特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和2年9月1日に、EiC 電子情報通信学会 2020年ソサイエティ大会講演論文集(DVD及びWEB公開),B-1-5(一般社団法人電子情報通信学会)にて公開 (2)令和2年9月17日に、EiC 電子情報通信学会 2020年ソサイエティ大会,WEB開催(Zoom)にて発表
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、コードブック型のビームフォーミング制御を行う多素子アンテナを有する複数の基地局の複数基地局間連携ビームフォーミング制御技術におけるビーム選択計算量を削減することができる移動通信システムである。
図1は、本発明の一実施形態に係る移動通信システムにおけるセル構成の一例を示す説明図である。図1において、本実施形態の移動通信システムは、対象エリア内に複数のセル20Aを形成するように配置された複数の基地局20を備えている。なお、図1では基地局数が5の場合について示しているが、基地局数は2~4でもよいし、又は、6以上であってもよい。
各基地局20は、自局のセル20A内の通信品質であるスループットを向上させるために、多素子アンテナ201を有し、セル20A内の複数の移動可能な端末10のそれぞれに対して比較的狭いビーム幅の複数のビーム20Bを向けるように制御するビームフォーミング制御を行うことができる。なお、図1では各基地局20のビーム数が4の場合について示しているが、ビーム数は2~3でもよいし、又は、5以上であってもよい。また、図1中の実線で示したビーム20Bは、基地局20で選択して形成可能な複数のビームの候補のうち、実際に端末10との通信に選択して使用されているビームであり、破線で示したビーム20Bは端末10との通信に使用されていないビームである。
本実施形態におけるビームフォーミング制御は、コードブックに基づいて複数のビームを制御するコードブック型のビームフォーミング制御である。コードブックは、複数の基地局20それぞれの指向性の方向が決められた複数組のビームの候補に対する複数組のプリコーディングウェイト行列の候補の情報を含む。プリコーディングウェイト行列は、無線信号の送信時又は受信時に多素子アンテナ201に設定する位相及び振幅の制御量を示す行列である。
基地局20は、マクロセルを形成する。マクロセル基地局であってもよいし、スモールセル基地局等の他のサイズのセルを形成する基地局であってもよい。また、基地局20は、eNodeB(evolved Node B:eNB)、gNodeB(gNB)、en-NodeB(en-gNB)、アクセスポイント等と呼ばれる無線通信装置であってもよい。
本実施形態の基地局20を含む無線ネットワーク構成は、特定の構成に限定されない。例えば、図1に例示する無線ネットワーク構成はD-RAN(分散型無線アクセスネットワーク)構成であり、図中の各基地局20は、多素子アンテナ201及び無線送受信装置と、ベースバンド信号処理装置とを備える。ベースバンド信号処理装置は、例えば、コードブック型のビームフォーミング制御により形成される複数のビームにより複数の端末10との間で下りリンクのMassive MIMO伝送を行うための構成を有する。例えば、ベースバンド信号処理装置は、直並列変換部、前記コードブックの情報に基づいてプリコーディング処理を行うプリコーディング部、前記コードブックの情報を記憶するコードブック記憶部、各部を制御する制御部などを有する。
なお、無線ネットワーク構成はC-RAN(集中型無線アクセスネットワーク)構成であってもよい。この場合は、図中の複数の基地局20の位置に多素子アンテナ及び無線送受信装置を有する複数のRRH(遠隔無線ヘッダ)(「張り出し基地局」、「光張り出し装置」ともいう。)が配置される。複数のRRHは、光ファイバ、基地局間インターフェース(例えばLTEではx2インターフェース)等の有線通信回線又は無線通信回線などの通信回線を介して、各基地局20のベースバンド信号処理を行う共通のBBU(ベースバンドユニット)に接続されている。
端末10は、携帯電話機、スマートフォン、移動通信機能を有する携帯パソコン等であり、ユーザ装置(UE)、移動局、移動機、携帯型の通信端末とも呼ばれる。端末10は、自動車やドローンなどの移動体に組み込まれたモジュール状の移動局であってもよいし、IoT(Internet of Things)向けデバイスの端末装置であってもよい。
端末10は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより基地局20との間の無線通信等を行うことができる。
端末10は、セル20A内に位置するときには、そのセル20Aに対応する基地局20を介して移動通信網側と通信する。また、端末10は、複数のセル20Aが重複しているセル境界エリアに移動すると、その複数のセル20Aのいずれかの基地局20を介して移動通信網側と通信する。
端末10は、例えば、在圏するセル20Aの基地局20との間で下りリンクのMIMO伝送を行うためのアンテナ、無線送受信装置、分配器、データ復号部、並直列変換部、伝搬路推定部、フィードバック情報生成部、制御部などを有する。フィードバック情報は、例えば、端末10が基地局20から受信した無線信号の受信電力(RSRP)等の情報である。フィードバック情報は、端末10が測定した測定報告(MR)として、端末10から、端末10が接続しているセル20Aの基地局20に送信される。
