JP2022081954A - コアシェル粒子を調製する方法、および、その調製装置 - Google Patents

コアシェル粒子を調製する方法、および、その調製装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 多機能性を有するコアシェル粒子を制御性よく調製する方法、および、その調製装置を提供すること。【解決手段】 本発明のコアシェル粒子(リキッドマーブル)を調製する方法は、それぞれが、液体であるコアが、液体に対して撥液性を有し、同一、または、異なる粒子であるシェルによって被覆された被覆面を有する原料コアシェル粒子を準備することと、原料コアシェル粒子を、凹凸を有する撥水性基板上に位置させることと、原料コアシェル粒子のうち2つの原料コアシェル粒子を合体させることであって、2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、2つの原料コアシェル粒子を接触させること、または、2つの原料コアシェル粒子を接触させ、2つの原料コアシェル粒子に液体を注入することである、合体させることと、合体した原料コアシェル粒子から液体の一部を排出することとを包含する。【選択図】 図1

Description

本発明は、液滴をコアとし、粒子をシェルとするコアシェル粒子を調製する方法、および、その調製装置に関する。
微小液体を封入する技術は工業・医療分野で注目を集めている。表面を撥水性ナノ粒子により被覆した液滴は、リキッドマーブルと呼ばれ、気液界面を安定化する封入技術である。このようなリキッドマーブルは、マイクロリアクタ、ドラッグデリバリ、微小検体のセンサープラットフォーム、マイクロロボットとしての応用が期待されている。
近年、表面が3つの粒子により被覆され、複合機能を発現するリキッドマーブルが開発された(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1によれば、Feナノ粒子で被覆された水滴からなるリキッドマーブルと、TiOナノ粒子で被覆された水滴からなるリキッドマーブルと、力学的に衝突させ、癒合させることを繰り返して、3面型のリキッドマーブルが得られることを開示する。
このようにして得られたリキッドマーブルは、Feナノ粒子からなる面の存在により磁石により遠隔磁場輸送を可能にし、TiOナノ粒子からなる面の存在により、紫外線照射によって内包した液体を放出可能とする。しかしながら、衝突癒合によってこのような3面以上の機能面を有するリキッドマーブルを制御性よく製造することは困難であった。
超撥水性基板上のリキッドマーブルの機械的安定性が報告されている(例えば、非特許文献2を参照)。非特許文献2によれば、超撥水性基板上であれば、粒子による液滴被覆密度を小さくし、液滴が表面に露出しても、リキッドマーブルはその形状を維持することを報告する。さらに、非特許文献2は、このような機能を用いることで、多様なリキッドマーブルの製造の可能性を示唆する。したがって、多機能性を有するリキッドマーブルを製造する具体的な方法の開発が望まれる。
渡邉ゆう子ら,ポスター発表「微小接着性液体の輸送・放出に向けた複合機能性三面型Liquid Marbleの作成」,第34回茨城地区「若手の会」交流会,2019年10月31日 Mizuki Tenjimbayashiら,Advanced Materials Interfaces,7,11,2020
以上より、本発明の課題は、多機能性を有するコアシェル粒子を制御性よく調製する方法、および、その調製装置を提供することである。
本発明によるコアシェル粒子を調製する方法は、液体であるコアが、前記液体に対して撥液性を有し、同一、または、異なる粒子であるシェルによって被覆された被覆面を有する原料コアシェル粒子を準備することと、前記原料コアシェル粒子を、前記原料コアシェル粒子を位置決めするための凹凸を有する撥水性基板上に位置させることと、前記原料コアシェル粒子のうち2つの原料コアシェル粒子を合体させることであって、前記2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、前記2つの原料コアシェル粒子を接触させること、または、前記2つの原料コアシェル粒子を接触させ、前記2つの原料コアシェル粒子に液体を注入することである、合体させることと、前記合体した原料コアシェル粒子から液体の一部を排出することとを包含し、これにより上記課題を解決する。
前記合体させることは、前記2つの原料コアシェルの互いに異なる粒子によって構成された被覆面同士を接触させてもよい。
前記原料コアシェル粒子の少なくとも1つの原料コアシェル粒子の被覆面は、2以上の領域を有し、前記2以上の領域において互いに隣接する領域を構成する粒子は、互いに異なってもよい。
前記合体させることを繰り返すことをさらに包含してもよい。
前記凹凸の断面は、コの字、V字、U字および半円状からなる群から選択される形状であってもよい。
前記合体させることにおいて、前記液体の注入は、前記2つの原料コアシェル粒子それぞれについて、液体注入後の液滴被覆密度Φ、Φが0.8以下となるように行われてもよい。
Φ=(Ω/Ω 2/3
Φ=(Ω/Ω 2/3
ここで、Ω およびΩ は、液体注入前の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積であり、ΩおよびΩは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。
前記排出することにおいて、前記液体の一部の排出は、前記合体した原料コアシェル粒子の液滴被覆密度Φ12が0.8を超えるように行われてもよい。
Φ12={(Φ+Φ)/2}[2[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]/[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]]
ここで、ΦおよびΦは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴被覆密度であり、ΩおよびΩは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。
前記原料コアシェル粒子を準備することは、液滴を形成することと、前記液滴にシェルを構成する粒子を、前記液滴と前記粒子との電位差を利用して吸着させることとを包含してもよい。
本発明によるコアシェル粒子を調製する装置は、液体であるコアが、前記液体に対して撥液性を有し、同一、または、異なる粒子であるシェルによって被覆された被覆面を有する原料コアシェル粒子を、前記原料コアシェル粒子を位置決めするための凹凸を有する撥水性基板上に位置させ、移動させる、粒子操作部と、前記粒子操作部に搭載され、前記原料コアシェル粒子に液体を注入する、および/または、前記原料コアシェル粒子から液体の一部を排出する注排出シリンジと、前記注排出シリンジに接続され、前記原料コアシェル粒子に注入される液体を供給する、および/または、前記原料コアシェル粒子から排出された液体を収容する、液体タンクと、前記粒子操作部、前記注排出シリンジおよび前記液体タンクの動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記粒子操作部が、前記原料コアシェル粒子のうち2つの原料コアシェル粒子を接触させ、次いで、前記注排出シリンジが、前記液体タンクを介して前記2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、前記2つの原料コアシェル粒子を合体させる、または、前記注排出シリンジが、前記液体タンクを介して前記原料コアシェル粒子のうち2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、次いで、前記粒子操作部が、前記2つの原料コアシェル粒子を接触させ、前記2つの原料コアシェル粒子を合体させ、前記注排出シリンジが、前記合体した原料コアシェル粒子から液体の一部を排出し、前記液体タンクが前記排出した液体を収容するよう、前記粒子操作部、前記注排出シリンジおよび前記液体タンクの動作を制御し、これにより上記課題を解決する。
前記制御部は、前記2つの原料コアシェル粒子の合体を繰り返し行うよう、前記粒子操作部、前記注排出シリンジおよび前記液体タンクの動作を制御してもよい。
前記制御部は、前記撥水性基板上の前記原料コアシェル粒子に関する原料コアシェル粒子情報、ならびに、前記原料コアシェル粒子の合体プロトコルを記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、前記原料コアシェル粒子情報および前記合体プロトコルに基づいて、前記粒子操作部、前記注排出シリンジおよび前記液体タンクの動作を制御してもよい。
