本開示の実施形態は、概して、オーディオ信号処理の分野に関し、より具体的にはマルチチャネルオーディオのクロストーク処理に関する。
クロストーク処理は、クロストークシミュレーションまたはクロストークキャンセルのような反対側及び同じ側の音響成分を使うオーディオ信号の処理に関する。クロストークの補償は、クロストークによって生じるスペクトル欠陥を調整する処理に関する。クロストーク処理及びクロストーク補償処理を最適化することは計算速度の高速化及び計算資源の使用を低減することに望ましい。
実施形態は、左チャネル及び右チャネルを含むオーディオ信号を強めることに関する。クロストークのキャンセルまたはクロストークのシミュレーションのような少なくとも1つのフィルタ及びディレイを含むクロストーク処理は、左および右のチャネルの側方(または空間)チャネルに適用され、クロストーク処理信号を生成する。側方チャネルは、左チャネルと右チャネルとの間との差分を含んでいる。左右のチャネルの中央(または非空間)チャネルは、クロストーク処理をバイパスする。中央チャネルは、左右のチャネルの合計を含んでいる。左出力チャネル及び右出力チャネルは、クロストーク処理信号及びクロストーク処理をバイパスした中央チャネルを使って生成される。
いくつかの実施形態において、クロストーク補償処理は、側方チャネルに適用されて、クロストーク処理が側方チャネルに適用されたことによって生じるスペクトル欠陥を調整するクロストーク補償信号を生成する。中央チャネルは、クロストーク補償処理をバイパスする。左及び右の出力チャネルは、クロストーク補償信号、クロストーク処理信号及びクロストーク処理及びクロストーク補償をバイパスした中央チャネルによって生成される。
他の側面は、構成、装置、システム、改良、方法、処理、アプリケーション、コンピュータが読み取り可能な媒体及び上記のいずれかに関する他の技術を含む。
図1Aは、一実施形態のラウドスピーカ用のステレオオーディオ再生システムを例示する図である。
図1Bは、一実施形態のヘッドフォン用のステレオオーディオ再生システムを例示する図である。
図2Aは、一実施形態のクロストーク処理のためのオーディオ処理システムを例示する図である。
図2Bは、一実施形態のクロストーク処理のためのオーディオ処理システムを例示する図である。
図2Cは、一実施形態のクロストーク処理のためのオーディオ処理システムを例示する図である。
図3Aは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Bは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Cは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Dは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Eは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Fは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Aは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Bは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Cは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Dは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Eは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Fは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図5は、一実施形態のクロストーク補償処理装置を例示する図である。
図6は、一実施形態のクロストークキャンセルを中央及び側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図7は、一実施形態のクロストークキャンセルを側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図8は、一実施形態のクロストークキャンセルを中央及び側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図9は、一実施形態のクロストークキャンセル及びクロストーク補償を側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図10は、一実施形態のクロストークキャンセルを中央及び側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図11は、一実施形態のクロストークキャンセル及びクロストーク補償を側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図12は、一実施形態のクロストーク処理及びクロストーク補償処理を示すフローチャートである。
図13は、一実施形態のコンピュータのブロック図である。
発明の詳細な説明
本明細書に記載されている特徴及び利点は、すべてを含むものでなく、特に、多くの追加される特徴及び利点は、図面、明細書、及び特許請求の範囲から当業者にとって明らかである。さらに、本明細書で使用される言語は、主に読みやすさ及び学習の目的のために選択されており、本発明の主題を描写または制限するために選択されていない可能性があることに注意すべきである。
図(FIG.)及び以下の説明は、好ましい実施形態に関する説明に過ぎない。以下の議論から、本明細書に開示される構造及び方法の代替の実施形態は、本発明の原理から逸脱することなく使用され得る実行可能な代替物として容易に認識されることに注意すべきである。
ここで、本発明のいくつかの実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図に示す。実用的である場合、図において同様または類似の参照番号が使用可能であり、同様または類似の機能を示すことに注意すべきである。図面は、実施形態の説明のみ目的として表される。当業者は、以下の説明から、本明細書に記載の原理から逸脱することなく、本明細書に例示される構造及び方法の代替の実施形態を使用できることを容易に認識するであろう。
クロストーク補償処理の例
実施形態は、クロストーク処理、いくつかの実施形態は、左及び右のチャネルに含まれるステレオオーディオ信号のためのクロストーク補償処理に関する。クロストーク処理は、ラウドスピーカ、またはヘッドフォンのためのクロストークのシミュレーションを含む場合がある。クロストーク補償処理は、クロストーク処理の結果生ずるスペクトルの欠陥を補償する。処理効率を上げるため、クロストーク処理またはクロストーク補償処理は、左右のチャネルからの側方チャネルの生成に適用される一方、左右のチャネルから生成される中央チャネルをバイパスされる。これは、側方チャネルを生成し、クロストーク処理またはクロストーク補償を側方チャネルに適用し、処理された側方チャネルと中央チャネルを組み合わせることにより達成される。他の例においては、クロストーク処理が左及び右のチャネルの各々に適用され、さらなる処理の結果とともに、クロストーク処理が効果的に側方チャネルに適用され、中央チャネルをバイパスする。その結果、出力信号は、空間的なクロストーク特性(例えば、ヘッドフォンの場合はシミュレーション、ラウドスピーカの場合はキャンセル)を維持しながら、スペクトル的に透過的な中央を示す。
図1Aに示すようなラウドスピーカの配置において、ラウドスピーカ110L、110Rの両方によって生じた音波は、聞き手120の左耳125L、右耳125Rの両方に受け取られる。各ラウドスピーカ110L、110Rからの音波は、左耳125L、右耳125Rの間でわずかなディレイを有し、聞き手120の頭に起因してフィルタリングされる。リスナーの頭の同じ側のスピーカから出力され、その側の聞き手の耳で受け取られた音響成分(例えば118L、118R)は、ここにおいて、「同側音響成分」(例えば、左耳で受け取られた左側チャネル信号成分及び、右耳で受け取られた右側チャネル信号成分)とされ、聞き手の頭の反対の側のスピーカにより出力される音響成分(例えば112L、112R)は、ここにおいて、「対側音響成分」(例えば、右耳で受け取られた左側チャネル信号成分及び、左耳で受け取られた右側チャネル信号成分)とされる。対側音響成分はクロストークの干渉に寄与し、それは空間性の知覚の低下を生じさせる。したがって、クロストークのキャンセルは、ラウドスピーカ110に入力されるオーディオ信号に適用され、聞き手120によるクロストーク干渉の体験を低減することができる。
図1Bに示すような配置のヘッドマウントスピーカにおいて、専用の左スピーカ130Lが左耳125L中に音を放出し、専用の右スピーカ130Rが右耳125R中に音を放出する。ヘッドマウントスピーカは、ユーザの耳に近くで音波を放出し、それにより、トランスオーラル音波の伝搬が低下する、またはなくなり、クロストーク干渉によって生じる対側成分が発生しない。聞き手120の各耳は、対応するスピーカから同じ側の音響成分を受けとり、他の側のスピーカからのクロストーク音響成分を受け取らない。したがって、聞き手120は、違いに気づきスピーカ、そして典型的にはヘッドマウントスピーカのより小さい音場に気づくであろう。このように、クロストークシミュレーションは、ヘッドマウントスピーカ130に入力するオーディオ信号に適用され、オーディオ信号が仮想スピーカ音源140A、140Bによって出力されるときに聞き手120が知覚する可能性があるクロストーク干渉をシミュレートするようにしてもよい。
オーディオ処理システムの例
図2A、2B及び2Cの各々は、一実施形態のクロストーク処理のためのオーディオ処理システムの例を示す。オーディオ処理システムは、クロストークキャンセルまたはクロストークシミュレーション、及び様々な状態のクロストーク処理によって生じるスペクトル欠陥を調整するクロストーク補償のようなクロストーク処理を実行する。図2Aを参照すると、オーディオ処理システム200は、クロストークプロセッサ202と、クロストーク補償プロセッサ204とを含む。クロストークプロセッサ202は、入力オーディオ信号Xに対してクロストーク処理を実行する。クロストーク補償プロセッサ204は、クロストークプロセッサ202に結合されて、クロストークプロセッサ202の結果を受信する。クロストーク補償プロセッサ204は、前のクロストーク処理によって引き起こされたスペクトル欠陥を調整する出力オーディオ信号Oを生成する。いくつかの実施形態では、クロストーク補償プロセッサ204は省略されてもよいし、またはクロストークプロセッサ202と統合されてもよい。
図2Bを参照すると、オーディオ処理システム210は、クロストークプロセッサ202、クロストークキャンセルプロセッサ204、及びコンバイナ206を含む。ここで、クロストークプロセッサ202及びクロストークキャンセルプロセッサ204は、入力オーディオ信号Xを受信し、入力オーディオ信号Xを並行して処理する。クロストークプロセッサ202及びクロストーク補償プロセッサ204からの結果は、出力オーディオ信号Oを生成するためにコンバイナ206によって結合される。
図2Cを参照すると、オーディオ処理システム215は、クロストーク補償プロセッサ204及びクロストークプロセッサ202を含む。オーディオ処理システム215は、オーディオ処理システム200と同様に、順序が異なることを除いてクロストーク処理及びクロストーク補償を連続して実行する。クロストーク補償プロセッサ204は、入力オーディオ信号Xを受信し、後のクロストーク処理によって生じるスペクトル欠陥のクロストーク補償を実行する。クロストークプロセッサ202は、クロストーク補償プロセッサ204の結果を受信し、生成された出力オーディオ信号Оにクロストーク処理を適用する。
クロストークキャンセルプロセッサの例
図3Aから図3Fは、クロストークキャンセルプロセッサを例示している。クロストークキャンセルプロセッサは、スピーカ110L及び110Rを使用する際のクロストーク干渉の体験を低減する。各クロストークキャンセルプロセッサは、図2Aから図2Cに示すように、オーディオ処理システムのクロストークプロセッサ202の一例である。
図3Aは、一実施形態に関するクロストークキャンセルプロセッサ302を示す。クロストークキャンセルプロセッサ302は、左チャネルXL及び右チャネルXRを受信し、そして、左チャネルXL及び右チャネルXRに対してクロストークキャンセルを実行し、左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。
クロストークキャンセルプロセッサ302は、帯域内・外ディバイダ310、インバータ320、322、対側推定器330、340、コンバイナ350、352、帯域内・外コンバイナ360、L/RtoMコンバータ362、L/RtoSコンバータ364及びM/StoL/Rコンバータ366を含む。これらのコンポーネントは連携して動作し、入力チャネルTL、TRを帯域内チャネルと帯域外コンポーネントとに分割し、帯域内コンポーネントでクロストークキャンセルを実行して、出力チャネルOL、ORを生成する。
入力オーディオ信号Tを異なる周波数帯域成分に分割し、選択的成分(例えば、帯域内成分)に対してクロストークキャンセルを実行することにより、他の周波数帯域での劣化をバイパスしながら、特定の周波数帯域に対してクロストークキャンセルを実行することができる。異なる周波数帯域において入力オーディオ信号Tを分割することなくクロストークキャンセルが行われた場合、そのようなクロストークキャンセル後のオーディオ信号は、低周波数(例えば、350Hz未満)、高周波数(例えば、12000Hz以上)の一方または両方において、非空間及び空間成分における有意な減衰または増幅を示し得る。影響力のある空間キューの大部分が存在する帯域内(たとえば、250Hzから14000Hz)に対してクロストークキャンセルを選択的に実行することにより、バランスの取れた全体的なエネルギー、特に非空間コンポーネント中で、ミックス内のスペクトル全体を保持することができる。
