JP2022080444A - インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ - Google Patents

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Abstract

Figure 2022080444000001
【課題】撥液性に優れたインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】実施形態のインクジェットヘッドは、記録媒体へ向けてインクを吐出するノズルが設けられたノズルプレートを備える。前記ノズルプレートは、ノズルプレート基板と、前記ノズルプレート基板の前記記録媒体と対向する面を被覆したプライマー層と、前記プライマー層を被覆し、フッ素化合物を含んだ撥液層とを含む。前記撥液層は、X線光電子分光法によって測定されるCF基のエネルギー強度が理論値に対して50%以上である。
【選択図】 図5

Description

本発明の実施形態は、インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタに関する。
例えば圧電素子によってインクを加圧して、ノズルプレートに設けられたノズルからインク滴を吐出させるインクジェットヘッドでは、ノズルプレートの表面にインクが付着しないように撥液性を付与している。ノズルプレートの表面に撥液性を付与するためには、ノズルプレート基板の表面に、フッ素系化合物を塗布法又は気相成長法によって成膜して撥液膜を形成している。
特開2007-106024号公報
本発明が解決しようとする課題は、撥液性に優れたインクジェットヘッド、及びこのようなインクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタを提供することにある。
実施形態のインクジェットヘッドは、記録媒体へ向けてインクを吐出するノズルが設けられたノズルプレートを備えている。前記ノズルプレートは、ノズルプレート基板と、前記ノズルプレート基板の前記記録媒体と対向する面を被覆したプライマー層と、前記プライマー層を被覆し、フッ素化合物を含んだ撥液層とを含む。前記撥液層は、X線光電子分光法によって測定されるCF基のエネルギー強度が理論値に対して50%以上である。
実施形態に係るインクジェットヘッドを示す斜視図。 実施形態に係るインクジェットヘッドを構成するアクチュエータ基板、フレーム及びノズルプレートを示す分解斜視図。 実施形態に係るインクジェットプリンタを示す模式図。 実施形態に係るインクジェットプリンタの要部を示す斜視図。 実施形態に係るノズルプレートの構造を概略的に示す断面図。 実施形態に係るノズルプレートの製造工程を概略的に示す断面図。 実施形態に係るノズルプレートの製造工程を概略的に示す断面図。 実施形態に係るノズルプレートの製造工程を概略的に示す断面図。 実施例及び比較例において形成したプライマー層について得られたXPSスペクトルを示すグラフ。
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
1.インクジェットヘッド及びインクジェットプリンタ
図1は、実施形態に係る、インクジェットプリンタのヘッドキャリッジに搭載して使用するオンデマンド型のインクジェットヘッド1を示す斜視図である。以下の説明では、X軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系を用いる。図中の矢印の指し示す方向を便宜上プラス方向とする。X軸方向は印刷幅方向に対応する。Y軸方向は記録媒体が搬送される方向に対応する。Z軸プラス方向は記録媒体に対向する方向である。
図1を参照して概略的に説明すると、インクジェットヘッド1は、インクマニホールド10、アクチュエータ基板20、フレーム40及びノズルプレート50を備えている。
アクチュエータ基板20は、X軸方向を長手方向とする矩形をなしている。アクチュエータ基板20の材料としては、例えばアルミナ(Al)、窒化珪素(Si)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)及びチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O)等が挙げられる。
アクチュエータ基板20は、インクマニホールド10の開口端を塞ぐようにインクマニホールド10の上に重ねられている。インクマニホールド10は、インク供給管11及びインク戻し管12を介してインクカートリッジに接続される。
アクチュエータ基板20上には、フレーム40が取り付けられている。フレーム40上には、ノズルプレート50が取り付けられている。ノズルプレート50には、Y軸に沿って2列を形成するように、複数のノズルNがX軸方向に沿って所定の間隔をあけて設けられている。
図2は、実施形態に係るインクジェットヘッド1を構成するアクチュエータ基板20、フレーム40及びノズルプレート50の分解斜視図である。このインクジェットヘッド1は、いわゆるせん断モードシェアードウォールのサイドシューター型である。
アクチュエータ基板20には、Y軸方向の中央部で列を形成するように、複数のインク供給口21がX軸方向に沿って間隔をあけて設けられている。また、アクチュエータ基板20には、インク供給口21の列に対してY軸プラス方向及びY軸マイナス方向においてそれぞれ列を形成するように、複数のインク排出口22がX軸方向に沿って間隔をあけて設けられている。
