JP2022045195A - デリケートエリアのかぶれの検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】かぶれの有無又はかぶれ発症リスクを検査する方法、及びかぶれ抑制剤の探索又は評価方法を提供する。【解決手段】 以下の工程(A)~(C)を含む、かぶれの有無又はかぶれ発症リスクの検査方法。(A)被験者のデリケートエリアの皮膚から皮膚由来サンプルを採取する工程(B)前記皮膚由来サンプル中のカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定する工程(C)前記カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを基準値と比較する工程【選択図】なし

Description

本発明は、デリケートエリアのかぶれの検査、及びかぶれ抑制剤を評価又は探索する方法に関する。
女性の陰部(デリケートエリア)は生理やおりもの、汗による蒸れや下着、生理用ナプキンのこすれ等によってかぶれが起こることが多くみられる。斯かるデリケートエリアのかぶれは、尿や血液等の排泄物や生理用品等の刺激により生じる非アレルギー性の接触皮膚炎であると考えられ、特に月経期や月経直後において強いかゆみと発疹を伴い、ひどくなると腫れたり水疱ができる場合もある。したがって、かぶれを生じさせないためには、前もって原因物質との接触を避けるべく、デリケートエリアを常に清潔に保つこと、刺激の少ない下着や生理用品を選択することなどの対策が必要とされる。
従来、デリケートエリアのかぶれを生じる人は月経の度にかぶれ症状に悩むことが多い一方で、かぶれ症状が出ない人は何の皮膚トラブルもなく月経を終えることが多いといわれている。またかぶれや痒みは、敏感肌やアレルギー体質の人が起こりやすい傾向があること、また、ストレスや疲れで身体の抵抗力が低下している場合に起こりやすいと言われている。このことからかぶれをおこしやすい皮膚側の要因があるのではないかと予想されるが、詳しい因果関係はこれまでに解明されていない。
近年、皮膚性状と皮膚に発現する成分、特に角層剥離酵素の関連性が報告されており、敏感肌やアトピー性皮膚炎については、敏感肌モデルマウスから採取された角層細胞に含まれるカリクレイン6及びカリクレイン14のプロテアーゼ活性が、正常肌モデルマウスから採取された角層細胞に比べて高いことが報告されている(特許文献1)。
しかしながら、デリケートエリアのかぶれについては、角層剥離酵素との関係は全く報告されていない。
特開2009-153447号公報
本発明は、デリケートエリアのかぶれの有無又はかぶれ発症リスクを検査する方法、及びかぶれ抑制剤の探索又は評価方法を提供することに関する。
本発明者らは、女性のデリケートエリアの皮膚成分を網羅的に解析し、かぶれとの関連性を調べたところ、特定の角層剥離酵素の発現がかぶれ群において亢進しており、これを指標としてかぶれの有無又はかぶれ発症リスクを評価でき、また、かぶれ抑制剤をスクリーニングできることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)~2)に係るものである。
1)以下の工程(A)~(C)を含む、デリケートエリアのかぶれの有無又はかぶれ発症リスクの検査方法。
(A)被験者のデリケートエリアの皮膚から皮膚由来サンプルを採取する工程
(B)前記皮膚由来サンプル中のカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定する工程
(C)前記カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを基準値と比較する工程
2)以下の工程(a)~(c)を含む、デリケートエリアのかぶれ抑制剤の探索又は評価方法。
(a)カテプシンD又はカリクレイン7を発現可能な細胞若しくはその抽出液に被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞若しくはその抽出液におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定する工程
(c)前記カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを抑制する被験物質をかぶれ抑制剤として選択又は評価する工程
本発明によれば、デリケートエリアのかぶれの有無又はかぶれ発症リスク、すなわちかぶれが生じているか否か、或いはかぶれ易いか否かを客観的に測定又は判定することが可能となる。これにより、例えば、被験者は、かぶれの有無を客観的に認識できるとともに、適切なかぶれ対策を講じることができ、症状の悪化を抑制し、かぶれの発症を未然に防止できる。また、本発明によれば、かぶれの抑制に有用な素材を探索することができる。
非かぶれ群及びかぶれ群のデリケートエリアの角層剥離酵素類の発現量(プロテオーム解析)。 非かぶれ群及びかぶれ群のデリケートエリアの角層剥離酵素類(カリクレイン6、カリクレイン8、カリクレイン9、カリクレイン10)の発現量(プロテオーム解析)。 非かぶれ群及びかぶれ群のデリケートエリアのカテプシンD及びカリクレイン7の発現量(ウェスタンブロット解析)。 デリケートエリアのかぶれ抑制素材によるカテプシンD活性の変動
本発明における「かぶれ」とは、何らかの刺激物質や特定の物質が皮膚に接触することによって起きる接触皮膚炎を指し、より詳細には刺激性接触皮膚炎(一次刺激性接触皮膚炎)を指す。その症状は、原因物質の接触部位に一致して、紅班、丘疹、浮腫、小水疱、水疱等が生じ、強い掻痒を伴う。
