JP2022087708A - 車両用駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】アクセル開度信号をオフ状態にしたときのオフアップ変速時における減速度の変動を抑制できる車両用駆動装置を提供する。【解決手段】入力部材に入力された回転を変速して出力部材から出力する有段変速機構と、アクセル開度信号がオフ状態であり、かつ、自動変速機が1速段及び2速段のいずれかを形成した状態である場合に、モータによる回生制御を実行するECUとを備える。ECUは、アクセル開度信号がオン状態からオフ状態に切り替わることに伴いオフアップ変速を判断した際に、自動変速機を、1速段から2速段に変速するオフアップ変速を実行し(ステップS1)、オフアップ変速の実行中は、モータによる回生制御を実行せず(ステップS3)、車輪の回転速度を制動するブレーキ装置に、回生制御に応じた制動力分の減速度を達成するように指令を送信する(ステップS2)。【選択図】図2

Description

本開示は、自動車等の車両に搭載される回転電機及び有段変速機構を備えた車両用駆動装置に関する。
従来、例えば、車両に用いて好適な車両用駆動装置として、駆動源としての回転電機(モータ)と、有段変速機構とを有するものが普及している。また、有段変速機構としては、例えば、噛合クラッチからなる第1クラッチと、摩擦クラッチからなる第2クラッチとを有し、第1クラッチを係合状態にすると共に第2クラッチを解放状態にすることで1速段を形成し、第1クラッチを解放状態にすると共に第2クラッチを係合状態にすることで2速段を形成するものが知られている(特許文献1参照)。この車両用駆動装置では、例えば、アクセル開度信号がオン状態からオフ状態に切り替わったとき、1速段及び2速段のいずれかを形成した状態を維持する場合にはモータにより回生制御を実行するようになっている。
特開2013-181554号公報
しかしながら、特許文献1に記載した車両用駆動装置では、例えば、アクセル開度信号をオン状態にして1速段で走行中に、アクセルペダルをオフ状態にすることで2速段にアップ変速(オフアップ変速)する場合に、第1クラッチを解放するために回生制御を停止しており、回生トルクのトルク抜けによって減速度の変動を発生してしまう虞がある。
そこで、アクセル開度信号をオフ状態にしたときのオフアップ変速時における減速度の変動を抑制できる車両用駆動装置を提供することを目的とする。
本開示に係る車両用駆動装置は、固定子及び回転子を有する回転電機と、前記回転電機の回転子に駆動連結された入力部材と、車輪に駆動連結された出力部材と、噛合クラッチからなる第1係合要素と、摩擦クラッチからなる第2係合要素とを有し、前記第1係合要素を係合状態にし、かつ、前記第2係合要素を解放状態にすることで第1変速段を形成し、前記第1係合要素を解放状態にし、かつ、前記第2係合要素を係合状態にすることで前記第1変速段よりも高速段である第2変速段を形成し、前記第1変速段及び前記第2変速段のいずれかを形成しているときに前記入力部材に入力された回転を変速して前記出力部材から出力する有段変速機構と、アクセル開度信号がオフ状態であり、かつ、前記有段変速機構が前記第1変速段及び前記第2変速段のいずれかを形成した状態である場合に、前記回転電機による回生制御を実行する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記アクセル開度信号がオン状態からオフ状態に切り替わることに伴いオフアップ変速を判断した際に、前記有段変速機構を、前記第1変速段から前記第2変速段に変速するオフアップ変速を実行し、前記オフアップ変速の実行中は、前記回転電機による前記回生制御を実行せず、前記車輪の回転速度を制動するブレーキ装置に、前記回生制御に応じた制動力分の減速度を達成するように指令を送信する。
本車両用駆動装置によると、アクセル開度信号をオフ状態にしたときのオフアップ変速時における減速度の変動を抑制できる。
第1の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトンを示す概略図である。 第1の実施形態に係る車両用駆動装置におけるオフアップ変速時の処理手順を示すフローチャートである。 第1の実施形態に係る車両用駆動装置におけるオフアップ変速時の各部の状態を示すタイムチャートである。 第2の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトンを示す概略図である。 第2の実施形態に係る車両用駆動装置におけるオフアップ変速時の処理手順を示すフローチャートである。 第2の実施形態に係る車両用駆動装置におけるオフアップ変速時の各部の状態を示すタイムチャートである。
