JP2022021201A - 複層ガラスモジュール、複層ガラスユニット及びガラス窓 - Google Patents

複層ガラスモジュール、複層ガラスユニット及びガラス窓 Download PDF

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Kazuyuki Suzuki
隆司 久田
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Abstract

【課題】断熱性能を維持しつつ、ガラス板の熱割れを抑制可能な複層ガラスモジュール、複層ガラスユニット、及びガラス窓を提供する。【解決手段】複層ガラスモジュール10は、遮炎部材20と面で対向し、遮炎部材20に組付可能であって、第1面31と、第1面31の裏側に設けられる第2面32とを有する第1ガラス板11と、第2面32に対向する第3面33と、第3面33の裏側に設けられる第4面34とを有する第2ガラス板12と、第2面32及び第3面33の周縁部8に配置され、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に空隙層5を形成するスペーサ13と、第4面34に隣接して延在する熱伝導部材41と、を備え、第1面31及び第4面34の周縁部8は、遮炎部材20によって被覆可能な遮炎領域2を有し、熱伝導部材41は、第2ガラス板12の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有し、遮炎領域2の少なくとも一部に配置されている。【選択図】図2

Description

本発明は、複数のガラス板を備える複層ガラスモジュール、複層ガラスユニット及びガラス窓に関する。
近年、住宅などの建物において、冷暖房負荷を低減できる断熱性の高い複層ガラスユニットが多く使用されている。特許文献1には、室外側の耐熱ガラス板と室内側のLow-Eガラス板と、耐熱ガラス板とLow-Eガラス板との間に配置されて両ガラス板の間に空隙層を形成するスペーサとを備えた複層ガラスモジュールが開示されている。Low-Eガラス板とは、低放射性の特殊金属膜をコーティングし、熱エネルギーを有する赤外線域における反射率を大きくしたガラス板である。Low-Eガラス板を複層ガラスの室内側のガラス板として用いると、室内の暖房熱等が特殊金属膜で反射されるため断熱性能が向上する。
Low-Eガラス板を有する複層ガラスユニットにおいては、室外側で火災が発生した場合に、Low-Eガラス板が熱を反射することにより、Low-Eガラス板の反対側のガラス板(火災側のガラス)の中央部が高温となりやすく、該ガラス板の中央部と周縁部との温度差に起因して熱割れが発生する。したがって、防火性能が要求される室外側のガラス板には、中央部と周縁部との大きい温度差に耐え得る、表面圧縮応力が大きいガラス板を用いるか、ガラス板の中央部と周縁部との温度差を小さく必要があった。
そこで、特許文献1に示される複層ガラスユニットでは、耐熱ガラス板の中央部とエッジ面との間の温度差を小さくするため、一端が耐熱ガラス板の端面や室外側の第1面に接触した状態で他端が枠体と接触する熱伝導部材を備えている。このように構成すると、火災により高温となった枠体から熱伝導部材を介して耐熱ガラス板の端面や第1面に伝熱される。これにより、耐熱ガラス板の端面の温度が上昇するため、結果として耐熱ガラス板の中央部と周縁部との温度差を小さくすることが可能となり、耐熱ガラス板の熱割れを防止することができる。
特開2011-220029号公報
複層ガラスユニットでは、耐熱ガラス板と、耐熱機能を有しない非耐熱ガラス板(または非強化ガラス)との間に空隙層を形成するスペーサの材料として、アルミ等の金属を用いる場合と、樹脂を用いる場合とがある。スペーサが金属製であると、複層ガラスユニットにおいてU値(熱貫流率)が高くなるため、断熱性能が低下する。しかし、スペーサが金属製であることで、耐熱ガラス板の側で火災が発生した場合には、耐熱ガラス板からスペーサを介して非耐熱ガラス板にスムーズに伝熱される。このため、非耐熱ガラス板がスペーサによって伝熱されて、非耐熱ガラス板は中央部と周縁部との間で温度差が生じ難くなる。したがって、非耐熱ガラス板は熱割れが生じ難く、複層ガラスユニットの耐熱性能は向上する。一方、スペーサが樹脂製であると、複層ガラスユニットにおいてU値(熱貫流率)が低くなるため、断熱性能が向上する。しかし、スペーサが樹脂製であることで、耐熱ガラス板の側で火災が発生した場合に、耐熱ガラス板からスペーサを介して非耐熱ガラス板に伝熱され難く、非耐熱ガラス板は加熱された空隙層を介して伝熱される中央部の温度が上昇するものの周縁部の温度は上昇しない。そのため、非耐熱ガラス板は、中央部と周縁部との間で温度差が生じ、熱割れが発生し易くなる。したがって、スペーサが樹脂製である複層ガラスユニットでは、耐熱性能が低下する。このように、複層ガラスモジュールは、断熱性能と耐熱性能とを両立させる上で改善の余地があった。
上記実情に鑑み、断熱性能を維持しつつ、ガラス板の熱割れを抑制することできる複層ガラスモジュール、複層ガラスユニット、及びガラス窓が求められている。
本発明に係る複層ガラスモジュールの特徴構成は、遮炎部材と面で対向し、前記遮炎部材に組付可能な複層ガラスモジュールであって、第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、前記第2面及び前記第3面の周縁部に配置され、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に空隙層を形成するスペーサと、前記第4面に隣接して延在する熱伝導部材と、を備え、前記第1ガラス板が、強化ガラス、結晶化ガラス、または、網入りガラスで形成され、前記第1面及び前記第4面の周縁部は、前記遮炎部材によって被覆可能な遮炎領域を有し、前記熱伝導部材は、前記第2ガラス板の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有し、前記遮炎領域の少なくとも一部に配置されている点にある。
複層ガラスモジュールでは、例えばスペーサに熱伝導性の低い材料を用いる等して、断熱性が高くするよう構成されることがある。スペーサは、第1ガラス板及び第2ガラス板において通常遮炎領域に設けられる。複層ガラスモジュールにおいて、スペーサとして熱伝導性の低い材料を用いた場合には、スペーサを介して第1ガラス板から第2ガラス板への熱伝導がされ難くなるため、第2のガラス板の周縁部の温度上昇が抑制され、第2ガラス板は中央部と周縁部との温度差が大きくなる。ここで、第1ガラス板の第1面が面する区画域に火災が発生した場合、第1ガラス板は遮炎部材によって被覆されていない非遮炎領域(中央部)が直接的に火炎に晒され、遮炎領域(周縁部)は遮炎部材により直接的に火炎に晒されない。また、第2ガラス板は加熱された空隙層を介して伝熱され自身の非遮炎領域が加熱され、火炎からの近赤外線及び赤外線が第2ガラス板に照射されることでも加熱される。一方、遮炎部材に覆われる遮炎領域(周縁部)は、遮炎部材によって火炎からの赤外線などを遮断されるため、第2ガラス板の中央部に比べて加熱されにくい。そのため、第2ガラス板において、加熱される非遮炎領域(中央部)が高温になると共に遮炎領域(周縁部)が低温になり、中央部の熱膨張を拘束する周縁部に熱応力が発生し、第2ガラス板の熱割れが発生するおそれがある。一方、第1ガラス板は、強化ガラス、結晶化ガラス、または、網入りガラスであることで、第1ガラス板を、中央部と周縁部との大きい温度差に耐え得る表面圧縮応力の大きいガラス板にすることができる。これにより、第1ガラス板は、熱割れを効果的に抑制することができる。
そこで、本構成の複層ガラスモジュールは、第2ガラス板の第4面に隣接して延在する熱伝導部材を備え、熱伝導部材は、第2ガラス板の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有し、第4面の周縁部にある遮炎領域の少なくとも一部に配置されている。このため、第2ガラス板において非遮炎領域(中央部)から遮炎領域(周縁部)への熱伝導が迅速に行われる。これにより、第1ガラス板の第1面の側において火災が発生した場合、その燃焼熱は、第1ガラス板の中央部から空隙層を介して第2ガラス板の中央部に伝熱されると共に、第2ガラス板において中央部から熱伝導部材を介して第2ガラス板の周縁部に伝熱される。その結果、第2ガラス板の周縁部の温度が上昇して第2ガラス板において中央部と周縁部との温度差が小さくなることから、第2ガラス板の熱割れ現象を生じ難くすることができる。このように、本構成の複層ガラスモジュールは、断熱性能を維持しつつ、火災時において第2ガラス板の熱割れを効率的に防止できる。
他の特徴構成は、前記遮炎領域は、前記第1ガラス板または前記第2ガラス板の端面から10mm以上30mm以下である点にある。
本構成によれば、遮炎領域がガラス板の周縁部に設けられているので、ガラス板は熱伝導部材を介して中央部から周縁部に熱伝導することが可能になる。その結果、ガラス板において熱割れがより起こり難くなる。また、遮炎部材に対するガラス板のかかり代(差し込み量)は、「日本建築学 建築工事標準仕様書・同解説 JASS17 ガラス工事」(以下、JASS17と称する)において、10mm以上にすることが規定されている。一方、遮炎領域の上下方向の長さが30mm超であると、遮炎部材によりガラス板の周縁部が加熱を阻害され、ガラス板の中央部と周縁部との温度差が大きくなることに起因してガラス板の熱割れが発生し易くなる。そこで、本構成の遮炎領域は、第1ガラス板または第2ガラス板の端面から10mm以上30mm以下となるように構成されている。
他の特徴構成は、前記スペーサの熱伝導率は、前記第2ガラス板の熱伝導率よりも低い点にある。
複層ガラスモジュールは、第1ガラス板と第2ガラス板の間にスペーサを配置し、当該スペーサにより第1ガラス板と第2ガラス板との間に空隙層を形成している。ここで、スペーサは第2ガラス板よりも熱伝導率が低い材料にすることで、第1ガラス板から第2ガラス板へのスペーサを介した伝熱が小さくなる。これにより、単層ガラス板と比較して、複層ガラスの第1ガラス板と第2ガラス板との伝熱を抑制することができる。その結果、複層ガラスモジュールは、断熱性能を向上させることができる。一方、このような複層ガラスモジュールでは、火災時において第1ガラス板の中央部から空隙層を介して第2ガラス板の中央部が加熱された際には、第2ガラス板は中央部と周縁部との間において温度差が大きくなり易い。しかし、複層ガラスモジュールでは、前述の通り、第2ガラス板の第4面の周縁部にある遮炎領域の少なくとも一部に熱伝導部材が延在しており、第2ガラス板は中央部から周縁部に伝熱され易い構成である。したがって、断熱性能に優れた複層ガラスモジュールにおいて、第2ガラス板の熱割れを効果的に抑制することもできる。