帯域内・外ディバイダ310は、入力チャネルXL、XRを帯域内チャネルTL,In、TR,In及び帯域外チャネルTL,Out、TR,Outにそれぞれ分割する。特に、帯域内、帯域外ディバイダ310は、左の強化補償チャネルTLを、左の帯域内チャネルTL,Inと、左の帯域外チャネルTL,Outと、に分割する。同様に、帯域内・外ディバイダ310は、右の強化補償チャネルTRを、右の帯域内チャネルTR,INと、右の帯域外チャネルTR,OUTと、に分割する。各帯域チャネルは、例えば250Hzから14Hzを含む周波数帯域に一致するそれぞれの入力チャネルの部分を含んでもよい。この周波数帯は、例えば、スピーカのパラメータに従って調整してもよい。
インバータ320及び対側推定器330は、協働して左の対側キャンセルチャネルSLを生成し、左の帯域内チャネルTL,Inによって生じる対側音響成分を補償する。同様に、インバータ322及び対側推定器340は、協働して右の対側キャンセルチャネルSRを生成し、右の帯域内チャネルTR,INによって生じる対側音響成分を補償する。
一つのアプローチにおいて、インバータ320は、帯域内チャネルTL,Inを受信し、帯域内チャネルTL,Inの極性を反転し、反転帯域内チャネルTL,In’を生成する。対側推定器330は、反転帯域内チャネルTL,In’を受信し、反転帯域内チャネルTL,In’のフィルタを通過した対側音響成分に一致する部分を抽出する。フィルタリングは、反転された帯域内チャネルTL,In’に対して実行されるので、対側推定器330によって抽出された部分は、反対側の音響成分によって生じる帯域内チャネルTL、Inの部分の逆になる。したがって、対側推定器330によって抽出された部分は、左の対側キャンセルチャネルSLになり、対となる帯域内チャネルTR,Inに追加して、帯域内チャネルTL,Inによって生じる対側音響成分を低減することができる。いくつかの実施形態では、インバータ320及び対側推定器330は、異なる手順で実現される
インバータ322及び対側推定器340は、帯域内チャネルTR,Inに関して同様の動作を実行して右の対側キャンセルチャネルSRを生成する。したがって、簡潔にするために、その詳細な説明は本明細書では省略されている。
実施の一例では、対側推定器330は、フィルタ332、増幅器334、及びディレイユニット336を含む。フィルタ332は、反転入力チャネルTLin'を受信し、フィルタリング機能による対側音響成分に対応する反転帯域内チャネルTLinの一部を抽出する。フィルタの実施例は、中心周波数が5000Hzと10000Hzとの間で選択され、Qが0.5と1.0との間で選択され、デシベルを単位とするゲインが式1から導出されてもよい。
ここで、Dは、例えば、48KHzのサンプリングレートにおけるディレイユニット336、346によるディレイの量である。他の実施には、コーナー周波数が5000Hzと10000Hzとの間で選択され、Qが0.5と1.0との間で選択されたローパスフィルタがある。さらに、増幅器334は、抽出された部分を対応する利得係数G
Linによって増幅し、ディレイユニット336は、ディレイ関数Dに従って増幅器334からの増幅された出力をディレイさせ、左対側キャンセルチャネルS
Lを生成する。
対側推定器340は、反転帯域内チャネルTRin’に対して同様の動作を実行して右対側キャンセルチャネルSRを生成するフィルタ342、増幅器344及びディレイユニット346を含む。一例では、対側推定器330、340は、以下の式に従って、左右の対側キャンセルチャネルSL、SRを生成する。
ここで、F[]はフィルタ関数、D[]はディレイ関数である。
いくつかの実施形態において、フィルタは、対側推定器内の増幅器と統合される 。例えば、フィルタ332は、フィルタリング機能の一部として増幅器334のゲインを適用することができる。その意味で、信号またはチャネルにフィルタを適用することは、周波数に基づく調整に加えて、ゲインレベルの広帯域調整を含み得る。
クロストークキャンセルの構成は、スピーカのパラメータによって決定することができる。一例において、フィルタの中心周波数、ディレイの量、増幅器のゲイン、及びフィルタのゲインは、聞き手に対して2つのスピーカの間に形成される角度に従って決定することができる。いくつかの実施形態では、スピーカ角度間の値は、他の値を補間するために使用される。
コンバイナ350は、右対側キャンセルチャネルSRを左帯域内チャネルTL、rnに結合し、左帯域内クロストークチャネルULを生成し、コンバイナ352は、左対側キャンセルチャネルSLを右帯域内チャネルSLに結合する。バンドチャネルTR、rnは、右帯域内クロストークチャネルURを生成する。
L/RtoSコンバータ364は、左帯域内クロストークチャネルUL及び右帯域内クロストークチャネルURを受信し、側方帯域内クロストークチャネルUSを生成する。側方帯域内クロストークチャネルUSは、左帯域内クロストークチャネルULと右帯域内クロストークチャネルURとの差分に基づいて生成されてもよい。
L/RtoMコンバータ362は、左帯域内チャネルTL、rn及び右帯域内チャネルTR、Inを受信し、中央帯域内チャネルTM、Inを生成する。中央帯域内チャネルTM、Inは、左帯域内チャネルTL、rnと右帯域内チャネルTR、Inとの合計に基づいて生成されてもよい。
M/StoL/Rコンバータ366は、中央帯域内チャネルTM、rn及び側方帯域内クロストークチャネルUsを受信し、左帯域内クロストークキャンセルチャネルCL及び右帯域内クロストークキャンセルチャネルCRを生成する。左クロストークキャンセル帯域内チャネルCLは、中央帯域内チャネルTM、rn及び側方帯域内クロストークチャネルUsの合計に基づいて生成され得て、右帯域内クロストークキャンセルチャネルCRは、中央帯域内チャネルTM、rnと側方帯域内クロストークチャネルUsとの差分に基づいて。に基づいて生成されてもよい。側方帯域内チャネルUsは、左及び右の帯域内クロストークチャネルUL、URの側方のコンポーネントであり、帯域内チャネルTLの中央コンポーネントである中央帯域内チャネルTM、rnと結合される。
帯域内・外コンバイナ360は、左帯域内チャネルCLを帯域外チャネルTL、Outと組み合わせて、左出力チャネルOLを生成し、右帯域内チャネルCRを帯域外チャネルTR、Outと組み合わせて出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ302によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークキャンセルチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ302によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークキャンセルチャネルである。これらのクロストークキャンセルチャネルは、オーディオ処理システムの出力として、またはオーディオ処理システムの別のコンポーネント(例えば、クロストークキャンセルによって生じるスペクトル欠陥を調整するクロストーク補償プロセッサ204)への入力として使用し得る。
したがって、左出力チャネルOLは、反対側の音に帰する帯域内チャネルTR、rnの部分の逆数に対応する右対側キャンセルチャネルSRの部分を含み、右出力チャネルORは、反対側の音に帰する帯域内チャネルTL、rnの部分の逆数に対応する左対側キャンセルチャネルSLを含む。この構成においては、右出力チャネルORにしたがってスピーカ110Rが出力する同じ側の音響成分の波面が右耳に到達し、左出力チャネルOLにしたがってスピーカ110Lが出力する対側音響成分の波面を打ち消すことができる。同様に、左耳に到達した左出力チャネルOLに従ってスピーカ110Lが出力した同じ側の音響成分の波面は、右出力チャネルORに従ってスピーカ110Rが出力した反対の側の音響成分の波面をキャンセルすることができる。なお、左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ302によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークキャンセルチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ302によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークキャンセルチャネルである。このように、反対側の音響成分を低減して、空間検出性を高めることができる。
図3Bは、一実施形態に関するクロストークキャンセルプロセッサ304を示す。クロストークキャンセルプロセッサ304は、クロストークキャンセルプロセッサ302と同様であるが、向上された処理効率を含む。クロストークキャンセルプロセッサ304は、帯域内・外ディバイダ310、インバータ320及び322、対側推定器330及び340、及び帯域内・外コンバイナ360を含む。クロストークキャンセルプロセッサ304におけるこれらの構成要素は、クロストークキャンセルプロセッサ302において対応する構成要素と同様に動作する。クロストークキャンセルプロセッサ304は、さらに、対側推定器330及び340に結合されたL/Rtoコンバータ364と、L/RtoSコンバータ364に結合されたM/StoL/Rコンバータ368と、StoL/Rコンバータ368、帯域内・外ディバイダ310、及び帯域内・外コンバイナ360に結合されたコンバイナ370及び372を含む。
L/RtoSコンバータ364は、左対側キャンセルチャネルSLと右対側キャンセルチャネルSRを受信し、左対側キャンセルチャネルSLと右対側キャンセルチャネルSRとの差に基づいて、側方対側キャンセルチャネルSsを生成する。
M/StoL/Rコンバータ368は、側方対側キャンセルチャネルSSとゼロ中央チャネルとを受信し、左対側帯域内チャネルKLと右対側帯域内チャネルKRとを生成する。なお、左対側帯域内チャネルKLは、側方対側キャンセルチャネルSSとゼロ中央チャネルとの合計に基づいて生成され、右対側帯域内チャネルKRは、ゼロ中央チャネルと側方対側キャンセルチャネルSSとの差分に基づいて生成されてもよい。
コンバイナ370は、右対側帯域内チャネルKR及び左帯域内チャネルTL,Inを受信し、右対側帯域内チャネルKRと左帯域内チャネルTL,Inとを加えることによって、左クロストークキャンセル帯域内チャネルCLを生成する。コンバイナ372は、左対側帯域内チャネルKL及右帯域内チャネルTR,Inを受信し、左対側帯域内チャネルKLと右帯域内チャネルTR,Inとを加えることによって、右クロストークキャンセル帯域内チャネルCRを生成する。
帯域内・外コンバイナ360は、左側のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを帯域外のチャネルTL,Outと共に結合して左出力チャネルOLを生成し、右側のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルを帯域外チャネルTR,Outと共に結合し、右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ304により生成されたクロストーク処理信号のうちの左のクロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ304によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右のクロストークがキャンセルされたチャネルである。
図3Cは、一実施形態のクロストークキャンセルプロセッサ306を示す。クロストークキャンセルプロセッサ306は、クロストークキャンセルプロセッサ304と同様であるが、向上された処理効率を含んでいる。クロストークキャンセルプロセッサ306は、帯域内・外ディバイダ310、インバータ320,322、対側推定器330,340及び帯域内・外コンバイナ360を含んでいる。クロストークキャンセルプロセッサ306におけるこれらの構成は、クロストークキャンセルプロセッサ302の対応する構成と同様に作動する。クロストークキャンセルプロセッサ306は、さらに、対側推定器330,340に結合されるL/RtoSコンバータ364を含み、減算器374及びコンバイナ376は、それぞれL/RtoSコンバータ364、帯域内・外ディバイダ310、及び帯域内・外コンバイナ360と結合される。
L/RtoSコンバータ364は、左の対側キャンセルチャネルSL及び右の対側キャンセルチャネルSRを受信し、側方の対側キャンセルチャネルSSを、左の対側キャンセルチャネルSLと右の対側キャンセルチャネルSRとの差分に基づいて生成する。
減算器374は、左帯域内チャネルTL,Inと側方の対側キャンセルチャネルSSを受信し、左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを、側方の対側キャンセルチャネルSSと右帯域内チャネルTL,Inとの差分に基づいて生成する。
コンバイナ376は、右帯域内チャネルTR,Inと側方の対側キャンセルチャネルSSを受信し、右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを、側方の対側キャンセルチャネルSSと右帯域内チャネルTR,Inとの差分に基づいて生成する。
帯域内・外コンバイナ360は、帯域外チャネルTL,Outと共に左帯域内チャネルCLを結合して左出力チャネルOLを生成し、帯域外チャネルTR,Outと共に右帯域内チャネルCRを結合して右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ306によって生成されたクロストーク処理信号のうちの左のクロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ306によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右のクロストークがキャンセルされたチャネルである。
クロストークのキャンセルの一般的な目標は、対照的なラウドスピーカシステムで聞いているときのクロスチャネル信号を知覚的に取り除くことであり、このとき、全体的なクロスチャネル信号は同様に変換される。つまり、左チャネルは、反対側のチャネルと合計される以前の右チャネルと同様に、ディレイされ、フィルタリングされ、反転され、及び縮小される可能性がある。左・右クロスチャネルシグナルの変換において対称性を仮定すると、図3Dから図3Fは、図3Aから図3Cに示すキャンセルプロセッサに関する処理効率が改善されたクロストークキャンセルプロセッサを示すことができる。特に、クロストーク処理は、左帯域内チャネルTL,In及び右帯域内チャネルTR,Inから生成された側方帯域内チャネルTS,Inに適用される一方、中央帯域内チャネルTM,Inは生成されないか、または側方帯域内チャネルTS,Inに適用されるクロストーク処理をバイパスする。