<第1の実施形態>
以下、本開示に係る第1の実施形態を図1~図3に沿って説明する。まず、図1に沿って、本実施形態に係る車両用駆動装置を搭載した車両の一例である電気自動車1について説明する。本実施形態では、電気自動車1は、所謂FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型としている。但し、電気自動車1は、FF型には限られず、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型であってもよい。また、駆動連結とは、互いの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、それら回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いはそれら回転要素がクラッチ等を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いる。
[車両用駆動装置の概略構成]
図1に示すように、電気自動車1は、車両用駆動装置2と、車輪の一例である前輪70と、ブレーキ装置71とを有している。車両用駆動装置2は、駆動源の一例である回転電機(モータジェネレータ)としてのモータ(M/G)3と、有段変速機構の一例である自動変速機(A/T)4と、ECU(制御装置)5と、油圧制御装置(V/B)6とを備えている。また、電気自動車1は、インバータ7と、バッテリ8とを備えている。
モータ3は、不図示の固定子及び回転子を有し、インバータ7を介してバッテリ8に接続されている。回転子は、回転軸3aに駆動連結されている。バッテリ8から出力された電力がインバータ7を介してモータ3に給電されることで、モータ3の回転子及び回転軸3aが駆動される。また、惰性走行(コースト走行)時にモータ3の回転子及び回転軸3aを空回転させることで、電力を発生させてバッテリ8に充電することが可能である。
ブレーキ装置71は、例えば、油圧ブレーキ等の摩擦制動装置からなり、前輪70の回転速度を制動し、ブレーキトルク(制動トルク)を発生するように、前輪70の車軸61に設けられている。但し、ブレーキ装置71としては、油圧ブレーキには限られず、また、前輪70の制動ではなく不図示の後輪の制動を行うものであってもよい。
[自動変速機]
自動変速機4は、モータ3の回転軸3aに駆動連結された入力部材の一例である入力軸40と、前輪70に駆動連結された出力部材の一例である出力軸50と、噛合クラッチからなる第1係合要素及び第3係合要素の一例である第1クラッチC1と、摩擦クラッチからなる第2係合要素の一例である第2クラッチC2と、ディファレンシャル部60とを備えており、これら装置が一体化されてミッションケースに収納されている。自動変速機4は、変速段を形成しているときに、入力軸40に入力された回転を変速して、出力軸50から出力する。尚、第2クラッチC2である摩擦クラッチとしては、2つの回転要素の間を接断する係合要素の他に、1つの回転要素と1つの固定要素との間を接断する係合要素(ブレーキ)も含むものとする。
入力軸40には、第1カウンタギヤ41と、第1カウンタギヤ41より大径の第2カウンタギヤ42とが、入力軸40と一体回転するように設けられている。出力軸50は入力軸40と平行に配置され、第1カウンタギヤ41に噛合する第1ドリブンギヤ51と、第2カウンタギヤ42に噛合する第2ドリブンギヤ52とが出力軸50と同軸上に相対回転可能に設けられている。また、出力軸50には、出力ギヤ53が出力軸50と一体回転するように設けられている。
第1クラッチC1は、出力軸50と一体回転するよう設けられた外スプライン54sと、外スプライン54sに隣接して第1ドリブンギヤ51に形成された外スプライン51sと、外スプライン54sに隣接して第2ドリブンギヤ52に形成された外スプライン52sと、外スプライン54sの外周側に設けられる切替スリーブ55と、切替スリーブ55を移動させる不図示の付勢機構(フォーク及びアクチュエータ等)と、を備えている。各外スプライン51s,52s,54sの外径は、同径になっている。
