JP2022030903A - 合成樹脂表皮材 - Google Patents

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Abstract

【課題】常温における成形加工性が良好な合成樹脂表皮材を提供する。【解決手段】樹脂を含む表皮層を有し、前記表皮層は、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgfにて測定した幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率が7%~100%であり、且つ、幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率が0.5%~15%である合成樹脂表皮材。【選択図】図1

Description

本開示は、合成樹脂表皮材に関する。
インストルメントパネル、ドアトリム、座席、天井などの自動車内装部品、トリム、座席、天井などの鉄道車輌及び航空機内装部品、家具、靴、履物、鞄、建装用内外装部材、衣類表装材及び裏地、壁装材等には、天然皮革、繊維製シート等に代えて、耐久性に優れる合成樹脂表皮材が多用されている。
例えば、天然皮革に変えて合成樹脂表皮材を用いる場合、合成樹脂表皮材の最表面は天然皮革に類似した凹凸、即ち、絞(シボ)模様が形成される。また、合成樹脂表皮材は、さらに意匠性を高めるため等の目的で、より深い凹凸模様の形成が要求されることがある。
従来、合成皮革等の表皮材に凹凸模様を形成する場合には、圧着成形、一対の型を用いたスタンピング成形等、常温での成形加工を施すことが求められる。また、合成樹脂表皮材を自動車の内装用として用いる場合、例えば、自動車のドア等の部品は、上下及び左右の両方向に立体形状を持つため、ドアに使用される合成樹脂表皮材は、上下及び左右の両方向への一定の伸縮特性を有することが好ましい。
合成樹脂表皮材に凹凸を付与する場合、内装用として立体形状を有する基体に合成樹脂表皮材を固定する場合等においては、加熱成形は合成樹脂表皮材に、熱による伸長性を付与できる。しかし、加熱成形では、合成樹脂表皮材に用いられる樹脂の外観、風合いに熱による影響が生じる、立体形状を有する基体に熱による影響が生じる等が懸念されるため、合成樹脂表皮材の常温における成形加工性が重要である。
しかしながら、公知の合成樹脂表皮材は、十分な伸縮特性を有しないため、常温において、圧着成形、スタンピング成形等を行う場合、成形加工時にシワ、たるみ等が発生することが懸念される。
外観、触感、通気性及び機械的特性が良好な合成皮革として、前処理済みの基材に、湿式法を用いて表皮層を形成し、形成された表皮層から基材を剥離して、剥離面に接着剤で基布を接合させる湿式合成皮革が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載の湿式合成皮革は、基材に前処理することで、基布に貼付する前の積層体としても流通することができ、且つ、基布に貼り付けた後は、基布との接着性が良好であることが記載されている。
室温での形状追従性と柔軟性が良好であり、基材への貼付時にしわになりにくい表皮材を得るための熱可塑性重合性組成物が提案されている(特許文献2参照)。
特許文献2に記載の熱可塑性重合性組成物は、4-メチル-1-ペンテン/α-オレフィン共重合体と、特定の物性を有するプロピレン系樹脂とを含み、表皮材における表皮層として好適に用い得ることが記載されている。
特開平09-031859号公報 特開2014-214227号公報
しかし、特許文献1に記載の合成樹脂表皮材は、湿式法を用いており、特殊な加工装置を必要とするため、生産性の観点からは好ましくない。さらに、本発明者の検討によれば、特許文献1及び特許文献2に記載の合成皮革は、柔軟性が良好ではある。しかし、常温での成形加工性、常温でスタンピング成形加工に供する場合のしわの発生抑制効果などの点で、なお不十分であった。
本発明の一実施形態の課題は、常温における成形加工性が良好な合成樹脂表皮材を提供することである。
課題を解決するための手段は以下の態様を含む。
<1> 樹脂を含む表皮層を有し、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgf(9.8N)にて測定した幅方向における23℃条件下の1kgf(9.8N)定荷重伸び率が7%~100%であり、且つ、幅方向における23℃条件下の1kgf(9.8N)定荷重セット率が0.5%~15%である合成樹脂表皮材。
<2> 前記合成樹脂表皮材は、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgfにて測定した長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率が7%~100%であり、且つ、長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率が0.5%~15%である<1>に記載の合成樹脂表皮材。
<3> 前記樹脂は、ウレタン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>又は<2>に記載の合成樹脂表皮材。
<4> さらに、基布を有する<1>~<3>のいずれか1つに記載の合成樹脂表皮材。
<5> 前記基布は、編布である<4>に記載の合成樹脂表皮材。
<6> 前記基布は、基布単体を、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を10kgf(98N)にて測定した幅方向における23℃条件下の10kgf(98N)定荷重伸び率が40%~150%であり、且つ、幅方向における23℃条件下の10kgf(98N)定荷重セット率が0.5%~15%である編布である<4>又は<5>に記載の合成樹脂表皮材。
本発明の一実施形態によれば、常温における成形加工性が良好な合成樹脂表皮材を提供することができる。