各基地局20と端末10との間の無線通信には、同一無線伝送方式及び同一周波数帯(例えば、6GHz以下の周波数)が使用されている。無線伝送方式としては、例えば、LTE(Long Term Evolution)やLTE-Advancedの通信方式、第4世代移動通信システム(4G)の通信方式、第5世代移動通信システム(5G)の通信方式、及びそれ以降の次世代の移動通信システムの通信方式などを採用することができる。
また、各基地局20は、例えばCPUやメモリ等を有するコンピュータ装置、コアネットワークに対する外部通信インターフェース部、無線通信部などのハードウェアを用いて構成され、所定のプログラムが実行されることにより、各種の通信を行うことができる。例えば、各基地局20は、端末10との間の無線通信やコアネットワーク側との通信を行う。また、各基地局20は、有線又は無線の制御用通信網を介して後述の基地局間連携ビームフォーミング制御装置(以下「基地局間連携制御装置」という。)30との通信を行う。また、各基地局20は、有線又は無線の基地局間通信網を介して自局以外の他の基地局との通信を行う。
上記構成の移動通信システムにおいて、各基地局20で形成されるビーム20Bにおける利得が高い多素子アンテナ201を用いているため、隣接していない基地局間での干渉が発生するおそれがある。このような隣接していない基地局間での干渉(遠方セルからの干渉)を考慮して広域の対象エリアにおける複数のセル20Aに在圏する全端末の合計スループットは劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善できる技術が望まれる。
そこで、本実施形態では、上記課題を解決するため、基地局間連携制御装置30により、対象エリアに複数のセル20Aを形成する複数の基地局20の間で連携した基地局間連携ビームフォーミング制御(以下「基地局間連携BF制御」ともいう。)を行う。
図1のD-RAN(分散型無線アクセスネットワーク)構成の場合は、基地局間連携制御装置30は、基地局間ネットワークの通信回線40を介して各基地局20に接続される。また、C-RAN(集中型無線アクセスネットワーク)構成の場合は、基地局間連携制御装置30は、例えば、通信回線を介して各基地局20に共通のBBUに接続される。
基地局間連携制御装置30は、例えば単一又は複数のコンピュータ装置で構成され、所定のプログラムが実行されることにより、次のA~Eの手段として機能する。
A.複数の基地局20のそれぞれについて、セル20A内の複数のビーム20Bに対応する複数の端末10が測定して基地局20にフィードバックした複数の受信品質としての受信電力(例えば、RSRP)のフィードバック情報を基地局20から取得する情報取得手段。
B.複数の基地局20と複数のビーム20Bとの組み合わせからなる複数のビーム組み合わせのそれぞれについて、複数の端末10からフィードバックされた受信電力(例えば、RSRP)のフィードバック情報に基づいて、複数の端末10に対する複数のスループットを計算するスループット計算手段。
C.前記複数のビーム組み合わせのそれぞれについて計算した複数の端末10に対する複数のスループットの計算結果に基づいて、前記複数のビーム組み合わせのいずれか1つのビーム組み合わせを選択する選択手段。
D.複数の基地局20のそれぞれに、前記選択したビーム組み合わせに関する情報を送信する情報送信手段。
E.前記スループットの計算結果に基づいてビーム組み合わせを選択する選択処理を所定の時間間隔Δtで繰り返して実行する場合、複数の基地局それぞれについて、選択可能な候補ビームの数を制限しない初回のビーム組み合わせの選択処理の後の2回目以降のビーム組み合わせの選択処理において、直前のビーム組み合わせの選択処理の結果に基づいて選択可能な候補ビームの数を制限する候補ビーム制御手段。
複数の基地局20のそれぞれに送信する前記選択したビーム組み合わせに関する情報は、例えば、基地局20に記憶されているコードブックに含まれる複数組のプリコーディングウェイト行列の候補のうち、前記選択したビーム組み合わせに対応する当該基地局20に対する複数組のビームを形成するためのプリコーディングウェイト行列を指定する情報である。
図2は、本実施形態に係る基地局間連携BF制御の一例を示すフローチャートである。図2において、まず、基地局間連携制御装置30は、複数の基地局20のそれぞれについて、セル20A内の複数のビーム20Bに対応する複数の端末10が測定して基地局20にフィードバックした複数の受信電力(RSRP)のフィードバック情報を取得する(S101)。
次に、基地局間連携制御装置30は、複数の基地局20と複数のビーム20Bとの組み合わせからなる複数のビーム組み合わせについて、ビーム組み合わせごとに、複数の端末10からフィードバックされた受信電力(RSRP)のフィードバック情報に基づいて、複数の端末10に対する複数の受信SINR(信号対雑音及び干渉電力比)を計算する(S102)。
次に、基地局間連携制御装置30は、複数の端末10に対する複数のSINRの計算結果に基づいて、複数の端末10に対する複数のスループット(例えば、シャノン容量)を計算する(S103)。
次に、基地局間連携制御装置30は、複数の端末10に対する複数のスループット(例えば、シャノン容量)の計算結果に基づいて、複数のビーム組み合わせのいずれか1つのビーム組み合わせを選択する(S104)。
次に、基地局間連携制御装置30は、複数の基地局20のそれぞれに、前記選択したビーム組み合わせに関する情報(例えば、コードブックにおけるプリコーディングウェイト行列を指定する情報)を送信する(S105)。
まず、連携対象が2基地局及び各基地局が3ビームを形成する場合のビーム組み合わせ選択処理について説明する。