切替スリーブ55は、スリーブ状で、内周部に各外スプライン51s,52s,54sに係合可能な内スプラインを備え、外スプライン51s,52s,54sに対して軸方向に移動可能に設けられている。切替スリーブ55は、移動により、出力軸50と第1ドリブンギヤ51とを連結した状態(第1変速段の一例である1速段)、出力軸50と第2ドリブンギヤ52とを連結した状態(第2変速段の一例である2速段)、いずれも連結しない状態(解放状態としてのニュートラル状態)との3つの状態に切り替わることができる。尚、本実施形態では、切替スリーブ55は、例えばアクチュエータの駆動によりフォークを介して移動するものとしている。但し、切替スリーブ55を移動させるための機構としては、これに限られず、既知の適宜な機構を適用することができる。
この第1クラッチC1では、切替スリーブ55がニュートラル状態から第1ドリブンギヤ51側に移動されると、切替スリーブ55の内スプラインは、外スプライン54sと第1ドリブンギヤ51の外スプライン51sとに跨って係合し、切替スリーブ55が出力軸50と第1ドリブンギヤ51とを連結する低速段形成状態になる。これにより、入力軸40の回転は、第1カウンタギヤ41、第1ドリブンギヤ51、切替スリーブ55を介して、出力軸50に伝達される。
また、第1クラッチC1では、切替スリーブ55がニュートラル状態から第2ドリブンギヤ52側に移動されると、切替スリーブ55の内スプラインは、外スプライン54sと第2ドリブンギヤ52の外スプライン52sとに跨って係合し、切替スリーブ55が出力軸50と第2ドリブンギヤ52とを連結する高速段形成状態になる。これにより、入力軸40の回転は、第2カウンタギヤ42、第2ドリブンギヤ52、切替スリーブ55を介して、出力軸50に伝達される。
第1クラッチC1では、低速段形成時は、高速段形成時に比べてより大きく減速するように、各部のギヤ比が設定されている。尚、本実施形態では、切替スリーブ55と、出力軸50の外スプライン54sと、第1ドリブンギヤ51の外スプライン51sとは、第1係合要素を構成する。また、切替スリーブ55と、出力軸50の外スプライン54sと、第2ドリブンギヤ52の外スプライン52sとは、第3係合要素を構成する。即ち、第1係合要素と第3係合要素とは、第1クラッチC1として1つの係合要素に含まれている。第3係合要素としての切替スリーブ55と外スプライン54sと外スプライン52sとは、第1係合要素としての切替スリーブ55と外スプライン54sと外スプライン51sとが係合状態である場合には解放状態となり、第1係合要素が解放状態である場合には係合状態と解放状態とに切替可能に設けられている。
第2クラッチC2は、油圧サーボ58に係合圧が給排されることで係脱される摩擦クラッチ、例えば、多板式クラッチからなり、出力軸50に駆動連結された外摩擦板56と、第2ドリブンギヤ52に駆動連結された内摩擦板57とを有している。本実施形態では、第2クラッチC2は多板クラッチからなる場合について説明しているが、これには限られず、例えば単板クラッチなどを適用してもよい。また、本実施の形態では、第2クラッチC2は、油圧サーボ58に係合圧が給排されることで係脱される摩擦クラッチからなる場合について説明しているが、油圧を利用することには限られず、例えば電動アクチュエータによって係脱される摩擦クラッチであってもよい。
油圧制御装置6から油圧サーボ58の油室に係合圧が供給されて第2クラッチC2が係合することにより、第2ドリブンギヤ52と出力軸50とが駆動連結された高速段形成状態になり、入力軸40の回転は、第2カウンタギヤ42、第2ドリブンギヤ52、第2クラッチC2を介して、出力軸50に伝達される。即ち、本実施形態では、第2ドリブンギヤ52と出力軸50とは第1クラッチC1と第2クラッチC2とのいずれでも駆動連結可能に設けられている。このため、2速段を形成する場合に、第2ドリブンギヤ52と出力軸50とを滑らせながら係合する際には第2クラッチC2を用い、係合後は第1クラッチC1を用いるようにして、第2クラッチC2のみを使用する場合に比べて消費電力の低減を図ることができる。