本開示の合成樹脂表皮材の一態様を示す概略断面図である。 本開示の合成樹脂表皮材の別の態様を示す概略断面図である。 本開示の実施例において、合成樹脂表皮材を成形加工する際に用いる型の一態様である成形型Aの斜視図である。 本開示の実施例において、合成樹脂表皮材を成形加工する際に用いる型の別の態様である成形型Bの斜視図である。
以下、本開示の合成樹脂表皮材について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において合成樹脂表皮材の長さ方向とは、長尺状の合成樹脂表皮材を製造する製造装置の搬送方向に平行な方向を示し、幅方向とは、合成樹脂表皮材の面上において、前記長さ方向に垂直な方向を指す。
合成樹脂表皮材の長さ方向及び幅方向は、樹脂を含む単層又は多層の表皮材の場合には、樹脂の配向性を透過型電子顕微鏡にて観察することにより確認することができる。合成樹脂表皮材が基布を有する場合には、長さ方向及び幅方向は、基布の組織を観察することにより確認することができる。
本開示において、1kgfは、9.8Nである。
本開示において「常温」とは、特に断らない限り、23℃を指す。
本開示において、常温における成形加工性(常温加工性)とは、加工に供する合成樹脂表皮材の温度が常温である場合の成形加工性を指す。
本開示における「樹脂を含む層」とは、「当該層の主成分である樹脂を含んで形成された層」を指す。即ち、本開示における「樹脂を含む層」は、樹脂のみを含む樹脂層、及び、主成分である樹脂に加え、可塑剤、着色剤、紫外線吸収剤等の任意成分をさらに含む樹脂組成物により形成された層の双方を包含する意味で用いられる。
ここで、本開示における「主成分である樹脂」とは、当該成分が含まれる樹脂組成物の全量に対し、60質量%以上含有される樹脂を指す。本開示では、層を構成する主成分である樹脂を「主剤樹脂」とも称する。
本開示において「成形体」とは、加飾前の成形体(成形体の基体)を指す。
以下、本開示において、合成樹脂表皮材を単に「表皮材」と略称することがある。
[合成樹脂表皮材]
本開示の合成樹脂表皮材(以下、単に「本開示の表皮材」と称することがある)は、樹脂を含む表皮層を有し、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgfにて測定した幅方向における23℃条件下の1kgf(9.8N)定荷重伸び率が7%~100%であり、且つ、幅方向における23℃条件下の1kgf(9.8N)定荷重セット率が0.5%~15%である合成樹脂表皮材である。
合成樹脂表皮材は、車両のドアなどの、上下と左右の両方向に立体形状を持つ成形体に使用されることが多い。この場合、表皮材は、上下と左右の両方向への一定の伸縮特性を有することが好ましい。本発明者の検討によれば、成形品の上下方向、即ち、表皮材の幅方向に、以下に詳述する一定の伸縮特性を有することで、成形体に用いる際の常温における成形加工性が良好となることを見出した。
本開示の表皮材は、少なくとも樹脂を含む表皮層を有する。本開示の表皮材は、以下に詳述するように、表皮層のみからなる単層構造であってもよく、表皮層に加え、他の任意の層を含む多層構造であってもよい。
単層構造及び多層構造のいずれにおいても、本開示の表皮材は、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgfにて測定した幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率が7%~100%であり、且つ、幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率が0.5%~15%である。
表皮材の幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率及び幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率がいずれも上記範囲であることにより、本開示の表皮材は、幅方向における伸縮特性が好適な範囲に調整され、常温での成形加工性が良好となる。
(1kgf定荷重伸び率)
本開示の表皮材の1kgf定荷重伸び率は、ASTM D 3107(2019)に準拠して測定する。
1kgf定荷重伸び率は、定荷重伸び試験機を用いて測定することができる。
本開示においては、定荷重伸び試験機((株)大栄科学精器製作所製、FLM-6M(商品名))を用いて測定した値を採用している。
測定試料としては、表皮材を幅80mm、長さ200mmに切断した試験片を用いる。
上記定荷重伸び試験機に、上記試験片を固定し、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgf(9.8N)にて測定する。測定条件は、以下の通りである。
標線間隔 100mm
つかみ間隔 150mm
荷重 1kgf(9.8N)
時間 荷重10分
除重10分
雰囲気温度 23℃±2℃
1kgf定荷重伸び率は、下記式を用いて算出する。
定荷重伸び率(%)={(L1-L0)/L0}×100
上記式において、L0は試験前の標線間距離(mm)、L1は、荷重をかけて10分後の標線間距離(mm)を表す。
上記式により算出された幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率は7%~100%であり、15%~60%であることが好ましい。
(1kgf定荷重セット率)
本開示の表皮材の1kgf定荷重セット率は、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgfにて測定する。
1kgf定荷重セット率もまた、定荷重伸び試験機を用いて測定することができる。
本開示においては、1kgf定荷重セット率は、1kgf定荷重伸び率の測定に用いた試験機を用いて測定する。
測定試料、測定条件も同様である。
1kgf定荷重セット率は、下記式を用いて算出する。
定荷重セット率(%)={(L2-L0)/L0}×100
上記式において、L0は試験前の標線間距離(mm)、L2は除重から10分後の標線間距離(mm)を表す。
