JP2022065271A - 風力発電装置とその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ナセル旋回回数の増加を抑え、機械的消耗の必要以上の増加を抑制し得る風力発電装置とその制御方法を提供する。【解決手段】風を受けて揚力を発生させるブレードと、ブレードを支持し、回転するハブと、ハブの回転のエネルギーを電力に変換する発電機と、ハブを回転可能に支持し発電機を格納するナセルと、ナセルを回転可能に支持するタワーと、ヨー制御指令に基づいてナセルのヨーを調整する調整装置と、調整装置に送るヨー制御指令を定める制御装置とを備える風力発電装置であって、制御装置は、風の乱れ度に応じて、ナセル旋回開始閾値を調整する機能を持つことを特徴とする風力発電装置。【選択図】図3

Description

本発明は風力発電装置とその制御方法に係り、様々な風力発電装置の設置場所に対応可能かつ、風力発電装置の信頼性及び寿命を向上させることが可能な風力発電装置とその制御方法に関する。
水平軸型の風力発電装置では、風車ロータを搭載するナセルを垂直軸まわりに旋回させるヨー旋回機構が備わっている。風力発電装置は、風車ロータの回転軸の方位角(以下、ナセル方位角と称する)と風向との偏差角を表す風向偏差(以下、ヨー偏差角と称する)が生じた場合、ロータの受風面積の減少により発電効率が低下するのを防ぐため、ヨー旋回機構を制御してヨー偏差角をなくすように動作することが知られている。これらヨー制御の方法として例えば、特許文献1に記載される技術が知られている。
特開2020―020264号公報
ある地点における風向や風速を表す風況は、様々な周期を持つ変動成分を有する。また、時間帯によってもその周期的な変動成分の特徴が異なる。風況には、これらの変動成分がランダムに含まれるため、一般的なヨー制御方法は、例えばある所定期間のヨー偏差角が所定の閾値を超えた場合にナセル旋回を開始し、ヨー偏差角がゼロになる、もしくはヨー偏差角が所定の閾値を下回った場合にナセル旋回を停止させることにより、ヨー偏差角が常にゼロに近くなるようヨーを制御する。
ヨー制御によりヨー偏差角を常にゼロに維持できた時、最も発電量が多くなる。しかし、ナセルの旋回速度よりも風向の変動速度の方が速い場合、ナセル方位角を風向に追従できない。また、頻繁に風向が変化する場合、それに伴いナセル旋回機構が駆動する回数が大幅に増加し、ナセル旋回の支持機構やナセル駆動力となるモータ等の機械的損耗が増加し、風力発電装置の信頼性の低下や寿命の低下につながるリスクが増加するという課題がある。
例えば、特許文献1では、風力発電装置の制御方法であって、風を受けて回転するロータと、前記ロータを回転可能に支持するナセルと、前記ナセルをヨー旋回可能に支持するタワーと、ヨー制御指令に基づいて前記ナセルのヨーを調整する調整装置と、前記調整装置に送る前記ヨー制御指令を定める制御装置とを備える風力発電装置であって、前記制御装置は、風向風速測定部により測定された値と前記ロータの方向からヨー偏差角を算出するヨー偏差角計算部と、前記風向風速測定部により測定された値から風の乱れ度を算出する風の乱れ度計算部と、前記ヨー偏差角と前記風の乱れ度に基づき前記ヨー制御指令を定める制御指令作成部を備え、前記制御装置は、風の乱れ度が高い場合、ヨー旋回を早く停止することを特徴とすると記載されている。
上記特許文献1の風力発電装置の制御方法では、風向変動が激しい場合でもヨー旋回のし過ぎを抑制し、ヨー旋回時の風向に対するナセル方位角の追従性を向上させることが可能であるが、ナセル旋回回数を低減させることができない。
そこで、本発明は、算出した風の乱れ度に応じて、ナセル旋回の開始閾値を調整することにより、ナセルの駆動回数増加を抑制し、機械的消耗の必要以上の増加を抑制し得る風力発電装置とその制御方法を提供する。
上記課題を解決するため、本発明に係る風力発電装置は、「風を受けて揚力を発生させるブレードと、ブレードを支持し、回転するハブと、ハブの回転のエネルギーを電力に変換する発電機と、ハブを回転可能に支持し発電機を格納するナセルと、ナセルを回転可能に支持するタワーと、ヨー制御指令に基づいてナセルのヨーを調整する調整装置と、調整装置に送るヨー制御指令を定める制御装置とを備える風力発電装置であって、制御装置は、風の乱れ度に応じて、ナセル旋回開始閾値を調整する機能を持つことを特徴とする風力発電装置」としたものである。
