JP2022015132A - 糸切断装置の異常診断装置及び異常診断方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、糸切断装置の異常診断装置及び異常診断方法に関する。
糸巻取機の糸監視装置には、ソレノイドにより切断刃を駆動して糸を切断する糸切断装置が設けられている。従来、ソレノイドに対して異常を検出、判定、又は診断する技術が知られている。例えば、特許文献1に記載されたソレノイド制御装置及び診断方法では、ソレノイドに流れる電流の検出値が異常範囲内にある場合、そのソレノイドが異常であると判定される。また、特許文献2に記載された糸監視装置では、内部の配線に衝撃が付与されたときの制御モジュールへの電気信号の入力に基づいて、配線における断線の有無が判断される。
上記した従来の診断方法では、糸切断装置における切断刃の動作又は形状の異常を診断することは難しい。例えば、ソレノイド駆動用のコンデンサにおける電圧を監視することで、切断刃の動作又は形状の異常を判定する方法も考えられるが、そのような方法でも、切断刃の動作又は形状の異常を正確に診断することは難しい。
本発明は、切断刃の動作及び/又は形状の異常を正確に診断することができる糸切断装置の異常診断装置及び異常診断方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、ソレノイドにより切断刃を駆動する糸切断装置の異常診断装置であって、ソレノイドに流れる電流の時間的な変化に基づいて、切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断する診断部を備える。
この糸切断装置の異常診断装置では、診断部によって、ソレノイドに流れる電流の時間的な変化に基づき、切断刃の動作及び/又は形状の異常が診断される。ソレノイドに流れる電流(電流の波形)は、切断刃の動きをよく反映している。よって、この異常診断装置では、切断刃の動作及び/又は形状の異常を正確に診断することができる。
診断部は、切断刃に対する動作指令が出力された後にソレノイドに流れる電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク電流値に基づいて、切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断してもよい。切断刃が正常に動き出した場合、少なくとも、正常なピーク電流値が検出される。ピーク電流値に基づいて、切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断することにより、より一層正確に切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断することができる。
診断部は、切断刃に対する動作指令が出力された後にソレノイドに流れる電流の電流値が増大して最初の極大値に達し、その後に電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷電流値に基づいて、切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断してもよい。切断刃が対向する金属部分に正常に衝突した場合、少なくとも、正常な谷電流値が検出される。谷電流値に基づいて、切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断することにより、より一層正確に切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断することができる。
診断部は、切断刃に対する動作指令が出力された後にソレノイドに流れる電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク電流値と、ピーク点の後に電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷電流値との電流差に基づいて、切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断してもよい。ピーク電流値と谷電流値との電流差を用いることにより、切断刃が動かなかったこと(切断刃の不動)や、カット能力不足、切断刃の戻り不良等を好適に診断することができる。
診断部は、切断刃に対する動作指令が出力された後にソレノイドに流れる電流の電流値が増大して最初の極大値に達するピーク点の有無に基づいて、切断刃の動作の異常を診断してもよい。ピーク点の有無によれば、切断刃が動かなかったこと(切断刃の不動)を好適に診断することができる。
診断部は、切断刃に対する動作指令が出力された後にソレノイドに流れる電流の電流値が増大して最初の極大値に達し、その後に電流値が減少して最初の極小値に達する谷点の有無に基づいて、切断刃の動作の異常を診断してもよい。谷点の有無を用いることにより、切断刃が動かなかったこと(切断刃の不動)を好適に診断することができる。
診断部は、切断刃に対する動作指令が出力された後にソレノイドに流れる電流の電流値が増大して最初の極大値に達し、その後に電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷時間に基づいて、切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断してもよい。谷時間を用いることにより、切断刃が動かなかったこと(切断刃の不動)や、カット能力不足、切断刃の戻り不良等を好適に診断することができる。
診断部は、切断刃に対する動作指令が出力された後にソレノイドに流れる電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク時間と、ピーク点の後に電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷時間との時間差に基づいて、切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断してもよい。ピーク時間と谷時間との時間差を用いることにより、切断刃が動かなかったこと(切断刃の不動)や、カット能力不足、切断刃の戻り不良等を好適に診断することができる。
