JP2022042490A - コバルト基合金構造体の製造方法、および該製造方法により得られるコバルト基合金構造体 - Google Patents

コバルト基合金構造体の製造方法、および該製造方法により得られるコバルト基合金構造体 Download PDF

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隆史 芝山
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Abstract

Figure 2022042490000001
【課題】十分な機械的強度を確保しつつ、複雑な形状のCo基合金構造体を安定して製造する。
【解決手段】本発明は、空間部を有する第1構造部と当該空間部に埋設される第2構造部とを備えるCo基合金構造体の製造方法であって、粉末の粒度分布の範囲が5~85μmでD90の範囲が40~80μmの範囲となる第1Co基合金粉末を用いて積層造形法により前記第1構造部を造形する工程と、粉末の粒度分布の範囲が5~85μmでD90の範囲が40~80μmとなる第2Co基合金粉末を前記第1構造部の前記空間部に充填した状態で、熱間等方圧加圧法により前記空間部に前記第2構造部を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、コバルト基合金構造体の製造方法、および該製造方法により得られるコバルト基合金構造体に関するものである。
現在、高強度耐熱合金を用いて熱間等方圧加圧法(HIP:Hot Isostatic Pressing)により合金構造体(例えば、タービン静翼)を製造する方法が注目されている。HIP法では、HIP用のカプセルを形成し、該カプセル内に金属粉末を充填後、高温高圧でカプセルを変形させるとともに、カプセルの内部に充填された金属粉末を熱処理する。ところが、HIP用カプセルは機械加工やコーティング等により製造されるのが一般的であり、複雑な形状を有するHIP用カプセルを製造することが容易ではなかった。
そこで、金属粉末を用いて積層造形法(AM:Additive Manufacturing)により複雑な形状を有するHIP用カプセルを製造し、このカプセル内部に金属粉末を充填してHIP法により合金構造体を製造する方法が検討されている。例えば、特許文献1(特表2017-519106、WO 2015/181080 A1)に開示されたターボ機械構成部品の製造方法が知られている。
特許文献1には、ターボ機械構成部品を作るための方法であって、(a)前記ターボ機械構成部品の複数の個別のセグメントを付加製造によって製造するステップであり、前記個別のセグメントの少なくともいくつかが、前記ターボ機械構成部品の膨大部に相当する少なくとも1つの中空容積を取り囲むスキンを有するステップと、(b)前記ターボ機械構成部品の前記個別のセグメントを合体させて半製品の構成部品を形成するように組み立てるステップであり、前記セグメントの前記中空容積が前記半製品の構成部品内に少なくとも1つの内部空洞を形成するステップと、(c)前記半製品の構成部品の前記少なくとも1つの内部空洞をバルク状の流動可能な材料で満たすステップと、(d)バルク状の流動可能な材料で満たされた前記少なくとも1つの内部空洞を封止的に閉鎖するステップと、(e)前記少なくとも1つの内部空洞内の前記バルク状の流動可能な材料を高密度化および固化するステップと、を含む製造方法が教示されている。また、特許文献1には、前記セグメントが第1の粉末材料で製造され、前記バルク状の流動可能な材料が第2の粉末材料であり、前記第2の粉末材料が前記第1の粉末材料とは異なる、ことが教示されている。
なお、以下の説明において、上記の個別のセグメントのスキンを「AM造形部」と呼称し、内部空洞に充填された第2の粉末材料がHIP法により高密度化および固化された部分を「HIP処理部」と呼称する。
特表第2017-519106号公報
特許文献1の製造方法では、上記第1の粉末材料がニッケル基超合金粉末またはチタン合金粉末からなる一方、上記第2粉末材料が、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル基超合金、チタン合金、アルミニウム合金からなるグループから選択された粉末からなる。また、上記第1の粉末材料が10μmと48μmとの間の粒径を有する一方、上記第2の粉末材料が50μmと100μmとの間の粒径を有している。
すなわち、上記第1の粉末材料と上記第2の粉末材料では、化学組成および粒径が互いに異なっている。このため、HIP法による熱処理を実施した後では、AM造形部の金属組織とHIP処理部の金属組織とが不均一となり、AM造形部の金属組織とHIP処理部の金属組織との間に境界が現れて、当該境界を起点として破壊しやすくなる。すなわち、脆性破壊によりAM造形部とHIP処理部とが分断しやすくなる。その結果、特許文献1の製造方法では、十分な機械的強度を有する個別のセグメントを安定的に得ることが困難と考えられる。
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分な機械的強度を確保しつつ、複雑な形状の金属構造体(例えば、タービン静翼)を安定して製造することにある。
上記の目的を達成するために、第1の開示は、コバルト基合金構造体の製造方法であって、コバルト基合金構造体は、空間部を有する第1構造部と、当該空間部に埋設される第2構造部と、を備え、コバルト基合金構造体の製造方法は、粉末の粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下で体積基準90%径の範囲が40μm以上80μm以下となる第1コバルト基合金粉末を用いて積層造形法により第1構造部を造形する工程と、粉末の粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下で体積基準90%径の範囲が40μm以上80μm以下となる第2コバルト基合金粉末を第1構造部の空間部に充填した状態で熱間等方圧加圧法により前記空間部に第2構造部を形成する工程と、を含むことを特徴とするコバルト基合金構造体の製造方法を提供する。
本開示において、粉末の粒度分布は、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置等を用いて測定する。体積基準90%径(90体積%径、D90とも言う)とは、各粒子径の体積分率を粒子径が小さいものから累積した際に、累積値が90%に到達したときの粒子径のことである。