例えば、生理用ナプキンやおむつなど、人体に直接接触する吸収性物品によって生じるデリケートエリアのかぶれや乳幼児の排尿部、肛門部、臀部、鼠蹊部、腰部等のかぶれがその代表例として挙げられる。
本発明において、「デリケートエリア」とは、女性の陰部(股間)のことを意味し、本明細書において、「陰股部」又は「デリケートエリア陰股部」とは、デリケートエリアのうち、鼠蹊部から陰唇部の間の部分を意味する。
本発明において、「デリケートエリアのかぶれ発症リスク」とは、デリケートエリアのかぶれの易罹患性(かぶれ易さ)をいう。すなわち、本発明において、あるヒト個体が高リスク群であるとは、該ヒト個体がデリケートエリアのかぶれを発症する危険率が高いと予想されることを意味し、低リスク群であるとは、該ヒト個体がデリケートエリアのかぶれを発症する危険率が低いと予想されることを意味する。
本発明における「カテプシンD」は、表皮角層の剥離を促す角層剥離酵素の一つであり、デスモソームの分解、コーニファイドエンベロープの成熟化に関与することが知られている酸性プロテアーゼを指す。カテプシンD遺伝子の塩基配列は、例えば、ヒト、マウスにおいて公知であり、例えば、ヒトカテプシンD遺伝子は、NCBI accession number NP_001900.1として登録されている。
また、「カリクレイン7」は、表皮角層の剥離を促す角層剥離酵素の一つとして知られているキモトリプシン型セリンプロテアーゼを指す。カリクレイン7遺伝子の塩基配列は、例えば、ヒト、マウスにおいて公知であり、例えば、ヒトカリクレイン7遺伝子は、NCBI accession number NP_001193982.1として登録されている。
後記実施例のプロテオーム解析の結果に示すように、角層剥離酵素類のうちカテプシンD及びカリクレイン7の発現量は、非月経期又は月経直後の少なくとも一方において、非かぶれ群と比較してかぶれ群で発現量が有意に高かった(図1)。一方、同じ角層剥離酵素類であっても、カリクレイン6、カリクレイン8、カリクレイン9、カリクレイン10では群間の差は認められず、カリクレイン14については検出されなかった(図2)。また、ウェスタンブロット解析によっても、カテプシンD及びカリクレイン7という特定タンパク質の発現量が非かぶれ群と比較してかぶれ群で多いことが確認された(図3)。したがって、カテプシンD及びカリクレイン7という特定タンパク質の発現レベルを指標として、デリケートエリアにおけるかぶれの有無又はかぶれ発症リスクを評価することができる。ここでかぶれ発症リスクを評価するとは、かぶれの発症の可能性、皮膚炎の病態の進行度、皮膚炎の治癒の程度や治療効果などを評価することを含むものとする。また、これら特定タンパク質の発現レベルを指標として、かぶれ抑制剤の評価又は探索が可能である。
本発明のかぶれの有無又はかぶれ発症リスクの検査方法は、以下の工程(A)~(C)を含む。
(A)被験者のデリケートエリアの皮膚から皮膚由来サンプルを採取する工程
(B)前記皮膚由来サンプル中のカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定する工程
(C)前記カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを基準値と比較する工程
工程(A)の被験者の皮膚由来サンプルの採取において、採取する部位は、デリケートエリアの「陰股部」又は「陰唇部」が好ましい。採取時期はかぶれ症状を発症している月経直後(好ましくは月経終了3日以内)でも、月経が終了している非月経期の症状が軽減した時期(例えば月経終了10~14日後)でもよい。
皮膚由来サンプルとしては、角層、皮膚表上脂質、汗などが挙げられるが、角層、皮膚表上脂質が好ましく、角層がさらに好ましい。皮膚由来サンプルの採取方法としては、角層を採取する場合、被験者の所定部位から、常法により適宜選択することができる。例えば、接着テープの接着面を所定の部位に貼り付け、その後接着テープを剥離して皮膚角層を採取する方法(テープストリッピング法)を好ましく採用することができる。
接着テープとしては、例えばフィルムマスキングテープ(寺岡製作所製)やPPSテープ(ニチバン製)が挙げられる。
皮膚表上脂質を採取する場合、あぶら取りフィルムやあぶら取り紙などのシート状素材へ吸収させることにより採取することが可能である。
工程(B)において、カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルの測定としては、カテプシンD又はカリクレイン7の遺伝子発現量(例えばmRNAの発現量)、又はタンパク質の発現量やその機能(酵素活性等)を測定することが挙げられ、その方法は、当該分野で通常使用される任意の解析方法によって行うことができる。
遺伝子発現の解析方法としては、例えば、ドットブロット法、ノーザンブロット法、RNaseプロテクションアッセイ法、ルシフェラーゼ等によるレポーターアッセイ、RT-PCR法、DNAマイクロアレイ等が挙げられ、タンパク質発現の解析方法としては、ウェスタンブロッティング法、免疫染色法、ELISA、バインディングアッセイ等が挙げられる。また、タンパク質の活性測定法としては、例えば酵素活性測定法等が挙げられる。本発明においては、ウェスタンブロッティング法や酵素活性測定法を用いるのが好ましい。