即ち、この自動変速機4では、1速段を形成する際には、第1クラッチC1を第1ドリブンギヤ51側に係合状態にすると共に第2クラッチC2を解放状態にする。また、1速段よりも高速段である2速段を形成する際には、第1クラッチC1をニュートラル状態にすると共に第2クラッチC2を係合状態にするか、あるいは、第1クラッチC1を第2ドリブンギヤ52側に係合状態にするかの2系統を選択することができる。また、第1クラッチC1を第2ドリブンギヤ52側に係合状態にすることで2速段を形成する際は、第1係合要素としての切替スリーブ55と外スプライン54sと外スプライン51sとを解放状態にすると共に、第3係合要素としての切替スリーブ55と外スプライン54sと外スプライン52sとを係合状態にする。
ディファレンシャル部60は、出力軸50と平行な軸上に配置された車軸61に駆動連結されている。ディファレンシャル部60は、出力軸50の出力ギヤ53に噛合されたデフリングギヤ62を備えており、デフリングギヤ62は、デフケースからピニオンギヤやサイドギヤ等を介して車軸61に回転を伝達する。これにより、出力軸50の回転をディファレンシャル部60によって減速し、かつ、左右の前輪70の差回転を吸収しつつ回転を伝達する。
油圧制御装置6は、例えばバルブボディにより構成されており、不図示の機械式オイルポンプや電動オイルポンプから供給された油圧からライン圧等を生成する不図示のプライマリレギュレータバルブ等を有し、ECU5からの制御信号に基づいて各部に油圧を給排可能になっている。例えば、油圧制御装置6は、ECU5からの制御信号に基づいて第2クラッチC2の油圧サーボ58に油圧を給排することにより、第2クラッチC2を制御する。
ECU5は、モータ3や第1クラッチC1を自在に指令制御し得ると共に、油圧制御装置6を電子制御する。即ち、ECU5は、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の各係合状態を変更可能である。また、電気自動車1にはアクセルペダル72とブレーキペダル73とが設けられており、それぞれECU5に接続されている。ECU5は、アクセルペダル72の踏み込み量をアクセル開度信号として取得し、ブレーキペダル73の踏み込み量をブレーキ信号として取得する。また、本実施形態では、ECU5は、アクセル開度信号がオフ状態であり、かつ、自動変速機4が1速段及び2速段のいずれかを形成した状態である場合に、モータ3による回生制御を実行する。
[オフアップ変速について]
次に、ECU5が1速段で走行中にアクセルペダル72の踏み込みを解除して1速段から2速段にアップ変速を実行する際の動作について、図2のフローチャートと図3のタイムチャートを用いて詳細に説明する。ここでは、自動変速機4は、第1クラッチC1を第1ドリブンギヤ51側に係合させた係合状態であり、第2クラッチC2を解放状態にして、1速段を形成してアクセル開度信号をオン状態にして走行しているものとし、自動変速機4は、このように1速段を形成した状態から、アクセル開度信号をオフ状態にして第1クラッチC1を解放状態にして、第1クラッチC1を第2ドリブンギヤ52側に係合して2速段を形成するものとする。
まず、このような1速段で走行中に、アクセルペダル72が踏まれアクセル開度信号がオン状態であるものとする(図3のt0)。尚、モータ3は入力軸40上に配置されているので、図3のt0~t2の期間では、(2速段の減速比)×(モータトルク)=(出力トルク)として示している。
アクセルペダル72が解放されて、アクセル開度信号が徐々にオフ状態になっていく(図3のt1-t3)。ECU5は、アクセル開度信号の低下に伴って、要求される出力トルクを低下させる。ECU5は、要求される出力トルクが所定値T1よりも小さいか否かを判断する(ステップS1、図3のt1-t2)。ECU5は、要求される出力トルクを電気自動車1の走行速度やその他の条件に基づいて演算する。ECU5は、要求される出力トルクが所定値T1よりも小さいと判断した場合は(ステップS1のYES、図3のt2)、ブレーキトルクに目標トルクT2を要求するようブレーキ装置71に指令を送信する。これにより、ブレーキ装置71によってブレーキトルクの出力が開始される(図3のt2)。ここでの目標トルクT2は、後述するように停止した回生制御に応じた制動力分の減速度を達成するトルクである。尚、ECU5は、要求される出力トルクが所定値T1よりも小さくないと判断した場合は(ステップS1のNO)、ブレーキトルクに目標トルクT2を要求することなく、ステップS3の処理に進む。
