JP2022062763A - フェイスシールド - Google Patents
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Abstract
【課題】飛沫や花粉、臭い成分の流通を効果的に遮断でき、かつ、空気の流通を十分に行えるフェイスシールドを提供する。【解決手段】フェイスシールド1は、フェイスカバー本体10と耳掛け部20とを備えてなり、フェイスカバー本体10は、口元を覆う覆い部11と、顔面に帯状に接触する、覆い部11の端縁に沿って配設された当接部30とを備えており、当接部30は、本体31が柔軟な多孔質材で形成され、内部に微細な活性炭44が含まれてなる。【選択図】図1
Description
本発明は、外部の飛沫等の口や鼻孔への侵入と、自身の飛沫の外部への拡散とを防止するフェイスシールドに関する。
近時、ウイルスの飛沫感染を防止するためのフェイスシールドが種々提案されている(特許文献1参照)。フェイスシールドの本体である覆い部としては一般的に、通気性がほとんどないクリアシート等の樹脂シートが用いられている。この種の樹脂シートよりなる覆い部は、マスクに用いられる不織布シートにくらべ硬質であり、顔面から一定の距離を離した状態で保持されるため、鼻や口元での密着感はほとんどない。
覆い部を顔面から一定の距離を離した状態とするために、例えば覆い部の端縁に所定の厚みのスポンジ材を取りつけ、そのスポンジ材を額や顎にあてがうものが一般的に実施されている。なお、特許文献1のものは、覆い部の上端縁を帽子の鍔に固定できるようになっている。
このように、この種のフェイスシールドを用いれば、覆い部を通しての飛沫等の通過をほぼ完全に防止することができるとともに、上下等の装着開口による空気の流通により装着時の息苦しさを回避することもできる。
ところで、覆い部を上記のように空気をほとんど通さないシート材で形成した場合、利用者が息苦しくならないようにするためには、装着開口(シート材の顔面との隙間)などによる空気流通部を設けなければならない。特許文献1のものは、それを装着した際には覆い部内部の空間の上部は帽子の鍔で塞がれるが、下部には空気の流通が自在な開口が形成される。
しかしながら、装着時にそのような開口ができれば、その開口を通じて飛沫等が出入りする可能性がある。すなわち、フェイスシールドの場合、覆い部での飛沫等の流通は防止できるが、マスクの着用にくらべて感染防止対策として万全とはいえない。また、開口があれば臭い成分の流出入もしやすい。
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、飛沫や花粉、臭い成分の流通を効果的に遮断でき、かつ、空気の流通を十分に行えるフェイスシールドを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明のフェイスシールドは、フェイスカバー本体と耳掛け部とを備えたフェイスシールドであって、前記フェイスカバー本体は、口元を覆う覆い部と、顔面に帯状に接触する、該覆い部の端縁に沿って配設された当接部とを備えており、前記当接部は、本体が柔軟な多孔質材で形成され、内部に微細な活性炭が含まれてなることを特徴とする。
本発明のフェイスシールドは上述した構成とされているため、飛沫や花粉、臭い成分の流通が効果的に遮断され、かつ、空気の流通を十分に行える。
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
まず、以下に説明する本実施形態に係るフェイスシールド1、1A、1Bの基本構成について記述する。
まず、以下に説明する本実施形態に係るフェイスシールド1、1A、1Bの基本構成について記述する。
フェイスシールド1、1A、1Bは、図1、図8および図9に示すように、フェイスカバー本体10と耳掛け部20とを備えており、フェイスカバー本体10は、口元を覆う覆い部11と、顔面に帯状に接触する、覆い部11の端縁に沿って配設された当接部30とを備えており、当接部30は、本体31が柔軟な多孔質材で形成され、内部に微細な活性炭44が含まれてなる。
まず、図1に例示したフェイスシールド1について、さらに具体的に説明する。
まず、図1に例示したフェイスシールド1について、さらに具体的に説明する。
このフェイスシールド1は、覆い部11が上カバー部12と下カバー部13とを備えた構成とされる。これらはいずれも透明(半透明でもよい)な樹脂シート材とされ、素材としては例えばポリ塩化ビニルシートが挙げられる。樹脂シート材としては硬質で弾性変形させやすいものが好適に使用される。
