JP2022081375A - 胎盤様オルガノイドの製造方法、胎盤様オルガノイド、および製造又は試験キット - Google Patents

胎盤様オルガノイドの製造方法、胎盤様オルガノイド、および製造又は試験キット Download PDF

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Abstract

【課題】長期の培養が可能である胎盤様オルガノイドの製造方法、上記の製造方法により製造される胎盤様オルガノイド、および上記胎盤様オルガノイドを含むキットを提供すること。【解決手段】多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することを含む、胎盤様オルガノイドの製造方法。【選択図】なし

Description

新規性喪失の例外適用申請有り
本発明は、多能性幹細胞から胎盤様オルガノイドを製造する方法に関する。本発明はさらに上記方法により製造される胎盤様オルガノイド、および製造又は試験キットに関する。
胎盤は、子宮における胎仔発生のために重要な臓器である。胎盤は、胎仔と母体環境とを、臍帯を介して連絡し、ガス、栄養、および排泄物の交換を行い、さらに妊娠関連ホルモンの産生および胎仔の免疫防御の支援を行っている。胎盤は、栄養膜系列の細胞から構成されている。
非特許文献1には、BMP4(Bone Morphogenetic Protein-4)を用いてヒトES細胞(ヒト胚性幹細胞)から合胞体栄養膜細胞(Syncytiotrophoblast:胎盤を構成する細胞の1種で、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)ともいう)を産生する)を分化誘導させる際に、FGF(Fibroblast Growth Factor)シグナル伝達経路を阻害することにより効率的に分化が行われることが記載されている。非特許文献1においては、Matrigelをコートしたプレートにおいて細胞培養を行っている。
特許文献1には、ヒト多能性幹細胞を、BMP-4等のBMPシグナル伝達活性化物質を含む培地で接着培養し、培養中の細胞とBMPシグナル活性化物質を接触させ、栄養膜細胞(Trophoblast)へと分化した培養物を得ることが記載されている。
特許文献2には、霊長類幹細胞を、BMP4、BMP2、BMP7、GDF5(Growth/differentiation factor 5)等の蛋白質栄養膜細胞(Trophoblast)誘発因子1~100ng/mLを添加した培地において培養することにより、ヒト栄養膜細胞を得ることが記載されている。
特許文献3には、胎盤幹細胞を胚性幹細胞の凝集塊に分散させ、FGF、Wntシグナル阻害物質等を含む培地中で浮遊培養し、栄養膜外胚葉様胞状構造体を得ることが記載されている。
STEM CELLS AND DEVELOPMENT,S.Sudheer et.al,Volume21,Number16,2012,2987-3000
国際公開WO2016/186078A1 特表2005-520514号公報 特開2016-214138号公報
妊婦が摂取した物質は、胎盤を透過すると胎児に曝露される。物質が胎盤を透過するかどうかは、その物質による胎児への発生毒性の発現に大きく影響することから、物質が及ぼすヒト胎盤機能への影響やその物質の胎盤透過性を評価するためのin vitro試験系の開発が求められている。しかし、細胞を二次元の接着培養により栄養外胚葉、さらに栄養膜細胞系へと分化誘導した場合には、2週間前後でhCG産生が停止し、長期の培養は困難であった。
本発明は、長期の培養が可能である胎盤様オルガノイドの製造方法を提供することを課題とする。本発明はさらに、上記の製造方法により製造される胎盤様オルガノイド、および上記胎盤様オルガノイドを含む製造又は試験キットを提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することによって、長期の培養が可能である胎盤様オルガノイドを製造できることを見出した。本発明は、上記の知見に基づいて完成したものである。本発明によれば、以下の発明が提供される。
<1> 多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することを含む、胎盤様オルガノイドの製造方法。
<2> 多能性幹細胞をスフェロイド状態にすることを含む、<1>に記載の方法。
<3> 多能性幹細胞をスフェロイド状態にした後に、スフェロイド状態の多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することを含む、<2>に記載の方法。
<4> 多能性幹細胞をスフェロイド状態にすることを、塩基性繊維芽細胞増殖因子bFGFの存在下において行う、<2>又は<3>に記載の方法。
<5> 多能性幹細胞をスフェロイド状態にすることを、骨形成蛋白質BMP4の非存在下において行う、<2>から<4>の何れか一に記載の方法。
<6> 多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することを、塩基性繊維芽細胞増殖因子bFGFの存在下において行う、<1>から<5>の何れか一に記載の方法。
<7> 多能性幹細胞をスフェロイド状態にすること、および多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することのうちの少なくとも一つを、マイクロキャリアの存在下において行う、<1>から<6>の何れか一に記載の方法。
<8> マイクロキャリアが多孔性である、<7>に記載の方法。
<9> 多能性幹細胞が、胚性幹細胞、胚性生殖細胞又は人工多能性幹細胞である、<1>から<8>の何れか一に記載の方法。
<10> 胎盤様オルガノイドが、絨毛性性腺刺激ホルモン、エストラジオール、デヒドロエピアンドロステロン、11-デオキシコルチコステロン、プロゲステロン、プレグネノロンおよびアロプレグナノロンからなる群から選択される少なくとも一つを産生することができる、<1>から<9>の何れか一に記載の方法。
<11> <1>から<9>の何れか一に記載の方法により製造される、胎盤様オルガノイド。
<12> <11>に記載の胎盤様オルガノイドを含む、製造又は試験キット。
<13> 生殖ホルモンの製造、被験物質の毒性又は安全性の評価、又は病原体の感染メカニズムの解析のために使用する、<12>に記載の製造又は試験キット。
本発明の製造方法により製造される胎盤様オルガノイドは、2週間を超えてhCGを産生し続けることができ、長期の培養が可能である。
図1は、培養4日目にスピナーフラスコ内で形成されたスフェロイドを示す。 図2は、二次元培養および三次元培養におけるhCG産生量の変化を示す。 図3は、水準1(多孔性マイクロスフェアを使用)、水準3(マイクロキャリアを使用)、水準4(マイクロキャリアなし)での三次元浮遊培養による胎盤様オルガノイドの形成を示す。 図4は、胎盤が産生するステロイドホルモンの位置づけを示す。 図5は、胎盤様オルガノイドへヒトサイトメガロウイルス(HCMV)AD-169株を感染させた際の、感染前と感染後4日目の胎盤オルガノイド外観を比較したものを示す。 図6は、胎盤様オルガノイドへヒトサイトメガロウイルス(HCMV)AD-169株を感染させた際の、ウイルス感染初期に発現が上昇するIE2(immediate-early 2)遺伝子のmRNAを、感染後1日目(1dpi:days post infection)と感染後5日目(5dpi)とで電気泳動により確認したものを示す。
以下、本発明を実施するための形態を、詳細に説明する。
本発明による胎盤様オルガノイドの製造方法は、多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することを含む。
