JP2022041816A - ポリマー電解質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好なイオン伝導度を示し、且つ、生産性に優れたフィルムの製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】アルカリ金属塩、電離助剤およびポリアリーレンスルフィドを含有するフィルムの製造方法であって、前記アルカリ金属塩および前記ポリアリーレンスルフィドを含有する膜状物を得る工程Iと、前記膜状物に前記電離助剤を含有させる工程IIとを、この順に有する、フィルムの製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリマー電解質の製造方法に関する。
近年、リチウム二次電池をはじめとするアルカリ二次電池はスマートフォン、携帯電話などの携帯機器、ハイブリッド自動車、電気自動車、及び家庭用蓄電器などといった様々な用途に用いられつつあり、それらに関する研究開発が盛んに行われている。
リチウム二次電池は、特に電気自動車などの用途において、安全性の向上が強く求められている。従来の電解液電池は、可燃性の電解液を使用したため、電池の燃焼や爆発が起きることがあった。そのため、安全性向上に寄与できる固体電解質の研究が活発となっている。
固体電解質は、イオンを容易に伝導する固体であり、一般的に、酸化物系、硫化物系を中心として無機系固体電解質、及び、PEO(ポリエチレンオキサイド)などを用いたポリマー系固体電解質に分けられる。無機系固体電解質は、伝導性の無機粉体を固着させて層状にする必要があるため、超高圧の設備が必要であったり、物性的に割れやすく、大型化するには技術的なハードルが高いとされている。
一方で、ポリマー系固体電解質は、生産性、柔軟性などの利点があるため、生産性の面では無機系固体電解質より有利であるが、イオン伝導性が低い点が問題であった。ポリマー系固体電解質として古くから知られているものにPEO(ポリエチレンオキサイド)があるが、PEOのイオン伝導機構は、分子鎖のブラウン運動による伝導であるため、ガラス転移温度以下ではイオン伝導度が極端に低下する、などの問題を抱えていた。
そこで近年、分子鎖のブラウン運動とは別の機構でイオン伝導させるポリマー系固体電解質の開発が進んでいる。中でも、難燃性ポリマーであるPPS(ポリフェニレンサルファイド)を用いた固体電解質の開発が盛んに行われている。
特開昭59-157151号公報 米国特許出願公開第2018/006308号明細書 中国特許出願公開第106450424号明細書 米国特許出願公開第2017/0005356号明細書 米国特許出願公開第2006/0177740号明細書
J.Am.Chem.Soc.2020,142,3301-3305
特許文献1~3には、PPS、電子受容性ドーパント、アルカリ金属塩を混合した固体電解質が開示されている。これらの技術は、PPSに電子受容性ドーパントをドープし、電荷移動錯体を形成したのち、アルカリ金属塩を混合することで固体電解質を作製する、とされる。電荷移動錯体の形成に必須な電子受容性ドーパントは強い酸化力を持ち、変異原性を有するものがほとんどである。また、ドーパントの種類によっては、昇華性も有するため、大量生産を考えた場合、環境安全性を担保するのは非常に困難である。仮に、安全性を度外視したとしても、ドーパントの強い酸化力の為、PPSの加工温度域ではポリマー鎖の切断や炭化が発生し、プロセスウインドウが極めて狭く、生産性に乏しい。
また、特許文献2~4には、PPS、電子受容性ドーパント、アルカリ金属塩等、各原料を高温で混合させた後、成型加工する方法が開示されているが、電子受容性ドーパントを含むことによる安全性とプロセスウインドウの課題は、特許文献1~3に記載の固体電解質と同様に生じ、生産性に課題がある。
また、非特許文献1には、有機溶剤に溶解するPPS誘導体を合成し、PPS誘導体溶液にした後、有機溶剤を乾固することによって膜状に成型する、所謂ソルベントキャスト法が開示されている。しかしながら、溶剤を乾固させる為に、加熱時間を長くとる必要がある、つまり、製膜速度を極端に下げる必要があり、大量生産には向かない方式であり、生産性に課題がある。また、揮発した有機溶剤を捕集するための大規模な排気設備が必要となり、環境安全性の面からも大量生産するには課題が多く、この点でも、生産性に課題があるといえる。
また、特許文献5には、有機溶剤に溶解させたポリアミド酸にアルカリ金属塩を添加し、有機溶剤を乾固することによって膜状に成形する、ソルベントキャスト法が開示されている。しかしながら、溶剤を乾固させる為に、加熱時間を長くとる必要がある、つまり、製膜速度を極端に下げる必要があり、大量生産には向かない方式である。また、揮発した有機溶剤を捕集するための大規模な排気設備が必要となり、環境安全性の面からも大量生産するには課題が多く、生産性に課題がある。また、ポリアミド酸からなる樹脂であるポリイミドはPPSよりも吸湿性が高い性質があり、電解質として用いる場合、水が電気分解する可能性がある。
本発明は、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果、良好なイオン伝導度を示し、且つ、生産性に優れたフィルムの製造方法を見出し、本発明に至った。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。