前記原料コアシェル粒子のシェルを構成する粒子を収容するための粒子供給部と、前記粒子操作部と前記粒子供給部との間に電圧を印加する高圧電源とをさらに備え、前記制御部は、前記高圧電源が前記粒子操作部と前記粒子供給部との間に電圧を印加し、電位差を形成し、前記注排出シリンジが前記液体タンクを介して液体を注入し、前記粒子操作部の先端に液滴を形成し、前記粒子操作部が前記液滴に前記粒子供給部に収容された前記粒子を前記電位差によって吸着させ、前記原料コアシェル粒子を形成し、前記撥水性基板上に位置させるよう、前記粒子操作部、前記注排出シリンジ、前記液体タンクおよび前記高圧電源の動作を制御してもよい。
前記注排出シリンジは、前記液体の注入を、前記2つの原料コアシェル粒子それぞれについて、液体注入後の液滴被覆密度Φ、Φが0.8以下となるように行ってもよい。
Φ=(Ω/Ω 2/3
Φ=(Ω/Ω 2/3
ここで、Ω およびΩ は、液体注入前の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積であり、ΩおよびΩは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。
前記注排出シリンジは、前記液体の一部の排出を、前記合体した原料コアシェル粒子の液滴被覆密度Φ12が0.8を超えるように行ってもよい。
Φ12={(Φ+Φ)/2}[2[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]/[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]]
ここで、ΦおよびΦは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴被覆密度であり、ΩおよびΩは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。
本発明のコアシェル粒子の調製方法は、原料となる2つのコアシェル粒子を、凹凸を有する撥水性基板上で、液体の注入によって合体させ、液体の一部を排出することを包含する。液体の注入によって原料コアシェル粒子は、活性化し、容易に合体(癒合)する。また、液体の一部を排出することによって、合体した原料コアシェル粒子は、不活性化するので、安定化した新たなコアシェル粒子が得られる。活性化と不活性化とを利用し、原料コアシェル粒子を、ユーザの設計に応じて合体できるので、制御性よくコアシェル粒子を調製できる。また、原料コアシェル粒子の選択によって、2以上の任意の機能面を有するコアシェル粒子を調製できる。このようにして得られるコアシェル粒子は、多機能性を有しており、マイクロリアクタ、ドラッグデリバリ、微小検体のセンサープラットフォーム、マイクロロボット等に適用され得る。
本発明のコアシェル粒子を調製する装置は、原料コアシェル粒子を、凹凸を有する撥水性基板上に位置させ、移動させる粒子操作部と、粒子操作部に搭載され、原料コアシェル粒子に液体を注入する、および/または、原料コアシェル粒子から液体の一部を排出する注排出シリンジと、原料コアシェルに注入される液体を供給する、および/または、原料コアシェル粒子から排出された液体を収容する液体タンクと、これらの動作を制御する制御部とを備える。制御部が、2つの原料コアシェル粒子を接触させ、液体を注入するか、または、原料コアシェル粒子に液体を注入し、接触させ、これら2つの原料コアシェル粒子を合体させ、合体した原料コアシェル粒子から液体の一部を排出し、収容するよう、粒子操作部、注排出シリンジおよび液体タンクの動作を制御する。このように、液体の注入による原料コアシェル粒子の活性化および排出による原料コアシェル粒子の不活性化は、制御部によって制御されるので、制御性よくコアシェル粒子を調製できる。ユーザの設計に応じて、原料コアシェル粒子を任意に合体できるので、多機能性を有するコアシェル粒子を調製できる。また、制御部が原料コアシェルに関する情報および合体プロトコルを備えることにより、コアシェル粒子を自動的に調製できる。
本発明のコアシェル粒子の調製工程を示すフローチャート 本発明のコアシェル粒子の調製工程を模式的に示す図 例示的な撥水性基板の断面を示す図 本発明のコアシェル粒子の別の調製工程を模式的に示す図 2以上の領域(N≧2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製するための例示的な原料コアシェル粒子の組み合わせを示す模式図 本発明のコアシェル粒子の別の調製工程を模式的に示す図 本発明のコアシェル粒子の調製装置を示す模式図 本発明のコアシェル粒子の別の調製装置を示す模式図 本発明のコアシェル粒子の調製装置の実装の様子を示す図 本発明の調製装置を用いた原料コアシェル粒子の準備工程を模式的に示す図 撥水性基板の詳細を示す図 液滴に粒子が静電的に吸着する様子を示す図 原料コアシェル粒子の外観を示す図 接触角の液滴被覆密度依存性を示す図 撥水性基板上のコアシェル粒子の粒子濃度分布の変化を示す図 2つの領域(N=2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製する様子を示す図 液滴被覆密度の変化を示す図 コアシェル粒子が接触した様子を示す図 2つの領域(N=2)からなる被覆面を有する別のコアシェル粒子を調製する様子を示す図 2以上の領域(N≧2)からなる被覆面を有する種々のコアシェル粒子を示す図 原料コアシェル粒子情報(A)、合体プロトコル(B)および調製されたコアシェル粒子(C)を示す図 原料コアシェル粒子情報(A)、合体プロトコル(B)および調製されたコアシェル粒子(C)を示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の符号を付し、その説明を省略する。
図1は、本発明のコアシェル粒子の調製工程を示すフローチャートである。
図2は、本発明のコアシェル粒子の調製工程を模式的に示す図である。
図1および図2を参照し、各工程について詳述する。図2では、原料コアシェル粒子として、互いに同じ種類の粒子からなるシェルを有するコアシェル粒子を合体させ、1つのコアシェル粒子を調製する例を示す。
ステップS110:液体210であるコアが、液体に対して撥液性を有する粒子220であるシェルによって被覆された被覆面を有する原料コアシェル粒子230を準備する。このようなコアを液体とするコアシェル粒子230は、リキッドマーブルとも呼ばれる。
ここで、コアとなり得る液体、および、シェルとなる粒子について説明する。液体は、使用環境下(通常、1℃~30℃で1気圧である常温常圧下)で液体であり、粒子が撥液性を示すような液体であれば特に制限はない。液体は、好ましくは、20℃で表面張力7mN/m以上480mN/m以下の範囲を満たす。これにより発液性に優れる。このような液体は、水、有機溶媒、脂肪酸、イオン液体、高分子溶融体、液体金属、低分子液体、これらの混合物(混合油、混合溶媒を含む)、これらを溶媒とした分散液(液体状の食品、塩水、エマルジョンを含む)であってよい。なお、本願明細書中では、液体が水を含まないものに対して撥液性を示すものに対しても、簡便のため、「撥水性」を使用する場合もあることに留意されたい。
粒子は、使用環境下(通常、1℃~30℃で1気圧である常温常圧下)で固体であり、数ナノメートルからサブミリメートルの特徴長さを持つ構造体であれば特に制限はなく、その形状は、球体、チューブ、シート、ウィスカー、ファイバー、中空体、あるいは、その組み合わせであってもよい。このような粒子は、無機物、有機物、金属、高分子、これらの複合体からなってよい。
粒子は、それ自身が液体に対して撥液性を有しない場合には、液体に対して発液性を示すよう表面修飾されてよい。このような表面修飾する分子または化合物は、使用環境下(通常、1℃~30℃で1気圧である常温常圧下)で共有結合、イオン結合、金属結合、分子間力、配位結合、極性引力またはクーロン力によって粒子表面と結合して修飾される。簡易的には、表面修飾する分子または化合物の極性は、液体の極性よりも低ければよい。表面修飾する分子または化合物に含まれる代表的な官能基には、炭素数が3以上である、アルキル基、環状基、フルオロアルキル基、フッ素化環状基等がある。
表面修飾されていない/された粒子は、少なくとも液体に対して52°(度)以上170°以下の範囲の接触角を示せばよい。
液体の種類、粒子の種類および表面修飾する分子または化合物の種類を表1~表3に例示する。これらはあくまでも例示であり、液体、粒子および表面修飾する分子または化合物は、これらに限定されないことに留意されたい。
Figure 2022081954000002
Figure 2022081954000003

Figure 2022081954000004
例えば、液体として水溶液有機塩化合物であるドキソルビシンの水溶液を選択し、粒子としてアルキル基を修飾したシリカナノ粒子を選択すれば、粒子は液体に対して撥液性を有するため、原料コアシェル粒子を形成できる。ドキソルビシンは薬剤であるため、このようなコアシェル粒子はドラッグデリバリとして機能し得る。あるいは、表1において、液体としてフェノールフタレイン水溶液を選択し、粒子としてポリテトラフルオロエチレン粒子を選択すれば、粒子は液体に対して撥液性を有するため、原料コアシェル粒子を形成できる。フェノールフタレインは反応試薬であるため、このようなコアシェル粒子はマイクロリアクタとして機能し得る。当業者であれば、要求されるコアシェル粒子の機能性に応じて、表1~表3の液体および粒子から適宜選択し、原料コアシェル粒子を準備し得る。
