JP2022085857A - 酸化珪素膜用研磨液組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】一態様において、酸化珪素膜研磨における研磨選択性を向上可能な酸化珪素膜用研磨液組成物を提供する。
【解決手段】本開示は、一態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、水溶性アニオン性縮合物(成分B)と、水系媒体とを含有し、成分Bが、下記式(I)で表されるモノマー(構成モノマーb1)及び下記式(II)で表されるモノマー(構成モノマーb2)を含むモノマーの共縮合物であり、成分Bにおける構成モノマーb1と構成モノマーb2の合計に対する構成モノマーb1のモル比(%)が30%を超える、酸化珪素膜用研磨液組成物に関する。
【解決手段】本開示は、一態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、水溶性アニオン性縮合物(成分B)と、水系媒体とを含有し、成分Bが、下記式(I)で表されるモノマー(構成モノマーb1)及び下記式(II)で表されるモノマー(構成モノマーb2)を含むモノマーの共縮合物であり、成分Bにおける構成モノマーb1と構成モノマーb2の合計に対する構成モノマーb1のモル比(%)が30%を超える、酸化珪素膜用研磨液組成物に関する。
Description
本開示は、酸化セリウム粒子を含有する酸化珪素膜用研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び基板の研磨方法に関する。
ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)技術とは、加工しようとする被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で研磨液をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面凹凸部分を化学的に反応させると共に機械的に除去して平坦化させる技術である。
現在では、半導体素子の製造工程における、層間絶縁膜の平坦化、シャロートレンチ素子分離構造(以下「素子分離構造」ともいう)の形成、プラグ及び埋め込み金属配線の形成等を行う際には、このCMP技術が必須の技術である。近年、半導体素子の多層化、高精細化が飛躍的に進み、より平坦性が良好でありながら、高速で研磨できることが望まれる。例えば、シャロートレンチ素子分離構造の形成工程では、高研磨速度と共に、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)に対する研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)の研磨選択性(換言すると、研磨ストッパ膜の方が被研磨膜よりも研磨されにくいという研磨の選択性)の向上が望まれている。
特許文献1には、シャロートレンチアイソレーションにて使用する半導体装置研磨用研磨材組成物であって、水、酸化セリウム微粉末、並びに、-COOH基、-COOMX基、-SO3H基及び-SO3MY基の少なくとも1つを有する水溶性有機化合物を1種又は2種以上含有する研磨用研磨材組成物が開示される。
特許文献2には、フェノール骨格を有するモノマーの水溶性共縮合物を磁気ディスク基板の研磨に用いることが開示される。同文献の実施例11には、4-ヒドロキシ安息香酸の比率が20%のものが開示される。
特許文献2には、フェノール骨格を有するモノマーの水溶性共縮合物を磁気ディスク基板の研磨に用いることが開示される。同文献の実施例11には、4-ヒドロキシ安息香酸の比率が20%のものが開示される。
近年の半導体分野においては高集積化が進んでおり、配線の複雑化や微細化が求められている。そのため、CMP研磨では、研磨速度を確保しつつ研磨選択性を向上させることが要求されている。
また、研磨後の基板表面の平坦性の悪化も問題になっている。研磨がストッパ膜(窒化珪素膜)まで達した後、ストッパ膜の研磨の抑制が不十分で、ディッシングが発生することが原因の1つと考えられる。
また、研磨後の基板表面の平坦性の悪化も問題になっている。研磨がストッパ膜(窒化珪素膜)まで達した後、ストッパ膜の研磨の抑制が不十分で、ディッシングが発生することが原因の1つと考えられる。
そこで、本開示は、酸化珪素膜研磨における研磨選択性を向上可能な酸化珪素膜用研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び研磨方法を提供する。
本開示は、また、その他の態様において、窒化珪素膜の研磨速度を抑制でき、かつ、ディッシングを抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できる酸化珪素膜用研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び研磨方法を提供する。
本開示は、また、その他の態様において、窒化珪素膜の研磨速度を抑制でき、かつ、ディッシングを抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できる酸化珪素膜用研磨液組成物、これを用いた半導体基板の製造方法及び研磨方法を提供する。
本開示は、一態様において、酸化セリウム粒子(成分A)と、水溶性アニオン性縮合物(成分B)と、水系媒体とを含有し、
成分Bが、下記式(I)で表されるモノマー(構成モノマーb1)及び下記式(II)で表されるモノマー(構成モノマーb2)を含むモノマーの共縮合物であり、
成分Bにおける構成モノマーb1と構成モノマーb2の合計に対する構成モノマーb1のモル比(%)が、30%を超える、酸化珪素膜用研磨液組成物に関する。
式(I)中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、又は、-OM2を示し、M1及びM2は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4
+)又は水素原子を示す。
式(II)中、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、又は、-OM3を示し、Xは、-SO3M4又は-PO3M5M6を示し、M3、M4、M5及びM6は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。
成分Bが、下記式(I)で表されるモノマー(構成モノマーb1)及び下記式(II)で表されるモノマー(構成モノマーb2)を含むモノマーの共縮合物であり、
成分Bにおける構成モノマーb1と構成モノマーb2の合計に対する構成モノマーb1のモル比(%)が、30%を超える、酸化珪素膜用研磨液組成物に関する。
式(II)中、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、又は、-OM3を示し、Xは、-SO3M4又は-PO3M5M6を示し、M3、M4、M5及びM6は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法に関する。
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含み、前記被研磨膜は、半導体基板の製造過程で形成される酸化珪素膜である、研磨方法に関する。
本開示によれば、一態様において、酸化珪素膜研磨における研磨選択性を向上可能な酸化珪素膜用研磨液組成物を提供できる。
本開示によれば、一態様において、窒化珪素膜の研磨速度を抑制でき、かつ、ディッシングを抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できる酸化珪素膜用研磨液組成物を提供できる。
本開示によれば、一態様において、窒化珪素膜の研磨速度を抑制でき、かつ、ディッシングを抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できる酸化珪素膜用研磨液組成物を提供できる。
本発明者らが鋭意検討した結果、酸化セリウム(以下、「セリア」ともいう)粒子を砥粒として用いる研磨液組成物に、特定のアニオン性縮合物を含有させることで、酸化珪素膜研磨における研磨選択性を向上できるという知見に基づく。
また、本開示は、セリア砥粒を含有する研磨液組成物に、当該アニオン性縮合物を含有させることで、窒化珪素膜の研磨速度を抑制でき、ディッシングを抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できるという知見に基づく。
また、本開示は、セリア砥粒を含有する研磨液組成物に、当該アニオン性縮合物を含有させることで、窒化珪素膜の研磨速度を抑制でき、ディッシングを抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できるという知見に基づく。
本開示の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
研磨選択性を向上させるためには、研磨対象物に対する研磨速度を大きく損なうことなく、研磨ストッパ膜の研磨速度を抑制することが必要となる。成分Bは、縮合物自体の剛直な構造で保護膜を効率よく形成することができる。また、成分Bは、カルボン酸基、及び、水溶性を担保するためにスルホン酸基若しくはホスホン酸基を有し、かつ、カルボン酸基が所定量を超えて存在することにより、研磨液組成物中で酸化珪素膜よりも窒化珪素膜に選択的に強く結合できる。つまり、成分Bは、窒化珪素膜に選択的に結合して効率よく強固な保護膜を形成でき、これにより、窒化珪素膜の研磨速度を低減し、研磨選択性を向上するとともに、ディッシングを抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できると考えられる。成分Cは成分Bと相互作用することで、成分Bが窒化珪素膜に形成する保護膜の強度を向上し、研磨選択性をさらに向上するとともに、ディッシングをさらに抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
研磨選択性を向上させるためには、研磨対象物に対する研磨速度を大きく損なうことなく、研磨ストッパ膜の研磨速度を抑制することが必要となる。成分Bは、縮合物自体の剛直な構造で保護膜を効率よく形成することができる。また、成分Bは、カルボン酸基、及び、水溶性を担保するためにスルホン酸基若しくはホスホン酸基を有し、かつ、カルボン酸基が所定量を超えて存在することにより、研磨液組成物中で酸化珪素膜よりも窒化珪素膜に選択的に強く結合できる。つまり、成分Bは、窒化珪素膜に選択的に結合して効率よく強固な保護膜を形成でき、これにより、窒化珪素膜の研磨速度を低減し、研磨選択性を向上するとともに、ディッシングを抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できると考えられる。成分Cは成分Bと相互作用することで、成分Bが窒化珪素膜に形成する保護膜の強度を向上し、研磨選択性をさらに向上するとともに、ディッシングをさらに抑制して研磨後の基板表面の平坦性を向上できると考えられる。
