JP2022086218A - 澱粉非溶出性フィルム、及び成形体の製造方法 - Google Patents

澱粉非溶出性フィルム、及び成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】バイオマス素材として澱粉を含有するにもかかわらず、水への澱粉の溶出量が少なく、食品の一次包装可能なフィルムを提供することを目的とする。【解決手段】澱粉を含む熱可塑性樹脂から形成された澱粉非溶出性フィルム。前記フィルムの澱粉非溶出性は、前記フィルムに含まれる澱粉の水への溶出性を評価する過マンガン酸カリウム消費量試験によって判定される非溶出性である。前記澱粉は、可塑化澱粉である。前記澱粉は、トウモロコシ澱粉及び/又はタピオカ澱粉である。【選択図】なし

Description

本発明は、澱粉非溶出性フィルム、及び成形体の製造方法に関する。
従来、食品、医薬品、化粧品、衛生用品等の種々の物品を包装する包装材料として、種々のフィルムが開発されている。
従来のフィルムは、石油系材料から形成されているので、廃棄後に自然環境下では分解し難く、自然環境を汚染する一つの原因となっている。近年、廃棄後に自然環境下で分解される素材が検討され、このような素材として、バイオマス素材を含むフィルムが注目されている。当該フィルムは、バイオマス素材を石油系材料の代替として含むので、燃焼時に排出されるCO2を削減可能である。バイオマス素材としては、例えば廃棄物系バイオマス(食物廃棄物、家畜排泄物、建築廃材、及び古紙など)、未利用バイオマス(農作物非食用部及び林地残材など)、及び、資源穀物を挙げることができる。より具体的なバイオマス素材の例として、例えば、木粉、稲わら、竹、及び古米などを挙げることができる。
バイオマス素材として、天然に豊富に存在し、安価な澱粉が使用されている。澱粉は、燃焼に伴って排出される二酸化炭素の量を基準にし、元となる植物(澱粉)が成長過程で吸収した二酸化炭素の量と同じ量となる、いわゆるカーボンニュートラルな素材である。しかし、澱粉自体は、高分子量の素材であり、澱粉のままでは成形時の流動性に乏しく、成形加工性に難点があるため、様々な方法により可塑性を付与した澱粉が利用されている。澱粉を含むプラスチック成形体に関して、例えば、下記特許文献1には、第1の澱粉及び第2の澱粉を含む澱粉系ポリマー材料と、ポリオレフィン系ポリマー材料とを含む、ポリマー内容物を含む物品であって、91日後に生分解するポリマー内容物の量が、約55重量%の水及び約45重量%の有機固形物を有する接種材料を使用して約52℃の温度で行われるバイオメタン潜在性試験の結果に基づいて、第1の澱粉及び第2の澱粉の量よりも多い、物品が開示されている。
特開2018-521181号公報
食品の一次包装に用いられるフィルムは、フィルム中に含まれる有機物等の水への溶出量が少ないことが求められている。
しかしながら、バイオマス素材として澱粉を使用してフィルムを形成した際、フィルムに含まれる澱粉及び可塑剤の水への溶出量が多く、食品の一次包装が可能なフィルムを提供することが困難であった。
本技術は、バイオマス素材として澱粉を含有するにもかかわらず、澱粉の水への溶出量が少なく、食品の一次包装可能な澱粉非溶出性フィルムを提供することを目的とする。
本技術は、澱粉を含む熱可塑性樹脂から形成された澱粉非溶出性フィルムを提供する。
前記澱粉非溶出性フィルムの澱粉非溶出性は、前記フィルムに含まれる澱粉の水への溶出性を評価する過マンガン酸カリウム消費量試験によって判定される非溶出性でありうる。
前記澱粉は、可塑化澱粉でありうる。
前記澱粉は、トウモロコシ澱粉及び/又はタピオカ澱粉でありうる。
前記熱可塑性樹脂は、SP値が7.8(cal/cm)1/2以上11.0(cal/cm)1/2以下である第一樹脂B1を含みうる。
前記第一樹脂B1は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)でありうる。
前記熱可塑性樹脂は、SP値が7.7(cal/cm)1/2以上8.4(cal/cm)1/2以下である第二樹脂B2を含みうる。
前記第二樹脂B2は、ポリエチレン樹脂でありうる。
前記第一樹脂B1のSP値と前記第二樹脂B2のSP値とが下記関係式を満たしうる。
ΔSPB2W=|第二樹脂B2のSP値-23.4(cal/cm)1/2|>ΔSPB1W=|第一樹脂B1のSP値-23.4(cal/cm)1/2
前記熱可塑性樹脂は、相溶化剤を含みうる。
前記相溶化剤は、無水カルボン酸変性ポリオレフィンでありうる。
前記澱粉非溶出性フィルムの用途が食品包装用でありうる。
前記熱可塑性樹脂が生分解性樹脂でありうる。
本技術は、澱粉と第一樹脂B1とを混合して澱粉含有第一樹脂を得る澱粉含有第一樹脂調製工程、前記澱粉含有第一樹脂と第二樹脂B2とを混合して澱粉含有樹脂組成物を得る澱粉含有樹脂組成物調製工程、及び、前記澱粉含有樹脂組成物を成形して成形体を得る成形体形成工程、を含み、前記成形体は澱粉非溶出性である、成形体の製造方法を提供する。
前記成形体がフィルムでありうる。
前記第二樹脂B2は、前記第一樹脂B1と異なる樹脂でありうる。
前記第二樹脂B2は、前記第一樹脂B1と同じ樹脂でありうる。
前記第一樹脂B1のSP値が7.8(cal/cm)1/2以上11.0(cal/cm)1/2以下でありうる。
前記第二樹脂のSP値が7.7(cal/cm)1/2以上8.4(cal/cm)1/2以下でありうる。
前記第一樹脂B1のSP値と前記第二樹脂B2のSP値とが下記関係式を満たしうる。
ΔSPB2W=|第二樹脂B2のSP値-23.4(cal/cm)1/2|>ΔSPB1W=|第一樹脂B1のSP値-23.4(cal/cm)1/2
前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、前記澱粉100質量部に対して、前記第一樹脂B1を30質量部以上配合しうる。
前記澱粉含有樹脂組成物調製工程において、前記澱粉含有第一樹脂100質量部に対して、前記第二樹脂B2を60質量部以上配合しうる。
本技術により、バイオマス素材として澱粉を含有するにもかかわらず、澱粉の水への溶出量が少なく、食品の一次包装可能な澱粉非溶出性フィルムを提供することができる。
以下、本技術を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本技術はこれらの実施形態のみに限定されるものでない。
本技術について、以下の順序で説明を行う。
1.第1の実施形態(澱粉非溶出性フィルムの例)
(1)フィルムの構成
(2)物性
(3)フィルムの製造方法
(4)フィルムの用途
2.第2の実施形態(成形体の製造方法の例)
(1)成形体の製造方法
3.実施例
1.第1の実施形態(澱粉非溶出性フィルムの例)
(1)フィルムの構成
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムは熱可塑性樹脂から形成されている。当該熱可塑性樹脂は澱粉を含む。第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムは澱粉非溶出性を示すものである。
以下、第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムを形成する熱可塑性樹脂についてより詳細に説明する。
[熱可塑性樹脂]
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムを形成する前記熱可塑性樹脂は、好ましくはポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂、又は、これらの樹脂の混合物であってよい。前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレン系樹脂であってもよい。
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えば、α-オレフィン類)を主要なモノマーとする重合により得られる高分子である。当該ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂若しくはポリプロピレン(PP)樹脂又はこれらの樹脂の組合せであってよい。
ポリエチレン樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE: Low Density Polyethylene)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE: High Density Polyethylene)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE:Very Low Density Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)等のエチレン共重合体、又は超高分子量ポリエチレン樹脂(UHMW-PE: Ultra High Molecular Weight-Polyethylene)又はこれらの樹脂の組合せであってよい。
ポリプロピレン樹脂は、例えば、ホモポリマーのポリプロピレン樹脂、又は、ランダムコポリマー若しくはブロックコポリマーのポリプロピレン樹脂(例えば、エチレン-プロピレン共重合体など)又はこれらの樹脂の組合せであってよい。
ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂(例えば、バイオマス由来ポリエチレン樹脂など)であってよく、例えば、バイオマスポリエチレン樹脂でありうる。バイオマスポリエチレン樹脂は、例えば、LDPE、LLDPE、又はHDPEでありうる。これによりCO排出量を削減することができる。
前記ポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィン系樹脂であってもよい。すなわち、前記熱可塑性樹脂は、例えば、メタロセン触媒系のポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂であってよく、又は、これらの樹脂の組合せであってもよい。
前記ポリスチレン系樹脂も、メタロセン触媒系のポリスチレン系樹脂であってもよい。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合によりモノマーが重合した高分子である。当該ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、若しくはポリカーボネート樹脂(PC)、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂(PBAT)、ポリブチレンサクシネート樹脂(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(PHA)、又はこれらから選択される樹脂の2以上の組合せであってよい。
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーが重合した高分子である。当該ポリスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン樹脂、ゴム強化ポリスチレン樹脂(耐衝撃性ポリスチレン樹脂、HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メタクリル酸エステル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体、並びにアクリロニトリル・エチレンプロピレン・スチレン共重合体等又はこれらから選択される樹脂の2以上の組合せであってよい。
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムを形成する熱可塑性樹脂の種類は、例えば、当該熱可塑性樹脂から形成される前記澱粉非溶出性フィルムの種類に応じて当業者により適宜選択されてよいが、加工温度が低い熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、当該熱可塑性樹脂から澱粉非溶出性フィルムを形成する場合、当該熱可塑性樹脂は、例えば、好ましくはポリオレフィン系樹脂である。このようなポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂であってもよい。
また、前記熱可塑性樹脂に含まれる澱粉の水への溶出を抑制するため、前記熱可塑性樹脂は、SP値が7.8(cal/cm)1/2以上11.0(cal/cm)1/2以下である第一樹脂B1を好ましくは含みうる。SP値は、Fedorsの推算法などにより算出されうる。このような第一樹脂B1として、ポリエチレン樹脂が挙げられる。例えば、好ましくはエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)等のエチレン共重合体等が挙げられる。
また、前記熱可塑性樹脂は、SP値が7.7(cal/cm)1/2以上8.4(cal/cm)1/2以下である第二樹脂B2を好ましくは含みうる。このような第二樹脂B2として、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE: Low Density Polyethylene)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE: High Density Polyethylene)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE:Very Low Density Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene)等が挙げられる。
前記第一樹脂B1と前記第二樹脂B2は、同一種類の樹脂であってもよく、また、異なる種類の樹脂であってもよい。
さらに好ましくは前記第一樹脂B1のSP値と前記第二樹脂B2のSP値とが下記関係式を満たしてもよい。
ΔSPB2W=|第二樹脂B2のSP値-23.4(cal/cm)1/2|>ΔSPB1W=|第一樹脂B1のSP値-23.4(cal/cm)1/2
上記関係式に示されるように、前記第一樹脂B1のSP値と水のSP値である23.4(cal/cm)1/2との差の絶対値が前記第二樹脂B2のSP値と水のSP値である23.4(cal/cm)1/2との差の絶対値よりも小さいことが好ましい。換言すると、前記第一樹脂B1が前記第二樹脂B2よりも親水性であることが好ましい。
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムを形成する前記熱可塑性樹脂は、好ましくは90℃~180℃の融点を有するものであり、より好ましくは95℃~170℃の融点を有するものでありうる。より低い融点を有する熱可塑性樹脂を採用することによって、前記フィルム成形時の温度を低くすることができ、前記熱可塑性樹脂に含まれる澱粉の加熱に起因する臭気又は着色をより抑制することができる。
前記熱可塑性樹脂は、ペレット状でも粉体状でもよく、押出機やインジェクション成形機等で成形時に混合、混練され、均一に分散される。