この第1の開示では、積層造形法により複雑な形状を有する第1構造部を造形することが比較的容易となる。また、積層造形法により第1構造部を造形する工程およびHIP法により第2構造部を形成する工程では、いずれも粉末の粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下で90体積%径(D90)が40μm以上80μm以下となるコバルト基合金粉末が用いられる。すなわち、第1構造部に適用される第1合金粉末と第2構造部に適用される第2合金粉末とでは、主な化学組成および粒径が互いに共通している。このため、HIP法による熱処理を実施した後では、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とが一様になりやすく、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との間に境界が現れにくくなる。
その結果、第1構造部と第2構造部との境界を起点として脆性破壊が起こりにくくなり、第1構造部と第2構造部とを一体に形成した状態が保たれる。これにより、第1の開示の製造方法により製造されるコバルト基合金構造体では、コバルト基合金の特性(例えば、耐食性および耐摩耗性)を得つつ、十分な機械的強度が担保される。したがって、第1の開示では、十分な機械的強度を確保しつつ、複雑な形状のコバルト基合金構造体を安定して製造することができる。
第2の開示は、第1の開示において、第1および第2コバルト基合金粉末は、0.08質量%以上0.25質量%以下の炭素(C)と、0.1質量%以下のホウ素(B)と、10質量%以上30質量%以下のクロム(Cr)と、5質量%以下の鉄(Fe)と、30質量%以下のニッケル(Ni)と、を含み、前記Feと前記Niとの合計が30質量%以下であり、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)のうちの少なくとも1つを合計が5質量%以上12質量%以下で含み、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)およびバナジウム(V)のうちの少なくとも1つを合計が0.5質量%以上2質量%以下で含み、0.5質量%以下のケイ素(Si)と、0.5質量%以下のマンガン(Mn)と、0.003質量%以上0.1質量%以下の窒素(N)と、を含み、残部がコバルト(Co)と不純物とからなる。
この第2の開示では、上記化学組成を有するCo基合金粉末を用いることにより、Co基合金構造体において、析出強化に寄与する炭化物相粒子を母相結晶粒内に分散析出させることが可能となる。その結果、Co基合金の機械的特性をより一層高めることができる。
第3の開示は、第1または第2の開示において、第1Co基合金粉末を再生する工程を更に含み、当該第1Co基合金粉末を再生する工程は、第1構造部を造形する工程で未利用となった第1Co基合金粉末を回収する素工程と、回収した第1Co基合金粉末を分級する素工程とを含み、第2Co基合金粉末の少なくとも一部は、第1Co基合金粉末を再生する工程で得られた合金粉末である。
第1構造部を粉末床溶融方式のAM法で造形する場合、粉末を造形テーブル上に敷いて粉末床を形成し、該粉末床の所定領域にレーザ光等の熱源を照射して、該粉末床を局所的に溶融・凝固させることにより所望形状のAM体が形成される。このため、熱源を照射されない大部分の粉末は未利用となり、前工程で用意した粉末の全てを有効活用できているわけではない。
この第3の開示では、第1構造部を造形する際に熱源が照射されなかった未利用の合金粉末を回収・再生して有効に活用する。回収した合金粉末は部分的に凝集している可能性があるため、第1の開示に合致するようにふるい等を用いて分級して再生することが好ましい。再生した合金粉末は第2構造部を形成する第2Co基合金粉末の少なくとも一部として活用することができる。第2Co基合金粉末のすべてを、再生した第1Co基合金粉末としてもよい。なお、第3の開示による構成および効果は、必須のものではなく追加的なものである。
再生した第1Co基合金粉末を第2Co基合金粉末として利用するため、化学組成および粒径が互いに共通することになる。その結果、第1の開示に示したように、十分な機械的強度を確保しつつ、複雑な形状のCo基合金構造体を安定して製造することができる。
第4の開示は、第1から第3の開示における製造方法により製造されたCo基合金構造体であって、タービン静翼は、外輪側エンドウォールを含み、外輪側エンドウォールは、該Co基合金構造体の所定部分は、500 MPa以上の室温0.2%耐力と、300 MPa以上の800℃引張強さとを有している。
第5の開示は、第4の開示において、製造されたCo基合金構造体がタービン静翼であり、所定部分が外輪側エンドウォールである。
この第4または第5の開示では、第1から第3の開示における製造方法により製造されたCo基合金構造体が十分な機械的強度を有しており、当該Co基合金構造体を、外輪側エンドウォールを有するタービン静翼として好適に使用することができる。
本開示によると、十分な機械的強度を確保しつつ、複雑な形状のCo基合金構造体を安定して製造することができる。
Co基合金構造体の一例としてのタービン高温部材であるタービン静翼を示す斜視模式図である。 図1のII-II線断面模式図である。 第1構造部の部分縦断面模式図である。 Co基合金構造体の製造方法の工程例を示すフロー図である。 サンプルA~Cの各々に適用される第1構造部の全体を示す斜視模式図である。 図5のVI-VI線断面模式図である。 図5のVII-VII線断面模式図である。 サンプルAの上面を示した光学顕微鏡写真である。 図8におけるX部分の金属組織を示した電子顕微鏡写真である。 サンプルAにおける第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界付近を示した電子顕微鏡写真である。 サンプルBの金属組織を示した電子顕微鏡写真である。 サンプルBにおける第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界付近を示した電子顕微鏡写真である。 サンプルCの金属組織を示した電子顕微鏡写真である。 サンプルCにおける第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界付近を示した電子顕微鏡写真である。
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
