JP2022022081A - 防振材及び防振材の製造方法 - Google Patents

防振材及び防振材の製造方法 Download PDF

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友紀 川口
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Abstract

【課題】従来よりも応力変化率を向上でき、モータの回転軸の回転開始時におけるトルク変化に伴う大きな応力と、走行中の小さな振動のいずれにも対応可能な防振材を提供すること。【解決手段】モータ2を支持するマウント部品11,12,13に用いられる防振材5であって、シリコーンオイルとホウ酸の脱水縮合物であるゲルを含み、前記シリコーンオイルと前記ホウ酸の合計100モルに対する前記ホウ酸のモル数は、25~75モルである、防振材5である。【選択図】図7

Description

本発明は、防振材及び防振材の製造方法に関する。
従来、自動車のエンジンマウントやボディマウント用途として、ニュートン流体を用いた流体封入式防振装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この防振装置によれば、特別な切換装置や制御装置等を必要とすることなく、複数の異なる防振特性を発揮することができ、互いに異なる入力振動に対してそれぞれ有効な防振効果を選択的に発揮し得るとされている。
特開2001-12537号公報
しかしながら、自動車のモータマウント用途としての防振材においては、モータの回転軸の回転開始時におけるトルク変化に伴う大きな応力と、走行中の小さな振動のいずれにも対応するために、さらなる応力変化率の向上が望まれる。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも応力変化率を向上でき、モータの回転軸の回転開始時におけるトルク変化に伴う大きな応力と、走行中の小さな振動のいずれにも対応可能な防振材を提供することにある。
(1) 上記目的を達成するため本発明は、モータを支持するマウント部品に用いられる防振材であって、シリコーンオイルとホウ酸の脱水縮合物であるゲルを含み、前記シリコーンオイルと前記ホウ酸の合計100モルに対する前記ホウ酸のモル数は、25~75モルである、防振材を提供する。
(2) (1)の防振材において、前記シリコーンオイルの側鎖は、メチル基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、前記シリコーンオイルの末端は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコール基及びジオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つであってよい。
(3) (1)又は(2)の防振材において、前記シリコーンオイルの側鎖は、メチル基であり、前記シリコーンオイルの両末端は、ヒドロキシ基であってよい。
(4) (1)から(3)いずれかの防振材において、シリコーンゴムをさらに含み、前記シリコーンゴムと前記ゲルの合計100質量%に対する前記ゲルの質量%は、1~30質量%であってよい。
(5) (4)の防振材において、前記シリコーンゴムの側鎖は、メチル基、フェニル基、ビニル基、フロロ基、トリフルオロメチル基及びトリフルオロプロピル基からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、前記シリコーンゴムの末端は、メチル基、ヒドロキシ基及びビニル基からなる群より選ばれる少なくとも一つであってよい。
(6) (1)~(5)いずれかに記載の防振材においては、前記防振材は、さらにフィラーを含み、前記フィラーと前記ゲルが化学結合していてもよい。
(7) (6)に記載の防振材の製造方法においては、置換基を有する前記フィラーの前記置換基と前記ゲルとを脱水縮合させることにより、前記フィラーと前記ゲルとを化学結合させる脱水縮合工程を有する、防振材の製造方法であってもよい。
本発明によれば、従来よりも応力変化率を向上でき、モータの回転軸の回転開始時におけるトルク変化に伴う大きな応力と、走行中の小さな振動のいずれにも対応可能な防振材を提供できる。
本発明の第1実施形態に係る防振材を備えるマウント部品によるモータ支持構造を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る防振材を備えるマウント部品を示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る防振材を備える後方マウント部品の側面図である。 本発明の第1実施形態に係る防振材を備える左前方マウント部品の側面図である。 モータトルク制御を説明するための図である。 本発明の第1実施形態に係る防振材の構造を説明するための図である。 本発明の第1実施形態に係る防振材の構造の一例を示す模式図である。 Si-O-B結合数が1のときのゲル構造を示す図である。 Si-O-B結合数が2のときのゲル構造を示す図である。 Si-O-B結合数が3のときのゲル構造を示す図である。 応力変化率を示す図である。 ホウ酸量と応力変化率との関係を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る防振材の構造の一例を示す模式図である。 防振材の変位に対する荷重の関係を示す図である。
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図1及び図2中、Frは車両前方、Rrは車両後方、FRは車両右前方(運転者から見た右前方)、FLは車両左前方(運転者から見た左前方)を表している。
図1は、本発明の第1実施形態に係る防振材を備えるマウント部品11,12,13によるモータ支持構造1を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る防振材を備えるマウント部品11,12,13は、電気自動車車体のフレーム10上に配置され、モータ2はこのマウント部品11,12,13を介してフレーム10上に支持される。