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムにおいて、前記熱可塑性樹脂は、生分解性樹脂であってよい。生分解性樹脂として、例えば、生分解性ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、並びに、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)が挙げられ、また、前記生分解性樹脂のうちから選択される二種以上の混合物が挙げられる。この実施形態において、前記熱可塑性樹脂及び澱粉の両方が生分解性であることにより、この実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムは、より環境にやさしいものとなりうる。
以下、第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムを形成する熱可塑性樹脂に含まれる澱粉についてより詳細に説明する。
[澱粉]
前記熱可塑性樹脂に含まれる澱粉として、地下系澱粉及び地上系澱粉を挙げることができる。
地下系澱粉は、地下で蓄積された澱粉であり、例えば、地下茎又は根などに蓄積された澱粉をいう。地下系澱粉として、例えば、タピオカ澱粉(キャッサバ澱粉)、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、クズ澱粉、及びワラビ澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。
地上系澱粉は、地上で蓄積された澱粉であり、例えば、種子などに蓄積された澱粉をいう。地上系澱粉として、例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、ドングリ澱粉及び米澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムを形成する熱可塑性樹脂は、好ましくは地下系澱粉を含みうる。地下系澱粉を前記熱可塑性樹脂に含ませることによって、当該熱可塑性樹脂の臭気をより低減することができる。
前記熱可塑性樹脂に含まれる澱粉は、澱粉の変性物(すなわち変性澱粉)、特には地下系澱粉の変性物であってもよい。このような変性物として、物理的に変性された物理的変性澱粉又は化学的に修飾された化学的変性澱粉が挙げられる。物理的変性澱粉としては、例えば、アルファー澱粉、湿熱澱粉等が挙げられる。また、化学的変性澱粉として、例えば、アセト酢酸エステル化澱粉、酢酸エステル化澱粉、ヒドロキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、アリルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、コハク酸エステル化澱粉、キサントゲン酢酸エステル化澱粉、硝酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、リン酸架橋澱粉、ホルムアルデヒド架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉等が挙げられる。変性物は、変性されていない澱粉と比べて、より低い温度で可塑化可能である。そのため、後述する可塑化澱粉を製造する際の加熱に伴う臭気及び/又は着色を抑制することができる。
前記熱可塑性樹脂に含まれる澱粉は、好ましくは平衡水分を含むものであってよい。平衡水分の量は、例えば、澱粉質量に対して、好ましくは10質量%~15質量%であり、より好ましくは10質量%~14質量%であり、さらに好ましくは10質量%~13質量%であり、さらにより好ましくは11質量%~13質量%でありうる。澱粉を可塑化する観点から、上記数値範囲内の平衡水分を含む澱粉又は変性澱粉が好ましい。
本第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムにおいて、前記熱可塑性樹脂は、前記澱粉及び前記熱可塑性樹脂を、例えば、好ましくは5質量部:95質量部~75質量部:25質量部の比率で含み、より好ましくは10質量部:90質量部~70質量部:30質量部の比率で含み、さらに好ましくは15質量部:75質量部~70質量部:30質量部で含みうる。当該比率を有する前記熱可塑性樹脂は、澱粉非溶出性フィルムに含まれる澱粉粒を小さくすることができる。
前記熱可塑性樹脂に含まれる澱粉は可塑化されていてもよい。前記澱粉が可塑化されることにより、澱粉粒の粒子径が2μm以下となりうる。これにより、前記熱可塑性樹脂から形成される澱粉非溶出性フィルムの表面を平滑にすることができ、また、例えば、澱粉非溶出性フィルムの物性(例えば、引張伸びなど)を向上させることもできる。澱粉の可塑化は、例えば、澱粉を加熱する方法、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と澱粉とを接触させて加熱する方法によって実現されうる。
また、前記可塑化された澱粉(以下、「可塑化澱粉」と称する。)を用いることで、良好な品質(例えば、表面平滑性、低着色度、及び低臭)を有する澱粉非溶出性フィルムを製造することができる。例えば、第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムにおいて、前記熱可塑性樹脂中に含まれる澱粉粒の粒子径が2μm以下と小さいので、薄い澱粉非溶出性フィルムを当該熱可塑性樹脂から形成しても澱粉粒の形状が表面に表れない。例えば、第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムにおいて、熱可塑性樹脂中の澱粉含有割合を高めても、当該熱可塑性樹脂から形成される澱粉非溶出性フィルムはその表面に澱粉粒の形状を有さない。
また、前記熱可塑性樹脂が前記可塑化澱粉を含むことによって、当該熱可塑性樹脂及び当該熱可塑性樹脂から形成された澱粉非溶出性フィルムに透明感を付与することができる。また、前記熱可塑性樹脂が前記可塑化澱粉を含むことによって、当該熱可塑性樹脂及び当該熱可塑性樹脂から形成された澱粉非溶出性フィルムの表面を平滑にすることもできる。
前記熱可塑性樹脂において、前記可塑化澱粉の含有割合は、前記熱可塑性樹脂の質量に対して、例えば、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、さらにより好ましくは30質量%以上でありうる。
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムにおいて、前記可塑化澱粉は、澱粉の可塑化物又は変性された澱粉の可塑化物でありうる。例えば、当該澱粉は、トウモロコシ澱粉又はタピオカ澱粉でありうる。
前記可塑化澱粉は、より好ましくは、タピオカ澱粉(キャッサバ澱粉)、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、クズ澱粉、及びワラビ澱粉から選ばれる1つの澱粉若しくは2つ以上の澱粉を組み合わせた澱粉の可塑化物、又は、変性された当該1つの澱粉若しくは変性された当該2つ以上の澱粉を組み合わせた澱粉の可塑化物でありうる。さらにより好ましくは、前記可塑化澱粉は、タピオカ澱粉の可塑化物又は変性されたタピオカ澱粉の可塑化物である。これらの可塑化物は、可塑化澱粉の臭気を低減させる観点及び熱可塑性樹脂の臭気を低減させる観点から特に好ましい。
前記可塑化澱粉を前記熱可塑性樹脂中に含有させることによって、熱可塑性樹脂から澱粉非溶出性フィルムを製造する際、優れた成形性を達成できる。また、澱粉非溶出性フィルムの物性を向上させることができる。例えば、これまでに知られている澱粉(例えば、糊化されていない澱粉など)の熱可塑性樹脂中の含有割合を50質量%以上とすると、当該熱可塑性樹脂を用いての成形ができない場合があり、又は、成形可能であっても成形された澱粉非溶出性フィルムが良好な品質を有さない場合がある。具体的には、熱可塑性樹脂を用いてインフレーション成形を行った場合、熱可塑性樹脂が膨らまなかったり、又は、当該熱可塑性樹脂中に発泡が生じたりすることがある。さらには、膨らんだとしても、当該成形により得られた澱粉非溶出性フィルムの伸縮性が悪いため、当該フィルムは切れやすく、また、優れた強度を有さないこともある。
前記可塑化澱粉は、直接、前記熱可塑性樹脂に含有させられてもよい。又は、澱粉と、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含む可塑化澱粉材料として、前記熱可塑性樹脂に含有させられてもよい。
以下、可塑化澱粉材料について説明する。
<可塑化澱粉材料>
可塑化澱粉材料は、澱粉を主成分とする材料であってよい。前記可塑化澱粉材料中の澱粉の含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上でありうる。前記可塑化澱粉材料中の澱粉の含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下でありうる。当該澱粉の含有割合は、150℃におけるTG測定(熱重量分析)により測定されてよい。具体的には、当該含有割合は、TG測定装置(STA7200、株式会社 日立ハイテクサイエンス)を用いて測定される質量変化量に基づき決定されてよい。当該質量変化量は揮発性成分の減少量に対応し、当該減少量は、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の量に対応する。そのため、可塑化澱粉材料中の澱粉の含有割合は以下の式により求められる:(可塑化澱粉材料中の澱粉の含有割合(単位:質量%))=(質量変化量の測定開始後の質量)/(質量変化量の測定開始前の質量)×100。前記質量変化量の測定条件は以下のとおりである:温度範囲25℃~150℃、昇温速度20℃/分、窒素下。
本明細書において、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物とは、常温よりも高い温度で澱粉と接触することによって澱粉を糊化又は可塑化することができる極性有機化合物をいう。常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物として、当技術分野で既知の有機化合物が用いられてよい。
常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、常温では澱粉を糊化又は可塑化可能でないが常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物をいう。本明細書内において、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を「高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物」ともいう。例えば、極性有機化合物と澱粉とを常温で1時間接触させても当該澱粉が糊化又は可塑化しないが、極性有機化合物と澱粉とを高温で1時間接触させることによって当該澱粉が糊化又は可塑化する場合に、当該極性有機化合物は、「高温で澱粉を糊化又は可塑化可能」である。前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、澱粉を糊化可能な極性有機化合物、澱粉を可塑化可能な極性有機化合物、及び澱粉を糊化及び可塑化可能な極性有機化合物のいずれであってもよい。
本明細書において、常温よりも高い温度(「高温」ともいう)は、加熱処理によって達成される温度をいう。高温は、例えば、50℃以上の温度であり、好ましくは60℃以上の温度であり、より好ましくは80℃以上の温度であり、さらに好ましくは100℃以上の温度でありうる。
本明細書において、常温は、加熱処理が行われない場合における温度をいう。常温は、例えば、50℃未満であり、好ましくは10~40℃であり、より好ましくは15℃~35℃であり、さらにより好ましくは20~30℃でありうる。
好ましくは、前記可塑化澱粉材料中の常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の合計含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下でありうる。前記可塑化澱粉材料中の常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の合計含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上でありうる。常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の合計含有割合は、上記で述べたTG測定により測定された糊化澱粉の含有割合を、100質量%から差し引くことにより算出される。
常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくは常温で液体である。これにより、澱粉との混合を容易に行うことができる。
前記可塑化澱粉材料を構成する、常温よりも高い温度(高温)で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、少なくとも一つの多価アルコールを含みうる。
多価アルコールとは、分子中に2個以上の水酸基を有するアルコールをいう。このような多価アルコールは、好ましくは炭素数が2~5の多価アルコールであり、より好ましくは炭素数が2~4の多価アルコールでありうる。前記多価アルコールは、好ましくは2~5の水酸基(OH基)を有し、より好ましくは2~4の水酸基(OH基)を有する。
前記多価アルコールは、例えば、グリセリン及びグリコールを含みうる。当該グリコールとして、例えば、エチレングリコール及びプロピレングリコールを挙げることができる。
前記多価アルコールは、好ましくはグリセリン、エチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる1つ又は2つ以上の組合せを含みうる。前記可塑化澱粉材料は、当該多価アルコールを、澱粉100質量部に対して、例えば、好ましくは10質量部~40質量部を含み、より好ましくは20質量部~35質量部を含みうる。また、澱粉非溶出性フィルム中における多価アルコールの含有量が、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上でありうる。
高温多湿条件下でのブリード発生を抑制する観点から澱粉非溶出性フィルム中におけるグリセリンの含有量が、好ましくは0質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上9質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以上7質量%以下でありうる。グリセリンの量が少ないほど、ブリードの発生を抑制できる。したがって、グリセリンを用いずに、グリセリンの代わりに、他の多価アルコール等を用いるのがよく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールをグリセリンの代わりに用いるのが好ましい。すなわち、ブリードの発生を抑制する観点からは、グリセリンを全く含有させずに、例えば、エチレングリコールのみ又はプロピレングリコールのみ含有させてもよい。