[コバルト基合金構造体の基本的性質]
Co基合金は、一般的に利用されているNi基合金に比較して融点が50~100℃程度高く、置換型元素の拡散係数がNi基よりも小さい。このため、Co基合金では、高温での使用中に生じる組織変化が少ない。また、Co基合金は、Ni基合金と比較して延性に富んでいる。このため、Co基合金は、鍛造,圧延,プレス等の塑性加工が容易となる。
Co基合金は、Ni基合金の200 GPaと比較して、220~230 GPaと1割以上大きな弾性率を示す。また、Co基合金は、硬質でありかつ耐磨耗性,耐食性に優れている。
[コバルト基合金構造体]
図1は、Co基合金構造体の一例としてのタービン高温部材であるタービン静翼を示す斜視模式図である。図1に示すように、タービン静翼1は、概略的に、内輪側エンドウォール2、翼部3、および外輪側エンドウォール4により構成されている。翼部3の内部には、図示しない空気通路部が形成される。例えば、出力30MW級の発電用ガスタービンの場合、翼部3の長さ(両エンドウォールの間の距離)は170mm程度である。なお、上記タービン高温部材は、ガスタービン用途に限定されず、他のタービン用途(例えば、蒸気タービン用途)であってもよい。
外輪側エンドウォール4は、本開示の実施形態に係る製造方法により製造されるCo基合金構造体の一例である。以下、外輪側エンドウォール4の具体的構成について説明する。
図2は、図1のII-II線断面模式図である。図2に示すように、外輪側エンドウォール4は、第1構造部5および第2構造部10を備えている。
(第1構造部)
第1構造部5は、第1Co基合金粉末からなる積層造形体として構成されている。すなわち、第1構造部5は、積層造形法(AM法)により造形される。AM法は、ガスアトマイズ法などにより作製した粉末を、レーザなどを熱源とした3Dプリンタを用いて選択的に溶融・凝固することにより物品を成形する方法である。第1構造部5の形成工程(後述する積層造形工程S2)に用いられる第1Co基合金粉末は、粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μmとなるように構成されている。なお、第1Co基合金粉末の化学組成については後述する。
図3は、第1構造部の部分縦断面模式図である。図3に示すように、第1構造部5は、本体部6および空間部7を有している。
本体部6は、カプセル状を有している。本体部6には、翼部3の空気通路部(図示せず)と連通する孔部6aが設けられている(図1参照)。
本体部6には、開口部9が設けられている。開口部9は、図3の紙面右側かつ紙面手前側に位置している。開口部9は、空間部7および後述する真空引き用ポート20の双方と連通している。開口部9は、後述する封止工程S4において封止される。
空間部7は、本体部6の内部において図3の紙面手前側に配置されている。空間部7は、縦断面視で略矩形状に形成されている。空間部7は、図3における紙面左右方向の長さが翼部3の左右幅と同程度の長さとなるように構成されている。
(第2構造部)
第2構造部10は、第2Co基合金粉末からなる焼結体として構成されている。第1Co基合金粉末と同様に、第2Co基合金粉末も粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μmとなるように構成されている。第2Co基合金粉末の化学組成については後述する。第2構造部10は、熱間等方圧加圧法(HIP)により形成される。
図2に示すように、第2構造部10は、後述するHIP処理工程S5により高密度化された状態で第1構造部5の空間部7に埋設される。そして、Co基合金構造体(外輪側エンドウォール4)は、第2構造部10が空間部7に埋設された状態において、第1構造部5の金属組織と第2構造部10の金属組織とが一様になるとともに、第1構造部5と第2構造部10との間に境界が現れないように構成されている。なお、図2では、説明の便宜上、第1構造部5と第2構造部10との境界を破線により示している。
(真空引き用ポート)
図1~図3に示すように、第1構造部5には、真空引き用ポート20が設けられている。真空引き用ポート20は、後述の粉末充填および脱気工程S3で主に用いられる。この実施形態において、真空引き用ポート20は、図3の紙面右側かつ紙面手前側に配置されている。真空引き用ポート20は、略筒状に形成されている。具体的に、真空引き用ポート20は、各図の紙面において、下端部から中途部に亘る部分が略円錐状となる一方、中途部から上端部に亘る部分が略円筒状となるように形成されている。真空引き用ポート20の下端部は、本体部6の壁部8bと一体に形成されている。なお、真空引き用ポート20は、後述する表面処理工程S7を経た後に、第1構造部5から取り除かれる。
[コバルト基合金粉末の化学組成]
本開示の実施形態に係る製造方法に用いられる第1および第2Co基合金粉末は、粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μm以下の粉末で構成される多結晶粉末である。以下、Co基合金粉末の化学組成を説明する。
(C:0.08質量%以上0.25質量%以下)
C成分は、析出強化相となるMC型炭化物相(Ti、Zr、Nb、Ta、Hfおよび/またはVの炭化物相、強化炭化物相と称する場合がある)を構成する重要な成分である。上記MC型炭化物相において、「M」は遷移金属を意味し、「C」は炭素を意味する。C成分の含有率は、0.08質量%以上0.25質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.2質量%以下がより好ましく、0.12質量%以上0.18質量%以下が更に好ましい。C含有率が0.08質量%未満になると、強化炭化物相の析出量が不足し、機械的特性向上の作用効果が十分に得られない。一方、C含有率が0.25質量%超になると、過度に硬化することで、Co基合金を焼結して得た焼結体の延性や靭性が低下する。
(B:0.1質量%以下)
B成分は、結晶粒界の接合性の向上(いわゆる粒界強化)に寄与する成分である。B成分は必須成分ではないが、含有させる場合、0.1質量%以下が好ましく、0.005質量%以上0.05質量%以下がより好ましい。B含有率が0.1質量%超になると、Co基合金の焼結時やその後の熱処理で割れが発生し易くなる。
(Cr:10質量%以上30質量%以下)
