JP2022022948A - 強磁性化合物および強磁性化合物を含む強磁性合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】希土類元素の使用することなく、キュリー温度の高い強磁性化合物および強磁性化合物を含む強磁性合金を提供する。【解決手段】Fe、Zr、Tiの含有量をそれぞれ[Fe]、[Zr]、[Ti]としたとき、[Fe]:67原子%以上、75原子%以下、[Zr]:6原子%以上、30原子%以下、[Ti]:5原子%以上、25原子%以下、を含み、ZrとTiの含有量([Zr]+[Ti])に対するFeの含有量[Fe]の比が、2≦[Fe]/([Zr]+[Ti])≦3を満たし、六方晶構造を有し、六方晶構造の格子定数a、cが、0.482nm≦a≦0.500nm、0.787nm≦c≦0.820nmを満たす、強磁性化合物である。【選択図】図1
Description
本開示は、強磁性化合物および強磁性化合物を含む強磁性合金に関する。
Nd-Fe-B系やSm-Co系などの希土類系永久磁石材料は、自動車用、鉄道用、家電用、産業用などのモータで使用され、磁気特性の高さからこれらの小型化・高性能化に貢献している。しかしながら、希土類系永久磁石材料に用いられる希土類原料は産出地が限定されているなどの理由から供給が安定しておらず永久磁石材料の世界的な市場拡大が見込まれる中で希土類原料の将来的な資源リスクおよび価格高騰リスクがある。そのため、可能な限り希土類元素を用いない永久磁石の開発が求められている。
希土類元素を用いないFe基化合物のなかで、ラーベス構造を有するZrFe2やTiFe2などが知られている。非特許文献1で記載されているように、ZrFe2は立方晶ラーベス構造を持ち、キュリー温度が311℃である。一方、非特許文献2で記載されているように、TiFe2は六方晶構造を持つ反強磁性化合物であり、キュリー温度に相当する物性値であるネール温度が7℃と比較的低い温度である。
Journal of Alloys and Compounds Volume 220, April 1995, Pages 19-26.
Journal of Physics:Condensed Matter Volume 4, December 1992, Pages 10015-10024.
一般的にモータなどに用いられる永久磁石は使用温度が高いため、非特許文献2よりも高いキュリー温度を有する強磁性化合物材料が求められている。また、永久磁石として高い保磁力を発現するために、非特許文献1よりも高い磁気異方性かつ一軸異方性のある結晶構造を有する物質が求められ、例えば、正方晶や六方晶のような結晶構造の方が望ましい。
本開示は、希土類元素を使用することなく、キュリー温度の高い強磁性化合物および強磁性化合物を含む強磁性合金を提供する。
本開示の限定的でない例示的な態様1において、Fe、Zr、Tiの含有量をそれぞれ[Fe]、[Zr]、[Ti]としたとき、
[Fe]:67原子%以上、75原子%以下、
[Zr]:6原子%以上、30原子%以下、
[Ti]:5原子%以上、25原子%以下、
を含み、
ZrとTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するFeの含有量[Fe]の比が、
2≦[Fe]/([Zr]+[Ti])≦3
を満たし、
六方晶構造を有し、六方晶構造の格子定数a、cが、
0.482nm≦a≦0.500nm
0.787nm≦c≦0.820nm
を満たす強磁性化合物である。
[Fe]:67原子%以上、75原子%以下、
[Zr]:6原子%以上、30原子%以下、
[Ti]:5原子%以上、25原子%以下、
を含み、
ZrとTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するFeの含有量[Fe]の比が、
2≦[Fe]/([Zr]+[Ti])≦3
を満たし、
六方晶構造を有し、六方晶構造の格子定数a、cが、
0.482nm≦a≦0.500nm
0.787nm≦c≦0.820nm
を満たす強磁性化合物である。
態様2において、Zr及びTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するZrの含有量[Zr]の比が、
0.25≦[Zr]/([Zr]+[Ti])≦0.8
