JP2022024213A - 投与計画提案システム、方法およびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した投与計画をユーザに提案する投与計画提案システムを提供する。【解決手段】投与計画提案システム1において、情報取得部21は、患者に投与する医薬及びび投与量を表す医薬情報、医薬及び遺伝型の関連性を表す関連性情報並びに患者の遺伝型を表す遺伝型情報を取得する。適合度決定部22は、医薬情報の適合度を関連性情報および遺伝型情報に基づいて決定する。医薬情報変更部23は、適合度が低いとき、医薬情報に変更を加える。表示装置3は、医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する。【選択図】図2

Description

本発明は、医薬の投与計画をユーザに提案するシステムに関し、より詳細には、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した医薬の投与計画を、ユーザに提案するシステムに関する。
遺伝子の機能と、医薬の有効性との関連性は、以前から指摘されている。また、特定患者の情報を活かして、当該特定患者に即した医薬を処方することの提案は、これまでにある(例えば特許文献1)。
特開2016-218684号公報(2016年12月22日公開)
しかし、ある疾患に有効と考えられている薬剤が実際に特定の患者にとって安全かつ有効かを、患者の遺伝情報を利用して判断するシステムさえ、実際には提案されるに至っていない。それは、1つの疾患に薬効を有していることが知られている薬剤は複数あるし、1つの薬剤の薬効または副作用に影響する遺伝子は複数あるし、1遺伝子の機能の発現には、複数の他の遺伝子が関与することが、よく知られているからである。
したがって、医師が作成する現状の院外処方箋および院内処方箋(薬剤の種類、用量および用法が指定されている)には、一律の要因(主に、患者が患っている疾患の種類、当該疾患の重症度ならびに患者の年齢、体重および性別など)が依然として適用されている。このような処方箋は、個々の患者に適した薬剤の種類、その用量および用法を指定できていないことを意味し得る。実際に、処方箋通りに薬剤を用いた複数の患者は、大きく異なる反応を示す。当該反応には、薬剤が患者に悪影響のみを与える(副作用のみを示し、かつ薬効を示さない)ことも含まれ得ると指摘されている。
処方箋にしたがって患者が用いる薬剤のほかに、患者への投与または使用に、医療従事者の管理を要する薬剤およびそれ以外の物質(麻酔薬など)がある。当該薬剤または物質の投与または使用は、過剰な反応を一部の人に引き起こし得、副作用をしばしばともなうことがよく知られている。例えば、英国のある研究では、医療施設の入院患者のうち約7%がなんらかの副作用を生じていると、報告されている。上述の過剰な反応または副作用は、重大な結果(身体障害、回復不能な損傷、先天的な異常の顕在化または死亡)を患者にもたらす。過剰な反応または副作用による死亡者は、米国では年間約10万人に上る。
以上の通り、医療全般に用いられている薬剤および物質の有効性は、大きな個体差を示す。国から承認を受けている(有効性および安全性について一定以上の条件を満たす)薬剤または物質でさえ、投与または使用を受けた患者のすべてに有効であることは少ない。つまり、現状では、薬効を示し得ない薬剤の投与を受けている患者、および薬効を示すには不適切な量の薬剤の投与を受けている患者がいるということである。
なかでも精神疾患の治療に使われる薬剤は、相対的に低い薬効を示す。薬効の低い薬剤の投与は、回復を遅らせ、治療費を増大させるので、患者に身体的、精神的または経済的な負担を強いる。これらの負担の他に、上述の通り、薬剤の副作用は、疾患と本来的に無関係な苦痛を生じ得る。
薬剤の有効性や副作用に関する個体差は、疾患の種類、環境要因(生活様式など)および/または服用している薬剤の組み合わせなどの影響よりも、ヒト集団における遺伝学的な多様性に、多く起因する。
したがって、本発明の一態様は、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した薬剤の投与計画をユーザに提案することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシステムは、患者にとって好適な投与計画を提案するシステムであって、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに
上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部
を備えている。
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る方法は、患者にとって好適な投与計画を提案する方法であって、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得工程;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得工程;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得工程;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定工程;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更工程;ならびに
上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示工程
を含んでいる。
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る投与計画提案プログラムは、
患者にとって好適な投与計画を提案するシステムとしてコンピュータを機能させるための投与計画提案プログラムであって、
上記システムは、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに
上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部を備えており、
上記医薬情報取得部、上記関連性情報取得部、上記遺伝型情報取得部、上記適合度決定部、上記医薬情報変更部および上記情報提示部としてコンピュータを機能させる。
本発明の一態様によれば、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した医薬の投与計画を提案できる。
本発明の概念を模式的に示す図である。 本発明の実施形態1に係るシステムの構成を表す図である。 上記システムが実行する処理の一例を示す図である。 医薬情報、変更医薬情報および関連性情報の例を示す図である。 本発明の実施形態2に係るシステムの構成を表す図である。 上記システムが実行する処理の他の例を示す図である。 医薬情報および関連性情報の他の例を示す図である。 本発明の実施形態3に係るシステムの構成を表す図である。 ヒトゲノムにおける任意のDNAバリアントのアレルの型(遺伝型)を決定するための文字列の構造を表す模式図である。 ゲノム配列上に存在するDNAバリアント(SNPを含む)のアレルの型(遺伝型)を決定する方法の一例を示す図である。
本発明の一態様は、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者にとって好適な投与計画を提案するシステムであって、上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部を備えている。
「投与計画」は、特定患者を表す情報、ならびに当該特定患者に投与する医薬の種類および投与量を表す情報を少なくとも含んでいる。上記投与計画は、上記特定患者に対してある投与量においてある医薬を投与することを示す指針(例えば処方箋)である。上記システムは、患者にとって好適な投与計画(オーダーメイド投与計画)を作成することによって、医療従事者(特に医師)の判断を補助するシステムである。
「医薬」は、本明細書では、投与を受けた患者において薬効を発揮することによって、疾患における症状の改善を直接的に生じさせる医薬、または医療行為を補助する目的(検査および麻酔など)に使用される物質(造影剤および麻酔剤など)を表す。
「遺伝型」(genotypeとも呼ばれる)は、個体全体または個体の特定の座位の遺伝的構成であり、本明細書では、ゲノムにおける1つ以上の座位にあるアレル(対立遺伝子)の組み合わせの型(2つ以上の座位を遺伝型の対象にするとき、各型の総和)を指す。「アレル」は、本明細書では、1本の染色体のうち、1つの座位に存在する個々の遺伝子およびDNA配列を指す。「遺伝型」または「アレルの型」と記載した場合は、本明細書では、「接合型」を含む概念として用いる。
「医薬情報」は、患者を特定する情報(例えば患者のID番号)、医薬を特定する情報(例えば医薬の商品名または物質名)、および患者に対する医薬の投与量を指定する情報を少なくとも含んでいる情報を表す。医薬情報は、例えば医師がコンピュータ上で作成するカルテまたは処方箋であり得る。
「関連性情報」は、医薬の種類、および生体内における当該医薬の作用に影響する遺伝子(群)の関連性を表している情報を指す。
「(医薬情報の)適合度」は、医薬情報に特定されている患者に固有の遺伝型を基準とした、当該患者と、医薬情報に特定されている医薬の種類および/またはその投与量との関係が適切である程度を表す。
「DNAバリアント(DNA variant)」は、本明細書では、ヒト集団において(その頻度に関わらず)、ヌクレオチド配列(アレルならびに染色体構造を含む)の変化が2つ以上存在するゲノム上の特定部位ならびにその変化の総体の概念として記載する。上記「DNAバリアント」におけるヌクレオチド配列の変化とは、1ヌクレオチド以上の置換、欠失、挿入および/または付加、重複を含め、あらゆる変化の総体を意味する(図1の下部を参照)。
上記「DNAバリアント」のうち、集団内で頻度の高い(1%以上)変化であるとき「多型(P:Polymorphism)」と呼び、例えば、1塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism、以降では「SNP」と記載する)、コピー数多型(Copy Number Polymorphism、以降では「CNP」と記載する)、マイクロサテライト多型(短鎖縦列反復配列: Short Tandem Repeat Polymorphism 、以降では「STRP」と記載する)がある。また、集団内で頻度の低い(1%未満)変化であるとき「バリアント(V:Variant)」と呼び、例えば、1塩基バリアント(Single Nucleotide Variant、以降では「SNV」と記載する)、コピー数バリアント(Copy Number Polymorphism、以降では「CNV」と記載する)がある。なお、本明細書では、上記「DNAバリアント」は、上述の通り、ヒト集団における頻度によらず、「多型」および「バリアント」を含む概念として記載する(図1の下部を参照)。
1つの座位にある接合型を含むアレルの組み合わせの型(「アレルの型」)の総体は、各アレルのヌクレオチド配列および/または当該組み合わせに含まれているアレルの数によって決まる。上記ヌクレオチド配列の少なくとも1つがヒト集団に最も多い野生型ヌクレオチド配列ではない、および/または上記アレルの数が通常の2つでない、患者(つまり上記型が通常でない患者)に対する上記医薬の投与は、当該患者に所望されない影響を生じ得る。当該所望されない影響は、例えば、上記型が通常の患者と比べたときの、(a)上記医薬の薬効の低下、喪失もしくは過剰な上昇、(b)上記医薬による副作用の発現もしくは増大、および/または(c)上記医薬の投与前に生じていない特定疾患の高い発症率である。しかし、実際には、後述の〔実施形態2〕に例示する通り、上記所望されない影響は、1つの上記「アレルの型」のみでは現れず、多数の座位についての多数の「アレルの型」によって累積されたときに現れることが多い。
したがって、図1に示すように、上記システムは、上述した一律の要因にしたがって医師が指定した患者Aに対する医薬Bの投与計画(投与量Cの指定が含まれている)を、上記悪影響が患者Aの遺伝型情報に合わせて抑えられているオーダーメイド投与計画(例えば医薬B’および投与量C’)に変更する提案を行う。投与計画を変更するための判断基準としては、(1)医薬Bの薬物動態学的要因、(2)医薬Bの薬力学的要因および(3)医薬Bによる副次疾患の発症リスクが挙げられる。後述する〔実施形態1〕では、(1)および(2)を上記判断基準にする例を説明する。後述する〔実施形態2〕では、(3)を上記判断基準にする例を説明する。後述する〔実施形態3〕では、(1)~(3)の組み合わせを上記判断基準にする例を説明する。なお、「薬物動態学(pharmacokinetics)」は、ある薬物と標的分子とが接触する確率を変化させる、薬物またはその代謝物の生体内における挙動を表し、「薬力学(pharmacodynamics)」は、ある物質(薬物)が生体内の標的物質に作用する強度を表す。上記「薬物動態学」および「薬力学」については、関連タンパク質の特徴とともに、〔実施形態1〕にも後述されている。
(1)および(2)は、患者に投与される医薬Bの化学構造が、患者の体内で発現されているタンパク質と相互作用する程度(医薬Bの薬物動態学的要因または薬力学的要因)を適切に制御するために、利用される。(3)は、患者に固有の遺伝学的背景に基づくある疾患の発症リスクを、医薬の投与(人為行為)によって顕在化(つまり当該疾患を発症)させないために、利用される。
図1の(発明のシステム)にあるグラフは、ある特定の疾患の発症リスクを視覚的に示している。当該グラフでは、ヒト母集団における遺伝的背景の頻度を縦軸に、各遺伝的背景と相関するある疾患への感受性(罹りやすさ)を横軸にしたとき、1つの疾患に対するヒト母集団の発症リスクはおよそ正規分布をとることが示されている。グラフに示す通り、ヒト母集団のうち、閾値の右側に存在する集団(横軸、閾値の破線および曲線に囲まれる部分/横軸および曲線に囲まれる部分)が、ある疾患を発症しやすい遺伝的背景を有している(例えば、Falconer DS (1965) The inheritance of liability to certain diseases estimated from the incidence among relatives. Ann Hum Genet 29:51-76; doi 10.1111/j.1469-1809.も参照)。ただし、閾値の右側に存在するヒト個体A1およびA2は、高い発症リスクを有しているだけで、実際に発症しているとは限らない。A1およびA2は非常に近い発症リスクを有している。しかし、例えば、A1は未発症であるが、A2は発症していることがあり得る。疾患の発症には種々の要因が関与するが、医薬の投与(ある疾患の遺伝的素因を疾患の発症につなげる人為的な環境要因)が未発症のA1にある疾患を発症させることを防ぐ目的で、上記(3)は利用される。
患者Aの遺伝型情報は、一例として、以下に示す2つの異なる方法により決定し得る(図1の下部参照)。例えば、当該患者から得られたゲノムの全ヌクレオチド配列を表す文字列(4種類のアルファベットATGCによって表記される約30億文字、以降では「全長文字列」と記載する)のうち、少なくとも1つの座位に存在する既知のDNAバリアントを含む部分ヌクレオチド配列を表す文字列(以降では「アレル文字列」と記載する)を抽出する。次いで、当該文字列を、標準的なヒトゲノムの全ヌクレオチド配列を表す全文字列(4種類のアルファベットATGCによって表記される約30億文字、以降では「参照文字列」と記載する)と比較し、当該DNAバリアントのアレルの組み合わせの型(患者の「遺伝型」)を特定することによって決定され得る。なお、参照文字列は、アンサンブル(Ensembl、URL:http://ensembl.org)をはじめとした公共のデータベースから取得可能である。あるいは、別の方法として、患者Aの遺伝型情報は、例えば、当該患者から得られたゲノムDNA試料の一部を、現行のマイクロアレイ技術(ゲノム網羅的な多型解析技術)などを用いて、「参照文字列」に対応する既知の全SNPを含むヌクレオチド配列からなる各断片と、ストリンジェントな条件(完全マッチの配列のみを許容する条件(温度、塩濃度))でハイブリダイズさせることによって、実験的手法により決定され得る。なお、患者の「遺伝型」情報の決定方法の詳細については、各実施形態内にも後述されている(特に、〔実施形態4〕においては、上記「全長文字列」を用いた情報解析による決定法について、具体例も含め、詳述されている)。
本発明の係るいくつかの実施形態を、以下に詳細に説明する。
〔実施形態1〕
本実施形態では、上記適合度が、上記患者に生じると予想される上記医薬の薬効に基づいて判断されることを例に説明する。本実施形態のシステムは、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子が存在する座位および当該遺伝子に関連する座位にある接合型を含むアレルの組み合わせの型(「アレルの型」)を、上記遺伝型として少なくとも参照する。つまり、本実施形態のシステムは、当該遺伝子に関連する遺伝型(「アレルの型」)が上記医薬の薬効に影響する程度を表す情報(医薬薬効関連遺伝子情報)を参照して、上記適合度を決定する。
(薬物動態学および薬力学に関与するタンパク質)
薬物の薬効は、薬物動態学に関与するタンパク質および/または薬力学に関与するタンパク質の遺伝学的多様性によって部分的に決定される。薬物動態学に関与するタンパク質としては、例えば、薬物の吸収、循環、送達、代謝および排泄に関与するタンパク質が挙げられる。つまり、薬物動態学は、薬物と標的分子とが接触する確率を変化させる、薬物またはその代謝物の生体内における挙動を指す。薬力学に関与するタンパク質は、薬物の標的分子であり得る。当該標的分子としては、例えば、受容体、シグナル分子、および薬物の薬理遺伝学的作用に関連する生物学的経路を構成するタンパク質が挙げられる。
図2に示すように、投与計画提案システム(患者にとって好適な投与計画を提示するシステム)1は、コンピュータに内蔵されている制御部2、および表示装置(情報表示部)3を備えている。制御部2(図2)は、図2の情報取得部(医薬情報取得部、関連性情報取得部および遺伝型情報取得部)21、適合度決定部22および医薬情報変更部23を備えている。図2の情報取得部21、適合度決定部22および医薬情報変更部23は、制御部2(図2)におけるCPU(Central Processing Unit)に含まれている。制御部2(図2)は、図2の入力装置4(例えばキーボードおよび/またはマウス)、医薬薬効関連遺伝子情報DB5およびゲノム情報DB6と接続されている。図2の投与計画提案システム1は、入力装置4および上記の2つのDB(データベース:すなわち、医薬薬効関連遺伝子情報DB5およびゲノム情報DB6)から取得した情報に基づいて制御部2(図2)によって生成された情報を、表示装置3(図2)を介してユーザに出力するシステムである。
(投与計画提案システム1の処理)
医薬の有効性を向上させるために、図2の投与計画提案システム1が実行する処理の一例を、図3を参照して以下に説明する。入力装置4(図2)は、従来の一律の要因(主に、患者が患っている疾患の種類、当該疾患の重症度ならびに患者の年齢、体重および性別など)にしたがって、ユーザである医師によって入力された医薬情報301(図4)を情報取得部21(図2)に送る(図3のS1工程)。図2の情報取得部21は、医薬情報301(図4)に含まれている医薬名が表す薬剤の名称と、当該薬剤の薬効と関連する遺伝子の名称と、当該遺伝子に関連する既知のDNAバリアント(例えばSNP)における全通りの「遺伝型」と、当該遺伝型に応じた当該薬剤の薬効とを記述している関連性情報311(図4)を、図2の医薬薬効関連遺伝子情報DB5(例えば、DGIdb:Drug Gene Interaction database、URL:http://dgidb.org/の情報を元に構築可能)から取得する(図3のS2工程で「YES」)。図2の情報取得部21は、医薬情報301(図4)に記載された「患者ID」情報、および関連性情報311(図4)に含まれている遺伝子名に基づいて、患者IDおよび遺伝子に対応する患者の遺伝型情報を、図4の関連性情報311に記載の「遺伝型」の表記法にしたがった記号として、ゲノム情報DB6(図2)から取得する(図3のS3工程で「YES」)。情報取得部21(図2)は、取得した医薬情報301(図4)、関連性情報311(図4)、およびゲノム情報DB6(図2)から取得した患者の遺伝型情報を適合度決定部22(図2)に送る。
なお、図3のS2工程で「NO」(例えば、開発されてから間もない薬剤であるため、関連性情報が存在しない)のとき、図2の情報取得部21は、医薬情報301(図4)を表示装置3(図2)に送る(図3のS9工程)。図2の表示装置3が上記医薬情報を表示し、投与計画提案システム1(図2)は処理を終了する。また、図3のS3工程で「NO」(例えば、患者における特定の遺伝子に対応する遺伝型情報が、まだ決定されていない)のとき、情報取得部21(図2)は、医薬情報301(図4)を表示装置3(図2)に送る(図3のS9工程)。表示装置3(図2)が上記医薬情報を表示し、図2の投与計画提案システム1は処理を終了する。
図2の適合度決定部22は、関連性情報311(図4)およびゲノム情報DB6(図2)から情報取得部21(図2)を介して取得した患者の遺伝型情報に基づいて医薬情報301(図4)の適合度を決定する(図3のS4工程)。図3のS4工程の詳細を、図4を参照して説明する。
図4に示されている関連性情報311は、医薬名に対応する有効成分(医薬名:フェニトイン(抗てんかん薬))、当該有効成分の薬物動態学に関与するタンパク質をコードする遺伝子(関連遺伝子:CYP2C9(薬剤代謝酵素遺伝子))、当該遺伝子上に存在する既知のSNP(SNP部位:rs1057910)、SNP(rs1057910)における記号化された「遺伝型」の総体(遺伝型:「*1/*1」、「*1/*3」および「*3/*3」)、および各遺伝型に対応する有効成分の代謝率(薬効に対応)(代謝率(薬効):「±0」、「-1」および「-2」)を含んでいる関連性情報を示している。フェニトインは、強直間代発作(全般痙攣発作、大発作)、焦点発作(ジャクソン型発作を含む)などのてんかんの痙攣発作、自律神経発作、精神運動発作などの症状を緩和する効果を示す薬剤である。
関連性情報311(図4)では、CYP2C9のコード領域内の1075位にSNP(rs1057910)が存在し、その遺伝型のタイプ「*1」は野生型アレルを表し、実際のヌクレオチドの塩基の種類は「アデニン(A)」である。また、遺伝型のタイプ「*3」は、フェニトインの代謝率が低下することが知られている低代謝型アレルを表し、実際のヌクレオチドの塩基の種類は「シトシン(C)」である。関連性情報311(図4)には、集団内での頻度が最も多いCYP2C9の遺伝型(正常型)「*1/*1」(実際のヌクレオチドの組み合わせの型:「A/A」)に対応するフェニトインの代謝率(薬効)「±0」を基準にして、特定の患者の遺伝型が低代謝型アレル「*3」(実際のヌクレオチドの塩基:「C」)を含んでいる数(無名数)だけ差し引かれた代謝率(薬効)が示されている。つまり、関連性情報311(図4)は、従来の一律の要因にしたがうフェニトインの投与が、遺伝子CYP2C9の1075位にあるSNPのヌクレオチド変化の組み合わせの型(「A/A」、「A/C」または「C/C」)に応じて異なる記号化された遺伝型(「*1/*1」、「*1/*3」または「*1/*1」)を有している患者に対して、異なる代謝率(薬効)(「±0」、「-1」または「-2」)を示すことを表している。
以上に説明した図3のS4工程にしたがって、適合度決定部22(図2)は、医薬情報301(図4)、関連性情報311(図4)、および患者の遺伝型情報として「*1/*3」を情報取得部21(図2)から取得しているとき、医薬情報301(図4)におけるフェニトインの代謝率(薬効)の値を「-1」と決定する。なお、上記「*1/*3」は、患者におけるCYP2C9の「アレルの型」がヘテロ接合型であることを表す遺伝型情報である。当該遺伝型情報は、医薬情報301(図4)に記述されている「患者ID:123456789」および関連性情報311(図4)に記述されている「関連遺伝子:CYP2C9」に基づいて、情報取得部21(図2)によってゲノム情報DB6(図2)から取得されている。
なお、図4の医薬情報301に含まれている医薬名M(medicine)に関連する遺伝子が2つ存在する(図4の関連性情報311に2つ遺伝子名G(gene)1およびG2が記述されている)とき、情報取得部21(図2)は、遺伝子名G1およびG2に対応する2つの関連性情報R(relationship)1およびR2、ならびに患者の遺伝型情報Gt(genotype)1およびGt2を適合度決定部22(図2)に送る。2つの関連性情報R1およびR2、ならびに2つの患者の遺伝型情報Gt1およびGt2を受け取った適合度決定部22(図2)は、当該医薬名に対応する適合度の要素F(factor)の値を、各遺伝子名G1およびG2ごとに決定し、2つの値(例えば、G1:±0、G2:-2)を合計した値「-2」を医薬Mの適合度として決定する。
以上の説明では上記適合度の要素として、フェニトインの代謝率(薬効)を例示している。薬剤および薬剤に関与する遺伝子の種類に応じて、適合度の要素は変化する。例えば、図4の関連性情報312には、薬物動態学的要因により、抗血小板薬であるクロピドグレル硫酸塩(プロドラッグ、以降では、単に「クロピドグレル」と記載する)が、CYP2C19(薬剤代謝酵素遺伝子)によってクロピドグレルの活性化合物に変換される代謝率(薬効に対応)が用いられている。クロピドグレルは、ADP(アデノシン2リン酸)の働きを阻害し、血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑え、血栓の形成を抑え血管をつまらせないようにする薬剤であり、通常、虚血性脳血管障害の再発の抑制、末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制などに用いられる。また例えば、図4の関連性情報313には、薬力学的要因により、高血圧症治療薬であるペリンドプリルエルブミン(有効成分)の標的分子であるアンジオテンシン転換酵素(以降では、「ACE」と記載する)に対する直接的な作用(つまり薬効)が用いられている。ペリンドプリルエルブミンはプロドラッグであり、経口吸収後ジアシド体(ペリンドプリラート)に加水分解され、このジアシド体が血中および組織中のACEを特異的に阻害し、昇圧物質であるアンジオテンシンIIの生成を抑制し、末梢血管抵抗を減少させる。1つの薬剤の代謝率および薬効(適合度)にそれぞれ関与する複数のアレルに、多型やバリアントが知られているとき、適合度の要素F(factor)の数と同じ関連性情報(図2の医薬薬効関連遺伝子情報DB5に格納)ならびに患者の遺伝型情報(図2のゲノム情報DB6に格納)を、情報取得部21(図2)は取得し、適合度の要素ごとにF1、F2・・・Fnの値を決定し、合計することにより最終的な適合度を算出する。