中央のインク供給口21の列と一方のインク排出口22の列との間には、複数のアクチュエータ30が設けられている。これらアクチュエータ30は、X軸方向に延びた列を形成している。また、中央のインク供給口21の列と他方のインク排出口22の列との間にも、複数のアクチュエータ30が設けられている。これらアクチュエータ30も、X軸方向に延びた列を形成している。
複数のアクチュエータ30からなる列の各々は、アクチュエータ基板20上に積層された第1の圧電体及び第2の圧電体で構成されている。第1及び第2の圧電体の材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)等が挙げられる。第1及び第2の圧電体は、厚さ方向に沿って互いに逆向きに分極されている。
第1及び第2の圧電体からなる積層体には、Y軸方向に各々が延び、X軸方向に配列した複数の溝が設けられている。これら溝は、第2の圧電体側で開口しており、第2の圧電体の厚さよりも大きな深さを有している。以下、この積層体のうち、隣り合った溝に挟まれた部分をチャネル壁という。これらチャネル壁は、Y軸方向に各々が延び、X軸方向に配列している。なお、隣り合った2つのチャネル壁の間の溝が、インクが流通するインクチャネルである。
インクチャネルの側壁及び底には、電極が形成されている。これら電極は、Y軸方向に沿って延びた配線パターン31に接続されている。
後述するフレキシブルプリント基板との接続部を除き、電極及び配線パターン31を含むアクチュエータ基板20の表面には、図示しない保護膜が形成されている。保護膜は、例えば複数層の無機絶縁膜及び有機絶縁膜を含む。
フレーム40は、開口部を有している。この開口部は、アクチュエータ基板20よりも小さく、かつ、アクチュエータ基板20のうち、インク供給口21、アクチュエータ30、及びインク排出口22が設けられた領域よりも大きい。フレーム40は、例えばセラミックスからなる。フレーム40は、例えば接着剤によりアクチュエータ基板20に接合される。
ノズルプレート50は、ノズルプレート基板と、その媒体対向面(ノズルNからインクを吐出する吐出面)に設けられたプライマー層と、プライマー層の上に設けられた撥液層とを含んでいる。ノズルプレート基板は、例えば、ポリイミドフィルム等の樹脂フィルムからなる。プライマー層及び撥液層については、後で詳述する。
ノズルプレート50は、フレーム40の開口部よりも大きい。ノズルプレート50は、例えば接着剤によってフレーム40に接合される。
ノズルプレート50には、複数のノズルNが設けられている。これらノズルNは、インクチャネルに対応して2つの列を形成している。ノズルNは、記録媒体対向面からインクチャネルの方向に進むに従って径が大きくなっている。ノズルNの寸法は、インクの吐出量に応じて所定の値に設定される。ノズルNは、例えば、エキシマレーザーを用いたレーザー加工を施すことによって形成することができる。
アクチュエータ基板20、フレーム40及びノズルプレート50は、図1に示すように一体化されており、中空構造を形成している。アクチュエータ基板20、フレーム40及びノズルプレート50によって囲まれた領域は、インク流通室である。インクは、インクマニホールド10からインク供給口21を通してインク流通室に供給され、インクチャネルを通過し、余剰のインクがインク排出口22からインクマニホールド10へ戻るように循環する。インクの一部は、インクチャネルを流れる間にノズルNから吐出されて印刷に用いられる。
配線パターン31には、アクチュエータ基板20上であってフレーム40の外側の位置でフレキシブルプリント基板60が接続されている。フレキシブルプリント基板60には、アクチュエータ30を駆動する駆動回路61が搭載されている。
以下、アクチュエータ30の動作を説明する。ここでは、隣り合う3つのインクチャネルのうち中央のインクチャネルに着目して動作を説明する。隣り合う3つのインクチャネルに対応する電極をA、B及びCとする。チャネル壁に直交する方向に電界を印加していない場合には、チャネル壁は直立した状態である。
例えば、中央の電極Bに、両隣の電極A及びCの電位よりも高い電位の電圧パルスを印加して、チャネル壁に直交する方向に電界を生じさせる。こうして、チャネル壁をせん断モードで駆動させ、中央のインクチャネルを挟む1対のチャネル壁を、中央のインクチャネルの体積を拡張するように変形させる。
次に、両隣の電極A及びCに、中央の電極Bの電位よりも高い電位の電圧パルスを印加して、チャネル壁に直交する方向に電界を生じさせる。こうして、チャネル壁をせん断モードで駆動させ、中央のインクチャネルを挟む1対のチャネル壁を、中央のインクチャネルの体積を縮小するように変形させる。この動作により、中央のインクチャネル内のインクに圧力を加え、このインクチャネルに対応するノズルNからインクを吐出させて記録媒体に着弾させる。
例えば、すべてのノズルを3つの群に分けて、上で説明した駆動操作を時分割制御して3サイクル行い、記録媒体への印刷を行う。