また、下カバー部13は上カバー部12の裏面に沿って上下にスライド可能とされる。覆い部11が口元をカバーした口被覆状態では、上カバー部12の下端部と下カバー部13の上端部とが、下カバー部13が上カバー部12の内側(顔面側)に配されるように重なった状態にある。なおここで、「口元」には口5だけではなく、上唇5a、下唇5bの周囲の近傍部位も含まれる。
この口被覆状態のときには、図1の部分断面図に示すように、上カバー部12の下端の下係合部12aと下カバー部13の上端の上係合部13aとが係合し、下カバー部13が下方にずれにくいようになっている。なお、下係合部13aは上カバー部12の下端縁の略全長にわたり設け、上係合部13aは下カバー部13の上端縁の略全長にわたり設けることが望ましい。また本例では、両方の係合部は突片で構成され、上係合部13aが下係合部12aを引っ掛けるような係合構造とされているが、このような係合構造には限らない。
フェイスシールド1が口被覆状態にあるときには、覆い部11により、図2(a)に示すように顔の目3の下から顎6までの部位が覆われる。また、上カバー部12が下カバー部13よりも前側となるように重なっているため、空中から落下してくる飛沫等が、上下接続部(重なった部分)から覆い部11内へ侵入することが防止される。
また、このフェイスシールド1は、顔面に装着された状態で手指による操作により、下カバー部13を上方にずらすことができ、そうすることで下カバー部13を上カバー部12の裏側(顔面側)に配することができ、その結果、図3に示すように口元を外観露出させることができる。なお、下カバー部13は完全に上カバー部12の裏側に入り込まなくてもよく、図3に示すように下カバー部13の下端部が露出して、その下端部で上唇5aが隠される程度であってもよい。
このような下カバー部13のスライド移動は、左右それぞれの耳2(耳掛け部20)の近傍に設けた連結部14のレバー14c(操作部)を操作することで、より簡単に行うことができる。
この連結部14は、図2(a)(b)に示すように、下カバー部13の表面に形成した柱状の突部14bが、上カバー部12に設けた湾曲形状のスライド溝14aに内側(顔面側)より挿通され、突部14bの先端にレバー14cが配設されてなる。こうして両カバー部は連結されている。
スライド溝14aは表裏で連通する溝形状の開口とされ、その両端部のそれぞれには終端孔14aa、14abが設けてある。突部14bが上終端孔14aaにあるときは下カバー部13が上位置(口露出状態。図3参照)にあり、突部14bが下終端孔14abにあるときは下カバー部13が下位置(口被覆状態。図2(a)参照)にある。
上終端孔14aaおよび下終端孔14abは丸孔とされ、孔径は突部14bよりも十分に大きいが、レバー14cが通過しない程度の大きさとされる。これに対し、スライド溝14aの溝幅は突部14bの径と同程度かそれよりもやや小さくすることが望ましい。このようにして、終端孔間で手指を用いずに移動することがないように、突部14bがスライド溝14aに圧入状態で保持されることが望ましい。
口被覆状態でフェイスシールド1を使用するときには、上カバー部12のシート面は鼻4と前後方向に離反した状態にある一方、下カバー部13のシート面は口5と前後方向に離反した状態にある。このように口被覆状態での使用では、口5がシート面に接触しないように下カバー部13を配置させることが、言葉を発しやすくするために、また接触による不快感を覚えさせないためには望ましい。
この口被覆状態(図2(a)参照)から、フェイスシールド1を装着したまま口露出状態(図3参照)に移行するためには、つぎのような手順を実行すればよい。
まず、レバー14cを手指でつかみ、突部14bをスライド溝14aの下終端孔14abより、斜め上後方に移動させて下カバー部13を斜め上後方にずらす。突部14bはスライド溝14aに圧入状態にあるため、レバー14cから手を離してその位置で突部14bの位置は維持され、その位置を回転軸として下カバー部13の前端部等を手に持ち上方に回転させる。このとき下カバー部13はわずかに後方に移動しているため、下カバー部13は上カバー部12の裏面に密着した状態にはなく、スムーズに回転させることができる。
つぎに、レバー14cの操作により、突部14bをスライド溝14aの上終端孔14aaに向けて斜め上前方に移動させる。突部14bを斜め上前方に移動させることで下カバー部13は上カバー部12の裏面により近接(おおむね密着)した状態となる。この状態では、レバー14cを後方に移動させない限り、下カバー部13は下方にずれにくい。
