JP2022078376A - 液肥成分含有球状物を内部に保持する粒状混合固形肥料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、液肥成分を小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に混入、混練し、球状に成形して得られる液肥成分含有球状物を、被覆造粒法やプリリング造粒法による固形肥料製造の造粒工程で混入する方法で、大規模プラントでの大量生産に適した液肥成分含有混合固形肥料を製造する技術に関する。【解決手段】小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等の天然有機物を主成分とする粉体に、5-アミノレブリン酸、その謗導体又はそれらの塩(以下、「ALA」と総称する。)を肥料成分として含有する液肥を混入、混練し、球体状に成形した液肥成分含有球状物を、乾燥させ、被覆造粒法やプリリング造粒法による粒状固形肥料の造粒工程において投入し、尿素等他の固形肥料材料と混合造粒することによって得られる、ALA液肥成分含有球状物を内部に保持する粒状固形肥料、を提供する。【選択図】図1
Description
本発明は、5-アミノレブリン酸、その誘導体又はそれらの塩(以下、「ALA」と総称する。)など通常、液肥の状態にある肥料の液肥成分を小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に混入して球状物に成形、乾燥し、固形肥料の造粒工程に投入する方法によって、大規模プラントでの大量生産に適した液肥成分含有混合固形肥料を製造する技術に関する。
液肥、中でもアミノ酸肥料は一般に土壌劣化の少ない肥料として注目を浴びているが、さらにその中でもALAは、光合成活性の向上や成長促進などの優れた効果を持つことから、成長促進剤または光合成活性向上剤として利用価値が高く、その用途について、特許文献1記載の技術が既に特許を取得している。
しかし、液肥の散布作業は固形肥料に比べて手間が掛かる一方、液肥成分が施用環境中で急速に放散してしまうために頻繁に散布する必要があるなど、固形肥料に比べて利便性に欠けるところがあった。そこで、液肥であるALAを固形肥料に含有させて施用する方法として、他の固形肥料原料にALAを直接滴下、または噴霧添加、または混合して、あるいは結晶化したALAを他の固形肥料原料に直接混合して提供するための技術が、特許文献2、特許文献3、特許文献4に記載の通り考案され、既に特許を取得している。
特許文献1に記載された技術は、ALAを肥料の用途で利用すること自体についての基本的な特許であるが、ALAをどのような形態で肥料として広く世の中に提供するかについての具体的な方法、特に、通常、液肥の状態にあるALAを、施用が簡単な固形肥料として提供するための技術、に関する記載はない。他方、特許文献2~4に記載の技術は、ALAの保存安定性を高め、固形肥料に含有して提供する方法についての技術であるが、いずれも後述するように大量生産への適合性が十分ではなく、特に、日産数百~数千トンに及ぶ生産能力を有する大型肥料製造プラント等でALAを含有した固形肥料を生産する目的に対してはそれぞれ阻害要因を有し、適用が困難であるという問題があった。
本発明は以下に記載の通り、基本的には液肥成分を固形肥料に混合し、施用時の利便性を向上して提供する技術に関するものであるが、特に、一定の条件下において不安定化あるいは分解してしまうALAの保存安定性の更なる向上、より長期に亘るALAの緩行的除放性の確保などを実現すると共に、特許文献2~4に記載された技術の持つ阻害要因を解消することによって、大型肥料製造プラント等においてもALA含有固形肥料の大量生産を可能ならしめる技術を含むことを特徴とする。