しかし、グリセリン含有量の減少に伴い澱粉粒が大きくなることがある。グリセリン含有量を減少させても、澱粉粒を小さくするために、前記可塑化澱粉材料は、有機酸をさらに含んでもよい。有機酸とは、酸性を示す有機化合物をいい、有機化合物とは、少なくとも1個の炭素原子を有する化合物をいう。有機酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、有機ホスフィン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。
上記カルボン酸としては、例えば、乳酸、グルコン酸、酢酸、無水酢酸等のモノカルボン酸;酒石酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、無水コハク酸、リンゴ酸、等のジカルボン酸;クエン酸等の3以上のカルボキシル基を有するカルボン酸などが挙げられる。上記スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。上記スルフィン酸としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、システィンスルホン酸等が挙げられる。上記有機ホスフィン酸としては、例えば、ジエチルホスフィン酸等が挙げられる。上記有機ホスホン酸としては、例えば、メチルホスホン酸等が挙げられる。
前記可塑化澱粉材料は、多価アルコールを含みうる。当該多価アルコールは、例えば、グリセリンとエチレングリコールとの組合せであり、又はエチレングリコールのみである。なお、エチレングリコールのみの場合、有機酸を含みうる。
前記可塑化澱粉材料を、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の存在下で加熱することによって糊化又は可塑化しうる。当該糊化又は可塑化は、例えば、高温で糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の存在下での加熱による分子間結合(主に水素結合)の切断によってもたらされるものであってもよい。糊化又は可塑化された澱粉は、例えば、α化澱粉であってよい。当該可塑化が、澱粉非溶出性フィルムへの透明感及び/又は平滑性の付与に寄与していると考えられる。
[その他の成分]
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムを形成する熱可塑性樹脂は、前記澱粉及び前記熱可塑性樹脂に加えて、他の成分を含んでいてもよい。当該他の成分として、例えば、相溶化剤、酸化分解促進剤、着色剤、酸化防止剤及びセルロースナノファイバーなどを挙げることができる。
前記相溶化剤は、前記澱粉が可塑化澱粉である場合、当該可塑化澱粉と前記熱可塑性樹脂との相溶性をより向上させるために用いられてよい。
前記相溶化剤として、例えば、無水カルボン酸変性ポリオレフィン、オレフィン系のグラフト変性物、及びオレフィン系のコモノマーなどを挙げることができる。
前記無水カルボン酸変性ポリオレフィンを構成する無水カルボン酸は、好ましくは無水マレイン酸でありうる。前記相溶化剤は、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、及び無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる1つ又はこれらの2以上の組合せであってもよい。
前記オレフィン系のグラフト変性物は、酸変性ポリオレフィンであってよく、より具体的には不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性したポリオレフィンでありうる。グラフト変性に用いられる(未変性の)ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレン・α-オレフィン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体)であってよく、特にはポリプロピレンでありうる。例えば、特開2010-095671に記載された酸変性ポリオレフィンが用いられてよい。
前記酸化分解促進剤は、カルボン酸金属塩及び希土類化合物の組合せであってよい。当該組合せを含む酸化分解促進剤の例として、例えば、P-Life(ピーライフ・ジャパン・インク株式会社製)を挙げることができる。
前記酸化分解促進剤に含まれる前記カルボン酸金属塩は、例えば、炭素数が10~20である脂肪族カルボン酸の金属塩であってよく、より好ましくはステアリン酸金属塩であってよい。前記脂肪族カルボン酸と金属塩を形成する金属原子としては、例えば、コバルト、セリウム、鉄、アルミニウム、アンチモン、バリウム、ビスマス、クロミウム、銅、ガリウム、ランタン、リチウム、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、カルシウム、銀、ナトリウム、錫、タングステン、バナジウム、イットリウム、亜鉛、及びジルコニウムから選ばれる1つ又は2以上の組合せであってよく、より好ましくはカルシウム、マグネシウム、亜鉛、コバルト、セリウム、鉄、及び銅から選ばれる1つ又はこれらの2つ以上の組合せであってよい。例えば、前記金属塩は、ステアリン酸鉄であってよい。前記カルボン酸塩として、1種類のカルボン酸塩が単独で用いられてよく、又は、2種類以上のカルボン酸塩の組合せが用いられてもよい。
前記酸化分解促進剤に含まれる前記希土類化合物は、例えば、希土類の酸化物、希土類の水酸化物、希土類の硫酸塩、希土類の硝酸塩、希土類の酢酸塩、希土類の塩化物、又は希土類のカルボン酸塩であってよい。前記希土類化合物は、より具体的には、酸化セリウム、硫酸第二セリウム、硫酸第二セリウムアンモニウム、硝酸第二セリウムアンモニウム、酢酸セリウム、硝酸ランタン、塩化セリウム、硝酸セリウム、水酸化セリウム、オクチル酸セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、及び酸化スカンジウムから選ばれる1つ又は2つ以上の組合せであってよい。前記希土類化合物として、1種類の希土類化合物が単独で用いられてよく、又は、2種類以上の希土類化合物の組合せが用いられてもよい。
前記着色剤の例として、酸化チタン及び/又はカーボンブラックが用いられてよい。また、前記酸化防止剤の例として、フェノール系酸化防止剤が用いられてよいがこれに限定されない。
前記セルロースナノファイバー(以下、CNFともいう)は、市販入手可能なCNFが用いられてよい。CNFは、分子状のセルロースとは異なり、溶剤に難溶の平均繊維径10nm~3000nmの繊維状セルロースを意味しうる。当該平均繊維径は、好ましくは10nm~1000nmであり、より好ましくは10nm~500nmであり、さらに好ましくは10nm~300nmであり、さらにより好ましくは10nm~100nmでありうる。CNFのアスペクト比は、例えば、好ましくは30~10000であり、より好ましくは50~5000であり、さらに好ましくは50~1000でありうる。アスペクト比は、平均繊維長を平均繊維径で除した数値である。上記平均繊維長及び平均繊維径は、電子顕微鏡で観察した任意のセルロース繊維10本の平均値である。
CNFは親水性である。CNFは、一般的にはセルロース材料を水で解砕することによりナノ化して製造されるため、水に分散されている。
CNFは、例えば、熱可塑性樹脂の強度を高めるために用いられる。しかしながら、熱可塑性樹脂はしばしば疎水性であるため、親水性であるCNFを熱可塑性樹脂と混合することには困難を伴いうる。そこで、例えば、CNFを変性して疎水化されたCNF(特には粉末状CNF)を熱可塑性樹脂と混合することが行われている。当該疎水化のために、例えば、TENPO酸化法が用いられうる。また、CNFを分散している水を溶媒置換して得られたCNF分散物を液状樹脂(例えば、エポキシ樹脂又は塩化ビニル系樹脂)と混合することも行われている。また、セルロース材料を水で解砕せずに、押出機で直接解砕し、そして当該解砕の結果得られたCNFを熱可塑性樹脂と混合することも行われている。このような混合手法はコスト(例えば、労力、費用、又は時間など)がかさみうる。そのため、水に分散されているCNFをそのまま用いる手法が望ましい。
また、上記のとおり、CNFを熱可塑性樹脂に分散させることは難しい。分散不良である場合は、得られるCNF含有熱可塑性樹脂の引張伸びと引張強度とのうち、どちらかしか向上させることができない。
また、CNFは水に分散された状態にあることが一般的であり、例えば、CNF水分散物中のCNF含有割合は数質量%程度であり、CNF水分散物は水の含有割合が高い。そのため、CNFの水分散物を熱可塑性樹脂と混合することはしばしば困難を伴う。
前記可塑化澱粉材料は、CNFを当該材料中に容易に分散させることができ、さらに、CNFを含む前記可塑化澱粉材料と熱可塑性樹脂とを容易に混合させることができる。そのため、前記可塑化澱粉材料によって、CNFを熱可塑性樹脂中に容易に分散させることができる。熱可塑性樹脂がCNFを含むことによって、当該熱可塑性樹脂から成形される澱粉非溶出性フィルムの引張物性及び衝撃強度を高めることができる。なお、前記可塑化澱粉材料がCNFを含む実施形態において、熱可塑性樹脂にCNFが添加されてもよい。
当該CNFとして、水に分散されたCNFを用いることができる。CNFの水分散物を用いたとしても、前記可塑化澱粉材料の製造においてCNFの水分散物を用いることによって、CNFを、上記で述べた混合手法を用いることなく、熱可塑性樹脂中に容易に分散させることができる。
また、CNFを含む前記可塑化澱粉材料を熱可塑性樹脂と混合した場合、当該熱可塑性樹脂中にCNFはよく分散する。そのため、当該熱可塑性樹脂の引張伸び及び引張強度の両方を向上させることができる。
また、熱可塑性樹脂中のバイオマス含有割合又は生分解性樹脂含有割合が高まると、当該熱可塑性樹脂の引張強度は低下することがある。上記のとおりCNFを含む前記可塑化澱粉材料を熱可塑性樹脂と混合することによって、熱可塑性樹脂中のバイオマス含有割合又は生分解性樹脂含有割合が高いことに起因する引張強度低下の問題を解消することができる。さらに、CNFによりもたらされる他の効果も、熱可塑性樹脂において発現しうる。
前記可塑化澱粉材料に含まれるCNFとして、例えば、上記の一般的な製造方法により製造された水に分散されたCNFを挙げることができる。当該水に分散されたCNFに加えて、上記の疎水化されたCNFなどの変性CNFが、前記可塑化澱粉材料に含まれていてもよい。粉末状のCNFも、水に分散させれば、前記可塑化澱粉材料に分散させることができる。このように、前記可塑化澱粉材料は、種々のCNFを当該材料中に分散させることができる。なお、水に分散されたCNFが、費用の観点から及び取扱い易さの観点から、前記可塑化澱粉材料に分散されるCNFとして好ましい。水に分散されたCNFは前記可塑化澱粉材料の製造設備にも特に投入しやすい。
また、水以外の親水性の液体に分散されたCNFが用いられてもよい。前記可塑化澱粉材料に分散されるCNFは、1つの親水性液体に分散されたものであってよく又は2種以上の親水性液体の混合物に分散されたものであってもよい。すなわち、前記可塑化澱粉材料に分散されるCNFが分散される液体は、水、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ホルムアミド、及び尿素水から選ばれる1つ又は2つ以上の組合せであってよい。当該液体は、上記で述べた多価アルコールのうちの1つ又は2つ以上の組合せであってもよい。
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムを形成する熱可塑性樹脂は、好ましくは前記澱粉と、前記熱可塑性樹脂と、前記相溶化剤と、前記酸化分解促進剤とを含みうる。前記澱粉及び前記熱可塑性樹脂の構成比率は、例えば、好ましくは20質量部:80質量部~80質量部:20質量部であり、より好ましくは30質量部:70質量部~80質量部:20質量部であり、さらに好ましくは50質量部:50質量部~80質量部:20質量部でありうる。前記相溶化剤の含有量は、前記澱粉及び前記熱可塑性樹脂の合計量100質量部に対して、例えば、好ましくは1質量部~10質量部であり、より好ましくは2質量部~9質量部でありうる。前記酸化分解促進剤の含有量は、前記澱粉及び前記熱可塑性樹脂の合計量100質量部に対して、例えば、好ましくは0.01質量部~5質量部であり、より好ましくは0.05質量部~3質量部でありうる。
(2)物性
[澱粉非溶出性]
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムは、澱粉非溶出性を示すものである。ここで、澱粉非溶出性とは、熱可塑性樹脂に含まれる澱粉が水に溶出しない特性を意味する。本実施形態における澱粉非溶出性は、好ましくは、過マンガン酸カリウム消費量試験によって判定される非溶出性を意味してもよい。
<過マンガン酸カリウム消費量試験>
過マンガン酸カリウム消費量とは、水中の有機物や還元性物質(被酸化性物質)の量を、所定の条件下で酸化させるのに必要な過マンガン酸カリウムの量として表したものを意味する。第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムでは、水中に溶出した澱粉の量を所定条件下で酸化させるのに必要な過マンガン酸カリウムの量を過マンガン酸カリウム消費量として表し、澱粉非溶出性が評価されうる。
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムにおいて、過マンガン酸カリウム消費量試験による澱粉非溶出性は、以下の操作工程を経て評価することができる。
(i)フィルムを5cm角に切り取り、両面を純水で十分に洗浄する。
(ii)ビーカーに純水を100mL入れ、このビーカーを60℃のウォーターバスで湯煎する。
(iii)60℃のウォーターバスで湯煎したビーカーの純水に、洗浄したフィルムを浸漬して、30分放置する。ビーカー内の液を溶出液とする。
(iv)30分経過後、フィルムを取り出し、溶出液をろ紙でろ過する。ろ紙の目は任意である。ろ過された液をろ液とする。
(v)ろ液に3倍に希釈した市販の硫酸5mLと0.002mol/Lの過マンガン酸カリウム溶液10mLとを添加し、5分間煮沸する。
(vi)加熱を止め、直ちに上記(ii)の工程において、ビーカー内の純水にフィルムを浸漬しない以外は、上記(i)~(v)の工程を経たブランクと色差を目視で比較する。
なお、非溶出性は以下の基準により評価する。
A:ブランクと色差がない。
B:色が残るもののブランクよりも色が薄い。
C:無色になる。
(3)フィルムの製造方法