但し、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本開示は、一又は複数の実施形態において、酸化セリウム粒子(成分A)と、水溶性アニオン性縮合物(成分B)と、水系媒体とを含有し、成分Bが、式(I)で表されるモノマー(構成モノマーb1)及び式(II)で表されるモノマー(構成モノマーb2)を含むモノマーの共縮合物であり、成分Bにおける構成モノマーb1と構成モノマーb2の合計に対する構成モノマーb1のモル比(%)が30%を超える、酸化珪素膜用研磨液組成物(以下、「本開示の研磨液組成物」ともいう)に関する。
本開示において「研磨選択性」は、研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜)の研磨速度に対する被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)の研磨速度の比(被研磨膜の研磨速度/研磨ストッパ膜の研磨速度)と同義であり、「研磨選択性」が高いと、前記研磨速度比が大きいことを意味する。
[酸化セリウム粒子(成分A)]
本開示の研磨液組成物は、研磨砥粒として酸化セリウム(以下、「セリア」ともいう)粒子(以下、単に「成分A」ともいう)を含有する。成分Aとしては、正帯電セリア又は負帯電セリアを用いることができる。成分Aの帯電性は、例えば、電気音響法(ESA法:Electorokinetic Sonic Amplitude)により求められる砥粒粒子表面における電位(表面電位)を測定することにより確認できる。表面電位は、例えば、「ゼータプローブ」(協和界面化学社製)を用いて測定でき、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。成分Aは、1種類でもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
本開示の研磨液組成物は、研磨砥粒として酸化セリウム(以下、「セリア」ともいう)粒子(以下、単に「成分A」ともいう)を含有する。成分Aとしては、正帯電セリア又は負帯電セリアを用いることができる。成分Aの帯電性は、例えば、電気音響法(ESA法:Electorokinetic Sonic Amplitude)により求められる砥粒粒子表面における電位(表面電位)を測定することにより確認できる。表面電位は、例えば、「ゼータプローブ」(協和界面化学社製)を用いて測定でき、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。成分Aは、1種類でもよいし、2種以上の組合せであってもよい。
成分Aの製造方法、形状、及び表面状態については特に限定されなくてもよい。成分Aとしては、例えば、コロイダルセリア、不定形セリア、セリアコートシリカ等が挙げられる。
コロイダルセリアは、例えば、特表2010-505735号公報の実施例1~4に記載の方法で、ビルドアッププロセスにより得ることができる。
不定形セリアとしては、例えば、粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアの一実施形態としては、例えば、炭酸セリウムや硝酸セリウムなどのセリウム化合物を焼成、粉砕して得られる焼成粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアのその他の実施形態としては、例えば、無機酸や有機酸の存在下でセリア粒子を湿式粉砕することにより得られる単結晶粉砕セリアが挙げられる。湿式粉砕時に使用される無機酸としては、例えば硝酸が挙げられ、有機酸としては、例えば、カルボキシル基を有する有機酸が挙げられ、具体的には、ポリアクリル酸アンモニウム等のポリカルボン酸塩、ピコリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸及びp-ヒドロキシ安息香酸から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。例えば、湿式粉砕時にピコリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸及びp-ヒドロキシ安息香酸から選ばれる少なくとも1種を使用した場合、正帯電セリアを得ることができ、湿式粉砕時にポリアクリル酸アンモニウム等のポリカルボン酸塩を使用した場合、負帯電セリアを得ることができる。湿式粉砕方法としては、例えば、遊星ビーズミル等による湿式粉砕が挙げられる。
セリアコートシリカとしては、例えば、特開2015-63451号公報の実施例1~14もしくは特開2013-119131号公報の実施例1~4に記載の方法で、シリカ粒子表面の少なくとも一部が粒状セリアで被覆された構造を有する複合粒子が挙げられ、該複合粒子は、例えば、シリカ粒子にセリアを沈着させることで得ることができる。
コロイダルセリアは、例えば、特表2010-505735号公報の実施例1~4に記載の方法で、ビルドアッププロセスにより得ることができる。
不定形セリアとしては、例えば、粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアの一実施形態としては、例えば、炭酸セリウムや硝酸セリウムなどのセリウム化合物を焼成、粉砕して得られる焼成粉砕セリアが挙げられる。粉砕セリアのその他の実施形態としては、例えば、無機酸や有機酸の存在下でセリア粒子を湿式粉砕することにより得られる単結晶粉砕セリアが挙げられる。湿式粉砕時に使用される無機酸としては、例えば硝酸が挙げられ、有機酸としては、例えば、カルボキシル基を有する有機酸が挙げられ、具体的には、ポリアクリル酸アンモニウム等のポリカルボン酸塩、ピコリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸及びp-ヒドロキシ安息香酸から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。例えば、湿式粉砕時にピコリン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸及びp-ヒドロキシ安息香酸から選ばれる少なくとも1種を使用した場合、正帯電セリアを得ることができ、湿式粉砕時にポリアクリル酸アンモニウム等のポリカルボン酸塩を使用した場合、負帯電セリアを得ることができる。湿式粉砕方法としては、例えば、遊星ビーズミル等による湿式粉砕が挙げられる。
セリアコートシリカとしては、例えば、特開2015-63451号公報の実施例1~14もしくは特開2013-119131号公報の実施例1~4に記載の方法で、シリカ粒子表面の少なくとも一部が粒状セリアで被覆された構造を有する複合粒子が挙げられ、該複合粒子は、例えば、シリカ粒子にセリアを沈着させることで得ることができる。
成分Aの形状としては、例えば、略球状、多面体状、ラズベリー状が挙げられる。
成分Aの平均一次粒子径は、研磨速度及び平坦性向上の観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、30nm以上が更に好ましく、そして、研磨傷発生の抑制の観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましく、100nm以下が更に好ましく、80nm以下が更に好ましく、60nm以下が更に好ましい。本開示において成分Aの平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出されるBET比表面積S(m2/g)を用いて算出される。BET比表面積は、実施例に記載の方法により測定できる。
本開示の研磨液組成物中の成分Aの含有量は、研磨速度及び平坦性向上の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.1質量%以上が更により好ましく、0.15質量%以上が更により好ましく、そして、研磨傷発生抑制の観点から、6質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.7質量%以下が更により好ましい。より具体的には、成分Aの含有量は、0.001質量%以上6質量%以下が好ましく、0.01質量%以上6質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上3質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以上1質量%以下が更により好ましく、0.15質量%以上0.7質量%以下が更により好ましい。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計の含有量をいう。
[水溶性アニオン性縮合物(成分B)]
本開示の研磨液組成物は、水溶性アニオン性縮合物(以下、単に「成分B」ともいう)を含有する。成分Bは、1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。本開示において、「水溶性」とは、本開示の研磨液組成物中に溶解することをいい、水(20℃)に対して好ましくは0.5g/100mL以上の溶解度、さらに好ましくは2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。
本開示の研磨液組成物は、水溶性アニオン性縮合物(以下、単に「成分B」ともいう)を含有する。成分Bは、1種であってもよいし、2種以上の組合せであってもよい。本開示において、「水溶性」とは、本開示の研磨液組成物中に溶解することをいい、水(20℃)に対して好ましくは0.5g/100mL以上の溶解度、さらに好ましくは2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。
成分Bは、一又は複数の実施形態において、窒化珪素膜の研磨速度を抑制でき、研磨選択性及びを向上できると考えられる。さらに一又は複数の実施形態において、成分Bは、過研磨時の窒化珪素膜の研磨速度及びディッシング速度を抑制でき、研磨後の基板表面の平坦性を向上できると考えられる。なお、ディッシングとは、凹部が過剰に研磨されることにより生じる皿状の窪みをいう。
成分Bは、下記式(I)で表されるモノマー(構成モノマーb1)及び下記式(II)で表されるモノマー(構成モノマーb2)を含むモノマーの共縮合物である。成分Bは、芳香環を主鎖に含むアニオン性縮合物ということもできる。
(構成モノマーb1)
構成モノマーb1は、式(I)で表されるモノマーである。
式(I)中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、又は、-OM2を示す。R1及びR2は、一又は複数の実施形態において、重合反応性の観点から、少なくとも一方が-OM2であることが好ましく、-OHであることがより好ましい。R1及びR2は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