また本発明に係る風力発電方法は、「風を受けて揚力を発生させるブレードと、ブレードを支持し、回転するハブと、ハブの回転のエネルギーを電力に変換する発電機と、ハブを回転可能に支持し発電機を格納するナセルと、ナセルを回転可能に支持するタワーと、ヨー制御指令に基づいてナセルのヨーを調整する調整装置と、調整装置に送るヨー制御指令を定める制御装置とを備える風力発電装置における風力発電方法であって、制御装置は、風の乱れ度に応じて、ナセル旋回開始閾値を調整する機能を持つことを特徴とする風力発電方法」としたものである。
本発明によれば、算出した風の乱れ度に応じて、ナセル旋回の開始閾値を調整することにより、ナセルの旋回回数増加を抑制し、機械的消耗の必要以上の増加を抑制し得る風力発電装置とその制御方法を提供することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる
本発明の実施例1に係る風力発電装置の全体概略構成例を示す側面図。 図1に示す風力発電装置の上面図(平面図)。 実施例1に係るヨー制御部の機能を示すブロック線図。 実施例1に係る風の乱れ度とナセル旋回開始角度の関係を示す特性図。 図3に示すヨー制御部の処理概要を示すフローチャート。 図4に示すフローチャートにおけるナセル方位角の模式図。 実施例2に係るヨー制御部の機能を示すブロック線図。 実施例3に係るヨー制御部の機能を示すブロック線図。 実施例3に係る風の乱れ度とナセル旋回開始角度の関係を示す特性図。 実施例4に係るヨー制御部の機能を示すブロック線図。
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。なお本明細書での説明にあたり、本発明の実施形態に係る風力発電装置として、ダウンウィンド型の風力発電装置を例に説明するが、アップウィンド型の風力発電装置においても同様に適用できる。また、3枚のブレードとハブにてロータを構成する例を示すが、これに限られず、ロータはハブと少なくとも1枚のブレードにて構成しても良い。本発明の実施形態に係る風力発電装置を複数隣接して設置するウィンドファームは、洋上、山岳部及び平野部の何れの場所にも設けることができる。
また、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
図1から図4を用いて実施例1に係る風力発電装置とその制御方法を説明する。図1は、実施例1の風力発電装置の構成例を示す全体概略構成図である。図1に示すように、風力発電装置2は、風を受けて回転するブレード23、ブレード23を支持するハブ22、ナセル21、及びナセル21を回動可能に支持するタワー20を主たる構成要素として備えている。
このうちナセル21内には、ハブ22に接続されハブ22と共に回転する主軸25、主軸25に接続され回転速度を増速する増速機27、及び増速機27により増速された回転速度で回転子を回転させて発電運転する発電機28を備えている。
また、ブレード23の設置向きはピッチ角と称され、風力発電装置2は、このピッチ角、すなわち、ブレード23の向きを制御するピッチ角制御装置34を備える。ブレード23の回転エネルギーを発電機28に伝達する部位は、動力伝達部と呼ばれ、本実施例では、主軸25、及び増速機27が動力伝達部に含まれる。そして、増速機27及び発電機28は、メインフレーム29上に保持されており、発電機28はその動きを制御する発電機制御装置35を有する。
また、ブレード23及びハブ22によりロータ24が構成される。図1に示すように、タワー20内部に、電力の周波数を変換する電力変換器30、電流の開閉を行うスイッチング用の開閉器及び変圧器など(図示せず)、及び制御装置31が配されている。図1において、電力変換器30及制御装置31はタワーの底部に設置されているが、これら機器の設置場所はタワー底部に限定されず、風力発電装置2の内部であれば、他の場所に設置される場合も考えられる。