本発明の構成によれば、二次元の接着培養により誘導した細胞が2週間前後でhCGを産生しなくなるのに対して、三次元の浮遊培養で誘導した細胞では2週間を超えてhCGを産生し続ける。これまで2ケ月以上のhCG産生持続が確認されており、このhCGのような胎盤ホルモン産生システムの構築が可能となる。またその長期培養可能な胎盤オルガノイドの特性を利用して、妊婦が摂取した食品・医薬品のうちどのような物質が胎盤機能に影響を及ぼすか、あるいはどのような物質が胎盤を通過し、その物質が中枢神経系やその他各組織の胚発生・胎児発達にどのような影響を及ぼすか評価することが可能となる。さらに胎盤を介して母体から胎児へ感染する感染症ウイルスのメカニズム解析も可能となる。
本発明は、ES細胞(胚性幹細胞)、EG細胞(胚性生殖細胞)又はiPS細胞(人工多能性幹細胞)等の多能性幹細胞から、胎盤を含む栄養外胚葉系の細胞、組織へと分化誘導を行う方法を提供するものである。従来においてはラミニンやMatrigelを表面にコートしたプレート上での二次元接着培養により分化誘導を行っていたが、その場合は胎盤特異的なホルモンであるhCGの産生が2週間前後で停止する。また、従来技術の一例においては、予めラミニン(iMatrix-511:ニッピ)をコートした培養プレートを使用して分化誘導を行っている。即ち、ラミニンをコートした6ウェルプレートにiPS細胞培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を2mL分注し、BMP4を添加してからiPS細胞を播種(4×10cell/well前後)する。培養7日目前後から胎盤ホルモンhCGを産生し始めるが、14日目前後でhCG産生が停止する。場合によってはその培養段階前後から細胞がプレートから剥離し始め、培養が継続できなくなる。
一方、本発明においては、スピナーフラスコ等による攪拌培養、又はスフェロイド調製用U字底96ウェルプレート等を用いた静置培養により、三次元浮遊培養を行うことにより分化誘導を行う。これにより、長期に渡りhCGを産生し続けることができる胎盤様オルガノイドが得られる。このオルガノイドは2ケ月以上に渡る長期培養が可能である。
<多能性幹細胞>
「多能性幹細胞」とは、生体を構成するすべての細胞に分化しうる能力(分化多能性)と、細胞分裂を経て自己と同一の分化能を有する娘細胞を生み出す能力(自己複製能)とを併せ持つ細胞をいう。分化多能性は、評価対象の細胞を、ヌードマウスに移植し、三胚葉(外胚葉、中胚葉、内胚葉)のそれぞれの細胞を含むテラトーマ形成の有無を試験することにより、評価することができる。
多能性幹細胞として、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)等を挙げることができるが、分化多能性および自己複製能を併せ持つ細胞である限り、これに限定されない。好ましくはES細胞又はiPS細胞を用いる。更に好ましくはiPS細胞を用いる。多能性幹細胞は、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒトやチンパンジーなどの霊長類、マウスやラットなどのげっ歯類)の細胞、特に好ましくはヒトの細胞である。従って、本発明の好ましい態様では、多能性幹細胞として、ヒトiPS細胞またはヒトES細胞が用いられ、最も好ましい態様では、ヒトiPS細胞が用いられる。
ES細胞は、例えば、着床以前の初期胚、上記の初期胚を構成する内部細胞塊、単一割球等を培養することによって樹立することができる(Manipulating the Mouse Embryo A Laboratory Manual,Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1994);Thomson,J.A. et al.,Science,282,1145-1147(1998))。初期胚として、体細胞の核を核移植することによって作製された初期胚を用いてもよい(Wilmut et al.(Nature,385,810(1997))、Cibelli et al.(Science,280,1256(1998))、入谷明ら(蛋白質核酸酵素,44,892(1999))、Baguisi et al.(Nature Biotechnology,17,456(1999))、Wakayama et al.(Nature,394,369(1998);Nature Genetics,22,127(1999);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96,14984(1999))、Rideout III et al.(Nature Genetics,24,109(2000)、Tachibana et al.(Human Embryonic Stem Cells Derived by Somatic Cell Nuclear Transfer,Cell(2013)in press)。初期胚として、単為発生胚を用いてもよい(Kim et al.(Science, 315,482-486(2007))、Nakajima et al.(Stem Cells,25,983-985(2007))、Kim et al.(Cell Stem Cell,1,346-352(2007))、Revazova et al.(Cloning Stem Cells,9,432-449(2007))、Revazova et al.(Cloning Stem Cells,10,11-24(2008))。上掲の論文の他、ES細胞の作製についてはStrelchenko N., et al.Reprod Biomed Online.9:623-629,2004;Klimanskaya I.,et al.Nature 444:481-485,2006;Chung Y., et al.Cell Stem Cell 2:113-117,2008;Zhang X., et al Stem Cells 24:2669-2676,2006;Wassarman,P.M.et al.Methods in Enzymology,Vol.365,2003等が参考になる。尚、ES細胞と体細胞の細胞融合によって得られる融合ES細胞も、本発明の方法に用いられる胚性幹細胞に含まれる。
ES細胞の中には、保存機関から入手可能なもの、或いは市販されているものもある。例えば、ヒトES細胞については国立成育医療研究センター研究所(例えば、SEES1~7)、京都大学再生医科学研究所(例えばKhES-1、KhES-2およびKhES-3)、WiCell Research Institute、ESI BIOなどから入手可能である。
EG細胞は、始原生殖細胞を、LIF(白血病阻止因子)、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、SCF(幹細胞因子)の存在下で培養すること等により樹立することができる(Matsui et al., Cell,70,841-847(1992)、Shamblott et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95(23),13726-13731(1998)、Turnpenny et al.,Stem Cells,21(5),598-609,(2003))。
「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」とは、初期化因子の導入などにより体細胞をリプログラミングすることによって作製される、多能性(多分化能)と増殖能を有する細胞である。人工多能性幹細胞はES細胞に近い性質を示す。iPS細胞の作製に使用する体細胞は特に限定されず、分化した体細胞でもよいし、未分化の幹細胞でもよい。また、その由来も特に限定されないが、好ましくは哺乳動物(例えば、ヒトやチンパンジーなどの霊長類、マウスやラットなどのげっ歯類)の体細胞、特に好ましくはヒトの体細胞を用いる。iPS細胞は、これまでに報告された各種方法によって作製することができる。また、今後開発されるiPS細胞作製法を適用することも当然に想定される。