図2は、本発明の第1実施形態に係る防振材を備えるマウント部品11,12,13を示す斜視図である。図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る防振材を備えるマウント部品11,12,13は、車両後方に配置される後方マウント部品11と、車両左前方に配置される左前方マウント部品13と、車両右前方に配置される右前方マウント部品12と、を有する。モータ2は、これら3つのマウント部品11,12,13を介してフレーム10上に支持される。
図3は、本発明の第1実施形態に係る防振材を備える後方マウント部品11の側面図(FR方向から見た側面図)である。図3に示すように、後方マウント部品11は、本体部110と、本体部110を支持しフレーム10に固定される一対の脚部111,112と、を有する。本体部110は、モータ2を支持する支持部113を有し、この支持部113まわりに該支持部113と本体部110とを連結する防振材5が用いられている。
図4は、本発明の第1実施形態に係る防振材を備える左前方マウント部品13の側面図である。ここで、右前方マウント部品12は左前方マウント部品13と同様の構成であるため、代表して、左前方マウント部品13の構造についてのみ説明する。図4に示すように、左前方マウント部品13は、本体部130と、モータ2に固定される固定部131と、を有する。本体部130は、フレーム10に支持される支持部132を有し、この支持部132まわりに該支持部132とフレーム10とを連結する防振材5が用いられている。
上述の後方マウント部品11に用いられる防振材5と、左前方マウント部品13及び右前方マウント部品12に用いられる防振材5は、同一の材料で構成される。この防振材5は、モータ2の駆動力、特に後述するように加速時におけるモータ2の大きな駆動力の出力により生じる振動と、車両走行時における路面の凹凸に起因し車輪3,3からサスペンション4,4を介して車体に伝達される振動と、の両者を吸収する機能を有する。
次に、防振材5に求められる機能について説明する。
本来、マウント部品は、エンジンやモータ等のパワートレイン(以下、PT)を支持する機能と、PTの動きを規制して乗り心地を向上する機能と、PTの振動を遮断する機能(NV)と、を有するよう設計される。マウント部品の材料として用いられる防振材としては、硫黄結合により架橋されたイソプレン(天然ゴム)や、架橋材、補強材及び老化防止剤等を含んだ高分子材料を架橋させた合成ゴム等の弾性ばねが利用される。
ここで、一般的にエンジンの駆動力は、トランスミッション(T/M)によるギア比の変更に応じて変化する。具体的に、エンジンの駆動力は、低速ギアほど車速は小さい一方で駆動力は大きく、高速ギアほど車速は大きい一方で駆動力は小さい特性を有する。これに対してモータの駆動力は、車速が小さいときほど大きな駆動力が得られる特性を有する。即ち、モータは初速から大きな駆動力が得られるため、加速時にスムーズな加速が可能である。
しかしながら、このモータ特有の駆動力(トルク)、即ち、加減速時の過渡的なモータの大きな駆動力に起因する変位変化により、上述のマウント部品11,12,13を介して車体への振動及び衝撃の入力(伝達)が懸念される。そのため、通常、モータのトルクを抑制するモータトルク制御を行い、加速性能を妥協しているのが現状である。
ここで、図5は、モータトルク制御を説明するための図である。図5中、横軸は時間(s)を表しており、縦軸は変位(mm)を表している。また、破線はモータ本来のトルクによる入力変位を示しており、実線はモータトルク制御を行ったときの入力変位を示している。この図5に示されるように、モータトルク制御により、加減速時(図5中、2点鎖線で囲まれた領域)の駆動力が抑制され、モータ本来の加速性能を十分に活かせていないのが現状である。
従って、モータ本来の加速性能を十分に活かすべく、防振材には、加速時におけるモータ2の大きな駆動力の出力により生じる振動と、車両走行時における路面の凹凸に起因し車輪3,3からサスペンション4,4を介して車体に伝達される振動と、の両者を吸収する機能が求められるところ、従来そのような機能を有する防振材は存在しない。これに対して本実施形態に係る防振材5は、この両者を吸収する機能を備えており、従来にはない新規な防振材である。
次に、第1実施形態に係る防振材5の構成について説明する。
図6は、本実施形態に係る防振材5の構造を説明するための図である。図6に示すように、本実施形態に係る防振材5は、大きな振動の衝撃が入力されたときには架橋構造で結合することで反力を出力可能である一方で、比較的小さな振動が入力されたときには架橋構造を滑らせて(柔らかくして)振動を遮断することが可能な構造を有している。即ち、本実施形態に係る防振材5は、振動の入力速度に応じて反力を切り替え可能な可変応答防振材である。これにより、加速時におけるモータ2の大きな駆動力の出力により生じる振動と、車両走行時における路面の凹凸に起因し車輪3,3からサスペンション4,4を介して車体に伝達される振動と、の両者を吸収することが可能となっている。
具体的に、本実施形態に係る防振材5は、シリコーンオイルとホウ酸の脱水縮合物であるシリコーンオイルホウ酸ゲル(以下、単にゲルともいう。)を含む。このゲルは、シリコーンオイルのシラノール基とホウ素の水酸基との間で進行する脱水縮合により、ホウ素との結合によってシリコーンオイルがゲル化したものである。このゲルが、図6に示した上述の可変応答防振材として機能する。より詳しくは、振動の入力速度に応じて、シリコーンオイルの末端の置換基とホウ酸とによる化学結合/脱離が期待でき、振動の入力速度に応じた反力の切り替えが可能である。これにより、優れた応力変化率を有する防振材5の実現が可能となっている。
