記演算処理装置によって前記他の応力特性に係る出力データを取得する推定工程と、を備え、前記他の応力特性は、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を含むことを特徴とする。
かかる構成によれば、測定工程によって取得された推定対象の強化ガラスに係る複数の応力特性のうち、一部の応力特性の入力データを予測モデルに入力することで、他の応力特性である圧縮応力層の深さを精度良く推定することが可能となる。これにより、多数の強化ガラスの応力特性を測定する場合における作業時間を大幅に短縮することができる。したがって、多数の強化ガラスの強度検査及び強度解析を効率良く行うことが可能となる。
本方法において、前記推定対象の強化ガラスおよび前記サンプル強化ガラスは、表面を有する板状またはシート状であり、前記一部の応力特性は、前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を含んでもよい。
また、前記強化ガラスは、前記強化ガラスの厚さ方向における中央位置に引張応力層を有しており、前記一部の応力特性は、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)を含み、前記他の応力特性は、前記引張応力層における引張応力の最大値(CT)を含んでもよい。
前記サンプリング工程は、前記複数回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理が行われた前記サンプル強化ガラスに係る前記複数の応力特性を第1教師データとして取得する第1サンプリング工程と、前記複数回のイオン交換処理のうち、最終回のイオン交換処理が行われた前記サンプル強化ガラスに係る前記複数の応力特性を最終教師データとして取得する最終サンプリング工程と、を含み、前記予測モデル作成工程では、前記第1教師データと前記最終教師データとに基づいて前記予測モデルを作成し、前記測定工程は、前記複数回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理が行われた前記推定対象の強化ガラスに係る前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する第1入力データとして取得する第1測定工程と、前記複数回のイオン交換処理のうち、最終回のイオン交換処理が行われた前記推定対象の強化ガラスに係る前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する最終入力データとして取得する最終測定工程と、を含み、前記推定工程では、前記測定工程によって取得された前記第1入力データと前記最終入力データとを前記予測モデルに入力し、前記他の応力特性に係る出力データを取得することができる。
本方法において、前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であってもよい。
本方法において、前記推定工程では、前記一部の応力特性を説明変数とし、前記他の応力特性を目的変数とした回帰分析により、前記予測モデルとしての回帰式及びその定数を取得することができる。
本方法において、前記回帰式は、一次式であってもよい。この場合において、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)及び前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を前記説明変数とし、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(1)を含んでもよい。
DOC=aCS+bDOL+c ・・・(1)
ここで、a~cは定数である。
DOC=aCS+bDOL+c ・・・(1)
ここで、a~cは定数である。
また、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)及び前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を前記説明変数とし、前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(2)を含んでもよい。
CT=dCS+eDOL+f ・・・(2)
ここで、d~fは定数である。
CT=dCS+eDOL+f ・・・(2)
ここで、d~fは定数である。
本方法において、前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)と、前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)と、前記強化ガラスの厚さ(T)とを前記説明変数とし、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(4)を含んでもよい。
DOC=aT+bCS+cDOL+d ・・・(4)
ここで、a~dは定数である。
DOC=aT+bCS+cDOL+d ・・・(4)
ここで、a~dは定数である。
本方法において、前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)と、前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)と、前記強化ガラスの厚さ(T)とを前記説明変数とし、前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(5)を含んでもよい。
CT=eT+fCS+gDOL+h ・・・(5)
ここで、e~hは定数である。
CT=eT+fCS+gDOL+h ・・・(5)
ここで、e~hは定数である。
本方法において、前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(7)を含んでもよい。
DOC=aCS1st+bDOL1st+cCS2nd+dDOL2nd+e
・・・(7)
ここで、a~eは定数である。
DOC=aCS1st+bDOL1st+cCS2nd+dDOL2nd+e
・・・(7)
ここで、a~eは定数である。
本方法において、前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(8)を含んでもよい。
CT=fCS1st+gDOL1st+hCS2nd+iDOL2nd+j
・・・(8)
ここで、f~jは定数である。
CT=fCS1st+gDOL1st+hCS2nd+iDOL2nd+j
・・・(8)
ここで、f~jは定数である。
本方法において、前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、前記強化ガラスの厚さ(T)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(10)を含んでもよい。
DOC=aT+bCS1st+cDOL1st+dCS2nd+eDOL2nd+f
・・・(10)
ここで、a~fは定数である。
DOC=aT+bCS1st+cDOL1st+dCS2nd+eDOL2nd+f
・・・(10)
ここで、a~fは定数である。
本方法において、前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、前記強化ガラスの厚さ(T)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(11)を含んでもよい。
CT=gT+hCS1st+iDOL1st+jCS2nd+kDOL2nd+l
・・・(11)
ここで、g~lは定数である。
CT=gT+hCS1st+iDOL1st+jCS2nd+kDOL2nd+l
・・・(11)
ここで、g~lは定数である。
前記回帰式は、多次式であってもよい。この場合において、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)及び前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を前記説明変数とし、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(13)を含んでもよい。
DOC=a(CS+b)2+c(DOL+d)2+e ・・・(13)
ここで、a~eは定数である。
DOC=a(CS+b)2+c(DOL+d)2+e ・・・(13)
ここで、a~eは定数である。
本方法において、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)及び前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を前記説明変数とし、前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(14)を含んでもよい。
CT=f(CS+g)2+h(DOL+i)2+j ・・・(14)