第1の実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムの製造方法は、通常の石油系プラスチックフィルムの製造方法を採用できる。例えば、澱粉と、常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、水と、を混合する第一混合工程、前記第一混合工程で得られた混合物を加熱することにより前記澱粉を可塑化して、可塑化澱粉を調製する可塑化澱粉調製工程、前記可塑化澱粉と第一樹脂として使用される熱可塑性樹脂(以下、第一樹脂と称されることもある)とを混練して澱粉含有第一樹脂を調製する澱粉含有第一樹脂調製工程を含んでいてもよい。そして、前記製造方法は、前記澱粉含有第一樹脂調製工程において得られた、澱粉含有第一樹脂と、第二樹脂として使用される熱可塑性樹脂(以下、第二樹脂と称されることもある)とを、さらに混練して澱粉含有樹脂組成物を調製する澱粉含有樹脂組成物調製工程を含んでいてもよい。また、前記製造方法は、澱粉含有樹脂組成物調製工程において得られた澱粉含有樹脂組成物を成形する成形工程を含んでいてもよい。
また、前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、例えば、先ず、澱粉と、常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、水と、熱可塑性樹脂等の原料が混合されていてもよい。第一樹脂はペレット化されたものが供されてもよく、粉末状の形態のものであってもよい。前記澱粉、前記熱可塑性樹脂等の原料の混合は、例えば、市販の撹拌機、又は、ヘンシェルミキサー、タンブラー型混合機、バーバリミキサー、ニーダーミキサー等の混合機により行われてもよい。前記原料の混合は、常温で行われるのが好ましい。また、常温で原料を混合した後、混合された原料が自然に40℃程度まで発熱してもよい。混合された原料の混練は、例えば、一軸混練押出機、又は二軸混練押出機等により行われてよい。これらの混練押出機として、当該技術分野で既知の装置が用いられてよい。好ましくは、前記澱粉含有第一樹脂調製工程は、二軸混練押出機による混練処理を少なくとも含む。二軸混練押出機として、同方向回転式の二軸混練押出機が用いられてよく、又は、異方向回転式の二軸混練押出機が用いられてよい。二軸混練押出機による混練処理を行うことにより、澱粉がより均一に分散した澱粉含有第一樹脂を得ることができる。
前記澱粉含有第一樹脂調製工程は、第一樹脂が溶融可能な温度まで加熱されうる。当該温度は、用いられる第一樹脂の融点に応じて当業者により適宜選択されてよい。本工程における混練は、好ましくは80~200℃で行われ、より好ましくは90~170℃で行われ、さらに好ましくは95~180℃で行われうる。混練時間は適宜設定されうる。
前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、澱粉含有第一樹脂は、ペレット化されることなく、そのまま成形工程に供されてもよい。これにより、ペレット化工程を省略することができる。
なお、前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、澱粉含有第一樹脂は、澱粉と第一樹脂を混合機にて混合した後、一軸押出機又は二軸の押出機によりストランドを押し出し、カッティングしてペレットを製造し、そのペレットをマスターバッチとして成形工程に供してもよい。
前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、前記澱粉100質量部に対して、好ましくは前記第一樹脂を30質量部以上配合し、より好ましくは前記第一樹脂を40質量部以上配合し、さらに好ましくは前記第一樹脂を50質量部以上配合し、さらにより好ましくは前記第一樹脂を60質量部以上配合しうる。
前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、前記澱粉100質量部に対して、好ましくは前記第一樹脂を95質量部以下配合し、より好ましくは前記第一樹脂を90質量部以下配合し、さらに好ましくは前記第一樹脂を85質量部以下配合し、さらにより好ましくは前記第一樹脂を80質量部以下配合しうる。
前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、前記澱粉及び前記第一樹脂に加えて、他の成分を配合してもよい。当該他の成分として、例えば、前記相溶化剤、前記酸化分解促進剤、前記着色剤、及び前記酸化防止剤などを挙げることができる。
前記澱粉含有樹脂組成物調製工程において、第二樹脂に相当する熱可塑性樹脂はペレット化されたものが供されてもよく、粉末状の形態のものであってもよい。前記澱粉含有第一樹脂と、前記第二樹脂の混練は、例えば、一軸混練押出機、又は二軸混練押出機等により行われてよい。これらの混練押出機として、当該技術分野で既知の装置が用いられてよい。好ましくは、前記澱粉含有樹脂組成物調製工程は、二軸混練押出機による混練処理を少なくとも含む。二軸混練押出機として、同方向回転式の二軸混練押出機が用いられてよく、又は、異方向回転式の二軸混練押出機が用いられてよい。二軸混練押出機による混練処理を行うことにより、澱粉がより均一に分散した澱粉含有樹脂組成物を得ることができる。
前記澱粉含有樹脂組成物調製工程においては、第二樹脂が溶融可能な温度まで加熱されうる。当該温度は、用いられる第二樹脂の融点に応じて当業者により適宜選択されてよい。本工程における混練は、好ましくは80~200℃で行われ、より好ましくは90~170℃で行われ、さらに好ましくは95~180℃で行われうる。混練時間は適宜設定されうる。
前記澱粉含有樹脂組成物調製工程において、澱粉含有樹脂組成物は、ペレット化されることなく、そのまま成形工程に供されてもよい。これにより、ペレット化工程を省略することができる。
なお、前記澱粉含有樹脂組成物調製工程において得られた澱粉含有樹脂組成物は、澱粉含有第一樹脂と、第二樹脂を、一軸押出機又は二軸の押出機に供給し、これらの押出機よりストランドを押し出し、カッティングしてペレットを製造し、そのペレットをマスターバッチとして成形工程に供してもよい。
前記澱粉含有樹脂組成物調製工程において、前記澱粉含有第一樹脂100質量部に対して、好ましくは第二樹脂を60質量部以上配合し、より好ましくは前記第二樹脂を70質量部以上配合し、さらに好ましくは前記第二樹脂を80質量部以上配合し、さらにより好ましくは第二樹脂を90質量部以上配合しうる。
前記澱粉含有樹脂組成物調製工程において、前記澱粉含有第一樹脂100質量部に対して、好ましくは第二樹脂を170質量部以下配合し、より好ましくは前記第二樹脂を150質量部以下配合し、さらに好ましくは前記第二樹脂を130質量部以下配合し、さらにより好ましくは第二樹脂を120質量部以下配合しうる。
前記澱粉含有樹脂組成物調製工程において、前記澱粉含有第一樹脂及び前記第二樹脂に加えて、他の成分を配合してもよい。当該他の成分として、例えば、前記相溶化剤、前記酸化分解促進剤、前記着色剤、及び前記酸化防止剤などを挙げることができる。
前記成形工程において、例えば、澱粉含有樹脂組成物がインフレーション成形機を用いてフィルムに成形されてもよい。
フィルムを製造する際に、採用される成形温度域は、原料を直接、混合、混練して成形する場合、原料のヤケの発生や分解、シリンダー内の焼き付きを抑制する観点及び澱粉が未溶融状態で吐出されて、圧力上昇とともにトラブルの原因となることを抑制する観点から、95~200℃の範囲であるのが好ましく、また、ペレットを製造して成形する場合、95~200℃の範囲であるのが好ましい。
また、原料のヤケの発生や分解を防止する観点から、シリンダー内の滞留時間は最大でも10分以内が好ましい。
インフレーション成形機により押し出し成形されたフィルムは、引取りロールの温度を90℃以下に設定し、所定の厚さに成形されたフィルムが冷却され、引取られ、巻き取られてもよい。
本実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムは、当該フィルムの主面上に膜によって被覆されていてもよい。膜によって被覆される主面は、前記フィルムの片面側であってもよく、また、両面側であってもよい。このような膜として、例えば、ポリエチレン(PE樹脂)、ポリプロピレン(PP)樹脂等、又はこれらのうちから選択される2種以上の組合せのポリオレフィン系樹脂であってもよく、また、例えば、ポリ乳酸樹脂(PLA)、若しくはポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂(PBAT)、ポリブチレンサクシネート樹脂(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(PHA)等、又はこれらのうちから選択される2種以上の組合せのポリエステル系樹脂であってもよい。前記フィルム又はシートと膜との間には接着層が設けられていてもよい。このような接着層として、前記フィルム又はシートを形成する樹脂組成物の融点よりも低い融点を有する樹脂等が用いられてもよい。このような接着層に用いられる樹脂として、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。澱粉非溶出性フィルムと前記膜は、ヒートシール、接着層を介して接着されうる。
(4)フィルムの用途
本実施形態に係る澱粉非溶出性フィルムは、例えば、食品包装用フィルム、食品包装用袋、買物袋、生ゴミ収集袋、農業用袋として使用されうる。
2.第2の実施形態(成形体の製造方法の例)
(1)成形体の製造方法
第2の実施形態に係る成形体の製造方法は、澱粉と第一樹脂B1とを混合して澱粉含有第一樹脂を得る澱粉含有第一樹脂調製工程、前記澱粉含有第一樹脂と第二樹脂B2とを混合して澱粉含有樹脂組成物を得る澱粉含有樹脂組成物調製工程、及び、前記澱粉含有樹脂組成物を成形して澱粉非溶出性の成形体を得る成形体形成工程、を含む。
[澱粉含有第一樹脂調製工程]
澱粉含有第一樹脂調製工程において、澱粉と、第一樹脂B1を混合する。
以下、本工程で用いられる澱粉について説明する。
<澱粉>
本工程で用いられる澱粉として、地下系澱粉及び地上系澱粉を挙げることができる。
地下系澱粉は、地下で蓄積された澱粉であり、例えば、地下茎又は根などに蓄積された澱粉をいう。地下系澱粉として、例えば、タピオカ澱粉(キャッサバ澱粉)、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、クズ澱粉、及びワラビ澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。
地上系澱粉は、地上で蓄積された澱粉であり、例えば、種子などに蓄積された澱粉をいう。地上系澱粉として、例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、ドングリ澱粉及び米澱粉を挙げることができるがこれらに限定されない。
本工程では、好ましくは地下系澱粉を用いてもよい。地下系澱粉を第一樹脂と混合させることによって、当該第一樹脂の臭気をより低減することができる。
前記澱粉は、澱粉の変性物(すなわち変性澱粉)、特には地下系澱粉の変性物であってもよい。このような変性物として、物理的に変性された物理的変性澱粉又は化学的に修飾された化学的変性澱粉が挙げられる。物理的変性澱粉としては、例えば、アルファー澱粉、湿熱澱粉等が挙げられる。また、化学的変性澱粉として、例えば、アセト酢酸エステル化澱粉、酢酸エステル化澱粉、ヒドロキシメチルエーテル化澱粉、ヒドロキシプロピルエーテル化澱粉、カルボキシメチルエーテル化澱粉、アリルエーテル化澱粉、メチルエーテル化澱粉、コハク酸エステル化澱粉、キサントゲン酢酸エステル化澱粉、硝酸エステル化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、リン酸架橋澱粉、ホルムアルデヒド架橋澱粉、アクロレイン架橋澱粉、エピクロルヒドリン架橋澱粉等が挙げられる。変性物は、変性されていない澱粉と比べて、より低い温度で可塑化可能である。そのため、後述する可塑化澱粉を製造する際の加熱に伴う臭気及び/又は着色を抑制することができる。
前記澱粉は、好ましくは平衡水分を含むものであってよい。平衡水分の量は、例えば、澱粉質量に対して、好ましくは10質量%~15質量%であり、より好ましくは10質量%~14質量%であり、さらに好ましくは10質量%~13質量%であり、さらにより好ましくは11質量%~13質量%でありうる。澱粉を可塑化する観点から、上記数値範囲内の平衡水分を含む澱粉又は変性澱粉が好ましい。
本工程において用いられる澱粉は可塑化されていてもよい。前記澱粉が可塑化されることにより、澱粉粒の粒子径が2μm以下となりうる。これにより、成形される成形体の表面を平滑にすることができ、また、例えば、成形体の物性(例えば、引張伸びなど)を向上させることもできる。澱粉の可塑化は、例えば、澱粉を加熱する方法、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と澱粉とを接触させて加熱する方法によって実現されうる。
また、前記可塑化された澱粉(以下、「可塑化澱粉」と称する。)を用いることで、良好な品質(例えば、表面平滑性、低着色度、及び低臭)を有する成形体を製造することができる。
また、前記可塑化澱粉を用いることによって、成形された成形体に透明感を付与することができる。また、前記可塑化澱粉を用いることによって、成形された成形体表面を平滑にすることもできる。
本工程において、前記澱粉と前記第一樹脂B1を混合する際、直接、前記澱粉と前記第一樹脂B1を混合してもよい。又は、澱粉と、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、を含む可塑化澱粉材料として、前記第一樹脂B1と混合してもよい。
以下、本工程で用いられる可塑化澱粉材料について説明する。
<可塑化澱粉材料>
可塑化澱粉材料は、澱粉を主成分とする材料であってよい。前記可塑化澱粉材料中の澱粉の含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上でありうる。前記可塑化澱粉材料中の澱粉の含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下でありうる。当該澱粉の含有割合は、150℃におけるTG測定(熱重量分析)により測定されてよい。具体的には、当該含有割合は、TG測定装置(STA7200、株式会社 日立ハイテクサイエンス)を用いて測定される質量変化量に基づき決定されてよい。当該質量変化量は揮発性成分の減少量に対応し、当該減少量は、前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の量に対応する。そのため、可塑化澱粉材料中の澱粉の含有割合は以下の式により求められる:(可塑化澱粉材料中の澱粉の含有割合(単位:質量%))=(質量変化量の測定開始後の質量)/(質量変化量の測定開始前の質量)×100。前記質量変化量の測定条件は以下のとおりである:温度範囲25℃~150℃、昇温速度20℃/分、窒素下。
本明細書において、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物とは、常温よりも高い温度で澱粉と接触することによって澱粉を糊化又は可塑化することができる極性有機化合物をいう。常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物として、当技術分野で既知の有機化合物が用いられてよい。