例えば特許文献4請求項には、ALAおよび油脂類を固形肥料中に実質的に均一に含有することを特徴とする固形肥料、およびALAおよび油脂類が実質的に均一になるように混合することを特徴とする当該固形肥料の製造方法、についての記載がある。また特許文献4明細書には、油脂類の添加がALAの安定性の向上に顕著な効果があり、特に油脂成分とALAが固形肥料中に実質的に均一に含有されている場合にALAの高い安定化効果を得られる点、実質的に均一とはALA成分と油脂成分とが均一に分布するように混合されている状態をいう、との混合状態の定義、また、当該発明の固形肥料はALAに油脂類を添加して混合、又は油脂類にALAを添加して混合することにより製造することができる点、油脂類の添加方法としては、常温で、加熱又は冷却して、固体又は半固体のものを適当な大きさにして添加する方法、液体のものを滴下する方法等が挙げられる点、等の記載がある。
特許文献4記載の技術の課題は、ALAの保存安定性を向上した固形肥料を提供する点において本発明の課題と共通性を持つ。しかし本発明が、一般的な技術常識としては固形肥料原料ではない小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に液肥のALAを混入、混練した上で球状物として成形し、水分活性を下げるためにこれを乾燥させ、所望によりそれを被覆して再乾燥し、後に他の固形肥料材料と混合してプリリング造粒法によって造粒し、または他の固形肥料材料を外側に付着させる被覆造粒法によって造粒し、ALAを混合固形肥料の内部に混合される球状物内に保持することによってALAの保存安定性を向上する技術である一方、特許文献4記載の技術はALAと副成分である油脂類とが実質的に均一に含有されるように直接的に混合する方法によってALAの保存安定性を向上するという点で、保存安定性の向上方法に対する技術的発想が根本的に異なる。
また、ALAと他の固形肥料原料の混合方法について、本発明の技術では液肥成分含有球状物と他の固形肥料原料とが均一に含有されることは有り得ず、他の固形肥料原料は液肥成分含有球状物の周囲に付着している状態である。一方、特許文献4記載の技術はALAと副成分である油脂類を実質的に均一になるように混合、成形する必要性が示されている点で、技術的発想が根本的に異なる。例えば、特許文献4記載の技術を応用して大型固形肥料製造プラントでALAを含有した固形肥料を大量生産しようとする場合には、最適設計の下に確立している製造プロセスに対してALAと油脂類とを実質的に均一になるように混合、成形する特殊な設備や工程を多額の費用を掛けて追加する必要が生じ、経済性の面で大きな阻害要因となる。
さらに、通常、大型肥料製造プラントは設備の一定期間毎の定期修理が必須であるが、特許文献4記載の技術に従い製造プロセスの技術前提となる固形肥料原料以外に相当量の油脂成分が混合された場合、設備内面に油脂類を含むスケールとして固着してしまい、定期修理時のスケール除去作業量の増大、修理期間の長期化などの弊害を生じ、やはり経済性の面からは大きな阻害要因となる。
また、特許文献3請求項には、ALA、骨粉およびクエン酸を含有する固形肥料、およびALAを含有する溶液を、骨粉およびクエン酸を含有する固形肥料原料に噴霧添加する工程と成形する工程を含む固形肥料の製造方法、についての記載がある。また特許文献3明細書には、クエン酸を配合することにより成形性を損なうことなくかつALAの長期保存安定性に優れた固形肥料が得られる点、骨粉およびクエン酸を含む肥料原料の混合物にALA溶液を噴霧添加し造粒する固形肥料の製造方法、予め造粒された骨粉およびクエン酸を含む肥料原料の混合物にALA溶液を噴霧添加する製造方法、骨粉およびクエン酸とALA結晶を混合させる固形肥料の製造方法、などについての記載がある。
特許文献3記載の技術の目的は、少ない施用回数で簡便にALAを施用するためにALAを含有した固形肥料を提供しようとする点において本発明の目的と共通性を持つ。しかし、本発明が、一般的な技術常識としては固形肥料原料ではない小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に液肥のALAを混入、混練した上で球状物として成形し、水分活性を下げるためにこれを乾燥させ、所望によりそれを被覆して再乾燥し、後に他の固形肥料材料と混合してプリリング造粒法によって造粒し、または他の固形肥料材料を外側に付着させる被覆造粒法によって造粒し、ALAを混合固形肥料の内部に混合される球状物内に保持することによってALAを簡便に施用可能な混合固形肥料として提供する技術である一方、特許文献3記載の技術はALAを、副成分である骨粉およびクエン酸を含む固形肥料原料に直接的に噴霧添加し表面に付着させ、または直接的に混合することによってALA成分を含有した固形肥料を提供する点で、固形化の方法に対する技術的発想が根本的に異なる。