iPS細胞の作製法の最も基本的な手法は、転写因子であるOct3/4、Sox2、Klf4およびc-Mycの4因子を、ウイルスを利用して細胞へ導入する方法である(Takahashi K, Yamanaka S: Cell 126 (4),663-676, 2006;Takahashi, K,et al:Cell 131(5),861-72,2007)。ヒトiPS細胞についてはOct4、Sox2、Lin28およびNonogの4因子の導入による樹立の報告がある(Yu J, et al: Science 318(5858),1917-1920,2007)。c-Mycを除く3因子(Nakagawa M,et al:Nat.Biotechnol.26(1),101-106,2008)、Oct3/4およびKlf4の2因子(Kim J B,et al:Nature454(7204),646-650,2008)、或いはOct3/4のみ(Kim J B,et al:Cell 136(3),411-419,2009)の導入によるiPS細胞の樹立も報告されている。また、遺伝子の発現産物であるタンパク質を細胞に導入する手法(Zhou H, Wu S,Joo JY,et al:Cell Stem Cell 4,381-384,2009; Kim D,Kim CH,Moon JI,et al:Cell Stem Cell 4,472-476,2009)も報告されている。一方、ヒストンメチル基転移酵素G9aに対する阻害剤BIX-01294やヒストン脱アセチル化酵素阻害剤バルプロ酸(VPA)或いはBayK8644等を使用することによって作製効率の向上や導入する因子の低減などが可能であるとの報告もある(Huangfu D, et al:Nat.Biotechnol.26(7),795-797,2008; Huangfu D,et al:Nat.Biotechnol.26(11),1269-1275,2008;Silva J, et al: PLoS. Biol.6(10),e253,2008)。遺伝子導入法についても検討が進められ、レトロウイルスの他、レンチウイルス(Yu J, et al:Science 318(5858),1917-1920,2007)、アデノウイルス(Stadtfeld M, et al:Science 322(5903),945-949,2008)、プラスミド(Okita K, et al: Science322(5903),949-953,2008)、トランスポゾンベクター(Woltjen K, Michael IP,Mohseni P, et al: Nature458,766-770,2009;Kaji K,Norrby K, Pac a A,et al:Nature458,771-775,2009;Yusa K, Rad R,Takeda J, et al:Nat Methods 6,363-369,2009)、或いはエピソーマルベクター(Yu J,Hu K,Smuga-Otto K,Tian S,et al:Science 324,797-801,2009)を遺伝子導入に利用した技術が開発されている。
iPS細胞への形質転換、即ち初期化(リプログラミング)が生じた細胞はFbxo15、Nanog、Oct/4、Fgf-4、Esg-1およびCript等の多能性幹細胞マーカー(未分化マーカー)の発現などを指標として選択することができる。選択された細胞をiPS細胞として回収する。
iPS細胞は、例えば、FUJIFILM Cellular Dynamics,Inc.、国立大学法人京都大学、又は独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター等から入手することもできる。
<多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養すること>
本発明の胎盤様オルガノイドの製造方法は、多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することを含む。また、BMP4存在下において多能性幹細胞を培養する期間としては特に制限はないが、2日間から20日間が好ましく、3日から14日がより好ましい。また、hCGの検出が確認されたのちは、BMP4を添加してもしなくてもよい。浮遊培養としては、攪拌培養、静置培養もしくは攪拌培養と静置培養の組み合わせが挙げられ、さらに静置培養では必要に応じてマイクロキャリアを使用することも可能である。
<多能性幹細胞をスフェロイド状態にすること>
本発明の方法は、好ましくは、多能性幹細胞をスフェロイド状態にすることを含む。好ましくは、多能性幹細胞を三次元浮遊培養することによりスフェロイド状態にすることができる。多能性幹細胞をスフェロイド状態にするための培養は、骨形成蛋白質BMP4の存在下、非存在下どちらでもよいが、hCGが長期にわたって分泌されるとの理由からBMP4非存在下が好ましい。また、多能性幹細胞をスフェロイド状態にするための培養は、塩基性繊維芽細胞増殖因子bFGFの存在下において行うことができる。
bFGFの添加量は、0.1~200ng/mLが好ましく、35~100ng/mLがより好ましい。
培地としては、多能性幹細胞の培養に適した培地を使用する。多能性幹細胞をスフェロイド状態にする工程において、多能性幹細胞としてiPS細胞を使用する場合には、iPS細胞が胎盤に分化するとの観点から、StemFit(登録商標)AK02N(味の素)、StemSure(登録商標) hPSC(富士フイルム和光純薬)、mTeSR(登録商標)1(Stemcell Technologies社)又はStemFlex(登録商標)を使用することが好ましい。またそれらの培地に、必要に応じてPenicillin-Streptmycin(Gibco)等の抗生物質を添加することが可能である。さらに、αMEM、DMEMといった一般的な細胞培養基礎培地に適宜必要なFGF等の成長因子や先に挙げた抗生物質、HSA、BSAといった種々の蛋白質等を添加して多能性幹細胞培養用に適した自作培地も使用することができる。
培養期間は、1日から10日、好ましくは1日から4日程度行うことができるが、特に限定されない。
培養は、浮遊培養がよく、浮遊培養とは培地中で細胞を浮遊状態で増殖させることをいう。浮遊培養の手段としては特に限定されないが、攪拌培養、静置培養もしくは攪拌培養と静置培養の組み合わせが挙げられ、さらに静置培養では必要に応じてマイクロキャリアを使用することも可能である。攪拌培養とは、細胞が培養基材(容器)の表面に付着するのではなく、培地中に懸濁されている状態での培養である。攪拌培養の方法としては、攪拌子あるいは攪拌羽根等によって培養液を攪拌しながら培養する方法と、培養容器自体を駆動することによって内部の培養液を間接的に流動させて培養する方法があり、前者としてはスピナーフラスコを用いた培養方法が挙げられる。マイクロキャリアを用いた培養とは、マイクロキャリア表面に細胞を付着させた状態での培養である。一方で静置培養の方法としては、スフェロイド形成用U字底96ウェルプレート(例えば,#174925、Nunclon Sphera:Thermo Scientific)にiPS細胞を播種する方法が挙げられる。この静置培養に使用するスフェロイド形成用培養基材は、細胞が接着せず、さらに底部形状がU字状になっていて播種された細胞がそのU字形状の最下部に自然に集まる構造になっていればよく、V字型、M字形、平面等の何れの形状でも使用可能であり、さらに96ウェルに限定されるものではない。
マイクロキャリアとして、合成高分子又は天然高分子からなるものを使用することができる。例えばポリスチレン(PS)、天然多糖類の誘導体であるデキストラン、天然蛋白質であるコラーゲンおよびその部分配列の遺伝子組み換え体であるヒト型リコンビナント蛋白質(遺伝子組み換えゼラチン:WO2010/128672A1、WO2012/133610A1/製品名cellnest(登録商標):富士フイルム)等の素材があげられるが、これらに限定されるものではない。このようなマイクロキャリアは自作しても市販品を購入してもよい。マイクロキャリアを共存させることにより、スフェロイドが、あるいは播種された細胞がこのマイクロキャリアを内部に包摂し、よりサイズの大きなスフェロイドを形成する。内部にマイクロキャリアを包摂することで、細胞のみからなる同じサイズのスフェロイドでは中央部の細胞に培地の栄養成分がいきわたらず壊死(セントラルネクローシス)するのに対して、中央部の細胞がマイクロキャリアに置換され、効率的に酸素や栄養分を外部から供給することが可能となり、中央部の細胞の壊死を防ぐことができる。マイクロキャリアは多孔性でも非多孔性でもよい。多孔性マイクロキャリアは、実際の組織により近い構造をとることが予想されることから、より好ましい。