ここで、f~jは定数である。
CT=f(CS+g)2+h(DOL+i)2+j ・・・(14)
ここで、f~jは定数である。
本方法において、前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散の深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、前記強化ガラスの厚さ(T)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(16)を含んでもよい。
DOC=a(T+b)2+c(CS1st+d)2+e(DOL1st+f)2
+g(CS2nd+h)2+i(DOL2nd+j)2+k ・・・(16)
ここで、a~kは定数である。
DOC=a(T+b)2+c(CS1st+d)2+e(DOL1st+f)2
+g(CS2nd+h)2+i(DOL2nd+j)2+k ・・・(16)
ここで、a~kは定数である。
本方法において、前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、前記強化ガラスの厚さ(T)を前記説明変数とし、前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、前記回帰式は、下記の式(17)を含んでもよい。
CT=l(T+m)2+n(CS1st+o)2+p(DOL1st+q)2
+r(CS2nd+s)2+t(DOL2nd+u)2+v ・・・(17)
ここで、l~vは定数である。
CT=l(T+m)2+n(CS1st+o)2+p(DOL1st+q)2
+r(CS2nd+s)2+t(DOL2nd+u)2+v ・・・(17)
ここで、l~vは定数である。
なお、上記の式(1)~(17)に含まれる定数(a~v)は、個別の式に同様の記号が重複して用いられている場合があるが、いずれも式毎に独立した個別の定数値を示すものであって、同様の定数記号が同一の値を示すものではない。
本方法において、前記回帰式は、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)と、前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)との積項(CS×DOL)を前記説明変数として含んでもよい。
本方法において、前記推定対象の強化ガラスは、ガラス組成として、Na2Oと、Li2Oとを含有し、前記圧縮応力層は、前記イオン交換処理により導入されたKイオンに起因する圧縮応力層と、前記イオン交換処理により導入されたNaイオンに起因する圧縮応力層とを含み、前記サンプリング工程では、前記一部の応力特性を、光導波効果を利用する表面応力計によって測定し、前記他の応力特性を散乱光光弾性応力計によって測定することができる。
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、複数回のイオン交換処理により形成された圧縮応力層における応力特性を推定するために用いられる予測モデルを作成する、強化ガラスの応力特性推定用モデルの作成方法であって、前記予測モデルは、前記圧縮応力層における複数の応力特性のうち、一部の応力特性に基づいて他の応力特性を推定するために用いられるモデルであり,前記圧縮応力層を有するサンプル強化ガラスにおける前記複数の応力特性を教師データとして取得するサンプリング工程と、前記教師データに基づいて、前記一部の応力特性と前記他の応力特性との関係を示す前記予測モデルを演算処理装置により作成する予測モデル作成工程と、を備えることを特徴とする。
また、本発明は、上記の応力特性推定用モデル作成方法により予め用意された予測モデルを用いて強化ガラスの応力特性を推定する応力特性推定方法であって、前記圧縮応力層を有する推定対象の強化ガラスにおける前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する入力データとして取得する測定工程と、前記測定工程によって取得された前記入力データを前記予測モデルに入力し、前記他の応力特性に係る出力データを取得する推定工程と、を備え、前記他の応力特性は、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を含むことを特徴とする。
本発明は、上記の課題を解決するためのものであり、複数回のイオン交換処理により形成された圧縮応力層における複数の応力特性のうち、一部の応力特性に基づいて他の応力特性を推定する、強化ガラスの応力特性推定方法であって、前記一部の応力特性と前記他の応力特性との関係を示す予測モデルによる演算処理を実行可能な演算処理装置によって、前記他の応力特性を推定する推定工程と、前記圧縮応力層を有する推定対象の強化ガラスにおける前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する入力データとして取得する測定工程と、を備え、前記他の応力特性は、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を含み、前記推定工程では、前記測定工程によって取得された前記入力データを前記予測モデルに入力し、前記演算処理装置によって前記他の応力特性としての前記圧縮応力の深さ(DOC)に係る出力データを取得することを特徴とする。
本発明によれば、強化ガラスの応力特性を効率良く取得することができる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図4は、本発明に係る強化ガラスの応力特性推定方法の一実施形態を示す。
強化ガラス1は、本発明に係る強化ガラスの応力特性推定方法の推定対象となるガラスの一例である。図1に示すように、強化ガラス1は、イオン交換により化学強化された板状またはシート状の化学強化ガラスである。強化ガラス1は、表面1a,1bと、圧縮応力層2と、引張応力層3と、を備える。
強化ガラス1の厚さTは任意に定めてよいが、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.8mm以下、1.6mm以下、1.4mm以下、1.2mm以下、1.0mm以下、0.9mm以下、0.85mm以下、更に好ましくは0.8mm以下で、好ましくは0.03mm以上、0.05mm以上、0.1mm以上、0.15mm以上、0.2mm以上、0.25mm以上、0.3mm以上、0.35mm以上、0.4mm以上、0.45mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、更に好ましくは0.65mm以上である。
強化ガラス1の表面1a,1bは、表裏をなす主表面1aと、端面1bとを含む。圧縮応力層2は、強化ガラス1の主表面1aおよび端面1bを含む表層部に形成されている。圧縮応力層2は、イオン交換処理により導入されたKイオンに起因する圧縮応力層と、イオン交換処理により導入されたNaイオンに起因する圧縮応力層とを含む。Kイオンに起因する圧縮応力層は、強化ガラス1の表面1a,1b及びその近傍の比較的浅い位置に形成されている。Naイオンに起因する圧縮応力層は、Kイオンに起因する圧縮応力層よりも深い位置に形成されている。引張応力層3は、圧縮応力層2よりも深い位置に形成されている。
強化ガラス1の応力プロファイル(応力分布)は、圧縮応力を正の数、引張応力を負の数として、主表面1a側から深さ方向(主表面1aと直交する方向)に応力を測定して得られる。このようにして得られた強化ガラス1の応力プロファイルは、例えば、図2のように示される。図2のグラフにおいて、縦軸は応力を示し、横軸は一方の主表面1aを基準とした厚さ方向の位置(深さ)を示す。図2のグラフにおいて、正の値の応力は圧縮応力を示し、負の値の応力は引張応力を示す。すなわち、図2のグラフにおける応力は絶対値が大きいほど大きな応力であることが示される。なお、図2は理解のため誇張された概念図であり、強化ガラス1の応力プロファイルはこの態様に限られるものでない。
強化ガラス1の応力プロファイルは、主表面1a側から深さ方向(主表面1aと直交する方向)に順に、第1ピークP1、第1ボトムB1、第2ピークP2および第2ボトムB2を備える。
第1ピークP1は、圧縮応力の最大値を取る位置であり、主表面1aに存在する。第1ピークP1の圧縮応力CSは、500MPa以上であり、好ましくは700MPa~900MPa、より好ましくは750MPa~850MPaである。
第1ボトムB1では、第1ピークP1から深さ方向に応力が漸減し、応力が極小値をとる。第1ボトムB1の応力CSbは、図2では圧縮応力(正の値)となる場合を例示しているが、引張応力(負の値)となる場合もある。第1ボトムB1の応力CSbは、低いほど第2ボトムB2の引張応力CTが低下し、破損時の挙動を緩慢にする。