口露出状態から口被覆状態に移行する場合は、レバー14cの操作により突部14bを上終端孔14aaから下終端孔14abに移動させながら、下カバー部13を下方に回転操作すればよい。
このように、口被覆状態と口露出状態との間の下カバー部13の移動は、レバー14cの操作と、下カバー部13の前端部の連結部14を回転軸とした回転操作とにより簡単に実施することができる。
下カバー部13をスムーズに上下スライドさせるためには、上カバー部12と鼻梁4との間を移動させることが望ましく、そのために本フェイスシールド1の連結部14は上述したように、下カバー部13のシート面の前端部が鼻梁4に接触しない程度に、少し後ろに位置変更できるようになっている。
また、連結部14を後方へずらすためには前後方向に延びた直線的なスライド溝14aであってもよい。ただし、下カバー部13の口露出状態での保持を確実にするためには、下カバー部13のシート面が上カバー部12に密着しているだけでは不十分であるため、後部の連結部14においても、突部14bをスライド溝14aに対し圧入することで保持されるようにすることが望ましい。なお、本例ではさらに、突部14bの下方への移動がしにくいようにスライド溝14aを湾曲形状にしている。
以上のようにして、簡単な操作で下カバー部13を口被覆状態から口露出状態に移動させることができ、下カバー部13を口露出状態に移動させることでフェイスシールド1を装着した状態での飲食が可能となる。口露出状態としては例えば、図3に示すようにストローを咥えられる程度に下唇5bだけが露出する程度であってもよい。
また、本フェイスシールド1は簡易に口被覆状態から口露出状態に変化させることができるため、ときどき覆い部11を開口することで、空気を直接口に取りこむことができる。
また、本実施形態の覆い部11は透明のシート材で形成されているため、口被覆状態でも覆われた口元がシート材を介して見えるため、話し相手にとって、発する言葉による口元の変化をとらえやすくなり、特に相手が聴覚障碍者の場合に有効である。こうして、マスクのように口元が見えないことによる相手側のストレスはなくなる。
連結部14の後方には耳掛け部20がヒンジ連結されている。この耳掛け部20は硬質な合成樹脂材等で形成され、メガネのものと同様、テンプル22とモダン23を有している。すなわち、このフェイスシールド1はメガネと同様にヒンジ部15により折り畳みも可能とされている。この耳掛け部20は、ヒンジ部15の後方に、耳掛け部20の段階的に長さ調節ができるようにした位置調節部21が設けてある。
この位置調節部21は、テンプル22を二重構造にすることで引き伸ばしを可能とした構造とされる。テンプル22の外郭部21aは中核部21bに対しスライド自在とされ、外郭部21aはスライド開口21cを有し、そのスライド開口21cの内縁にスライド方向(長手方向)に沿って連続凹凸21dが設けてある。外郭部21aをスライドさせることで、スライド開口21cの適宜な凹凸に中核部21bより突出させた位置決め突起21eを嵌合させることで長さ調節ができる。
ついで、当接部30について、図4~図7を参照しながら説明する。
ついで、当接部30について、図4~図7を参照しながら説明する。
当接部30は、図4に示すように、上カバー部12の裏面(顔面側の面)の上端縁と下カバー部13の裏面の下端縁には、覆い部11と顔面との間にできた空間を囲むように2つの帯状に設けてある。
これらの当接部30は、覆い部11とは別体とされ、断面が略方形の四角柱状の多孔質材よりなる本体31を有して構成され、その本体31が後述する、活性炭44入りのフィルターシート40を含んだ状態で、本体31の長手方向に沿って延びた一面が覆い部11のシート面に接着剤や糊で接着されている。図例のものは例えば、上の当接部30は断面が10mm×10mmの正方形とされ、下の当接部30は断面が6mm×8mmの薄厚のものとされる。なお、当接部30は直接シート面に固着せずに、面ファスナーを介して固着してもよい。
なお、上カバー部12および下カバー部13は透明シートとされており、接着面31aが透明シートを介して露出するおそれがあるが、接着面31aが表面側から前方から見えないようにするために、接着面31aに相当する部分に色付けするか、グラデーションをかけることが望ましいい。
本体31は、フェイスシールド1を顔に装着したときには、凹凸のある顔面に隙間なく当接させることが望ましく、そのためには例えばスポンジのような柔軟でクッション性のある変形可能な材料で形成されることが望ましい。本図例のものは、上の当接部30は鼻梁4に略直交する方向に沿ってあてがわれ、下の当接部30は顎6を中心として両頬7にあてがわれるようになっている。つまり目3は露出しており、見通しがよい。