他の特徴構成は、前記熱伝導部材は、前記第2ガラス板の端面の少なくとも一部に配置される点にある。
本構成によれば、熱伝導部材が第2ガラス板の周縁部の板面に加えて端面の少なくとも一部にも配置されるので、第1ガラス板の中央部から空隙層を介して伝熱される第2ガラス板の中央部の熱は、熱伝導部材によって第2ガラス板の端面まで効率的に伝熱される。これにより、第2ガラス板の端面の温度が上昇し易くなるので、第2ガラス板の中央部と周縁部との温度差をより小さくすることが可能となる。その結果、第2ガラス板において、中央部から遠く温度上昇が緩慢な端面を含む周縁部における熱割れを、確実に防止することができる。
他の特徴構成は、熱伝導部材は、前記遮炎領域のみに配置される点にある。
本構成によれば、熱伝導部材が遮炎領域以外には配置されないので、熱伝導部材は外部から視認されない状態で第2ガラス板に配置される。これにより、見栄えが良く、複層ガラスモジュールの外観に熱伝導部材が影響を与えない状態で第2ガラス板の熱割れを防止することができる。
他の特徴構成は、前記熱伝導部材は、前記遮炎領域の外側まで延在している点にある。
本構成によれば、熱伝導部材が遮炎領域の外側まで延在しているので、火災時において第1ガラス板から空隙層を介して第2ガラス板の非遮炎領域(中央部)が受けた熱は熱伝導部材を介して遮炎領域(周縁部)に伝わり易くなる。これにより、第2ガラス板の中央部と周縁部との温度差を迅速に小さくすることができる。また、熱伝導部材は、第2ガラス板の非遮炎領域のうち遮炎領域に隣接する部位に配置されることで、非遮炎領域における熱伝導部材の範囲を小さくして、第2ガラス板の外観に与える熱伝導部材の影響を最小限に抑制することが可能である。
他の特徴構成は、前記熱伝導部材は、前記第1ガラス板に接触しないように配置されている点にある。
本構成によれば、熱伝導部材が第1ガラス板に接触しないように配置されているので、第1ガラス板と第2ガラス板との間において熱伝導部材を介した伝熱は行われない。これにより、複層ガラスモジュールにおいて、断熱性能を確実に維持することができる。
他の特徴構成は、前記熱伝導部材は、前記第1ガラス板に接触するように配置されている点にある。
本構成によれば、熱伝導部材が第1ガラス板に接触するように配置されているので、第1ガラス板と第2ガラス板との間において熱伝導部材を介した伝熱が可能である。したがって、第1ガラス板の側で火災が発生した際には、熱伝導部材によって第1ガラス板の熱を第2ガラス板に伝熱することができ、第2ガラス板の周縁部を加熱することができる。これにより、火災時において、第2ガラス板は中央部と周縁部との温度差が小さくなる。その結果、複層ガラスモジュールにおいて、耐熱性能を向上させることができる。
他の特徴構成は、前記第2ガラス板は、非強化ガラスまたは非耐熱ガラスで形成されている点にある。
本構成によれば、第2ガラス板は、非強化ガラスまたは非耐熱ガラスで形成されていることで、第2ガラス板の製造コストを低減することができる。また、第2ガラス板は熱伝導部材によって中央部から周縁部に伝熱されるので、火災時において、第2ガラス板は中央部と周縁部との温度差が小さくなる。その結果、複層ガラスモジュールにおいて、耐熱性能を向上させることができる。
他の特徴構成は、前記遮炎領域において前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に亘って設けられる部材の線熱貫流率α(W/(m・K))が下記式の範囲である点にある。
[数1]
((1140/R)-755)/24805≦α<0.042
R:第1ガラス板の側からの加熱による防火試験において板厚がd(mm)の第2ガラス板の耐火時間を、板厚が3mmの第2ガラス板の耐火時間を1とした場合の比率であり、下記式で算出される。
[数2]
R=0.0044d-0.0108d+0.9923
本構成によれば、複層ガラスモジュールは、遮炎領域において第1ガラス板と第2ガラス板とに亘って設けられる部材の線熱貫流率α(W/(m・K))が[((1140/R)-755)/24805]以上に設定されることで、防火試験に定められた基準(耐火時間が20分以上)満たすことができる。さらに、線熱貫流率αを0.042(W/(m・K))未満に設定することで、複層ガラスモジュールは、第1ガラス板から第2ガラス板に伝熱され難くなるため、断熱性能を向上させることもできる。複層ガラスモジュールの断熱性能を向上させるうえで、線熱貫流率αは、0.03(W/(m・K))以下であることが好ましく、0.02(W/(m・K))以下であることがより好ましい。
本発明に係る複層ガラスモジュールの特徴構成は、遮炎部材と面で対向し、前記遮炎部材に組付可能な複層ガラスモジュールであって、
第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、
前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、
前記第2面及び前記第3面の周縁部に配置され、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に空隙層を形成するスペーサと、を備え、
前記第1ガラス板が、強化ガラス、結晶化ガラス、または、網入りガラスで形成され、
前記第1面及び前記第4面の周縁部は、前記遮炎部材によって被覆可能な遮炎領域を有し、
前記遮炎領域において前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に亘って設けられる部材の線熱貫流率α(W/(m・K))が下記式の範囲である点にある。
[数3]
((1200/R)-755)/24805≦α<0.042
R:第1ガラス板の側からの加熱による防火試験において板厚がd(mm)の第2ガラス板の耐火時間を、板厚が3mmの第2ガラス板の耐火時間を1とした場合の比率であり、下記式で算出される。
[数4]
R=0.0044d-0.0108d+0.9923
本構成によれば、複層ガラスモジュールは、遮炎領域において第1ガラス板と第2ガラス板とに亘って設けられる部材の線熱貫流率α(W/(m・K))が[(1200/R-755)/24805]以上に設定されることで、防火試験に定められた基準(耐火時間が20分以上)満たすことができる。さらに、線熱貫流率αを0.042(W/(m・K))未満に設定することで、複層ガラスモジュールは、第1ガラス板から第2ガラス板への伝熱がされ難くなるため、断熱性能を向上させることもできる。複層ガラスモジュールの断熱性能を向上させるうえで、線熱貫流率αは、0.03(W/(m・K))以下であることが好ましく、0.02(W/(m・K))以下であることがより好ましい。
他の特徴構成は、前記第1ガラス板の端面から前記第2ガラス板の端面に亘って延在する熱伝導部材を備え、前記熱伝導部材は、前記第2ガラス板の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する点にある。
本構成によれば、第1ガラス板の端面から第2ガラス板の端面に亘って設けられた熱伝導部材を備え、熱伝導部材は、第2ガラス板の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有している。このため、熱伝導部材によって、第1ガラス板の遮炎領域(周縁部)から第2ガラス板の遮炎領域(周縁部)への熱伝導が迅速に行われる。これにより、第1ガラス板の第1面の側において火災が発生した場合、その燃焼熱は、第1ガラス板の中央部から空隙層を介して第2ガラス板の中央部に伝熱されると共に、第1ガラス板の周縁部から熱伝導部材を介して第2ガラス板の周縁部に伝熱される。その結果、第2ガラス板の周縁部の温度が上昇して第2ガラス板において中央部と周縁部との温度差が小さくなることから、第2ガラス板の熱割れ現象を生じ難くすることができる。このように、本構成の複層ガラスモジュールは、火災時において第2ガラス板の熱割れを効率的に防止できる。
他の特徴構成は、前記遮炎領域は、前記第1ガラス板または前記第2ガラス板の端面から10mm以上30mm以下である点にある。
本構成によれば、遮炎領域がガラス板の周縁部に設けられているので、ガラス板は熱伝導部材を介して中央部から周縁部に熱伝導することが可能になる。その結果、ガラス板において熱割れがより起こり難くなる。また、遮炎部材に対するガラス板のかかり代(差し込み量)は、「日本建築学 建築工事標準仕様書・同解説 JASS17 ガラス工事」(以下、JASS17と称する)において、10mm以上にすることが規定されている。一方、遮炎領域の上下方向の長さが30mm超であると、遮炎部材によりガラス板の周縁部が加熱を阻害され、ガラス板の中央部と周縁部との温度差が大きくなることに起因してガラス板の熱割れが発生し易くなる。そこで、本構成の遮炎領域は、第1ガラス板または第2ガラス板の端面から10mm以上30mm以下となるように構成されている。
他の特徴構成は、前記第3面は、前記第2ガラス板の板面方向の熱伝導を抑制する熱伝導抑制膜を更に備える点にある。
本構成によれば、第2ガラス板の第3面が熱伝導抑制膜を備えるので、熱伝導抑制膜によって第2ガラス板の温度上昇を全体的に抑制することができる。これにより、第2ガラス板は全体としての温度上昇を緩慢にすることができるので、第2ガラス板の中央部と周縁部との温度差を小さくすることができる。その結果、第2ガラス板の熱割れを抑制することができる。
他の特徴構成は、前記熱伝導抑制膜は、熱線反射膜である点にある。
本構成によれば、第1ガラス板から空隙層を介して第2ガラス板が加熱された場合、熱線反射膜が第2ガラス板の第3面にあるため、第1ガラス板から放射される熱線を熱線反射膜が反射する。その結果、第2ガラス板において、第1ガラスから放射される熱線の吸収が抑制され、第1ガラス板から第2ガラス板への伝熱を抑制することができる。これにより、第2ガラス板は全体としての温度上昇を緩慢にすることができるので、第2ガラス板の中央部と周縁部との温度差を小さくして、第2ガラス板の熱割れを抑制することができる。
他の特徴構成は、前記熱線反射膜は、金属層を含んでいる点にある。
本構成によれば、熱線反射膜が金属層を含むことで該金属層が板面方向に伝熱し易いことから、第1ガラス板から空隙層を介して第2ガラス板が加熱された場合に、第2ガラス板は熱線反射膜を介して中央部の熱を周縁部に向けて効率よく伝熱することができる。これにより、第2ガラス板の熱割れを効果的に抑制することができる。