第1ボトムB1における応力CSbは、好ましくは+100MPa以下であり、より好ましくは+90MPa以下、+80MPa以下、+70MPa以下、+60MPa以下である。しかし第1ボトムB1の応力CSbが低すぎると、強化工程中に表面にクラックを発生させ、視認性を悪化させる。第1ボトムB1の応力CSbは、好ましくは-50MPa以上であり、より好ましくは-45MPa以上、-40MPa以上、-35MPa以上、-30MPa以上である。第1ボトムB1の応力CSbは、0MPa以上+65MPa以下であってもよいし、-30MPa以上0MPa未満であってもよい。第1ボトムB1の深さDOLbは、好ましくは厚さTの0.5%~12%であり、より好ましくは厚さTの1%~7%である。第1ボトムB1の深さDOLbは、圧縮応力層2のうち、Kイオンに起因する圧縮応力層の深さ、すなわち、イオン交換により導入されたKイオンの拡散深さDOLと略等しいか、DOLよりやや深い位置となる。より具体的には、DOLbはDOLを基準として±10μmの範囲内に位置する。
第2ピークP2では、第1ボトムB1から深さ方向に応力が漸増し、応力が極大値をとる。第2ピークP2の応力CSpは、圧縮応力である。第2ピークP2の圧縮応力CSpは、15MPa~250MPaであり、好ましくは15MPa~240MPa、15MPa~230MPa、15MPa~220MPa、15MPa~210MPa、15MPa~200MPa、15MPa~190MPa、15MPa~180MPa、15MPa~175MPa、15MPa~170MPa、15MPa~165MPa、15MPa~160MPa、18MPa~100MPaであり、より好ましくは20MPa~80MPaである。
第2ピークP2の深さDOLpは、厚さTの4%~20%であり、好ましくは厚さTの4%~19%、4%~18.5%、4%~18%、4%~17.5%、4%~17%であり、より好ましくは4.5%~17%、5%~17%、6%~17%、7.3%~17%、8%~15%である。
第1ボトムB1から第2ピークP2までの深さ方向の距離、すなわち、DOLp-DOLbは厚さTの3%以上であり、好ましくは厚さTの4%以上であり、より好ましくは厚さTの5%~13%である。
第2ボトムB2では、第2ピークP2から応力が深さ方向に漸減し、引張応力の最小値(絶対値は最大値)をとる。強化ガラス1の厚さ方向における中央位置での第2ボトムB2の引張応力CTの絶対値(最大値)は、70MPa以下、好ましくは65MPa以下、60MPa以下、より好ましくは40MPa~55MPaである。
第2ボトムB2の引張応力CTと厚さTとの積は、好ましくは-70MPa・mm以上であり、より好ましくは-65MPa・mm以上、-60MPa・mm以上、-55MPa・mm以上である。また、第2ボトムB2の引張応力CTと厚さTとの積は、好ましくは-5MPa・mm以下、-10MPa・mm以下、-15MPa・mm以下、-20MPa・mm以下、-25MPa・mm以下、-30・mmMPa以下である。
第2ピークP2と第2ボトムB2との間には、応力がゼロとなる応力ゼロ点Zがある。通常、応力ゼロ点Zの深さ、すなわち圧縮応力層2の深さDOCは厚さTの20%を越えることが困難で、物理的にも22%程度が限界となるが、本実施形態ではその限界値を越えるDOCを得ることができる。
応力ゼロ点Zの深さDOCは大きいほど突起物貫入に対する強度が高くなり、好ましくは厚さTの10%以上、10.5%以上、11%以上、11.5%以上、12%以上、12.5%以上、13%以上、13.5%以上、14%以上、14.5%以上、15%以上、15.5%以上、16%以上、16.5%以上、17%以上、17.5%以上、18%以上であり、より好ましくは18.5%以上、19%以上、19.5%以上、20%以上、20.5%以上、21%以上、21.5%以上、22.0%以上、22.5%以上、23%以上、23.5%以上で、最も好ましくは24%以上である。
しかし、応力ゼロ点Zの深さDOCが過剰に大きくなると、第1ボトムB1や第2ボトムB2において過剰な引張応力を生じさせる虞がある。よって、応力ゼロ点Zの深さDOCは、好ましくは厚さTの35%以下、34.5%以下、34%以下、33.5%以下、33%以下、32.5%以下、32%以下、31.5%以下、31%以下、30.5%以下、30%以下、29.5%以下、29%以下、28.5%以下、28%以下で、より好ましくは27%以下である。
ここで、本実施形態では、強化ガラス1は、端面1bにも同様の応力プロファイルを有する。すなわち、強化ガラス1の応力プロファイルは、端面1bにおいて圧縮応力が最大値となる第1ピークと、第1ピークから深さ方向に漸減して応力が極小値となる第1ボトムと、第1ボトムから深さ方向に漸増して圧縮応力が極大値となる第2ピークと、第2ピークから深さ方向に漸減して引張応力が最小値となる第2ボトムと、を備え、第1ピークにおける圧縮応力が500MPa以上であり、第2ピークにおける圧縮応力が15MPa~250MPaであり、第2ピークが厚さTの4%~20%の深さに存在する。また、端面1bに関する応力プロファイルの好ましい範囲も、主表面1aに関する応力プロファイルの好ましい範囲を同様に適用できる。
なお、強化ガラス1の応力およびその分布は、例えば、折原製作所製の表面応力計(FSM-6000LE)および散乱光光弾性応力計(SLP-1000)を用いて測定、ならびに合成した値を用いることができる。
以上のように構成された強化ガラス1は、組成としてアルカリ金属酸化物を含む板状のガラス(以下、強化用ガラスと称する)を用意し、この強化用ガラスに強化処理を施すことによって製造される。
強化用ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO2 40%~70%、Al2O3 10%~30%、B2O3 0%~3%、Na2O 5%~25%、K2O 0%~5.5%、Li2O 0.1%~10%、MgO 0%~6%、P2O5 0%~15%を含有することが好ましい。
なお、上記の強化用ガラスの組成は一例であり、イオン交換による化学強化が可能であれば周知の組成を有する強化用ガラスを用いてよい。また、上記の強化用ガラスをイオン交換処理して得られる強化ガラスの組成は、イオン交換処理前の強化用ガラスの組成と同様の組成となる。
以下、上記構成の強化ガラス1(強化ガラス板)を製造する方法について説明する。
図3に示すように、本方法は、準備工程S1と、第1イオン交換工程S21と、第2イオン交換工程S22と、を備える。
準備工程S1は、強化用ガラスを用意する工程である。準備工程S1では、上記のガラス組成になるように調合したガラス原料を連続溶融炉に投入して、1500℃~1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で板状等に成形し、徐冷することにより、強化用ガラスを作製することができる。
ガラス板を成形する方法として、オーバーフローダウンドロー法を採用することが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、大量に高品位なガラス板を作製できるとともに、大型のガラス板も容易に作製できる方法であり、またガラス板の表面の傷を可及的に低減することができる。なお、オーバーフローダウンドロー法では、成形体の構成材料として、例えば、アルミナやデンスジルコンが使用される。本発明に係る強化用ガラスは、アルミナやデンスジルコン、特にアルミナとの適合性が良好である(溶融ガラスの組成成分が成形体の組成成分と反応し難く、泡やブツ等を発生させ難い)。
オーバーフローダウンドロー法以外にも、種々の成形方法を採用することができる。例えば、フロート法、ダウンドロー法(スロットダウン法、リドロー法等)、ロールアウト法、プレス法等の成形方法を採用することができる。
強化用ガラスを成形した後、或いは成形と同時に、必要に応じて曲げ加工を行ってもよい。また必要に応じて、切断加工、孔開け加工、表面研磨加工、面取り加工、端面研磨加工、エッチング加工等の加工を行ってもよい。
強化用ガラスの寸法は任意に定めてよいが、厚さTは、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは0.05~1.0mm、更に好ましくは0.1mm~0.9mm、0.3mm~0.85mm、0.5mm~0.8mmである。
第1イオン交換工程S21では、Naイオンを含む第1溶融塩で満たされた処理槽に、強化用ガラスを浸漬(接触)させるとともに、所定温度にて所定時間保持することにより、強化用ガラスの表面のイオン交換処理を行う。これにより、強化用ガラス中のLiイオンと、第1溶融塩中のNaイオンとをイオン交換し、強化用ガラスの表面(主表面および端面)近傍にNaイオンを導入する。また、強化用ガラス中のNaイオンと、第1溶融塩中のKイオンとをイオン交換する。その結果、強化用ガラスの表層部に圧縮応力層2が形成され、強化用ガラスが強化される。
第1イオン交換工程S21において、Naイオンを強化用ガラスに導入する領域は、好ましくは強化用ガラスの表面から厚さTの10%以上の深さまでの領域、より好ましくは強化用ガラスの表面から厚さTの12%以上、14%以上、15%以上、15%以上40%以下の深さまでの領域である。