なお、ALAを含有した固形肥料を既存の大型固形肥料製造プラントを活用して大量生産しようとする場合、通常、大型固形肥料製造プラントはその能力を最大化するために、製造プロセスの技術前提となる固形肥料原料成分を予め特定して最適な設計を為されているために、特許文献3記載の技術に従いクエン酸および骨粉という、製造プラントの技術前提以外の原料成分を相当量添加する場合には、特殊な設備や工程を多額の費用を掛けて追加する必要が生じ、経済性の面で大きな阻害要因となる点、特許文献4記載の技術の場合と同様である。
また、通常、大型肥料製造プラントは設備の一定期間毎の定期修理が必須であるが、特許文献3記載の技術に従い製造プロセスの技術前提となる固形肥料原料以外のクエン酸および骨粉成分が相当量混合された場合、これらが設備内面にスケールとして固着してしまい、定期修理時のスケール除去作業量の増大、修理期間の長期化などの弊害を生じ、経済性の面からの大きな阻害要因となる点、特許文献4記載の技術の場合と同様である。
また、特許文献2請求項には、ALAと、硝酸アンモニウムあるいは硫酸アンモニウムのいずれかまたはリン酸を含む固形肥料原料と、を含有する固形肥料についてと、硝酸アンモニウムあるいは硫酸アンモニウムのいずれかまたはリン酸を含む固形肥料原料にALAを含有する溶液を噴霧添加する工程および乾燥する工程を含む当該固形肥料の製造方法について、の記載がある。また特許文献2明細書には、前記固形肥料原料を転動させながらALA溶液を噴霧添加し付着させる当該固形肥料の製造方法、前記固形肥料原料に予めALA溶液を添加後、混合し造粒する製造方法、造粒された前記固形肥料原料にALA溶液を噴霧添加する製造方法、等の記載がある。また特許文献2明細書には、pH値が上昇した場合に不安定化してしまう特性を持つALAが、硝酸アンモニウムあるいは硫酸アンモニウムのいずれかまたはリン酸などの酸性肥料原料と混合することによって混合後の固形肥料内部で安定的に保存される効果、固形肥料に含まれるALAの効果をより持続的に作用させるために固形肥料をパラフィンワックス等の被覆材で被覆する方法、などが示唆されている。
特許文献2記載の技術の目的は、少ない施用回数で簡便にALAを施用できるようにするため、ALAを含有した固形肥料を提供しようとする点において本発明の目的と共通性を持つ。しかし本発明が、一般的な技術常識としては固形肥料原料ではない小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に液肥のALAを混入、混練した上で球状物として成形し、水分活性を下げるためにこれを乾燥させ、所望によりそれを被覆して再乾燥し、後に他の固形肥料材料と混合してプリリング造粒法によって造粒し、または他の固形肥料材料を外側に付着させる被覆造粒法によって造粒し、ALAを混合固形肥料の内部に混合される球状物内に保持することによってALAを簡便に施用可能な混合固形肥料として提供する技術である一方、特許文献2記載の技術はALAを、副成分である硝酸アンモニウムあるいは硫酸アンモニウムのいずれかまたはリン酸を含む固形肥料原料に直接的に噴霧添加し表面に付着させ、または直接的に混合することによってALA成分を含有した固形肥料を提供する点で、固形化の方法に対する技術的発想が根本的に異なる。