ECU5は、第2クラッチC2の油圧サーボ58への係合圧の指令値を予め設定された設定値に上げるファストフィルを実行し(図3のt2-t3)、ファストフィルの後に係合圧の指令値を下げて第2クラッチC2を係合直前の状態で待機させる(図3のt3-t4)。更に、ECU5は、第2クラッチC2の係合圧を上昇し、かつ、モータトルクを正トルクとして上昇させる(ステップS3、図3のt4-t5)。これにより、モータ3による回生制御は実行されなくなる。即ち、ECU5は、オフアップ変速の実行中は、モータ3による回生制御を実行せず、ブレーキ装置71に、回生制御に応じた制動力分の減速度を達成するように指令を送信する。尚、第2クラッチC2のファストフィルを実行するタイミングとしては、例えば、変速要求に応じて実行するようにする。
ここで、オフアップ変速時にモータ3による回生制御を継続すると、第1クラッチC1を解放状態に切り替えることが困難になってしまう。そこで、第1クラッチC1を解放状態にするために回生制御を停止するが、それによって電気自動車1の減速度が0に近づいてしまうため、回生トルクの代わりにブレーキ装置71を作動させてブレーキトルクを発生させるようにする。即ち、回生トルクをブレーキトルクに架け替えすることで、減速感を維持するようにする。
ECU5は、第2クラッチC2の係合圧が設定した目標圧P1に到達したか否かを判断する(ステップS4、図3のt4-t5)。ここでの目標圧P1は、第2クラッチC2が滑り係合状態になる油圧であり、ここではごく僅か(例えば、数N程度)のトルク容量を有する滑り係合状態としている。ECU5は、第2クラッチC2の係合圧が目標圧P1に到達していないと判断した場合は(ステップS4のNO)、係合圧の上昇を継続する(ステップS3)。
ECU5は、第2クラッチC2の係合圧が目標圧P1に到達したと判断した場合は(ステップS4のYES、図3のt5)、第1クラッチC1の解放動作を開始する(ステップS5、図3のt5-t6)。即ち、ECU5は、オフアップ変速を判断した場合、第2クラッチC2を滑り係合状態にし、かつ、モータ3から正トルクを出力した状態で、第1クラッチC1の解放動作を実行する。尚、僅かなトルク容量を有する滑り係合状態を維持する手法としては、例えば、トルクや回転速度を検出することで、係合圧を少し下げたときに第2クラッチC2が解放状態になったら係合圧を上げて再び僅かなトルク容量を有する滑り係合状態とし、再び係合圧を少し下げるような方法を適用する。但し、僅かな滑り係合状態を維持する手法としては、これには限られず、他の方法を適用してもよい。
そして、ECU5は、第1クラッチC1の解放動作が完了して解放状態になったか否かを判断する(ステップS6)。ECU5は、第1クラッチC1の解放動作が完了していないと判断した場合は(ステップS6のNO)、解放動作を継続する(ステップS5)。ここで、図3のt2-t6の領域は、ブレーキトルクにより回生トルクを実現するブレーキ補填領域である。このブレーキ補填領域では、ブレーキ信号に基づいて電気自動車1の減速度が達成され、ドライバはアクセル開度信号がオン状態でのアップ変速(オンアップ変速)と同様の減速感を得らえるようにしている。
ECU5は、第1クラッチC1の解放動作が完了したと判断した場合は(ステップS6のYES、図3のt6)、モータ3の回転速度を2速段の回転速度に同期するように制御する(ステップS7、図3のt6-t7)。即ち、ECU5は、第1クラッチC1を解放状態にした後、モータ3の回転速度を、2速段であるときの回転速度と同期する同期回転速度に近づけるように制御する。そして、ECU5は、モータ3の回転速度が2速段の回転速度に同期したか否かを判断する(ステップS8)。ここでは、ECU5は、モータ3の回転速度が、後述するように第1クラッチC1の係合動作を開始できる程度に同期速度に近づいたときに2速段の回転速度に同期したものと判断する。ECU5は、モータ3の回転速度が2速段の回転速度に同期していないと判断した場合は(ステップS8のNO)、モータ3の回転速度の同期制御を継続する(ステップS7)。
ECU5は、モータ3の回転速度が2速段の回転速度に同期したと判断した場合は(ステップS8のYES、図3のt7)、第1クラッチC1を第2ドリブンギヤ52側に係合する係合動作を開始する(ステップS9、図3のt7-t8)。ECU5は、第1クラッチC1が第2ドリブンギヤ52側に係合したか否かを判断する(ステップS10)。ECU5は、第1クラッチC1が第2ドリブンギヤ52側に係合していないと判断した場合は(ステップS10のNO)、係合動作を継続する(ステップS9)。