ウェスタンブロッティング法によるタンパク質発現の解析に用いられる抗カテプシンD抗体としては、例えばCathepsinD:AF1014(Human Cathepsin D antibody Polyclonal Goat IgG,R&D systems)、抗カリクレイン7抗体としては、例えばKallikrein7:AF2624(Human Kallikrein 7 antibody Polyclonal GoatIgG R&D systems)が例示できる。
また、酵素活性の測定に用いられる基質としては、カテプシンDについては、例えば(MOCAc-Gly-Lys-Pro-Ile-Leu-Phe-Phe-Arg-Leu-Lys(Dnp)-D-Arg-NH(Cat.No.3200-v、ペプチド研究所)、カリクレイン7については、例えばSuc-Leu-Leu-Val-Tyr-MCA(CatNo3120-v、ペプチド研究所)が挙げられる。
カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルをウェスタンブロッティング法により測定する場合、以下に示す処理手段によりタンパク質抽出液を調製し、測定に供されるのが好ましい。
すなわち、接着テープ等により採取された角層組織を、トルエン、イソプロパノールで抽出したのち、35℃で乾固する。得られた角層ペレットに可溶化液を加え、超音波破砕を行う。その後30℃に一昼夜置くことで、可溶化を行う。遠心で上清を回収し、Laemmliサンプルバッファーを加え、100℃で5分加熱することでSDS化処理を行う。得られたSDS化サンプルを常法に従い、ポリアクリルアミドゲルにて、分離泳動を行う。セミドライ方式でPVDF膜に転写し、カテプシンDあるいはカリクレイン7の特異抗体とHRP標識された2次抗体を反応させる。HRP標識をECL-PRIMEにて発光をさせ、バンドを検出、定量する。
カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを酵素活性測定法により測定する場合、以下に示す処理方法によりタンパク質抽出液を調製し、測定に供されるのが好ましい。
すなわち、接着テープ等により採取された角層組織をトルエンで抽出した後、窒素ガス吹付下で乾固する。得られた角層ペレットに可溶化液を加え、4℃に一昼夜置くことで、可溶化を行う。遠心で得られた上清を粗酵素液とし、カテプシンDあるいはカリクレイン7の活性測定用の蛍光基質と混合して、37℃で適時反応させ、生成物を蛍光量として定量する。
次いで、測定されたカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルが基準値と比較される(工程(C))。
基準値としては、一態様として、被験者自身の健常肌部(非かぶれ部)の角層におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルが挙げられる。また、別の一態様としては、健常肌を有する人の同一評価対象部位の角層におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルが挙げられる。健常肌を有する人の角層のカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルは、複数人の健常肌を有する人からのデータの平均値を使用することができる。または、無作為に抽出した被験者のカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルの分布に基づき、適宜健常肌に相当する基準値を設定できる。
尚、かぶれの症状の判定は、例えば、医師が紅班、丘疹、浸軟、落屑について5段階(0:なし、1:軽微、2:軽度、3:中等度、4:重度)評価を行った場合に、紅班スコアが0であった被験者を非かぶれ者とし、1以上であった被験者をかぶれ者とすることが挙げられる。
このように比較した結果、測定されたカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルが、例えば基準値より有意に大きい場合には「かぶれである」又は「かぶれ発症のリスクが高い」(かぶれ群)と判定でき、例えば基準値より有意に小さい場合には「かぶれが無い」又は「かぶれ発症リスクは低い」(非かぶれ群)と評価できる。尚、カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルが、基準値より有意に大きい場合には、かぶれを呈していなくとも、かぶれのリスクが高いと評価することができる。
本発明のかぶれ抑制剤の探索又は評価方法は、以下の工程(a)~(c)を含む。
(a)カテプシンD又はカリクレイン7を発現可能な細胞、あるいはその抽出液に被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞あるいは抽出液におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定する工程
(c)前記カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを抑制する被験物質をかぶれ抑制剤として選択又は評価する工程
工程(a)において用いられるカテプシンD又はカリクレイン7を発現可能な細胞としては、天然にカテプシンD又はカリクレイン7を発現する細胞、又はカテプシンD又はカリクレイン7を発現するように遺伝的に操作された組換え細胞或いはそれらの培養物が使用される。