常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、常温では澱粉を糊化又は可塑化可能でないが常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物をいう。本明細書内において、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物を「高温で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物」ともいう。例えば、極性有機化合物と澱粉とを常温で1時間接触させても当該澱粉が糊化又は可塑化しないが、極性有機化合物と澱粉とを高温で1時間接触させることによって当該澱粉が糊化又は可塑化する場合に、当該極性有機化合物は、「高温で澱粉を糊化又は可塑化可能」である。前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、澱粉を糊化可能な極性有機化合物、澱粉を可塑化可能な極性有機化合物、及び澱粉を糊化及び可塑化可能な極性有機化合物のいずれであってもよい。
本明細書において、常温よりも高い温度(「高温」ともいう)は、加熱処理によって達成される温度をいう。高温は、例えば、50℃以上の温度であり、好ましくは60℃以上の温度であり、より好ましくは80℃以上の温度であり、さらに好ましくは100℃以上の温度でありうる。
本明細書において、常温は、加熱処理が行われない場合における温度をいう。常温は、例えば、50℃未満であり、好ましくは10~40℃であり、より好ましくは15℃~35℃であり、さらにより好ましくは20~30℃でありうる。
好ましくは、前記可塑化澱粉材料中の常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の合計含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下でありうる。前記可塑化澱粉材料中の常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の合計含有割合は、当該可塑化澱粉材料の質量に対して、例えば、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上でありうる。常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の合計含有割合は、上記で述べたTG測定により測定された糊化澱粉の含有割合を、100質量%から差し引くことにより算出される。
本工程において、常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物は、好ましくは常温で液体である。これにより、澱粉との混合を容易に行うことができる。
前記可塑化澱粉材料を構成する、常温よりも高い温度(高温)で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物が、少なくとも一つの多価アルコールを含みうる。
多価アルコールとは、分子中に2個以上の水酸基を有するアルコールをいう。このような多価アルコールは、好ましくは炭素数が2~5の多価アルコールであり、より好ましくは炭素数が2~4の多価アルコールでありうる。前記多価アルコールは、好ましくは2~5の水酸基(OH基)を有し、より好ましくは2~4の水酸基(OH基)を有する。
前記多価アルコールは、例えば、グリセリン及びグリコールを含みうる。当該グリコールとして、例えば、エチレングリコール及びプロピレングリコールを挙げることができる。
前記多価アルコールは、好ましくはグリセリン、エチレングリコール及びプロピレングリコールから選ばれる1つ又は2つ以上の組合せを含みうる。前記可塑化澱粉材料は、当該多価アルコールを、澱粉100質量部に対して、例えば、好ましくは10質量部~40質量部を含み、より好ましくは20質量部~35質量部を含みうる。また、成形体中における多価アルコールの含有量が、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上でありうる。
高温多湿条件下でのブリード発生を抑制する観点から成形体中におけるグリセリンの含有量が、好ましくは0質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上9質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以上7質量%以下でありうる。グリセリンの量が少ないほど、ブリードの発生を抑制できる。したがって、グリセリンを用いずに、グリセリンの代わりに、他の多価アルコール等を用いるのがよく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールをグリセリンの代わりに用いるのが好ましい。すなわち、ブリードの発生を抑制する観点からは、グリセリンを全く含有させずに、例えば、エチレングリコールのみ又はプロピレングリコールのみ含有させてもよい。
しかし、グリセリン含有量の減少に伴い澱粉粒が大きくなることがある。グリセリン含有量を減少させても、澱粉粒を小さくするために、前記可塑化澱粉材料は、有機酸をさらに含んでもよい。有機酸とは、酸性を示す有機化合物をいい、有機化合物とは、少なくとも1個の炭素原子を有する化合物をいう。有機酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、有機ホスフィン酸、有機ホスホン酸等が挙げられる。
上記カルボン酸としては、例えば、乳酸、グルコン酸、酢酸、無水酢酸等のモノカルボン酸;酒石酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸、コハク酸、無水コハク酸、リンゴ酸、等のジカルボン酸;クエン酸等の3以上のカルボキシル基を有するカルボン酸などが挙げられる。上記スルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。上記スルフィン酸としては、例えば、ベンゼンスルフィン酸、システィンスルホン酸等が挙げられる。上記有機ホスフィン酸としては、例えば、ジエチルホスフィン酸等が挙げられる。上記有機ホスホン酸としては、例えば、メチルホスホン酸等が挙げられる。
前記可塑化澱粉材料は、多価アルコールを含みうる。当該多価アルコールは、例えば、グリセリンとエチレングリコールとの組合せであり、又はエチレングリコールのみである。なお、エチレングリコールのみの場合、有機酸を含みうる。
本工程において、前記可塑化澱粉材料を、常温よりも高い温度で前記澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の存在下で加熱することによって糊化又は可塑化しうる。当該糊化又は可塑化は、例えば、高温で糊化又は可塑化可能な極性有機化合物の存在下での加熱による分子間結合(主に水素結合)の切断によってもたらされるものであってもよい。糊化又は可塑化された澱粉は、例えば、α化澱粉であってよい。当該可塑化が、成形体への透明感及び/又は平滑性の付与に寄与していると考えられる。
当該可塑化は、成形体に含まれる澱粉粒を小さくすることにも寄与していると考えられる。例えば、可塑化されていない澱粉を含む澱粉含有樹脂組成物から形成された成形体は、当該澱粉の粒子が成形体の表面に表れやすい。当該澱粉の粒子は、例えば、約20μm程度の粒子サイズを有する。そのため、例えば、可塑化されていない澱粉を含む澱粉含有樹脂組成物を用いてフィルムを形成する場合、当該澱粉の粒子形状をフィルムの表面に表れないようにするために、当該樹脂組成物中の当該澱粉の含有割合は、当該樹脂組成物の質量に対して、例えば、最大で30質量%程度に制限される。また、フィルムの厚みを20μm程度又はそれ以下とする場合において、当該澱粉の粒子が、フィルム表面に顕著に表れる。また、可塑化されていない澱粉を含む澱粉含有樹脂組成物から不織布を製造しようとした場合、不織布を形成する繊維の太さが20~30μm程度であるのに対し、澱粉の粒子径が20μmとなり、澱粉粒の大きさが繊維の太さとほぼ同じとなり、澱粉粒が繊維の外側にはみ出して、糸切れを引き起こす。一方、前記可塑化澱粉材料に含まれる澱粉は可塑化されているので、澱粉粒の粒子径が2μm以下となり、澱粉粒が繊維の外側にはみ出すことがなく、糸切れが発生しない。また、澱粉粒の粒子径が小さいので、不織布等の細い糸や透明度の高いものを提供できる。さらに澱粉の粒子径が小さいので、当該澱粉の形状が樹脂組成物の表面に表れにくい。そのため、成形体中の澱粉の含有割合は、当該成形体の質量に対して30質量%超とすることができ、例えば、50%以上であってよく、特には60%以上であってよく、より特には70%以上であってもよい。当該澱粉の含有割合が高くても、成形体の表面が平滑である。
以下、本工程で用いられる第一樹脂について説明する。
<第一樹脂>
第一樹脂B1は、好ましくは熱可塑性樹脂であってよい。当該熱可塑性樹脂は、好ましくはポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂、又は、これらの樹脂の混合物であってよい。前記熱可塑性樹脂は、ポリスチレン系樹脂であってもよい。
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン類(例えば、α-オレフィン類)を主要なモノマーとする重合により得られる高分子である。当該ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂若しくはポリプロピレン(PP)樹脂又はこれらの樹脂の組合せであってよい。
ポリエチレン樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE: Low Density Polyethylene)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE: High Density Polyethylene)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE:Very Low Density Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)等のエチレン共重合体、又は超高分子量ポリエチレン樹脂(UHMW-PE: Ultra High Molecular Weight-Polyethylene)又はこれらの樹脂の組合せであってよい。
ポリプロピレン樹脂は、例えば、ホモポリマーのポリプロピレン樹脂、又は、ランダムコポリマー若しくはブロックコポリマーのポリプロピレン樹脂(例えば、エチレン-プロピレン共重合体など)又はこれらの樹脂の組合せであってよい。
ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂(例えば、バイオマス由来ポリエチレン樹脂など)であってよく、例えば、バイオマスポリエチレン樹脂でありうる。バイオマスポリエチレン樹脂は、例えば、LDPE、LLDPE、又はHDPEでありうる。これによりCO排出量を削減することができる。
前記ポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィン系樹脂であってもよい。すなわち、前記熱可塑性樹脂は、例えば、メタロセン触媒系のポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂であってよく、又は、これらの樹脂の組合せであってもよい。
前記ポリスチレン系樹脂も、メタロセン触媒系のポリスチレン系樹脂であってもよい。
ポリエステル系樹脂は、エステル結合によりモノマーが重合した高分子である。当該ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、若しくはポリカーボネート樹脂(PC)、ポリブチレンアジペートテレフタレート樹脂(PBAT)、ポリブチレンサクシネート樹脂(PBS)、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(PHA)、又はこれらから選択される樹脂の2以上の組合せであってよい。
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーが重合した高分子である。当該ポリスチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン樹脂、ゴム強化ポリスチレン樹脂(耐衝撃性ポリスチレン樹脂、HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メタクリル酸エステル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体、並びにアクリロニトリル・エチレンプロピレン・スチレン共重合体等又はこれらから選択される樹脂の2以上の組合せであってよい。
本工程において、第一樹脂B1の種類は、例えば、成形される成形体の種類に応じて当業者により適宜選択されてよいが、加工温度が低い熱可塑性樹脂が好ましい。例えば、成形体として、フィルムを形成する場合、前記熱可塑性樹脂は、例えば、好ましくはポリオレフィン系樹脂である。このようなポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂であってもよい。
本工程において、第一樹脂B1は、生分解性樹脂であってよい。生分解性樹脂として、例えば、生分解性ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、並びに、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)が挙げられ、また、前記生分解性樹脂のうちから選択される二種以上の混合物が挙げられる。この実施形態において、前記第一樹脂及び澱粉の両方が生分解性であることにより、この実施形態に係る成形体は、より環境にやさしいものとなりうる。
また、澱粉が水へ溶出することを抑制するため、前記第一樹脂B1のSP値は、7.8(cal/cm)1/2以上11.0(cal/cm)1/2以下であってよい。SP値は、前述した方法により算出されうる。澱粉の水への溶出を抑制する観点から、前記樹脂B1は、好ましくはエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA樹脂)、及びポリエチレン樹脂から選択される少なくとも一種を含みうる。
前記第一樹脂B1は、好ましくは90℃~180℃の融点を有する熱可塑性樹脂であり、より好ましくは95℃~170℃の融点を有する熱可塑性樹脂でありうる。より低い融点を有する熱可塑性樹脂を採用することによって、成形体成形時の温度を低くすることができ、前記澱粉の加熱に起因する臭気又は着色をより抑制することができる。
前記第一樹脂B1は、ペレット状でも粉体状でもよく、一軸押出機、二軸押出機やインジェクション成形機等で成形時に混合、混練され、均一に分散される。
本工程において、前記澱粉100質量部に対して、好ましくは前記第一樹脂B1を30質量部以上配合し、より好ましくは前記第一樹脂B1を40質量部以上配合し、さらに好ましくは前記第一樹脂B1を50質量部以上配合し、さらにより好ましくは前記第一樹脂B1を60質量部以上配合しうる。