原料コアシェル粒子は、シェルを構成する粒子がすべて同一からなってもよいし、2以上の異なる粒子からなってもよい。目的とするコアシェル粒子に応じて、適宜原料コアシェル粒子は採用されてよい。本願明細書においては、目的とするコアシェル粒子の製造に用いるコアシェル粒子を意図して「原料コアシェル粒子」と呼ぶものとする。このような観点から、原料コアシェル粒子は、出発時に用いたコアシェル粒子に加えて、中間生成物であるコアシェル粒子を含み得る。
ステップS110において、原料コアシェル粒子230を準備することは、特に制限はないが、好ましくは、制御性の観点から、液滴を形成することと、シェルを構成する粒子を、液滴と粒子との間の電位差を利用して、形成した液滴に吸着させることを包含する。電位差によって静電的に液滴に粒子を吸着させることができる。このような電位差は、例示的には、絶対値で500V以上20kV以下の範囲であればよい。あるいは、原料コアシェル粒子を準備することは、単に、液滴に粒子をまぶしたり、液滴を粒子に滴下したりすることによって行ってもよい。
ステップS120:図2に示すように、ステップS110で準備した原料コアシェル粒子230を、撥水性基板240上に位置させる。撥水性基板240は、液体に対して撥水性を有していればよいが、好ましくは、液体が基板表面で動いている場合に前進している方向と反対側の接触角である後退接触角が126°以上であるものを採用できる。したがって、撥水性基板240は液体に対して超撥水性を有するものであってよい。これにより、後述のステップS130において原料コアシェル粒子に液体を注入しても、原料コアシェル粒子が基板に張り付くことなく、粒子形状を効率的に維持できる。
このような撥水性基板240としては、アルキル基修飾シリカナノ粒子、フッ素化アルキル基修飾シリカナノ粒子、ポリテトラフルオロエチレンナノ粒子等の材料からなる基板、あるいは、これらの材料でコートされている基板を採用できる。これらは、例えば表1に示した液体に対して撥水性を有し得る。
撥水性基板240は、ステップS110で準備した原料コアシェル粒子230を位置決めするための凹凸250を有する。凹凸250は、原料コアシェル粒子230が撥水性基板240上で転がることを防ぎ、所定の位置に固定するよう機能する。
図3は、例示的な撥水性基板の断面を示す図である。
撥水性基板240の凹凸250の形状や大きさには特に制限はないが、後述のステップS130において、原料コアシェル粒子230を、凹凸250を超えて移動させる場合があるため、原料コアシェル粒子230が凹凸250の凹部に嵌らない形状や大きさを有することが好ましい。
図3(A)に示すように、撥水性基板240の凹凸250の断面がコの字であってもよいし、図3(B)に示すように、凹凸250の断面がV字であってもよい。あるいは、図3(C)に示すように、凹凸250の断面のV字が離間していてもよい。図示しないが、断面がU字状、半円状等であってもよい。いずれの場合も、原料コアシェル粒子230は、撥水性基板240上で位置決め可能であり、かつ、凹部に嵌ることなく凹凸250を超えて移動できる。
上述の断面を有する凹凸250は、千鳥格子、傾斜格子を含む格子状、ドット状、櫛状、ストライプ状に配置されてよい。原料コアシェル粒子230を配置できる分解能は、凹凸250の間隔(配置)で決まるため、所望のコアシェル粒子に応じて、所定の間隔を有する凹凸250の撥水性基板240を選択するとよい。
再度、図1および図2に戻る。
ステップS130:原料コアシェル粒子230のうち2つの原料コアシェル粒子を合体させる。詳細には、2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、それらを互いに接触させるか、または、2つの原料コアシェル粒子を接触させ、それぞれに液体を注入する。これにより、容易に合体(癒合)する。
合体させたい2つの原料コアシェル粒子231、232を選択し、互いに接触させる。次いで、シリンジ260等を用いてそれぞれの原料コアシェル粒子231、232に液体を注入する。図2では、接触した2つの原料コアシェル粒子231、232は、液体が注入され原料コアシェル粒子231a、232aとなる。液体注入すると、コアとなる液体体積は増大するが、シェルの粒子量は変化していないので、液滴被覆密度は小さくなる。しかしながら、原料コアシェル粒子231a、232aは、撥水性基板240上に位置するため、コアである液体が基板表面に張り付くことなく、粒子形状を維持できる。
このように液滴被覆密度が小さくなった原料コアシェル粒子231a、232aは、互いに容易に合体(癒合)し、1つのコアシェル粒子233aとなる。コアシェル粒子233aもまた、液滴被覆密度が小さい状態であるが、粒子形状を維持できる。
ステップS130において、液体の注入は、液体注入後に原料コアシェル粒子が粒子形状を維持し、互いに接触させると合体する限り、特に制限はないが、好ましくは、2つの原料コアシェル粒子それぞれについて、液体注入後の液滴被覆密度Φ、Φが0.8以下となるように行われる。
Φ=(Ω/Ω 2/3
Φ=(Ω/Ω 2/3
ここで、Ω およびΩ は、液体注入前の2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積であり、ΩおよびΩは、液体注入後の2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。Φ、Φが0.8以下とすることにより、効率的に2つの原料コアシェル粒子を合体できる。
ステップS140:合体した原料コアシェル粒子233aから液体の一部を排出する。図2では、合体した原料コアシェル粒子233aは、液体の一部が排出されコアシェル粒子233となる。液体排出すると、コアとなる液体体積は減少し、液滴被覆密度は大きくなり、安定化する。
ステップS140において、液体の一部の排出は、液体排出後にコアシェル粒子が粒子形状を維持し、他のコアシェル粒子と容易に合体しない限り、特に制限はないが、好ましくは、合体した原料コアシェル粒子の液滴被覆密度Φ12が0.8を超えるように行われる。
Φ12={(Φ+Φ)/2}[2[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]/[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]]
ここで、ΦおよびΦは、液体注入後の2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴被覆密度であり、ΩおよびΩは、液体注入後の2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。Φ12が0.8を超えることにより、合体したコアシェル粒子を効率的に安定化させることができる。
このように、原料コアシェル粒子に液体が注入されてもなお粒子形状を維持し、容易に合体する状態を本願明細書では「活性化」と呼び、互いに合体しない状態を「不活性化」と呼ぶ。すなわち、ステップS130において、2つの原料コアシェル粒子を活性化し、合体させ、ステップS140において、合体した原料コアシェル粒子を不活性化し、安定化させる。このようにして、目的とするコアシェル粒子が得られる。
図2では、2つの原料コアシェル粒子を接触させた後、液体を注入し、合体させたが、2つの原料コアシェル粒子に液体を注入した後、接触させ、合体させてもよい。この場合も、液体注入後、2つの原料コアシェル粒子の液滴被覆密度は小さくなるが、撥水性基板240上では液体が基板に張り付くことなく、球状を維持するため、移動させ、互いを接触させることができる。活性化状態にある2つの原料コアシェル粒子が互いに接触すると、容易に合体し得る。
図2では、互いに同じ種類の粒子をシェルとした2つの原料コアシェル粒子を合体させ、より大きなコアシェル粒子を調製する様子を示したが、原料コアシェル粒子は、互いに異なる種類の粒子をシェルとしてもよい。
図4は、本発明のコアシェル粒子の別の調製工程を模式的に示す図である。
図4では、原料コアシェル粒子として、互いに異なる種類の粒子からなるシェルを有するコアシェル粒子231、234を合体させ、1つのコアシェル粒子を調製する例を示す。
原料コアシェル粒子231、234を準備し(ステップS110)、原料コアシェル粒子231、234を撥水性基板240上に位置させ(ステップS120)、これらを合体させる(ステップS130)。合体においては、原料コアシェル粒子231、234を接触させ、次いで、シリンジ等を用いてそれぞれの原料コアシェル粒子231、234に液体を注入する。液体注入すると、活性化した原料コアシェル粒子231a、234aとなり、これらは、互いに容易に合体し、1つのコアシェル粒子235aとなる。
