JP2022077676A - 対象物質が封入された膜小胞の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】対象物質が封入された膜小胞の新規な製造方法の提供。【解決手段】グラム陰性細菌において破裂性溶菌を誘導することにより膜小胞を産生させる工程を含んでなる、対象物質が封入された膜小胞の製造方法が提供される。破裂性溶菌はグラム陰性細菌における細胞壁分解酵素の発現により誘導させることができ、細胞壁分解酵素の発現亢進はDNA損傷ストレス負荷により誘導させることができる。本発明の製造方法は、破裂性溶菌の誘導前にグラム陰性細菌を培養する工程を含んでいてもよい。【選択図】図1
Description
本発明は、対象物質が封入された膜小胞の製造方法に関する。
膜小胞(本明細書中「メンブレンベシクル(membrane vesicle)」あるいはMVということがある)は、その免疫誘導性やがん細胞に蓄積する性質から、ワクチン開発やドラッグデリバリーの基盤技術として注目されている。
例えば、ワクチン開発においては、細菌から膜小胞を調製し、それを免疫原性組成物として利用する技術が開発されている(特許文献1および2)。しかしながら、その目的からこの技術では細菌から膜小胞を調製することにとどまっており、対象物質を膜小胞に封入させるまでには至っていなかった。またドラッグデリバリー技術の開発においては、その標的指向性から細胞間コミュニケーションを司るエクソソームが近年注目され、医薬品への適用が検討されている(特許文献3)。しかしながら、エクソソームへの対象物質の封入はエレクトロポレーション、凍結融解、超音波処理、鹸化等によるものであり、医薬品としての量産や品質管理にはおのずと限界があった。
本発明は、対象物質が封入された膜小胞の新規な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、破裂性溶菌により膜小胞が産生される現象に着目して鋭意研究を進めていたところ、グラム陰性細菌において破裂性溶菌を誘導することにより対象物質が封入された膜小胞を産生できることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]対象物質が封入された膜小胞の製造方法であって、(A)グラム陰性細菌において破裂性溶菌を誘導することにより膜小胞を産生させる工程を含む、製造方法。
[2]グラム陰性細菌の外部および内部のいずれかまたは両方に対象物質を存在させた状態で破裂性溶菌を誘導する、上記[1]に記載の製造方法。
[3]破裂性溶菌を、グラム陰性細菌における細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現により誘導する、上記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]グラム陰性細菌が細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現を誘導する遺伝子改変を有する、上記[3]に記載の製造方法。
[5]細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現をDNA損傷ストレス負荷により誘導する、上記[3]に記載の製造方法。
[6]DNA損傷ストレス負荷がマイトマイシン、フルオロキノロン系抗生剤、活性酸素および/または一酸化窒素により誘導される、上記[5]に記載の製造方法。
[7]細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現の程度を調整することにより、膜小胞の産生量を調整する、上記[3]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]細胞壁分解酵素がエンドリシンである、上記[3]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]グラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素がホリンである、上記[3]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]破裂性溶菌の誘導前に、(X)グラム陰性細菌を培養する工程を含む、上記[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]対象物質を含有する培地中でグラム陰性細菌を培養する、上記[10]に記載の製造方法。
[12]対象物質をグラム陰性細菌により産生させる、上記[10]に記載の製造方法。
[13](Y)産生された膜小胞を培地から分離する工程を含む、上記[10]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14]前記分離工程において磁力を使用する、上記[13]に記載の製造方法。
[15](X)グラム陰性細菌の培養工程、(A)破裂性溶菌による膜小胞産生工程および(Y)膜小胞の分離工程を1回以上繰り返す、上記[1]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]培地がマグネシウム塩を培地中の濃度として1~30mM質量%で含有する、上記[10]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]培養の振とう条件が180~250rpmである、上記[10]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]培地のpHが4~10である、上記[10]~[17]のいずれかに記載の製造方法。
[19]培地の粘度が1~15Pa・sである、上記[10]~[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20]対象物質が封入された膜小胞であって、膜小胞の構成成分が培養したグラム陰性細菌に由来する、膜小胞。
[21]上記[1]~[19]のいずれかに記載の製造方法により製造された、対象物質が封入された膜小胞。
[22]グラム陰性細菌由来の膜小胞に対象物質を封入する方法であって、前記グラム陰性細菌において対象物質の存在下で破裂性溶菌を誘導する工程を含んでなる、方法。
[1]対象物質が封入された膜小胞の製造方法であって、(A)グラム陰性細菌において破裂性溶菌を誘導することにより膜小胞を産生させる工程を含む、製造方法。