図2の適合度決定部22は、関連性情報311(図4)において、上述の通り、CYP2C9内のSNP(rs1057910)に関する遺伝型情報としてヘテロ接合型「*1/*3」を取得しているとき、通常の遺伝型(正常型)「*1/*1」に対応する代謝率(薬効)の値「±0」、およびヘテロ接合型「*1/*3」に対応するフェニトインの代謝率(薬効)の値「-1」を合計した値「-1」を、医薬情報301(図4)の代謝率(薬効)に関する適合度(1だけ低い)として決定する。適合度決定部22(図2)は、医薬情報301(図4)および適合度「-1」を医薬情報変更部23(図2)に送る。
図2の医薬情報変更部23は、負の値である適合度「-1」を低いと判断する(図3のS5工程)。医薬情報変更部23(図2)は、代謝率(薬効)「-1」にしたがって、医薬情報301(図4)における一日服用量のうち、維持投与量(初期投与期間の経過後に継続的に投与される薬剤の投与量で、医薬情報301(図4)に記載された「1日服用量(維持量)」)を1単位(1単位=医薬情報301に記載の25%)だけ減少させ、薬効「±0」にする(図3のS6工程)。図3のS6工程における変更が「一日服用量(維持量)」である(図3のS7工程での判断は「NO」)ので、上述の通り、医薬情報変更部23(図2)は「一日服用量(維持量)」を300mgから25%減じた投与量として、225mgに変更した変更医薬情報302(図4)を表示装置3(図2)に送る。なお、初期投与量に変更は無く、図4の医薬情報301に記載された「一日服用量(初期量)300mg」」のままである。表示装置3(図2)が変更医薬情報302(図4)を表示し、投与計画提案システム1(図2)は処理を終了する。なお、図4の変更医薬情報302における一日服用量が投与限界を超えるとき、医薬情報変更部23(図2)は、変更医薬情報302(図4)における医薬の変更を実行する(図示せず)。
以上の例示した図3のS4工程と異なり、適合度決定部22(図2)は、ゲノム情報DB6(図2)から患者の遺伝型情報として正常型「*1/*1」を取得しているとき、フェニトインの代謝率(薬効)の値を「±0」と決定し、医薬情報変更部23(図2)に送る。医薬情報変更部23(図2)は、代謝率(薬効)の値「±0」を低くないと判断し、医薬情報301(図4)を表示装置3(図2)に送る。表示装置3(図2)が上記医薬情報を表示し、投与計画提案システム1(図2)は処理を終了する。
また、上述の例では医薬情報に対する変更は医薬の種類の変更ではなかったので、図2の医薬情報変更部23は図3のS7工程で判断「NO」を行った。しかし、例えば、下記条件にあてはまるとき、医薬情報変更部23(図2)は医薬の種類を変更する。条件:医薬情報に記述されている医薬名が「クロピドグレル」であり、かつ情報取得部21(図2)が関連性情報312(図4)であり、かつゲノム情報DB6(図2)から取得した患者の遺伝型情報が「*2/*2」、「*3/*3」または「*2/*3」のいずれかであるため、代謝率(薬効)が非常に低い「-2」。上述の通り、クロピドグレルは、プロドラッグであり、その活性化合物に変換されない限り、薬効を生じない。つまり、上記条件にあてまるとき、有効成分であるクロピドグレルの活性化合物は、投与量に関わらず、患者の体内にほとんど産生されない。したがって、投与量の増加は薬効を見込めないので、図2の医薬情報変更部23(図2)は医薬の種類を変更する。医薬情報変更部23(図2)は、医薬名を変更した(図3のS7工程で判断「YES」に該当する)医薬情報を情報取得部21(図2)に送り、図3の処理S2工程に戻る。なお、図4の関連性情報311~313、およびその他の関連事項の詳細については、本実施形態における項目(関連性情報311~313)にて後述されている。
以上の通り、本実施形態の投与計画提案システム1(図2)は、医師の指定した医薬情報301(図4)に記載された医薬の種類またはその用量を、患者の「遺伝型」(当該医薬の薬効に影響を与える遺伝子と関連するアレルの組み合わせとしての患者の「遺伝型」)に適合していないと判断したとき、変更する。したがって、投与計画提案システム1(図2)は、従来の一律の要因にとらわれずに、患者の遺伝型に応じて薬効に優れたオーダーメード投与計画を提案できる。
投与計画提案システム1(図2)が患者にとって適切な投与計画を提示するための遺伝型情報および関連性情報の詳細を、以下に説明する。
(患者の遺伝型情報)
遺伝型情報は、患者に固有な、1つの座位に存在するアレル(本実施形態では1つの遺伝子に関連するアレル)の組み合わせの型(「アレルの型」)を表している。当該「アレルの型」の決定には、大きく分けて2通りの方法がある。当該方法は、患者から得られたゲノム全長の構造を表す情報(「全長文字列」)を用いる「方法1」、および患者由来のゲノムDNA試料を用いて、集団内で頻度の高く、かつ自動解析に適したDNAバリアントのみ(例えば、SNP)を対象に、ゲノム網羅的な多型解析による実験的手法を用いる「方法2」である。
前者の「方法1」は、大規模並列DNA塩基配列決定法(次世代塩基配列決定法)を利用して実施され得る。大規模並列DNA塩基配列決定法では、非常に多くの(時には数百万もの)ヌクレオチド配列を含む複雑なDNAサンプルを、同時かつ均等に配列決定できる。このため、大規模並列DNA塩基配列決定法は、従来のジデオキシ塩基配列決定法(サンガー法)と比較して、患者由来の血液細胞や各種組織などから定法により抽出されたゲノムDNA試料を用いて、短時間かつ低コストで、当該患者の全ゲノム(約30億のヌクレオチド数)に対応する文字列(「全長文字列」)情報に変換することが可能である。上記「全長文字列」に含まれている文字もしくは文字列(およびそれらの位置)をすべて決定し、ヒトゲノムの参照ヌクレオチド配列を表す文字列(「参照文字列」)と比較することによって、患者のゲノム上の特定の座位に関する遺伝型を決定できる。
例えば、ある座位に存在し得るアレルのヌクレオチド配列を表す文字列(「アレル文字列」)および集団内で当該アレル間にヌクレオチド配列の変化を生じている位置(既知のDNAバリアント)を表す情報は、集団での頻度の高い場合(例えば、SNP)、一般に利用可能なDB(例えば、dbSNP(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/))に格納されている。したがって、1つの座位に関するアレル文字列の組み合わせの型(「アレルの型」)のうち、「全長文字列」がどの型を含んでいるかを決定することによって、患者の有している1つの座位に関する遺伝型を決定できる。一例として、患者の遺伝型情報の決定過程の概略を、以下に説明する。
・一般に利用可能なDB(例えば、上述したdbSNP)に格納されている既知のDNAバリアントの位置を表す上記情報に基づいて、「全長文字列」に含まれている、上記「アレル文字列」における、当該DNAバリアントの両側の位置に隣接する2つの文字列(例えば約10~100文字)を決定する
・「全長文字列」における上記2つの文字列(すなわち、当該DNAバリアントの両側の位置に隣接する2つの文字列)が「参照文字列」と完全一致する位置を、周知の文字比較アプリケーションを用いて決定する
・「全長文字列」と「参照文字列」の間で、上記2つの文字列が完全一致する位置に挟まれている当該DNAバリアントに対応する文字(列)の一致、不一致にしたがって、「全長文字列」にある当該DNAバリアントの「アレルの型」(すなわち、患者の「遺伝型」)を決定する。
なお、上述した「全長文字列」を用いた情報解析による「患者の遺伝型情報」の決定方法(「方法1」)の詳細については、具体例も含め、〔実施形態4〕に後述されている。
一方、上述した後者の「方法2」(ゲノム網羅的な多型解析による実験的手法を用いた方法)としては、上記DNAバリアントが、集団内で頻度の高く、かつ自動解析に適したDNAバリアント(例えば、SNP、またはゲノムにおける1から数ヌクレオチドの欠失もしくは挿入(インデル))であるとき、すでに商業化(市販キットおよび委託実施サービスの存在)されているマイクロアレイ技術は、多数(数万~数十万)のゲノム断片における多型の種類を短時間に決定可能である。マイクロアレイ技術の詳細については、キットのマニュアルまたは委託業者のHPを参照すればよい。
以上の通り、患者の遺伝型情報は、上述した前者の「全長文字列」情報を用いる「方法1」および/または後者のゲノム網羅的な多型解析による実験的手法を用いる「方法2」によって(またはこれらの方法の実施の間に)決定され得る。したがって、図2のゲノム情報DB6に格納されている患者の遺伝型情報は、(1)「全長文字列」(患者のゲノム情報)、(2)互いに関連付けられている患者の「遺伝型」を表す情報および当該患者を表す情報、ならびに(3)2つの当該情報が記号化されている情報(例えば、上述した図4の関連性情報311に記載された「遺伝型」を参照)の少なくとも1つであり得る。上記遺伝型情報は、(2)または(3)であることが好ましい。上記遺伝型情報として(2)または(3)を用いることは、投与計画提案システム1(図2)およびゲノム情報DB6(図2)に求められる性能を小さくし、投与計画提案システム1(図2)の処理速度を向上させ得る。また、上記遺伝型情報として(3)を用いることは、記号の意味を解読できない不特定多数の第三者に(1)および(2)を秘匿できる。例えば、図4の関連性情報312に示すように、薬剤代謝酵素遺伝子CYP2C19内に存在するSNP(rs4244285)について決定された「遺伝型」は、記号化(「*1/*1」、「*1/*2」、「*1/*3」、「*2/*2」、「*2/*3」または「*3/*3」)され得る。
患者の遺伝型情報としての(2)および(3)を生成するための個々のDNAバリアントの「アレルの型」は、集団内での頻度を基準にしたDNAバリアントの種類(決定範囲)に応じて、2段階に分けて決定され得る(図1の下部を参照)。第1段階として、まず集団内で1%以上の頻度であり、かつ自動解析にも適したDNAバリアントとして、既知の全SNPのみがゲノム網羅的に決定され、その情報は、DB、記録媒体または記憶装置(図示せず)に格納される。また、上記の全SNPの解析に基づく患者の「遺伝型」情報が、ゲノム情報DB6(図2)に格納される。なお、全SNPに関する「アレルの型」(患者の「遺伝型」)の決定には、上述した通り、当該患者のゲノムDNA試料を用いた実験的手法による「方法2」により、決定され得る。すなわち、まず上記ゲノムDNA試料は、患者の末梢血、口腔内細胞または頬粘膜などから定法により抽出される。続いて、上記試料を用いて、現行のマイクロアレイ技術によるゲノム網羅的な多型解析による実験的手法により、既知の全SNPに関する「アレルの型」(患者の「遺伝型」)は決定され得る。あるいは、上記の全SNPに関する患者の「遺伝型」(「アレルの型」)を、上述した「全長文字列」(患者のゲノム情報)を用いた情報解析による「方法1」により、決定してもよい(図1の下部を参照)。
次いで、第2段階として、必要に応じて、上記DB、記録媒体または記憶装置に格納されていない残りのDNAバリアントに関する「アレルの型」(患者の「遺伝型」)が、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により決定される。上記「残りのDNAバリアント」としては、集団内で頻度の低いDNAバリアント(例えば、SNV、CNV)、または自動解析に適しないDNAバリアント(例えば、CNP、STRP、あるいはその他の特殊なDNAバリアント)などが想定される(図1の下部を参照)。残りのDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)は、入力装置4(図2)に対する医薬情報301(図4)の入力後に決定される。図2の投与計画提案システム1は、上述の通り、医薬情報301(図4)に含まれている医薬名に基づいて、医薬薬効関連遺伝子情報DB5(図2)から、薬剤の薬効と関連する遺伝子の名称を取得する。投与計画提案システム1(図2)は、当該名称に基づいて、最新のゲノム情報DB6(図2)を検索して、必要なDNAバリアントに関する「アレルの型」(すなわち、患者の遺伝型情報)が格納されていない場合、上述した通り、「参照文字列」情報を検索して、残りのDNAバリアントが存在するゲノム上の座位を、指定する。投与計画提案システム1(図2)は、当該座位のみに存在する残りのDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)を、上記文字列(「全長文字列」)を用いた「方法1」により決定する。投与計画提案システム1(図2)は、決定された残りのDNAバリアントの「アレルの型」(患者の遺伝型情報)を上記ゲノム情報DB6(図2)、ならびに上記DB、記録媒体または記憶装置に格納する(図示せず)。なお、上記文字列(「全長文字列」)情報を用いたDNAバリアントの「アレルの型」(患者の遺伝型情報)の決定方法(「方法1」)は、具体例を含め、後の項目〔実施形態4〕にも詳述されている。
図2には、ゲノム情報DB6は、ネットワーク上に存在する構成として示されているが、制御部2(図2)に内蔵されている記憶部もしくは記録媒体を読み取り可能な読み取り部、または制御部2(図2)に接続されている外部記憶装置または記録媒体を読み取り可能な読み取り装置として、代替可能である。
上記(2)または(3)である上記遺伝型情報は、最新の報告に基づいて更新され得る。当該報告は、ある遺伝子に関連した新たなDNAバリアント、ならびに当該DNAバリアントに関する「アレルの型」(「遺伝型」)の総体の報告である。上述した通り、上記「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により、既存の報告および最新の報告に基づいて新たな(2)または(3)を生成できる。
図3および図4を参照して説明した、投与計画提案システム1(図2)が実行する処理として、上述した通り、2段階に分けて、ゲノム情報DB6(図2)から、患者の遺伝型情報として(2)および(3)を取得する例を示した。すなわち、第1段階として、既知のDNAマイクロアレイ技術を利用した実験的手法を用いる「方法2」(または、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」)により決定した当該患者の全SNP解析情報を、ゲノム情報DB6(図2)に格納する。続いて、第2段階として、必要に応じて、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により、残りのDNAバリアント情報の解析を実施する。
しかし、図2の制御部2が、上述した第1段階として当該患者の全SNP解析情報をゲノム情報DB6(図2)に格納せずに、最初から、第2段階として、必要に応じて、特定のDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)を決定するため、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」を実行してもよい。すなわち、制御部2(図2)が、ゲノム情報DB6(図2)から(1)「全長文字列」(患者のゲノム情報)を取得し、(1)に含まれているアレル文字列を抽出し、患者のゲノム上にある特定の1つの座位、あるいは複数の座位に関する遺伝型を決定する上述の手順を実行してもよい。例えば、最初から、特定のSNPや新規のSNVに関する患者の「遺伝型」(「アレルの型」)を、個別的に、上述した「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により、決定してもよい。つまり、集団内の頻度や自動解析の適性などの条件に関わらず、あらゆるDNAバリアントに対して、最初から、「全長文字列」情報を用いる「方法1」を適用してもよい(図1の下部を参照)。
あるいは、状況次第で、例えば、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)が、まだゲノム情報DB6(図2)に格納されていない場合、特定のSNPや新規のSNVに関する患者の「遺伝型」に対して、あえて、時間や労力を必要とする個別的な実験手技による方法を用いてもよい。例えば、上述した特定のSNPや新規のSNVに関する患者の「遺伝型」に対して、アレル特異的プライマーを使用したPCRによる現行の増幅抵抗性変異システム(特異的な点変異を検出する技術であり、正常アレルと1塩基違う変異アレルを区別できる方法)などの解析技術を利用して、個別的に、遺伝型を特定してもよい。
個人情報を保護する観点から、図2のゲノム情報DB6の情報は暗号化されているか、またはゲノム情報DB6(図2)の情報には、アクセス制限が設けられていてもよい。上記暗号化およびアクセス制限は、情報技術分野で公知の手法によって、実現され得る。個人情報を保護する類似の観点から、上記システムは、ゲノム情報DB6(図2)ではなく、記録媒体に記録されている遺伝型情報を取得してもよい。
(関連性情報311~313)
本実施形態では、上記遺伝型は、図4の関連性情報311に示されている通り、薬物動態学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子に関する遺伝型である。図4の関連性情報311は、医薬および遺伝子の関連性(特に有効成分の代謝速度が、遺伝子の遺伝子機能と関連したアレルの遺伝型によって受ける影響)を表している。
関連性情報311(図4)には、フェニトインに対する薬物動態学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子としてCYP2C9遺伝子が示されている。CYP2C9遺伝子には、酵素活性に関連するSNP(rs1057910:図4の関連性情報311を参照)の存在が証明されている。変異アレルを含むCYP2C9遺伝子によって発現されるタンパク質は、抗てんかん薬の有効成分であるフェニトインを酸化する(代謝する)活性が低い。関連性情報311(図4)に示されている通り、活性が低いCYP2C9は、フェニトインの代謝速度を下げる(代謝率(薬効):「-1」または「-2」)ので、フェニトインの循環時間を必要以上に延長し得る。循環時間の延長は、特に長期にわたる薬剤の投与に対して、副作用の増大および薬効の過剰(いずれも有害事象である)をもたらす。
図4の関連性情報312には、クロピドグレルの薬物動態学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子としてCYP2C19遺伝子が示されている。CYP2C19遺伝子内に存在する既知のSNP(rs4244285)には、いくつかの変異アレルの型が存在し得ることが知られている(図4の関連性情報312を参照)。当該変異アレルを含むCYP2C19遺伝子によって発現されるタンパク質は、クロピドグレルのように酸化を受けて薬効を発揮する医薬の体内における代謝を行わない、または当該代謝を弱める。つまり、変異アレルを含むCYP2C19遺伝子は、関連性情報312(図4)に示されている通り、患者の遺伝型によってはクロピドグレルの活性化合物への代謝率を下げる(代謝率(薬効):「-1」)、または当該代謝率を実質的に0にする(代謝率(薬効):「-2」)。なお、「推奨される治療方針(用量調整)」(CLINICAL PHARMACOLOGY & THERAPEUTICS 89(5): 662-673, 2011およびOrgan Biology 21(2): 247-253, 2014などを参照)にしたがって、医薬情報に記述されている一日投与量が投与限界量に近いとき、図2の医薬情報変更部23は、負の値の代謝率(代謝率(薬効):「-1」および「-2」)に対して、一律に医薬の種類の変更を実行してもよい。
他の例である図4の関連性情報313には、特殊なDNAバリアントの一つとして、ペリンドプリルエルブミンの薬力学に関与するタンパク質(直接的な標的タンパク質)をコードしている遺伝子としてACE遺伝子には、そのイントロン15内に短鎖散在反復配列であるAlu配列の欠失/挿入の多型が含まれ得ることが知られている。Alu配列が挿入された遺伝子は、スプライシング異常またはエクソン欠失などを生じるため、Alu配列を欠失している当該遺伝子と比べて、異常なタンパク質の発現またはタンパク質の異常な発現パターンを高頻度に示す。つまり、Alu配列が挿入されたACE遺伝子を有している個体には、ペリンドプリルエルブミンの薬効が低いか、またはほとんどない。例えば、ACE遺伝子内にAlu配列が挿入されたアレルを1つ保持するヘテロ接合体(「Alu+/Alu-」)の場合、薬効「-1」と決定する。あるいはAlu配列が挿入されたアレルを2つとも保持するホモ接合体(「Alu+/Alu+」)の場合は、薬効「-2」と決定する(図4の関連性情報313を参照)。
図4の関連性情報311~313には、医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子、当該遺伝子の遺伝型および当該遺伝型に応じて変化する適合度の要素のそれぞれを表す情報が含まれている。上記情報(図4の関連性情報311~313)に記載された関連性情報(医薬、関連遺伝子、遺伝型、ならびに薬効情報)、およびその他の医薬に関する関連性情報は、公知の文献(例えば、CLINICAL PHARMACOLOGY & THERAPEUTICS 89(5): 662-673, 2011のTabel 1、ならびにOrgan Biology 21(2): 247-253, 2014の表1および表2などを参照)にまとめられており、容易に入手可能である。Organ Biology 21(2): 247-253, 2014の表1は、旧版の医療用医薬品集から抜粋されている。最新の医療用医薬品集の内容は、書籍名「JAPIC医療用医薬品集2020(発行日:2019年8月30日、発売元:丸善出版株式会社)を参照すればよい。CLINICAL PHARMACOLOGY & THERAPEUTICS 89(5): 662-673, 2011のタイトルの一部「An Update of Guideline」および医療用医薬品集における内容の更新などから明らかな通り、上記情報(図4の関連性情報311~313)の関連性情報、ならびにその他の医薬に関する関連性情報は、新情報の追加および旧情報の更新によって、今後もより拡充され、かつより精度を増す。したがって、関連性情報311~313(図4)、ならびにその他の医薬に関する関連性情報は、本実施形態の実施時における最新の情報に基づいて作成されることが好ましい。例えば、関連性情報311~313(図4)、ならびにその他の医薬に関する関連性情報は、人工知能(Artificial Intelligence、以降では「AI」と記載する)によって生成され得る(図1を参照)。上記新情報の追加の入力を受けたAIは、旧情報の更新に使用される新たな、医薬および遺伝子の関連性を出力し得る。
上記情報(図4の関連性情報311~313)のうち、遺伝型に応じて変化する適合度の要素(例えば、代謝率および薬効)を表す情報は、上記公知の文献や資料に記載の関連性情報にしたがって、任意に記述され得る。関連性情報312(図4)には、薬剤代謝酵素遺伝子CYP2C19内のSNP(rs4244285)における各遺伝型に対応する代謝率(薬効)の値は、「±0」、「-1」および「-2」と記述されている。例えば、Organ Biology 21(2): 247-253, 2014には、「CYP2C19の遺伝子多型では、CYP2C19*2と*3タイプが重要である.いずれも活性の消失を伴うタイプであるため、この2種類の対応の組み合わせで酵素欠損者と診断される.」と記載されている。この記載にしたがって、関連性情報312(図4)における代謝率(薬効)の値「-2」を「消失」に書き換えてもよい。関連性情報312(図4)における代謝率(薬効)「消失」は、例えば、プロドラッグであるクロピドグレルがCYP2C19によってその活性化合物に代謝されない(薬効成分に変換されない)ことを表し得る。したがって、代謝率(薬効)「消失」を、図2の適合度決定部22は「-∞(医薬が適合しない)」と判断し、医薬情報変更部23(図2)は医薬情報301(図4)における医薬名を代替薬に変更する。このとき、代替薬がなければ、投与量を「0」に変更した変更医情報をユーザに出力してもよい。
なお、本発明の対象となる薬剤および遺伝型は、当然、上記に示したものに限定されず、様々な薬剤および遺伝型を対象とすることができる。例えば、薬物動態学的要因に関する遺伝型の例としてトランスポーターの遺伝子多型の例を挙げれば、以下の通りである。
脂質異常治療薬であるHMG-CoA還元酵素阻害薬(ブラバスタチン、アトルバスタチンなど)は、肝臓に選択的に取り込まれて薬効を示すが、その取り込みにトランスポータータンパク質OATP1B1(Organic Anion Transporting Polypeptide 1B1)が重要な働きをしている。そのOATP1B1をコードする遺伝子内のSNPのうち、アミノ酸置換を伴う変異型(塩基変化:「521T>C」)では、正常型と比較して、肝臓への取り込みの減少により、経口投与されたブラバスタチンやアトルバスタチンなどの薬物は、代謝、胆汁中排泄を免れて中心静脈を流れるため、血中濃度が上昇する。その結果、血中の薬物濃度が治療濃度域より高い状態になり、薬物中毒などの副作用を起こすリスクが高い。そこで、正常型(遺伝型:「T/T」)の薬効の値「±0」に比べて、ヘテロ接合型は「-1」(遺伝型:「T/C」)、ホモ接合型(遺伝型:「C/C」)は「-2」低いと決定し得る。
また、薬力学的要因に関する遺伝型の例として薬物受容体の遺伝子多型の例を挙げれば、以下の通りである。
薬物受容体タンパク質β-アドレナリン受容体(ADRB2)をコードする遺伝子内のSNPのうち、アミノ酸置換を伴う変異型(塩基変化:「46A>G」)では、気管支拡張薬クレンブテロール塩酸塩などのβ作動薬の投与により、ADRB2をコードする遺伝子の発現量が減少するダウンレギュレーションが起こる。その結果、気管支喘息の重症化やβ作動薬への反応性が低下する。そこで、正常型受容体(遺伝型:「A/A」)の薬効の値「±0」に比べて、ヘテロ接合型(遺伝型:「A/G」)は「-1」、ホモ接合型(遺伝型:「G/G」)は「-2」低いと決定し得る。
