JP2022040690A - 流体吐出機および3dプリンタ - Google Patents

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Abstract

【課題】持ち運びに便利で小規模な工事現場への搬出も可能であって小型の造形物の製作が可能な流体吐出機および流体吐出機を利用した3Dプリンタを提供する。【解決手段】本発明における流体吐出機1は、筒状であって3条の溝3d,3e,3fを有するステータ3とステータ3内で公転および自転する2条のねじ部4a,4bを有するロータ4とを備えて吸込口Iに投入される力を加えると粘度が低下する流体を吐出口Eから吐出する回転容積式一軸偏心ねじ形式のポンプ2と、ポンプ2の吐出口Eに設けられた吐出ノズル5と、ロータ4を公転および自転駆動する駆動部6とを備えている。【選択図】図2

Description

本発明は、流体吐出機および3Dプリンタに関する。
3Dプリンタは、材料を層にして重ねることで複雑な構造の造形物を作成することができる。このような3Dプリンタで使用される材料は、プラスチックやメタル合金などが一般的ではあるが、近年では、モルタルやコンクリートといったセメント系の材料を用いて造形物や構造物を製作しようとする試みが始まっている。
モルタル等の流体を材料として使用する3Dプリンタは、3次元データに基づいて流体を正確な場所に正確な量の材料を吐出して層を重ねることで造形物を作成することになる。よって、モルタル等を材料に使用する3Dプリンタは、正確な量の材料を吐出可能なように流体吐出機を備えている。
流体吐出機は、ホッパ内のモルタル等を吸い込んで吐出するポンプと、ポンプから圧送されるモルタル等を収容するシリンダと、シリンダの下端に装着される先端が先細りとなる筒状のノズルと、シリンダ内で回転駆動されることによってモルタル等を下方のノズルへと搬送するスクリューとを備えて構成される。
このように構成された流体吐出機は、不連続供給や脈動によってノズルから吐出されるモルタル等の量が不安定にならないように、スクリューでモルタル等を搬送するようにしている(たとえば、特許文献1参照)。
特開2019-147338号公報
このように構成された流体吐出機を備えた3Dプリンタは、建築物や構造物といった大規模な造形物の製作を念頭にしており、そのため、高揚程のポンプでモルタル等を高所へ圧送しつつスクリュー内へ供給するようにしている。このように、大型の構造物を製作する場合には、流体吐出機を以上のような構成としても差し支えないが、流体吐出機を含めた3Dプリンタ全体の運搬は容易ではなく、小規模な工事現場や大型車両の出入りが困難な場所への設置ができず、また、小型のコンクリート造形物の製作にも不向きである。
というのは、3Dプリンタに利用されるモルタル等は、力が加わらないと高い粘性を示す性質(チキソトロピー性)を備えており、シリンダ内径が小さいと、単にシリンダ内でスクリューを回転駆動しただけではスクリュー内にモルタル等が吸い込まれない。そのため、流体吐出機を小型化すると、高所へモルタル等を圧送するポンプ以外にも、シリンダ内のモルタル等に圧力を加えて粘度を低下させつつモルタル等をスクリュー内に圧送するポンプが別途必要となる。なお、流体吐出機を低所で使用する場合であっても、シリンダ内径を小さくする場合、高所へモルタル等を圧送するポンプは不要となるかもしれないが、シリンダ内のモルタル等に圧力を加えるポンプは必要不可欠となる。
このようなシリンダ内でモルタル等に圧力を加えるポンプの追加をしない場合、モルタル等のスクリュー内への侵入を容易にするためにシリンダ内径を大きくする必要がある。このように、従来の流体吐出機の構造では、シリンダ内径を小さくすると追加のポンプの設置が必要となり追加のポンプとこのポンプの駆動源が必要となって装置の小型化が難しく、そうかと言って追加のポンプの設置をしない場合にはシリンダ内径の小型化が困難である。
以上の理由から、従来の流体吐出機は、小型化が難しく、運搬に不利で小型のコンクリート造形物の製作にも不向きである。さらに、従来の流体吐出機を利用した3Dプリンタも小型化できないために、手軽にあらゆる工事現場にてコンクリート造形物を製作することができないという問題があった。
そこで、本発明は、持ち運びに便利で小規模な工事現場への搬出も可能であって小型の造形物の製作が可能な流体吐出機およびこの流体吐出機を利用した3Dプリンタの提供を目的としている。
前記した課題を解決するために、本発明の流体吐出機は、筒状であって3条の溝を有するステータとステータ内で公転および自転する2条のねじ部を有するロータとを備えて吸込口に投入される力を加えると粘度が低下する流体を吐出口から吐出する回転容積式一軸偏心ねじ形式のポンプと、ポンプの吐出口に設けられた吐出ノズルと、ロータを公転および自転駆動する駆動部とを備えている。このように構成された流体吐出機では、ポンプがステータに対してロータを回転駆動すると順次流体を吸込んで吸込口から吐出口へ搬送するキャビティを形成するとともに、ステータが3条の溝を備えていて吸込口の面積を大きく確保できる。そのため、力を加えないと粘度が高い流体であっても、吸込口で流体が動きやすくなり、別途のポンプで流体を加圧しなくとも吸込口で流体が留まることなく、流体は、ロータの駆動によって形成されるキャビティ内へ円滑に吸い込まれてポンプの吐出口から脈動による流量変動を伴わずに吐出される。よって、流体吐出機は、粘度の高い流体を別途のポンプで加圧することを要せずに自然に落下させて吸込口に投入すると、流体を吸い込んで吐出ノズルへ吐出でき、不連続供給や脈動もなく安定して流体を吐出できる。
また、流体吐出機は、ポンプを収容するポンプ収容部と流体を内部に投入する投入部とを有するケースと、ポンプの吸込口と投入部の間に流体を貯留する貯留部とを備えていてもよい。このように構成された流体吐出機によれば、ケース内に投入された流体を一旦ポンプの吸込口の上方の貯留部に貯留できるので、ポンプの吸込口の全部に流体を回しこむことができ、常時流体を安定して吐出することができる。
さらに、流体吐出機におけるポンプのステータは、吸込口側端の内周に溝内に流体を導入するテーパ面を備えていてもよい。このように構成された流体吐出機によれば、高粘度の流体であってもスムーズにポンプの吸込口へ流体を移動させ得るので、ポンプにおける流体の吸込がより一層良好となり、より一層安定した流体の吐出が可能となる。
そして、流体吐出機におけるポンプのステータとロータとの間には隙間を設けて、ステータとロータとが非接触となっていてもよい。このように構成された流体吐出機によれば、粘度が高い流体がステータとロータとの間に詰まって大きな摩擦力を受けてロータを駆動部で駆動できなくなる事態を回避でき、ポンプで良好な流体の搬送が可能となる。
また、流体吐出機における吐出ノズルは、ポンプの吐出口と同形状の入口と、流体を吐出する円形の吐出口とを備え、入口と吐出口までの間の内周は入口から吐出口へ向かうにつれ徐々に円形に変化する形状となっている。このように構成された流体吐出機によれば、吐出ノズルの内周の断面積がステータの吐出口の面積よりも大きくならずに済むため、ポンプから吐出される流体がスムーズに吐出ノズル内に導かれるとともに流体に適切に圧力を加えて良好な流体の吐出が可能となる。
そして、さらに、流体吐出機における駆動部は、ステッピングモータと、ロータを公転および自転させるようにステッピングモータの動力を伝達する機構とを備えていてもよい。このように構成された流体吐出機によれば、流体の吐出流量をステッピングモータへ入力するパルス信号のパルス数で管理でき、複雑な制御を用いることなく適切な流量の流体を吐出できる。
また、流体吐出機における機構は、ステータに対して不動の内歯車と、ロータに接続されるシャフトに装着されて内歯車に歯合する外歯車と、シャフトを回転自在に支持するとともにステータに対して周方向に回転可能に設けられる第1プレートと、ステッピングモータの出力軸に取付けられるとともに出力軸の接続位置から偏心した位置でシャフトを回転自在に支持する第2プレートと、第1プレートと第2プレートとを接続する支柱とを備えて構成されてもよい。このように構成された流体吐出機によれば、シャフトが第1プレートと第2プレートとで2点支持されるのでポンプの駆動中にロータに横方向の力が作用しても耐えてロータのステータ内での横ずれを抑制できるとともに、支柱で第1プレートと第2プレートとが連結される構造を採用しているので、第1プレートと第2プレートとが周方向にずれることなく同期して回転でき、安定してロータを駆動できる。
また、流体吐出機は、ケースが貯留部を形成する貯留筒を有し、第1プレートに連結されて貯留筒の内周面に摺接して貯留筒の内周面に付着する流体を掻き落とすスクレーパを備えてもよい。このように構成された流体吐出機は、貯留筒の内壁に付着した流体をスクレーパでかき落せるので、流体のポンプの吸込口への投入を助け、ポンプの吸込不良の発生をより一層効果的に防止できる。