[2]グラム陰性細菌の外部および内部のいずれかまたは両方に対象物質を存在させた状態で破裂性溶菌を誘導する、上記[1]に記載の製造方法。
[3]破裂性溶菌を、グラム陰性細菌における細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現により誘導する、上記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]グラム陰性細菌が細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現を誘導する遺伝子改変を有する、上記[3]に記載の製造方法。
[5]細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現をDNA損傷ストレス負荷により誘導する、上記[3]に記載の製造方法。
[6]DNA損傷ストレス負荷がマイトマイシン、フルオロキノロン系抗生剤、活性酸素および/または一酸化窒素により誘導される、上記[5]に記載の製造方法。
[7]細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現の程度を調整することにより、膜小胞の産生量を調整する、上記[3]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]細胞壁分解酵素がエンドリシンである、上記[3]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]グラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素がホリンである、上記[3]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]破裂性溶菌の誘導前に、(X)グラム陰性細菌を培養する工程を含む、上記[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]対象物質を含有する培地中でグラム陰性細菌を培養する、上記[10]に記載の製造方法。
[12]対象物質をグラム陰性細菌により産生させる、上記[10]に記載の製造方法。
[13](Y)産生された膜小胞を培地から分離する工程を含む、上記[10]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14]前記分離工程において磁力を使用する、上記[13]に記載の製造方法。
[15](X)グラム陰性細菌の培養工程、(A)破裂性溶菌による膜小胞産生工程および(Y)膜小胞の分離工程を1回以上繰り返す、上記[1]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]培地がマグネシウム塩を培地中の濃度として1~30mM質量%で含有する、上記[10]~[15]のいずれかに記載の製造方法。
[17]培養の振とう条件が180~250rpmである、上記[10]~[16]のいずれかに記載の製造方法。
[18]培地のpHが4~10である、上記[10]~[17]のいずれかに記載の製造方法。
[19]培地の粘度が1~15Pa・sである、上記[10]~[18]のいずれかに記載の製造方法。
[20]対象物質が封入された膜小胞であって、膜小胞の構成成分が培養したグラム陰性細菌に由来する、膜小胞。
[21]上記[1]~[19]のいずれかに記載の製造方法により製造された、対象物質が封入された膜小胞。
[22]グラム陰性細菌由来の膜小胞に対象物質を封入する方法であって、前記グラム陰性細菌において対象物質の存在下で破裂性溶菌を誘導する工程を含んでなる、方法。
本発明の製造方法は、対象物質が封入された膜小胞を容易かつ効率的に製造できる点で有利である。本発明の製造方法はまた、膜小胞へ対象物質を封入するための別の工程を経ることなく、膜小胞の産生と同時に対象物質を膜小胞に封入できる点で有利であり、膜小胞への封入時に対象物質の失活や破砕を回避できる点でも有利である。本発明の製造方法はさらに、膜小胞の産生量を外部刺激により制御することが可能であり、また、培養系をスケールアップすることや連続生産することで大量生産が可能である点でも有利である。
本発明は、対象物質が封入された膜小胞の製造方法である。本発明の製造方法は、(A)グラム陰性細菌において破裂性溶菌を誘導することにより膜小胞を産生させる工程(破裂性溶菌による膜小胞産生工程)を含んでなるものである。ここで、「破裂性溶菌(explosive cell lysis(ECL))」とは、グラム陰性細菌の集団中の全部または一部の細菌が該細菌内における細胞壁分解酵素の作用を介して破裂し、死滅する現象をいう。
破裂性溶菌は、細胞壁(ペプチドグリカン層)分解酵素により誘導することができ、例えば、細胞壁分解酵素を細菌内で発現させることにより誘導することができる。細胞壁分解酵素としては、バクテリオファージ由来のエンドリシン、細菌由来のオートリシン、バクテリオシン等の他の細菌由来のペプチドグリカン溶解酵素、病原性因子や他の抗菌ポリペプチド由来のもの(例えば、リゾスタフィン、ALE-1リシン、ムタノリシン、エンテロリシン)、リゾチーム等が挙げられるが、好ましくはエンドリシンである。
グラム陰性細菌内における細胞壁分解酵素の発現は、細胞壁分解酵素の遺伝子発現をもたらす遺伝子改変により誘導することができる。遺伝子改変は遺伝子組換技術等の公知の分子生物学的手法に従って行うことができ、例えば、Turnbull L, et al., Nat Commun. 2016 Apr 14;7:11220.に記載されるように、細胞壁分解酵素をコードしたプラスミドや発現ベクターをグラム陰性細菌に組み込むことで発現させることができる。細胞壁分解酵素の発現は、誘導性プロモーター等の制御配列により調節することができ、前記プラスミドや発現ベクターではこのような制御配列を細胞壁分解酵素をコードする塩基配列の近傍に配置することができる。
細胞壁分解酵素の発現はまた、DNA損傷ストレス負荷により誘導することもできる。DNA損傷ストレス負荷は、DNA複製阻害剤(例えば、マイトマイシン)、フルオロキノロン系抗生剤(例えば、シプロフロキサシン)、活性酸素、一酸化窒素等を培地に添加することにより細菌に与えることができる。これらの物質の添加量は適宜調整することができるが、例えば、培地中の濃度で0.001~0.1質量%とすることができる。