天然にカテプシンDまたはカリクレイン7を発現する細胞としては、ヒト新生児包皮由来表皮細胞が挙げられる。またカテプシンD又はカリクレイン7を発現するように遺伝的に操作された組換え細胞は、カテプシンD又はカリクレイン7をコードする核酸が発現可能に宿主細胞に導入されている細胞、好ましくはカテプシンD遺伝子又はカリクレイン7遺伝子が恒常的に発現可能なように宿主細胞に導入されている細胞であり、カテプシンD又はカリクレイン7をコードする核酸が、染色体外要素として当該核酸が複製可能となるように導入されている細胞、又は当該核酸が染色体組み込みにより当該核酸が複製可能となるように導入されている細胞が挙げられる。ここで、核酸はDNA、RNA、mRNA、cDNAの何れでも良い。当該カテプシンD又はカリクレイン7をコードする核酸が発現可能に宿主細胞に導入されている細胞は、前記カテプシンD又はカリクレイン7をコードする核酸と、用いられる宿主細胞におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現に適したベクターとを連結させることにより得られたカテプシンD又はカリクレイン7の発現ベクターを宿主細胞に導入することにより得ることができる。宿主細胞へのカテプシンD又はカリクレイン7をコードする核酸の導入は、例えば、Sambrook,J., Fritsh,E.F. and Maniatis,T., “Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition”, Cold Spring Harbor Laboratory Pess(1989)等に記載された形質転換、トランスフェクション等の方法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、パーティクルガン法、ウイルスを利用した方法等に準じて行なうことができる。
前記カテプシンD又はカリクレイン7をコードする核酸は、カテプシンD又はカリクレイン7のポリペプチドをコードする核酸に対応する既知の塩基配列の情報、例えば、ヒトやマウスのカテプシンD又はカリクレイン7をコードする核酸に対応する既知の塩基配列の情報等に基づき、前記塩基配列から作製した適切なプライマー対を用いたPCR法及び/又は前記塩基配列から作製した適切なプローブとcDNAライブラリーとを用いたハイブリダイゼーション法等により得ることができる。
前記カテプシンD又はカリクレイン7発現ベクターは、前記カテプシンD又はカリクレイン7をコードする核酸と、用いられる宿主細胞におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現に適したベクターとを連結させることにより得られる。前記ベクターは、調製が容易であり、用いられる宿主細胞に効率よく導入でき、当該宿主細胞においてカテプシンD又はカリクレイン7を発現させることができるベクターであればよく、好ましいベクターとしては、大腸菌のプラスミド、酵母のプラスミド、又はレトロウイルスベクター等の動物ウイルスベクターが挙げられる。また、これらベクターには、導入した遺伝子の発現を制御するエンハンサーやプロモーターなどの配列が組み込まれていてもよい。
また、前記宿主細胞としては、前記カテプシンD又はカリクレイン7をコードする核酸が効率よく発現され、かつ培養が容易なものであればよく、特に限定されないが、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、human embryonic kidney(HEK)細胞、Sf-9 insect細胞、ヒト新生児由来表皮細胞(NHEK)等が挙げられる。
本発明の方法に使用される前記カテプシンD又はカリクレイン7発現可能細胞は、例えば、当該細胞におけるカテプシンD又はカリクレイン7の機能の発現(活性)、タンパク質レベルでの発現、遺伝子レベルでの発現、蛍光物質の導入等を指標として選択することができる。前記カテプシンD又はカリクレイン7ポリペプチドをコードする核酸が発現可能に宿主細胞に導入されている細胞の選択には、適切な選択培地等を用いることができる。
カテプシンD又はカリクレイン7発現可能細胞の培養に用いられる培地としては、当該カテプシンD又はカリクレイン7を発現する細胞が生育するのに適した成分、例えば、グルコース、アミノ酸、ペプトン、ビタミン、細胞増殖促進因子(例えば、細胞成長因子、ホルモン、結合タンパク質、細胞接着因子、脂質)、血清(例えば、FBS、FCS等)、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を成分とする培地であればよい。前記培地は、市販されている培地であってもよい。カテプシンD又はカリクレイン7を発現する細胞の培養に用いられる培地としては、かかる細胞に適した培地であればよく、特に限定されないが、Epilife培地、MEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地等が挙げられる。
抽出液の作製はカテプシンD又はカリクレイン7発現可能細胞を適当な緩衝液、例えば20mM Tris-HCL(pH8.0),0.1%Triton X-100で懸濁して超音波破砕した後、その遠心上清を回収することで行うことができる。
工程(a)において、カテプシンD又はカリクレイン7発現可能細胞と、被験物質との接触は、例えば被験物質を所定の濃度になるように予め培養液中に添加した後、カテプシンD又はカリクレイン7発現可能細胞を培養液に載置すること、或いは、カテプシンD又はカリクレイン7発現可能細胞が載置された培養液に、被験物質を所定の濃度になるように添加することにより行うことができる。