本工程において、前記澱粉100質量部に対して、好ましくは前記第一樹脂B1を95質量部以下配合し、より好ましくは前記第一樹脂B1を90質量部以下配合し、さらに好ましくは前記第一樹脂B1を85質量部以下配合し、さらにより好ましくは前記第一樹脂B1を80質量部以下配合しうる。当該配合比率で混合することにより、成形体に含まれる澱粉粒を小さくすることができる。
[その他の成分]
本工程において、前記澱粉及び前記第一樹脂B1に加えて、他の成分を配合してもよい。当該他の成分として、例えば、相溶化剤、酸化分解促進剤、着色剤、及び酸化防止剤などを挙げることができる。
前記相溶化剤は、前記澱粉が可塑化澱粉である場合、当該可塑化澱粉と前記第一樹脂B1との相溶性をより向上させるために用いられてよい。
前記相溶化剤として、例えば、無水カルボン酸変性ポリオレフィン、オレフィン系のグラフト変性物、及びオレフィン系のコモノマーなどを挙げることができる。
前記無水カルボン酸変性ポリオレフィンを構成する無水カルボン酸は、好ましくは無水マレイン酸でありうる。前記相溶化剤は、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、及び無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる1つ又はこれらの2以上の組合せであってもよい。
前記オレフィン系のグラフト変性物は、酸変性ポリオレフィンであってよく、より具体的には不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性したポリオレフィンでありうる。グラフト変性に用いられる(未変性の)ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレン・α-オレフィン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体)であってよく、特にはポリプロピレンでありうる。例えば、特開2010-095671に記載された酸変性ポリオレフィンが用いられてよい。
前記酸化分解促進剤は、カルボン酸金属塩及び希土類化合物の組合せであってよい。当該組合せを含む酸化分解促進剤の例として、例えば、P-Life(ピーライフ・ジャパン・インク株式会社製)を挙げることができる。
前記酸化分解促進剤に含まれる前記カルボン酸金属塩は、例えば、炭素数が10~20である脂肪族カルボン酸の金属塩であってよく、より好ましくはステアリン酸金属塩であってよい。前記脂肪族カルボン酸と金属塩を形成する金属原子としては、例えば、コバルト、セリウム、鉄、アルミニウム、アンチモン、バリウム、ビスマス、クロミウム、銅、ガリウム、ランタン、リチウム、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、カルシウム、銀、ナトリウム、錫、タングステン、バナジウム、イットリウム、亜鉛、及びジルコニウムから選ばれる1つ又は2以上の組合せであってよく、より好ましくはカルシウム、マグネシウム、亜鉛、コバルト、セリウム、鉄、及び銅から選ばれる1つ又はこれらの2つ以上の組合せであってよい。例えば、前記金属塩は、ステアリン酸鉄であってよい。前記カルボン酸塩として、1種類のカルボン酸塩が単独で用いられてよく、又は、2種類以上のカルボン酸塩の組合せが用いられてもよい。
前記酸化分解促進剤に含まれる前記希土類化合物は、例えば、希土類の酸化物、希土類の水酸化物、希土類の硫酸塩、希土類の硝酸塩、希土類の酢酸塩、希土類の塩化物、又は希土類のカルボン酸塩であってよい。前記希土類化合物は、より具体的には、酸化セリウム、硫酸第二セリウム、硫酸第二セリウムアンモニウム、硝酸第二セリウムアンモニウム、酢酸セリウム、硝酸ランタン、塩化セリウム、硝酸セリウム、水酸化セリウム、オクチル酸セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウム、及び酸化スカンジウムから選ばれる1つ又は2つ以上の組合せであってよい。前記希土類化合物として、1種類の希土類化合物が単独で用いられてよく、又は、2種類以上の希土類化合物の組合せが用いられてもよい。
前記着色剤の例として、酸化チタン及び/又はカーボンブラックが用いられてよい。また、前記酸化防止剤の例として、フェノール系酸化防止剤が用いられてよいがこれに限定されない。
本工程において、好ましくは前記澱粉と、前記第一樹脂B1と、前記相溶化剤と、前記酸化分解促進剤とを含みうる。前記澱粉及び前記第一樹脂B1の構成比率は、例えば、好ましくは20質量部:80質量部~80質量部:20質量部であり、より好ましくは30質量部:70質量部~80質量部:20質量部であり、さらに好ましくは50質量部:50質量部~80質量部:20質量部でありうる。前記相溶化剤の含有量は、前記澱粉及び前記第一樹脂B1の合計量100質量部に対して、例えば、好ましくは1質量部~10質量部であり、より好ましくは2質量部~9質量部でありうる。前記酸化分解促進剤の含有量は、前記澱粉及び前記第一樹脂B1の合計量100質量部に対して、例えば、好ましくは0.01質量部~7質量部であり、より好ましくは0.05質量部~5質量部でありうる。
本工程は、澱粉と、常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、水と、を混合する第一混合工程、前記第一混合工程で得られた混合物を加熱することにより前記澱粉を可塑化して、可塑化澱粉を調製する可塑化澱粉調製工程を含んでいてもよい。
また、本工程においては、先ず、澱粉と、常温よりも高い温度で澱粉を糊化又は可塑化可能な極性有機化合物と、水と、第一樹脂B1等の原料が混合されていてもよい。第一樹脂B1はペレット化されたものが供されてもよく、粉末状の形態のものであってもよい。前記澱粉、前記第一樹脂B1等の原料の混合は、例えば、市販の撹拌機、又は、ヘンシェルミキサー、タンブラー型混合機、バーバリミキサー、ニーダーミキサー等の混合機により行われてもよい。前記原料の混合は、常温で行われてよい。また、常温で原料を混合した後、混合された原料が自然に40℃程度まで発熱してもよい。混合された原料の混練は、例えば、一軸混練押出機、又は二軸混練押出機等により行われてよい。これらの混練押出機として、当該技術分野で既知の装置が用いられてよい。好ましくは、前記澱粉含有第一樹脂調製工程は、二軸混練押出機による混練処理を少なくとも含む。二軸混練押出機として、同方向回転式の二軸混練押出機が用いられてよく、又は、異方向回転式の二軸混練押出機が用いられてよい。二軸混練押出機による混練処理を行うことにより、澱粉がより均一に分散した澱粉含有第一樹脂を得ることができる。
前記澱粉含有第一樹脂調製工程は、第一樹脂B1が溶融可能な温度まで加熱されうる。当該温度は、用いられる第一樹脂B1の融点に応じて当業者により適宜選択されてよい。本工程における混練は、好ましくは80~200℃で行われ、より好ましくは90~170℃で行われ、さらに好ましくは95~180℃で行われうる。混練時間は適宜設定されうる。
前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、澱粉含有第一樹脂は、ペレット化されることなく、そのまま成形工程に供されてもよい。これにより、ペレット化工程を省略することができる。
なお、前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、澱粉含有第一樹脂は、澱粉と第一樹脂B1を混合機にて混合した後、一軸押出機又は二軸の押出機によりストランドを押し出し、カッティングしてペレットを製造し、そのペレットをマスターバッチとして成形工程に供してもよい。
前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、前記澱粉100質量部に対して、好ましくは前記第一樹脂B1を30質量部以上配合し、より好ましくは前記第一樹脂B1を40質量部以上配合し、さらに好ましくは前記第一樹脂B1を50質量部以上配合し、さらにより好ましくは前記第一樹脂B1を60質量部以上配合しうる。
前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、前記澱粉100質量部に対して、好ましくは前記第一樹脂B1を95質量部以下配合し、より好ましくは前記第一樹脂B1を90質量部以下配合し、さらに好ましくは前記第一樹脂B1を85質量部以下配合し、さらにより好ましくは前記第一樹脂B1を80質量部以下配合しうる。
[澱粉含有樹脂組成物調製工程]
澱粉含有樹脂組成物調製工程において、前記澱粉含有第一樹脂と第二樹脂B2を混合して、澱粉含有樹脂組成物を得る。
以下、本工程で用いられる第二樹脂B2について説明する。
<第二樹脂>
本工程で用いられる第二樹脂B2は、澱粉含有第一樹脂調製工程で用いられる第一樹脂B1とは異なる種類の樹脂であってもよく、また、同じ種類の樹脂であってもよい。本工程で用いられる第二樹脂B2は、好ましくは熱可塑性樹脂でありうる。
澱粉含有樹脂組成物調製工程において、第二樹脂B2として用いられる熱可塑性樹脂は、好ましくはポリオレフィン系樹脂若しくはポリエステル系樹脂、又は、これらの樹脂の混合物であってよい。また、第二樹脂B2は、ポリスチレン系樹脂であってもよい。
ポリオレフィン系樹脂として、例えば、ポリエチレン(PE)樹脂若しくはポリプロピレン(PP)樹脂又はこれらの樹脂の組合せであってもよい。
ポリエチレン樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE: Low Density Polyethylene)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE: High Density Polyethylene)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE:Very Low Density Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene)若しくは超高分子量ポリエチレン樹脂(UHMW-PE: Ultra High Molecular Weight-Polyethylene)又はこれらの樹脂の組合せであってよい。
このようなポリエチレン樹脂として、好ましくは、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE: Low Density Polyethylene)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE: High Density Polyethylene)、超低密度ポリエチレン樹脂(VLDPE:Very Low Density Polyethylene)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene)又はこれらの樹脂の組合せであってよい。
ポリプロピレン樹脂は、例えば、ホモポリマーのポリプロピレン樹脂、又は、ランダムコポリマー若しくはブロックコポリマーのポリプロピレン樹脂(例えば、エチレン-プロピレン共重合体など)又はこれらの樹脂の組合せであってよい。
ポリオレフィン系樹脂は、好ましくはバイオマス由来のポリオレフィン系樹脂(例えばバイオマス由来ポリエチレン樹脂など)であってよく、例えば、バイオマスポリエチレン樹脂でありうる。バイオマスポリエチレン樹脂は、例えば、LDPE、LLDPE、又はHDPEでありうる。これによりCO2排出量を削減することができる。
前記ポリオレフィン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィン系樹脂であってもよい。すなわち、前記熱可塑性樹脂は、例えば、メタロセン触媒系のポリエチレン樹脂若しくはポリプロピレン樹脂であってよく、又は、これらの樹脂の組合せであってもよい。
本工程において、第二樹脂B2は、生分解性樹脂であってもよい。生分解性樹脂として、例えば、生分解性ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、並びに、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)が挙げられ、また、前記生分解性樹脂のうちから選択される二種以上の混合物が挙げられる。この実施形態において、前記澱粉含有第一樹脂及び澱粉の両方が生分解性であることにより、この実施形態に係る成形体は、より環境にやさしいものとなりうる。
また、成形された成形体から澱粉が水へ溶出することを抑制するため、前記第二樹脂B2のSP値が7.7(cal/cm)1/2以上8.4(cal/cm)1/2以下であってもよい。
さらに、好ましくは前記第一樹脂B1のSP値と前記第二樹脂B2のSP値とが下記関係式を満たしうる。
ΔSPB2W=|第二樹脂B2のSP値-23.4(cal/cm)1/2|>ΔSPB1W=|第一樹脂B1のSP値-23.4(cal/cm)1/2
上記関係式に示されるように、前記第二樹脂B2のSP値と水のSP値である23.4(cal/cm)1/2との差の絶対値が前記第一樹脂B1のSP値と水のSP値である23.4(cal/cm)1/2との差の絶対値よりも大きいことが好ましい。すなわち、前記第二樹脂B2が前記第一樹脂B1よりも親水性が小さいことが好ましい。このように本工程で用いられる前記第二樹脂B2が前記第一樹脂B1よりも親水性が小さいため、前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、第一樹脂B1で澱粉を被覆し、さらに、本工程で第一樹脂B1よりも親水性が小さい第二樹脂B2によって澱粉を被覆することにより、澱粉含有第一樹脂に含まれる澱粉が水に溶出することを抑制しうる。
前記第二樹脂B2は、ペレット状でも粉体状でもよく、一軸押出機、二軸押出機やインジェクション成形機等で成形時に混合、混練され、均一に分散される。
本工程において、前記澱粉含有第一樹脂中の澱粉濃度を希釈する観点から、第二樹脂B2は、前記澱粉含有第一樹脂100質量部に対して、好ましくは60質量部以上の配合量で、より好ましくは70質量部以上の配合量で、さらに好ましくは80質量部以上の配合量で、さらにより好ましくは90質量部以上の配合量で、前記澱粉含有第一樹脂と混合されうる。
第二樹脂B2は、前記澱粉含有第一樹脂100質量部に対して、好ましくは170質量部以下の配合量で、より好ましくは150質量部以下の配合量で、さらに好ましくは130質量部以下の配合量で、さらにより好ましくは120質量部以下の配合量で、前記澱粉含有第一樹脂と混合されうる。
<その他の成分>
本工程において、前記澱粉含有第一樹脂及び前記第二樹脂B2に加えて、他の成分を配合してもよい。当該他の成分として、例えば、相溶化剤、酸化分解促進剤、着色剤、及び酸化防止剤などを挙げることができる。
前記相溶化剤は、前記澱粉含有第一樹脂と前記第二樹脂B2との相溶性をより向上させるために用いられてもよい。
以下、本工程で用いられる相溶化剤について説明する。
<相溶化剤>
前記相溶化剤として、例えば、無水カルボン酸変性ポリオレフィン、オレフィン系のグラフト変性物、及びオレフィン系のコモノマーなどを挙げることができる。