上記式により算出された幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率は0.5%~15%であり、0.5%~10%であることが好ましい。
本開示の表皮材は、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgfにて測定した長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率が7%~100%であり、且つ、長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率が0.5%~15%であることが好ましい。
長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率及び1kgf定荷重セット率は、幅方向における方法と同様にして、試験片の幅方向を長さ方向に変えることで測定することができる。
測定された長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率は、7%~100%であることが好ましく、15%~60%であることがより好ましい。
測定された長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率は0.5%~15%であることが好ましく、0.5%~10%であることがより好ましい。
表皮材の幅方向に加え、長さ方向おける23℃条件下の1kgf定荷重伸び率及び長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率がいずれも上記範囲であることにより、本開示の表皮材は、長さ方向及び幅方向における伸縮特性が好適な範囲に調整され、常温での成形加工性がより良好となる。
〔表皮材の層構成〕
次に、表皮材の層構成について説明する。
既述のように、本開示の表皮材は、樹脂を含む表皮層のみからなる単層構造であってもよく、表皮層に加え、他の任意の層を含む多層構造であってもよい。
図1は、本開示の表皮材の一態様を示す概略断面図である。図1に示す表皮材10は、表皮層12及び表皮層12の一方の面に設けられた表面処理層14を有する表皮材10である。図1における表面処理層14は、表皮材10の外観及び触感の少なくとも一方を調整するために設けられる任意の層である。
なお、本開示における各図面において、同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。
図2は、本開示の表皮材の別の態様を示す概略断面図である。図2に示す表皮材20は、図1に示す如き、表皮層12と表面処理層14との積層体において、表皮層12の表面処理層14を有する側とは反対の面に接着層16を有し、接着層16を介して、表皮層と基布18とが接着された層構成を有する。図2に示す表皮材20は、基布18上に、基布18側から、接着層16、表皮層12及び表面処理層14をこの順に有する。図2に示す表面処理層14、接着層16、及び基布18は、所望により設けられる任意の層である。
〔表皮層〕
表皮層は、本開示の表皮材の必須の層である。
表皮層は樹脂を含む層である。
-樹脂-
表皮層に含まれる樹脂には特に制限はなく、シート状に成形加工しうる樹脂であればいずれも使用することができる。樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(以下、PVCと略称することがある)、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系エラストマー樹脂等が挙げられる。
なかでも、23℃条件下の1kgf定荷重伸び率及び1kgf定荷重セット率を好ましい範囲に調整し易く、表皮材に求められる各種性能を得やすいという観点から、ウレタン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
表皮層に含まれるウレタン樹脂としては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン及びこれらの変性物等が挙げられる。なかでも、表皮材に求められる各種性能を達成しやすいという観点からは、ポリカーボネート系ポリウレタンがより好ましい。
表皮層がウレタン樹脂を含む場合のウレタン樹脂としては、JIS K 6253(1997年)に準じて、20℃にて測定した硬さが、100%モジュラスで4MPa(4×10N/m)~40MPaの範囲であることが好ましい。
20℃にて測定した樹脂の硬さが上記範囲にあることで、樹脂を用いて得られる表皮材が好ましい伸縮特性、即ち、定荷重伸び率及び定荷重セット率を好ましい範囲に制御しやすくなる。
なお、ウレタン樹脂の硬さ(100%モジュラス)を調整する方法としては、例えば、柔らかくしたい場合には、ソフトセグメントとなるポリオール成分比率を増加、又はポリオールの分子量を大きくし、硬くしたい場合には、ハードセグメントとなるウレタン結合、ウレア結合を増加させ、またヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)等の架橋剤を添加してエネルギーを付与し、架橋構造を形成する方法等が挙げられる。
表皮層に含まれるPVCとしては、平均重合度650~1800の塩化ビニルホモポリマー、エチレン/塩化ビニルコポリマー等が挙げられる。
-その他の添加剤-
表皮層には、上記樹脂に加えて、必要に応じて、効果を損なわない限りにおいて公知の添加剤を加えてもよい。
表皮層が含み得る添加剤としては、着色剤、架橋剤、架橋促進剤、成膜助剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
-着色剤-
表皮層は、着色剤を含有することができる。着色剤を含有することで、表皮層に所望の色相を付与することができ、意匠性を向上させることができる。
着色剤には特に制限はなく、顔料、染料などから目的に応じて適宜選択して用いることができる。
