JP2022032646A - スポット溶接継手の内面応力評価方法及び熱弾性応力測定法の評価方法 - Google Patents
スポット溶接継手の内面応力評価方法及び熱弾性応力測定法の評価方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
スポット溶接継手の溶接部のナゲット(溶融凝固した部分)は、重ね合わせられた板材の重ね合わせ面(内面)側に生成される。スポット溶接継手の溶接部の場合、応力集中が生じて破壊の危険性があるのは、ナゲットが生成される内面側の部位である。しかしながら、溶接部のナゲットを直接目視することで溶接部の良否を検査することはできない。
しかしながら、FEMの数値解析モデルは、計算機上で幾何情報を数値化して作成されるため、スポット溶接継手の溶接部のナゲットのような複雑な形状を正確にモデル化することは困難である。また、FEM解析の数値解析モデルは、六面体等の要素(メッシュ)に分割されるため、スポット溶接時に溶接部のナゲット以外の部位(本明細書において「熱影響部」と称する)に生じる圧痕など、微妙な変化を有する形状を反映できない場合がある。
したがい、FEM解析のみを用いて、スポット溶接継手の溶接部の内面応力(板材の重ね合わせ面側の応力)を精度良く評価することが困難な場合がある。
熱弾性応力測定法は、被測定物が断熱的に弾性変形する際に温度変化が生じるという熱弾性効果を利用し、繰り返し荷重が付加される被測定物を赤外線撮像装置を用いて連続的に撮像することで被測定物の温度の時間的変化(所定時間内における温度の変化)を測定し、この測定した温度の時間的変化を被測定物の応力の時間的変化(所定時間内における応力の変化)に換算する方法である。応力の初期値を把握していれば(実際に応力を測定して把握している場合のみならず、想定可能な場合も含む)、この初期値に応力の時間的変化を加算することで、所定時間経過後の応力を測定可能である。
具体的には、例えば、被測定物に繰り返し荷重を付加する疲労試験機から出力され、付加する繰り返し荷重と同じ周波数の参照信号を利用する。この参照信号で画像信号を同期検波し、参照信号に応じた周波数帯域の画像信号成分のみ(参照信号と同じ周波数を有する画像信号成分のみ又は参照信号と同じ周波数を含む狭周波数帯域の画像信号のみ)を抽出することで、測定すべき熱弾性効果によって生じる温度変化のS/N比を向上させている。そして、抽出した画像信号成分の大きさと、予め記憶されている画像信号成分の大きさ及び温度の対応関係とに応じて、被測定物の温度の時間的変化(赤外線撮像装置で撮像した撮像画像を構成する画素毎の温度の時間的変化)を算出する。次いで、被測定物の温度の時間的変化と、温度の時間的変化及び応力の時間的変化の間の所定の関係式とに基づき、被測定物の応力の時間的変化を算出する。
したがい、スポット溶接継手の溶接部を検査する際、具体的には、溶接部の内面応力を評価する際に、FEM解析ではなく、ロックイン処理を適用した熱弾性応力測定法を用いることが考えられる。
(1)スポット溶接継手の数値解析モデルを対象として、スポット溶接継手に付加する繰り返し荷重の最大荷重及び最小荷重を用いて熱弾性応力測定法を模擬した応力場及び温度場の連成有限要素法解析を実行することで、熱弾性応力測定法で測定した溶接部の外面応力と同等の外面応力σhzを算出可能である。ただし、連成有限要素法解析で算出される外面応力σhzには、熱弾性応力測定法と同様に、スポット溶接継手の板材の板厚tやスポット溶接継手に付加する繰り返し荷重の周波数Hzに応じた熱伝導の影響が生じる。
(2)スポット溶接継手の数値解析モデルを対象として、スポット溶接継手に付加する繰り返し荷重の最大荷重を用いた静的有限要素法解析を実行することで、溶接部に実際に生じる外面応力と同等の外面応力σfを算出可能である。また、静的有限要素法解析を実行することで、溶接部の外面応力σfに対する内面応力σiの比率(内外応力比)を精度良く算出可能である。ただし、静的有限要素法で算出される内外応力比は、スポット溶接継手の板材の板厚tの影響を受ける。
(3)上記の(1)及び(2)から、スポット溶接継手の数値解析モデルを対象として、静的有限要素法解析及び連成有限要素法解析を実行することで、連成有限要素法解析を実行することで算出した溶接部の外面応力σhzと、板材の板厚tと、繰り返し荷重の周波数Hzとを入力パラメータとして、静的有限要素法解析を実行することで算出される溶接部の内面応力σiを推定するための関係式を導出可能である。そして、この関係式は、溶接部の複雑な形状の影響を受け難いし、繰り返し荷重の荷重値の影響を受けない。換言すれば、有限要素法解析において溶接部の正確なモデル化が困難であっても、推定精度の高い関係式を導出可能である。
(4)したがい、熱弾性応力測定法を用いて測定した評価対象であるスポット溶接継手の溶接部の外面応力σirと、予め認識可能な評価対象であるスポット溶接継手の板材の板厚tと、予め認識可能な評価対象であるスポット溶接継手に付加する繰り返し荷重の周波数Hzとを、上記の(3)で導出した関係式に入力すれば(関係式の入力パラメータである外面応力σhzの代わりに、熱弾性応力測定法を用いて測定した評価対象であるスポット溶接継手の溶接部の外面応力σirを入力すれば)、評価対象であるスポット溶接継手の溶接部の内面応力σi’を溶接部に実際に生じる内面応力と同等に精度良く算出可能である。
