JP2022059092A - 眼圧下降用医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】眼圧下降作用を有する、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤の提供。【解決手段】ピリジン-3-イル 4-(アニリノカルボニル)ピペリジン-1-カルボキシラート又はその塩が、眼圧下降作用を有することが確認された。従って、当該化合物又はその塩は、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療に使用できる。【選択図】なし
Description
本発明は、眼圧下降用医薬、殊に緑内障又は高眼圧症の予防又は治療に有用な医薬組成物に関する。
緑内障は、日本における失明原因の常に上位を占め、社会的にも非常に重要な疾患である。緑内障とは、視神経が障害され視野が狭くなる病気で、眼圧の上昇がその病因の一つと言われている。緑内障の視神経障害および視野障害は、基本的には進行性であり、非可逆的である。また、緑内障では、患者の自覚なしに障害が徐々に進行するため、その早期発見と早期治療による障害の進行の阻止あるいは抑制が重要課題となっている。
高眼圧症とは、視神経に障害はなく視野が正常であるものの、眼圧が正常値(約10~20mmHg)を超えている病態である。眼圧が高いと、視神経が障害されやすくなり、緑内障になるリスクが高くなることが知られている。
現在、緑内障に対するエビデンスに基づいた唯一確実な治療法は眼圧下降である。緑内障に対する眼圧下降治療には、薬物治療、レーザー治療、手術治療の選択肢があるが、薬物治療が治療の基本となっている。現在、緑内障治療薬の多くは点眼薬である。眼圧を上げる眼房水の排泄を促進して眼圧を下げるプロスタグランジン関連薬ラタノプロストや、眼房水の産生を抑制して眼圧を下げる交換神経β受容体遮断薬カルテオロールなど、10種類以上の点眼薬がある。一種類の点眼薬だけで効果が少ないと判断された場合は、複数の点眼薬を組み合わせて処方される。
点眼は、1回に1滴、複数のときは5分以上空けて点眼することが、なるべく副作用を少なくして、確実に効果を得る点眼方法である。しかしながら、慢性疾患で自覚症状に乏しい緑内障においては、点眼による治療のアドヒアランス(即ち、患者が治療方針を納得して自分の意思で正しく治療を受けること)がきわめて悪いことが判明している。例えば、点眼間隔を守らない、点眼の際に、間を開けず連続点眼してしまう、一度に数滴点眼し期間内の点眼薬切れが起きる、瞬目が多くうまく点眼できていない等、効果減弱や副作用増加につながる恐れがある。このような低い点眼のアドヒアランスが、緑内障の進行に関与することが懸念されている。
さらに、点眼薬の防腐剤として最も汎用されているベンザルコニウムは、長期にわたって何度も点眼すると角膜障害が起こることが知られている。
また、唯一の経口眼圧下降薬であるアセタゾラミドは、眼房水の産生を抑制して眼圧を下げる炭酸脱水酵素阻害薬であるが、代謝性アシドーシスや低カリウム血症等の全身性副作用があり、慢性的な使用はされていない。
1971年に、少数の健康人において、マリファナの喫煙は眼圧を下降させることが報告された。その報告以降、カンナビジオール、カンナビノール、内因性カンナビノイド、およびいくつかの合成カンナビノイドを含む様々なカンナビノイドの全身投与または局所投与により、眼圧を下降させることが報告されている(Biomed. Pharmacother. 2017, 86, 620-627、Br. J. Ophthalmol. 2004, 88, 708-713)。例えば、大麻の主活性成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-tetrahydrocannabinol:THC)は、緑内障患者において眼圧下降作用が認められたことが報告されている。一方で、カンナビノイド製剤は、経口吸収性が乏しく、さらに依存性や起立性低血圧等の中枢性の副作用の懸念が報告されている(ファルマシア 2016, 52, 850-854)。
さらに、THCの生体内標的分子としてカンナビノイド受容体タイプ1およびタイプ2(cannabinoid receptor type 1 and type 2:CB1 and CB2)が、さらに、当該CB受容体に対する生体内アゴニストとしてアナンダミド(anandamide:AEA)および2-アラキドノイルグリセロール(2-arachidonoylglycerol:2-AG)が発見され、それらに対する主要分解酵素が、脂肪酸アミド加水分解酵素(fatty acid amide hydrolase:FAAH)およびモノアシルグリセロールリパーゼ(monoacylglycerol lipase:MAGL)であることが報告されている(Balkan Med. J. 2014, 31, 115-120)。
FAAH活性を阻害するカルバミン酸誘導体が、神経因性疼痛、嘔吐、不安症、摂食行動の変化、運動障害、緑内障、脳損傷、および循環器病を含むFAAH阻害により有効となり得る疾患の処置に有用であると開示されている(WO2003/065989、WO2004/033422)。しかしながら、眼圧下降作用、又は緑内障の治療に対する有効性については具体的に開示されていない。
