JP2022085044A - 融合タンパク質 - Google Patents

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Keisuke Futamura
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Abstract

【課題】本開示の課題は、少なくとも、化学療法抵抗性がん細胞を標的としたがん治療に有用な技術の提供である。【解決手段】炭疽菌防御抗原配列、目的タンパク質配列、及びプロテアーゼ認識配列を含む融合タンパク質であって、該炭疽菌防御抗原配列は、該炭疽菌防御抗原配列のドメイン1を表す配列を含み、該ドメイン1を表す配列には、N末端側から順に、前記プロテアーゼ認識配列及び前記目的タンパク質配列が挿入されている、融合タンパク質。【選択図】図6

Description

本開示は、融合タンパク質に関する。詳細には、化学療法抵抗性がん細胞を標的としたがん治療に有用な融合タンパク質に関する。
がんに対する初回化学療法は著効例が多いが、ほとんどの症例で化学療法に抵抗性を示すがん細胞が生じ、将来的な再発の原因となる。高悪性度漿液性腺癌は卵巣がんの中でも最も発症頻度が高く、初回の化学療法は著効するが、ほとんどの症例で再発する。初回化学療法から短期間で再発した場合、同じ薬剤は使用することができない。そのため、化学療法抵抗性がん細胞を標的とした薬剤が将来的な再発を防ぐ療法となると考えられる。
しかしながら、このような薬剤は未だ開発されていない。その理由の1つとして、実際のがん患者から化学療法後に残存するがん細胞を回収することが難しく、化学療法抵抗性を示すがん細胞の特徴がほとんど明らかになっていないことが挙げられる。
これまでに炭疽菌防御抗原(PA)は、標的細胞の細胞膜上で7量体を形成し、7量体を形成したPAの致死因子結合部分に致死因子が結合することによって、炭疽菌の毒性を生ずることが分かっている。また、細胞特異性を高めるためにPAの致死因子結合部分に、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)又はマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)に認識される切断部位のいずれかを含むように作製されたPA変異体は、いずれか一方のPA変異体のみでは機能的な7量体を形成できないため、致死因子との結合が阻害され、がん細胞に対する傷害性が発揮できない。そのため、いずれか一方のPA変異体のみを投与した場合には、抗がん効果が低いことが示されている。一方で、それら2種類のPA変異体を一緒に投与すると、機能的な7量体を形成することができ、細胞特異性が高いことによりマウスへの毒性を低減しつつも、移植されたがん細胞に対して特異的に効果を生ずることが示されている(非特許文献1)。
Nat. Biotechnol., 2005;23(6):725-730 Biochemistry, 2014;53:2166-2171 Journal for ImmunoTherapy of Cancer, 2015;3:16
本開示の課題は、少なくとも、化学療法抵抗性がん細胞を標的としたがん治療に有用な技術の提供である。
本発明者らは、化学療法前の卵巣がん臨床検体や化学療法後の卵巣がん臨床検体のシングルセル遺伝子発現解析やフローサイトメトリーで分離及び回収した細胞の遺伝子発現解析から、化学療法後に残存する血球系以外の細胞には間葉系マーカーTHY1を始め、間葉系細胞の性質に関わる遺伝子群が発現している間葉系がん細胞が出現することを見出した。
この細胞集団の遺伝子発現から炭疽菌毒素の受容体であるANTXRや、プロテアーゼMMP及びuPAが特異的に発現していることを見出した。さらにこの細胞は増殖マーカーがほとんど発現しておらず、静止期にあることから、従来の抗がん剤の効果を見込めないことを見出した。
ここで本発明者らは、化学療法後に残存する化学療法抵抗性がん細胞を標的とした静止期がん細胞治療用分子PA-DTを開発した。PA-DTは、炭疽菌防御抗原(PA)とジフテリア毒素(DT)を融合した分子である。本発明者等は、PA-DTはマトリックスメタプロテアーゼ(MMP)及びウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)を発現するがん細胞の近くで活性化し、ANTXRに結合すること、さらにその後、ANTXRに結合したPA-DTは、細胞内へ送達され、がん細胞を細胞死へと誘導することを見出した。なお、PA-DTのマウスへの腹腔内投与において、マウスへの有害事象は観察されなかった。
さらに発明者等は、化学療法後に残存する化学療法抵抗性がん細胞を標識するために、静止期がん細胞検出用分子PA-Cloverを開発した。PA-Cloverは、炭疽菌毒素である防御抗原(PA)と蛍光色素であるmClover(Clover)を融合した分子である。本発明者等は、PA-CloverはMMP又はuPAを発現するがん細胞の近くで活性化し、ANTXRに結合することにより、またはその後、ANTXRに結合したPA-Cloverが細胞内へ送達されることにより、がん細胞を標識できることを見出した。
すなわち、本開示は以下のとおりである。
[1]炭疽菌防御抗原配列、目的タンパク質配列、及びプロテアーゼ認識配列を含む融合タンパク質であって、
該炭疽菌防御抗原配列は、該炭疽菌防御抗原配列のドメイン1を表す配列を含み、
該ドメイン1を表す配列には、N末端側から順に、前記プロテアーゼ認識配列及び前記目的タンパク質配列が挿入されている、
融合タンパク質。
[2]前記挿入が、配列番号1で表される前記炭疽菌防御抗原のアミノ酸配列の153位~173位に相当する領域のうちの何れかの位置で行われるものである、[1]に記載の融合タンパク質。