図3Dは、一実施形態による、クロストークキャンセルプロセッサ308を示す。クロストークキャンセルプロセッサ308は、帯域内・外ディバイダ310、L/RtoM/Sコンバータ378、インバータ320、対側推定器330、減算器380、M/StoL/Rコンバータ382、及び帯域内・外コンバイナ360を含む。
帯域内・外ディバイダ310は、入力チャネルXL,XRを、それぞれ帯域内チャネルTL,In,TR,Inと帯域外チャネルTL,Out,TR,Outに分離する。L/RtoM/Sコンバータ378は、帯域内・外ディバイダ310に結合されて、帯域内チャネルTL,In,TR,Inを受信し、側方帯域内チャネルTS,In及び中央帯域内チャネルTM,Inを生成する。側方帯域内チャネルTS,Inは、左帯域内チャネルTL,Inと右帯域内チャネルTR,Inとの差分に基づいて生成されてもよい。また、中央帯域内チャネルTM,Inは、左帯域内チャネルTL,Inと右帯域内チャネルTR,Inとの合計に基づいて生成されてもよい。
インバータ320及び対側推定器330は、協働して側方対側キャンセルチャネルSSを側方帯域内チャネルTS,Inから作成して帯域内中央のチャネルTM,Inによって生じる対側音響成分を補償する。特に、インバータ320は、側方帯域内チャネルTS,Inを受信して極性を反転させて側方帯域内チャネルTS,In‘を生成する。対側推定器330は、側方帯域内チャネルTS,In‘を受信し、フィルタリングを通過した対側音響成分に一致する反転された側方帯域内チャネルTS,In‘の部分を抽出する。フィルタリングは反転された側方帯域内チャネルTS,In‘で実行されるので、対側推定器330によって抽出された部分は反対側に音響成分によって生じる側方帯域内チャネルTS,Inの反転した部分になる。したがって、対側推定器330によって抽出された部分は、側方対側キャンセルチャネルSSになる。
減算器30は、側方帯域内チャネルTS,In及び側方対側キャンセルチャネルSSを受信し、側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCSを側方帯域内チャネルTS,In及び側方対側チャネルSSとの差分に基づいて生成する。いくつかの実施形態において、インバータ320及び対側推定器330は、異なる順序で実施される。
M/StoL/Rコンバータ382は、中央帯域内チャネルTM,In及び側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCSを受信し、左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCL及び右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを生成する。例えば、左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLは、中央帯域内チャネルTM,Inと側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCSの加算に基づいて生成されてもよく、右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRは、中央帯域内チャネルTM,Inと側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCSとの差分に基づいて生成されてもよい。
帯域内・外コンバイナ360は、帯域外チャネルTL,Outと共に左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを結合して左出力チャネルOLを生成し、帯域外チャネルTR,Outと共に右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを結合して右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ308によって生成されたクロストーク処理信号のうちの左クロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ308によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右クロストークがキャンセルされたチャネルである。
図3Eは、一実施形態に関するクロストークキャンセルプロセッサ312を示す。クロストークキャンセルプロセッサ312は、クロストークキャンセルプロセッサ308のように、同様の処理効率を伴う。クロストークキャンセルプロセッサ312は、帯域内・外ディバイダ310、インバータ320、対側推定器330及び帯域内・外ディバイダ360を含む。クロストークキャンセルプロセッサ312におけるこれらの構成要素は、クロストークキャンセルプロセッサ308において対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークキャンセルプロセッサ312は、さらに、帯域内・外ディバイダ310及びインバータ320に結合されたL/RtoSコンバータ384を含み、M/StoL/Rコンバータ386は対側推定器330に結合され、そしてコンバイナ388、390はM/StoL/Rコンバータ386、帯域内・外ディバイダ310及び帯域内・外コンバイナ360に結合される。L/RtoSコンバータ384は、左帯域内チャネルTL,In及び右帯域内チャネルTR,Inを受信し、左帯域内チャネルTL,In及び右帯域内チャネルTR,Inとの差分に基づいて側方帯域内チャネルTSを作成する。側方帯域内チャネルTS,Inは、インバータ320及び対側推定器330によって処理されて、側方対側キャンセルチャネルSSが生成される。M/StoL/Rコンバータ386は、側方対側キャンセルチャネルSSを対側推定器330及びゼロ中央チャネルから受信し、左対側帯域内チャネルKL及び右対側帯域内チャネルKRを生成する。左対側帯域内チャネルKLは、側方対側キャンセルチャネルSSとゼロ中央チャネルとの合計に基づいて作成されてもよく、右対側帯域内チャネルKRは、ゼロ中央チャネルと側方対側キャンセルチャネルSSとの差分に基づいて生成されてもよい。
コンバイナ388は、右対側帯域内チャネルKR及び左帯域内チャネルTL,Inを受信し、右対側帯域内チャネルKRと左帯域内チャネルTL,Inとを加えることによって右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルTR,Inを生成する。コンバイナ390は、左対側帯域内チャネルKL及び右帯域内チャネルTR,Inを受信し、左対側チャネルKLと右帯域内チャネルTR,Inとを加えることによって右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを生成する。
帯域内・外コンバイナ360は、左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLと共に左帯域外チャネルTL,Outを結合して左出力チャネルOLを生成し、帯域外チャネルTL,Outと共に右のクロストークがキャンセルされたCRを結合して右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ312によって生成されたクロストーク処理信号のうち、左のクロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ312によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右のクロストークがキャンセルされたチャネルである。
図3Fは、一実施形態に関するクロストークキャンセルプロセッサ314を示す。クロストークキャンセルプロセッサ314は、クロストークキャンセルプロセッサ312のようであるが、処理効率の向上を含む。クロストークキャンセルプロセッサ314は、帯域内・外ディバイダ310、L/RtoSコンバータ384、インバータ320、対側推定器330及び帯域内・外コンバイナ360を含む。クロストークキャンセルプロセッサ314におけるこれらの構成要素は、クロストークキャンセルプロセッサ312の対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークキャンセルプロセッサ312は、さらに、それぞれ対側推定器330、帯域内・外ディバイダ310及び帯域内・外コンバイナ360に結合された減算器392及びコンバイナ394を含む。減算器392は、帯域内・外ディバイダ310から左帯域内チャネルTL,Inを、対側推定器330から側方キャンセルチャネルSSを受信し、左帯域内チャネルTL,Inと側方キャンセルチャネルSSとの差分に基づいて側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを生成する。コンバイナ394は、帯域内・外ディバイダ310から右帯域内チャネルTR,Inを、対側推定器330から側方対側キャンセルチャネルSSを受信し、右帯域内チャネルTR,Inと側方キャンセルチャネルSSとの合計に基づいて右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを生成する。
帯域内・外コンバイナ360は、左帯域外チャネルTL,Outと共に左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを結合して左出力チャネルOLを生成し、帯域外チャネルTR,Outと共に右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを結合して右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ314によって生成されたクロストーク処理信号のうちの左のクロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ314によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右のクロストークがキャンセルされたチャネルである。
図3Aから図3Fに示すように、クロストークキャンセルプロセッサは、入力チャネルXL,XRから同等の出力チャネルOL,ORを生成することが可能である。Aを、対側推定器330または対側推定器340の機能をカプセル化する線形演算(例えば、フィルタ)とする。図3Aに示すクロストークキャンセルプロセッサ302の出力チャネルOL,ORは、それぞれ式4及び式5によって定義されてもよい。
図3Bに示すクロストークキャンセルプロセッサ304からの出力チャネルOLまたはORは、式6及び式7によって定義されてもよい。
図3Cに示すクロストークキャンセルプロセッサ306からの出力チャネルOL及びORは、式8及び式9によって定義されてもよい。
図3Dに示すクロストークキャンセルプロセッサ308の出力OL及びORは、それぞれ式10及び11によって定義されてもよい。
図3Eに示すキャンセルプロセッサ312からの出力チャネルOL及びORは、それぞれ式12及び13によって定義されてもよい。
図3Fに示すクロストークキャンセルプロセッサ314の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式14及び15によって定義されてもよい。
代数操作を用いると、左出力チャネルOLの式4、6、8、10、12、及び14は同等であり、右出力チャネルORの式5、7、9、11、13、及び14は同等である。
クロストークシミュレーションプロセッサの例
図4Aから図4Fは、クロストークシミュレーションプロセッサの例を示す。クロストークシミュレーションプロセッサは、ヘッドマウンテッドスピーカ130L及び130Rのようなラウドスピーカのリスニング経験を提供する。各クロストークシミュレーションプロセッサは、図2Aから図2Cに示すオーディオ処理システムのクロストークプロセッサ202の例である。
図4Aは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ402を示す。クロストークシミュレーションプロセッサ402は、左チャネルXL及び右チャネルXRを受信し、チャネルXL,XR上でシミュレーションを実行して左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。
クロストークシミュレーションプロセッサ402は、左ヘッドシャドウローパスフィルタ422、左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424、左クロストークディレイ426及び左ヘッドシャドウゲイン428を含み、左入力チャネルXLを生成する。クロストークシミュレーションプロセッサ402は、さらに、右ヘッドシャドウローパスフィルタ432、右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434、右クロストークディレイ436及び右ヘッドシャドウゲイン438を含み、右入力チャネルXRを生成する。クロストークシミュレーションプロセッサ402は、さらに、コンバイナ440及び442、L/RtoMコンバータ444、L/RtoSコンバータ446及びM/StoL/Rコンバータ448を含む。