また、ナセル21の上面に、風向データ及び風速データを計測するための風向風速計32が設置されている。制御装置31として、例えば、制御盤又はSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)が用いられる。
また、ナセル21の向きはヨー角と称され、風力発電装置2は、このナセル21の向き、すなわち、ロータ24の回転面の向きを制御するヨー角制御装置33を備える。図1に示すように、ヨー角制御装置33は、ナセル21の底面とタワー20の先端部との間に配され、例えば、図示しない、少なくともアクチュエータ及び当該アクチュエータを駆動するモータより構成される。制御装置31より信号線を介して出力されるヨー角制御指令に基づき、ヨー角制御装置33を構成するモータが回転しアクチュエータが所望量変位することで、所望のヨー角となるようナセル21が回動する。
図2は、図1の上面図(平面図)である。所定の基準方向となす風向をθw、所定の基準方向となすロータ回転軸の方向をθr、風向θwからロータ軸角度θrまでの偏差角であるヨー偏差角をΔθと定義し、これらの関係を図示している。ここで、「所定の基準方向」とは、例えば、北を0°として基準方向とする。なお、北に限らず基準となる方向を任意に設定しても良い。なお、風向θwは、計測周期ごとに取得された値であってもよいし、所定期間の平均方向であってもよいし、所定周波数領域のみを通過させるフィルタを介した方向であってもよいし、周辺の風況分布に基づき算出された方向であってもよい。また、ロータ軸角度θrは、ロータ回転軸の向く方向であってもよいし、ナセルの方向であってもよいし、ヨー旋回部のエンコーダにより計測された値等であってもよい。
図3は、図1に示すヨー制御装置33を構成するヨー制御部におけるナセル旋回開始時の機能を示すブロック線図である。図3に示すように、ヨー制御部300は、ヨー偏差角Δθを求めるヨー偏差角計算部301と、ナセル旋回の開始閾値θsを算出するナセル旋回開始閾値演算部310と、ヨー偏差角Δθと別途設定されている予測制御指令値θyに基づいてヨー旋回の開始/駆動/停止を制御するヨー制御指令Cyを定める制御指令作成部305により構成されている。ナセル旋回開始閾値演算部310は、データ蓄積部302、風の乱れ度計算部303、閾値演算部304により構成されている。
このうちヨー偏差角計算部301は、ロータ軸角度θrと風向θwに基づき、ヨー偏差角Δθを決定する。このヨー偏差角Δθは図2に示すように、風向θwとロータ軸角度θrの差分であり、ロータ軸が風向からどれくらいずれているかを示す。ここで、風向θwはナセル5に設置された風向風速センサ10から検出した値に限定せず、地面や他の場所に設置された値を利用するものであってもよい。また、ヨー偏差角計算部301は、ローパスフィルタに代表される、ヨー偏差角Δθの所定周波数領域のみを通過させるフィルタ(ローパスフィルタ)や、移動平均に代表される、直前の所定期間の値の平均値を利用する統計値を用いたものであってもよい。あるいはフーリエ変換をおこなうものであってもよい。
ナセル旋回開始閾値演算部310を構成するデータ蓄積部302は、風向風速計32から検出した風速測定値Vw(以下、単に風速Vwという)のデータを蓄積している。
また、風の乱れ度計算部302は、データ蓄積部302に蓄積された風速Vwに基づき、所定の期間の風況データの変動を表す風の乱れ度Itを出力する。本実施例では、風速Vwを風の乱れ度Itの算出に用いる。風の乱れ度Itを計算する手法の一例として、ここでは統計分析手法を用いて、以下の式(1)に示すように乱流強度で設定される。
[数1]
It=σv/Vwave ・・・(1)
ここで、σvは所定期間における風速Vwの標準偏差、Vwaveは所定期間における風速Vwの平均値である。なお、所定期間をどのように設定すべきかは、各風力発電装置が設置された場所の環境事情、ヨー制御部300の計算能力、ヨー偏差角計算部301で用いるフィルタの設定値、ヨー旋回の駆動速度、ヨー駆動量等に応じて適宜設定されればよいが、ある程度頻度の高い風向変動に対応するよう、大まかには1秒乃至1時間の範囲とするのが好ましい。もしくは、所定期間は10秒乃至10分の範囲とするのがさらに好ましい。