また、ADRB2遺伝子の別の変異(塩基変化:「491C>T」)では、β受容体作動薬などのアゴニストとの結合能が、正常型(遺伝型:「C/C」)の4分の1に低下して、β作動薬への反応性が低下する。そこで、正常型の薬効の値「±0」に比べて、ヘテロ接合型(遺伝型:「C/T」)は「-1」、ホモ接合型(遺伝型:「T/T」)は「-2」低いと決定し得る。
以上の通り、薬物動態学および薬力学に関する図4の関連性情報311~313(上記追加の実例内容を含む)は、医師の指定した投与計画が特定の患者に対して低い適合度を有しているとき、当該低い適合度を改善させる提案として、投与量(増加または減少)の変更または医薬の変更を、少なくとも記述している。医薬情報301(図4)の適合度を判断する基準として関連性情報311~313(図4)を使用する投与計画提案システム1(図2)は、低い適合度の改善を求める提案を医師に提示可能である。
(その他)
上記システムを実行するプログラム全体は、外部(ユーザの使用するコンピュータ)からアクセス可能なイントラネットまたはインターネットを介して実行可能である。上記システムは、ユーザに出力した情報を、紙面に印刷するための印刷装置(例えばプリンタまたは複合機)と接続されていてもよい。
〔実施形態2〕
本実施形態では、上記適合度が、医薬の投与によって治療対象でない疾患を発症する素因(発症リスク)に基づいて判断されることを例に説明する。本実施形態に係るシステムは、ヒトゲノム上の多数の座位に関するアレルの組み合わせの型の集合を、上記遺伝型として参照するが、本実施形態はこれに限定されず、1つまたは少数の座位に関するアレルの組み合わせの型の集合を、上記遺伝型として参照し得る(例えば、「単一遺伝子疾患」の実例について、後述されている)。当該遺伝型により上記素因の有無を決定する。つまり、本実施形態のシステムは、医薬の投与と関連して疾患を発症する素因を表す情報(医薬関連疾患情報)を参照して、上記適合度を決定する。つまり、本実施形態は、患者が遺伝学的に発症しやすいが、未だ発症していない疾患の、当該疾患に対する禁忌薬(投薬を行ったときに病状を悪化させる、深刻な副作用が出現する、薬の効果が弱まるなどの可能性が高まることが知られている医薬品)の継続的かつ多量な投与による発症を抑える。
図5に示すように、投与計画提案システム1’は、図2の投与計画提案システム1における医薬薬効関連遺伝子情報DB5(図2)の代わりに、医薬関連疾患情報DB7(図5)を備えている点を除いて、投与計画提案システム1(図2)と同じである。投与計画提案システム1’(図5)は、医薬の投与によって治療対象でない疾患の発症を回避する安全性の高い投与計画を提案するシステムである。上記疾患には、特異体質による重篤な副作用の症状や関連疾患も含まれ得る(「特異体質による重篤な副作用」の詳細については、後述されている)。
(投与計画提案システム1’の処理)
投与計画の安全性を高めるために、図5の投与計画提案システム1’が実行する処理の一例を、図6を参照して以下に説明する。入力装置4(図5)は、従来の一律の要因(主に、患者が患っている疾患の種類、当該疾患の重症度ならびに患者の年齢、体重および性別など)にしたがって、ユーザである医師によって入力された医薬情報303(図7)を情報取得部21(図5)に送る(図6のS1’工程)。情報取得部21(図5)は、図7の医薬情報303に含まれている医薬名が表す薬剤の名称と、当該薬剤の投与によって発症し得る疾患の名称と、当該疾患に対する素因の有無を表す遺伝型の範囲とを記述している関連性情報314(図7)を医薬関連疾患情報DB7(図5)から取得する(図6のS2’工程)。情報取得部21(図5)は、患者ID(図7の医薬情報303を参照)および当該疾患に対する素因の有無を表す遺伝型に関するDNAバリアント群情報(図7の関連性情報314を参照)に基づいて、患者IDおよび疾患の名称に対応する遺伝型情報をゲノム情報DB6(図5)から取得する(図6のS3’工程)。情報取得部21(図5)は、取得した医薬情報303(図7)、関連性情報314(図7)およびゲノム情報DB6(図5)から取得された患者の遺伝型情報を、適合度決定部22(図5)に送る。
なお、図6のS2’工程で「NO」(例えば、開発されてから間もない薬剤であるか、あるいは対応する疾患がないため、関連性情報が存在しない)のとき、情報取得部21(図5)は、図7の医薬情報303を表示装置3(図5)に送る。表示装置3(図5)が上記医薬情報を表示し、投与計画提案システム1’(図5)は処理を終了する。また、図6のS3’工程で「NO」(例えば、患者における特定の遺伝子に対応する遺伝型情報が、まだ決定されていない)のとき、情報取得部21(図5)は、図7の医薬情報303を表示装置3(図5)に送る。表示装置3(図5)が上記医薬情報を表示し、図5の投与計画提案システム1’は処理を終了する。
図5の適合度決定部22は、関連性情報314(図7)、およびゲノム情報DB6(図5)から取得された遺伝型情報に基づいて医薬情報303(図7)の適合度を決定する(図6のS4’工程)。図6のS4’工程の詳細を、図7を参照して説明する。
図7の関連性情報314は、医薬名に対応する有効成分(医薬名:オランザピン、多元受容体作用抗精神病薬MARTA)、当該有効成分の投与によって発症し得ることが知られている疾患名(疾患名:2型糖尿病)、当該疾患にとっての素因を決める遺伝型と関連したPRSパーセンタイルの数値範囲(遺伝型(PRSパーセンタイル):0-69、70-84および85-100)、2型糖尿病の発症への影響(発症リスク:±0、+1および+2)、および「代替投与計画」(なし、要血糖コントロール、およびXへの薬剤変更)を含んでいる。上記「PRSパーセンタイル」の詳細は、下記項目(患者の遺伝型情報)に後述されている。オランザピンは、統合失調症等の治療、双極性障害における躁症状およびうつ症状の改善ならびに抗悪性腫瘍剤の投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)の改善などに効果を示す非定型抗精神薬である。図5のゲノム情報DB6は、患者がある疾患を発症する素因を表す0~100までの数値(PRSパーセンタイル)を、疾患名ごとに遺伝型情報として格納している。当該数値が100に近いほど、ある疾患を発症する素因が大きいことを表す。したがって、図5の適合度決定部22は、関連性情報314(図7)および2型糖尿病を発症する素因を表す患者の遺伝型情報として「90」を取得しているとき、医薬情報303(図7)におけるオランザピン投与による2型糖尿病の発症リスクを「+2」と決定する。適合度決定部22(図5)は、負の要素である発症リスク「+2」に負の要素を表す値「-1」を乗じた「-2」を適合度として決定する。次いで、適合度決定部22(図5)は、医薬情報303(図7)、適合度「-2」、およびその適合度(「-2」)に対応する関連性情報314(図7)の代替投与計画としての「Xへの薬剤変更」を、医薬情報変更部23(図5)に送る。
図5の医薬情報変更部23は負の値である適合度「-2」を非常に低いと判断する(図6のS5’工程)。医薬情報変更部23(図5)は、代替投与計画「Xへの薬剤変更」にしたがって、医薬情報303(図7)における医薬名を「X」に変更する(図6のS6’工程)。S6’工程(図6)における変更が医薬の変更である(図6のS7’工程での判断は「YES」)ので、医薬情報変更部23(図5)は医薬名をXに変更した変更医薬情報を情報取得部21(図5)に送り、図6のS2’工程に戻る。S7’工程(図6)における判断が「NO」になるまで、投与計画提案システム1’(図5)は、図6のS2’~S7’工程を繰り返す(「NO」になった場合、変更医薬情報を表示装置3(図5)に送る(図6のS8’工程)。また、S6’工程(図6)において1日服用量を変更した場合は、変更医薬情報を表示装置3(図5)に送る。最終的に、表示装置3(図5)が変更医薬情報を表示し、図5の投与計画提案システム1’は処理を終了する。
以上の例示した図6のS4’と異なり、適合度決定部22(図5)は、遺伝型情報として「60」を取得しているとき、オランザピン投与による2型糖尿病の発症リスクの値を「±0」と決定する。適合度決定部22(図5)は、負の要素である発症リスク「±0」に負の要素を表す値「-1」を乗じた「±0」を適合度として決定し、医薬情報変更部23(図5)に送る。医薬情報変更部23(図5)は、適合度「±0」を低くないと判断し、医薬情報303(図7)を表示装置3(図5)に送る。表示装置3(図5)が医薬情報303(図7)を表示し、図5の投与計画提案システム1’は処理を終了する。
以上の通り、図5の投与計画提案システム1’は、処方箋に指定されている医薬情報(医薬の種類またはその用量)を、当該処方箋に指定されている患者の遺伝型(当該医薬による副次疾患の発症リスクの素因に関連するアレルの組み合わせを表す遺伝型)に適合していないと判断したとき、変更する。当該医薬による副次疾患には、特異体質による重篤な副作用を含むものとする(詳細は後述)。したがって、投与計画提案システム1’(図5)は、患者の遺伝型に応じてリスクの小さく、安全性の高い処方の提示を可能にする。
図5の投与計画提案システム1’が、患者にとって適切な投与計画を提示するための本実施形態に係る遺伝型情報および関連性情報の詳細を、以下に説明する。
(患者の遺伝型情報)
本実施形態では、患者にとっての遺伝型情報は、疾患ごとに対応する値(PRS(Polygenes Risk Score;多遺伝子リスクスコア)パーセンタイル)として表されている。2型糖尿病に対応するPRSパーセンタイルは、ヒト母集団が示す2型糖尿病の発症リスクに関するPRSの正規分布(図1を参照)において、患者のPRSが最下位から数えて何%に該当するかを表している。つまりPRSパーセンタイルは0~100であり、PRSパーセンタイルが大きいほど高い発症リスクを表す。2型糖尿病に関するPRSは、2型糖尿病の発症に影響を与える全てのDNAバリアントの「アレルの型」の組み合わせを点数化し、合計した値である。ある疾患の発症に影響する全てのDNAバリアントの「アレルの型」は、例えば、複雑疾患の感受性を支配する因子を同定する標準的手法であるゲノムワイド関連解析(GWAS: Genomewide Association Study)によって同定されている。任意の疾患に関するPRSパーセンタイルおよびPRSの概要は、ReFlections Vol 45, September 2018(https://rgare.com/docs/default-source/newsletters-articles/reflections-vol-45-sept-2018.pdf?sfvrsn=66979288_0)などに示されている。
ほとんどの疾患において、各疾患の発症には、ゲノム上にある多数(数十~数百万)のDNAバリアント(例えばSNP)の存在が関与していることが知られている。個々のDNAバリアントは、疾患の発症率にわずかな影響しか与えないが、これらのDNAバリアントの組み合わせは疾患の発症率を顕著に上昇させる。したがって、上記組み合わせに含まれているDNAバリアントのうち、患者のゲノムに存在する一部のDNAバリアントは、例えば、オランザピンの投与を受けた患者が2型糖尿病を発症する素因の有無(およびその程度)を判断する材料であり得る。本実施形態では、遺伝型情報は、ある特定の疾患を発症する素因に寄与するDNAバリアントの組み合わせの一部として患者がどれだけのDNAバリアントを有しているかを、PRSパーセンタイルによって表している。
上記遺伝型情報は、公知の全疾患の数と同じ数の、各疾患に対応するPRSパーセンタイルを含んでいることが最も好ましい。上述した「これらのDNAバリアントの組み合わせ」は、疾患ごとに異なる。よって、ある患者にとっての遺伝型情報として、全疾患に対応するPRSパーセンタイルを作成するのに必要な上記遺伝型情報を含んでいることは、投与計画提案システム1’の利便性を最大化する。上記遺伝型情報に含まれているPRSパーセンタイルの数が、公知の全疾患の数に近いほど、投与計画提案システム1’の利便性を向上させるので、好ましい。
公知のDNAバリアントの接合型を含むアレルの型(「アレルの型」)を、患者のゲノムを対象に、〔実施形態1〕の項目(患者の遺伝型情報)に記載した2通りの方法(「方法1」ならびに「方法2」)にしたがって、決定可能である。当該方法は、大規模並列DNA塩基配列決定法を利用して決定した「全長文字列」情報を用いる「方法1」、およびDNAマイクロアレイ技術を利用してゲノム網羅的な多型解析をおこなう実験的手法を用いる「方法2」である。全疾患の数と同じ、または当該数に近い数の、疾患に対応するPRSパーセンタイルを含んでいる遺伝型情報の生成には、集団内で頻度の低いDNAバリアント(例えば、SNV、CNV) 、または自動解析に適しないDNAバリアント(例えば、CNP、STRP、あるいはその他の特殊なDNAバリアント)に関する情報も必要になる可能性が高いため、前者の「全長文字列」情報を用いる「方法1」が好ましい。「全長文字列」情報を用いる「方法1」の詳細については、〔実施形態4〕にも後述されている。
上記理由により、図5のゲノム情報DB6は、患者の「遺伝型」情報に加えて、「全長文字列」情報をさらに格納していることが好ましい。すなわち、ある疾患に関与するDNAバリアントが新たに同定され、当該DNAバリアントに関する患者の「アレルの型」を決定して、PRSの一部として点数化する必要がある場合、〔実施形態1〕でも説明したように、上述した「全長文字列」を用いた情報解析による「方法1」は、DNAマイクロアレイ技術を用いた「方法2」やPCRによる個別的な方法などの実験手技による時間や労力の負担がなく、当該疾患に関する一部の遺伝型情報を容易に更新可能である。
(関連性情報314)
本実施形態では、上記遺伝型は、ある特定の疾患に発症する素因に寄与するDNAバリアントの組み合わせに関する遺伝型である。関連性情報314(図7)は、医薬および治療対象外の疾患の関連性(特に医薬の投与が、当該疾患の発症に与える影響)を表している。
図7の関連性情報314には、オランザピンの投与によって発症率が上昇し得る疾患として2型糖尿病が示されている。2型糖尿病の発症率の上昇には、上述の通り、多数のDNAバリアントの存在(遺伝学的素因)が関与することが知られている。関連性情報314(図7)には、遺伝学的素因の程度を判断する基準として、上記遺伝型を表す数値範囲が示されている。各数値範囲には、発症リスクに与える度合い(「±0」~「+2」)が対応付けられている。
各数値範囲は任意に設定され得るが、「+1」(投与量の減少、または必要な対応処置)に対応する数値範囲の下限値は70以上(例えば、70、75、80、85、90および95)であり得、「+2」(医薬の変更)に対応する数値範囲の下限値は85以上(例えば、85、90、95および99)であり得る。図5の適合度決定部22は、医薬情報303(図7)の適合度が低いと決定する(ゲノム情報に、2型糖尿病の素因に寄与するDNAバリアントの組み合わせの一部が閾値以上に存在する)基準として、上記下限値の一方を少なくとも使用する。なお、中央値50のPRSパーセンタイルは、母集団の平均的な発症リスクを表しており、「±0」に対応する数値範囲は50を含んでいる。
図7の関連性情報314は、3つの数値範囲を示しているが、2つの数値範囲(例えば0~84および85~100)のみを示してもよい。このとき、例えば、0~84は「±0」に対応し、85~100は「+2」または「+1」に対応する。つまり、関連性情報314(図7)は、医薬の変更または投与量の変更のみを、図5の投与計画提案システム1’に選択させ得る。また例えば、関連性情報314(図7)は、数値範囲70~84に、代替薬なしではなく、代替薬Xを対応させ得る。つまり、関連性情報314(図7)は、遺伝型に応じて発症リスクを少しでも上昇させる医薬(医薬がある疾患にとっての禁忌薬)に、「非常に低い適合度」を割り当て、「医薬の変更」のみを図5の投与計画提案システム1’に選択させ得る。
関連性情報314(図7)を用いる図5の投与計画提案システム1’は、患者が2型糖尿病を発症しているか否かに関わらず、オランザピン(多元受容体作用抗精神病薬:MARTA)の投与量を減らす、必要な対応処置をする、またはその薬剤の種類を変更することを提案可能である。オランザピンの他に、統合失調症治療薬であるチミペロンがパーキンソン病の発症または重篤化を、あるいは慢性心不全・不整脈治療薬であるカルベジロールが気管支喘息の発症または重篤化を、それぞれ促し得ることが知られている。1つの治療薬(特に低分子薬)が、2以上の分子標的に作用すること、または分子標的ではない複数の分子の生理活性に影響することは、よく知られている。特に、関連性情報314(図7)を用いる投与計画提案システム1’(図5)は、2型糖尿病に対する高い発症リスクを示す遺伝型を有している上記患者への禁忌薬(ここではオランザピン)の投与を変更させる提案を行うことが好ましい。
なお、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構」によれば「禁忌薬」に関する定義は以下の通りである。すなわち、医療用医薬品の「添付文書」情報における「禁忌」とは、当該医薬品を使用してはいけない患者を記載している。以下のような点から考えて、ある医薬品を使用することにより、病状が悪化したり、副作用が起こり易くなったり、薬の効果が弱まるなどの可能性が高いため、使用しないこととされている:
・現在の病気(現疾患)
・ある病気が原因となって起こる別の病気(合併症)
・これまでにかかった病気(既往歴)
・ご家族の方の病気(家族歴)
・現在使われている他のお薬(併用薬剤)
・医薬品を使用する方の体質
(以上、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構」ホームページより)。
すなわち、「禁忌」とは、医薬品の「添付文書」に記載される項目の一つであり、ある医薬品を投薬すべきない患者やその状態、併用してはいけない薬剤を示すものである。これを守らず投薬した場合、病状を悪化させる、深刻な副作用が出現する、薬の効果が弱まるなどの可能性が高まる。投薬してはいけないと判断される状態としては、患者の現疾患名や合併症、既往歴、家族歴や体質などが示され得る。
また、上記「体質」とは、遺伝的体質を含み、本実施形態およびその他の実施形態における、医薬の投与による発症リスクの極めて高い副次的疾患に該当する。遺伝的体質は、後述する「特異体質による重篤な副作用」としての症状や関連疾患も含み得る。このため、現行の各種医薬品の「添付文書」内に「禁忌」として明記された各種の疾患名、ならびに、「特異体質による重篤な副作用」の症状や関連疾患は、本実施形態において、医薬関連疾患情報DB7(図5)における当該薬剤に対する疾患情報として登録することができる。
また、診療に使われる治療薬およびその他の薬物(麻酔薬など)は、一部の人々において過剰な反応を示すことがある。薬物の副作用にはさまざまな原因がある。タイプAの副作用は比較的一般的で、用量依存的である。これは薬理学で予測可能であり、通常軽度である。一方、タイプBの副作用は、特異体質反応で、単に薬物の用量に関連したものではない。この副作用はまれだが、重篤になることがしばしばある。遺伝的多様性はタイプA、Bの両方の副作用において重要である。
タイプBの副作用のようないわゆる「特異体質による重篤な副作用」の症状や関連疾患には、上述した通り、本実施形態における副次疾患による発症リスクの判断基準によって対処が可能である。
例えば、抗てんかん薬のカルバマゼピンや高尿酸症・痛風治療薬のアロプリノールを用いた治療においては、稀に、中毒性表皮壊死融解症(ライエル症候群)などの重篤な皮膚障害の副作用を誘発する。当該副作用にとって重要な遺伝的要因のひとつとして、ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen、以降「HLA」と記載する)をコードする遺伝子群のうち、特定の遺伝型(例えば、「HLA-B*1502」、「HLA-A*3101」、「HLA-B*5801」)を保持する個人は、上記疾患の発症リスクが高い。このため、カルバマゼピンやアロプリノールなどの薬剤に対する中毒性表皮壊死融解症(ライエル症候群)の発症リスク関連情報を、医薬関連疾患情報DB7(図5)に登録して対処し得る。
その他に、薬物による「特異体質による重篤な副作用」の症状や関連疾患として、アトルバスタチンなどのスタチン系薬物(脂質異常症治療薬)による横紋筋融解症(筋組織の破壊)、スキサメトニウム塩化物水和物(即効性筋弛緩薬)による呼吸麻痺、メルカプトプリン水和物(抗悪性腫瘍薬)やアザチオプリン(免疫抑制薬)による骨髄毒性、イソニアジド(抗結核薬)などによる肝障害の誘発、およびクラリスロマイシン(抗菌薬)をはじめとする種々の薬物による多形性心室頻脈などが挙げられ、生命に関わる場合もある。上述した実例をはじめ、様々な薬物による上記タイプBに該当する「特異体質による重篤な副作用」の症状や関連疾患についても、遺伝学的多様性による患者の遺伝型に左右されるため、発症リスク関連情報を、医薬関連疾患情報DB7(図5)に登録して対処し得る。
また、「発症リスク」の適応範囲としては、単一遺伝子疾患~多遺伝子性疾患(多因子疾患、複雑疾患)が含まれる。種々の疾患を含むヒトの遺伝的形質は、多数の遺伝子の発現や環境要因に依存することが多い。しかし、特定の疾患や一部の形質に関しては、単一の座位における特定の遺伝型が主たる決定要因として働き、この遺伝型は、通常の環境化において、形質を発現する、つまり疾患を発症するために必要かつ十分である。
疾患への遺伝子の関与が基本的に1つの座位によって決定される疾患である「単一遺伝子疾患」はまれであり、一般的な遺伝性疾患は、複数の座位に依存しており、多遺伝子性疾患(複雑疾患、多因子疾患)と呼ばれている。本実施形態の適用範囲は、主として「多遺伝子性疾患」を想定しているが、「単一遺伝子疾患」についても対処し得る。
例えば、晩発性の単一遺伝子疾患であるハンチントン病の原因遺伝子の変異型を保持する発症リスクの高い若年成人や、乳癌の原因遺伝子BRCA1、BRCA2の変異型を保持しており、将来的に症状が進展する高いリスクがある無症候な個人に対しても、本実施形態における発症リスク関連情報を、医薬関連疾患情報DB7(図5)に登録し対処し得る。
具体的には、単一遺伝子疾患における医薬関連疾患情報DB7(図5)への登録方法として、劣性遺伝疾患においては、その原因遺伝子に関連したアレルが、ホモ変異型(2つの変異アレルを保持)の場合、発症リスクが極めて高く、発症リスク値を「+2」と決定し、「薬剤変更」と設定し得る。また、優性遺伝疾患においては、原因遺伝子に関連したアレルが、ヘテロ接合型(正常なアレルと変異アレルとを保持)か、または、ホモ接合型の場合、発症リスクが極めて高く、発症リスク値を「+2」と決定して、「薬剤変更」と設定し得る。上記ハンチントン病を例に、原因遺伝子に関連した遺伝型の決定方法について、〔実施形態4〕にて後述する。
〔実施形態3〕
本実施形態では、〔実施形態1〕および〔実施形態2〕に説明した処理を複合的に実行するシステムを説明する(図1参照)。すなわち、本実施形態では、図1に示すように、投与計画を変更するための判断基準として、(1)医薬Bの薬物動態学的要因(〔実施形態1〕)、(2)医薬Bの薬力学的要因(〔実施形態1〕)、および(3)医薬Bによる副次疾患の発症リスク(〔実施形態2〕)、以上(1)~(3)の組み合わせを上記判断基準にするシステムを説明する。図8に示すように、投与計画提案システム1’’は、制御部2および表示装置(情報表示部)3を備えている。制御部2(図8)は、情報取得部(医薬情報取得部、関連性情報取得部および遺伝型情報取得部)21、適合度決定部22および医薬情報変更部23を備えている(図8参照)。また、制御部2(図8)は、入力装置4、医薬薬効関連遺伝子情報DB5、ゲノム情報DB6および医薬関連疾患情報DB7と接続されている(図8参照)。つまり、図8の本実施形態のシステム1’’は、(i)上記遺伝子の遺伝型が上記医薬の薬効に影響する程度を表す情報(〔実施形態1〕)および(ii)上記素因の遺伝型が上記医薬の投与によって上記疾患(副次的疾患)の発症リスクに影響する程度を表す発症リスク情報(〔実施形態2〕)の両方を参照して、上記適合度を決定する。
投与計画提案システム1’’(図8)は、S1~S7(S9を含む)工程(図3を参照)を実行し、S8工程(図3を参照)を実行せずに、変更医薬情報または変更なしの医薬情報に対するS2’~S8’(S9’を含む)工程(図6を参照)を実行する。したがって、図3のS7から図6のS2’工程に移行する処理、およびS2’工程(図6)を実行する詳細を説明する。
例えば、〔実施形態1〕で示したフェニトイン(図4の医薬情報301)の場合、関連性情報311(図4)において、上述の通り、CYP2C9内のSNP(rs1057910)に関する遺伝型情報としてヘテロ接合型「*1/*3」を取得しているとき、S7工程(図3)において、投与計画提案システム1’’(図8)の医薬情報変更部23は、判断「NO」を行った後に、「一日服用量(維持量)」を225mgに変更した変更医薬情報302(図4)を情報取得部21(図8)に送る(図6のS2’工程に移行)。S2’工程(図6)において、変更医薬情報に含まれている変更が一日服用量であるとき、情報取得部21(図8)は、医薬関連疾患情報DB7(図8)から医薬関連疾患情報を取得する。以降のS3’~S9’工程(図6)では、「医薬情報」が「変更医薬情報」に置き換わり、かつ医薬情報変更部23(図8)は、医薬名を変更した(図6のS7’工程で判断「YES」に該当する)医薬情報を情報取得部21(図8)に送り、図3の処理S2工程に戻る2点を除いて、本実施形態は、上述の通り、〔実施形態1〕および〔実施形態2〕において説明した処理を実行するシステムに準ずるものである。
以上の通り、図8の投与計画提案システム1’’は、処方箋に指定されている医薬情報(医薬の種類またはその用量)を、当該処方箋に指定されている患者の遺伝型(当該医薬の有効性に影響する特定遺伝子の遺伝型、および当該医薬による副次疾患の発症リスクの存在を表す特定遺伝子の遺伝型)に適合していないと判断したとき、変更する。したがって、投与計画提案システム1’’(図8)は、患者の遺伝型に応じた総合的な(薬効に優れ、かつリスクが小さく安全である)処方の提示を可能にする。
〔実施形態4〕
本実施形態では、公知のDBに格納されているヒトゲノム(「参照文字列」)ではなく、個人から得られたゲノムの全ヌクレオチド配列(「全長文字列」)における任意のDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)を決定する方法(〔実施形態1〕および〔実施形態2〕の各項目(患者の遺伝型情報)に記載した「方法1」)を説明する。上記DNAバリアントは、SNP、SNV、インデル、CNP、CNV、マイクロサテライト多型(「STRP」)を含むあらゆるヌクレオドの変化である。当該方法では、上記標的ヌクレオチドを挟む2つのヌクレオチド配列を表す2つの文字列を、基準のヒトゲノムを表す公知の文字列(「参照文字列」)から抽出し、使用する。