マイクロキャリアは、コラーゲンやラミニンなど接着基質によって被覆されていても、被覆されていなくてもよいが、被覆されていることが好ましい。
マイクロキャリアを用いて培養する際は、静置培養が好ましい。
マイクロキャリアの直径としては、10~2500μmが好ましく、50~1000μmがより好ましい。また、多孔性マイクロキャリアの孔径は特に限定されないが、5~500μmが好ましい。
マイクロキャリアの添加量としては、基材に細胞が接着せず、その最下部に自然に集まる構造になっていればよく、U字型の他にV字型、M字形、平面の何れの形状でも使用可能であり、使用する培養基材の種類(プレートのウェル数、ディッシュ径)によらないため、特に限定はないが、スフェロイドが効率的にマイクロキャリアを内包するという観点からスフェロイド1個あたりマイクロキャリア1~1000個が好ましく、1~100個がより好ましい。
<スフェロイド状態の多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養すること>
本発明においては、多能性幹細胞をスフェロイド状態にした後に、スフェロイド状態の多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することが好ましい。また、多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することは、塩基性繊維芽細胞増殖因子bFGFの存在下において行うことがより好ましい。
BMP4の添加量は、0.1~1000ng/mLが好ましく、1~100ng/mLがより好ましい。
bFGFの添加量は、0.1~1000ng/mLが好ましく、1~100ng/mLがより好ましい。
培地としては、上記した通り、多能性幹細胞の培養に適した培地を使用する。
スフェロイド状態の多能性幹細胞をBMP4存在下において培養する培養期間は、特に限定されないが、2日間から20日間が好ましく、3日から10日がより好ましい。また、hCGの検出が確認されたのちは、BMP4を添加してもしなくてもよい。
培養は、上記した通り、浮遊培養がよく、その手段としては攪拌培養でも静置培養でもよい。また、攪拌培養後に静置培養を行ってもよい。攪拌培養後に静置培養へ切り替える時期としては、1~10日が好ましく、1~4日がよりが好ましいが、特に限定されない。
スフェロイド状態の多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することは、マイクロキャリアの存在下において行ってもよい。マイクロキャリアは、上記したものと同様のものを使用することができる。
<本発明の一実施形態>
本発明の一実施形態では、30mL容スピナーフラスコ(エイブル)にiPS細胞培地(例えばStemFit(登録商標)AK02N:味の素)を30mL分注し、BMP4を添加してからiPS細胞を播種(1×10cell/bottle前後)する。BMP4は、培養開始時に培地添加してもよいが、培養開始時には添加せず、培養4日目前後で培地添加してもよい。その後、3~4日おきに半量ずつ培地交換を行うが、BMP4添加は培養10~21日目頃まで継続し、以降はBMP4無添加培地で培地交換のみ行う。培養4日目前後で細胞塊(スフェロイド)が形成され、その後胎盤を構成する栄養膜系の細胞へと分化誘導されてhCGを産生するようになり、胎盤様オルガノイドが作製される。培養初期からスピナーフラスコで攪拌培養を継続してもよいが、スフェロイド形成後に浮遊培養用6ウェルプレート等に移して、静置培養に移行してもよい。BMP4の培地への添加を停止する目安はhCGを産生することであり、hCGを産生するようになってからは、任意の時期においてBMP4添加を停止することが可能である。また、hCGを産生するようになって以降、BMP4を添加し続けることも可能である。培養容器については、細胞が接着しない浮遊培養用であれば6ウェルプレートに限定されず、12ウェル、24ウェル等の各プレートの他、ディッシュ,フラスコ等の細胞培養容器が使用可能である。またスフェロイド形成の別の実施形態としては、スフェロイド形成用U字底96ウェルプレート(例えばNunclon Sphera:Thermo Scientific)等が使用可能である。細胞が接着しない浮遊培養容器であってスフェロイドが形成可能な形状であればU字底96ウェルプレートに限定されず、12ウェル、24ウェル等の各プレートの他、ディッシュ,フラスコ等の細胞培養容器で、さらにV字底、M字底、平面等の形状のものが使用可能である。各ウェルにiPS細胞培地(例えばStemFit(登録商標)AK02N:味の素)を200μL分注し、BMP4を添加してからiPS細胞を播種(1×10~10cell/ウェル前後)する。スフェロイド形成後に、このU字底96ウェルプレートから浮遊培養用6ウェルプレート等、各種培養基材に移してもよい。その後、3~4日おきに半量ずつ培地交換しながら培養を継続する。培地の交換頻度は、7日を超えない期間で任意に設定できる。
また、スピナーフラスコによる攪拌培養からスフェロイドをサンプリングしてU字底96ウェルプレートに移し静置培養へ移行する際、あるいはiPS細胞を直接U字底96ウェルプレートに播種して静置培養しながらスフェロイド形成させる際に、上記したマイクロキャリアを共存させてもよい。
<胎盤様オルガノイド>
本発明によれば、上記した本発明の方法により製造される胎盤様オルガノイドが提供される。オルガノイドとは、人為的に生体外で作製された、器官又は臓器に類似した組織体である。オルガノイドは、一般に、器官形成に寄与する前駆細胞又は幹細胞等の細胞を、生体内における発生や再生過程を模倣した条件下において培養することにより作製される。胎盤様オルガノイドとは、胎盤に類似したオルガノイドで、生体内における胎盤を構成する栄養膜系の細胞、例えば合胞体栄養膜細胞(ST:Syncytiotrophoblast)、細胞性栄養膜細胞(CT:Cytotrophoblast)、絨毛外栄養膜細胞(EVT:Extravillous trophoblast)、及びそれらの細胞の前駆細胞組織である栄養外胚葉(TE:Trophectderm)等のうち少なくとも1つ以上の細胞から構成されている。
胎盤様オルガノイドの直径は、50μm~3cmが好ましく、500μm~2cmがより好ましい。
胎盤様オルガノイドはhCGを長期間分泌することが可能であるが、hCGを分泌する期間としては14日間以上が好ましく、20日間以上がより好ましい。
本発明の方法により製造される胎盤様オルガノイドは、好ましくは、絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、エストラジオール、デヒドロエピアンドロステロン、11-デオキシコルチコステロン、プロゲステロン、プレグネノロンおよびアロプレグナノロンからなる群から選択される少なくとも一つ(より好ましくは二つ以上、さらに好ましくは三つ以上)を産生することができる。特に好ましくは、胎盤様オルガノイドは、絨毛性性腺刺激ホルモン、エストラジオール、デヒドロエピアンドロステロン、11-デオキシコルチコステロン、プロゲステロン、プレグネノロンおよびアロプレグナノロンを産生することができる。
また、胎盤様オルガノイドは、合胞栄養膜細胞(ST)、細胞性栄養膜細胞(CT)、絨毛外栄養膜細胞(EVT)、およびそれらの細胞の前駆細胞組織である栄養外胚葉(TE)等を含んでもよい。