診断部は、切断刃に対する動作指令が出力された後にソレノイドに流れる電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク電流値、ピーク点の後に電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷電流値、ピーク電流値と谷電流値との電流差、谷点における谷時間、及び、ピーク点におけるピーク時間と谷点における谷時間との時間差の少なくともいずれかの標準偏差に基づいて、切断刃の動作の異常を診断してもよい。ピーク電流値、谷電流値、ピーク電流値と谷電流値との電流差、谷時間、又は、ピーク時間と谷時間との時間差の標準偏差を用いることにより、カット能力不足又はカット性能の劣化等を好適に診断することができる。
診断部は、切断刃に対する動作指令が出力された後にソレノイドに流れる電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク電流値、ピーク点の後に電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷電流値、ピーク電流値と谷電流値との電流差、及び、ピーク点におけるピーク時間と谷点における谷時間との時間差の少なくともいずれかの製造時を基準とする変化量に基づいて、切断刃の動作の異常を診断してもよい。ピーク電流値、谷電流値、ピーク電流値と谷電流値との電流差、又は、ピーク時間と谷時間との時間差の製造時を基準とする変化量を用いることにより、カット能力不足又はカット性能の劣化等を好適に診断することができる。製造時とは、工場出荷時と同意である。製造時は、糸切断装置の使用開始時と同意である。製造時を基準とする変化量とは、使用開始後の経年変化と同意である。
本発明の別の態様は、ソレノイドにより切断刃を駆動する糸切断装置の異常診断方法であって、ソレノイドに流れる電流の時間的な変化に基づいて、切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断する。
この糸切断装置の異常診断方法では、ソレノイドに流れる電流の時間的な変化に基づき、切断刃の動作及び/又は形状の異常が診断される。ソレノイドに流れる電流(電流の波形)は、切断刃の動きをよく反映している。よって、この異常診断方法では、切断刃の動作及び/又は形状の異常を正確に診断することができる。
本発明によれば、切断刃の動作及び/又は形状の異常を正確に診断することができる。
以下、図面を参照して一実施形態の糸監視装置1について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。図1及び図2に示されるように、糸監視装置1は、主に糸Yの糸太さ変化及び色糸などの異物を検出する装置である。糸監視装置1は、例えば、図1に示すような自動ワインダ200(糸巻取機)に搭載される。自動ワインダ200は、巻取ボビン(図示せず)に糸Yを巻き付けるワインダユニット(糸処理ユニット)201が複数台配列されて構成される。糸監視装置1は、各ワインダユニット201に搭載され、走行する糸Yの状態を検出する。
糸監視装置1は、図2に示されるように、ケーシング10、ホルダ15、投光部21、第1反射光受光部22、第2反射光受光部23、透過光受光部24、配線31a~31d、糸切断装置40及び制御モジュール(制御部)50を備えている。
ケーシング10は、樹脂製のハウジングとして構成されている。ケーシング10には、ホルダ15、糸切断装置40及び制御モジュール50が保持されている。ホルダ15には、糸監視装置1の検出部を構成する投光部21、第1反射光受光部22、第2反射光受光部23及び透過光受光部24が保持されている。糸監視装置1では、いわゆる光学式の検出部が採用されている。配線31a~31dは、ケーシング10及びホルダ15に保持されている。配線31a~31dは、ケーブル及び/又は基板上に形成されたプリント配線である。なお、制御モジュール50には、ワインダユニット201ごとに設けられたユニットコントローラ(図示せず)と、制御モジュール50に電力を供給する電源(図示せず)とが電気的に接続されている。
ホルダ15には、糸Yが走行する糸道となる部分を含む検出空間としての糸通路11が、当該糸Yの走行方向に沿って形成されている。この糸通路11は、糸監視装置1の装置正面側に向けて開放された形状となっている。
投光部21は、糸通路11に対して光を投光する。投光部21は、例えばLEDであって、一方向に光を出射する。投光部21は、制御モジュール50が出力する電気信号を配線31aを通じて入力し、入力(制御モジュール50から印加される電圧)に基づいて光を発光する。第1反射光受光部22は、糸Yによって反射された投光部21からの光を受光する。第1反射光受光部22は、受光面に対して入射する光を受光する。第1反射光受光部22は、フォトダイオードであり、配線31bを通じて、受光した光の受光量に応じた電気信号を制御モジュール50に出力する。第2反射光受光部23は、糸Yによって反射された投光部21からの光を受光する。第2反射光受光部23は、受光面に対して入射する光を受光する。第2反射光受光部23は、フォトダイオードであり、配線31cを通じて、受光した光の受光量に応じた電気信号を制御モジュール50に出力する。透過光受光部24は、糸Yを透過した投光部21からの光を受光する。透過光受光部24は、フォトダイオードであり、配線31dを通じて、受光した光の受光量に応じた電気信号を制御モジュール50に出力する。
糸切断装置40は、ソレノイド41、切断刃42、及びアンビル43を有している。ソレノイド41は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換するアクチュエータであって、所定方向に直線的に可動するプランジャー44と、プランジャー44を包囲するように配置されたコイル45とを有している。プランジャー44は、シャフトとも呼ばれる。切断刃42は、当該プランジャー44の先端部に固定され、ソレノイド41から付与される駆動力によって当該所定方向に沿って直線的に移動される。糸切断装置40は、ソレノイド41に電流を供給することにより、切断刃42を駆動する。アンビル43は角張ったU字型(コ字型)に形成され、一対の側壁が糸通路11を挟んで対向するように配置されている。ソレノイド41がアンビル43の第1の側壁43aに取り付けられている。プランジャー44が糸Yに向けて移動し、切断刃42がアンビル43の第2の側壁(受止部)43bに衝突する。この動作により、糸Yが切断される。