ここで、カテプシンD又はカリクレイン7発現可能細胞の播種時の細胞濃度は、24Wellプレートを使用した場合、1×10~2×10cells/wellとするのが好ましく、1×10~1.5×10cells/wellとするのがより好ましい。
一方、カテプシンD又はカリクレイン7発現可能な細胞の抽出液を被験物質と接触させる場合は、例えば、前記播種密度で播種しコンフルエントまで培養したカテプシンD又はカリクレイン7発現細胞を適当な緩衝液中で超音波破砕した上清を使用し、被験物質を所定の濃度になるように予め適当な緩衝液中に添加した溶液と混合することにより行うことができる。
被験物質の添加濃度は、被験物質が植物、微生物又は動物由来の抽出物(抽出液)の場合、0.01~10質量%(固形残分)とするのが好ましく、0.1~1質量%(固形残分)とするのが好ましい。また、被験物質が化合物の場合、終濃度1~1000μMの範囲内で適宜決定するのが好ましい。
尚、本発明において、被験物質としては、特に限定されず、天然に存在する物質であっても、化学的又は生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよく、また化合物であっても、組成物若しくは混合物であってもよい。
カテプシンD又はカリクレイン7発現可能細胞若しくはその抽出液と被験物質との接触は、室温(25℃)~37℃で通常0.1時間~24時間程度、好ましくは0.5~20時間程度、培養するのが好ましい。
工程(b)のカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルの測定としては、前記工程(B)と同様であり、好ましくはウェスタンブロッティング法によるタンパク質の発現量の解析、酵素活性(プロテアーゼ活性)の測定が挙げられる。この内、検出感度が高く、少量の試料に基づいて簡便に測定できる点で、酵素活性(プロテアーゼ活性)測定方法が好ましい。プロテアーゼ活性の測定は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ザイモグラフィ、基質を添加した溶液中における酵素反応を介した検出などが挙げられる。酵素活性を測定する場合の基質としては、前述したとおりである。
尚、カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルの測定は、例えば、被験物質を接触させる細胞群と接触させない群(対照細胞)を用意し、カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定し、必要に応じて当該測定値を定量化した後、両者間で比較することにより行うことができる。なお、対照細胞としては、被験物質を接触させない代わりに、対照物質を接触させたものを用いてもよい。
尚、工程(b)の発現レベルの測定は、工程(a)の被験物質との接触の後に行っても、被験物質との接触と同時に、即ち工程(a)と工程(b)を同時に行っても良い。
上記のように測定したカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルに基づき、かぶれ抑制剤を評価又は選択することができる(工程(c))。
すなわち、被験物質を添加した細胞におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルが被験物質を添加しない対照細胞でのレベルと比較して、低下又は減少していれば、かぶれ抑制剤として評価又は選択できる。例えば、対照細胞におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを100%としたときに、被験物質を添加した細胞における発現量レベルが95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である場合に、被験物質はかぶれ抑制剤として評価又は選択できる。
このようにして選択されたかぶれ制御剤は外用剤、内服剤、身体洗浄剤、入浴剤等として、或いはかぶれを抑制するための素材又は製剤として、外用剤、内服剤、身体洗浄剤、入浴剤等に配合して使用できる。
上述した実施形態に関し、本発明においては更に以下の態様が開示される。
<1>以下の工程(A)~(C)を含む、かぶれの有無又はかぶれ発症リスクの検査方法。
(A)被験者のデリケートエリアの皮膚から皮膚由来サンプルを採取する工程
(B)前記皮膚由来サンプル中のカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定する工程
(C)前記カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを基準値と比較する工程
<2>前記皮膚由来サンプルが皮膚表上脂質、汗又は角層であり、好ましくは角層である、<1>の検査方法。
<3>工程(C)における基準値が、被験者自身の健常肌部(非かぶれ部)の角層におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベル、又は健常肌を有する人の同一評価対象部位の角層におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルである、<1>又は<2>の検査方法。
<4>以下の工程(a)~(c)を含む、かぶれ抑制剤の探索又は評価方法。