を満たす、態様1に記載の強磁性化合物である。
0.25≦[Zr]/([Zr]+[Ti])≦0.8
を満たす、態様1に記載の強磁性化合物である。
態様3において、Zr及びTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するZrの含有量[Zr]の比が、
0.4≦[Zr]/([Zr]+[Ti])≦0.8
を満たす、態様1又は態様2に記載の強磁性化合物である。
0.4≦[Zr]/([Zr]+[Ti])≦0.8
を満たす、態様1又は態様2に記載の強磁性化合物である。
態様4において、
0.485nm≦a≦0.500nm
0.791nm≦c≦0.820nm
を満たす、態様1乃至態様3のいずれかに記載の強磁性化合物である。
0.485nm≦a≦0.500nm
0.791nm≦c≦0.820nm
を満たす、態様1乃至態様3のいずれかに記載の強磁性化合物である。
態様5において、ZrとTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するFeの含有量[Fe]の比が、
2.25≦[Fe]/([Zr]+[Ti])≦3
を満たす、態様1乃至態様4のいずれかに記載の強磁性化合物である。
2.25≦[Fe]/([Zr]+[Ti])≦3
を満たす、態様1乃至態様4のいずれかに記載の強磁性化合物である。
態様6において、[Fe]と、[Zr]と、[Ti]との合計が100%(ただし、不可避的不純物は含有してもよい)である、態様1乃至態様5のいずれかに記載の強磁性化合物である。
態様7において、態様1乃至態様6のいずれかに記載の強磁性化合物を含む強磁性合金である。
本開示によれば、希土類元素を使用することなく、キュリー温度の高い強磁性化合物および強磁性化合物を含む強磁性合金を提供できる。
発明者は、TiFe2系化合物のTiの一部をZrで置換したFe-Zr-Ti系の複数の組成について検討を行った結果、Fe、Zr、Tiの各元素を適正な組成範囲とすることによってキュリー温度が高く、六方晶構造を有する強磁性化合物が得られ、永久磁石に好適な強磁性化合物が得られることを見出した。本開示における組成範囲の強磁性化合物を含む合金では高い磁化が発現することが期待できる。
<組成の限定理由について>(強磁性化合物)
Feの含有量を[Fe]としたとき、[Fe]は67原子%以上、75原子%以下が好ましい。67原子%未満では、磁気モーメントが大きいFeの量が少なくなるために飽和磁化が小さくなり、永久磁石として十分な磁化が得られない恐れがある。75原子%より多いと、異相である体心立方格子構造のα-Fe相のほうが安定化して生成されやすくなり、結晶磁気異方性の大きい六方晶構造が得られにくくなる。より高いキュリー温度を得るためには、[Fe]は69原子%以上、75原子%以下がより好ましい。
Feの含有量を[Fe]としたとき、[Fe]は67原子%以上、75原子%以下が好ましい。67原子%未満では、磁気モーメントが大きいFeの量が少なくなるために飽和磁化が小さくなり、永久磁石として十分な磁化が得られない恐れがある。75原子%より多いと、異相である体心立方格子構造のα-Fe相のほうが安定化して生成されやすくなり、結晶磁気異方性の大きい六方晶構造が得られにくくなる。より高いキュリー温度を得るためには、[Fe]は69原子%以上、75原子%以下がより好ましい。
Zrの含有量を[Zr]としたとき、[Zr]は6原子%以上、30原子%以下が好ましい。6原子%未満では、キュリー温度が低くなるために飽和磁化が小さくなり、永久磁石として十分な磁化が得られない恐れがある。30原子%より多いと、キュリー温度が高くなるが立方晶構造のZrFe2系化合物が安定化し、結晶磁気異方性の大きい六方晶構造が得られにくくなる。よりキュリー温度が高く、六方晶構造を有する強磁性化合物相を得るためには、[Zr]は10原子%以上、30原子%以下がより好ましい。
Tiの含有量を[Ti]としたとき、[Ti]は5原子%以上、25原子%以下が好ましい。5原子%未満では立方晶構造のZrFe2に近い化合物が安定化し、結晶磁気異方性の大きい六方晶構造を有する強磁性化合物相が得られにくくなる。25原子%より多いと、六方晶構造を有する強磁性相が得られるが、キュリー温度が低くなるために飽和磁化が小さくなり、永久磁石として十分な磁化が得られない恐れがある。