さらに、3Dプリンタは、上下一対の枠と、上下の枠を連結する複数の柱とで形成されるフレームと、フレーム内に上下、左右および前後の各方向へ移動可能に配置される流体吐出機と、フレームに対して流体吐出機を上下、前後および左右に駆動する駆動装置とを備えている。このように構成された3Dプリンタは、小型化可能で容易に運搬できる流体吐出機を利用しているので、フレームおよび駆動装置についても小型化でき、運搬が容易で、小規模な工事現場や大型車両の出入りが困難な場所への設置も可能となり、小型のコンクリート造形物の製作にも好適となる。
以上より、本発明の流体吐出機および3Dプリンタによれば、持ち運びに便利で小規模な工事現場への搬出も可能であって小型の造形物の製作が可能となる。
一実施の形態における3Dプリンタの斜視図である。 一実施の形態における流体吐出機の縦断面図である。 一実施の形態における流体吐出機のポンプにおけるステータの拡大断面図である。 一実施の形態における流体吐出機のポンプにおけるロータの側面図である。 一実施の形態における流体吐出機のポンプにおけるステータの底面図である。 一実施の形態における流体吐出機のポンプの動作を説明する図である。 一実施の形態における流体吐出機の吐出ノズルの斜視図である。 一実施の形態における流体吐出機の吐出ノズルの平面図である。 一実施の形態における流体吐出機の駆動部の機構部分の平面図である。
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態における流体吐出機1は、ステータ3とステータ3内で公転および自転するロータ4とを有する回転容積式一軸偏心ねじ形式のポンプ2と、ポンプ2の吐出口Eに設けられた吐出ノズル5と、ロータ4を公転および自転駆動する駆動部6とを備えており、立方格子状のフレーム50に上下、左右および前後方向へ移動可能に設置されて3Dプリンタ100に利用されている。
本実施の形態では、流体吐出機1は、図1に示すように、3Dプリンタ100のコントローラ101にインプットされる造形物をモデリングした三次元データに基づいてフレーム50内で駆動制御されて3Dプリンタ用のモルタルを吐出してモルタル製の造形物を製作するのに使用される。
流体吐出機1で吐出される流体は、力が加えられると粘度が低下する流体であればよい。力を加えると粘度が低下する流体は、ビンガム流体、擬塑性流体といった流体とされてもよい。なお、本実施の形態のように、3Dプリンタ100によってセメント系材料で製作される造形物を製作する場合、流体は、モルタル以外にも例えばセメントペーストやコンクリートといった種々のセメント系混合流体とされればよく、自立するとともに、速硬性を有する流体が好ましい。流体が高いチキソトロピー性を備えていると、流体吐出機1による良好な流体吐出と、吐出後の流体の自立性を満足できるので、3Dプリンタ100での用途での使用の場合、流体は高チキソトロピー性を備えているとよい。
セメント系混合流体にて速硬性を得るには、早強材、セメント硬化促進剤の添加、急結剤を使用すればよく、流体吐出機1から流体を吐出まで所定の流動性を維持できるようにクエン酸、酒石酸、グルコン酸およびリンゴ酸等のオキシカルボン酸またはそれらの塩等といった凝結遅延剤を混合するとよい。なお、速硬性を有するセメント系混合流体としては、具体的には、特開2005-187257号公報等に開示されているものがある。
また、流体をセメント系混合流体とする場合、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維やアラミド繊維等の合成樹脂繊維を針状に形成した短長繊維や、鋼繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、炭素繊維等の無機繊維を補強材として混合したセメント系混合流体とされてもよい。
以下、流体吐出機1および3Dプリンタ100の各部について詳細に説明する。3Dプリンタ100は、立方格子状のフレーム50と、フレーム50内に上下、左右および前後の各方向へ移動可能に配置される流体吐出機1と、フレーム50に対して流体吐出機1を上下、前後および左右に駆動する駆動装置60と、駆動装置60および流体吐出機1を制御するコントローラ101と備えて構成されている。
フレーム50は、図1に示すように、上下一対の矩形の枠51,52と、上下の枠51,52の頂点同士に架け渡される4つの柱53とを備えている。上方の枠51および下方の枠52は、ともに、同じ長さの単管パイプ51a,52aを4つのジョイント51b,52bで四角に組んで形成されている。また、ジョイント51b,52bは、4つの単管パイプ51a,52aを直交するように連結するだけでなく、枠51,52に柱53を垂直に連結するジョイントとしても機能するようY型のジョイントとされている。
このようにして形成された枠51および枠52は、ジョイント51b,52bに上端と下端がそれぞれ接続される4つの柱53によって連結されている。なお、本実施の形態の3Dプリンタ100では、柱53は、単管パイプ51a,52aと長さが同じ単管パイプとされている。よって、柱53によって上方の枠51と下方の枠52とが連結されると、各辺が同じ長さの立方格子状のフレーム50が形成される。なお、この場合、柱53の長さを枠51,52の一辺の長さと同じに設定しているが、各柱53の長さが同じであれば、柱53の長さは、枠51,52の一辺の長さと異なっていてもよい。また、枠51,52を矩形とする場合、枠51,52における対面する辺同士の長さが同じであれば、隣りの辺同士の長さが異なっていてもよい。なお、枠51,52は、単管パイプ51a,52a以外にもチャンネル材やアングル材その他棒状の鋼材を組んで形成されてもよい。さらに、枠51,52は、矩形に限らず矩形以外の形状とされてもよい。また、柱53は、枠51,52の頂点同士を連結しているが、枠51,52の頂点以外の部分を連結するようにしてもよいし、フレーム50が安定するのであれば、柱53の本数は複数であれば4本に限定されない。
本実施の形態では、フレーム50は、ジョイント51b,52bを利用して単管パイプ51a,52aと単管パイプでなる柱53に分解可能とされているので、3Dプリンタ100を設置する工事現場へフレーム50をコンパクトな荷姿で搬送できる。また、柱53は、単管パイプ以外にも、チャンネル材、アングル材やその他の鋼材とされてもよい。
駆動装置60は、フレーム50の左側の2本の柱53に架け渡されて柱53に沿って鉛直方向へ平行移動可能なガイドレール61と、フレーム50の右側の2本の柱53に架け渡されて柱53に沿って鉛直方向へ平行移動可能であって軸回りに回転可能な螺子軸62と、ガイドレール61上をそれぞれ走行する2つのスライダ63,63と、螺子軸62に螺着される2つのナット64,64と、一方のスライダ63と一方のナット64とに架け渡されてガイドレール61および螺子軸62に沿ってフレーム50に対して前後方向へ移動可能なガイドレール65と、ガイドレール65に対して平行に他方のスライダ63と他方のナット64とに架け渡されてフレーム50に対して前後方向へ移動可能であって軸回りに回転可能な螺子軸66と、ガイドレール65上をそれぞれ走行する2つのスライダ67,67と、螺子軸66に螺着される2つのナット68,68と、スライダ67およびナット68に連結されるテーブル69と、ガイドレール61および螺子軸62をフレーム50に対して上下方向へ駆動可能なZ軸アクチュエータ70と、ガイドレール65および螺子軸66をフレーム50に対して前後方向へ駆動可能なY軸アクチュエータ71と、テーブル69に保持される流体吐出機1をフレーム50に対して左右方向へ駆動可能なX軸アクチュエータ72とを備えている。
ガイドレール61は、両端に柱53上を走行する図示しないローラを備えて柱53に装着される走行部61aを備えており、柱53間に平行に架け渡されており、そのままの姿勢で柱53に沿って図1中上下方向へ移動できる。螺子軸62は、両端に軸回りに回転可能に装着される走行部62aを備えている。また、走行部62aは、柱53上を走行する図示しないローラを備えている。そして、螺子軸62は、走行部62aを介して柱53間にガイドレール61に対して平行に架け渡されており、ガイドレール61と平行な状態を保ったまま柱53に沿って図1中上下方向へ移動できるとともに、軸回りに回転できる。なお、ガイドレール61および螺子軸62の設置態様は、これ以外にもたとえば、上方の枠51と下方の枠52とに上下方向となる垂直にリニアガイドを架け渡たして、リニアガイドのスライダにガイドレール61および螺子軸62を上下方向移動可能に装着することもできる。この場合、リニアガイドが別途必要となるので、柱53に上下動可能にガイドレール61と螺子軸62を装着したほうが部品点数の削減を図れる。
本実施の形態の3Dプリンタ100では、スライダ63は、ガイドレール61に走行可能に2つ装着されており、ガイドレール61とともにリニアガイドを構成している。なお、ガイドレール61とスライダ63とでリニアガイドを構成しているが、スライダ63のガイドレール61の軸方向に沿う円滑な移動を実現できればよいので、ガイドレール61とスライダ63とは、リニアガイド以外にもガイド機能を発揮できるガイド装置とされてもよい。よって、たとえば、ガイドレール61を円柱状の軸とし、スライダ63を台車または円筒状のブッシュとしてスライダ63のガイドレール61に対する軸方向への移動を可能とするものであってもよい。その場合、ガイドレール61とスライダ63とをボールスプラインとする場合、ブッシュであるスライダ63内に軸であるガイドレール61の延長方向に沿って形成される溝内を転動するボールを備えているので、スライダ63は、滑らかにガイドレール61上を走行可能としつつ軸周りの回転を阻止でき、ガイドレール65と螺子軸66の支持に向く。ナット64は、螺子軸62に回転可能に螺着されており、螺子軸62が回転駆動されると螺子軸62の軸方向に沿って移動できる。