また、本実施形態に係る防振材5では、シリコーンオイルとホウ酸の合計100モルに対するホウ酸のモル数は、25~75モルである。シリコーンオイルとホウ酸の合計100モルに対するホウ酸のモル数が25モル以上であれば、上述の振動の入力速度に応じた応力変化特性が認められる。一方、シリコーンオイルとホウ酸の合計100モルに対するホウ酸のモル数が75モル以下であれば、溶け残りを抑制できる。より好ましいシリコーンオイルとホウ酸の合計100モルに対するホウ酸のモル数は、37.5~50モルであり、これにより含有量の変化に対する応力変化特性の向上効果がより顕著に得られる。
ここで、図7は、本実施形態に係る防振材5の構造の一例を示す模式図である。図7に示すように、本実施形態に係る防振材5は、シリコーンゴムをさらに含むことが好ましい。このように本実施形態に係る防振材5は、ベースポリマーとしてのシリコーンゴムに対して、上述のゲルが結合した構造を有していることが好ましい。これにより、シリコーンゴムの物性を期待でき、可変応答防振材としての応力変化率を向上できる。
また、本実施形態に係る防振材5は、ベースポリマーとして、天然ゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブダジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、エチレン・酢ビゴム、クロロプレンゴム、ハイパロン、塩素化ポリエチレンゴムを用いることができる。
シリコーンゴムとゲルの合計100質量%に対するゲルの質量%は、1~30質量%であることが好ましい。シリコーンゴムとゲルの合計100質量%に対するゲルの質量%が1質量%以上であれば、振動の入力速度に応じた応力変化特性が認められる。シリコーンゴムとゲルの合計100質量%に対するゲルの質量%が30質量%以下であれば、成形性が担保できる。より好ましいシリコーンゴムとゲルの合計100質量%に対するゲルの質量%は、5~20質量%であり、これにより高速入力時の応力変化の向上効果が得られる。
ここで、図8Aは、Si-O-B結合数が1のときのゲル構造を示す図である。図8Bは、Si-O-B結合数が2のときのゲル構造を示す図である。図8Cは、Si-O-B結合数が3のときのゲル構造を示す図である。これら図8A~図8Cに示すように、本実施形態に係る防振材5に含まれるゲルは、ホウ酸1分子に対してシリコーンオイルが1分子、2分子又は3分子結合したものの混合物である。
本実施形態に係る防振材5に用いられるシリコーンオイル及びシリコーンゴムについて、さらに詳しく説明する。
先ず、本実施形態に係る防振材5に用いられるシリコーンオイル及びシリコーンゴムはいずれも、下記化学式(1)で示される単量体を重合することにより得られるものである。具体的に、本実施形態に係る防振材5に用いられるシリコーンオイル及びシリコーンゴムはいずれも、下記化学式(2)で示される共通の基本骨格を有している。
Figure 2022022081000002
Figure 2022022081000003
上記化学式(1)及び化学式(2)中、側鎖のRとしては、下記化学式(3)で示されるメチル基、下記化学式(4)で示されるフェニル基、下記化学式(5)で示されるビニル基、下記化学式(6)で示されるフロロ基、下記化学式(7)で示されるトリフルオロメチル基、下記化学式(8)で示されるトリフルオロプロピル基が挙げられ、これらの中から1種又は複数種が選択される。
Figure 2022022081000004
また、上記化学式(1)及び化学式(2)中、末端のR’としては、下記化学式(9)で示される水酸基、下記化学式(10)で示されるカルボキシル基、下記化学式(11)で示されるスルホ基、下記化学式(12)で示されるアルコール基、下記化学式(13)で示されるジオール基、下記化学式(14)で示されるメチル基、下記化学式(15)で示されるビニル基が挙げられ、これらの中から1種又は複数種が選択される。なお、本実施形態では、両末端R’,R’は水酸基(即ち末端シラノール基)が最も効果的であるが、効果発現にはそれぞれ、片末端、両末端を問わない。
Figure 2022022081000005
シリコーンオイルにおいては、上記側鎖Rとしては、メチル基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる少なくとも一つが好ましく選択される。中でも、シリコーンオイルの側鎖Rとしては、メチル基であることがより好ましい。側鎖Rは、メチル基を主とし、局所的に他の誘導体で置換されていることが好ましい。
同様にシリコーンオイルにおいては、上記末端R’としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコール基及びジオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つが好ましく選択される。中でも、シリコーンオイルの両末端R’,R’は、ヒドロキシ基であることがより好ましい。
上記構造を有するシリコーンオイルの分子量は、1,000~100,000g/モルであることが好ましい。シリコーンオイルの分子量がこの範囲内であることにより、可変応答防振材として機能する。より好ましいシリコーンオイルの分子量は、5,000~8,000g/モルである。
また、シリコーンゴムにおいては、上記側鎖Rとしては、メチル基、フェニル基、ビニル基、フロロ基、トリフルオロメチル基及びトリフルオロプロピル基からなる群より選ばれる少なくとも一つが好ましく選択される。側鎖Rは、メチル基を主とし、局所的に他の誘導体で置換されていることが好ましい。
同様にシリコーンゴムにおいては、上記末端R’としては、メチル基、ヒドロキシ基及びビニル基からなる群より選ばれる少なくとも一つが好ましく選択される。
シリコーンゴムの具体例としては、下記化学式(16)で示されるメチルシリコーンゴム、下記化学式(17)で示されるフロロシリコーンゴム、下記化学式(18)で示されるトリフルオロプロピルシリコーンゴム、下記化学式(19)で示されるビニル・メチルシリコーンゴム、下記化学式(20)で示されるフェニル・メチルシリコーンゴム、下記化学式(21)で示されるジフェニル・メチルシリコーンゴム、下記化学式(22)で示されるビニル・トリフルオロプロピルシリコーンゴムが挙げられる。