破裂性溶菌は、細胞壁分解酵素に加えてグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素を使用することにより、より効果的に誘導することができる。すなわち、グラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素を細菌内膜に接触させることで細胞内膜に孔を開け、細胞壁分解酵素と細胞壁の接触を促進し、より効果的に破裂性溶菌を誘導することができる。グラム陰性細菌の内膜を穿孔するタンパク質としては、例えば、ファージ由来のホリンが挙げられ、細胞壁分解酵素との組合せとしては、ホリン-エンドリシンが好ましい。グラム陰性細菌の内膜を穿孔するタンパク質の発現は、上記細胞壁分解酵素の発現と同様に遺伝子組換技術等の分子生物学的手法により行うことができる。
本発明において破裂性溶菌の対象となる細菌はグラム陰性細菌であり、例えば、緑膿菌(Pseudomonas
aeruginosa)、大腸菌(Escherichia
coli)、酢酸菌(Acetobacter
aceti、Acetobacter
pasteurianus、Acetobacter
liguefaciens、Acetobacter
xylinum、Acetobacter
polyoxygenes、Acetobacter
methanolicus、Gluconobacter
oxydans、Gluconobacter
cerinus、Gluconobacter
hansenii、Frateuria
aurantia)等が挙げられる。グラム陰性細菌は菌体内部から、細胞内膜、ペプチドグルカン層(細胞壁)、細胞外膜の順に構成されており、破裂性溶菌により細胞外膜からなる膜小胞(OMV;Outer Membrane Vesicle)あるいは細胞外膜および細胞内膜からなる膜小胞(OIMV;Outer Inner Membrane Vesicle)が形成されると考えられる。また、上記細菌には食品やプロバイオティクス製剤として利用されているものもあり(例えば、大腸菌のNissle 1917株)、本発明の膜小胞は、安全性の観点からこのような細菌に由来する膜小胞を使用することができる。
本発明の製造方法は、破裂性溶菌の誘導前に、(X)グラム陰性細菌を培地で培養する工程(グラム陰性細菌の培養工程)をさらに含むことができる。グラム陰性細菌の培養は、通常の培養条件において実施することができるが、膜小胞の産生量との関係では後記の条件下において培養することが好ましい。
本発明の製造方法では、グラム陰性細菌の外部および内部のいずれかまたは両方に対象物質を存在させた状態で破裂性溶菌を誘導し、膜小胞の形成と同時に膜小胞に対象物質を内包させることができる。グラム陰性細菌の外部に対象物質を存在させる場合には、細菌は対象物質を含有する培地中で培養することができる。前記対象物質の培地中の含有量は、適宜、調整することができ、例えば、培地中の濃度で0.001~10質量%(好ましくは0.01~5質量%)とすることができる。
グラム陰性細菌の内部に対象物質を存在させる場合には、対象物質は破裂性溶菌させるグラム陰性細菌自体に産生させ、菌体内に蓄積させることもできる。前記対象物質は、遺伝子組換技術等の分子生物学的手法により対象物質の遺伝子を細菌に組み込んで産生させてもよい。対象物質を分子生物学的手法によりグラム陰性細菌自体に産生させることは、公知の方法により行うことができる。
膜小胞に封入する対象物質は、膜小胞に封入される大きさ(例えば、直径が10~600nm、20~500nmまたは30~400nm)の物質であれば特に限定されない。前記対象物質としては、医薬品の有効成分となる低分子化合物、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、核酸等が挙げられる。医薬品には生物製剤も含まれ、生物製剤の有効成分を対象物質とすることができる。生物製剤の有効成分としては、抗体、抗原、インターフェロン、インターロイキン、ワクチン、ホルモン、血液凝固に関連する酵素、血栓溶解成分、免疫調節因子等が挙げられる。医薬品には遺伝子治療製剤も含まれ、遺伝子治療製剤の有効成分を対象物質とすることができる。遺伝子治療製剤の有効成分としては、一本鎖または二本鎖DNA、iRNA、mRNA、siRNA、miRNA、アンチセンスRNA等が挙げられる。
本発明の製造方法では、細胞壁分解酵素の発現の程度と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素の発現の程度とを調整することにより、膜小胞の産生量を調整することができる。例えば、前記酵素の発現量を増加させると膜小胞の産生量を増加させることができ、前記酵素の発現量を減少させると膜小胞の産生量を減少させることができる。
本発明の製造方法は、(Y)産生された膜小胞を培地から分離する工程(膜小胞の分離工程)をさらに含むことができる。前記分離は、公知の方法により行うことができるが、例えば、菌体を含む培地から遠心機により菌体を取り除き、必要に応じて上清をろ過、精製等の処理を行い分離、回収することができる。上清をさらに超遠心や密度勾配遠心により精製することもできる。また、前記分離は、破裂性溶菌の際に膜小胞に対象物質と鉄を合わせて封入し、磁力を用いて膜小胞を培地から分離、回収することもできる。磁力を利用した分離は、膜小胞の分離や回収が容易となる点で有利である。これらの膜小胞の分離および回収方法は、膜小胞の使用目的に応じて適宜組み合わせて行うことができる。
本発明の製造方法では、(X)グラム陰性細菌の培養工程、(A)破裂性溶菌による膜小胞産生工程および(Y)膜小胞の分離工程を1サイクルとし、このサイクルを1回以上繰り返して実施することにより膜小胞を連続して調製することができる。すなわち、破裂性溶菌の条件や培養条件を一旦設定すれば、その条件の下で工程(X)、(A)および(Y)を繰り返すことで所望の膜小胞を大量に調製することができる。繰り返し回数に制限はないが、上限を例えば50回、40回、30回、20回または10回とすることができる。
本発明の製造方法では、グラム陰性細菌培養の培地中にMg2+(例えば、MgSO4、MgCl2等のマグネシウム塩)を添加することができる。Mg2+の添加量は、例えば、マグネシウム塩として培地に対して1~30mM(好ましくは5~20mM)とすることができる。Mg2+の添加によりグラム陰性細菌の細胞膜を安定化させられると考えられ、膜小胞の産生量を増加させることができる点で有利である。