図3に、インクジェットプリンタ100の模式図を示す。図3に示すインクジェットプリンタ100は、排紙トレイ118が設けられた筐体を含んでいる。筐体内には、カセット1011及び1012、給紙ローラ102及び103、搬送ローラ対104及び105、レジストローラ対106、搬送ベルト107、ファン119、負圧チャンバ111、搬送ローラ対112、113及び114、インクジェットヘッド1151、1152、1153及び1154、インクカートリッジ1161、1162、1163及び1164、並びに、チューブ1171、1172、1173及び1174が設置されている。
カセット1011及び1012は、サイズの異なる記録媒体Pを収容している。給紙ローラ102又は103は、選択された記録媒体のサイズに対応した記録媒体Pをカセット1011又は1012から取り出し、搬送ローラ対104及び105並びにレジストローラ対106へ搬送する。
搬送ベルト107は、駆動ローラ108と2本の従動ローラ109とによって張力が与えられている。搬送ベルト107の表面には、所定間隔で穴が設けられている。搬送ベルト107の内側には、記録媒体Pを搬送ベルト107に吸着させるための、ファン119に連結された負圧チャンバ111が設置されている。搬送ベルト107の搬送方向下流には、搬送ローラ対112、113及び114が設置されている。なお、搬送ベルト107から排紙トレイ118までの搬送経路には、記録媒体P上に形成された印刷層を加熱するヒータを設置することができる。
搬送ベルト107の上方には、画像データに応じてインクを記録媒体Pに吐出する4つのインクジェットヘッドが配置されている。具体的には、シアン(C)インクを吐出するインクジェットヘッド1151、マゼンタ(M)インクを吐出するインクジェットヘッド1152、イエロー(Y)インクを吐出するインクジェットヘッド1153、及びブラック(Bk)インクを吐出するインクジェットヘッド1154が、上流側からこの順に配置されている。インクジェットヘッド1151、1152、1153及び1154の各々は、図1及び図2を参照しながら説明したインクジェットヘッド1である。
インクジェットヘッド1151、1152、1153及び1154の上方には、これらに対応したインクをそれぞれ収容した、シアン(C)インクカートリッジ1161、マゼンタ(M)インクカートリッジ1162、イエロー(Y)インクカートリッジ1163、及びブラック(Bk)インクカートリッジ1164が設置されている。これらカートリッジ1161、1162、1163及び1164は、それぞれ、チューブ1171、1172、1173及び1174によって、インクジェットヘッド1151、1152、1153及び1154に連結されている。
次に、このインクジェットプリンタ100の画像形成動作について説明する。
先ず、画像処理手段(図示しない)が、記録のための画像処理を開始し、画像データに対応した画像信号を生成するとともに、各種ローラや負圧チャンバ111等の動作を制御する制御信号を生成する。
給紙ローラ102又は103は、画像処理手段による制御のもと、カセット1011又は1012から、選択されたサイズの記録媒体Pを1枚ずつ取り出し、搬送ローラ対104及び105並びにレジストローラ対106へ搬送する。レジストローラ対106は、記録媒体Pのスキューを補正し、所定のタイミングで記録媒体Pを搬送する。
負圧チャンバ111は、搬送ベルト107の穴を介して空気を吸い込んでいる。従って、記録媒体Pは、搬送ベルト107に吸着された状態で、搬送ベルト107の移動に伴い、インクジェットヘッド1151、1152、1153及び1154の下方の位置へと順次搬送される。
インクジェットヘッド1151、1152、1153及び1154は、画像処理手段による制御のもと、記録媒体Pが搬送されるタイミングに同期してインクを吐出する。これにより、記録媒体Pの所望の位置に、カラー画像が形成される。
その後、搬送ローラ対112、113及び114は、画像が形成された記録媒体Pを排紙トレイ118へ排紙する。搬送ベルト107から排紙トレイ118までの搬送経路にヒータを設置した場合、記録媒体P上に形成された印刷層をヒータによって加熱してもよい。ヒータによる加熱を行うと、特に、記録媒体Pが非浸透性である場合に、記録媒体Pに対する印刷層の密着性を高めることができる。
図4に、インクジェットプリンタ100の要部の斜視図を示す。図4には、上で説明したインクジェットヘッド1と、媒体保持機構110と、ヘッド移動機構120と、ブレード移動機構130と、ワイピングブレード140とを描いている。
媒体保持機構110は、記録媒体P、例えば記録用紙を、インクジェットヘッド1に対向して保持する。媒体保持機構110は、記録媒体を移動させる記録用紙移動機構としての機能も有している。媒体保持機構110は、図3の搬送ベルト107、駆動ローラ108、従動ローラ109、負圧チャンバ111、及びファン119を含んでいる。媒体保持機構110は、印刷時には、記録媒体Pを、インクジェットヘッド1に対向させた状態で、記録媒体Pの印刷面に平行な方向へ移動させる。その間に、インクジェットヘッド1は、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体P上に印刷する。
ヘッド移動機構120は、印刷時には、インクジェットヘッド1を印刷位置に移動させる。また、ヘッド移動機構120は、クリーニング時には、インクジェットヘッド1をクリーニング位置に移動させる。