ここでも、2つの原料コアシェル粒子231、234に液体を注入した後、接触させ、合体させてもよい。この場合も、液体注入後、活性化した原料コアシェル粒子は、撥水性基板240上では液体が基板に張り付くことなく、球状を維持するため、移動させ、互いを接触させることができる。活性化状態にある2つの原料コアシェル粒子が互いに接触すると、容易に合体し得る。
ここで、注目すべきは、活性化した原料コアシェル粒子231a、234aの合体においては、互いに異なる種類の粒子は、毛管力で自己整列して相分離のように、被覆面が2つの領域に分かれる。すなわち、粒子同士が混ざらずに、異なる粒子が半分ずつ液体を被覆したコアシェル粒子235aとなる。
次いで、合体した原料コアシェル粒子235aから液体の一部を排出し(ステップS140)、不活性化し、安定化させる。このようにして、目的とするコアシェル粒子235が得られる。図4に示したように、互いに異なる種類の粒子からなる原料コアシェル粒子231、234を合体させると、2つの領域(N=2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子235が得られる。このような2以上の領域(N≧2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製可能な原料コアシェル粒子の組み合わせは、これに限らない。
図5は、2以上の領域(N≧2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製するための例示的な原料コアシェル粒子の組み合わせを示す模式図である。
図5(A)は、図4に示した互いに異なる種類の粒子からなる原料コアシェル粒子231、234を合体したコアシェル粒子235に同じである。N=1は、それぞれ、原料コアシェル粒子231および234のシェルが有する領域の数であり、N=2は、合体したコアシェル粒子235のシェルが有する領域の数である。
図5(B)は、一方の原料コアシェル粒子が2つの領域からなる被覆面を有するが、同じ種類の粒子からなる領域を接触させた場合である。この場合、それぞれの原料コアシェル粒子の領域の数は、N=1とN=2となる。この場合も、2つの領域(N=2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子が得られる。
図5(C)は、一方の原料コアシェル粒子が2つの領域からなる被覆面を有し、異なる種類の粒子からなる領域を接触させた場合である。この場合、それぞれの原料コアシェル粒子の領域の数は、N=1とN=2となる。この場合、3つの領域(N=3)からなる被覆面を有するコアシェル粒子が得られる。
図5(D)は、いずれも原料コアシェル粒子が2つの領域からなる被覆面を有するが、同じ種類の粒子からなる領域を接触させた場合である。この場合、原料コアシェル粒子の領域の数は、いずれも、N=2となる。この場合、3つの領域(N=3)からなる被覆面を有するコアシェル粒子が得られる。
図5(E)は、いずれも原料コアシェル粒子が2つの領域からなる被覆面を有し、異なる種類の粒子からなる領域を接触させた場合である。この場合、原料コアシェル粒子の領域の数は、いずれも、N=2となる。この場合、4つの領域(N=4)からなる被覆面を有するコアシェル粒子が得られる。
図5(F)は、一方の原料コアシェル粒子が3つの領域からなる被覆面を有するが、異なる種類の粒子からなる領域を接触させた場合である。この場合、それぞれの原料コアシェル粒子の領域の数は、N=1とN=3となる。この場合、4つの領域(N=4)からなる被覆面を有するコアシェル粒子が得られる。
ステップS130の合体させることにおいて、図4、図5(A)、図5(C)、図5(E)、図5(F)のように、2つの原料コアシェル粒子の互いに異なる粒子によって構成された被覆面(領域)を接触させることによって、2以上の領域からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製できる。ステップS130において、「接触」は、原料コアシェル粒子の領域を選定に伴い、原料コアシェル粒子の移動、回転の動作を含む。
あるいは、2以上の領域からなる被覆面を有するコアシェル粒子を得るためには、ステップS110において、図5(B)~図5(F)のように、少なくとも1つの原料コアシェル粒子の被覆面が2以上の領域を有し、2以上の領域において、互いに隣接する領域を構成する粒子が互いに異なっていてもよい。
図5は、あくまでも例示にすぎないが、原料コアシェル粒子の選択、および/または、原料コアシェル粒子の接触領域の選択によって、多様なコアシェル粒子が得られることが分かる。
目的とするコアシェル粒子となるまで、ステップS130の合体させることを繰り返してもよい。これにより、より複雑な被覆面を有するコアシェル粒子を調製できる。
図6は、本発明のコアシェル粒子の別の調製工程を模式的に示す図である。
図6では、図4のステップS130を繰り返す場合であり、図4の中間生成物であるコアシェル粒子235aと、2つの領域からなる被覆面を有する原料コアシェル粒子236とを、同じ種類の粒子からなる領域を接触させ、コアシェル粒子235a、236を合体させ、1つのコアシェル粒子を調製する例を示す。
図4のステップS130に続いて、原料コアシェル粒子235aと、原料コアシェル粒子236とを合体させる(ステップS130の繰り返し)。合体においては、原料コアシェル粒子235a、236を接触させ、これらに液体を注入し、活性化させる。なお、ここでは、原料コアシェル粒子235aは、活性化された状態であるため、注入は省略できる。このような観点から、合体の繰り返しとは、活性化した原料コアシェル粒子同士の接触を意図し、必ずしも、液体注入は必須でないことに留意されたい。液体注入すると、活性化した原料コアシェル粒子235a、236aとなり、これらは、互いに容易に合体し、1つのコアシェル粒子237aとなる。
ここでも、2つの原料コアシェル粒子235a、236に液体を注入した後、接触させ、合体させてもよい。この場合も、液体注入後、活性化した原料コアシェル粒子は、撥水性基板240上では液体が基板に張り付くことなく、球状を維持するため、移動させ、互いを接触させることができる。活性化状態にある2つの原料コアシェル粒子が互いに接触すると、容易に合体し得る。
ここで、注目すべきは、活性化した原料コアシェル粒子235a、236aの合体においては、同じ種類の粒子からなる領域を接触させるため、毛管力で自己整列して相分離のように、被覆面が3つの領域(N=3、図5(D)の場合に同じ)に分かれる。すなわち、粒子同士が混ざらずに、2種類の粒子によって3つの領域からなる被覆面を有するコアシェル粒子237aとなる。
次いで、合体した原料コアシェル粒子237aから液体の一部を排出し(ステップS140)、不活性化し、安定化させる。このようにして、目的とするコアシェル粒子237が得られる。
例えば、コアシェル粒子237が、薬剤からなるコアと、Feで表されるマグネタイト粒子610からなる2つの領域と、TiOで表されるチタニア粒子620からなる1つの領域とを備えた被覆面からなるシェルとを有する場合、コアシェル粒子237はドラッグデリバリやマイクロリアクタとして機能する。詳細には、コアシェル粒子237は、マグネタイト粒子610の磁気応答性によって遠隔輸送が可能となり、チタニア粒子620の紫外線照射による親水化によって、薬剤を放出することができる。特に、シェルがマグネタイト粒子、チタニア粒子、マグネタイト粒子の順の領域で構成されることにより、チタニア粒子の領域のみを親水化できるので、薬剤を所定の場所に放出できる。このような多機能性は、領域数および粒子の種類によって無数に設計できる。
なお、図6において、異なる種類の粒子からなる領域を接触させれば、図5(E)のように示したように、2種類の粒子によって4つの領域(N=4)からなる被覆面を有するコアシェル粒子が得られることは言うまでもない。
このように、本発明のコアシェル粒子の調製プロセスを採用すれば、任意に設計した被覆面を有するコアシェル粒子が、高収率で精度よく得られる。
次に、図1のコアシェル粒子の調製プロセスを実施するに好適な調製装置を説明する。
図7は、本発明のコアシェル粒子の調製装置を示す模式図である。
本発明のコアシェル粒子を調製する調製装置700は、原料コアシェル粒子230を位置決めするための凹凸を有する撥水性基板240上に位置させ、移動させる粒子操作部710と、粒子操作部710に搭載され、原料コアシェル粒子230に液体を注入する、および/または、原料コアシェル粒子230から液体の一部を排出する注排出シリンジ720と、注排出シリンジ720に接続され、原料コアシェル粒子230に注入される液体を供給する、および/または、原料コアシェル粒子230から排出された液体を収容する液体タンク730と、これら粒子操作部710、注排出シリンジ720および液体タンク730の動作を制御する制御部740とを備える。ここで、原料コアシェル粒子230は、図1を参照して説明したとおりであるため、省略する。