本発明の製造方法では、グラム陰性細菌培養における振とう条件は100rpm超であることが好ましく、180~250rpmであればより好ましい。振とう条件は、培地への酸素供給量との関係で適宜調整することができるが、振とう数を高めることで膜小胞産生量が増加する点で有利である。
本発明の製造方法では、グラム陰性細菌培養における培地のpHは、例えば、pH4~10(好ましくは5~9)の範囲で調整することができるが、膜小胞の産生量を増やす観点では、pHが大きい(アルカリ寄り)ことが好ましく、例えばpH8~10(好ましくはpH8~9)である。一方で、膜小胞への対象物質の封入量を増やす観点では、pHが小さい(酸性寄り)ことが好ましく、例えばpH4~6(好ましくはpH5~6)である。本発明の製造方法ではその用途に応じて培養培地のpHを適宜設定することができる。
本発明の製造方法では、グラム陰性細菌細胞培養の培地の粘性は、膜小胞への対象物質の封入量を増やす観点では、粘性が高い方が好ましく、培養培地の粘度は、例えば、1~15Pa・s(好ましくは2~11Pa・s)とすることができる。培地の粘性を高めるには、増粘剤として、例えば、培地中にフィコール(ficoll)、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等を添加することができる。これらの増粘剤の培地における含有量は、培地中の濃度として、フィコールの場合は5~20質量%、カルボキシメチルセルロースの場合は1~3.5質量%、カルボキシビニルポリマーの場合は0.05~0.3質量%とすることができる。これらの増粘剤は、単独または任意の組合せで添加することができる。
本発明の別の側面によれば、本発明では、膜小胞の構成成分がグラム陰性細菌に由来する、対象物質が封入された膜小胞が提供される。本発明の膜小胞は、粒子径が10~600nm、20~500nmまたは30~400nmであり、外膜-内膜小胞(OIMV)または外膜小胞(OMV)のいずれかの形態で構成される。本発明の膜小胞は、本発明の製造方法の記載に従って製造することができる。本発明の膜小胞に封入される対象物質には、本発明の製造方法に記載したものと同様のものが挙げられる。
本発明の別の側面によればまた、本発明では、本発明の膜小胞を含んでなる組成物が提供される。本発明の組成物は、膜小胞に封入される物質の性質に応じて、医薬品(例えば、医薬組成物)、食品(例えば、食品組成物)、化粧品(例えば、化粧組成物)等の形態で提供することができる。本発明の組成物は、本発明の膜小胞を含有させることで製造することができる。本発明の組成物に含有する膜小胞に封入される対象物質には、本発明の製造方法に記載したものと同様のものが挙げられる。
本発明の別の側面によればさらに、本発明では、グラム陰性細菌由来の膜小胞に対象物質を封入する方法が提供される。本発明の対象物質を封入する方法は、グラム陰性細菌において対象物質の存在下で破裂性溶菌を誘導する工程を含んでなる。本発明の対象物質を封入する方法は、本発明の製造方法の記載に従って実施することができる。本発明の膜小胞に封入する対象物質には、本発明の製造方法に記載したものと同様のものが挙げられる。
以下の例に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
例1:破裂性溶菌による膜小胞産生と、膜小胞への対象物質の封入
例1では、対象物質存在下でグラム陰性細菌に破裂性溶菌を誘導し、膜小胞へ対象物質が封入されることを示した。
例1では、対象物質存在下でグラム陰性細菌に破裂性溶菌を誘導し、膜小胞へ対象物質が封入されることを示した。
(1)方法
ア 菌体
菌体は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、菌株:PAO1 ΔprtN)にホリン-エンドリシン(Holin-endolysin)の発現が制御可能なプラスミド(pJN105 hol_lys、addgeneから入手)を導入した菌体を使用した。緑膿菌株PAO1 ΔprtNは、PAO1(理化学研究所バイオリソース研究センターから入手可能(BRC No: JCM 14847))をEnviron Microbiol. 2014 Sep;16(9):2927-38.に記載の方法に従ってprtNを破壊して作製した。
ア 菌体
菌体は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、菌株:PAO1 ΔprtN)にホリン-エンドリシン(Holin-endolysin)の発現が制御可能なプラスミド(pJN105 hol_lys、addgeneから入手)を導入した菌体を使用した。緑膿菌株PAO1 ΔprtNは、PAO1(理化学研究所バイオリソース研究センターから入手可能(BRC No: JCM 14847))をEnviron Microbiol. 2014 Sep;16(9):2927-38.に記載の方法に従ってprtNを破壊して作製した。
イ 細菌培養と破裂性溶菌の誘導
LB液体培地4mlを用い、プラスミドが脱落しないようにゲンタマイシン(ナカライテスク)を50μg/mlで添加した。OD600=0.01となるように植菌し、37℃、12時間、200rpmで培養した。培養4時間後にアラビノース(富士フイルム和光純薬)を終濃度0.1%になるように添加することによりホリン-エンドリシンを発現させて、破裂性溶菌を誘導し、膜小胞を産生させた。アラビノースを添加する直前に対象物質としてカルセイン(ナカライテスク)1mMを培地に添加した。
LB液体培地4mlを用い、プラスミドが脱落しないようにゲンタマイシン(ナカライテスク)を50μg/mlで添加した。OD600=0.01となるように植菌し、37℃、12時間、200rpmで培養した。培養4時間後にアラビノース(富士フイルム和光純薬)を終濃度0.1%になるように添加することによりホリン-エンドリシンを発現させて、破裂性溶菌を誘導し、膜小胞を産生させた。アラビノースを添加する直前に対象物質としてカルセイン(ナカライテスク)1mMを培地に添加した。
ウ 膜小胞の分離・精製・回収
培養液を遠心し(4℃、30分、7,000×g)、菌体をペレットダウンした。遠心後の上清を0.45μm孔径フィルターでろ過して菌体を除去した後、サンプルを超遠心した(4℃、1時間、150,000×g)。超遠心により生じたペレットをPBSで懸濁した。その後、得られた膜小胞を超遠心し、再懸濁することで、洗浄し、本洗浄操作を2回繰り返した。続いて、超遠心によって生じた膜小胞ペレットを45%イオジキサノール(AXIS-SHEILD)に懸濁し、その上に40、35、30、25、20、15、10%イオジキサノールを重層し、密度勾配遠心を行った(4℃、3時間、100,000×g、全量3ml)。この密度勾配遠心によって膜小胞を精製し、回収した。