また、ガイドレール65は、ガイドレール61を走行するスライダ63と螺子軸62に螺着されたナット64とにフレーム50の左右方向に互いに平行に架け渡されており、互いに平行の状態でフレーム50に対して前後方向に移動できる。螺子軸66は、ガイドレール61を走行するスライダ63と螺子軸62に螺着されたナット64とに、ガイドレール65に対して平行に架け渡されていて、ガイドレール65と平行な状態でフレーム50に対して前後方向に移動できる。また、螺子軸66は、スライダ63とナット64とに軸回りに回転可能に取り付けられている。
さらに、ガイドレール65には、それぞれ、2つずつスライダ67,67が装着されている。ガイドレール65とスライダ67とは、リニアガイドとされているが、ガイドレール65とスライダ67は、ガイドレール61とスライダ63と同様に、スライダ67のガイドレール65に対する軸方向に沿う円滑な移動を実現できればよいので、リニアガイド以外にもガイド機能を発揮できるガイド装置とされてもよい。ナット68は、螺子軸66に回転可能に螺着されており、螺子軸66が回転駆動されると螺子軸66の軸方向に沿って移動できる。
スライダ67とナット68には、テーブル69が設けられている。テーブル69は、本実施の形態の3Dプリンタ100では、矩形であって四隅がそれぞれ対応するスライダ67とナット68に連結され、ガイドレール65および螺子軸66に沿ってフレーム50に対して左右方向へ移動可能となっている。そして、テーブル69には、流体吐出機1が着脱可能に装着される。テーブル69への流体吐出機1の装着については、ボルトによる締結、チャック等の把持装置による締結など任意の装着手段を採用できる。また、テーブル69を介さずに流体吐出機1を直接スライダ67とナット68に連結することも可能であるが、重量のある流体吐出機1に複数のスライダ67とナット68に個々に連結する作業が必要となり装着に手間がかかる。これに対してテーブル69を設けると、流体吐出機1をテーブル69に載置させることができるようになり、流体吐出機1の重量を支える必要がなくなるので、流体吐出機1の駆動装置60への設置作業が容易となる。
Z軸アクチュエータ70は、ガイドレール61と螺子軸62とをそれぞれ上下に駆動するように、フレーム50に対して左右に対を成して設けられている。各Z軸アクチュエータ70は、モータ70aと、螺子軸70bおよびナット70cで構成される送り螺子機構とを備えてフレーム50とガイドレール61と螺子軸62との間に介装される電動リニアアクチュエータとされており、互いに同期してガイドレール61と螺子軸62を上下方向へ駆動できる。送り螺子機構は、不可逆性を備えており、モータの動力によってガイドレール61と螺子軸62を上下動させ得るが、モータが停止される場合、ガイドレール61と螺子軸62の位置をモータからの動力なしに維持できるものを利用するとよい。送り螺子機構が不可逆性を備えていれば、重量物である流体吐出機1を上下方向にて静止させる際にZ軸アクチュエータ70におけるモータが出力するトルクで支える必要がなくなるので、モータにおける電力消費が低減されるとともにモータの劣化も抑制できる。なお、Z軸アクチュエータ70は、電動リニアアクチュエータ以外にも或いは空圧や液圧を利用したアクチュエータとされてもよいし、ベルト駆動によってガイドレール61と螺子軸62を上下に駆動するものでもよい。また、Z軸アクチュエータ70の設置数は、任意に変更可能であり、駆動対象である流体吐出機1の重量に応じて増減可能である。
また、Y軸アクチュエータ71は、螺子軸62を回転駆動可能なモータ71aと、螺子軸62とナット64とで構成される送り螺子機構とで構成されている。Y軸アクチュエータ71は、モータ71aで螺子軸62を回転駆動させてナット64を螺子軸62の軸方向となる前後方向へ駆動できる。スライダ63とナット64は、ガイドレール65、螺子軸66、スライダ67、ナット68およびテーブル69によって互いに連結されている。そのため、ナット64の螺子軸66回りの回転が規制され、Y軸アクチュエータ71は、ガイドレール65と螺子軸66をフレーム50に対して前後方向へ駆動できる。
さらに、X軸アクチュエータ72は、螺子軸66を回転駆動可能なモータ72aと、螺子軸66とナット68とで構成される送り螺子機構とで構成されている。X軸アクチュエータ72は、モータ72aで螺子軸66を回転駆動させてナット68を螺子軸66の軸方向となる左右方向へ駆動できる。スライダ67とナット68は、テーブル69によって互いに連結されている。そのため、ナット68の回転が規制され、X軸アクチュエータ72は、テーブル69をフレーム50に対して左右方向へ駆動できる。
なお、本実施の形態では、Y軸アクチュエータ71およびX軸アクチュエータ72は、電動リニアアクチュエータとされているが、空圧や液圧を利用したアクチュエータとされてもよい。本実施の形態では、Y軸アクチュエータ71およびX軸アクチュエータ72の螺子軸62,66がテーブル69の前後左右方向への移動を案内するガイドの役割も果たしているが、ガイドレール61とスライダ63とで構成されるリニアガイドを一対とし、ガイドレール65とスライダ67とで構成されるリニアガイドを一対として、Y軸アクチュエータ71およびX軸アクチュエータ72は、流体吐出機1の重量を支持しない構造を採用してもよい。
また、流体吐出機1を前後および左右の2方向へ駆動する駆動源としては、Y軸アクチュエータ71およびX軸アクチュエータ72に代えて、一端がテーブル69の左側に他端がテーブル69の右側にそれぞれ接続される第1ベルトと、一端がテーブル69の右側に他端がテーブル69の左側にそれぞれ接続される第2ベルトと、第1ベルトが巻き回される第1プーリを回転駆動する第1ステッピングモータと、第2ベルトが巻き回される第2プーリを回転駆動する第2ステッピングモータとを備えて、各ステッピングモータの回転駆動によってテーブル69を前後左右に駆動する、所謂core-XYと称される駆動装置を駆動源としてもよい。なお、この駆動装置を利用する場合、ガイドレール61とスライダ63とで構成されるリニアガイドを一対とし、ガイドレール65とスライダ67とで構成されるリニアガイドを一対として、流体吐出機1の重量を支持するようにするとよい。
このように構成された駆動装置60は、一対のZ軸アクチュエータ70,70によってガイドレール61および螺子軸62を上下方向に駆動することで流体吐出機1を上下方向に駆動でき、Y軸アクチュエータ71によってガイドレール65および螺子軸66を前後方向に駆動することで流体吐出機1を前後方向に駆動でき、X軸アクチュエータ72によってテーブル69を左右方向に駆動することで流体吐出機1を左右方向に駆動できる。したがって、駆動装置60は、これらのZ軸アクチュエータ70、Y軸アクチュエータ71およびX軸アクチュエータ72を適宜駆動することによって、流体吐出機1をフレーム50内で上下、前後および左右の3方向へ移動させ得る。
つづいて、流体吐出機1は、図2に示すように、ポンプ2と、ポンプ2の吐出口Eに設けられた吐出ノズル5と、ロータ4を公転および自転駆動する駆動部6とを備えている。また、流体吐出機1は、ポンプ2および吐出ノズル5および駆動部6の一部を収容するケース7を備えている。
ケース7は、ポンプ2を収容するポンプ収容部を形成する円筒状のポンプ収容筒8と、ポンプ収容筒8の上方に配置されてモルタルをポンプ2の吸込口Iの上方に貯留する貯留部を形成する貯留筒9と、貯留筒9内へ流体を投入する投入部として投入管10と、貯留筒9とともに駆動部6の一部を収容する有頂筒状のキャップ11と、ポンプ収容筒8の下端の螺子部8bに螺着される環状のノズルホルダ12とを備えている。
ポンプ収容筒8は、円筒状であって上端近傍の外周にフランジ8aを備えるとともに下端外周に螺子部8bを備えており、内方にポンプ2が収容されてポンプ収容部として機能する。本実施の形態の流体吐出機1におけるフランジ8aは、周方向に等間隔に設けられて螺子軸13の挿通を許容する4つの孔8cを備えている。
また、ポンプ収容筒8の下端外周の螺子部8bには、ノズルホルダ12が螺着されている。ノズルホルダ12は、環状であって、上端内周に螺子部8bに螺着する螺子部12aを備えるとともに、内周であって螺子部12aより図2中下方側の内周は、テーパ状に内径が下方へ向けて徐々に縮径する形状となっている。
貯留筒9は、円筒状であって上端と下端とが中間よりも大径となっており中間に投入管10が設けられている。貯留筒9の中間と下端および上端との境には、それぞれ段部9a,9bが設けられている。また、貯留筒9の下端は、ポンプ収容筒8の上端の嵌合が可能な径とされている。ポンプ2のステータ3を収容したポンプ収容筒8の上端を貯留筒9の下端内周に嵌合すると、段部9bにステータ3の上端面が当接して、ステータ3のそれ以上の貯留筒9の内方側への移動は規制される。また、貯留筒9にステータ3を挿入すると、貯留筒9の内周とステータ3の上端の内周とが面一となるように貯留筒9の中間の内径が設定されている。