第1イオン交換工程S21に用いる第1溶融塩は、NaNO3およびKNO3の混合塩が好ましい。第1溶融塩にKイオンが含まれていると、第1イオン交換工程S21後に、強化用ガラスの表面領域の圧縮応力およびその分布を測定しやすくなるため、得られる強化ガラスの品質管理に好適である。第1溶融塩に占めるNaNO3の濃度は、第1溶融塩に占めるKNO3の濃度よりも高いことが好ましいが、この関係に限定されない。第1溶融塩に占めるNaNO3の濃度は、質量%で50%以上とされ、第1溶融塩に占めるKNO3の濃度は、質量%で好ましくは50%未満とされることが好ましい。これに限らず、第1溶融塩に占めるNaNO3の濃度は、質量%で好ましくは100~20%、100~30%、100~40%、100~50%、100~60%であり、残部はKNO3であることが好ましい。第1溶融塩をNaNO3およびKNO3の混合塩とした場合、Naイオンは、Kイオンよりも強化ガラス中に拡散しやすいため、強化ガラスの表面からより深い領域にまで導入される。なお、第1溶融塩は、NaNO3のみを含み、KNO3を含まない構成としてもよい。また、第1溶融塩は、LiNO3を含んでいてもよい。
第1イオン交換工程S21のイオン交換処理温度は、好ましくは350~480℃、より好ましくは360~430℃、更に好ましくは370~400℃、370~390℃である。第1イオン交換工程S21のイオン交換処理時間は、好ましくは1~20時間であり、より好ましくは1.5時間~15時間、更に好ましくは2時間~10時間である。
第2イオン交換工程S22では、Kイオンと、Liイオンと、を含む第2溶融塩で満たされた処理槽に、強化用ガラスを浸漬するとともに、所定温度にて所定時間保持することにより、強化用ガラスの表面のイオン交換処理を行う。
これにより、第2溶融塩中のLiイオンを、強化用ガラス中のNaイオンと逆イオン交換し、Naイオンの少なくとも一部を強化用ガラスから離脱させる。これと同時に、Kイオンを、強化用ガラスに含まれるLiイオンまたはNaイオンとイオン交換し、表面から厚さTの7%より浅い領域までKイオンを強化ガラスに導入させる。つまり、逆イオン交換により強化用ガラスの表層部に形成された圧縮応力が緩和されながら、イオン交換により強化用ガラスが強化され、表層部のうちの表面近傍のみに高い圧縮応力が形成される。
第2イオン交換工程S22において、Naイオンを強化用ガラスから離脱させる領域は、好ましくは強化用ガラスの表面から厚さTの15%以下の深さまでの領域、より好ましくは強化用ガラスの表面から厚さTの14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、1%以上10%以下、2%以上10%以下、3%以上10%以下、4%以上10%以下、5%以上10%以下の深さまでの領域である。また、第2イオン交換工程S22において、Kイオンを強化用ガラスに導入する領域は、好ましくは強化用ガラスの表面から厚さTの7%以下の深さまでの領域、より好ましくは強化用ガラスの表面から厚さTの6.5%以下、6%以下、5.5%以下、5%以下の深さまでの領域である。
第2イオン交換工程S22に用いる第2溶融塩は、LiNO3およびKNO3の混合塩が好ましい。第2溶融塩に占めるLiNO3の濃度は、第2溶融塩に占めるKNO3の濃度よりも低いことが好ましい。詳細には、第2溶融塩に占めるLiNO3の濃度は、質量%で好ましくは0.1~5%、0.2~5%、0.3~5%、0.4~5%、0.5~5%、0.5~4%、0.5~3%、0.5~2.5%、0.5~2%、1~2%である。第2溶融塩に占めるKNO3の濃度は、質量%で好ましくは95~99.5%、96~99.5%、97~99.5%、98~99.5%、98~99.4%、98~99.3%、98~99.2%、98~99.1%、98~99%である。
また、第2溶融塩に占めるLiイオンの濃度は、100質量ppm以上であることが好ましい。この際、第2溶融塩に占めるLiイオンの濃度は、質量%で表されるLiNO3に0.101を乗ずることで求められる。
第2イオン交換工程S22のイオン交換処理温度は、好ましくは350~480℃、より好ましくは360~430℃、更に好ましくは370~400℃、370~390℃である。第2イオン交換工程S22のイオン交換処理時間は、第1イオン交換工程S21のイオン交換処理時間より短いことが好ましい。第2イオン交換工程S22のイオン交換処理時間は、好ましくは0.2時間以上、より好ましくは0.3~2時間、0.4~1.5時間、更に好ましくは0.5~1時間である。
各イオン交換工程S21,S22において溶融塩に浸漬される強化用ガラスは、予め各イオン交換工程S21,S22のイオン交換処理における溶融塩の温度まで予熱されていてもよく、常温(例えば、1℃~40℃)の状態のまま各溶融塩に浸漬させてもよい。
第1イオン交換工程S21と第2イオン交換工程S22の間に、溶融塩から引き出された強化用ガラスを洗浄する洗浄工程を設けることが好ましい。洗浄を行うことによって、強化用ガラスに付着していた付着物を除去しやすくなり、第2イオン交換工程S22において、より均一にイオン交換処理を行うことができる。
次に、強化ガラス1の応力特性を推定する方法について説明する。本発明に係る強化ガラスの応力特性推定方法は、複数回(上記の例では2回)のイオン交換処理により表層に圧縮応力層2を有する強化ガラス1における複数の応力特性のうち、一部の応力特性に基づいて他の応力特性を予測モデルによって推定することができる。
図4に示すように、本方法は、モデル生成フェーズと、モデル利用フェーズとに大別される。モデル生成フェーズの処理は、予測モデルを得た後、予測モデルの更新が必要となるタイミング、例えば、ガラス組成やイオン交換条件等の製造条件が変更になるタイミングまで繰り返さなくても良い。一方、モデル利用フェーズの処理は、例えば、強化ガラス製品の製造工程等において品質管理のために繰り返し実行可能である。
モデル生成フェーズでは、推定対象となる強化ガラスと同様の寸法形状、組成の強化用ガラスに対して、推定対象となる強化ガラスと同様のイオン交換条件でイオン交換処理を施すことで、サンプル強化ガラスが作製される。
モデル生成モデル生成フェーズは、サンプルガラス準備工程S3と、サンプリング工程S4と、予測モデル作成工程S5と、を含む。
サンプルガラス準備工程S3では、サンプル強化ガラスを作製するための複数の強化用ガラスが用意される。
サンプリング工程S4は、強化用ガラスに対して複数回(N回:Nは2以上の整数)のイオン交換工程S20-1~S20-Nと、各イオン交換工程S20-1~S20-N後にサンプル強化ガラスの応力特性を測定する第1サンプリング工程S4-1乃至最終サンプリング工程S4-Nと、を含む。
各サンプリング工程S4-1~S4-Nでは、各イオン交換工程S20-1~S20-N後に、サンプル強化ガラスに係る複数の応力特性を教師データとして取得する。すなわち、第1イオン交換工程S20-1後におけるサンプル強化ガラスの複数の応力特性を、第1サンプリング工程S4-1により第1教師データとして取得する。さらに、このサンプル強化ガラスに対して第2イオン交換工程S20-2を実施した後に、第2サンプリング工程S4-2によりその応力特性を第2教師データとして取得する。このサンプリングを繰り返し実行し、最終回であるN回目の第Nイオン交換工程S20-Nを実施した後のサンプル強化ガラスの応力特性を、最終サンプリング工程S4-Nにより最終教師データとして取得する。
サンプリング工程S4におけるイオン交換処理及びサンプリングの回数は、例えば利用フェーズで推定対象の強化ガラスを作製するためのイオン交換処理の回数と同じに設定される。すなわち、推定対象の強化ガラスが2回のイオン交換処理で作製される場合は、サンプリング工程S4においても、2回のイオン交換処理(第1イオン交換工程S20-1及び第2イオン交換工程S20-2)によってサンプル強化ガラスを作製する。この場合において、各イオン交換処理に対応するように、2回のサンプリング(第1サンプリング工程S4-1及び第2サンプリング工程S4-2)が実行され、第1教師データ、及び最終教師データである第2教師データが取得される。
教師データに含まれる応力特性としては、CS,DOL,DOC,CT,CS80、および強化ガラスの厚さTが挙げられる。ここで、CS80は、サンプル強化ガラスの主表面から80μmの深さの位置における圧縮応力値である。なお、教師データは、同様の物理量については単位が共通するよう予め換算して用いることが好ましい。例えば、長さ(深さ)に係るデータであるT、DOL,DOCはμmに換算して用いることが好ましい。
これらの応力特性のうち、CS及びDOLは、例えば、折原製作所製の表面応力計(FSM-6000LE)によって測定される。FSM-6000LEは、光導波効果を利用して、これらの応力特性を測定することができる。また、DOC,CT及びCS80は、例えば、折原製作所製の散乱光光弾性応力計(SLP-1000)によって測定される。厚さTは、最終回のイオン交換工程後に、例えばマイクロメータ、レーザ変位計その他の測定装置によって測定することができる。