培養液を遠心し(4℃、30分、7,000×g)、菌体をペレットダウンした。遠心後の上清を0.45μm孔径フィルターでろ過して菌体を除去した後、サンプルを超遠心した(4℃、1時間、150,000×g)。超遠心により生じたペレットをPBSで懸濁した。その後、得られた膜小胞を超遠心し、再懸濁することで、洗浄し、本洗浄操作を2回繰り返した。続いて、超遠心によって生じた膜小胞ペレットを45%イオジキサノール(AXIS-SHEILD)に懸濁し、その上に40、35、30、25、20、15、10%イオジキサノールを重層し、密度勾配遠心を行った(4℃、3時間、100,000×g、全量3ml)。この密度勾配遠心によって膜小胞を精製し、回収した。
エ 膜小胞の定量
回収した膜小胞は、膜脂質染色剤としてFM4-64(Invitrogen)を使用し、その蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Varioscan flash fluorometer、Thermo Scientific)により測定することで定量した。細胞あたりの膜小胞産生量は、RFU(Relative Fluorescence Unit)(FM1-43蛍光強度/OD600)として求めた。また、封入された物質の存在の確認は、カルセインの蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Varioscan flash fluorometer、Thermo Scientific)により測定することで定量した。
回収した膜小胞は、膜脂質染色剤としてFM4-64(Invitrogen)を使用し、その蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Varioscan flash fluorometer、Thermo Scientific)により測定することで定量した。細胞あたりの膜小胞産生量は、RFU(Relative Fluorescence Unit)(FM1-43蛍光強度/OD600)として求めた。また、封入された物質の存在の確認は、カルセインの蛍光強度を蛍光プレートリーダー(Varioscan flash fluorometer、Thermo Scientific)により測定することで定量した。
(2)結果
結果は、図1に示す通りであった。カルセインは封入対象物質の存在を、FM4-64は膜小胞の存在をそれぞれ示す。図1Aではカルセインのみの試料(対照)は分画ナンバー27から30あたりでカルセインのピークが観察されている(破線四角で囲んだ箇所)。一方、図1Bでは膜小胞にカルセインを封入させた試料は分画ナンバー8から16あたりでFM4-64のピークとカルセインのピークが一致していることが観察され(破線四角で囲んだ箇所)、破裂性溶菌によりカルセインが膜小胞に内包されたことが確認された。
結果は、図1に示す通りであった。カルセインは封入対象物質の存在を、FM4-64は膜小胞の存在をそれぞれ示す。図1Aではカルセインのみの試料(対照)は分画ナンバー27から30あたりでカルセインのピークが観察されている(破線四角で囲んだ箇所)。一方、図1Bでは膜小胞にカルセインを封入させた試料は分画ナンバー8から16あたりでFM4-64のピークとカルセインのピークが一致していることが観察され(破線四角で囲んだ箇所)、破裂性溶菌によりカルセインが膜小胞に内包されたことが確認された。
例2:継代培養が膜小胞産生に及ぼす影響
例2では、継代培養が破裂性溶菌による膜小胞産生に及ぼす影響を検討した。
例2では、継代培養が破裂性溶菌による膜小胞産生に及ぼす影響を検討した。
(1)方法
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
イ 細菌培養と破裂性溶菌の誘導
カルセインを添加しなかったこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
カルセインを添加しなかったこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
ウ 継代培養
破裂性溶菌を誘導した培養液の細菌を新たな培地に植菌し、再び破裂性溶菌を誘導するというサイクルを3回繰り返した。具体的には、12時間培養を1サイクルとし、12時間培養液のOD600を測定した。測定に用いた12時間培養液をOD600=0.01となるように、新たに用意した4mlのLB液体培地に添加し、継代培養(2回目)した。続いて、2サイクル目が終わった培養液を同様に新たに培養することで継代培養(3回目)した。2回目と3回目も、1回目と同様に、12時間培養液のOD600を測定した。
破裂性溶菌を誘導した培養液の細菌を新たな培地に植菌し、再び破裂性溶菌を誘導するというサイクルを3回繰り返した。具体的には、12時間培養を1サイクルとし、12時間培養液のOD600を測定した。測定に用いた12時間培養液をOD600=0.01となるように、新たに用意した4mlのLB液体培地に添加し、継代培養(2回目)した。続いて、2サイクル目が終わった培養液を同様に新たに培養することで継代培養(3回目)した。2回目と3回目も、1回目と同様に、12時間培養液のOD600を測定した。
エ 膜小胞の分離・精製・回収
各サイクルの破裂性溶菌処置の後に膜小胞を分離、精製、回収した。ペレットダウンした菌体は次のサイクルの培養に用いた。これ以外は例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
各サイクルの破裂性溶菌処置の後に膜小胞を分離、精製、回収した。ペレットダウンした菌体は次のサイクルの培養に用いた。これ以外は例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
エ 膜小胞の定量
膜小胞の定量は膜脂質染色剤としてFM1-43(Invitrogen)を使用したこと以外は例1(1)エに記載した手順と同様に行った。
膜小胞の定量は膜脂質染色剤としてFM1-43(Invitrogen)を使用したこと以外は例1(1)エに記載した手順と同様に行った。
(2)結果
結果は、図2に示す通りであった。破裂性溶菌を誘導した培地を用いて継代培養を行った場合でも、2サイクル目、3サイクル目で破裂性溶菌による膜小胞の産生が可能であることが確認された。