M1及びM2は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。有機カチオンとしては、一又は複数の実施形態において、有機アンモニウムが挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。
M1は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
M2は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
構成モノマーb1は、式(I)で表されるモノマーである。
式(I)中、R1及びR2は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、又は、-OM2を示す。R1及びR2は、一又は複数の実施形態において、重合反応性の観点から、少なくとも一方が-OM2であることが好ましく、-OHであることがより好ましい。R1及びR2は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
M1及びM2は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。有機カチオンとしては、一又は複数の実施形態において、有機アンモニウムが挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。
M1は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
M2は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
構成モノマーb1としては、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、ヒドロキシ安息香酸(HBA)、ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)が好ましく、4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)、2-ヒドロキシ安息香酸(2-HBA)、2,4-ジヒドロキシ安息香酸(2,4-HBA)、2,6-ジヒドロキシ安息香酸(2,6-HBA)がより好ましく、4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)が更に好ましい。
(構成モノマーb2)
構成モノマーb2は、式(II)で表されるモノマーである。
式(II)中、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、又は、-OM3を示す。R3及びR4は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、少なくとも一方が-OM3であることが好ましく、-OHであることがより好ましい。R3及びR4は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
Xは、-SO3M4又は-PO3M5M6を示す。Xは、一又は複数の実施形態において、溶解安定性の観点から、-SO3M4が好ましい。
M3、M4、M5及びM6は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。有機カチオンとしては、一又は複数の実施形態において、有機アンモニウムが挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。
M3は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
M4、M5及びM6は同一又は異なって、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
構成モノマーb2は、式(II)で表されるモノマーである。
式(II)中、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、又は、-OM3を示す。R3及びR4は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、少なくとも一方が-OM3であることが好ましく、-OHであることがより好ましい。R3及びR4は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
Xは、-SO3M4又は-PO3M5M6を示す。Xは、一又は複数の実施形態において、溶解安定性の観点から、-SO3M4が好ましい。
M3、M4、M5及びM6は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。有機カチオンとしては、一又は複数の実施形態において、有機アンモニウムが挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。
M3は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
M4、M5及びM6は同一又は異なって、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
構成モノマーb2としては、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上の観点から、フェノールスルホン酸(PhS)、ヒドロキシフェニルホスホン酸が好ましく、p-フェノールスルホン酸(pPhS)、(4-ヒドロキシフェニル)ホスホン酸がより好ましく、p-フェノールスルホン酸(pPhS)が更に好ましい。
成分Bにおける構成モノマーb1と構成モノマーb2の合計に対する構成モノマーb1のモル比(%)は、研磨選択性向上の観点から、30%を超え、35%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、40%超えが更に好ましく、42%以上が更により好ましく、43%以上が更により好ましく、44%以上が更により好ましく、45%以上が更により好ましく、46%以上が更により好ましく、48%以上が更により好ましい。
成分Bは、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、下記式(III)で表される構造を含むアニオン性縮合物であることが好ましい。
式(III)中、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、又は、-OM8を示す。R5及びR6は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、水素原子、又は、炭素数1以上4以下の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
M7及びM8は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。有機カチオンとしては、一又は複数の実施形態において、有機アンモニウムが挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。
M7は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
Xは、-SO3M9又は-PO3M10M11を示す。Xは、一又は複数の実施形態において、溶解安定性の観点から、-SO3M9が好ましい。
M9、M10及びM11は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。有機カチオンとしては、一又は複数の実施形態において、有機アンモニウムが挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。
M7及びM8は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。有機カチオンとしては、一又は複数の実施形態において、有機アンモニウムが挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。
M7は、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、アルカリ金属イオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウム(NH4 +)及び水素原子から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
Xは、-SO3M9又は-PO3M10M11を示す。Xは、一又は複数の実施形態において、溶解安定性の観点から、-SO3M9が好ましい。
M9、M10及びM11は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。有機カチオンとしては、一又は複数の実施形態において、有機アンモニウムが挙げられ、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のアルキルアンモニウムが挙げられる。
式(III)中、m、nは、m+n=1とした場合のモル分率であり、mは、一又は複数の実施形態において、研磨選択性向上の観点から、0.3を超え、0.35以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.4超えが更に好ましく、0.42以上が更により好ましく、0.43以上が更により好ましく、0.44以上が更により好ましく、0.45以上が更により好ましく、0.46以上が更により好ましく、0.48以上が更により好ましい。mは、一又は複数の実施形態において、0.8以下、0.75以下、0.7以下、又は、0.65以下である。
成分Bは、例えば、構成モノマーb1と構成モノマーb2を有するモノマーを、ホルムアルデヒド存在下で付加縮合法等の公知の手段により重合することにより製造することができる。耐加水分解性の向上及び酸性研磨液中での保存安定性の向上の観点から、付加縮合法により製造されることが好ましい。
本開示において、成分Bを構成する全構成単位中に占めるある構成単位の含有量(モル%)として、合成条件によっては、成分Bの合成の全工程で反応槽に仕込まれた全構成単位を導入するための化合物中に占める前記反応槽に仕込まれた該構成単位を導入するための化合物量(モル%)を使用してもよい。また、本開示において、成分Bが2種以上の構成単位を含む場合、2つの構成単位の構成比(モル比)として、合成条件によっては、前記成分Bの合成の全工程で反応槽に仕込まれた該2つの構成単位を導入するための化合物量比(モル比)を使用してもよい。
成分Bは、構成モノマーb1由来の構成単位及び構成モノマーb2由来の構成単位、あるいは、式(III)で表される構成に含まれないその他の構成単位を有していてもよい。
成分Bを構成する各構成単位の配列は、ランダム、ブロック、又はグラフトのいずれでもよい。