(a)カテプシンD又はカリクレイン7を発現可能な細胞若しくはその抽出液に被検物質を接触させる工程
(b)前記細胞若しくはその抽出液におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定する工程
(c)前記カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを抑制する被験物質をかぶれ抑制剤として選択又は評価する工程
<5>かぶれが、刺激性接触皮膚炎によるかぶれである、<1>~<4>のいずれかの方法。
<6>発現レベルの測定が、タンパク質の発現レベルの測定又はタンパク質の活性、好ましくは酵素活性の測定である、<1>~<5>のいずれかの方法。
<7>工程(c)において、対照細胞におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを100%としたときに、被験物質を添加した細胞における発現量レベルが95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である場合に、被験物質はかぶれ抑制剤として評価又は選択する、<4>~<6>のいずれかの方法。
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
実施例1 陰股部角層タンパク質のプロテオーム解析
(1)被験者の選抜
ヘルシンキ宣言の下、20歳~40歳までの女性を対象に、デリケートエリアのかぶれ症状に関して、医師が紅班、丘疹、浸軟、落屑について5段階(0:なし、1:軽微、2:軽度、3:中等度、4:重度)のスコア評価による判定を行った。月経直後(月経終了3日以内)の診断において、陰股部または陰唇部における紅班スコアが0であった対象者のうち、月経直後と非月経期(月経終了10~14日後)の紅班、丘疹、浸軟、落屑についてのスコアの総合スコアがより低い6名を非かぶれ群の被験者として選抜した。一方、月経直後の紅斑スコアが1以上であった対象者のうち、同総合スコアがより高い6名をかぶれ群の被験者として選抜した。
(2)陰股部角層細胞の採取
デリケートエリア陰股部からの角層の採取は、月経直後(月経終了3日以内)と非月経期(月経終了10~14日後)の2回実施し、PPSテープ(2.5×6cm、ニチバン)を貼り付け圧着後に剥離することで採取した。かぶれを有している被験者に対しては、かぶれ部位は避けて採取を行った。採取後の角層付きテープは、以下のタンパク質の抽出を行うまで-80℃で保存した。
(3)角層付きテープからメンブレンへの角層の回収
テープをガラス製のねじ口試験管に入れ、3mlのトルエン(特級)をディスペンサーにて加えた後、2分間試験管ミキサーで撹拌した。吸引ポンプに接続したファンネル上にデュラポアメンブレン(VVLP01300 ミリポア製)をセットし、陰圧にしながらトルエン溶液をメンブレン上にアプライした。以下の(5)あるいは(8)の工程の両方で使用するために、トルエン溶液を1.5mlずつ2枚のデュラポアメンブレンにアプライすることで、試料を2分割した。その後メンブレンを1mlのトルエンで2回洗浄した。同様の操作を再度行った後、試験管に1mlのイソプロパノール(特級)を加えて再度撹拌し、0.5mlずつメンブレンにアプライした。メンブレンを1.5mlチューブに移し、35℃で乾燥させた後、(4)の工程に使用するまで-80℃で保存した。
(4)メンブレンからの角層ペレットの回収
メンブレンが入っている1.5mlチューブにイソプロパノール0.4mlを加え、30秒撹拌後、5分間超音波処理をした。イソプロパノール溶液を別チューブに移した後、再度0.4mlのイソプロパノールで溶出した。イソプロパノール溶液を遠心し(15000rpm、25分、室温)、上清を除去、沈殿を窒素ガス吹付下、35℃で乾固し、角層ペレットを得た。その後、(5)あるいは(8)の工程に使用するまで-20℃で保存した。
(5)タンパク質の可溶化および断片化
上記(4)で得られた角層ペレットに0.2mlのPTS+変性剤溶液(組成は後述)を加え、ホモジナイザーペッスルを用いてペレットを分散させた後、氷水中で20分間超音波処理した。30℃で3時間振盪(2000rpm)後、2μl(タンパク質溶液の1/100量相当)の1M DTT溶液(1M DTT in 50mM 重炭酸アンモニウムバッファー)を添加してさらに30℃で一晩振盪させることでタンパク質を溶解させた。
1M ヨードアセトアミド溶液を10μl(タンパク質溶液の1/20量相当)加えて遮光下で30分間30℃で振盪した(2000rpm)。EZQ Protein Quantitation Kit(Thermo Fisher Scientific)によりタンパク定量を行った後、50mM重炭酸アンモニウムバッファーで5倍希釈した。100μgのタンパク質当たり、1μgのリシルエンドペプチダーゼ(質量分析グレード、和光純薬)を加え、30℃で3時間振盪した。次いで100μgのタンパク質当たり1μgのトリプシン(ブタ脾臓由来、質量分析グレード、和光純薬)を加え、30℃で一晩振盪した。
<PTS+変性剤溶液>
12mM デオキシコール酸ナトリウム
12mM N-ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム
7M 尿素
2M チオ尿素
100mM Tris-HCl pH9.0
(6)ショットガンプロテオミクス解析