投入管10は、円筒状であって、貯留筒9の中間部分の側方に設けた開口9cの外周から斜め上方へ向く傾斜姿勢で貯留筒9に取り付けられており、内部が貯留筒9内に連通されている。投入管10と貯留筒9とは、一体成型されてもよいし、別部品で構成されて連結によって一体化されてもよい。流体吐出機1の投入管10の開口は、図1に示すように、フレキシブルな供給管81を通じて流体吐出機1よりも高所に設けたホッパ80の下端の開口に連通されている。3Dプリンタ100を利用して造形物を製作する作業者がセメント系材料を混錬して製作したモルタルをホッパ80に投入すると、モルタルは、自然落下によって供給管81および投入管10を通じて貯留筒9内に侵入する。
投入管10から貯留筒9内へ投入されたモルタルは、ステータ3の吸込口Iの上方であって貯留筒9内の投入管10より下方のスペースを貯留部として、この貯留部に一旦貯留され、貯留筒9内で自然落下によって吸込口Iへ導かれる。
キャップ11は、有頂筒状であって外周にポンプ収容筒8のフランジ8aと軸方向で対向するフランジ11aを備えており、貯留筒9の上方に配置されると貯留筒9とともに駆動部6の一部を収容する。また、キャップ11におけるフランジ11aには、フランジ8aに設けられた4つの孔8cにそれぞれ対向する位置に螺子軸13の挿通を許容する4つの孔11bが設けられている。また、キャップ11は、頂部に後述するステッピングモータMの出力軸Msが挿通される孔11cを備えている。
ポンプ2は、図2から図5に示すように、円筒状のステータ3とステータ3内に公転および自転可能に挿入されるロータ4とを備えている。ステータ3は、円筒状であって、内周に3条の螺旋状の溝3d,3e,3fを備えている。より詳細には、ステータ3は、円筒状であって、上端外周に設けられた円環状の円環部3aと、円環部3aの下端に連なり内周に内径が円環部3aの内径と同じ径から下方へ向かうほど徐々に径が小さくなるテーパ面を備えた導入部3bと、導入部3bの下方に連なって内周に120度の位相差で形成される3条の螺旋状の溝3d,3e,3fを備えた円筒状のポンプ作動部3cとを備えている。ポンプ2の吸込口Iは、導入部3bとポンプ作動部3cとの境にあって、ステータ3の溝3d,3e,3fが始まる始端(図1中上端)の部分となっている。
各溝3d,3e,3fは、円筒状のポンプ作動部3cの内周を円で螺旋状に繰り抜いてできる形状とほぼ同形状とされている。また、ステータ3の下端外周には、図5に示すように、内周に周方向に沿って連続する鋸刃状の凹凸を備えたソケット3gを備えている。ステータ3の上端の円環部3aは、貯留筒9の中間の内径と等しい内径を持っており、貯留筒9の中間の内周面と面一となる内周面を備えていて、本実施の形態の流体吐出機1では、貯留筒9とともにポンプ2の吸込口Iの上方に貯留部を形成している。なお、貯留部は、投入管10の開口部からポンプ2の吸込口Iとの間の空間で形成されて吸込口Iの上方に流体を貯留する役割を果たすものである。よって、貯留部は、貯留筒9のみによって形成されてもよいし、本例のようにステータ3に吸込口Iの上方に流体を貯留する空間を形成する円環部3aを設けて形成されてもよい。
このように、ポンプ2の吸込口Iは、ステータ3の上端側に設けられたテーパ面を持つ導入部3bから溝3d,3e,3fが形成されるポンプ作動部3cに連なる部分となっており、3条の溝3d,3e,3fの形状が現れた形状となっている。また、ステータ3の下端の吐出口Eもまた吸込口Iと同様に、3条の溝3d,3e,3fの形状が現れた形状となっている。具体的には、ポンプ2の吸込口Iと吐出口Eは、3つの円を互いに接するように配置した際の外部形状に近似した形状となっている。
他方、ロータ4は、図4に示すように、外周に円柱を螺旋状にして形成される2条のねじ部4a,4bを180度位相差で備えた2条ねじとされており、ステータ3内に公転および自転可能に挿入されている。ロータ4は、上端から軸線に沿って下端まで貫通する貫通孔4cを備えている。そして、ロータ4は、図6に示すように、ステータ3内で図6中の矢印の方向に公転および自転すると、2条のねじ部4a,4bを3つの溝3d,3e,3fの2つに入り込む溝を変えながら出入りする。ロータ4のステータ3の公転および自転の動作によってロータ4とステータ3との間に次々に閉空間となるキャビティCが形成される。ポンプ2は、ロータ4をステータ3に対して正回転側へ公転および自転させるとステータ3との間にキャビティCが吸込口Iから吐出口Eへ向かって順次形成されるので、キャビティC内に吸い込まれたモルタルを吸込口Iから吐出口Eへ向けて搬送できる。また、ポンプ2は、ロータ4をステータ3に対して逆回転側へ公転および自転させると、キャビティCが吐出口Eから吸込口Iへ向かって進むようになるので、モルタルを吐出口Eから吸込口Iへ向けて逆搬送できる。
ここで、ステータ3とロータ4とを軸方向に直交する方向で切断した切断面において、ステータ3とロータ4との間の空隙の面積は、ステータ3のポンプ作動部3cを軸方向でどの位置で切断しても一定である。よって、ポンプ2は、不連続供給や脈動のない、ロータ4の公転および自転の速度に正比例した量のモルタルを吐出できる。また、ポンプ2は、順次へ閉空間となるキャビティCを形成するとともに、3条の溝3d,3e,3fを備えていて、吸込口Iの軸方向に直交する断面におけるロータ4とステータ3との間の空隙の面積である吸込口Iの面積を大きく確保できる。そのため、粘度の高いモルタル等の流体であっても、吸引して別途のポンプで流体を加圧してポンプ2の吸込口Iへ搬送することなく吸込口Iから吸い込んで吐出口Eから吐出できる。
また、本実施の形態の流体吐出機1では、ステータ3とロータ4との間には、常に隙間が形成され互いに非接触となるようにしている。ステータ3とロータ4との間に隙間があると、前述したキャビティCが密閉空間とならないが、吐出するモルタルは高い粘度を備えているためにステータ3とロータ4との間の隙間を埋めてステータ3との摩擦で容易には隙間を通過しない。よって、ロータ4の回転動作によるキャビティCの移動とともにキャビティC内のモルタルは、キャビティC内から流出せず吐出口Eまで安定して搬送される。なお、ステータ3とロータ4との距離は、ロータ4が公転と自転するためにロータ4の作動中はロータ4の全周でそれぞれ異なるが、ロータ4の動作によってキャビティCを形成するために、ロータ4がある位置に配置された際にロータ4とステータ3との距離が最も短い箇所が必ず存在する。
ロータ4がステータ3内で一回転だけ公転する際に、ステータ3とロータ4とが最も接近している箇所における距離が一定であるようにステータ3とロータ4の形状を設計する場合、ロータ4がステータ3に最接近する箇所におけるロータ4とステータ3との間の距離の最適値は、射出する流体の粘度によって異なるが、流体に含まれる骨材の直径と同程度にすると、ステータ3とロータ4との間で骨材の噛み込みを防止でき、良好な搬送が可能である。たとえは、モルタルに含まれる骨材の直径(粒径)が3mmであれば、ステータ3とロータ4の最も接近している箇所の距離を3mmとすればよい。なお、ロータ4がステータ3内で一回転だけ公転する際に、ステータ3とロータ4とが最も接近している箇所における距離がロータ4の公転と自転に伴って変動する場合、変動する距離の最小値を流体に含まれる骨材の直径と同程度にすると、ステータ3とロータ4との間で骨材の噛み込みを防止でき、良好な搬送が可能である。たとえは、モルタルに含まれる骨材の直径が3mmであれば、ステータ3とロータ4の最接近時の距離の前記最小値を3mmとすればよい。なお、ステータ3とロータ4との隙間寸法の設定は、前述したように、骨材の粒径に基づくが、ステータ3とロータ4との間に隙間を設けることによってポンプ効率が落ちることに対してステータ3とロータ4のねじピッチとロータ4の回転数で調整して最適化すればよい。
なお、粘度が低い流体を搬送する場合、ステータ3とロータ4との間に隙間が生じて前述のキャビティを密閉できないと吸込み不良が生じてしまうため、一般的にステータ3とロータ4とが最接近した際に接するように設定されるが、このようにすると、粘度が高い流体がステータ3とロータ4との間で詰まってしまう場合がある。すると、ステータ3に対してロータ4が公転および自転しようとしてもステータ3と流体を介して接するロータ4が大きな摩擦力を受けてロータ4を駆動部6で駆動できなくなる場合がある。これに対して、高粘度の流体を吐出する場合、前述したように、ステータ3とロータ4とが接触しないように、ステータ3とロータ4との間に隙間を設けると、良好な流体の搬送が可能となる。流体のステータ3とロータ4との間での詰まりの心配がない場合、前記隙間を設けず、ロータ4がステータ3の内周面に摺接させてもよい。