強磁性化合物に含まれる[Fe]と、[Zr]と、[Ti]との合計が100%(ただし、不可避的不純物は含有してもよい)であることが好ましいが、本開示と同じ効果が得られるのであれば不可避的不純物以外の他の元素が微量に含まれていてもよい。
また、強磁性化合物中のZrとTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するFeの含有量の比([Fe]/([Zr]+[Ti]))は、2以上、3以下が好ましい。2未満では、キュリー温度の低い六方晶構造を有する強磁性相あるいは高いキュリー温度の立方晶構造を有する強磁性相のいずれかになり、高いキュリー温度の六方晶構造を有する強磁性相を得ることはできない。一方、3より大きい場合は、Fe由来の異相であるα-Fe相が生成しやすくなり、六方晶構造を有する強磁性相が安定しにくくなる。[Fe]/([Zr]+[Ti])は、2.25以上、3以下がより好ましい。
また、強磁性化合物中のZrとTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するZrの含有量の比([Zr]/([Zr]+[Ti]))は、0.25以上、0.8以下が好ましい。0.25未満では、キュリー温度の低い六方晶構造を有する強磁性相になる。一方、0.8より大きい場合は、立方晶構造を有するZrFe2相が安定化しやすくなり、六方晶構造を有する強磁性相を得ることができない。よりキュリー温度が高く、六方晶構造を有する強磁性化合物相を得るためには、[Zr]/([Zr]+[Ti])は0.4以上、0.8以下がより好ましい。
強磁性化合物は、例えばアーク溶解法やメルトスピニング法、プラズマ溶解法などによって製造することができる。それぞれの溶解法における熱源や加熱方式はアーク式、高周波誘導式、プラズマ式などと異なるが、いずれも二種類以上の金属原料を融点よりも高い温度で熱して溶解させたあと、型などに流し込み冷やす鋳造法である。TiやZrなどの活性または高融点金属の溶解にはアーク式溶解炉が広く用いられる。なお、メルトスピニング法で製造する場合、一般的にできた合金はリボン状の非晶質金属であり、熱処理後においても結晶粒径の大半が数十~数百nmオーダーと細かくなる。一方、アーク溶解法により鋳造した場合、熱処理後の合金の結晶粒径の大半が1μm以上のものを製造することができるため、磁石化の際に行う微粉砕工程において数μm程度の単結晶粒子が得られて好都合である。このように、いずれの手法であっても得られた合金に結晶構造と組成を安定化させる熱処理を施すことは有効である。
強磁性化合物のキュリー温度は、例えば熱重量分析装置を用いた熱磁気分析や磁力計を用いた磁化の温度依存性測定などの手法によって評価することができる。
強磁性化合物の結晶構造は、例えばX線や電子線、放射光などによる回折装置で確認することができる。X線回折装置を用いて確認する場合、X線回折装置によって得られた回折パターンと公知の結晶構造の回折パターンを比較することで確認できる。例えば、六方晶構造の確認ではMgZn2型の六方晶構造の回折パターンを使用し、立方晶構造の確認ではMgCu2型の立方晶構造の回折パターンを使用することができる。
強磁性化合物に含まれる各相の格子定数は、例えばX線回折装置によって得られたX線回折パターンを用いて解析することで求めることができる。本開示における強磁性化合物は、六方晶構造を有する場合、その格子定数aは0.482nm以上、0.500nm以下であり、格子定数cは0.787nm以上、0.820nm以下である。格子定数aが0.482nmより小さい場合、六方晶構造を有する強磁性相は得られるが、キュリー温度が低い値となる。熱処理温度が1100℃では、aが0.493nmより大きい場合、六方晶構造が安定しにくく、立方晶構造が生成しやすくなる。更に、本発明者は例えば熱処理温度が1250℃で5時間熱処理した際に、aが0.495nmより大きい場合、六方晶構造が安定しにくく、立方晶構造が生成しやすくなり、熱処理温度が1250℃で72時間熱処理した際に、aが0.500nmより大きい場合、六方晶構造が安定しにくく、立方晶構造が生成しやすくなることを知見した。これは、熱処理温度が高くなるにつれ、また熱処理時間が長くなるにつれ、強磁性相がより均質化して格子定数aが大きくなるためである。そのため、格子定数aは0.482nm以上、0.500nm以下であり、より好ましくは、格子定数aが0.485nm以上、0.500nm以下である。キュリー温度が200℃以上とより高い温度となる。
