JP2022045113A - 蓄電装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】蓄電装置の短絡の影響を抑制する。【解決手段】蓄電装置1は、ケース10と、ケース10内に収容された電極体20とを備えている。電極体20は、ケース10に最も近い最外層の負極層21Aと、最外層の負極層21Aに対してケース10の内側に積層された第2層目の正極層26Aと、第2層目の正極層26Aに対してケース10の内側に積層された第3層目の負極層21Bとを有している。第2層目の正極層26Aと第3層目の負極層21Bとの間に、断熱層または吸熱層が配置されている。【選択図】図1
Description
本開示は、蓄電装置に関する。
特許文献1(特開2019-186156号公報)には、密閉型電池が開示されている。正極と負極とをセパレータを介して積層した電極体などの電池構成要素が、電池ケースに収容される。電池ケースに形成された開口が蓋によって塞がれることによって、電池ケース内が密閉される。蓋体は、溶接によってケースに接合されている。電極体の集電部には、集電端子が溶接されている。
上記文献に記載の密閉型電池では、電極体の集電部を溶接して集箔する際に電極体に金属異物が付着したり、ケース内に電極体を収容して蓋を溶接する際にケース内に金属異物が入り込んだりすることで、電池ケース内に金属異物が混入する可能性がある。混入した異物は電極体の表面付近に位置することが考えられる。電極体の表面に残留する金属異物などが電極体内に侵入して、電極体内で短絡が生じることがある。
本開示では、短絡の影響を抑制できる蓄電装置が提案される。
本開示に従うと、ケースと、ケース内に収容された電極体とを備える、蓄電装置が提案される。電極体は、ケースに最も近い最外層の第1電極層と、最外層の第1電極層に対してケースの内側に積層された第2層目の第2電極層と、第2層目の第2電極層に対してケースの内側に積層された第3層目の第1電極層とを有している。第2層目の第2電極層と第3層目の第1電極層との間に、断熱層または吸熱層が配置されている。
最外層の第1電極層と第2層目の第2電極層との間で短絡が生じたとしても、断熱層または吸熱層によって、短絡によって生じた熱が電極体内部まで伝達されることが抑制される。したがって、短絡の影響を抑制できる。
本開示に係る蓄電装置によれば、電極体内の短絡の影響を抑制することができる。
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る蓄電装置1の、ケース10付近の一部分の断面模式図である。蓄電装置1は、たとえば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池などに代表される、非水電解液二次電池である。
図1は、第一実施形態に係る蓄電装置1の、ケース10付近の一部分の断面模式図である。蓄電装置1は、たとえば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池などに代表される、非水電解液二次電池である。
蓄電装置1は、ケース10を備えている。ケース10の形状は、角型であってもよく、円筒型であってもよい。ケース10は、たとえばアルミニウム合金などの金属製である。ケース10は、その内部に電極体20および図示しない電解液を収容するケース本体と、ケース本体に接合される蓋体とを有している。ケース本体と蓋体とは、たとえばレーザ溶接により接合されている。
電極体20は、ケース10内に収容されている。電極体20は、正負の電極層、すなわち負極層21および正極層26と、セパレータとを有している。実施形態の電極体20は、負極層21と正極層26とが、その間にセパレータを挟んで交互に積層されることにより形成された、積層型(スタック型)である。
電極体の形状としては、積層型のほか、巻回型がある。巻回型の電極体は、帯状の負極層と帯状の正極層とをその間にセパレータを挟んで交互に積層した積層体を渦巻状に巻回して、成型される。一般に、積層型の電極体は、巻回型の電極体よりも製造が容易であるため、電極体20を積層型とすることにより、蓄電装置1の生産効率を向上することができる。
負極層21は、枚葉状の平面形状を有している。負極層21は、負極集電箔22と、負極活物質層23とを有している。負極集電箔22は、たとえば銅(Cu)箔である。図1に示される例では、負極集電箔22の両面に負極活物質層23が形成されているが、負極集電箔22の片面にのみ負極活物質層23が形成されていてもよい。
負極活物質層23は、負極活物質と、バインダとを含む。負極活物質は、たとえば黒鉛系材料である。たとえば負極活物質は、アモルファスコートグラファイト(黒鉛粒子の表面にアモルファスカーボンがコートされた形態)、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素であってもよい。バインダは、たとえば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などであってもよい。