(1)アルカリ金属塩、電離助剤およびポリアリーレンスルフィドを含有するフィルムの製造方法であって、前記アルカリ金属塩および前記ポリアリーレンスルフィドを含有する膜状物を得る工程Iと、前記膜状物に前記電離助剤を含有させる工程IIとを、この順に有する、フィルムの製造方法であり、
(2)前記ポリアリーレンスルフィドが、示差走査熱量計で測定した融点が270℃以下であり、かつ、式-(Ar-S)-を構成単位とするポリアリーレンスルフィド共重合体であり、前記Arが化学式(1)の(A)で表される構成単位、および、化学式(1)の(B)~(G)からなる群より選ばれる少なくとも一つの構成単位を有する、(1)のフィルムの製造方法であることが好ましく、
Figure 2022041816000001
(R1,R2はアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および水酸基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。R3、R4は、水素、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および水酸基から選ばれた置換基であり、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。Yはアルキレン基、O、CO、SOおよびSOから選ばれる。)
さらに、(3)前記電離助剤が、溶媒を有し、前記溶媒が、25℃における式(1)で得られるイオン解離度(1-ξ)が0.1以上であり、かつ、式(2)で得られる溶媒拡散係数(Dsolvent)が15以下である、(1)または(2)のフィルムの製造方法であることが好ましい。
Figure 2022041816000002
Figure 2022041816000003
本発明により、良好なイオン伝導度を示し、且つ、生産性に優れたフィルムの製造方法を提供することができる。
(アルカリ金属塩)
本発明の製造方法で得られるフィルムは、アルカリ金属塩を含む。また、上記のアルカリ金属塩は、アルカリ金属イオンが構成イオンとして含まれる塩をいう。
アルカリ金属イオンには、リチウム金属イオン、ナトリウム金属イオン、カリウム金属イオンなどが挙げられる。イオン拡散性の高さを考える場合、イオン径が小さい金属イオン、即ち、リチウム金属イオンやナトリウム金属イオン、が好適に用いられる。
アルカリ金属イオンと塩を構成するアニオンには、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンや、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンなどが挙げられる。イオン解離性の高さを考える場合、HSAB則に基づくやわらかい塩基が好適に用いられる。HSAB則(Principle of Hard and Soft Acids and Bases)とは、R.G.Pearsonが提唱した酸塩基の強さに関して、かたい、やわらかいという観点で分類したものである。かたい酸はかたい塩基に対して親和性が大きく、やわらかい酸はやわらかい塩基に対して親和性が大きい。かたい酸とは、電子受容体になる原子が小さく、容易に変形する軌道に入った価電子を持たず、大きな正電荷をもつものである。やわらかい酸とは、電子受容体になる原子が大きく、容易に変形する軌道に入った価電子を持ち、電荷がないかあっても小さいものである。かたい塩基とは、価電子が原子に強く結合している塩基であり、やわらかい塩基とは、価電子が容易に分極する塩基である。HSAB則およびHSABの酸塩基の分類は、R.B.HeslopとK.Jones著「Inorganic Chemistry -A Guide to Advanced Study」の9章の酸塩基の15節に記載されている。
アルカリ金属塩には、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(LiCO)、過塩素酸リチウム(LiClO)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF)、四フッ化ホウ酸ナトリウム(NaBF)、過塩素酸ナトリウム(NaClO)、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NaFSI)、及びナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(NaTFSI)などが挙げられる。前述した中でも、イオンの解離性の高く、工業的に入手が容易な、LiTFSI、もしくは、LiFSIが好適に用いられる。
なお、前述したアルカリ金属塩は、複数種のアルカリ金属塩を任意の割合で混合して用いてもよい。
イオンの解離度及びイオン伝導度の観点から、ポリマーにおける全構成単位及びアルカリ金属塩のモル比が、100:2~100:400であることが好ましく、100:2~100:100がより好ましく、100:2~100:50がさらに好ましい。
(電離助剤)
本発明の製造方法で得られるフィルムは、電離助剤を含む。アルカリ金属塩の解離及びイオン伝導度の観点から、上記の電離助剤は溶媒を含有し、上記の溶媒は25℃における式(1)で得られたイオン解離度(1-ξ)が0.1以上であり、かつ、式(2)で得られる溶媒拡散係数(Dsolvent)が15以下であることが好ましい。