図3に示すナセル旋回開始閾値演算部310を構成する閾値演算部304は、風の乱れ度Itに基づきナセル旋回開始を判定する閾値θsを決定する。具体的には、閾値演算部303においては、風の乱れ度Itに応じて、ナセル旋回開始閾値θsの大きさが変更されるように調整される。例えば図4に例示するように、風の乱れ度Itが小さい場合はナセル旋回開始閾値θsを低くし、風の乱れ度Itが大きい場合はナセル旋回開始閾値θsを高くするとともに、風の乱れ度Itが基準値It0よりも小さい場合は、ナセル旋回開始閾値θsを一定に保持するような特性Lの関係とする。
図5は、図3に示すヨー制御部300におけるナセル旋回開始時の処理概要を示すフローチャートである。なお、このフローにおいて、処理ステップS401からS403は図3のヨー偏差角計算部301内の処理に相当し、処理ステップS405は図3のデータ蓄積部302の処理に相当し、処理ステップS406は図3の乱れ度計算部303の処理に相当し、処理ステップS407は図3の閾値演算部304の処理に相当し、処理ステップS409は図3の制御指令作成部305の処理に相当している。
図5に示すように、処理ステップS401では、ヨー偏差角計算部301がロータ軸角度θrを決定し、次の処理ステップS402に進む。処理ステップS402では、ヨー偏差角計算部301が風向θwを決定し、次の処理ステップS403に進む。処理ステップS403では、ヨー偏差角計算部301がロータ軸角度θrと風向θwに基づいてヨー偏差角Δθを決定し、次の処理ステップS409に進む。このように、処理ステップS401から処理ステップS403までの処理をヨー偏差角計算部301が実行する。
処理ステップS401から処理ステップS403までの処理と平行して、処理ステップS405では、ナセル旋回開始閾値演算部310を構成するデータ蓄積部302から、風の乱れ度計算部303で使用する風速測定値Vwを抽出する。処理ステップS406では、風の乱れ度計算部303が風速Vwに代表される風速測定値Vwに基づいて風の乱れ度Itを決定し、次の処理ステップS407に進む。処理ステップS405では、ナセル旋回開始閾値演算部310を構成する閾値演算部304がナセル旋回開始閾値θsを決定し、次の処理ステップS409に進む。このように処理ステップS405から処理ステップS407までの処理をナセル旋回開始閾値演算部310が実行する。
処理ステップS409では、制御指令作成部304がヨー偏差角Δθとナセル旋回開始閾値θsに基づいてヨー制御指令Cyを決定した後、一連の処理を終了する。
ここで、ナセル旋回開始閾値θsの算出方法について具体的に説明する。図6は、ナセル旋回開始閾値演算部310によるナセル方位角の変化を模式的に表したものである。縦軸が風向及びナセル方位角を表しており、時間帯T1において風の乱れ度が大きく、時間帯T2において風の乱れ度が小さかったものとする。
図6中の実線L101が模擬的に示した風向、破線L102がナセル旋回開始閾値演算部310を用いずに、常にナセル旋回開始閾値θsを小さな値で固定した場合のナセル方位角、鎖線L103がナセル旋回開始閾値演算部310を用いずに、常にナセル旋回開始閾値θsを大きな値で固定した場合のナセル方位角、点線L104がナセル旋回開始閾値演算部310を用いてナセル旋回開始閾値θsを調整した場合のナセル方位角を模擬している。
この図は、模擬的に示した風向L101が図示のように、風の乱れ度が大きい時間帯T1において短周期での増減をするように変動し、風の乱れ度が小さい時間帯T2において増加傾向を示した場合に、ナセル旋回開始閾値θsを各様に設定した場合にどのような追従変化をするのかを示したものである。
この例ではまず、ナセル旋回開始閾値θsが小さい場合、破線L102に示すようにナセルは風の乱れ度(T1、T2の期間)に依らず、風向変化に追従してナセル旋回を繰り返し、ヨー偏差角Δθは小さくなるものの、ナセル旋回機構は開始/駆動/停止を繰り返し、特に風の乱れ度が大きい場合には風向変化も頻発するため、ナセルの旋回回数は大きく増加する。