正極層26は、枚葉状の平面形状を有している。正極層26は、正極集電箔27と、正極活物質層28とを有している。正極集電箔27は、たとえば、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔である。図1に示される例では、正極集電箔27の両面に正極活物質層28が形成されているが、正極集電箔27の片面にのみ正極活物質層28が形成されていてもよい。正極活物質層28は、正極活物質、導電材、バインダ、難燃剤などを含む。
正極活物質は、たとえばLiCoO2、LiNiO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM)、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA)、LiMnO2、LiMn2O4、LiFePO4であってもよい。2種以上の正極活物質が組み合わされて使用されてもよい。
導電材は、たとえばアセチレンブラック(AB)、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、黒鉛であってもよい。
バインダは、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。
難燃剤は、リン(P)または硫黄(S)を含む難燃剤であり、かつ、難燃剤の熱分解温度が80℃以上210℃以下である限り、特に限定されない。難燃剤は、たとえばスルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、リン酸二アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、メラミンシアヌレート、ビスフェノールAビス(ジフェニルリン酸エステル)、レゾルシノールビス(ジフェニルリン酸エステル)、トリイソピルフェニルリン酸エステル、トリフェニルリン酸エステル、トリメチルリン酸エステル、トリエチルリン酸エステル、トリクレジルリン酸エステル、トリス(クロロイソプロピル)リン酸エステル、(C4H9)3PO、(HO-C3H6)3PO、ホスファゼン化合物、五酸化二リン、ポリリン酸、メラミン等であってもよい。これらの難燃剤は単独で使用されてもよいし、2種以上の難燃剤が組み合わされて使用されてもよい。
セパレータは、枚葉状の平面形状を有している。セパレータは、負極層21と正極層26との間に配置されて、負極層21と正極層26とを電気的に絶縁する。セパレータの材料は、多孔質材料であって、たとえばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)であってもよい。セパレータは、多層構造を有していてもよい。たとえばセパレータは、ポリプロピレン(PP)製の多孔質フィルムと、ポリエチレン(PE)製の多孔質フィルムと、ポリプロピレン(PP)製の多孔質フィルムとを順に積層した3層構造を有していてもよい。
図1には、ケース10の表面からケース10の内部に向かって、負極層21(負極層21A)、セパレータ32、正極層26(正極層26A)、セパレータ33、負極層21(負極層21B)、セパレータ34が順に積層された積層構造が図示されている。実施形態においては、負極層21が第1電極層に相当し、正極層26が第2電極層に相当する。電極体20は、複数層の第1電極層と複数層の第2電極層とを含み、第1電極層と第2電極層とが交互に積層された積層構造を有している。電極体20は、第1電極層と第2電極層との間に挟まれたセパレータを含んでいる。
実施形態において、負極層21Aは、ケース10に最も近い最外層の第1電極層に相当する。正極層26Aは、最外層の電極層である負極層21Aに対してケース10の内側に、負極層21Aとの間にセパレータ32を挟んで積層された、第2層目の第2電極層に相当する。負極層21Bは、第2層目の電極層である正極層26Aに対してケース10の内側に、正極層26Aとの間にセパレータ33を挟んで積層された、第3層目の第1電極層に相当する。
図1に示される電極体20は、ケース10内に収容されている電極体20のケース10付近の一部分である。電極体20は、図1に示されるセパレータ34から、さらにケース10の内部に向かって、正極層26、セパレータ、負極層21、およびセパレータが順に積層された、図示しない積層構造を含んでいる。
複数の電極層のうちの最外層の電極層、すなわちケース10に最も近く配置される負極層21Aと、ケース10との間に、セパレータ31が配置されている。このセパレータ31は、電極体20をケース10から確実に電気的に絶縁するために、設けられている。
複数の電極層の間、すなわち負極層21と正極層26との間、に挟まれた複数層のセパレータのうち、第2層目の第2電極層である正極層26Aと第3層目の第1電極層である負極層21Bとの間に配置されているセパレータ33は、断熱層を構成している。セパレータ33は、他のセパレータよりも高い断熱性能を有している。セパレータ33は、負極層21Aと正極層26Aとの間に配置されているセパレータ32よりも、高い断熱性能を有している。セパレータ33は、負極層21Bに対してケース10の内側に配置されたセパレータ34よりも、高い断熱性能を有している。
複数の電極層のうちケース10から数えて第2層目の電極層(すなわち正極層26A)と第3層目の電極層(すなわち負極層21B)との間に介在するセパレータ33は、他のセパレータ32,34と比較して、その断熱性能が高くなっている。たとえば、他のセパレータ32,34よりもセパレータ33の厚みを大きくしたり、他のセパレータ32,34を形成する材料の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する材料でセパレータ33を形成することで、セパレータ33を断熱層として構成することができる。