胎盤が産生するホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピンhCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)の産生確認には市販の体外診断用医薬品(妊娠検査薬)が使用可能であり、そのようなものの中に例えばイムノクロマト法の原理を応用したゴナスティックW(持田製薬)がある。使用する体外診断薬用医薬品は、同様のhCGを検出する製品であればよく、特に限定されない。培養上清を0.5~1mL程度サンプリングし、妊娠検査薬のテストストリップに浸漬する。妊娠検査薬は本来、被験者の尿を採取し、尿添加部に採取した尿を3秒程度浸漬して検査を行うが、同様にして採取した培養上清をテストストリップの尿添加部に浸漬する。浸漬完了後、テストストリップの判定面を上に向け、培養上清が判定窓を通過して反応終了窓に達するまで静置して待つ。培養上清中にhCGが存在する場合は、hCGとラテックス粒子標識抗hCG抗体が反応(第一反応)し、培養上清とともにテストストリップのメンブレン上を移動する。次に、この反応物はメンブレンに固定化した抗hCG抗体と反応(第二反応)し、ラテックス粒子標識抗hCG抗体-hCG-固定化抗hCG抗体の複合体が形成され、青色の判定ラインが判定窓に表示される(陽性)。一方、培養上清中にhCGが存在しない場合は、第一反応・第二反応ともに起こらないため、青色の判定ラインは表示されない(陰性)。また、反応終了サインはメンブレン上に塗布された無色の試薬が培養上清と接触することで反応終了窓にピンク色のラインとして表示される。本検査薬は、hCG最小検出感度が25IU/Lの定性評価試薬であるが、判定窓に予めhCG濃度1,000IU/Lに相当する青色の対照ラインが印刷されており、hCG濃度が1,000IU/L以上の場合は判定ラインが対照ラインと同等以上の濃さの着色を示し、hCG濃度が概ね1,000IU/L以上であるか、それ未満であるか、目視確認が可能である。
さらに培養上清中のhCGを定量する場合には、同じ体外診断用医薬品であり、酵素免疫測定法(EIA法)を応用したi-STATカートリッジTotal β―hCG(アボット)を使用することができる。培養上清約17μLをカートリッジに注入し、そのカートリッジを専用アナライザーに差し込んで測定を開始する。約10分後、自動的に測定結果が印字される。カートリッジ内の反応系に関与する成分としては、抗β―hCGマウスモノクローナル抗体―アルカリフォスファターゼコンジュゲート、抗β―hCGマウスモノクローナル抗体、アルカリフォスファターゼの基質であるアミノフェニルリン酸ナトリウムがある。抗原であるhCG量に応じてアルカリフォスファターゼの活性が変動し、生成物アミノフェノールを検出することでhCGの定量が可能となる、
エストラジオール、デヒドロエピアンドロステロン、11-デオキシコルチコステロン、プロゲステロン、プレグネノロンおよびアロプレグナノロンの産生についても、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンhCGの産生確認と同様にイムノクロマト法を利用した市販あるいは自作のテストキットで確認することができ、又は液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、液体クロマトグラフィータンデム型質量分析(LC-MS/MS)などのこれらホルモンを検出可能な一般的方法により確認することができる。あるいは、生体中に存在する微量なホルモンを検出するのに一般的に用いられる全血、血漿、血清、尿その他の検体による市販あるいは自作の体外診断薬で、高感度な酵素アッセイ法、免疫アッセイ法、化学発光法、蛍光発光法を使用してもよい。そのようなアッセイ法の例として、ELISA(酵素免疫測定法EIAの1種)、ECL(電気化学発光法)、RIA(放射免疫測定法)等があげられる。
<胎盤様オルガノイドの用途およびキット>
本発明はさらに、本発明の胎盤様オルガノイドを含む、製造又は試験キットに関する。本発明のキットは、生殖ホルモンの製造、被験物質の毒性又は安全性の評価、又はウイルスの感染メカニズムの解析のために使用することができる。
本発明の胎盤様オルガノイドは、上記した通り、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン、エストラジオール、デヒドロエピアンドロステロン、11-デオキシコルチコステロン、プロゲステロン、プレグネノロンおよびアロプレグナノロンからなる群から選択される少なくとも一つの生殖ホルモンを産生することができる。よって、本発明の胎盤様オルガノイドを培養することにより、上記した生殖ホルモンを製造することができる。
本発明の胎盤様オルガノイドを用いて被験物質の毒性又は安全性を評価することができる。本発明の胎盤様オルガノイドは、妊娠期における薬剤評価モデルとして有用である。本発明の胎盤様オルガノイドは、3次元構造(立体構造)を有することから、高度組織化およびチップ化が可能である。チップ上に構成された臓器の機能を有する素子は、Organ on a chip又は生体機能チップとも言う。本発明の本発明の胎盤様オルガノイドを用いてOrgan on a chip又は生体機能チップを構成することができる。さらに、本発明の胎盤様オルガノイドを、他の臓器様オルガノイドと連結することにより、ヒト発生過程、胎児発達過程における各組織に与える薬剤、アルコール、食物等の影響を評価することができる。
本発明の胎盤様オルガノイドを用いて被験物質の毒性又は安全性を評価する場合、本発明の胎盤様オルガノイドに被験物質を接触させることができる。具体的には、本発明の胎盤様オルガノイドを含む培養培地に、被験物質を添加し、被験物質の存在下において胎盤様オルガノイドを培養することができる。培養期間は特に限定されないが、一般的には1時間~30日間である。但し、必要に応じて培養期間は延長することができる。
被験物質としては、様々な分子量の有機化合物又は無機化合物を用いることができる。有機化合物の例として核酸、ペプチド、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド、ポリフェノール、カテキン、ビタミン類などを挙げることができるが、特に限定されない。医薬品、栄養食品、食品添加物、農薬、香粧品(化粧品)等の既存成分又は候補成分でもよい。植物抽出液、細胞抽出液、培養上清などを被験物質として用いてもよい。2種類以上の被験物質を同時に添加することにより、被験物質間の相互作用、相乗作用などを調べることもできる。被験物質は天然物由来であっても、合成によるものでもよい。合成による被験物質を使用する場合には、例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なアッセイ系を構築することができる。
被験物質が胎盤を透過するかどうかは、被験物質による胎児への発生毒性の発現に大きく影響することから、被験物質のヒト胎盤透過性を評価することにより、被験物質の毒性又は安全性を評価することができる。
例えば、半透過性膜(多孔性膜)の上で胎盤様オルガノイドを培養し、胎盤様オルガノイドを透過した被験物質を定量することができる。被験物質の定量は、被験物質の種類に応じて、質量分析、液体クロマトグラフィー、免疫学的手法(例えば蛍光免疫測定法(FIA法)、酵素免疫測定法(EIA法))等の測定方法で行うことができる。定量結果(胎盤様オルガノイドを透過した被験物質の量)と、被験物質の使用量(典型的には培地への添加量)に基づき、被験物質のヒト胎盤透過性を評価することができる。さらに、被験物質のヒト胎盤透過性の有無を定性的に評価することもできる。その場合は、hCGの検出に使用したような、イムノクロマト法その他の原理により簡便に被験物質の検出が可能な市販あるいは自作の体外診断薬及びそれに類する自作テストキットが使用できる。
ウイルスなどの病原体の母子感染においては、母体が病原体に感染した後、胎盤を介して胎児が病原体に感染することが知られている。病原体としては、ウイルス、細菌、菌類などを挙げることができるが、特に限定されない。
ウイルスなどの病原体の感染メカニズムの解析を行うためには、ヒト繊維芽細胞株等をFBS、抗生物質等を添加した培地中で培養し、その細胞に対してウイルス株等の病原体を感染させて所定量増殖させる。この病原体を胎盤オルガノイド培養液中に添加して感染実験を行う。
その他の用途として、胎盤様オルガノイドから得られた種々の生理活性を有する抽出液を化粧品、食品、医薬品等に用いることも可能である。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