この糸切断装置40は、切断刃42の可動方向が糸Yの走行方向と直交するようにケーシング10に保持されている。糸切断装置40は、ネジなどの固定手段によってケーシング10に固定されている。切断刃42は、ソレノイド41から駆動力が付与されることによって糸通路11を横切り、ケーシング10に保持されたアンビル43の第2の側壁43bに衝突する。糸Yは、切断刃42とアンビル43との間に挟まれることによって切断される。なお、アンビル43の形状はU字型に限定されない。また、アンビル43をケーシング10から独立した部材として設けずに、糸切断装置40をケーシング10に直接取り付け、糸通路11を形成する面を切断刃42の受止部としてもよい。
制御モジュール50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、アナログフロントエンド部などで構成されている。アナログフロントエンド部は、フィルタ部、信号増幅部、及びA/D変換部等を有している。制御モジュール50は、糸切断装置40の各部の動作を制御する。
糸監視装置1は、糸Yの巻取り動作において、糸通路11を走行する糸Yの状態を監視する。具体的には、制御モジュール50は、各受光部22,23,24が出力する電気信号に基づいて糸Yの状態を判定する。制御モジュール50は、糸Yに太さムラ又は異物の混入が有ると判定すると、糸切断装置40を駆動させて糸Yを切断させる。
糸監視装置1には、ソレノイド41に流れる電流を監視することにより、切断刃42の動作及び/又は形状の異常を検出(診断)する異常診断装置60が設けられている。異常診断装置60は、例えば、各ワインダユニット201に搭載され、1台の糸切断装置40に対応して設けられる。糸切断装置40では、ソレノイド41のコイル45に電流が流れてコンデンサが放電しても、ソレノイド41の摺動部に異常が発生していたり、プランジャー44又は切断刃42を構成する部品に異常が発生していたりすることがある。異常診断装置60は、そのような糸切断装置40の各部における異常を診断可能である。また、異常診断装置60は、糸切断装置40の糸切断装置40の各部における故障予知をも実施可能である。
ソレノイド41の電流経路について説明すると、ソレノイド41のコイル45は、電源電圧に接続されると共に、コイル45の第1端に接続された配線に、スイッチ信号が入力される。さらにシャント抵抗が挿入されており、このシャント抵抗の両端にオペアンプが接続されている。そして、オペアンプで増幅された電圧値が、ソレノイド41の電流経路に接続されたマイコンによって読み取られる。
異常診断装置60は、制御モジュール50に接続された診断部61を備える。診断部61は、ソレノイド41に流れる電流値を検知可能である。本明細書において、「ソレノイド41に流れる電流」は、上記のように測定され得る、「ソレノイド41のコイル45に流れる電流」を意味する。診断部61は、ソレノイド41に流れる電流の時間的な変化に基づいて、切断刃42の動作及び/又は形状の異常を診断する。診断部61は、ソレノイド41に流れる電流の時間的な変化に基づいて、切断刃42の動作の異常のみを診断してもよい。診断部61は、ソレノイド41に流れる電流の時間的な変化に基づいて、切断刃42の形状の異常のみを診断してもよい。診断部61は、ソレノイド41に流れる電流の時間的な変化に基づいて、切断刃42の動作の異常及び形状の異常の両方を診断してもよい。診断部61は、例えば、CPU等のプロセッサ、ROM及びRAM等のメモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。図2に示されるように、診断部61は、例えば、糸監視装置1の外部の装置である異常診断装置60内に設けられており、糸監視装置1と通信可能である。
診断部61は、機能要素として、取得部62、演算部63、及び判定部64を備える。取得部62は、例えば制御モジュール50から出力される、ソレノイド41に流れる電流値を示す電気信号を入力することにより、ソレノイド41に流れる電流値を取得する。演算部63は、ソレノイド41に流れる電流値に基づいて、切断刃42の動作及び/又は形状の異常を診断するための診断基準に係る複数種類の数値(電流値、電流差、時間、時間差、及びこれらの標準偏差)を演算する。判定部64は、演算部63によって演算された数値と、予め記憶した閾値とを比較し、その比較結果に応じて、切断刃42の動作の異常の有無又は動作の異常の種類(いずれの診断項目に該当するか)を判定する。判定部64は、演算部63によって演算された数値と、予め記憶した閾値とを比較し、その比較結果に応じて、切断刃42の形状の異常の有無を判定する。演算部63によって求められる複数種類の数値及び判定部64による判定に用いられる複数種類の閾値の詳細については、後述する。診断部61では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれた所定のソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御することによって、診断部61の各機能要素が実現される。
本発明者らは、ソレノイド41に流れる電流が、切断刃42の動作の正常又は異常に関係して、特有の波形を示すことを見出している。本発明者らは、ソレノイド41に流れる電流が、切断刃42の形状の正常又は異常に関係して、特有の波形を示すことを見出している。以下の説明において、切断刃42の動作の正常又は異常、及び、切断刃42の形状の正常又は異常を、「切断刃42の状態の正常又は異常」という。図3には、ソレノイド41に流れる電流の時間的な変化の典型例が示される。図3では、横軸が時間(ms)であり、縦軸が電流(A)である。図3に示される電流波形は、切断刃42の動作が正常なときの波形である。切断刃42に対する制御モジュール50による動作指令が出力された時点が、横軸における0(ms)である。