ワイピングブレード140は、インクジェットヘッド1のノズルプレートの記録媒体と対向する面、即ち、記録媒体対向面を擦って、この記録媒体対向面から付着物を除去する。ここで、付着物は、例えば、インクや塵及び埃等のゴミである。
ブレード移動機構130は、ワイピングブレード140を移動させる。具体的には、ブレード移動機構130は、ヘッド移動機構120がインクジェットヘッド1をクリーニング位置に移動させた後、ワイピングブレード140を、ノズルプレート50の記録媒体対向面に押し当ながら、その上で移動させる。これにより、ノズルプレート50の記録媒体対向面に付着しているインク等の付着物を取り除く。
なお、ワイピングブレード140及びブレード移動機構130は省略してもよい。
2.ノズルプレート
上記のインクジェットヘッド1では、ノズルプレート50の媒体対向面に撥液性が付与されている。撥液性を付与するために、ノズルプレート基板の媒体対向面に、プライマー層及び撥液層を設けている。これについて、図5を参照しながら説明する。
図5は、図1及び図2のノズルプレート50の構造を概略的に示す断面図である。ノズルプレート50は、上記の通り、ノズルプレート基板51とプライマー層52と撥液層53とを含んでいる。
プライマー層52は、ノズルプレート基板51の記録媒体Pと対向する面に設けられている。プライマー層52は、好ましくは、プライマー剤の単分子膜からなる。プライマー層52は、より好ましくは、シリコン原子と炭素原子とを含んだプライマー剤の単分子膜からなる。
プライマー剤は、例えば、第1及び第2反応性官能基、炭素骨格並びにアルコキシシリル基を含んでいる。
第1反応性官能基は、ノズルプレート基板51の表面に存在している官能基と反応することによって、プライマー剤をノズルプレート基板51と結合させる。第1反応性官能基は、例えば、水酸基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、ビニル基等の不飽和炭化水素基、又はメルカプト基である。ノズルプレート基板51の表面に存在する官能基は、例えば、水酸基、エステル結合、アミノ基、又はチオール基である。
第2反応性官能基は、撥液層53の形成に使用するフッ素化合物と反応することによって、フッ素化合物をプライマー剤と結合させる。フッ素化合物については後述する。第2反応性官能基は、例えば、水酸基、又はメトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基である。
炭素骨格は、第1反応性官能基と第2反応性官能基とを連結している。炭素骨格は、1以上の炭素原子を含む。炭素骨格の炭素原子数は、4乃至30の範囲内にあることが好ましく、4乃至22の範囲内にあることがより好ましい。炭素骨格は、1以上のフッ素原子を更に含んでいることが好ましい。炭素骨格がフッ素原子を有していると、撥液性に優れる。
アルコキシシリル基は、炭素骨格に連結している。アルコキシシリル基を加水分解するとシラノール基が生じる。ノズルプレート基板51上で隣り合ったプライマー剤の分子間でシラノール基の脱水縮合を生じさせることにより、プライマー剤に分子間結合を生じさせることができる。このように、プライマー剤の分子は互いに結合していることが好ましい。一例によれば、ノズルプレート基板51上で隣り合ったプライマー剤の分子は、シロキサン結合(Si-O-Si)によって相互に結合している。これにより、プライマー剤は、ノズルプレート基板51の媒体対向面に対して略平行な結合を形成する。
なお、加水分解によって生じたシラノール基のうち、プライマー剤の分子間結合に使用されなかったシラノール基は、プライマー剤とフッ素化合物との結合に使用することができる。
プライマー剤としては、例えば、下記の一般式(1)で表される化合物を使用することができる。
Figure 2022080444000002
一般式(1)において、nは1乃至10の自然数である。一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ上述した第1及び第2反応性官能基である。一般式(1)で表される化合物は、第1及び第2反応性官能基、炭素骨格並びにアルコキシシリル基を含んでいる。
一般式(1)においてアルコキシシリル基はトリメトキシシリル基であるが、アルコキシシリル基はトリエトキシシリル基等の官能基であってもよい。また、一般式(1)において、炭素骨格に含まれるCF基の個数は2であるが、CF基の個数は1であってもよく、3以上であってもよい。また、炭素骨格のうち繰り返し単位に含まれる炭素原子数は2であるが、炭素原子数は1であってもよく、3以上であってもよい。
プライマー層は、例えば、0.7nm乃至1nmの厚さを有する。
撥液層53は、プライマー層52上に設けられている。撥液層53は、フッ素化合物を含む。撥液層53は、好ましくは、直鎖状フッ素化合物の単分子膜からなる。直鎖状フッ素化合物は、一方の末端基としてパーフルオロアルキル基を表面側に有し、他方の末端基がプライマー層52に結合した直鎖状分子である。
撥液層53は、例えば、一方の末端基がパーフルオロアルキル基であり、他方の末端基が第3反応性官能基である直鎖状フッ素化合物を使用して形成することができる。
パーフルオロアルキル基は、直鎖状である。パーフルオロアルキル基(CF(CF)-)の炭素原子数は、4以下(C1乃至C4)の範囲内で選択することができる。パーフルオロアルキル基は、ノズルプレート基板51の表面に対する垂線方向に沿って直立していることが好ましい。パーフルオロアルキル基の炭素原子数を増やすと、パーフルオロアルキル基を直立させることが容易になるが、発がん性等の人体への悪影響がある。