また、図5(a)(b)に示すように、本体31の接着面31aには本体31の長手方向に沿って、その接着面31aの幅方向の略中央に全長にわたり細溝32が形成され、その細溝32にはフィルターシート40が装着されている。細溝32は断面の正方形の1辺の長さの2/3~3/4程度の深さとされ、接着面31aの隣接2面に略平行となる溝壁面が形成されている。なお、細溝32は本体31の一部を切除して形成したものでなくてもよく、つまりカッター等により設けた切れ目であってもよい。また、細溝32は接着面31aとは反対側の面に設けてもよい。
フィルターシート40は、接着面31aの溝開口および長手方向の両端面の溝開口からはみ出ないように配設されればよい。本体31はスポンジよりなるため、細溝32を中心に弾性的に両側に開き、その開いた細溝32の中にフィルターシート40を配し、開いた本体31を弾性復帰させることで、本体31とフィルターシート40とを簡易的に一体化させることができる。細溝32を接着面31aとは反対の面に設けたものでは、本体31を覆い部11に固着させた後に、フィルターシート40を細溝32に差し込むこともできる。
フィルターシート40は、上述したように微細な活性炭44を含んで構成されている。本実施形態では、活性炭44として粒径を150~600μmとした、多孔質の球状微粒子活性炭44が用いられている。また、フィルターシート40には無機系抗菌剤46も含まれている。
一般的に抗菌とは、細菌を対象とし、細菌の発生、生育、増殖を抑制することをいうが、本フィルターシート40に含まれる無機系抗菌剤46は、ウイルスを対象とするものであってもよい。つまり、本無機系抗菌剤46は、ウイルスを不活化する抗ウイルス性能を有したものを含んだものとしている。
このフィルターシート40は、図5(c)に示すように、基材シート41と、バインダ層42と、他のシート(覆いシート43)とを重ねてなる多層構造とされる。基材シート41は無機系抗菌剤46を含み、バインダ層42はその内部に球状微粒子活性炭44を含んでいる。
基材シート41は、レーヨン繊維、ポリエステル繊維などよりなる不織布シートとされる。この基材シート41の内部や表面に無機系抗菌剤46が固着されている。なお、基材シート41に用いられる繊維としては化学繊維、合成繊維のほか、植物繊維や動物繊維であってもよい。
無機系抗菌剤46としては、銀、銅、ジルコニウムなどの抗菌作用を有する金属や金属イオンを無機系担体に担持させて構成したものが挙げられ、例えば「ノバロン」(登録商標)(東亜合成株式会社製)が好適に用いられる。この無機系抗菌剤46は粒径を約1μmの微粒子状とされ、繊維に練りこんだ状態で利用することができる。例えば、無機系抗菌剤46と合成樹脂液との混合液を生成し、その混合液に基材シート41を浸し、その後基材シート41を取り出して乾燥させることで、無機系抗菌剤46が浸漬、固着された基材シート41を得られる。例えば、1m2の基材シート41に対し1グラムの無機系抗菌剤46が固着されたものが好適に利用される。なお、このようにして無機系抗菌剤46を固着させてなる基材シート41はその後、水によって無機系抗菌剤46が脱落する可能性は低い。
この種の無機系抗菌剤46としては、細菌を対象とした抗菌剤だけではなく、ウイルスを対象とした抗菌剤(正しくは抗ウイルス剤)もある。前者のものは、抗ウイルス性能はそれほど高くないものの、細菌とウイルスの両方を対象として利用できる。また後者のものは、細菌の代謝を抑制することで抗菌性を発現する。抗ウイルス剤としては、ISO18184基準により抗ウイルス性能が確認された「ノバロンIV1000」が挙げられる。
このように、フィルターシート40に使用する無機系抗菌剤46として、主たる対象が細菌であるものや、主たる対象がウイルスであるものなど種々のものがあるため、1種類の無機系抗菌剤46を用いてもよいが、抗菌機能、抗ウイルス機能の両方を発現させるために、種々の無機系抗菌剤46を組み合わせて用いてもよい。
一方、球状微粒子活性炭44は上述したようにバインダ層42に含まれている(図5(c)参照)。つまり、球状微粒子活性炭44は基材シート41と覆いシート43とを接着するための中間層に含まれるように配されている。
具体的には、図6(a)に示すように、バインダ層42は接着剤42aが熱硬化してひび割れ状態となっており、そのひび割れの隙間に通気路42bが形成され、その通気路42bと、バインダ層42を挟み込んだ両シートの各内部空間とを介して、球状微粒子活性炭44の表面は外気に触れる。