粒子操作部710は、原料コアシェル粒子230を選択し、捕捉可能なものであれば特に制限はなく、例えば、ピンセット、吸引、静電作用等を利用したロボットアームであってよい。粒子操作部710は、少なくとも、撥水性基板240上を上下左右に移動可能であり、捕捉した原料コアシェル粒子230を回転可能でることが好ましい。
注排出シリンジ720は、原料コアシェル粒子230に液体を注液および排液可能なものであれば特に制限はなく、例えば、注射針であってもよい。また、注液と排液とが異なるシリンジからなってもよい。注排出シリンジ720は、撥水コーティングされていてもよい。
液体タンク730は、注排出シリンジ720に接続され、注液用の液体を供給可能に、ならびに、排出した液体を保持可能であれば特に制限はない。液体タンク730は、注液用の液体と排出した液体とが同一の場合には、1つのタンクであってもよいし、供給用の液体と排出した液体とを別個に保持する2以上のタンクであってもよい。
制御部740は、粒子操作部710、注排出シリンジ720および液体タンク730の動作を次のようにして制御して、原料コアシェル粒子の合体を行い、新たなコアシェル粒子を調製する。
具体的には、まず、粒子操作部710が、原料コアシェル粒子のうち2つの原料コアシェル粒子を接触させ、次いで、注排出シリンジ720が、液体タンク730を介して2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、2つの原料コアシェル粒子を合体させる、または、注排出シリンジ720が、液体タンク730を介して原料コアシェル粒子のうち2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、次いで、粒子操作部710が、2つの原料コアシェル粒子を接触させ、2つの原料コアシェル粒子を合体させる。次いで、720注排出シリンジが、合体した原料コアシェル粒子から液体の一部を排出し、液体タンク730が排出した液体を収容する。
図1および図2を参照して説明したように、原料コアシェル粒子に液体が注入されると、原料コアシェル粒子は活性化され、容易に合体する。活性化した原料コアシェル粒子は、撥水性基板240上では液体が基板に張り付くことなく、球状を維持するため、粒子操作部710はこれらを移動させ、互いを接触させることができる。また、合体した原料コアシェル粒子から液体の一部を排出すると、不活性化、安定化する。
制御部740は、好ましくは、注排出シリンジ720が、液体の注入を、2つの原料コアシェル粒子について、液体注入後の液滴被覆密度Φ、Φが0.8以下となるように制御する。
Φ=(Ω/Ω 2/3
Φ=(Ω/Ω 2/3
ここで、Ω およびΩ は、液体注入前の2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積であり、ΩおよびΩは、液体注入後の2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。Φ、Φが0.8以下とすることにより、効率的に2つの原料コアシェル粒子を合体できる。
制御部740は、好ましくは、注排出シリンジ720が、液体の一部の排出を、合体した原料コアシェル粒子の液滴被覆密度Φ12が0.8を超えるように制御する。
Φ12={(Φ+Φ)/2}[2[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]/[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]]
ここで、ΦおよびΦは、液体注入後の2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴被覆密度であり、ΩおよびΩは、液体注入後の2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。Φ12が0.8を超えることにより、合体したコアシェル粒子を効率的に安定化させることができる。
合体後のコアシェル粒子が目的とするコアシェル粒子であれば、調製装置700の動作はここで終了する。目的とするコアシェル粒子をえるために、制御部740は、2つの原料コアシェル粒子の合体を繰り返し行うよう、粒子制御部710、注排出シリンジ720および液体タンク730の動作を制御してよい。
制御部740は、撥水性基板240上の原料コアシェル粒子230に関する原料コアシェル粒子情報、ならびに、原料コアシェル粒子の合体プロトコルを記憶する記憶部(図示せず)を備えてもよい。原料コアシェル粒子情報は、撥水性基板240上の原料コアシェル粒子230の位置情報、コアの種類、コアの体積、粒子の種類、被覆面を構成する領域の数等を含んでよい。合体プロトコルは、原料コアシェル粒子情報に関連して、原料コアシェル粒子を合体させ、目的とするコアシェル粒子を調製するレシピを含んでよい。
制御部740は、記憶部から原料コアシェル粒子情報および合体プロトコルを読み出し、原料コアシェル粒子情報および合体プロトコルに基づいて、粒子操作部710、注排出シリンジ720および液体タンク730を動作させてもよい。これにより、コアシェル粒子を自動的に調製できる。
原料コアシェル粒子情報および合体プロトコルに基づけば、粒子操作部710は、撥水性基板240上で合体させるべき2つの原料コアシェル粒子を制御よく、撥水性基板240の水平方向、上下方向に移動させるだけでなく、原料コアシェル粒子の回転も可能であるため、例えば、図5に示した、接触領域を制御よく選択でき、より複雑な領域(例えば、Nが3以上)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製できる。
このような制御部740は、ハードウェアロジックによって構成されてもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現されてもよい。
また、制御部740は、上述の原料コアシェル粒子情報、合体プロトコルを表示する表示装置750を備えてもよい。表示装置750は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)、プラズマディスプレイ等である。本発明の調製装置700が顕微鏡(図示せず)を備えていてもよく、調製の様子を表示装置750で観察できるようにしてもよい。
制御部740は、ユーザからの入力操作を受け付ける入力装置760を備えてもよい。入力装置760は、例えば、キーボード、マウス、ボタン、タッチパネル、タッチセンサ、タッチペン、音声入力等である。これにより、原料コアシェル粒子情報、合体プロトコルを入力してもよい。
図8は、本発明のコアシェル粒子の別の調製装置を示す模式図である。
図8の調製装置800は、原料コアシェル粒子のシェルを構成する粒子を収容するための粒子供給部810と、粒子操作部710と粒子供給部810との間に電圧を印加する高圧電源820とを備える以外は、図7の調製装置700と同じであるため、同様の構成要素の説明を省略する。
調製装置800が、粒子供給部810と高圧電源820とを備えることにより、原料コアシェル粒子の準備を可能とする。図8では、粒子供給部810が2種類の粒子を供給可能であるが、1種の粒子であってもよいし、3以上の種類の粒子を供給可能であってもよい。
制御部740は、粒子操作部710、注排出シリンジ720および液体タンク730に加えて、これら粒子供給部810および高圧電源820の動作を次のようにして制御して、原料コアシェル粒子の準備をする。
具体的には、まず、高圧電源820が粒子操作部710と粒子供給部810との間に電圧を印加する。これにより、粒子操作部710の先端と、粒子供給部との間に電位差が形成される。例えば、粒子操作部710の先端が正に帯電し、粒子供給部810が負に帯電してよい。このような電圧は、例示的には、500V以上20kV以下の範囲であればよい。
次いで、注排出シリンジ720が液体タンク730を介して液体を注入し、粒子操作部710の先端に液滴を形成する。次いで、粒子操作部710が液滴に粒子供給部810に収容された粒子を電位差によって吸着させ、原料コアシェル粒子を形成し、撥水性基板上に位置させる。
なお、ここで準備される原料コアシェル粒子は、1種の粒子からなり、例えば、図5(A)のコアシェル粒子231、234である。このような原料コアシェル粒子に基づいて、1以上合体を行うことにより、図5に示す2以上の領域からなる被覆面を有する多機能なコアシェル粒子が得られる。
次に、具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[コアシェル粒子の調製装置]
図9は、本発明のコアシェル粒子の調製装置の実装の様子を示す図である。
図9の調製装置900は、粒子操作部710として4軸ロボットアーム(Shenzhen Yuejiang Technology Co.,Ltd.製、Dobot Magician)と、注排出シリンジ720として注射針(12Gノンベベル針)と、液体タンク730として超純水(>18.2MΩ)を含有させた液体コントローラ(アズワン株式会社製、SPS-2)と、粒子供給部810として、Feで表されるマグネタイト粒子およびTiOで表されるチタニア粒子と、高圧電源820として電源(株式会社MCP JAPAN製、M10-HV5000A)を備え、これらを動作させる制御部740としてパーソナルコンピュータ(図示せず)を用いた。