成分Bの重量平均分子量は、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、1,500以上が更に好ましく、3,000以上が更に好ましく、5,000以上が更に好ましく、8,000以上が更に好ましく、10,000以上が更に好ましく、15,000以上が更に好ましく、20,000以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下が更に好ましく、250,000以下が更に好ましく、100,000以下が更に好ましく、75,000以下が更に好ましく、50,000以下が更に好ましく、30,000以下が更に好ましく,25,000以下が更に好ましい。さらに、同様の観点から、成分Bの重量平均分子量は、500以上1,000,000以下が好ましく、1,000以上750,000以下がより好ましく、1,500以上500,000以下又は1,500以上100,000以下が更に好ましく、3,000以上250,000以下が更に好ましく、5,000以上100,000以下が更に好ましく,8,000以上75,000以下が更に好ましく、10,000以上50,000以下が更に好ましく、15,000以上30,000以下が更に好ましく、20,000以上25,000以下が更に好ましい。本開示において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて実施例に記載の条件で測定される値とする。
本開示の研磨液組成物中の成分Bの含有量は、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.006質量%以上が更に好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.015質量%以上が更に好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、そして、研磨選択性向上の観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.3質量%以下が更に好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。さらに、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、成分Bの含有量は、0.001質量%以上10質量%以下が好ましく、0.003質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.006質量%以上1質量%以下が更に好ましく、0.006質量%以上0.5質量%以下が更に好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下が更に好ましく、0.015質量%以上0.3質量%以下が更に好ましく、0.02質量%以上0.1質量%以下が更に好ましい。
本開示の研磨液組成物中の成分Aの含有量に対する成分Bの含有量の質量比B/Aは、研磨選択性向上の観点から、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましく、0.03以上が更に好ましく、0.04以上が更に好ましく、0.05以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.15以下が更に好ましく、0.1以下が更に好ましく、0.07以下が更に好ましい。さらに、同様の観点から、質量比B/Aは、0.01以上0.5以下が好ましく、0.02以上0.3以下がより好ましく、0.03以上0.15以下が好ましく、0.04以上0.1以下が更に好ましく、0.05以上0.07以下が更に好ましい。
[水系媒体]
本開示の研磨液組成物に含まれる水系媒体としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等の水、又は、水と溶媒との混合溶媒等が挙げられる。上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が挙げられる。水系媒体が、水と溶媒との混合溶媒の場合、混合媒体全体に対する水の割合は、本開示の効果が妨げられない範囲であれば特に限定されなくてもよく、経済性の観点から、例えば、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましい。被研磨基板の表面清浄性の観点から、水系媒体としては、水が好ましく、イオン交換水及び超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。本開示の研磨液組成物中の水系媒体の含有量は、成分A、成分B及び必要に応じて配合される後述する任意成分を除いた残余とすることができる。
本開示の研磨液組成物に含まれる水系媒体としては、蒸留水、イオン交換水、純水及び超純水等の水、又は、水と溶媒との混合溶媒等が挙げられる。上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が挙げられる。水系媒体が、水と溶媒との混合溶媒の場合、混合媒体全体に対する水の割合は、本開示の効果が妨げられない範囲であれば特に限定されなくてもよく、経済性の観点から、例えば、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましい。被研磨基板の表面清浄性の観点から、水系媒体としては、水が好ましく、イオン交換水及び超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。本開示の研磨液組成物中の水系媒体の含有量は、成分A、成分B及び必要に応じて配合される後述する任意成分を除いた残余とすることができる。
[式(IV)で表される基を有する化合物(成分C)]
本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の確保及び研磨選択性のさらなる向上の観点から、下記式(IV)で表される基を有するリン含有化合物(以下、単に「成分C」ともいう)をさらに含有することができる。本開示の研磨液組成物が成分Cをさらに含む場合、成分Bは成分Cと結合することで、研磨ストッパ膜上に形成される保護膜の強度及び厚みを改善し、研磨ストッパ膜の研磨速度をより抑制できると考えられる。成分Cは、1種であってもよいし、2種以上の組合せでもよい。成分Cは、水溶性であることが好ましく、水(20℃)に対して0.5g/100mL以上の溶解度を有することが好ましい。
本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の確保及び研磨選択性のさらなる向上の観点から、下記式(IV)で表される基を有するリン含有化合物(以下、単に「成分C」ともいう)をさらに含有することができる。本開示の研磨液組成物が成分Cをさらに含む場合、成分Bは成分Cと結合することで、研磨ストッパ膜上に形成される保護膜の強度及び厚みを改善し、研磨ストッパ膜の研磨速度をより抑制できると考えられる。成分Cは、1種であってもよいし、2種以上の組合せでもよい。成分Cは、水溶性であることが好ましく、水(20℃)に対して0.5g/100mL以上の溶解度を有することが好ましい。
前記式(IV)中、R12及びR13は同一又は異なって、ヒドロキシル基又はその塩を示し、R14は、H、-NH2、-NHCH3、-N(CH3)2、-N+(CH3)3、アルキル基、フェニル基、シチジン基、グアニジノ基又はアルキルグアニジノ基を示し、Yは、結合手又は炭素数1以上12以下のアルキレン基を示し、qは0又は1を示す。
式(IV)において、R12及びR13はそれぞれ、水系媒体への溶解性向上、安定性向上の観点から、ヒドロキシル基が好ましい。
R14は、酸化珪素膜の研磨速度低下抑制の観点から、H、-NH2、-N+(CH3)3、アルキル基、フェニル基、シチジン基、グアニジノ基又はアルキルグアニジノ基が好ましく、アルキル基、フェニル基又はアルキルグアニジノ基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。アルキル基としては、研磨選択性向上、平坦性向上の観点から、炭素数1以上12以下のアルキル基が好ましく、炭素数2以上6以下のアルキル基がより好ましく、炭素数4のアルキル基(ブチル基)が更に好ましい。アルキルグアニジノ基としては、酸化珪素膜の研磨速度低下抑制、水系媒体への溶解性向上の観点から、炭素数2以上12以下のアルキルグアニジノ基が好ましく、炭素数2以上4以下のアルキルグアニジノ基が更に好ましく、メチルグアニジノ基が更に好ましく、1-メチルグアニジノ基が更に好ましい。
Yは、水系媒体への溶解性向上の観点から、結合手又は炭素数1以上12以下のアルキレン基が好ましく、結合手又は炭素数1以上10以下のアルキレン基がより好ましく、結合手又は炭素数1以上8以下のアルキレン基が更に好ましく、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基が更に好ましく、結合手又は炭素数1以上4以下のアルキレン基が好ましく、結合手又は炭素数2又は3のアルキレン基が更に好ましく、結合手又は炭素数2のアルキレン基(エチレン基)が更に好ましく、結合手が更に好ましい。
qは、安定性向上の観点から、0が好ましい。
R14は、酸化珪素膜の研磨速度低下抑制の観点から、H、-NH2、-N+(CH3)3、アルキル基、フェニル基、シチジン基、グアニジノ基又はアルキルグアニジノ基が好ましく、アルキル基、フェニル基又はアルキルグアニジノ基がより好ましく、フェニル基が更に好ましい。アルキル基としては、研磨選択性向上、平坦性向上の観点から、炭素数1以上12以下のアルキル基が好ましく、炭素数2以上6以下のアルキル基がより好ましく、炭素数4のアルキル基(ブチル基)が更に好ましい。アルキルグアニジノ基としては、酸化珪素膜の研磨速度低下抑制、水系媒体への溶解性向上の観点から、炭素数2以上12以下のアルキルグアニジノ基が好ましく、炭素数2以上4以下のアルキルグアニジノ基が更に好ましく、メチルグアニジノ基が更に好ましく、1-メチルグアニジノ基が更に好ましい。
Yは、水系媒体への溶解性向上の観点から、結合手又は炭素数1以上12以下のアルキレン基が好ましく、結合手又は炭素数1以上10以下のアルキレン基がより好ましく、結合手又は炭素数1以上8以下のアルキレン基が更に好ましく、結合手又は炭素数1以上6以下のアルキレン基が更に好ましく、結合手又は炭素数1以上4以下のアルキレン基が好ましく、結合手又は炭素数2又は3のアルキレン基が更に好ましく、結合手又は炭素数2のアルキレン基(エチレン基)が更に好ましく、結合手が更に好ましい。
qは、安定性向上の観点から、0が好ましい。
成分Cとしては、例えば、フェニルホスホン酸又はその塩、クレアチノールホスファート又はその塩、O-ホスホリルエタノールアミン又はその塩、ホスホコリンクロリド又はその塩、メチルホスホン酸、ブチルホスホン酸等のアルキルホスホン酸又はその塩の塩、メチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート等のアルキルリン酸エステル及びその塩等が挙げられる。