左ヘッドシャドウローパスフィルタ422及び左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424は、左入力チャネルXLを受信し、聞き手の頭を通過した後の信号の周波数応答をモデル化する変調を適用する。ローパスフィルタ及びハイパスフィルタの両方の使用は、聞き手の頭を通る周波数応答のより正確なモデルの結果を得うる。いくつかの実施形態において、ローパスフィルタ422またはハイパスフィルタ424の一つだけが使用される。左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424の出力は、左クロストークディレイ426に提供され、これは、左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424の出力に時間ディレイを適用する。時間ディレイは、同側の音響成分に対して反対側の音響成分が横断するトランスオーラル距離を表す。周波数応答は、聞き手の頭による音波変調の周波数依存特性を決定するための経験的な実験に基づいて生成することができる。例えば、図1Bを参照するように、右耳125Rに伝わる反対側の音響成分112Lは、トランスオーラル伝搬からの音波変調を表す周波数応答を用いて同じ側の音響成分118Lをフィルタリングすることによって左耳125Lに伝わる同じ側の音響成分118Lから導出することができ、時間ディレイは、増加された反対側の音響成分112Lが右耳125Rに到達するまでに横断する距離(同じ側の音響成分118Rに関する)のモデルである。左ヘッドシャドウゲイン428は、左クロストークディレイ426の出力にゲインを適用して、左クロストークシミュレーションチャネルWLを生成する。
同様に、右インプットチャネルXR、右ヘッドシャドウローパスフィルタ432及び右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434は、右入力チャネルXRを受信し、聞き手の頭の周波数応答のモデルの変調を適用する。右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434の出力は、右クロストークディレイ436に提供され、時間ディレイに適用される。右ヘッドシャドウゲイン438は、右クロストークディレイ436の出力にゲインを適用し、右クロストークシミュレーションチャネルWRを生成する。
いくつかの実施形態において、ヘッドシャドウローパスフィルタ422及び432は、2032Hzのカットオフ周波数を有している。ヘッドシャドウハイパスフィルタ424及び434は、150Hzのカットオフ周波数を有している。クロストークディレイ426及び436は、0.792msのディレイを適用する。ヘッドシャドウゲイン428及び438は、14.4dBのゲインを適用する。ヘッドシャドウフィルタ、クロストークディレイ及び左右の各チャネルのヘッドシャドウゲインの適用は、異なる命令で実行されてもよい。
いくつか実施形態において、ヘッドシャドウフィルタは、ヘッドシャドウゲインと統一される。例えば、ヘッドシャドウローパスフィルタ422及び432は、フィルタリング機能の一部として、ヘッドシャドウゲイン428及び438のゲインを適用することができる。その意味で、信号またはチャネルにフィルタを適用することは、周波数に基づく調整に加えて、ゲインレベルの広帯域調整を含み得る。
コンバイナ440は、右ヘッドシャドウゲイン438及びL/RtoSコンバータ446に結合される。コンバイナ440は、左入力チャネルXL及び右クロストークシミュレーションチャネルWRを受信し、左入力チャネルXLと右クロストークシミュレーションチャネルWRとを加えることによって左クロストークチャネルVLを生成する。入力チャネルXLと右クロストークシミュレーションチャネルWR。コンバイナ442は、左ヘッドシャドウゲイン428及びL/RtoSコンバータ446に結合される。コンバイナ442は、右入力チャネルXR及び左クロストークシミュレーションチャネルWLを受信し、右入力チャネルXRと左クロストークシミュレーションチャネルWLとを加えることによって右クロストークチャネルVRを生成する。
L/RtoSコンバータ446は、左クロストークチャネルVL及び右クロストークチャネルVRを受信し、左クロストークチャネルVLと右クロストークチャネルVRとの差分に基づいて側方クロストークチャネルVSを生成する。
L/RtoMコンバータ444は、M/StoL/Rコンバータ448に結合される。L /RtoMコンバータ444は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRを受信し、左入力チャネルXLと右入力チャネルXRとの合計に基づいて中央チャネルXMを生成する。
M/StoL/Rコンバータ448は、L/RtoMコンバータ444及びL/RtoSコンバータ446に結合される。M/StoL/Rコンバータ448は、側方クロストークチャネルVS及び中央チャネルXMを受信し、左出力チャネルOLと右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、側方クロストークチャネルVSと中央チャネルXMとの合計に基づいて生成され得て、右出力チャネルORは、側方クロストークチャネルVSと中央チャネルXMとの間の差分に基づいて生成され得る。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ402によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ402によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Bは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ404を示している。クロストークシミュレーションプロセッサ404は、クロストークシミュレーションプロセッサ402と同様であるが、向上された処理効率を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ404は、左ヘッドシャドウローパスフィルタ422、左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424、左クロストークディレイ426、左ヘッドシャドウゲイン428、右ヘッドシャドウローパスフィルタ432、右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434、右クロストークディレイ436及び右ヘッドシャドウゲイン438を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ404におけるこれらの構成要素は、クロストークシミュレーションプロセッサ402において対応する構成要素と同様に動作する。クロストークシミュレーションプロセッサ404はさらに、左ヘッドシャドウゲイン428及び右ヘッドシャドウゲイン438に結合されたL/RtoSコンバータ450、L/RtoSコンバータ450に結合されたM/StoL/Rコンバータ452を含み、コンバイナ454及び456はそれぞれ、M/StoL/Rコンバータ452に結合されている。
L/RtoSコンバータ450は、左クロストークシミュレーションチャネルWL及び右クロストークシミュレーションチャネルWRを受信し、左クロストークシミュレーションチャネルWLと右クロストークシミュレーションチャネルWRとの差分に基づいて側方クロストークシミュレーションチャネルWSを生成する。
M/StoL/Rコンバータ452は、側方クロストークシミュレーションチャネルWS及びゼロ中央チャネルを受信し、左クロストークチャネルDL及び右クロストークチャネルDRを生成する。左クロストークチャネルDLは、側方クロストークシミュレーションチャネルWSとゼロ中央チャネルとの合計に基づいて生成してもよく、右クロストークチャネルDRは、ゼロ中央チャネルと側方クロストークシミュレーションチャネルWSとの差分に基づいて生成してもよい。
コンバイナ454は、右クロストークチャネルDR及び左入力チャネルXLを受信し、右クロストークチャネルDRと左入力チャネルXLとを加えることによって左出力チャネルOLを生成する。コンバイナ456は、左クロストークチャネルDL及び右入力チャネルXRを受信し、左クロストークチャネルDLと右入力チャネルXRとを加えることによって右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ404によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ404によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Cは、一実施形態におけるクロストークシミュレーションプロセッサ406を示す。クロストークシミュレーションプロセッサ406は、クロストークシミュレーションプロセッサ404と同様であるが、向上された処理効率を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ406は、左ヘッドシャドウローパスフィルタ422、左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424、左クロストークディレイ426、左ヘッドシャドウゲイン428、右ヘッドシャドウローパスフィルタ432、右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434、右クロストークディレイ436、右ヘッドシャドウゲイン438、及びL/RtoSコンバータ450を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ406におけるこれらの構成要素は、クロストークシミュレーションプロセッサ404の対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークシミュレーションプロセッサ406は、さらに、それぞれL/RtoSコンバータ450に結合された減算器458及びコンバイナ460を含む。減算器458は、左入力チャネルXL及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、左入力チャネルXLと側方クロストークシミュレーションチャネルWSとの差分に基づいて左出力チャネルOLを生成する。コンバイナ460は、右入力チャネルXR及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、右入力チャネルXR及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSの合計に基づいて、右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ406によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ406によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
クロストークシミュレーションの一般的な目標は、ヘッドフォンで対称ラウドスピーカシステムを聞く体験を知覚的にシミュレートすることであり、この場合、クロスチャネル信号全体が同じように変換される。つまり、左チャネルは、反対のチャネルに合計される前に、右チャネルと同じようにディレイされ、フィルタリングされ、反転され、及び縮小される可能性がある。左/右のクロスチャネル信号変換において対称性を仮定すると、図4Dから図4Fは、4Aから4Cに示すクロストークシミュレーションプロセッサと比較して向上された処理効率を有するクロストークシミュレーションプロセッサの例を示すことができる。特に、クロストーク処理は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRから生成された側方チャネルXSに適用され、一方、中央チャネルXMは、生成されないか、または側方チャネルXSに適用されるクロストーク処理をバイパスする。
図4Dは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ408を示している。クロストークシミュレーションプロセッサ408は、L/RtoM/Sコンバータ462、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466、側方クロストークディレイ468、側方ヘッドシャドウゲイン470、減算器472及びM/StoL/Rコンバータ474を含む。
L/RtoM/Sコンバータ462は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRを受信し、中央チャネルXM及び側方チャネルXSを生成する。側方チャネルXSは、左入力チャネルXLと右入力チャネルXRとの差分に基づいて生成され得る。中央チャネルXMは、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRの合計に基づいて生成され得る。
側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464及び側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466は、側方チャネルXSを受信し、聞き手の頭部を通過した後の信号の周波数応答をモデル化する変調を適用する。ローパスフィルタとハイパスフィルタの両方の使用は、聞き手の頭を通る周波数応答のより正確なモデルの結果が得られうる。いくつかの実施形態において、ローパスフィルタ464またはハイパスフィルタ466のうちの1つだけが使用される。側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466の出力は、側方クロストークディレイ468に提供され、側方クロストークディレイ468は、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466の出力に時間ディレイを適用する。側方ヘッドシャドウゲイン470は、側方クロストークディレイ426の出力にゲインを適用し、側方クロストークシミュレーションチャネルWSを生成する。ヘッドシャドウフィルタ、クロストークディレイ及び側方チャネルXSのヘッドシャドウフィルタの適用は、異なる命令で実行されてもよい。
減算器472は、L/RtoM/Sコンバータ462及び側方ヘッドシャドウゲイン470に結合される。減算器472は、側方チャネルXS及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、側方チャネルXS及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSの差分に基づいて側方クロストークシミュレーションチャネルGSを生成する。