測定された教師データは、記録媒体に記録され、又は、予測モデル作成工程S5を実行可能な演算処理装置に保存される。
予測モデル作成工程S5では、サンプリング工程S4によって得られた教師データに基づいて応力特性を予測するための予測モデルを、演算処理装置によって作成する。予測モデル作成工程S5では、サンプリング工程S4によって取得された教師データの一部又は全部が使用される。教師データの一部を使用する場合、例えば、第1教師データ及び最終教師データが使用され得る。或いは、最終教師データのみが使用されてもよい。これに限らず、第1教師データ及び最終教師データに、他の教師データを加えて予測モデルを作成してもよい。
演算処理装置としては、市販のコンピュータを使用することができる。演算処理装置には、統計解析ソフトウェアがインストールされている。演算処理装置は、統計解析ソフトウェアの回帰分析によって予測モデルである回帰式を作成することができる。統計解析ソフトとしては、例えばSAS Institute Inc.製のJMP(登録商標)が好適に使用される。
予測モデル作成工程S5では、応力特性に係る教師データに含まれる複数の応力特性のうち、一部の応力特性を説明変数とし、他の応力特性を目的変数とする。具体的には、CS,DOL及び/又はTを説明変数とし、DOC,CT,CS80を目的変数とすることができる。
予測モデルとしての回帰式は、例えば最小2乗法により、上記の各変数による1次関数(1次式)として表される。例えば最終教師データのみに基づいて作成される回帰式は、以下の(1)~(3)により表される。
DOC=aCS+bDOL+c ・・・(1)
CT=dCS+eDOL+f ・・・(2)
CS80=gCS+hDOL+i ・・・(3)
ここで、a~iは、正又は負の定数である(以下同じ)。
CT=dCS+eDOL+f ・・・(2)
CS80=gCS+hDOL+i ・・・(3)
ここで、a~iは、正又は負の定数である(以下同じ)。
他の実施形態として、回帰式は、以下の式(4)~(6)によって表されてもよい。
DOC=aT+bCS+cDOL+d ・・・(4)
CT=eT+fCS+gDOL+h ・・・(5)
CS80=iT+jCS+kDOL+l ・・・(6)
ここで、j~lは、正又は負の定数である(以下同じ)。
CT=eT+fCS+gDOL+h ・・・(5)
CS80=iT+jCS+kDOL+l ・・・(6)
ここで、j~lは、正又は負の定数である(以下同じ)。
他の実施形態として、例えば2回のイオン交換処理が行われた場合に、第1教師データ及び最終教師データ(第2教師データ)に基づいて作成される回帰式は、例えば以下の式(7)~(9)により表される。
DOC=aCS1st+bDOL1st+cCS2nd+dDOL2nd+e
・・・(7)
CT=fCS1st+gDOL1st+hCS2nd+iDOL2nd+j
・・・(8)
CS80=kCS1st+lDOL1st+mCS2nd+nDOL2nd+o
・・・(9)
ここで、m~oは、正又は負の定数である(以下同じ)。
・・・(7)
CT=fCS1st+gDOL1st+hCS2nd+iDOL2nd+j
・・・(8)
CS80=kCS1st+lDOL1st+mCS2nd+nDOL2nd+o
・・・(9)
ここで、m~oは、正又は負の定数である(以下同じ)。
上記の式(7)~(9)において、CS1stは初回のイオン交換処理(第1イオン交換工程S20-1)後に取得されるCSであり、CS2ndは、最終回のイオン交換処理(第2イオン交換工程)後に測定されるCSである(以下、同じ)。DOL1stは初回のイオン交換処理(第1イオン交換工程S20-1)後に測定されるDOLであり、DOL2ndは、最終回のイオン交換処理(第2イオン交換工程)後に測定されるDOLである(以下同じ)。
他の実施形態において、回帰式は、以下の式(10)~(12)により表されてもよい。
DOC=aT+bCS1st+cDOL1st+dCS2nd+eDOL2nd+f
・・・(10)
CT=gT+hCS1st+iDOL1st+jCS2nd+kDOL2nd+l
・・・(11)
CS80=mT+nCS1st+oDOL1st+pCS2nd+qDOL2nd+r
・・・(12)
ここで、p~rは、正又は負の定数である(以下同じ)。
・・・(10)
CT=gT+hCS1st+iDOL1st+jCS2nd+kDOL2nd+l
・・・(11)
CS80=mT+nCS1st+oDOL1st+pCS2nd+qDOL2nd+r
・・・(12)
ここで、p~rは、正又は負の定数である(以下同じ)。
他の実施形態において、回帰式は、多次関数(多次式)として表されてもよい。例えば最終教師データのみに基づいて作成される2次の回帰式は、以下の式(13)~(15)によって表される。
DOC=a(CS+b)2+c(DOL+d)2+e ・・・(13)
CT=f(CS+g)2+h(DOL+i)2+j ・・・(14)
CS80=k(CS+l)2+m(DOL+n)2+o ・・・(15)
CT=f(CS+g)2+h(DOL+i)2+j ・・・(14)
CS80=k(CS+l)2+m(DOL+n)2+o ・・・(15)
他の実施形態において、回帰式(2次式)は、以下の式(16)~(18)によって表されてもよい。
DOC=a(T+b)2+c(CS1st+d)2+e(DOL1st+f)2
+g(CS2nd+h)2+i(DOL2nd+j)2+k ・・・(16)
CT=l(T+m)2+n(CS1st+o)2+p(DOL1st+q)2
+r(CS2nd+s)2+t(DOL2nd+u)2+v ・・・(17)
CS80=w(T+x)2+y(CS1st+z)2+α(DOL1st+β)2
+γ(CS2nd+δ)2+ε(DOL2nd+ζ)2+η ・・・(18)
ここでs~z、α~ηは、正又は負の定数である。
+g(CS2nd+h)2+i(DOL2nd+j)2+k ・・・(16)
CT=l(T+m)2+n(CS1st+o)2+p(DOL1st+q)2
+r(CS2nd+s)2+t(DOL2nd+u)2+v ・・・(17)
CS80=w(T+x)2+y(CS1st+z)2+α(DOL1st+β)2
+γ(CS2nd+δ)2+ε(DOL2nd+ζ)2+η ・・・(18)
ここでs~z、α~ηは、正又は負の定数である。
なお、上記の式(1)~(18)に含まれる定数(a~z、α~η)は、個別の式に同様の記号が重複して用いられている場合があるが、いずれも式毎に独立して求められる個別の定数値を示すものであって、同様の定数記号が同一の値を示すものではない。
上記の例の他、予測モデルに係る回帰式は、応力特性に係る変数の積項を説明変数として含む多次式(二次式)であってもよい。積項としては、例えば、T×CS1st,T×DOL1st,T×CS2nd,T×DOL2nd,CS1st×DOL1st,CS1st×CS2nd,CS1st×DOL2nd,DOL1st×CS2nd,DOL1st×DOL2nd,CS2nd×DOL2ndが挙げられる。
予測モデル作成工程S5では、演算処理装置が作成した予測モデルの妥当性について検証される(検証工程)。具体的には、サンプリング工程S4で測定された、DOC(DOC1st,DOC2nd),CS(CS1st,CS2nd),CS80(CS801st,CS802nd)に係るデータと、予測モデルによって算出されたデータとが比較される。検証工程では、決定係数(R2)や2乗平均平方根誤差(RMSE:Root Mean Square Error)によって予測モデルの適否が検証される。ここで、決定係数とは、目的変数の全変動のうち、全ての説明変数によって説明できる割合を表し、回帰式と教師データとの当てはまりの良さを示す値である。決定係数は、1に近いほど良い。
モデル利用フェーズでは、強化用ガラスに複数回のイオン交換処理を施して推定対象となる強化ガラスを作製する。この場合において、各イオン交換処理後に強化ガラスの応力特性の一部を測定し、予測モデル作成工程S5において作成された予測モデルに基づいて、その一部の応力特性から他の応力特性を推定する。
図4に示すように、モデル利用フェーズは、推定対象ガラス準備工程S6と、測定工程S7と、推定工程S8とを含む。
推定対象ガラス準備工程S6では、推定対象の強化ガラスを作製するための複数の強化用ガラスが用意される。
測定工程S7は、複数回(N回:Nは2以上の整数)のイオン交換工程S200-1~S200-Nと、各イオン交換工程S200-1~S200-N後に行われる複数(N回)の測定工程S7-1~S7-Nと、を含む。測定工程S7では、各イオン交換工程S200-1~S200-N後に、強化ガラスに係る応力特性の一部を測定し、測定された応力特性を予測モデルへの入力データとする。例えば、第1イオン交換工程S200-1が行われた後の強化ガラスに係る一部の応力特性を第1測定工程S7-1によって測定する。第1測定工程S7-1で測定された一部の応力特性に係るデータは、予測モデルに対する第1入力データとなる。第2イオン交換工程S200-2が行われた場合、その後の強化ガラスに係る応力特性の一部を第2測定工程S7-2によって測定し、第2入力データを得る。この測定を繰り返し、最終回のイオン交換工程S200-Nが行われた後の強化ガラスに係る応力特性の一部を最終測定工程S7-Nによって測定し、最終入力データを得る。