格子定数cが0.787nmより小さい場合では、六方晶構造を有する強磁性相は得られるが、キュリー温度が低い値となる。熱処理温度が1100℃では、cが0.803nmより大きい場合、六方晶構造が安定しにくく、立方晶構造が生成しやすくなる。更に、本発明者は例えば1250℃で5時間熱処理した際に、cが0.810nmより大きい場合、六方晶構造が安定しにくく、立方晶構造が生成しやすくなり、熱処理温度が1250℃で72時間熱処理した際に、cが0.820nmより大きい場合、六方晶構造が安定しにくく、立方晶構造が生成しやすくなることを知見した。これは、熱処理温度が高くなるにつれ、また熱処理時間が長くなるにつれ、強磁性相がより均質化して格子定数cが大きくなるためである。そのため、格子定数cは0.787nm以上、0.820nm以下であり、より好ましくは、格子定数cが0.791nm以上、0.820nm以下である。キュリー温度が200℃以上とより高い温度となる。
合金中の強磁性化合物相は、走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子像で観察することができる。また、強磁性化合物の組成を確認する場合は、SEM観察と、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)あるいは、電子線マイクロアナライザ(EPMA)による組成分析の結果を合わせて見ることができる。
本開示を実施例によりさらに詳細に説明するが、それらに限定されるものではない。
(実施例1)
表1の実施例1に示すZr及びTiの含有量の和に対するZrの含有量比([Zr]/([Zr]+[Ti]))、およびZr及びTiの含有量の和に対するFeの含有量比([Fe]/([Zr]+[Ti]))を満たす合金組成となるように各元素を秤量し、アーク溶解装置を用いて合金化した。得られた合金を、石英管に入れ、ロータリーポンプで真空引きしながら加熱炉において1100℃で5時間の熱処理を行った後、Arガスを流しながら加熱した合金を銅板の上で冷却させ合金を得た。
表1の実施例1に示すZr及びTiの含有量の和に対するZrの含有量比([Zr]/([Zr]+[Ti]))、およびZr及びTiの含有量の和に対するFeの含有量比([Fe]/([Zr]+[Ti]))を満たす合金組成となるように各元素を秤量し、アーク溶解装置を用いて合金化した。得られた合金を、石英管に入れ、ロータリーポンプで真空引きしながら加熱炉において1100℃で5時間の熱処理を行った後、Arガスを流しながら加熱した合金を銅板の上で冷却させ合金を得た。
次に、結晶構造と格子定数、キュリー温度の確認を行うために、合金を金属製乳鉢で破砕し、目開きが75μm及び425μmの金属製篩にかけ、粉砕した試料のサイズが75μm以下の粉末試料と425μmより大きい粉末試料を得た。結晶構造はX線回折装置(ブルカーエイエックスエス製、D8 ADVANCED/TXS)を用いて確認した。測定には粉末のサイズが75μm以下のものを使用し、X線回折装置によって得られた回折パターンが公知のMgZn2型の六方晶構造の回折パターンと一致すれば強磁性相の結晶構造は六方晶構造であると確認した。立方晶構造の確認も同様に、公知のMgCu2型の立方晶構造の回折パターンと一致すれば強磁性相の結晶構造が立方晶構造であると確認した。
強磁性化合物中の六方晶構造が形成されている相(六方晶相)の格子定数はX線回折パターンをDIFFRAC.TOPASソフトウェア(ブルカーエイエックスエス製:Version 4.1)を用いたRietveld法結晶構造精密化により解析した。具体的に、格子パラメータとして、MgZn2型TiFe2のそれを使用し、TiサイトにZrが含まれるように精密化を行った。
粉砕した合金で、粉末のサイズが425μmより大きい試料を使用し、熱磁気分析を用いてキュリー温度を評価した。熱重量分析装置(メトラ・トレド製、TGA/DSC3)に永久磁石を組み込んで試料に約0.01Tの磁場を印加し、熱磁気分析ができるように改造された装置を用いて測定した。約30mgの粉末試料をアルミナ製カプセルにいれ、100ml/minのArフロー環境下において35~800℃の温度範囲での重量変化を測定した。磁場中では試料に含まれる強磁性相のキュリー温度前後で重量が変化するため、重量に対する温度微分のプロットにおける極値をキュリー温度とした。