結果は、図2に示す通りであった。破裂性溶菌を誘導した培地を用いて継代培養を行った場合でも、2サイクル目、3サイクル目で破裂性溶菌による膜小胞の産生が可能であることが確認された。
例3:MgSO 4 が膜小胞産生に及ぼす影響
例3では、MgSO4の培地への添加が破裂性溶菌による膜小胞産生に及ぼす影響を検討した。
例3では、MgSO4の培地への添加が破裂性溶菌による膜小胞産生に及ぼす影響を検討した。
(1)方法
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
イ 細菌培養と破裂性溶菌の誘導
MgSO4を8mMの濃度となるようにLB液体培地に添加したこと、およびカルセインを添加しなかったこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
MgSO4を8mMの濃度となるようにLB液体培地に添加したこと、およびカルセインを添加しなかったこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
ウ 膜小胞の分離・精製・回収
例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
エ 膜小胞の定量
膜小胞の定量は膜脂質染色剤としてFM4-64(Invitrogen)を使用し、例1(1)エに記載した手順と同様に行った。
膜小胞の定量は膜脂質染色剤としてFM4-64(Invitrogen)を使用し、例1(1)エに記載した手順と同様に行った。
(2)結果
結果は、図3に示す通りであった。MgSO4を培地に添加した場合は、細胞あたりの膜小胞の産生量が顕著に増加することが確認された。
結果は、図3に示す通りであった。MgSO4を培地に添加した場合は、細胞あたりの膜小胞の産生量が顕著に増加することが確認された。
例4:細菌培養の振とう条件が膜小胞産生に及ぼす影響
例4では、培養時の振とう条件が膜小胞産生に及ぼす影響を検討した。
例4では、培養時の振とう条件が膜小胞産生に及ぼす影響を検討した。
(1)方法
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
イ 細菌培養と破裂性溶菌の誘導
細菌培養時の振とう条件を0rpm、100rpm、190rpmとしたこと、およびカルセインを添加しなかったこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
細菌培養時の振とう条件を0rpm、100rpm、190rpmとしたこと、およびカルセインを添加しなかったこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
ウ 膜小胞の分離・精製・回収
例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
エ 膜小胞の定量
膜小胞の定量は膜脂質染色剤としてFM1-43(Invitrogen)を使用したこと以外は例1(1)エに記載した手順と同様に行った。
膜小胞の定量は膜脂質染色剤としてFM1-43(Invitrogen)を使用したこと以外は例1(1)エに記載した手順と同様に行った。
(2)結果
結果は、図4に示す通りであった。振とう条件が190rpmの場合に、細胞あたりの膜小胞の産生量が顕著に増加することが確認された。
結果は、図4に示す通りであった。振とう条件が190rpmの場合に、細胞あたりの膜小胞の産生量が顕著に増加することが確認された。
例5:培地の粘性がカルセインの膜小胞への封入に及ぼす影響
例5では、培地の粘性がカルセインの膜小胞への封入に及ぼす影響を検討した。
例5では、培地の粘性がカルセインの膜小胞への封入に及ぼす影響を検討した。
(1)方法
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
イ 細菌培養と破裂性溶菌の誘導
LB液体培地にフィコール(Sigma)を10%となるように添加したこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
LB液体培地にフィコール(Sigma)を10%となるように添加したこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
ウ 膜小胞の分離・精製・回収
例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
エ 膜小胞とカルセインの定量
膜小胞の定量は膜脂質染色剤としてFM4-64を使用し、例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。また、FM4-64およびカルセインの蛍光強度は、蛍光プレートリーダー(Varioscan flash fluorometer、Thermo Scientific)により測定した。そして、膜小胞あたりのカルセイン封入量は、「カルセイン/FM4-64」の蛍光強度として求めた。
膜小胞の定量は膜脂質染色剤としてFM4-64を使用し、例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。また、FM4-64およびカルセインの蛍光強度は、蛍光プレートリーダー(Varioscan flash fluorometer、Thermo Scientific)により測定した。そして、膜小胞あたりのカルセイン封入量は、「カルセイン/FM4-64」の蛍光強度として求めた。
(2)結果
結果は、図5に示す通りであった。培地の粘性が増すと、カルセインの膜小胞への封入量が増加することが確認された。
結果は、図5に示す通りであった。培地の粘性が増すと、カルセインの膜小胞への封入量が増加することが確認された。
例6:培地のpHが膜小胞の産生とカルセインの膜小胞への封入に及ぼす影響
例6では、培地のpHが膜小胞の産生とカルセインの膜小胞への封入に及ぼす影響を検討した。
例6では、培地のpHが膜小胞の産生とカルセインの膜小胞への封入に及ぼす影響を検討した。
(1)方法
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
イ 細菌培養と破裂性溶菌の誘導
LB液体培地のpHをpH5、pH7、pH9としたこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