図3は、ビーム組み合わせ選択処理(図2のS104)の一例を示すフローチャートである。図3は、各端末10の最低スループットを最大化するビーム制御アルゴリズム(最低スループット最大化法)の例である。
なお、図3の例では、対象エリアに配置された互いに隣接する連携対象の2つの基地局20がそれぞれ3つのビーム20Bを形成し、各基地局20のセル20Aに端末10が在圏している場合の例である。後述の図4及び図5の例も同様である。
表1は、図3のビーム制御アルゴリズムにおける端末10についてスループットを計算した数値例及びビーム組み合わせ選択例を示している。なお、表1並びに後述の表2、表3では、複数の基地局20を基地局#1、基地局#2と表記し、各基地局20が形成する互いに異なる3方向のビーム20Bをビーム#1、ビーム#2、ビーム#3と表記する。また、各基地局20のセル20Aに在圏する端末10を端末#1、端末#2と表記する。
図3において、基地局間連携制御装置30は、複数の基地局20に対する33=9通りのビーム組み合わせ1~9のすべてについて、ビーム組み合わせごとに、最低スループット(表1の右端欄)を計算する(S201)。
次に、基地局間連携制御装置30は、全ビーム組み合わせ1~9のうち、最低スループットが最大になるビーム組み合わせを選択する(S202)。表1の例では、太枠線で囲んだように最低スループットが最大(14)になるビーム組み合わせ6を選択する。すなわち、基地局#1についてはビーム#2を選択し、基地局#2についてはビーム#3を選択する。
図4は、ビーム組み合わせ選択処理(図2のS104)の他の例を示すフローチャートである。図4は、前述の最低スループット最大化法において、若干のスループット低下を許容して、移動通信システム全体の合計スループットも併せて最大化するビーム制御アルゴリズム(修正最低スループット最大化法)の例である。
表2は、図4のビーム制御アルゴリズムにおける端末10についてスループットを計算した数値例及びビーム組み合わせ選択例を示している。
図4において、基地局間連携制御装置30は、複数の基地局20に対する33=9通りのビーム組み合わせ1~9のすべてについて、ビーム組み合わせごとに、最低スループット(表2の右から2番目の欄)と、複数の端末10に対する複数のスループットを合計した合計スループット(表2の右端欄)を計算する(S301)。
次に、基地局間連携制御装置30は、表2中の太枠線で囲んだように、全ビーム組み合わせ1~9のうち、最低スループットが最大になるビーム組み合わせ6と、最低スループットが最大の値(表2の例では、14)から所定値ε(図示の例では、1)だけ低い許容下限スループット(表2の例では、13)以上のビーム組み合わせ2,9とを仮選択する(S302)。
次に、基地局間連携制御装置30は、仮選択した複数のビーム組み合わせ2,6,9の中から、合計スループット(表2の右端欄)が最大になるビーム組み合わせを選択する(S303)。表2の例では、スループットの合計が最大(31)になるビーム組み合わせ2を選択する。すなわち、基地局#1についてはビーム#1を選択し、基地局#2についてはビーム#2を選択する。
図5は、ビーム組み合わせ選択処理(図2のS104)の更に他の例を示すフローチャートである。図5は、最低スループットと合計スループットを掛けた評価値を最大化することで上記図4の修正最低スループット最大化法と同等の効果を得ることができるビーム制御アルゴリズム(評価値(最低スループットと合計スループットの積)最大化法)の例である。
表3は、図5のビーム制御アルゴリズムにおける端末10についてスループットを計算した数値例及びビーム組み合わせ選択例を示している。
図5において、基地局間連携制御装置30は、複数の基地局20に対する33=9通りのビーム組み合わせ1~9のすべてについて、ビーム組み合わせごとに、最低スループット(表3の右から3番目の欄)と、複数の端末10に対する複数のスループットを合計した合計スループット(表3の右から2番目の欄)を計算する(S401)。
次に、基地局間連携制御装置30は、全ビーム組み合わせ1~9について、ビーム組み合わせごとに、最低スループットと合計スループットとを掛けた評価値(表3の右端の欄)を計算する(S402)。
次に、基地局間連携制御装置30は、全ビーム組み合わせ1~9の中から、評価値(表3の右端欄)が最大になるビーム組み合わせを選択する(S403)。表3の例では、評価値が最大(411.75)になるビーム組み合わせ9を選択する。すなわち、基地局#1についてはビーム#3を選択し、基地局#2についてはビーム#3を選択する。
図3~図5のビーム組み合わせ選択処理の例によれば、互いに隣接する連携対象の2つの基地局20が対象エリアに配置されている場合に、複数の基地局20のセル20Aに在圏する複数の端末10の合計スループットは劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善することができる。
次に、連携対象が5基地局及び各基地局が5ビームを形成する場合のビーム組み合わせ選択処理について説明する。基地局数が5及び各基地局のビーム数が5の場合、全ビーム組み合わせ数Nは3125(=55)通りになる。以下、5基地局は基地局#1~#5と表記し、各基地局が形成する5ビームはビーム#1~#5と表記し、基地局#1~#5のセルそれぞれに在圏する端末を端末#1~#5と表記する。
前述の図2のS101~S103に示すように、ビーム組み合わせ選択処理の事前処理として、基地局間連携制御装置30は、受信電力(RSRP)のフィードバック情報の取得と、SINR(信号対雑音及び干渉電力比)の計算と、スループット(シャノン容量)の計算を行う。