M/StoL/Rコンバータ474は、L/RtoM/Sコンバータ462及び減算器472に結合される。M/StoL/Rコンバータ474は、中央チャネルXM及び側方クロストークチャネルGSを受信し、左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、中央チャネルXMと側方クロストークチャネルGSとの合計に基づいて生成されてもよく、右出力チャネルOLは、中央チャネルXMと側方クロストークチャネルGSとの差分に基づいて生成されてもよい。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ408によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ408によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Eは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ410を示している。クロストークシミュレーションプロセッサ410は、クロストークキャンセルシミュレーション408と同様であり、同等の処理効率を持つ。クロストークシミュレーションプロセッサ410は、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466、側方クロストークディレイ468、及び側方ヘッドシャドウゲイン470を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ410におけるこれらの構成要素は、クロストークシミュレーションプロセッサ408において対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークシミュレーションプロセッサ410は、さらに、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464に結合されたL/RtoSコンバータ476、側方ヘッドシャドウゲイン470に結合されたM/StoL/Rコンバータ478、M/StoL/Rコンバータ478に結合されたコンバイナ408及びM/StoL/Rコンバータ478に結合されたコンバイナ482を含む。L/RtoSコンバータ476は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRを受信し、左入力チャネルXLと右入力チャネルXRとの差分に基づいて側方チャネルXSを生成する。側方チャネルXSは、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466、側方クロストークディレイ468、及び側方ヘッドシャドウゲイン470によって処理されて、側方クロストークシミュレーションチャネルWSを生成する。
M/StoL/Rコンバータ478は、側方クロストークシミュレーションチャネルWS及びゼロ中央チャネルを受信し、左クロストークシミュレーションチャネルWL及び右クロストークシミュレーションチャネルWRを生成する。左クロストークシミュレーションチャネルWLは、側方クロストークシミュレーションチャネルWSとゼロ中央チャネルの合計に基づいて生成され得て、右クロストークシミュレーションチャネルWRは、ゼロ中央チャネルと側方クロストークシミュレーションチャネルWSとの差分に基づいて生成され得る。
コンバイナ480は、左入力チャネルXL及び右チャネルWRを受信し、左入力チャネルXLと右クロストークシミュレーションチャネルWRとを加えることによって、左出力チャネルOLを生成する。コンバイナ482は、右入力チャネルXR及び左チャネルクロストークシミュレーションWLを受信し、右入力チャネルXRと左クロストークシミュレーションチャネルWLとを加えることによって右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ410によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ410によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Fは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ412を示している。クロストークシミュレーションプロセッサ412は、クロストークシミュレーションプロセッサ410と同様であるが、向上された処理効率を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ412は、L/RtoSコンバータ476、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466、側方クロストークディレイ468及び側方ヘッドシャドウゲイン470を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ41におけるこれらの構成要素は、クロストークシミュレーションプロセッサ410において対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークシミュレーションプロセッサ412は、さらに、それぞれ側方ヘッドシャドウゲイン470に結合された減算器484及びコンバイナ486を含む。減算器484は、左入力チャネルXL及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、左入力チャネルXLと側方クロストークシミュレーションチャネルWSとの差分に基づいて左出力チャネルOLを生成する。コンバイナ486は、右入力チャネルXR及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、右入力チャネルXR及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSの合計に基づいて、右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ412によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ412によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Aから図4Fに示されるクロストークシミュレーションプロセッサは、入力チャネルXL、XRから同等の出力チャネルOL、またはORを生成することができる。Aをヘッドシャドウローパスフィルタ、ヘッドシャドウハイパスフィルタ、クロストークディレイ、及びヘッドシャドウゲインの機能をカプセル化する線形演算(フィルタ等)とする。図4に示されるクロストークシミュレーションプロセッサ402の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式4及び5によって定義されてもよい。図4Bに示すクロストークシミュレーションプロセッサ404の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式6及び7によって定義されてもよい。図4Cに示すクロストークシミュレーションプロセッサ406の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式8及び9によって定義されてもよい。図4Dに示すクロストークシミュレーションプロセッサ408の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式10及び11によって定義されてもよい。図4Eに示すクロストークシミュレーションプロセッサ410の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式12及び13によって定義されてもよい。図4Fに示すクロストークシミュレーションプロセッサ412の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式14及び15によって定義されてもよい。左出力チャネルOLの式4、6、8、10、12、及び14は同等であり、右出力チャネルORの式5、7、9、11、13、及び14は同等である。
クロストーク補償プロセッサの例
図5は、一実施形態に関するクロストーク補償プロセッサ500の一例を示す。クロストーク補償プロセッサ500は、図2Aから図2Cに示されるオーディオ処理システムのクロストーク補償プロセッサ204の一例である。クロストーク補償プロセッサ500は、左及び右の入力チャネルを受信し、入力チャネルにクロストーク補償を適用することによって、左及び右の出力チャネルを生成する。特に、クロストーク補償プロセッサ500は、オーディオ信号の側方チャネルにクロストーク補償を適用して、側方チャネルでのクロストーク処理によって引き起こされるスペクトルアーチファクトを補償し、オーディオ信号の中央チャネルは、側方チャネルに適用されるクロストーク補償をバイパスする。
クロストーク補償プロセッサ500は、L/RtoM/Sコンバータ512、側方コンポーネントプロセッサ530、及びM/StoL/Rコンバータ514を含む。L/RtoM/Sコンバータ512は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRを受信し、入力チャネルXL,XRの合計に基づいて中央チャネルXmを生成し、そして、入力チャネルXL、XRの差分に基づいて側方チャネルXSを生成する。
側方コンポーネントプロセッサ530は、側方フィルタ550(a)、550(b)から550(m)等の複数のフィルタ550を含む。側方コンポーネントプロセッサ530は、空間チャネルXSを処理することによって側方クロストーク補償チャネルZSを生成する。いくつかの実施形態では、クロストーク処理を伴う空間XSの周波数応答プロットは、シミュレーションを通じて得ることができる。周波数応答プロットを分析することにより、クロストーク処理のアーティファクトとして発生する所定のしきい値(例えば、10dB)を超える周波数応答プロットのピークまたはトラフ等のスペクトル欠陥を推定できる。側方クロストーク補償チャネルZSは、推定されたピークまたはトラフを補償するために、側方コンポーネントプロセッサ530によって生成され得る。具体的には、クロストーク処理で適用される特定のディレイ、フィルタリング周波数、及びゲインに基づいて、ピークとトラフとは、周波数応答で上下にシフトし、スペクトルの特定の領域でエネルギーの可変増幅及び/または減衰を引き起こす。側方フィルタ550のそれぞれは、1つまたは複数のピーク及びトラフを調整するように構成することができる。いくつかの実施形態では、側方コンポーネントプロセッサ530は、異なる数のフィルタを含み得る。
いくつかの実施形態において、側方フィルタ550は、式(16)によって定義される伝達関数を有するバイクアッドフィルタを含んでもよい。
ここで、Xは入力ベクトル、Yは出力である。他のトポロジーを使用することもでき、その最大語長と飽和状態に依存する。
このとき、バイクアッドは、実数値の入力と出力を持つ所定の二次フィルタとして使用できる。離散時間フィルタを設計するために、連続時間フィルタが設計され、双一次変換によって離散時間に変換される。さらに、中心周波数と帯域幅の結果として生じるシフトを、周波数ワーピングを使用して補償することができる。
例えば、ピーキングフィルタは、式18で定義されるS平面伝達関数を持ち得る。
ここで、sは複素変数、Aはピークの振幅及びQはフィルタの”品質係数”、そしてデジタルフィルタの係数は、以下によって定義される。
M/StoL/Rコンバータ514は、中央チャネルXM及び側方クロストーク補償チャネルZSを受信し、左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、中央チャネルXMと側方クロストーク補償チャネルZSとの合計に基づいて生成され得る。右出力チャネルORは、中央チャネルXMと側方クロストーク補償チャネルZSと差分に基づいて生成され得る。左出力チャネルOLは、クロストーク補償プロセッサ500によって生成されたクロストーク補償信号の左クロストーク補償チャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーション補償プロセッサ500によって生成されたクロストーク補償信号の右クロストーク補償チャネルである。
クロストーク補償の例
図6〜12Bは、様々なクロストークディレイ及びゲインの結果として、側方(または空間的)及び中央(または非空間的)信号成分によって生じるコムフィルタリングアーチファクトの周波数プロットを示す。中央コンポーネントにおけるスペクトルアーチファクトは、クロストーク処理を側方コンポーネントに適用しながら、中央コンポーネントをクロストーク処理(ここではクロストークキャンセル)から完全に削除することによって削除してもよい。いくつかの実施形態では、クロストーク補償は、側方コンポーネントに補正フィルタを使用して、側方コンポーネントに適用されたクロストーク処理から生じるスペクトルアーチファクトを選択的に除去するために適用される。 結果として得られる信号は、意図された空間クロストーク特性(シミュレーションまたはキャンセル)の大部分を保持しながら、スペクトル的に明確な中央チャネルを示します。
図6〜12Bは、異なるスピーカ角度及びスピーカサイズ構成について、補正フィルタを含むクロストーク補償処理をクロストークがキャンセルされた側方チャネルに選択的に適用しながら、クロストーク補償処理から中央コンポーネントを除去するときの側方チャネル及び中央チャネル上の効果を示す。このように、側方チャネルの周波数応答を選択的に平坦化しながら、変更されていない中央チャネルが実現され、最小限に着色され、最小限にゲイン調整されたクロストーク処理の出力が提供される。補償フィルタは、側方チャネルに独立して実装され、中央チャネルで発生するすべてのコムフィルターのピーク/トラフを回避し、側方チャネルで最も低いコムフィルターのピーク/トラフを除くすべてを補正する。側方チャネルのクロストーク補償のパラメータを、手順に沿って導出するか、耳と手、またはその組み合わせにより調整できる。
図6は、一実施形態に関するクロストークキャンセルが適用された中央及び側方チャネルの周波数プロット600を示す。ライン602は、ホワイトノイズ入力信号である。ライン604は、クロストークキャンセル後の入力信号の中央チャネルである。ライン606は、クロストークキャンセル後の入力信号の側方チャネルである。スピーカ角度が10度で、小型のスピーカを設定する場合、クロストークキャンセルには、1サンプル@48KHzサンプリングレートのクロストークディレイ、−3dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスとで定義される帯域内周波数範囲が含まれ得る。