以下の説明では、2回のイオン交換工程によって推定対象となる強化ガラスを作製する場合における測定工程S7及び推定工程S8について説明する。この場合、第2測定工程が最終測定工程となる。
第1測定工程S7-1では、初回のイオン交換処理である第1イオン交換工程S200-1後(第2イオン交換工程前)に、例えば折原製作所製の表面応力計(FSM-6000LE)により、推定対象の強化ガラスに係るCS1st,DOL1stを、予測モデルに対する第1入力データとして測定する。
最終測定工程では、最終回のイオン交換処理である第2イオン交換工程後に、例えば折原製作所製の表面応力計(FSM-6000LE)により、推定対象の強化ガラスに係るCS2nd,DOOL2ndを、予測モデルに対する最終入力データとして測定する。
予測モデルの変数にTが使用される場合には、第2イオン交換工程(最終イオン交換工程)後に、推定対象である強化ガラスの厚さを例えばマイクロメータ、レーザ変位計その他の測定装置によって測定する。測定されたデータは、推定工程S8を実行可能な演算処理装置に送信または入力される。
推定工程S8では、測定工程S7において測定された応力特性に係る入力データが予測モデルに導入される。推定工程S8を実行する演算処理装置として、上記の予測モデルが予めインストールされ、回帰式による演算を実行可能なコンピュータが使用される。すなわち、演算処理装置としては、予測モデル作成工程S5を実行したコンピュータとは別のコンピュータに予測モデルをインストールして使用しても良い。また、演算処理装置としては、予測モデル作成工程S5を実行したコンピュータを使用してもよい。演算処理装置は、測定工程S7によって測定された、第1入力データ(CS1st,DOL1st)及び最終入力データ(CS2nd,DOL2nd)、場合によっては測定されたTを、予測モデルに入力し、他の応力特性に係る出力データ(DOS,CT,CS80)を算出する。
以上説明した本実施形態に係る強化ガラスの応力特性推定方法によれば、推定対象の強化ガラスに係る複数の応力特性(CS,DOL,DOC,CT,CS80,T)のうち、一部の応力特性(CS,DOL及び/又はT)を測定し、取得された入力データを、推定工程S8において予測モデルに入力することで、他の応力特性(DOC,CT,CS80)を精度良く推定することが可能となる。これにより、多数の強化ガラスの応力特性を測定する場合における作業時間を大幅に短縮することができる。したがって、多数の強化ガラスの強度検査及び強度解析を効率良く行うことが可能となる。また、強化ガラスの製造工程に複数種の測定装置を設置する必要がなくなり、設備コストを低減することが可能となる。
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記の実施形態では、DOS、CT,CS80を目的変数として回帰分析を行う予測モデル作成工程S5を例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。CS80(強化ガラスの表面から80μmの深さ位置における応力値)に限らず、任意の深さ位置における応力値やその深さを目的変数(例えば応力プロファイルにおける第2ピークP2の応力値CSp及びその深さDOLp等)として、予測モデルを作成することが可能である。
上記の実施形態では、回帰分析によって予測モデルを作成する例を示したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。予測モデルは、機械学習(ディープラーニング)その他の手法を用いて予測モデルを作成してもよい。
上記の実施形態において、各工程は各々別の事業者により実行されても良いし、単一の事業者により実行されても良い。例えば、モデル作成フェーズの工程(ステップS3~S5)と、モデル利用フェーズの工程(ステップS6~S8)とは、各々別の事業者により実行されても良い。
以下、本発明に係る強化ガラスについて実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は単なる例示であって、本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
次のようにして試料を作製した。まず、イオン交換処理を施すための強化用ガラス板を用意した。強化用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO2 51.6%、Al2O3 27.9%、B2O3 0.3%、K2O 0.6%、Na2O 7.5%、Li2O 3.3%、MgO 0.3%、P2O5 8.4%、SnO2 0.1%を含有するものである。
上記の組成となるように、ガラス原料を調合し、白金ポットを用いて1600℃で21時間溶融した。その後、得られた溶融ガラスを、オーバーフローダウンドロー法を用いて耐火物成形体から流下成形した。これにより成形されたガラスリボンを所定の寸法に切断し、試験片となる複数の強化用ガラス板を得た。強化用ガラス板として、厚さの異なるものを用意した。強化用ガラス板の厚さは、0.55mm、0.7mm、0.8mmである。
次いで、上記の強化用ガラスを溶融塩浴に浸漬して、第1イオン交換工程及び第2イオン交換工程によるイオン交換処理を行い、強化ガラス板を得た。
第1イオン交換工程では、厚さが0.55mmの強化ガラス板の化学強化には、KNO3とNaNO3の重量濃度比70(%):30(%)とした溶融塩を使用した。また、厚さが0.7mm、0.8mmの強化ガラス板の化学強化には、KNO3とNaNO3の重量濃度比を40(%):60(%)とした溶融塩を使用した。
第1イオン交換工程における溶融塩のイオン交換処理温度は、380℃である。第1イオン交換工程におけるイオン交換処理時間は、厚さが0.55mmの強化ガラス板について、90分と、120分との二通りに分けて強化した。厚さが0.7mmの強化ガラス板については、第1イオン交換工程におけるイオン交換処理時間を180分とした。厚さが0.8mmの強化ガラス板については、第1イオン交換工程のイオン交換処理時間を210分とした。
第2イオン交換工程では、溶融塩中のKNO3とLiNO3の重量濃度比を、99(%):1(%)とした。第2イオン交換工程における溶融塩のイオン交換処理温度は、380℃である。第2イオン交換工程におけるイオン交換処理時間は、45分である。
実施例1として、上記実施形態における回帰式(4)~(6)を作成するために、第2イオン交換工程後の強化ガラス板の応力特性CS,DOL,CT,CS80,Tを測定した。応力特性の測定には、折原製作所製の表面応力計(FSM-6000LE)および散乱光光弾性応力計(SLP-1000)を使用した。測定データを最終教師データとし、統計解析ソフトJMP(登録商標)を使用し、この最終教師データのみ基づいて上記実施形態における回帰式(4)~(6)に対応する予測モデルを演算処理装置により作成した。
作成された回帰式に測定したCS,DOLを代入し、出力(推定)されたDOC,CT,CS80を、測定されたDOC,CT,CS80と比較した。応力特性の推定値と測定値に基づいて、決定係数(R2)及び2乗平均平方根誤差(RMSE)を算出した。
実施例2として、上記実施形態における回帰式(10)~(12)に対応する予測モデルを作成するために、必要な応力特性に係る教師データ(第1教師データ及び最終教師データ)を実施例1と同様な手法により取得した。実施例1と同様な手法により、取得した教師データに基づいて、上記実施形態の回帰式(10)~(12)に対応する予測モデルを作成した。その後、実施例1と同様に、応力特性の推定値と測定値に基づいて、決定係数(R2)及び2乗平均平方根誤差(RMSE)を算出した。
実施例3として、実施例1と同様な手法により、上記実施形態における回帰式(16)~(18)に対応する予測モデルを作成した。その後、実施例1と同様に、応力特性の推定値と測定値に基づいて、決定係数(R2)及び2乗平均平方根誤差(RMSE)を算出した。
実施例4として、実施例1と同様な手法により、上記実施形態における回帰式(7)~(9)に、各変数の積項を加えてなる予測モデルを作成した。加えた積項は、T×CS1st,T×DOL1st,T×CS2nd,T×DOL2nd,CS1st×DOL1st,CS1st×CS2nd,CS1st×DOL2nd,DOL1st×CS2nd,DOL1st×DOL2nd,CS2nd×DOL2ndである。その後、実施例1と同様に、応力特性の推定値と測定値に基づいて、決定係数(R2)及び2乗平均平方根誤差(RMSE)を算出した。
表1、2に示すように、予測モデルによって推定された応力特性は、実際に測定された応力特性に対して高い相関性を示した。したがって、本発明により、応力特性(DOC,CT,CS80)を高精度で推定することが可能である。
1 強化ガラス
1a 強化ガラスの主表面
1b 強化ガラスの端面
2 圧縮応力層
3 引張応力層