他の特徴構成は、前記熱伝導抑制膜の熱伝導率は、前記第2ガラス板の熱伝導率よりも低い点にある。
本構成によれば、熱伝導抑制膜の熱伝導率は、第2ガラス板の熱伝導率よりも低いので、熱伝導抑制膜の存在によって第2ガラス板の温度上昇を一層抑制することができる。これにより、第2ガラス板は全体としての温度上昇がより緩慢になるため、第2ガラス板の中央部と周縁部との温度差を小さくすることができる。その結果、第2ガラス板の熱割れをより効果的に抑制することができる。
他の特徴構成は、前記第2ガラス板は、端面の角部分が面取りされていない点にある。
本構成によれば、第2ガラス板の端面の角部分が面取りされていないので、該角部分にはクラックが存在することがある。このため、第2ガラス板は熱割れが生じ易い。しかし、本構成の複層ガラスモジュールは、第2ガラス板の第4面の周縁部にある遮炎領域の少なくとも一部に熱伝導部材が延在することで、第2ガラス板の中央部と周縁部との温度差を低減できるため、第2ガラス板の熱割れを効果的に抑制することができる。
他の特徴構成は、前記遮炎領域は、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の端面から10mm以上30mm以下である点にある。
遮炎部材に対するガラス板のかかり代(差し込み量)は、「日本建築学 建築工事標準仕様書・同解説 JASS17 ガラス工事」(以下、JASS17と称する)において、10mm以上にすることが規定されている。一方、遮炎領域の上下方向の長さが30mm超であると、遮炎部材により第2ガラス板の周縁部が加熱を阻害され、第2ガラスの中央部と周縁部との温度差が大きくなることに起因してガラス板の熱割れが発生し易くなる。そこで、本構成の遮炎領域は、第1ガラス及び第2ガラス板の端面から10mm以上30mm以下となるように構成されている。
他の特徴構成は、前記第2ガラス板の厚みは、2mm以上10mm以下である点にある。
本構成の如く、第2ガラス板の厚みを2mm以上10mm以下にすることで、第2ガラス板による断熱性を向上させつつ、第2ガラス板の強度を高めることができる。これにより、複層ガラスモジュールは、断熱性能と耐熱性能との両方を高めることができる。
本発明に係るガラスユニットの特徴構成は、上記構成の複層ガラスモジュールと、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板と面で対向して前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の周縁部を断熱材を介在させた状態で挟持する遮炎部材と、を備える点にある。
本構成の複層ガラスユニットによれば、第1ガラス板及び第2ガラス板の周縁部を断熱材を介在させた状態で挟持する遮炎部材を備えるので、遮炎部材を介した第1ガラス及び第2ガラス板への伝熱も抑制することができる。これにより、複層ガラスユニットは断熱性能をより向上させることができる。一方、このような複層ガラスユニットでは、断熱材によって遮炎部材の内部温度が上昇し難いため、火災時において、第2ガラス板は中央部と周縁部との間において温度差が大きくなり易い。しかし、本構成の複層ガラスユニットでは、前述の通り、第2ガラス板の第4面の周縁部又は第1ガラス板及び第2ガラス板の端面に熱伝導部材が延在しており、第2ガラス板は自身の中央部または第1ガラス板から周縁部に伝熱され易い構成である。したがって、本構成の複層ガラスユニットにおいて、第2ガラス板の熱割れを効果的に抑制することもできる。
本発明に係るガラス窓の特徴構成は、上記構成の複層ガラスモジュールが前記遮炎部材に挟持されて固定されている点にある。
本構成のガラス窓は、遮炎部材に挟持されて固定される複層ガラスモジュールによって、断熱性能を維持しつつ、ガラス板の熱割れを抑制することできる。
第1実施形態のガラスユニットの正面図である。 図1のII-II矢視断面図である。 第1実施形態のガラスユニットの分解図である。 熱伝導部材の断面図である。 第2実施形態のガラスユニットの部分断面図である。 第3実施形態のガラスユニットの部分断面図である。 第4実施形態のガラスユニットの部分断面図である。 第5実施形態のガラスユニットの部分断面図である。 第6実施形態のガラスユニットの部分断面図である。 第7実施形態のガラスユニットの部分断面図である。 試験3の実施例及び比較例を示す表である。 第2ガラス板の厚みと線熱貫流率と耐火時間との関係を示すグラフである。 第2ガラス板の厚みと耐火時間との関係を示すグラフである。 別実施形態のガラスユニットの部分断面図である。
[第1実施形態]
本発明に係る複層ガラスモジュール10の第1実施形態について、図1~図4に基づいて説明する。図2は完成した複層ガラスユニット(以下、「ガラスユニット」と称する)100を示し、図3はガラスユニット100の組立前の状態を示している。ガラスユニット100は、複層ガラスモジュール(以下、「ガラスモジュール」と称する)10と、弾性支持体24(断熱材の一例)と、遮炎部材20とを備える。ガラスモジュール10は、複層ガラス1と後述の熱伝導部材41とを備える。
図2に示されるように、複層ガラス1は、第1ガラス板11と第2ガラス板12と、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に配置されるスペーサ13とによって構成される。スペーサ13は、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に空隙層5を形成する。本実施形態では、スペーサ13は、スペーサ材14とシール材15とによって構成されている。スペーサ材14は樹脂によって形成されている。シール材15は、スペーサ材14よりも複層ガラス1の外周側に位置して空隙層5と外気との流通を遮断する。第1ガラス板11は、第1面31と、第1面31の裏側に設けられる第2面32とを有する耐熱ガラスである。第2ガラス板12は、第1ガラス板11の第2面32に対向する第3面33と、第3面33の裏側に設けられる第4面34とを有するLow-Eガラスである。本実施形態では、第1ガラス板11の第1面31が室外側に配置されている。
図1及び図2に示されるように、複層ガラス1は、4辺の周縁部8を有する矩形状であり、周縁部8に沿った凹部を有する遮炎部材20に嵌め込み固定されている。遮炎部材20は、枠体21で構成されている。複層ガラス1は、遮炎部材20と面で対向し、遮炎部材20に組付可能に構成されている。本実施形態では、枠体21は凹部を有するサッシの固定枠である。この枠体21の熱伝導率は、20W/m・K以上250W/m・K以下としている。複層ガラス1の4辺を嵌め込む枠体21の凹部の底面に、複層ガラス1の端面4の保護機能を備えたセッティングブロック22が設置されている。複層ガラス1の端面4は、第1ガラス板11の端面16と、シール材15と、第2ガラス板12の端面17とを含む。セッティングブロック22は、複層ガラス1の重量を十分に分散して支持できる程度に複層ガラス1の下端部の数箇所に設置されていればよく、複層ガラス1の4辺の全領域に亘って設ける必要はない。
複層ガラス1を枠体21で固定するため、複層ガラス1と枠体21との間にバックアップ材23が設けられる。さらに、複層ガラス1と枠体21との間に弾性支持体24(断熱材の一例)が設けられる。これにより、遮炎部材20を介した第1ガラス板11及び第2ガラス板12への伝熱も抑制することができる。その結果、ガラスユニット100は断熱性能をより向上させることができる。弾性支持体24は、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の周縁部8に配置され、複層ガラス1がシール材15を有しない場合には空隙層5と外気との流通を遮断することもできる。こうして、複層ガラス1は、弾性支持体24を介して枠体21(遮炎部材20)に挟持可能に構成されている。これにより、複層ガラス1は、弾性支持体24によって枠体21(遮炎部材20)との隙間が埋められている。
複層ガラス1は、第1面31及び第4面34の4辺に沿った周縁部8に、枠体21で被覆可能な遮炎領域2と、外部から視認可能であり遮炎部材20に被覆されていない非遮炎領域3と、を有する。図1に示されるように、複層ガラス1は矩形状に構成されており、遮炎領域2が4辺の周縁部8に設けられている。ここで、遮炎領域2とは、複層ガラス1の第1面31又は第4面34が板面に垂直な方向から火炎に晒された場合、第1面31又は第4面34のうち枠体21により火炎が遮断される板面のことを意味する。すなわち、遮炎領域2は、遮炎部材20から第1ガラス板11または第2ガラス板12に正投影した領域である。この遮炎領域2は、複層ガラス1の端面4から10mm以上30mm以下であることが好ましい。遮炎部材20に対する複層ガラス1のかかり代(差し込み量)は、JASS17において、10mm以上にすることが規定されている。一方、遮炎領域2の上下方向の長さが30mm超であると、遮炎部材20により複層ガラス1の周縁部8が加熱を阻害され、複層ガラス1の中央部7と周縁部8との温度差が大きくなることに起因して複層ガラス1の熱割れが発生し易くなる。
第1ガラス板11は、耐火ガラスとして、例えば、強化ガラス、結晶化ガラス、または、網入りガラスを用いることができる。これにより、第1ガラス板11を、中央部7と周縁部8との大きい温度差に耐え得る、表面圧縮応力が大きいガラス板にすることができる。その結果、第1ガラス板11は、熱割れを効果的に抑制することができる。さらに、図2に示されるように、第1ガラス板11は、搬送時や組立時に破損する危険性を低減するため、端面16の角部分が曲面形状に研磨加工している。すなわち、第1ガラス板11は、端面16の角部分が面取りされている。一方、第2ガラス板12は、コスト面の観点から、端面17の角部分が面取りされない場合がある。第2ガラス板12は、端面17の角部分が面取りされていないと、角部分にはクラックが存在することがある。このため、第2ガラス板12は熱割れが生じ易い。しかし、本実施形態のガラスモジュール10は、第2ガラス板12の第4面34の周縁部8にある遮炎領域2の少なくとも一部に熱伝導部材41が延在することで、第2ガラス板12の中央部7と周縁部8との温度差を低減できるため、第2ガラス板12の熱割れを効果的に抑制することができ、角部の面取りのコストを抑えることができる。