また、ALAと他の固形肥料原料の混合の要否、およびALAと混合する他の固形肥料原料の成分について、本発明の技術が液肥成分含有球状物単体でも固形肥料として施用可能であり、また、必要に応じて当該液肥成分含有球状物を、混合する他の固形肥料原料に対して非浸潤性を持つ被覆材料で被覆すれば他のいかなる固形肥料原料とも混合して成型可能である一方、特許文献2記載の技術はALAと混合する他の固形肥料原料の成分や組成について種々の条件的制約を必要としている点で、混合に対する技術的発想が根本的に異なる。
例えば、特に大型肥料プラントによる固形尿素肥料の大量生産に特許文献2記載の技術を応用しようとする場合には、水素原料からアンモニア、尿素を合成し、造粒する目的で最適化され確立された一連の製造プロセスの途中に硝酸アンモニウムあるいは硫酸アンモニウムのいずれか、またはリン酸を相当量混入させ、乾燥し、場合により被覆する工程を追加的に差し挟む必要が生じる。この場合、大型尿素肥料プラントは一般的に1日あたり数百~数千トンの生産能力を有するため、副材料の混入、攪拌、乾燥、被覆といった追加が必要となる工程も、基本的にはその前後の工程と同等あるいはそれ以上の処理能力で、同じ工場敷地内に併設される必要がある。なぜならば、もし、これらの追加される工程の処理能力がその前後の工程の処理能力を下回る場合、あるいは地理的に離れていた場合には、その部分の処理量の少なさ、あるいは搬送時の仕掛原料の温度変化等が設備全体の生産能力全体のボトルネック、つまり阻害要因となってしまうからである。プラント関連設備の一般的な建設コストの大きさを考えれば、それらのボトルネックを解消するに足る追加的な投資は製造される肥料製品の価格競争力を低下させるため、製品が市場から淘汰されるリスクとなる。故に、この阻害要因を除去することは、主として経済性の面から非常に困難であると考えられる。
一方、本発明の技術をALAと他の固形肥料材料との混合に応用する場合は、液肥成分含有球状物の製造は肥料製造プラントに近接した場所で行なわれる必要はなく、予め他所において大量かつ効率的に製造しておき、大量に保管しておくことができる。すなわち、本発明の技術を応用することによって、大型尿素等肥料プラントの既存の造粒工程おいて、他所で効率的かつ大量に製造された液肥成分含有球状物を適時適切なタイミングで必要量投入することが可能であり、大型肥料プラントの設備生産能力を全く阻害することなく液肥成分含有球状物を混入した混合固形肥料を大量に生産することができる。
また、特許文献2には、肥料としての効果持続性を高めるためにALAの除放性を制御するべく、ALAを添加または混合した固形肥料をパラフィンワックス等の被覆材で被覆する方法が示唆されているが、この点は、液肥成分含有球状物を被覆する本発明の技術と一見類似性を持つように見える。しかし、特許文献2記載の技術がALAを含有した造粒後の固形肥料自体を丸ごと被覆する方法である一方、本発明の技術では、あくまでALAを混入した液肥成分含有球状物のみが被覆対象であり、他の固形肥料原料と混合した場合であってもその固形肥料自体に対する被覆は必要ではない点において、被覆の対象物および方法に対する両者の技術的発想は根本的に異なる。
特許文献2記載の技術に従えば、被覆されている固形肥料は施用された土壌中でより緩やかに分解され、その緩行性を通じてALAの除放性が制御されるということになるが、同時に施用された同じ材質の被覆固形肥料は同一の土壌環境中では概ね同時期に分解されるので、ALAの除放も概ね同時期に開始される。他方、本発明の技術を応用し、分解速度の異なる被覆材料あるいは異なる被覆回数で被覆した液肥成分含有球状物を複数種類組み合わせて他の混合固形肥料原料と混合すれば、同一の土壌環境中でもALAの除放が一斉同時期に起こることが避けられ、より長期間に亘り除放の緩行性を維持することができる。より長期間に亘りALAの除放の緩行性を維持したいという本発明の目的に照らせば、造粒後の固形肥料自体を丸ごと被覆する特許文献2の技術は阻害要因を有している。
また、特許文献2記載の被覆の技術を、尿素を主成分とした固形肥料に対して適用した場合には、さらに2つの、別の阻害要因が生じる。
すなわち、その第一点は、尿素は通常、その即効性を期待されて利用される肥料であるが、特許文献2記載の技術によって固形尿素肥料自体がワックスなどで被覆された場合、尿素成分の除放は被覆の分解・剥離が済むまで行なわれず、尿素肥料の即効性という特長に対する阻害要因となる。