Figure 2022041816000004
Figure 2022041816000005
式(1)で得られたイオン解離度(1-ξ)は電離助剤、温度、イオン濃度、イオン種類によって変わることがある。ここでイオン解離度は、温度が25℃、イオン濃度が0.2mol/L、且つカチオンがリチウムイオン、アニオンがN(SOCF である場合のイオン解離度をいう。
なお、式(1)及び式(2)の表記は下記通りの数値を表す。σimp:イオン伝導率、e:電子電量、N:アボガドロ定数、k:ボルツマン定数、T:温度、DLithium:リチウムイオンの拡散係数、DAnion:TFSI-の拡散係数、(1-ξ):イオン解離度、Dsolvent:溶媒拡散係数、c:境界条件定数、η:粘度、ra:拡散半径。
上記電離助剤は、ポリマー電解質の界面、または非結晶部分でリチウムイオンと結合し、ポリマーマトリクスよりもイオン導電性に優れた第三の相を形成することができる。前記第三の相により、導電通路が形成され、ポリマー電解質のイオン導電性を向上させることができる。
式(1)で得られたイオン解離度(1-ξ)は、イオン解離の割合を示す。アルカリ金属塩の解離を促進させる観点から、上記溶媒の式(1)で得られたイオン解離度(1-ξ)は、0.1以上であることが好ましい。また、式(2)で得られる溶媒拡散係数(Dsolvent)は、溶媒の粘性を示しており、この数値が低いほどアルカリ金属イオンの伝導度が高くなる傾向にある。上記観点から、上記溶媒の式(2)で得られる溶媒拡散係数(Dsolvent)は、15以下であることが好ましい。
電離助剤としては、水、γブチロラクトン(GBL)、n-メチルピロリドン(NMP)、ブチレンカーボネート(BC)、エチレンカーボネート(EC)プ炉ピレンピレンカーボネート(PC)、メチル-γ-ブチロラクトン(GVL)、トリグリム(TG)、ダイグリム(DG)、炭酸エチルメチル(EMC)、および炭酸ジメチル(DMC)からなる群より選ばれる1つ以上を含有することが好ましい。なかでも、電解質の電位窓の観点から、上記電離助剤は、γブチロラクトン(GBL)およびn-メチルピロリドン(NMP)の少なくとも何れか一方を含有するものであることがより好ましく、前述のポリマーとの親和性の観点から、上記電離助剤は、γブチロラクトン(GBL)を含有するものであることが最も好ましい。
(ポリアリーレンスルフィド)
本発明の製造方法で得られるフィルムは、ポリアリーレンスルフィド(以下、ポリアリーレンスルフィドが有するアリーレン基を「Ar」と略することがある)を含む。また、上記のポリアリーレンスルフィドは、式、-(Ar-S)-を構成単位とするポリマーであり、-(Ar-S)-の構成単位に含まれるArは、下記の化学式(1)の(A)で表される構成単位のみで構成されるものであるか、下記の化学式(1)の(A)で表される構成単位および化学式(1)の(B)~(G)からなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位を有するものであることが好ましい。ポリアリーレンスルフィドの融点や分子量を制御する観点で、Arは、下記の化学式(1)の(A)で表される構成単位および化学式(1)の(B)~(G)からなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位を有するものであることがより好ましく、下記の化学式(1)の(A)で表される構成単位および化学式(1)の(B)~(G)からなる群より選ばれる少なくとも1つの構成単位から構成されるものであることが特に好ましい。
Figure 2022041816000006
(R1,R2はアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および水酸基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。R3、R4は、水素、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および水酸基から選ばれた置換基であり、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。Yはアルキレン基、O、CO、SOおよびSOから選ばれる。)
-(Ar-S)-で表される構成単位1モルに対し、前記共重合単位(-(Ar-S)-のArが化学式(1)の(B)~(G)で表される構成単位の少なくとも何れか1つを有するもの)は、1モル%以上50モル%未満であることが好ましく。3モル%以上30モル%未満がより好ましく、5モル%以上25モル%未満がいっそう好ましい。共重合単位が1モル%未満では、ポリアリーレンスルフィドの融点が有意に下がらず、下記の工程Iで製膜する際の加工温度が高くなり、アルカリ金属塩の分解につながる。一方、50モル%を超えると、ポリアリーレンスルフィド共重合体の重合反応終了後の反応液からポリアリーレンスルフィド共重合体を回収する際に、回収不良となる傾向にある。なお、ポリアリーレンスルフィド共重合体中の共重合単位の含有比率は、重合時に添加する化学式(2)の(A’)~(G’)で表されるジハロゲン化芳香族化合物全量に対する、共重合成分として添加する(B’)~(G’)の化合物の添加量の比率、と同じである。