図7は、一実施形態に関する、側方チャネルに適用されるクロストークキャンセルの周波数プロット700を示す。プロット700に示されるクロストークキャンセルは、側方チャネルのみに適用されることを除き、プロット600に示されるクロストークキャンセルと同様のパラメータを使用する。特に、スピーカ角度が10度で、小型のスピーカを設定する場合、クロストークキャンセルは、1サンプル@48KHzのサンプリングレートのクロストークディレイ、−3dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスによって定義される帯域内周波数範囲を含み得る。ライン702は、ホワイトノイズの入力信号である。ライン706は、クロストークキャンセル後の入力信号の側方チャネルである。線分704は、クロストークキャンセルをバイパスした入力信号の中央チャネルである。周波数プロット700の中央チャネルと側方チャネルには、クロストーク補償は適用されない。
図8は、一実施形態に関する中央チャネル及び側方チャネルに適用されるクロストークキャンセルの周波数プロット800を示す。プロット800に示されたクロストークキャンセルは、異なるスピーカ角度及びクロスチャネルディレイが使用されるという点で、プロット600に示されたクロストークキャンセルとは異なる。特に、スピーカの角度が30度で、小型のスピーカを設定する場合、クロストークキャンセルは、3サンプル@48KHzのサンプリングレートのクロストークディレイ、−6.875dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスによって定義される帯域内周波数範囲を含み得る。ライン802は、ホワイトノイズの入力信号である。ライン804は、クロストークキャンセルを伴う入力信号の中央チャネルである。ライン806は、クロストークキャンセルを伴う入力信号の側方チャネルである。
図9は、一実施形態に関する側方チャネルに適用されるクロストークキャンセル及びクロストーク補償の周波数プロット900を示す。プロット900に示すクロストークキャンセルは、プロット800に示すクロストークキャンセルと同様のパラメータを使用するが、側方チャネルにのみ適用される。特に、スピーカの角度が30度で、小型スピーカの設定の場合、クロストークキャンセルは、3サンプル@48KHzのサンプリングレートのクロストークディレイ、−6.875dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスによって定義される帯域内周波数範囲を含み得る。
ライン902は、入力信号のホワイトノイズである。ライン904は、クロストークキャンセル及びクロストーク補償をバイパスする入力信号の中央チャネルである。ライン906は、クロストークキャンセル及びクロストーク補償後の入力信号の側方チャネルである。クロストーク補償は、プロット800のライン806によって示されるクロストークキャンセル側方チャネルからライン906が生成される結果となる。クロストーク補償のため、側方チャネルに2つの側方フィルタが適用される。一般に、クロストーク補償プロセッサにより適用される側方フィルタの数、及びそれらのパラメータは、変化してもよい。
図10は、一実施形態に関する中央チャネル及び側方チャネルに適用されるクロストークキャンセルの周波数プロット1000を示す。プロット1000に示されるクロストークキャンセルは、異なるスピーカ角度及びクロスチャネルディレイが使用されるという点で、プロット600及び800に示されるクロストークキャンセルとは相違する。
特に、スピーカ角度が50度で、小型のスピーカをー設定した場合、クロストークキャンセルには、5サンプル@48KHzサンプリングレートのクロストークディレイ、−8.625dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスで定義される帯域内周波数範囲が含まれ得る。ライン1002は、入力信号のホワイトノイズである。ライン1004は、クロストークキャンセルを伴う入力信号の中央チャネルである。ライン1006は、クロストークキャンセルを伴う入力信号の側方チャネルである。
図11は、一実施形態に関する側方チャネルに適用されるクロストークキャンセル及びクロストーク補償の周波数プロット1100を示す。プロット1100に示されるクロストークキャンセルは、プロット1000に示されるクロストークキャンセルと同様のパラメータを使用するが、側方チャネルにのみ適用される。特に、スピーカ角度が50度で、小型のスピーカを設定する場合、クロストークキャンセルには、5サンプル@48KHzサンプリングレートのクロストークディレイ、−8.625dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスで定義される帯域内周波数範囲が含まれ得る。
ライン1102は、入力信号のホワイトノイズである。ライン1104は 、クロストークキャンセル及びクロストーク補償をバイパスする入力信号の中央チャネルである。
ライン1106は、クロストークキャンセル及びクロストーク補償後の入力信号の側方チャネルである。クロストーク補償は、プロット1000のライン1006によって示されるクロストークキャンセル側方チャネルからライン1106が生成される結果となる。クロストーク補償のため、4.000Hzの中心周波数、8.0dBのゲイン、及び2.0Qを有する第1ノッチフィルタと、8.800Hzの中心周波数、−2.0dBのゲイン及び2.0Qを有する第2ノッチフィルタと、15.800Hzの中心周波数、1.5dBのゲイン及び2.5Qを有する第3ノッチフィルタと、を含む3つの側方フィルタが側方チャネルに適用される。クロストーク補償プロセッサにより適用される側方フィルタの数、及びそれらのパラメータは、変化してもよい。
処理の例
図12は、一実施形態に関するクロストーク処理及びクロストーク補償のためのプロセス1200のフローチャートを示す。プロセス1200は、より少ないまたは追加のステップを含んでもよく、そしてステップは、異なる順序で実行されてもよい。
オーディオ処理システムは、左チャネル及び右チャネルを含むオーディオ信号を受信する1205。オーディオ信号は、左スピーカ用に混合された左チャネルと、右スピーカ用に混合された右チャネルとを伴うステレオオーディオ信号Xであってもよい。
オーディオ処理システムは、左及び右のチャネルの側方チャネルにクロストーク処理を適用し、クロストーク処理信号を生成する1210。クロストーク処理は、クロストークキャンセルまたはクロストークシミュレーションを含んでもよい。中央チャネル及び側方チャネルは、クロストーク処理をバイパスする。
クロストークキャンセルの場合、オーディオ処理システムは、それぞれ、図3A、3B、3C、3D、3E、及び3Fに示されるクロストークキャンセルプロセッサ302、304、306、308、312、及び314等のクロストークキャンセルプロセッサを含んでもよい。これらのクロストークキャンセルプロセッサは、中央チャネルをバイパスしながら側方チャネルにクロストークキャンセル処理を適用するために異なる方法で動作する。例えば、クロストークキャンセルプロセッサ302、304、及び306は、それぞれインバータ及び対側推定器を、左及び右チャネルから生成された左帯域内チャネルTL、rn及び右帯域内チャネルTR、rnに適用し、さらに、図3Aから3Cを参照して上述したように処理し、中央チャネルをバイパスする一方、側方チャネルにクロストークキャンセル処理が適用される結果を得る。他の実施形態において、クロストークキャンセルプロセッサ308、312、及び314は、それぞれインバータ及び対側推定器を左及び右のチャネルから生成された側方帯域内チャネルTS、rnに適用し、さらに図3Dから3Fを参照して上記したように処理し、中央チャネルをバイパスする一方、側方チャネルにクロストークキャンセル処理が適用される結果を得る。
クロストークシミュレーションの場合、オーディオ処理システムは、それぞれ図4A、4B、4C、4D、4E、及び4Fに示すクロストークシミュレーションプロセッサ402、404、406、408、410、及び412のようなクロストークシミュレーションプロセッサを含んでもよい。これらのクロストークシミュレーションプロセッサは、異なる方法で動作して、クロストークシミュレーション処理を左右のチャネルの側方チャネルに適用する。例えば、クロストークシミュレーションプロセッサ402、404及び406は、それぞれ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、クロストークディレイ、及びゲインを左チャネルXL及び右チャネルXRのそれぞれに適用し、その後、さらに、図4Aから4Cを参照して上記したように処理し、中央チャネルをバイパスする一方、側方チャネルにクロストークシミュレーション処理を適用する結果を得る。他の実施形態において、クロストークシミュレーションプロセッサ408、410及び412は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、クロストークディレイ及びゲインを左及び右チャネルから生成された側方チャネルXSにそれぞれ適用し、さらに、図4Dから図4Fを参照して上記したように処理し、中央チャネルをバイパスする一方、側方チャネルにクロストークシミュレーション処理を適用する結果を得る。
オーディオ処理システムは、クロストーク補償処理を側方チャネルに適用し1215、クロストーク補償信号を生成する。側方チャネルに適用されるクロストーク補償処理は、側方チャネルに適用されるクロストーク処理によって引き起こされるスペクトル欠陥を調整する。中央チャネルは、クロストーク補償処理をバイパスしてもよい。オーディオ処理システムは、図5に示されるようなクロストーク補償プロセッサ500を含んでもよい。クロストーク補償プロセッサ500は、図5において入力XL及びXRとして示されるクロストーク処理の出力を受信し、チャネルXL及びXRから中央チャネルXM及び側方チャネルXSを生成する。側方チャネルXSは側方チャネルプロセッサ530によって処理される一方、中央チャネルXMは、この処理をバイパスする。
オーディオ処理システムは、クロストーク処理信号とクロストーク補償信号とを用いて、左出力チャネルと右出力チャネルを生成する1220。また、左出力チャネル及び右出力チャネルは、クロストーク処理及びクロストーク補償処理をバイパスした中央チャネルを用いて生成してもよい。例えば、左出力チャネルは、側方チャネルに適用されたクロストーク処理及びクロストーク補償処理の結果と、クロストーク処理及びクロストーク補償処理をバイパスする中央チャネルとの合計に基づいて生成されてもよい。また、右出力チャネルは、クロストーク処理及びクロストーク補償処理をバイパスした中央チャネルと、側方チャネルに適用されたクロストーク処理及びクロストーク補償処理の結果との差分に基づいて生成されてもよい。
いくつかの実施形態において、クロストーク処理信号及びクロストーク補償信号のそれぞれは、左及び右のチャネルを含んでもよく、これらは、左及び右のアウトチャネルをそれぞれ生成するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、クロストーク補償は、図2Aのオーディオ処理システム200が示すように、クロストーク処理の後に実行されてもよい。ここでは、クロストーク処理信号は、クロストーク補償処理の入力として使用され、クロストーク補償処理の出力は、左出力チャネル及び右出力チャネルの生成に使用される。
いくつかの実施形態では、クロストーク処理とクロストーク補償は並行して実行され、図2Bのオーディオ処理システム210が示すように、それらの左出力チャネルは(例えば、コンバイナ206によって)結合されて左出力チャネルを生成し、それらの右出力チャネルは結合されて右出力チャネルを生成するようになっている。
いくつかの実施形態では、図2Cのオーディオ処理システム214によって示されるように、クロストーク補償は、クロストークキャンセルの前に実行される。ここでは、クロストーク補償された信号は、クロストーク処理への入力として使用され、クロストーク処理の出力は、左出力チャネル及び右出力チャネルを生成するために使用される。
いくつかの実施形態では、クロストーク補償処理を行わず、クロストーク処理の左及び右の出力チャネルを使用して、それぞれ左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。
音声処理システムは、左出力チャネルを左スピーカに、右出力チャネルを右スピーカに提供する1225。クロストーク処理がクロストークキャンセルの場合、左スピーカと右スピーカは、それぞれスピーカ110Lと110Rであってもよい。また、クロストーク処理がクロストークシミュレーションである場合、左スピーカ及び右スピーカは、それぞれ、ヘッドフォン130L及び130Rであってもよい。
コンピュータの例
図13は、一実施形態に関するコンピュータ1300のブロック図である。コンピュータ1300は、オーディオシステムを実装する回路の一例である。図示されているのは、チップセット1304に結合された少なくとも1つのプロセッサ1302である。チップセット1304は、メモリ制御ハブ1320と、入力/出力(I/0)制御ハブ1322とを含む。メモリ制御ハブ1320には、メモリ1306及び画像アダプタ1312が結合され、画像アダプタ1312には、表示装置1318が結合されている。記憶装置1308、キーボード1310、ポインティングデバイス1314、及びネットワークアダプタ1316は、1/0コントローラハブ1322に結合されている。コンピュータ1300は、様々なタイプの入力デバイスまたは出力デバイスを含んでもよい。コンピュータ1300の他の実施形態は、異なるアーキテクチャを有する。例えば、メモリ1306は、いくつかの実施形態では、プロセッサ1302に直接結合されている。
記憶装置1308は、ハードドライブ、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD、またはソリッドステートメモリデバイスなどの1つまたは複数の非一時的なコンピュータ可読ストレージメディアを含む。メモリ1306は、プロセッサ1302が使用する命令及びデータを保持する。ポインティングデバイス1314は、キーボード1310と組み合わせて、コンピュータシステム1300にデータを入力するために使用される。グラフィックスアダプタ1312は、画像やその他の情報を表示装置1318に表示する。いくつかの実施形態では、表示装置1318は、ユーザの入力及び選択を受け取るためのタッチスクリーン機能を含む。ネットワークアダプタ1316は、コンピュータシステム1300をネットワークに結合する。コンピュータ1300のいくつかの実施形態は、図13に示されたものとは異なる及び/または他の構成要素を有する。