まず、基地局間連携制御装置30は、基地局#1~#5のそれぞれについて、ビーム#1~#5に対応する端末#1~#5が測定して基地局#1~#5にフィードバックした複数の受信電力(RSRP)のフィードバック情報を取得する。
表4は、基地局#1~#5の各ビーム#1~#5について、各端末#1~#5で測定されて基地局#1~#5に報告された受信電力(RSRP)[dBm]のフィードバック情報をまとめて記載した数値例である。
次に、基地局間連携制御装置30は、複数の基地局#1~#5と複数のビーム#1~#5との組み合わせからなる全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)について、端末#1~#5からフィードバックされた受信電力(RSRP)のフィードバック情報に基づいて、端末#1~#5に対するSINR(信号対雑音及び干渉電力比)を計算する。表5は、全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)について、各端末#1~#5のSINR(信号対雑音及び干渉電力比)を計算した計算結果をまとめて記載した数値例である。
次に、基地局間連携制御装置30は、複数の端末10に対する複数のSINRの計算結果に基づいて、複数の端末10に対する複数のスループット(シャノン容量)を計算する。表6は、全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)について、ビーム組み合わせ毎に各端末#1~#5のスループット(シャノン容量)[bps]を計算した数値例である。
次に、前述の図2のS104に示すように、基地局間連携制御装置30は、端末#1~#5に対する複数のスループット(シャノン容量)の計算結果に基づいて、全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)から、いずれか1つのビーム組み合わせを選択する。このビーム組み合わせ選択処理としては、前述の図3~図5に示すビーム制御アルゴリズムを用いることができる。
表7は、前述の図3のビーム制御アルゴリズム(最低スループット最大化法)によってビーム組み合わせを選択する場合の数値例を示している。本例では、基地局間連携制御装置30は、全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)について、ビーム組み合わせごとに、最低スループット(表7の右端欄)を計算し(図3のS201)、全ビーム組み合わせ#1~#Nのうち、太枠線で囲んだように最低スループットが最大(2.4bps)になるビーム組み合わせ#kを選択する(図3のS202)。
表8は、前述の図4のビーム制御アルゴリズム(修正最低スループット最大化法)によってビーム組み合わせを選択する場合の数値例を示している。本例では、基地局間連携制御装置30は、全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)について、ビーム組み合わせごとに、最低スループット(表8の右から2番目の欄)と、複数の端末#1~#5に対する複数のスループットを合計した合計スループット(表8の右端欄)を計算する(図4のS301)。次に、基地局間連携制御装置30は、表8中の太枠線で囲んだように、全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)のうち、最低スループットが最大になるビーム組み合わせ#kと、最低スループットが最大の値(表8の例では、2.4bps)から所定値ε(図示の例では、0.5bps)だけ低い許容下限スループット(表8の例では、1.9bps)以上のビーム組み合わせ#1,#2,#l,#m,#nを仮選択する(図4のS302)。そして、基地局間連携制御装置30は、仮選択した複数のビーム組み合わせ#1,#2,#k,#l,#m,#nの中から、合計スループット(表8の右端欄)が最大(18.9bps)になるビーム組み合わせ#lを選択する(図4のS303)。
表9は、前述の図5のビーム制御アルゴリズムによってビーム組み合わせを選択する場合の数値例を示している。本例では、基地局間連携制御装置30は、全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)について、ビーム組み合わせごとに、最低スループット(表9の右から3番目の欄)と、端末#1~#5に対する複数のスループットを合計した合計スループット(表9の右から2番目の欄)を計算する(図5のS401)。更に、基地局間連携制御装置30は、全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)について、ビーム組み合わせごとに、最低スループットと合計スループットとを掛けた評価値(表9の右端の欄)を計算する(図5のS402)。そして、基地局間連携制御装置30は、全ビーム組み合わせ#1~#N(N=3125)の中から、評価値(表9の右端欄)が最大(41.1bps)になるビーム組み合わせ#mを選択する(図5のS403)。
表4~表9のビーム組み合わせ選択処理の例によれば、連携対象の基地局#1~#5が対象エリアに配置されている場合に、基地局#1~#5のセルに在圏する端末#1~#5の合計スループットは劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善することができる。
次に、本実施形態の基地局間連携BF制御は次のように一般化したモデルで説明することができる。ここで、基地局数をN