着色剤としては、チタン白(二酸化チタン)、亜鉛華、群青、コバルトブルー、弁柄、朱、黄鉛、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、キナクリドン、パーマネントレッド4R、イソインドリノン、ハンザイエローA、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料又は染料、アルミニウム及び真鍮等金属の箔粉からなる群より選択される金属顔料、二酸化チタン被覆雲母及び塩基性炭酸鉛の箔粉からなる群より選択される真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。なかでも、耐久性、及び耐光性がより良好であるという観点からは、着色剤としては顔料が好ましい。
表皮層が着色剤として顔料を含む場合には、界面活性剤、高分子分散剤などの顔料分散剤を併用してもよい。
表皮層が着色剤を含む場合の、着色剤の含有量としては、表皮層の全質量に対し、例えば、0.5質量%~50質量%の範囲とすることができ、5質量%~25質量%の範囲であることが好ましい。
-着色剤以外の添加剤-
表皮層は着色剤以外の添加剤をさらに含むことができる。
例えば、表皮層がリン系、ハロゲン系、無機金属系等の公知の難燃剤を含有することで表皮材の難燃性の向上が図れる。
〔表皮層の形成〕
表皮層の形成は、公知の方法で行うことができる。
表皮層は、樹脂、及び所望により含有される着色剤、溶剤等の添加剤を含む表皮層形成用組成物を調製し、得られた表皮層形成用組成物を成形することで形成することができる。
表皮層形成用組成物は、樹脂を溶剤で溶解することで調整することができる。表皮層形成用組成物の調製に用いうる溶剤としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、トルエン等、及びこれらを2種以上混合した混合溶媒が挙げられる。
以下、溶剤は、併記された上記略称で記載することがある。
表皮層は、表皮層形成用組成物を、カレンダー法、ペースト加工法、溶融押出法などの公知の成膜方法で成膜することにより形成することができる。
また、離型紙上に表皮層形成用組成物を付与して形成することができる。ここで、離型紙としては、絞型転写用離型紙、平滑な離型紙のいずれも使用することができ、絞型転写用離型紙を用いることで、表皮層の表面に絞模様と称される凹凸模様を形成することができる。
表皮層の厚みは、表皮材の使用目的に応じて適宜選択される。表皮層の厚みは、成形加工性及び表皮材の風合いがより良好になるという観点から、乾燥後の膜厚として、10μm~500μmが好ましく、20μm~150μmであることがより好ましい。
表皮層を2層以上有する場合、表皮層の厚みは複数の表皮層の総厚みを指す。
基材層の厚み、及び表皮材における後述の各層の厚みは、表皮材を面方向に垂直に切断した切断面を観察することで測定することができる。本開示では、切断面において無作為に選択した表皮層の5箇所の厚みを測定し、算術平均した値を、表皮層の厚みとする。その他の層の厚みも同様に測定することができる。
従って、本開示において、表皮材における各層の厚みは、各層の乾燥後の厚みを指す。
既述の如く、本開示の表皮材は、樹脂を含む表皮層からなる単層構造であってもよい。単層構造の表皮材の場合には、表皮層自体の物性として、幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率が7%~100%であり、且つ、幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率が0.5%~15%であることが好ましい。
単層の表皮材の場合には、表皮層に含まれる樹脂の種類、分子量、含有量、及び所望により含まれる添加剤を含めた表皮層形成用組成物の処方及び厚みを制御することで、上記物性値を達成することができる。表皮層の厚みは、上記範囲において適宜調整される。
〔その他の層〕
本開示の表皮材は、上記表皮層以外の層〔以下、その他の層と称することがある〕を更に有していてもよい。
その他の層としては、例えば、表皮材の基材となる基布、接着層、表面処理層、プライマー層、中間層等が挙げられる。
(基布)
本開示の表皮材は、基布を有していてもよい。
基布としては、必要な強度と柔軟性を有し、得られる表皮材が所定の伸縮特性を有すれば、特に制限なく用いることができる。
基布に用いられる繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール等の合成繊維、綿、麻等の天然繊維等が挙げられ、目的に応じて選択すればよい。
なお、表皮材が基布を有する場合、基布の伸縮特性により表皮材の伸縮特性が影響を受ける場合がある。このため、基布の選定に際しては、強度と柔軟性に加え、基布単独での伸縮特性を考慮して基布を選定することが好ましい。
基布は、織布、編布、及び不織布のいずれであってもよい。なかでも、表皮材の幅方向に一定の伸び特性を持たせ易いという観点から編布が好ましい。
編布としては、経編みであるトリコット編布、ダブルラッセル編布、丸編みである鹿の子編布、インターロック編布、モクロディ編布、横編みであるニット編布等が挙げられ、両面編みの一種であるインターロック編布がより好ましい。
表皮材に用いられる基布の目付は、成形加工性、成形後の外観、及び風合いがより良好であるという観点から、30g/m~400g/mが好ましく、30g/m~300g/mがより好ましい。
基布の目付は、例えば、編布の場合、編布の組織、編成に用いる繊維の太さ、組織、繊維の密度等により調整することができる。
表皮材に用いられる基布の厚みは、成形加工性、成形後の外観、及び風合いがより良好であるという観点から、0.2mm~1.4mmが好ましく、0.2mm~1.0mmがより好ましい。