このバインダ層42は、アイオノマー樹脂溶液に浸した状態の球状微粒子活性炭44を、2枚のシートの間に挟み込み、その溶液を40度で硬化させて、球状微粒子活性炭44をシート間に挟んだ状態で固着させて形成されるようにすればよい。
また、バインダ層42は図6(b)のような構造のものでもよい。このバインダ層42は、熱可塑性樹脂粉体42dを接着剤として用い、空気層42cを含んだ状態で、球状微粒子活性炭44の表面の一部を複数の熱可塑性樹脂粉体42dで保持するように点同士で接着した構成とされる。したがって、このバインダ層42であっても、球状微粒子活性炭44は外気と通じている。
このように球状微粒子活性炭44が外気に触れるように配されているため、シート間に挟まれていても球状微粒子活性炭44の多孔質性による吸着機能や脱臭機能を担保することができる。また、このようにバインダ層42が通気路42bや空気層42cを含んでいれば、吸湿、調湿効果も期待できる。
球状微粒子活性炭44は、図7に示すように多孔質性の略真球形状とされる。球状微粒子活性炭44には、球表面に開口した複数の孔部44aが形成されている。これら孔部44aは、球表面から球内部に向かって形成される複数のマクロ孔44bを有しており、各マクロ孔44bには、そのマクロ孔44bを幹としてそこから枝分かれするように複数のミクロ孔44cが形成されている。ミクロ孔44cの孔径寸法は、マクロ孔44bの径よりも小さい。
球状微粒子活性炭44としては、好適には炭素純度が90%以上のものを用いればよく、99.9%以上のものを用いてもよい。また、球径が150~600μmのもの、さらに望ましくは180~500μmのものを用いればよい。また、孔部44aの細孔容積が0.9~2.0cm3/g、細孔ピーク直径が0.5~2.0μm程度のものを用いることが望ましい。ここで、細孔容積とは、球状微粒子活性炭44内に形成された全てのマクロ孔44bおよびミクロ孔44cの孔内の容積の和であり、また、細孔ピーク直径とは、孔部44aにおける球状微粒子活性炭44表面の開口径のうち最大のものを指す。
本実施形態では、球状微粒子活性炭44は、炭化させたフェノール樹脂から構成されており、比表面積が1000m2/g以上とされている。ここで、比表面積とは、球状微粒子活性炭44の球表面の面積、および全ての孔部44aのマクロ孔44bおよびミクロ孔44cを構成する面の面積の合計である。
球状微粒子活性炭44は、例えば以下のようにして製造すればよい。
球状微粒子活性炭44は、例えば以下のようにして製造すればよい。
まず、原料となるフェノール樹脂などを粉砕し、粉砕片を加工して複数の球体を得る。この球体を高温下(例えば700~800℃程度)で炭化させた後、その処理物を高温下(例えば900~1000℃程度)で水蒸気と反応させる(水蒸気賦活)。この水蒸気賦活により多孔質の構造が形成される。その後、精製し不純物を取り除き、ふるい分けを行い、所望の粒径、および所望の孔径を有した多数の孔部44aが形成された球状微粒子活性炭44が得られる。なお、賦活としては、水蒸気賦活に限られず、二酸化炭素や空気などを用いて行なってもよい。また、KOHなどを用いたアルカリ賦活を行なってもよい。
このような球状微粒子活性炭44は、身体に装着されるフェイスシールド1に用いられるため、高温高圧殺菌、高温殺菌、低温殺菌などの種々の殺菌方法にて殺菌されることが望ましい。
球状微粒子活性炭44としては、例えば、B’s Wiper(登録商標)や、特許第4266711号公報および特許第4308740号公報に開示された製法で製造されたものを好適に使用することができる。
また、球状微粒子活性炭44としては、強い圧力や衝撃が加えられても割れて粉々にならず、色素などが皮膚などに付着するおそれがないもの、例えば上記B’s Wiper(登録商標)を利用することが望ましい。さらにpH値が7前後(中性)のものとすることが望ましい。
また、球状微粒子活性炭44の孔部44aに無機系抗菌剤46を含ませてもよい。無機系抗菌剤46は、溶液に溶解または分散させて、球状微粒子活性炭44の孔部44a内に含侵させるようにすればよい。
また、孔部44aには機能性物質45として消臭剤を含ませてもよい。消臭剤としては、臭い成分を活性酸素で酸化して別の物質に変化させてその臭い成分を分解する作用を有するものを用いてもよい。このような消臭剤として、DEORASE(登録商標)がある。このDEORASE(登録商標)は、アルカリ条件での中心金属の脱離による消臭効果の低下が見られず、生体内の酵素に似たサイクル反応をもたらすため、他の化学反応を用いた消臭剤と比べて、格段に消臭効果が持続する。また、一般的に、上記サイクル反応の反応性は、吸湿による水分により低下することが知られているが、DEORASE(登録商標)では、逆に吸湿により反応性が向上することがわかっている。