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、重ね合わせられた板材をスポット溶接することにより形成されるスポット溶接継手にせん断方向の繰り返し荷重を付加した場合の前記スポット溶接継手の溶接部の内面応力を評価する方法であって、以下の(A)~(C)の手順を含む、ことを特徴とするスポット溶接継手の内面応力評価方法を提供する。
(A)関係式導出手順:前記スポット溶接継手の数値解析モデルを対象として、前記繰り返し荷重の想定最大荷重を用いた静的有限要素法解析と、前記繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力場及び温度場の連成有限要素法解析とを実行することで、連成有限要素法解析を実行することで算出した前記溶接部の外面応力σhzと、前記板材の板厚tと、前記繰り返し荷重の周波数Hzとを入力パラメータとして、静的有限要素法解析を実行することで算出される前記溶接部の内面応力σiを推定するための関係式を導出する。
(B)外面応力測定手順:評価対象である前記スポット溶接継手に前記繰り返し荷重を付加し、熱弾性応力測定法を用いて、前記溶接部の外面応力σirを測定する。
(C)内面応力算出手順:前記外面応力測定手順で測定した前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記溶接部の外面応力σirと、前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記板材の板厚tと、前記評価対象である前記スポット溶接継手に付加するせん断方向の繰り返し荷重の周波数Hzとを、前記関係式導出手順で導出した関係式に入力することで、前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記溶接部の内面応力σi’を算出する。
本発明において、「内面応力」とは、板材の重ね合わせ面側の応力を意味する。また、「溶接部の内面応力」として、具体的には、溶接部のナゲットの中心部の応力を例示できる。ただし、これに限るものではなく、溶接部の内面応力として、溶接部のナゲットと熱影響部との境界部分の応力や、溶接部の内面側の所定部位の平均応力等を算出することも可能である。
本発明において、「外面応力」とは、板材の重ね合わせ面と反対側の面側の応力を意味する。また、「溶接部の外面応力」として、具体的には、板材の重ね合わせ方向から見て、溶接部のナゲットの中心部に対応する位置にある溶接部の熱影響部の応力を例示できる。ただし、これに限るものではなく、溶接部のナゲットと熱影響部との境界部分に対応する位置にある熱影響部の応力や、溶接部の外面側の所定部位の平均応力等を算出することも可能である。
本発明において、「想定最大荷重」とは、スポット溶接継手の数値解析モデルに付加するものとして設定した繰り返し荷重の最大荷重を意味する。外面応力測定手順でスポット溶接継手に実際に付加する繰り返し荷重の最大荷重と必ずしも同じ値である必要はない。実際に付加する繰り返し荷重の最大荷重が不明である場合、想定最大荷重は任意の値に設定すればよい。
本発明において、「想定最小荷重」とは、スポット溶接継手の数値解析モデルに付加するものとして設定した繰り返し荷重の最小荷重を意味する。外面応力測定手順でスポット溶接継手に実際に付加する繰り返し荷重の最小荷重と必ずしも同じ値である必要はない。実際に付加する繰り返し荷重の最小荷重が不明である場合、想定最小荷重は任意の値に設定すればよい。
本発明において、「板材の板厚」とは、重ね合わせられた各板材の重ね合わせ方向の寸法を意味する。
本発明において、「溶接部の外面応力を測定する」とは、溶接部の外面応力そのものを測定する場合の他、溶接部の外面応力の時間的変化を測定する場合も含む概念である。
本発明において、「溶接部の内面応力を算出する」とは、溶接部の内面応力そのものを算出する場合の他、溶接部の内面応力の時間的変化を算出する場合も含む概念である。
本発明において、内面応力算出手順で関係式に入力する板材の板厚t及び繰り返し荷重の周波数Hzとしては、設定値を用いてもよいし、実測値を用いてもよい。
以上のように、本発明によれば、関係式導出手順で導出した関係式と、外面応力測定手順で実際に測定した評価対象であるスポット溶接継手の溶接部の外面応力σirとを用いて、スポット溶接継手の溶接部の内面応力σi’を算出可能である。関係式には、板材の板厚t及び繰り返し荷重の周波数Hzを入力パラメータとして入力するため、板材の板厚t及び繰り返し荷重の周波数Hzによる熱伝導の影響が低減し、溶接部の内面応力σi’を精度良く算出可能である。
さらに、本発明によれば、熱弾性応力測定法を用いて実際に測定した評価対象であるスポット溶接継手の溶接部の外面応力σirを用いるため(有限要素法解析を用いるのは関係式導出手順で関係式を導出するときだけであるため)、スポット溶接継手の溶接部のような正確なモデル化が困難な複雑な形状にも適用できるという利点を有する。
そこで、本発明者らは鋭意検討し、線形変形の弾性解析であれば、繰り返し荷重によって生じる応力の時間的変化が、繰り返し荷重の各周期間で殆ど変わらないことに着目し、これを利用すればよいことに想到した。具体的には、応力場の解析は、繰り返し荷重の周期毎に計算を繰り返すことなく、1周期における繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を条件として用いて1回だけ行い、これにより算出される応力の時間的変化を温度場の解析に利用すれば、熱弾性効果によって生じる温度変化のみを、迅速に且つ十分な精度で容易に算出できることに想到した。