基布の伸縮特性の観点から、基布は、基布単体を、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を10kgf(98N)にて測定した23℃における10kgf定荷重伸び率は、幅方向で40%~150%であることが好ましく、40%~130%であることがより好ましい。また、基布単体を、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を10kgf(98N)にて測定した23℃における定荷重セット率は、幅方向で0.5%~15%であることが好ましく、3%~10%であることがより好ましい。
さらに、上記と同様にして基布単体で測定した23℃における定荷重伸び率は、長さ方向で40%~150%であることが好ましく、40%~130%であることがより好ましい。また、23℃における定荷重セット率は、長さ方向で0.5%~15%であることが好ましく、3%~10%であることがより好ましい。
上記の方法で測定した基布単体の定荷重伸び率及び定荷重セット率が上記範囲であることで、基布を有する表皮材の定荷重伸び率及び定荷重セット率を既述の物性に調整しやすくなる傾向がある。
基布単独での定荷重伸び率及び定荷重セット率は、既述の表皮材の定荷重伸び率及び定荷重セット率と同様に、ASTM D 3107(2019)に準拠して、定荷重伸び試験機、例えば、(株)大栄科学精器製作所製、FLM-6M(商品名)を用いて測定することができる。測定に際しては、基布を幅80mm、長さ200mmに切断した試験片を用いる。
基布の定荷重伸び率及び定荷重セット率は、下記式を用いて算出する。
定荷重伸び率(%)={(L1-L0)/L0}×100
定荷重セット率(%)={(L2-L0)/L0}×100
上記式において、L0は試験前の標線間距離(mm)、L1は荷重をかけて10分後の標線間距離(mm)、L2は除重から10分後の標線間距離(mm)を表す。
なお、基布を単独で測定する場合の測定条件は、以下の通りである。
標線間隔 100mm
つかみ間隔 150mm
荷重 10kgf(98N)
時間 荷重10分
除重10分
雰囲気温度 23℃±2℃
即ち、基布単独で測定した定荷重伸び率及び定荷重セット率は、表皮材の測定とは、荷重が異なる条件で測定した値である。
(接着層)
本開示の表皮材は、接着層を有していてもよい。例えば、表皮材が基布を有する場合、表皮層と基布との間に接着層を設けることで、基布と表皮層との密着性を向上することができる。また、表皮層と基布との間に任意の層を有する場合にも、基布に隣接して形成される任意の層と基布との接着性を向上することができる。
接着層を構成する接着剤としては、特に制限はなく、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル樹脂等の樹脂を含有する接着剤が挙げられる。
接着剤に含まれるウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン及びこれらの変性物から選ばれる樹脂が挙げられる。
なかでも、表皮材に求められる各種性能が良好となるという観点から、ウレタン樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂を含む接着剤が好ましく、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む接着剤がより好ましい。
接着剤に含まれる樹脂は、基布と隣接する層との密着性、及び成形加工性がより良好であるという観点から、20℃条件下での100%モジュラスが、1.0MPa~6.0MPaであることが好ましく、1MPa~3MPaであることがより好ましい。
接着剤の厚みは、隣接する層同士の接着性がより向上し、風合いがより良好となるという観点から、2.0μm~80.0μmが好ましく、25.0μm~60.0μmがより好ましい。
接着層の厚みは、接着剤の塗布量により制御することができる。
(表面処理層)
本開示の表皮材は、表面処理層を有していてもよい。表面処理層は、例えば、本開示の表皮材が基布を有する場合、表皮層の基布側の面とは反対側の面に表面処理層を有することができる。表面処理層は、一般的には、表皮材の最表面に備えられ、表皮材の外観、風合い(感触)、及び耐摩耗性の少なくともいずれかを向上させる目的で備えられる。
表面処理層に含まれる樹脂としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられ、耐摩耗性及び風合いをより向上させ得るという観点から、ポリウレタンを主成分として含むことが好ましい。
ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、及びこれらの変性物を用いることができる。表皮材に求められる各種性能の観点から、表面処理層は、ポリカーボネート系ポリウレタンを含むことが好ましい。
表面処理層の製造方法には特に制限はなく、上記樹脂を適切な溶媒に溶解して得られた表面処理層形成用組成物、又は、上記樹脂を水系エマルジョン、ディスパージョンの状態で含む表面処理剤組成物を、表皮層の表面に塗布することで形成される。
表面処理層形成用組成物の調整に際し、樹脂の溶解に用い得る非水系有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、トルエン等、及びこれらを2種以上混合した混合溶媒が挙げられる。
水系エマルジョン樹脂又はディスパージョン樹脂は、水系の媒体又は非水系の有機溶媒(又は分散媒)に対して樹脂が均一なエマルジョンの状態で含まれる樹脂分散物である。
樹脂分散物に用いられる水系媒体としては、水、アルコール等、及びこれらを2種以上混合した混合媒体が挙げられる。樹脂分散物に用いられる非水系溶媒は、上記溶媒を同様に使用することができる。
表面処理層は、既述の樹脂及び溶媒(分散媒)に加え、他の成分を含有することができる。
他の成分としては、架橋剤、有機フィラー、滑剤、難燃剤等が挙げられる。例えば、表面処理層が有機フィラー、滑剤等を含有することで、表皮材に滑らかな感触が付与され、耐摩耗性がさらに向上する。
表面処理層の厚みは、表皮材の耐摩耗性及び風合いの向上効果を十分に得られるという観点からは、1.0μm~10.0μmの範囲が好ましく、1.0μm~7.5μmの範囲がより好ましい。