一方、ナセル旋回開始閾値θsが大きい場合、鎖線L103に示すようにナセルは風の乱れ度(T1、T2の期間)に依らず、風向変化にあまり追従しないため、ヨー偏差角Δθが大きくなり、発電量が低下してしまうリスクがある。
これらに対し、ナセル旋回開始閾値θsを風の乱れ度に応じて調整することにより、点線L104に示すように風の乱れ度が大きい場合(T1の期間)はナセル旋回開始閾値θsを大きくすることで、頻発する風向変動に対し、ナセル方位を追従させないことで、ナセル旋回回数の増加を抑制する。一方で、風の乱れ度が小さい場合(T2の期間)は、ナセル旋回開始閾値θsを小さくすることで、風向変化に対するナセル方位の追従性を向上させ、発電量の低下を抑制する。
以上のように、本実施例によれば、風の乱れ度に応じてヨー制御をし、風向変動が大きいサイトにおいても、ナセル旋回回数の増加を抑制し得る風力発電装置とその制御方法を提供することが可能となる。
具体的には、風速センサで検出した風速Vwを用いて風の乱れ度Itを計算し、図4の特性に示すように風の乱れ度Itが高い場合は、ナセル旋回開始閾値θsを高くすることでヨー旋回回数の増加を抑制しする。また、風の乱れ度Itが低い場合は、ナセル旋回開始閾値θsを小さく、もしくは維持することで風向θwにナセル方位を追従させるこのように風況に応じてナセル旋回開始委閾値θsを可変することで、ナセル旋回回数の増加を抑制することで、機械的消耗の増加を抑制することができる。
なお(1)式により風の乱れ度Itを求めた場合、風の乱れ度Itが高いということは風の乱れが多いということを表し、風の乱れ度Itが低いということは風の乱れが少ないということを表していることは言うまでもない。
次に、本発明の実施例2に係る風力発電装置2について説明する。
実施例2の風力発電装置2は、上述の実施例1のヨー制御部300内の閾値演算部310における処理が実施例1と異なる。図7は実施例2におけるヨー制御部300におけるナセル旋回開始時の機能を示すブロック線図である。
図7に示すように、ヨー制御部300は、ヨー偏差角Δθを求めるヨー偏差角計算部301と、ナセル旋回の開始閾値θsを算出するナセル旋回開始閾値演算部310と、ヨー偏差角Δθと予測制御指令値θyに基づいてヨー旋回の開始/駆動/停止を制御するヨー制御指令Cyを定める制御指令作成部304により構成されている。ナセル旋回開始閾値演算部310は、データ蓄積部302、風の乱れ度計算部303、閾値演算部304に加えて、閾値記録部306により構成されている。
このうちヨー偏差角計算部301は、ロータ軸角度θrと風向θwに基づき、ヨー偏差角Δθを決定する。ナセル旋回開始閾値演算部310を構成するデータ蓄積部302は、風向風速計32から検出した風速測定値Vwのデータを蓄積している。また、風の乱れ度計算部302は、データ蓄積部302に蓄積された風速Vwに基づき、所定の期間の風況データの変動を表す風の乱れ度Itを出力する。
実施例2で追加設置された閾値記録部306には、風の乱れ度Itに応じたナセル旋回開始閾値が記録される。閾値演算部304は、風の乱れ度Itと閾値記録部306に記録された風の乱れ度とナセル旋回開始閾値に基づき、ナセル旋回開始を判定する閾値θsを決定する。このとき、閾値記録部306の記録データは、風力発電装置やその設置場所に応じて設定されるものであっても、複数の風力発電装置において共通のものを用いてもよい。また、閾値記録部306の記録データは風力発電装置の設置前に記録されたものを継続して利用することも可能だが、風力発電装置の運転状況に応じて変更してもよい。また、季節毎、時間帯、天候等に応じて変更してもよい。
以上のように、実施例2によれば、季節、時間帯、天候等の状況に応じて、条件を変更しながらヨー制御をし、常にナセル旋回回数の増加を抑制し得る風力発電装置とその制御方法を提供することが可能となる。
次に、本発明の実施例3に係る風力発電装置2について説明する。
本実施例の風力発電装置2は、上述の実施例1、実施例2のヨー制御部300における閾値演算部310における処理が実施例1、実施例2と異なる。