LB液体培地のpHをpH5、pH7、pH9としたこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
ウ 膜小胞の分離・精製・回収
例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
例1(1)ウに記載した手順と同様に行った。
エ 膜小胞とカルセインの定量
例5(1)エに記載した手順と同様に行った。
例5(1)エに記載した手順と同様に行った。
(2)結果
結果は、図6に示す通りであった。カルセインの膜小胞への封入量はpHが高くなるにつれて減少する(図6A)のに対し、細胞あたりの膜小胞の産生量はpHが高くなるにつれて増加する(図6B)ことが確認された。
結果は、図6に示す通りであった。カルセインの膜小胞への封入量はpHが高くなるにつれて減少する(図6A)のに対し、細胞あたりの膜小胞の産生量はpHが高くなるにつれて増加する(図6B)ことが確認された。
例7:磁石を利用した膜小胞の回収
例7では、磁石を利用した膜小胞の回収について検討した。
例7では、磁石を利用した膜小胞の回収について検討した。
(1)方法
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
ア 菌体
例1(1)アに記載した菌体を使用した。
イ 細菌培養と破裂性溶菌の誘導
アラビノースを添加する直前にカルセインに代えて酸化鉄1mMを培地に添加したこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
アラビノースを添加する直前にカルセインに代えて酸化鉄1mMを培地に添加したこと以外は、例1(1)イに記載した手順と同様に行った。
ウ 膜小胞の回収と定量
FM1-43の蛍光強度が3となるように膜小胞溶液(MV)および鉄を封入した膜小胞溶液(Fe-MV)を900μlずつ調製した。各溶液を磁気スタンド(東洋紡)に置き、静置条件下で1分間静置した後、アスピレーターによって上澄みのみを取り除いた。次に、900μlのPBSを添加し、ボルテックスを用いて撹拌した。そして、この溶液中の膜小胞はFM1-43の蛍光強度を測定することにより定量した。
FM1-43の蛍光強度が3となるように膜小胞溶液(MV)および鉄を封入した膜小胞溶液(Fe-MV)を900μlずつ調製した。各溶液を磁気スタンド(東洋紡)に置き、静置条件下で1分間静置した後、アスピレーターによって上澄みのみを取り除いた。次に、900μlのPBSを添加し、ボルテックスを用いて撹拌した。そして、この溶液中の膜小胞はFM1-43の蛍光強度を測定することにより定量した。
(2)結果
結果は、図7に示す通りであった。鉄封入膜小胞は磁器スタンドによって回収できることが確認された。
結果は、図7に示す通りであった。鉄封入膜小胞は磁器スタンドによって回収できることが確認された。
例8:細菌産生物質の膜小胞への封入
例8では、細菌が産生する物質の膜小胞への封入について検討した。
例8では、細菌が産生する物質の膜小胞への封入について検討した。
(1)方法
ア 菌体
AHL合成遺伝子欠損株であるクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)(菌株:VIR24、Chromobacterium violaceum Bergonzini(ATCC12472)をMicrobes Environ. 2009;24(4):305-14.の記載に従って作製)を菌体として使用した。
ア 菌体
AHL合成遺伝子欠損株であるクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceum)(菌株:VIR24、Chromobacterium violaceum Bergonzini(ATCC12472)をMicrobes Environ. 2009;24(4):305-14.の記載に従って作製)を菌体として使用した。
イ 細菌培養
LB培地を用いてOD600=0.01となるように植菌し、30℃、12時間、100rpmで培養した。
LB培地を用いてOD600=0.01となるように植菌し、30℃、12時間、100rpmで培養した。
ウ 膜小胞の産生誘導
クロモバクテリウム・ビオラセウム由来の膜小胞の産生を誘導するためにマイトマイシンC(Nacalai tesque)を用いた。マイトマイシンCの添加はOD600=0.4~0.6の範囲のところで行い、200ng/mlの濃度となるように添加した。
クロモバクテリウム・ビオラセウム由来の膜小胞の産生を誘導するためにマイトマイシンC(Nacalai tesque)を用いた。マイトマイシンCの添加はOD600=0.4~0.6の範囲のところで行い、200ng/mlの濃度となるように添加した。
エ シグナル物質の添加
VIR24株はN-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)を自身では産生できないため紫色の色素産生が誘導されない(本株を培養しても培養液は紫色を示さない)。そこで、本株にAHLの1種であるC10-HSL(Cayman Chemical)を添加することでVIR24株による紫色色素(ビオラセイン)の産生を誘導した。添加したC10-HSLの濃度は終濃度100nMとなるように培養開始1時間後に添加した。
VIR24株はN-アシル-L-ホモセリンラクトン(AHL)を自身では産生できないため紫色の色素産生が誘導されない(本株を培養しても培養液は紫色を示さない)。そこで、本株にAHLの1種であるC10-HSL(Cayman Chemical)を添加することでVIR24株による紫色色素(ビオラセイン)の産生を誘導した。添加したC10-HSLの濃度は終濃度100nMとなるように培養開始1時間後に添加した。
オ 膜小胞の分離と細菌産生物質の膜小胞への封入の確認
培養液を遠心し(4℃、30分、7000×g)、菌体をペレットダウンした。遠心後の上清を0.45μm孔径フィルターでろ過して菌体を除去したのち、サンプル7.0mlを超遠心(4℃、1時間、150,000×g)することで膜小胞を分離した。菌体が産生する物質(ビオラセイン)は紫色であるため、膜小胞への封入の有無を目視で確認した。
培養液を遠心し(4℃、30分、7000×g)、菌体をペレットダウンした。遠心後の上清を0.45μm孔径フィルターでろ過して菌体を除去したのち、サンプル7.0mlを超遠心(4℃、1時間、150,000×g)することで膜小胞を分離した。菌体が産生する物質(ビオラセイン)は紫色であるため、膜小胞への封入の有無を目視で確認した。