また、その第二点は、尿素が土壌環境で加水分解される過程で一時的に炭酸アンモニウムが生成され、土壌の水分に溶けたアンモニウムイオンの作用により、土壌のpHを一定期間、一時的に高める蓋然性が高いという公知の事実に起因する。すなわち、特許文献2記載の技術に従って固形尿素肥料自体を被覆しても、尿素とALAの除放が同時に行なわれる状況は変わらないので、ALAの除放とほぼ同時期にアンモニウムイオンによる土壌のpH上昇が生じ、ALAを不安定化させる蓋然性が高い、ということである。この点は、特許文献2記載の技術を用いてALAを含有した固形尿素肥料を提供した場合には、利用上の大きな阻害要因となる。
特許文献2記載の技術を固形尿素肥料の製造に適用する場合のこれらの二つの阻害要因に対して、本発明の技術は有効な解決策を提供する。第一点の阻害要因に対する解決策は、本発明の技術では固形尿素肥料自体を被覆する必要がないことから、尿素の即効性を全く阻害しないで済む点である。また、第二の阻害要因に対する解決策は、本発明の技術を応用して液肥成分含有球状物を被覆加工する場合に、ALAが施用環境に除放されるタイミングを炭酸アンモニウムの発生に対して遅行させるという時間的制御が実現可能である点である。これは、固形尿素肥料の施用後、炭酸アンモニウムが発生し分解するまでの一般的な期間、すなわち土壌のpHが上昇する蓋然性が高い期間は概ね施用地域の土壌の性状と季節的な湿度、気温状況によって推定することが可能であり、数種から数十種のパターンとして特定ができるため、その期間中はALAの除放が行なわれないように液肥成分含有球状物の被覆加工の設計条件を予め特定して被覆加工すれば、炭酸アンモニウムによるpH上昇の影響が解消した後にALAが施用環境に除放されるように固形尿素肥料に遅行除放機能を与えることができるということである。大型尿素肥料プラントは人口の多い発展途上国や地域などの消費地、つまり施用対象国あるいは地域に近接して建設されることが多いが、本発明に記載の技術を応用すれば、施用対象国あるいは地域の気候や土壌環境に対して適合性の高い遅行除放機能を持つ、ALA含有固形尿素肥料を製造することが可能となる。
なお、特許文献1明細書には、ALAの効果を失わしめるものでない限り他のどのような肥料等と混合してもALAを土壌処理剤として用いることができる、という点についての示唆があるが、その背景にある課題認識は、本発明と相通ずるものがある。つまり、尿素とALAとは、そのまま混合して施用すれば、尿素が分解する過程で発生し得るアンモニウムイオンが土壌のpHを上昇させ、土壌中のALAを分解してALAの効果を失わしめる蓋然性が高い組合せであり、また、尿素が高温状態、特に肥料製造プラント内部で溶融した状態である場合には、例えその温度がALAの分解温度未満であったとしても、尿素由来の微量のアンモニアの作用でALAが分解されてしまうので、直接的に混合することができない組合せである。すなわち尿素は、ALAと同時に土壌に施用される固形肥料原料としては、あるいは肥料製造プラント内でALAと直接混合される固形肥料原料としては、まさに特許文献1が阻害要因として示唆するところの、ALAの効果を失わしめるもの、に該当し、ALAと尿素を組み合わせて提供すること自体が、ALAの有効利用への阻害要因となっていた。
その点、本発明に基づき、液肥成分含有球状物内にALAを混入、乾燥させた後に遅行除放性を持つ被覆剤で被覆し、それを尿素と混合するという、肥料業者や穀物粉取扱業者等が通常想到し得ない新規性のある方法を用いれば、製造時にも使用時においてもALAの有効性を損なわず、簡便に施用可能なALA含有混合固形尿素肥料を実現することができる。なお、当然ではあるが、このような本発明の技術的特徴については、特許文献1~5には何らの記載も示唆もない。