図8は本実施例におけるヨー制御部300におけるナセル旋回開始時の機能を示すブロック線図である。図8の予測ヨー制御指令値算出部310では、上述の実施例1、実施例2と同様に、風速Vwを入力するが、乱れ度計算部303で計算される風の乱れ度Itの他に、平均風速計算部307において平均風速Vwaveを計算する。そして閾値演算部304では、風の乱れ度Itと平均風速Vwaveに基づいて、ナセル旋回開始を判定する閾値θsを決定する。つまりナセル旋回開始閾値θsは、風の乱れ度Itと平均風速Vwaveの2つの変数に応じて決定されている。
図9は、風の乱れ度Itと平均風速Vwaveの2つの変数に応じて決定されるナセル旋回開始閾値θsの関係を図4と同じ座標上に記述したものである。実施例3では、図4の関係にある特性Lについて、平均風速Vwaveが高いときには特性L1のように下げて運用し、平均風速Vwaveが低いときには特性L2のように上げて運用したものである。
ここで実施例3では、平均風速Vwaveが高い場合、風の乱れ度Itが高いときは実施例1と比較してナセル旋回停止閾値θsを低くしている。この理由は、平均風速Vwaveが高い場合、風の乱れ度Itが高い場合であっても風向変化が小さくなることにある。このことから、風の乱れ度Itが高い場合においても、平均風速Vwaveが高い場合は、ナセル旋回開始閾値θsを実施例1と比較して低くすることにより、ナセル旋回回数の増加を回避しつつ、ヨー偏差角を小さくことが可能となる。
同様に実施例3では、平均風速Vwaveが低い場合、風の乱れ度Itが低い場合においても実施例1と比較してナセル旋回開始閾値θsを高くしている。この理由は、平均風速Vwaveが低い場合、風向変化が大きくなる傾向にあり、風の乱れ度Itが低い場合においても、ナセル旋回回数が増加するリスクが高くなることがあることにある。本実施例では、実施例1比較してナセル旋回開始閾値θsを高くすることにより、ナセル旋回回数増加のリスクを抑制する。
なお、平均風速Vwaveは、ローパスフィルタに代表される、風速Vwの所定周波数領域のみを通過させるフィルタ(ローパスフィルタ)や、移動平均に代表される、直前の所定期間の値の平均値を利用する統計値を用いて算出しても、フーリエ変換をおこなって算出してもよい。あるいは、予測ヨー制御指令値算出部310に入力する前に、平均風速Vwaveを算出してもよい。
以上のように、本実施例3によれば、様々な特性をもつ風力発電装置設置場所において、常にナセル旋回回数の増加を抑制し得る風力発電装置とその制御方法を提供することが可能となる。
次に、本発明の実施例4に係る風力発電装置2について説明する。
本実施例の風力発電装置2は、上述の実施例のヨー制御部300と同じ構成を有しているが、予測ヨー制御指令値算出部310における処理が実施例1と異なる。図10に本実施例におけるブロック線図を示す。本実施例におけるナセル旋回開始閾値演算部310では、実施例1における乱れ度計算部303のかわりにデータ分析部308を有する。
図10のデータ分析部308は、風速Vwの計測データに基づいてその特徴データを出力する。特徴データを計算する手法として、ここでは蓄積データの周波数分析手法を用いる。
なお特徴データが、風の乱れ度Itに相当するものであることは言うまでもない。要は、風の乱れ度を前述の(1)式により、所定期間における風速Vwの標準偏差Vwave/所定期間における風速Vwの平均値として求めたものが実施例1であって、実施例4では風速Vwの計測データに基づいてデータ分析部308における蓄積データの周波数分析手法を用いて求めたものであり、これを特徴データと称しているが、この特徴データは(1)式に示す風の乱れ度Itと同じ性向を反映した信号成分を、データ分析により求めたものである。
周波数領域をどのように設定すべきかは、各風力発電装置が設置された場所の環境事情、ヨー制御部300の計算能力、ヨー偏差角計算部301で用いるフィルタの設定値、ヨー旋回の駆動速度、ヨー駆動量等に応じて適宜設定されればよい。
風速の計測データを周波数分析した後、得られた所定の期間における特定範囲内の周波数成分の平均値もしくは合計値を計算し、風況の特徴量Fpを求める。