以下の比較例および実施例において、胎盤ホルモンhCGの産生は、ゴナスティックW (持田製薬)を用いた定性評価、及びi-STATカートリッジTotal β―hCG(アボット)を用いた定量評価にて確認した。
ゴナスティックWにおいては、培養上清を0.5~1mL程度サンプリングし、テストストリップに浸漬した。浸漬完了後、テストストリップの判定面を上に向け、培養上清が判定窓を通過して反応終了窓に達するまで静置した。なお、反応終了サインは、反応終了窓にピンク色のラインとして表示される。本検査試薬の検出感度は25IU/Lであり、また判定窓には予めhCG濃度1,000IU/Lに相当する青色の対照ラインが印刷されていて判定ラインとの目視比較が可能である。
判定ラインに、対照ラインの青色と同程度以上のラインが目視された場合には陽性(+)と判定した。
判定ラインに、ラインが目視されなかった場合には陰性(-)と判定した。
判定ラインに、対照ラインの青色より薄いが、目視可能なラインが目視された場合には、(+/-)と判定した。
また、i-STATカートリッジTotal β―hCGでは、培養上清を約17μLサンプリングして試薬カートリッジに注入し、専用アナライザーに挿入した。約10分後に表示された数値をhCGの定量値とした。
以下の比較例および実施例において使用したiPS細胞は、市販のヒト脂肪由来肝細胞ADSC(PT-5006:Lonza)から先述のような基本的なiPS細胞の作製法に則って作製したものを使用した。 また、以下の比較例および実施例において使用したiPS細胞はStemFlex(Thermo Fisher)において継代維持していたものを使用した。また、比較例および実施例で使用するにあたり、iPS細胞の分化の観点から、iPS細胞の培地はStemFit(味の素)もしくはStemSure(富士フイルム和光純薬)に培地を変更した。
<比較例1>二次元接着培養
ラミニン(iMatrix-511:ニッピ)をDPBS(ダルベッコ リン酸緩衝生理食塩水)で希釈し、6ウェルプレート(Falcon TC:#353046)に1ウェルあたり1mL分注して37℃インキュベータ内で1時間静置し、ラミニンをコートした。ラミニンコートしたプレートに50μg/mLのBMP4(R&D Systems)溶液を2μL添加したiPS細胞用培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を2mL分注し、iPS細胞を播種(4×10cells/well)した。適宜培地交換しながら培養を続け、妊娠検査用体外診断薬ゴナスティックW(持田製薬)を用いて培養上清中に含まれるhCGを検出することにより、胎盤組織への分化誘導を確認した。ネガティブコントロールとして、BMP4を添加しない培地を用いて、同様の培養を行った。培養7日目からhCGを産生し始めたが、18日目前後でhCG産生が停止した(表1)。
Figure 2022081375000001
<実施例1>三次元浮遊培養
30mL容スピナーフラスコ(エイブル)にiPS細胞培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を30mL分注し、iPS細胞を播種(1.6×10cells/mL)した。培養開始時にはBMP4を添加せず、培養4日目で50μg/mLのBMP4(R&D Systems)溶液を30μL添加し、培地中のBMP4最終濃度を50ng/mLとした。実施例2以降についてもBMP4を添加する場合は同様の濃度とした。培養開始後、3~4日おきに半量ずつ培地交換を行いながら、BMP4添加は培養18日目まで継続し、以降はBMP4を添加せず、培地交換のみ行った。培養4日目までには細胞塊(スフェロイド)が形成された(図1)。培養期間を通じてスピナーフラスコで攪拌培養を継続した。培養11日目まではhCG産生が確認されなかったが、培養15日目以降でhCG産生が確認され、培養60日目以降においても継続してhCG産生することを確認した(表2)。
Figure 2022081375000002
<実施例2>三次元浮遊培養
30mL容スピナーフラスコ(エイブル)にiPS細胞培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を30mL分注し、iPS細胞を播種(1.1×10cells/bottle)した。BMP4については、培養開始時には添加せず、培養4日目で添加した水準1、および培養開始時から添加した水準2、で比較した。BMP4は、水準1及び2の何れの場合においても培地中の濃度が50ng/mLになるように添加した。培養開始後、3~4日おきに半量ずつ培地交換を行いながら、培養18日目以降は水準1、2ともにBMP4無添加の培地で培地交換を行った。培養4日目までには細胞塊(スフェロイド)が形成された。水準1および2について、培養初期からスピナーフラスコで攪拌培養を継続し、hCG産生を確認した。培養開始時からBMP4を添加した場合(水準2)のほうが早くからhCG産生が開始されるが、hCG産生停止も早い。一方で、培養4日目以降からBMP4を添加した場合(水準1)はhCG産生が若干遅れるが、長く継続された。
Figure 2022081375000003
<実施例3>二次元接着培養及び三次元浮遊培養同時比較
以下の方法で二次元接着培養を実施した。ラミニン(iMatrix-511:ニッピ)をDPBS(ダルベッコ リン酸緩衝生理食塩水)で希釈し、6ウェルプレート(Falcon TC:#353046)に1ウェルあたり1mL分注して37℃インキュベータ内で1時間静置し、ラミニンをコートした。ラミニンコートしたプレートにBMP4溶液を添加しない状態でiPS細胞用培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を2mL分注し、iPS細胞を播種(4×10cells/well)し、適宜培地交換しながら培養を続けた、培養4日目より、培地交換時に50μg/mLのBMP4(R&D Systems)溶液を2μL培地添加してBMP4濃度を50ng/mLとしたiPS細胞用培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)2mLを用いた。
一方、二次元培養接着培養で用いたのと同じiPS細胞を使用して三次元浮遊培養を同時に開始した。30mL容スピナーフラスコ(エイブル)にiPS細胞培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を30mL分注し、iPS細胞を播種(3×10cells/mL)した。二次元接着培養と同様に、培養開始時にはBMP4を添加せず、培養4日目以降で50μg/mLのBMP4(R&D Systems)溶液を二次元接着培養で使用したものと同じ割合で添加した培地を用いた。培養開始後、3~4日おきに培地交換を行いながら、培地へのBMP4添加は培養14日目まで継続し、以降はBMP4を添加しない培地を用いた。三次元浮遊培養は、培養期間を通じてスピナーフラスコで攪拌培養を継続した。二次元接着培養及び三次元浮遊培養を継続しながら、培養7日目以降で適宜培養上清をサンプリングし、生成したhCG量を、i-STATカートリッジTotal β―hCGを用いて定量した。そのhCG定量結果を表4に示した。二次元培養と三次元培養とでは、培養開始時に播種可能な細胞量、培地添加量に違いがあるため、培養上清中のhCG濃度やhCG産生総量には差があり、単純には比較できない。そこで、胎盤への分化誘導開始後hCG産生を始めた培養7日目のhCG定量値を100とし、それ以降の培養測定日におけるhCG定量値と培養7日目におけるhCG定量値の比を算出した。即ち、二次元及び三次元培養の各々の培養形態における、7日目のhCG定量値を100としたときのその後のhCG産生量変化を図2に示した。二次元培養では特に培養15日目以降のhCG産生量低下が顕著である一方、三次元培養は15日目以降もhCG産生し続け、培養25日目においても培養7日目に比べ10倍以上のhCG産生を維持していることが確認できた。
Figure 2022081375000004