図3に示されるように、コイル45のリアクタンス成分により、時間0(ms)から電流値は増大し、最初の極大値(ピーク点)であるa点に達する。a点における電流値(ピーク電流値)はia(A)である。a点における時間(ピーク時間)はta(ms)である。電流値は、a点を過ぎた後(a点に達した後)、現象して最初の極小値(谷点)であるb点に達する。b点における電流値(他に電流値)はib(A)である。b点における時間(谷時間)はtb(ms)である。b点を過ぎた後(b点に達した後)、電流値は再び増大し、二度目の極大値(ピーク点)であるc点に達する。c点における電流値(ピーク電流値)はic(A)である。c点における時間(ピーク時間)はtc(ms)である。その後、電流値は徐々に減少する。通常であれば(正常な切断刃42の動作においては)、c点以降に極大値は表れない。なお、図示はされないが、糸切断装置40によっては、c点の次に二度目の極小値(谷点)であるb´点が表れる場合もある。
本発明者らの知見によれば、このような標準的な波形において、b点は、切断刃42がアンビル43の第2の側壁43bに衝突してプランジャー44が跳ね返ることを意味する。例えば、ソレノイド41が何らかの理由により動かない場合、図3に示されるb点のように、電流値が再び増大に転じる時点が存在しなくなる。したがって、b点の有無に基づく異常の判断が可能となる。
以下、異常診断装置60によって診断可能な、切断刃42の動作の異常(不良)の例を列挙する。第1に、プランジャー44の不動が挙げられる。これは、プランジャー44及び切断刃42が機構的に押さえられて、ソレノイド41に電流は流れるがプランジャー44及び切断刃42が動かない現象(以下、「不動」という)である。第2に、切断刃42が糸Yを切る能力が不足する現象(以下、「カット能力不足」という)が挙げられる。例えば出荷時にカット能力不足の有無が判定される。第3に、切断刃42が動作した後、プランジャー44が待機位置まで戻らない現象(以下、「カッター戻り不良」という)が挙げられる。第4に、ソレノイド41のケーブルの断線又は地絡により、ソレノイド41に電流が流れないという現象(以下、「不動(断線又は地絡)」という)が挙げられる。第5に、ソレノイド41の摺動部の摩擦力増加(経時変化等に起因する)により、切断刃42が糸Yを切る性能が劣化する現象(以下、「カット性能の劣化」という)が挙げられる。カット性能の劣化は、故障予知(予兆診断)項目の一種である。例えば使用時にカット性能の劣化の有無が判定される。異常診断装置60によって診断可能な、切断刃42の形状の異常(不良)の例として、切断刃42の刃先変形が挙げられる。例えば使用時に刃先変形の有無が判定される。なお、本明細書において「不動」とは、プランジャー44又は切断刃42が全く動かないことと、少しは動くが最終的な位置(切断刃42が第2の側壁43bに到達する位置)まで移動しないことの両方の意味を含んでいる。「刃先変形」は、切断刃42の刃先が衝突によって変形することを意味する。
これらの診断項目は、図4及び図5に示される診断基準に基づいて、異常診断装置60の診断部61によって診断可能である。診断可能な項目が、表の左側の列に示されており、診断基準が、表の最上段の行に示されている。診断部61によって診断可能な場合には、表中において、「検出可能」と示されている。
図4に示されるように、b点における電流値ibが所定の電流値(第1谷電流閾値)よりも小さい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、カット性能の劣化、又は刃先変形であると診断される。b点における電流値ibが所定の電流値(第2谷電流閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカッター戻り不良であると診断される。第1谷電流閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形から読み取られる参照谷電流値よりも小さな値に設定される。第2谷電流閾値は、参照谷電流値よりも大きな値に設定される。
a点とb点との電流差(ピーク電流値と谷電流値との電流差)Δiが最大値である場合には、診断部61によって、糸切断装置40は不動であると診断される。この電流差の最大値は、例えば図3に示されるような標準的な波形に基づいて、糸切断装置40における「不動」を検出するために十分大きな値に設定される。a点とb点との電流差Δiが所定の電流差(第1電流差閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、カット性能の劣化、又は刃先変形であると診断される。a点とb点との電流差Δiが所定の電流差(第2電流差閾値)よりも小さい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカッター戻り不良であると診断される。第1電流差閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形から読み取られる参照電流差よりも大きな値に設定される。第2電流差閾値は、参照電流差よりも小さな値に設定される。なお、a点とb点との電流差に基づいて診断可能である旨が説明されたが、これに限られず、a点、b点、c点、及びb´点(b´点が表れる場合)のいずれか2つの点の間の電流差に基づいて、上記と同様に診断が行われることもできる。
b点における時間(谷時間)tbが最大値である場合には、診断部61によって、糸切断装置40は不動であると診断される。この時間の最大値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な波形に基づいて、「不動」を検出するために十分大きな値に設定される。b点における時間tbが所定の時間(第1谷時間閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、カット性能の劣化、又は刃先変形であると診断される。b点における時間tbが所定の時間(第2谷時間閾値)よりも小さい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカッター戻り不良であると診断される。第1谷時間閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形から読み取られる参照谷時間よりも大きな値に設定される。第2谷時間閾値は、参照谷時間よりも小さな値に設定される。