[3]前記炭疽菌防御抗原配列が、
配列番号1で表されるアミノ酸配列である、又は
配列番号1で表されるアミノ酸配列において、342位のグリシン残基がトリプトファン残基に置換されている配列である、
[1]又は[2]に記載の融合タンパク質。
[4]前記目的タンパク質配列は、第2のプロテアーゼ認識配列が挿入された配列である、[1]~[3]のいずれかに記載の融合タンパク質。
[5]前記目的タンパク質配列が、N末端側から順に、ジフテリア毒素Cドメイン(DT-C)配列、前記第2のプロテアーゼ認識配列、及びジフテリア毒素Tドメイン(DT-T)配列を含むものである、
[4]に記載の融合タンパク質。
[6]前記DT-C配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列であり、及び/又は
前記DT-T配列が、配列番号3で表されるアミノ酸配列である、
[5]に記載の融合タンパク質。
[7]前記プロテアーゼ認識配列及び前記第2のプロテアーゼ認識配列は、同一の又は異なるプロテアーゼが認識するものであり、該プロテアーゼはマトリックスメタプロテアーゼ(MMP)及びウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)から選択される、
[5]又は[6]に記載の融合タンパク質。
[8]前記目的タンパク質配列が、蛍光を発するタンパク質の配列を含む、
[1]~[3]のいずれかに記載の融合タンパク質。
[9]前記プロテアーゼ認識配列は、マトリックスメタプロテアーゼ(MMP)又はウロ
キナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)が認識するものである、[8]に記載の融合タンパク質。
[10]前記蛍光を発するタンパク質が、mCloverである、[8]又は[9]に記載の融合タンパク質。
[11][1]~[7]のいずれかに記載の融合タンパク質を含む、又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現するがん細胞を細胞死に誘導するための組成物。
[12][1]~[7]のいずれかに記載の融合タンパク質を含む、又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現するがん細胞を含むがんを治療するための組成物。
[13][8]~[10]のいずれかに記載の融合タンパク質を含む、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現するがん細胞を標識するための組成物。
[14][13]に記載の組成物を含む、前記がん標識用キット。
[15][1]~[10]のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
本開示により、少なくとも、化学療法抵抗性がん細胞を標的としたがん治療に有用な技術が提供できる。
これまでに上市されている抗がん剤は、増殖しているがん細胞に作用し細胞死を誘導させるものや、がんの変異を利用した分子標的薬が主であったが、これらの抗がん剤は静止期にあるがん細胞に対して効果を示し難いものであった。本開示のPA-DTによって、静止期にある化学療法抵抗性がん細胞の遺伝子発現プロファイルを利用することで、特異的にこれらの細胞を傷害することが可能になる。
PA-DTはプロテアーゼ非存在下では安定であるが、プロテアーゼに曝露されると切断され活性化する。活性化したPA-DTは速やかに分解される。そのため、PA-DTは、化学療法抵抗性がん細胞の近傍に来るまでは安定であるが、近傍に来ることで、MMPやuPAなどのプロテアーゼにより切断されることで活性化され、ANTXRに結合し、細胞内に取り込まれることによって、細胞内に毒素を放出し、細胞死を誘導するものである。ここで、活性化したPA-DTががん細胞に取り込まれなかった場合には、活性化PA-DTの安定性が低下し、周りの正常組織に作用する前に分解されるため副作用は少ない。また、本開示の分子の毒素部分はジフテリア毒素に限られず、必要に応じて任意の毒素等に置き換えることができる。
PA-Cloverも同様に、プロテアーゼ非存在下では安定であるが、プロテアーゼに曝露されると切断され活性化する。これにより化学療法抵抗性がん細胞を標識する検査法としても利用できるものであり。将来的な再発につながるがん細胞検出技術として利用できるものである。例えば、化学療法後の臨床検体は大量の死細胞が存在しているためその評価が極めて難しいものであるが、PA-Cloverによって抵抗性がん細胞を標識することにより、将来的な再発リスクの評価容易に行えるようになる。また、本開示の分子のmCloverの部分は、必要に応じて任意の蛍光物質に置き換えることができる。
シングルセル発現解析により、初発未治療検体2例、初発化学療法後検体1例、再発検体1例を用いて、卵巣がんを形成する細胞集団の構成の解析を行った。図中、黒色のドットは増殖マーカーであるMKI67の遺伝子が発現していることを示す。黒色の濃淡は発現量の程度を示し、黒色が濃い程に発現量が多いことを示す。 初発未治療検体2例、初発化学療法後検体1例、再発検体1例のシングルセル発現解析結果を1つにまとめて図示したものである。図中、黒いドットは各マーカー(EPCAM、PTPRC、THY1、MYC、MKI67、ANTXR1、MMP2、PLAU)の遺伝子が発現していることを表す。黒色の濃淡は発現量の程度を示し、黒色が濃い程に発現量が多いことを示す。 静止期がん細胞を標的とした治療用分子「PA-DT」と検出用分子「PA-Clover」の設計に関する模式図である。 PA-DTの作用機序の模式図である。 Aは、PA-DTの模式図を示す。