第2ガラス板12は、非強化ガラスまたは非耐熱ガラスで形成されている。ここで、非強化ガラスまたは非耐熱ガラスとは、例えば通常のソーダガラスであって、化学的な強化(耐熱)、物理的な強化(耐熱)、及び、「網入り」が施されていないガラスのことである。第2ガラス板12は、厚みが2mm以上10mm以下であると好ましく、厚みが4mm以上であるとより好ましい。第2ガラス板12の厚みを所定以上にすることで、第2ガラス板12による断熱性を向上させつつ、第2ガラス板12の強度を高めることができる。これにより、ガラスモジュール10は、断熱性能と耐熱性能との両方を高めることができる。
〔熱伝導抑制膜〕
第2ガラス板12は、第3面33に第2ガラス板12の板面方向の熱伝導を抑制する熱伝導抑制膜12aを備える。熱伝導抑制膜12aによって第2ガラス板12の温度上昇を全体的に抑制することができる。これにより、第2ガラス板12は全体としての温度上昇を緩慢にすることができるので、第2ガラス板12の中央部7と周縁部8との温度差を小さくすることができる。その結果、第2ガラス板12の熱割れを抑制することができる。
本実施形態では、熱伝導抑制膜12aは熱線反射膜であり、第3面33の表面にコーティングされている。第3面33に熱伝導抑制膜12aとして熱線反射膜が存在すると、第1ガラス板11から空隙層5を介して第2ガラス板12が加熱される場合、第2ガラス板12は第1ガラス板11から熱線反射膜を介して加熱される。この場合、第1ガラス板11から放射される熱線を第3面33の熱線反射膜が反射するので、第2ガラス板12は第1ガラス板11から放射される熱線の吸収が抑制される。これにより、第1ガラス板11から第2ガラス板12への伝熱を抑制することができる。その結果、ガラスモジュール10において断熱性能を向上させることができる。
熱伝導抑制膜12aとしての熱線反射膜は、金属層を含むLow-E膜でもよい。熱線反射膜が金属層を含むことで、この金属層が板面方向に伝熱し易いことから、第1ガラス板11から空隙層5を介して第2ガラス板12が加熱された場合に、第2ガラス板12は熱線反射膜に介して中央部7の熱を周縁部8に向けて効率よく伝熱することができる。これにより、第2ガラス板12の熱割れを効果的に抑制することができる。また、熱線反射膜が金属層を有することで、第2ガラス板12において熱の放射を抑制することができる。これにより、ガラスモジュール10において断熱性能を向上させることもできる。金属層の膜厚は5nm以上15nm以下であることが好ましく、5nm以上10nm以下であることが更に好ましい。
熱線反射膜(Low-E膜)は、金属層、金属酸化物層、金属窒化物層および金属酸窒化物層から選ばれる2種以上の層を積層した多層からなるものでもよい。金属層の好適な例としては銀層が挙げられる。金属酸化物層の好適な例としては、酸化スズ層、酸化チタン層または酸化亜鉛層が挙げられる。金属窒化物層の好適な例としては窒化ケイ素が挙げられる。金属酸窒化物層の好適な例としては酸窒化ケイ素が挙げられる。熱線反射膜は、物理的気相成長法(PVD)等の真空成膜法が好ましく、特にスパッタリング法が大面積を均一に成膜できるため好ましい。
〔熱伝導部材〕
複層ガラス1は、第1面31の周縁部8及び第4面34の周縁部8に隣接して延在する熱伝導部材41を備える。熱伝導部材41は、第2ガラス板12の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有し、遮炎領域2の少なくとも一部に配置可能に構成されている。すなわち、熱伝導部材41は、遮炎領域2の全体に配置されてもよいし、遮炎領域2の一部に配置されてもよい。図2の例では、熱伝導部材41が第1面31から第4面34に亘って連続した状態で配置され、且つ、遮炎領域2の全体に配置されている。本実施形態では、熱伝導部材41がシート状に形成されており、遮炎領域2の第1面31及び第4面34に面接触した状態で固定されている。ここで、面接触した状態とは、遮炎領域2の第1面31及び第4面34に熱伝導部材41が面で対向していればよく、遮炎領域2の第1面31及び第4面34に熱伝導部材41の大半(例えば8割以上の面積)が接触していれば、一部が非接触状態であってもよい。ソーダガラスで構成される第2ガラス板12の熱伝導率は、概ね1(W/(m・K))未満である。一方、熱伝導部材41の熱伝導率は、50(W/(m・K))以上であることが好ましい。熱伝導部材41としては、例えばSn、Al、Ag、Cu、Zn等の金属または合金を用いることができる。なお、Snの熱伝導率は64(W/(m・K))であり、Alの熱伝導率は204(W/(m・K))であり、Agの熱伝導率は418(W/(m・K))であり、Cuの熱伝導率は372(W/(m・K))であり、Znの熱伝導率は113(W/(m・K))である。
このように、第1面31及び第4面34の周縁部8(遮炎領域2)に熱伝導部材41が隣接して延在していることで、複層ガラス1において非遮炎領域3から遮炎領域2への熱伝導が迅速に行われる。これにより、例えば、複層ガラス1の室外側の第1面31の側で火災が発生した場合、その燃焼熱は、室外側に露出した複層ガラス1の第1ガラス板11の非遮炎領域3に伝熱されると共に、第1ガラス板11の非遮炎領域3から空隙層5を介して第2ガラス板12の非遮炎領域3に伝熱される。第2ガラス板12の非遮炎領域3に伝熱される熱は、熱伝導部材41を介して第2ガラス板12の遮炎領域2に伝わる。その結果、第2ガラス板12において、遮炎領域2の温度が上昇して非遮炎領域3と遮炎領域2との温度差が小さくなり、熱割れ現象を生じ難くすることができる。
本実施形態における熱伝導部材41は、複層ガラス1の第1面31及び第4面34から端面4に亘って設けられている。熱伝導部材41は、複層ガラス1の端面4の少なくとも一部に配置される。すなわち、熱伝導部材41は、複層ガラス1の端面4の全体に配置されてもよいし、端面4の一部に配置されてもよい。図2の例では、熱伝導部材41が複層ガラス1の端面4の全体に配置されている。これにより、火災時に直接的に火炎に晒される複層ガラス1の中央部7の熱は、熱伝導部材41によって周縁部8の端面4まで効率的に伝熱される。その結果、複層ガラス1の端面4の温度が上昇し易くなるので、複層ガラス1の中央部7と周縁部8との温度差をより小さくすることが可能となる。よって、複層ガラス1において、中央部7から遠く温度上昇が緩慢な端面4を含む複層ガラス1の周縁部8における熱割れを、確実に防止することができる。
熱伝導部材41は、複層ガラス1の遮炎領域2及び非遮炎領域3のうち遮炎領域2のみに配置されている。すなわち、熱伝導部材41が非遮炎領域3にはみ出さないので、熱伝導部材41は外部から視認されない状態で複層ガラス1に配置される。これにより、見栄えが良く、複層ガラス1の外観に熱伝導部材41が影響を与えない状態で複層ガラス1の熱割れを防止することができる。
本実施形態では、熱伝導部材41が遮炎部材20により被覆される遮炎領域2の全域(高さが端面4から遮炎部材20の上端面まで)に亘って配置されている。このように構成すると、火災が発生した場合に、熱伝導部材41を介して、火災の燃焼熱により高温となった複層ガラス1の中央部7(非遮炎領域3)から周縁部8(遮炎領域2)に熱が伝わる。その結果、遮炎部材20により火炎に直接的に晒されない複層ガラス1の周縁部8の温度が迅速に上昇し、火災の燃焼熱により非常に高温となる中央部7と周縁部8との温度差が小さくなるため、複層ガラス1の熱割れが防止され、複層ガラス1の耐熱性能が向上する。
図4に示されるように、熱伝導部材41は、例えば熱伝導性に優れたテープ体で構成されており、金属箔42と粘着層43とを備える。粘着層43は、粘着剤44と熱伝導性微粒子45とを有する。熱伝導部材41はテープ体であると、複層ガラス1に面で密着させやすいので、熱伝導性の向上が期待できる。また、図3に示されるように、ガラスモジュール10において、複層ガラス1の周縁部8及び端面4に熱伝導部材41を貼り付けた状態で複層ガラス1を用意しておけば、熱伝導部材41の取り付けが容易になるとともに、熱伝導部材41が端面4を保護することにもなるので好ましい。つまり、図3に示されるように、セッティングブロック22及びバックアップ材23が収容された枠体21に、熱伝導部材41が複層ガラス1に固定されたガラスモジュール10を挿入し、ガラスモジュール10と枠体21との隙間に弾性支持体24を嵌め込めばガラスユニット100が完成するので、組付けが容易である。なお、熱伝導部材41は複層ガラス1において熱割れが発生しやすいと想定される部分のみに設けてもよいが、耐熱性能をより確実なものとするためには、複層ガラス1の全周(4辺の周縁部8)に亘って設けることが望ましい。
本実施形態では、熱伝導部材41は、遮炎部材20の枠体21に接触しないよう構成されている。熱伝導部材41が枠体21に接触しないことで、熱伝導部材41は複層ガラス1の板面に垂直な方向での寸法精度が要求されない。したがって、複層ガラス1のスペックや熱伝導部材41の熱伝導率を考慮して、複層ガラス1と枠体21との隙間以下の寸法範囲内で熱伝導部材41の厚み等を容易に調整することができる。
熱伝導部材41は、近赤外線(波長0.7μm~2.5μm)の吸収率が第2ガラス板12よりも大きいことが好ましく、特に波長2.5μmの近赤外線に対する吸収率が第2ガラス板12よりも大きいことが好ましい。この吸収率は最大値が1に対して0.1以上であることが好ましく、0.2以上であればより好ましい。火災時において枠体21が加熱された場合、枠体21から発生する輻射熱は、近赤外線によって伝播することがある。しかし、第2ガラス板12は近赤外線を透過するため、枠体21からの輻射熱によって第2ガラス板12の周縁部8の温度上昇は生じ難い。そこで、本実施形態では、熱伝導部材41の近赤外線の吸収率を、第2ガラス板12の近赤外線の吸収率よりも大きくしている。また、本実施形態における枠体21の熱伝導率を20(W/(m・K))以上としている。これにより、第2ガラス板12の周縁部8は、熱伝導部材41によって枠体21からの輻射熱を受け取り易くなるので、第2ガラス板12の周縁部8を昇温させて第2ガラス板12の中央部7と周縁部8との温度差をより迅速に小さくすることができる。また、熱伝導部材41の放射率は、最大値が1に対して0.1以上であることが好ましく、0.2以上であればより好ましい。これにより、枠体21の輻射熱が熱伝導部材41によって反射される熱損失を抑制することができるので、熱伝導部材41を介して遮炎領域2に輻射熱を効率的に伝えることができる。
熱伝導部材41は、金属箔42の表面に微細な凹凸を有して構成されていてもよい。金属箔42の表面に微細な凹凸があると、金属箔42において輻射熱の表面反射が抑制されるため、金属箔42は輻射熱を吸収し易くなる。その結果、熱伝導部材41は遮炎部材20からも効率よく輻射熱を受けて複層ガラス1の周縁部8を加熱することができる。