(実施例2~15及び比較例1~4)
合金組成が表1に示す組成となるように各元素を秤量する以外は実施例1と同様にして各合金を得た。そして、実施例1と同様に得られた各合金の結晶構造及びキュリー温度を測定し、六方晶相の格子定数を求めた。なお、表1に示す結果のうち、熱磁気分析で評価可能な温度範囲にキュリー温度がない場合は「-」と記載した。また、結晶構造が立方晶であったものについては六方晶相の格子定数が求められないため「-」と記載した。さらに、結晶構造解析の結果で六方晶相が90%以上のものについては「六方晶」と記載し、90%未満の場合は「六方晶+立方晶」と記載した。
合金組成が表1に示す組成となるように各元素を秤量する以外は実施例1と同様にして各合金を得た。そして、実施例1と同様に得られた各合金の結晶構造及びキュリー温度を測定し、六方晶相の格子定数を求めた。なお、表1に示す結果のうち、熱磁気分析で評価可能な温度範囲にキュリー温度がない場合は「-」と記載した。また、結晶構造が立方晶であったものについては六方晶相の格子定数が求められないため「-」と記載した。さらに、結晶構造解析の結果で六方晶相が90%以上のものについては「六方晶」と記載し、90%未満の場合は「六方晶+立方晶」と記載した。
比較例1に示すように、Zrが含まれない場合、結晶構造が六方晶構造であったが測定温度範囲においてキュリー温度を示す変化が検出できなかったことから、測定できないほどキュリー温度が低くなっていると考えられる。また、比較例2に示すように、Zrが5原子%の場合も結晶構造が六方晶構造であったがキュリー温度が50℃と低い温度となった。
図1は実施例1における結晶構造をX線回折装置で測定した結果である。横軸は回折角度を示し、縦軸は回折強度を示す。図1に示す様に、実施例1の合金は公知の六方晶(MgZn2型)の回折パターンと一致するため、結晶構造が六方晶(MgZn2型)構造であると確認できる。
図2は実施例1における熱磁気分析の測定結果を示す。縦軸は重量の温度微分の値を示し、横軸は温度を示す。重量の温度微分におけるピークTc=194℃は六方晶構造を有する強磁性相のキュリー温度であり、Tc=784℃は異相α-Fe相由来のキュリー温度である。図1、図2、表1の実施例1の結果から、Zrの含有量が6原子%以上の場合に六方晶構造を有しながら高いキュリー温度が得られることがわかった。
また、実施例2~15に示すように、Zrの含有量が6原子%以上、30原子%以下の場合、合金の結晶構造が六方晶構造または六方晶構造と立方晶構造の混合相を示し、キュリー温度が高かった。また、実施例5~15に示すように、Zr及びTiの含有量の和に対するZrの含有量の比([Zr]/([Zr]+[Ti]))が0.4以上、0.8以下の場合では、200℃以上のより高いキュリー温度が得られた。
図3は実施例5の強磁性合金のSEM観察における反射電子像を示す。図3の領域p1の組成をSEM-EDXで分析した。その結果、[Zr]:15、[Fe]:71.5、[Ti]:12.5(原子%)であった。なお、図3の領域p2ではα-Fe相が確認された。この結果と、X線回折パターンで確認した結晶構造を合わせて見ると、領域p1は六方晶構造を有する強磁性化合物相であることが分かった。また、強磁性化合物相の大半の粒径が1μm以上であることがわかった。
一方、比較例3、4に示すように、Zrの含有量が30原子%より多い場合、合金の結晶構造は六方晶構造を含まず立方晶構造のみを有することがわかった。
(実施例16)
表2の実施例16に示すZr及びTiの含有量の和に対するZrの含有量比([Zr]/([Zr]+[Ti]))、およびZr及びTiの含有量の和に対するFeの含有量比([Fe]/([Zr]+[Ti]))を満たす合金組成となるように各元素を秤量し、アーク溶解装置を用いて合金化した。得られた合金を、高温雰囲気ボックス炉(光洋サーモシステム製、KB9814N-VP)に入れ、Arガスを5L/min流しながら1250℃で5時間の熱処理を行った後、炉内で冷却させ合金を得た。そして、実施例1と同様の方法で得られた各合金の結晶構造と六方晶相の格子定数、及びキュリー温度を測定して求めた。