第3反応性官能基は、第2反応性官能基と反応することによって、直鎖状フッ素化合物をプライマー剤と結合させる。第3反応性官能基は、例えば、水酸基、又はメトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基である。
なお、第3反応性官能基は、アルコキシシリル基の加水分解によって生じるシラノール基のうち、分子間結合に使用されなかったシラノール基と反応することによって、直鎖状フッ素化合物をプライマー剤と結合させることも可能である。
直鎖状フッ素化合物は、例えば、パーフルオロアルキル基と第3反応性官能基とを連結するスペーサ連結基を有している。スペーサ連結基が存在すると、パーフルオロアルキル基がノズルプレート基板51の表面に対する垂線方向に沿って直立した構造をとるのに有利になる。スペーサ連結基は、例えば、パーフルオロポリエーテル基である。
直鎖状フッ素化合物としては、例えば、下記の一般式(2)で表される化合物を使用することができる。
Figure 2022080444000003
一般式(2)において、pは1乃至50の自然数であり、R3は第3反応性官能基である。
撥液層53は、例えば、9nm乃至10nmの厚さを有する。
後述するように、本実施形態では、撥液層を形成する工程に先立ち、プライマー層に生じたピンホールをプライマー剤で埋め込む工程を行う。そのようにして得られる撥液層は、X線光電子分光法(XPS)によって測定されるCF基のエネルギー強度が理論値に対して50%以上である。ここで、「理論値」は、ピンホールが存在していない撥液層に対するXPS測定によって得られるCF基のエネルギー強度を指す。「ピンホールが存在していない撥液層」は、プライマー剤の溶液を塗布してプライマー層を形成した際に通常生じるピンホールを、同じ組成のプライマー剤の溶液で埋めて、ピンホールが存在していないプライマー層を形成し、このプライマー層の上に撥液層を設けることにより製造することができる。本明細書において「CF基のエネルギー強度」は、CF基のピーク面積を指す。
ピンホールを埋める工程を省略して撥液層を形成した場合、プライマー層が存在しない箇所(即ちピンホール)に撥液層を形成することができない。この場合、撥液層のX線光電子分光法によって測定されるCF基のエネルギー強度は、上記理論値の40%以下である。これに対し、ピンホールを埋めた後に撥液層を設けると、ピンホールがないプライマー層の表面全面にわたって撥液層を形成することができる。この場合、撥液層のX線光電子分光法によって測定される上記エネルギー強度を、上記理論値の50%以上、好ましくは、上記理論値の85%以上、最も好ましくは、上記理論値の100%とすることができる。
撥液層のX線光電子分光法(XPS)によって測定されるCF基のエネルギー強度が、理論値の100%に近いほど、撥液層に存在するピンホールの数が少なくゼロに近づく。撥液層は、ピンホール部分で撥液性を示すことができないため、撥液層に存在するピンホールの数が少ないほど、撥液層は、優れた撥液性能を発揮することができる。
なお、プライマー層の表面には、その全体に亘って、撥液層を構成するフッ素化合物を反応させることができる。即ち、プライマー層にピンホールがなければ、ピンホールが実質的に存在しない撥液層が得られる。一方、プライマー層にピンホールが存在している場合、これらピンホールの位置で、撥液層にもピンホールを生じる。即ち、撥液層におけるピンホール開口部の合計面積は、プライマー層におけるピンホール開口部の合計面積と等しい。
3.ノズルプレートの製造方法
図5に示すノズルプレート50は、例えば、以下のようにして製造することができる。即ち、ノズルプレート50の製造方法は、以下の工程を含むことができる:
ノズルプレート基板の一方の面の上に第1プライマー剤を供給して、開口部(即ちピンホール)を有する第1プライマー層を形成すること、
前記第1プライマー層に保護基を導入すること、
前記保護基が導入された前記第1プライマー層上に第2プライマー剤を供給して、前記開口部の位置で前記面を被覆した第2プライマー層を形成すること、
前記第2プライマー層の形成後に、前記第1プライマー層から前記保護基を除去すること、及び
前記保護基の除去後に、前記第1プライマー層及び前記第2プライマー層の上に、フッ素化合物を含んだ撥液層を形成すること。
以下、各工程を、図6~8を参照しながら説明する。図6~8は、ノズルプレートの製造工程を概略的に示す断面図である。図6は、ノズルプレート基板51の上に第1プライマー層521が形成された状態を示す。図7は、ノズルプレート基板51の上に第1プライマー層521及び第2プライマー層522が形成された状態を示す。図8は、第1プライマー層521及び第2プライマー層522からなるプライマー層の上に撥液層53が形成された状態を示す。
なお、以下の説明では、一例として、「ノズルプレート基板51」はポリイミドからなる。また、以下の説明では、一例として、「第1プライマー剤」及び「第2プライマー剤」は、ノズルプレート基板51表面の官能基と反応する第1反応性官能基、撥液層53に含まれるフッ素化合物と反応する第2反応性官能基、炭素骨格、及びアルコキシシリル基を含む。また、以下の説明では、一例として、「フッ素化合物」は、一方の末端基としてパーフルオロアルキル基を含み、他方の末端基として、第1プライマー剤及び第2プライマー剤と反応する第3反応性官能基を含む直鎖状分子である。