閾値演算部304は、風況の特徴量Fpに基づきナセル旋回開始を判定する閾値θsを決定する。具体的には、閾値演算部303においては、風況の特徴量Fpに応じて、ナセル旋回開始閾値θsの大きさが変更されるように調整される。例えば、風況の特徴量Fpが小さい場合はナセル旋回開始閾値θsを低くし、風況の特徴量Fpが大きい場合はナセル旋回開始閾値θsを高くする。
上記により、ヨー制御に直接影響する特徴力を重点的に抽出して使用することが可能となり、より最適なナセル旋回開始閾値θsを算出することが可能となる。
以上のように、本実施例によれば、より効率的にナセル旋回回数の増加を抑制し得る風力発電装置とその制御方法を提供することが可能となる。
次に、本発明の実施例5に係る風力発電装置2について説明する。
本実施例の風力発電装置2は、上述の実施例1のヨー制御部300と同じ構成を有しているが、ヨー旋回開始閾値算出部310における処理が実施例1と異なる。
本実施例のヨー旋回開始閾値算出部310では、上述の実施例1と異なり、風速測定値Vwに代えて、風力発電装置2において運転中に記録されている発電出力P、ブレードピッチ角γ、発電機トルクTg、またはロータ回転速度ωrに代表される、風速変化に応じて変動する風力発電装置2のパラメータのいずれか一つ以上を入力値とする。
次にこれらパラメータの所定期間における変動量等を計算し、得られた変動量を風の乱れ度Itとして閾値演算部304においてナセル旋回開始閾値θsを算出する。
以上のように、本実施例によれば、風向風速計の故障時においても、常にナセル旋回回数の増加を抑制し得る風力発電装置とその制御方法を提供することが可能となる。
本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施例は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
上述の実施例に対して可能な変形として、例えば以下のようなものが挙げられる。例えば、ヨー制御部300における予測ヨー制御指令値算出部310は、ヨー角制御装置33に代えて、外部の装置に備えてもよい。本発明で計算したヨー制御のナセル旋回開始閾値θsは、同じサイトにおける他の風力発電装置2や、風況の近しい他サイトの風力発電装置2に適用してもよい。ヨー制御部300における風の乱れ度計算部303は、風速Vwをはじめとする風速測定値Xwを逐次入力せず、過去に蓄積された風況測定データのみで計算する構成としてもよい。上述の各実施例においては、風向風速計10はナセル21上に設置されているが、この場所に代えて、ナセル21内や風力発電装置2の周辺に設置してもよい。上述の各実施例において、ナセル旋回開始閾値θsは段階的に値を設定したり、直線や曲線のように連続的に値を設定したりしてもよい。
2:風力発電装置
20:タワー
21:ナセル
22:ハブ
23:ブレード
24:ロータ
25:主軸
27:増速機
28:発電機
29:メインフレーム
30:電力変換器
31:制御装置
32:風向風速計
33:ヨー角制御装置
34:ピッチ角制御装置
35:発電機制御装置
300:ヨー制御装置
301:ヨー偏差角計算部
302:データ蓄積部
303:乱れ度計算部
304:閾値演算部
305:制御指令値作成部
306:閾値記録部
307:平均風速計算部
308:データ分析部
310:ナセル旋回閾値演算部

Claims (16)

  1. 風を受けて揚力を発生させるブレードと、前記ブレードを支持し、回転するハブと、前記ハブの回転のエネルギーを電力に変換する発電機と、前記ハブを回転可能に支持し前記発電機を格納するナセルと、前記ナセルを回転可能に支持するタワーと、ヨー制御指令に基づいて前記ナセルのヨーを調整する調整装置と、前記調整装置に送る前記ヨー制御指令を定める制御装置とを備える風力発電装置であって、
    前記制御装置は、風の乱れ度に応じて、ナセル旋回開始閾値を調整する機能を持つことを特徴とする風力発電装置。
  2. 請求項1に記載の風力発電装置であって、
    前記風の乱れ度は、所定期間における風速の標準偏差と所定期間における風速の平均値から求めたものであることを特徴とする風力発電装置。
  3. 請求項1に記載の風力発電装置であって、