<実施例4>三次元浮遊培養
スフェロイド形成用U字底96ウェルプレート(#174925、Nunclon Sphera:Thermo Scientific)にiPS細胞を播種して静置培養する際に、天然高分子、あるいは合成高分子からなるマイクロキャリアを共存させた。
下記の水準3~5の3種類を使用した。ネガティブコントロールとして、マイクロキャリアを添加せずスフェロイドのみ播種の水準6も含めた合計4水準で実施した。
水準3:天然蛋白質であるコラーゲンおよびその部分配列の遺伝子組換え体であるヒト型リコンビナント蛋白質(遺伝子組み換えゼラチン:WO2010128672 A1、WO2012133610 A1/製品名cellnest:富士フイルム)を材料とした多孔性マイクロスフェア;MS(Microsphere)
水準4:天然多糖体の誘導体である架橋デキストラン表面に化学結合させたコラーゲン層を有するマイクロキャリア(Cytodex3、17-0485、GE);Cytodex3
水準5:ポリスチレン(PS)表面にコラーゲンをコートしたマイクロキャリア(3786、Corning);MC(Collagen Coated MC、MicroCarrier)
水準6:コントロール(スフェロイドのみ)
スフェロイド形成用U字底96ウェルプレートの各ウェルに事前にラミニンコートすることなく、BMP4(R&D Systems)無添加のiPS細胞培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を200μL分注した。そのウェルにネガティブコントロール(水準6)を含む上記の水準3~5のマイクロキャリアをウェルに3~200個の範囲で添加し、iPS細胞を播種(4×10cells/ウェル)した。マイクロキャリアを細胞と共存させることにより、播種された細胞がこのマイクロキャリアを内部に包摂してスフェロイドを形成した。スフェロイドが形成された培養4日目以降、BMP4を添加したiPS細胞培地で培地交換を開始し、培養10日目以降は再びBMP4を添加しないiPS培地に変更して培地交換した。培養17日目に96ウェルプレートから、予め2mLの培地を分注しておいた浮遊培養用6ウェルプレート(#3471、6well Flat Bottom、Ultra-Low Attachment Surface:Corning)にスフェロイドを移した。その後、3~4日おきに半量ずつ培地交換しながら培養を継続した。培養25日目におけるhCG産生を、ゴナスティックWを用いて確認した結果、水準3~6の何れの水準もhCG産生していたが、水準3の多孔性マイクロスフェアの発色が最も強かった。
Figure 2022081375000005
<実施例5>三次元浮遊培養
30mL容スピナーフラスコ(エイブル)にBMP4(R&D Systems)を添加しないiPS細胞培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を30mL分注し、iPS細胞を播種(1.1×10cells/bottle前後)、攪拌培養を開始した。培養4日目に、U字底96ウェルプレート(#174925、Nunclon Sphera:Thermo Scientific)にBMP4を添加したiPS細胞培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を各ウェルに200μL分注し、ネガティブコントロール(水準6)を含む実施例3と同じ水準3および5のマイクロキャリアをウェルに添加後、形成されたスフェロイドをスピナーフラスコからサンプリングして2~20個程度を分注、静置培養に移行した。マイクロキャリアを添加せずにスフェロイドのみを添加した水準6とマイクロキャリアとスフェロイドの両方を添加した上記水準3及び5を比較した。
マイクロキャリアをスフェロイドと共存させることにより、スフェロイドは培養過程においてこのマイクロキャリアを内部に包摂し、よりサイズの大きなスフェロイドを形成した。培養4日目の時点でU字底96ウェルプレートに、水準3及び5は各々2個、3個に対して水準6では13個のスフェロイドを添加したが、培養21日目の段階で、水準6に対して水準3及び5は粒子サイズが大きくなっており、明確な差が認められた、内部にマイクロキャリアを包摂することで、細胞のみからなる同じサイズのスフェロイドでは中央部の細胞に培地の栄養成分がいきわたらず壊死(セントラルネクローシス)するのに対して、中央部の細胞がマイクロキャリアに置換され、中央部の細胞の壊死を防ぐことが可能となる。図3に示すように、MS(水準3)、MC(水準5)を添加した水準については内腔様の構造が観察される一方、水準6では細胞が密にパッキングされた状態のままであることから、マイクロキャリアを添加した場合のほうが、より高度な組織構造をとると考えることができる。さらに、マイクロキャリアは多孔性であっても多孔性でなくてもスフェロイド内部に包摂されるが、多孔性であるほうが実際の組織により近い構造をとることが予想される。
<実施例6>
スフェロイド形成用U字底96ウェルプレートの各ウェルに、BMP4(R&D Systems)50ng/mLになるよう添加したiPS細胞培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)を200μL分注し、iPS細胞を播種(1×10cells/ウェル)した。このようにして作製した胎盤オルガノイドを7日間培養した後の培養上清をサンプリングし、この培養上清中にhCG以外の胎盤由来ホルモンが含まれているか、即ちこのオルガノイドがhCG以外の胎盤由来ホルモンを産生しているかを、液体クロマトグラフィータンデム型質量分析計(LC-MS/MS)により確認した。ネガティブコントロールとして、iPS細胞培地(StemFit(登録商標)AK02N:味の素)のみの場合とこの培養上清のクロマトグラムを比較し、得られたピークから定性評価を行った。
その結果、表6のようなホルモンが検出された。これらは、何れも胎盤が産生するステロイドホルモンとして知られているものである(図4)。
Figure 2022081375000006
<実施例7>胎盤オルガノイドへのウイルス感染の確認
ヒト繊維芽細胞株MRC-5(ATCCから購入、ATCC CCL-171)を10%FBS(インビトロジェン)と1%抗生物質(ペニシリン/ストレプトマイシン、10,000U/mL:ThermoFischer SCIENTIFIC)を含有するDMEM培地中で培養する。そのMRC-5細胞の培養液にヒトサイトメガロウイルス(HCMV)AD-169株(ATCCから購入、ATCC VR-538)を添加し、感染させた。感染させてから10日後にMRC-5細胞がほぼ死滅したのを確認後、増殖したウイルス粒子がMRC-5細胞外へ放出された培養上清を回収し、培養上清に含まれる細胞デブリを遠心して取り除いた。残りの培養上清を0.45μmのフィルターに通して、これをAD-169液とした。このAD-169液を培養16日目の胎盤オルガノイド培養液中へ添加して、胎盤オルガノイドへのHCMV感染実験を行った。本実施例においてHCMVの感染に使用した胎盤オルガノイドは、実施例5と同様の方法で調製し、16日間培養したものである。感染後の胎盤オルガノイドからTRIZOL試薬(Invitrogen,#15596026)を用いてtotal RNAを抽出した。まず、5~10×10個の細胞あたり1mLのTRIZOL試薬を添加してホモジネーションを行った。次に0.2mLのクロロホルムを添加し2~3分程度室温で放置後遠心分離(12,000回転、15分間、4℃)した。上層(水層)を別容器に取り、0.5mLのイソプロパノールを添加して5~10分程度室温で放置した。沈殿したRNAに対して1mLの75%エタノールを添加後に遠心分離(7,500回転、5分間、4℃)して洗浄し、totalRNAを得た。このRNA沈殿物を5~10分間程度、風乾させた。(操作の詳細については、TRIZOL試薬の添付文書に従った)