前記無水カルボン酸変性ポリオレフィンを構成する無水カルボン酸は、好ましくは無水マレイン酸でありうる。前記相溶化剤は、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、及び無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体からなる群から選ばれる1つ又は2以上の組合せであってよい。
前記オレフィン系のグラフト変性物は、酸変性ポリオレフィンであってよく、より具体的には不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性したポリオレフィンでありうる。グラフト変性に用いられる(未変性の)ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレン・α-オレフィン共重合体(エチレン・プロピレン共重合体)であってよく、特にはポリプロピレンでありうる。例えば、特開2010-095671に記載された酸変性ポリオレフィンが用いられてよい。
本工程において、前記相溶化剤は、前記澱粉含有第一樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上の配合量で、より好ましくは2質量部以上の配合量で、さらに好ましくは3質量部以上の配合量で、さらにより好ましくは5質量部以上の配合量で、前記澱粉含有第一樹脂と混合されうる。
本工程において、前記澱粉含有第一樹脂と、前記第二樹脂B2との混合は、一軸押出機、二軸押出機を用いて行われてよい。本工程における混合温度は、好ましくは80~200℃であり、より好ましくは90~170℃であり、さらに好ましくは95~180℃でありうる。混合時間は適宜設定されうる。
[成形体形成工程]
成形体形成工程において、前記澱粉含有樹脂組成物を成形して澱粉非溶出性の成形体を得る。
成形体形成工程において、前記澱粉含有樹脂組成物を、例えば、インフレーション成形機を用いるインフレーション成形、Tダイ押出機を用いるTダイ成形、カレンダー成形機を用いるカレンダー成形、又はインジェクション成形機を用いるインジェクション成形などの成形方法によって成形体を成形してもよい。
上記各種成形機内において、前記澱粉含有樹脂組成物が成形温度まで加熱溶融され、成形機のダイ、口金から押し出され、冷却されて成形体が製造されうる。採用される成形温度域は、前記第一樹脂B1及び前記第二樹脂B2の融点以上であり、原料を直接、混練、混合して成形する場合、原料のヤケの発生や分解、成形機のシリンダー内の焼き付きを抑制する観点及び澱粉が未溶融状態で吐出されて、圧力上昇とともにトラブルの原因となることを抑制する観点から、95~200℃の範囲であるのが好ましい。また、原料のヤケの発生や分解を防止する観点から、成形機のシリンダー内における前記澱粉含有樹脂組成物の滞留時間は最大でも10分以内が好ましい。
本実施形態において、前記澱粉含有樹脂組成物を、インフレーション成形機を用い、95~200℃に温度設定し、フィルムを成形してもよい。インフレーション成形機により成形されたフィルムは、引取りロールの温度を90℃以下に設定し、所定の厚さに成形されたフィルムが冷却され、引取り、巻き取られてもよい。
前記澱粉含有樹脂組成物を、Tダイ押出機を用い、150~200℃に温度設定し、シートを成形してもよい。Tダイ押出機により押出成形されたシートは、引取りロールの温度を60℃以下に設定し、所定の厚さに成形されたシートが冷却され、引取り、巻き取られてもよい。
フィルムとは、厚みの薄い膜状のものをいい、フィルムの厚みは、例えば、200μm未満であり、特には10μm以上200μm未満でありうる。また、シートとは、薄い板状のものをいい、シートの厚みは、例えば、200μm未満であり、特には10μm以上200μm未満でありうる。
また、成形体形成工程において、前記澱粉含有樹脂組成物を、例えば、ブロー成形、射出成形、異形押出成形などの成形方法によって、食品包装用袋、買物袋、生ゴミ収集袋、農業用袋、容器(例えば、ボトル容器)、ボトルキャップ、プラダンボールを成形してもよい。
3.実施例
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲は、これらの実施例のみに限定されるものでない。実施例中、用いる評価方法及び評価基準は下記のとおりである。
(1)過マンガン酸カリウム消費量試験
過マンガン酸カリウム消費量の測定は、下記の操作工程により実施した。
(i)フィルムを5cm角に切り取り、両面を純水で十分に洗浄した。
(ii)ビーカーに純水を100mL入れ、このビーカーを60℃のウォーターバスで湯煎した。
(iii)60℃のウォーターバスで湯煎したビーカーの純水に、洗浄したフィルムを浸漬して、30分放置した。ビーカー内の液を溶出液とした。
(iv)30分経過後、フィルムを取り出し、溶出液をろ紙でろ過した。ろ紙の目は任意とした。ろ過された液をろ液とした。
(v)ろ液に3倍に希釈した市販の硫酸5mLと0.002mol/Lの過マンガン酸カリウム溶液10mLとを添加し、5分間煮沸した。
(vi)加熱を止め、直ちに上記(ii)の工程において、ビーカー内の純水にフィルムを浸漬しない以外は、上記(i)~(v)の工程を経たブランクと色差を目視で比較した。
なお、非溶出性は以下の基準により評価した。
A:ブランクと色差がない。
B:色が残るもののブランクよりも色が薄い。
C:無色になる。
試験例1:フィルムの製造
(実施例1)
下記表1に示されるとおり、可塑化澱粉材料として、コーン澱粉(製品名:昭和コーンスターチ、昭和産業株式会社)100質量部、グリセリン34量部、及び水27質量部を用意した。これら3成分を、ミキサー内で混合した。当該混合は常温で行われた。前記グリセリン、及び前記水は、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
当該混合により得られた混合物は、粉状混合物であった。
前記混合により得られた混合物を、二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、当該混合物が混練処理に付された。
当該混練処理におけるシリンダー温度は110℃であった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理後に、前記混合物は当該押出機のダイから押し出され、そして細長い略円柱状の可塑化澱粉(以下、「実施例1の可塑化澱粉(マスターバッチ)」ともいう)が得られた。
実施例1の可塑化澱粉50質量部、第一樹脂B1としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(750、東ソー株式会社製、SP値:9.1(cal/cm)1/2)50質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有第一樹脂(以下、「実施例1の澱粉含有第一樹脂」ともいう)を得た。
実施例1の澱粉含有第一樹脂60質量部、第二樹脂B2として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製、SP値:7.9(cal/cm)1/2)40質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有樹脂組成物(以下、「実施例1の澱粉含有樹脂組成物」ともいう)を得た。なお、実施例1の澱粉含有樹脂組成物中には可塑化澱粉が30質量部配合されている。
実施例1の澱粉含有樹脂組成物をインフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度150℃)へ供給し、そして、インフレーション成形を行った。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み40μmのフィルムを得た。
フィルムに関して過マンガン酸カリウム消費量試験を行い、澱粉の非溶出溶出性を上記方法及び基準に従い評価した。評価結果は下記表1に示されるとおりである。水に溶解する澱粉量が極めて少ないフィルムであった。得られたフィルムのΔSPB2W=|第二樹脂B2のSP値-23.4(cal/cm)1/2|=|7.9-23.4(cal/cm)1/2|=15.5(cal/cm)1/2であった。また、ΔSPB1W=|第一樹脂B1のSP値-23.4(cal/cm)1/2|=|9.1-23.4(cal/cm)1/2|=14.3(cal/cm)1/2であった。
Figure 2022086218000001
(実施例2)
実施例1と同じ方法で、細長い略円柱状の可塑化澱粉(以下、「実施例2の可塑化澱粉(マスターバッチ)」ともいう)が得られた。
上記表1に示されるとおり、前記二軸押出機内で第一樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(750、東ソー株式会社)の代わりに、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製、SP値:7.9(cal/cm)1/2)50質量部が混合されたこと以外は、実施例1と同じ方法で澱粉含有第一樹脂(以下、「実施例2の澱粉含有第一樹脂」ともいう)を得た。
実施例2の澱粉含有第一樹脂60質量部、第二樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製、SP値:7.9(cal/cm)1/2)40質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有樹脂組成物(以下、「実施例2の澱粉含有樹脂組成物」ともいう)を得た。なお、実施例2の澱粉含有樹脂組成物中には可塑化澱粉が30質量部配合されている。
実施例2の澱粉含有樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ方法でインフレーション成形を行った。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み40μmのフィルムを得た。
実施例2においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果が上記表1に示されている。水に溶解する澱粉が少ないフィルムであった。
(実施例3)
上記表1に示されるとおり、可塑化澱粉材料として、リン酸架橋タピオカ澱粉(製品名:T-1、松谷化学工業株式会社製)100質量部、グリセリン15質量部、エチレングリコール19質量部及び水27質量部を用意した。これら4成分を、ミキサー内で混合した。当該混合は常温で行われた。前記グリセリン、エチレングリコール、及び前記水は、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
当該混合により得られた混合物は、粉状混合物であった。
前記混合により得られた混合物を、二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、当該混合物が混練処理に付された。
当該混練処理におけるシリンダー温度は110℃であった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理後に、前記混合物は当該押出機のダイから押し出され、そして細長い略円柱状の可塑化澱粉(以下、「実施例3の可塑化澱粉(マスターバッチ)」ともいう)が得られた。
実施例3の可塑化澱粉50質量部、第一樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(750、東ソー株式会社製、SP値:9.1(cal/cm)1/2)50質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.2MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有第一樹脂(以下、「実施例3の澱粉含有第一樹脂」ともいう)を得た。
実施例3の澱粉含有第一樹脂60質量部、第二樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製、SP値:7.9(cal/cm)1/2)40質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有樹脂組成物(以下、「実施例3の澱粉含有樹脂組成物」ともいう)を得た。なお、実施例3の澱粉含有樹脂組成物中には可塑化澱粉が30質量部配合されている。
実施例3の澱粉含有樹脂組成物をインフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度150℃)へ供給し、そして、インフレーション成形を行った。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み40μmのフィルムを得た。
実施例3においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果は上記表1に示されるとおりである。水に溶解する澱粉量が少ないフィルムであった。得られたフィルムのΔSPB2W=|第二樹脂B2のSP値-23.4(cal/cm)1/2|=|7.9-23.4(cal/cm)1/2|=15.5(cal/cm)1/2であった。また、ΔSPB1W=|第一樹脂B1のSP値-23.4(cal/cm)1/2|=|9.1-23.4(cal/cm)1/2|=14.3(cal/cm)1/2であった。
(実施例4)
上記表1に示されるとおり、可塑化澱粉材料として、リン酸架橋タピオカ澱粉(製品名:T-1、松谷化学工業株式会社製)100質量部、グリセリン15質量部、エチレングリコール19質量部、水27質量部及びコハク酸1質量部を用意した。これら5成分を、ミキサー内で混合した。当該混合は常温で行われた。前記グリセリン、エチレングリコール、及び前記水は、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
当該混合により得られた混合物は、粉状混合物であった。
前記混合により得られた混合物を、二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、当該混合物が混練処理に付された。
当該混練処理におけるシリンダー温度は110℃であった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理後に、前記混合物は当該押出機のダイから押し出され、そして細長い略円柱状の可塑化澱粉(以下、「実施例4の可塑化澱粉(マスターバッチ)」ともいう)が得られた。
実施例4の可塑化澱粉50質量部、第一樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製、SP値:7.9(cal/cm)1/2)50質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.2MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有第一樹脂(以下、「実施例4の澱粉含有第一樹脂」ともいう)を得た。なお、実施例4の澱粉含有樹脂組成物中には可塑化澱粉が30質量部配合されている。