なお、消臭剤としては、これ以外に、例えば、人工酵素である鉄系フタロシアニンなどを用いたものを採用してもよい。さらに、孔部44aには他の機能性物質45として芳香剤を含ませてもよい。芳香剤としては、柑橘系などの種々の臭い成分を含む物質としてもよく、アロマオイルなどを用いてもよい。また、天然素材からなるものや人工的に合成したものとしてもよい。
上記のような無機系抗菌剤46や消臭剤、芳香剤といった機能性物質45を球状微粒子活性炭44内に含ませる場合、球状微粒子活性炭44を浸したアイオノマー樹脂溶液などの樹脂溶液層中に機能性物質45を溶解または分散させて、球状微粒子活性炭44に吸着させるようにすればよい。球状微粒子活性炭44は超多孔質であるため、この方法により球状微粒子活性炭44の孔部44a内にこれら機能性物質45を簡易に含ませることができる。
このように、球状微粒子活性炭44は、多孔質構造による脱臭機能(臭い吸着機能)を有するだけでなく、上述したように機能性物質45が孔部44aに収蔵されていれば、他の種々の効果を発揮する。なお、活性炭44には空気中に浮遊する、ウイルスを含んだ飛沫や飛沫核を吸着する作用もある。
以上のように、フィルターシート40には、無機系抗菌剤46および球状微粒子活性炭44が固着されている。無機系抗菌剤46は上述したように、基材シート41に直接固着されてもよいし、球状微粒子活性炭44の孔部44aに収蔵されてもよいが、高い抗菌性を発揮させるためには、基材シート41に直接配されることが望ましい。
また、球状微粒子活性炭44については、基材シート41と覆いシート43との間のバインダ層42に配されれば脱落を防止できるが、無機系抗菌剤46と同様、基材シート41中に配されるようにしてもよい。また、図1のようにサンドイッチ構成とはせず、覆いシート43を設けない構成としてもよい。その場合、バインダ層42は設けなくてもよいが、球状微粒子活性炭44を基材シート41の表面に配設するために、図1のバインダ層42と同様の樹脂層を設けてもよい。
以上のようにしてフィルターシート40を当接部30の本体31に合体させることで、当接部30は飛沫等や臭いを遮断できる空気流通路となり得る。また、フェイスシールド1の内部空間と外部との空気流通方向を遮断するようにフィルターシート40が配されているため、飛沫等の遮断効率は大きい。
本例ではフィルターシート40を3層構造としているが、これには限定されない。バインダ層42や覆いシート43はなくてもよく、基材シート41に球状微粒子活性炭44や無機系抗菌剤46を固着させた構成のものであってもよい。
また、フィルターシート40を細溝32に装着する方法に代えて、あるいは加えて、フィルターシート40を本体31の両通過面の一方または両方に貼りつけるようにしてもよい。さらにまた、フィルターシート40を用いずに、球状微粒子活性炭44や無機系抗菌剤46を本体31のスポンジ中に点在させて当接部30を構成してもよい。
具体的には無機系抗菌剤46は、例えばフィルターシート40の基材シート41に浸漬、固着させる方法と同様のやり方でスポンジに含侵させればよい。無機系抗菌剤46が空気流通路の断面の略全面に点在するようにスポンジの全体に浸漬されることが望ましい。
また、球状微粒子活性炭44をスポンジに含ませるには、球状微粒子活性炭44を無機系抗菌剤46の含侵されたスポンジの一方の面に振りかけるように散布してスポンジに内蔵させればよい。無機系抗菌剤46と同様、スポンジの空気流通路の断面の略全面に点在させることが望ましい。
また、スポンジの内部の通気空間は迷路のように複雑に入り組んでいるため、例えば深さ2、3mmまで入り込んだ球状微粒子活性炭44は容易には散布面から外部に飛び出すことはないが、ねんのため通気性のよい不織布などで散布面や他の側面を覆うことが望ましい。また、不織布を配した面は覆い部11の内側の空気流通方向の面に配することが望ましい。
本実施形態に係るフェイスシールド1は、当接部30は覆い部11の周縁の略全体に設けてあるが、どちらか一方に設けたものであってもよい。特に、下カバー部13は上方にスライドさせたときに下の当接部30が口5に接触するおそれがあるため、これを回避するため、下の当接部30を設けない構成としてもよい。