ECU5は、第1クラッチC1が第2ドリブンギヤ52側に係合したと判断した場合は(ステップS10のYES、図3のt8)、ブレーキトルクとモータトルクとの架け替えを実行する(ステップS11、図3のt8-t9)。ここでは、ECU5は、ブレーキ装置71に制動力を弱める指令を送信して、ブレーキトルクが0Nmになるように制御する。また、ECU5は、ブレーキトルクとモータトルクとの架け替えと並行して、第2クラッチC2の解放動作を実行する(ステップS11、図3のt8-t9)。
モータ3が第1クラッチC1によって前輪70に駆動連結されることで回生制御が実行されるので、モータトルクは上昇する。即ち、ECU5は、モータ3の回転速度を2速段の同期回転速度にした後、第1クラッチC1を係合状態にして2速段を形成し、ブレーキ装置71のブレーキトルクとモータ3の回生トルクとを入れ替えてトルク分担を切り替える。
ここで、本実施形態では、ブレーキ補填領域における図3のt5-t6領域では、ブレーキトルクの目標トルクT2と正トルクT3との差分(T2-T3)が減速度として電気自動車1に作用する。また、トルク分担の切り替え後であるt9以降の領域では、モータトルクである負トルクT4が減速度として電気自動車1に作用する。そして、これらの領域で減速度を同等にするためには、T2-T3=T4=T2-T5となるため、T3=T5となるように設定することが好ましい。これにより、いずれの領域においてもオンアップ変速と同様の減速度を有する動作を実現することができ、それらが一定であることにより変速時に減速度が変わってしまうことによる違和感の発生を抑制できる。
以上説明したように、本実施形態の車両用駆動装置2によると、ECU5は、オフアップ変速の実行中は、モータ3による回生制御を実行せず、ブレーキ装置71に、回生制御に応じた制動力分の減速度を達成するように指令を送信する。これにより、オフアップ変速時にモータ3による回生制御を実行しない場合であっても、回生トルクのトルク抜けによる減速度の変動を抑制できる。
また、本実施形態の車両用駆動装置2によると、ECU5は、オフアップ変速を判断した場合、第2クラッチC2を滑り係合状態にし、かつ、モータ3から正トルクを出力した状態で、第1クラッチC1の解放動作を実行する。このため、モータ3から正トルクを出力することで、第1クラッチC1の噛み合い力を緩和し、第1クラッチC1を容易に解放状態にすることができるようになる。
また、本実施形態の車両用駆動装置2によると、ECU5は、第1クラッチC1を解放状態にした後、モータ3の回転速度を、2速段であるときの回転速度と同期する同期回転速度に近づけるように制御する。これにより、1速段から2速段へのアップ変速を実現できる。
また、本実施形態の車両用駆動装置2によると、ECU5は、モータ3の回転速度を同期回転速度にした後、第1クラッチC1を係合状態にして2速段を形成し、ブレーキ装置71の制動トルクとモータ3の回生トルクとを入れ替えてトルク分担を切り替える。このため、2速段の形成後は、モータ3による回生制御を実行でき、燃費の向上を図ることができる。
上述した本実施形態の自動変速機4では、第1変速段を1速段とし、第2変速段を2速段とした場合について説明したが、これには限られない。例えば、第1変速段を2速段とし、第2変速段を3速段とし、3速段から2速段にダウン変速する場合の動作に適用してもよい。
また、本実施形態の自動変速機4では、第1係合要素と第3係合要素とは、第1クラッチC1として1つの係合要素に含まれている場合について説明したが、これには限られない。例えば、第1係合要素と第3係合要素とは、別体の噛合クラッチからなるようにしてもよい。この場合、ECU5は、第1係合要素と第3係合要素とをそれぞれ制御するようにする。
<第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態を、図4~図6を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、図4に示すように、自動変速機104の第1クラッチC11は、出力軸50と第1ドリブンギヤ51とを係脱可能に設けられ、出力軸50と第2ドリブンギヤ152とを係合できない点で第1の実施形態と構成を異にしている。但し、それ以外の構成については、第1の実施形態と同様であるので、符号を同じくして詳細な説明を省略する。