超純水は、水道水直結型超純水製造装置(Merck製、Direct-Q UV3)によって精製した。なお、マグネタイト粒子(Jiatu Liら,ACS Sustainable Chem. Eng. 2018, 6, 10706-10713に記載の共沈法によって製造された)およびチタニア粒子(Evonik Resource Efficiency GmbH製、Aeroxide(登録商標) TiO P90、BET表面積:90±20m-1)は、シランカップリング反応を用いて1H,1H,2H,2H-tridecafluoro-n-octyl基(フルオロアルキル基)によって撥水修飾されており、水に対して撥水性を示した。
調製装置900は、除振機構埋込テーブル上に配置され、すべての実験は室温(25℃)で行われた。
[原料コアシェル粒子の準備]
図10は、本発明の調製装置を用いた原料コアシェル粒子の準備工程を模式的に示す図である。
高圧電源820が粒子操作部710と粒子供給部810との間に電圧-1.2kVを印加する。これにより、粒子操作部710の先端が正に帯電し、粒子供給部810が負に帯電した。次いで、注排出シリンジ720が液体タンク730を介して水を注入し、粒子操作部710の先端に液滴(初期体積Ω=1、25、40μL)を形成した。次いで、粒子操作部710が液滴に粒子供給部810に収容されたマグネタイト粒子を電位差によって吸着させ、原料コアシェル粒子を形成し、撥水性基板上に位置させた。このような操作(図10の1、2、3の順)を、マグネタイト粒子およびチタニア粒子について数回行った。
図11は、撥水性基板の詳細を示す図である。
SK水洗いレジン(SK本舗製、SK03W)を基材として、3Dプリンタ(Phrozen製、Phrozen shuffle XL)によって表面に凹凸加工を施した。凹凸加工された表面にはトリメチルシリル基修飾シリカナノ粒子からなる超撥水層を付与し、これを撥水性基板とした。図11(A)は、撥水性基板の外観を示す。二次元に凹凸が格子状に広がっている様子が分かる。図11(B)は、図11(A)の両端矢印で示す1格子間隔の高さ分布を示す。図11(B)によれば、凹凸は離間したV字からなり、その高さは、約1mmであった。図11(C)は、超撥水層の走査型電子顕微鏡によるSEM像である。撥水性基板は、ミリメートルオーダのV字の凹凸を100nmよりも小さな粒子からなる超撥水層が覆っていることが分かった。
図12は、液滴に粒子が静電的に吸着する様子を示す図である。
図12によれば、27.5msおよび73msにおいて液滴の周辺に粒子が舞っており、電位差を利用することにより、液滴に静電的に粒子が吸着することが示された。また、131msでは液滴の周辺で舞っていた粒子が見られず、吸着が終了したことが分かった。
図13は、原料コアシェル粒子の外観を示す図である。
図13は、原料コアシェル粒子として、シェルがマグネタイト粒子であるコアシェル粒子(図中、黒色で示される粒子)と、シェルがチタニア粒子であるコアシェル粒子(図中、白色で示される粒子)とを撥水性基板上に配置した様子を示す。本発明の調製装置を用いれば、電位差を利用して、効率的かつ制御よく原料コアシェル粒子が得られることが示された。
[参考例1]
参考例1では、準備した原料コアシェル粒子の活性化および不活性化について調べた。
原料コアシェル粒子としてシェルがチタニア粒子であるコアシェル粒子を用い、コアシェル粒子のコアに液体(超純水)を注入/排出した際の撥水性基板およびガラス基板に対する接触角の変化を調べた。コアへの液体の注入/排出には、図9の調製装置900を用い、接触角計(協和界面化学株式会社製、Drop master-SA-Cs1)により2θ法によって接触角を測定した。その際のコアシェル粒子を、高速度カメラ(Photoron製、FASTCAM Mini AX)を用いて観察し、レーザ光(主波長365nm、強度500W、ウシオ電機株式会社製、SX-UI501HQ、入力電流6A)を照射した際の光強度の変化を調べた。これらの結果を図14および図15に示す。
図14は、接触角の液滴被覆密度依存性を示す図である。
図14において、横軸は液滴被覆密度Φであり、縦軸は接触角θappである。液滴被覆密度Φは、Φ=(Ω/Ω2/3から求めた。ここで、Ωは液滴の初期体積であり、Ωは初期体積から変化後の液滴の体積である。
図14のガラス基板上のコアシェル粒子の接触角の変化(図中の◇)に着目すると、初期体積時の接触角θappは、150°以上を示し、ガラス基板上でも球体を維持した(挿入図A、B)。液体を注入するにつれて(+Ωの方向)、液滴被覆密度Φが低下し、Φ≦0.8になると、接触角が急激に低下し、球体を維持できず、コアシェル粒子は壊れて、液体がガラス基板に貼りついた(挿入図C、D)。その後、液体を排出しても(-Ωの方向)、接触角θappは増大することなく30°のままであり、液体がガラス基板に貼りついたまま、初期状態のコアシェル粒子に戻らなかった。
次に、図14の撥水性基板上のコアシェル粒子の接触角の変化(図中の○)に着目する。初期体積時の接触角θappは、150°以上を示し、ガラス基板と同様に、球体を維持した(挿入図E、F)。驚くべきことに、液体を注入し(+Ωの方向)、液滴被覆密度Φが低下しても、接触角θappは150°以上を維持し、引き続き球体を維持した(挿入図G、H)。その後、液体を排出しても(-Ωの方向)、接触角θappは変化することなく150°以上を維持した。
図15は、撥水性基板上のコアシェル粒子の粒子濃度分布の変化を示す図である。
図15(A)は、図14において初期状態のコアシェル粒子(図14の挿入図E)から液体注入後のコアシェル粒子(図14の挿入図G)に変化させた際の、撥水性基板上のコアシェル粒子の底面の様子の観察結果と光強度の変化とを示し、図15(B)は、図15(A)の逆に変化させた際のコアシェル粒子の底面の様子の観察結果と光強度の変化とを示す。
図15の観察結果によれば、粒子が密な部分は光散乱によって白色となり、粒子の疎な部分は黒く映った。コアシェル粒子が活性化されると、粒子の濃度が低下し、白色強度分布が低下し、不均一化した。また、コアシェル粒子が不活性化されると、粒子の濃度が上がり、白色強度分布が均一に増加した。
以上の結果から、撥水性基板上のコアシェル粒子は、液滴被覆密度Φを0.8以下に低下させても、球体を維持し、再度液滴被覆密度Φを1に戻すと、初期状態に戻る可逆性を有することが分かった。
また、親水性基板上であれば、液滴被覆密度Φが0.8以下になると、コアシェル粒子が壊れることから、撥水性基板上のコアシェル粒子は、その液滴被覆密度Φが0.8以下となると、実際には壊れやすい不安定な状態で維持されているといえる。このような不安定な状態のコアシェル粒子であれば、互いに容易に合体しやすくなるため、不安定な状態は、コアシェル粒子の活性状態といえる。
したがって、撥水性基板上のコアシェル粒子の活性化を促進するためには、液滴被覆密度Φを0.8以下にすることが好ましく、不活性化(安定化)するためには、液滴被覆密度Φを0.8より大きくすることが好ましいことが分かった。
[例1]
例1では、図9の調製装置900を用いて、原料コアシェル粒子としてシェルがマグネタイト粒子であるコアシェル粒子(FeLM[1])と、チタニア粒子であるコアシェル粒子(TiOLM[2])とを合体させ、2つの領域(N=2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製した。いずれも初期体積Ωは25μLであった。
図16は、2つの領域(N=2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製する様子を示す図である。
FeLM[1](図中黒色で示す)とTiOLM[2](図中白色で示す)とをそれぞれ5μLのコア液量で準備し、撥水性基板上に位置させ、接触させた(図16A)。次いで、FeLM[1]に体積が15μLとなるまで超純水を注入し活性化させた(図16B)。このとき、FeLM[1]の液滴被覆密度Φは0.481であった。TiOLM[2]に体積が15μLとなるまで超純水を注入し、活性化させた(図16C)。このとき、TiOLM[2]の液滴被覆密度Φは0.481であった。その結果、これらは合体し、LM[1+2]となった(図16D)。
得られた合体したコアシェル粒子(LM[1+2])は、マグネタイトの黒色のシェルとチタニアの白色のシェルとの2つの領域(N=2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子であった。
図17は、液滴被覆密度の変化を示す図である。
図17において、FeLM[1]の液滴体積および液滴被覆密度をΩおよびΦとし、TiOLM[2]の液滴体積および液滴被覆密度をΩおよびΦとし、合体後のコアシェル粒子(LM[1+2])の液滴被覆密度Φ12とする。Φ12は、次式より算出した。