Bは、PA-DTの性能評価を示す図であり、PA-DT、PA配列においてG342W置換を有するPA-DT(図中、PA-DT G342Wと示す)、及びMMP認識配列及びuPA認識配列を有しないPA-DT(図中、PA-DT no cutと示す)のそれぞれに対してMMP2、MMP9又はuPAを反応させ、SDS-PAGE gelで泳動し、転写膜に転写し、HRP標識M2抗体で検出したものである(写真図)。 PA-DTの殺細胞効果の評価を示す図である。マウス卵巣がん細胞株ID8 luc2及びヒト正常前立腺細胞PNT2にPA-DTを添加して、細胞生存率を比較した。 PA-DT変異体を用いた場合のPA-DTの機能解析結果を示す。マウス卵巣がん細胞株ID8 luc2に、PA-DT(図中original PADTと示す)、PA配列においてG342W置換を有するPA-DT(図中、G342Wと示す)、及びMMP認識配列及びuPA認識配列を有しないPA-DT(図中、nocutと示す)をそれぞれ添加して、細胞生存率を比較した。 がん細胞(ヒト卵巣癌細胞(Kuramochi)、ヒト頸癌細胞(HeLa)、ヒト去勢抵抗性前立腺癌細胞(CWR22Rv1)、マウスメラノーマ細胞(B16F10))に対するPA-DTの殺細胞効果の評価を示す図である(写真図)。各細胞にPA-DTを添加し、所定の日数経過後の、生細胞数をコントロールと比較した。
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
本開示の一実施形態は、炭疽菌防御抗原配列、目的タンパク質配列、及びプロテアーゼ認識配列を含む融合タンパク質であって、該炭疽菌防御抗原配列は、該炭疽菌防御抗原配列のドメイン1を表す配列を含み、該ドメイン1を表す配列には、N末端側から順に、前記プロテアーゼ認識配列及び前記目的タンパク質配列が挿入されている、融合タンパク質である。
本実施形態の融合タンパク質は、炭疽菌防御抗原配列を有することにより、炭疽菌防御抗原受容体(ANTXR)1及びANTXR2の何れにも結合することができる。
炭疽菌防御抗原配列は、本実施態様の効果を妨げない限り特に限定されることはないが、例えば配列番号1で表されるアミノ酸配列が挙げられる。なお、配列番号1の炭疽菌防御抗原配列は、開始コドンのメチオニンを除いたアミノ酸配列である。以下、本実施態様において、配列番号1の炭疽菌防御抗原配列におけるアミノ酸の位置は、開始コドンを除いて定義された位置を示す。
また炭疽菌防御抗原配列は、ANTXRに結合することができる限り、配列番号1で表
されるアミノ酸配列の全長に対して、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上同一の配列を含むアミノ酸配列であってもよく、また配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1~数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。「1又は数個」とは、例えば1~118個、好ましくは1~54個、さらに好ましくは1~27個であってもよい。
なお、アミノ酸配列間の同一性は当業者に既知の方法により算出することができ、例えばblastpによりデフォルト設定のScoring Parameters(Matrix:BLOSUM62;Gap Costs:Existence=11,Extension=1;Compositional adjustments:Conditional compositional score matrix adjustment)を用いることができる。
炭疽菌防御抗原配列は、該融合タンパク質がANTXRに結合できる限り任意のアミノ酸置換を有していてもよく、例えば配列番号1で表されるアミノ酸配列の342位又はこれに相当する位置のグリシン残基がトリプトファン、イソロイシン、バリン、ロイシン等に置換されていてもよい。該アミノ酸配列の342位又はこれに相当する位置のグリシン残基が任意のアミノ酸、例えばトリプトファン、イソロイシン、バリン、ロイシン等に置換されている配列を用いる事により、炭疽菌防御抗原のANTXR2に対する結合を減少させ、一方で、ANTXR1に対する特異性を高めることができる(非特許文献2)。
本実施形態におけるアミノ酸変異は、配列番号1で表されるアミノ酸配列の342位又はこれに相当する位置のグリシン残基がトリプトファン残基に置換されていることにより、ANTXR1に対する選択性が高まるという利点がある。これにより、炭疽菌防御抗原のANTXR2に対する結合を減少させ、ANTXR2を介した細胞死を減少させることができる。すなわち、配列番号1で表されるアミノ酸配列の342位又はこれに相当する位置のグリシン残基がトリプトファン残基に置換されていることにより、ANTXR1に対する特異性を高めることができるので、ANTXR1を発現する細胞を特異的に細胞死させることができる。
すなわち、本実施形態の融合タンパク質は、ANTXR1に特異的に結合させる場合は、配列番号1で表されるアミノ酸配列の342位又はこれに相当する位置のグリシン残基が任意のアミノ酸で置換されていることが好ましく、ANTXR1及びANTXR2の何れにも結合させる場合は、該アミノ酸置換が無いものを利用するなど、その目的に応じて使い分けることができる。
目的タンパク質配列は、ANTXRを発現する細胞に目的タンパク質を結合させることにより又は該細胞に目的タンパク質を導入させることにより、その細胞に目的タンパク質に起因する特定の作用や効果を生じさせるための配列である。
目的タンパク質配列は、その目的に応じて任意のタンパク質配列を使用することができる。目的タンパク質配列は、本実施態様の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば、ジフテリア毒素やボツリヌス神経毒素といった毒素タンパク質配列であってもよく、C5といった補体配列であってもよく、蛍光タンパク質配列であってもよく、タグ配列を複数回繰り返した配列であってもよい。なお、タグ配列を複数回繰り返すことによって、標的細胞を鮮明に標識することができる。