BSとし、連携対象の基地局(連携基地局)の集合を、
と定義する。また、各基地局で利用可能なビーム数をLとし、選択可能なビームの組み合わせ数を
とし、ビームの全組み合わせの集合を
と定義する。
各基地局に位置する端末は連携基地局からの全てのビームの受信電力を理想的に測定できるものとすると、k番目のビーム組み合わせでのi番目の端末#iの受信SINRは、次式(1)で計算できる。
ここで、式(1)中の
は、k番目のビーム組み合わせを選択した場合の基地局#jからの端末#iの受信電力であり、n
iは、端末#iにおける雑音電力である。
上記受信SINRに基づいて、k番目のビーム組み合わせでのi番目の端末#iのスループット(シャノン容量)
は、次式(2)を用いて推定(計算)することができる。
ここで、ビームの組み合わせにより各端末のスループットは大きく異なる。ビーム組み合わせの選択アルゴリズムとしては、前述の各端末の最低スループットを最大化するビーム制御アルゴリズム(最低スループット最大化法)、最低スループット最大化法に対して若干の低下を許容してシステム全体のスループットを併せて増大させるビーム制御アルゴリズム(修正最低スループット最大化法)と、最低スループットと合計スループットとを掛けた評価値を最大化するビーム制御アルゴリズム(評価値最大化法)を用いることができる。
例えば、上記最低スループット最大化法は、次に示すステップ1で実現することができる。
ステップ1:集合Sに対して、連携対象の基地局のセルに在圏する端末のうち最も低い推定スループットが最大となるビーム組み合わせkFinalを、次の式(3)及び式(4)で選択することができ、そのときの最低スループット最大化後のスループットCmaxminは、次の式(5)になる。
また、上記修正最低スループット最大化法は、上記ステップ1の式(3)及び式(4)と、次のステップ2で実現することができる。
ステップ2:若干のスループット低下を許容するため、上記最低スループット最大化後のスループットCmaxminよりもεだけ低いスループットC’maxminを設定する。設定した最低スループットよりも最低スループットが高くなるビーム組み合わせS’を決定し、ビーム組み合わせS’の中から、端末の合計スループットが最大となるビーム組み合わせkFinalを決定する。
上記ビーム組み合わせkFinalは、次の式(6)~式(8)で求めることができる。
また、上記評価値最大化法では、次式(9)で、最適なビーム組み合わせkFinalを決定することができる。
上記構成の基地局間連携制御装置30の基地局間連携BF制御において、連携制御対象の基地局20の数や各基地局について選択可能な候補ビームの数が増えると、各基地局20に対するビーム選択にかかる計算量が増加する。例えば、連携制御対象の基地局20の数をNとし、各基地局について選択可能な候補ビームの数をMとすると、複数の基地局20の全体に対するビームの組み合わせ数はMNパターンになり、前述の図3のビーム組み合わせ選択処理の場合、MNパターンのすべてについて各端末10のスループットの計算及び各端末10の最低スループットの計算が必要になる。そのため、各基地局20に対するビーム選択にかかる計算量が指数関数的に増加する。
一方で、上記構成の移動通信システムでは、次の図6に例示するように、端末10が比較的高速に移動しても基地局20が端末10との通信に用いるビームの切り替わりは発生しにくい。
図6は、基地局20のビーム20Bと移動中の端末10と関係の一例を示す説明図である。図6において、基地局20のビーム20Bのビーム幅θhalf=10°であり、端末10がセル半径(R=1000m)の中間(基地局20から500mの位置)の地点を時速40km(約10m/s)で移動する場合を考える。基地局20のアンテナ201から移動前(移動直前)の端末10を見た俯角θ1と1秒後の基地局20から端末10を見た俯角θ2の変位幅Δθ(θ1-θ2)は約0.1°である(図示の例では、移動前の俯角θ1=5.7°、移動後の俯角θ2=5.6°)。Δθ≪θhalfであるため、移動前(直前)に使用したビームと同じビームを再度使用しても、すなわち、ビームの切り替えを行わなくても、基地局20と端末10との間の通信の特性は変わらない可能性が高い。
そこで、本実施形態では、ビーム組み合わせを選択する選択処理を所定の時間間隔Δtで繰り返して実行する場合、2回目以降のビーム組み合わせの選択処理において、直前に選択されたビーム、又は、そのビームに近接するビームが選択される可能性が高いことを考慮して、ビーム組み合わせの選択処理において選択可能な候補ビームの数を制限する候補ビーム制御を行っている。この制御により、基地局間連携制御装置30における基地局間連携BF制御時のビーム組み合わせの探索数を削減し、計算量を削減している。
ここで、2回目以降のビーム組み合わせの選択処理を繰り返し実行する時間間隔Δtは、一定であってもよいし、様々な条件に基づいて変更してもよい。例えば、端末10が所定距離移動したタイミングごとにビーム組み合わせの選択処理を実行してもよい。
図7(a)及び(b)は、本実施形態に係る基地局間連携制御装置30における候補ビーム制御及びその効果の一例を示す説明図である。ここで、連携制御対象の基地局20の数をN(図示の例では2)とし、初回のビーム組み合わせ選択処理における各基地局20について選択可能な候補ビームの数をMとする。
図7(a)に示す初回のビーム組み合わせ選択処理では、MNパターンの組み合わせに対して、前述の図3~図5に例示したビーム組み合わせ選択処理のいずれかを実行する。図7(a)に示したように候補ビームの数Mが5の場合は、5Nパターンの組み合わせに対して、前述の図3~図5に例示した3種類のビーム組み合わせ選択処理のいずれかを実行する。