CS 圧縮応力層の最大圧縮応力値
CT 引張応力の最大値
DOC 圧縮応力層の深さ
S4 サンプリング工程
S5 予測モデル作成工程
S7 測定工程
S8 推定工程
T 強化ガラスの厚さ
1a 強化ガラスの主表面
1b 強化ガラスの端面
2 圧縮応力層
3 引張応力層
CS 圧縮応力層の最大圧縮応力値
CT 引張応力の最大値
DOC 圧縮応力層の深さ
S4 サンプリング工程
S5 予測モデル作成工程
S7 測定工程
S8 推定工程
T 強化ガラスの厚さ
Claims (25)
- 複数回のイオン交換処理により形成された圧縮応力層における複数の応力特性のうち、一部の応力特性に基づいて他の応力特性を推定する、強化ガラスの応力特性推定方法であって、
前記圧縮応力層を有するサンプル強化ガラスにおける前記複数の応力特性を教師データとして取得するサンプリング工程と、
前記教師データに基づいて、前記一部の応力特性と前記他の応力特性との関係を示す予測モデルを演算処理装置により作成する予測モデル作成工程と、
前記圧縮応力層を有する推定対象の強化ガラスにおける前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する入力データとして取得する測定工程と、
前記測定工程によって取得された前記入力データを前記予測モデルに入力し、前記演算処理装置によって前記他の応力特性に係る出力データを取得する推定工程と、を備え、
前記他の応力特性は、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を含むことを特徴とする、強化ガラスの応力特性推定方法。 - 前記推定対象の強化ガラスおよび前記サンプル強化ガラスは、表面を有する板状またはシート状であり、
前記一部の応力特性は、前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を含む、請求項1に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。 - 前記強化ガラスは、前記強化ガラスの厚さ方向における中央位置に引張応力層を有しており、
前記一部の応力特性は、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)を含み、
前記他の応力特性は、前記引張応力層における引張応力の最大値(CT)を含む、請求項2に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。 - 前記サンプリング工程は、
前記複数回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理が行われた前記サンプル強化ガラスに係る前記複数の応力特性を第1教師データとして取得する第1サンプリング工程と、
前記複数回のイオン交換処理のうち、最終回のイオン交換処理が行われた前記サンプル強化ガラスに係る前記複数の応力特性を最終教師データとして取得する最終サンプリング工程と、を含み、
前記予測モデル作成工程では、前記第1教師データと前記最終教師データとに基づいて前記予測モデルを作成し、
前記測定工程は、
前記複数回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理が行われた前記推定対象の強化ガラスに係る前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する第1入力データとして取得する第1測定工程と、
前記複数回のイオン交換処理のうち、最終回のイオン交換処理が行われた前記推定対象の強化ガラスに係る前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する最終入力データとして取得する最終測定工程と、を含み、
前記推定工程では、前記測定工程によって取得された前記第1入力データと前記最終入力データとを前記予測モデルに入力し、前記他の応力特性に係る出力データを取得する、請求項3に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。 - 前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理である、請求項4に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
- 前記推定工程では、前記一部の応力特性を説明変数とし、前記他の応力特性を目的変数とした回帰分析により、前記予測モデルとしての回帰式及びその定数を取得する、請求項3に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
- 前記回帰式は、一次式である、請求項6に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
- 前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)及び前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を前記説明変数とし、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(1)を含む、請求項7に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
DOC=aCS+bDOL+c ・・・(1)
ここで、a~cは定数である。 - 前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)及び前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を前記説明変数とし、前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(2)を含む、請求項7又は8に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
CT=dCS+eDOL+f ・・・(2)
ここで、d~fは定数である。 - 前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、
前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)と、前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)と、前記強化ガラスの厚さ(T)とを前記説明変数とし、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(4)を含む、請求項7に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
DOC=aT+bCS+cDOL+d ・・・(4)
ここで、a~dは定数である。 - 前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、
前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)と、前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)と、前記強化ガラスの厚さ(T)とを前記説明変数とし、前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(5)を含む、請求項7又は10に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
CT=eT+fCS+gDOL+h ・・・(5)
ここで、e~hは定数である。 - 前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、
前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(7)を含む、請求項7に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
DOC=aCS1st+bDOL1st+cCS2nd+dDOL2nd+e
・・・(7)
ここで、a~eは定数である。 - 前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、
前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(8)を含む、請求項7又は12に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
CT=fCS1st+gDOL1st+hCS2nd+iDOL2nd+j
・・・(8)
ここで、f~jは定数である。 - 前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、