Cr成分は、耐食性や耐酸化性の向上に寄与する成分である。Cr成分の含有率は、10質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上25質量%以下がより好ましい。Co基合金製造物の最表面に耐食性被覆層を別途設けるような場合は、Cr成分の含有率は、10質量%以上18質量%以下が更に好ましい。Cr含有率が10質量%未満になると、耐食性や耐酸化性が不十分になる。一方、Cr含有率が30質量%超になると、脆性のσ相が生成したりCr炭化物相が生成したりして機械的特性(靱性、延性、強さ)が低下する。
(Ni:30質量%以下)
Ni成分は、Co成分と類似した特性を有しかつCoに比して安価なことから、Co成分の一部を置き換えるかたちで含有させることができる成分である。Ni成分は必須成分ではないが、含有させる場合、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下が更に好ましい。Ni含有率が30質量%超になると、Co基合金の特徴である耐摩耗性や局所応力への耐性が低下する。これは、Coの積層欠陥エネルギーとNiのそれとの差異に起因すると考えられる。
(Fe:5質量%以下)
Fe成分は、Niよりもはるかに安価でありかつNi成分と類似した性状を有することから、Ni成分の一部を置き換えるかたちで含有させることができる成分である。すなわち、FeおよびNiの合計含有率は30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下が更に好ましい。Fe成分は必須成分ではないが、含有させる場合、Ni含有率よりも少ない範囲で5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。Fe含有率が5質量%超になると、耐食性や機械的特性の低下要因になる。
(Wおよび/またはMo:合計5質量%以上12質量%以下)
W成分およびMo成分は、母相の固溶強化に寄与する成分である。W成分および/またはMo成分の含有率は、合計で5質量%以上12質量%以下が好ましく、7質量%以上10質量%以下がより好ましい。W成分とMo成分との合計含有率が5質量%未満になると、母相の固溶強化が不十分になる。一方、W成分とMo成分との合計含有率が12質量%超になると、脆性のσ相が生成し易くなって機械的特性(靱性、延性)が低下する。
(Re:2質量%以下)
Re成分は、母相の固溶強化に寄与すると共に、耐食性の向上に寄与する成分である。Re成分は必須成分ではないが、含有させる場合、W成分またはMo成分の一部を置き換えるかたちで2質量%以下が好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下がより好ましい。Re含有率が2質量%超になると、Re成分の作用効果が飽和するのに加えて、材料コストの増加がデメリットになる。
(Ti、Zr、Nb、Ta、HfおよびVの1種以上:合計0.5質量%以上2質量%以下)
Ti成分、Zr成分、Nb成分、Ta成分、Hf成分およびV成分は、強化炭化物相(MC型炭化物相)を構成する重要な成分である。Ti、Zr、Nb、Ta、HfおよびV成分の1種以上の合計含有率は、0.5質量%以上2質量%以下が好ましく、合計0.5質量%以上1.8質量%以下がより好ましい。合計含有率が0.5質量%未満になると、強化炭化物相の析出量が不足し、機械的特性向上の作用効果が十分に得られない。一方、当該合計含有率が2質量%超になると、強化炭化物相粒子が粗大化したり脆性相(例えばσ相)の生成を促進したり析出強化に寄与しない酸化物相粒子を生成したりして機械的特性が低下する。
また、析出強化相粒子の分散析出(析出強化相粒子の粗大化の抑制)の観点からは、Ti、Zr、Nb、Ta、HfおよびV成分のうちの2種以上を含むことがより好ましく、3種以上を含むことが更に好ましく、4種以上を含むことがより更に好ましい。
より具体的には、Tiを含有させる場合の含有率は、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.8質量%以下がより好ましい。
Zrを含有させる場合の含有率は、0.05質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.2質量%以下がより好ましい。なお、機械的強度を優先する場合はZr成分を必須成分とすることが好ましく、靭性を優先する場合はZr成分を含有成分としないことが好ましい。
Nbを含有させる場合の含有率は、0.02質量%以上1質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.8質量%以下がより好ましい。
Taを含有させる場合の含有率は、0.05質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.2質量%以下がより好ましい。
Hfを含有させる場合の含有率は、0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。
Vを含有させる場合の含有率は、0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。
(Si:0.5質量%以下)
Si成分は、脱酸素の役割を担って機械的特性の向上に寄与する成分である。Si成分は必須成分ではないが、含有させる場合、0.5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.3質量%以下がより好ましい。Si含有率が0.5質量%超になると、酸化物(例えばSiO2)の粗大粒子を形成して機械的特性の低下要因になる。
(Mn:0.5質量%以下)
Mn成分は、脱酸素および脱硫の役割を担って機械的特性の向上や耐腐食性の向上に寄与する成分である。Mn成分は必須成分ではないが、含有させる場合、0.5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.3質量%以下がより好ましい。Mn含有率が0.5質量%超になると、硫化物(例えばMnS)の粗大粒子を形成して機械的特性や耐食性の低下要因になる。
(N:0.003質量%以上0.1質量%以下)
N成分は、Co基合金粉末を製造する際のガスアトマイズに寄与する成分である。N成分は、上記ガスアトマイズの雰囲気によって含有量が異なる。ガスアトマイズをアルゴンガス雰囲気中で行った場合にはN成分の含有量は低くなり(N:0.003質量%以上0.04質量%以下)、ガスアトマイズを窒素ガス雰囲気中で行った場合にはN成分の含有量は高くなる(N:0.04質量%以上0.1質量%以下)。