図7(b)に示す2回目のビーム組み合わせ選択処理では、初回のビーム組み合わせ選択処理で選択されたビーム及びそれに近いビーム(例えば、図示の例では初回に選択されたビームとそれに隣接する2つのビームを含む3つの候補ビーム)に制限し、その制限した数M’(<M)の候補ビームについてM’Nパターンの組み合わせに対して、前述の図3~図5に例示したビーム組み合わせ選択処理のいずれかを実行する。図7(a)に示した候補ビームの数Mが5の場合は、5Nパターンの組み合わせに対して、前述の図3~図5に例示した3種類のビーム組み合わせ選択処理のいずれかを実行する。
上記候補ビームの数をMからM’(<M)に制限することにより、ビーム組み合わせ選択処理を行う対象がMNパターンに対してM’Nパターンとなるため、(M’/M)N倍の計算量の削減を実現できる。例えば、候補ビームの数を5(=M)から3(<M)に制限することにより、ビーム組み合わせ選択処理を行う対象が5Nパターンから3Nパターンになるため、(3/5)N倍(連携対象の基地局数Nが5の場合、約8/100倍)の計算量の削減を実現できる(約92%の削減効果)。
図8は、本実施形態に係る基地局間連携制御装置30における候補ビーム制御の制御アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。なお、図8並びに後述の図9及び図10において、i番目の端末10を「MS#i」と記載し、j番目の基地局20を「BS#j」(j=1~N)と記載し、j番目の基地局20の候補ビームの集合及び選択可能な候補ビームの最大数をそれぞれ「Mj」及び「L」と記載する。
また、各基地局20において選択可能な候補ビームは空間的な並び順に連続したインデックスとしてビーム識別番号(1~L)が付与され、j番目の基地局20の候補ビーム及び選択ビームそれぞれのビーム識別番号を「lj」及び「l’j」と記載する。
また、直前の候補ビーム制御で選択された選択ビームl’jを基準にした候補ビームの数を制限する候補ビームの探索範囲を規定するための探索範囲指定パラメータを「Δl」と記載する。例えば、この範囲指定パラメータΔlが1の場合は、選択ビームl’jとその前後1ビーム(l’j-1,l’j+1)を含む3つのビームが、次のビーム組み合わせ選択処理の候補ビームとなる。
図8において、まず、基地局間連携制御装置30は、各端末10のビーム毎及び基地局毎の受信電力情報を受信して集約する(S501)。
次に、基地局間連携制御装置30は、初回の候補ビーム制御か否かを判断し(S502)、初回の候補ビーム制御の場合(S502でYes)、各基地局20(BS#j)の候補ビームMjを次式(10)で示すように設定する(S503)。この設定は、選択可能な候補ビームのすべてに対してビーム組み合わせ制御を実行する全探索lj(=0~L)を行うための設定である。
一方、初回の候補ビーム制御ではなく2回目以降の候補ビーム制御の場合(S502でNo)、基地局間連携制御装置30は、更に、各基地局20について基地局20のセル20Aに在圏する端末10の組み合わせが、直前の候補ビーム制御における端末10の組み合わせと同じか否かを判断する(S504)。
ここで、端末10の組み合わせが同じでない場合(S504でNo)は、全端末10の合計スループットを劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善するための基地局20におけるビーム組み合わせが変化している可能性が高いので、前述のS503のように各基地局20(BS#j)の候補ビームMjが、全探索するための式(10)に設定される。これにより、端末10の組み合わせが変化した場合に、全端末の合計スループットは劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善することができる。
一方、同じ端末10の組み合わせの場合(S504でYes)は、全端末10の合計スループットを劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善するための基地局20におけるビーム組み合わせが変化している可能性が低いので、基地局間連携制御装置30は、各基地局20(BS#j)の候補ビームMjを、次式(11)で示すように候補ビームの数を制限して設定する(S505)。これにより、不要なスループットなどに計算を回避し、スループット改善のための計算量を削減することができる。
次に、基地局間連携制御装置30は、前述のS503又はS505で設定された各基地局20のセル20Aの候補ビーム(Mj)を考慮したビーム20Bの全組み合わせに対して、端末10毎にSINR及びスループットを計算する(S506)。
次に、基地局間連携制御装置30は、前述の図3~図5に例示した3種類のビーム組み合わせ選択処理のいずれかにより、各基地局20のセル20Aについてビームを選択し、BS#jのビームとしてl’jを設定する(S507)。
以上の候補ビーム制御とビーム組み合わせ選択処理を含む制御を所定の時間間隔Δtで繰り返し実行する(S501~S507)。
図9は、本実施形態に係る基地局間連携制御装置30における候補ビーム制御の制御アルゴリズムの他の例を示すフローチャートである。図9の例は、一定時間毎に定期的に、候補ビームの探索範囲を増やす場合の制御アルゴリズムの例である。
図9において、基地局間連携制御装置30は、まず、タイマーを初期設定し(t=0)、各端末10のビーム毎及び基地局毎の受信電力情報を受信して集約する(S601)。