すなわち、好ましくは、前記関係式導出手順で実行する連成有限要素法解析は、前記数値解析モデルを対象として、前記繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力解析を行い、前記数値解析モデルの応力分布を算出する応力解析ステップと、前記応力解析ステップで算出した前記数値解析モデルの応力分布と、前記スポット溶接継手の材料特性と、前記繰り返し荷重の周波数Hzとを用いて、熱流束を算出する熱流束算出ステップと、前記熱流束算出ステップで算出した熱流束を用いた伝熱解析を行い、前記数値解析モデルの温度分布を算出する伝熱解析ステップと、を含み、前記熱流束算出ステップ及び前記伝熱解析ステップを前記繰り返し荷重を付加する所定時間だけ繰り返し実行することで、前記所定時間経過後の前記数値解析モデルの温度分布を算出し、前記所定時間経過後の前記数値解析モデルの温度分布に基づき、前記溶接部の外面温度を算出し、前記溶接部の外面温度を前記溶接部の外面応力σhzに換算する換算ステップを更に含む。
上記の好ましい方法によれば、応力解析ステップにおいて、スポット溶接継手の数値解析モデルを対象として、繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力解析を行い、数値解析モデルの応力分布を算出する。この応力解析ステップは、繰り返し実行する必要がなく、繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いて1回実行すればよい。
次に、上記の好ましい方法によれば、熱流束算出ステップにおいて、応力解析ステップで算出した数値解析モデルの応力分布と、スポット溶接継手の材料特性と、繰り返し荷重の周波数Hzとを用いて、熱流束を算出する。熱流束算出ステップで用いるスポット溶接継手の材料特性としては、スポット溶接継手(板材)の熱弾性係数、密度及び比熱を例示できる。
次に、上記の好ましい方法によれば、伝熱解析ステップにおいて、熱流束算出ステップで算出した熱流束を用いた伝熱解析を行い、数値解析モデルの温度分布を算出する。
そして、上記の熱流束算出ステップ及び伝熱解析ステップを繰り返し荷重を付加する所定時間だけ繰り返し実行することで、所定時間経過後の数値解析モデルの温度分布を算出可能である。
最後に、上記の好ましい方法によれば、換算ステップにおいて、所定時間経過後の数値解析モデルの温度分布に基づき、溶接部の外面温度を算出可能であり、この溶接部の外面温度を溶接部の外面応力σhzに換算可能である。溶接部の外面温度を外面応力σhzに換算するには、温度と応力との間の公知の関係式を用いればよい。
図1は、本実施形態に係る内面応力評価方法の手順を概略的に示すフロー図である。図2は、スポット溶接継手の数値解析モデル(有限要素解析モデル)の一例を示す。図2(a)は数値解析モデルの半分を示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)の破線Aで囲った領域の拡大斜視図である。図2において、X方向は、スポット溶接継手に繰り返し荷重を付加する方向(せん断方向)を示す。Z方向は、スポット溶接継手の板材の重ね合わせ方向を示す。Y方向は、スポット溶接継手に繰り返し荷重を付加する方向及びスポット溶接継手の板材の重ね合わせ方向に直交する方向を示す。図2(a)は、数値解析モデル全体を溶接部の中心を通りXZ平面に平行な平面で分割した数値解析モデルの半分である。
図1に示す関係式導出手順S1では、図2に示すようなスポット溶接継手10の数値解析モデルを対象として、繰り返し荷重の想定最大荷重を用いた静的有限要素法解析(静的FEM解析)と、繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力場及び温度場の連成有限要素法解析(連成FEM解析)とを実行する。
そして、関係式導出手順S1では、連成FEM解析を実行することで算出した溶接部13の外面応力σhzと、板材11の板厚t(図2(a)参照)と、繰り返し荷重の周波数Hzとを入力パラメータとして、溶接部13の内面応力σiを推定するための関係式を導出する。この関係式は、後述の第1関係式~第3関係式と、後述の内外応力比Rtを定義する式(Rt=σi/σf)と、後述の応力変換比Rhzを定義する式(Rhz=σf/σhz)と、によって構成される。
図3に示すように、本実施形態の関係式導出手順S1は、第1関係式導出ステップS11と、第2関係式導出ステップS12と、第3関係式導出ステップS13と、を含む。以下、各ステップS11~S13について順に説明する。
第1関係式導出ステップS11では、板材11の板厚tを変更した複数の数値解析モデルを対象として、繰り返し荷重の想定最大荷重を用いた静的FEM解析を実行することで、溶接部13の外面応力σf及び内面応力σiを算出する。具体的には、静的FEM解析には、スポット溶接継手10に付加される繰り返し荷重の想定最大荷重の他、板材11、12のヤング率及びポアソン比や、境界条件(対称条件、拘束条件など)が用いられる。