上記方法では、標的ヌクレオチドの種類に応じて、(1)標的ヌクレオチドおよびこれを挟む「参照文字列」由来の2つのヌクレオチド配列が結合した配列を表す1つの連続した文字列、または(2)標的ヌクレオチドを挟む「参照文字列」由来の2つのヌクレオチド配列のそれぞれを示す2つの文字列が使用される。(1)は、標的ヌクレオチドが、ヒトゲノムにおいて公知であり、かつSNP、SNVまたはインデルであるときに、「アレルの型」(患者の「遺伝型」)の簡便な決定法として使用される。(2)は、あらゆるDNAバリアント(上述したSNP、SNVまたはインデルを含む)の「アレルの型」の決定に適用可能であるが、特に、標的ヌクレオチドの長さの変化、ならびに多数の選択肢が存在する、または標的ヌクレオチドの詳細が不明な場合に有効な方法である。図9および10を参照して、(1)および(2)の文字列を用いる上記方法を以下に説明する。
(SNP、SNVまたはインデルの「アレルの型」を決定する簡便な方法)
上述した(1)の文字列による当該方法は、特に、SNP、SNVまたはインデルのアレルの型を決定する簡便な方法である。図9に示されているように、(1)の文字列は、標的ヌクレオチド(SNP、SNVまたはインデル)を表す文字列902、文字列902を挟む2つのヌクレオチド配列を表す2つ文字列901および903を含んでいる、1つの連続した文字列である。文字列901および903は、基準のヒトゲノムを表す文字列(「参照文字列」)(例えば、アンサンブル(Ensemble、URL:http://ensembl.org)から取得可能)の一部として決定される(図10のS11工程)。文字列902(標的ヌクレオチドを表す文字(列))は、本実施形態に係る方法を実施する時点で既知の(以降では単に「既知の」と記載する)DNAバリアントとして、既知のDBに格納されている。つまり上記「DNAバリアント」は、本願の出願以降に見いだされたDNAバリアントも含まれ得る。たとえば、既知の全SNPに関する情報は、dbSNPデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/)より取得可能である。文字列902(標的ヌクレオチドを表す文字(列))が、基準のヒトゲノムを表す文字列(「参照文字列」)に存在する位置の情報も、当該DB(例えば、上記のdbSNPデータベース)に格納されている。(1)の文字列において、文字列901と文字列903の長さは同一に設定し、解析部位(文字列902)を中央に配置することが好ましい。
したがって、上記方法によって、既知のSNP、SNVまたはインデルの「アレルの型」を、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(1)の文字列が含まれているか否かによって決定する(図10のS12工程)。個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(1)の文字列が含まれ得る位置は、上記DBに格納されている基準のヒトゲノム(「参照文字列」)の位置の情報から推定可能である。したがって、例えば、(1)の文字列と完全一致する1つの文字列を見出したとき(図10のS13工程)、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)から、(1)の文字列を含み得る文字列を抽出し、当該文字列と(1)の文字列とを比較することによって、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列(「全長文字列」)における既知のSNP、SNVまたはインデルの「アレルの型」を決定できる(図10のS14工程)。
ここで、図9の文字列901および903の長さは、少なくとも10文字(例えば、10、20、30、40、50、100、150、200文字またはそれ以上)、好ましくは10~1000文字である。(1)の文字列の文字数が少ないほど、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(1)の文字列と完全一致する2以上の文字列を見出す確率が高くなる。(1)の文字列と完全一致する2以上の文字列を見出したとき(図10のS13工程で「NO」)、2つの文字列(図9の文字列901と文字列903)の長さを均等にそれぞれ1文字以上(例えば、1、3、5、10、20、25、50または100文字)ずつ延長する(図10のS16工程)ことによって、上記確率が低下する。ただし、2つの文字列の合計は、例えば、10000文字以下である。極端に長い2つの文字列(図9の文字列901と文字列903)の一方が、標的ヌクレオチド(図9の文字列902)以外のDNAバリアントを表す文字列を含んでいるとき、結果「(1)の文字列は、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列に含まれていない」が必ず現れるためである。
例えば、ゲノム上の特定の位置における既知のSNPのアレルの型は、ヌクレオチドの種類と同じく、最大で4種類である。例えば、正常型アレルのヌクレオチドがAで表されるとき、T、GおよびCによって表されるヌクレオチドを含むアレルは、変異型アレルである。したがって、図9の文字列902をA、T、GおよびCに指定して、上述の処理を4回試行することによって、上記特定の位置における既知のSNPのアレルの型を決定可能である(図10のS14工程)。しかしながら、実際には、既知のSNPは、集団内で2種類(まれに3種類)のヌクレオチドが一般的であることから、ほとんど2回の試行で容易に決定可能である。
図9において、正常型文字列を含む文字列901~903(正常文字列)および変異型文字列を含む文字列901~903(変異文字列)は、個人のゲノムがSNPに関して、ホモ接合型またはヘテロ接合型であるかの決定に使用され得る。例えば、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)の両方(通常、ゲノムは、母親ならびに父親由来の2セットを保持する接合型として存在する)に、正常文字列が一致し、変異文字列が一致しないとき、当該個人のゲノムは正常型アレルである(正常型:N/N)。また例えば、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列の一方に、正常文字列が一致し、他方に変異文字列が一致するとき、当該個人のゲノムは、変異型アレルを一方のゲノムに有している(ヘテロ接合型:N/M)。また例えば、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列の両方に、正常文字列が一致せず、変異文字列が一致するとき、当該個人のゲノムは、変異型アレルを両方のゲノムに有している(ホモ接合型:M/M)。
当該個人における上記遺伝型の決定過程を、〔実施形態1〕に記載したフェニトイン(抗てんかん薬)に関する医薬情報301(図4)、ならびに関連性情報311(図4)の情報に基づいて、CYP2C9(薬剤代謝酵素遺伝子)のコード領域内に存在する既知のSNP(rs1057910)を例に、具体的に説明する。上記文字列902に対して、SNP(rs1057910)における野生型(正常型)アレルのヌクレオチドの塩基の種類は「アデニン(A)」であり、フェニトインの代謝率が低下することが知られている低代謝型アレルのヌクレオチドの塩基の種類は「シトシン(C)」である。また、既知のSNPの場合、対応する901ならびに903の文字列は、上記方法により容易に取得可能である。そこで、野生型文字「A」を含む文字列901~903(「野生型文字列」)、および低代謝型文字「C」を含む文字列901~903(「低代謝型文字列」)を抽出して、上記工程を2回試行することにより当該個人の遺伝型を容易に決定できる。
具体的には、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に対して、「野生型文字列」が一致し、「低代謝型文字列」が一致しないとき、当該個人のゲノムは野生型アレルを両方のゲノムに有している(野生型:「A/A」)。また例えば、「全長文字列」に対して、「野生型文字列」と「低代謝型文字列」の両方に一致するとき、当該個人のゲノムは、低代謝型アレルを一方のゲノムに有する(ヘテロ接合型:「A/C」)。また例えば、「全長文字列」に対して、「野生型文字列」が一致せず、「低代謝型文字列」が一致するとき、当該個人のゲノムは、低代謝型アレルを両方のゲノムに有している(ホモ接合の低代謝型:「C/C」)。
以上の過程により決定した当該個人におけるCYP2C9のSNP(rs1057910)のヌクレオチド変化の組み合わせの型(「A/A」、「A/C」または「C/C」)に応じて、関連性情報311(図4)に示す通り、異なる記号化された遺伝型(「*1/*1」、「*1/*3」または「*3/*3」)、ならびに異なる代謝率(薬効)(「±0」、「-1」または「-2」)を決定可能である。
決定された遺伝型とともに、個人のゲノムに存在するDNAバリアントを表す情報は、DB、記録媒体または記憶装置に保存されるとともに(図示せず)、ゲノム情報DB6(図2、図5および図8)に格納される(S15工程)。
(あらゆるDNAバリアントの「アレルの型」の決定に適用できる一般的な方法)
上述した(2)の文字列による当該方法は、あらゆるDNAバリアント(上述したSNP、SNVまたはインデルを含む)の接合型を含むアレルの型(「アレルの型」)の決定に適用可能であるが、特に、標的ヌクレオチドの長さの変化、ならびに多数の選択肢が存在する、または標的ヌクレオチドの詳細が不明な場合に有効な方法である。標的ヌクレオチドの長さの変化、ならびに多数の選択肢は、例えば、マイクロサテライト多型(「STRP」)などのように、反復回数の異なる単純反復配列を標的ヌクレオチドにするときに生じる。また、詳細が不明なときは、例えば、〔実施形態1〕で示したACE遺伝子内に存在するAlu配列の欠失/挿入の多型解析などが想定され得る。つまり、(2)の文字列は、標的ヌクレオチドの数、さらには標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列も決定する必要のあるときに特に有効である。
標的ヌクレオチドの全長が数万ヌクレオチドに達し得、標的ヌクレオチドの長さには大きな個体差が生じ得る。したがって、特定の標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列は、当該個体のゲノムに基づいて、個々に決定される必要がある。しかし、標的ヌクレオチド(CNP、CNV、STRP)が存在するゲノム上の座位は、SNP、SNVまたはインデルと同様に、ヒトの基準ゲノムではすでに同定されている。当該座位における標的ヌクレオチドの存在位置も相対的に決定されている。つまり、(2)の文字列は、ヒトの基準ゲノムを表す文字列(「参照文字列」)において既知である(図10のS11工程)。
(2)の文字列は、個人のゲノムに存在する既知のDNAバリンアントを表す標的ヌクレオチドの両側に隣接するヌクレオチド配列を表す文字列と完全一致し得る。したがって、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(2)の文字列(2つ1組:図9の文字列901ならびに903)が存在するか否かを決定する(図10のS13工程)ことによって、標的ヌクレオチドが個人のゲノム上に存在するか否かを決定できる(図10のS14工程)。(2)の文字列(2つ1組:図9の文字列901ならびに903)の長さは、(1)の文字列における文字列901および903の長さと同様に設定され得る。
個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)における(2)の文字列(2つ1組:図9の文字列901ならびに903)の存在が確認された後に、2つ1組の文字列の間に存在する文字列(図9の文字列902であり、標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列を表す)が、抽出される。
例えば、抽出された文字列がマイクロサテライト多型(「STRP」)のように非常に短い配列(1~4塩基対の長さ)の単純反復配列を表すとき、文字列に含まれている反復回数(および、ヌクレオチド総数)がさらに決定される。単純反復配列は、個体のゲノムにおいて、例えば数ヌクレオチド~数十ヌクレオチドを1単位として、反復回数が異なり得る。回数に対応する「アレルの型」を検出する。例えば、2種類の異なる長さの配列を検出した場合、「ヘテロ接合型」、また1種類のみ長さの配列を検出した場合、「ホモ接合型」と決定する。
〔実施形態2〕にて記載した晩発性の単一遺伝子疾患であるハンチントン病の原因遺伝子(HTT)をコード配列内に存在する3ヌクレオチド(CAG)のマイクロサテライト多型(「STRP」)を例に、当該若年成人の無症候者における上記遺伝型の決定過程を具体的に説明する。ハンチントン病の患者では、変異アレルが細胞(特に神経細胞)にとって有害な異常タンパク質を産生する。ニューロンの消失は緩徐であるが、最終的には破壊的な神経変性状態へと至る。症状の発症は通常中年期から更年期に生じる。ハンチントン病は、その原因遺伝子HTTのコード配列上に存在するCAGリピートの不安定な伸長によって長いポリグルタミン鎖が産生されるために起こる。正常型のグルタミンの反復回数は6~35であるのに対して、疾患患者(あるいは、疾患の発症リスクの極めて高い若年成人の無症候者)は、36~121である。
上記のような既知のマイクロサテライト多型(「STRP」)の場合、対応する901ならびに903の文字列は、上記方法により容易に取得可能である。当該若年成人の無症候者の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)における(2)の文字列(2つ1組:図9の901ならびに903の文字列)の存在が確認された後に、2つ1組の文字列の間に存在する文字列(図9の902:標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列を表す)の配列およびその長さが、抽出・決定される。例えば、配列およびその長さを抽出した結果、CAGのリピート回数が「80(ヌクレオチド数:240)」ならびに「113(ヌクレオチド数:339)」の2種類であった場合、ヘテロ接合型である。(両アレルとも、疾患型アレルに相当するリピート数を有していることから、発症リスクが極めて高い「+2」。)また、CAGのリピート回数が「5(ヌクレオチド数:15)」の1種類であった場合、ホモ接合型である。(両アレルの型は正常型アレルに相当するリピート数を有していることから、発症リスクは低い「±0」。)
決定された「アレルの型」(患者の遺伝型)とともに、個人のゲノムに存在するDNAバリアントを表す情報は、DB、記録媒体または記憶装置に保存されるとともに(図示せず)、ゲノム情報DB6(図2、図5および図8)に格納される(S15工程)。
〔ソフトウェアによる実現例〕
投与計画提案システム1~1’’(図2、図5および図8)は、制御ブロック(特に情報取得部(医薬情報取得部、関連性情報取得部および遺伝型情報取得部)21、適合度決定部22および医薬情報変更部23)を、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、投与計画提案システム1~1’’(図2、図5および図8)は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPUを用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔まとめ〕
これまでに説明した発明を、以下のようにまとめることができる。
〔1〕患者にとって好適な投与計画を提案するシステムであって、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに
上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部
を備えている、システム。
〔2〕上記適合度決定部は、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子に関する医薬薬効関連遺伝子情報を参照して、上記適合度を決定し、
上記遺伝型は上記遺伝子に関する遺伝型であり、上記関連性情報は、上記医薬薬効関連遺伝子情報を含んでおり、
上記変更は、上記投与量の増加もしくは減少または上記医薬の変更である、〔1〕に記載のシステム。
〔3〕上記適合度決定部は、上記医薬の投与によって発症または重篤化する疾患を表す医薬関連疾患情報を参照して、上記適合度を決定し、
上記遺伝型は、上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせに関する遺伝型であり、上記関連性情報は、上記医薬関連疾患情報を含んでおり、
上記変更は、上記医薬の変更または上記投与量の減少である、〔1〕または〔2〕に記載のシステム。
〔4〕上記医薬が上記疾患にとっての禁忌薬であるとき、上記適合度決定部は、上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせを含む上記遺伝型に関する上記適合度を非常に低いと判断し、
上記適合度決定部が上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせを含む上記遺伝型に関する上記適合度を非常に低いと判断したとき、上記医薬情報変更部は、上記疾患にとっての禁忌薬である上記医薬の変更を上記医薬情報に加える、〔3〕に記載のシステム。
〔5〕上記疾患は、特異体質による重篤な副作用と関連した疾患、または特異体質による重篤な副作用の症状を含む、〔3〕に記載のシステム。
〔6〕上記適合度決定部は、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子を表す医薬薬効関連遺伝子情報と、上記医薬の投与によって発症または重篤化する疾患を表す医薬関連疾患情報とを参照して、上記適合度を決定し、
上記遺伝型は、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子に関する遺伝型ならびに上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせに関する遺伝型であり、上記関連性情報は、上記医薬薬効関連遺伝子情報および医薬関連疾患情報を含んでおり、
上記変更は、上記投与量の増加もしくは減少または上記医薬の変更である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のシステム。
〔7〕上記遺伝型情報は、患者IDを用いてゲノム情報DBから取得された患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報に含まれているDNAバリアントを表す情報に基づいて決定される、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のシステム。
〔8〕上記遺伝型情報に、上記関連性情報によって表される関連性において上記医薬情報に表される医薬と関連する座位に存在する遺伝型が記録されていないとき、上記遺伝型情報は、患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報に含まれている前記座位に存在するDNAバリアントを表す情報に基づいて更新される、〔7〕に記載のシステム。
〔9〕上記DNAバリアントのうち一塩基多型を表す情報を、上記患者のゲノム断片を用いて、または上記全ヌクレオチド配列を表す情報に基づいて決定し、決定された一塩基多型を表す情報を記録し、
記録されていない上記DNAバリアントを表す情報を、上記全ヌクレオチド配列を表す文字情報に基づいて決定する、〔7〕または〔8〕に記載のシステム。
〔10〕上記医薬情報取得部は、上記医薬情報を処方箋またはお薬手帳から取得する、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のシステム。
〔11〕上記関連性情報が人工知能によって生成される、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のシステム。
〔12〕患者にとって好適な投与計画を提案する方法であって、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得工程;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得工程;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得工程;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定工程;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更工程;ならびに
上記医薬情報変更工程が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示工程
を含んでいる、方法。
〔13〕患者にとって好適な投与計画を提案するシステムとしてコンピュータを機能させるための投与計画提案プログラムであって、
上記システムは、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに
上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部を備えており、
上記医薬情報取得部、上記関連性情報取得部、上記遺伝型情報取得部、上記適合度決定部、上記医薬情報変更部および上記情報提示部としてコンピュータを機能させるための投与計画提案プログラム。
1 投与計画提案システム(患者にとって好適な投与計画を提案するシステム)
1’ 投与計画提案システム(患者にとって好適な投与計画を提案するシステム)
1’’ 投与計画提案システム(患者にとって好適な投与計画を提案するシステム)
2 制御部
3 表示装置(情報提示部)
4 入力装置
5 医薬薬効関連遺伝子情報DB
6 ゲノム情報DB
7 医薬関連疾患情報DB
21 情報取得部(医薬情報取得部、関連性情報取得部および遺伝型情報取得部)
22 適合度決定部
23 医薬情報変更部
301 医薬情報(フェニトイン)
302 変更医薬情報
303 医薬情報(オランザピン)
311 関連性情報(フェニトイン)
312 関連性情報(クロピドグレル)
313 関連性情報(ペリンドプリルエルブミン)
314 関連性情報(オランザピン)
901 文字列
902 文字列(標的ヌクレオチド)
903 文字列
本発明は、医薬の投与計画をユーザに提案するシステムに関し、より詳細には、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した医薬の投与計画を、ユーザに提案するシステムに関する。
遺伝子の機能と、医薬の有効性との関連性は、以前から指摘されている。また、特定患者の情報を活かして、当該特定患者に即した医薬を処方することの提案は、これまでにある(例えば特許文献1)。
特開2016-218684号公報(2016年12月22日公開)
しかし、ある疾患に有効と考えられている薬剤が実際に特定の患者にとって安全かつ有効かを、患者の遺伝情報を利用して判断するシステムさえ、実際には提案されるに至っていない。それは、1つの疾患に薬効を有していることが知られている薬剤は複数あるし、1つの薬剤の薬効または副作用に影響する遺伝子は複数あるし、1遺伝子の機能の発現には、複数の他の遺伝子が関与することが、よく知られているからである。
したがって、医師が作成する現状の院外処方箋および院内処方箋(薬剤の種類、用量および用法が指定されている)には、一律の要因(主に、患者が患っている疾患の種類、当該疾患の重症度ならびに患者の年齢、体重および性別など)が依然として適用されている。このような処方箋は、個々の患者に適した薬剤の種類、その用量および用法を指定できていないことを意味し得る。実際に、処方箋通りに薬剤を用いた複数の患者は、大きく異なる反応を示す。当該反応には、薬剤が患者に悪影響のみを与える(副作用のみを示し、かつ薬効を示さない)ことも含まれ得ると指摘されている。
処方箋にしたがって患者が用いる薬剤のほかに、患者への投与または使用に、医療従事者の管理を要する薬剤およびそれ以外の物質(麻酔薬など)がある。当該薬剤または物質の投与または使用は、過剰な反応を一部の人に引き起こし得、副作用をしばしばともなうことがよく知られている。例えば、英国のある研究では、医療施設の入院患者のうち約7%がなんらかの副作用を生じていると、報告されている。上述の過剰な反応または副作用は、重大な結果(身体障害、回復不能な損傷、先天的な異常の顕在化または死亡)を患者にもたらす。過剰な反応または副作用による死亡者は、米国では年間約10万人に上る。
以上の通り、医療全般に用いられている薬剤および物質の有効性は、大きな個体差を示す。国から承認を受けている(有効性および安全性について一定以上の条件を満たす)薬剤または物質でさえ、投与または使用を受けた患者のすべてに有効であることは少ない。つまり、現状では、薬効を示し得ない薬剤の投与を受けている患者、および薬効を示すには不適切な量の薬剤の投与を受けている患者がいるということである。
なかでも精神疾患の治療に使われる薬剤は、相対的に低い薬効を示す。薬効の低い薬剤の投与は、回復を遅らせ、治療費を増大させるので、患者に身体的、精神的または経済的な負担を強いる。これらの負担の他に、上述の通り、薬剤の副作用は、疾患と本来的に無関係な苦痛を生じ得る。
薬剤の有効性や副作用に関する個体差は、疾患の種類、環境要因(生活様式など)および/または服用している薬剤の組み合わせなどの影響よりも、ヒト集団における遺伝学的な多様性に、多く起因する。
したがって、本発明の一態様は、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した薬剤の投与計画をユーザに提案することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシステムは、患者にとって好適な投与計画を提案するシステムであって、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに
上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部
を備え