Φ12={(Φ+Φ)/2}[2[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]/[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]]
図17は、上式をもとにΩΩ -1およびΦΦ -1の比率を変化させた際にΦ12/Φ ̄(本願明細書において、「Φ ̄」は、Φのオーバーバーを表す)がどうなるかを図示したものである。ただし、Φ ̄=(Φ+Φ)/2である。例えばΦΦ -1=1、ΩΩ -1=1、Φ ̄=Φ=Φであるとき、Φ12=21/3Φ ̄である。Φ12=21/3Φ ̄≦0.8であれば合体後のコアシェル粒子は活性状態を維持し、Φ12=21/3Φ ̄>0.8であれば安定化する。合体後のコアシェル粒子LM[1+2]のΦ12は、0.606であり、0.8以下であるため、活性状態であることが分かった。
[例2]
例2では、活性化したコアシェル粒子と不活性化したコアシェル粒子との合体について調べた。
詳細には、原料コアシェル粒子として、例1で得られたFeLM[1]とTiOLM[2]との合体直後の活性化したコアシェル粒子(LM[1+2])と、FeLM[3]とを接触させた。ここで、FeLM[3]は、超純水が注入されていないため、不活性であり、安定な状態であった。
図18は、コアシェル粒子が接触した様子を示す図である。
図18に示すように、活性化したコアシェル粒子(LM[1+2])は、上に不活性化したコアシェル粒子(FeLM[3])とは合体しないことが分かった。このことから、活性化したコアシェル粒子同士でのみ合体することが示された。
[例3]
例3では、図9の調製装置900を用いて、原料コアシェル粒子としてシェルがマグネタイト粒子であるコアシェル粒子(FeLM)と、チタニア粒子であるコアシェル粒子(TiOLM)とを合体させ、2以上の領域(N≧2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製した。いずれも初期体積Ωは25μLであった。
図19は、2つの領域(N=2)からなる被覆面を有する別のコアシェル粒子を調製する様子を示す図である。
TiOLM[1]、LM[2](図中白色で示す)とFeLM[3]、LM[4](図中黒色で示す)とをそれぞれ5μLのコア液量で準備し、撥水性基板上に位置させ、接触させた(図19A)。次いで、TiOLM[1]に体積が15μLとなるまで超純水を注入し活性化させた(図19B)。同様に、TiOLM[2]に体積が15μLとなるまで超純水を注入し活性化させた(図19C)。活性化させたTiOLM[1]とLM[2]の液滴被覆密度Φは0.8以下であった。活性化したTiOLM[1]とLM[2]とを接触させ、合体させ、LM[1+2]が得られた(図19D)。このとき、LM[1+2]は活性化した状態であった。
FeLM[3]に体積が15μLとなるまで超純水を注入し活性化させた(図19E)。同様に、FeLM[4]に体積が15μLとなるまで超純水を注入し活性化させた(図19F)。活性化させたFeLM[3]とLM[4]の液滴被覆密度Φは0.8以下であった。活性化したFeLM[3]とLM[4]とを接触させ、合体させ、LM[3+4]が得られた(図19G)。このとき、LM[3+4]は活性化した状態であった。
原料コアシェル粒子として、活性化したLM[1+2]と、活性化したLM[3+4]とを接触させ、合体させ、LM[1+2+3+4]が得られた(図19H)。このとき、LM[1+2+3+4]は活性化した状態であった。安定化させるため、合体したLM[1+2+3+4]から超純水をΦ>0.8を満たすように排出させ安定化した(図19I)。
このように、合体を繰り返すことにより、2つの領域(N=2)からなる被覆面を有するより大きなコアシェル粒子を調製した。
図20は、2以上の領域(N≧2)からなる被覆面を有する種々のコアシェル粒子を示す図である。
図20に示すように、本発明の調製方法を採用し、原料コアシェル粒子の合体を繰り返すことにより、2以上の領域(N≧2)からなる被覆面を有する種々のコアシェル粒子が得られた。本発明の調製方法を本発明の調製装置900を用いることにより、3以上の領域(N≧3)からなる被覆面を有する多機能なコアシェル粒子も制御性よく調製できることが分かった。
図示しないが、N=3であり、シェルがFe粒子からなる領域とTiO粒子からなる領域とFe粒子からなる領域との順で構成されたコアシェル粒子において、Fe粒子からなる領域による磁気応答性を利用したコアシェル粒子の遠隔輸送、ならびに、TiO粒子からなる領域による紫外線応答を利用したコアシェル粒子からの液滴放出を確認した。
[例4]
例4では、図9の調製装置900において、原料コアシェル粒子情報および合体プロトコルを用いて、原料コアシェル粒子としてシェルがマグネタイト粒子であるコアシェル粒子(FeLM[1])と、チタニア粒子であるコアシェル粒子(TiOLM[2])とを合体させ、2つの領域(N=2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製した。
図21は、原料コアシェル粒子情報(A)、合体プロトコル(B)および調製されたコアシェル粒子(C)を示す図である。
図21(A)に示すように、撥水性基板上のFeLM[1]およびTiOLM[2]の位置は、xy座標で定義された。原料コアシェル粒子情報のうち位置情報は、FeLM[1](x,y)=(1,1)であり、TiOLM[2](x,y)=(2,1)であった。また、これらの初期体積Ωは、いずれも25μLであった。
図21(B)に示すように、合体プロトコルは、FeLM[1]とTiOLM[2]とを接触させ(#2、#3)、FeLM[1]に液体を注入し、活性化させ(#4)、TiOLM[2]に液体を注入し、活性化させ(#5)、これらを合体させた(#6)、液体を排出し、不活性化させた(#7)。ここで、「#数字」は、図21(B)の合体プロトコル中の番号に相当する。
調製装置900の制御部であるパーソナルコンピュータには、原料コアシェル粒子情報と合体プロトコルとが入力され、合体プロトコルに基づいて、本発明の調製方法が自動で実施された。
図21(C)によれば、例1と同様のマグネタイトの黒色のシェルとチタニアの白色のシェルとの2つの領域(N=2)からなる被覆面を有するコアシェル粒子が得られた。
[例5]
例5では、図9の調製装置900において、原料コアシェル粒子情報および合体プロトコルを用いて、原料コアシェル粒子としてシェルがチタニア粒子であるコアシェル粒子(TiOLM[1])とマグネタイト粒子であるコアシェル粒子(FeLM[2]~LM[5])とを合体させ、5つの領域(N=5)からなる被覆面を有するコアシェル粒子を調製した。
図22は、原料コアシェル粒子情報(A)、合体プロトコル(B)および調製されたコアシェル粒子(C)を示す図である。
図22(A)に示すように、撥水性基板上のTiOLM[1]およびFeLM[2]~[5]の位置は、xy座標で定義された。原料コアシェル粒子情報のうち位置情報は、TiOLM[1](x,y)=(2,2)であり、FeLM[2](x,y)=(1,2)であり、LM[3](x,y)=(3,2)であり、LM[4](x,y)=(2,3)であり、LM[5](x,y)=(0,2)であった。また、TiOLM[1]の初期体積Ωは、40μLであり、FeLM[2]~LM[5]の初期体積Ωは、いずれも、1μLであった。
図22(B)に示すように、合体プロトコルは、主として以下のようになっていた。TiOLM[1]とFeLM[2]とを接触させ、TiOLM[1]を活性化させ(#7)、FeLM[2]を活性化させ(#8)、これらを合体させ、LM[1+2]を得た(#9)。次いで、FeLM[3]を活性化させ(#10)、接触している活性化したLM[1+2]と合体させ、LM[1+2+3]を得た(#11)。次いで、FeLM[4]を活性化させ(#12)、接触している活性化したLM[1+2+3]と合体させ、LM[1+2+3+4]を得た(#13)。
さらに、FeLM[5]を活性化させた(#14)。活性化したLM[1+2+3+4]を(x,y)=(0,2)まで移動させ(#15)、活性化したFeLM[5]と接触させ、LM[1+2+3+4+5]を得た(#16)。活性化したLM[1+2+3+4+5]を(x,y)=(2,2)まで移動させ、液体を排出し、不活性化させた(#18)。図22(B)の合体プロトコルには、コアシェル粒子の移動時の回転の角度を省略して示すが、実際には、接触領域を精密に制御するために、角度も制御した。
調製装置900の制御部であるパーソナルコンピュータには、原料コアシェル粒子情報と合体プロトコルとが入力され、合体プロトコルに基づいて、本発明の調製方法が実施された。
図22(C)によれば、マグネタイトの黒色のシェルとチタニアの白色のシェルとの5つの領域(N=5)からなる被覆面を有するコアシェル粒子が得られた。