プロテアーゼ認識配列は、ANTXRを発現する細胞に存在するプロテアーゼ及び/又は該細胞の周囲に存在するプロテアーゼにより認識される配列である。
プロテアーゼ認識配列は、ANTXRを発現する細胞の周囲に多く存在するプロテアーゼに認識される配列である限り特に限定されない。
該配列を認識するプロテアーゼは、ANTXRを発現する細胞が産生するプロテアーゼであってもよく、その周辺細胞が産生するプロテアーゼであってもよいが、ANTXRを発現する細胞が産生するプロテアーゼであることが好ましい。
このようなプロテアーゼとしては、本実施態様の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えばマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)やウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)が挙げられる。MMPとしては、好ましくはMMP2やMMP9が挙げられる。
本実施形態の融合タンパク質は、炭疽菌防御抗原配列のドメイン1を表す配列を含み、該ドメイン1を表す配列には、N末端側から順に、前記プロテアーゼ認識配列及び前記目的タンパク質配列が挿入されているものである。
炭疽菌防御抗原配列のドメイン1を表す配列に対する、これらの配列の挿入は、本実施態様の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えば配列番号1で表される該炭疽菌防御抗原のアミノ酸配列の153位~173位に相当する領域のうちの何れかの位置で行われるものであってもよい。好ましくは配列番号1で表される該炭疽菌防御抗原のアミノ酸配列の163位に相当するアミノ酸のC末端側に挿入するものである。
これらの配列の炭疽菌防御抗原配列のドメイン1への挿入方法は、本実施態様の効果を妨げない限り特に限定されず、当業者に既知の方法を用いることができる。
本実施形態において、目的タンパク質配列は、第2のプロテアーゼ認識配列が挿入された配列であってもよい。例えば、目的タンパク質が、ジフテリア毒素、ボツリヌス神経毒素又は補体のように、タンパク質の一部が切断されることによって毒素活性などを生じるといった特定の作用を生じるタンパク質である場合、目的タンパク質配列は、目的タンパク質がその作用を生じるために切断される領域において、第2のプロテアーゼ認識配列が挿入されることが好ましい。
第2のプロテアーゼ認識配列は、上述のプロテアーゼ認識配列に関する記載を援用できる。
目的タンパク質がジフテリア毒素である場合、目的タンパク質配列は、本実施態様の効果を妨げない限り特に限定されないが、N末端側から順に、ジフテリア毒素Cドメイン(DT-C)配列、前記第2のプロテアーゼ認識配列、及びジフテリア毒素Tドメイン(DT-T)配列を含むものであってもよい。
目的タンパク質がジフテリア毒素である場合、本実施態様の効果を妨げない限り特に限定されないが、DT-C配列は配列番号2で表されるアミノ酸配列が挙げられ、DT-T配列は、配列番号3で表されるアミノ酸配列が挙げられる。
またDT-C配列及びDT-T配列は、細胞内に取り込まれて細胞内にジフテリア毒素を放出できる限り、それぞれ、配列番号2及び3で表されるアミノ酸配列の全長に対して、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上同一の配列を含むアミノ酸配列であってもよく、また配列番号2及び3で表されるアミノ酸配列において、それぞれ1~数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列であってもよい。「1又は数個」とは、例えば1~18個、好ましくは1~9個、さらに好ましくは1~5個であってもよい。
プロテアーゼ認識配列と第2のプロテアーゼ認識配列は、同一のプロテアーゼが認識する配列であってもよく、異なるプロテアーゼが認識する配列であってもよい。選択性の観点からは、プロテアーゼ認識配列と第2のプロテアーゼ認識配列は異なるプロテアーゼが認識する配列であることが好ましい。
プロテアーゼ認識配列と第2のプロテアーゼ認識配列は、それぞれマトリックスメタプロテアーゼ(MMP)及びウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)から選択されるプロテアーゼが認識する配列であることが好ましい。
本実施形態において、目的タンパク質配列は、蛍光を発するタンパク質の配列を含んで
もよい。
プロテアーゼ認識配列は、マトリックスメタプロテアーゼ(MMP)又はウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)が認識する配列であることが好ましい。
蛍光を発するタンパク質は、本実施態様の効果を妨げない限り特に限定されないが、例えばmCloverや緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、mCherry、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)などが挙げられる。
本実施形態の融合タンパク質は、本実施態様の効果を妨げない限り、N末端にIgκリーダー配列等の任意の分泌シグナル配列を付加してもよく、またC末端に3×FLAGタグ等の任意のタグ配列を付加してもよい。さらに、目的タンパク質のC末端側に、(GGGGS(配列番号4))×3リンカー等の任意のリンカー配列を含んでもよい。
<がん細胞を細胞死に誘導するための組成物>