Figure 2022041816000007
上記-(Ar-S)-で表される単位を主要構成単位とする限り、下記の化学式(3)の(H)~(J)で表される分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、-(Ar-S)-で表される構成単位1モルに対して0~1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 2022041816000008
また、ポリアリーレンスルフィド共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
ポリアリーレンスルフィド共重合体の合成方法は特に限定されるものではなく、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とジハロゲン化芳香族化合物を反応させて得る方法や、ジヨード芳香族化合物と硫黄を無溶媒下で溶融反応させて得る方法などが挙げられるが、工業的に生産されている前者の重合方法を採用するのが汎用性の観点で好ましい。
また、ポリアリーレンスルフィドは、融点が300℃以下であることが好ましい。工程Iにおける製膜時の加工温度を低温化できるためである。加工温度を低温化できると、アルカリ金属塩の分解を抑制することが可能となる。また、アルカリ金属塩の分解温度より低い温度域での製膜が可能になる(つまり、プロセスウインドウが広がる)という観点からも、ポリアリーレンスルフィド共重合体の融点は低いことが好ましく、270℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。融点の下限は特に限定されるものではないが、低融点化のためにポリアリーレンスルフィドの共重合成分量が多くなると、ポリアリーレンスルフィド重合後の反応液からポリアリーレンスルフィド共重合体の回収性が低下する傾向にあることから、融点は150℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい範囲として例示できる。
また、ポリアリーレンスルフィドは、結晶化度が20%以下であることが好ましく、より好ましくは、15%以下であることが好ましい。ポリアリーレンスルフィドの結晶化度を低くすることで、電離助剤が含浸されやすくなり、導電通路が形成しやすくなるため、高いイオン伝導度に至ることができる。
ポリアリーレンスルフィドの結晶化度は、低いほど好ましい。電離助剤が、ポリアリーレンスルフィドの非晶領域に含浸されることにより、導電経路を形成し、高いイオン伝導度を得ることができるためである。具体的な結晶化度としては、30%以下であることが好ましい。より好ましくは、15%以下が好ましい。結晶化度の下限は特に限定されるものではないが、結晶性を下げるためにポリアリーレンスルフィドの共重合成分量が多くなると、ポリアリーレンスルフィド重合後の反応液からポリアリーレンスルフィド共重合体の回収性が低下する傾向にあることから、結晶化度は3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。なお、結晶化度は、示差走査型熱量計(DSC)で検出される融解ピーク面積より求められる融解熱量(J/g)を、ポリフェニレンスルフィドの完全結晶時の融解熱量146.2(J/g)で除した値である。
ポリアリーレンスルフィドの分子量は、工程Iで製膜する際の加工性、および、形態保持の観点から、重量平均分子量は2万以上であることが好ましい。この範囲を下回ると、例えば、溶融製膜する際に良好な成形性が得られない傾向にある。重量平均分子量の上限は特に制限されるものではないが、15万以下が好ましく、10万以下がより好ましい。重量平均分子量が15万を超えると固体電解質作製時の溶融混練の剪断発熱が大きくなり品質の低下につながることや、混練機への負荷が大きくなる。なお、重量平均分子量は、溶離液に1-クロロナフタレンを用い、カラム温度210℃の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値である。
(フィルムの製造方法)
本発明のフィルムの製造方法は、アルカリ金属塩およびポリアリーレンスルフィドを含有する膜状物を得る工程Iと、上記の膜状物に上記電離助剤を含有させる工程IIとを、この順に有する。ここで、工程Iと工程IIがこの順であることが重要である。
上記順番でない場合、例えば、アルカリ金属塩、ポリアリーレンスルフィド、および電離助剤の三成分で膜状物を得ようとする場合、ポリアリーレンスルフィドの融点まで加熱すると電離助剤が揮発し、結果的に、得られるフィルムは、電離助剤を含有しない、もしくは、極端に電離助剤の含有量が少ないものとなってしまう。
また、ポリアリーレンスルフィド単体の膜状物を得たのち、上記の膜状物にアルカリ金属塩と電離助剤を含有させようとした場合、ポリアリーレンスルフィドとアルカリ金属塩の親和性が乏しいため、ポリアリーレンスルフィド中に電離助剤だけが浸透し、アルカリ金属塩がポリアリーレンスルフィド表面に付着した状態となり、得られるフィルムは、必要なイオン伝導度に到達するだけのアルカリ金属塩が含有されないものとなる。以上のことから、ポリフェニレンサルファイドとアルカリ金属塩とを含有する膜状物を得る工程Iと、上記膜状物に上記電離助剤を含有させる工程IIとを順に有することが重要である。