(2)結果
結果は図8に示す通りであった。写真は超遠心後の膜小胞のペレットを示す。左の写真がC10-HSL添加ありのVIR24株由来の膜小胞ペレットであり、右の写真がC10-HSL添加なしのVIR24株由来の膜小胞ペレットである。シグナル(C10-HSL)添加によりVIR24株のビオラセイン(紫色)産生を誘導し、産生されたビオラセインが膜小胞に封入されたことを確認した。
結果は図8に示す通りであった。写真は超遠心後の膜小胞のペレットを示す。左の写真がC10-HSL添加ありのVIR24株由来の膜小胞ペレットであり、右の写真がC10-HSL添加なしのVIR24株由来の膜小胞ペレットである。シグナル(C10-HSL)添加によりVIR24株のビオラセイン(紫色)産生を誘導し、産生されたビオラセインが膜小胞に封入されたことを確認した。
Claims (22)
- 対象物質が封入された膜小胞の製造方法であって、(A)グラム陰性細菌において破裂性溶菌を誘導することにより膜小胞を産生させる工程を含む、製造方法。
- グラム陰性細菌の外部および内部のいずれかまたは両方に対象物質を存在させた状態で破裂性溶菌を誘導する、請求項1に記載の製造方法。
- 破裂性溶菌を、グラム陰性細菌における細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現により誘導する、請求項1または2に記載の製造方法。
- グラム陰性細菌が細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現を誘導する遺伝子改変を有する、請求項3に記載の製造方法。
- 細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現をDNA損傷ストレス負荷により誘導する、請求項3に記載の製造方法。
- DNA損傷ストレス負荷がマイトマイシン、フルオロキノロン系抗生剤、活性酸素および/または一酸化窒素により誘導される、請求項5に記載の製造方法。
- 細胞壁分解酵素と、場合によってはグラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素との発現の程度を調整することにより、膜小胞の産生量を調整する、請求項3~6のいずれか一項に記載の製造方法。
- 細胞壁分解酵素がエンドリシンである、請求項3~7のいずれか一項に記載の製造方法。
- グラム陰性細菌の内膜を穿孔する酵素がホリンである、請求項3~8のいずれか一項に記載の製造方法。
- 破裂性溶菌の誘導前に、(X)グラム陰性細菌を培養する工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
- 対象物質を含有する培地中でグラム陰性細菌を培養する、請求項10に記載の製造方法。
- 対象物質をグラム陰性細菌により産生させる、請求項10に記載の製造方法。
- (Y)産生された膜小胞を培地から分離する工程を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記分離工程において磁力を使用する、請求項13に記載の製造方法。
- (X)グラム陰性細菌の培養工程、(A)破裂性溶菌による膜小胞産生工程および(Y)膜小胞の分離工程を1回以上繰り返す、請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法。
- 培地がマグネシウム塩を培地中の濃度として1~30mMで含有する、請求項10~15のいずれか一項に記載の製造方法。
- 培養の振とう条件が180~250rpmである、請求項10~16のいずれか一項に記載の製造方法。
- 培地のpHが4~10である、請求項10~17のいずれか一項に記載の製造方法。
- 培地の粘度が1~15Pa・sである、請求項10~18のいずれか一項に記載の製造方法。
- 対象物質が封入された膜小胞であって、膜小胞の構成成分が培養したグラム陰性細菌に由来する、膜小胞。
- 請求項1~19のいずれか一項に記載の製造方法により製造された、対象物質が封入された膜小胞。
- グラム陰性細菌由来の膜小胞に対象物質を封入する方法であって、前記グラム陰性細菌において対象物質の存在下で破裂性溶菌を誘導する工程を含んでなる、方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020188606A JP2022077676A (ja) | 2020-11-12 | 2020-11-12 | 対象物質が封入された膜小胞の製造方法 |
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JP2020188606A JP2022077676A (ja) | 2020-11-12 | 2020-11-12 | 対象物質が封入された膜小胞の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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ID=81706615
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Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022077676A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115350161A (zh) * | 2022-08-19 | 2022-11-18 | 沈阳药科大学 | 基于工程化益生菌外膜囊泡包被纳米酶递送系统及其制备方法和应用 |
-
2020
- 2020-11-12 JP JP2020188606A patent/JP2022077676A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN115350161A (zh) * | 2022-08-19 | 2022-11-18 | 沈阳药科大学 | 基于工程化益生菌外膜囊泡包被纳米酶递送系统及其制备方法和应用 |
CN115350161B (zh) * | 2022-08-19 | 2024-04-16 | 沈阳药科大学 | 基于工程化益生菌外膜囊泡包被纳米酶递送系统及其制备方法和应用 |
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