つづいて、貯留筒9の側方から投入されるモルタルが投入部である投入管10側に偏って堆積してポンプ2の吸込口Iの一部のみにモルタルが投入される場合、ステータ3内の全体がモルタルで満たされずポンプ2の駆動時に吸込不良が発生する可能性がある。これに対して、本実施の形態の流体吐出機1では、貯留筒9内にポンプ2の吸込口Iの上方にモルタルを貯留する貯留部を設けているので、モルタルを投入する投入部がポンプ2の周方向の一箇所に偏った位置に設置されていてもポンプ2の吸込口Iの全周にモルタルを送り込めるので、ポンプ2にて吸込不良が発生するのを抑制できる。なお、貯留部を設けずともポンプ2の吸込口Iの全周に亘ってモルタルを投入でき、ポンプ2の吸込不良が発生しない場合には、貯留部の設置を省略できる。
このように構成されたポンプ2は、ケース7におけるポンプ収容筒8内に挿入されて収容される。また、ポンプ収容筒8のポンプ2の図1中の下方には、ポンプ2のステータ3の下端面に密着する吐出ノズル5が挿入される。吐出ノズル5は、下端外周にノズルホルダ12のテーパ状の内周面に当接するようテーパ面5aを備えており、ノズルホルダ12をポンプ収容筒8へねじ込んでいくとステータ3側へ押しつけられてステータ3の下端面に上端面を密着させる。
吐出ノズル5は、図7および図8に示すように、環状であって、下端側の外径が徐々に先細りとなっていて下端外周にテーパ面5aを備えるとともに、上端外周にステータ3のソケット3g内に挿入されるとともにソケット3gの内周形状に符合する外周形状を持ってソケット3gに嵌合される嵌合部5bを備えている。
また、吐出ノズル5は、内周にポンプ2の吐出口Eと同形状の入口5cと、モルタルを吐出する円形の吐出口5dとを備えている。入口5cの内周形状は、ステータ3の下端内周の形状と同じ形状であって、3つの円を互いに接するように配置した際の外部形状に近似した形状となっている。他方、吐出口5dは、吐出ノズル5の下端に設けられており、入口5cに内接する仮想円よりも小径の円形となっている。そして、吐出ノズル5の内周は、下端へ向かうほど、入口5cの形状から徐々に円形である吐出口5dの形状に変化する形状となっている。つまり、吐出ノズル5の内周の断面積は、上端の入口5cから下端の吐出口5dへ向かうほど絞られて小さくなる。なお、吐出口5dの直径は、ポンプ2の停止時に流体が垂れ落ちることがなく、3Dプリンタ100が要求する流量のモルタルを吐出をできるように設定される。
このように構成された吐出ノズル5は、ステータ3の下端に設けたソケット3g内に嵌合される。また、吐出ノズル5の入口5cとステータ3の吐出口Eとを正対させて吐出ノズル5をステータ3のソケット3gに嵌合させるようにする。このように、ステータ3に吐出ノズル5を嵌合させると、ステータ3のソケット3gの凹凸と嵌合部5bの凹凸とが噛み合ってステータ3に対して周方向への回転が規制され、ポンプ2から吐出されたモルタルから吐出ノズル5がトルクを受けても、吐出ノズル5の入口5cとステータ3の吐出口Eとが正対した状態に維持される。ステータ3と吐出ノズル5の回り止めが可能であれば、ソケット3gの内周と吐出ノズル5の上端外周の形状は、鋸刃状の凹凸を備える形状以外の形状として両者の回り止めを図ってもよい。したがって、ステータ3と吐出ノズル5の周方向の一部にキーとキー溝等といった回り止めと設けてもよい。ただし、ステータ3と吐出ノズル5とが全周に設けられる凹凸で回り止めが形成される場合、ステータ3の吐出ノズル5の周方向の一部の形状で回り止めを施す場合と比較して、ポンプ2の作動中に大きなトルクを受けても回り止め部分に作用する応力を分散できるため、ステータ3と吐出ノズル5の回り止め部分の疲労を防止できる。また、ステータ3にソケット3gを設けて吐出ノズル5をソケット3g内に嵌合しているが、逆に、吐出ノズル5にソケットを設けてステータ3の下端をソケット内に挿入する構造としてもよい。このように、吐出ノズル5とステータ3とが回り止めされるので、ノズルホルダ12にトルクが伝達されず、ノズルホルダ12のポンプ収容筒8に対する弛みも防止される。
なお、吐出ノズル5は、円形の入口から円形の吐出口まで徐々に径が小さくなるテーパ面を内周面としたものであってもよい。ただし、吐出ノズル5の内周の形状を前述した形状とする場合、単に吐出ノズル5の内周面を円形の入口から円形の吐出口まで徐々に径が小さくなるテーパ面とする場合と比較すると、吐出ノズル5の内周の断面積がステータ3の吐出口Eの面積よりも大きくならずに済む。よって、吐出ノズル5の内周の形状を前述した形状とする場合、ポンプ2から吐出されるモルタルがスムーズに吐出ノズル5内に導かれるとともにモルタルに適切に圧力を加えて良好なモルタルの吐出が可能となる。
つづいて、駆動部6について説明する。駆動部6は、ステッピングモータMと、ロータ4を公転および自転させるようにステッピングモータMの動力を伝達する機構20と、機構20を収容する筒状のハウジング21とを備えている。
ハウジング21は、円筒状であって図1中上端外周にフランジ21aを備えている。フランジ21aには、ポンプ収容筒8のフランジ8aおよびキャップ11のフランジ11aに設けられた4つの孔8c,11bにそれぞれ対向する位置に螺子軸13の挿通を許容する4つの孔21bが設けられている。また、ハウジング21の内周には、2つの段部21c,21dが設けられている。ハウジング21は、フランジ21aから下方側の外径は、貯留筒9の上端側の内周に嵌合可能な径とされており、下端外周に段部21eを備えている。そして、ハウジング21の下方をケース7における貯留筒9に挿入すると、ハウジング21の外周に形成される段部21eが貯留筒9の上方側の段部9aに当接して貯留筒9に対して軸方向に下方への移動が規制されて投入管10の開口よりも上方側に位置決められる。
機構20は、ステータ3に対して不動の内歯車22と、ロータ4に接続されるシャフト23に装着されて前記内歯車に歯合する外歯車24と、シャフト23を回転自在に支持するとともにステータ3に対して周方向に回転可能に設けられる第1プレート25と、ステッピングモータMの出力軸Msに取付けられるとともに出力軸Msの接続位置から偏心した位置でシャフト23を回転自在に支持する第2プレート26と、第1プレート25と第2プレート26とを接続する支柱27とを備えている。
内歯車22は、ハウジング21の段部21cと、ハウジング21の上端に重ねられる環状のプレート28とで挟持されてハウジング21に固定される。プレート28は、内方に挿通されるシャフト23および支柱27と干渉せず、内歯車22の上端を支持できる内径を持ち、外周には、キャップ11およびハウジング21のフランジ11a,21aの孔11b、21bと対向する4つの孔28aを備えている。
また、ハウジング21の内周であって内歯車22の装着部位よりもポンプ2側となる下方には、段部21dに外輪が当接する円錐ころ軸受30が嵌合されている。円錐ころ軸受30は、内輪で円盤状の第1プレート25を保持している。第1プレート25は、ハウジング21に円錐ころ軸受30を介して装着されており、ハウジング21に対して図1中上下方向となる軸回りに回転できる。また、第1プレート25は、中心から偏心した位置にシャフト23が挿通される孔25aを備えている。第1プレート25は、孔25a内に軸方向に直列に配置される2つの球軸受31,31を保持している。球軸受31,31は、内周側に挿入されるシャフト23を回転自在に保持しており、シャフト23は、第1プレート25に対してシャフト23の軸回りに回転できる。このように第1プレート25は、ハウジング21に中心軸回りに回転でき、シャフト23は、第1プレート25の中心から偏心した位置に取り付けられているため、第1プレート25の中心を回転中心としてこの回転中心の回りで公転運動できる。また、シャフト23は、第1プレート25に対して回転自在に装着されているので自身の軸回りで回転する自転運動が可能である。よって、シャフト23は、ハウジング21に対して公転と自転の両方の回転運動が可能である。
そして、ハウジング21の下方をケース7における貯留筒9に挿入したのち、プレート28とキャップ11をハウジング21の上方に順に重ね、螺子軸13を孔11b,28a,21bおよびポンプ収容筒8のフランジ8aの孔8c内に通して、螺子軸13の上方と下方にそれぞれナット14,15を螺着すると、キャップ11とポンプ収容筒8とが互いに軸方向に引き寄せられて、キャップ11とノズルホルダ12が装着されたポンプ収容筒8との間で貯留筒9、ハウジング21およびプレート28、ポンプ2のステータ3および吐出ノズル5が挟み込まれてケース7に固定される。
このようにケース7にステータ3とハウジング21が固定されると、内歯車22がステータ3に対して不動に固定されるがシャフト23はステータ3に対して公転および自転することができる。シャフト23の下端は、ステータ3の下端よりも下方へ延長されており、ロータ4の凹部4cおよび貫通孔4d内に挿入される。シャフト23の中間には、フランジ23aが設けられている。そして、フランジ23aをロータ4の上端にボルト29で締結することで、シャフト23は、ロータ4に連結される。よって、シャフト23が公転しつつ自転すると、ロータ4もステータ3内で公転と自転をする。したがって、シャフト23を公転および自転させることで、ロータ4をステータ3に対して正逆いずれの方向へも公転および自転させることができる。