アルカリ金属塩およびポリアリーレンスルフィドを含有する膜状物を得る工程Iは、アルカリ金属塩及びポリアリーレンスルフィドを溶融混合してから、膜状物を得る方法であるが、本発明においては、ポリアリーレンスルフィドの結晶化を可能な限り抑制した膜状物を得ることが好ましい。ポリアリーレンスルフィドの結晶化が進行すると、工程IIにおいて高イオン伝導度を得るために必要な電離助剤量が含有されない場合がある。その理由は、電離助剤がポリアリーレンスルフィドの非晶部分に含浸されるためであり、非晶部分を多く残すことで所望の電離助剤含有量に調整することが可能となる。そのため、膜状物の相対結晶化度を50%以下とすることが好ましい。より好ましくは35%以下、さらに好ましくは、20%以下とすることが好ましい。なお、相対結晶化度とは、工程Iで得られる膜状物を示差走査熱量計(DSC)で測定した際に得られる、1stRUNにおける結晶融解熱量(ΔHm)と結晶化熱量(ΔHc)を用いて、下式で算出される。
相対結晶化度(%)=(ΔHc-|ΔHm|)/|ΔHm|
前述したポリアリーレンスルフィドの結晶化度が、パラフェニレンスルファイドの完全結晶の理論融解熱量にどこまで結晶が形成されるかを示したもの、であるのに対し、相対結晶化度は、ポリアリーレンスルフィドが現実的に結晶化できる熱量に対して、ある状態下でどの程度結晶化しているかを示すものである。つまり、工程Iの膜状物を形成した段階での結晶化度を示すものである。
膜状物の相対結晶化度を係る範囲に調整する方法は、ポリアリーレンスルフィドを溶融状態から急冷して膜状物を得る方法が有効である。ポリアリーレンスルフィドを溶融状態から急冷して膜状物を得る方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、アルカリ金属塩とポリアリーレンスルフィドを、先端にTダイを取りつけた二軸押出機で溶融押出して、チラーで冷却されたキャストドラムにキャストして連続的に膜状物を得る方法(以下、連続製膜)、また、アルカリ金属塩とポリアリーレンスルフィドを二軸押出機で溶融混合し、ストランドにして、回転刃でペレット状にしたものを、凍結粉砕機で粉砕し、粉状物にした後、加熱圧着装置などでプレスし、水浴で急冷して膜状物を得る方法、などが挙げられる。なかでも、生産性の観点から、前者の連続製膜による方式が好ましい。
本発明における連続製膜においては、長手方向や幅方向への延伸を含まない点が重要である。延伸を行うと、分子鎖の配向により結晶化が促進される。そのため、前述したような、所謂、無延伸の状態であることが好ましい。
ここで、工程Iで得られる膜状物の厚みは、100μm未満であることが好ましい。100μm以上だと工程IIにおける含浸時間が長くなるなど、生産性に乏しくなる場合がある。より好ましくは、50μm以下であることが好ましく、さらに固体電解質として電極間に挟むことを勘案すると、従来の電解液系リチウム二次電池で使用されているセパレータフィルム並の厚み、つまり20μm以下とすることが好ましい。
無延伸による連続製膜で膜厚を薄くしたい場合、アルカリ金属塩とポリアリーレンスルフィドのみで薄膜化するとハンドリングが低下する場合があるため、一般的に知られる押出ラミネートや複合製膜により製膜する方法が有効である。押出ラミネートとは、キャスト時に接着剤を塗布した支持フィルムを圧着して二層の膜を製膜する方法である。本来の押出ラミネートは、押出した樹脂と支持フィルムとが接着されることを目的とするが、支持フィルムに接着剤を塗布せずに供給すると、製膜後に支持フィルムを剥離することができる。このようにすることで、膜厚の薄い膜状物を得やすくなる。複合製膜とは、二つの押出機(押出機A、押出機B)を用いて、AB積層フィルムやABA積層フィルムを得る製膜方法である。例えば、アルカリ金属とポリアリーレンスルフィドを押出機Bに供給し、PETなどポリアリーレンスルフィドと剥離性の良い樹脂を押出機Aに供給して、ABA積層フィルムを得たのち、A層を剥離して薄膜のB層を得る方法が挙げられる。
膜状物を得る際、キャストロールからの離型性を担保する目的、あるいは、膜状物同士のブロッキングを防止する目的で、タルクなどの無機粒子を少量含有しても良い。
また、電離助剤を含有させる工程IIは、工程Iで得られた膜状物に、電離助剤を所定の条件で含浸することをいう。所定の条件とは、含浸時の温度、圧力等の条件を含み、ポリアリーレンスルフィド、アルカリ金属塩及び電離助剤の種類によって適宜選択してもよい。例えば、温度条件に関して、加熱含浸してもよいが、室温で含浸してもよい。また、圧力条件に関して、加圧した状態で含浸してもよいが、常圧もしくは減圧状態で含浸してもよい。
また、工程Iと工程IIは、インライン方式であっても、オフライン方式であってもよい。インライン方式とは、工程Iと工程IIが同一の製造ラインで実施することを指す。具体的には、工程Iで押出機から冷却ロールにキャストし、そのまま電離助剤を有したバスに膜状物を連続的に浸漬させる方式、などが挙げられる。オフライン方式とは、工程Iと工程IIが別の製造ラインで実施することを指す。具体的には、工程Iで押出機から冷却ロールにキャストして得た膜状物をロール状に巻き取っておき、ロールごと、もしくは、ロールから巻き出しながら、電離助剤を有したバスに浸漬させる方式、などが挙げられる。インライン方式は、同一処方による連続生産には好適だが、ロット毎に電離助剤を変更する必要がある場合には、不向きである。オフライン方式は、同一処方による連続生産には不向きだが、ロット毎に電離助剤を変更する必要がある場合には、好適である。