本実施形態では、静的FEM解析を実行することで、スポット溶接継手10の数値解析モデルの応力分布の時間的変化を算出する。換言すれば、数値解析モデルの要素毎に応力(主応力和ともいう)の時間的変化を算出する。そして、応力分布の初期値(例えば、0)に応力分布の時間的変化を加算することで、想定最大荷重付加後の応力分布を算出し、この算出した応力分布に基づき、溶接部13の外面応力σf及び内面応力σiを算出する。
なお、静的FEM解析を実行するためのソフトウェアとしては、例えば、SIMULIA社製の汎用非線形有限要素解析プログラム「Abaqus」を好適に用いることができるが、本発明はこれに限るものではない。
図4は、板厚t毎に算出した内外応力比Rtの一例を示す図である。図4に示す例では、板厚t=0.8mm、1.2mm、1.6mm、2.0mm毎に内外応力比Rtを算出している。図4に示すように、本発明者らの知見によれば、内外応力比Rtを板厚tの指数関数で精度良く近似できることが分かった。したがい、第1関係式導出ステップS11では、板厚t毎に算出した内外応力比Rtに基づき、最小二乗法等の近似計算によって、内外応力比Rtを板厚tの指数関数で表した第1関係式を導出する。すなわち、以下の式(1)で表される第1関係式を導出する。
Rt=c1・ed1・t ・・・(1)
上記の式(1)において、c1、d1は所定の係数(定数)を意味する。eは自然対数の底を意味する。
第2関係式導出ステップS12では、板材11の板厚tを変更した複数の数値解析モデルを対象として、それぞれ繰り返し荷重の周波数Hzを変更した複数の連成FEM解析を実行することで、繰り返し荷重の周波数Hz毎に溶接部13の外面応力σhzを算出する。第2関係式導出ステップS12で実行する連成FEM解析の具体的な内容については後述する。
図5は、ある板厚tの数値解析モデルについて、繰り返し荷重の周波数Hz毎に算出した応力変換比Rhzの一例を示す図である。図5に示す例では、板厚t=1.2mmの数値解析モデルについて、周波数Hz=1Hz、3Hz、5Hz、7Hz、10Hz、15Hz、50Hz、100Hz、200Hz、400Hz毎に応力変換比Rhzを算出している。図5に示すように、本発明者らの知見によれば、いずれの板厚tの数値解析モデルについても、応力変換比Rhzを繰り返し荷重の周波数Hzの累乗関数で精度良く近似できることが分かった。したがい、第2関係式導出ステップS12では、繰り返し荷重の周波数Hz毎に算出した応力変換比Rhzに基づき、最小二乗法等の近似計算によって、応力変換比Rhzを繰り返し荷重の周波数Hzの累乗関数で表した第2関係式を板厚t毎に導出する。すなわち、以下の式(2)で表される第2関係式を板厚t毎に導出する。
Rhz=s1・Hzs2 ・・・(2)
上記の式(2)において、s1、s2は所定の係数を意味する。
図6は、数値解析モデルの板材11の板厚tと、第2関係式導出ステップS12で導出した第2関係式の累乗関数の係数s1、s2との関係の一例を示す図である。
図6に示すように、本発明者らの知見によれば、第2関係式の累乗関数の係数s1、s2を板材11の板厚tの線形関数で精度良く近似できることが分かった。したがい、第3関係式導出ステップS13では、各板厚t(図6に示す例では、板厚t=0.8mm、1.2mm、1.6mm、2.0mm)に対応する係数s1、s2の値に基づき、最小二乗法等の近似計算によって、累乗関数の係数s1、s2を板材11の板厚tの線形関数で表した第3関係式を導出する。すなわち、以下の式(3)及び式(4)で表される第3関係式を導出する。
s1=a1・t+b1 ・・・(3)
s2=a2・t+b2 ・・・(4)
上記の式(3)において、a1、b1は所定の係数(定数)を意味する。上記の式(4)において、a2、b2は所定の係数(定数)を意味する。
具体的には、入力パラメータである板厚tを第3関係式に入力することで、係数s1、s2が算出される。この係数s1、s2と、入力パラメータである繰り返し荷重の周波数Hzとを第2関係式に入力することで、応力変換比Rhzが算出される。この応力変換比Rhzを入力パラメータである溶接部13の外面応力σhzに乗じると、応力変換比Rhzを定義する式から、外面応力σfが算出される。一方、入力パラメータである板厚tを第1関係式に入力することで、内外応力比Rtが算出される。この内外応力比Rtを上記のようにして算出される外面応力σfに乗じると、内外応力比Rtを定義する式から、内面応力σiが算出される。したがい、第1関係式~第3関係式と、内外応力比Rtを定義する式と、応力変換比Rhzを定義する式と、によって構成される関係式は、溶接部13の外面応力σhzと、板材11の板厚tと、繰り返し荷重の周波数Hzとを入力パラメータとして、溶接部13の内面応力σiを推定するための関係式になっている。
図1に示す外面応力測定手順S2では、評価対象であるスポット溶接継手10に繰り返し荷重を付加し、熱弾性応力測定法を用いて、評価対象であるスポット溶接継手10の溶接部13の外面応力σirを実際に測定する。具体的には、板材11の表面(外面)に対向配置した赤外線撮像装置を用いて、疲労試験機等によってせん断方向の繰り返し荷重が所定時間だけ付加されるスポット溶接継手10の溶接部13を含む板材11の表面(外面)を連続的に撮像する。そして、好適には、赤外線撮像装置から出力された画像信号から、測定対象とする熱弾性効果によって生じる温度変化に応じた信号波形をロックイン処理する。これにより、評価対象であるスポット溶接継手10の撮像領域の外面応力の分布を測定でき、ひいては溶接部13の外面応力σirを測定可能である。なお、熱弾性応力測定法のより具体的な内容については公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