a点とb点との間の時間差(ピーク時間と谷時間との時間差)Δtが最大値である場合には、診断部61によって、糸切断装置40は不動であると診断される。この時間差の最大値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な波形に基づいて、「不動」を検出するために十分大きな値に設定される。a点とb点との時間差Δtが所定の時間差(第1時間差閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、カット性能の劣化、又は刃先変形であると診断される。a点とb点との時間差Δtが所定の時間差(第2時間差閾値)よりも小さい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカッター戻り不良であると診断される。第1時間差閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形から読み取られる参照時間差よりも大きな値に設定される。第2時間差閾値は、参照時間差よりも小さな値に設定される。なお、a点とb点との時間差に基づいて診断可能である旨が説明されたが、これに限られず、a点、b点、c点、及びb´点(b´点が表れる場合)のいずれか2つの点の間の時間差に基づいて、上記と同様に診断が行われることもできる。
b点が無い場合には、診断部61によって、糸切断装置40は不動、又は不動(断線又は地絡)であると診断される。この場合は、時間差が∞(無限大)であり測定不能であるとも言え、b点は測定不能である。図6には、このように診断され得る電流波形が示されている。また、a点とb点の両方が無い場合は、診断部61によって、糸切断装置40は不動(断線又は地絡)であると診断される。この場合は、例えば、a点における電流値(ピーク電流値)が0である、b点における電流値(谷電流値)が0である、a点とb点との時間差が∞(無限大)であり測定不能である、又はa点とb点との電流差が0である、等の現象が考えられる。
さらには、図5に示されるように、糸切断装置40を複数回にわたって作動させた(経年使用した)場合の、各数値の標準偏差を診断に用いることもできる。例えば、a点における電流値(ピーク電流値)の標準偏差σiaが所定の標準偏差(ピーク電流標準偏差閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、又はカット性能の劣化であると診断される。ピーク電流標準偏差閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形におけるピーク電流値の複数回の使用におけるばらつきに基づいて算出される参照ピーク電流標準偏差よりも大きな値に設定される。
さらには、b点における電流値(谷電流値)ibの標準偏差σibが所定の標準偏差(谷電流標準偏差閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、又はカット性能の劣化であると診断される。谷電流標準偏差閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形における谷電流値の複数回の使用におけるばらつきに基づく参照谷電流標準偏差よりも大きな値に設定される。
a点とb点との電流差Δiの標準偏差σΔiが所定の標準偏差(電流差標準偏差閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、又はカット性能の劣化であると診断される。電流差標準偏差閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形における電流差の複数回の使用におけるばらつきに基づく参照電流差標準偏差よりも大きな値に設定される。
b点における時間(谷時間)tbの標準偏差σtbが所定の標準偏差(谷時間標準偏差閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、又はカット性能の劣化であると診断される。谷時間標準偏差閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形における谷時間の複数回の使用におけるばらつきに基づく参照谷時間標準偏差よりも大きな値に設定される。
a点とb点との時間差Δtの標準偏差σΔtが所定の標準偏差(時間差標準偏差閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、又はカット性能の劣化であると診断される。時間差標準偏差閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形における時間差の複数回の使用におけるばらつきに基づく参照時間差標準偏差よりも大きな値に設定される。
あるいは、図には示されていないが、a点における電流値、b点における電流値、a点とb点との電流差、b点における時間、又は、a点とb点との時間差の製造時を基準とする変化量が所定の変化量(変化量閾値)よりも大きい場合には、診断部61によって、糸切断装置40はカット能力不足、又はカット性能の劣化であると診断される。変化量閾値は、例えば図3に示されるような、糸切断装置40における標準的な(理想的な)電流波形の経時変化に基づく参照変化量よりも大きな値に設定される。
以上説明したとおり、不動は、a点とb点との電流差Δi、b点における時間tb、a点とb点との間の時間差Δt、又はb点が無いこと(欠如)に基づいて、診断部61によって検出可能である。診断部61は、これらすべての診断基準を用いてもよく、これらの一部の診断基準を用いてもよい。診断部61は、これらのうち、いずれか1つのみの診断基準を用いてもよい。
カット能力不足は、b点における電流値ib、a点とb点との電流差Δi、b点における時間tb、a点とb点との間の時間差Δt、a点における電流値の標準偏差σia、b点における電流値(谷電流値)ibの標準偏差σib、a点とb点との電流差Δiの標準偏差σΔi、b点における時間tbの標準偏差σtb、a点とb点との時間差Δtの標準偏差σΔt、又は上記した種々の製造時を基準とする変化量に基づいて、診断部61によって検出可能である。これらのうち、電流値ib、電流差Δi、時間tb、及び時間差Δtは、診断基準として、カット能力不足の検出に適している。診断部61は、これらすべての診断基準を用いてもよく、これらの一部の診断基準を用いてもよい。診断部61は、これらのうち、いずれか1つのみの診断基準を用いてもよい。