N成分は、強化炭化物相の安定生成に寄与する成分である。N含有率が0.003質量%未満になると、N成分の作用効果が十分に得られない。一方、N含有率が0.1質量%超になると、窒化物(例えばCr窒化物)の粗大粒子を形成して機械的特性の低下要因になる。
(残部:Co成分+不純物)
Co成分は、本合金の主要成分の一つであり、最大含有率の成分である。前述したように、Co基合金材は、Ni基合金材と同等以上の耐食性や耐摩耗性を有する利点がある。
Al成分は、本合金の不純物の一つであり、意図的に含有させる成分ではない。ただし、0.5質量%以下のAl含有率であれば、Co基合金製造物の機械的特性に大きな悪影響を及ぼさないことから許容される。Al含有率が0.5質量%超になると、酸化物や窒化物(例えばAl2O3やAlN)の粗大粒子を形成して機械的特性の低下要因になる。
O成分も、本合金の不純物の一つであり、意図的に含有させる成分ではない。ただし、0.04質量%以下のO含有率であれば、Co基合金製造物の機械的特性に大きな悪影響を及ぼさないことから許容される。O含有率が0.04質量%超になると、各種酸化物(例えば、Ti酸化物、Zr酸化物、Al酸化物、Fe酸化物、Si酸化物)の粗大粒子を形成して機械的特性の低下要因になる。
[コバルト基合金構造体の製造方法]
図4は、Co基合金構造体(ここでは、外輪側エンドウォール4)の製造方法の工程例を示すフロー図である。図4に示すように、当該製造方法は、概略的に、合金粉末用意工程S1と、積層造形工程S2と、合金粉末充填および脱気工程S3と、封止工程S4と、HIP処理工程S5と、時効処理工程S6と、表面処理工程S7と、評価工程S8と、を有する。以下、各工程について説明する。
(合金粉末用意工程)
合金粉末用意工程S1は、Co基合金構造体の出発材料となる粉末(以下「出発材料粉末」という)を用意する工程である。出発材料粉末は、上記Co基合金粉末の化学組成で示した所定の化学組成を有する。出発材料粉末を作製する方法としては、例えばガスアトマイズ法が用いられる。具体的には、ガスアトマイズ装置を用いて、高周波誘導加熱を行うことにより真空排気後の不活性ガス雰囲気中または大気中において試料の溶解を行う。その後、高圧のガス(ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、窒素(N2)などのガス)を出発材料融液に対して吹きつけることにより、粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μm以下となる略球状の合金粉末を作製する。
合金粉末の粒径が5μm未満になると、次工程S2において合金粉末の流動性が低下し(合金粉末床の形成性が低下し)、積層造形体の形状精度が低下する要因となる。一方、合金粉末の粒径が85μm超になると、次工程S2において合金粉末床の局所溶融および急冷凝固の制御が難しくなり、合金粉末の溶融が不十分になり、あるいは積層造形体の表面粗さが増加する要因となる。なお、第1および第2Co基合金粉末は、前述した化学組成および粒度分布/範囲を満たせば、同一である必然性はない。
(積層造形工程)
積層造形工程S2は、合金粉末用意工程S1により作製された第1Co基合金粉末(粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μm以下)を用いて、選択的レーザ溶融(SLM)法により所望形状の積層造形体(第1構造部5の前駆体)を形成する工程である。
積層造形工程S2では、合金粉末用意工程S1により作製された第1合金粉末を敷いて所定厚さの合金粉末床を用意し、合金粉末床の所定の領域にレーザ光を照射して該領域の粉末を局所溶融および急冷凝固させる。この一連の流れを繰り返すことにより、積層造形体(第1構造部5の前駆体)が形成される。なお、積層造形工程S2では、最終的な積層造形体として望ましい微細組織を得るために、積層造形体の微細組織を制御するのが好ましい。
(合金粉末充填および脱気工程)
合金粉末充填および脱気工程S3は、HIP処理工程S5を行うための準備工程である。具体的に、合金粉末用意工程S1で作製した第2Co基合金粉末を、真空引き用ポート20を通して第1構造部5の空間部7に充填する。第2Co基合金粉末の充填が完了した後、開口部9から所定の工具を用いて空間部7における第2Co基合金粉末の充填状態を確認する。この後、真空引き用ポート20から所定の脱気装置を用いて脱気を行う。この脱気は、300℃~600℃の温度において1.0×10-3 Pa以下の圧力下で2時間以上継続するのが好ましい。なお、真空引きポート20はCo基合金の他ステンレス鋼であってもよい。
(封止工程)
封止工程S4は、HIP処理工程S5を行うための準備工程である。具体的に、上記工程S3を終えた後に、真空引き用ポート20の開口部9を、圧着、溶接等で封止する。封止する材質は真空引きポート20と同材であることが望ましい。
(HIP処理工程)
HIP処理工程S5は、合金粉末用意工程S1により作製された第2Co基合金粉末を用いて、HIP法により高密度化された第2構造部10の前駆体を形成する工程である。
本開示の実施形態の特徴として、HIP処理工程S5で用いられる第2Co基合金粉末は、積層造形工程S2で用いられる第1Co基合金粉末と同じ粒径(粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μm以下)を有する。HIPの処理条件は、温度1150℃、圧力150 MPa、4~10時間であるのが好ましい。なお、HIP処理を実施した後の冷却方法としては、特に限定されず、例えば水冷、油冷、空冷、炉冷のいずれかの方法を実施すればよい。
また、HIP処理工程S5は、積層造形工程S2により得られた積層造形体(第1構造部5の前駆体)に対する溶体化処理として機能する。具体的に、HIP処理工程S5により、積層造形体(第1構造部5の前駆体)において、母相結晶粒の再結晶が生じ、急冷凝固の際に生じた内部ひずみが緩和される。
(時効処理工程)
時効処理工程S6は、HIP処理工程S5を経た後のCo基合金構造体の前駆体に対して時効処理を施す工程である。時効温度は980℃に設定されるのが好ましい。また、時効処理工程S6の保持時間は4~10時間が好ましい。時効処理工程S6の冷却方法としては、特に限定されず、例えば水冷、油冷、空冷、炉冷のいずれかの方法を実施すればよい。なお、時効処理工程S6では、異なる温度条件および保持時間で複数回の時効処理を実施してもよい。
(表面処理工程)
表面処理工程S7では、時効処理工程S6によって得られたCo基合金構造体(ここでは、外輪側エンドウォール4)に対し、真空引きポート20を切除し最終構造とする。また、必要に応じて、表面仕上げを施してもよく、あるいは耐食性被覆層を形成してもよい。