膜状物に電離助剤に含浸させる場合、電離助剤を単一もしくは2種類以上で用いてもよいし、含浸を補助する目的で膨潤溶媒を加えて用いてもよい。膨潤溶媒としては、ポリアリーレンスルフィドへの膨潤性がよく、且つ、得られた電解質フィルム中に残存させないためにも、融点が低く、揮発性の高い溶媒が好ましい。具体的には、トルエン、エタノール、アセトン、などが挙げられる。膨潤溶媒を用いて含浸する場合は、電離助剤と膨潤溶媒で特定の濃度に調整した溶液を作製しておき、膨潤溶媒が揮発する温度まで加温しながら含浸する方法が好ましい。膨潤溶媒を用いた含浸は、最終的に得られる電解質フィルム中に存在する電離助剤量を正確に制御することが可能である。
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[測定方法]
[融点]
測定試料2.5mgを示差走査熱量計(DSC)にセットし、窒素雰囲気下10℃/分の速度で25℃から120℃に昇温し、120℃で2時間保持した。その後350℃まで10℃/分の速度で昇温し、得られた吸熱ピークのうち、最も面積の広いピーク温度を融点とした。
[結晶化度]
上記DSCで得られた、最も面積の広いピークの面積より求められる融解熱量(J/g)をPPS完全結晶時の融解熱量146.2(J/g)で除した値を結晶化度(%)とした。なお、PPS完全結晶時の融解熱量はInternational Polymer Processing, 1988, Vol.3, No.2, p.79-85の記載値を用いた。
[相対結晶化度]
測定試料2.5mgを示差走査熱量計(DSC)のアルミ製サンプルホルダーに充填し、サンプル台に設置し、窒素雰囲気下10℃/分の速度で25℃から350℃に昇温して得られる、吸熱ピークを結晶融解熱量(ΔHm)、発熱ピークを結晶化熱量(ΔHc)とし、下式で算出した。
相対結晶化度(%)=(ΔHc-|ΔHm|)/|ΔHm|
[厚み]
JISK6250(2019)に従って、定圧厚さ測定器で測定した。
[イオン伝導度]
得られたフィルムを直径10mmのトムソン刃で打抜き、加圧ホルダー(東陽テクニカ社製LN-Z2-HF―PHシリーズ)にセットしたのち、インピーダンス測定装置(東陽テクニカ社製4990EDMS-120K)を用いて、100Hz~100MHzの交流電圧を印加し、複素インピーダンス法によるインピーダンスを測定し、ナイキストプロットを得た。得られたナイキストプロットから、抵抗値(R)を読み、測定した厚み(D)、および、測定電極と接している試料面積(S)と合わせて、式3でイオン伝導度(σ)を算出した。尚、試料面積は、直径10mmに打ち抜いていることから、78.5mmで算出した。
Figure 2022041816000009
[品質安定性]
工程IIで得られたフィルムから無作為に10箇所サンプリングし、イオン伝導度を測定した。そして、得られたイオン伝導度の標準偏差を平均値で除した、相対標準偏差を評価基準とした。
[ポリマー1]
撹拌機付きの1リットルオートクレーブに、47.5質量%水硫化ナトリウム118g(1.00モル)、96質量%水酸化ナトリウム41.2g(0.99モル)、酢酸ナトリウム27.1g(0.33モル)、N-メチルー2-ピロリドン(NMP)164g(1.65モル)、およびイオン交換水150gを仕込み、常圧で窒素を通じながら225℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水210gおよびNMP4gを留出した後、反応容器を150℃に冷却した。硫化水素の飛散量は、仕込み水硫化ナトリウム1モル当たり0.02モルであった。
次にp-ジクロロベンゼン(p-DCB)147g(1.00モル)、NMP134g(1.35モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、400rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水34g(1.9モル)を圧入した。ついで250℃から180℃まで0.4℃/分の速度で冷却した後、室温近傍まで冷却した。
内容物を取り出し、0.5リットルのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80メッシュ)で濾別し、得られた粒子を1リットルの温水で複数回洗浄、濾別し、回収品を120℃で乾燥させて、ポリアリーレンスルフィド(ポリマー1)を得た。
[ポリマー2]
上記ポリマー1の合成手順において、p-DCB147g(1.00モル)を加える代わりに、p-DCBを133g(0.90モル)、メタージクロロベンゼン(m-DCB)を14.4g(0.10モル)としたこと以外は同様の重合を行い、ポリアリーレンスルフィド共重合体(ポリマー2)を得た。なお、添加したp-DCBおよびm-DCBの添加量の割合から、ポリアリーレンスルフィド共重合体における共重合単位(m-DCBに由来する構成単位)は10モル%である。
[ポリマー3]