本開示の他の実施形態は、上述のいずれかの融合タンパク質を含む、又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現するがん細胞を細胞死に誘導するための組成物である。
ポリヌクレオチドは、それぞれがコードする融合タンパク質を発現できる限り、1又は数個の塩基を置換、欠失、挿入、及び/又は付加した塩基配列を有する改変ポリヌクレオチドであってもよい。またポリヌクレオチドは、それぞれがコードする融合タンパク質を発現できる限り、ヌクレオチドに含まれる一部の糖やリン酸が置換された構造体であってもよい。
発現ベクターは、目的のポリヌクレオチドを組み込むことができ、そのタンパク質を宿主細胞において発現できる限り特に限定されず、当業者に既知の発現ベクターを用いることができる。例えば、プラスミドベクターやウイルスベクター等が挙げることができ、市販のベクターを使用することができる。
発現ベクターに目的のポリヌクレオチドを組み込む方法は、本実施態様の効果を妨げない限り特に限定されず、当業者に既知の方法によって行うことができる。
本実施形態の組成物に含まれる融合タンパク質又は上記発現ベクターによって発現した融合タンパク質は、がん細胞上に発現するANTXRと結合する。ANTXRに結合した該融合タンパク質は、MMPやuPA等のプロテアーゼにより、プロテアーゼ認識配列を切断され、活性化する。活性化した融合タンパク質は細胞膜上で7量体を形成して、がん細胞内にエンドサイトーシスされる。その後、がん細胞内にて、リソソームと結合してエンドソーム内のpHが低下することにより、融合タンパク質中の毒素が細胞質中に放出され、細胞死を誘導するものである。例えば、融合タンパク質内の毒素がジフテリア毒素である場合、細胞質中にジフテリア毒素C領域が放出され、これによりペプチド鎖伸長因子2(EF-2)の機能が抑制されることでタンパク質合成が阻害され、がん細胞の細胞死が誘導されるものである。
本実施形態において、がん細胞は、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現する細胞である。
がん細胞は、ANTXR及び融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現する限り特に限定されないが、例えば化学療法に対して抵抗性を有するがんであってもよく、上皮間葉転換を起こしたがん細胞であってもよく、THY1陽性のがん細胞であってもよく、及び/又は静止期のがん細胞であってもよい。
がん細胞の由来組織は、本実施態様の効果を奏するものである限り特に限定されないが
、がん細胞はANTXR1を発現するがん細胞であることが好ましく、例えば卵巣がん、頸がん、前立腺がん、又はメラノーマなどが挙げられる。さらにがん細胞が卵巣がんである場合は、高悪性度漿液性腺癌であることが好ましい。
本実施形態において、融合タンパク質を単独で医薬組成物として使用することができるが、担体や添加剤と混合して使用してもよい。ここで、担体としては、薬理的に許容される溶媒、希釈剤、賦形剤、結合剤などが挙げられ、液体状の医薬組成物の調製には例えば、水、生理食塩水、緩衝液などが用いられる。添加剤としては、安定剤、pH調整剤、増粘剤、抗酸化剤、等張化剤、緩衝剤、溶解補助剤、懸濁化剤、保存剤、凍害防止剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、制菌剤などが挙げられる。
本開示の医薬の剤型は、液剤、錠剤などが例示されるが、液剤が好ましい。医薬が液剤の場合、融合タンパク質の濃度は特に制限されないが、例えば、それぞれ0.1mg/mL~10mg/mLである。
本実施形態において、組成物の投与量は、がん細胞を細胞死に誘導できる限り特に限定されない。がんの種類、症状、程度、患者の年齢、性別、体重などによって適宜調整されるが、1回あたりの投与量は、例えば体重1kgあたり0.001mg~100mgである。単回投与であってもよく、複数回投与でもよい。複数回投与の場合は、例えば、1~60日毎に、合計2~10回投与する方法が挙げられる
組成物の投与方法は特に制限されず、経口投与、静脈投与、局所投与、などが挙げられるが、疾患部位に注射等で局所投与することが好ましい。注射による局所投与は、有針注射器を用いて行ってもよく、無針注射器を用いて行ってもよい。
組成物の投与対象はヒトやマウス等の哺乳動物であるが、好ましくはヒトである。
<がんを治療するための組成物>
本開示の他の実施形態は、上述のいずれかの融合タンパク質を含む、又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現するがん細胞を含むがんを治療するための組成物である。
本実施形態の組成物は、ポリペプチド、発現ベクター、がん細胞、剤形、組成物中の融合タンパク質含有量、組成物の投与量、投与スケジュール、投与方法、投与対象等に関して、がんを治療できる限り特に限定されず、<がん細胞を細胞死に誘導するための組成物>の項に記載した事項を援用できる。
本実施形態において、治療とは、例えばがん細胞を細胞死に誘導することによって行われるもので達成されるものであってもよく、治療対象のがん組織に存在するがん細胞を全て消失させることのみならず、がん細胞に傷害を与えること、がん細胞の数を減少させること、がん細胞の増殖を抑制すること、がんの再発を予防することなども含む。
<がん細胞を標識するための組成物>
本開示の他の実施形態は、上述のいずれかの融合タンパク質を含む、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現するがん細胞を標識するための組成物である。