本開示の研磨液組成物中の成分Cの含有量は、研磨選択性向上及び平坦性向上の観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.025質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、そして、研磨速度向上の観点から、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下が更に好ましい。本開示の研磨液組成物中の成分Cの含有量は、0.005質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.025質量%以上0.3質量%以下が更に好ましく、0.05質量%以上0.15質量%以下が更に好ましい。成分Cが2種以上の組合せである場合、成分Cの含有量はそれらの合計の含有量をいう。
[その他の成分]
本開示の研磨液組成物は、pH調整剤、成分B以外の高分子、界面活性剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、防腐剤、塩基性物質等のその他の成分をさらに含有することができる。
本開示の研磨液組成物は、pH調整剤、成分B以外の高分子、界面活性剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、防腐剤、塩基性物質等のその他の成分をさらに含有することができる。
[研磨液組成物]
本開示の研磨液組成物は、例えば、成分A、成分B、及び水系媒体、並びに、所望により上述した任意成分(成分C、その他の成分)を公知の方法で配合する工程を含む製造方法によって製造できる。例えば、本開示の研磨液組成物は、少なくとも成分A、成分B、及び水系媒体を配合してなるものとすることができる。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B、及び水系媒体、並びに必要に応じて上述した任意成分(成分C、その他の成分)を同時に又は順に混合することを含む。混合する順序は特に限定されない。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。本開示の研磨液組成物の製造方法における各成分の配合量は、上述した本開示の研磨液組成物中の各成分の含有量と同じとすることができる。
本開示の研磨液組成物は、例えば、成分A、成分B、及び水系媒体、並びに、所望により上述した任意成分(成分C、その他の成分)を公知の方法で配合する工程を含む製造方法によって製造できる。例えば、本開示の研磨液組成物は、少なくとも成分A、成分B、及び水系媒体を配合してなるものとすることができる。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B、及び水系媒体、並びに必要に応じて上述した任意成分(成分C、その他の成分)を同時に又は順に混合することを含む。混合する順序は特に限定されない。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機及び湿式ボールミル等の混合器を用いて行うことができる。本開示の研磨液組成物の製造方法における各成分の配合量は、上述した本開示の研磨液組成物中の各成分の含有量と同じとすることができる。
本開示の研磨液組成物の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1液型であってもよいし、使用時に混合される、いわゆる2液型であってもよい。例えば、2液型の研磨液組成物の一実施形態としては、成分Aを含む第1液と、成分Bを含む第2液とから構成され、使用時に第1液と第2液とが混合されるものが挙げられる。第1液と第2液との混合は、研磨対象の表面への供給前に行われてもよいし、これらは別々に供給されて被研磨基板の表面上で混合されてもよい。第1液及び第2液はそれぞれ必要に応じて上述した任意成分を含有することができる。
本開示の研磨液組成物のpHは、研磨速度向上の観点から、3.5以上が好ましく、4以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、そして、9以下が好ましく、8.5以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。より具体的には、pHは、3.5以上9以下が好ましく、4以上8.5以下がより好ましく、5以上8以下が更に好ましい。本開示において、研磨液組成物のpHは、25℃における値であって、pHメータを用いて測定でき、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
本開示において「研磨液組成物中の各成分の含有量」とは、研磨液組成物の研磨への使用を開始する時点での前記各成分の含有量をいう。本開示の研磨液組成物は、その安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給されてもよい。この場合、製造・輸送コストを低くできる点で好ましい。そしてこの濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して研磨工程で使用することができる。希釈割合としては5~100倍が好ましい。
[被研磨膜]
本開示の研磨液組成物を用いて研磨される被研磨膜としては、例えば、半導体基板の製造過程で形成される酸化珪素膜が挙げられる。したがって、本開示の研磨液組成物は、酸化珪素膜の研磨を必要とする工程に使用できる。一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、半導体基板の素子分離構造を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、層間絶縁膜を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、埋め込み金属配線を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、又は、埋め込みキャパシタを形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨に好適に使用できる。その他の一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、3次元NAND型フラッシュメモリ等の3次元半導体装置の製造に好適に使用できる。
本開示の研磨液組成物を用いて研磨される被研磨膜としては、例えば、半導体基板の製造過程で形成される酸化珪素膜が挙げられる。したがって、本開示の研磨液組成物は、酸化珪素膜の研磨を必要とする工程に使用できる。一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、半導体基板の素子分離構造を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、層間絶縁膜を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、埋め込み金属配線を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨、又は、埋め込みキャパシタを形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨に好適に使用できる。その他の一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物は、3次元NAND型フラッシュメモリ等の3次元半導体装置の製造に好適に使用できる。
[研磨液キット]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を調製するためのキット(以下、「本開示の研磨液キット」ともいう)に関する。
本開示の研磨液キットとしては、例えば、成分A及び水系媒体を含む砥粒分散液(第1液)と、成分Bを含む添加剤水溶液(第2液)と、を相互に混合されない状態で含み、これらが使用時に混合され、必要に応じて水系媒体を用いて希釈される、研磨液キット(2液型研磨液組成物)が挙げられる。前記砥粒分散液(第1液)に含まれる水系媒体は、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の全量でもよいし、一部でもよい。前記添加剤水溶液(第2液)には、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の一部が含まれていてもよい。前記砥粒分散液(第1液)及び前記添加剤水溶液(第2液)にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分が含まれていてもよい。前記砥粒分散液(第1液)と前記添加剤水溶液(第2液)との混合は、研磨対象の表面への供給前に行われてもよいし、これらは別々に供給されて被研磨基板の表面上で混合されてもよい。本開示の研磨液キットによれば、酸化珪素膜の研磨速度を向上可能な研磨液組成物が得られうる。
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を調製するためのキット(以下、「本開示の研磨液キット」ともいう)に関する。
本開示の研磨液キットとしては、例えば、成分A及び水系媒体を含む砥粒分散液(第1液)と、成分Bを含む添加剤水溶液(第2液)と、を相互に混合されない状態で含み、これらが使用時に混合され、必要に応じて水系媒体を用いて希釈される、研磨液キット(2液型研磨液組成物)が挙げられる。前記砥粒分散液(第1液)に含まれる水系媒体は、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の全量でもよいし、一部でもよい。前記添加剤水溶液(第2液)には、研磨液組成物の調製に使用する水系媒体の一部が含まれていてもよい。前記砥粒分散液(第1液)及び前記添加剤水溶液(第2液)にはそれぞれ必要に応じて、上述した任意成分が含まれていてもよい。前記砥粒分散液(第1液)と前記添加剤水溶液(第2液)との混合は、研磨対象の表面への供給前に行われてもよいし、これらは別々に供給されて被研磨基板の表面上で混合されてもよい。本開示の研磨液キットによれば、酸化珪素膜の研磨速度を向上可能な研磨液組成物が得られうる。
[研磨方法]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含み、被研磨膜は、半導体基板の製造過程で形成される酸化珪素膜である、研磨方法(以下、本開示の研磨方法ともいう)に関する。本開示の研磨方法を使用することにより、酸化珪素膜の研磨速度向上が可能であるため、品質が向上した半導体基板の生産性を向上できるという効果が奏されうる。具体的な研磨の方法及び条件は、後述する本開示の半導体基板の製造方法と同じようにすることができる。
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含み、被研磨膜は、半導体基板の製造過程で形成される酸化珪素膜である、研磨方法(以下、本開示の研磨方法ともいう)に関する。本開示の研磨方法を使用することにより、酸化珪素膜の研磨速度向上が可能であるため、品質が向上した半導体基板の生産性を向上できるという効果が奏されうる。具体的な研磨の方法及び条件は、後述する本開示の半導体基板の製造方法と同じようにすることができる。