上記システムは、上記遺伝型情報に、上記関連性情報によって表される関連性において上記医薬情報に表される医薬と関連する座位に存在する遺伝型が記録されていないとき、上記患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報を取得し、上記全ヌクレオチド配列を表す情報から、前記座位に存在するDNAバリアントを検出して、上記遺伝型情報を更新し、
上記遺伝型情報は、ヒト集団における頻度が1%未満であるバリアントを表す情報を含む
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る方法は、患者にとって好適な投与計画を提案する方法であって、
コンピュータが、上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得工程;
上記コンピュータが、上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得工程;
上記コンピュータが、上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得工程;
上記コンピュータが、上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定工程;
上記コンピュータが、上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更工程;ならびに
上記コンピュータが、上記医薬情報変更工程において変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示工程
を含み、
上記方法において、上記コンピュータは、上記遺伝型情報に、上記関連性情報によって表される関連性において上記医薬情報に表される医薬と関連する座位に存在する遺伝型が記録されていないとき、上記患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報を取得し、上記全ヌクレオチド配列を表す情報から、前記座位に存在するDNAバリアントを検出して、上記遺伝型情報を更新し、
上記遺伝型情報は、ヒト集団における頻度が1%未満であるバリアントを表す情報を含む
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る投与計画提案プログラムは、患者にとって好適な投与計画を提案するシステムとしてコンピュータを機能させるための投与計画提案プログラムであって、
上記システムは、制御部を備え、
上記制御部は、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得
上記患者の遺伝型情報を取得
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加え;
当該変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示し;かつ
上記遺伝型情報に、上記関連性情報によって表される関連性において上記医薬情報に表される医薬と関連する座位に存在する遺伝型が記録されていないとき、上記患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報を取得し、上記全ヌクレオチド配列を表す情報から、前記座位に存在するDNAバリアントを検出して、上記遺伝型情報を更新し、
上記遺伝型情報は、ヒト集団における頻度が1%未満であるバリアントを表す情報を含む、
上記制御部としてコンピュータを機能させる。
本発明の一態様によれば、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者に適した医薬の投与計画を提案できる。
本発明の概念を模式的に示す図である。 本発明の実施形態1に係るシステムの構成を表す図である。 上記システムが実行する処理の一例を示す図である。 医薬情報、変更医薬情報および関連性情報の例を示す図である。 本発明の実施形態2に係るシステムの構成を表す図である。 上記システムが実行する処理の他の例を示す図である。 医薬情報および関連性情報の他の例を示す図である。 本発明の実施形態3に係るシステムの構成を表す図である。 ヒトゲノムにおける任意のDNAバリアントのアレルの型(遺伝型)を決定するための文字列の構造を表す模式図である。 ゲノム配列上に存在するDNAバリアント(SNPを含む)のアレルの型(遺伝型)を決定する方法の一例を示す図である。
本発明の一態様は、患者に固有の遺伝型に基づいて当該患者にとって好適な投与計画を提案するシステムであって、上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部を備えている。
「投与計画」は、特定患者を表す情報、ならびに当該特定患者に投与する医薬の種類および投与量を表す情報を少なくとも含んでいる。上記投与計画は、上記特定患者に対してある投与量においてある医薬を投与することを示す指針(例えば処方箋)である。上記システムは、患者にとって好適な投与計画(オーダーメイド投与計画)を作成することによって、医療従事者(特に医師)の判断を補助するシステムである。
「医薬」は、本明細書では、投与を受けた患者において薬効を発揮することによって、疾患における症状の改善を直接的に生じさせる医薬、または医療行為を補助する目的(検査および麻酔など)に使用される物質(造影剤および麻酔剤など)を表す。
「遺伝型」(genotypeとも呼ばれる)は、個体全体または個体の特定の座位の遺伝的構成であり、本明細書では、ゲノムにおける1つ以上の座位にあるアレル(対立遺伝子)の組み合わせの型(2つ以上の座位を遺伝型の対象にするとき、各型の総和)を指す。「アレル」は、本明細書では、1本の染色体のうち、1つの座位に存在する個々の遺伝子およびDNA配列を指す。「遺伝型」または「アレルの型」と記載した場合は、本明細書では、「接合型」を含む概念として用いる。
「医薬情報」は、患者を特定する情報(例えば患者のID番号)、医薬を特定する情報(例えば医薬の商品名または物質名)、および患者に対する医薬の投与量を指定する情報を少なくとも含んでいる情報を表す。医薬情報は、例えば医師がコンピュータ上で作成するカルテまたは処方箋であり得る。
「関連性情報」は、医薬の種類、および生体内における当該医薬の作用に影響する遺伝子(群)の関連性を表している情報を指す。
「(医薬情報の)適合度」は、医薬情報に特定されている患者に固有の遺伝型を基準とした、当該患者と、医薬情報に特定されている医薬の種類および/またはその投与量との関係が適切である程度を表す。
「DNAバリアント(DNAvariant)」は、本明細書では、ヒト集団において(その頻度に関わらず)、ヌクレオチド配列(アレルならびに染色体構造を含む)の変化が2つ以上存在するゲノム上の特定部位ならびにその変化の総体の概念として記載する。上記「DNAバリアント」におけるヌクレオチド配列の変化とは、1ヌクレオチド以上の置換、欠失、挿入および/または付加、重複を含め、あらゆる変化の総体を意味する(図1の下部を参照)。
上記「DNAバリアント」のうち、集団内で頻度の高い(1%以上)変化であるとき「多型(P:Polymorphism)」と呼び、例えば、1塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism、以降では「SNP」と記載する)、コピー数多型(Copy Number Polymorphism、以降では「CNP」と記載する)、マイクロサテライト多型(短鎖縦列反復配列: Short Tandem Repeat Polymorphism 、以降では「STRP」と記載する)がある。また、集団内で頻度の低い(1%未満)変化であるとき「バリアント(V:Variant)」と呼び、例えば、1塩基バリアント(Single Nucleotide Variant、以降では「SNV」と記載する)、コピー数バリアント(Copy Number Variant、以降では「CNV」と記載する)がある。なお、本明細書では、上記「DNAバリアント」は、上述の通り、ヒト集団における頻度によらず、「多型」および「バリアント」を含む概念として記載する(図1の下部を参照)。
1つの座位にある接合型を含むアレルの組み合わせの型(「アレルの型」)の総体は、各アレルのヌクレオチド配列および/または当該組み合わせに含まれているアレルの数によって決まる。上記ヌクレオチド配列の少なくとも1つがヒト集団に最も多い野生型ヌクレオチド配列ではない、および/または上記アレルの数が通常の2つでない、患者(つまり上記型が通常でない患者)に対する上記医薬の投与は、当該患者に所望されない影響を生じ得る。当該所望されない影響は、例えば、上記型が通常の患者と比べたときの、(a)上記医薬の薬効の低下、喪失もしくは過剰な上昇、(b)上記医薬による副作用の発現もしくは増大、および/または(c)上記医薬の投与前に生じていない特定疾患の高い発症率である。しかし、実際には、後述の〔実施形態2〕に例示する通り、上記所望されない影響は、1つの上記「アレルの型」のみでは現れず、多数の座位についての多数の「アレルの型」によって累積されたときに現れることが多い。
したがって、図1に示すように、上記システムは、上述した一律の要因にしたがって医師が指定した患者Aに対する医薬Bの投与計画(投与量Cの指定が含まれている)を、上記悪影響が患者Aの遺伝型情報に合わせて抑えられているオーダーメイド投与計画(例えば医薬B’および投与量C’)に変更する提案を行う。投与計画を変更するための判断基準としては、(1)医薬Bの薬物動態学的要因、(2)医薬Bの薬力学的要因および(3)医薬Bによる副次疾患の発症リスクが挙げられる。後述する〔実施形態1〕では、(1)および(2)を上記判断基準にする例を説明する。後述する〔実施形態2〕では、(3)を上記判断基準にする例を説明する。後述する〔実施形態3〕では、(1)~(3)の組み合わせを上記判断基準にする例を説明する。なお、「薬物動態学(pharmacokinetics)」は、ある薬物と標的分子とが接触する確率を変化させる、薬物またはその代謝物の生体内における挙動を表し、「薬力学(pharmacodynamics)」は、ある物質(薬物)が生体内の標的物質に作用する強度を表す。上記「薬物動態学」および「薬力学」については、関連タンパク質の特徴とともに、〔実施形態1〕にも後述されている。
(1)および(2)は、患者に投与される医薬Bの化学構造が、患者の体内で発現されているタンパク質と相互作用する程度(医薬Bの薬物動態学的要因または薬力学的要因)を適切に制御するために、利用される。(3)は、患者に固有の遺伝学的背景に基づくある疾患の発症リスクを、医薬の投与(人為行為)によって顕在化(つまり当該疾患を発症)させないために、利用される。
図1の(発明のシステム)にあるグラフは、ある特定の疾患の発症リスクを視覚的に示している。当該グラフでは、ヒト母集団における遺伝的背景の頻度を縦軸に、各遺伝的背景と相関するある疾患への感受性(罹りやすさ)を横軸にしたとき、1つの疾患に対するヒト母集団の発症リスクはおよそ正規分布をとることが示されている。グラフに示す通り、ヒト母集団のうち、閾値の右側に存在する集団(横軸、閾値の破線および曲線に囲まれる部分/横軸および曲線に囲まれる部分)が、ある疾患を発症しやすい遺伝的背景を有している(例えば、Falconer DS (1965) The inheritance of liability to certain diseases estimated from the incidence among relatives. Ann Hum Genet 29:51-76; doi 10.1111/j.1469-1809.も参照)。ただし、閾値の右側に存在するヒト個体A1およびA2は、高い発症リスクを有しているだけで、実際に発症しているとは限らない。A1およびA2は非常に近い発症リスクを有している。しかし、例えば、A1は未発症であるが、A2は発症していることがあり得る。疾患の発症には種々の要因が関与するが、医薬の投与(ある疾患の遺伝的素因を疾患の発症につなげる人為的な環境要因)が未発症のA1にある疾患を発症させることを防ぐ目的で、上記(3)は利用される。
患者Aの遺伝型情報は、一例として、以下に示す2つの異なる方法により決定し得る(図1の下部参照)。例えば、当該患者から得られたゲノムの全ヌクレオチド配列を表す文字列(4種類のアルファベットATGCによって表記される約30億文字、以降では「全長文字列」と記載する)のうち、少なくとも1つの座位に存在する既知のDNAバリアントを含む部分ヌクレオチド配列を表す文字列(以降では「アレル文字列」と記載する)を抽出する。次いで、当該文字列を、標準的なヒトゲノムの全ヌクレオチド配列を表す全文字列(4種類のアルファベットATGCによって表記される約30億文字、以降では「参照文字列」と記載する)と比較し、当該DNAバリアントのアレルの組み合わせの型(患者の「遺伝型」)を特定することによって決定され得る。なお、参照文字列は、アンサンブル(Ensembl、URL:http://ensembl.org)をはじめとした公共のデータベースから取得可能である。あるいは、別の方法として、患者Aの遺伝型情報は、例えば、当該患者から得られたゲノムDNA試料の一部を、現行のマイクロアレイ技術(ゲノム網羅的な多型解析技術)などを用いて、「参照文字列」に対応する既知の全SNPを含むヌクレオチド配列からなる各断片と、ストリンジェントな条件(完全マッチの配列のみを許容する条件(温度、塩濃度))でハイブリダイズさせることによって、実験的手法により決定され得る。なお、患者の「遺伝型」情報の決定方法の詳細については、各実施形態内にも後述されている(特に、〔実施形態4〕においては、上記「全長文字列」を用いた情報解析による決定法について、具体例も含め、詳述されている)。
本発明の係るいくつかの実施形態を、以下に詳細に説明する。
〔実施形態1〕
本実施形態では、上記適合度が、上記患者に生じると予想される上記医薬の薬効に基づいて判断されることを例に説明する。本実施形態のシステムは、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子が存在する座位および当該遺伝子に関連する座位にある接合型を含むアレルの組み合わせの型(「アレルの型」)を、上記遺伝型として少なくとも参照する。つまり、本実施形態のシステムは、当該遺伝子に関連する遺伝型(「アレルの型」)が上記医薬の薬効に影響する程度を表す情報(医薬薬効関連遺伝子情報)を参照して、上記適合度を決定する。
(薬物動態学および薬力学に関与するタンパク質)
薬物の薬効は、薬物動態学に関与するタンパク質および/または薬力学に関与するタンパク質の遺伝学的多様性によって部分的に決定される。薬物動態学に関与するタンパク質としては、例えば、薬物の吸収、循環、送達、代謝および排泄に関与するタンパク質が挙げられる。つまり、薬物動態学は、薬物と標的分子とが接触する確率を変化させる、薬物またはその代謝物の生体内における挙動を指す。薬力学に関与するタンパク質は、薬物の標的分子であり得る。当該標的分子としては、例えば、受容体、シグナル分子、および薬物の薬理遺伝学的作用に関連する生物学的経路を構成するタンパク質が挙げられる。
図2に示すように、投与計画提案システム(患者にとって好適な投与計画を提示するシステム)1は、コンピュータに内蔵されている制御部2、および表示装置(情報表示部)3を備えている。制御部2(図2)は、図2の情報取得部(医薬情報取得部、関連性情報取得部および遺伝型情報取得部)21、適合度決定部22および医薬情報変更部23を備えている。図2の情報取得部21、適合度決定部22および医薬情報変更部23は、制御部2(図2)におけるCPU(Central Processing Unit)に含まれている。制御部2(図2)は、図2の入力装置4(例えばキーボードおよび/またはマウス)、医薬薬効関連遺伝子情報DB5およびゲノム情報DB6と接続されている。図2の投与計画提案システム1は、入力装置4および上記の2つのDB(データベース:すなわち、医薬薬効関連遺伝子情報DB5およびゲノム情報DB6)から取得した情報に基づいて制御部2(図2)によって生成された情報を、表示装置3(図2)を介してユーザに出力するシステムである。
(投与計画提案システム1の処理)
医薬の有効性を向上させるために、図2の投与計画提案システム1が実行する処理の一例を、図3を参照して以下に説明する。入力装置4(図2)は、従来の一律の要因(主に、患者が患っている疾患の種類、当該疾患の重症度ならびに患者の年齢、体重および性別など)にしたがって、ユーザである医師によって入力された医薬情報301(図4)を情報取得部21(図2)に送る(図3のS1工程)。図2の情報取得部21は、医薬情報301(図4)に含まれている医薬名が表す薬剤の名称と、当該薬剤の薬効と関連する遺伝子の名称と、当該遺伝子に関連する既知のDNAバリアント(例えばSNP)における全通りの「遺伝型」と、当該遺伝型に応じた当該薬剤の薬効とを記述している関連性情報311(図4)を、図2の医薬薬効関連遺伝子情報DB5(例えば、DGIdb:Drug Gene Interaction database、URL:http://dgidb.org/の情報を元に構築可能)から取得する(図3のS2工程で「YES」)。図2の情報取得部21は、医薬情報301(図4)に記載された「患者ID」情報、および関連性情報311(図4)に含まれている遺伝子名に基づいて、患者IDおよび遺伝子に対応する患者の遺伝型情報を、図4の関連性情報311に記載の「遺伝型」の表記法にしたがった記号として、ゲノム情報DB6(図2)から取得する(図3のS3工程で「YES」)。情報取得部21(図2)は、取得した医薬情報301(図4)、関連性情報311(図4)、およびゲノム情報DB6(図2)から取得した患者の遺伝型情報を適合度決定部22(図2)に送る。
なお、図3のS2工程で「NO」(例えば、開発されてから間もない薬剤であるため、関連性情報が存在しない)のとき、図2の情報取得部21は、医薬情報301(図4)を表示装置3(図2)に送る(図3のS9工程)。図2の表示装置3が上記医薬情報を表示し、投与計画提案システム1(図2)は処理を終了する。また、図3のS3工程で「NO」(例えば、患者における特定の遺伝子に対応する遺伝型情報が、まだ決定されていない)のとき、情報取得部21(図2)は、医薬情報301(図4)を表示装置3(図2)に送る(図3のS9工程)。表示装置3(図2)が上記医薬情報を表示し、図2の投与計画提案システム1は処理を終了する。
図2の適合度決定部22は、関連性情報311(図4)およびゲノム情報DB6(図2)から情報取得部21(図2)を介して取得した患者の遺伝型情報に基づいて医薬情報301(図4)の適合度を決定する(図3のS4工程)。図3のS4工程の詳細を、図4を参照して説明する。
図4に示されている関連性情報311は、医薬名に対応する有効成分(医薬名:フェニトイン(抗てんかん薬))、当該有効成分の薬物動態学に関与するタンパク質をコードする遺伝子(関連遺伝子:CYP2C9(薬剤代謝酵素遺伝子))、当該遺伝子上に存在する既知のSNP(SNP部位:rs1057910)、SNP(rs1057910)における記号化された「遺伝型」の総体(遺伝型:「*1/*1」、「*1/*3」および「*3/*3」)、および各遺伝型に対応する有効成分の代謝率(薬効に対応)(代謝率(薬効):「±0」、「-1」および「-2」)を含んでいる関連性情報を示している。フェニトインは、強直間代発作(全般痙攣発作、大発作)、焦点発作(ジャクソン型発作を含む)などのてんかんの痙攣発作、自律神経発作、精神運動発作などの症状を緩和する効果を示す薬剤である。
関連性情報311(図4)では、CYP2C9のコード領域内の1075位にSNP(rs1057910)が存在し、その遺伝型のタイプ「*1」は野生型アレルを表し、実際のヌクレオチドの塩基の種類は「アデニン(A)」である。また、遺伝型のタイプ「*3」は、フェニトインの代謝率が低下することが知られている低代謝型アレルを表し、実際のヌクレオチドの塩基の種類は「シトシン(C)」である。関連性情報311(図4)には、集団内での頻度が最も多いCYP2C9の遺伝型(正常型)「*1/*1」(実際のヌクレオチドの組み合わせの型:「A/A」)に対応するフェニトインの代謝率(薬効)「±0」を基準にして、特定の患者の遺伝型が低代謝型アレル「*3」(実際のヌクレオチドの塩基:「C」)を含んでいる数(無名数)だけ差し引かれた代謝率(薬効)が示されている。つまり、関連性情報311(図4)は、従来の一律の要因にしたがうフェニトインの投与が、遺伝子CYP2C9の1075位にあるSNPのヌクレオチド変化の組み合わせの型(「A/A」、「A/C」または「C/C」)に応じて異なる記号化された遺伝型(「*1/*1」、「*1/*3」または「*1/*1」)を有している患者に対して、異なる代謝率(薬効)(「±0」、「-1」または「-2」)を示すことを表している。
以上に説明した図3のS4工程にしたがって、適合度決定部22(図2)は、医薬情報301(図4)、関連性情報311(図4)、および患者の遺伝型情報として「*1/*3」を情報取得部21(図2)から取得しているとき、医薬情報301(図4)におけるフェニトインの代謝率(薬効)の値を「-1」と決定する。なお、上記「*1/*3」は、患者におけるCYP2C9の「アレルの型」がヘテロ接合型であることを表す遺伝型情報である。当該遺伝型情報は、医薬情報301(図4)に記述されている「患者ID:123456789」および関連性情報311(図4)に記述されている「関連遺伝子:CYP2C9」に基づいて、情報取得部21(図2)によってゲノム情報DB6(図2)から取得されている。
なお、図4の医薬情報301に含まれている医薬名M(medicine)に関連する遺伝子が2つ存在する(図4の関連性情報311に2つ遺伝子名G(gene)1およびG2が記述されている)とき、情報取得部21(図2)は、遺伝子名G1およびG2に対応する2つの関連性情報R(relationship)1およびR2、ならびに患者の遺伝型情報Gt(genotype)1およびGt2を適合度決定部22(図2)に送る。2つの関連性情報R1およびR2、ならびに2つの患者の遺伝型情報Gt1およびGt2を受け取った適合度決定部22(図2)は、当該医薬名に対応する適合度の要素F(factor)の値を、各遺伝子名G1およびG2ごとに決定し、2つの値(例えば、G1:±0、G2:-2)を合計した値「-2」を医薬Mの適合度として決定する。
以上の説明では上記適合度の要素として、フェニトインの代謝率(薬効)を例示している。薬剤および薬剤に関与する遺伝子の種類に応じて、適合度の要素は変化する。例えば、図4の関連性情報312には、薬物動態学的要因により、抗血小板薬であるクロピドグレル硫酸塩(プロドラッグ、以降では、単に「クロピドグレル」と記載する)が、CYP2C19(薬剤代謝酵素遺伝子)によってクロピドグレルの活性化合物に変換される代謝率(薬効に対応)が用いられている。クロピドグレルは、ADP(アデノシン2リン酸)の働きを阻害し、血小板の活性化に基づく血小板凝集を抑え、血栓の形成を抑え血管をつまらせないようにする薬剤であり、通常、虚血性脳血管障害の再発の抑制、末梢動脈疾患における血栓・塞栓形成の抑制などに用いられる。また例えば、図4の関連性情報313には、薬力学的要因により、高血圧症治療薬であるペリンドプリルエルブミン(有効成分)の標的分子であるアンジオテンシン転換酵素(以降では、「ACE」と記載する)に対する直接的な作用(つまり薬効)が用いられている。ペリンドプリルエルブミンはプロドラッグであり、経口吸収後ジアシド体(ペリンドプリラート)に加水分解され、このジアシド体が血中および組織中のACEを特異的に阻害し、昇圧物質であるアンジオテンシンIIの生成を抑制し、末梢血管抵抗を減少させる。1つの薬剤の代謝率および薬効(適合度)にそれぞれ関与する複数のアレルに、多型やバリアントが知られているとき、適合度の要素F(factor)の数と同じ関連性情報(図2の医薬薬効関連遺伝子情報DB5に格納)ならびに患者の遺伝型情報(図2のゲノム情報DB6に格納)を、情報取得部21(図2)は取得し、適合度の要素ごとにF1、F2・・・Fnの値を決定し、合計することにより最終的な適合度を算出する。
図2の適合度決定部22は、関連性情報311(図4)において、上述の通り、CYP2C9内のSNP(rs1057910)に関する遺伝型情報としてヘテロ接合型「*1/*3」を取得しているとき、通常の遺伝型(正常型)「*1/*1」に対応する代謝率(薬効)の値「±0」、およびヘテロ接合型「*1/*3」に対応するフェニトインの代謝率(薬効)の値「-1」を合計した値「-1」を、医薬情報301(図4)の代謝率(薬効)に関する適合度(1だけ低い)として決定する。適合度決定部22(図2)は、医薬情報301(図4)および適合度「-1」を医薬情報変更部23(図2)に送る。
図2の医薬情報変更部23は、負の値である適合度「-1」を低いと判断する(図3のS5工程)。医薬情報変更部23(図2)は、代謝率(薬効)「-1」にしたがって、医薬情報301(図4)における一日服用量のうち、維持投与量(初期投与期間の経過後に継続的に投与される薬剤の投与量で、医薬情報301(図4)に記載された「1日服用量(維持量)」)を1単位(1単位=医薬情報301に記載の25%)だけ減少させ、薬効「±0」にする(図3のS6工程)。図3のS6工程における変更が「一日服用量(維持量)」である(図3のS7工程での判断は「NO」)ので、上述の通り、医薬情報変更部23(図2)は「一日服用量(維持量)」を300mgから25%減じた投与量として、225mgに変更した変更医薬情報302(図4)を表示装置3(図2)に送る。なお、初期投与量に変更は無く、図4の医薬情報301に記載された「一日服用量(初期量)300mg」」のままである。表示装置3(図2)が変更医薬情報302(図4)を表示し、投与計画提案システム1(図2)は処理を終了する。なお、図4の変更医薬情報302における一日服用量が投与限界を超えるとき、医薬情報変更部23(図2)は、変更医薬情報302(図4)における医薬の変更を実行する(図示せず)。
以上の例示した図3のS4工程と異なり、適合度決定部22(図2)は、ゲノム情報DB6(図2)から患者の遺伝型情報として正常型「*1/*1」を取得しているとき、フェニトインの代謝率(薬効)の値を「±0」と決定し、医薬情報変更部23(図2)に送る。医薬情報変更部23(図2)は、代謝率(薬効)の値「±0」を低くないと判断し、医薬情報301(図4)を表示装置3(図2)に送る。表示装置3(図2)が上記医薬情報を表示し、投与計画提案システム1(図2)は処理を終了する。