図示しない、セパレータ34よりもケース10の内側にあるセパレータは、セパレータ33よりも断熱性能が低くなっている。セパレータ34よりもケース10の内側にあるセパレータは、セパレータ32,34と同等の断熱性能を有している。したがって本実施形態においては、正負の電極層の間に挟まれた複数のセパレータのうち、セパレータ33が最も高い断熱性能を有している。
積層型の電極体20においては、各々のセパレータは別の部材である。この場合、他のセパレータと比較して断熱性能の高いセパレータを準備して、第2層目の第2電極層である正極層26Aと第3層目の第1電極層である負極層21Bとの間にその断熱性能の高いセパレータを積層することで、正極層26Aと負極層21Bとの間に断熱層が配置されている電極体20を形成することができる。
以上の構成を備えている蓄電装置1の、ケース10の内部への金属異物の混入について以下に説明する。
蓄電装置1の製造工程において、ケース10の内部に金属異物が混入し得ることが知られている。たとえば、負極集電箔22および正極集電箔27の端部をレーザ溶接により接合する際に、金属片(スパッタ)が発生する可能性がある。電極体20をケース10内に収容した後、ケース本体と蓋体とをレーザ溶接する際にも、金属片が発生する可能性がある。また、蓄電装置1の製造工程以外にも、たとえば蓄電装置1を搭載した車両の走行時に、衝撃が蓄電装置1に加わることで、金属片が発生する可能性も考えられる。ケース10の内部に金属異物が混入すると、その金属異物が電極体20に侵入することで、電極体20が短絡する場合がある。
本発明者らは、金属異物が電極体20に短絡を生じさせる場合、その短絡は電極体20の表層部分で生じやすい点に着目した。本実施形態においては、負極層21と正極層26との間に挟まれたセパレータのうち、正極層26Aと負極層21Bとの間のセパレータ33が断熱層として構成されている。
最外層の負極層21A(外側から第1層目の電極層)と最外層の正極層26A(外側から第2層目の電極層)との間で短絡が生じ、負極層21Aと正極層26Aとの間に短絡による発熱が生じたとしても、断熱層によって、短絡によって生じた熱が電極体20の内部にまで伝達されることが抑制される。短絡が発生する範囲を電極体20の表層部分に留めることができれば、表層部分はケース10に近いため、短絡により発生する熱をケース10を通して外部に放熱することができる。したがって、短絡による発熱が蓄電装置1に不具合を及ぼすことを抑制でき、電極体20内の短絡の影響を抑制することができる。
[第二実施形態]
図2は、第二実施形態に係る蓄電装置1の、ケース10付近の一部分の断面模式図である。図2に示される第二実施形態の蓄電装置1では、第一実施形態と異なり、セパレータ33の断熱性能は、セパレータ32,34などの他のセパレータと同等である。第二実施形態のセパレータ33は、断熱層を形成していない。他方、第二実施形態の蓄電装置1では、複数の電極層のうち外側から第2層目の正極層26Aと第3層目の負極層21Bとの間に、セパレータ33とは別に、吸熱層40が配置されている。吸熱層40は、セパレータ33と負極層21Bの負極活物質層23との間に配置されている。吸熱層40は、負極層21Bに接触している。
図2は、第二実施形態に係る蓄電装置1の、ケース10付近の一部分の断面模式図である。図2に示される第二実施形態の蓄電装置1では、第一実施形態と異なり、セパレータ33の断熱性能は、セパレータ32,34などの他のセパレータと同等である。第二実施形態のセパレータ33は、断熱層を形成していない。他方、第二実施形態の蓄電装置1では、複数の電極層のうち外側から第2層目の正極層26Aと第3層目の負極層21Bとの間に、セパレータ33とは別に、吸熱層40が配置されている。吸熱層40は、セパレータ33と負極層21Bの負極活物質層23との間に配置されている。吸熱層40は、負極層21Bに接触している。
吸熱層40は、セパレータ32,33,34よりも熱伝導率が高い材料で形成されている。電極体20が積層型の場合、セパレータ33と負極層21Bとの間に熱伝導率の高いシート材料を積層することで、正極層26Aと負極層21Bとの間に吸熱層40が配置されている電極体20を形成することができる。電極体20が巻回型の場合、巻回時にセパレータ33と負極層21Bとの間に熱伝導率の高いシート材料を挿入することで、正極層26Aと負極層21Bとの間に吸熱層40が配置されている電極体20を形成することができる。
最外層の負極層21A(外側から第1層目の電極層)と最外層の正極層26A(外側から第2層目の電極層)との間で短絡が生じ、負極層21Aと正極層26Aとの間に短絡による発熱が生じたとしても、短絡によって生じた熱が吸熱層40内に留められ、電極体20の内部にまで熱が伝達されることが抑制される。短絡が発生する範囲を電極体20の表層部分に留めることができれば、表層部分はケース10に近いため、短絡により発生する熱をケース10を通して外部に放熱することができる。したがって、短絡による発熱が蓄電装置1に不具合を及ぼすことを抑制でき、電極体20内の短絡の影響を抑制することができる。