[半導体基板の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程(以下、「本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう)を含む、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板の製造方法」ともいう。)に関する。本開示の半導体基板の製造方法は、例えば、本開示の研磨液組成物を用いて、酸化珪素膜の窒化珪素膜と接する面の反対面、例えば、酸化珪素膜の凹凸段差面を研磨する工程を含む、半導体装置の製造方法に関する。本開示の半導体装置の製造方法によれば、酸化珪素膜の高速研磨が可能であるので、半導体装置を効率よく製造できるという効果が奏されうる。
本開示は、一態様において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程(以下、「本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程」ともいう)を含む、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板の製造方法」ともいう。)に関する。本開示の半導体基板の製造方法は、例えば、本開示の研磨液組成物を用いて、酸化珪素膜の窒化珪素膜と接する面の反対面、例えば、酸化珪素膜の凹凸段差面を研磨する工程を含む、半導体装置の製造方法に関する。本開示の半導体装置の製造方法によれば、酸化珪素膜の高速研磨が可能であるので、半導体装置を効率よく製造できるという効果が奏されうる。
酸化珪素膜の凹凸段差面は、例えば、酸化珪素膜を化学気相成長法等の方法で形成した際に酸化珪素膜の下層の凹凸段差に対応して自然に形成されものであってもよいし、リソグラフィー法等を用いて凹凸パターンを形成することにより得られたものであってもよい。
本開示の半導体基板の製造方法の具体例としては、まず、シリコン基板を酸化炉内で酸素に晒すことよりその表面に二酸化シリコン層を成長させ、次いで、当該二酸化シリコン層上に窒化珪素(Si3N4)膜又はポリシリコン膜等の研磨ストッパ膜を、例えばCVD法(化学気相成長法)にて形成する。次に、シリコン基板と前記シリコン基板の一方の主面側に配置された研磨ストッパ膜とを含む基板、例えば、シリコン基板の二酸化シリコン層上に研磨ストッパ膜が形成された基板に、フォトリソグラフィー技術を用いてトレンチを形成する。次いで、例えば、シランガスと酸素ガスを用いたCVD法により、トレンチ埋め込み用の被研磨膜である酸化珪素(SiO2)膜を形成し、研磨ストッパ膜が被研磨膜(酸化珪素膜)で覆われた被研磨基板を得る。酸化珪素膜の形成により、前記トレンチは酸化珪素膜の酸化珪素で満たされ、研磨ストッパ膜の前記シリコン基板側の面の反対面は酸化珪素膜によって被覆される。このようにして形成された酸化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面は、下層の凸凹に対応して形成された段差を有する。次いで、CMP法により、酸化珪素膜を、少なくとも研磨ストッパ膜のシリコン基板側の面の反対面が露出するまで研磨し、より好ましくは、酸化珪素膜の表面と研磨ストッパ膜の表面とが面一になるまで酸化珪素膜を研磨する。本開示の研磨液組成物は、このCMP法による研磨を行う工程に用いることができる。酸化珪素膜の下層の凹凸に対応して形成された凸部の幅は、例えば、0.5μm以上5000μm以下であり、凹部の幅は、例えば、0.5μm以上5000μm以下である。
CMP法による研磨では、被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で、本開示の研磨液組成物をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面の凹凸部分を平坦化させる。
なお、本開示の半導体基板の製造方法において、シリコン基板の二酸化シリコン層と研磨ストッパ膜との間に他の絶縁膜が形成されていてもよいし、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)と研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜、ポリシリコン膜)との間に他の絶縁膜が形成されていてもよい。
なお、本開示の半導体基板の製造方法において、シリコン基板の二酸化シリコン層と研磨ストッパ膜との間に他の絶縁膜が形成されていてもよいし、被研磨膜(例えば、酸化珪素膜)と研磨ストッパ膜(例えば、窒化珪素膜、ポリシリコン膜)との間に他の絶縁膜が形成されていてもよい。
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、研磨パッドの回転数は、例えば、30~200rpm/分、被研磨基板の回転数は、例えば、30~200rpm/分、研磨パッドを備えた研磨装置に設定される研磨荷重は、例えば、20~500g重/cm2、研磨液組成物の供給速度は、例えば、10~500mL/分以下に設定できる。
本開示の研磨液組成物を用いた研磨工程において、用いられる研磨パッドの材質等については、従来公知のものが使用できる。研磨パッドの材質としては、例えば、硬質発泡ポリウレタン等の有機高分子発泡体や無発泡体等が挙げられるが、なかでも、硬質発泡ポリウレタンが好ましい。
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
1.研磨液組成物の調製
(実施例1~25、比較例1~13)
酸化セリウム粒子(成分A)であるA1及びA2と、アニオン性縮合物(成分B)であるB1~B6、B11~B13又は非成分BであるB7~B10と、リン含有化合物(成分C)であるC1~C3と、水とを混合し、実施例1~25及び比較例1~13の研磨液組成物を得た。研磨液組成物中の各成分の含有量(質量%)は、表1~3に示すとおりであり、水の含有量は、成分Aと成分B又は非成分Bと成分Cとを除いた残余である。pH調整はアンモニアもしくは硝酸を用いて実施した。
(実施例1~25、比較例1~13)
酸化セリウム粒子(成分A)であるA1及びA2と、アニオン性縮合物(成分B)であるB1~B6、B11~B13又は非成分BであるB7~B10と、リン含有化合物(成分C)であるC1~C3と、水とを混合し、実施例1~25及び比較例1~13の研磨液組成物を得た。研磨液組成物中の各成分の含有量(質量%)は、表1~3に示すとおりであり、水の含有量は、成分Aと成分B又は非成分Bと成分Cとを除いた残余である。pH調整はアンモニアもしくは硝酸を用いて実施した。
酸化セリウム粒子(成分A)
A1:負帯電セリア[粉砕セリア、平均一次粒子径:49.5nm、BET比表面積16.8m2/g、表面電位:-50mV]
A2:正帯電セリア[粉砕セリア、平均一次粒子径:38.3nm、BET比表面積21.7m2/g、表面電位:80mV]
A1:負帯電セリア[粉砕セリア、平均一次粒子径:49.5nm、BET比表面積16.8m2/g、表面電位:-50mV]
A2:正帯電セリア[粉砕セリア、平均一次粒子径:38.3nm、BET比表面積21.7m2/g、表面電位:80mV]
アニオン性縮合物(成分B)又は非成分B
ホルムアルデヒド(共)縮合物は、モノマーの総量1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.93~0.99モルとなるようにホルマリンを85~105℃で、3~6時間かけて滴下し、滴下後95~105℃で4~9時間かけて縮合反応を行うことで合成した。共重合体における構成モノマーの比率は、モノマーの配合量(モル比)で調整した。
成分B1~B6、B11~B13及び非成分B7~B10は、いずれも、研磨液組成物中に完全に溶解していることを目視で確認した。
(成分B)
B1:4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)とp-フェノールスルホン酸(pPhS)とのホルムアルデヒド共縮合物(以下、「HBA/PhS」と表す)(構成モノマーモル比HBA:PhS=50:50)、重量平均分子量21000
B2:HBA/PhS(HBA:PhS=50:50)、重量平均分子量6,900
B3:HBA/PhS(HBA:PhS=50:50)、重量平均分子量13,500
B4:HBA/PhS(HBA:PhS=50:50)、重量平均分子量18,000
B5:HBA/PhS(HBA:PhS=55:45)、重量平均分子量21,000
B6:HBA/PhS(HBA:PhS=60:40)、重量平均分子量21,000
B11:2,6-ジヒドロキシ安息香酸(2,6-HBA)とp-フェノールスルホン酸(pPhS)とのホルムアルデヒド共縮合物(以下、「DHBA/PhS」と表す)DHBA/PhS(DHBA:PhS=50:50)、重量平均分子量21,000
B12:HBA/PhS(HBA:PhS=40:60)、重量平均分子量21,000
B13:HBA/PhS(HBA:PhS=35:65)、重量平均分子量21,000
(非成分B)
B7:HBA/PhS(HBA:PhS=20:80)、重量平均分子量21,000
B8:ポリアクリル酸、重量平均分子量24,000(花王株式会社製)
B9:ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド共縮合物、重量平均分子量8,000
B10:ポリスチレンスルホン酸、重量平均分子量20,000(東ソー有機化学社製)
ホルムアルデヒド(共)縮合物は、モノマーの総量1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.93~0.99モルとなるようにホルマリンを85~105℃で、3~6時間かけて滴下し、滴下後95~105℃で4~9時間かけて縮合反応を行うことで合成した。共重合体における構成モノマーの比率は、モノマーの配合量(モル比)で調整した。
成分B1~B6、B11~B13及び非成分B7~B10は、いずれも、研磨液組成物中に完全に溶解していることを目視で確認した。
(成分B)
B1:4-ヒドロキシ安息香酸(4-HBA)とp-フェノールスルホン酸(pPhS)とのホルムアルデヒド共縮合物(以下、「HBA/PhS」と表す)(構成モノマーモル比HBA:PhS=50:50)、重量平均分子量21000
B2:HBA/PhS(HBA:PhS=50:50)、重量平均分子量6,900
B3:HBA/PhS(HBA:PhS=50:50)、重量平均分子量13,500
B4:HBA/PhS(HBA:PhS=50:50)、重量平均分子量18,000
B5:HBA/PhS(HBA:PhS=55:45)、重量平均分子量21,000
B6:HBA/PhS(HBA:PhS=60:40)、重量平均分子量21,000
B11:2,6-ジヒドロキシ安息香酸(2,6-HBA)とp-フェノールスルホン酸(pPhS)とのホルムアルデヒド共縮合物(以下、「DHBA/PhS」と表す)DHBA/PhS(DHBA:PhS=50:50)、重量平均分子量21,000