また、上述の例では医薬情報に対する変更は医薬の種類の変更ではなかったので、図2の医薬情報変更部23は図3のS7工程で判断「NO」を行った。しかし、例えば、下記条件にあてはまるとき、医薬情報変更部23(図2)は医薬の種類を変更する。条件:医薬情報に記述されている医薬名が「クロピドグレル」であり、かつ情報取得部21(図2)が関連性情報312(図4)であり、かつゲノム情報DB6(図2)から取得した患者の遺伝型情報が「*2/*2」、「*3/*3」または「*2/*3」のいずれかであるため、代謝率(薬効)が非常に低い「-2」。上述の通り、クロピドグレルは、プロドラッグであり、その活性化合物に変換されない限り、薬効を生じない。つまり、上記条件にあてまるとき、有効成分であるクロピドグレルの活性化合物は、投与量に関わらず、患者の体内にほとんど産生されない。したがって、投与量の増加は薬効を見込めないので、図2の医薬情報変更部23(図2)は医薬の種類を変更する。医薬情報変更部23(図2)は、医薬名を変更した(図3のS7工程で判断「YES」に該当する)医薬情報を情報取得部21(図2)に送り、図3の処理S2工程に戻る。なお、図4の関連性情報311~313、およびその他の関連事項の詳細については、本実施形態における項目(関連性情報311~313)にて後述されている。
以上の通り、本実施形態の投与計画提案システム1(図2)は、医師の指定した医薬情報301(図4)に記載された医薬の種類またはその用量を、患者の「遺伝型」(当該医薬の薬効に影響を与える遺伝子と関連するアレルの組み合わせとしての患者の「遺伝型」)に適合していないと判断したとき、変更する。したがって、投与計画提案システム1(図2)は、従来の一律の要因にとらわれずに、患者の遺伝型に応じて薬効に優れたオーダーメード投与計画を提案できる。
投与計画提案システム1(図2)が患者にとって適切な投与計画を提示するための遺伝型情報および関連性情報の詳細を、以下に説明する。
(患者の遺伝型情報)
遺伝型情報は、患者に固有な、1つの座位に存在するアレル(本実施形態では1つの遺伝子に関連するアレル)の組み合わせの型(「アレルの型」)を表している。当該「アレルの型」の決定には、大きく分けて2通りの方法がある。当該方法は、患者から得られたゲノム全長の構造を表す情報(「全長文字列」)を用いる「方法1」、および患者由来のゲノムDNA試料を用いて、集団内で頻度の高く、かつ自動解析に適したDNAバリアントのみ(例えば、SNP)を対象に、ゲノム網羅的な多型解析による実験的手法を用いる「方法2」である。
前者の「方法1」は、大規模並列DNA塩基配列決定法(次世代塩基配列決定法)を利用して実施され得る。大規模並列DNA塩基配列決定法では、非常に多くの(時には数百万もの)ヌクレオチド配列を含む複雑なDNAサンプルを、同時かつ均等に配列決定できる。このため、大規模並列DNA塩基配列決定法は、従来のジデオキシ塩基配列決定法(サンガー法)と比較して、患者由来の血液細胞や各種組織などから定法により抽出されたゲノムDNA試料を用いて、短時間かつ低コストで、当該患者の全ゲノム(約30億のヌクレオチド数)に対応する文字列(「全長文字列」)情報に変換することが可能である。上記「全長文字列」に含まれている文字もしくは文字列(およびそれらの位置)をすべて決定し、ヒトゲノムの参照ヌクレオチド配列を表す文字列(「参照文字列」)と比較することによって、患者のゲノム上の特定の座位に関する遺伝型を決定できる。
例えば、ある座位に存在し得るアレルのヌクレオチド配列を表す文字列(「アレル文字列」)および集団内で当該アレル間にヌクレオチド配列の変化を生じている位置(既知のDNAバリアント)を表す情報は、集団での頻度の高い場合(例えば、SNP)、一般に利用可能なDB(例えば、dbSNP(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/))に格納されている。したがって、1つの座位に関するアレル文字列の組み合わせの型(「アレルの型」)のうち、「全長文字列」がどの型を含んでいるかを決定することによって、患者の有している1つの座位に関する遺伝型を決定できる。一例として、患者の遺伝型情報の決定過程の概略を、以下に説明する。
・一般に利用可能なDB(例えば、上述したdbSNP)に格納されている既知のDNAバリアントの位置を表す上記情報に基づいて、「全長文字列」に含まれている、上記「アレル文字列」における、当該DNAバリアントの両側の位置に隣接する2つの文字列(例えば約10~100文字)を決定する
・「全長文字列」における上記2つの文字列(すなわち、当該DNAバリアントの両側の位置に隣接する2つの文字列)が「参照文字列」と完全一致する位置を、周知の文字比較アプリケーションを用いて決定する
・「全長文字列」と「参照文字列」の間で、上記2つの文字列が完全一致する位置に挟まれている当該DNAバリアントに対応する文字(列)の一致、不一致にしたがって、「全長文字列」にある当該DNAバリアントの「アレルの型」(すなわち、患者の「遺伝型」)を決定する。
なお、上述した「全長文字列」を用いた情報解析による「患者の遺伝型情報」の決定方法(「方法1」)の詳細については、具体例も含め、〔実施形態4〕に後述されている。
一方、上述した後者の「方法2」(ゲノム網羅的な多型解析による実験的手法を用いた方法)としては、上記DNAバリアントが、集団内で頻度の高く、かつ自動解析に適したDNAバリアント(例えば、SNP、またはゲノムにおける1から数ヌクレオチドの欠失もしくは挿入(インデル))であるとき、すでに商業化(市販キットおよび委託実施サービスの存在)されているマイクロアレイ技術は、多数(数万~数十万)のゲノム断片における多型の種類を短時間に決定可能である。マイクロアレイ技術の詳細については、キットのマニュアルまたは委託業者のHPを参照すればよい。
以上の通り、患者の遺伝型情報は、上述した前者の「全長文字列」情報を用いる「方法1」および/または後者のゲノム網羅的な多型解析による実験的手法を用いる「方法2」によって(またはこれらの方法の実施の間に)決定され得る。したがって、図2のゲノム情報DB6に格納されている患者の遺伝型情報は、(1)「全長文字列」(患者のゲノム情報)、(2)互いに関連付けられている患者の「遺伝型」を表す情報および当該患者を表す情報、ならびに(3)2つの当該情報が記号化されている情報(例えば、上述した図4の関連性情報311に記載された「遺伝型」を参照)の少なくとも1つであり得る。上記遺伝型情報は、(2)または(3)であることが好ましい。上記遺伝型情報として(2)または(3)を用いることは、投与計画提案システム1(図2)およびゲノム情報DB6(図2)に求められる性能を小さくし、投与計画提案システム1(図2)の処理速度を向上させ得る。また、上記遺伝型情報として(3)を用いることは、記号の意味を解読できない不特定多数の第三者に(1)および(2)を秘匿できる。例えば、図4の関連性情報312に示すように、薬剤代謝酵素遺伝子CYP2C19内に存在するSNP(rs4244285)について決定された「遺伝型」は、記号化(「*1/*1」、「*1/*2」、「*1/*3」、「*2/*2」、「*2/*3」または「*3/*3」)され得る。
患者の遺伝型情報としての(2)および(3)を生成するための個々のDNAバリアントの「アレルの型」は、集団内での頻度を基準にしたDNAバリアントの種類(決定範囲)に応じて、2段階に分けて決定され得る(図1の下部を参照)。第1段階として、まず集団内で1%以上の頻度であり、かつ自動解析にも適したDNAバリアントとして、既知の全SNPのみがゲノム網羅的に決定され、その情報は、DB、記録媒体または記憶装置(図示せず)に格納される。また、上記の全SNPの解析に基づく患者の「遺伝型」情報が、ゲノム情報DB6(図2)に格納される。なお、全SNPに関する「アレルの型」(患者の「遺伝型」)の決定には、上述した通り、当該患者のゲノムDNA試料を用いた実験的手法による「方法2」により、決定され得る。すなわち、まず上記ゲノムDNA試料は、患者の末梢血、口腔内細胞または頬粘膜などから定法により抽出される。続いて、上記試料を用いて、現行のマイクロアレイ技術によるゲノム網羅的な多型解析による実験的手法により、既知の全SNPに関する「アレルの型」(患者の「遺伝型」)は決定され得る。あるいは、上記の全SNPに関する患者の「遺伝型」(「アレルの型」)を、上述した「全長文字列」(患者のゲノム情報)を用いた情報解析による「方法1」により、決定してもよい(図1の下部を参照)。
次いで、第2段階として、必要に応じて、上記DB、記録媒体または記憶装置に格納されていない残りのDNAバリアントに関する「アレルの型」(患者の「遺伝型」)が、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により決定される。上記「残りのDNAバリアント」としては、集団内で頻度の低いDNAバリアント(例えば、SNV、CNV)、または自動解析に適しないDNAバリアント(例えば、CNP、STRP、あるいはその他の特殊なDNAバリアント)などが想定される(図1の下部を参照)。残りのDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)は、入力装置4(図2)に対する医薬情報301(図4)の入力後に決定される。図2の投与計画提案システム1は、上述の通り、医薬情報301(図4)に含まれている医薬名に基づいて、医薬薬効関連遺伝子情報DB5(図2)から、薬剤の薬効と関連する遺伝子の名称を取得する。投与計画提案システム1(図2)は、当該名称に基づいて、最新のゲノム情報DB6(図2)を検索して、必要なDNAバリアントに関する「アレルの型」(すなわち、患者の遺伝型情報)が格納されていない場合、上述した通り、「参照文字列」情報を検索して、残りのDNAバリアントが存在するゲノム上の座位を、指定する。投与計画提案システム1(図2)は、当該座位のみに存在する残りのDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)を、上記文字列(「全長文字列」)を用いた「方法1」により決定する。投与計画提案システム1(図2)は、決定された残りのDNAバリアントの「アレルの型」(患者の遺伝型情報)を上記ゲノム情報DB6(図2)、ならびに上記DB、記録媒体または記憶装置に格納する(図示せず)。なお、上記文字列(「全長文字列」)情報を用いたDNAバリアントの「アレルの型」(患者の遺伝型情報)の決定方法(「方法1」)は、具体例を含め、後の項目〔実施形態4〕にも詳述されている。
図2には、ゲノム情報DB6は、ネットワーク上に存在する構成として示されているが、制御部2(図2)に内蔵されている記憶部もしくは記録媒体を読み取り可能な読み取り部、または制御部2(図2)に接続されている外部記憶装置または記録媒体を読み取り可能な読み取り装置として、代替可能である。
上記(2)または(3)である上記遺伝型情報は、最新の報告に基づいて更新され得る。当該報告は、ある遺伝子に関連した新たなDNAバリアント、ならびに当該DNAバリアントに関する「アレルの型」(「遺伝型」)の総体の報告である。上述した通り、上記「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により、既存の報告および最新の報告に基づいて新たな(2)または(3)を生成できる。
図3および図4を参照して説明した、投与計画提案システム1(図2)が実行する処理として、上述した通り、2段階に分けて、ゲノム情報DB6(図2)から、患者の遺伝型情報として(2)および(3)を取得する例を示した。すなわち、第1段階として、既知のDNAマイクロアレイ技術を利用した実験的手法を用いる「方法2」(または、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」)により決定した当該患者の全SNP解析情報を、ゲノム情報DB6(図2)に格納する。続いて、第2段階として、必要に応じて、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により、残りのDNAバリアント情報の解析を実施する。
しかし、図2の制御部2が、上述した第1段階として当該患者の全SNP解析情報をゲノム情報DB6(図2)に格納せずに、最初から、第2段階として、必要に応じて、特定のDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)を決定するため、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」を実行してもよい。すなわち、制御部2(図2)が、ゲノム情報DB6(図2)から(1)「全長文字列」(患者のゲノム情報)を取得し、(1)に含まれているアレル文字列を抽出し、患者のゲノム上にある特定の1つの座位、あるいは複数の座位に関する遺伝型を決定する上述の手順を実行してもよい。例えば、最初から、特定のSNPや新規のSNVに関する患者の「遺伝型」(「アレルの型」)を、個別的に、上述した「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)を用いた「方法1」により、決定してもよい。つまり、集団内の頻度や自動解析の適性などの条件に関わらず、あらゆるDNAバリアントに対して、最初から、「全長文字列」情報を用いる「方法1」を適用してもよい(図1の下部を参照)。
あるいは、状況次第で、例えば、「全長文字列」情報(患者のゲノム情報)が、まだゲノム情報DB6(図2)に格納されていない場合、特定のSNPや新規のSNVに関する患者の「遺伝型」に対して、あえて、時間や労力を必要とする個別的な実験手技による方法を用いてもよい。例えば、上述した特定のSNPや新規のSNVに関する患者の「遺伝型」に対して、アレル特異的プライマーを使用したPCRによる現行の増幅抵抗性変異システム(特異的な点変異を検出する技術であり、正常アレルと1塩基違う変異アレルを区別できる方法)などの解析技術を利用して、個別的に、遺伝型を特定してもよい。
個人情報を保護する観点から、図2のゲノム情報DB6の情報は暗号化されているか、またはゲノム情報DB6(図2)の情報には、アクセス制限が設けられていてもよい。上記暗号化およびアクセス制限は、情報技術分野で公知の手法によって、実現され得る。個人情報を保護する類似の観点から、上記システムは、ゲノム情報DB6(図2)ではなく、記録媒体に記録されている遺伝型情報を取得してもよい。
(関連性情報311~313)
本実施形態では、上記遺伝型は、図4の関連性情報311に示されている通り、薬物動態学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子に関する遺伝型である。図4の関連性情報311は、医薬および遺伝子の関連性(特に有効成分の代謝速度が、遺伝子の遺伝子機能と関連したアレルの遺伝型によって受ける影響)を表している。
関連性情報311(図4)には、フェニトインに対する薬物動態学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子としてCYP2C9遺伝子が示されている。CYP2C9遺伝子には、酵素活性に関連するSNP(rs1057910:図4の関連性情報311を参照)の存在が証明されている。変異アレルを含むCYP2C9遺伝子によって発現されるタンパク質は、抗てんかん薬の有効成分であるフェニトインを酸化する(代謝する)活性が低い。関連性情報311(図4)に示されている通り、活性が低いCYP2C9は、フェニトインの代謝速度を下げる(代謝率(薬効):「-1」または「-2」)ので、フェニトインの循環時間を必要以上に延長し得る。循環時間の延長は、特に長期にわたる薬剤の投与に対して、副作用の増大および薬効の過剰(いずれも有害事象である)をもたらす。
図4の関連性情報312には、クロピドグレルの薬物動態学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子としてCYP2C19遺伝子が示されている。CYP2C19遺伝子内に存在する既知のSNP(rs4244285)には、いくつかの変異アレルの型が存在し得ることが知られている(図4の関連性情報312を参照)。当該変異アレルを含むCYP2C19遺伝子によって発現されるタンパク質は、クロピドグレルのように酸化を受けて薬効を発揮する医薬の体内における代謝を行わない、または当該代謝を弱める。つまり、変異アレルを含むCYP2C19遺伝子は、関連性情報312(図4)に示されている通り、患者の遺伝型によってはクロピドグレルの活性化合物への代謝率を下げる(代謝率(薬効):「-1」)、または当該代謝率を実質的に0にする(代謝率(薬効):「-2」)。なお、「推奨される治療方針(用量調整)」(CLINICAL PHARMACOLOGY & THERAPEUTICS 89(5): 662-673, 2011およびOrgan Biology 21(2): 247-253, 2014などを参照)にしたがって、医薬情報に記述されている一日投与量が投与限界量に近いとき、図2の医薬情報変更部23は、負の値の代謝率(代謝率(薬効):「-1」および「-2」)に対して、一律に医薬の種類の変更を実行してもよい。
他の例である図4の関連性情報313には、特殊なDNAバリアントの一つとして、ペリンドプリルエルブミンの薬力学に関与するタンパク質(直接的な標的タンパク質)をコードしている遺伝子としてACE遺伝子には、そのイントロン15内に短鎖散在反復配列であるAlu配列の欠失/挿入の多型が含まれ得ることが知られている。Alu配列が挿入された遺伝子は、スプライシング異常またはエクソン欠失などを生じるため、Alu配列を欠失している当該遺伝子と比べて、異常なタンパク質の発現またはタンパク質の異常な発現パターンを高頻度に示す。つまり、Alu配列が挿入されたACE遺伝子を有している個体には、ペリンドプリルエルブミンの薬効が低いか、またはほとんどない。例えば、ACE遺伝子内にAlu配列が挿入されたアレルを1つ保持するヘテロ接合体(「Alu+/Alu-」)の場合、薬効「-1」と決定する。あるいはAlu配列が挿入されたアレルを2つとも保持するホモ接合体(「Alu+/Alu+」)の場合は、薬効「-2」と決定する(図4の関連性情報313を参照)。
図4の関連性情報311~313には、医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子、当該遺伝子の遺伝型および当該遺伝型に応じて変化する適合度の要素のそれぞれを表す情報が含まれている。上記情報(図4の関連性情報311~313)に記載された関連性情報(医薬、関連遺伝子、遺伝型、ならびに薬効情報)、およびその他の医薬に関する関連性情報は、公知の文献(例えば、CLINICAL PHARMACOLOGY & THERAPEUTICS 89(5): 662-673, 2011のTabel 1、ならびにOrgan Biology 21(2): 247-253, 2014の表1および表2などを参照)にまとめられており、容易に入手可能である。Organ Biology 21(2): 247-253, 2014の表1は、旧版の医療用医薬品集から抜粋されている。最新の医療用医薬品集の内容は、書籍名「JAPIC医療用医薬品集2020(発行日:2019年8月30日、発売元:丸善出版株式会社)を参照すればよい。CLINICAL PHARMACOLOGY & THERAPEUTICS 89(5): 662-673, 2011のタイトルの一部「An Update of Guideline」および医療用医薬品集における内容の更新などから明らかな通り、上記情報(図4の関連性情報311~313)の関連性情報、ならびにその他の医薬に関する関連性情報は、新情報の追加および旧情報の更新によって、今後もより拡充され、かつより精度を増す。したがって、関連性情報311~313(図4)、ならびにその他の医薬に関する関連性情報は、本実施形態の実施時における最新の情報に基づいて作成されることが好ましい。例えば、関連性情報311~313(図4)、ならびにその他の医薬に関する関連性情報は、人工知能(Artificial Intelligence、以降では「AI」と記載する)によって生成され得る(図1を参照)。上記新情報の追加の入力を受けたAIは、旧情報の更新に使用される新たな、医薬および遺伝子の関連性を出力し得る。
上記情報(図4の関連性情報311~313)のうち、遺伝型に応じて変化する適合度の要素(例えば、代謝率および薬効)を表す情報は、上記公知の文献や資料に記載の関連性情報にしたがって、任意に記述され得る。関連性情報312(図4)には、薬剤代謝酵素遺伝子CYP2C19内のSNP(rs4244285)における各遺伝型に対応する代謝率(薬効)の値は、「±0」、「-1」および「-2」と記述されている。例えば、Organ Biology 21(2): 247-253, 2014には、「CYP2C19の遺伝子多型では、CYP2C19*2と*3タイプが重要である.いずれも活性の消失を伴うタイプであるため、この2種類の対応の組み合わせで酵素欠損者と診断される.」と記載されている。この記載にしたがって、関連性情報312(図4)における代謝率(薬効)の値「-2」を「消失」に書き換えてもよい。関連性情報312(図4)における代謝率(薬効)「消失」は、例えば、プロドラッグであるクロピドグレルがCYP2C19によってその活性化合物に代謝されない(薬効成分に変換されない)ことを表し得る。したがって、代謝率(薬効)「消失」を、図2の適合度決定部22は「-∞(医薬が適合しない)」と判断し、医薬情報変更部23(図2)は医薬情報301(図4)における医薬名を代替薬に変更する。このとき、代替薬がなければ、投与量を「0」に変更した変更医情報をユーザに出力してもよい。
なお、本発明の対象となる薬剤および遺伝型は、当然、上記に示したものに限定されず、様々な薬剤および遺伝型を対象とすることができる。例えば、薬物動態学的要因に関する遺伝型の例としてトランスポーターの遺伝子多型の例を挙げれば、以下の通りである。
脂質異常治療薬であるHMG-CoA還元酵素阻害薬(ブラバスタチン、アトルバスタチンなど)は、肝臓に選択的に取り込まれて薬効を示すが、その取り込みにトランスポータータンパク質OATP1B1(Organic Anion Transporting Polypeptide 1B1)が重要な働きをしている。そのOATP1B1をコードする遺伝子内のSNPのうち、アミノ酸置換を伴う変異型(塩基変化:「521T>C」)では、正常型と比較して、肝臓への取り込みの減少により、経口投与されたブラバスタチンやアトルバスタチンなどの薬物は、代謝、胆汁中排泄を免れて中心静脈を流れるため、血中濃度が上昇する。その結果、血中の薬物濃度が治療濃度域より高い状態になり、薬物中毒などの副作用を起こすリスクが高い。そこで、正常型(遺伝型:「T/T」)の薬効の値「±0」に比べて、ヘテロ接合型は「-1」(遺伝型:「T/C」)、ホモ接合型(遺伝型:「C/C」)は「-2」低いと決定し得る。
また、薬力学的要因に関する遺伝型の例として薬物受容体の遺伝子多型の例を挙げれば、以下の通りである。
薬物受容体タンパク質β-アドレナリン受容体(ADRB2)をコードする遺伝子内のSNPのうち、アミノ酸置換を伴う変異型(塩基変化:「46A>G」)では、気管支拡張薬クレンブテロール塩酸塩などのβ作動薬の投与により、ADRB2をコードする遺伝子の発現量が減少するダウンレギュレーションが起こる。その結果、気管支喘息の重症化やβ作動薬への反応性が低下する。そこで、正常型受容体(遺伝型:「A/A」)の薬効の値「±0」に比べて、ヘテロ接合型(遺伝型:「A/G」)は「-1」、ホモ接合型(遺伝型:「G/G」)は「-2」低いと決定し得る。
また、ADRB2遺伝子の別の変異(塩基変化:「491C>T」)では、β受容体作動薬などのアゴニストとの結合能が、正常型(遺伝型:「C/C」)の4分の1に低下して、β作動薬への反応性が低下する。そこで、正常型の薬効の値「±0」に比べて、ヘテロ接合型(遺伝型:「C/T」)は「-1」、ホモ接合型(遺伝型:「T/T」)は「-2」低いと決定し得る。
以上の通り、薬物動態学および薬力学に関する図4の関連性情報311~313(上記追加の実例内容を含む)は、医師の指定した投与計画が特定の患者に対して低い適合度を有しているとき、当該低い適合度を改善させる提案として、投与量(増加または減少)の変更または医薬の変更を、少なくとも記述している。医薬情報301(図4)の適合度を判断する基準として関連性情報311~313(図4)を使用する投与計画提案システム1(図2)は、低い適合度の改善を求める提案を医師に提示可能である。
(その他)
上記システムを実行するプログラム全体は、外部(ユーザの使用するコンピュータ)からアクセス可能なイントラネットまたはインターネットを介して実行可能である。上記システムは、ユーザに出力した情報を、紙面に印刷するための印刷装置(例えばプリンタまたは複合機)と接続されていてもよい。
〔実施形態2〕
本実施形態では、上記適合度が、医薬の投与によって治療対象でない疾患を発症する素因(発症リスク)に基づいて判断されることを例に説明する。本実施形態に係るシステムは、ヒトゲノム上の多数の座位に関するアレルの組み合わせの型の集合を、上記遺伝型として参照するが、本実施形態はこれに限定されず、1つまたは少数の座位に関するアレルの組み合わせの型の集合を、上記遺伝型として参照し得る(例えば、「単一遺伝子疾患」の実例について、後述されている)。当該遺伝型により上記素因の有無を決定する。つまり、本実施形態のシステムは、医薬の投与と関連して疾患を発症する素因を表す情報(医薬関連疾患情報)を参照して、上記適合度を決定する。つまり、本実施形態は、患者が遺伝学的に発症しやすいが、未だ発症していない疾患の、当該疾患に対する禁忌薬(投薬を行ったときに病状を悪化させる、深刻な副作用が出現する、薬の効果が弱まるなどの可能性が高まることが知られている医薬品)の継続的かつ多量な投与による発症を抑える。
図5に示すように、投与計画提案システム1’は、図2の投与計画提案システム1における医薬薬効関連遺伝子情報DB5(図2)の代わりに、医薬関連疾患情報DB7(図5)を備えている点を除いて、投与計画提案システム1(図2)と同じである。投与計画提案システム1’(図5)は、医薬の投与によって治療対象でない疾患の発症を回避する安全性の高い投与計画を提案するシステムである。上記疾患には、特異体質による重篤な副作用の症状や関連疾患も含まれ得る(「特異体質による重篤な副作用」の詳細については、後述されている)。
(投与計画提案システム1’の処理)