熱伝導部材41に備えられる金属箔42は、熱伝導率が50(W/(m・K))以上であり、好ましくは100(W/(m・K))以上である。金属箔42の熱伝導率が50(W/(m・K))以上であると、熱伝導部材41の熱伝導率も50W/mK以上に高めることができる。これにより、熱伝導部材41を介して、複層ガラス1の中央部7の熱が複層ガラス1の周縁部8に早く伝わり、周縁部8を迅速に加熱することができる。熱伝導部材41の熱伝導率を高めるうえで、金属箔42の熱伝導率は、100(W/(m・K))以上であることがより好ましい。
金属箔42は、Sn、Al、Ag、Cu、Zn等の金属または合金で構成されており、Sn、Al、Ag、Cu、Znの少なくとも1つが50重量%以上含まれている。Snの熱伝導率は64(W/(m・K))、Alの熱伝導率は204(W/(m・K))、Agの熱伝導率は418W/m・K、Cuの熱伝導率は372(W/(m・K))、Znの熱伝導率は113(W/(m・K))である。すなわち、Sn、Al、Ag、Cu、Znは、いずれも熱伝導率が50(W/(m・K))以上である。したがって、金属箔42が前述の金属の少なくとも1つを50重量%以上含むことによって、熱伝導部材41の熱伝導率を容易に高めることができる。Sn、Al、Ag、Cu、Znのうち、Znは、腐食の原因となる水分、酸素等を透過しない防食効果を有するため、最も好ましい。
粘着剤44は、アクリル系、シリコーン系、天然ゴム系のいずれかである。これにより、熱伝導部材41において、粘着層43を容易に構成することができる。
熱伝導性微粒子45は、熱伝導率が粘着剤44の熱伝導率よりも高い。これにより、熱伝導部材41は、熱伝導性微粒子45によって粘着層43の熱伝導率を高めることができる。
粘着層43は、熱伝導性微粒子45の含有量が50重量%以上90重量%以下、好ましくは60重量%以上80重量%以下である。こうすると、熱伝導部材41は、粘着層43における熱伝導性と粘着性の両方を確保することができる。粘着層43において熱伝導性微粒子45が50重量%未満になると、粘着層43は十分な熱伝導性を得ることができない。また、粘着層43において熱伝導性微粒子45が90重量%超になると、粘着剤44の割合が低くなり過ぎるため粘着力が低下して複層ガラス1から熱伝導部材41が剥がれ易くなる。
粘着層43は、厚みが10μm以上100μm以下であり、好ましくは20μm以上90μm以下である。粘着層43において厚みが10μm以上100μm以下であると、熱伝導部材41は、粘着層43における熱伝導性と粘着性の両方を確保することができる。熱伝導部材41において、粘着層43の厚みが10μmより小さいと、火災時に金属箔42と複層ガラス1の熱膨張差により剥離が生じる可能性がある。一方、粘着層43の厚みが100μm超になると、粘着剤44の影響を大きく受けて粘着層43を含む熱伝導部材41の熱伝導性が低くなる可能性がある。粘着層43は金属箔42よりも熱伝導率の低い粘着剤44を含むことから、粘着層43の厚みは金属箔42の厚みよりも小さいことが好ましい。例えば金属箔42の厚みが100μmであれば、粘着層43の厚みは30~50μmに設定することができる。このように、粘着層43は、金属箔42の半分程度の厚みに設定することが可能である。
粘着層43に含まれる熱伝導性微粒子45は、平均粒径が10μm以上100μm以下であり、好ましくは20μm以上90μm以下である。熱伝導性微粒子45の粒径が10μm以上100μm以下であると、熱伝導部材41は、粘着層43における熱伝導性を確実に確保することができる。熱伝導性微粒子45の粒径が10μm未満であると、熱伝導性微粒子45が粘着層43において不均一に配置されるため、均等な熱伝導性が確保されない可能性がある。一方、熱伝導性微粒子45の粒径が100μm超になると、熱伝導性微粒子45の表面積が小さくなるため、熱伝導部材41の熱伝導性が低くなる可能性がある。熱伝導性微粒子45の粒径は粘着層43の厚み以下であることが好ましい。図4に示されるように、本実施形態では、熱伝導部材41は、熱伝導性微粒子45の粒径と粘着層43の厚みとが同じになるように構成されている。
熱伝導性微粒子45は金属微粒子である。熱伝導性微粒子45が金属微粒子であると、粘着層43に熱伝導性を確実に付与することができる。金属微粒子は、Sn、Al、Ag、Cu、Zn等の金属または合金で構成されており、Sn、Al、Ag、Cu、Znの少なくとも1つが50重量%以上含まれている。このようにすれば、粘着層43において熱伝導率を容易に高めることができる。
金属微粒子としては、Sn、Al、Ag、Cu、Znのうち、低融点のSn、Zn、Alが好ましい。低融点の金属微粒子に用いた場合には、粘着剤44が火災時の燃焼熱を受けて粘着性が低下したとしても、金属微粒子の表面の溶融により複層ガラス1と粘着層43の密着性を確保することができる。また、粘着層43に含まれる金属微粒子は、一種類の金属のみによって構成されてもよいし、異なる金属の金属微粒子が混在させていてもよい。
バックアップ材23及び弾性支持体24は、複層ガラス1を枠体21に支持するための部材なので、複層ガラス1を破損させないように、ある程度の弾性を有する樹脂又はゴムで構成されている。バックアップ材23及び弾性支持体24が断熱性の高い樹脂又はゴムであり、火災で高温となった複層ガラス1の中央部7から熱伝導部材41を介したバックアップ材23及び弾性支持体24への熱伝導が抑制される。その分、熱伝導部材41を介して複層ガラス1の周縁部8に伝えられる熱が増大するので、周縁部8を効率的に昇温することができ、耐熱性能をより確実に向上させることができる。また、熱伝導部材41からセッティングブロック22に熱が逃げるのを抑制し、複層ガラス1の周縁部8の温度を効率的に上昇させるために、セッティングブロック22も断熱性の高い材料であることが望ましい。
建物等に設けられるガラス窓は、ガラスモジュール10が遮炎部材20に挟持されて固定されることで実現される。
[第2実施形態]
ガラスユニット100の第2実施形態について、図5に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
図5に示されるように、熱伝導部材41は、第2ガラス板12の第4面34において、非遮炎領域3に配置可能に構成されていてもよい。つまり、熱伝導部材41は、遮炎領域2の外側まで延在していても良い。本実施形態によれば、火災時に第1ガラス板11から空隙層5を介して第2ガラス板12の非遮炎領域3が受けた熱は、熱伝導部材41を介して遮炎領域2に伝わり易くなる。これにより、第2ガラス板12は、中央部7(非遮炎領域3)と周縁部8(遮炎領域2)との温度差を迅速に小さくすることができる。その結果、ガラスモジュール10において第2ガラス板12の耐熱性能を向上させることができる。本実施形態は、熱伝導部材41が、第1ガラス板11の第1面31についても、遮炎領域2及び非遮炎領域3に配置されている。したがって、第1ガラス板11においても、中央部7(非遮炎領域3)と周縁部8(遮炎領域2)との温度差を迅速に小さくすることができる。また、熱伝導部材41は、第1ガラス板11及び第2ガラス板12の非遮炎領域3のうち遮炎領域2に隣接する部位に配置されることで、非遮炎領域3における熱伝導部材41の範囲を小さくして、複層ガラス1の外観に与える熱伝導部材41の影響を最小限に抑制することが可能である。図示しないが、熱伝導部材41は、第2ガラス板12の第4面34の一方のみが遮炎領域2及び非遮炎領域3に配置されていてもよい。
[第3実施形態]
ガラスユニット100の第3実施形態について、図6に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
図6に示されるように、本実施形態は、熱伝導部材41が、第1ガラス板11の第1面31及び端面16と、第2ガラス板12の第4面34及び端面17とに個別に配置され、スペーサ13の外面には設けられていない。すなわち、第2ガラス板12に配置される熱伝導部材41が第1ガラス板11に接触しない状態で設けられている。したがって、本実施形態では、第1ガラス板11及び第2ガラス板12は、夫々に配置された熱伝導部材41によって、中央部7の熱を周縁部8に伝えることができる。これにより、複層ガラス1の第1ガラス板11及び第2ガラス板12において、中央部7と周縁部8との温度差を小さくすることができ、ガラスモジュール10の耐熱性能を向上させることができる。
また、熱伝導部材41は、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間において連続しない状態で配置されることで、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間で熱伝導部材41を介した伝熱は行われない。これにより、本実施形態のガラスモジュール10は、断熱性能を維持することもできる。
[第4実施形態]
ガラスユニット100の第4実施形態について、図7に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
図7に示されるように、本実施形態は、熱伝導部材41が、複層ガラス1の第2ガラス板12の第4面34(遮炎領域2)と、第2ガラス板12の端面17のみに設けられ、第1ガラス板11には設けられていない。このような構成であっても、第2ガラス板12は、火災時において加熱された中央部7の熱を、熱伝導部材41を介して端面17を含む周縁部8に伝えることができる。これにより、第2ガラス板12において、中央部7と周縁部8との温度差を小さくすることができる。その結果、ガラスモジュール10において第2ガラス板12の耐熱性能を向上させることができる。
[第5実施形態]
ガラスユニット100の第5実施形態について、図8に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
図8に示されるように、本実施形態は、熱伝導部材41が、複層ガラス1の第4面34の周縁部8(遮炎領域2)のみに設けられ、端面17には設けられていない。このような構成であっても、火災の燃焼熱を受けた第1ガラス板11から空隙層5を介して加熱されて高温となった第2ガラス板12の中央部7の熱を、遮炎領域2に配置された熱伝導部材41を介して端面17を含む第2ガラス板12の周縁部8に伝えることができる。これにより、複層ガラス1の第2ガラス板12において、中央部7と周縁部8との温度差を小さくすることができ、第2ガラス板12の耐熱性能を向上させることができる。
[第6実施形態]
ガラスユニット100の第6実施形態について、図9に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