なお、ちなみに、特許文献5に記載の技術は、ALAを利用し、植物の葉や茎に直接付着させる茎葉処理剤の効果を向上するための技術であるので、施用環境へ散布する固形肥料を企図した本発明の技術とは、その目的が全く異なるものである。また、特許文献6は本願申請の出願人による特許査定済み特許の出願番号であるが、特許公報による公開が未了であり、公知の技術ではない。
ALA等の液肥成分を固形肥料として簡便に利用可能とするという目的に対し、本発明の技術は、一般的な技術常識としては固形肥料原料ではない小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に液肥のALAを混入、混練した上で球状物として成形し、水分活性を下げるためにこれを乾燥させ、所望によりそれを被覆して再乾燥し、後に他の固形肥料材料と混合してプリリング造粒法によって造粒し、または他の固形肥料材料を外側に付着させる被覆造粒法によって造粒し、ALAを混合固形肥料の内部に混合される球状物内に保持するという、通常の技術常識の組み合わせでは想到が困難である考案を含んでおり、また、それらの考案によって、より長期に亘る液肥成分の緩行的除放性、技術的には阻害関係にあったALAと高温尿素との混合、ALAの遅行除放性の確保による施用環境中でのALAの分解防止など、これまでの技術常識には含まれない進歩的な効果を実現する。これらの考案とそれによる効果は、当業者が特許文献1~5記載の技術に通常の技術常識を加味したとしても、容易に想到することはできない。なお、特許文献1~4の技術と特許文献2、3、4の技術との関係性は、ALAの保存安定性を高め、簡便に施用可能な固形肥料として提供しようとする目的において、特許文献1の技術と本発明の技術との関係性と類似性を持つが、本発明の技術が現時点の技術常識に対して持つ進歩性は、既に特許を得ている特許文献2、3、4の技術が、それらが出願された当時の技術常識に対して有していたであろう進歩性と比べて、決して劣後するものではない。
本発明の第一形態は、小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に、ALAを肥料成分として含有する液肥を混入、混練し、球体状に成形した液肥成分含有球状物を、摂氏150度未満の温度環境下で乾燥させ、所望によりpH7.0以下にpH調整されたポリ乳酸などの生分解性樹脂溶液など被覆材により被覆して摂氏150度未満の温度環境下で再度乾燥させた上で、摂氏150度未満の接触温度環境下に保たれた被覆造粒法による粒状固形肥料の造粒工程において原料粒子核として投入し、尿素等他の固形肥料材料をその周囲に付着させて被覆造粒することによって得られる、ALA液肥成分含有球状物を原料粒子核として内部に保持する粒状固形肥料、の製造方法である。
本発明の第二形態は、小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に、ALAを肥料成分として含有する液肥を混入、混練し、2.0mm以下の直径の球体状に成形した液肥成分含有球状物を、摂氏150度未満の温度環境下で乾燥させ、所望によりpH7.0以下にpH調整されたポリ乳酸などの生分解性樹脂溶液など被覆材により被覆して摂氏150度未満の温度環境下で再度乾燥させた上で、摂氏150度未満の接触温度環境下に保たれた溶融尿素に混入し、プリリング造粒法によって造粒することによって得られる、ALA液肥成分含有球状物を混合物として内部に保持する粒状固形肥料、の製造方法である。
本発明において、小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体を液肥であるALAを混入する先の液肥成分含有球状物の材料とする理由は、これらの粉体が一般的に入手し易く、また、施用時に環境を汚染することがないからである。なお、液肥成分含有球状物はその強度を増すなどの目的のために糊料等増粘機能を持つ添加物を加えたり、蒸気で蒸すなどの熱処理加工を加える場合もあり得る。