B12:HBA/PhS(HBA:PhS=40:60)、重量平均分子量21,000
B13:HBA/PhS(HBA:PhS=35:65)、重量平均分子量21,000
(非成分B)
B7:HBA/PhS(HBA:PhS=20:80)、重量平均分子量21,000
B8:ポリアクリル酸、重量平均分子量24,000(花王株式会社製)
B9:ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド共縮合物、重量平均分子量8,000
B10:ポリスチレンスルホン酸、重量平均分子量20,000(東ソー有機化学社製)
リン含有化合物(成分C)
C1:フェニルホスホン酸(東京化成工業社製)[式(IV)中、R12:OH、R13:OH、R14:フェニル基、Y:結合手、q:0である。]
C2:クレアチノールホスファート(東京化成工業社製[式(IV)中、R12:OH、R13:OH、R14:1-メチルグアニジノ基、Y:エチレン基、q:1である。]
C3:ブチルホスホン酸(東京化成工業社製[式(IV)中、R12:OH、R13:OH、R14:ブチル基、Y:結合手、q:0である。]
C1:フェニルホスホン酸(東京化成工業社製)[式(IV)中、R12:OH、R13:OH、R14:フェニル基、Y:結合手、q:0である。]
C2:クレアチノールホスファート(東京化成工業社製[式(IV)中、R12:OH、R13:OH、R14:1-メチルグアニジノ基、Y:エチレン基、q:1である。]
C3:ブチルホスホン酸(東京化成工業社製[式(IV)中、R12:OH、R13:OH、R14:ブチル基、Y:結合手、q:0である。]
2.各パラメータの測定方法
(1)研磨液組成物のpH
研磨液組成物の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製、「HW-41K」)を用いて測定した値であり、pHメータの電極を研磨液組成物へ浸漬して1分後の数値である。
(1)研磨液組成物のpH
研磨液組成物の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜ディーケーケー株式会社製、「HW-41K」)を用いて測定した値であり、pHメータの電極を研磨液組成物へ浸漬して1分後の数値である。
(2)酸化セリウム粒子(セリア、成分A)の平均一次粒径
酸化セリウム粒子(成分A)の平均一次粒径(nm)は、下記BET(窒素吸着)法によって得られる比表面積S(m2/g)を用い、酸化セリウム粒子の真密度を7.2g/cm3として算出した。
酸化セリウム粒子(成分A)の平均一次粒径(nm)は、下記BET(窒素吸着)法によって得られる比表面積S(m2/g)を用い、酸化セリウム粒子の真密度を7.2g/cm3として算出した。
(3)酸化セリウム粒子(成分A)のBET比表面積
比表面積は、酸化セリウム粒子分散液を120℃で3時間熱風乾燥した後、メノウ乳鉢で細かく粉砕しサンプルを得た。測定直前に120℃の雰囲気下で15分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
比表面積は、酸化セリウム粒子分散液を120℃で3時間熱風乾燥した後、メノウ乳鉢で細かく粉砕しサンプルを得た。測定直前に120℃の雰囲気下で15分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
(4)酸化セリウム粒子(成分A)の表面電位
酸化セリウム粒子の表面電位(mV)は、表面電位測定装置(協和界面化学社製「ゼータプローブ」)にて測定した。超純水を用い、酸化セリウム濃度0.15%に調整し、表面電位測定装置に投入し、粒子密度7.13g/ml、粒子誘電率7の条件にて表面電位を測定した。測定回数は3回行い、それらの平均値を測定結果とした。
酸化セリウム粒子の表面電位(mV)は、表面電位測定装置(協和界面化学社製「ゼータプローブ」)にて測定した。超純水を用い、酸化セリウム濃度0.15%に調整し、表面電位測定装置に投入し、粒子密度7.13g/ml、粒子誘電率7の条件にて表面電位を測定した。測定回数は3回行い、それらの平均値を測定結果とした。
(5)アニオン性縮合物(成分B及び非成分B)の重量平均分子量
成分B及び非成分Bの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により下記条件で測定した。
<測定条件>
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー)
溶離液:30mM CH3COONa/CH3CN=6/4
流量:0.7ml/min
検出:UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(単分散ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV-8020
成分B及び非成分Bの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により下記条件で測定した。
<測定条件>
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー)
溶離液:30mM CH3COONa/CH3CN=6/4
流量:0.7ml/min
検出:UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(単分散ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV-8020
3.研磨液組成物の選択比評価(実施例1~11、17~25、比較例1~6)
(1)試験片(ブランケット基板)の作製
シリコンウェーハの片面に、TEOS-プラズマCVD法で厚さ2000nmの酸化珪素膜(ブランケット膜)を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、酸化珪素膜試験片(ブランケット基板)を得た。
同様に、シリコンウェーハの片面に、CVD法で厚さ70nmの窒化珪素膜(ブランケット膜)を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、窒化珪素膜試験片(ブランケット基板)を得た。
(1)試験片(ブランケット基板)の作製
シリコンウェーハの片面に、TEOS-プラズマCVD法で厚さ2000nmの酸化珪素膜(ブランケット膜)を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、酸化珪素膜試験片(ブランケット基板)を得た。
同様に、シリコンウェーハの片面に、CVD法で厚さ70nmの窒化珪素膜(ブランケット膜)を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、窒化珪素膜試験片(ブランケット基板)を得た。
(2)酸化珪素膜及び窒化珪素膜の研磨速度
実施例1~11、17~25及び比較例1~6の各研磨液組成物を用いて、下記研磨条件で上記試験片(酸化珪素膜及び窒化珪素膜のブランケット基板)を研磨した。
<研磨条件>
研磨装置:片面研磨機[Bruker社製、TriboLab CMP]
研磨パッド:硬質ウレタンパッド「IC-1000/Suba400」[ニッタ・ハース社製]
定盤回転数:100rpm
ヘッド回転数:107rpm
研磨荷重:300g重/cm2
研磨液供給量:50mL/分
研磨時間:1分間
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製「VM-1230」)を用いて、酸化珪素膜又は窒化珪素膜の膜厚を測定した。
酸化珪素膜(被研磨膜)の研磨速度は下記式により算出した。
酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)
=[研磨前の酸化珪素膜厚さ(Å)-研磨後の酸化珪素膜厚さ(Å)]/研磨時間(分)
窒化珪素膜(研磨ストッパ膜)の研磨速度は下記式により算出した。
窒化珪素膜の研磨速度(Å/分)
=[研磨前の窒化珪素膜厚さ(Å)-研磨後の窒化珪素膜厚さ(Å)]/研磨時間(分)
実施例1~11、17~25及び比較例1~6の各研磨液組成物を用いて、下記研磨条件で上記試験片(酸化珪素膜及び窒化珪素膜のブランケット基板)を研磨した。
<研磨条件>
研磨装置:片面研磨機[Bruker社製、TriboLab CMP]
研磨パッド:硬質ウレタンパッド「IC-1000/Suba400」[ニッタ・ハース社製]
定盤回転数:100rpm
ヘッド回転数:107rpm
研磨荷重:300g重/cm2
研磨液供給量:50mL/分
研磨時間:1分間
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(SCREENセミコンダクターソリューションズ社製「VM-1230」)を用いて、酸化珪素膜又は窒化珪素膜の膜厚を測定した。
酸化珪素膜(被研磨膜)の研磨速度は下記式により算出した。
酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)
=[研磨前の酸化珪素膜厚さ(Å)-研磨後の酸化珪素膜厚さ(Å)]/研磨時間(分)
窒化珪素膜(研磨ストッパ膜)の研磨速度は下記式により算出した。
窒化珪素膜の研磨速度(Å/分)
=[研磨前の窒化珪素膜厚さ(Å)-研磨後の窒化珪素膜厚さ(Å)]/研磨時間(分)
(3)研磨選択性(研磨速度比)
窒化珪素膜の研磨速度に対する酸化珪素膜の研磨速度の比を研磨速度比とし、下記式により算出した。研磨速度比の値が大きいほど、研磨選択性が高いことを示す。
研磨速度比=酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)/窒化珪素膜の研磨速度(Å/分)
以上の結果を表1に示す。
窒化珪素膜の研磨速度に対する酸化珪素膜の研磨速度の比を研磨速度比とし、下記式により算出した。研磨速度比の値が大きいほど、研磨選択性が高いことを示す。
研磨速度比=酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)/窒化珪素膜の研磨速度(Å/分)
以上の結果を表1に示す。
表1に示されるように、実施例1~11、17~19では、成分Bを含まない比較例1~6に比べ、酸化珪素膜の研磨速度が大きく損なわれることなく、かつ、窒化珪素膜の研磨速度が大きく抑制され、その結果、研磨選択性が向上していた。さらに成分Cを含む実施例20~25は、成分Cを含まない実施例1と比較して、酸化珪素膜の研磨速度が大きく損なわれることなく、かつ、さらに窒化珪素膜の研磨速度が大きく抑制され、その結果、さらに研磨選択性が向上していた。
4.研磨液組成物のディッシング評価(実施例12~13、比較例7~10)
実施例12~13及び比較例7~10の研磨液組成物を用いて、過研磨時の窒化珪素膜の研磨速度及びディッシング速度を評価した。評価方法を以下に示す。
実施例12~13及び比較例7~10の研磨液組成物を用いて、過研磨時の窒化珪素膜の研磨速度及びディッシング速度を評価した。評価方法を以下に示す。
(1)試験片(パターン基板)