図9に示されるように、本実施形態では、熱伝導部材41は、第2ガラス板12の第4面34には配置されず、第1ガラス板11の端面16から第2ガラス板12の端面17に亘って配置されている。すなわち、熱伝導部材41は、端面16、シール材15、及び端面17に配置されている。本実施形態によれば、火災時に加熱された第1ガラス板11から熱伝導部材41を介して第2ガラス板12の遮炎領域2に熱伝達することができる。これにより、第2ガラス板12は、中央部7(非遮炎領域3)と周縁部8(遮炎領域2)との温度差を迅速に小さくすることができる。その結果、ガラスモジュール10において第2ガラス板12の耐熱性能を向上させることができる。
[第7実施形態]
ガラスユニット100の第7実施形態について、図10に基づいて説明する。第1実施形態と同様の部材については同じ番号を付しており、ここでの説明は省略する。
図10に示されるように、本実施形態では、熱伝導部材41は、第2ガラス板12の第4面34に配置されるとともに、第1ガラス板11の端面16から第2ガラス板12の端面17に亘って配置されている。すなわち、熱伝導部材41は、端面16、シール材15、及び端面17に配置されている。本実施形態によれば、火災時に加熱された第1ガラス板11から熱伝導部材41を介して第2ガラス板12の遮炎領域2に熱伝達することができる。さらに、第2ガラス板12の非遮炎領域3に伝熱される熱は、熱伝導部材41を介して第2ガラス板12の遮炎領域2に伝えることができる。これにより、第2ガラス板12は、中央部7(非遮炎領域3)と周縁部8(遮炎領域2)との温度差をより迅速に小さくすることができる。その結果、ガラスモジュール10において第2ガラス板12の耐熱性能をより向上させることができる。
[防火試験]
(試験1)
上記の実施形態のガラスモジュール10の耐熱性能を検証するための防火試験を行った。比較対象として、熱伝導部材41を備えていない従来型の複層ガラスモジュール(以後「比較例1」と称す)を用意した。実施例1は、図2(第1実施形態)に示されるガラスモジュール10と同じ構成であって、熱伝導部材41が第1ガラス板11の第1面31の遮炎領域2から端面4を介して第2ガラス板12の第4面34の遮炎領域2に亘って配置されている。実施例2は、図6(第3実施形態)に示されるガラスモジュール10と同じ構成であって、熱伝導部材41が第2ガラス板12の第4面34及び端面16のみに配置されている。
複層ガラス1は、第1ガラス板11が厚さ6.8mmの網入りの耐熱ガラスであり、厚さ12mmの空隙層5と、第2ガラス板12が厚さ3mmのLow-Eガラス板であり、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に厚さ12mmの空隙層5を有する。スペーサ13において、スペーサ材14は樹脂製であり、シール材15はシリコーンで形成されている。枠体21は鉄製、バックアップ材23は難燃性樹脂、弾性支持体24は防火用シリコーンシール材、セッティングブロック22はケイ酸カルシウム製の耐火ブロックとしている。実施例1及び実施例2に用いられる熱伝導部材41は金属箔42がアルミニウム箔のアルミニウムテープである。実施例1の熱伝導部材41は、厚さが0.1mm(金属箔42:50μm、粘着層43:50μm)である。実施例2の熱伝導部材41は、厚さが0.2mm(金属箔42:100μm、粘着層43:100μm)である。
防火試験は複層ガラス1の第1ガラス板11の側(第1面31の側)での火災発生を想定しており、炉内温度Tを下記のISO-834加熱曲線に従い昇温し、複層ガラス1の第2ガラス板12が割れるまでの時間を計測した。
ISO-834加熱曲線: T= 345log(8t+1)+20 t:加熱時間(分)
以上の条件で防火試験を行ったところ、比較例1では加熱開始後13分45秒後に第2ガラス板12が割れたのに対し、実施例1では加熱開始後20分10秒後に第2ガラス板12が割れ、実施例2では加熱開始後14分52秒後に第2ガラス板12が割れた。
実施例1及び実施例2においては、複層ガラス1の第1ガラス板11の側で火災が発生した場合に、第1ガラス板11の中央部7が火災により高温になり、第1ガラス板11の中央部7から空隙層5を介して第2ガラス板12の中央部7が加熱され、熱伝導部材41を介して高温となった第2ガラス板12の中央部7から周縁部8に熱が伝わる。その結果、第2ガラス板12の周縁部8の温度が上昇し、火災の燃焼熱により非常に高温となる中央部7と周縁部8との温度差が比較例に比べて小さくなる。
一方、比較例1においては、複層ガラス1に熱伝導部材41が設けられていないため、第2ガラス板12の端面17を積極的に昇温することができない。このため、複層ガラス1において、第1ガラス板11の熱により高温となる第2ガラス板12の中央部7と、第1ガラス板11の熱の影響を受け難い第2ガラス板12の周縁部8との温度差が実施例1及び実施例2に比べて大きくなる。
以上の防火試験の結果より、実施例1及び実施例2は、比較例1よりも耐熱性能に優れていることが示された。試験結果を検証すると、実施例1及び実施例2が耐熱性能に優れているのは、熱伝導部材41が複層ガラス1の第2ガラス板12の端面17から遮炎領域2の第4面34に設けられているという特徴構成によるものと考えられる。
複層ガラス1の第2ガラス板12は、表面圧縮応力を高めることで防火性能が向上することができる。しかし、第1ガラス板11に加えて第2ガラス板12についても表面圧縮応力を高めた強化ガラスで形成すると、複層ガラス1はコスト高となる。また、Low-Eガラスである第2ガラス板12を強化ガラスで形成した場合には、Low-Eガラスの色調が変化することがある。また、建物の開口部において、防火窓ガラスが必要な箇所と必要でない箇所が存在するため、強化したLow-Eガラスと強化していないLow-Eガラスが混在することとなり、建物全体の美観的に好ましくない。以上の理由により、第2ガラス板12には強化ガラスを用いない構成が望ましい。こうした実情を踏まえ、複層ガラス1の第4面34に熱伝導部材41を配置することにより、表面圧縮応力の比較的低い第2ガラス板12を防火用のガラスモジュール10に使用できることが明らかとなった。
(試験2)
実施例3は、第1ガラス板11が厚さ6.5mmの強化ガラスであり、他の条件は実施例1と同じである。実施例4は、第1ガラス板11が厚さ5mmの強化ガラスであり、第2ガラス板12の厚みが4mmのLow-Eガラスであり、他の条件は実施例1と同じである。実施例5は、第1ガラス板11が厚さ5mmの強化ガラスであり、熱伝導部材41は、厚さが0.4mm(金属箔42:0.2mm、粘着層43:0.2mm)であり、他の条件は実施例1と同じである。
以上の条件で防火試験を行ったところ、実施例3では加熱開始後20分13秒後に第2ガラス板12が割れ、実施例4では加熱開始後20分50秒後に第2ガラス板12が割れ、実施例5では加熱開始後21分26秒後に第2ガラス板12が割れた。
以上の防火試験の結果より、実施例3~5においても、比較例1よりも耐熱性能に優れていることが示された。試験結果を検証すると、実施例3よりも実施例4の耐熱性能が優れているのは、第2ガラス板12の厚みが増すことで、ガラスの強度が高まったことと、第2ガラス板12の比熱が大きくなったためと考えられる。第2ガラス板12の比熱が大きくなることで、第2ガラス板12において中央部7と周縁部8との温度差が小さくなる。また、実施例3よりも実施例5の耐熱性能が優れているのは、熱伝導部材41の厚みが増すことで、第2ガラス板12において中央部7から周縁部8への伝熱が迅速に行われたためと考えられる。
(試験3)
図11の表に示す実施例6~10、比較例2、3による防火試験を行った。
第1ガラス板11が厚さ6.5mmの強化ガラスである。第2ガラス板12はLow-Eガラスである。比較例2、実施例10では、板厚が2mm、3mm、4mm、5mm、及び、8mmの第2ガラス板12を用いた。実施例8では、板厚が3mm、及び、5mmの第2ガラス板12を用いた。実施例6~9、比較例3では、板厚が3mmの第2ガラス板12を用いた。スペーサ13は、スペーサ材14が樹脂製であり、シール材15がシリコーン製である。スペーサ材14の熱伝導率は0.24(W/(m・K))であり、シール材15の熱伝導率は0.5(W/(m・K))である。これに対し、第2ガラス板12の熱伝導率は0.75(W/(m・K))である。したがって、スペーサ13(スペーサ材14、シール材15)の熱伝導率は第2ガラス板12の熱伝導率よりも低い。
比較例2及び比較例3は、熱伝導部材41を備えていない複層ガラスである。また、比較例3では、スペーサ材14がアルミニウムで構成されている。実施例6は、図8(第5実施形態)に示されるガラスモジュール10と同じ構成であって、熱伝導部材41が第2ガラス面の第4面34のみに配置されている。実施例7、8、10は、図9(第6実施形態)に示されるガラスモジュール10と同じ構成であって、熱伝導部材41が第1ガラス板11の端面16から第2ガラス板12の端面17に亘る領域のみに配置されている。実施例9は、図10(第7実施形態)に示されるガラスモジュール10と同じ構成であって、熱伝導部材41が第1ガラス板11の端面16から第2ガラス板12の端面17に亘る領域と、第2ガラス面の第4面34と、に配置されている。
複層ガラス1の端面4に配置される熱伝導部材41は、実施例7~9が亜鉛テープであり、実施例10がアルミニウムテープである。第2ガラス板12の第4面34に配置される熱伝導部材41は、実施例6及び10のいずれもアルミニウムテープである。線熱貫流率は、第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に配置された、スペーサ材14、シール材15、熱伝導部材41について、熱伝導率と厚みとの積を夫々算出し合計することで得ることができる。
以上の条件で防火試験を行ったところ、比較例2では第2ガラス板12が3mmのときに加熱開始後13分18秒後、第2ガラス板12が4mmのときに加熱開始後13分33秒後、第2ガラス板12が5mmのときに加熱開始後13分57秒後に、第2ガラス板12が夫々割れた。実施例6では加熱開始後14分12秒後に第2ガラス板12が割れ、実施例7では加熱開始後17分20秒後に第2ガラス板12が割れた。実施例8では第2ガラス板12が3mmのときに加熱開始後18分47秒後に、第2ガラス板12が5mmのときに加熱開始後19分24秒後に第2ガラス板12が割れた。実施例9では加熱開始後20分10秒後に第2ガラス板12が割れた。実施例10では第2ガラス板12が3mmのときに加熱開始後20分13秒後、第2ガラス板12が4mmのときに加熱開始後20分36秒後、第2ガラス板12が5mmのときに加熱開始後21分14秒後に、第2ガラス板12が夫々割れた。比較例3では加熱開始後30分00秒後に第2ガラス板12が割れた。