また、本発明において乾燥する場合の接触温度環境を摂氏150度未満とするのは、ALA成分の分解温度が摂氏151度であるからである。同様に、他の固形肥料原料との混合を行なう被覆造粒工程における製造装置内の接触温度環境についても、ALA成分の分解を避けるために、摂氏150度未満に保たれている必要がある。なお、尿素との混合の場合、常圧における尿素の融点温度は摂氏133度であり、肥料プラント等製造装置内の位置によっては溶融尿素の温度が摂氏150度を超えることも想定し得るが、固形肥料原料と液肥成分含有球状物を混合する工程以降における固形肥料原料の温度、および固形肥料原料が接触する製造設備の接触温度環境が、ALAの分解温度以下の摂氏150度未満に保たれているようであれば、実用上の問題はない。
また、本発明において液状被覆材のpHを7.0以下に調整するのは、ALAはpH7.0以上のアルカリ性の環境に置かれた場合には不安定化する特性を持つので、液状被覆材のpHが7.0を越えアルカリ性に傾くと、ALAが被覆加工の過程で分解してしまう可能性がある、という理由による。
また、本発明においてALA等液肥成分を混入した液肥成分含有球状物を被覆加工しない状態で一度乾燥させる理由は、一義的には液肥成分含有球状物内の水分活性を、一般に細菌やカビ等の繁殖を長期間に亘り防止できる0.7~0.5程度以下に下げるためである。これにより、液肥成分含有球状物、およびその中に混入された液肥成分の保存性は飛躍的に向上する。加えて、液肥成分含有球状物の被覆を均一に行うためには、また、液肥成分含有球状物を固形肥料原料に適切に混合するためには、この段階で液肥成分含有球状物を一度乾燥させ、一粒ひと粒を独立した状態に解しておく方がより望ましい。なお、液肥成分含有球状物を他の固形肥料原料を周囲に付着させる被覆造粒法の原料粒子核として用いる場合、その大きさは直径1mmから5mmのサイズが好適と考えられるが、最終製品となる混合固形肥料のサイズによっては、他の大きさでも構わない。また、液肥成分含有球状物を液状の他の固形肥料原料に予め混入しプリリング造粒法による混合固形肥料の製造に用いる場合、一般的にはプリリング造粒法による固形肥料の粒径の上限が2.5mm程度とされ、液体固形肥料原料の噴出ノズルの口径もその80%程度となる2.0mm程度の大きさを上回ることはないと考えられるため、液肥成分含有球状物の大きさは直径2.0mm以下のサイズが好適と考えられる。
また、本発明において液肥成分含有球状物を被覆し再乾燥させるのは、尿素肥料原料と混合する場合を考えると、高温状態の尿素が液肥成分含有球状物に浸潤し、ALA成分と接触することを避ける目的もある。なぜならば、尿素肥料は中性肥料に分類されるものの、高温の尿素、特に製造設備中の溶融状態にある尿素のpHは7.0から8.0であり若干アルカリ性に傾いているので、尿素との接触によりALAが不安定化し分解してしまう恐れが高いからである。また、尿素は加熱すると微量ではあるがアンモニアを生じるので、これが液肥成分含有球状物内に浸潤するとALAと反応し、ALAを分解してしまうという問題もある。また、尿素が高温環境下で触媒として機能し、ALA等カルボニル基を持つ物質の化学反応を促進してしまう恐れもある。これらの問題点を考慮すれば、液肥成分含有球状物を被覆してALA成分を尿素ならびに尿素由来のアンモニアの浸潤、接触から保護することは、製造工程中のALAの保存性を高めることに大いに資する。なお、液肥成分含有球状物表面や被覆材表面の性状によっては被覆法造粒工程において他の固形肥料原料液の付着度が良好ではない可能性もあるが、その場合には液肥成分含有球状物表面と固形肥料原料液間の液架橋の形成を促すため、液肥成分含有球状物表面に、予め付着させたい当該固形肥料原料液成分を滴下、噴霧添加等の手段により薄く付着させた後に被覆法造粒工程における原料粒子核として投入する方法によって、問題を解決する。
なお、本発明に用いる液肥成分を含有した液肥成分含有球状物は、施用後に地表部に露出した際、鳥など動物による食害を受ける可能性があるが、その被害を軽減するために、視認性の低い色に着色したり、カプサイシンなど刺激性の調味成分、その他の調香成分などで着味、着香したり、動物による食害を防止するための忌避剤等を付着させてもよい。これらの着色、着味、着味その他の加工は、液肥成分含有球状物を製造する過程で予め混入する方法でもよいし、被覆材にそれらの成分を混ぜておき、表面に付着させる方法でも良い。