カット性能の劣化は、b点における電流値ib、a点とb点との電流差Δi、b点における時間tb、a点とb点との間の時間差Δt、a点における電流値の標準偏差σia、b点における電流値(谷電流値)ibの標準偏差σib、a点とb点との電流差Δiの標準偏差σΔi、b点における時間tbの標準偏差σtb、a点とb点との時間差Δtの標準偏差σΔt、又は上記した種々の製造時を基準とする変化量に基づいて、診断部61によって検出可能である。これらのうち、標準偏差σia、標準偏差σib、標準偏差σΔi、標準偏差σtb、標準偏差σΔt、及び製造時を基準とする変化量は、診断基準として、カット性能の劣化の検出に適している。診断部61は、これらすべての診断基準を用いてもよく、これらの一部の診断基準を用いてもよい。診断部61は、これらのうち、いずれか1つのみの診断基準を用いてもよい。
カッター戻り不良は、b点における電流値ib、a点とb点との電流差Δi、b点における時間tb、又はa点とb点との間の時間差Δtに基づいて、診断部61によって検出可能である。これらの電流値ib、電流差Δi、時間tb、及び時間差Δtは、診断基準として、カッター戻り不良の検出に適している。診断部61は、これらすべての診断基準を用いてもよく、これらの一部の診断基準を用いてもよい。診断部61は、これらのうち、いずれか1つのみの診断基準を用いてもよい。
不動(断線又は地絡)は、b点が無いこと(欠如)又はa点とb点の両方が無いこと(両方の点の欠如)に基づいて、診断部61によって検出可能である。診断部61は、これらすべての診断基準を用いてもよく、これらの一部の診断基準を用いてもよい。診断部61は、これらのうち、いずれか1つのみの診断基準を用いてもよい。
不動が生じる具体的な原因としては、例えば、出荷時においては、周辺機構の組付不良が考えられ、出荷後においては、経年劣化による破損等が考えられる。カット能力不足が生じる具体的な原因としては、例えば、出荷時において、プランジャー44の摺動不良等が考えられる。カッター戻り不良が生じる具体的な原因としては、例えば、出荷時においては、周辺機能の不具合、またはバネ異常等が考えられ、出荷後においては、異物混入による摺動阻害等が考えられる。不動(断線又は地絡)が生じる具体的な原因としては、例えば、出荷時においては、ケーブル噛み込みによる原因等が考えられ、出荷後においては、経年劣化による断線、被覆はがれ等が考えられる。
刃先変形は、b点における電流値ib、a点とb点との電流差Δi、b点における時間tb、又はa点とb点との間の時間差Δtに基づいて、診断部61によって検出可能である。診断部61は、これらすべての診断基準を用いてもよく、これらの一部の診断基準を用いてもよい。診断部61は、これらのうち、いずれか1つのみの診断基準を用いてもよい。図には示されていないが、刃先変形は、b点とc点との電流差(電流変化)に基づいて、診断部61によって検出可能である。診断部61は、b点とc点との電流差のみを用いて刃先変形を検出してもよいが、b点とc点との電流差に加えて、b点における時間tb(b点のタイミング)に基づいて刃先変形を検出してもよい。b点とc点との電流差、あるいはb点とb´点(上述した二度目の極小値(谷点))との電流差を確認することで、診断部61は、刃先変形の程度を検出してもよい。b´点における電流値は、b点における電流値よりも小さい。よって、b点とb´点との電流差を確認することは、切断刃42の跳ね返りの減衰を確認することを意味する。b点とb´点との電流差に基づいて診断が可能である旨が説明されたが、これに限らず、a点、b点、c点、及びb´点のいずれか2つの点の間の電流差又は時間差に基づいて、上記と同様に診断が行われることもできる。
上述のとおり、ソレノイド41に流れる電流の経時変化により、ソレノイド41の故障予知をすることができる。本発明者らの検討により、ソレノイド41は、動作回数を重ねる毎に、衝突する点(b点)までの時間が延びていることが分かっている。これは、例えば摩擦による摩耗粉の発生により、ソレノイド41のプランジャー44部の摺動性が悪くなり、衝突までに時間がかかると考えられるからである。衝突までにかかる時間がある値を超えると、十分に糸をカットすることが出来なくなり、その時点が故障と判断できる。
続いて、糸切断装置40の異常診断方法について説明する。異常診断装置60は、ワインダユニット201における糸Yの巻取り動作が実行される間、すなわち糸監視装置1によって糸Yの状態が監視される間、糸切断装置40の異常を診断する。まず、取得部62(図2参照)が、糸切断装置40のソレノイド41に流れる電流値を取得する。取得部62は、ソレノイド41に流れる電流値を、例えば所定時間ごとに取得する。取得部62は、取得した電流値を、その電流値が検出された時間に紐づけて、記憶する。
演算部63は、取得部62によって取得及び記憶された電流値に基づいて、上述した診断基準に係る複数種類の数値を演算する。演算部63は、所定時間ごとの電流値に基づいて、電流値の最初の極大値(ピーク点;a点)とその後の極小値(谷点;b点)とを求め、ピーク電流値、谷電流値、電流差、ピーク時間、谷時間、及び時間差を演算する。また演算部63は、演算したこれらの数値を記憶し、複数回にわたる糸切断装置40の作動(切断刃42による糸Y切断)の結果より、各数値の標準偏差を演算する。標準偏差の演算対象となる期間は、糸切断装置の使用開始時から診断時までの全期間でもよいし、使用開始時以降の所定時期から診断時までの期間でもよい。
判定部64は、演算部63によって演算された数値と、予め記憶した閾値とを比較する。判定部64は、各閾値に対して各数値が大きいか又は小さいか等に応じて、切断刃42の状態の異常の有無又は状態の異常の種類(いずれの診断項目に該当するか)を判定する。以上の処理を経て、診断部61は、ソレノイド41に流れる電流の時間的な変化に基づいて、切断刃42の状態の異常を診断する。異常診断装置60は、切断刃42の状態の異常を、自動ワインダ200のディスプレイ等の表示装置(例えば図1に示す表示装置205)に表示させてもよい。異常診断装置60は、切断刃42の状態の異常を、警報の発生等により報知してもよい。