また、頻尿・尿失禁、過活動膀胱及び/又は疼痛の治療に有用なFAAH阻害作用を有するピリジル 非芳香族含窒素へテロ環-1-カルボン酸エステル誘導体が特許文献1に開示され、その実施例173には、ピリジン-3-イル 4-(アニリノカルボニル)ピペリジン-1-カルボキシラート(以下、ASP8477と記載する場合がある)が開示されている。さらに特許文献1には、当該明細書に記載の化合物が優れたFAAH阻害作用を有することから、精神性疾患をはじめとする多数の疾患の治療薬として有用と記載され、その一つに緑内障が含まれている。また、上記特許に開示されるASP8477について鎮痛効果に対する報告(Eur. J. Pharmacol. 2017, 815, 42-48、及び、WO2011/136308)がある。更に、健康成人女性を対象として鎮痛効果を検証した臨床試験(非特許文献1)や、神経因性疼痛の患者を対象として臨床試験(非特許文献2)が実施されたことが報告されている。しかしながら、ASP8477の眼圧に対する作用については現在まで報告がない。
FAAH阻害活性を有する化合物であるURB597(化学名:シクロヘキシルカルバミン酸 3'-カルバモイル-ビフェニル-3-イルエステル)が、ラットへの腹腔内投与において、網膜細胞の保護作用を示した報告がある(非特許文献3)。また、FAAH阻害活性を有するURB597と、FAAH阻害活性に加えてメラトニン受容体アゴニスト作用を併せ持つ化合物との、ウサギ点眼における眼圧下降作用を比較した報告がある(非特許文献4)。当該文献では、試験したFAAH阻害活性を有する7化合物中、URB597を含む4化合物で点眼による有意な眼圧下降作用が見られたものの、他の3化合物では有意な作用は見られなかったことが報告されている。
Klaus Schaffler et al., Pain Medicine 2018, 19, 1206-1218.
Daniel Bradford et al., Pain Medicine 2017, 18, 2388-2400.
Carlo Nucci et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2007, 48, 2997-3004.
Gilberto Spadoni et al., J. Med. Chem. 2018, 61, 7902-7916.
本発明の課題は、カンナビノイド製剤に報告される依存性や中枢性の副作用の懸念が低く、継続的な投与が可能な、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤の提供である。
本発明者らは、ASP8477又はその塩が、ヒトにおいて良好な眼圧下降作用を有し、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療に有用であることを知見して本発明を完成した。
即ち、本発明は、ASP8477又はその塩を有効成分として含有する、眼圧下降用医薬組成物、具体的には、ヒトの緑内障又は高眼圧症の予防又は治療用である医薬組成物に関する。特には、経口投与用である前記医薬組成物に関する。さらに、投与1回あたり10~100mgのASP8477を経口投与するための、前記医薬組成物にも関する。
また、本発明は、ASP8477又はその塩の有効量を対象に投与することからなる眼圧下降方法、更に、眼圧下降用医薬組成物の製造のためのASP8477又はその塩の使用、眼圧を下降させるためのASP8477又はその塩の使用、及び、眼圧を下降させるためのASP8477又はその塩の有効量を含有する医薬組成物にも関する。ここに「対象」とは処置を必要とするヒト(患者)又は哺乳類の動物であり、ある態様としてはヒト(患者)である。
更にまた、本発明は、ASP8477又はその塩の有効量を患者に投与することからなる緑内障、又は高眼圧症の予防又は治療方法、更に、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療用医薬組成物の製造のためのASP8477又はその塩の使用、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療のためのASP8477又はその塩の使用、及び、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療のためのASP8477又はその塩の有効量を含有する医薬組成物にも関する。
ASP8477又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、本発明の眼圧下降用医薬組成物は、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤として使用できる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の有効成分であるASP8477又はその塩は、特許文献1の実施例173に記載される公知化合物であり、健康成人女性を対象として鎮痛効果を検証した臨床試験(非特許文献1)や、神経因性疼痛の患者を対象として臨床試験が実施されたことが報告されている(非特許文献2)。