抽出したtotal RNAから、PrimeScript II 1st strand cDNA Synthesis Kit(タカラバイオ,#6210A)を用いてcDNAを合成した。まず、マイクロチューブ内でオリゴdTプライマー:1μL、dNTP Mixture;1μL、抽出したtotal RNA;RNA量で5μg以下、RNA free dHO(全液量が10μLになるよう添加)、を混合し、65℃で5分間保温した後、氷上で急冷した。この液に、5×PrimerScript II Buffer:4μL、RNase Inhibitor:0.5μL、PrimeScript II RTase:1μL、RNA free dHO(全液量が20μLになるよう添加)、を穏やかに攪拌した。その後、速やかに30℃/10分、次いで42℃/30~60分で反応を行った。95℃/5分間保温して酵素を失活させてから氷上で冷却し、cDNA液を調製した。
合成したcDNAについて、IE2(immediate early 2)遺伝子、及びTBP(TATA-binding protein:TATAボックスと呼ばれるDNA配列に結合する基本転写因子)遺伝子の各々についてRT-PCR及び電気泳動を実施した。各遺伝子のPCR反応液、反応条件、電気泳動条件は、それぞれ以下の通りとした。また、電気泳動の実験時にMOCK細胞として、HCMVを感染させていない胎盤オルガノイドを使用した。これは、胎盤オルガノイドで使用した培地のみで培養しHCMV AD-169ウイルス粒子を含む溶液を添加していないものである。
(1)IE2遺伝子
[PCR反応液]
cDNA : 1μL
Forward primer : 0.5μL
Reverse primer : 0.5μL
O : 10μL
2× Buffer :12.5μL
Tks Gflex DNA Polymerase: 0.5μL
(タカラバイオ,#R060A)
[PCRプライマー配列]
Forward:CGCAAGCTTGCCGCCACCATGGAGTCCTCTGCCAAGAGAAAG(配列番号1)
Reverse:CGCGGATCCCTGAGACTTGTTCCTCAGGTCCTG(配列番号2)
[PCR反応条件]
94℃,1min.
以下、32cycles
98℃,10sec.
55℃、15sec.
68℃,1min.
最後に
68℃,7min.
調製したPCR反応産物は、4℃で保存
[電気泳動条件]
1% agarose gel
(2)TBP遺伝子
[PCR反応液]
cDNA : 1μL
Forward primer : 0.5μL
Reverse primer : 0.5μL
O : 10μL
2× Buffer :12.5μL
Tks Gflex DNA Polymerase: 0.5μL
(タカラバイオ,#R060A)
[PCRプライマー配列]
Forward:TTCGGAGAGTTCTGGGATTGTA(配列番号3)
Reverse:TGGACTGTTCTTCACTCTTGGC(配列番号4)
[PCR反応条件]
94℃,1min.
以下、32cycles
98℃,10sec.
55℃、15sec.
68℃,15sec.
最後に
68℃,7min.
調製したPCR反応産物は、4℃で保存
[電気泳動条件]
2% agarose gel
胎盤オルガノイドへヒトサイトメガロウイルス(HCMV)AD-169株を感染させた際の、感染前と感染後4日目の胎盤オルガノイド外観を比較したものを図5に示す。また、胎盤オルガノイドへヒトサイトメガロウイルス(HCMV)AD-169株を感染させた際の、ウイルス感染初期に発現が上昇するIE2遺伝子のmRNAを、感染後1日目(1dpi:days post infection)と感染後5日目(5dpi)とで電気泳動により確認したものを図6に示す。HCMVは、例えば モダンメディア 57巻3号2011,79-85 「周産期のサイトメガロウイルス感染症」に記載されているように二本鎖DNAウイルスであり、細胞侵入後にウイルス蛋白VP16と細胞の転写調節因子が複合体を形成し、前初期(IE:immediate early)遺伝子を発現させる。IE遺伝子の中でもIE1及びIE2遺伝子産物がその後の初期(E:earlyまたはdelayed early)及び後期(L:late)遺伝子の発現を調節する。本実施例において、胎盤オルガノイドに感染しなかったAD-169株のゲノムDNAは逆転写酵素RT(Reverse Transcriptase)の有無に関わらず検出されているが、それとは別にRTが無い場合(RT(-))には検出されず、RTがある場合(RT(+))にのみ検出されるバンド、即ちAD-169株が胎盤オルガノイドに感染し、そのオルガノイドの細胞内で発現したIE2遺伝子のmRNAが検出された。一方でTBP遺伝子においては、Reverseプライマーが2つのエクソンにまたがるよう設計されている。そのため、このTBPのプライマーセットは、TBPのmRNAから合成されるcDNAのみを検出し、ゲノムDNAは検出しない。RTが無い場合(RT(-))はTBPのmRNA由来のcDNAが合成されないため、PCR産物のバンドが検出されなかった。
本発明の方法により胎盤様オルガノイドを製造することができる。また、妊婦が摂取した食物や医薬品等は、胎盤を通過すると胎児血中内へ取り込まれる。本発明の方法により製造される胎盤様オルガノイドを利用することにより、どのような物質が胎盤を通過するか、また通過した物質が胎児にどのような影響を及ぼすかを評価することができ、さらに胎盤を経由して感染するウイルス等の感染メカニズムを解明することができる。

Claims (13)

  1. 多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することを含む、胎盤様オルガノイドの製造方法。
  2. 多能性幹細胞をスフェロイド状態にすることを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 多能性幹細胞をスフェロイド状態にした後に、スフェロイド状態の多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することを含む、請求項2に記載の方法。
  4. 多能性幹細胞をスフェロイド状態にすることを、塩基性繊維芽細胞増殖因子bFGFの存在下において行う、請求項2又は3に記載の方法。
  5. 多能性幹細胞をスフェロイド状態にすることを、骨形成蛋白質BMP4の非存在下において行う、請求項2から4の何れか一項に記載の方法。
  6. 多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することを、塩基性繊維芽細胞増殖因子bFGFの存在下において行う、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
  7. 多能性幹細胞をスフェロイド状態にすること、および多能性幹細胞を骨形成蛋白質BMP4の存在下において浮遊培養することのうちの少なくとも一つを、マイクロキャリアの存在下において行う、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
  8. マイクロキャリアが多孔性である、請求項7に記載の方法。
  9. 多能性幹細胞が、胚性幹細胞、胚性生殖細胞又は人工多能性幹細胞である、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
  10. 胎盤様オルガノイドが、絨毛性性腺刺激ホルモン、エストラジオール、デヒドロエピアンドロステロン、11-デオキシコルチコステロン、プロゲステロン、プレグネノロンおよびアロプレグナノロンからなる群から選択される少なくとも一つを産生することができる、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
  11. 請求項1から9の何れか一項に記載の方法により製造される、胎盤様オルガノイド。
  12. 請求項11に記載の胎盤様オルガノイドを含む、製造又は試験キット。
  13. 生殖ホルモンの製造、被験物質の毒性又は安全性の評価、又は病原体の感染メカニズムの解析のために使用する、請求項12に記載の製造又は試験キット。
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