上記ポリマー1の合成手順において、p-DCB147g(1.00モル)を加える代わりに、p-DCBを133g(0.90モル)、メタージクロロベンゼン(m-DCB)を14.4g(0.10モル)、酢酸ナトリウムを12.3g(0.15モル)としたこと以外は同様の重合を行い、ポリアリーレンスルフィド共重合体(ポリマー3)を得た。なお、添加したp-DCBおよびm-DCBの添加量の割合から、ポリアリーレンスルフィド共重合体における共重合単位(m-DCBに由来する構成単位)は10モル%である。
[ポリマー4]
上記ポリマー1の合成手順において、p-DCB147g(1.00モル)を加える代わりに、p-DCBを125g(0.85モル)、メタージクロロベンゼン(m-DCB)を21.6g(0.15モル)、酢酸ナトリウムを12.3g(0.15モル)としたこと以外は同様の重合を行い、ポリアリーレンスルフィド共重合体(ポリマー4)を得た。なお、添加したp-DCBおよびm-DCBの添加量の割合から、ポリアリーレンスルフィド共重合体における共重合単位(m-DCBに由来する構成単位)は15モル%である。
[アルカリ金属塩1]
リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業社製)。
[アルカリ金属塩2]
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(東京化成工業社製)。
[アルカリ金属塩3]
水酸化リチウム(Alfa Aesar社製)。
[電離助剤1]
γ-ブチロラクトン(GBL)(キシダ化学社製)。
[電離助剤2]
n―メチルピロリドン(NMP)(キシダ化学社製)。
[電離助剤3]
純水(電気抵抗率=0.5MΩ)
[膨潤溶媒1]
特級エタノール(東京化成工業社製)。
[膨潤溶媒2]
アセトン(東京化成工業。)
(膜状物1~7)
原料供給口とベント口を備えた二軸押出機に、樹脂とアルカリ金属塩を所定の割合で溶融混合し、ベント口で真空脱気して原料の水分を除去したのち、押出機先端に取り付けたTダイから、温調可能なキャストロールに溶融押出することで膜状物1~7を得た。押出機の温度は、樹脂の融点に合わせて調整した。
樹脂とアルカリ金属の混合は、原料供給口に重量フィーダーを取り付け、樹脂とアルカリ金属塩のフィード量を調整することで行った。
また、キャストロールの温度を調整することで、所定の相対結晶化度に調整した。
(膜状物8~14、および19)
温調可能な油圧プレス機2台(1台は溶融加熱用、もう1台は冷却用)を用いて、真空オーブンで乾燥した樹脂とアルカリ金属塩を所定の割合で混ぜたものを溶融プレスすることで膜状物8~14、および19を得た。
また、厚み75μmのカプトンフィルムをA5サイズにカットし、その上に樹脂とアルカリ金属塩を所定の割合で混ぜたものを0.2g計量し、カプトンフィルムの中央に置いた。次に、同厚みのカプトンフィルムを上にのせ、溶融加熱用のプレス機の下板に置き、30秒予熱した。次に下板を上昇させ、上板と密着させたのち、油圧で8MPaの圧力で60秒間プレスした。60秒後に、下板を下降させ、カプトンフィルム毎取り出し、すぐさま、冷却用のプレス機で挟んで60秒冷却することで、膜状物8~14、および19を得た。
冷却用プレス機の温度を調整することで、所定の相対結晶化度に調整した。
(膜状物15)
上記したプレス機による製膜で、樹脂とアルカリ金属の計量を1.0gにした以外は、膜状物11と同様の方法で膜状物15を得た。
(膜状物16)
上記したプレス機による製膜で、樹脂とアルカリ金属の計量を0.7gにした以外は、膜状物11と同様の方法で膜状物16を得た。
(膜状物17)
上記したプレス機による製膜で、樹脂とアルカリ金属の計量を0.5gにした以外は、膜状物11と同様の方法で膜状物17を得た。
(膜状物18)
上記したプレス機による製膜で、樹脂とアルカリ金属の計量を0.3gにした以外は、膜状物11と同様の方法で膜状物18を得た。
(実施例1~11、および20)
(フィルム1~11、および20)
得られた膜状物を、真空オーブンで80℃、16時間乾燥させたのち、トムソン刃で直径16.8mmに打ち抜き、20mlのバイアル瓶に入れ、電離助剤をマイクロピペットで0.05ml量り取り、バイアル瓶に滴下し、ポリエチレン製のキャップで栓をした。次に、バイアル瓶を80℃に温調されたオーブンに入れ、16hr静置したのち、オーブンからバイアル瓶を取り出し、フィルム1~11を得た。
(実施例12~19、および21~28)
(フィルム12~19、および21~28)
得られた膜状物を、真空オーブンで80℃、16時間乾燥させたのち、トムソン刃で直径16.8mmに打ち抜き、20mlのバイアル瓶に入れ、電離助剤をマイクロピペットで0.05ml量り取り、バイアルに滴下し、次に、膨潤溶媒をマイクロピペットで0.05mlを量り取り、バイアルに滴下した。次にバイアル瓶を80℃に温調されたホットプレート上に置き、4~8hr静置したのち、バイアル瓶から取り出し、フィルム12~19、および21~28を得た。
(実施例29~31)
(フィルム34~36)
得られた膜状物を、真空オーブンで80℃、16時間乾燥させたのち、縦100mm、横100mmの正方形に切り出し、A5サイズのホーローバットに入れ、電離助剤を60g量り取り、60~80℃に温調されたホットプレート上に置き、1hr静置したのち、取り出し、フィルム34~36を得た。
(膜状物20、21)