コンピュータ1300は、本明細書で説明する機能を提供するためのコンピュータプログラムモジュールの実行に適合されている。例えば、いくつかの実施形態は、本明細書で説明したクロストーク処理またはクロストークキャンセル処理を実行するように構成された1つまたは複数のモジュールを含むコンピューティングデバイスを含んでもよい。本明細書では、「モジュール」という用語は、指定された機能性を提供するために使用されるコンピュータプログラム命令及び/または他の論理を指す。したがって、モジュールは、ハードウェア、ファームウェア、及び/またはソフトウェアで実装することができる。一実施形態では、実行可能なコンピュータプログラム命令で形成されたプログラムモジュールは、記憶装置1308に格納され、メモリ1306にロードされ、プロセッサ1302によって実行される。
本開示を読めば、当業者は本明細書に開示された原理のさらに追加的な代替実施形態を理解できるであろう。このように、特定の実施形態及びアプリケーションを図示及び説明してきたが、開示された実施形態は、本明細書に開示された正確な構造及び構成要素に限定されないことを理解されたい。当業者にとって明らかであると思われる様々な修正、変更、及びバリエーションが本明細書に記載された範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された方法及び装置の配置、動作、及び詳細においてなされ得る。
本明細書に記載されているステップ、操作、またはプロセスのいずれも、1つまたは複数のハードウェアまたはソフトウェアモジュールを単独で、または他のデバイスと組み合わせて実行または実装することができる。一実施形態では、ソフトウェアモジュールは、コンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読媒体(例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体)を含むコンピュータプログラム製品で実装され、このコンピュータプログラム製品は、記載されたステップ、操作、またはプロセスのいずれかまたはすべてを実行するためにコンピュータプロセッサによって実行することができる。
本開示の実施形態は、概して、オーディオ信号処理の分野に関し、より具体的にはマルチチャネルオーディオのクロストーク処理に関する。
クロストーク処理は、クロストークシミュレーションまたはクロストークキャンセルのような反対側及び同じ側の音響成分を使うオーディオ信号の処理に関する。クロストークの補償は、クロストークによって生じるスペクトル欠陥を調整する処理に関する。クロストーク処理及びクロストーク補償処理を最適化することは計算速度の高速化及び計算資源の使用を低減することに望ましい。
実施形態は、左チャネル及び右チャネルを含むオーディオ信号を強めることに関する。クロストークのキャンセルまたはクロストークのシミュレーションのような少なくとも1つのフィルタ及びディレイを含むクロストーク処理は、左および右のチャネルの側方(または空間)チャネルに適用され、クロストーク処理信号を生成する。側方チャネルは、左チャネルと右チャネルとの間との差分を含んでいる。左右のチャネルの中央(または非空間)チャネルは、クロストーク処理をバイパスする。中央チャネルは、左右のチャネルの合計を含んでいる。左出力チャネル及び右出力チャネルは、クロストーク処理信号及びクロストーク処理をバイパスした中央チャネルを使って生成される。
いくつかの実施形態において、クロストーク補償処理は、側方チャネルに適用されて、クロストーク処理が側方チャネルに適用されたことによって生じるスペクトル欠陥を調整するクロストーク補償信号を生成する。中央チャネルは、クロストーク補償処理をバイパスする。左及び右の出力チャネルは、クロストーク補償信号、クロストーク処理信号及びクロストーク処理及びクロストーク補償をバイパスした中央チャネルによって生成される。
他の側面は、構成、装置、システム、改良、方法、処理、アプリケーション、コンピュータが読み取り可能な媒体及び上記のいずれかに関する他の技術を含む。
図1Aは、一実施形態のラウドスピーカ用のステレオオーディオ再生システムを例示する図である。
図1Bは、一実施形態のヘッドフォン用のステレオオーディオ再生システムを例示する図である。
図2Aは、一実施形態のクロストーク処理のためのオーディオ処理システムを例示する図である。
図2Bは、一実施形態のクロストーク処理のためのオーディオ処理システムを例示する図である。
図2Cは、一実施形態のクロストーク処理のためのオーディオ処理システムを例示する図である。
図3Aは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Bは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Cは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Dは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Eは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図3Fは、一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Aは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Bは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Cは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Dは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Eは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図4Fは、各々一実施形態のクロストークキャンセル処理装置を例示する図である。
図5は、一実施形態のクロストーク補償処理装置を例示する図である。
図6は、一実施形態のクロストークキャンセルを中央及び側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図7は、一実施形態のクロストークキャンセルを側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図8は、一実施形態のクロストークキャンセルを中央及び側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図9は、一実施形態のクロストークキャンセル及びクロストーク補償を側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図10は、一実施形態のクロストークキャンセルを中央及び側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図11は、一実施形態のクロストークキャンセル及びクロストーク補償を側方チャネルに適用した周波数のプロットを示す図である。
図12は、一実施形態のクロストーク処理及びクロストーク補償処理を示すフローチャートである。
図13は、一実施形態のコンピュータのブロック図である。
発明の詳細な説明
本明細書に記載されている特徴及び利点は、すべてを含むものでなく、特に、多くの追加される特徴及び利点は、図面、明細書、及び特許請求の範囲から当業者にとって明らかである。さらに、本明細書で使用される言語は、主に読みやすさ及び学習の目的のために選択されており、本発明の主題を描写または制限するために選択されていない可能性があることに注意すべきである。
図(FIG.)及び以下の説明は、好ましい実施形態に関する説明に過ぎない。以下の議論から、本明細書に開示される構造及び方法の代替の実施形態は、本発明の原理から逸脱することなく使用され得る実行可能な代替物として容易に認識されることに注意すべきである。
ここで、本発明のいくつかの実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図に示す。実用的である場合、図において同様または類似の参照番号が使用可能であり、同様または類似の機能を示すことに注意すべきである。図面は、実施形態の説明のみ目的として表される。当業者は、以下の説明から、本明細書に記載の原理から逸脱することなく、本明細書に例示される構造及び方法の代替の実施形態を使用できることを容易に認識するであろう。
クロストーク補償処理の例
実施形態は、クロストーク処理、いくつかの実施形態は、左及び右のチャネルに含まれるステレオオーディオ信号のためのクロストーク補償処理に関する。クロストーク処理は、ラウドスピーカ、またはヘッドフォンのためのクロストークのシミュレーションを含む場合がある。クロストーク補償処理は、クロストーク処理の結果生ずるスペクトルの欠陥を補償する。処理効率を上げるため、クロストーク処理またはクロストーク補償処理は、左右のチャネルからの側方チャネルの生成に適用される一方、左右のチャネルから生成される中央チャネルをバイパスされる。これは、側方チャネルを生成し、クロストーク処理またはクロストーク補償を側方チャネルに適用し、処理された側方チャネルと中央チャネルを組み合わせることにより達成される。他の例においては、クロストーク処理が左及び右のチャネルの各々に適用され、さらなる処理の結果とともに、クロストーク処理が効果的に側方チャネルに適用され、中央チャネルをバイパスする。その結果、出力信号は、空間的なクロストーク特性(例えば、ヘッドフォンの場合はシミュレーション、ラウドスピーカの場合はキャンセル)を維持しながら、スペクトル的に透過的な中央チャネルを示す。
図1Aに示すようなラウドスピーカの配置において、ラウドスピーカ110L、110Rの両方によって生じた音波は、聞き手120の左耳125L、右耳125Rの両方に受け取られる。各ラウドスピーカ110L、110Rからの音波は、左耳125L、右耳125Rの間でわずかなディレイを有し、聞き手120の頭に起因してフィルタリングされる。リスナーの頭の同じ側のスピーカから出力され、その側の聞き手の耳で受け取られた音響成分(例えば118L、118R)は、ここにおいて、「同側音響成分」(例えば、左耳で受け取られた左側チャネル信号成分及び、右耳で受け取られた右側チャネル信号成分)とされ、聞き手の頭の反対の側のスピーカにより出力される音響成分(例えば112L、112R)は、ここにおいて、「対側音響成分」(例えば、右耳で受け取られた左側チャネル信号成分及び、左耳で受け取られた右側チャネル信号成分)とされる。対側音響成分はクロストークの干渉に寄与し、それは空間性の知覚の低下を生じさせる。したがって、クロストークのキャンセルは、ラウドスピーカ110に入力されるオーディオ信号に適用され、聞き手120によるクロストーク干渉の体験を低減することができる。
図1Bに示すような配置のヘッドマウントスピーカにおいて、専用の左スピーカ130Lが左耳125L中に音を放出し、専用の右スピーカ130Rが右耳125R中に音を放出する。ヘッドマウントスピーカは、ユーザの耳に近くで音波を放出し、それにより、トランスオーラル音波の伝搬が低下する、またはなくなり、クロストーク干渉によって生じる対側成分が発生しない。聞き手120の各耳は、対応するスピーカから同じ側の音響成分を受けとり、他の側のスピーカからのクロストーク音響成分を受け取らない。したがって、聞き手120は、違いに気づきスピーカ、そして典型的にはヘッドマウントスピーカのより小さい音場に気づくであろう。このように、クロストークシミュレーションは、ヘッドマウントスピーカ130に入力するオーディオ信号に適用され、オーディオ信号が仮想スピーカ音源140A、140Bによって出力されるときに聞き手120が知覚する可能性があるクロストーク干渉をシミュレートするようにしてもよい。
オーディオ処理システムの例
図2A、2B及び2Cの各々は、一実施形態のクロストーク処理のためのオーディオ処理システムの例を示す。オーディオ処理システムは、クロストークキャンセルまたはクロストークシミュレーション、及び様々な状態のクロストーク処理によって生じるスペクトル欠陥を調整するクロストーク補償のようなクロストーク処理を実行する。図2Aを参照すると、オーディオ処理システム200は、クロストークプロセッサ202と、クロストーク補償プロセッサ204とを含む。クロストークプロセッサ202は、入力オーディオ信号Xに対してクロストーク処理を実行する。クロストーク補償プロセッサ204は、クロストークプロセッサ202に結合されて、クロストークプロセッサ202の結果を受信する。クロストーク補償プロセッサ204は、前のクロストーク処理によって引き起こされたスペクトル欠陥を調整する出力オーディオ信号Oを生成する。いくつかの実施形態では、クロストーク補償プロセッサ204は省略されてもよいし、またはクロストークプロセッサ202と統合されてもよい。
図2Bを参照すると、オーディオ処理システム210は、クロストークプロセッサ202、クロストークキャンセルプロセッサ204、及びコンバイナ206を含む。ここで、クロストークプロセッサ202及びクロストークキャンセルプロセッサ204は、入力オーディオ信号Xを受信し、入力オーディオ信号Xを並行して処理する。クロストークプロセッサ202及びクロストーク補償プロセッサ204からの結果は、出力オーディオ信号Oを生成するためにコンバイナ206によって結合される。
図2Cを参照すると、オーディオ処理システム215は、クロストーク補償プロセッサ204及びクロストークプロセッサ202を含む。オーディオ処理システム215は、オーディオ処理システム200と同様に、順序が異なることを除いてクロストーク処理及びクロストーク補償を連続して実行する。クロストーク補償プロセッサ204は、入力オーディオ信号Xを受信し、後のクロストーク処理によって生じるスペクトル欠陥のクロストーク補償を実行する。クロストークプロセッサ202は、クロストーク補償プロセッサ204の結果を受信し、生成された出力オーディオ信号Оにクロストーク処理を適用する。