シャフト23の上端は、キャップ11の内周に回転自在に装着される円盤状の第2プレート26に回転自在に支持されている。詳しくは、キャップ11の内周には、第2プレート26を回転自在に保持する円錐ころ軸受32が装着されている。よって、第2プレート26は、キャップ11に対して自身の中心を軸として軸回りに回転できる。第2プレート26は、下端であって中心から偏心した位置であって第1プレート25の孔25aと対向する位置に開口する凹部26aと、上端の中心にステッピングモータMの出力軸Msに接続される接続孔26bとを備えている。第2プレート26は、凹部26aに装着されるスラスト方向の荷重を受け得るスラスト軸受33を保持している。スラスト軸受33は、内周に挿入されるシャフト23の上端を保持している。このように、シャフト23は、上端が第2プレート26によって回転自在に支持されるとともに、上端から少し離れた下方が第1プレート25によって回転自在に支持されている。つまり、シャフト23は、第1プレート25と第2プレート26によって2点支持されていて、ポンプ2の駆動時にロータ4に横方向の力が作用してもシャフト23を支えてロータ4のステータ3内での横ずれを抑制できる。また、ロータ4を正転方向に駆動してポンプ2でモルタルを吸込口Iから吐出口Eへ搬送する場合、シャフト23がロータ4を介してモルタルから図2中で押し上げ方向の力を受けるが、スラスト軸受33でシャフト23に作用する当該押し上げ方向の力を受けてシャフト23の軸方向のずれが防止される。
そして、第2プレート26の接続孔26bには、キャップ11の図1中上端に取付けられるステッピングモータMの出力軸Msが回り止めされた状態で挿入されている。そして、ステッピングモータMの出力軸Msと第2プレート26の軸線を一致させており、ステッピングモータMの出力軸Msを回転駆動すると第2プレート26がキャップ11に対して中心を軸として回転駆動される。
ステッピングモータMは、一回のパルス信号の入力に対して、予め決められた角度だけ出力軸Msが回転するモータである。よって、ステッピングモータMは、与えられるパルス信号のパルス数に応じた角度だけシャフト23を回転させる。
また、図1および図9に示すように、シャフト23の第1プレート25と第2プレート26との間の外周には、内歯車22に歯合する外歯車24が回り止めされた状態で装着されている。さらに、第1プレート25と第2プレート26とは、支柱27によって接続されている。支柱27は、第1プレート25の上端に設けた筒状のソケット25bと、第2プレート26の下端に設けた筒状のソケット26cとに挿入されていて、第1プレート25と第2プレート26とが周方向にずれることなく同期して回転できるよう両者を接続している。
ステッピングモータMへ通電して出力軸Msを回転駆動すると、出力軸Msの軸線とは偏心した位置で第2プレート26に回転自在に保持されているシャフト23は、出力軸Msの軸線を中心として、この軸線の周りで公転する。シャフト23の公転に伴って、内歯車22に歯合する外歯車24がハウジング21に固定されている内歯車22によって回転運動を呈してシャフト23を自転させる。つまり、ステッピングモータMを駆動すると、出力軸Msの動力が機構20によってシャフト23に伝達されて、シャフト23が公転運動と自転運動を呈する。シャフト23は、前述したようにロータ4に連結されているので、シャフト23の公転と自転とがロータ4に伝達されてロータ4がステータ3内で公転と自転とを呈してポンプ2が駆動され、ポンプ2の吸込口Iに投入されるモルタルが吐出口Eへ搬送される。内歯車22の歯数と外歯車24の歯数は、ロータ4がステータ3内でキャビティCを形成しつつ公転および自転できるように設定されている。
なお、シャフト23だけでなく、支柱27で第1プレート25と第2プレート26とが連結される構造と採用しているので、ロータ4を公転させる際にステータ3内のモルタルから抵抗を受けても、第1プレート25と第2プレート26とは、周方向に相対的にずれることなく同期して回転でき、安定してロータ4を駆動できる。
さらに、ロータ4に連結されるシャフト23は、駆動部6の機構20によって一端(上端)側のみが支持されて他端(下端)側は支持されておらず、所謂片持ち支持されているため、ロータ4の下端を支持するベアリングが不要となって、ポンプ2から吐出されたモルタルがベアリングによって妨げられることなく吐出ノズル5内へスムーズに速やかに移動できる。また、本実施の形態の流体吐出機1では、ロータ4を片持ち支持されているのでロータ4の下端側のベアリングを省略できるので、ベアリングとベアリングをシールする部品が不要となってコストを低減できる。
また、第1プレート25をハウジング21に回転自在に装着する円錐ころ軸受30と、第2プレート26をキャップ11に回転自在に装着する円錐ころ軸受32とは、互いにスラスト荷重を受け得る方向が逆向きとなるように背中合わせにして設置されている。このようにすると、ロータ4を駆動してステータ3内でモルタルを搬送中に受ける抵抗によって軸方向の荷重がシャフト23に作用しても円錐ころ軸受30,32の一方で軸力を受けることができ、ロータ4のステータ3に対する軸方向のずれを防止できる。なお、ロータ4に作用する軸方向の荷重を支える手段を別途設ける場合には、第1プレート25と第2プレート26を回転支持する軸受は、円錐ころ軸受以外の軸受を採用してもよい。
一つのモータを利用してロータ4を公転および自転させる機構としては、前述した構造以外にも、遊星歯車機構を用い、内歯車を固定し、太陽歯車を駆動して遊星歯車の公転と自転をロータ4に伝達するものであってもよい。
また、第1プレート25の下方には、貯留筒9の内周に摺接する複数枚のブレード35aを備えたスクレーパ35が連結されている。スクレーパ35は、貯留筒9内の貯留部に相当する部分の内周にも摺接しており、ステッピングモータMの出力軸Msの駆動によって貯留筒9内の内周に摺接しつつ回転して貯留筒9の内壁に付着したモルタルを掻き落とす。スクレーパ35にかき落されたモルタルは、貯留筒9内の貯留部にモルタルが滞留せず速やかにポンプ2の吸込口Iへ投入される。このようにスクレーパ35を設けると、貯留筒9内に高粘度のモルタルが付着して固化してしまうことを抑制でき、モルタルのポンプ2の吸込口Iへの投入を助け、ポンプ2の吸込不良の発生をより一層効果的に防止できる。なお、スクレーパ35は、貯留筒9の内周に付着したモルタルのかき落し以外にも、貯留筒9内に溜まったモルタルを攪拌できるようになっていてもよい。このように、スクレーパ35は、貯留筒9内のモルタルを攪拌できる場合には、貯留筒9内に貯留されたモルタルの硬化を抑制してモルタルの流動性を保てる。スクレーパ35の各ブレード35aの形状は、貯留筒9の内周に摺接してモルタルのかき落しが可能であれば任意に変更できる。
このように構成された流体吐出機1と3Dプリンタ100の駆動装置60は、コントローラ101に制御される。コントローラ101は、流体吐出機1のステッピングモータMと駆動装置60における各アクチュエータ70,71,72を制御する。コントローラ101は、具体的には、図示はしないが、たとえば、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、補助記憶装置と、インターフェースと、これら装置を互いに通信可能に接続するバスとを備えた周知のコンピュータと、コンピュータからインターフェースを介して指令を受け取るとステッピングモータMと各アクチュエータ70,71,72とに指令通りにパルス信号と電流供給するドライバを備えて構成されている。なお、コントローラは、オペレーティングシステムおよび3Dプリンティング処理に必要なプログラムをCPUが実行することによってステッピングモータMと各アクチュエータ70,71,72とを制御する。
コントローラ101は、前記CPUが3Dプリンティング処理に必要なプログラムを実行して、流体吐出機1のステッピングモータMを駆動して吐出ノズル5からモルタルを任意の流量で吐出する。ポンプ2の吐出流量は、ポンプ2の特性から脈動せず吐出が不連続となることがないので、流体吐出機1は、コントローラ101の指令通りの流量でモルタルを吐出できる。流体吐出機1は、コントローラ101がステッピングモータMに与えるパルス信号のパルス数に比例した流量のモルタルを吐出する。
なお、流体吐出機1に供給するモルタルは、ホッパ80に一回の造形物の製造作業に必要となる量のモルタルを投入しておけばよいが、造形物のプリント中にモルタルが足りなくなる場合には必要に応じてホッパ80にモルタルを順次投入すればよい。
また、前記CPUは、3Dプリンティング処理を実行して、製作する造形物の3次元形状をモデリングしたデータを上下方向の薄い層に分割し、分割された各層の2次元データを得て、各層毎の印刷経路を求めて印刷手順を作成する。そして、コントローラ101は、得られた印刷手順通りに駆動装置60を駆動して流体吐出機1のステッピングモータMを駆動してモルタルを吐出する。なお、造形物の3次元形状のデータは、予めメモリ内に格納しておけばよいが、コンピュータのメモリに3DCADデータを作成するプログラムを格納しておき、コンピュータを利用して作業者が望む造形物の3次元形状のデータを作成できるようにしてもよい。また、コンピュータは、ラップトップやタブレットといった携帯可能なものとしておけば、作業現場での作業終了後に3Dプリンタ100から離脱させることができ、利便性が向上し盗難被害にもあいにくい。なお、コントローラ101は、コンピュータを利用せず、流体吐出機1の駆動源と駆動装置60の駆動にのみ利用される専用のコントローラとされてもよい。