温調可能な油圧プレス機2台(1台は溶融加熱用、もう1台は冷却用)を用いて、真空オーブンで乾燥した樹脂を溶融プレスすることで膜状物20、21を得た。この時、アルカリ金属塩は含んでいない。
具体的には、厚み75μmのカプトンフィルムをA5サイズにカットし、その上に樹脂のみを0.2g計量し、カプトンフィルムの中央に置いた。次に、同厚みのカプトンフィルムを上にのせ、溶融加熱用のプレス機の下板に置き、30秒予熱した。次に下板を上昇させ、上板と密着させたのち、油圧で8MPaの圧力で60秒間プレスした。60秒後に、下板を下降させ、カプトンフィルム毎取り出し、すぐさま、冷却用のプレス機で挟んで60秒冷却することで、膜状物20、21を得た。
冷却用プレス機の温度を調整することで、所定の相対結晶化度に調整した。
(比較例1~5)
(フィルム29~33)
得られた膜状物を、真空オーブンで80℃、16時間乾燥させたのち、トムソン刃で直径16.8mmに打ち抜き、20mlのバイアル瓶に入れ、電離助剤と膨潤溶媒の体積比1:1の混合溶液に、アルカリ金属塩を室温で飽和濃度になるまで溶解させた溶液10mlを量り取り、バイアルに滴下し、ポリエチレン製のキャップで栓をした。次に、バイアル瓶を80℃に温調されたオーブンに入れ、16hr静置したのち、オーブンからバイアル瓶を取り出し、フィルム29~33を得た。
(比較例6)
(膜状物22)
原料供給口と液体添加用の供給口を備えた二軸押出機に、真空オーブンで乾燥した樹脂とアルカリ金属塩を所定の割合で溶融押出し、その吐出量に対し、30質量%となるように、液体添加用の供給口から電離助剤であるGBLを小型蠕動ポンプで滴下した。押出機先端に取り付けたTダイから、温調可能なキャストロールに溶融押出したが、Tダイから気化したGBLが発泡し、かつ、樹脂が低粘度化し、急激なネックインを発生し、膜状物を得られなかった。
(比較例7)
(膜状物23)
温調可能な油圧プレス機2台(1台は溶融加熱用、もう1台は冷却用)を用いて、真空オーブンで乾燥した樹脂とアルカリ金属塩を所定の割合で混ぜたものに、電離助剤としてGBLを添加し、溶融プレスした。
プレスする際、厚み75μmのカプトンフィルムをA5サイズにカットし、その上に樹脂とアルカリ金属塩を所定の割合で混ぜたものを0.2g計量し、ついで、GBLを0.06g滴下し、カプトンフィルムの中央に置いた。次に、同厚みのカプトンフィルムを上にのせ、溶融加熱用のプレス機の下板に置き、30秒予熱した。次に下板を上昇させ、上板と密着させたのち、油圧で8MPaの圧力で60秒間プレスした。60秒後に、下板を下降させ、カプトンフィルムごと取り出し、すぐさま、冷却用のプレス機で挟んで60秒冷却したが、気化したGBLで穴だらけとなり、膜状物を得られなかった。
ここで、膜状物の構成等を表1~2に示し、フィルムの構成等を表3~4に示す。
Figure 2022041816000010
Figure 2022041816000011
Figure 2022041816000012
Figure 2022041816000013
アルカリ金属塩とポリアリーレンスルフィドからなる膜状物を得たのち、電離助剤を含浸することにより、良好な伝導度を示すフィルムを生産性良く得ることができた。一方で、ポリアリーレンスルフィドの膜状物に、アルカリ金属塩と電離助剤を含浸するプロセスでは良好な伝導度のフィルムは得られなかった。
また、電離助剤に膨潤溶媒を加えることで、含浸時間の短縮と品質安定性に優れるフィルムを作製することができる。

Claims (3)

  1. アルカリ金属塩、電離助剤およびポリアリーレンスルフィドを含有するフィルムの製造方法であって、
    前記アルカリ金属塩および前記ポリアリーレンスルフィドを含有する膜状物を得る工程Iと、
    前記膜状物に前記電離助剤を含有させる工程IIとを、この順に有する、フィルムの製造方法。
  2. 前記ポリアリーレンスルフィドが、示差走査熱量計で測定した融点が270℃以下であり、かつ、式-(Ar-S)-を構成単位とするポリアリーレンスルフィド共重合体であり、
    前記Arが化学式(1)の(A)で表される構成単位、および、化学式(1)の(B)~(G)からなる群より選ばれる少なくとも一つの構成単位を有する、請求項1に記載のフィルムの製造方法。
    Figure 2022041816000014
    (R1,R2はアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および水酸基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。R3、R4は、水素、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および水酸基から選ばれた置換基であり、R3とR4は同一でも異なっていてもよい。Yはアルキレン基、O、CO、SOおよびSO2から選ばれる。)
  3. 前記電離助剤が、溶媒を有し、
    前記溶媒が、25℃における式(1)で得られるイオン解離度(1-ξ)が0.1以上であり、かつ、式(2)で得られる溶媒拡散係数(Dsolvent)が15以下である、請求項1または2に記載のフィルムの製造方法。
    Figure 2022041816000015
    Figure 2022041816000016

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