実施例4の澱粉含有第一樹脂60質量部、第二樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製、SP値:7.9(cal/cm)1/2)40質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有樹脂組成物(以下、「実施例4の澱粉含有樹脂組成物」ともいう)を得た。
実施例4の澱粉含有樹脂組成物をインフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度150℃)へ供給し、そして、インフレーション成形を行った。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み40μmのフィルムを得た。
実施例4においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果は上記表1に示されるとおりである。水に溶解する澱粉量が少ないフィルムであった。
(実施例5)
上記表1に示されるとおり、可塑化澱粉材料として、リン酸架橋タピオカ澱粉(製品名:T-1、松谷化学工業株式会社製)100質量部、グリセリン7質量部、エチレングリコール27質量部、水27質量部及びコハク酸1質量部を用意した。これら5成分を、ミキサー内で混合した。当該混合は常温で行われた。前記グリセリン、エチレングリコール、及び前記水は、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
当該混合により得られた混合物は、粉状混合物であった。
前記混合により得られた混合物を、二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、当該混合物が混練処理に付された。
当該混練処理におけるシリンダー温度は110℃であった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理後に、前記混合物は当該押出機のダイから押し出され、そして細長い略円柱状の可塑化澱粉(以下、「実施例5の可塑化澱粉(マスターバッチ)」ともいう)が得られた。
実施例5の可塑化澱粉70質量部、第一樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(750、東ソー株式会社製、SP値:9.1(cal/cm)1/2)30質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.2MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有第一樹脂(以下、「実施例5の澱粉含有第一樹脂」ともいう)を得た。
実施例5の澱粉含有第一樹脂45質量部、第二樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製、SP値:7.9(cal/cm)1/2)50質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有樹脂組成物(以下、「実施例5の澱粉含有樹脂組成物」ともいう)を得た。なお、実施例5の澱粉含有樹脂組成物中には可塑化澱粉が30質量部配合されている。
実施例5の澱粉含有樹脂組成物をインフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度150℃)へ供給し、そして、インフレーション成形を行った。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み40μmのフィルムを得た。
実施例5においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果は上記表1に示されるとおりである。水に溶解する澱粉量が少ないフィルムであった。得られたフィルムのΔSPB2W=|第二樹脂B2のSP値-23.4(cal/cm)1/2|=|7.9-23.4(cal/cm)1/2|=15.5(cal/cm)1/2であった。また、ΔSPB1W=|第一樹脂B1のSP値-23.4(cal/cm)1/2|=|9.1-23.4(cal/cm)1/2|=14.3(cal/cm)1/2であった。
(比較例1)
比較例1においては、澱粉含有第一樹脂を調製せずに、実施例1の可塑化澱粉30質量部、第二樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製、SP値:7.9(cal/cm)1/2)70質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有樹脂組成物(以下、「比較例1の澱粉含有樹脂組成物」ともいう)を得た。なお、比較例1の澱粉含有樹脂組成物中には可塑化澱粉が30質量部配合されている。
比較例1の澱粉含有樹脂組成物をインフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度150℃)へ供給し、そして、インフレーション成形を行った。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み40μmのフィルムを得た。
比較例1においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果は上記表1に示されるとおりである。水に溶解する澱粉量が極めて多いフィルムであった。
(比較例2)
比較例2においては、澱粉含有第一樹脂を調製せずに、実施例5の可塑化澱粉30質量部、第二樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE: Linear Low Density Polyethylene、製品名UF641、日本ポリエチレン株式会社製、SP値:7.9(cal/cm)1/2)70質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有樹脂組成物(以下、「比較例2の澱粉含有樹脂組成物」ともいう)を得た。なお、比較例2の澱粉含有樹脂組成物中には可塑化澱粉が30質量部配合されている。
比較例2の澱粉含有樹脂組成物をインフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度150℃)へ供給し、そして、インフレーション成形を行った。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み40μmのフィルムを得た。
比較例2においても、実施例1と同じ評価が行われた。評価結果は上記表1に示されるとおりである。水に溶解する澱粉量が極めて多いフィルムであった。
(評価結果のまとめ)
実施例1~5は水に対する澱粉の溶出量が少なく、食品の一次包装に好適なフィルムであった。一方、比較例1、2は水に対する澱粉の溶出量が多く、食品の一次包装に好適なフィルムではなかった。
(実施例6)
可塑化澱粉材料として、リン酸架橋タピオカ澱粉(製品名:T-1、松谷化学工業株式会社製)100質量部、グリセリン7質量部、エチレングリコール27質量部、水27質量部及びコハク酸1質量部を用意した。これら5成分を、ミキサー内で混合した。当該混合は常温で行われた。前記グリセリン、エチレングリコール、及び前記水は、前記ミキサーに投入する前に予め混合されていた。
当該混合により得られた混合物は、粉状混合物であった。
前記混合により得られた混合物を、二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、当該混合物が混練処理に付された。
当該混練処理におけるシリンダー温度は110℃であった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理後に、前記混合物は当該押出機のダイから押し出され、そして細長い略円柱状の可塑化澱粉(以下、「実施例6の可塑化澱粉(マスターバッチ)」ともいう)が得られた。
実施例6の可塑化澱粉50質量部、第一樹脂として生分解性樹脂PBAT(製品名エコフレックス(登録商標)、BASFジャパン株式会社製、SP値:10.7(cal/cm)1/2)50質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.2MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有第一樹脂(以下、「実施例6の澱粉含有第一樹脂」ともいう)を得た。
実施例6の澱粉含有第一樹脂60質量部、第二樹脂として生分解性樹脂PBAT(製品名エコフレックス(登録商標)、BASFジャパン株式会社製、SP値:10.7(cal/cm)1/2)40質量部、及び相溶化剤(無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製)3質量部を二軸押出機(PCM30、株式会社池貝)内へ供給し、そして、これらの成分が混練処理に付された。当該混練処理におけるスクリュー温度は170℃であり、かつ、樹脂圧力は4.4MPaであった。当該混練処理において、ベントからの吸引が行われた。当該混練処理によって、澱粉含有樹脂組成物(以下、「実施例6の澱粉含有樹脂組成物」ともいう)を得た。なお、実施例6の澱粉含有樹脂組成物中には可塑化澱粉が30質量部配合されている。
実施例6の澱粉含有樹脂組成物をインフレーション成形機(株式会社プラコー、ダイスΦ65、押出機径55mm、温度150℃)へ供給し、そして、インフレーション成形を行った。当該インフレーション成形は、150℃~160℃で行われた。当該インフレーション成形によって、厚み40μmのフィルムを得た。
実施例6においても、実施例1と同じ評価が行われた。水に溶解する澱粉量が少ないフィルムであった。
以上、本技術の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等を用いてもよい。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。

Claims (22)

  1. 澱粉を含む熱可塑性樹脂から形成された澱粉非溶出性フィルム。
  2. 前記澱粉非溶出性フィルムの澱粉非溶出性は、前記フィルムに含まれる澱粉の水への溶出性を評価する過マンガン酸カリウム消費量試験によって判定される非溶出性である、請求項1に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  3. 前記澱粉は、可塑化澱粉である、請求項1又は2に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  4. 前記澱粉は、トウモロコシ澱粉及び/又はタピオカ澱粉である、請求項1~3のいずれか1項に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  5. 前記熱可塑性樹脂は、SP値が7.8(cal/cm)1/2以上11.0(cal/cm)1/2以下である第一樹脂B1を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  6. 前記第一樹脂B1は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)である、請求項5に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  7. 前記熱可塑性樹脂は、SP値が7.7(cal/cm)1/2以上8.4(cal/cm)1/2以下である第二樹脂B2を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  8. 前記第二樹脂B2は、ポリエチレン樹脂である、請求項7に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  9. 前記第一樹脂B1のSP値と前記第二樹脂B2のSP値とが下記関係式を満たす、請求項7又は8に記載の澱粉非溶出性フィルム。
    ΔSPB2W=|第二樹脂B2のSP値-23.4(cal/cm)1/2|>ΔSPB1W=|第一樹脂B1のSP値-23.4(cal/cm)1/2
  10. 前記熱可塑性樹脂は、相溶化剤を含む請求項1~9のいずれか1項に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  11. 前記相溶化剤は、無水カルボン酸変性ポリオレフィンである、請求項10に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  12. 前記澱粉非溶出性フィルムの用途が食品包装用である、請求項1~11のいずれか1項に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  13. 前記熱可塑性樹脂が生分解性樹脂である、請求項1~12のいずれか1項に記載の澱粉非溶出性フィルム。
  14. 澱粉と第一樹脂B1とを混合して澱粉含有第一樹脂を得る澱粉含有第一樹脂調製工程、
    前記澱粉含有第一樹脂と第二樹脂B2とを混合して澱粉含有樹脂組成物を得る澱粉含有樹脂組成物調製工程、及び、
    前記澱粉含有樹脂組成物を成形して成形体を得る成形体形成工程、
    を含み、
    前記成形体は澱粉非溶出性である、
    成形体の製造方法。
  15. 前記成形体がフィルムである、請求項14に記載の成形体の製造方法。
  16. 前記第二樹脂B2は、前記第一樹脂B1と異なる樹脂である、請求項14又は15に記載の成形体の製造方法。
  17. 前記第二樹脂B2は、前記第一樹脂B1と同じ樹脂である、請求項14又は15に記載の成形体の製造方法。
  18. 前記第一樹脂B1のSP値が7.8(cal/cm)1/2以上11.0(cal/cm)1/2以下である、請求項14~17のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  19. 前記第二樹脂のSP値が7.7(cal/cm)1/2以上8.4(cal/cm)1/2以下である、請求項14~18のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  20. 前記第一樹脂B1のSP値と前記第二樹脂B2のSP値とが下記関係式を満たす、請求項14~19のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
    ΔSPB2W=|第二樹脂B2のSP値-23.4(cal/cm)1/2|>ΔSPB1W=|第一樹脂B1のSP値-23.4(cal/cm)1/2
  21. 前記澱粉含有第一樹脂調製工程において、前記澱粉100質量部に対して、前記第一樹脂B1を30質量部以上配合する、請求項14~20のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  22. 前記澱粉含有樹脂組成物調製工程において、前記澱粉含有第一樹脂100質量部に対して、前記第二樹脂B2を60質量部以上配合する、請求項14~21のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
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