なお、刃先交換直後に、異常診断装置60によって、刃先摩耗が生じているか否かを診断するテストモードが実行されてもよい。異常診断装置60は、このテストモードにおいて、切断刃42を複数回動作させ、電流波形が正常範囲にあるか否かを判定する。なお、テストモードは、刃先交換直後には限られず、他のタイミングで実行されてもよい。異常診断装置60は、刃先の交換履歴を記録する。
本実施形態の糸切断装置40の異常診断装置60及び異常診断方法では、診断部61によって、ソレノイド41に流れる電流の時間的な変化に基づき、切断刃42の状態の異常が診断される。ソレノイド41に流れる電流(電流の波形)は、切断刃42の動きをよく反映している。よって、この異常診断装置では、切断刃42の状態の異常を正確に診断することができる。
切断刃42が正常に動き出した場合、少なくとも、正常なピーク電流値が検出される。ピーク電流値に基づいて、切断刃42の状態の異常を診断することにより、より一層正確に切断刃42の状態の異常を診断することができる。
切断刃42が対向する金属部分である第2の側壁43bに正常に衝突した場合、少なくとも、正常な谷電流値が検出される。谷電流値に基づいて、切断刃42の状態の異常を診断することにより、より一層正確に切断刃42の状態の異常を診断することができる。
ピーク電流値と谷電流値との電流差を用いることにより、切断刃42が動かなかったこと(切断刃42の不動)や、カット能力不足、切断刃42の戻り不良等を好適に診断することができる。
ピーク点の有無によれば、切断刃42が動かなかったこと(切断刃42の不動)を好適に診断することができる。
谷点の有無を用いることにより、切断刃42が動かなかったこと(切断刃42の不動)を好適に診断することができる。
谷時間を用いることにより、切断刃42が動かなかったこと(切断刃42の不動)や、カット能力不足、切断刃42の戻り不良等を好適に診断することができる。
ピーク時間と谷時間との時間差を用いることにより、切断刃42が動かなかったこと(切断刃42の不動)や、カット能力不足、切断刃42の戻り不良等を好適に診断することができる。
ピーク電流値、谷電流値、ピーク電流値と谷電流値との電流差、谷時間、又は、ピーク時間と谷時間との時間差の標準偏差を用いることにより、カット能力不足又はカット性能の劣化等を好適に診断することができる。カット性能の劣化の診断によれば、診断時に現に生じている故障のみならず、将来起こり得る故障の予知が可能となる。例えば、ソレノイド41を構成する部品(プランジャー44等)を予め交換する等の処置(予知保全)が行われてもよい。
ピーク電流値、谷電流値、ピーク電流値と谷電流値との電流差、又は、ピーク時間と谷時間との時間差の製造時を基準とする変化量を用いることにより、カット能力不足又はカット性能の劣化等を好適に診断することができる。カット性能の劣化の診断によれば、上記した故障予知が可能となり、上述したのと同様の対策(予知保全)が実施され得る。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、異常診断装置60は、判定結果に基づいて、部品購入をオペレータに促す旨の報知(ディスプレイ等による視覚的報知、及び、スピーカ等による聴覚的報知の少なくともいずれか)を行ってもよい。部品購入をオペレータに促すことにより、糸切断装置40が故障する前に切断刃42等の部品を交換できる。その結果として、操業停止時間を短縮できる。
異常診断装置60は、発生した事象(上記の異常又は不良)に応じた作業をオペレータに促す旨の報知(ディスプレイ等による視覚的報知、及び、スピーカ等による聴覚的報知の少なくともいずれか)を行ってもよい。異常診断装置60は、事象に応じて、点検作業又は交換作業のいずれかを促してもよい。異常診断装置60は、例えば、カッター戻り不良の発生に応じて点検作業を促してもよく、断線又は地絡の発生に応じて交換作業を促してもよい。
異常診断装置60は、すべてのワインダユニット201(すなわち全錘)に対して寿命レベルを判定し、寿命レベルを区別した形で表示させてもよい。寿命レベルは、数段階のレベルとして判定されてもよい。これにより、オペレータは、どのワインダユニット201の切断刃42及び/又はソレノイド41が寿命に近づいているかを容易に認識することができる。
上記実施形態で図面を用いて説明した電流波形は、コンデンサ放電駆動によるものであるが、コンデンサ放電駆動の代わりに、直流電源駆動とすることもできる。直流電源駆動による電流波形は、コンデンサ放電駆動による電流波形とは異なる形状となるが、ソレノイドに流れる電流の時間的な変化に基づいて異常を診断する点は同じである。
上記した糸切断装置は、プランジャー44及び切断刃42が往復動するタイプの糸切断装置40に限られない。糸切断装置は、回転軸を中心に切断刃が回動してアンビルの受止部に衝突する、いわゆるロータリーソレノイドを備えるタイプの装置であってもよい。
上記実施形態の糸監視装置1では、検出部として、投光部と受光部とを有する光学式の検出部を用いる例を挙げて説明したが、糸Yを挟んで対向する一対の電極を含む測定コンデンサを有する静電容量式の検出部を用いてもよい。
上記実施形態の糸監視装置1は、主に糸Yの太さムラ及び異物を検出する検出装置であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、糸監視装置は、巻き取る糸の長さを検出(監視)する光電式定長装置、又は糸の張力を検出(監視)する張力検出装置であってもよい。すなわち、本発明は、糸の状態(太さムラ、異物混入、長さ、張力など)を監視する装置であって、電気信号又は電力を供給する配線を備えるものであれば適用できる。
上記実施形態の糸監視装置1は、光学式の検出部及び静電容量式の検出部のいずれか一方を備えている構成となっているが、糸監視装置1は、光学式の検出部及び静電容量式の検出部の両方を備えていてもよい。この場合、各検出部は、糸Yの走行方向に沿って配置されることによって、糸Yの走行方向における異なった位置から糸Yの状態を監視できる。