上記(5)で得られた断片化処理後のタンパク質抽出液を2mlマイクロチューブに移し、1mlの酢酸エチルと、溶液量の1/100量の50%トリフルオロ酢酸水溶液を加え、pH試験紙でpH1~2の範囲内にあることを確認した後、2分間試験管ミキサーで撹拌した。2分間室温で遠心(15700×g)した後、上層の酢酸エチルを除去し、下層を遠心エバポレーター(50℃)で減圧乾固した。300μlのバッファーA(0.1%トリフルオロ酢酸、5%アセトニトリル)を加え、試験管ミキサーで撹拌して完全に溶解した。バッファーB(0.1%トリフルオロ酢酸、80%アセトニトリル)で洗浄し、次いでバッファーAで平衡化した固相抽出ミニカラム(担体:ポリスチムジビニルベンゼン)に、前記溶解液をアプライした。バッファーAで洗浄後、バッファーBでペプチドを溶出し、遠心エバポレーター(35℃)で減圧乾固した。減圧乾固したサンプルを1μg/μlのタンパク質濃度になるように溶解し(0.1%ギ酸、2%アセトニトリル)、微量バイアルに全量を移した。得られた溶液のペプチド濃度をnanoLC-UV で定量後、濃度調整し、LC-MS/MS 分析を実施した。
(7)タンパク質発現差異解析
上記(6)のショットガンプロテオミクス解析により得られた24個(かぶれ群6名、非かぶれ群6名の月経直後および非月経期に採取したサンプル)のRaw data(wiff形式)を、Progenesis LC-MS ver.4.1(Nonlinear Dynamics社)にインポートし、各ラン間での実験誤差による保持時間のずれを自動および手動にて補正した(アライメント)。アライメントのリファレンスにはピーク数の最も多かったランを用いた。5価イオンまでのペプチドイオンピークを検出し、各ペプチドのピークボリュームからタンパク質発現量(Normalized abundance)を算出した。検出できたペプチドピークのリストをタンパク質データベースの検索エンジンであるMASCOT Serverに供し、タンパク質の同定を行った。MASCOT検索は以下の条件で行った(表1)。
なおデータの信頼性を向上するために、定量に用いたユニークシークエンス数が2以下のものと、Confidenceスコアが100未満のものは解析から除外した(Exclusion criteria)。
Figure 2022045195000001
(8)ウェスタンブロット解析のためのタンパク質可溶化
上記(4)で得られた角層ペレットにSDSを含む可溶化液(0.1M Tris-HCl(pH9.0),2M Urea,2% SDS,0.1M DTT)を300μl加え、5秒間の超音波破砕を3回繰り返すことで、分散化処理を行った。その後30℃に一昼夜置くことで、可溶化を行った。15000rpmで30分(4℃)遠心し、上清を回収した。EZQ Protein Quantitation Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いてタンパク量定量を行い、サンプルのタンパク質濃度を統一した後、Laemmliサンプルバッファー(CatNo.161-0737、BIO-RAD社)を加え、100℃で5分加熱することでSDS化処理を行った。
(9)ウェスタンブロット解析
常法に従い、4-15% ミニプロティアン(登録商標) TGXTM プレキャストポリアクリルアミドゲルにて、分離泳動を行った(室温、60V定電圧)。なお1ウェルあたりサンプルは10μlをアプライした。セミドライ方式でPVDF膜に転写し(2.5A、25V 7分)、5%スキムミルク/PBST(0.1% Tween-20/PBS)でブロッキング処理をした(室温、2時間)。PBSTで膜を洗浄後、5%スキムミルク/PBST溶液で希釈した1次抗体、2次抗体を反応させ、ECL-PRIME(GE ヘルスケア)にて発光をさせ、Image-Quant LAS-4000(Fujifilm)で検出、定量した。なお角層サンプルではGAPDHなどの適切なローディングコントロールがないため、クーマシーブリリアントブルー染色により、サンプルのアプライ量の均一性を目視で確認した。使用した抗体については下記に示した。
(1次抗体)
Kallikrein7:AF2624(Human Kallikrein7 antibody Polyclonal Goat IgG、R&D systems、2000倍希釈)
CathepsinD:AF1014(Human Cathepsin D antibody Polyclonal Goat IgG、R&D systems、1000倍希釈)
(2次抗体)
Rabbit anti-Goat IgG (H+L) Secondary Antibody, HRP-conjugated(Invitrogen、2000倍希釈)
(10)統計解析
かぶれ群と非かぶれ群の比較には対応のないStudent’ t-testを、月経直後/非月経期の比較では対応のあるPaired t-testを用い、有意水準は5%(p<0.05)とした。
<結果>
(1)かぶれ群、非かぶれ群の間で1.5倍以上の有意な差異がみられた分子について、機能分類を行ったところ、角層剥離に関連する酵素類の中にかぶれ群で発現の高まっているものがいくつか見いだされた。かぶれ群と非かぶれ群の間に有意な差、または傾向が認められたものを図1に示す。角層剥離酵素類のうち、カテプシンDは月経直後、非月経期のいずれにおいてもかぶれ群のほうが非かぶれ群よりも発現が有意に高く、カリクレイン7は非月経期においてかぶれ群のほうが非かぶれ群よりも発現が有意に高く、月経直後においても発現が高い傾向が確認された。