本発明者らは、ASP8477の経口投与により行われた第一相臨床試験の結果を詳細に検討した結果、ASP8477が良好な眼圧下降を示すことから、ASP8477又はその塩を有効成分として含有する医薬組成物が眼圧下降剤として有用であること、よって、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療に使用できることを見出した。さらに、ASP8477は全身投与においてもカンナビノイド製剤に報告される依存性や中枢性の副作用の懸念が低いことから、経口投与等の全身投与による眼圧下降薬、さらに、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療薬として有用であることを見出したものである。
殊に、本発明者らは、ASP8477の上記作用が、良好なFAAH阻害活性のみならず、ASP8477の良好な眼組織への移行性によるものであることを知見した。このような眼組織への移行性は、他のFAAH阻害活性を有する化合物、例えばASP3652(Urology 2017, 103, 191-197)では観察されていない。
本発明のASP8477又はその塩を有効成分として含む医薬組成物は、その良好なFAAH阻害活性に基づき良好な眼圧下降作用が期待できる。後記実施例に示す様に、ASP8477又はその塩は良好な眼組織への移行性を有することから経口投与によっても良好な眼圧下降作用が確認されている。慢性疾患で自覚症状に乏しい緑内障においては、点眼による治療のアドヒアランスがきわめて悪いことから、継続的な投与に適する経口剤の有用性は高い。さらに、経口剤は、多くの点眼薬に防腐剤として添加されているベンザルコニウムによる角膜障害等の懸念もない。よって、本発明のASP8477又はその塩を有効成分として含む経口投与用である医薬組成物は、新たなタイプの眼圧下降剤となり得ることが期待される。
本明細書において、ASP8477の塩とは、ASP8477の製薬学的に許容される塩であり、具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。ASP8477のある態様としては、塩を形成していない、即ち、フリー体である。
更に、本発明のASP8477又はその塩には、ASP8477及びその塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。
ASP8477又はその塩は、特許文献1に記載の方法、或いは当業者に周知の反応を用いて製造することができる。ある態様としては、特許文献1の実施例173に記載の方法により製造することができる。
ASP8477又はその塩を有効成分として含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。ある態様としては、投与は前記の経口投与又は注射剤による全身投与であり、ある態様としては前記の経口投与である。
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このよう
な固体組成物においては、ASP8477又はその塩を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
な固体組成物においては、ASP8477又はその塩を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
通常経口投与の場合、1回の投与量は、フリー体のASP8477換算で約0.1~500 mg、好ましくは1~200 mg、更に好ましくは10~150 mg、また更に好ましくは10~100 mg、また好ましくは10~30 mgが適当であり、また別の態様として60mg~100mgが適当であり、これを1日1回、あるいは2回~4回投与する。好ましくは1日1~3回、更に好ましくは1日1~2回、また更に好ましくは1日1回、また好ましくは2回投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001~10 mg/kgが適当で、1日1回~複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001~100 mg/kgを1日1回~複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
実施例1
閉経後健康成人女性の被験者を用いた単回経口投与臨床試験
(方法)
閉経後健康成人女性の被験者(計36人)に、フリー体のASP8477の3, 10, 20, 30, 60, 100, 150及び200 mgの8用量及び有効成分を含まないプラセボ(偽薬)を、同一の被験者に時期を変えて被験薬とプラセボを投与する3時期クロスオーバー法により、単回経口投与した。
閉経後健康成人女性の被験者を用いた単回経口投与臨床試験
(方法)
閉経後健康成人女性の被験者(計36人)に、フリー体のASP8477の3, 10, 20, 30, 60, 100, 150及び200 mgの8用量及び有効成分を含まないプラセボ(偽薬)を、同一の被験者に時期を変えて被験薬とプラセボを投与する3時期クロスオーバー法により、単回経口投与した。
眼圧は非接触眼圧計にて測定した。さらに、被験薬物投与後2時間又は4時間における眼圧から、ベースライン(各試験の1日目の投与前測定値)に対する変化率(100×[(被験薬物投与後2又は4時間における値 - ベースライン時の値)/ベースライン時の値])を計算し、共分散分析法を用いて、各測定時点での眼圧の変化率を統計解析し、P値<0.05を統計学的に有意な差があるものとして、図1に*で示した。