ケース10が角型である場合には、ケース10に最も近い最外層の第1電極層は、電極体20の積層方向の両側に存在する。電極体20の積層方向の両側において、正極層26Aと負極層21Bとの間に断熱層または吸熱層40が配置されている実施形態の構成とすることができる。電極体20の積層方向の片側のみに、正極層26Aと負極層21Bとの間に断熱層または吸熱層40が配置されている構成とすることも可能である。電極体20の積層方向の少なくとも片側において、正極層26Aと負極層21Bとの間に断熱層または吸熱層40を配置することで、電極体20内の短絡の影響を抑制できる上述した効果を得ることができる。
以下、実施例について説明する。実施例および比較例の蓄電装置を試作した。実施例および比較例の蓄電装置において、正極層の正極活物質にはニッケル・コバルト・マンガン酸化物(NCM)を用い、負極層の負極活物質にはカーボンを用いた。電極層の間のセパレータは、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間のセパレータを除き、厚み6μmのPP、厚み4μmのPE、厚み6μmのPPを積層した3層構造とした。蓄電装置の容量は20Ahとした。
図3は、実施例および比較例の蓄電装置における短絡発生時の挙動について示す表である。図3には、実施例および比較例の蓄電装置における、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータおよび吸熱層の条件を示す。図3にはまた、実施例および比較例の蓄電装置のケース内に金属異物を入れて押圧する強制内部短絡試験において、最外層の電極層から数えて何層の電極層が短絡したかの試験結果を示す。金属異物としては、「EV用リチウムイオン二次電池セルの安全要件」に関する国際規格であるIEC62660-3に規定されるL字型の構造体を用いた。この構造体の寸法は、高さ200μm、長さ2000μm、幅100μmとした。
図3に示される比較例では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータを、他のセパレータと同じ、厚み6μmのPP、厚み4μmのPE、厚み6μmのPPを積層した3層構造とし、セパレータ全体としての厚みを16μmとした。熱伝導率0.12W/m・KのPPと、熱伝導率0.52W/m・KのPEとを用いた。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層から、第2層目の正極層、第3層目の負極層を介して、第4層目の正極層まで短絡が生じた。
実施例1-1では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータを、厚み7μmのPP、厚み6μmのPE、厚み7μmのPPを積層した3層構造とし、セパレータ全体としての厚みを20μmとした。PPおよびPEの熱伝導率は比較例と同じとした。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層から、第2層目の正極層を介して、第3層目の負極層まで短絡が生じた。
実施例1-2では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータを、厚み9μmのPP、厚み6μmのPE、厚み9μmのPPを積層した3層構造とし、セパレータ全体としての厚みを24μmとした。PPおよびPEの熱伝導率は比較例と同じとした。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層と第2層目の正極層とが短絡した。
実施例1-3では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータを、比較例と同じ厚みの3層構造とした。熱伝導率0.12W/m・KのPPと、熱伝導率0.42W/m・KのPEとを用いた。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層から、第2層目の正極層を介して、第3層目の負極層まで短絡が生じた。
実施例1-4では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータを、比較例と同じ厚みの3層構造とした。熱伝導率0.12W/m・KのPPと、熱伝導率0.33W/m・KのPEとを用いた。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層と第2層目の正極層とが短絡した。
実施例1-5では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータを、厚み16μmのPP製の多孔質フィルムからなる単層構造とした。熱伝導率0.12W/m・KのPPを用いた。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層と第2層目の正極層とが短絡した。
実施例1-6では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータを、厚み16μmのポリエチレンテレフタラート(PET)製の多孔質フィルムからなる単層構造とした。熱伝導率0.14W/m・KのPETを用いた。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層と第2層目の正極層とが短絡した。