(ノズルプレート基板の準備)
先ず、ポリイミドからなるノズルプレート基板51を準備する。ノズルプレート基板51の表面のうち記録媒体Pと対向する面は、プライマー剤との結合に必要な官能基(例えば、水酸基)をほとんど有していない場合がある。そのような場合、プライマー層52の形成に先立ち、ノズルプレート基板51に以下のような前処理を行うことが好ましい。
例えば、ノズルプレート基板51の表面に対して、アルゴン-酸素混合ガス中でイオンプラズマ処理を施し、表面の改質を行う。イオンプラズマ処理は、例えば、以下のように行う。即ち、ノズルプレート基板51を真空チャンバ内に設置し、チャンバ内の空気を真空引きする。そして、ノズルプレート基板51を取り巻く雰囲気をアルゴン-酸素混合ガスへと切り替え、その後、プラズマを発生させる。
酸素を含んだ雰囲気中でイオンプラズマ処理を行うことで、ノズルプレート基板51表面のポリイミドで開環反応を生じさせて、この表面を水酸基で修飾する。これに加えて、アルゴンを含んだ雰囲気中でイオンプラズマ処理を行うことで、ノズルプレート基板51に付着しているゴミを除去する。
イオンプラズマ処理は、好ましくは、酸素濃度が50体積%以下のアルゴン-酸素混合ガス中で行い、より好ましくは、酸素濃度が20乃至50体積%の範囲内にあるアルゴン-酸素混合ガス中で行う。なお、酸素濃度が大きすぎる場合、ノズルプレート基板51の表面が損傷し、表面荒れを生じる虞がある。ノズルプレート基板51の表面に荒れが生じた場合、プライマー剤との結合が不十分となる虞がある。
イオンプラズマ処理は、100秒以上行うことが好ましく、200秒以上行うことがより好ましい。プラズマ照射時間が短すぎる場合、ノズルプレート基板51への表面修飾が十分に行われない虞がある。
(第1プライマー層の形成)
次に、ノズルプレート基板51の表面に第1プライマー剤を含む溶液を塗布する。第1プライマー剤を含む溶液としては、例えば、第1プライマー剤を、有機溶剤で溶かした溶液を用いることができる。第1プライマー剤は、一例として、ノズルプレート基板51表面の官能基と反応する第1反応性官能基、撥液層53に含まれるフッ素化合物と反応する第2反応性官能基、炭素骨格、及びアルコキシシリル基を含み、上記で説明した「プライマー剤」を使用することができる。また、溶液の塗布は、スプレー法、スピンコーティング法、ブレードコート法等の通常の方法を用いて行うことができる。
次いで、第1プライマー剤を含んだ塗膜とノズルプレート基板51とを備えた積層体を加熱する。このようにして、第1プライマー剤を、第1反応性官能基を介してポリイミドに結合させるとともに、塗膜を乾燥させる。加熱は、例えば、200℃で15分間行う。
次いで、第1プライマー剤のアルコキシシリル基を加水分解させる。第1プライマー剤のアルコキシシリル基が加水分解すると、シラノール基が生成する。そして、ノズルプレート基板51上で隣り合った第1プライマー剤の分子間でシラノール基の脱水縮合が生じる。これにより、第1プライマー剤の分子間結合を形成する。
このようにして、図6に示すとおり、ノズルプレート基板51上に第1プライマー層521を形成する。第1プライマー層521は、ピンホール520を有している。
(保護基の導入)
第1プライマー層521を形成した後、第1プライマー層521に保護基を導入する。具体的には、第1プライマー剤の第2反応性官能基に保護基を導入する。保護基の導入は、例えば、第1プライマー層521にアルコールを供給し、第1プライマー剤の第2反応性官能基を、保護基としてのアルコキシ基で置換することにより行うことができる。アルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが挙げられる。保護基の導入により、この後の工程で使用される第2プライマー剤が第1プライマー剤と結合することを防ぐことができる。
(第2プライマー層の形成)
保護基が導入された第1プライマー層521上に第2プライマー剤を供給して、ピンホール520の位置でノズルプレート基板51の表面を被覆した第2プライマー層522を形成する(図7参照)。
第2プライマー剤は、一例として、ノズルプレート基板51表面の官能基と反応する第1反応性官能基、撥液層53に含まれるフッ素化合物と反応する第2反応性官能基、炭素骨格、及びアルコキシシリル基を含み、上記で説明した「プライマー剤」を使用することができる。
第2プライマー剤は、第1プライマー剤と同じ化合物を使用してもよいし、第1プライマー剤とは異なる化合物を使用してもよい。ただし、第2プライマー剤として、第1プライマー剤とは異なる化合物を使用した場合、第1プライマー層521と第2プライマー層522との間に構造上の違い(例えば、厚さの違い)が生じ、撥液層53の形成に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、第2プライマー剤は、第1プライマー剤と同じ化合物を使用することが好ましい。
第2プライマー層522の形成は、第1プライマー層521の形成と同様の処理により行うことができる。即ち、第1プライマー層521の形成と同様の処理により、第2プライマー剤を含む溶液を塗布し、加熱乾燥を行い、その後、シラノール基の生成及び脱水縮合を行う。