投与計画の安全性を高めるために、図5の投与計画提案システム1’が実行する処理の一例を、図6を参照して以下に説明する。入力装置4(図5)は、従来の一律の要因(主に、患者が患っている疾患の種類、当該疾患の重症度ならびに患者の年齢、体重および性別など)にしたがって、ユーザである医師によって入力された医薬情報303(図7)を情報取得部21(図5)に送る(図6のS1’工程)。情報取得部21(図5)は、図7の医薬情報303に含まれている医薬名が表す薬剤の名称と、当該薬剤の投与によって発症し得る疾患の名称と、当該疾患に対する素因の有無を表す遺伝型の範囲とを記述している関連性情報314(図7)を医薬関連疾患情報DB7(図5)から取得する(図6のS2’工程)。情報取得部21(図5)は、患者ID(図7の医薬情報303を参照)および当該疾患に対する素因の有無を表す遺伝型に関するDNAバリアント群情報(図7の関連性情報314を参照)に基づいて、患者IDおよび疾患の名称に対応する遺伝型情報をゲノム情報DB6(図5)から取得する(図6のS3’工程)。情報取得部21(図5)は、取得した医薬情報303(図7)、関連性情報314(図7)およびゲノム情報DB6(図5)から取得された患者の遺伝型情報を、適合度決定部22(図5)に送る。
なお、図6のS2’工程で「NO」(例えば、開発されてから間もない薬剤であるか、あるいは対応する疾患がないため、関連性情報が存在しない)のとき、情報取得部21(図5)は、図7の医薬情報303を表示装置3(図5)に送る。表示装置3(図5)が上記医薬情報を表示し、投与計画提案システム1’(図5)は処理を終了する。また、図6のS3’工程で「NO」(例えば、患者における特定の遺伝子に対応する遺伝型情報が、まだ決定されていない)のとき、情報取得部21(図5)は、図7の医薬情報303を表示装置3(図5)に送る。表示装置3(図5)が上記医薬情報を表示し、図5の投与計画提案システム1’は処理を終了する。
図5の適合度決定部22は、関連性情報314(図7)、およびゲノム情報DB6(図5)から取得された遺伝型情報に基づいて医薬情報303(図7)の適合度を決定する(図6のS4’工程)。図6のS4’工程の詳細を、図7を参照して説明する。
図7の関連性情報314は、医薬名に対応する有効成分(医薬名:オランザピン、多元受容体作用抗精神病薬MARTA)、当該有効成分の投与によって発症し得ることが知られている疾患名(疾患名:2型糖尿病)、当該疾患にとっての素因を決める遺伝型と関連したPRSパーセンタイルの数値範囲(遺伝型(PRSパーセンタイル):0-69、70-84および85-100)、2型糖尿病の発症への影響(発症リスク:±0、+1および+2)、および「代替投与計画」(なし、要血糖コントロール、およびXへの薬剤変更)を含んでいる。上記「PRSパーセンタイル」の詳細は、下記項目(患者の遺伝型情報)に後述されている。オランザピンは、統合失調症等の治療、双極性障害における躁症状およびうつ症状の改善ならびに抗悪性腫瘍剤の投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)の改善などに効果を示す非定型抗精神薬である。図5のゲノム情報DB6は、患者がある疾患を発症する素因を表す0~100までの数値(PRSパーセンタイル)を、疾患名ごとに遺伝型情報として格納している。当該数値が100に近いほど、ある疾患を発症する素因が大きいことを表す。したがって、図5の適合度決定部22は、関連性情報314(図7)および2型糖尿病を発症する素因を表す患者の遺伝型情報として「90」を取得しているとき、医薬情報303(図7)におけるオランザピン投与による2型糖尿病の発症リスクを「+2」と決定する。適合度決定部22(図5)は、負の要素である発症リスク「+2」に負の要素を表す値「-1」を乗じた「-2」を適合度として決定する。次いで、適合度決定部22(図5)は、医薬情報303(図7)、適合度「-2」、およびその適合度(「-2」)に対応する関連性情報314(図7)の代替投与計画としての「Xへの薬剤変更」を、医薬情報変更部23(図5)に送る。
図5の医薬情報変更部23は負の値である適合度「-2」を非常に低いと判断する(図6のS5’工程)。医薬情報変更部23(図5)は、代替投与計画「Xへの薬剤変更」にしたがって、医薬情報303(図7)における医薬名を「X」に変更する(図6のS6’工程)。S6’工程(図6)における変更が医薬の変更である(図6のS7’工程での判断は「YES」)ので、医薬情報変更部23(図5)は医薬名をXに変更した変更医薬情報を情報取得部21(図5)に送り、図6のS2’工程に戻る。S7’工程(図6)における判断が「NO」になるまで、投与計画提案システム1’(図5)は、図6のS2’~S7’工程を繰り返す(「NO」になった場合、変更医薬情報を表示装置3(図5)に送る(図6のS8’工程)。また、S6’工程(図6)において1日服用量を変更した場合は、変更医薬情報を表示装置3(図5)に送る。最終的に、表示装置3(図5)が変更医薬情報を表示し、図5の投与計画提案システム1’は処理を終了する。
以上の例示した図6のS4’と異なり、適合度決定部22(図5)は、遺伝型情報として「60」を取得しているとき、オランザピン投与による2型糖尿病の発症リスクの値を「±0」と決定する。適合度決定部22(図5)は、負の要素である発症リスク「±0」に負の要素を表す値「-1」を乗じた「±0」を適合度として決定し、医薬情報変更部23(図5)に送る。医薬情報変更部23(図5)は、適合度「±0」を低くないと判断し、医薬情報303(図7)を表示装置3(図5)に送る。表示装置3(図5)が医薬情報303(図7)を表示し、図5の投与計画提案システム1’は処理を終了する。
以上の通り、図5の投与計画提案システム1’は、処方箋に指定されている医薬情報(医薬の種類またはその用量)を、当該処方箋に指定されている患者の遺伝型(当該医薬による副次疾患の発症リスクの素因に関連するアレルの組み合わせを表す遺伝型)に適合していないと判断したとき、変更する。当該医薬による副次疾患には、特異体質による重篤な副作用を含むものとする(詳細は後述)。したがって、投与計画提案システム1’(図5)は、患者の遺伝型に応じてリスクの小さく、安全性の高い処方の提示を可能にする。
図5の投与計画提案システム1’が、患者にとって適切な投与計画を提示するための本実施形態に係る遺伝型情報および関連性情報の詳細を、以下に説明する。
(患者の遺伝型情報)
本実施形態では、患者にとっての遺伝型情報は、疾患ごとに対応する値(PRS(Polygenes Risk Score;多遺伝子リスクスコア)パーセンタイル)として表されている。2型糖尿病に対応するPRSパーセンタイルは、ヒト母集団が示す2型糖尿病の発症リスクに関するPRSの正規分布(図1を参照)において、患者のPRSが最下位から数えて何%に該当するかを表している。つまりPRSパーセンタイルは0~100であり、PRSパーセンタイルが大きいほど高い発症リスクを表す。2型糖尿病に関するPRSは、2型糖尿病の発症に影響を与える全てのDNAバリアントの「アレルの型」の組み合わせを点数化し、合計した値である。ある疾患の発症に影響する全てのDNAバリアントの「アレルの型」は、例えば、複雑疾患の感受性を支配する因子を同定する標準的手法であるゲノムワイド関連解析(GWAS: Genomewide Association Study)によって同定されている。任意の疾患に関するPRSパーセンタイルおよびPRSの概要は、ReFlections Vol 45, September 2018(https://rgare.com/docs/default-source/newsletters-articles/reflections-vol-45-sept-2018.pdf?sfvrsn=66979288_0)などに示されている。
ほとんどの疾患において、各疾患の発症には、ゲノム上にある多数(数十~数百万)のDNAバリアント(例えばSNP)の存在が関与していることが知られている。個々のDNAバリアントは、疾患の発症率にわずかな影響しか与えないが、これらのDNAバリアントの組み合わせは疾患の発症率を顕著に上昇させる。したがって、上記組み合わせに含まれているDNAバリアントのうち、患者のゲノムに存在する一部のDNAバリアントは、例えば、オランザピンの投与を受けた患者が2型糖尿病を発症する素因の有無(およびその程度)を判断する材料であり得る。本実施形態では、遺伝型情報は、ある特定の疾患を発症する素因に寄与するDNAバリアントの組み合わせの一部として患者がどれだけのDNAバリアントを有しているかを、PRSパーセンタイルによって表している。
上記遺伝型情報は、公知の全疾患の数と同じ数の、各疾患に対応するPRSパーセンタイルを含んでいることが最も好ましい。上述した「これらのDNAバリアントの組み合わせ」は、疾患ごとに異なる。よって、ある患者にとっての遺伝型情報として、全疾患に対応するPRSパーセンタイルを作成するのに必要な上記遺伝型情報を含んでいることは、投与計画提案システム1’の利便性を最大化する。上記遺伝型情報に含まれているPRSパーセンタイルの数が、公知の全疾患の数に近いほど、投与計画提案システム1’の利便性を向上させるので、好ましい。
公知のDNAバリアントの接合型を含むアレルの型(「アレルの型」)を、患者のゲノムを対象に、〔実施形態1〕の項目(患者の遺伝型情報)に記載した2通りの方法(「方法1」ならびに「方法2」)にしたがって、決定可能である。当該方法は、大規模並列DNA塩基配列決定法を利用して決定した「全長文字列」情報を用いる「方法1」、およびDNAマイクロアレイ技術を利用してゲノム網羅的な多型解析をおこなう実験的手法を用いる「方法2」である。全疾患の数と同じ、または当該数に近い数の、疾患に対応するPRSパーセンタイルを含んでいる遺伝型情報の生成には、集団内で頻度の低いDNAバリアント(例えば、SNV、CNV) 、または自動解析に適しないDNAバリアント(例えば、CNP、STRP、あるいはその他の特殊なDNAバリアント)に関する情報も必要になる可能性が高いため、前者の「全長文字列」情報を用いる「方法1」が好ましい。「全長文字列」情報を用いる「方法1」の詳細については、〔実施形態4〕にも後述されている。
上記理由により、図5のゲノム情報DB6は、患者の「遺伝型」情報に加えて、「全長文字列」情報をさらに格納していることが好ましい。すなわち、ある疾患に関与するDNAバリアントが新たに同定され、当該DNAバリアントに関する患者の「アレルの型」を決定して、PRSの一部として点数化する必要がある場合、〔実施形態1〕でも説明したように、上述した「全長文字列」を用いた情報解析による「方法1」は、DNAマイクロアレイ技術を用いた「方法2」やPCRによる個別的な方法などの実験手技による時間や労力の負担がなく、当該疾患に関する一部の遺伝型情報を容易に更新可能である。
(関連性情報314)
本実施形態では、上記遺伝型は、ある特定の疾患に発症する素因に寄与するDNAバリアントの組み合わせに関する遺伝型である。関連性情報314(図7)は、医薬および治療対象外の疾患の関連性(特に医薬の投与が、当該疾患の発症に与える影響)を表している。
図7の関連性情報314には、オランザピンの投与によって発症率が上昇し得る疾患として2型糖尿病が示されている。2型糖尿病の発症率の上昇には、上述の通り、多数のDNAバリアントの存在(遺伝学的素因)が関与することが知られている。関連性情報314(図7)には、遺伝学的素因の程度を判断する基準として、上記遺伝型を表す数値範囲が示されている。各数値範囲には、発症リスクに与える度合い(「±0」~「+2」)が対応付けられている。
各数値範囲は任意に設定され得るが、「+1」(投与量の減少、または必要な対応処置)に対応する数値範囲の下限値は70以上(例えば、70、75、80、85、90および95)であり得、「+2」(医薬の変更)に対応する数値範囲の下限値は85以上(例えば、85、90、95および99)であり得る。図5の適合度決定部22は、医薬情報303(図7)の適合度が低いと決定する(ゲノム情報に、2型糖尿病の素因に寄与するDNAバリアントの組み合わせの一部が閾値以上に存在する)基準として、上記下限値の一方を少なくとも使用する。なお、中央値50のPRSパーセンタイルは、母集団の平均的な発症リスクを表しており、「±0」に対応する数値範囲は50を含んでいる。
図7の関連性情報314は、3つの数値範囲を示しているが、2つの数値範囲(例えば0~84および85~100)のみを示してもよい。このとき、例えば、0~84は「±0」に対応し、85~100は「+2」または「+1」に対応する。つまり、関連性情報314(図7)は、医薬の変更または投与量の変更のみを、図5の投与計画提案システム1’に選択させ得る。また例えば、関連性情報314(図7)は、数値範囲70~84に、代替薬なしではなく、代替薬Xを対応させ得る。つまり、関連性情報314(図7)は、遺伝型に応じて発症リスクを少しでも上昇させる医薬(医薬がある疾患にとっての禁忌薬)に、「非常に低い適合度」を割り当て、「医薬の変更」のみを図5の投与計画提案システム1’に選択させ得る。
関連性情報314(図7)を用いる図5の投与計画提案システム1’は、患者が2型糖尿病を発症しているか否かに関わらず、オランザピン(多元受容体作用抗精神病薬:MARTA)の投与量を減らす、必要な対応処置をする、またはその薬剤の種類を変更することを提案可能である。オランザピンの他に、統合失調症治療薬であるチミペロンがパーキンソン病の発症または重篤化を、あるいは慢性心不全・不整脈治療薬であるカルベジロールが気管支喘息の発症または重篤化を、それぞれ促し得ることが知られている。1つの治療薬(特に低分子薬)が、2以上の分子標的に作用すること、または分子標的ではない複数の分子の生理活性に影響することは、よく知られている。特に、関連性情報314(図7)を用いる投与計画提案システム1’(図5)は、2型糖尿病に対する高い発症リスクを示す遺伝型を有している上記患者への禁忌薬(ここではオランザピン)の投与を変更させる提案を行うことが好ましい。
なお、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構」によれば「禁忌薬」に関する定義は以下の通りである。すなわち、医療用医薬品の「添付文書」情報における「禁忌」とは、当該医薬品を使用してはいけない患者を記載している。以下のような点から考えて、ある医薬品を使用することにより、病状が悪化したり、副作用が起こり易くなったり、薬の効果が弱まるなどの可能性が高いため、使用しないこととされている:
・現在の病気(現疾患)
・ある病気が原因となって起こる別の病気(合併症)
・これまでにかかった病気(既往歴)
・ご家族の方の病気(家族歴)
・現在使われている他のお薬(併用薬剤)
・医薬品を使用する方の体質
(以上、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構」ホームページより)。
すなわち、「禁忌」とは、医薬品の「添付文書」に記載される項目の一つであり、ある医薬品を投薬すべきない患者やその状態、併用してはいけない薬剤を示すものである。これを守らず投薬した場合、病状を悪化させる、深刻な副作用が出現する、薬の効果が弱まるなどの可能性が高まる。投薬してはいけないと判断される状態としては、患者の現疾患名や合併症、既往歴、家族歴や体質などが示され得る。
また、上記「体質」とは、遺伝的体質を含み、本実施形態およびその他の実施形態における、医薬の投与による発症リスクの極めて高い副次的疾患に該当する。遺伝的体質は、後述する「特異体質による重篤な副作用」としての症状や関連疾患も含み得る。このため、現行の各種医薬品の「添付文書」内に「禁忌」として明記された各種の疾患名、ならびに、「特異体質による重篤な副作用」の症状や関連疾患は、本実施形態において、医薬関連疾患情報DB7(図5)における当該薬剤に対する疾患情報として登録することができる。
また、診療に使われる治療薬およびその他の薬物(麻酔薬など)は、一部の人々において過剰な反応を示すことがある。薬物の副作用にはさまざまな原因がある。タイプAの副作用は比較的一般的で、用量依存的である。これは薬理学で予測可能であり、通常軽度である。一方、タイプBの副作用は、特異体質反応で、単に薬物の用量に関連したものではない。この副作用はまれだが、重篤になることがしばしばある。遺伝的多様性はタイプA、Bの両方の副作用において重要である。
タイプBの副作用のようないわゆる「特異体質による重篤な副作用」の症状や関連疾患には、上述した通り、本実施形態における副次疾患による発症リスクの判断基準によって対処が可能である。
例えば、抗てんかん薬のカルバマゼピンや高尿酸症・痛風治療薬のアロプリノールを用いた治療においては、稀に、中毒性表皮壊死融解症(ライエル症候群)などの重篤な皮膚障害の副作用を誘発する。当該副作用にとって重要な遺伝的要因のひとつとして、ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen、以降「HLA」と記載する)をコードする遺伝子群のうち、特定の遺伝型(例えば、「HLA-B*1502」、「HLA-A*3101」、「HLA-B*5801」)を保持する個人は、上記疾患の発症リスクが高い。このため、カルバマゼピンやアロプリノールなどの薬剤に対する中毒性表皮壊死融解症(ライエル症候群)の発症リスク関連情報を、医薬関連疾患情報DB7(図5)に登録して対処し得る。
その他に、薬物による「特異体質による重篤な副作用」の症状や関連疾患として、アトルバスタチンなどのスタチン系薬物(脂質異常症治療薬)による横紋筋融解症(筋組織の破壊)、スキサメトニウム塩化物水和物(即効性筋弛緩薬)による呼吸麻痺、メルカプトプリン水和物(抗悪性腫瘍薬)やアザチオプリン(免疫抑制薬)による骨髄毒性、イソニアジド(抗結核薬)などによる肝障害の誘発、およびクラリスロマイシン(抗菌薬)をはじめとする種々の薬物による多形性心室頻脈などが挙げられ、生命に関わる場合もある。上述した実例をはじめ、様々な薬物による上記タイプBに該当する「特異体質による重篤な副作用」の症状や関連疾患についても、遺伝学的多様性による患者の遺伝型に左右されるため、発症リスク関連情報を、医薬関連疾患情報DB7(図5)に登録して対処し得る。
また、「発症リスク」の適応範囲としては、単一遺伝子疾患~多遺伝子性疾患(多因子疾患、複雑疾患)が含まれる。種々の疾患を含むヒトの遺伝的形質は、多数の遺伝子の発現や環境要因に依存することが多い。しかし、特定の疾患や一部の形質に関しては、単一の座位における特定の遺伝型が主たる決定要因として働き、この遺伝型は、通常の環境化において、形質を発現する、つまり疾患を発症するために必要かつ十分である。
疾患への遺伝子の関与が基本的に1つの座位によって決定される疾患である「単一遺伝子疾患」はまれであり、一般的な遺伝性疾患は、複数の座位に依存しており、多遺伝子性疾患(複雑疾患、多因子疾患)と呼ばれている。本実施形態の適用範囲は、主として「多遺伝子性疾患」を想定しているが、「単一遺伝子疾患」についても対処し得る。
例えば、晩発性の単一遺伝子疾患であるハンチントン病の原因遺伝子の変異型を保持する発症リスクの高い若年成人や、乳癌の原因遺伝子BRCA1、BRCA2の変異型を保持しており、将来的に症状が進展する高いリスクがある無症候な個人に対しても、本実施形態における発症リスク関連情報を、医薬関連疾患情報DB7(図5)に登録し対処し得る。
具体的には、単一遺伝子疾患における医薬関連疾患情報DB7(図5)への登録方法として、劣性遺伝疾患においては、その原因遺伝子に関連したアレルが、ホモ変異型(2つの変異アレルを保持)の場合、発症リスクが極めて高く、発症リスク値を「+2」と決定し、「薬剤変更」と設定し得る。また、優性遺伝疾患においては、原因遺伝子に関連したアレルが、ヘテロ接合型(正常なアレルと変異アレルとを保持)か、または、ホモ接合型の場合、発症リスクが極めて高く、発症リスク値を「+2」と決定して、「薬剤変更」と設定し得る。上記ハンチントン病を例に、原因遺伝子に関連した遺伝型の決定方法について、〔実施形態4〕にて後述する。
〔実施形態3〕
本実施形態では、〔実施形態1〕および〔実施形態2〕に説明した処理を複合的に実行するシステムを説明する(図1参照)。すなわち、本実施形態では、図1に示すように、投与計画を変更するための判断基準として、(1)医薬Bの薬物動態学的要因(〔実施形態1〕)、(2)医薬Bの薬力学的要因(〔実施形態1〕)、および(3)医薬Bによる副次疾患の発症リスク(〔実施形態2〕)、以上(1)~(3)の組み合わせを上記判断基準にするシステムを説明する。図8に示すように、投与計画提案システム1’’は、制御部2および表示装置(情報表示部)3を備えている。制御部2(図8)は、情報取得部(医薬情報取得部、関連性情報取得部および遺伝型情報取得部)21、適合度決定部22および医薬情報変更部23を備えている(図8参照)。また、制御部2(図8)は、入力装置4、医薬薬効関連遺伝子情報DB5、ゲノム情報DB6および医薬関連疾患情報DB7と接続されている(図8参照)。つまり、図8の本実施形態のシステム1’’は、(i)上記遺伝子の遺伝型が上記医薬の薬効に影響する程度を表す情報(〔実施形態1〕)および(ii)上記素因の遺伝型が上記医薬の投与によって上記疾患(副次的疾患)の発症リスクに影響する程度を表す発症リスク情報(〔実施形態2〕)の両方を参照して、上記適合度を決定する。
投与計画提案システム1’’(図8)は、S1~S7(S9を含む)工程(図3を参照)を実行し、S8工程(図3を参照)を実行せずに、変更医薬情報または変更なしの医薬情報に対するS2’~S8’(S9’を含む)工程(図6を参照)を実行する。したがって、図3のS7から図6のS2’工程に移行する処理、およびS2’工程(図6)を実行する詳細を説明する。
例えば、〔実施形態1〕で示したフェニトイン(図4の医薬情報301)の場合、関連性情報311(図4)において、上述の通り、CYP2C9内のSNP(rs1057910)に関する遺伝型情報としてヘテロ接合型「*1/*3」を取得しているとき、S7工程(図3)において、投与計画提案システム1’’(図8)の医薬情報変更部23は、判断「NO」を行った後に、「一日服用量(維持量)」を225mgに変更した変更医薬情報302(図4)を情報取得部21(図8)に送る(図6のS2’工程に移行)。S2’工程(図6)において、変更医薬情報に含まれている変更が一日服用量であるとき、情報取得部21(図8)は、医薬関連疾患情報DB7(図8)から医薬関連疾患情報を取得する。以降のS3’~S9’工程(図6)では、「医薬情報」が「変更医薬情報」に置き換わり、かつ医薬情報変更部23(図8)は、医薬名を変更した(図6のS7’工程で判断「YES」に該当する)医薬情報を情報取得部21(図8)に送り、図3の処理S2工程に戻る2点を除いて、本実施形態は、上述の通り、〔実施形態1〕および〔実施形態2〕において説明した処理を実行するシステムに準ずるものである。
以上の通り、図8の投与計画提案システム1’’は、処方箋に指定されている医薬情報(医薬の種類またはその用量)を、当該処方箋に指定されている患者の遺伝型(当該医薬の有効性に影響する特定遺伝子の遺伝型、および当該医薬による副次疾患の発症リスクの存在を表す特定遺伝子の遺伝型)に適合していないと判断したとき、変更する。したがって、投与計画提案システム1’’(図8)は、患者の遺伝型に応じた総合的な(薬効に優れ、かつリスクが小さく安全である)処方の提示を可能にする。
〔実施形態4〕
本実施形態では、公知のDBに格納されているヒトゲノム(「参照文字列」)ではなく、個人から得られたゲノムの全ヌクレオチド配列(「全長文字列」)における任意のDNAバリアントの「アレルの型」(患者の「遺伝型」)を決定する方法(〔実施形態1〕および〔実施形態2〕の各項目(患者の遺伝型情報)に記載した「方法1」)を説明する。上記DNAバリアントは、SNP、SNV、インデル、CNP、CNV、マイクロサテライト多型(「STRP」)を含むあらゆるヌクレオドの変化である。当該方法では、上記標的ヌクレオチドを挟む2つのヌクレオチド配列を表す2つの文字列を、基準のヒトゲノムを表す公知の文字列(「参照文字列」)から抽出し、使用する。
上記方法では、標的ヌクレオチドの種類に応じて、(1)標的ヌクレオチドおよびこれを挟む「参照文字列」由来の2つのヌクレオチド配列が結合した配列を表す1つの連続した文字列、または(2)標的ヌクレオチドを挟む「参照文字列」由来の2つのヌクレオチド配列のそれぞれを示す2つの文字列が使用される。(1)は、標的ヌクレオチドが、ヒトゲノムにおいて公知であり、かつSNP、SNVまたはインデルであるときに、「アレルの型」(患者の「遺伝型」)の簡便な決定法として使用される。(2)は、あらゆるDNAバリアント(上述したSNP、SNVまたはインデルを含む)の「アレルの型」の決定に適用可能であるが、特に、標的ヌクレオチドの長さの変化、ならびに多数の選択肢が存在する、または標的ヌクレオチドの詳細が不明な場合に有効な方法である。図9および10を参照して、(1)および(2)の文字列を用いる上記方法を以下に説明する。
(SNP、SNVまたはインデルの「アレルの型」を決定する簡便な方法)
上述した(1)の文字列による当該方法は、特に、SNP、SNVまたはインデルのアレルの型を決定する簡便な方法である。図9に示されているように、(1)の文字列は、標的ヌクレオチド(SNP、SNVまたはインデル)を表す文字列902、文字列902を挟む2つのヌクレオチド配列を表す2つ文字列901および903を含んでいる、1つの連続した文字列である。文字列901および903は、基準のヒトゲノムを表す文字列(「参照文字列」)(例えば、アンサンブル(Ensemble、URL:http://ensembl.org)から取得可能)の一部として決定される(図10のS11工程)。文字列902(標的ヌクレオチドを表す文字(列))は、本実施形態に係る方法を実施する時点で既知の(以降では単に「既知の」と記載する)DNAバリアントとして、既知のDBに格納されている。つまり上記「DNAバリアント」は、本願の出願以降に見いだされたDNAバリアントも含まれ得る。たとえば、既知の全SNPに関する情報は、dbSNPデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/)より取得可能である。文字列902(標的ヌクレオチドを表す文字(列))が、基準のヒトゲノムを表す文字列(「参照文字列」)に存在する位置の情報も、当該DB(例えば、上記のdbSNPデータベース)に格納されている。(1)の文字列において、文字列901と文字列903の長さは同一に設定し、解析部位(文字列902)を中央に配置することが好ましい。
したがって、上記方法によって、既知のSNP、SNVまたはインデルの「アレルの型」を、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(1)の文字列が含まれているか否かによって決定する(図10のS12工程)。個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(1)の文字列が含まれ得る位置は、上記DBに格納されている基準のヒトゲノム(「参照文字列」)の位置の情報から推定可能である。したがって、例えば、(1)の文字列と完全一致する1つの文字列を見出したとき(図10のS13工程)、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)から、(1)の文字列を含み得る文字列を抽出し、当該文字列と(1)の文字列とを比較することによって、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列(「全長文字列」)における既知のSNP、SNVまたはインデルの「アレルの型」を決定できる(図10のS14工程)。