図1に示す内面応力算出手順S3では、外面応力測定手順S2で測定した評価対象であるスポット溶接継手10の溶接部13の外面応力σirと、評価対象であるスポット溶接継手10の板材11の板厚tと、評価対象であるスポット溶接継手10に付加するせん断方向の繰り返し荷重の周波数Hzとを、関係式導出手順S1で導出した関係式に入力する。これにより、評価対象であるスポット溶接継手10の溶接部13の内面応力σi’を算出する。
図7に示すように、本実施形態の内面応力算出手順S3は、係数算出ステップS31と、応力変換比算出ステップS32と、外面応力補正ステップS33と、内外応力比算出ステップS34と、内面応力算出ステップS35と、を含む。以下、各ステップS31~S35について順に説明する。
係数算出ステップS31では、評価対象であるスポット溶接継手10の板材11の板厚tを第3関係式(s1=a1・t+b1、s2=a2・t+b2)に入力することで、第2関係式の累乗関数の係数s1、s2を算出する。
応力変換比算出ステップS32では、評価対象であるスポット溶接継手10に付加するせん断方向の繰り返し荷重の周波数Hzと、係数算出ステップS31で算出した累乗関数の係数s1、s2とを第2関係式(Rhz=s1・Hzs2 )に入力することで、応力変換比Rhzを算出する。
外面応力補正ステップS33では、外面応力測定手順S2で測定した評価対象であるスポット溶接継手10の溶接部13の外面応力σirに、応力変換比算出ステップS32で算出した応力変換比Rhzを乗じて、溶接部13の補正後の外面応力σf’を算出する。外面応力測定手順S2で測定した外面応力σirは、溶接部13に実際に生じた外面応力よりも小さな値となる可能性があるが、応力変換比Rhzを乗じることで、実際に生じた外面応力と同等の外面応力σf’を算出可能である。
内外応力比算出ステップS34では、評価対象であるスポット溶接継手10の板材11の板厚tを第1関係式(Rt=c1・ed1・t)に入力することで、内外応力比Rtを算出する。
内面応力算出ステップS35では、外面応力補正ステップS33で算出した補正後の外面応力σf’に、内外応力比算出ステップS34で算出した内外応力比Rtを乗じて、溶接部13の内面応力σi’を算出する。前述のように、外面応力σf’は、実際に生じた外面応力と同等であることが期待できるため、これに内外応力比Rtを乗じて算出される内面応力σi’も実際に生じた内面応力と同等であることが期待できる。
なお、本実施形態の内面応力算出手順S3では、係数算出ステップS31、応力変換比算出ステップS32、外面応力補正ステップS33、内外応力比算出ステップS34及び内面応力算出ステップS35の順に実行するが、本発明はこれに限るものではない。内面応力算出ステップS35は最後に実行し、係数算出ステップS31、応力変換比算出ステップS32及び外面応力補正ステップS33は、この順に実行する必要がある。しかしながら、内外応力比算出ステップS34は、係数算出ステップS31の前に実行してもよいし、係数算出ステップS31と応力変換比算出ステップS32との間で実行してもよいし、応力変換比算出ステップS32と外面応力補正ステップS33との間で実行してもよい。
図8は、第2関係式導出ステップS12で実行する連成FEM解析の手順を概略的に示すフロー図である。図8に示すように、第2関係式導出ステップS12で実行する連成FEM解析は、応力解析ステップS121と、熱流束算出ステップS122と、伝熱解析ステップS123と、換算ステップS125と、を含む。以下、各ステップS121~S125について順に説明する。
応力解析ステップS121では、図2に示すようなスポット溶接継手10の数値解析モデルを対象として、スポット溶接継手10に付加される繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力解析を行い、数値解析モデルの応力分布を算出する。この応力解析には、スポット溶接継手10に付加される繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重の他、板材11、12のヤング率及びポアソン比や、境界条件(対称条件、拘束条件など)が用いられる。
具体的には、本実施形態の応力解析ステップS121では、応力解析を実行することで、数値解析モデルの応力分布の時間的変化を算出する。換言すれば、数値解析モデルの要素毎に応力(主応力和ともいう)の時間的変化Δσを算出する。
なお、応力解析を実行するためのソフトウェアとしては、例えば、SIMULIA社製の汎用非線形有限要素解析プログラム「Abaqus」を好適に用いることができるが、本発明はこれに限るものではない。算出した数値解析モデルの応力分布の時間的変化は、後述の熱流束算出ステップS122で用いるため、例えば、各ステップS121~S125を実行するためのコンピュータが具備するメモリ、ハードディスク、CD-ROM等の記憶媒体に保存すればよい。
熱流束算出ステップS122では、応力解析ステップS121で算出した数値解析モデルの応力分布(応力分布の時間的変化)と、スポット溶接継手10の材料特性(例えば、板材11、12の熱弾性係数、密度及び比熱)と、繰り返し荷重の周期Hzとを用いて、熱流束を算出する。
具体的には、本実施形態の熱流束算出ステップS122では、まず以下の式(5)に基づき、数値解析モデルの要素毎に温度の時間的変化ΔTを算出する。