表2の実施例16に示すZr及びTiの含有量の和に対するZrの含有量比([Zr]/([Zr]+[Ti]))、およびZr及びTiの含有量の和に対するFeの含有量比([Fe]/([Zr]+[Ti]))を満たす合金組成となるように各元素を秤量し、アーク溶解装置を用いて合金化した。得られた合金を、高温雰囲気ボックス炉(光洋サーモシステム製、KB9814N-VP)に入れ、Arガスを5L/min流しながら1250℃で5時間の熱処理を行った後、炉内で冷却させ合金を得た。そして、実施例1と同様の方法で得られた各合金の結晶構造と六方晶相の格子定数、及びキュリー温度を測定して求めた。
(実施例17~24及び比較例5~8)
合金組成が表2に示す組成となるように各元素を秤量する以外は実施例16と同様にして各合金を得た。そして、実施例1と同様の方法で得られた各合金の結晶構造と六方晶相の格子定数、及びキュリー温度を測定して求めた。
合金組成が表2に示す組成となるように各元素を秤量する以外は実施例16と同様にして各合金を得た。そして、実施例1と同様の方法で得られた各合金の結晶構造と六方晶相の格子定数、及びキュリー温度を測定して求めた。
比較例5に示すように、Zrが含まれない場合、結晶構造が六方晶構造であったが測定温度範囲においてキュリー温度を示す変化が検出できなかったことから、測定できないほどキュリー温度が低くなっていると考えられる。また、比較例6に示すように、Zrが5原子%の場合も結晶構造が六方晶構造であったがキュリー温度が52℃と低い温度となった。
図4は実施例16における結晶構造をX線回折装置で測定した結果である。横軸は回折角度を示し、縦軸は回折強度を示す。図4に示す様に、実施例16の合金は公知の六方晶(MgZn2型)の回折パターンと一致するため、結晶構造が六方晶(MgZn2型)構造であると確認できる。
図5は実施例16における熱磁気分析の測定結果を示す。縦軸は重量の温度微分の値を示し、横軸は温度を示す。重量の温度微分におけるピークTc=134℃は六方晶構造を有する強磁性相のキュリー温度であり、Tc=782℃は異相α-Fe相由来のキュリー温度である。図4、図5、表2の実施例16の結果から、Zrの含有量が7原子%以上の場合に六方晶構造を有しながら高いキュリー温度が得られることがわかった。
また、実施例17~24に示すように、Zrの含有量が10原子%以上、25原子%以下の場合、合金の結晶構造が六方晶構造または六方晶構造と立方晶構造の混合相を示し、キュリー温度が高かった。Zr及びTiの含有量の和に対するZrの含有量の比([Zr]/([Zr]+[Ti]))が0.4以上、0.8以下の場合では、230℃以上のより高いキュリー温度が得られた。
一方、比較例7、8に示すように、Zrの含有量が30原子%より多い場合、合金の結晶構造は六方晶構造を含まず立方晶構造のみを有することがわかった。
(実施例25)
表3の実施例25に示すZr及びTiの含有量の和に対するZrの含有量比([Zr]/([Zr]+[Ti]))、およびZr及びTiの含有量の和に対するFeの含有量比([Fe]/([Zr]+[Ti]))を満たす合金組成となるように各元素を秤量し、アーク溶解装置を用いて合金化した。得られた合金を、高温雰囲気ボックス炉(光洋サーモシステム製、KB9814N-VP)に入れ、Arガスを5L/min流しながら1250℃で72時間の熱処理を行った後、炉内で冷却させ合金を得た。そして、実施例1と同様の方法で得られた各合金の結晶構造と六方晶相の格子定数、及びキュリー温度を測定して求めた。
表3の実施例25に示すZr及びTiの含有量の和に対するZrの含有量比([Zr]/([Zr]+[Ti]))、およびZr及びTiの含有量の和に対するFeの含有量比([Fe]/([Zr]+[Ti]))を満たす合金組成となるように各元素を秤量し、アーク溶解装置を用いて合金化した。得られた合金を、高温雰囲気ボックス炉(光洋サーモシステム製、KB9814N-VP)に入れ、Arガスを5L/min流しながら1250℃で72時間の熱処理を行った後、炉内で冷却させ合金を得た。そして、実施例1と同様の方法で得られた各合金の結晶構造と六方晶相の格子定数、及びキュリー温度を測定して求めた。
(実施例26~32及び比較例9~12)
合金組成が表3に示す組成となるように各元素を秤量する以外は実施例25と同様にして各合金を得た。そして、実施例1と同様の方法で得られた各合金の結晶構造と六方晶相の格子定数、及びキュリー温度を測定して求めた。