本実施形態の組成物は、ポリペプチド、発現ベクター、がん細胞、剤形、組成物中の融合タンパク質含有量、組成物の投与量、投与スケジュール、投与方法、投与対象等に関して、がん細胞を標識できる限り特に限定されず、<がん細胞を細胞死に誘導するための組成物>の項に記載した事項を援用できる。
本実施形態において、標識とは上述の「がん細胞を細胞死に誘導するための組成物」の
場合と同様に、組成物が目的のがん細胞のANTXRに結合した後、細胞内に取り込まれて、細胞内部において蛍光を発するものでもよいが、組成物が目的のがん細胞のANTXRに結合した後、細胞内に取り込まれずに細胞膜上で蛍光を発するものであってもよい。
本実施形態のがん細胞を標識するための組成物は、がんの診断に利用することができ、また手術中においてがんを有する部位を確認及び/又は特定するために利用することができる。
本開示の他の実施形態は、上述の「がん細胞を標識するための組成物」を含む、がん標識用キットである。
該キットは、がん細胞を標識するための組成物以外にも、陰性コントロールとなる組成物、組成物を投与又は適用するための器具、緩衝液や希釈液などを任意で含むことができる。
本開示の他の実施形態は、上述のいずれかの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
本実施形態において、ポリヌクレオチドは、それぞれがコードする融合タンパク質を発現できる限り、1又は数個の塩基を置換、欠失、挿入、及び/又は付加した塩基配列を有する改変ポリヌクレオチドであってもよい。
また本実施形態において、ポリヌクレオチドは、それぞれがコードする融合タンパク質を発現できる限り、ヌクレオチドに含まれる一部の糖やリン酸が置換された構造体であってもよい。
以下実施例により、本開示をより詳細に説明するが、本開示の範囲が実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
<実施例1 化学療法後の卵巣がん臨床検体のシングルセル解析>
初発卵巣がん2例、再発卵巣がん1例、初発化学療法後卵巣がん1例の計4例の卵巣がん患者からのサンプルによるシングルセル発現解析を、当業者に既知の方法により行った。
具体的には、まず同意を得た卵巣がん(漿液性腺がん)患者のがん組織を回収し、コラゲナーゼ液中でgentleMACS(商標)(Miltenyi Biotec社)を用いてがん組織を破砕した。単一の細胞懸濁液を作製後、PI(Propidium Iodide)染色を行い、フローサイトメーターによって、PI陰性細胞、すなわち生細胞のみを回収した。シングルセル発現解析用のライブラリーは10Xgenomics社のChromium Controllerを用いて作製し、Hiseq Xを用いて配列を解読した。得られたデータはCellrangerを用いて解析し、Loupeによって図を作製した。
その結果、再発がんでは、MKI67の発現が多いことが示され、すなわち活発に細胞増殖が起きている一方で、化学療法後のがんでは、MKI67の発現がほとんど無く、細胞増殖がほとんど停止していることが示された(図1)。
また、初発卵巣がん2例、再発卵巣がん1例、初発化学療法後卵巣がん1例の計4例の卵巣がん患者からのサンプルにおいてシングルセル発現解析したものを、1つにまとめて図示した(図2)。図中、丸で囲った間葉系細胞マーカーTHY1陽性細胞が卵巣がん組織中に存在することが示された。このTHY1陽性細胞は増殖マーカーであるMKI67を発現しておらず、一方で炭疽菌毒素受容体であるANTXR1とプロテアーゼであるMMP2及びuPA(図中、PLAUとして示される)を発現していた。さらに化学療法後に上皮系細胞マーカーであるEPCAM陽性のがん細胞は消失するが、THY1陽性又は
THY1陽性かつEPCAM陽性の静止期がん細胞が残存した。このことから、このTHY1陽性の静止期がん細胞が将来的な再発の原因となる可能性が考えられた。なお、PTPRCは血球系細胞に発現するCD45をコードする遺伝子であるが、THY1陽性細胞には発現していないことが示された。
<実施例2 PA-DTタンパク質の作製>
PA-DTの配列はアミノ酸配列(配列番号5)を設計後、ヒトに対してコドン最適化を行い、塩基配列を作製した。作製したPA-DTのDNA配列は、当業者に既知の方法によって人工合成した。合成したPA-DTの配列を当業者に既知の方法により哺乳類発現プラスミドに組み込んだ。PA-DT発現プラスミドは、CAGプロモーターの下流にPA-DT配列を挿入した配列を有し、具体的にはCAGプロモーター-PA-DT-IRES-puro耐性遺伝子-polyAの配列を有する。PA-DT発現プラスミドを293FT細胞(Thermo Fisher Scientific社)にリポフェクトアミン(登録商標)2000(Thermo Fisher Scientific社)によって導入し、293FT細胞にタンパク質を発現させた。そして、293FT細胞抽出液を作製し、Flagタグを用いて、M2アガロースゲルによってPA-DTタンパク質を精製し、Flagペプチドによってゲルから溶出した。タンパク質の濃度はQubitによって測定した。また、293FT細胞の代わりにExpi293細胞を用いたPA-DTタンパク質の作製も行った。該Expi293細胞は、Thermo Fisher Scientific社より購入後、DT耐性を有させるために、当業者に既知のCRISPR/Cas9システムを用いてDPH1及びDPH2遺伝子を破壊し、高濃度のDTで選択培養したものを用いた。