(評価工程)
評価工程S8では、最終的に得られたCo基合金構造体(ここでは、外輪側エンドウォール4)に対し、所定の評価装置を用いて機械的強度(0.2%耐力および引張強さ)を評価する。具体的に、評価工程S8において、最終的に得られたCo基合金構造体が、例えば室温0.2%耐力が500 MPa以上でありかつ800℃引張強さが300 MPa以上であれば、タービン静翼1に適用可能な機械的強度を有していると評価される。なお、Co基合金構造体の製造方法として、評価工程S8を省略してもよい。
[実施形態の作用効果]
この実施形態では、積層造形法により複雑な形状を有する第1構造部5を造形することが比較的容易となる。また、積層造形法により第1構造部5を造形する工程(積層造形工程S2)および熱間等方圧加圧法により第2構造部10を形成する工程(HIP処理工程S5)では、いずれも粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μm以下となる第1および第2Co基合金粉末が用いられる。すなわち、第1構造部5に適用される第1合金粉末と第2構造部10に適用される第2合金粉末とでは、主な化学組成および粒径が互いに共通している。
このため、熱間等方圧加圧法による熱処理を実施した後(上記工程S5の後)では、第1構造部5の金属組織と第2構造部10の金属組織とが一様になりやすく、第1構造部5の金属組織と第2構造部10の金属組織との間に位置する境界が現れにくくなる。その結果、第1構造部5と第2構造部10との境界を起点として脆性破壊が起こりにくくなり、第1構造部5と第2構造部10とが一体に保たれる。これにより、本開示の実施形態に係る製造方法により製造されるCo基合金構造体(ここでは、外輪側エンドウォール4)は、Co基合金の特性(例えば、耐食性および耐摩耗性)を得つつ、十分な機械的強度が担保される。したがって、本開示の実施形態に係る製造方法では、十分な機械的強度を確保しつつ、複雑な形状のCo基合金構造体を安定して製造することができる。
また、上述した化学組成を有する第1および第2Co基合金粉末を用いることにより、Co基合金構造体において、析出強化に寄与する炭化物相粒子を母相結晶粒内に分散析出させることが可能となる。その結果、Co基合金の機械的特性をより一層高めることができる。
さらに、本開示の実施形態に係る製造方法により製造されたCo基合金構造体(ここでは、外輪側エンドウォール4)が、500 MPa以上の室温0.2%耐力と300 MPa以上の800℃引張強さとを有するように構成されていれば、当該Co基合金構造体をタービン静翼1として使用することができる。
[その他の実施形態]
上記実施形態では、Co基合金構造体の一例として、タービン静翼1の外輪側エンドウォール4を説明したが、これに限られない。Co基合金構造体の他例としては、燃焼器部材、摩擦攪拌接合用工具などが挙げられる。
また、図4に示した粉末作製工程S1に関し、原料粉末を作製する方法としてガスアトマイズ法を用いた場合を説明したが、この方法に限られない。すなわち、粉末作製工程S1では、従前の方法および手法を利用することが可能である。例えば、所望の化学組成となるように原料を混合、溶解、鋳造して母合金塊(マスターインゴット)を作製する母合金塊作製素工程と、該母合金塊から合金粉末を形成するアトマイズ素工程とを実施してもよい。また、アトマイズ方法にも特段の限定はなく、従前の方法および手法を利用できる。例えば、上述したガスアトマイズ法に代えて、遠心力アトマイズ法を採用してもよい。
さらに、第2Co基合金粉末を用意する別工程として(図4中には図示していない)、第1構造部を造形する積層造形工程S2において未利用となった第1Co基合金粉末を回収する素工程と、回収した該第1Co基合金粉末を所望の粒度分布となるように分級する素工程と、を含む第1Co基合金粉末の再生工程を行うことは好ましい。再生した第1Co基合金粉末を第2Co基合金粉末の少なくとも一部として活用することにより、工程S1で用意した合金粉末を有効活用することができ、その結果、Co基合金構造体の全体としての製造コストの低減に寄与することができる。なお、本実施形態の構成および効果は、必須のものではなく追加的なものである。
以上、本開示についての実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態のみに限定されず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。
以下、下記工程を経て作製されたサンプルA(実施例)およびサンプルB(比較例)に基づいて、本開示をさらに具体的に説明する。なお、本開示は、サンプルAの構成に限定されるものではない。
[サンプルAの作製]
サンプルAは、粉末作製工程と、積層造形工程と、粉末充填および脱気工程と、HIP処理工程と、時効処理工程と、評価工程と、を経て作製した。なお、サンプルAの作製過程では、封止工程および表面処理工程を省略した。
粉末作製工程では、上記実施形態を満たす化学組成を有するCo基合金粉末を用意した。具体的には、サンプルAの化学組成は次のようである。0.15≦C≦0.2質量%、0.008≦B≦0.012質量%、24.5≦Cr≦25.5質量%、0≦Fe≦0.5質量%、9.5≦Ni≦10.5質量%、7.3≦W≦7.7質量%、0.1≦Ti≦0.4質量%、0.4≦Zr≦0.6質量%、0.2≦Ta≦0.4質量%、0.1≦Nb≦0.2質量%、0≦Si≦0.3質量%、0≦Al≦0.15質量%、N≦0.03質量を含み、残部がCoおよび不可避不純物。
用意したCo基合金粉末の粒度分布を、レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、SYNC)を用いて測定し、粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μm以下であることを確認した。
積層造形工程では、上記Co基合金粉末を第1合金粉末として用いて、選択的レーザ溶融(SLM)法により図5~図7に示した積層造形体(第1構造部)を形成した。
図5は、サンプルA~Cの各々に適用される第1構造部の全体を示す斜視模式図である。図6は、図5のVI-VI線断面模式図である。図7は、図5のVII-VII線断面模式図である。