合金組成が表3に示す組成となるように各元素を秤量する以外は実施例25と同様にして各合金を得た。そして、実施例1と同様の方法で得られた各合金の結晶構造と六方晶相の格子定数、及びキュリー温度を測定して求めた。
比較例9、10に示すように、Zrが0原子%または5原子%の場合、結晶構造が六方晶構造であったが測定温度範囲においてキュリー温度を示す変化が検出できないほどキュリー温度が低くなっていると考えられる。
図6は実施例25における結晶構造をX線回折装置で測定した結果である。横軸は回折角度を示し、縦軸は回折強度を示す。図6に示す様に、実施例25の合金は公知の六方晶(MgZn2型)の回折パターンと一致するため、結晶構造が六方晶(MgZn2型)構造であると確認できる。
図7は実施例25における熱磁気分析の測定結果を示す。縦軸は重量の温度微分の値を示し、横軸は温度を示す。重量の温度微分におけるピークTc=145℃は六方晶構造を有する強磁性相のキュリー温度であり、Tc=770℃は異相α-Fe相由来のキュリー温度である。図6、図7、表2の実施例25の結果から、Zrの含有量が7原子%以上の場合に六方晶構造を有しながら高いキュリー温度が得られることがわかった。
また、実施例26~32に示すように、Zrの含有量が10原子%以上、25原子%以下の場合、合金の結晶構造全てが六方晶構造を90%以上含むことを示し、キュリー温度が高かった。Zr及びTiの含有量の和に対するZrの含有量の比([Zr]/([Zr]+[Ti]))が0.4以上、0.8以下の場合では、250℃以上のより高いキュリー温度が得られた。
一方、比較例11、12に示すように、Zrの含有量が30原子%より多い場合、合金の結晶構造は六方晶構造を含まず立方晶構造のみを有することがわかった。
本開示により得られた強磁性化合物合金およびそれを含む永久磁石は、モータなどに好適に利用できる可能性がある。
Claims (7)
- Fe、Zr、Tiの含有量をそれぞれ[Fe]、[Zr]、[Ti]としたとき、
[Fe]:67原子%以上、75原子%以下、
[Zr]:6原子%以上、30原子%以下、
[Ti]:5原子%以上、25原子%以下、
を含み、
Zr及びTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するFeの含有量[Fe]の比が、
2≦[Fe]/([Zr]+[Ti])≦3
を満たし、
六方晶構造を有し、六方晶構造の格子定数a、cが、
0.482nm≦a≦0.500nm
0.787nm≦c≦0.820nm
を満たす、強磁性化合物。 - Zr及びTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するZrの含有量[Zr]の比が、
0.25≦[Zr]/([Zr]+[Ti])≦0.8
を満たす、請求項1に記載の強磁性化合物。 - Zr及びTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するZrの含有量[Zr]の比が、
0.4≦[Zr]/([Zr]+[Ti])≦0.8
を満たす、請求項1又は請求項2に記載の強磁性化合物。 - 0.485nm≦a≦0.500nm
0.791nm≦c≦0.820nm
を満たす、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の強磁性化合物。 - Zr及びTiの含有量の和([Zr]+[Ti])に対するFeの含有量[Fe]の比が、
2.25≦[Fe]/([Zr]+[Ti])≦3
を満たす、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の強磁性化合物。 - [Fe]と、[Zr]と、[Ti]との合計が100原子%(ただし、不可避的不純物は含有してもよい)である、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の強磁性化合物。
- 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の強磁性化合物を含む強磁性合金。
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