第2プライマー剤は、保護基が導入された第1プライマー層521と反応することができず、ピンホール520の位置で露出したノズルプレート基板51の表面とのみ反応することができる。これにより、図7に示すとおり、第1プライマー層521の上に第2プライマー層522は形成されず、ピンホール520の位置で露出したノズルプレート基板51の表面に選択的に第2プライマー層522が形成される。
(保護基の除去)
第2プライマー層522を形成した後、第1プライマー層521から保護基を除去する。保護基は、例えば、加熱処理、酸素プラズマ処理、又は紫外線照射により除去することができる。これにより、第1プライマー剤が、第2反応性官能基を介して、撥液層53に含まれるフッ素化合物と結合することが可能になる。
第1プライマー剤と第2プライマー剤が同じ化合物である場合、保護基の除去により、第1プライマー層521と第2プライマー層522は、同じ組成を有することになり、互いに区別することはできない。この場合、第1プライマー層521及び第2プライマー層522は、一体となって、図5に示される単一のプライマー層52を形成することができる。
(撥液層の形成)
次いで、第1プライマー層521及び第2プライマー層522の表面に、フッ素化合物を含む溶液を塗布して撥液層53を形成する(図8参照)。
フッ素化合物を含む溶液としては、例えば、フッ素化合物を、有機溶剤で溶かした溶液を用いることができる。フッ素化合物は、一例として、一方の末端基としてパーフルオロアルキル基を含み、他方の末端基として、第1プライマー剤及び第2プライマー剤と反応する第3反応性官能基を含む直鎖状分子であり、上記で説明した「直鎖状フッ素化合物」を使用することができる。また、直鎖状フッ素化合物を含む溶液の塗布は、第1プライマー剤を含む溶液の塗布と同様の方法を用いて行うことができる。
次いで、直鎖状フッ素化合物を含んだ塗膜と第1プライマー層521と第2プライマー層522とノズルプレート基板51とを備えた積層体を加熱する。このようにして、直鎖状フッ素化合物と第1プライマー剤との間、及び直鎖状フッ素化合物と第2プライマー剤との間で反応を生じさせて、直鎖状フッ素化合物を、第3反応性官能基を介して第1プライマー層521及び第2プライマー層522の表面に結合させる。これにより、撥液層53として、直鎖状フッ素化合物からなる単分子膜を形成することができる。加熱は、例えば、200℃で15分間行う。
このようにして、図8に示すとおり、第1プライマー層521及び第2プライマー層522からなるプライマー層の上に撥液層53を形成する。
上述の方法によれば、第2プライマー層522は、第1プライマー層521の上に形成されず、ピンホール520の部分(即ち、第1プライマー層521の欠落部分)にのみ選択的に形成することができる(図7参照)。これにより、プライマー層として、第1プライマー剤及び第2プライマー剤からなる単分子膜の形成が可能である。また、上述のとおり、第1プライマー層521及び第2プライマー層522からなるプライマー層の表面には、その全体に亘って、撥液層を構成するフッ素化合物を反応させることができる。このため、プライマー層にピンホールがなければ、ピンホールが実質的に存在しない撥液層53の形成につなげることができる(図8参照)。
4.効果
上述した本実施形態のノズルプレートは、ピンホールの数が少ない撥液層を有するため、撥液性に優れる。このため、上述したノズルプレートを備えたインクジェットヘッドも、撥液性に優れる。
プライマー層及び撥液層の各々が単分子膜からなる場合、プライマー剤の分子をノズルプレート基板の上に緻密に且つ整然と配置し、その上に、フッ素化合物の分子を緻密に且つ整然と配置することができる。これにより、より優れた撥液性を達成することができる。また、プライマー層及び撥液層の各々が単分子膜からなる場合、撥液層とノズルプレート基板との密着性を高め、より優れた耐擦過性を達成することができる。耐擦過性とは、ワイピングブレード140等を用いた擦過による撥液性の劣化が生じにくい性質を指す。
以下、実施例及び比較例を説明する。
(実施例)
本例では、プライマー層と撥液層とを有するノズルプレートを製造した。プライマー層及び撥液層は、以下の方法により形成した。
ノズルプレート基板として、ポリイミドフィルムを準備した。このノズルプレート基板に対して、アルゴン-酸素混合ガスを含んだ減圧雰囲気中でプラズマ処理を施した。これにより、基板表面のポリイミドで開環反応を生じさせて、この表面に水酸基を付与した。
プライマー剤の溶液を、ノズルプレート基板の上記表面にブレードコート法により塗布した。プライマー剤としては、上記一般式(1)で表され、R1が水酸基であり、R2が水酸基であり、nが10であるものを使用した。
この塗膜は、200℃で15分間に亘って加熱した。このようにして、プライマー剤をポリイミドに結合させるとともに、塗膜を乾燥させた。更に、プライマー剤のアルコキシシリル基を加水分解させ、隣り合ったプライマー剤分子の間で、シラノール基の脱水縮合を生じさせた。これにより、第1プライマー層として、プライマー剤からなる単分子膜を形成した。