ΔT=-K・T・Δσ ・・・(5)
上記の式(5)において、ΔTは温度の時間的変化を、Kは板材11、12の熱弾性係数を、Δσは応力の時間的変化を、Tは数値解析モデルの温度を意味する。なお、熱流束算出ステップS122を最初に実行する際、Tには初期温度として雰囲気温度(例えば、20℃)が入力される。
F=-2・ΔT・ρ・Cp・Hz ・・・(6)
F=2・ΔT・ρ・Cp・Hz ・・・(7)
上記の式(6)及び式(7)において、Fは熱流束を、ρは板材11、12の密度を、Cpは板材11、12の比熱を、Hzは繰り返し荷重の周波数を意味する。圧縮方向に荷重が変化するときには上記の式(6)が用いられ、引張方向に荷重が変化するときには上記の式(7)が用いられる。
なお、熱流束算出ステップS122を実行するためのソフトウェアは、例えば、上記の式(5)~式(7)を実行するプログラムをSIMULIA社製の汎用非線形有限要素解析プログラム「Abaqus」が具備するユーザーサブルーチンとして作成することができるが、本発明はこれに限るものではない。
伝熱解析ステップS123では、熱流束算出ステップS122で算出した熱流束Fを用いた伝熱解析を行い、数値解析モデルの温度分布を算出する。具体的には、本実施形態の伝熱解析ステップS123では、伝熱解析を実行することで、数値解析モデルの温度分布の時間的変化を算出する。換言すれば、数値解析モデルの要素毎に温度の時間的変化ΔTを算出する。
具体的には、伝熱解析には、熱流束Fの他、数値解析モデルの温度T、板材11、12の対流熱伝達係数及び放射率が用いられる。なお、伝熱解析ステップS123を最初に実行する際、Tには初期温度として雰囲気温度(例えば、20℃)が入力される。
なお、伝熱解析を実行するためのソフトウェアとしては、例えば、SIMULIA社製の汎用非線形有限要素解析プログラム「Abaqus」を好適に用いることができるが、本発明はこれに限るものではない。
換算ステップS125では、所定時間経過後の数値解析モデルの温度分布(温度分布の時間的変化)に基づき、溶接部13の外面温度を算出する。そして、この溶接部13の外面温度を溶接部13の外面応力σhzに換算する。外面応力σhzへの換算には、温度と応力との間の公知の関係式を用いればよい。
したがい、上記の連成FEM解析は、熱弾性応力測定法の測定結果を評価する方法として用いることも可能である。この熱弾性応力測定法の評価方法は、熱弾性応力測定法を適用する被測定物がスポット溶接継手に限るものではなく、その他の溶接構造物など任意の被測定物に用いることができる。具体的には、被測定物の数値解析モデルを対象として、前述の応力解析ステップS121~伝熱解析ステップS123を実行する(所定時間が経過するまで熱流束算出ステップS122及び伝熱解析ステップS123を繰り返し実行することも含む)ことで、被測定物の数値解析モデルの温度分布を算出する一方、被測定物の温度分布を熱弾性応力測定法(赤外線撮像装置)を用いて実際に測定し、双方の結果を対比すれば、熱弾性応力測定法の測定結果を評価することが可能である。また、換算ステップS125まで実行することで、被測定物の数値解析モデルの応力分布を算出する一方、被測定物の応力分布を熱弾性応力測定法を用いて実際に測定し、双方の結果を対比することで、熱弾性応力測定法の測定結果を評価することも可能である。
また、本実施形態に係る内面応力評価方法によれば、評価対象であるスポット溶接継手10に付加する繰り返し荷重の荷重値を必要とせずに溶接部13の内面応力σi’を算出できるため、評価対象について繰り返し荷重の荷重値が不明である場合にも適用できるという利点を有する。
さらに、本実施形態に係る内面応力評価方法によれば、熱弾性応力測定法を用いて実際に測定した評価対象であるスポット溶接継手10の溶接部13の外面応力σirを用いるため(FEM解析を用いるのは関係式導出手順S1で関係式を導出するときだけであるため)、スポット溶接継手10の溶接部13のような正確なモデル化が困難な複雑な形状にも適用できるという利点を有する。
図9は、本実施例において、静的FEM解析を実行することで得られた数値解析モデルの外面応力分布の一例を示す。具体的には、図9は、板厚t=1.2mmの数値解析モデル全体を溶接部13の中心を通りXZ平面に平行な平面で分割した数値解析モデルの半分の外面応力分布を示す。図9に示す数値解析モデルの外面応力分布に基づき算出された溶接部13の外面応力σfは457MPa(圧縮応力)であった。また、静的FEM解析を実行することで得られた数値解析モデルの内面応力分布(図示省略)に基づき算出された溶接部13の内面応力σiは1279MPa(圧縮応力)であった。なお、上記のようにして算出された外面応力σfは、ひずみゲージを用いて測定した溶接部13に実際に生じる外面応力と同等の値であった。
また、第1関係式導出ステップS11では、内外応力比Rt(Rt=σi/σf)を板厚t毎に算出した。前述の図4に示す例は、本実施例によって得られた板厚t毎の内外応力比Rtである。これにより、内外応力比Rtを板厚tの指数関数で表した第1関係式を導出した。