Figure 2022022081000006
なお、本実施形態のシリコーンゴムとしては、市販品を用いることができる。例えば、信越化学社製「KE5550-U」や「KE-1950-60-A/B」の他、WACKER社製「SilGel 612 A/B」を用いることができる。
上記構造を有するシリコーンゴムの分子量は、1,000~1000,000g/モルであることが好ましい。シリコーンゴムの分子量がこの範囲内であることにより、可変応答防振材として機能する。より好ましいシリコーンゴムの分子量は、300,000~600,000g/モルである。
以上の構成を有する本実施形態の防振材5の製造方法について説明する。
先ず、ゲルは、例えば次のようにして作製可能である。例えば、ガラス容器にホウ酸とアセトンを入れて30分間、室温で撹拌する。次いで、化学量論比でシリコーンオイル(PDMS):ホウ酸=3:2となるように、シリコーンオイルを加えて混合する。次いで、ホットスターラーで120℃×3時間、加熱撹拌する。最後に、溶媒が蒸発するまで室温静置することにより、上記ゲルを作製可能である。
次いで、上述のようにして作製したゲルと、シリコーンゴムとを含む防振材は、例えば次のようにして作製可能である。例えば、架橋前のシリコーンゴムに、上述のようにして作製したゲルを添加してよく練り合わせる。次いで、型に流し、各シリコーンゴムのカタログ推奨の作製方法に従い、加熱、加圧等を施すことにより、防振材を作製可能である。
より具体的に、2液混合タイプのシリコーンゴムの場合には、先ず、シリコーンゴムA材にゲルを入れ、1時間撹拌させて混合する。次いで、該混合物を脱気後、シリコーンゴムB材を入れ、よく混合させた後に、150℃、2時間以上加熱して架橋させることにより、防振材を作製可能である。
また、ミラブルタイプ(熱加硫型)のシリコーンゴムの場合には、先ず、ロールによる混練り(回転数25rpm、ロール温度40±5℃)で素練り(ゴム)・配合剤添加・3/4切り返し×3往復・丸め通し×6回を実施する。次いで、165℃、10分(シート)、15分(圧縮永久ひずみ試験片)のプレス成型条件でプレス成型した後、2次加硫を200℃、4時間行うことにより、防振材を作製可能である。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の第2実施形態に係る防振材51も、第1実施形態の防振材5と同様の部位に備えることができ、同様の用途に用いることができる(図1~4)。
本発明の第2実施形態に係る防振材51の構成について説明する。
本実施形態に係る防振材51は、シリコーンオイルとホウ酸の脱水縮合物であるシリコーンオイルホウ酸ゲルに加え、フィラーを含み、シリコーンオイルホウ酸ゲルとフィラーが化学結合(脱水縮合反応)している。なお、本実施形態において、「シリコーンオイルホウ酸ゲルとフィラーとの間の化学結合(ゲルとフィラーとの間の化学架橋構造)」により形成される複合体のことを「ゲル-フィラー複合体」と称することがある。
本実施形態に係る防振材51に大きな振動の衝撃が入力されたときにはシリコーンオイルホウ酸ゲル(以下、単にゲルともいう。)とフィラーの間で化学結合していることで反力を出力可能である一方で、比較的小さな振動が入力されたときにはゲルとフィラーとの間の架橋構造を滑らせて(柔らかくして)振動を遮断することが可能な構造を有している。さらに、シリコーンオイルとホウ酸を含むゲルとフィラーの間に絡み合い構造を有することで、防振材の減衰特性がより向上する。本実施形態のゲル-フィラー架橋構造を有する防振材は、フィラーの表面がゲルとの化学結合によって表面修飾されているため、ゲル分子鎖の絡み合い効果がフィラー間の干渉をさらにやわらげ、かつフィラー間に滑り効果も付与することから振動遮断性が向上する。なお、滑り構造により、振動入力時、低変位時にフィラー同士の干渉による振動遮断性の悪化を抑制できる。また、混練りなどにより、ゲルとフィラーが分散した状態に比べて本実施例の防振材51は表面のみの軟化になるため大変位時にはゲルを介して近接するフィラー同士を干渉させて剛性を維持できる。即ち、本実施形態に係る防振材は、振動の入力速度に応じて反力を切り替え可能な可変応答防振材である。
より詳しくは、振動の入力速度に応じて、シリコーンオイルの末端の置換基とホウ酸とによる化学結合/脱離が期待できるほか、ゲル-フィラー間に化学結合を有することでゲル-フィラー間に滑り構造及び絡み合い構造を付与できるので、振動の入力速度に応じた反力の切り替えについてより応答性を高くすることが可能である。これにより、より優れた応力変化率を有する防振材の実現が可能となっている。
また、加速時におけるモータ2の大きな駆動力の出力により生じる振動と、車両走行時における路面の凹凸に起因し車輪3,3からサスペンション4,4を介して車体に伝達される振動と、の両者をより鋭敏に吸収することが可能となっている。そのため、単にシリコーンオイルホウ酸ゲルとフィラーとを混練りして形成した防振材と比較すると、振動遮断性、減衰特性及び防振材の剛性に特に優れている。
また、本実施形態に係る防振材51では、シリコーンオイルとホウ酸の合計100モルに対するホウ酸のモル数は、第1実施形態と同様とすることで、上述の振動の入力速度に応じた応力変化特性が認められ、また、溶け残りを抑制できる。
また、シリコーンオイルとホウ酸の合計100モルに対するホウ酸のモル数の好適範囲についても第1実施形態と同様とすることで、含有量の変化に対する応力変化特性の向上効果がより顕著に得られる。
以下、本実施形態に係る防振材に用いられるフィラーについて、詳しく説明する。
フィラー6としては、特に限定されるものではなく、本実施形態に係る防振材に要求される物理的性質の付与、向上、改善等の目的に応じた観点から選択することができる。