本例のものは覆い部11の周縁の略全体に設けた当接部30が顔面に密着しており、フェイスシールド1というよりはマスクの代わりに利用でき、しかも当接部30が多孔質材であるため、覆い部11が空気を通さない素材であっても空気の流出入が滞留することなくなされる。したがって、通気性の低い覆い部11による息苦しさを感じることはない。また、当接部30により飛沫や花粉の流通を遮断することができ、当接部30の内部に微細な活性炭44が含まれているため、その吸着作用により飛沫核や臭い成分の流出入も効果的に遮断することができる。
また、当接部30は覆い部11とは別体であるため、簡単に取り替えることもできる。当接部30の全体を取り替えてもよいし、本体31のみ、またはフィルターシート40のみを取り替えることができる。細溝32を顔面側の面に設けたものでは、フィルターシート40のみの取り替えがしやすい。
ついで、図8を参照しながら、他のフェイスシールド1Aについて説明する。
ついで、図8を参照しながら、他のフェイスシールド1Aについて説明する。
本フェイスシールド1Aは、図1のものとくらべて、口被覆状態での外観はおおむね同様であるが、口露出状態での外観が異なり、下カバー部13が下方にスライドすることで、上カバー部12の下端と下カバー部13の上端との間に口元を露出する開口ができるようになっている。
このようなスライド構造にするために連結部14は図1の連結部14とは異なる。すなわち、連結部14の形成位置が図1のものとは異なる。
下カバー部13を口被覆状態から下方にずらす際には、まずレバー14cを手指でつかみ、突部14bをスライド溝14aの上終端孔14aaより、斜め下後方に移動させて下カバー部13を斜め下後方にずらす。こうして、上カバー部12の下係合部12aと下カバー部13の上係合部13aとの係合を解除すればよい。
そして、レバー14cから手を離してその位置で下カバー部13を保持し、その位置を回転軸として下カバー部13の前端部等を手に持ち下方に引っ張るように回転させ、その後、突部14bを下終端孔14abまで移動させることで口露出状態にすることができる。
なお、その他の構成、つまり当接部30、耳掛け部20、ヒンジ部15等については図1のものと同様であるため、それらの説明は省略する。
以上に説明した2種のフェイスシールド1、1Aは、下カバー部13をスライドさせるためのスライド溝14a付きの連結部14を備えているが、上カバー部12と下カバー部13とを、左右それぞれ1点で連結し、その点を回転軸として、下カバー部13を直接手で回転させられるものであってもよい。
ようするに、連結部14は上カバー部12と下カバー部13とが連結された部位であるとともに、下カバー部13が回転でき、あるいはスライドをともなって回転できるような構造を有すればよい。
上記2種のフェイスシールド1、1Aは覆い部11が上下に分離しているが、一体のものでもよい。上記フェイスシールド1、1Aは分離しているため当接部30を覆い部11の全周に設けにくく、一部途切れているが、一体物にすれば全周に当接部30を設けることができ、そのため飛沫や花粉、臭い成分の流通をより確実に遮断することができる。当接部30がスポンジ等の多孔質材で形成されているため、空気の流通には問題はない。なお、全体の輪郭は図1、図2のものおおむね同様であるため、図示は省略する。
ついで、図9を参照しながら、他のフェイスシールド1Bについて説明する。このフェイスシールド1Bも覆い部11が一体物とされており、覆い部11が図1のものよりさらに大きい面を覆うことができるようになっている。
このフェイスシールド1Bは、覆い部11が上下に分離していない一体物とされ、また目3(図2(a)参照)をも覆うことのできる大きさのものとされている。覆い部11の周縁には形状を安定させるための枠部11aが設けてある。当接部30は枠部11aの裏側に設けてあり、上端縁側の当接部30は額8(図2(a)、図3参照)に当接する。また覆い部11の耳側端部には、覆い部11の内部空間と外部との空気流通をよくするためのファン24が設けてある。
このファン24は、外部の空気の流入または内部の空気の流出を行うためのものであり、飛沫等の入出を禁止するために、当接部30に用いられるフィルターシート40(図5参照)をファン24の内面側に被せるように設けてもよい。
耳掛け部20は両耳2(図2(a)、図3参照)のそれぞれに掛けられるようになっているが、両耳掛け部20はバンド体25でつながっている。耳掛け部20、バンド体25および覆い部11の枠部11aは合成樹脂などで一体に成形されており、バンド体25にはファン駆動用のバッテリ部26が内蔵されている。ファン駆動用のスイッチは、枠部11aと耳掛け部20との境界部分などに設けられればよい。また、バンド体25は長さ調節が自在とされている。