連成FEM解析の熱流束算出ステップS122では、数値解析モデルの初期温度を20℃とし、板材11、12の熱弾性係数Kを3.14e-6(eは自然対数の底)とした。また、板材11、12の密度ρを7.8e-6kg/mm3(eは自然対数の底)とし、板材11、12の比熱Cpを460kJ/kgとした。さらに、熱流束Fを算出する際に、繰り返し荷重の想定最大荷重(実際の最大荷重と同じ2.736kN)から想定最小荷重(実際の最小荷重と同じ0.136kN)に変化する際には前述の式(6)を用い、想定最小荷重から想定最大荷重に変化する際には前述の式(7)を用いた。
連成FEM解析の伝熱解析ステップS123では、数値解析モデルの初期温度を20℃とし、板材11、12の対流熱伝達係数を11.628W/m2とし、板材11、12の放射率を0.8とした。
また、第2関係式導出ステップS12では、連成FEM解析を実行することで算出した溶接部13の外面応力σhzに対する静的FEM解析を実行することで算出した溶接部13の外面応力σfの比率である応力変換比Rhz(Rhz=σf/σhz)を繰り返し荷重の周波数Hz毎に算出した。前述の図5に示す例は、本実施例の板厚t=1.2mmの場合に得られた周波数Hz毎の応力変換比Rhzである。これにより、応力変換比Rhzを繰り返し荷重の周波数Hzの累乗関数で表した第2関係式を導出した。
そして、関係式導出手順S1の第3関係式導出ステップS13では、第2関係式の累乗関数の係数s1、s2を板材11の板厚tの線形関数で表した第3関係式を導出した。前述の図6は、本実施例の第3関係式を導出するのに用いた板材11の板厚tと累乗関数の係数s1、s2との関係を示している。
図11は、本実施例において、熱弾性応力測定法を実行することで得られた、最大荷重を付加したときの外面応力分布である。図11に示す外面応力分布は、図10に示す連成FEM解析を実行することで得られた数値解析モデルの外面応力分布に近似した分布になっていることが分かる。図11に示す外面応力分布に基づき算出された外面応力σirは139MPa(圧縮応力)であった。
内面応力算出手順S3の応力変換比算出ステップS32では、繰り返し荷重の周波数Hz=7Hz、係数s1=4.99、係数s2=-0.20を第2関係式に入力することで、応力変換比Rhz=3.4を算出した。
内面応力算出手順S3の外面応力補正ステップS33では、溶接部13の外面応力σir=139MPaに応力変換比Rhz=3.4を乗じて、溶接部13の補正後の外面応力σf’=473MPa(圧縮応力)を算出した。
内面応力算出手順S3の内外応力比算出ステップS34では、板材11の板厚t=1.2mmを第1関係式に入力することで、内外応力比Rt=2.66を算出した。
内面応力算出手順S3の内面応力算出ステップS35では、補正後の外面応力σf’=473MPaに、内外応力比Rt=2.66を乗じて、溶接部13の内面応力σi’=1258MPa(圧縮応力)を算出した。
なお、上記の評価後に、本実施例での評価対象であるスポット溶接継手10の溶接部13を切断してその断面を観察したところ、溶接部13は比較的単純な形状であった。したがい、上記のように静的FEM解析で算出した内面応力σiを真値と仮定しても問題はないと考えられる。
11、12・・・板材
13・・・溶接部
S1・・・関係式導出手順
S2・・・外面応力測定手順
S3・・・内面応力算出手順
なお、前記課題を解決するため、本発明は、被測定物に繰り返し荷重を所定時間だけ付加しながら、赤外線撮像装置を用いて前記被測定物を連続的に撮像することで、前記被測定物の温度分布の時間的変化を測定し、前記測定した温度分布の時間的変化を前記被測定物の応力分布の時間的変化に換算する熱弾性応力測定法の評価方法であって、前記被測定物の数値解析モデルを対象として、前記繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力解析を行い、前記数値解析モデルの応力分布を算出する応力解析ステップと、前記応力解析ステップで算出した前記数値解析モデルの応力分布と、前記被測定物の材料特性と、前記繰り返し荷重の周波数とを用いて、熱流速を算出する熱流速算出ステップと、前記熱流速算出ステップで算出した熱流速を用いた伝熱解析を行い、前記数値解析モデルの温度分布を算出する伝熱解析ステップと、を含み、前記熱流速算出ステップ及び前記伝熱解析ステップを前記繰り返し荷重を付加する所定時間だけ繰り返し実行することで、前記所定時間経過後の前記数値解析モデルの温度分布を算出する、ことを特徴とする熱弾性応力測定法の評価方法としても提供される。
本発明に係る熱弾性応力測定法の評価方法として、前記熱流速算出ステップは、以下の式(5)に基づき、前記数値解析モデルの要素毎に温度の時間的変化を算出するステップと、以下の式(6)又は式(7)に基づき、前記数値解析モデルの要素毎に熱流速を算出するステップと、を含む、ことが好ましい。
ΔT=-K・T・Δσ ・・・(5)
F=-2・ΔT・ρ・Cp・Hz ・・・(6)
F=2・ΔT・ρ・Cp・Hz ・・・(7)
上記の式(5)において、ΔTは温度の時間的変化を、Kは被測定物の熱弾性係数を、Δσは応力の時間的変化を、Tは数値解析モデルの温度を意味する。
上記の式(6)及び式(7)において、Fは熱流速を、ρは被測定物の密度を、Cpは被測定物の比熱を、Hzは繰り返し荷重の周波数を意味する。圧縮方向に荷重が変化するときには上記の式(6)が用いられ、引張方向に荷重が変化するときには上記の式(7)が用いられる。
Claims (4)
- 重ね合わせられた板材をスポット溶接することにより形成されるスポット溶接継手にせん断方向の繰り返し荷重を付加した場合の前記スポット溶接継手の溶接部の内面応力を評価する方法であって、