図5に示すように、第1構造部の本体部は、略円筒状を有している。また、図6および図7に示すように、第1構造部の空間部は、上側部分が断面視円形状となる一方、上側部分以外の部分が断面視半円形状となるように構成されている。図6に示した第1構造部の各部の寸法は、寸法L1(円筒の全長)が75 mm、寸法L2(円筒の直径)が12 mm、寸法L3が15 mm、寸法L4が60 mmである。なお、図5~図7では、図示の便宜上、第1構造部、本体部、および空間部の各々について上記実施形態で説明した符号と同じ符号を付した。
粉末充填および脱気工程では、上記Co基合金粉末を、第1構造部の空間部に充填した。充填完了後、ハンマーを用いて開口部からCo基合金粉末の充填状態を確認した。この後、開口部から脱気した。この脱気では、300℃の温度雰囲気において5.0×10-4 Pa以下の圧力を加えた状態を3時間続けた。
HIP処理工程では、上記Co基合金粉末を第2合金粉末として用いて、熱間等方圧加圧法(HIP)により第1構造部の空間部に第2構造部を形成した。HIP処理工程で用いた第2Co基合金粉末は、積層造形工程で用いた第1Co基合金粉末と同じである(同じ化学組成と同じ粒度分布とを有し、粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μm以下である)。HIPの焼結条件は、温度1150℃、圧力150 MPa、4時間である。HIP処理を実施した後、第1および第2構造部を空冷により冷却した。
時効処理工程では、第1および第2構造部に対して時効処理を施した。時効温度を980℃に設定し、かつ保持時間を4時間とした。その後、第1および第2構造部を空冷により冷却した。
[サンプルB、Cの作製]
サンプルB、Cは、粉末作製工程と、積層造形工程と、粉末充填および脱気工程と、HIP処理工程と、時効処理工程と、を経て作製した。なお、サンプルB、Cの各工程に関する諸条件については、サンプルAと重複する部分は詳細な説明を省略する。以下、サンプルB、Cの各過程に関し、サンプルAの各過程と異なる点を説明する。
合金粉末用意工程において、サンプルBの合金組成は後述するFe-Ni系合金とし、サンプルCの合金組成はサンプルAのそれと同一にした。粉末の粒度分布/範囲としては、粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μm以下のものと、粒度分布の範囲が5μm以上150μm以下で D90の範囲が100μm以上140μm以下のものとの2種類を作製した。
サンプルBの化学組成は次のようである。B:0.008質量%、Cr:18.3質量%、Ni:36.1質量%、W:5.0質量%、Ti:0.84質量%、Zr:0.016質量%、Nb:4.1質量%、残部がFeおよび不可避不純物。
積層造形工程では、粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μmとなる第1合金粉末を用いて、図5~図7に示した積層造形体(第1構造部)を形成した。
HIP処理工程では、粒度分布の範囲が5μm以上150μm以下でD90の範囲が100μm以上140μm以下となる第2合金粉末を用いて、HIPにより第1構造部の空間部に第2構造部を形成した。すなわち、HIP処理工程で用いた第2合金粉末の粒度分布/範囲は、積層造形工程で用いた第1合金粉末の粒度分布/範囲と異なっている。
[サンプルA~Cの分析結果]
以上のように作製したサンプルA~Cに関し、図8~図14に基づいて、各サンプルにおける第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との状態を分析した。第1構造部と第2構造部の境界位置は、各サンプルの表面を研磨した後に肉眼で視認することによって決定した。
図8は、サンプルAの上面を示した光学顕微鏡写真である。図9は、図8におけるX部分の金属組織を示した電子顕微鏡写真である。図10は、サンプルAにおける第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界付近を示した電子顕微鏡写真である。図11は、サンプルBの金属組織を示した電子顕微鏡写真である。図12は、サンプルBにおける第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界付近を示した電子顕微鏡写真である。図13は、サンプルCの金属組織を示した電子顕微鏡写真である。図14は、サンプルCにおける第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界付近を示した電子顕微鏡写真である。
図8および図9では、サンプルAの上面における第1構造部と第2構造部とのおおよその境界位置を、先端部が尖った形状を有する工具を用いて目印(境界目印)を付した。さらに、図8~図10では、サンプルAにおける第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とのおおよその境界位置を、破線により示した。同様に、図11~図14についても、サンプルB、Cにおける第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とのおおよその境界位置を、破線により示した。
図11および図12によると、サンプルBでは、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とが相違していた。特に、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界付近では、第2構造部の組織内において複数の析出物で囲まれた析出領域が現れていた一方、第1構造部の組織内において当該析出領域が現れなかったことを確認した。すなわち、サンプルBでは、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とが不均一となる傾向が見られた。
図13および図14によると、サンプルCでも、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とが相違していた。特に、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界付近では、第2構造部側で複数のMC炭化物が連なる析出領域が現れていた。一方、第1構造部の組織内においては、析出したMC炭化物が第2構造部より小さく、複数のMC炭化物で囲まれた析出領域も第2構造部より小さく表れていたことを確認した。すなわち、サンプルCでは、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とが不均一となる傾向が見られた。