この第1プライマー層は、ピンホールを有していた。そこで、第1プライマー層にイソプロパノールを供給し、プライマー剤の反応性官能基を、保護基としてのイソプロポキシ基で置換した。次いで、第1プライマー層の上に、上述のプライマー剤の溶液をブレードコート法により塗布し、上記と同様の処理を行った。第1プライマー層の表面は保護基を有しているので、プライマー剤は、第1プライマー層とは反応せずに、ピンホールの位置で露出した基板表面と反応する。このようにして、ピンホールの位置に、第2プライマー層として、プライマー剤からなる単分子膜を形成した。
次に、第1及び第2プライマー層に対して、アルゴン-酸素混合ガスを含んだ減圧雰囲気中でプラズマ処理を施した。これにより、第1プライマー層から保護基を除去し、それらの表面に水酸基を導入した。これにより、第1及び第2プライマー層からなるプライマー層を形成した。このようにして得られたプライマー層には、ピンホールは存在していなかった。
その後、第1及び第2プライマー層の上に、フッ素化合物の溶液をブレードコート法により塗布した。フッ素化合物としては、上記一般式(2)で表され、R3が水酸基であり、pが1であるものを使用した。
この塗膜は、200℃で15分間に亘って加熱した。このようにして、フッ素化合物の一方の末端基を第1及び第2プライマー層の反応性官能基と反応させた。これにより、撥液層として、フッ素化合物からなる単分子膜を形成した。この撥液層には、ピンホールは存在していなかった。
(比較例)
第2プライマー層を形成しなかったこと以外は、上記実施例と同様の方法によりノズルプレートを製造した。このノズルプレートのプライマー層及び撥液層には、ピンホールが存在していた。
(XPS分析)
実施例において形成したプライマー層、及び比較例において形成したプライマー層について、XPSスペクトルを測定した。図9にその結果を示す。
実施例のプライマー層におけるCF基のエネルギー強度は、理論値と同じであった。比較例のプライマー層におけるCF基のエネルギー強度は、理論値の38%であった。
実施例において形成した撥液層、及び比較例において形成した撥液層について、XPSスペクトルを測定した場合も、CF基のエネルギー強度の関係について同様の結果が得られた。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合、組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
1…インクジェットヘッド、10…インクマニホールド、11…インク供給管、12…インク戻し管、20…アクチュエータ基板、21…インク供給口、22…インク排出口、30…アクチュエータ、31…配線パターン、40…フレーム、50…ノズルプレート、N…ノズル、51…ノズルプレート基板、52…プライマー層、520…ピンホール、521…第1プライマー層、522…第2プライマー層、53…撥液層、60…フレキシブルプリント基板、61…駆動回路、100…インクジェットプリンタ、1011…カセット、1012…カセット、102…給紙ローラ、103…給紙ローラ、104…搬送ローラ対、105…搬送ローラ対、106…レジストローラ対、107…搬送ベルト、108…駆動ローラ、109…従動ローラ、111…負圧チャンバ、112、搬送ローラ対、113…搬送ローラ対、114…搬送ローラ対、1151…インクジェットヘッド、1152…インクジェットヘッド、1153…インクジェットヘッド、1154…インクジェットヘッド、1161…インクカートリッジ、1162…インクカートリッジ、1163…インクカートリッジ、1164…インクカートリッジ、1171…チューブ、1172…チューブ、1173…チューブ、1174…チューブ、118…排紙トレイ、119…ファン、P…記録媒体、110…媒体保持機構、120…ヘッド移動機構、130…ブレード移動機構、140…ワイピングブレード。

Claims (5)

  1. 記録媒体へ向けてインクを吐出するノズルが設けられたノズルプレートを備え、
    前記ノズルプレートは、
    ノズルプレート基板と、
    前記ノズルプレート基板の前記記録媒体と対向する面を被覆したプライマー層と、
    前記プライマー層を被覆し、フッ素化合物を含んだ撥液層と
    を含み、
    前記撥液層は、X線光電子分光法によって測定されるCF基のエネルギー強度が理論値に対して50%以上であるインクジェットヘッド。
  2. 前記プライマー層は、シリコン原子と炭素原子とを含んだプライマー剤の単分子膜である請求項1に記載のインクジェットヘッド。
  3. 前記撥液層は、一方の末端基としてパーフルオロアルキル基を表面側に有し、他方の末端基が前記プライマー層に結合した直鎖状フッ素化合物の単分子膜である請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載のインクジェットヘッドと、
    前記インクジェットヘッドに対向して前記記録媒体を保持する媒体保持機構と
    を備えたインクジェットプリンタ。
  5. 前記ノズルプレートの前記記録媒体と対向する面を擦って、前記ノズルプレートの前記記録媒体と対向する前記面から付着物を除去するワイピングブレードを更に備えた請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
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