これに対し、カテプシンDやカリクレイン7以外の角層剥離酵素であるカリクレイン6、カリクレイン8、カリクレイン9、カリクレイン10では群間の差は認められず、カリクレイン14については検出されなかった(図2)。
これらのことから、角層剥離酵素の中でもカテプシンD及びカリクレイン7という特定の酵素類が、かぶれ群と非かぶれ群で差があることが分かった。
(2)(1)で有意な群間差が確認されたカテプシンD、カリクレイン7について、Western Blottingによるタンパク量の確認を行った結果、実際のタンパク量の検出でも両酵素はかぶれ群の方が発現量が高いことが確認できた(図3)。
実施例2 かぶれ抑制剤の評価
(1)材料
細胞:新生児包皮由来正常ヒト表皮細胞(KURABO 凍結NHEK(F) No.6C0882)
培地:増殖添加剤(クラボウ KK-6150)を加えた表皮角化細胞・基礎培地EpiLife-KG2培地(Life technologies MEPI500CA)(以下、EpiLife-KG2プラス培地)(クラボウ)
評価素材:デリケートエリアのかぶれ治療において医師が処方することが公知である、グアイアズレン及びベタメタゾン吉草酸を使用し、終濃度が100、1000μMとなるように評価系に添加した。
(2)細胞培養
新生児包皮由来ヒト表皮角化細胞(NHEK)の培養はEpiLife-KG2プラス培地を用い、37℃、5%CO環境下で行った。NHEKを6穴プレートに10×10個/ウェルで播種し、コンフルエント状態まで6日間培養した。各ウェルの培地を吸引し、0.5ml/ウェルの冷PBSで2回洗浄した。その後、冷抽出バッファー(20mM Tris-HCL(pH8.0),0.1%Triton X-100)を0.5ml/ウェルで加え、セルスクレイパーを用いて細胞溶解液を回収した。回収した細胞溶解液を5秒間超音波破砕することを3回繰り返した。その後遠心し(15000rpm 20min 4℃)上清を回収し、細胞抽出液とした。BCA法にてタンパク質濃度を定量し、使用時まで-80℃で保存した。
(3)カテプシンD酵素活性測定
酵素活性測定は、カテプシンDに特異的なMCA蛍光基質を用いて行った。
基質(MOCAc-Gly-Lys-Pro-Ile-Leu-Phe-Phe-Arg-Leu-Lys(Dnp)-D-Arg-NH(Cat.No.3200-v ペプチド研究所)をN,N-dimethyl formamide(DMF)で溶解し、1mM溶液を作製した。下記表2の通り、反応液を調製し、37℃で1~20時間インキュベーションし、1、2、4、20時間のタイミングで励起波長328nmで393nmの蛍光を測定した。蛍光強度のスタンダードとしてMOCAcPro-Leu-Gly(Cat.No.3164-s)をN,N-dimethyl formamide(DMF)で溶解し、1mM溶液を作製し、1mMから段階的に2倍希釈した溶液を作製し、同様に蛍光を測定することで検量線を作成した。予め定量した細胞抽出液のタンパク質濃度を元にタンパク量当たりの基質分解速度(比活性)を算出し、カテプシンD酵素活性の指標とした。
評価素材による蛍光量への影響を排除するために、細胞抽出液は添加せず評価素材のみを加えたウェルを作成して同様に蛍光量を測定したものをブランクに、評価素材を加えていないウェルをコントロールとした。
Figure 2022045195000002
(4)統計解析
各評価素材の評価終濃度条件ごとにN=3で実験を行い、平均値を算出した。コントロールとの差をDunnettの方法で有意差検定し、p<0.05を有意水準とした。
<結果>
デリケートエリアのかぶれ抑制効果のある剤として公知である、グアイアズレン、ベタメタゾン吉草酸エステルは、いずれもかぶれ群において発現上昇するカテプシンDの活性を抑制することが確認された(図4)これらの結果から、カテプシンDの活性を指標とすることで、デリケートエリアのかぶれ抑制剤の評価やかぶれ抑制剤の探索が可能であることが示された。

Claims (5)

  1. 以下の工程(A)~(C)を含む、かぶれの有無又はかぶれ発症リスクの検査方法。
    (A)被験者のデリケートエリアの皮膚から皮膚由来サンプルを採取する工程
    (B)前記皮膚由来サンプル中のカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定する工程
    (C)前記カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを基準値と比較する工程
  2. 前記皮膚由来サンプルが角層である、請求項1記載の検査方法。
  3. 以下の工程(a)~(c)を含む、かぶれ抑制剤の探索又は評価方法。
    (a)カテプシンD又はカリクレイン7を発現可能な細胞若しくはその抽出液に被検物質を接触させる工程
    (b)前記細胞若しくはその抽出液におけるカテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを測定する工程
    (c)前記カテプシンD又はカリクレイン7の発現レベルを抑制する被験物質をかぶれ抑制剤として選択又は評価する工程
  4. かぶれが、刺激性接触皮膚炎によるかぶれである、請求項1又は2記載の方法。
  5. 発現レベルの測定が、タンパク質の発現レベルの測定又はタンパク質の活性の測定である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
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