ここで、図9の文字列901および903の長さは、少なくとも10文字(例えば、10、20、30、40、50、100、150、200文字またはそれ以上)、好ましくは10~1000文字である。(1)の文字列の文字数が少ないほど、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(1)の文字列と完全一致する2以上の文字列を見出す確率が高くなる。(1)の文字列と完全一致する2以上の文字列を見出したとき(図10のS13工程で「NO」)、2つの文字列(図9の文字列901と文字列903)の長さを均等にそれぞれ1文字以上(例えば、1、3、5、10、20、25、50または100文字)ずつ延長する(図10のS16工程)ことによって、上記確率が低下する。ただし、2つの文字列の合計は、例えば、10000文字以下である。極端に長い2つの文字列(図9の文字列901と文字列903)の一方が、標的ヌクレオチド(図9の文字列902)以外のDNAバリアントを表す文字列を含んでいるとき、結果「(1)の文字列は、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列に含まれていない」が必ず現れるためである。
例えば、ゲノム上の特定の位置における既知のSNPのアレルの型は、ヌクレオチドの種類と同じく、最大で4種類である。例えば、正常型アレルのヌクレオチドがAで表されるとき、T、GおよびCによって表されるヌクレオチドを含むアレルは、変異型アレルである。したがって、図9の文字列902をA、T、GおよびCに指定して、上述の処理を4回試行することによって、上記特定の位置における既知のSNPのアレルの型を決定可能である(図10のS14工程)。しかしながら、実際には、既知のSNPは、集団内で2種類(まれに3種類)のヌクレオチドが一般的であることから、ほとんど2回の試行で容易に決定可能である。
図9において、正常型文字列を含む文字列901~903(正常文字列)および変異型文字列を含む文字列901~903(変異文字列)は、個人のゲノムがSNPに関して、ホモ接合型またはヘテロ接合型であるかの決定に使用され得る。例えば、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)の両方(通常、ゲノムは、母親ならびに父親由来の2セットを保持する接合型として存在する)に、正常文字列が一致し、変異文字列が一致しないとき、当該個人のゲノムは正常型アレルである(正常型:N/N)。また例えば、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列の一方に、正常文字列が一致し、他方に変異文字列が一致するとき、当該個人のゲノムは、変異型アレルを一方のゲノムに有している(ヘテロ接合型:N/M)。また例えば、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列の両方に、正常文字列が一致せず、変異文字列が一致するとき、当該個人のゲノムは、変異型アレルを両方のゲノムに有している(ホモ接合型:M/M)。
当該個人における上記遺伝型の決定過程を、〔実施形態1〕に記載したフェニトイン(抗てんかん薬)に関する医薬情報301(図4)、ならびに関連性情報311(図4)の情報に基づいて、CYP2C9(薬剤代謝酵素遺伝子)のコード領域内に存在する既知のSNP(rs1057910)を例に、具体的に説明する。上記文字列902に対して、SNP(rs1057910)における野生型(正常型)アレルのヌクレオチドの塩基の種類は「アデニン(A)」であり、フェニトインの代謝率が低下することが知られている低代謝型アレルのヌクレオチドの塩基の種類は「シトシン(C)」である。また、既知のSNPの場合、対応する901ならびに903の文字列は、上記方法により容易に取得可能である。そこで、野生型文字「A」を含む文字列901~903(「野生型文字列」)、および低代謝型文字「C」を含む文字列901~903(「低代謝型文字列」)を抽出して、上記工程を2回試行することにより当該個人の遺伝型を容易に決定できる。
具体的には、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に対して、「野生型文字列」が一致し、「低代謝型文字列」が一致しないとき、当該個人のゲノムは野生型アレルを両方のゲノムに有している(野生型:「A/A」)。また例えば、「全長文字列」に対して、「野生型文字列」と「低代謝型文字列」の両方に一致するとき、当該個人のゲノムは、低代謝型アレルを一方のゲノムに有する(ヘテロ接合型:「A/C」)。また例えば、「全長文字列」に対して、「野生型文字列」が一致せず、「低代謝型文字列」が一致するとき、当該個人のゲノムは、低代謝型アレルを両方のゲノムに有している(ホモ接合の低代謝型:「C/C」)。
以上の過程により決定した当該個人におけるCYP2C9のSNP(rs1057910)のヌクレオチド変化の組み合わせの型(「A/A」、「A/C」または「C/C」)に応じて、関連性情報311(図4)に示す通り、異なる記号化された遺伝型(「*1/*1」、「*1/*3」または「*3/*3」)、ならびに異なる代謝率(薬効)(「±0」、「-1」または「-2」)を決定可能である。
決定された遺伝型とともに、個人のゲノムに存在するDNAバリアントを表す情報は、DB、記録媒体または記憶装置に保存されるとともに(図示せず)、ゲノム情報DB6(図2、図5および図8)に格納される(S15工程)。
(あらゆるDNAバリアントの「アレルの型」の決定に適用できる一般的な方法)
上述した(2)の文字列による当該方法は、あらゆるDNAバリアント(上述したSNP、SNVまたはインデルを含む)の接合型を含むアレルの型(「アレルの型」)の決定に適用可能であるが、特に、標的ヌクレオチドの長さの変化、ならびに多数の選択肢が存在する、または標的ヌクレオチドの詳細が不明な場合に有効な方法である。標的ヌクレオチドの長さの変化、ならびに多数の選択肢は、例えば、マイクロサテライト多型(「STRP」)などのように、反復回数の異なる単純反復配列を標的ヌクレオチドにするときに生じる。また、詳細が不明なときは、例えば、〔実施形態1〕で示したACE遺伝子内に存在するAlu配列の欠失/挿入の多型解析などが想定され得る。つまり、(2)の文字列は、標的ヌクレオチドの数、さらには標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列も決定する必要のあるときに特に有効である。
標的ヌクレオチドの全長が数万ヌクレオチドに達し得、標的ヌクレオチドの長さには大きな個体差が生じ得る。したがって、特定の標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列は、当該個体のゲノムに基づいて、個々に決定される必要がある。しかし、標的ヌクレオチド(CNP、CNV、STRP)が存在するゲノム上の座位は、SNP、SNVまたはインデルと同様に、ヒトの基準ゲノムではすでに同定されている。当該座位における標的ヌクレオチドの存在位置も相対的に決定されている。つまり、(2)の文字列は、ヒトの基準ゲノムを表す文字列(「参照文字列」)において既知である(図10のS11工程)。
(2)の文字列は、個人のゲノムに存在する既知のDNAバリンアントを表す標的ヌクレオチドの両側に隣接するヌクレオチド配列を表す文字列と完全一致し得る。したがって、個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)に、(2)の文字列(2つ1組:図9の文字列901ならびに903)が存在するか否かを決定する(図10のS13工程)ことによって、標的ヌクレオチドが個人のゲノム上に存在するか否かを決定できる(図10のS14工程)。(2)の文字列(2つ1組:図9の文字列901ならびに903)の長さは、(1)の文字列における文字列901および903の長さと同様に設定され得る。
個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)における(2)の文字列(2つ1組:図9の文字列901ならびに903)の存在が確認された後に、2つ1組の文字列の間に存在する文字列(図9の文字列902であり、標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列を表す)が、抽出される。
例えば、抽出された文字列がマイクロサテライト多型(「STRP」)のように非常に短い配列(1~4塩基対の長さ)の単純反復配列を表すとき、文字列に含まれている反復回数(および、ヌクレオチド総数)がさらに決定される。単純反復配列は、個体のゲノムにおいて、例えば数ヌクレオチド~数十ヌクレオチドを1単位として、反復回数が異なり得る。回数に対応する「アレルの型」を検出する。例えば、2種類の異なる長さの配列を検出した場合、「ヘテロ接合型」、また1種類のみ長さの配列を検出した場合、「ホモ接合型」と決定する。
〔実施形態2〕にて記載した晩発性の単一遺伝子疾患であるハンチントン病の原因遺伝子(HTT)をコード配列内に存在する3ヌクレオチド(CAG)のマイクロサテライト多型(「STRP」)を例に、当該若年成人の無症候者における上記遺伝型の決定過程を具体的に説明する。ハンチントン病の患者では、変異アレルが細胞(特に神経細胞)にとって有害な異常タンパク質を産生する。ニューロンの消失は緩徐であるが、最終的には破壊的な神経変性状態へと至る。症状の発症は通常中年期から更年期に生じる。ハンチントン病は、その原因遺伝子HTTのコード配列上に存在するCAGリピートの不安定な伸長によって長いポリグルタミン鎖が産生されるために起こる。正常型のグルタミンの反復回数は6~35であるのに対して、疾患患者(あるいは、疾患の発症リスクの極めて高い若年成人の無症候者)は、36~121である。
上記のような既知のマイクロサテライト多型(「STRP」)の場合、対応する901ならびに903の文字列は、上記方法により容易に取得可能である。当該若年成人の無症候者の全ゲノムのヌクレオチド配列を表す文字列(「全長文字列」)における(2)の文字列(2つ1組:図9の901ならびに903の文字列)の存在が確認された後に、2つ1組の文字列の間に存在する文字列(図9の902:標的ヌクレオチドの全長ヌクレオチド配列を表す)の配列およびその長さが、抽出・決定される。例えば、配列およびその長さを抽出した結果、CAGのリピート回数が「80(ヌクレオチド数:240)」ならびに「113(ヌクレオチド数:339)」の2種類であった場合、ヘテロ接合型である。(両アレルとも、疾患型アレルに相当するリピート数を有していることから、発症リスクが極めて高い「+2」。)また、CAGのリピート回数が「5(ヌクレオチド数:15)」の1種類であった場合、ホモ接合型である。(両アレルの型は正常型アレルに相当するリピート数を有していることから、発症リスクは低い「±0」。)
決定された「アレルの型」(患者の遺伝型)とともに、個人のゲノムに存在するDNAバリアントを表す情報は、DB、記録媒体または記憶装置に保存されるとともに(図示せず)、ゲノム情報DB6(図2、図5および図8)に格納される(S15工程)。
〔ソフトウェアによる実現例〕
投与計画提案システム1~1’’(図2、図5および図8)は、制御ブロック(特に情報取得部(医薬情報取得部、関連性情報取得部および遺伝型情報取得部)21、適合度決定部22および医薬情報変更部23)を、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
後者の場合、投与計画提案システム1~1’’(図2、図5および図8)は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPUを用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
〔まとめ〕
これまでに説明した発明を、以下のようにまとめることができる。
〔1〕患者にとって好適な投与計画を提案するシステムであって、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに
上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部
を備えている、システム。
〔2〕上記適合度決定部は、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子に関する医薬薬効関連遺伝子情報を参照して、上記適合度を決定し、
上記遺伝型は上記遺伝子に関する遺伝型であり、上記関連性情報は、上記医薬薬効関連遺伝子情報を含んでおり、
上記変更は、上記投与量の増加もしくは減少または上記医薬の変更である、〔1〕に記載のシステム。
〔3〕上記適合度決定部は、上記医薬の投与によって発症または重篤化する疾患を表す医薬関連疾患情報を参照して、上記適合度を決定し、
上記遺伝型は、上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせに関する遺伝型であり、上記関連性情報は、上記医薬関連疾患情報を含んでおり、
上記変更は、上記医薬の変更または上記投与量の減少である、〔1〕または〔2〕に記載のシステム。
〔4〕上記医薬が上記疾患にとっての禁忌薬であるとき、上記適合度決定部は、上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせを含む上記遺伝型に関する上記適合度を非常に低いと判断し、
上記適合度決定部が上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせを含む上記遺伝型に関する上記適合度を非常に低いと判断したとき、上記医薬情報変更部は、上記疾患にとっての禁忌薬である上記医薬の変更を上記医薬情報に加える、〔3〕に記載のシステム。
〔5〕上記疾患は、特異体質による重篤な副作用と関連した疾患、または特異体質による重篤な副作用の症状を含む、〔3〕に記載のシステム。
〔6〕上記適合度決定部は、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子を表す医薬薬効関連遺伝子情報と、上記医薬の投与によって発症または重篤化する疾患を表す医薬関連疾患情報とを参照して、上記適合度を決定し、
上記遺伝型は、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子に関する遺伝型ならびに上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせに関する遺伝型であり、上記関連性情報は、上記医薬薬効関連遺伝子情報および医薬関連疾患情報を含んでおり、
上記変更は、上記投与量の増加もしくは減少または上記医薬の変更である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のシステム。
〔7〕上記遺伝型情報は、患者IDを用いてゲノム情報DBから取得された患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報に含まれているDNAバリアントを表す情報に基づいて決定される、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のシステム。
〔8〕上記遺伝型情報に、上記関連性情報によって表される関連性において上記医薬情報に表される医薬と関連する座位に存在する遺伝型が記録されていないとき、上記遺伝型情報は、患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報に含まれている前記座位に存在するDNAバリアントを表す情報に基づいて更新される、〔7〕に記載のシステム。
〔9〕上記DNAバリアントのうち一塩基多型を表す情報を、上記患者のゲノム断片を用いて、または上記全ヌクレオチド配列を表す情報に基づいて決定し、決定された一塩基多型を表す情報を記録し、
記録されていない上記DNAバリアントを表す情報を、上記全ヌクレオチド配列を表す文字情報に基づいて決定する、〔7〕または〔8〕に記載のシステム。
〔10〕上記医薬情報取得部は、上記医薬情報を処方箋またはお薬手帳から取得する、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載のシステム。
〔11〕上記関連性情報が人工知能によって生成される、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載のシステム。
〔12〕患者にとって好適な投与計画を提案する方法であって、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得工程;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得工程;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得工程;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定工程;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更工程;ならびに
上記医薬情報変更工程が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示工程
を含んでいる、方法。
〔13〕患者にとって好適な投与計画を提案するシステムとしてコンピュータを機能させるための投与計画提案プログラムであって、
上記システムは、
上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;
上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;
上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;
上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに
上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部を備えており、
上記医薬情報取得部、上記関連性情報取得部、上記遺伝型情報取得部、上記適合度決定部、上記医薬情報変更部および上記情報提示部としてコンピュータを機能させるための投与計画提案プログラム。
1 投与計画提案システム(患者にとって好適な投与計画を提案するシステム)
1’ 投与計画提案システム(患者にとって好適な投与計画を提案するシステム)
1’’ 投与計画提案システム(患者にとって好適な投与計画を提案するシステム)
2 制御部
3 表示装置(情報提示部)
4 入力装置
5 医薬薬効関連遺伝子情報DB
6 ゲノム情報DB
7 医薬関連疾患情報DB
21 情報取得部(医薬情報取得部、関連性情報取得部および遺伝型情報取得部)
22 適合度決定部
23 医薬情報変更部
301 医薬情報(フェニトイン)
302 変更医薬情報
303 医薬情報(オランザピン)
311 関連性情報(フェニトイン)
312 関連性情報(クロピドグレル)
313 関連性情報(ペリンドプリルエルブミン)
314 関連性情報(オランザピン)
901 文字列
902 文字列(標的ヌクレオチド)
903 文字列

Claims (13)

  1. 患者にとって好適な投与計画を提案するシステムであって、
    上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
    上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;
    上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;
    上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;
    上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに
    上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部
    を備えている、システム。
  2. 上記適合度決定部は、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子に関する医薬薬効関連遺伝子情報を参照して、上記適合度を決定し、
    上記遺伝型は上記遺伝子に関する遺伝型であり、上記関連性情報は、上記医薬薬効関連遺伝子情報を含んでおり、
    上記変更は、上記投与量の増加もしくは減少または上記医薬の変更である、請求項1に記載のシステム。
  3. 上記適合度決定部は、上記医薬の投与によって発症または重篤化する疾患を表す医薬関連疾患情報を参照して、上記適合度を決定し、
    上記遺伝型は、上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせに関する遺伝型であり、上記関連性情報は、上記医薬関連疾患情報を含んでおり、
    上記変更は、上記医薬の変更または上記投与量の減少である、請求項1または2に記載のシステム。
  4. 上記医薬が上記疾患にとっての禁忌薬であるとき、上記適合度決定部は、上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせを含む上記遺伝型に関する上記適合度を非常に低いと判断し、
    上記適合度決定部が上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせを含む上記遺伝型に関する上記適合度を非常に低いと判断したとき、上記医薬情報変更部は、上記疾患にとっての禁忌薬である上記医薬の変更を上記医薬情報に加える、請求項3に記載のシステム。
  5. 上記疾患は、特異体質による重篤な副作用と関連した疾患、または特異体質による重篤な副作用の症状を含む、請求項3に記載のシステム。
  6. 上記適合度決定部は、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子を表す医薬薬効関連遺伝子情報と、上記医薬の投与によって発症または重篤化する疾患を表す医薬関連疾患情報とを参照して、上記適合度を決定し、
    上記遺伝型は、上記医薬の薬物動態学または薬力学に関与するタンパク質をコードしている遺伝子に関する遺伝型ならびに上記疾患の素因に関連するアレルの組み合わせに関する遺伝型であり、上記関連性情報は、上記医薬薬効関連遺伝子情報および医薬関連疾患情報を含んでおり、
    上記変更は、上記投与量の増加もしくは減少または上記医薬の変更である、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
  7. 上記遺伝型情報は、患者IDを用いてゲノム情報DBから取得された患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報に含まれているDNAバリアントを表す情報に基づいて決定される、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
  8. 上記遺伝型情報に、上記関連性情報によって表される関連性において上記医薬情報に表される医薬と関連する座位に存在する遺伝型が記録されていないとき、上記遺伝型情報は、患者のゲノムを構成する全ヌクレオチド配列を表す情報に含まれている前記座位に存在するDNAバリアントを表す情報に基づいて更新される、請求項7に記載のシステム。
  9. 上記DNAバリアントのうち一塩基多型を表す情報を、上記患者のゲノム断片を用いて、または上記全ヌクレオチド配列を表す情報に基づいて決定し、決定された一塩基多型を表す情報を記録し、
    記録されていない上記DNAバリアントを表す情報を、上記全ヌクレオチド配列を表す文字情報に基づいて決定する、請求項7または8に記載のシステム。
  10. 上記医薬情報取得部は、上記医薬情報を処方箋またはお薬手帳から取得する、請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
  11. 上記関連性情報が人工知能によって生成される、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
  12. 患者にとって好適な投与計画を提案する方法であって、
    上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得工程;
    上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得工程;
    上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得工程;
    上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定工程;
    上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更工程;ならびに
    上記医薬情報変更工程が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示工程
    を含んでいる、方法。
  13. 患者にとって好適な投与計画を提案するシステムとしてコンピュータを機能させるための投与計画提案プログラムであって、
    上記システムは、
    上記患者に投与する医薬およびその投与量を表す医薬情報を取得する医薬情報取得部;
    上記医薬および遺伝型の関連性を表す関連性情報を取得する関連性情報取得部;
    上記患者の遺伝型情報を取得する遺伝型情報取得部;
    上記関連性情報および遺伝型情報に基づいて、上記医薬情報の適合度を決定する適合度決定部;
    上記適合度が低いとき、上記医薬情報に変更を加える医薬情報変更部;ならびに
    上記医薬情報変更部が変更を加えた変更医薬情報をユーザに提示する情報提示部を備えており、
    上記医薬情報取得部、上記関連性情報取得部、上記遺伝型情報取得部、上記適合度決定部、上記医薬情報変更部および上記情報提示部としてコンピュータを機能させるための投与計画提案プログラム。
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