以上の防火試験の結果より、実施例6~10においても、比較例2よりも耐熱性能に優れていることが示された。試験結果を検証すると、実施例10において第2ガラス板12の厚みが増すごとに耐熱性能が優れたのは、第2ガラス板12の厚みが増すことで、ガラスの強度が高まったことと、第2ガラス板12の熱容量が大きくなったためと考えられる。第2ガラス板12の熱容量が大きくなると、第2ガラス板12において中央部7と周縁部8との温度差は小さくなる。また、実施例6から実施例10に向けて順に耐熱性能が優れているのは、線熱貫流率が増すことで、第1ガラス板11から第2ガラス板12の周縁部8への伝熱が迅速に行われたためと考えられる。比較例3では、防火試験の結果は良好であるものの、スペーサ材14が金属(アルミ)製であることで線熱貫流率が高くなり過ぎるため、複層ガラス1の断熱効果は低くなる。
このように、複層ガラス1では、遮炎領域2において第1ガラス板11から第2ガラス板12に亘って配置される部材(スペーサ材14、シール材15、熱伝導部材41)が存在するため、第1ガラス板11の熱はこれらの部材を介して第2ガラス板12の周縁部8に伝えることができる。したがって、これらの部材(スペーサ材14、シール材15、熱伝導部材41)の線熱貫流率の和が高くなると、線熱貫流率に比例して第2ガラス板の周縁部の温度が上昇し、第2ガラス板12の中央部7と周縁部8との温度差を小さくできるものと考えられる。
図12に、第2ガラス板12の厚みと線熱貫流率と耐火時間との関係をグラフで示す。第2ガラス板12の厚みが3mmのときの耐火時間(秒)は実線で示され、第2ガラス板12の厚みが5mmのときの耐火時間(秒)は破線で示されている。いずれにおいても、線熱貫流率と耐火時間とは比例する。図12のグラフにおいて、実線から、実線の傾きと、実線と縦軸(Y軸)との交点を求めることができる。これらの実線の傾きと交点とを用い、遮炎領域2において第1ガラス板11と第2ガラス板12との間に亘って設けられる部材(スペーサ材14、シール材15、熱伝導部材41)の線熱貫流率をα(W/(m・K))と定義することで、第2ガラス板12の厚みが3mmのときの耐火時間Tt3(秒)は、以下の数5式として導くことができる。したがって、耐火時間Tt3(秒)は、以下の数5式を用いて算出することができる。
[数5]
Tt3=24805α+755
ここで、ガラス板の厚み(d(mm))と、ガラス板の耐火効果との関係について考察する。ガラス板における熱容量は、比熱×面積×厚み(d(mm))によって算出することができる。ガラス板の厚み(d(mm))が増すことでガラス板の熱容量が大きくなった場合には、加熱される中央部の温度は厚みに反比例として上昇し難くなる。また、ガラス板は、厚み(d)が増すことで、ガラス板は内部において面方向(例えば中央部から周縁部)に熱が伝導し易くなる。上記により、ガラス板において厚みが増すことで得られる耐火効果は、熱容量及び熱伝導の観点から、ガラス板の厚みの2乗程度改善するものと考えられる。
図13に、第2ガラス板12の厚みと耐火時間比との関係をグラフで示す。図12では、縦軸は、第2ガラス板12の厚みが3mmのときの耐火時間Tt3(秒)を1とした場合の耐火時間Ttの比率Rを示している。すなわち、比率Rは、第1ガラス板11の側からの加熱による防火試験において板厚がd(mm)の第2ガラス板12の耐火時間を、板厚が3mmの第2ガラス板12の耐火時間を1とした場合の比率で表したものである。線熱貫流率αが0.019(W/(m・K))のときの耐火時間Ttの比率Rは、図13のグラフの曲線から、以下の数6式として導くことができる。したがって、比率Rは、以下の数6式を用いて算出することができる。
[数6]
R=0.0044d-0.0108d+0.9923
第2ガラス板12の厚みが増すごとに実線に示すように上昇する。この実線から、第2ガラス板12の厚みをd(mm)と定義することで、第2ガラス板12の厚みの変化に伴う耐火時間Tt(秒)は、第2ガラス板12の厚みが3mmのときの耐火時間Tt3(秒)を基準として、以下の数7式によって算出することができる。
[数7]
Tt=(0.0044d-0.0108d+0.9923)×Tt3
ここで、第2ガラス板12における熱容量は、比熱×面積×厚み(d(mm))によって算出することができる。第2ガラス板12の厚み(d(mm))が増すことで第2ガラス板12の熱容量が大きくなった場合には、加熱される中央部7の温度は厚みに反比例として上昇し難くなる。これにより、第2ガラス板12は中央部7と周縁部8との温度差が小さくなる。また、第2ガラス板12は、厚み(d(mm))が増すことで、第2ガラス板12は内部において中央部7から周縁部8に向けて熱が伝わり易くなる。したがって、図13に示されるように、第2ガラス板12の厚み(d(mm))と耐火時間Ttとは、2次関数によって相関するものと考えられる。
上記数7式において、耐火時間Tt3(秒)を上記数5式に基づいて置き換えることで、第2ガラス板12の耐火時間Tt(秒)は、第2ガラス板12の厚さd(mm)と線熱貫流率α(W/m・K)とを用い、以下の数8式から算出することができる。
[数8]
Tt=(0.0044d-0.0108d+0.9923)×(24805α+755)
ここで、防火試験において法令に規定する時間は20分である。
したがって、ガラスモジュール10は、以下の数9式に示すとおり、Ttが1200(秒)以上であることが好ましい。
[数9]
Tt=(0.0044d-0.0108d+0.9923)×(24805α+755)≧1200
したがって、ガラスモジュール10に好ましい線熱貫流率α(W/(m・K))の範囲は、上記の数6式及び数9式に基づく、以下の数10式を用いて導くことができる。
[数10]
α≧((1200/R)-755)/24805
複層ガラス1の断熱性能を高めるうえで、線熱貫流率αは、スペーサ材14がアルミのとき(比較例3)の線熱貫流率である、0.042(W/(m・K))よりも小さいことが好ましい。したがって、線熱貫流率α(W/(m・K))は以下の数11式の範囲内であることが好ましい。
[数11]
((1200/R)-755)/24805≦α<0.042
ガラスモジュール10は、遮炎領域2において第1ガラス板11から第2ガラス板12に亘って設けられる部材の第1ガラス板11から第2ガラス板12への方向への線熱貫流率α(W/(m・K))が[((1200/R)-755)/24805]以上に設定されることで、防火試験に定められた基準時間(防火試験に合格するための耐火時間:20分)満たすことができる。さらに、線熱貫流率αを、アルミ製のスペーサ材14を用いた場合(比較例3)の線熱貫流率である、0.042(W/(m・K))未満に設定することで、ガラスモジュール10は、第1ガラス板11から第2ガラス板12に伝熱され難くなるため、断熱性能を向上させることもできる。ガラスモジュール10の断熱性能を向上させるうえで、線熱貫流率αは、0.03(W/(m・K))以下であることが好ましく、0.02(W/(m・K))以下であることがより好ましい。
ここで、上記数11式は、第2ガラス板12の第4面34に熱伝導部材41が配置されていない条件下のものである。実施例6は、比較例2に対し、第2ガラス板12の第4面34に熱伝導部材41が配置される点のみに差異がある。また、実施例9は、実施例8に対し、第2ガラス板12の第4面34に熱伝導部材41が配置される点のみに差異がある。実施例6は比較例2に比べて耐火時間が60秒以上延びており、実施例9においても実施例8に比べて耐火時間が60秒以上延びている。
したがって、第2ガラス板12の第4面34に熱伝導部材41が配置されるガラスモジュール10では、上記の数9式のうち、防火試験に定められた基準時間(防火試験に合格するための耐火時間:20分)である、1200(秒)は、1140(=1200-60)(秒)に置き換えることができる。すなわち、第2ガラス板12の第4面34に熱伝導部材41が配置されるガラスモジュール10において、線熱貫流率α(W/(m・K))は、以下の数12式の範囲であることが好ましい。
[数12]
((1140/R)-755)/24805≦α<0.042
第4面34に熱伝導部材41が配置されたガラスモジュール10では、遮炎領域2において第1ガラス板11から第2ガラス板12に亘って設けられる部材の第1ガラス板11から第2ガラス板12への方向への線熱貫流率α(W/(m・K))が[(1140/R-755)/24805]以上に設定されることで、防火試験に定められた基準(耐火時間が20分以上)満たすことができる。さらに、線熱貫流率αを、アルミ製のスペーサ材14を用いた場合(比較例3)の線熱貫流率である、0.042(W/(m・K))未満に設定することで、ガラスモジュール10は、第1ガラス板11から第2ガラス板12に伝熱され難くなるため、断熱性能を向上させることもできる。ガラスモジュール10の断熱性能を向上させるうえで、線熱貫流率αは、0.03(W/(m・K))以下であることが好ましく、0.02(W/(m・K))以下であることがより好ましい。
[他の実施形態]
(1)上記の実施形態では、第2ガラス板12の第3面33に配置される熱伝導抑制膜12aが熱線反射膜である例を示したが、熱伝導抑制膜12aは断熱性能の高い中空構造の膜体であってもよい。また、上記の実施形態では、熱伝導抑制膜12aとしての熱線反射膜が金属層を含む例を示したが、熱線反射膜は金属層を含まない膜であってもよい。熱線反射膜は、例えば誘電体の多層膜によって構成することで金属層を含まない形態で形成することができる。また、熱伝導抑制膜12aの熱伝導率は、第2ガラス板12の熱伝導率よりも低くしてもよい。このようにすると、熱伝導抑制膜12aの存在によって第2ガラス板12の温度上昇を一層抑制することができる。これにより、第2ガラス板12は全体としての温度上昇がより緩慢になるため、第2ガラス板12の中央部7と周縁部8との温度差を小さくすることができる。その結果、第2ガラス板12の熱割れをより効果的に抑制することができる。
(2)上記の実施形態では、第2ガラス板12の第3面33に熱伝導抑制膜12aを配置する例を示したが、第2ガラス板12の第3面33に熱伝導抑制膜12aを配置せずに構成してもよい。
(3)上記の実施形態では、ガラスモジュール10において、第1ガラス板11の第1面31が室外側に配置される例を示したが、これに代えて、第2ガラス板12の第4面34が室外側に配置されてもよい。