診断部61を含む異常診断装置60が、糸監視装置1の制御モジュール50内に備えられてもよい。また、診断部61を含む異常診断装置60が、糸巻取機の機台端部に設けられた糸巻取機全体を管理する機台管理装置(例えば図1に示す機台管理装置204)に備えられてもよい。
糸切断装置を含む糸監視装置、及び異常診断装置は、ワインダユニット201以外の糸処理ユニットに適用されてもよい。糸切断装置を含む糸監視装置、及び異常診断装置は、空気紡績ユニット等の紡績ユニット(糸処理ユニット)に適用されてもよい。糸処理ユニットが紡績ユニットである場合も、図1に示される態様と同様に、複数台の糸処理ユニット(符号201で示されるユニット)が配列され、これらの糸処理ユニットに対して、糸監視装置及び異常診断装置が設けられる。
1…糸監視装置、40…糸切断装置、41…ソレノイド、42…切断刃、43…アンビル、43b…第2の側壁(受止部)、50…制御モジュール(制御部)、60…異常診断装置、61…診断部、62…取得部、63…演算部、64…判定部、Y…糸。
Claims (11)
- ソレノイドにより切断刃を駆動する糸切断装置の異常診断装置であって、
前記ソレノイドに流れる電流の時間的な変化に基づいて、前記切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断する診断部を備える、糸切断装置の異常診断装置。 - 前記診断部は、前記切断刃に対する動作指令が出力された後に前記ソレノイドに流れる前記電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク電流値に基づいて、前記切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断する、請求項1に記載の糸切断装置の異常診断装置。
- 前記診断部は、前記切断刃に対する動作指令が出力された後に前記ソレノイドに流れる前記電流の電流値が増大して最初の極大値に達し、その後に前記電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷電流値に基づいて、前記切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断する、請求項1または2に記載の糸切断装置の異常診断装置。
- 前記診断部は、前記切断刃に対する動作指令が出力された後に前記ソレノイドに流れる前記電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク電流値と、前記ピーク点の後に前記電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷電流値との電流差に基づいて、前記切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断する、請求項1~3のいずれか一項に記載の糸切断装置の異常診断装置。
- 前記診断部は、前記切断刃に対する動作指令が出力された後に前記ソレノイドに流れる前記電流の電流値が増大して最初の極大値に達するピーク点の有無に基づいて、前記切断刃の動作の異常を診断する、請求項1~4のいずれか一項に記載の糸切断装置の異常診断装置。
- 前記診断部は、前記切断刃に対する動作指令が出力された後に前記ソレノイドに流れる前記電流の電流値が増大して最初の極大値に達し、その後に前記電流値が減少して最初の極小値に達する谷点の有無に基づいて、前記切断刃の動作の異常を診断する、請求項1~5のいずれか一項に記載の糸切断装置の異常診断装置。
- 前記診断部は、前記切断刃に対する動作指令が出力された後に前記ソレノイドに流れる前記電流の電流値が増大して最初の極大値に達し、その後に前記電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷時間に基づいて、前記切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断する、請求項1~6のいずれか一項に記載の糸切断装置の異常診断装置。
- 前記診断部は、前記切断刃に対する動作指令が出力された後に前記ソレノイドに流れる前記電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク時間と、前記ピーク点の後に前記電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷時間との時間差に基づいて、前記切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断する、請求項1~6のいずれか一項に記載の糸切断装置の異常診断装置。
- 前記診断部は、前記切断刃に対する動作指令が出力された後に前記ソレノイドに流れる前記電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク電流値、前記ピーク点の後に前記電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷電流値、前記ピーク電流値と前記谷電流値との電流差、前記谷点における谷時間、及び、前記ピーク点におけるピーク時間と前記谷点における谷時間との時間差の少なくともいずれかの標準偏差に基づいて、前記切断刃の動作の異常を診断する、請求項1~7のいずれか一項に記載の糸切断装置の異常診断装置。
- 前記診断部は、前記切断刃に対する動作指令が出力された後に前記ソレノイドに流れる前記電流の電流値が増大して最初の極大値に達したピーク点におけるピーク電流値、前記ピーク点の後に前記電流値が減少して最初の極小値に達する谷点における谷電流値、前記ピーク電流値と前記谷電流値との電流差、及び、前記ピーク点におけるピーク時間と前記谷点における谷時間との時間差の少なくともいずれかの製造時を基準とする変化量に基づいて、前記切断刃の動作の異常を診断する、請求項1~8のいずれか一項に記載の糸切断装置の異常診断装置。
- ソレノイドにより切断刃を駆動する糸切断装置の異常診断方法であって、
前記ソレノイドに流れる電流の時間的な変化に基づいて、前記切断刃の動作及び/又は形状の異常を診断する、糸切断装置の異常診断方法。
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