(結果)
ASP8477は、投与後2時間および4時間のいずれにおいても、左右眼の両方で眼圧を下降させた。さらに投与後4時間では、ASP8477の100 mgまたはそれ以上の用量において、左右両眼でプラセボと比較して眼圧の有意な下降が見られた(200 mgの右眼を除く)。また左眼では、投与後2時間および4時間の両方又は一方で20 mgの用量から、プラセボに対する眼圧の有意な下降が観察された。右眼では、10 mg(投与後4時間)および20 mg(投与後2時間)の用量で、プラセボに対する有意な眼圧の下降が観察されたが、30および60 mgの用量、及び200 mg(投与後4時間)では統計的に有意な差に達しなかった。
ASP8477は、投与後2時間および4時間のいずれにおいても、左右眼の両方で眼圧を下降させた。さらに投与後4時間では、ASP8477の100 mgまたはそれ以上の用量において、左右両眼でプラセボと比較して眼圧の有意な下降が見られた(200 mgの右眼を除く)。また左眼では、投与後2時間および4時間の両方又は一方で20 mgの用量から、プラセボに対する眼圧の有意な下降が観察された。右眼では、10 mg(投与後4時間)および20 mg(投与後2時間)の用量で、プラセボに対する有意な眼圧の下降が観察されたが、30および60 mgの用量、及び200 mg(投与後4時間)では統計的に有意な差に達しなかった。
なお、本臨床試験において、死亡、重篤な有害事象及び中止に至った有害事象は認められなかった。また、重度の有害事象として、本剤200 mgを投与した被験者1例(59歳白人女性)で意識消失を伴う低血圧が認められ、治験薬との関連性は否定されなかった。その他の有害事象の程度はいずれも軽度又は中等度であった。
(考察)
β遮断薬の点眼薬として知られるカルテオロールの臨床試験結果(カルテオロール塩酸塩 LA点眼液1%、カルテオロール塩酸塩 LA点眼液2% 医薬品インタビューフォーム 第4版)によれば、カルテオロール(LA点眼液2%)を健康成人男子に1回1滴点眼した結果、点眼前に比して有意な眼圧下降が認められたことが記載されている。その眼圧最大変化値は3.49 mmHgであり、上記ASP8477を右眼に100 mg点眼した際のそれと比較した結果、ほぼ同等であった。また、プロスタグランジン関連薬の点眼薬として知られるラタノプロストの臨床試験結果(ラタノプロスト点眼液0.005% 医薬品インタビューフォーム 第6版)によれば、ラタノプロスト(点眼液0.005%)を健康成人男子に1回1滴点眼した結果、点眼前に比してその眼圧最大変化値は3.73 mmHgであり、前記ASP8477のそれとほぼ同等であった。
β遮断薬の点眼薬として知られるカルテオロールの臨床試験結果(カルテオロール塩酸塩 LA点眼液1%、カルテオロール塩酸塩 LA点眼液2% 医薬品インタビューフォーム 第4版)によれば、カルテオロール(LA点眼液2%)を健康成人男子に1回1滴点眼した結果、点眼前に比して有意な眼圧下降が認められたことが記載されている。その眼圧最大変化値は3.49 mmHgであり、上記ASP8477を右眼に100 mg点眼した際のそれと比較した結果、ほぼ同等であった。また、プロスタグランジン関連薬の点眼薬として知られるラタノプロストの臨床試験結果(ラタノプロスト点眼液0.005% 医薬品インタビューフォーム 第6版)によれば、ラタノプロスト(点眼液0.005%)を健康成人男子に1回1滴点眼した結果、点眼前に比してその眼圧最大変化値は3.73 mmHgであり、前記ASP8477のそれとほぼ同等であった。
これらの比較結果から、上記ASP8477の経口投与による眼圧下降作用は、既存の点眼による眼圧下降薬と同等の効果を示しており、臨床的に有用な効果であることが確認された。
実施例2
健康成人女性を被験者とする反復経口投与臨床試験
健康成人女性を被験者とする反復経口投与臨床試験
健康成人女性に、フリー体のASP8477の3用量(20, 60, 100 mg)またはプラセボを1日1回、同一の被験者に7日間ごとに用量を20, 60, 100 mgと増量しながら、合計21日間反復経口投与した試験において、ASP8477投与群の被験者ではプラセボ投与群に比して有意な眼圧の下降が観察された。
ピリジン-3-イル 4-(アニリノカルボニル)ピペリジン-1-カルボキシラート又はその塩を有効成分として含有する医薬組成物は、眼圧下降作用を有し、緑内障及び/又は高眼圧症の予防又は治療剤として使用できる。
Claims (4)
- ピリジン-3-イル 4-(アニリノカルボニル)ピペリジン-1-カルボキシラート又はその塩を有効成分として含有する、眼圧下降用医薬組成物。
- ヒトの緑内障又は高眼圧症の、予防又は治療用である請求項1記載の医薬組成物。
- 経口投与用である請求項1又は2記載の医薬組成物。
- 投与1回あたり10~100mgのピリジン-3-イル 4-(アニリノカルボニル)ピペリジン-1-カルボキシラートを経口投与するための、請求項3記載の医薬組成物。
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WO2020166679A1 (ja) | 2020-08-20 |
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