(表皮材の製造方法)
本開示の表皮材の製造方法には特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。
本開示の表皮材が単層構造の表皮材である場合には、表皮層の形成方法に従い、好ましくはウレタン樹脂を含有する層を、押出法、塗布法などの既述の公知の方法で形成すればよい。
本開示の表皮材が多層構造の場合には、例えば、まず、離型紙表面に表皮層を形成し、その後、任意の層を順次設ける方法をとることができる。
多層構造の表皮材が、基布を有する場合には、準備された基布に対し、離型紙表面に形成された表皮層と、所望により形成された接着層との積層体の接着層を有する側を接触させ、加圧密着させて表皮材を得る方法が挙げられる。
表皮層の形成には、離型紙を用いても用いなくてもよい。離型紙は、公知の離型紙を目的に応じて、適宜選択して用いることができる。離型紙は、絞型転写用離型紙を用いてもよく、平滑な離型紙を用いてもよい。
離型紙の表面に表皮層を形成する方法は、公知の方法を適用することができる。一般的には、表皮層を形成する方法として、既述の表皮材を形成するための組成物を離型紙表面に付与し、乾燥して表皮層を形成する方法が挙げられる。また、絞型転写に支障がない場合には、表皮層を離型紙表面に転写法により設けてもよい。
任意の層である接着層は、表皮層の表面に、既述の接着層形成用組成物を付与することで形成することができる。表皮層表面に接着層形成用組成物を付与する方法は、塗布法でも転写法でもよい。
積層体と基布とを加圧密着させる際、加熱処理を行なってもよく、加圧密着後に加熱処理を行なってもよい。
基布と、接着層と表皮層とを含む積層体との加熱は、公知の方法により行なうことができる。加熱手段には特に制限はなく、熱ロールを用いた加熱、温風加熱、加熱乾燥炉内での加熱など、公知の加熱手段を用いればよい。
ここで、接着層が未硬化のうちに、基布と接着層とを密着させ、加熱処理を行なうことも好ましい態様の一つであるといえる。表皮層表面に形成された接着層が未硬化のうちに、基布と接触させ、加圧密着させることで、基布に含まれる繊維の一部が接着層内に侵入し易くなり、接着層と基布との密着性がより向上する。さらに、その後の加熱処理により、接着層の硬化が進行することで、基布との密着性が向上し、得られた表皮材において、基布と表皮層との剥離強度がより良好となる。
加熱処理により、接着層、及び表皮層が硬化した後、表皮層の表面より離型紙を剥離することによって表皮材を得ることができる。
なお、上記表皮材の製造方法は、一例であり、その他の公知の表皮材の製造方法を適用してもよい。
本開示の表皮材は、好ましい伸縮特性を有するため、常温加工性が良好であり、各種の立体成形物の表面に適用して良好な外観を与えることができ、その応用範囲は広い。
本開示の表皮材を適用し得る立体成形物としては、自動車、鉄道等の車輌内装材、家具、航空機、船舶、建装、壁装などが挙げられ、本開示の表皮材は、種々の成形体の加飾に好適に使用し得る。
以下、実施例を挙げて本開示の表皮材について具体的に説明するが、本開示は以下の具体例に制限されるものではない。
以下の実施例において、濃度及び各成分の含有量を示す「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
〔実施例1〕
(工程I:表皮層の形成)
下記処方に従い各成分を充分に混合し、固形分約13%の表皮層形成用組成物1を得た。下記「(1)1液型樹脂固形分20%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂」が表皮層における主剤樹脂である。
(表皮層形成用組成物1 処方)
(1)1液型樹脂固形分20%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂
(20℃条件下の100%モジュラス:5MPa) 100質量部
(2)溶剤(DMF) 20質量部
(3)溶剤(PGM) 15質量部
(4)溶剤(IPA) 5質量部
(5)着色剤(黒色顔料:カーボンブラック) 15質量部
離型紙に、前記表皮層形成用組成物1を、ナイフコート塗工装置を用いて、ウェット塗布量が150g/mとなるように塗布した。
形成された表皮層形成用組成物1の塗布層を、100℃で2分間、熱風乾燥機を用いて乾燥して、離型紙上に表皮層を形成した。表皮層の乾燥後の膜厚は約20μmであった。
(工程II:表皮層の熟成と離型紙の剥離)
工程Iで形成された表皮層を、50℃で48時間熟成後、離型紙を剥離した。
(工程III:表面処理層の形成)
下記処方に従い各成分を充分に混合し、固形分約14%の表面処理層形成用組成物1を得た。
(表面処理層形成用組成物1 処方)
(1)1液型樹脂固形分15%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂
100質量部
(2)溶剤(MEK) 5質量部
工程IIにおいて得た離型紙を剥離した後の表皮層の一方の面に、上記で得た表面処理層形成用組成物をウェット塗布量10g/mとなるように塗布した。
熱風乾燥機を用いて90℃で1分間加熱し、表皮層上に厚み1.4μmの表面処理層を形成した。
このようにして、表皮層と表面処理層を有する、図1に示す層構成の実施例1の表皮材を得た。
〔実施例2〕
実施例1の工程Iにおいて表皮層の形成に用いた表皮層形成用組成物1における(1)ポリウレタン樹脂(主剤樹脂)を、(1-2)1液型樹脂固形分30%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂(20℃条件下の100%モジュラス:10MPa)に変更し、固形分約16%の表皮層形成用組成物2を得た。
表皮層形成用組成物1を、表皮層形成用組成物2に変えた以外は、実施例1と同様にして、表皮層と表面処理層を有する実施例2の表皮材を得た。
〔実施例3〕
実施例1の工程Iにおいて表皮層の形成に用いた表皮層形成用組成物1における(1)ポリウレタン樹脂(主剤樹脂)を、(1-3)1液型樹脂固形分20%のポリエステル系ポリウレタン樹脂(20℃条件下の100%モジュラス:35MPa)に変更し、固形分約13%の表皮層形成用組成物3を得た。