評価用パターン基板として市販のCMP特性評価用ウエハ(Advantec社製の「P-TEOS MIT864 PTウエハ」、直径300mm)を用いた。この評価用パターン基板は、1層目として膜厚150nmの窒化珪素膜と2層目として膜厚450nmの酸化珪素膜が凸部として配置されており、凹部も同様に膜厚450nmの酸化珪素膜が配置され、凸部と凹部の段差が350nmになるよう、エッチングにより線状凹凸パターンが形成されている。酸化珪素膜はP-TEOSにより形成されており、凸部及び凹部の線幅がそれぞれ100μmのものを測定対象として使用した。
評価用パターン基板として市販のCMP特性評価用ウエハ(Advantec社製の「P-TEOS MIT864 PTウエハ」、直径300mm)を用いた。この評価用パターン基板は、1層目として膜厚150nmの窒化珪素膜と2層目として膜厚450nmの酸化珪素膜が凸部として配置されており、凹部も同様に膜厚450nmの酸化珪素膜が配置され、凸部と凹部の段差が350nmになるよう、エッチングにより線状凹凸パターンが形成されている。酸化珪素膜はP-TEOSにより形成されており、凸部及び凹部の線幅がそれぞれ100μmのものを測定対象として使用した。
(2)研磨
実施例12~13及び比較例7~10の研磨液組成物を用いて、上記3(1)ブランケット基板(酸化珪素膜、窒化珪素膜)と上記(1)のパターン基板を、下記研磨条件で研磨した。
<研磨条件>
研磨装置:片面研磨機[荏原製作所製、F REX-300]
研磨パッド:硬質ウレタンパッド「IC-1000/Suba400」[ニッタ・ハース社製]
定盤回転数:100rpm
ヘッド回転数:107rpm
研磨荷重:300g重/cm2
研磨液供給量:200mL/分
研磨時間:1分間(酸化珪素膜基板、窒化珪素膜基板)、平坦化時間+過剰研磨時間(パターン基板)
実施例12~13及び比較例7~10の研磨液組成物を用いて、上記3(1)ブランケット基板(酸化珪素膜、窒化珪素膜)と上記(1)のパターン基板を、下記研磨条件で研磨した。
<研磨条件>
研磨装置:片面研磨機[荏原製作所製、F REX-300]
研磨パッド:硬質ウレタンパッド「IC-1000/Suba400」[ニッタ・ハース社製]
定盤回転数:100rpm
ヘッド回転数:107rpm
研磨荷重:300g重/cm2
研磨液供給量:200mL/分
研磨時間:1分間(酸化珪素膜基板、窒化珪素膜基板)、平坦化時間+過剰研磨時間(パターン基板)
(3)研磨選択性
ブランケット基板を使用した研磨速度及び研磨選択性は、上記3(2)及び(3)と同様の計算により算出した。
ブランケット基板を使用した研磨速度及び研磨選択性は、上記3(2)及び(3)と同様の計算により算出した。
(4)平坦化時間
試験片(パターン基板)の凸部の酸化珪素膜を平坦化するまでに要した時間(秒)を測定し平坦化時間とした
試験片(パターン基板)の凸部の酸化珪素膜を平坦化するまでに要した時間(秒)を測定し平坦化時間とした
(5)過研磨時の窒化珪素膜の研磨速度
凸部の酸化珪素膜が平坦化され窒化珪素膜が露出した後、凸部の酸化珪素膜が平坦化されるのに要した時間(平坦化時間)の20%の時間を過剰に研磨し、過剰研磨前後での窒化珪素膜の膜厚をSpectra FX200(KLAテンコール社製)を用いて測定した。過研磨時の窒化珪素膜の研磨速度は下記式により算出した。
窒化膜が露出してからの窒化珪素膜の研磨速度(Å/秒)
=[窒化膜露出時の窒化珪素膜の膜厚(Å)-研磨終了時の窒化珪素膜の膜厚(Å)]/過研磨時間(秒)
凸部の酸化珪素膜が平坦化され窒化珪素膜が露出した後、凸部の酸化珪素膜が平坦化されるのに要した時間(平坦化時間)の20%の時間を過剰に研磨し、過剰研磨前後での窒化珪素膜の膜厚をSpectra FX200(KLAテンコール社製)を用いて測定した。過研磨時の窒化珪素膜の研磨速度は下記式により算出した。
窒化膜が露出してからの窒化珪素膜の研磨速度(Å/秒)
=[窒化膜露出時の窒化珪素膜の膜厚(Å)-研磨終了時の窒化珪素膜の膜厚(Å)]/過研磨時間(秒)
(6)過研磨時のディッシング速度
凸部の酸化珪素膜が平坦化され窒化珪素膜が露出した後、凸部の酸化珪素膜が平坦化されるのに要した時間(平坦化時間)の20%の時間を過剰に研磨し、過剰研磨前後での凹部での酸化珪素膜の膜厚をSpectra FX200(KLAテンコール社製)を用いて測定した。過研磨時のディッシング速度は下記式により算出した。
窒化膜が露出してからの凹部の研磨速度(Å/秒)
=[窒化膜露出時の凹部の膜厚(Å)-研磨終了時の凹部の膜厚(Å)]/過研磨時間(秒)
以上の結果を表2に示す。
凸部の酸化珪素膜が平坦化され窒化珪素膜が露出した後、凸部の酸化珪素膜が平坦化されるのに要した時間(平坦化時間)の20%の時間を過剰に研磨し、過剰研磨前後での凹部での酸化珪素膜の膜厚をSpectra FX200(KLAテンコール社製)を用いて測定した。過研磨時のディッシング速度は下記式により算出した。
窒化膜が露出してからの凹部の研磨速度(Å/秒)
=[窒化膜露出時の凹部の膜厚(Å)-研磨終了時の凹部の膜厚(Å)]/過研磨時間(秒)
以上の結果を表2に示す。
表2に示されるように、実施例12~13の研磨液組成物は、成分Bを含まない比較例7~10に比べて、酸化珪素膜の研磨速度を確保しつつ研磨選択性が向上していた。さらに、実施例12~13の研磨液組成物は、比較例7~10に比べて、過研磨時の窒化珪素膜の研磨速度及びディッシング速度が抑制されていることがわかった。さらに成分Cを含む実施例13は、成分Cを含まない実施例12と比較して、研磨選択性がさらに向上し、過研磨時の窒化珪素膜及びディッシング速度がさらに抑制されていた。
5.研磨液組成物(実施例14~16、比較例11~13)の評価
(1)試験片の作製
シリコンウェーハの片面に、TEOS-プラズマCVD法で厚さ2000nmの酸化珪素膜を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、酸化珪素膜試験片を得た。同様に、シリコンウェーハの片面に、まず熱酸化膜を100nm形成させたのち、CVD法で厚さ500nmのポリシリコン膜を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、ポリシリコン膜試験片を得た。
(1)試験片の作製
シリコンウェーハの片面に、TEOS-プラズマCVD法で厚さ2000nmの酸化珪素膜を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、酸化珪素膜試験片を得た。同様に、シリコンウェーハの片面に、まず熱酸化膜を100nm形成させたのち、CVD法で厚さ500nmのポリシリコン膜を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、ポリシリコン膜試験片を得た。
(2)酸化珪素膜の研磨速度の測定
実施例14~16及び比較例11~13の研磨液組成物を用いた酸化珪素膜の研磨速度は、実施例1~11及び比較例1~6の研磨液組成物を用いた前記酸化珪素膜及び窒化珪素膜の研磨速度の測定と同様にして算出した。
実施例14~16及び比較例11~13の研磨液組成物を用いた酸化珪素膜の研磨速度は、実施例1~11及び比較例1~6の研磨液組成物を用いた前記酸化珪素膜及び窒化珪素膜の研磨速度の測定と同様にして算出した。
(3)ポリシリコン膜の研磨速度の測定
試験片として酸化珪素膜試験片の代わりにポリシリコン膜試験片を用いること以外は、前記酸化珪素膜の研磨速度の測定と同様に、ポリシリコン膜の研磨、膜厚の測定及び研磨速度の算出を行った。
試験片として酸化珪素膜試験片の代わりにポリシリコン膜試験片を用いること以外は、前記酸化珪素膜の研磨速度の測定と同様に、ポリシリコン膜の研磨、膜厚の測定及び研磨速度の算出を行った。
(4)研磨選択性(研磨速度比)
酸化珪素膜の研磨速度に対するポリシリコン膜の研磨速度の比(SiO2膜/poly-Si膜)を研磨速度比とし、下記式により算出した。研磨速度比の値が大きいほど、研磨選択性が良好であるため、段差解消に対する能力が高い。
研磨速度比=酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)/ポリシリコン膜の研磨速度(Å/分)
以上の結果を表3に示す。
酸化珪素膜の研磨速度に対するポリシリコン膜の研磨速度の比(SiO2膜/poly-Si膜)を研磨速度比とし、下記式により算出した。研磨速度比の値が大きいほど、研磨選択性が良好であるため、段差解消に対する能力が高い。
研磨速度比=酸化珪素膜の研磨速度(Å/分)/ポリシリコン膜の研磨速度(Å/分)
以上の結果を表3に示す。
表3に示されるように、実施例14~16では、成分Bを含まない比較例11~13に比べ、酸化珪素膜の研磨速度が大きく損なわれることなく、かつ、ポリシリコン膜の研磨速度が大きく抑制され、その結果、研磨選択性が向上していた。
本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、高密度化又は高集積化用の半導体基板の製造方法において有用である。
Claims (11)
- 酸化セリウム粒子(成分A)と、水溶性アニオン性縮合物(成分B)と、水系媒体とを含有し、
成分Bが、下記式(I)で表されるモノマー(構成モノマーb1)及び下記式(II)で表されるモノマー(構成モノマーb2)を含むモノマーの共縮合物であり、
成分Bにおける構成モノマーb1と構成モノマーb2の合計に対する構成モノマーb1のモル比(%)が、30%を超える、酸化珪素膜用研磨液組成物。
式(II)中、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1以上4以下の炭化水素基、又は、-OM3を示し、Xは、-SO3M4又は-PO3M5M6を示し、M3、M4、M5及びM6は同一又は異なって、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、有機カチオン、アンモニウム(NH4 +)又は水素原子を示す。 - 式(III)中のmが0.45以上である、請求項2に記載の酸化珪素膜用研磨液組成物。
- 成分Bの重量平均分子量が、1,500以上10万以下である、請求項1から3のいずれかに記載の酸化珪素膜用研磨液組成物。
- 組成物中の成分Bの含有量が、0.006質量%以上0.5質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の酸化珪素膜用研磨液組成物。
- 組成物中の成分Aの含有量が、0.001質量%以上6質量%以下である、請求項1から5のいずれかに記載の酸化珪素膜用研磨液組成物。
- 成分Cは、フェニルホスホン酸又はその塩である、請求項7に記載の酸化珪素膜用研磨液組成物。
- 成分Cの含有量が、0.005質量%以上0.5質量%以下である、請求項7又は8に記載の酸化珪素膜用研磨液組成物。
- 請求項1から9のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
- 請求項1から9のいずれかに記載の研磨液組成物を用いて被研磨膜を研磨する工程を含み、前記被研磨膜は、半導体基板の製造過程で形成される酸化珪素膜である、研磨方法。
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