作成したPA-DTは図3の上図に示す通りの構成である。PA-DTにはシグナルペプチド(Igκ leader)を結合させてあるので、遺伝子導入した細胞から分泌される。PA-DTタンパク質は、ANTXR1、MMP及びuPAを特異的に発現しているTHY1高発現がん細胞に結合し、細胞内に取り込まれて活性化され、がん細胞の細胞死を誘導できる。PA-DTでは、ジフテリア毒素の受容体結合ドメイン以外の2つの領域:C領域(DT-C)及びT領域(DT-T)を、PAタンパク質のドメイン1中に挿入する。PA-DTにおけるこのジフテリア毒素の領域は、プロテアーゼuPAによってC領域とT領域の間が切断され活性化され、がん細胞の細胞死を誘導する。さらに、PAもアミノ末端側にあるドメイン1がプロテアーゼMMPで切断されることによって、治療用分子はANTXR1を介して細胞に取り込まれる。このようにPA-DTが細胞内で機能するためには、MMP、uPA及びANTXR1の3者が揃うことが最低限必須である。この3者が同時に発現する正常組織はほとんどないため、PA-DTは正常細胞を傷害することなく、従来の抗がん剤で傷害できない化学療法抵抗性のがん細胞を標的とすることが可能となる。
PA-CloverについてもPA-DTと同様に、当業者に既知の方法によってDNA配列を人工合成した後、哺乳類発現プラスミドに組み込み、PA-DT発現プラスミドを293FT細胞に導入することで作製し、生成することによって得た。図3の下図の通り、ANTXR1に結合するPAを有し蛍光タンパク質であるCloverをPAドメイン1内に持つため、静止期がん細胞を検出することが可能である。
図4において、PA-DTの作用機序を示す。PA-DTは細胞膜上にあるANTXR1に結合した後、MMPとuPAによってそれぞれのプロテアーゼ認識部位を切断され、活性化する。活性化したPA-DTは7量体を形成することで、エンドサイトーシスされる。その後、細胞内にてリソソームと結合し、エンドソーム内のpHが低下することで、ジフテリア毒素C領域が細胞質中に放出される。ジフテリア毒素はEF-2の機能を抑制することでタンパク質合成を阻害し、細胞死を引き起こすというものである。
<実施例3 PA-DTタンパク質の性能評価>
PA-DTタンパク質の切断アッセイにより、PA-DTタンパク質の性能を評価した。PA-DT、PA配列においてG342W置換を有するPA-DT(図中、PA-DT
G342Wと示す)、及びMMP認識配列及びuPA認識配列を有しないPA-DT(図中、PA-DT no cutと示す)をそれぞれ293FT細胞に発現させ、タンパク質を精製した。その精製したタンパク質に対してMMP2(Biolegend、554306)、MMP9(Biolengend、550506)又はuPA(Biolegend、755302)を20ng/μL加え、100mM Tris-HCl pH7.5と150mM NaClを含有するバッファー中において、37℃で所定の時間(1、2、4又は6時間)インキュベートすることで切断した。その後、当業者に既知の方法によって、SDS-PAGE gelで泳動し、転写膜に転写し、HRP標識M2抗体で検出した。
その結果を図5に示す。PA-DTはMMP2、MMP9、uPAで設計通り切断された。切断され活性化状態になったPA-DTは4時間後にはほとんど分解されることが示された。一方で、PA-DTはこれらのプロテアーゼによって切断されなければ、37℃で6時間は全く分解されず安定であることが示された(図中、no enzymeと示す)。このことから、PA-DTはこれらのプロテアーゼを発現している間葉系がん細胞の近傍でのみ機能することが示唆された。
同様の結果が、PA配列においてG342W置換を有するPA-DT(PA-DT G342W)においても示された。
またMMP認識配列もuPA認識配列も持たないPA-DT(PA-DT no cut)はMMP2、MMP9又はuPA存在化でも全く分解されなかった。このことから、MMP2、MMP9及びuPAは設計通り認識配列を特異的に切断することが示された。
<実施例4 PA-DTの殺細胞効果の評価>
80%コンフルエントのマウス卵巣がん細胞株ID8 luc2(非特許文献3に記載の方法により作製)及び陰性対照としてヒト正常前立腺細胞PNT2(The European Collection of Authenticated Cell Cultures:ECACC)にPA-DTをそれぞれ、0、3.125、6.25、12.5、25、50、100μg/mL(50mM Tris pH7.4,150mM NaCl,10%Glycerol,150μg/mL 1×flagペプチドを含む溶媒)の濃度で投与し、24時間培養を行った。その後、それぞれのサンプルを回収し、MTSアッセイにより細胞生存率を測定した(n=3で、エラーバーは標準偏差を表す)。なお、マウス卵巣がん細胞株ID8 luc2はANTXR1を弱く発現し、かつANTXR2を強く発現する細胞であり、MMP及びuPAを発現する細胞である。
その結果、マウス卵巣がん細胞株ID8 luc2において、PA-DTの用量依存的に細胞増殖を抑制したことが示された(図6)。一方、ヒト正常前立腺細胞PNT2においては、細胞増殖抑制効果は認められなかった。
なお、抗がん剤であるシスプラチン(図中、Carboplatinと示す)をそれぞれの濃度(0、62.5、125、250、500、1000、2000μg/mL)で投与し、24時間培養を行った場合は、マウス卵巣がん細胞株ID8 luc2及びヒト正常前立腺細胞PNT2のいずれの細胞においても、用量依存的に細胞増殖が抑制されたことが示された。すなわち、PA-DTががん細胞特異的に細胞傷害活性を持つことが示唆された。
<実施例5 PA-DT変異体を用いたPA-DTの機能解析>
図7にPA-DT変異体を用いた場合のPA-DTの機能解析結果を示す。80%コンフルエントのマウス卵巣がん細胞株ID8 luc2に、PA-DT(図中original PADTと示す)、PA配列においてG342W置換を有するPA-DT(図中、G342Wと示す)、及びMMP認識配列及びuPA認識配列を有しないPA-DT(図中、nocutと示す)をそれぞれ0、3.125、6.25、12.5、25μg/m