具体的には、導電性の観点からは、例えば、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属箔などから選択することができる。強度の観点からは、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、チタン酸カリウムなどから選択することができる。磁性の観点からは、例えば、各種磁性材料の微粉末、各種フェライト系微粉末、磁性酸化鉄などから選択することができる。熱伝導性の観点からは、例えば、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化ベリリウムなどから選択することができる。制振性の観点からは、例えば、マイカ、黒鉛、炭素繊維、フェライトなどから選択することができる。遮音性の観点からは、例えば、鉄粉、鉛粉、硫酸バリウムなどから選択することができる。摺動性の観点からは、例えば、黒鉛、六方晶窒化ホウ素、硫化モリブデン、テフロン(登録商標)(PTFE)粉、タルクなどから選択することができる。断熱性、軽量性の観点からは、例えば、ガラスバルーン、シラスバルーンなどのバルーン系材料から選択することができる。光反射性、光散乱性の観点からは、例えば、酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、マイカなどから選択することができる。難燃性を有する難燃剤からなるフィラーとしては、例えば、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物の微粉末、ホウ酸亜鉛等から選択することができる。紫外線防護の観点からは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などから選択することができる。吸水性を有する吸水剤からなるフィラーとしては、例えば、吸水性を有する高分子ゲル、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどから選択することができる。シリコーンゴムやシリコーンオイルとの親和性との観点からは、例えば、シリカ、ヒュームドシリカなどから選択することができる。
フィラーの比表面積は、通常20~750m/g、好ましくは20~50m/gの範囲内にあることが望ましい。また、フィラー6は1種単独で使用することも、また、2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
本実施形態においては、フィラー表面を化学修飾することも好ましい。フィラーを表面修飾することで、フィラー6とシリコーンオイルホウ酸ゲル7との間の架橋反応(脱水縮合反応)させたときの反応性がより高くなり、好ましい。
フィラーへの表面修飾の際に設けられる置換基としては、ヒドロキシ基、メチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルデヒド基のような官能基のほか、下記化学式(33)で示される骨格を有するシリコーンオイルが挙げられる。好ましい置換基としては、ヒドロキシ基が挙げられる。
Figure 2022022081000007
本実施形態の防振材に用いられるフィラーとシリコーンオイルホウ酸ゲルを化学架橋させるにあたっては、フィラー表面に存在するヒドロキシ基(-OH基)の個数とシリコーンオイルホウ酸ゲル中のヒドロキシ基の個数の比が1:1に近くなるように、シリコーンオイル、ホウ酸及びフィラーの配合量を調整することが好ましい。フィラーとゲルそれぞれのヒドロキシ基の個数を1:1に近づけることでゲル-フィラー複合体の疎水性能が高くなる。フィラー表面に存在するヒドロキシ基(-OH基)の個数については赤外吸収スペクトル法、フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)拡散反射法、核磁気共鳴法などの公知の固体表面分析法、化学反応を用いる分析方法を用いて評価することができる。シリカフィラーの場合においては、一定の条件で水素化リチウムアルミニウムと反応させることでシラノール基密度を評価することができる。
本実施形態の防振材に用いられるフィラー6として、シリコーンオイルホウ酸ゲル7や後述するシリコーンゴムとの親和性の観点からシリカフィラーやヒュームドシリカといったシリカを原料とするフィラーが好ましい。
シリカフィラーは、(SiOで表される物質であり、その表面に疎水性のシロキサン結合(-Si-O-Si-)と親水性のシラノール基(-Si-OH)を有する。シリカフィラーは、湿式法と乾式法の2つの製造方法のいずれかによって製造されるが、後述するシラノール基を多数含む点で湿式法により製造されるシリカフィラーが好ましい。シリカの表面は、シラノール基が脱水縮合反応することで化学修飾することが可能であり、直接シリコーンオイルホウ酸ゲルのヒドロキシ基との間で脱水縮合反応をさせて化学結合を形成することが好ましい。
ここで、図11は、本実施形態に係る防振材の構造の一例を示す模式図である。図11に示すように、本実施形態に係る防振材は、シリコーンゴム8をさらに含むことが好ましい。本実施形態に係る防振材52は、ベースポリマーとしてのシリコーンゴムに対して、上述のゲル-フィラー複合体が化学結合した構造を有していることが好ましい。これにより、シリコーンゴムポリマー鎖とゲル-フィラー複合体との間にも滑り構造や絡み合い構造が生じるので、可変応答防振材としての応答性や応力変化率、減衰特性、振動遮断性及び剛性をより向上できる。
本実施形態においては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、ホウ酸及びベースポリマーは、第1実施形態で挙げたものを好ましく用いることができる。
なお、シリコーンオイルホウ酸ゲルと、シリコーンゴムと、フィラーを含む複合体を「ゲル-シリコーンゴム-フィラー複合体」と称することがある。