本実施形態では、第1クラッチC11は、出力軸50と一体回転するよう設けられた外スプライン54sと、外スプライン54sに隣接して第1ドリブンギヤ51に形成された外スプライン51sと、外スプライン54sの外周側に設けられる切替スリーブ55と、切替スリーブ55を移動させる不図示の付勢機構(フォーク及びアクチュエータ等)と、を備えている。切替スリーブ55は、移動により、出力軸50と第1ドリブンギヤ51とを連結した係合状態(第1変速段の一例である1速段)と、連結しない解放状態(ニュートラル状態)との2つの状態に切り替わることができる。
この自動変速機104では、1速段を形成する際には、第1クラッチC11を係合状態にすると共に第2クラッチC2を解放状態にする。また、1速段よりも高速段である2速段を形成する際には、第1クラッチC11を解放状態にすると共に第2クラッチC2を係合状態にする。
[オフアップ変速について]
次に、ECU5が1速段で走行中にアクセルペダル72の踏み込みを解除して1速段から2速段にアップ変速を実行する際の動作について、図5のフローチャートと図6のタイムチャートを用いて詳細に説明する。尚、図5のフローチャートと図6のタイムチャートにおいても、第1の実施形態と同様の処理については符号を同じくして詳細な説明を省略する。ここでは、自動変速機104は、第1クラッチC11を係合させた係合状態であり、第2クラッチC2を解放状態にして、1速段を形成してアクセル開度信号をオン状態にして走行しているものとし、自動変速機104は、このように1速段を形成した状態から、アクセル開度信号をオフ状態にして第1クラッチC11を解放状態にして、第2クラッチC2を係合して2速段を形成するものとする。また、図5に示すステップS8まで(図6のt0-t7)については、第1の実施形態と同様であるので、それ以降について説明する。
ECU5は、モータ3の回転速度が2速段の回転速度に同期したと判断した場合は(ステップS8のYES、図6のt7)、第2クラッチC2を完全係合状態、即ち差回転のない係合状態にする(ステップS20、図6のt7-t10)。また、ECU5は、第2クラッチの係合と並行して、ブレーキトルクとモータトルクとの架け替えを実行する(ステップS21、図6のt7-t10)。ここでは、ECU5は、ブレーキ装置71に制動力を弱める指令を送信して、ブレーキトルクが0Nmになるように制御する。
モータ3が第2クラッチC2によって前輪70に駆動連結されることで回生制御が実行されるので、モータトルクは上昇する。即ち、ECU5は、モータ3の回転速度を2速段の同期回転速度にした後、第2クラッチC2を差回転のない係合状態にして2速段を形成し、ブレーキ装置71のブレーキトルクとモータ3の回生トルクとを入れ替えてトルク分担を切り替える。
以上説明したように、本実施形態の車両用駆動装置2によると、ECU5は、オフアップ変速の実行中は、モータ3による回生制御を実行せず、ブレーキ装置71に、回生制御に応じた制動力分の減速度を達成するように指令を送信する。これにより、オフアップ変速時にモータ3による回生制御を実行しない場合であっても、回生トルクのトルク抜けによる減速度の変動を抑制できる。
また、本実施形態の車両用駆動装置2によると、ECU5は、モータ3の回転速度を2速段の同期回転速度にした後、第2クラッチC2を差回転のない係合状態にして2速段を形成し、ブレーキ装置71のブレーキトルクとモータ3の回生トルクとを入れ替えてトルク分担を切り替える。このため、第1クラッチC11を係合状態にすると共に第2クラッチC2を解放状態にして1速段を形成し、第1クラッチC11を解放状態にすると共に第2クラッチC2を係合状態にして2速段を形成する自動変速機104においても、2速段の形成後は、モータ3による回生制御を実行でき、燃費の向上を図ることができる。