次に、基地局間連携制御装置30は、初回の候補ビーム制御か否かを判断し(S602)、初回の候補ビーム制御の場合(S602でYes)、各基地局20(BS#j)の候補ビームMjを、前述の全探索するための式(10)に設定し(S603)、候補ビームの範囲を全探索範囲に広げてからの経過時間tのタイマーを初期化する(t=0)(S604)。
一方、初回の候補ビーム制御ではなく2回目以降の候補ビーム制御の場合(S602でNo)、基地局間連携制御装置30は、更に、各基地局20について基地局20のセル20Aに在圏する端末10の組み合わせが、直前の候補ビーム制御における端末10の組み合わせと同じか否かを判断する(S605)。
ここで、同じ端末10の組み合わせでない場合(S605でNo)、前述のS603のように各基地局20(BS#j)の候補ビームMjが、全探索するための式(10)に設定される。
一方、同じ端末10の組み合わせの場合(S605でYes)、基地局間連携制御装置30は、タイマー開始から一定時間ΔTが経過したか否かを判断し(S606)、一定時間ΔTが経過していないときは(S606でNo)、前述の候補ビームの探索範囲を規定する探索範囲指定パラメータΔlを、探索範囲を制限する所定の第1範囲指定値Δl1に設定する(S607)。
なお、S606の判断で用いる一定時間ΔTの値は基地局20毎に(セル20A毎に)異なる値に設定してもよい。
前述のS606において、一定時間ΔTが経過しているときは(S606でYes)、候補ビームの範囲を広げるために、探索範囲指定パラメータΔlを第1範囲指定値Δl1より大きな第2範囲指定値Δl2に設定し(S608)、候補ビームの範囲を広げてからの経過時間tのタイマーを初期化する(t=0)(S609)。ここで、第2範囲指定値Δl2=Lに設定した場合は、全探索を行う場合に相当する。
このように一定時間ΔTが経過しているときに候補ビームの範囲を広げることにより、前記ビーム組み合わせ選択処理で選択される選択ビームが局所解に陥らないようにすることができる。
次に、基地局間連携制御装置30は、前述のS607又はS608で設定された探索範囲指定パラメータΔlに基づいて、各基地局20(BS#j)の候補ビームMjを、前述の式(11)で示すように候補ビームの数を設定する(S610)。
図9のS611及びS612の制御アルゴリズムは、前述の図8のS506及びS507の制御アルゴリズムと同様であるので、それらの説明を省略する。
以上の候補ビーム制御とビーム組み合わせ選択処理を含む制御を所定の時間間隔Δtで繰り返し実行する(S601~S612)。
図10は、本実施形態に係る基地局間連携制御装置30における候補ビーム制御の制御アルゴリズムの更に他の例を示すフローチャートである。図10の例は、複数の基地局20のそれぞれについて、直前のビーム組み合わせ選択処理におけるいずれかの端末のスループットCが規定の閾値Cth以上劣化した場合に、再度全探索lj(=0~L)を行う制御アルゴリズムの例である。
図10において、基地局間連携制御装置30は、まず、各端末10のビーム毎及び基地局毎の受信電力情報を受信して集約する(S701)。
次に、基地局間連携制御装置30は、初回の候補ビーム制御か否かを判断し(S702)、初回の候補ビーム制御の場合(S702でYes)、各基地局20(BS#j)の候補ビームMjを、前述の全探索するための式(10)に設定する(S703)。
一方、初回の候補ビーム制御ではなく2回目以降の候補ビーム制御の場合(S702でNo)、基地局間連携制御装置30は、更に、各基地局20について基地局20のセル20Aに在圏する端末10の組み合わせが、直前の候補ビーム制御における端末10の組み合わせと同じか否かを判断する(S704)。
ここで、同じ端末10の組み合わせでない場合(S704でNo)、前述のS703のように各基地局20(BS#j)の候補ビームMjが、全探索するための式(10)に設定される。
一方、同じ端末10の組み合わせの場合(S704でYes)、基地局間連携制御装置30は、前述の候補ビームの探索範囲を規定する探索範囲指定パラメータΔlを、探索範囲を制限する所定の第1範囲指定値Δl1に設定する。
図10のS706及びS707の制御アルゴリズムは、前述の図8のS505及びS506の制御アルゴリズムと同様であるので、それらの説明を省略する。
次に、基地局間連携制御装置30は、前述の図3~図5に例示した3種類のビーム組み合わせ選択処理のいずれかにより、各基地局20のセル20Aについてビームを選択し、各端末MS#iのスループットCi
(n)を計算する(S708)。
次に、基地局間連携制御装置30は、直前の(1回前の)制御ループでの各端末MS#iのスループットをCi
(n-1)としたとき、基地局間連携制御装置30は、端末10のいずれかの直前の(1回前の)スループットをCi
(n-1)に対する今回のスループットCi
(n)の差分(スループットの低下の程度)が所定の閾値Cth以上になったとき、すなわち、端末10のいずれかのスループットが所定の閾値Cth以上に低下したか否かを判断する(S709)。
ここで、端末10のいずれかのスループットが所定の閾値Cth以上に低下していないとき(S709でNo)、基地局間連携制御装置30は、前述の図3~図5に例示した3種類のビーム組み合わせ選択処理のいずれかにより、各基地局20のセル20Aについてビームを選択し、BS#jのビームとしてl’jを設定する(S710)。