シリコーンゴムとゲル-フィラー複合体の合計100質量%に対するゲル-フィラー複合体の質量%は、25~40質量%であることが好ましい。シリコーンゴムとゲル-フィラー複合体の合計100質量%に対するゲル-フィラー複合体の質量%が25質量%以上であれば、ゴムの高剛性化を図ることで高剛性・高減衰が認められる。シリコーンゴムとゲル-フィラー複合体の合計100質量%に対するゲル-フィラー複合体の質量%が40質量%以下であれば、補強効果が薄れ、振動遮断性の効果を得られる。
以上の構成を有する、本実施形態の防振材の製造方法について説明する。
以下の手順により、先ず、ゲル-フィラー複合体を作製する。
フィラーを攪拌加熱する。例えば、ガラス容器にシリカフィラーを入れ、蓋をしたのち、120℃で攪拌し、シリカフィラーの温度を均一にする。
次にフィラーの攪拌加熱の間にゲルを調製する。ゲルの調製方法としては、例えば次のようにして作製可能である。例えば、ガラス容器にホウ酸とアセトンを入れて30分間、室温で撹拌する。次いで、化学量論比でシリコーンオイル(PDMS):ホウ酸=3:2となるように、シリコーンオイルを加えて混合する。1分経過後、ホットスターラーで120℃に昇温し45分間保持することでゲルの調製は完了する。
ゲルの調製が完了したら、ガラス容器の蓋を開け付着しているフィラーを容器内に落としたのち、回転数を上げる。次いで、ゲルをフィラーに添加する。このとき、ゲルのヒドロキシ基(-OH基)の個数:フィラー表面のヒドロキシ基(-OH基)の個数=1:1となるように、ゲルを加えて混合する(脱水縮合工程)。添加にあたっては、例えば、漏斗を用いて滴下する方法やスプレーを用いて吹き付ける方法が好ましい。添加が完了したら、120℃、90分の条件で保持する。90分経過後、ガラス容器を取り出して、50℃、12時間保持することで、ゲル-フィラー複合体が作製可能である。
次いで、上述のようにして作製したゲル-フィラー複合体と、シリコーンゴムとを含む防振材は、例えば、第1実施形態と同様にして作製可能である。例えば、架橋前のシリコーンゴムに、上述のようにして作製したゲル-フィラー複合体を添加してよく練り合わせる。次いで、型に流し、各シリコーンゴムのカタログ推奨の作製方法に従い、加熱、加圧等を施すことにより、防振材を作製可能である。
本実施形態に係る防振材の製造において、ゲル-フィラー複合体は上記のいわゆる乾式法による製造方法のほか、例えば、シリカフィラーに代えてシリカフィラーのスラリーを用いて乾式法と同様の手順で調製した後、濾過し乾燥することでゲル-フィラー複合体を得る、いわゆる湿式法による製造方法によっても製造することができる。本実施形態に係る防振材の製造において、ゲル-フィラー複合体は環境負荷及びリードタイムの観点から、乾式法により製造することが好ましい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1~11、比較例1~3]
以下の作製手順により、ゲルを作製した。
先ず、ガラス容器にアセトンと規定モル%のホウ酸を加え、室温で30分、溶解するまで撹拌した。撹拌して得られた混合溶液にPDMS(シリコーンオイル)を加え、よく混合させた。シリコーンオイルとしては、下記化学式(23)で示される旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「WACKER FINISH WS62M」を用いた。このとき、シリコーンオイルが十分に混合されたことを目視で確認した。次いで、120℃のホットスターラーで、3時間、加熱撹拌した。生成した化合物をデシケーター内に静置し、残留アセトンと水を蒸発させることにより、ゲルを得た。
Figure 2022022081000008
以下の作製手順により、上記ゲル及びシリコーンゴムを含む防振材を作製した。
先ず、架橋前のシリコーンゴムに、上述のようにして作製したゲルを添加してよく練り合わせた。シリコーンゴムとしては、信越化学工業株式会社製「KE5550U」を用いた。次いで、型に流し、各シリコーンゴムのカタログ推奨の作製方法に従い、加熱、加圧等を施すことにより、防振材を作製した。
具体的に、ミラブルタイプ(熱加硫型)のシリコーンゴムの場合には、先ず、ロールによる混練り(回転数25rpm、ロール温度40±5℃)で素練り(ゴム)・配合剤添加・3/4切り返し×3往復・丸め通し×6回を行った。次いで、165℃、10分(シート)、15分(圧縮永久ひずみ試験片)のプレス成型条件でプレス成型した後、2次加硫を200℃、4時間行うことにより、各実施例、比較例の防振材を作製した。
なお、2液混合タイプのシリコーンゴムの場合には、先ず、シリコーンゴムA材にゲルを入れ、1時間撹拌させて混合した。次いで、該混合物を脱気後、シリコーンゴムB材を入れ、よく混合させた後に、150℃、2時間以上加熱して架橋させることによっても、防振材を作製することができる。
[レオメータ試験]
上述のようにして作製した実施例1~4及び比較例1、2の防振材に対して、レオメータ試験を実施した。レオメータ試験は、以下の条件で実施した。
測定装置:Anton pear MC320
冶具:パラレルプレートPP25-SN27128
試料高さ:1mm
周波数:0.1~100(rad/s)
ひずみ:1%
温度:23℃
[圧縮試験]
上述のようにして作製した実施例5~11及び比較例3の防振材に対して、圧縮試験を実施した。圧縮試験は、以下の条件で実施した。
試験片:φ30mm、高さ12.5mm
試験条件:6.5mm圧縮試験
入力速度:1、50、100、250、500mm/分
[溶け残り評価]
目視にて、ホウ酸の溶け残りの有無を評価した。目視で溶け残りが確認できた場合には溶け残り有とし、目視で溶け残りが確認できなかった場合には溶け残り無とした。
[成形性評価]
目視にて、成形性を評価した。目視で分散不良が確認できた場合には成形不良とし、目視で分散不良が確認できなかった場合には成形良とした。
なお、実施例1~4及び比較例1~2におけるホウ酸量(モル%)は表1に示す通りとした。また、実施例5~11及び比較例3におけるゲル量(質量%)は表2に示す通りとした。そして、実施例1~4及び比較例1~2の応力変化率(Pas)及び溶け残りの有無の評価結果を表1に示した。また、実施例5~11及び比較例3の成形性及び高速入力時の応力変化(%)の評価結果を表2に示した。