表皮層形成用組成物1を、表皮層形成用組成物3に変えた以外は、実施例1と同様にして、表皮層と表面処理層を有する実施例3の表皮材を得た。
〔実施例4〕
実施例1の工程Iの後、工程IIの前に、下記工程IV、及び工程Vをこの順に実施した。
(工程IV:接着層の形成)
下記処方に従い各成分を充分に混合し、固形分約45%の接着層形成用組成物1を得た。
(接着層形成用組成物1 処方)
(1)2液型樹脂固形分70%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂
(20℃条件下の100%モジュラス:2.5MPa) 100質量部
(2)溶剤(DMF) 50質量部
(3)イソシアネート系架橋剤 6質量部
前記工程Iで得た、離型紙上に形成された表皮層表面に、接着層形成用組成物1をウェット塗布量100g/mとなるように塗布して塗布層を形成した。
塗布層を、熱風乾燥機を用いて120℃で2分間加熱し、表皮層の面に厚み45μmの接着層を形成した。
(工程V:基布の貼合せ)
基布として、インターロック編布(目付:110g/m、厚み:0.7mm)を準備した。
工程IVで形成した接着層と、準備した上記基布とを貼合せてラミネートした。ラミネート時の加熱温度は130℃とした。
(基布の伸縮特性)
実施例4で用いたインターロック編布について、基布単独で、ASTM D 3107(2019)に準拠して、幅方向及び長さ方向における23℃条件下の10kgf定荷重伸び率と、幅方向及び長さ方向における23℃条件下の10kgf定荷重セット率を測定した。結果を下記表1に示す。
その後、実施例1の工程IIIと同様にして、表皮層の接着層とは反対側の面に表面処理層を形成し、基布上に、接着層、表皮層及び表面処理層をこの順で有する、図2に示す層構成の、実施例4の表皮材を得た。
〔実施例5〕
実施例4で用いたインターロック編布に代えて、基布として、モクロディ編布(目付:390g/m、厚み:1.2mm)を用いた以外は、実施例4と同様にして、基布上に、接着層、表皮層及び表面処理層をこの順で有する実施例5の表皮材を得た。
実施例5で用いたモクロディ編布の伸縮特性を、実施例4と同様にして測定した。結果を下記表1に示す。
〔実施例6〕
実施例4で用いたインターロック編布に代えて、基布として、トリコット編布(目付:280g/m、厚み:0.9mm)を用いた以外は、実施例4と同様にして、基布上に、接着層、表皮層及び表面処理層をこの順で有する実施例6の表皮材を得た。
実施例6で用いたトリコット編布の伸縮特性を、実施例4と同様にして測定した。結果を下記表2に示す。
〔実施例7〕
(工程I:表皮層の形成)
下記処方に従い各成分を充分に混合し、固形分約100%の表皮層形成用組成物4を得た。下記「(1)ポリ塩化ビニル樹脂(平均重合度1300)」が、表皮層形成用組成物4における主剤樹脂である。
(表皮層形成用組成物4 処方)
(1)ポリ塩化ビニル樹脂(平均重合度1300)
(20℃条件下の100%モジュラス:7MPa) 100質量部
(2)可塑剤(フタル酸ジアルキル) 75質量部
(3)安定剤(Ba-Zn系複合安定剤) 2質量部
(4)充填剤(重炭酸カルシウム) 10質量部
(5)着色剤(黒色顔料:カーボンブラック) 5質量部
離型紙に、表皮層形成用組成物4を、ナイフコート塗工装置を用いて、ウェット塗布量が150g/mとなるように塗布した。
形成された表皮層形成用組成物4の塗布層を、100℃で2分間、熱風乾燥機を用いて乾燥して、離型紙上に表皮層を形成した。表皮層の乾燥後の膜厚は約150μmであった。
得られた表皮層を用いた以外は、実施例1と同様にして、表皮層と表面処理層とを有する実施例7の表皮材を得た。
〔比較例1〕
実施例1の工程Iにおいて表皮層の形成に用いた表皮層形成用組成物1における(1)ポリウレタン樹脂を、(1-C1)1液型樹脂固形分20%のポリエステル系ポリウレタン樹脂(20℃条件下の100%モジュラス:2MPa)に変更し、固形分約13%の表皮層形成用組成物C1を得た。
表皮層形成用組成物1を、表皮層形成用組成物C1に変えた以外は、実施例1と同様にして、表皮層と表面処理層を有する比較例1の表皮材を得た。
〔比較例2〕
実施例1の工程Iにおいて表皮層の形成に用いた表皮層形成用組成物1における(1)ポリウレタン樹脂を、(1-C2)1液型樹脂固形分20%のポリエステル系ポリウレタン樹脂(20℃条件下の100%モジュラス:50MPa)に変更し、固形分約13%の表皮層形成用組成物C2を得た。
表皮層形成用組成物1を、表皮層形成用組成物C2に変えた以外は、実施例1と同様にして、表皮層と表面処理層を有する比較例2の表皮材を得た。
〔比較例3〕
実施例4で用いたインターロック編布に代えて、基布として、織布(目付:365g/m 厚み:0.95mm)を用いた以外は、実施例4と同様にして、基布上に、接着層、表皮層及び表面処理層をこの順で有する比較例3の表皮材を得た。
比較例3で用いた基布としての織布の伸縮特性を、実施例4と同様にして測定した。結果を下記表2に示す。
[表皮材の評価]
実施例1~実施例7及び比較例1~比較例3の表皮材について、以下の項目を評価した。結果を表1~表2に示す。
(1.幅方向、長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率及び1kgf定荷重セット率の測定)
既述の方法により、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgfにて、表皮材の、幅方向と長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率及び1kgf定荷重セット率を測定した。
(2.耐光性の評価)
JIS D 0205(1987年)に準拠して、以下の条件にて耐光試験を行い、試験前後の表皮材を目視で観察し、以下の基準により評価した。
試験機:耐光性試験機(スガ試験機(株)製 U48AUH(商品名))