一方、端末10のいずれかのスループットが所定の閾値Cth以上に低下しているとき(S709でYes)、基地局間連携制御装置30は、候補ビームの範囲を広げるために、探索範囲指定パラメータΔlを第1範囲指定値Δl1より大きな第2範囲指定値Δl2に設定する(S711)。ここで、第2範囲指定値Δl2=Lに設定した場合は、全探索を行う場合に相当する。
なお、上記選択可能な候補ビームの数に対応する第2範囲指定値Δl2は、上記スループットの差分(Ci
(n-1)-Ci
(n))の大きさに応じて変更してもよい。例えば、上記スループットの差分(Ci
(n-1)-Ci
(n))が大きいほど、すなわち、端末10のいずれかのスループットの低下の程度が大きいほど、第2範囲指定値Δl2を大きく設定してもよい。
以上の候補ビーム制御とビーム組み合わせ選択処理を含む制御を所定の時間間隔Δtで繰り返し実行する(S701~S711)。
図10の候補ビーム制御の制御アルゴリズムによれば、連携対象の複数の基地局20のセル20Aに在圏するすべての端末10のスループットが所定の閾値Cth以上に低下しないように各基地局におけるビーム組み合わせを選択することができる。
なお、図10の候補ビーム制御の制御アルゴリズムのS709では、上記差分(スループットの低下の程度)が所定の閾値Cthよりも大きくなったとき、すなわち、端末10のいずれかのスループットが所定の閾値Cthよりも大きく低下したか否かを判断し、その判断をS710、S711の制御ステップに用いてもよい。
また、前述の図8~図10の候補ビーム制御の制御アルゴリズムにおいて、前記ビーム組み合わせの選択処理を行う時間間隔Δtの長さに応じて、前記選択可能な候補ビームの数すなわち前記探索範囲指定パラメータ(Δl、Δl1)の値を変更してもよい。
例えば、ビーム組み合わせの選択処理を行う時間間隔Δtが短い場合は、全端末10の合計スループットを劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善するための基地局20における好適なビーム組み合わせが変化している可能性が低いので、選択可能な候補ビームの数すなわち探索範囲指定パラメータ(Δl、Δl1)の値を小さくしてもよい。逆に、ビーム組み合わせの選択処理を行う時間間隔Δtが長い場合は、前記好適なビーム組み合わせが変化している可能性が高いので、選択可能な候補ビームの数すなわち探索範囲指定パラメータ(Δl、Δl1)の値を大きくしてもよい。
また、前述の図8~図10の候補ビーム制御の制御アルゴリズムにおいて、連携制御対象の複数の基地局20それぞれについて、前記選択可能な候補ビームの数すなわち前記探索範囲指定パラメータ(Δl、Δl1)の値は、基地局20に対する端末10の移動方向、基地局20と端末10との距離、及び、基地局20のセル20Aに在圏する端末10の密度を含む環境情報の少なくとも1つに基づいて変更してもよい。
例えば、基地局20を中心としたセル20A内の周方向に端末10が移動している場合や基地局20と端末10との距離が短い場合は、端末10の合計スループットを劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善するための基地局20における好適なビーム組み合わせが変化する可能性が高いので、選択可能な候補ビームの数すなわち探索範囲指定パラメータ(Δl、Δl1)の値を大きくしてもよい。逆に、基地局20を中心としたセルの径方向に端末10が移動している場合や基地局20と端末10との距離が長い場合は、端末10の合計スループットを劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善するための基地局20における好適なビーム組み合わせが変化する可能性が低いので、選択可能な候補ビームの数すなわち探索範囲指定パラメータ(Δl、Δl1)の値を小さくし、計算量の削減効果を高めてもよい。
また、基地局20のセル20Aに在圏する端末10の密度が高い都市部の環境下では、端末10の合計スループットを劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善するための基地局20における好適なビーム組み合わせが変化する可能性が高いので、選択可能な候補ビームの数すなわち探索範囲指定パラメータ(Δl、Δl1)の値を大きくしてもよい。逆に、基地局20のセル20Aに在圏する端末10の密度が低い郊外又は過疎地などの環境下では、端末10の合計スループットを劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善するための基地局20における好適なビーム組み合わせが変化する可能性が低いので、選択可能な候補ビームの数すなわち探索範囲指定パラメータ(Δl、Δl1)の値を小さくし、計算量の削減効果を高めてもよい。
以上、本実施形態によれば、隣接基地局間での干渉だけでなく隣接していない基地局間での干渉(遠方セルからの干渉)を考慮して広域の対象エリアにおける複数のセル20Aに在圏する全端末の合計スループットは劣化させずにセル境界のスループットを大きく改善できるとともに、そのスループット改善のための計算量を削減することができる。
なお、本明細書で説明された処理工程並びに通信システム、無線装置、基地局及び端末(ユーザ装置、移動局、移動機)の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの処理工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種の無線通信装置、無線中継装置、NodeB、サーバ、ゲートウェイ、交換機、コンピュータ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。