このように、サンプルB、Cでは、積層造形工程で用いた第1合金粉末の粒度分布/範囲と、HIP処理工程で用いた第2合金粉末の粒度分布/範囲とが異なることから、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とが不均一となり、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との間に位置する境界を起点として脆性破壊が起こりやすくなる。その結果、サンプルB、Cでは、十分な機械的強度が得られないことが予想される。そして、上記評価工程では、サンプルB、Cについて十分な機械的強度(室温0.2%耐力:500 MPa以上、800℃引張強さ:300 MPa以上)を確認することができなかった。
これに対し、図9および図10によると、サンプルAでは、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とが同じように現れていた。特に、図10を参照すると、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界付近において、第1構造部の金属組織および第2構造部の金属組織の双方に、複数のMC炭化物で囲まれた析出領域が多数現れていたことを確認した。すなわち、サンプルAでは、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とが一様になっていた。なお、図8を参照しても、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との境界は目視できなかった。
このように、サンプルAでは、積層造形工程で用いた第1Co基合金粉末と、HIP処理工程で用いた第2Co基合金粉末とが粒度分布/範囲(粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下でD90の範囲が40μm以上80μm)で共通しているため、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織とが一様になり、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との間に位置する境界が現れにくくなる。
その結果、サンプルAでは、当該境界を起点として脆性破壊が起こりにくくなる。さらに、サンプルAでは、第1構造部の金属組織と第2構造部の金属組織との双方において一様に現れた多数の析出領域により、サンプルAの機械的強度が全体として向上するものと推察される。そして、上記評価工程では、サンプルAについて十分な機械的強度(室温0.2%耐力:500 MPa以上、800℃引張強さ:300 MPa以上)を確認することができた。
本開示は、例えばタービン高温部材としてのタービン静翼に好適なCo基合金構造体の製造方法およびその製造方法により得られるタービン静翼として産業上の利用が可能である。
1…タービン静翼、2…内輪側エンドウォール、3…翼部、4…外輪側エンドウォール、
5…第1構造部、6…本体部、7…空間部、9…開口部、10…第2構造部、
20…真空引き用ポート。

Claims (5)

  1. コバルト基合金構造体の製造方法であって、
    前記コバルト基合金構造体は、
    空間部を有する第1構造部と、
    前記空間部に埋設される第2構造部と、を備え、
    前記製造方法は、
    粉末の粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下で体積基準90%径の範囲が40μm以上80μm以下となる第1コバルト基合金粉末を用いて積層造形法により前記第1構造部を造形する工程と、
    粉末の粒度分布の範囲が5μm以上85μm以下で体積基準90%径の範囲が40μm以上80μm以下となる第2コバルト基合金粉末を前記空間部に充填した状態で熱間等方圧加圧法により前記空間部に前記第2構造部を形成する工程と、を含む、ことを特徴とするコバルト基合金構造体の製造方法。
  2. 請求項1に記載のコバルト基合金構造体の製造方法において、
    前記第1および前記第2コバルト基合金粉末は、
    0.08質量%以上0.25質量%以下の炭素と、
    0.1質量%以下のホウ素と、
    10質量%以上30質量%以下のクロムと、
    5質量%以下の鉄と、
    30質量%以下のニッケルと、を含み、
    前記鉄と前記ニッケルとの合計が30質量%以下であり、
    タングステンおよびモリブデンのうちの少なくとも1つを合計が5質量%以上12質量%以下で含み、
    チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、ハフニウムおよびバナジウムのうちの少なくとも1つを合計が0.5質量%以上2質量%以下で含み、
    0.5質量%以下のケイ素と、
    0.5質量%以下のマンガンと、
    0.003質量%以上0.1質量%以下の窒素と、を含み、
    残部がコバルトと不純物とからなる、ことを特徴とするコバルト基合金構造体の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のコバルト基合金構造体の製造方法において、
    前記第1コバルト基合金粉末を再生する工程を更に含み、
    当該第1コバルト基合金粉末を再生する工程は、前記第1構造部を造形する工程で未利用となった前記第1コバルト基合金粉末を回収する素工程と、回収した前記第1コバルト基合金粉末を分級する素工程とを含み、
    前記第2コバルト基合金粉末の少なくとも一部は、前記第1コバルト基合金粉末を再生する工程で得られた合金粉末である、ことを特徴とするコバルト基合金構造体の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコバルト基合金構造体の製造方法により製造されたコバルト基合金構造体であって、前記コバルト基合金構造体の所定部分は、500 MPa以上の室温0.2%耐力と、300 MPa以上の800℃引張強さとを有している、ことを特徴とするコバルト基合金構造体。
  5. 請求項4に記載のコバルト基合金構造体において、
    前記コバルト基合金構造体がタービン静翼であり、
    前記所定部分が外輪側エンドウォールである、ことを特徴とするコバルト基合金構造体。
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