このフェイスシールド1Bによれば、ファン24が設けてあるため、当接部30による通気を補助することができる。このフェイスシールド1Bは口元が開口しない構造であるため、ファン24を作動させることが口露出状態の代わりとなり得る。
1、1A、1B フェイスシールド
2 耳
3 目
4 鼻、鼻梁
5 口
5a 上唇
5b 下唇
6 顎
7 頬
8 額
10 フェイスカバー本体
11 覆い部
12 上カバー部
13 下カバー部
14 連結部
20 耳掛け部
21 位置調節部
30 当接部
31 本体
31a 接着面
32 細溝
40 フィルターシート
44 活性炭(球状微粒子活性炭)
46 無機系抗菌剤
2 耳
3 目
4 鼻、鼻梁
5 口
5a 上唇
5b 下唇
6 顎
7 頬
8 額
10 フェイスカバー本体
11 覆い部
12 上カバー部
13 下カバー部
14 連結部
20 耳掛け部
21 位置調節部
30 当接部
31 本体
31a 接着面
32 細溝
40 フィルターシート
44 活性炭(球状微粒子活性炭)
46 無機系抗菌剤
Claims (10)
- フェイスカバー本体と耳掛け部とを備えたフェイスシールドであって、
前記フェイスカバー本体は、口元を覆う覆い部と、顔面に帯状に接触する、該覆い部の端縁に沿って配設された当接部とを備えており、
前記当接部は、本体が柔軟な多孔質材で形成され、内部に微細な活性炭が含まれてなることを特徴とするフェイスシールド。 - 請求項1において、
前記活性炭は粒径を150~600μmとした、多孔質の球状微粒子活性炭であることを特徴とするフェイスシールド。 - 請求項1または2において、
前記当接部は、角柱状とされ、該当接部を介して、前記覆い部と顔面との間にできる内部空間と、外部との相互の通気がなされるように構成され、前記当接部における通気方向に交差する面に前記活性炭が点在するように固着されていることを特徴とするフェイスシールド。 - 請求項1~3のいずれか1項において、
前記当接部には無機系抗菌剤がさらに含まれていることを特徴とするフェイスシールド。 - 請求項1~4のいずれか1項において、
前記覆い部は上カバー部と下カバー部とを備え、該下カバー部が該上カバー部の面に沿ってスライド可能とされることを特徴とするフェイスシールド。 - 請求項1~5のいずれか1項において、
前記耳掛け部は硬質材で形成され、前記フェイスカバー本体に対し折り畳み可能とされることを特徴とするフェイスシールド。 - 請求項1~6のいずれか1項において、
前記覆い部は、透明または半透明とされることを特徴とするフェイスシールド。 - 請求項1~7のいずれか1項において、
前記当接部は、鼻梁に略直交する方向に沿ってあてがわれることを特徴とするフェイスシールド。 - 請求項1~8のいずれか1項において、
前記耳掛け部は長さ調節が可能とされることを特徴とするフェイスシールド。 - 請求項1~9のいずれか1項において、
前記覆い部にはファンが設けられていることを特徴とするフェイスシールド。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020170883A JP2022062763A (ja) | 2020-10-09 | 2020-10-09 | フェイスシールド |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020170883A JP2022062763A (ja) | 2020-10-09 | 2020-10-09 | フェイスシールド |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022062763A true JP2022062763A (ja) | 2022-04-21 |
Family
ID=81255230
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020170883A Pending JP2022062763A (ja) | 2020-10-09 | 2020-10-09 | フェイスシールド |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022062763A (ja) |
-
2020
- 2020-10-09 JP JP2020170883A patent/JP2022062763A/ja active Pending
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