コントローラ101は、作業者からの3Dプリンティング処理の実行の指示を受けると、作業者が作成を指示する造形物のデータを読み込んで印刷手順を求める。なお、コントローラ101は、造形物の印刷手順を都度求めるのではなく、予め造形物の製作に必要となる印刷手順をメモリ或いは補助記憶装置に格納しておき、作業者の指令によって印刷手順を読み込むようにしてもよい。そして、コントローラ101は、印刷手順にしたがって駆動装置60の各アクチュエータ70,71,72を適宜駆動して造形物の最下層の積層開始点に流体吐出機1を配置する。その後、コントローラ101は、ステッピングモータMへ電流供給してポンプ2を駆動してモルタルを吐出しつつ印刷手順で決められた印刷経路にしたがって流体吐出機1を駆動装置60で移動させる。これにより、3Dプリンタ100は、流体吐出機1からモルタルを吐出しつつ、造形物の2次元データに対応した造形物の最下層を型枠を用いること無く形成する。最下層のプリントが完了すると、コントローラ101は、ステッピングモータMと駆動装置60を制御して、その上に重ねられる層を前述と同じ手順で形成する。3Dプリンタは、1層ごとにこの手順を繰り返して造形部の製作に必要な全部の層をプリントする。このように全部の層のプリントが完了すると、造形物の製作が完了する。
つづいて、流体吐出機1では、作業者がホッパ80から投入したモルタルは、自重で供給管81を移動して、投入管10から貯留筒9内に投入される。そして、貯留筒9内に投入されたモルタルは、ポンプ2のステータ3の吸込口Iの上方に設けられる空間でなる貯留部に貯留される。このように、投入管10の開口部とステータ3との間に軸方向に距離を設けてモルタルの貯留部を設けると、投入管10から投入されたモルタルがステータ3の一部に偏って堆積せず、貯留部内に一旦貯留されたモルタルがステータ3の全周に回り込む。ロータ4とともに駆動装置60によって駆動されるスクレーパ35は、貯留筒9の内周面に付着したモルタルを掻き落としてモルタルのポンプ2の吸込口Iへの移動を助ける。
また、本実施の形態の流体吐出機1では、ステータ3の吸込口側端の内周がテーパ面となっており、高粘度の流体であってもスムーズにポンプ2の吸込口Iへ移動する。なお、ステータ3の縦断面おいて、テーパ面と軸線に直交する線とでなす角度は、任意に設定できるが、概ね45度から60度の範囲で設定するとモルタルが貯留部に滞留せずポンプ2におけるモルタルの吸込が良好となる。
つづいて、コントローラ101からの指令によってステッピングモータMに電流供給されると出力軸Msが回転駆動すると、動力が機構20を介してロータ4に伝達されてロータ4が駆動される。ステッピングモータMは、与えられるパルス信号のパルス数に応じた角度だけ出力軸Msを回転させる。ステッピングモータMへの一回のパルス信号の入力に対してロータ4の公転量および自転量も予め決められた角度だけ公転するとともに自転する。
ロータ4がステッピングモータMによって正方向に公転および自転すると、ポンプ2の吸込口Iから吐出口Eへ向かって移動するキャビティCが順次形成されて、ポンプ2は、投入管10から貯留筒9内に投入されたモルタルを吸込口Iから吸引して吐出口Eから排出する。ロータ4は、ステッピングモータMの出力軸Msの回転角度に応じて決められた角度だけ公転および自転するので、ステッピングモータMへの一回のパルス信号の入力に対してポンプ2から吐出されるモルタルの流量は決まっている。よって、流体吐出機1は、コントローラ101から入力されるパルス信号のパルス数に比例した流量のモルタルを吐出することができる。
また、ポンプ2が筒状であって3条の溝3d,3e,3fを有するステータ3とステータ3内で公転および自転する2条のねじ部4a,4bを有するロータ4とを有して、吸込口Iに投入される力を加えると粘度が低下する流体を吐出口Eから吐出する回転容積式一軸偏心ねじ形式のポンプとなっている。このポンプ2は、ステータ3に対してロータ4を回転駆動すると順次流体を吸込んで吸込口Iから吐出口Eへ搬送するキャビティCを形成する。そして、ステータ3が3条の溝3d,3e,3f備えていて吸込口I側においてロータ4とステータ3との間の空隙の面積を大きく確保できる。そのため、力を加えないと粘度が高い流体であっても、吸込口Iで流体が動きやすくなり、別途のポンプで流体を加圧しなくとも吸込口Iで流体が留まることなく、流体は、ロータ4の駆動によって形成されるキャビティC内へ円滑に吸い込まれてポンプ2の吐出口Eから吐出される。
ポンプ2から吐出されたモルタルが吐出ノズル5内へ侵入して、後からポンプ2から吐出されるモルタルによって押し出されて吐出口5dから吐出される。前述の通り、流体吐出機1から吐出されるモルタルの流量は、ステッピングモータMに入力されるパルス信号のパルス数によって制御される。なお、ポンプ2の駆動源としてステッピングモータMを利用すると、前述した通り、ステッピングモータMへ与えるパルス信号のパする数によって吐出流量を簡単に制御できるので、複雑な制御が不要となり、流量の管理も容易となる。ただし、ポンプ2の駆動源は、吐出流量の制御が可能であればステッピングモータM以外のモータを利用してもよい。
以上のように、流体吐出機1は、筒状であって3条の溝3d,3e,3fを有するステータ3とステータ3内で公転および自転する2条のねじ部4a,4bを有するロータ4とを備えて吸込口Iに投入される力を加えると粘度が低下する流体を吐出口Eから吐出する回転容積式一軸偏心ねじ形式のポンプ2と、ポンプ2の吐出口Eに設けられた吐出ノズル5と、ロータ4を公転および自転駆動する駆動部6とを備えている。
このように構成された流体吐出機1では、ポンプ2がステータ3に対してロータ4を回転駆動すると順次流体を吸込んで吸込口Iから吐出口Eへ搬送するキャビティCを形成するとともに、ステータ3が3条の溝3d,3e,3fを備えていて吸込口Iの面積(吸込口Iにおけるロータ4とステータ3との間の空隙の面積)を大きく確保できる。そのため、力を加えないと粘度が高い流体であっても、吸込口Iで流体が動きやすくなり、別途のポンプで流体を加圧しなくとも吸込口Iで流体が留まることなく、流体は、ロータ4の駆動によって形成されるキャビティC内へ円滑に吸い込まれてポンプ2の吐出口Eから脈動による流量変動を伴わずに吐出される。
よって、流体吐出機1は、別途のポンプを設けて粘度の高い流体を加圧することを要せず、流体を自然落下に任せて吸込口Iに投入すると、ポンプ2が流体を吸い込んで吐出ノズル5へ吐出でき、不連続供給や脈動もなく安定して流体を吐出できる。このように構成された流体吐出機1は、ポンプ2の大型化を伴わず、かつ、別途のポンプの設置も要せずに、高粘度の流体の吐出が可能となるため、容易に小型化でき、可搬性に優れ、小型のコンクリート造形物の製作に好適となる。以上より、本実施の形態の流体吐出機1によれば、持ち運びに便利で小規模な工事現場への搬出も可能であって小型の造形物の製作が可能となる。
また、本実施の形態の流体吐出機1は、ポンプ2を収容するポンプ収容筒(ポンプ収容部)8と流体を内部に投入する投入管(投入部)10とを有するケース7と、ポンプ2の吸込口Iと投入管(投入部)10の間に流体を貯留する貯留部とを備えている。このように構成された流体吐出機1では、ケース7内に投入された流体を一旦ポンプ2の吸込口Iの上方の貯留部に貯留できるので、ポンプ2の吸込口Iの全部に流体を回しこむことができ、ポンプ2が吸込不良を起こすことがない。よって、このように構成された流体吐出機1によれば、常時流体を安定して吐出することができる。なお、ポンプ2の吸込口Iの一部に流体が偏って堆積することが無ければ、貯留部の設置を省略できる。
また、本実施の形態の流体吐出機1におけるポンプ2のステータ3は、吸込口側端の内周に溝3d,3e,3f内に流体を導入するテーパ面を備えている。このように構成された流体吐出機1によれば、高粘度の流体であってもスムーズにポンプ2の吸込口Iへ流体を移動させ得るので、ポンプ2における流体の吸込がより一層良好となり、より一層安定した流体の吐出が可能となる。なお、ポンプ2での吸込が良好であればステータ3の吸込口Iへ流体を導入するテーパ面を省略できる。
さらに、本実施の形態の流体吐出機1におけるポンプ2のステータ3とロータ4との間には隙間が設けてあって、ステータ3とロータ4とが常時非接触となっている。このように構成された流体吐出機1によれば、粘度が高い流体がステータ3とロータ4との間に詰まって大きな摩擦力を受けてロータ4を駆動部6で駆動できなくなる事態を回避でき、ポンプ2で良好な流体の搬送が可能となる。
また、本実施の形態の流体吐出機1における吐出ノズル5は、ポンプ2の吐出口Eと同形状の入口5cと、流体を吐出する円形の吐出口5dとを備え、入口5cと吐出口5dまでの間の内周は入口5cから吐出口5dへ向かうにつれ徐々に円形に変化する形状となっている。このように構成された流体吐出機1によれば、吐出ノズル5の内周の断面積がステータ3の吐出口Eの面積よりも大きくならずに済むため、ポンプ2から吐出される流体がスムーズに吐出ノズル5内に導かれるとともに流体に適切に圧力を加えて良好な流体の吐出が可能となる。