Figure 2022022081000009
Figure 2022022081000010
表1に示した実施例1~4及び比較例1~2の応力変化率については、レオメータ試験により得られた動的粘弾性測定結果から算出した。なお、比較例2については2容量%のホウ酸の溶け残りが確認されたため、レオメータ試験は実施しなかった。ここで、図9は、応力変化率を示す図である。図9に示すように、応力変化率は、動的粘弾性測定で得られる応力差分Δσ(応力変化率)を、周波数差分Δf(周波数変化率)で除して算出される。即ち、応力変化率は、周波数(Hz)に対する応力(Pa)の変化率であり、図9に示す直線部分の傾きである。
図10は、ホウ酸量と応力変化率との関係を示す図である。図10は、実施例1~4及び比較例1の結果を用いて作成したものである。図10に示すように、ホウ酸量が増加すると、応力変化率が増大することが確認された。即ち、ホウ酸量が増加すると、入力速度に対して応力の増加が確認され、速度依存性を有することが確認された。この結果から、シリコーンオイルとホウ酸の合計100モルに対するホウ酸のモル数は、25~75モルが好ましいことが確認された。
また、表2に示した実施例5~11及び比較例3の高速入力時の応力変化については、圧縮試験結果に基づいて算出した。具体的には、同形状での材料評価のため、荷重-変位関係の結果を、テストピース形状を反映した応力-ひずみ曲線に変換することにより、荷重変化率を応力変化率として算出した。表2に示すように、ゲル量が0質量%の比較例3と比べて、ゲル量が1質量%以上である実施例5~10における高速入力時の応力変化が増加傾向にあることが確認された。なお、実施例11については、分散せず成形不良であったため圧縮試験は未測定である。これらの結果から、シリコーンゴムとゲルの合計100質量%に対するゲルの質量%は、1~30質量%が好ましいことが確認された。
[実施例12~16、比較例4~5]
以下の作製手順により、ゲル-フィラー複合体を作製した。
先ず、フィラーを攪拌加熱する。ガラス容器にフィラーを30重量部入れ、蓋をしたのち、120℃で攪拌し、フィラーの温度を均一にする。フィラーとしては、日本アエロジル社製「AEROSIL 50」を用いた。
次にフィラーの攪拌加熱の間にゲルを調製する。ガラス容器にアセトンと規定モル%のホウ酸を加え、室温で30分、溶解するまで回転数400rpmで撹拌した。撹拌して得られた混合溶液にPDMS(シリコーンオイル)を加え、回転数400rpmで撹拌しよく混合させた。シリコーンオイルとしては、下記化学式(23)で示される旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「WACKER FINISH WS62M」を用いた。このとき、シリコーンオイルが十分に混合されたことを目視で確認した。次いで、120℃のホットスターラーで、3時間、回転数400rpmで加熱撹拌した。生成した化合物をデシケーター内に45分静置し、残留アセトンと水を蒸発させることにより、ゲルを得た。
ゲルの調製が完了したら、ガラス容器の蓋を開け付着しているフィラーを容器内に落としたのち、回転数を735rpmに上げる。次いで、ゲルをフィラーに滴下する。滴下が完了したら、回転数735rpm、120℃、90分の条件で保持する。90分経過後、ガラス容器を取り出して、50℃の恒温槽に12時間保持することで、ゲル-フィラー複合体を得た。
Figure 2022022081000011
以下の作製手順により、上記ゲル-フィラー複合体及びシリコーンゴムを含む実施例12の防振材を作製した。
先ず、架橋前のシリコーンゴムに、上述のようにして作製したゲル-フィラー複合体を添加してよく練り合わせた。シリコーンゴムとしては、信越化学工業株式会社製「KE5550U」を用いた。次いで、型に流し、各シリコーンゴムのカタログ推奨の作製方法に従い、加熱、加圧等を施すことにより、防振材を作製した。
具体的に、ミラブルタイプ(熱加硫型)のシリコーンゴムの場合には、先ず、ロールによる混練り(回転数25rpm、ロール温度40±5℃)で素練り(ゴム)・配合剤添加・3/4切り返し×3往復・丸め通し×6回を行った。次いで、165℃、10分(シート)、15分(圧縮永久ひずみ試験片)のプレス成型条件でプレス成型した後、2次加硫を200℃、4時間行うことにより、各実施例、比較例の防振材を作製した。
なお、2液混合タイプのシリコーンゴムの場合には、先ず、シリコーンゴムA材にゲルを入れ、1時間撹拌させて混合した。次いで、該混合物を脱気後、シリコーンゴムB材を入れ、よく混合させた後に、150℃、2時間以上加熱して架橋させることによっても、防振材を作製することができる。
[圧縮試験]
上述のようにして作製した実施例12~16及び比較例4~5の防振材に対して、圧縮試験を実施した。圧縮試験は、上記に記載の条件で実施した。
なお、実施例13においては、フィラーは添加せず、上記のシリコーンゴム「KE5550U(信越化学工業株式会社製)」にシリコーンオイルホウ酸ゲル5質量部を添加し、上記の条件で混練りした後、成型して防振材を作製した。実施例14ではシリコーンオイルホウ酸ゲルの配合量を10質量部にした以外には実施例13と同一の条件で防振材を作製した。
実施例15においては、上記のシリコーンゴム「KE5550U」にシリカフィラー「TB(東ソー・シリカ社製)」30質量部とゲル5質量部をそれぞれ分けて添加し、上記の条件で混練りした後、成型して防振材を作製した。実施例16では、ゲルの配合量を10質量部にした以外は実施例15と同一の条件で防振材を作製した。
比較例4においては、上記のシリコーンゴム「KE5550U」にシリカフィラー「TB(東ソー・シリカ社製)」30質量部を添加した後、上記の条件で混練りし、成型して防振材を作製した。
比較例5においては、上記のシリコーンゴム「KE5550U」に、フィラー及びゲルを添加せず、上記の条件で練ったのち、成型して防振材を作製した。