なお、本発明において、ALA成分と同時に施用環境に除放されることによって肥料の効果を向上する鉄分などの微量成分を、または土壌の酸性あるいはアルカリ成分を中和するための中和剤成分を、液肥成分含有球状物の製造時に直接加えたり、混入する液肥に予め添加したりすることも可能である。
なお、本発明で用いる液肥成分含有球状物は、施用対象国または地域や肥料製造設備からの距離という地理的制約を受けず、最適な場所で、最適な生産設備を用いて最も経済効率的に、また安定した品質で製造することが可能である。この特徴によって、本発明技術を応用した肥料の製造は、経済合理性を持って安定的に維持継続することができる。
本発明の技術を用いることにより、ALA等通常液肥として提供される肥料を、施用作業の簡便な固形肥料として、あるいは他の固形肥料原料と混合した固形肥料として、保存性に優れ、かつ安定した品質で経済的に製造、提供することができ、肥料生産者、農業生産者双方にとって利便性が高い。
本発明の技術を用いることにより、pHや温度によって不安定化、あるいは分解し易いALAの、より長期に亘る保存安定性と緩行的除放性を実現しつつ、ALAを混合した固形尿素肥料を既知の製造技術を用いて大量に製造できるため、肥料生産者、農業生産者双方にとって利便性が高い。
本発明の技術は、ALA等通常液肥として提供される肥料の液肥成分を含有した固形肥料の製造に応用する場合でも、液肥成分含有球状物をフィードストックのひとつとして加えるだけで済み、既設の大型肥料製造プラント等の生産設備に対して高額な投資を伴う追加設備を併設する必要がなく、肥料生産者にとって利便性が高い。
本発明に用いる液肥成分含有球状物の基材となる粉体の原材料には、低品質や消費期限を過ぎてしまった米や麦の粉体等、食用に適さない材料を活用することができ、社会経済的に利便性が高い。
101 被覆造粒法によって付着した液肥成分含有球状物以外の固形肥料原料
102 液肥成分含有球状物
103 被覆処理による被膜
201 プリリング造粒法において混合された液肥成分含有球状物以外の固形肥料原料
202 液肥成分含有球状物
203 被覆処理による被膜
102 液肥成分含有球状物
103 被覆処理による被膜
201 プリリング造粒法において混合された液肥成分含有球状物以外の固形肥料原料
202 液肥成分含有球状物
203 被覆処理による被膜
Claims (2)
- 小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に、5-アミノレブリン酸、その謗導体又はそれらの塩(以下、「ALA」と総称する。)を肥料成分として含有する液肥を混入、混練し、球体状に成形した液肥成分含有球状物を、摂氏150度未満の温度環境下で乾燥させ、所望によりpH7.0以下にpH調整されたポリ乳酸などの生分解性樹脂溶液など被覆材により被覆して摂氏150度未満の温度環境下で再度乾燥させた上で、摂氏150度未満の接触温度環境下に保たれた被覆造粒法による粒状固形肥料の造粒工程において原料粒子核として投入し、尿素等他の固形肥料材料をその周囲に付着させて被覆造粒することによって得られる、ALA液肥成分含有球状物を原料粒子核として内部に保持する粒状固形肥料、の製造方法。
- 小麦粉、米粉、馬鈴薯粉等、水分凝集性を持つ天然有機物の粉体に、ALAを肥料成分として含有する液肥を混入、混練し、2.0mm以下の直径の球体状に成形した液肥成分含有球状物を、摂氏150度未満の温度環境下で乾燥させ、所望によりpH7.0以下にpH調整されたポリ乳酸などの生分解性樹脂溶液など被覆材により被覆して摂氏150度未満の温度環境下で再度乾燥させた上で、摂氏150度未満の接触温度環境下に保たれた溶融尿素に混入し、プリリング造粒法によって造粒することによって得られる、ALA液肥成分含有球状物を混合物として内部に保持する粒状固形肥料、の製造方法。
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