そして、さらに、本実施の形態の流体吐出機1における駆動部6は、ステッピングモータMと、ロータ4を公転および自転させるようにステッピングモータMの動力を伝達する機構20とを備えている。このように構成された流体吐出機1によれば、流体の吐出流量をステッピングモータMへ入力するパルス信号のパルス数で管理でき、複雑な制御を用いることなく適切な流量の流体を吐出できる。
また、本実施の形態の流体吐出機1における機構20は、ステータ3に対して不動の内歯車22と、ロータ4に接続されるシャフト23に装着されて内歯車22に歯合する外歯車24と、シャフト23を回転自在に支持するとともにステータ3に対して周方向に回転可能に設けられる第1プレート25と、ステッピングモータMの出力軸Msに取付けられるとともに出力軸Msの接続位置から偏心した位置でシャフト23を回転自在に支持する第2プレート26と、第1プレート25と第2プレート26とを接続する支柱27とを備えて構成されている。このように構成された機構20を備えた流体吐出機1によれば、シャフト23が第1プレート25と第2プレート26とで2点支持されるのでポンプ2の駆動中にロータ4に横方向の力が作用しても耐えてロータ4のステータ3内での横ずれを抑制できるとともに、支柱27で第1プレート25と第2プレート26とが連結される構造を採用しているので、第1プレート25と第2プレート26とが周方向にずれることなく同期して回転でき、安定してロータ4を駆動できる。なお、第1プレート25と第2プレート26とを接続する支柱27は、シャフト23の駆動を邪魔しない限り、形状および構造を自由に設定できる。また、支柱27は、第1プレート25と第2プレート26とに一体不可分に設けられてもよい。
さらに、ロータ4に連結されるシャフト23は、駆動部6の機構20によって一端側のみが支持される他は支持されておらず、所謂片持ち支持されているため、ロータ4の下端を支持するベアリングが不要となって、ポンプ2から吐出されたモルタルがベアリングによって妨げられることなく吐出ノズル5内へスムーズに速やかに移動できる。また、本実施の形態の流体吐出機1では、ロータ4を片持ち支持されているのでロータ4の下端側のベアリングを省略できるので、ベアリングとベアリングをシールする部品が不要となってコストを低減できる。
また、本実施の形態の流体吐出機1は、ケース7が貯留部を形成する貯留筒9を有し、第1プレート25に連結されて貯留筒9の内周面に摺接して貯留筒9の内周面に付着する流体を掻き落とすスクレーパ35を備えている。このように構成された流体吐出機1は、貯留筒9の内壁に付着した流体をスクレーパ35でかき落せるので、流体のポンプ2の吸込口Iへの投入を助け、ポンプ2の吸込不良の発生をより一層効果的に防止できる。また、スクレーパ35は、駆動部6のステッピングモータMによって回転駆動される第1プレート25に連結されているので、別途、スクレーパ35を駆動する駆動源の設置が不要であるので、流体吐出機1の大型化を招くこともない。
さらに、本実施の形態の3Dプリンタ100は、上下一対の枠51,52と、上下の枠51,52を連結する複数の柱53とで形成されるフレーム50と、フレーム50内に上下、左右および前後の各方向へ移動可能に配置される流体吐出機1と、フレーム50に対して流体吐出機1を上下、前後および左右に駆動する駆動装置60とを備えている。このように構成された3Dプリンタ100は、小型化可能で容易に運搬できる流体吐出機1を利用しているので、フレーム50および駆動装置60についても小型化できる。そのため、本実施の形態の3Dプリンタ100によれば、運搬が容易で、小規模な工事現場や大型車両の出入りが困難な場所への設置も可能となり、小型のコンクリート造形物の製作にも好適となる。また、フレーム50が枠51,52および柱53とで構成されるので、容易に調達可能な鋼材を組んでフレーム50を製作できる。そのため、フレーム50については3Dプリンタ100を設置する現地にて調達した鋼材で組んで形成すればよい。そのため、3Dプリンタ100の設置に際して、流体吐出機1および駆動装置60のみを3Dプリンタ100を設置する現場へ運搬すれば足り、3Dプリンタ100の運搬が非常に容易になる。
なお、フレーム50は、流体吐出機1および駆動装置60とともに3Dプリンタ100の設置個所へ運搬してもよく、その場合、上下一対の枠51,52の分解および枠51,52と柱53との分解を可能としておけば、フレーム50をコンパクトな荷姿で搬送できるので、運搬が容易となる。また、フレーム50の枠51,52と柱53を単管パイプ、チャンネル材やアングル材といった資材量販店で容易に手に入る鋼材で構成すれば、これらの鋼材を接続するジョイントも汎用品を利用できるので、より現地でフレーム50の製作が容易となる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
1・・・流体吐出機、2・・・ポンプ、3・・・ステータ、3d,3e,3f・・・溝、4・・・ロータ、4a,4b・・・螺子部、5・・・吐出ノズル、5c・・・入口、5d・・・吐出口、6・・・駆動部、7・・・ケース、8・・・ポンプ収容筒(ポンプ収容部)、9・・・貯留筒(貯留部)、10・・・投入管(投入部)、20・・・機構、22・・・内歯車、23・・・シャフト、24・・・外歯車、25・・・第1プレート、26・・・第2プレート、27・・・支柱、35・・・スクレーパ、50・・・フレーム、51,52・・・枠、53・・・柱、60・・・駆動装置、100・・・3Dプリンタ、E・・・吐出口、I・・・吸込口、M・・・ステッピングモータ、Ms・・・出力軸

Claims (9)

  1. 力を加えると粘度が低下する流体を吐出する流体吐出機において、
    筒状であって3条の溝を有するステータと前記ステータ内で公転および自転する2条のねじ部を有するロータとを具備し、吸込口に投入される前記流体を吐出口から吐出する回転容積式一軸偏心ねじ形式のポンプと、
    前記ポンプの前記吐出口に設けられた吐出ノズルと、
    前記ロータを公転および自転駆動する駆動部とを備えた
    ことを特徴とする流体吐出機。
  2. 前記ポンプを収容するポンプ収容部と、前記流体を内部に投入する投入部とを有するケースと、
    前記ポンプの前記吸込口と前記投入部の間に前記流体を貯留する貯留部とを備えた
    ことを特徴とする請求項1に記載の流体吐出機。
  3. 前記ステータは、吸込口側端の内周に前記溝内に前記流体を導入するテーパ面を有する
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の流体吐出機。
  4. 前記ステータと前記ロータとの間に隙間を備えており、前記ステータと前記ロータとが非接触である
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流体吐出機。
  5. 前記吐出ノズルは、前記ポンプの前記吐出口と同形状の入口と、前記流体を吐出する円形の吐出口とを有し、前記入口と前記吐出口までの間の内周は前記入口から前記吐出口へ向かうにつれ徐々に円形に変化する形状となっている
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の流体吐出機。
  6. 前記駆動部は、ステッピングモータと、前記ロータを公転および自転させるように前記ステッピングモータの動力を伝達する機構とを有する
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の流体吐出機。
  7. 前記機構は、
    前記ステータに対して不動の内歯車と、
    前記ロータに接続されるシャフトに装着されて前記内歯車に歯合する外歯車と、
    前記シャフトを回転自在に支持するとともに前記ステータに対して周方向に回転可能に設けられる第1プレートと、
    前記ステッピングモータの出力軸に取付けられるとともに前記出力軸の接続位置から偏心した位置で前記シャフトを回転自在に支持する第2プレートと、
    前記第1プレートと前記第2プレートとを接続する支柱とを有する
    ことを特徴とする請求項6に記載の流体吐出機。
  8. 前記ケースは、前記貯留部を形成する貯留筒を有し、
    前記第1プレートに連結されて前記貯留筒の内周面に摺接して前記貯留筒の内周面に付着する前記流体を掻き落とすスクレーパを備えた
    ことを特徴とする請求項2に従属する請求項7に記載の流体吐出機。
  9. 上下一対の枠と、上下の前記枠を連結する複数の柱とで形成されるフレームと、
    前記フレーム内に上下、左右および前後の各方向へ移動可能に配置される請求項1から8のいずれか一項に記載の流体吐出機と、
    前記フレームに対して前記流体吐出機を上下、前後および左右に駆動する駆動装置とを備えた
    ことを特徴とする3Dプリンタ。
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