(試験条件)
ブラックパネル温度 83℃
時間 400時間
放射照度 500W/m(300nm~700nm)
(評価基準)
A:表皮材に目視で検知できる変色なし
B:表皮材に目視でわずかに変色が確認される
C:表皮材が明らかに変色している
上記評価基準で、レベルA及びBは、実用上問題のないレベルであり、レベルAが好ましい。
(3.耐湿熱性の評価)
JIS C 60068-3-4(2004年)に準拠して耐湿熱性試験を行った。
試験機:恒温恒湿試験機(エスペック(株)製PL-3J(商品名))
(試験条件)
温度・湿度 70℃×95%RH
時間 840時間
(評価方法)
耐湿熱性試験の前後に、表皮材の引張試験を行い、試験前の強度に対する試験後の強度保持率(%)を算出した。
引張試験は、JIS K 7139(2009年)に準拠して実施した。
試験機:引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフAGS-100NX(商品名))
(測定条件)
試験片 幅30mm 長さ150mm
つかみ間隔 100mm
つかみ幅 50mm
引張速度 100mm/min
(評価基準)
A:強度保持率が80%以上
B:強度保持率が50%以上~80%未満
C:強度保持率が50%未満
上記評価基準で、レベルA及びBは、実用上問題のないレベルであり、レベルAが好ましい。
(4.成形加工性)
圧着成形機(アズワン(株)製 HC300-05(商品名))を用いて、圧着成形を以下の条件で行った。
表皮材の表面温度は23℃に調整した。
成形型として、図3に斜視図で示す成形型Aと、図4に斜視図で示す成形型Bを用いた。それぞれの型に併記された符合Mは表皮材の長さ方向を、Cは表皮材の幅方向を、それぞれ示す。
成形型Aは、長さ方向に平行であり、頂部が平滑な凸部を有し、成形型Bは、四角錐台が長さ方向、幅方向に密に形成された凸部を有し、成形型Bは、成形型Aと比較して、左右方向(幅方向)へ、より複雑な形状を有する。
成形体の基体としては、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)樹脂製の基体を用い、基体の表面にクロロプレン系接着剤を150g/m塗布した後、乾燥した基体を適用した。
表皮材のセット方向としては、表皮材の幅方向を、成形型のC方向としてセットした。
成形型の温度は、40℃(表面の測定温度)、成形圧力は、0.25tとして、加圧時間は60秒とした。
上記の条件にて、成形型内に、加飾前の成形体(成形体の基体)を配置し、成形体の接着剤を塗布した面に、得られた表皮材を積層し、前記圧着成形機を用いて、成形型による成形体への凹凸形状の形成と、成形体への表皮材の圧着とを同時に行い、表面を表皮材にて加飾された、表面に凹凸形状を有する成形品を得た。
得られた成形品の外観を、目視により、以下の基準にて評価した。
(評価基準)
A:目視で確認できるシワ及びたるみ発生なし
B:目視により、若干のシワ又はたるみが観察された
C:シワ及びたるみの発生が著しく、外観に問題があった
上記評価基準で、レベルA及びBは、実用上問題のないレベルであり、レベルAが好ましい。
Figure 2022030903000002

Figure 2022030903000003

表1及び表2の結果より、実施例1~実施例7の表皮材は、いずれも、耐光性、耐湿熱性及び常温における成形加工性が良好であり、実用上問題のないレベルであった。
これに対し、定荷重伸び率が大きすぎる比較例1、及び定荷重伸び率が小さすぎる比較例2は、いずれも成形加工性に劣っていた。また、表皮層が良好であっても、伸縮特性に劣る基布を用いた比較例3は、定荷重伸び率が本開示の規定を満たせなかったため、耐光性、耐湿熱性は良好であるが、成形加工性に劣ることがわかる。
以上の結果より、実施例の表皮材は、特段の加熱を行うことなく成形した場合の成形加工性が良好であり、耐光性、及び耐湿熱性にも優れることから、成形体の表皮材として好適であることが期待できる。
10、20 合成樹脂表皮材(表皮材)
12 表皮層
14 表面処理層
16 接着層
18 基布

Claims (6)

  1. 樹脂を含む表皮層を有し、
    ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgfにて測定した幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率が7%~100%であり、且つ、幅方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率が0.5%~15%である合成樹脂表皮材。
  2. 前記合成樹脂表皮材は、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を1kgfにて測定した長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重伸び率が7%~100%であり、且つ、長さ方向における23℃条件下の1kgf定荷重セット率が0.5%~15%である請求項1に記載の合成樹脂表皮材。
  3. 前記樹脂は、ウレタン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂表皮材。
  4. さらに、基布を有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の合成樹脂表皮材。
  5. 前記基布は、編布である請求項4に記載の合成樹脂表皮材。
  6. 前記基布は、基布単体を、ASTM D 3107(2019)に準拠して荷重を10kgfにて測定した幅方向における23℃条件下の10kgf定荷重伸び率が40%~150%であり、且つ、幅方向における23℃条件下の10kgf定荷重セット率が0.5%~15%である編布である請求項4又は請求項5に記載の合成樹脂表皮材。
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