尚、本実施形態では、第1クラッチC11を係合状態にすると共に第2クラッチC2を解放状態にして1速段を形成し、第1クラッチC11を解放状態にすると共に第2クラッチC2を係合状態にして2速段を形成する自動変速機104に適用した場合について説明したが、これには限られない。例えば、第1の実施形態で説明したように、2速段を形成する際には、第1クラッチC1をニュートラル状態にすると共に第2クラッチC2を係合状態にするか、あるいは、第1クラッチC1を第2ドリブンギヤ52側に係合状態にするかの2系統を選択することができる自動変速機4であっても、本実施形態の制御手順を適用することができる。第1の実施形態の自動変速機4に対して、本実施形態の制御手順を適用する場合は、オフアップ変速時に2速段を形成するときは、第1クラッチC1を第2ドリブンギヤ52側に係合状態にするのではなく、第1クラッチC1をニュートラル状態にすると共に第2クラッチC2を係合状態にすることで2速段を形成する。
また、第1の実施形態の自動変速機4を用いた場合は、オフアップ変速時に2速段を形成するときは、燃費やレスポンスの要求度に応じて、第1の実施形態のように第1クラッチC1を第2ドリブンギヤ52側に係合状態にするようにしたり、第2の実施形態のように第1クラッチC1をニュートラル状態にすると共に第2クラッチC2を係合状態にするように選択的に実行することができる。
2…車両用駆動装置、3…モータ(回転電機)、4,104…自動変速機(有段変速機構)、5…ECU(制御装置)、40…入力軸(入力部材)、50…出力軸(出力部材)、70…前輪(車輪)、71…ブレーキ装置、C1…第1クラッチ(噛合クラッチ、第1係合要素、第3係合要素)、C2…第2クラッチ(摩擦クラッチ、第2係合要素)、C11…第1クラッチ(噛合クラッチ、第1係合要素)

Claims (5)

  1. 固定子及び回転子を有する回転電機と、
    前記回転電機の回転子に駆動連結された入力部材と、車輪に駆動連結された出力部材と、噛合クラッチからなる第1係合要素と、摩擦クラッチからなる第2係合要素とを有し、前記第1係合要素を係合状態にし、かつ、前記第2係合要素を解放状態にすることで第1変速段を形成し、前記第1係合要素を解放状態にし、かつ、前記第2係合要素を係合状態にすることで前記第1変速段よりも高速段である第2変速段を形成し、前記第1変速段及び前記第2変速段のいずれかを形成しているときに前記入力部材に入力された回転を変速して前記出力部材から出力する有段変速機構と、
    アクセル開度信号がオフ状態であり、かつ、前記有段変速機構が前記第1変速段及び前記第2変速段のいずれかを形成した状態である場合に、前記回転電機による回生制御を実行する制御装置と、を備え、
    前記制御装置は、
    前記アクセル開度信号がオン状態からオフ状態に切り替わることに伴いオフアップ変速を判断した際に、前記有段変速機構を、前記第1変速段から前記第2変速段に変速するオフアップ変速を実行し、
    前記オフアップ変速の実行中は、前記回転電機による前記回生制御を実行せず、前記車輪の回転速度を制動するブレーキ装置に、前記回生制御に応じた制動力分の減速度を達成するように指令を送信する車両用駆動装置。
  2. 前記制御装置は、前記オフアップ変速を判断した場合、前記第2係合要素を滑り係合状態にし、かつ、前記回転電機から正トルクを出力した状態で、前記第1係合要素の解放動作を実行する請求項1に記載の車両用駆動装置。
  3. 前記制御装置は、前記第1係合要素を解放状態にした後、前記回転電機の回転速度を、前記第2変速段であるときの回転速度と同期する同期回転速度に近づけるように制御する請求項2に記載の車両用駆動装置。
  4. 前記制御装置は、前記回転電機の回転速度を前記同期回転速度にした後、前記第2係合要素を差回転のない係合状態にして前記第2変速段を形成し、前記ブレーキ装置の制動トルクと前記回転電機の回生トルクとを入れ替えてトルク分担を切り替える請求項3に記載の車両用駆動装置。
  5. 前記有段変速機構は、
    噛合クラッチからなり、前記第1係合要素が係合状態である場合には解放状態となり、前記第1係合要素が解放状態である場合には係合状態と解放状態とに切替可能な第3係合要素を有し、
    前記第1係合要素を解放状態にし、かつ、前記第3係合要素を係合状態にすることで前記第2変速段を形成し、
    前記制御装置は、前記回転電機の回転速度を前記同期回転速度にした後、前記第3係合要素を係合状態にして前記第2変速段を形成し、前記ブレーキ装置の制動トルクと前記回転電機の回生トルクとを入れ替えてトルク分担を切り替える請求項3に記載の車両用駆動装置。
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