(4)上記の実施形態では、ガラスモジュール10が、第2ガラス板12の第4面34、または、第1ガラス板11の端面16から第2ガラス板12の端面17に亘って、熱伝導部材41を備えるが例を示したが、スペーサ材14及びシール材15によって、線熱貫流率αが上記数12式の範囲になる場合には、熱伝導部材41を備えなくてもよい。
(5)上記の実施形態では、ガラスモジュール10において、熱伝導部材41が複層ガラス1の周縁部8の全周に亘って配置される例を示したが、熱伝導部材41は複層ガラス1の周縁部8の周方向において間隔を有して配置されてもよい。熱伝導部材41は、例えば複層ガラス1の4辺のうち上辺部及び下辺部のみに配置されてもよい。熱伝導部材41は、複層ガラス1の周縁部8の4辺に配置される場合であっても、2辺が交差する角部には熱伝導部材41を配置せずに構成してもよい。また、上記の実施形態では、熱伝導部材41を枠体21の高さ方向に対応する遮炎領域2全体に配置する例を示したが、熱伝導部材41は、例えば端面4に隣接する遮炎領域2の一部のみに配置してもよい。
(6)上記の実施形態における遮炎領域2は、複層ガラス1の周縁部8に加えて複層ガラス1の中央部分を横断する形状で設けても良く、複層ガラス1の枠体21の形状に応じて適宜設定される。また、遮炎領域2は、遮炎部材20により被覆される複層ガラス1の第1面31及び第4面34の少なくとも一部で構成されていればよい。つまり、枠体21は、複層ガラス1の端面4を被覆しない形状であってもよい。
(7)上記の実施形態では、遮炎部材20の枠体21がサッシの固定枠である例を示したが、枠体21はサッシの固定枠に限定されず、一対のL型のアングル等、他の構成であってもよい。
(8)上記の実施形態では、遮炎部材20がバックアップ材23及び弾性支持体24を含む例を示したが、図14に示されるように、遮炎部材20が枠体21のみで構成されていてもよい。
(9)上記の実施形態では、複層ガラス1の第1面31、第4面34、端面4に熱伝導部材41を配置する例を示したが、熱伝導部材41は、さらに、第1ガラス板11の第2面32及び第2ガラス板12の第3面33の少なくとも一方に接触して固定されていてもよい。
なお、いずれの実施形態においても、熱伝導部材41の構成は図1~図13に示したものに限らない。すなわち、ガラスユニット100の完成時に複層ガラス1の第2ガラス板12に熱伝導部材41が存在していれば、他の構成を採用することも可能である。
本発明は、複数のガラス板を備える複層ガラスモジュール及び複層ガラスユニットに適用することができる。
1 :複層ガラス
2 :遮炎領域
3 :非遮炎領域
4,16,17:端面
5 :空隙層
7 :中央部
8 :周縁部
10 :複層ガラスモジュール(ガラスモジュール)
11 :第1ガラス板
12 :第2ガラス板
12a :熱伝導抑制膜
13 :スペーサ
20 :遮炎部材
21 :枠体
23 :バックアップ材
24 :弾性支持体
31 :第1面
32 :第2面
33 :第3面
34 :第4面
41 :熱伝導部材
100 :複層ガラスユニット
R :比率
Tt :耐火時間
Tt3 :耐火時間
d :第2ガラス板の厚さ
α :線熱貫流率

Claims (22)

  1. 遮炎部材と面で対向し、前記遮炎部材に組付可能な複層ガラスモジュールであって、
    第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、
    前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、
    前記第2面及び前記第3面の周縁部に配置され、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に空隙層を形成するスペーサと、
    前記第4面に隣接して延在する熱伝導部材と、を備え、
    前記第1ガラス板が、強化ガラス、結晶化ガラス、または、網入りガラスで形成され、
    前記第1面及び前記第4面の周縁部は、前記遮炎部材によって被覆可能な遮炎領域を有し、
    前記熱伝導部材は、前記第2ガラス板の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有し、前記遮炎領域の少なくとも一部に配置されている複層ガラスモジュール。
  2. 前記遮炎領域は、前記第1ガラス板または前記第2ガラス板の端面から10mm以上30mm以下である請求項1に記載の複層ガラスモジュール。
  3. 前記スペーサの熱伝導率は、前記第2ガラス板の熱伝導率よりも低い請求項1または2に記載の複層ガラスモジュール。
  4. 前記熱伝導部材は、前記第2ガラス板の端面の少なくとも一部に配置される請求項1から3のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  5. 前記熱伝導部材は、前記遮炎領域のみに配置される請求項1から4のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  6. 前記熱伝導部材は、前記遮炎領域の外側まで延在している請求項1から4のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  7. 前記熱伝導部材は、前記第1ガラス板に接触しないように配置されている請求項1から6のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  8. 前記熱伝導部材は、前記第1ガラス板に接触するように配置されている請求項1から6のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  9. 前記第2ガラス板は、非強化ガラスまたは非耐熱ガラスで形成されている請求項1から8のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  10. 前記遮炎領域において前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に亘って設けられる部材の線熱貫流率α(W/(m・K))が下記式の範囲である請求項1から9のいずれか1項に記載の複層ガラスモジュール。
    [数1]
    ((1140/R)-755)/24805≦α<0.042
    R:第1ガラス板の側からの加熱による防火試験において板厚がd(mm)の第2ガラス板の耐火時間を、板厚が3mmの第2ガラス板の耐火時間を1とした場合の比率で表したものであり、下記式で算出される。
    [数2]
    R=0.0044d-0.0108d+0.9923
  11. 遮炎部材と面で対向し、前記遮炎部材に組付可能な複層ガラスモジュールであって、
    第1面と、前記第1面の裏側に設けられる第2面とを有する第1ガラス板と、
    前記第2面に対向する第3面と、前記第3面の裏側に設けられる第4面とを有する第2ガラス板と、
    前記第2面及び前記第3面の周縁部に配置され、前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に空隙層を形成するスペーサと、を備え、
    前記第1ガラス板が、強化ガラス、結晶化ガラス、または、網入りガラスで形成され、
    前記第1面及び前記第4面の周縁部は、前記遮炎部材によって被覆可能な遮炎領域を有し、
    前記遮炎領域において前記第1ガラス板と前記第2ガラス板との間に亘って設けられる部材の線熱貫流率α(W/(m・K))が下記式の範囲である複層ガラスモジュール。
    [数3]
    ((1200/R)-755)/24805≦α<0.042
    R:第1ガラス板の側からの加熱による防火試験において板厚がd(mm)の第2ガラス板の耐火時間を、板厚が3mmの第2ガラス板の耐火時間を1とした場合の比率で表したものであり、下記式で算出される。
    [数4]
    R=0.0044d-0.0108d+0.9923
  12. 前記第1ガラス板の端面から前記第2ガラス板の端面に亘って延在する熱伝導部材を備え、
    前記熱伝導部材は、前記第2ガラス板の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する請求項11に記載の複層ガラスモジュール。
  13. 前記遮炎領域は、前記第1ガラス板または前記第2ガラス板の端面から10mm以上30mm以下である、請求項11または12に記載のガラスモジュール。
  14. 前記第3面は、前記第2ガラス板の板面方向の熱伝導を抑制する熱伝導抑制膜を更に備える請求項1から13のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  15. 前記熱伝導抑制膜は、熱線反射膜である請求項14に記載の複層ガラスモジュール。
  16. 前記熱線反射膜は、金属層を含んでいる請求項15に記載の複層ガラスモジュール。
  17. 前記熱伝導抑制膜の熱伝導率は、前記第2ガラス板の熱伝導率よりも低い請求項14に記載の複層ガラスモジュール。
  18. 前記第2ガラス板は、端面の角部分が面取りされていない請求項1から17のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  19. 前記遮炎領域は、前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の端面から10mm以上30mm以下である請求項1から18のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  20. 前記第2ガラス板の厚みは、2mm以上10mm以下である請求項1から19のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュール。
  21. 請求項1から20のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュールと、
    前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板と面で対向して前記第1ガラス板及び前記第2ガラス板の周縁部を断熱材を介在させた状態で挟持する遮炎部材と、を備える複層ガラスユニット。
  22. 請求項1から20のいずれか一項に記載の複層ガラスモジュールが前記遮炎部材に挟持されて固定されている、ガラス窓。
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