前記スポット溶接継手の数値解析モデルを対象として、前記繰り返し荷重の想定最大荷重を用いた静的有限要素法解析と、前記繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力場及び温度場の連成有限要素法解析とを実行することで、連成有限要素法解析を実行することで算出した前記溶接部の外面応力σhzと、前記板材の板厚tと、前記繰り返し荷重の周波数Hzとを入力パラメータとして、静的有限要素法解析を実行することで算出される前記溶接部の内面応力σiを推定するための関係式を導出する関係式導出手順と、
評価対象である前記スポット溶接継手に前記繰り返し荷重を付加し、熱弾性応力測定法を用いて、前記溶接部の外面応力σirを測定する外面応力測定手順と、
前記外面応力測定手順で測定した前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記溶接部の外面応力σirと、前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記板材の板厚tと、前記評価対象である前記スポット溶接継手に付加するせん断方向の繰り返し荷重の周波数Hzとを、前記関係式導出手順で導出した関係式に入力することで、前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記溶接部の内面応力σi’を算出する内面応力算出手順と、を含む、
ことを特徴とするスポット溶接継手の内面応力評価方法。 - 前記関係式導出手順で実行する連成有限要素法解析は、
前記数値解析モデルを対象として、前記繰り返し荷重の想定最大荷重及び想定最小荷重を用いた応力解析を行い、前記数値解析モデルの応力分布を算出する応力解析ステップと、
前記応力解析ステップで算出した前記数値解析モデルの応力分布と、前記スポット溶接継手の材料特性と、前記繰り返し荷重の周波数Hzとを用いて、熱流束を算出する熱流束算出ステップと、
前記熱流束算出ステップで算出した熱流束を用いた伝熱解析を行い、前記数値解析モデルの温度分布を算出する伝熱解析ステップと、を含み、
前記熱流束算出ステップ及び前記伝熱解析ステップを前記繰り返し荷重を付加する所定時間だけ繰り返し実行することで、前記所定時間経過後の前記数値解析モデルの温度分布を算出し、
前記所定時間経過後の前記数値解析モデルの温度分布に基づき、前記溶接部の外面温度を算出し、前記溶接部の外面温度を前記溶接部の外面応力σhzに換算する換算ステップを更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のスポット溶接継手の内面応力評価方法。 - 前記関係式導出手順は、
前記板材の板厚tを変更した複数の前記数値解析モデルを対象として、静的有限要素法解析を実行することで、前記溶接部の外面応力σf及び内面応力σiを算出し、前記溶接部の外面応力σfに対する内面応力σiの比率である内外応力比Rtを前記板厚t毎に算出して、前記内外応力比Rtを前記板厚tの指数関数で表した第1関係式を導出する第1関係式導出ステップと、
前記板材の板厚tを変更した複数の前記数値解析モデルを対象として、それぞれ前記繰り返し荷重の周波数Hzを変更した複数の連成有限要素法解析を実行することで、前記繰り返し荷重の周波数Hz毎に前記溶接部の外面応力σhzを算出し、連成有限要素法解析を実行することで算出した前記溶接部の外面応力σhzに対する静的有限要素法解析を実行することで算出した前記溶接部の外面応力σfの比率である応力変換比Rhzを前記繰り返し荷重の周波数Hz毎に算出して、前記応力変換比Rhzを前記繰り返し荷重の周波数Hzの累乗関数で表した第2関係式を前記板材の板厚t毎に導出する第2関係式導出ステップと、
前記累乗関数の係数を前記板材の板厚tの線形関数で表した第3関係式を導出する第3関係式導出ステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスポット溶接継手の内面応力評価方法。 - 前記内面応力算出手順は、
前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記板材の板厚tを前記第3関係式に入力することで、前記累乗関数の係数を算出する係数算出ステップと、
前記評価対象である前記スポット溶接継手に付加するせん断方向の繰り返し荷重の周波数Hzと、前記算出した前記累乗関数の係数とを前記第2関係式に入力することで、前記応力変換比Rhzを算出する応力変換比算出ステップと、
前記外面応力測定手順で測定した前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記溶接部の外面応力σirに前記算出した応力変換比Rhzを乗じて、前記溶接部の補正後の外面応力σf’を算出する外面応力補正ステップと、
前記評価対象である前記スポット溶接継手の前記板材の板厚tを前記第1関係式に入力することで、前記内外応力比Rtを算出する内外応力比算出ステップと、
前記算出した補正後の外面応力σf’に前記算出した内外応力比Rtを乗じて、前記溶接部の内面応力σi’を算出する内面応力算出ステップと、を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のスポット溶接継手の内面応力評価方法。
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