防振性評価の具体例として、実施例12~16及び比較例4~5について、荷重-変位曲線をプロットしたグラフを図12に示す。なお、荷重-変位曲線において荷重と変位が比例関係にあるとき、荷重/変位はばね定数に相当する値となる。
実施例12の防振材は、図12の荷重-変位曲線において変位4.25mm近傍・入力荷重800N付近で曲線の傾きが大きく変わることがわかる。具体的には、変位4.25mm近傍までの入力荷重に対してはΔ荷重/Δ変位の値が小さいことから、低荷重の入力には剛性が低く振動遮断性及び減衰特性に特に優れていることがわかる。他方、実施例12の防振材は、変位4.25mm近傍・入力荷重800Nを超える入力荷重に対してはΔ荷重/Δ変位が大きいことから、高荷重の入力に対しては高剛性化し外部からの衝撃に対しては反力を出力し得ることがわかる。
したがって、実施例12の防振材は変位4.25mm近傍・入力荷重800N近傍で、入力された荷重に対して剛性が大きく変わることから、駆動力由来の振動と路面の凹凸に由来する振動の双方を吸収できる可変応答防振材として優れた性能を有していることがわかる。
実施例13の防振材について、図12の荷重-変位曲線を見ると、変位4.5mm近傍・入力荷重800N近傍に変曲点がある。原点から変曲点までのΔ荷重/Δ変位が小さいことから、振動遮断性と減衰特性が優れていることがわかる。
また、実施例14の防振材について、図12の荷重-変位曲線を見ると、変位4.5mm近傍・入力荷重600N近傍に変曲点があり、原点から変曲点までのΔ荷重/Δ変位が小さいことから、振動遮断性と減衰特性がより優れていることがわかる。
実施例15の防振材について、図12の荷重-変位曲線を見ると、変位4.5mm近傍・入力荷重1700N近傍に変曲点がある。変曲点から破断点までのΔ荷重/Δ変位が大きいことから剛性に優れており、外部からの衝撃に対して反力を出力可能であることがわかる。
また、実施例16の防振材について、図12の荷重-変位曲線を見ると、変位4.5mm近傍・入力荷重1200N近傍に変曲点がある。原点から変曲点までのΔ荷重/Δ変位が小さいことから振動遮断性及び減衰特性を有しており、変曲点から破断点までのΔ荷重/Δ変位も大きいことから剛性も有しており、外部からの衝撃に対して反力を出力可能であることがわかる。
比較例4の防振材について、図12の荷重-変位曲線を見ると、変位4.5mm近傍・入力荷重2300N近傍に変曲点がある。原点から変曲点近傍までのΔ荷重/Δ変位及び変曲点近傍から破断点までのΔ荷重/Δ変位から、比較例4は振動遮断性、減衰特性、剛性性のいずれも、各実施形態の防振材より低いことがわかる。
比較例5の防振材について、図12の荷重-変位曲線を見ると、変位5.0mm近傍・入力荷重1200N近傍に変曲点がある。原点から変曲点近傍までのΔ荷重/Δ変位及び変曲点近傍から破断点までのΔ荷重/Δ変位から、比較例5は振動遮断性、減衰特性、剛性性のいずれも、各実施形態の防振材より低いことがわかる。
以上の結果から、第1実施形態および第2実施形態に係る防振材によれば、従来よりも応力変化率を向上でき、モータの回転軸の回転開始時におけるトルク変化に伴う大きな応力と、走行中の小さな振動のいずれにも対応可能であることが確認された。
また、フィラーを含み、かつ、シリコーンオイルとホウ酸が脱水縮合したゲルとフィラーとシリコーンゴムが化学結合する第2実施形態に係る防振材は、振動遮断性能と減衰特性に特に優れていることが確認された。
さらに、本発明によれば、防振性能が改善された防振材の製造方法も提供できる。
1 モータ支持構造
2 モータ
3 車輪
4 サスペンション
5、51、52 防振材
6 フィラー
7 シリコーンオイルホウ酸ゲル
8 シリコーンゴム
10 フレーム
11 後方マウント部品
12 右前方マウント部品
13 左前方マウント部品
30 ゲル-シリコーンゴム-フィラー複合体

Claims (7)

  1. モータを支持するマウント部品に用いられる防振材であって、
    シリコーンオイルとホウ酸の脱水縮合物であるゲルを含み、
    前記シリコーンオイルと前記ホウ酸の合計100モルに対する前記ホウ酸のモル数は、25~75モルである、防振材。
  2. 前記シリコーンオイルの側鎖は、メチル基、フェニル基及びビニル基からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
    前記シリコーンオイルの末端は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコール基及びジオール基からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載の防振材。
  3. 前記シリコーンオイルの側鎖は、メチル基であり、
    前記シリコーンオイルの両末端は、ヒドロキシ基である、請求項1又は2に記載の防振材。
  4. シリコーンゴムをさらに含み、
    前記シリコーンゴムと前記ゲルの合計100質量%に対する前記ゲルの質量%は、1~30質量%である、請求項1から3いずれかに記載の防振材。
  5. 前記シリコーンゴムの側鎖は、メチル基、フェニル基、ビニル基、フロロ基、トリフルオロメチル基及びトリフルオロプロピル基からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
    前記シリコーンゴムの末端は、メチル基、ヒドロキシ基及びビニル基からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項4に記載の防振材。
  6. 前記防振材は、フィラーをさらに含み、
    前記フィラーと前記ゲルが化学結合している、請求項1から5いずれかに記載の防振材。
  7. 請求項6に記載の防振材の製造方法であって、
    置換基を有する前記フィラーの前記置換基と前記ゲルとを脱水縮合させることにより、前記フィラーと前記ゲルとを化学結合させる脱水縮合工程を有する、防振材の製造方法。
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