    前記風の乱れ度は、風速の計測データの蓄積データの周波数分析により求めたものであることを特徴とする風力発電装置。
  4. 請求項1に記載の風力発電装置であって、
    前記風の乱れ度は、風速の変化に応じて変動する風力発電装置のパラメータのいずれか一つ以上から求めたものであることを特徴とする風力発電装置。
  5. 請求項4に記載の風力発電装置であって、
    前記風速の変化に応じて変動する風力発電装置のパラメータは、風力発電装置において運転中に記録されている発電出力、ブレードピッチ角、発電機トルク、またはロータ回転速度のいずれかであることを特徴とする風力発電装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の風力発電装置であって、
    前記風の乱れが大きい場合に、ナセル旋回開始閾値を高くし、前記風の乱れが小さい場合に、ナセル旋回開始閾値を低くすることを特徴とする風力発電装置。
  7. 請求項6に記載の風力発電装置であって、
    前記風の乱れが大きい場合に高めに設定したナセル旋回開始閾値を、平均風速が高いときには下げて設定し、前記風の乱れが小さい場合に低めに設定したナセル旋回開始閾値を平均風速が低いときには上げて設定することを特徴とする風力発電装置。
  8. 請求項3に記載の風力発電装置であって、
    前記風の乱れ度は、風速の計測データを周波数分析した後、得られた所定の期間における特定範囲内の周波数成分の平均値もしくは合計値を用いることを特徴とする風力発電装置。
  9. 風を受けて揚力を発生させるブレードと、前記ブレードを支持し、回転するハブと、前記ハブの回転のエネルギーを電力に変換する発電機と、前記ハブを回転可能に支持し前記発電機を格納するナセルと、前記ナセルを回転可能に支持するタワーと、ヨー制御指令に基づいて前記ナセルのヨーを調整する調整装置と、前記調整装置に送る前記ヨー制御指令を定める制御装置とを備える風力発電装置における風力発電方法であって、
    前記制御装置は、風の乱れ度に応じて、ナセル旋回開始閾値を調整する機能を持つことを特徴とする風力発電方法。
  10. 請求項9に記載の風力発電方法であって、
    前記風の乱れ度は、所定期間における風速の標準偏差と所定期間における風速の平均値から求めたものであることを特徴とする風力発電方法。
  11. 請求項9に記載の風力発電方法であって、
    前記風の乱れ度は、風速の計測データの蓄積データの周波数分析により求めたものであることを特徴とする風力発電方法。
  12. 請求項9に記載の風力発電方法であって、
    前記風の乱れ度は、風速の変化に応じて変動する風力発電装置のパラメータのいずれか一つ以上から求めたものであることを特徴とする風力発電方法。
  13. 請求項12に記載の風力発電方法であって、
    前記風速の変化に応じて変動する風力発電装置のパラメータは、風力発電装置において運転中に記録されている発電出力、ブレードピッチ角、発電機トルク、またはロータ回転速度のいずれかであることを特徴とする風力発電方法。
  14. 請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の風力発電方法であって、
    前記風の乱れが大きい場合に、ナセル旋回開始閾値を高くし、前記風の乱れが小さい場合に、ナセル旋回開始閾値を低くすることを特徴とする風力発電方法。
  15. 請求項14に記載の風力発電方法であって、
    前記風の乱れが大きい場合に高めに設定したナセル旋回開始閾値を、平均風速が高いときには下げて設定し、前記風の乱れが小さい場合に低めに設定したナセル旋回開始閾値を平均風速が低いときには上げて設定することを特徴とする風力発電方法。
  16. 請求項11に記載の風力発電方法であって、
    前記風の乱れ度は、風速の計測データを周波数分析した後、得られた所定の期間における特定範囲内の周波数成分の平均値もしくは合計値を用いることを特徴とする風力発電方法。
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