前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、
前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、
前記強化ガラスの厚さ(T)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(10)を含む、請求項7に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
DOC=aT+bCS1st+cDOL1st+dCS2nd+eDOL2nd+f
・・・(10)
ここで、a~fは定数である。 - 前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、
前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、
前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、
前記強化ガラスの厚さ(T)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(11)を含む、請求項7又は14に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
CT=gT+hCS1st+iDOL1st+jCS2nd+kDOL2nd+l
・・・(11)
ここで、g~lは定数である。 - 前記回帰式は、多次式である、請求項6に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
- 前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)及び前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を前記説明変数とし、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(13)を含む、請求項16に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
DOC=a(CS+b)2+c(DOL+d)2+e ・・・(13)
ここで、a~eは定数である。 - 前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)及び前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)を前記説明変数とし、前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(14)を含む、請求項16又は17に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
CT=f(CS+g)2+h(DOL+i)2+j ・・・(14)
ここで、f~jは定数である。 - 前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、
前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、
前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散の深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、
前記強化ガラスの厚さ(T)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの圧縮応力層の深さ(DOC)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(16)を含む、請求項16に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
DOC=a(T+b)2+c(CS1st+d)2+e(DOL1st+f)2
+g(CS2nd+h)2+i(DOL2nd+j)2+k ・・・(16)
ここで、a~kは定数である。 - 前記一部の応力特性は、前記強化ガラスの厚さ(T)を含み、
前記複数回のイオン交換処理は、2回のイオン交換処理であり、
前記2回のイオン交換処理のうち、初回のイオン交換処理後であって最終回である2回目のイオン交換処理前における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS1st)及び前記初回のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL1st)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスに係る前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS2nd)及び前記最終回である2回目のイオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL2nd)を前記説明変数とし、
前記強化ガラスの厚さ(T)を前記説明変数とし、
前記最終回である2回目のイオン交換処理後における前記強化ガラスの前記引張応力の最大値(CT)を前記目的変数としたとき、
前記回帰式は、下記の式(17)を含む、請求項16又は19に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
CT=l(T+m)2+n(CS1st+o)2+p(DOL1st+q)2
+r(CS2nd+s)2+t(DOL2nd+u)2+v ・・・(17)
ここで、l~vは定数である。 - 前記回帰式は、前記圧縮応力層における最大圧縮応力値(CS)と、前記イオン交換処理により導入されたKイオンの前記表面からの拡散深さ(DOL)との積項(CS×DOL)を前記説明変数として含む、請求項16に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。
- 前記推定対象の強化ガラスは、ガラス組成として、Na2Oと、Li2Oとを含有し、
前記圧縮応力層は、前記イオン交換処理により導入されたKイオンに起因する圧縮応力層と、前記イオン交換処理により導入されたNaイオンに起因する圧縮応力層とを含み、
前記サンプリング工程では、前記一部の応力特性を、光導波効果を利用する表面応力計によって測定し、前記他の応力特性を散乱光光弾性応力計によって測定する、請求項1から21のいずれか1項に記載の強化ガラスの応力特性推定方法。 - 複数回のイオン交換処理により形成された圧縮応力層における応力特性を推定するために用いられる予測モデルを作成する、強化ガラスの応力特性推定用モデルの作成方法であって、
前記予測モデルは、前記圧縮応力層における複数の応力特性のうち、一部の応力特性に基づいて他の応力特性を推定するために用いられるモデルであり,
前記圧縮応力層を有するサンプル強化ガラスにおける前記複数の応力特性を教師データとして取得するサンプリング工程と、
前記教師データに基づいて、前記一部の応力特性と前記他の応力特性との関係を示す前記予測モデルを演算処理装置により作成する予測モデル作成工程と、を備える応力特性推定用モデル作成方法。 - 請求項23に記載の応力特性推定用モデル作成方法により予め用意された予測モデルを用いて強化ガラスの応力特性を推定する応力特性推定方法であって、
前記圧縮応力層を有する推定対象の強化ガラスにおける前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する入力データとして取得する測定工程と、
前記測定工程によって取得された前記入力データを前記予測モデルに入力し、前記他の応力特性に係る出力データを取得する推定工程と、を備え、
前記他の応力特性は、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を含むことを特徴とする、強化ガラスの応力特性推定方法。 - 複数回のイオン交換処理により形成された圧縮応力層における複数の応力特性のうち、一部の応力特性に基づいて他の応力特性を推定する、強化ガラスの応力特性推定方法であって、
前記一部の応力特性と前記他の応力特性との関係を示す予測モデルによる演算処理を実行可能な演算処理装置によって、前記他の応力特性を推定する推定工程と、
前記圧縮応力層を有する推定対象の強化ガラスにおける前記一部の応力特性を、前記予測モデルに対する入力データとして取得する測定工程と、を備え、
前記他の応力特性は、前記圧縮応力層の深さ(DOC)を含み、
前記推定工程では、前記測定工程によって取得された前記入力データを前記予測モデルに入力し、前記演算処理装置によって前記他の応力特性としての前記圧縮応力の深さ(DOC)に係る出力データを取得することを特徴とする、強化ガラスの応力特性推定方法。
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