L(培養液)の濃度で投与し、24時間培養を行った。その後、それぞれのサンプルを回収し、MTSアッセイにより細胞生存率を測定した(n=3で、エラーバーは標準偏差を表す)。なお、マウス卵巣がん細胞株ID8 luc2はANTXR1を弱く発現し、かつANTXR2を強く発現する細胞であり、MMP及びuPAを発現する細胞である。
その結果、PA-DTでは6.25μg/mLの濃度より高濃度の場合、用量依存的に細胞の生存率が低下した。また、PA配列においてG342W置換を有するPA-DTを用いた場合、6.25μg/mLの濃度では細胞生存率に差は生じず、12.5μg/mLの濃度より高濃度の場合、用量依存的に細胞の生存率が低下した。すなわち、G342W置換を有するPA-DTは、ANTXR2に対する結合が弱くなったことを示す。一方で、MMP認識配列及びuPA認識配列を有しないPA-DTを用いた場合、いずれの濃度においても、細胞生存率の低下は示されなかった。
<実施例6 PA-DTの殺細胞効果アッセイ>
がん細胞(ヒト卵巣癌細胞(Kuramochi)、ヒト頸癌細胞(HeLa)、ヒト去勢抵抗性前立腺癌細胞(CWR22Rv1)、マウスメラノーマ細胞(B16F10))をそれぞれ24wellプレートに播種し、精製した20μgのPA-DTを500μLの培養液中に添加して培養し、細胞毎に所定の時間経過後(それぞれ6日後、3日後、5日後、3日後)、細胞像を撮影した(図8)。なお、コントロールは、50mM Tris pH7.4,150mM NaCl,10%Glycerol,150μg/mL
1×flagペプチドを含む溶媒を添加したものである。
その結果、いずれの種類のがん細胞においても、PA-DTは、コントロールと比較して、顕著な細胞増殖抑制効果を生じることが示された。

Claims (15)

  1. 炭疽菌防御抗原配列、目的タンパク質配列、及びプロテアーゼ認識配列を含む融合タンパク質であって、
    該炭疽菌防御抗原配列は、該炭疽菌防御抗原配列のドメイン1を表す配列を含み、
    該ドメイン1を表す配列には、N末端側から順に、前記プロテアーゼ認識配列及び前記目的タンパク質配列が挿入されている、
    融合タンパク質。
  2. 前記挿入が、配列番号1で表される前記炭疽菌防御抗原のアミノ酸配列の153位~173位に相当する領域のうちの何れかの位置で行われるものである、請求項1に記載の融合タンパク質。
  3. 前記炭疽菌防御抗原配列が、
    配列番号1で表されるアミノ酸配列である、又は
    配列番号1で表されるアミノ酸配列において、342位のグリシン残基がトリプトファン残基に置換されている配列である、
    請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
  4. 前記目的タンパク質配列は、第2のプロテアーゼ認識配列が挿入された配列である、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
  5. 前記目的タンパク質配列が、N末端側から順に、ジフテリア毒素Cドメイン(DT-C)配列、前記第2のプロテアーゼ認識配列、及びジフテリア毒素Tドメイン(DT-T)配列を含むものである、
    請求項4に記載の融合タンパク質。
  6. 前記DT-C配列が、配列番号2で表されるアミノ酸配列であり、及び/又は
    前記DT-T配列が、配列番号3で表されるアミノ酸配列である、
    請求項5に記載の融合タンパク質。
  7. 前記プロテアーゼ認識配列及び前記第2のプロテアーゼ認識配列は、同一の又は異なるプロテアーゼが認識するものであり、該プロテアーゼはマトリックスメタプロテアーゼ(MMP)及びウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)から選択される、
    請求項5又は6に記載の融合タンパク質。
  8. 前記目的タンパク質配列が、蛍光を発するタンパク質の配列を含む、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
  9. 前記プロテアーゼ認識配列は、マトリックスメタプロテアーゼ(MMP)又はウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ(uPA)が認識するものである、請求項8に記載の融合タンパク質。
  10. 前記蛍光を発するタンパク質が、mCloverである、請求項8又は9に記載の融合タンパク質。
  11. 請求項1~7のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む、又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現するがん細胞を細胞死に誘導するための組成物。
  12. 請求項1~7のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む、又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現するがん細胞を含むがんを治療するための組成物。
  13. 請求項8~10のいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む、炭疽菌毒素受容体(ANTXR)及び該融合タンパク質中のプロテアーゼ認識配列を認識するプロテアーゼを発現するがん細胞を標識するための組成物。
  14. 請求項13に記載の組成物を含む、前記がん標識用キット。
  15. 請求項1~10のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
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