比較例と実施例1-1,1-2,1-3,1-4,1-5,1-6とを比較して、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータを、厚みを大きくしたり、熱伝導率の小さい材料で形成して、断熱性能を向上させたことで、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に断熱層が配置された。短絡によって生じた熱が断熱層を経由してケース内部の電極層に伝達されにくくなり、電極体の内部にまで熱が伝達されることが抑制されたため、電極体の溶け広がりが防がれ短絡の拡大が抑制され、これにより短絡層数を低減できる効果が得られた。したがって、断熱層を配置することで、電極体内の短絡の影響を抑制でき、短絡による発熱が蓄電装置に不具合を及ぼすことを抑制できることが示された。
実施例1-6における第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータは、PETを形成材料とすることで、高い伸び率および耐熱性を有している。具体的には、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置されるセパレータは、他のセパレータ(たとえば、最外層の負極層と第2層目の正極層との間に配置されるセパレータ)よりも、伸び率が高く、かつ耐熱性が高い。このような高い伸び率と耐熱性とを有するセパレータは、PETのほか、ポリイミドフィルム、メタ系アラミド繊維紙などの材料で形成することができる。
高い伸び率と耐熱性とを有するセパレータを第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に配置することで、そのセパレータを介して第3層目の負極層まで短絡が生じることが抑制される。高い伸び率と耐熱性とを有するセパレータを第2層目の正極層に接触させて配置することで、第2層目の正極層の変形が抑制される。これにより、短絡の拡大が抑制されるので、さらに短絡層を低減することができる。
実施例2-1では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に、比較例と同じセパレータと、厚み0.1mmのシリコン樹脂のシートとを配置した。熱伝導率2.0W/m・Kのシリコン樹脂を用いた。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層から、第2層目の正極層を介して、第3層目の負極層まで短絡が生じた。
実施例2-2では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に、比較例と同じセパレータと、厚み0.1mmのシリコン樹脂のシートとを配置した。熱伝導率4.0W/m・Kのシリコン樹脂を用いた。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層と第2層目の正極層とが短絡した。
実施例2-3では、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に、比較例と同じセパレータと、厚み0.2mmのシリコン樹脂のシートとを配置した。熱伝導率2.0W/m・Kのシリコン樹脂を用いた。強制内部短絡試験の結果、最外層の負極層と第2層目の正極層とが短絡した。
比較例と実施例2-1,2-2,2-3とを比較して、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に、セパレータとは別にシリコン樹脂のシートを配置することで、第2層目の正極層と第3層目の負極層との間に吸熱層が配置された。短絡によって生じた熱が吸熱層で吸収されることで、吸熱層よりもケース内部の電極体に熱が伝達されにくくなり、電極体の内部にまで熱が伝達されることが抑制された。これにより、電極体の溶け広がりが防がれ短絡の拡大が抑制され、短絡層数を低減できる効果が得られた。したがって、吸熱層を配置することで、電極体内の短絡の影響を抑制でき、短絡による発熱が蓄電装置に不具合を及ぼすことを抑制できることが示された。
以上のように実施形態および実施例について説明を行なったが、今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 蓄電装置、10 ケース、20 電極体、21,21A,21B 負極層、22 負極集電箔、23 負極活物質層、26,26A 正極層、27 正極集電箔、28 正極活物質層、31,32,33,34 セパレータ、40 吸熱層。
Claims (1)
- ケースと、
前記ケース内に収容された電極体とを備え、
前記電極体は、前記ケースに最も近い最外層の第1電極層と、前記最外層の第1電極層に対して前記ケースの内側に積層された第2層目の第2電極層と、前記第2層目の第2電極層に対して前記ケースの内側に積層された第3層目の第1電極層とを有し、
前記第2層目の第2電極層と前記第3層目の第1電極層との間に、断熱層または吸熱層が配置されている、蓄電装置。
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