本発明のコアシェル粒子の調製方法および調製装置を用いれば、2以上の多機能面を有するコアシェル粒子を制御性良く得られるため、実用化に有利である。このような方法および装置、さらには得られるコアシェル粒子は、マイクロリアクタ、ドラッグデリバリ、微小検体のセンサープラットフォーム、マイクロロボット等に適用され得る。
210 液体
220 粒子
230、231、231a、232、232a、233、233a、234、234a、235、235a、236、236a、237a (原料)コアシェル粒子
240 撥水性基板
250 凹凸
260 シリンジ
610 マグネタイト粒子
620 チタニア粒子
700、800、900 調製装置
710 粒子操作部
720 注排出シリンジ
730 液体タンク
740 制御部
750 表示装置
760 入力装置
810 粒子供給部
820 高圧電源

Claims (14)

  1. 液体であるコアが、前記液体に対して撥液性を有し、同一、または、異なる粒子であるシェルによって被覆された被覆面を有する原料コアシェル粒子を準備することと、
    前記原料コアシェル粒子を、前記原料コアシェル粒子を位置決めするための凹凸を有する撥水性基板上に位置させることと、
    前記原料コアシェル粒子のうち2つの原料コアシェル粒子を合体させることであって、前記2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、前記2つの原料コアシェル粒子を接触させること、または、前記2つの原料コアシェル粒子を接触させ、前記2つの原料コアシェル粒子に液体を注入することである、合体させることと、
    前記合体した原料コアシェル粒子から液体の一部を排出することと
    を包含する、コアシェル粒子を調製する方法。
  2. 前記合体させることは、前記2つの原料コアシェルの互いに異なる粒子によって構成された被覆面同士を接触させる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記原料コアシェル粒子の少なくとも1つの原料コアシェル粒子の被覆面は、2以上の領域を有し、
    前記2以上の領域において互いに隣接する領域を構成する粒子は、互いに異なる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記合体させることを繰り返すことをさらに包含する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記凹凸の断面は、コの字、V字、U字および半円状からなる群から選択される形状である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記合体させることにおいて、前記液体の注入は、前記2つの原料コアシェル粒子それぞれについて、液体注入後の液滴被覆密度Φ、Φが0.8以下となるように行われる、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
    Φ=(Ω/Ω 2/3
    Φ=(Ω/Ω 2/3
    ここで、Ω およびΩ は、液体注入前の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積であり、ΩおよびΩは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。
  7. 前記排出することにおいて、前記液体の一部の排出は、前記合体した原料コアシェル粒子の液滴被覆密度Φ12が0.8を超えるように行われる、請求項6に記載の方法。
    Φ12={(Φ+Φ)/2}[2[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]/[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]]
    ここで、ΦおよびΦは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴被覆密度であり、ΩおよびΩは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。
  8. 前記原料コアシェル粒子を準備することは、
    液滴を形成することと、
    前記液滴にシェルを構成する粒子を、前記液滴と前記粒子との電位差を利用して吸着させることと
    を包含する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
  9. コアシェル粒子を調製する装置であって、
    液体であるコアが、前記液体に対して撥液性を有し、同一、または、異なる粒子であるシェルによって被覆された被覆面を有する原料コアシェル粒子を、前記原料コアシェル粒子を位置決めするための凹凸を有する撥水性基板上に位置させ、移動させる、粒子操作部と、
    前記粒子操作部に搭載され、前記原料コアシェル粒子に液体を注入する、および/または、前記原料コアシェル粒子から液体の一部を排出する注排出シリンジと、
    前記注排出シリンジに接続され、前記原料コアシェル粒子に注入される液体を供給する、および/または、前記原料コアシェル粒子から排出された液体を収容する、液体タンクと、
    前記粒子操作部、前記注排出シリンジおよび前記液体タンクの動作を制御する制御部と
    を備え、
    前記制御部は、
    前記粒子操作部が、前記原料コアシェル粒子のうち2つの原料コアシェル粒子を接触させ、次いで、前記注排出シリンジが、前記液体タンクを介して前記2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、前記2つの原料コアシェル粒子を合体させる、または、前記注排出シリンジが、前記液体タンクを介して前記原料コアシェル粒子のうち2つの原料コアシェル粒子に液体を注入し、次いで、前記粒子操作部が、前記2つの原料コアシェル粒子を接触させ、前記2つの原料コアシェル粒子を合体させ、
    前記注排出シリンジが、前記合体した原料コアシェル粒子から液体の一部を排出し、
    前記液体タンクが前記排出した液体を収容するよう、
    前記粒子操作部、前記注排出シリンジおよび前記液体タンクの動作を制御する、装置。
  10. 前記制御部は、前記2つの原料コアシェル粒子の合体を繰り返し行うよう、前記粒子操作部、前記注排出シリンジおよび前記液体タンクの動作を制御する、請求項9に記載の装置。
  11. 前記制御部は、前記撥水性基板上の前記原料コアシェル粒子に関する原料コアシェル粒子情報、ならびに、前記原料コアシェル粒子の合体プロトコルを記憶する記憶部をさらに備え、
    前記制御部は、前記原料コアシェル粒子情報および前記合体プロトコルに基づいて、前記粒子操作部、前記注排出シリンジおよび前記液体タンクの動作を制御する、請求項9または10に記載の装置。
  12. 前記原料コアシェル粒子のシェルを構成する粒子を収容するための粒子供給部と、
    前記粒子操作部と前記粒子供給部との間に電圧を印加する高圧電源と
    をさらに備え、
    前記制御部は、
    前記高圧電源が前記粒子操作部と前記粒子供給部との間に電圧を印加し、電位差を形成し、
    前記注排出シリンジが前記液体タンクを介して液体を注入し、前記粒子操作部の先端に液滴を形成し、
    前記粒子操作部が前記液滴に前記粒子供給部に収容された前記粒子を前記電位差によって吸着させ、前記原料コアシェル粒子を形成し、前記撥水性基板上に位置させるよう、
    前記粒子操作部、前記注排出シリンジ、前記液体タンクおよび前記高圧電源の動作を制御する、請求項9~11のいずれかに記載の装置。
  13. 前記注排出シリンジは、前記液体の注入を、前記2つの原料コアシェル粒子それぞれについて、液体注入後の液滴被覆密度Φ、Φが0.8以下となるように行う、請求項9~12のいずれかに記載の装置。
    Φ=(Ω/Ω 2/3
    Φ=(Ω/Ω 2/3
    ここで、Ω およびΩ は、液体注入前の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積であり、ΩおよびΩは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。
  14. 前記注排出シリンジは、前記液体の一部の排出を、前記合体した原料コアシェル粒子の液滴被覆密度Φ12が0.8を超えるように行う、請求項13に記載の装置。
    Φ12={(Φ+Φ)/2}[2[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]/[1+(ΦΦ -1)(ΩΩ -12/3]]
    ここで、ΦおよびΦは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴被覆密度であり、ΩおよびΩは、液体注入後の前記2つの原料コアシェル粒子それぞれの液滴の体積である。
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