クロストークキャンセルプロセッサの例
図3Aから図3Fは、クロストークキャンセルプロセッサを例示している。クロストークキャンセルプロセッサは、スピーカ110L及び110Rを使用する際のクロストーク干渉の体験を低減する。各クロストークキャンセルプロセッサは、図2Aから図2Cに示すように、オーディオ処理システムのクロストークプロセッサ202の一例である。
図3Aは、一実施形態に関するクロストークキャンセルプロセッサ302を示す。クロストークキャンセルプロセッサ302は、左チャネルXL及び右チャネルXRを受信し、そして、左チャネルXL及び右チャネルXRに対してクロストークキャンセルを実行し、左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。
クロストークキャンセルプロセッサ302は、帯域内・外ディバイダ310、インバータ320、322、対側推定器330、340、コンバイナ350、352、帯域内・外コンバイナ360、L/RtoMコンバータ362、L/RtoSコンバータ364及びM/StoL/Rコンバータ366を含む。これらのコンポーネントは連携して動作し、入力チャネルTL、TRを帯域内チャネルと帯域外コンポーネントとに分割し、帯域内コンポーネントでクロストークキャンセルを実行して、出力チャネルOL、ORを生成する。
入力オーディオ信号Tを異なる周波数帯域成分に分割し、選択的成分(例えば、帯域内成分)に対してクロストークキャンセルを実行することにより、他の周波数帯域での劣化をバイパスしながら、特定の周波数帯域に対してクロストークキャンセルを実行することができる。異なる周波数帯域において入力オーディオ信号Tを分割することなくクロストークキャンセルが行われた場合、そのようなクロストークキャンセル後のオーディオ信号は、低周波数(例えば、350Hz未満)、高周波数(例えば、12000Hz以上)の一方または両方において、非空間及び空間成分における有意な減衰または増幅を示し得る。影響力のある空間キューの大部分が存在する帯域内(たとえば、250Hzから14000Hz)に対してクロストークキャンセルを選択的に実行することにより、バランスの取れた全体的なエネルギー、特に非空間コンポーネント中で、ミックス内のスペクトル全体を保持することができる。
帯域内・外ディバイダ310は、入力チャネルXL、XRを帯域内チャネルTL,In、TR,In及び帯域外チャネルTL,Out、TR,Outにそれぞれ分割する。特に、帯域内、帯域外ディバイダ310は、左の強化補償チャネルTLを、左の帯域内チャネルTL,Inと、左の帯域外チャネルTL,Outと、に分割する。同様に、帯域内・外ディバイダ310は、右の強化補償チャネルTRを、右の帯域内チャネルTR,INと、右の帯域外チャネルTR,OUTと、に分割する。各帯域チャネルは、例えば250Hzから14Hzを含む周波数帯域に一致するそれぞれの入力チャネルの部分を含んでもよい。この周波数帯は、例えば、スピーカのパラメータに従って調整してもよい。
インバータ320及び対側推定器330は、協働して左の対側キャンセルチャネルSLを生成し、左の帯域内チャネルTL,Inによって生じる対側音響成分を補償する。同様に、インバータ322及び対側推定器340は、協働して右の対側キャンセルチャネルSRを生成し、右の帯域内チャネルTR,INによって生じる対側音響成分を補償する。
一つのアプローチにおいて、インバータ320は、帯域内チャネルTL,Inを受信し、帯域内チャネルTL,Inの極性を反転し、反転帯域内チャネルTL,In’を生成する。対側推定器330は、反転帯域内チャネルTL,In’を受信し、反転帯域内チャネルTL,In’のフィルタを通過した対側音響成分に一致する部分を抽出する。フィルタリングは、反転された帯域内チャネルTL,In’に対して実行されるので、対側推定器330によって抽出された部分は、反対側の音響成分によって生じる帯域内チャネルTL、Inの部分の逆になる。したがって、対側推定器330によって抽出された部分は、左の対側キャンセルチャネルSLになり、対となる帯域内チャネルTR,Inに追加して、帯域内チャネルTL,Inによって生じる対側音響成分を低減することができる。いくつかの実施形態では、インバータ320及び対側推定器330は、異なる手順で実現される
インバータ322及び対側推定器340は、帯域内チャネルTR,Inに関して同様の動作を実行して右の対側キャンセルチャネルSRを生成する。したがって、簡潔にするために、その詳細な説明は本明細書では省略されている。
実施の一例では、対側推定器330は、フィルタ332、増幅器334、及びディレイユニット336を含む。フィルタ332は、反転入力チャネルTLin'を受信し、フィルタリング機能による対側音響成分に対応する反転帯域内チャネルTLinの一部を抽出する。フィルタの実施例は、中心周波数が5000Hzと10000Hzとの間で選択され、Qが0.5と1.0との間で選択され、デシベルを単位とするゲインが式1から導出されてもよい。
ここで、Dは、例えば、48KHzのサンプリングレートにおけるディレイユニット336、346によるディレイの量である。他の実施には、コーナー周波数が5000Hzと10000Hzとの間で選択され、Qが0.5と1.0との間で選択されたローパスフィルタがある。さらに、増幅器334は、抽出された部分を対応する利得係数G
Linによって増幅し、ディレイユニット336は、ディレイ関数Dに従って増幅器334からの増幅された出力をディレイさせ、左対側キャンセルチャネルS
Lを生成する。
対側推定器340は、反転帯域内チャネルTRin’に対して同様の動作を実行して右対側キャンセルチャネルSRを生成するフィルタ342、増幅器344及びディレイユニット346を含む。一例では、対側推定器330、340は、以下の式に従って、左右の対側キャンセルチャネルSL、SRを生成する。
ここで、F[]はフィルタ関数、D[]はディレイ関数である。
いくつかの実施形態において、フィルタは、対側推定器内の増幅器と統合される 。例えば、フィルタ332は、フィルタリング機能の一部として増幅器334のゲインを適用することができる。その意味で、信号またはチャネルにフィルタを適用することは、周波数に基づく調整に加えて、ゲインレベルの広帯域調整を含み得る。
クロストークキャンセルの構成は、スピーカのパラメータによって決定することができる。一例において、フィルタの中心周波数、ディレイの量、増幅器のゲイン、及びフィルタのゲインは、聞き手に対して2つのスピーカの間に形成される角度に従って決定することができる。いくつかの実施形態では、スピーカ角度間の値は、他の値を補間するために使用される。
コンバイナ350は、右対側キャンセルチャネルSRを左帯域内チャネルTL、rnに結合し、左帯域内クロストークチャネルULを生成し、コンバイナ352は、左対側キャンセルチャネルSLを右帯域内チャネルSLに結合する。バンドチャネルTR、rnは、右帯域内クロストークチャネルURを生成する。
L/RtoSコンバータ364は、左帯域内クロストークチャネルUL及び右帯域内クロストークチャネルURを受信し、側方帯域内クロストークチャネルUSを生成する。側方帯域内クロストークチャネルUSは、左帯域内クロストークチャネルULと右帯域内クロストークチャネルURとの差分に基づいて生成されてもよい。
L/RtoMコンバータ362は、左帯域内チャネルTL、rn及び右帯域内チャネルTR、Inを受信し、中央帯域内チャネルTM、Inを生成する。中央帯域内チャネルTM、Inは、左帯域内チャネルTL、rnと右帯域内チャネルTR、Inとの合計に基づいて生成されてもよい。
M/StoL/Rコンバータ366は、中央帯域内チャネルTM、rn及び側方帯域内クロストークチャネルUsを受信し、左帯域内クロストークキャンセルチャネルCL及び右帯域内クロストークキャンセルチャネルCRを生成する。左クロストークキャンセル帯域内チャネルCLは、中央帯域内チャネルTM、rn及び側方帯域内クロストークチャネルUsの合計に基づいて生成され得て、右帯域内クロストークキャンセルチャネルCRは、中央帯域内チャネルTM、rnと側方帯域内クロストークチャネルUsとの差分に基づいて。に基づいて生成されてもよい。側方帯域内チャネルUsは、左及び右の帯域内クロストークチャネルUL、URの側方のコンポーネントであり、帯域内チャネルTLの中央コンポーネントである中央帯域内チャネルTM、rnと結合される。
帯域内・外コンバイナ360は、左帯域内チャネルCLを帯域外チャネルTL、Outと組み合わせて、左出力チャネルOLを生成し、右帯域内チャネルCRを帯域外チャネルTR、Outと組み合わせて出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ302によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークキャンセルチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ302によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークキャンセルチャネルである。これらのクロストークキャンセルチャネルは、オーディオ処理システムの出力として、またはオーディオ処理システムの別のコンポーネント(例えば、クロストークキャンセルによって生じるスペクトル欠陥を調整するクロストーク補償プロセッサ204)への入力として使用し得る。
したがって、左出力チャネルOLは、反対側の音に帰する帯域内チャネルTR、rnの部分の逆数に対応する右対側キャンセルチャネルSRの部分を含み、右出力チャネルORは、反対側の音に帰する帯域内チャネルTL、rnの部分の逆数に対応する左対側キャンセルチャネルSLを含む。この構成においては、右出力チャネルORにしたがってスピーカ110Rが出力する同じ側の音響成分の波面が右耳に到達し、左出力チャネルOLにしたがってスピーカ110Lが出力する対側音響成分の波面を打ち消すことができる。同様に、左耳に到達した左出力チャネルOLに従ってスピーカ110Lが出力した同じ側の音響成分の波面は、右出力チャネルORに従ってスピーカ110Rが出力した反対の側の音響成分の波面をキャンセルすることができる。なお、左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ302によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークキャンセルチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ302によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークキャンセルチャネルである。このように、反対側の音響成分を低減して、空間検出性を高めることができる。
図3Bは、一実施形態に関するクロストークキャンセルプロセッサ304を示す。クロストークキャンセルプロセッサ304は、クロストークキャンセルプロセッサ302と同様であるが、向上された処理効率を含む。クロストークキャンセルプロセッサ304は、帯域内・外ディバイダ310、インバータ320及び322、対側推定器330及び340、及び帯域内・外コンバイナ360を含む。クロストークキャンセルプロセッサ304におけるこれらの構成要素は、クロストークキャンセルプロセッサ302において対応する構成要素と同様に動作する。クロストークキャンセルプロセッサ304は、さらに、対側推定器330及び340に結合されたL/Rtoコンバータ364と、L/RtoSコンバータ364に結合されたM/StoL/Rコンバータ368と、M/StoL/Rコンバータ368、帯域内・外ディバイダ310、及び帯域内・外コンバイナ360に結合されたコンバイナ370及び372を含む。
L/RtoSコンバータ364は、左対側キャンセルチャネルSLと右対側キャンセルチャネルSRを受信し、左対側キャンセルチャネルSLと右対側キャンセルチャネルSRとの差に基づいて、側方対側キャンセルチャネルSsを生成する。
M/StoL/Rコンバータ368は、側方対側キャンセルチャネルSSとゼロ中央チャネルとを受信し、左対側帯域内チャネルKLと右対側帯域内チャネルKRとを生成する。なお、左対側帯域内チャネルKLは、側方対側キャンセルチャネルSSとゼロ中央チャネルとの合計に基づいて生成され、右対側帯域内チャネルKRは、ゼロ中央チャネルと側方対側キャンセルチャネルSSとの差分に基づいて生成されてもよい。
コンバイナ370は、右対側帯域内チャネルKR及び左帯域内チャネルTL,Inを受信し、右対側帯域内チャネルKRと左帯域内チャネルTL,Inとを加えることによって、左クロストークキャンセル帯域内チャネルCLを生成する。コンバイナ372は、左対側帯域内チャネルKL及右帯域内チャネルTR,Inを受信し、左対側帯域内チャネルKLと右帯域内チャネルTR,Inとを加えることによって、右クロストークキャンセル帯域内チャネルCRを生成する。
帯域内・外コンバイナ360は、左側のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを帯域外のチャネルTL,Outと共に結合して左出力チャネルOLを生成し、右側のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルを帯域外チャネルTR,Outと共に結合し、右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ304により生成されたクロストーク処理信号のうちの左のクロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ304によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右のクロストークがキャンセルされたチャネルである。
図3Cは、一実施形態のクロストークキャンセルプロセッサ306を示す。クロストークキャンセルプロセッサ306は、クロストークキャンセルプロセッサ304と同様であるが、向上された処理効率を含んでいる。クロストークキャンセルプロセッサ306は、帯域内・外ディバイダ310、インバータ320,322、対側推定器330,340及び帯域内・外コンバイナ360を含んでいる。クロストークキャンセルプロセッサ306におけるこれらの構成は、クロストークキャンセルプロセッサ302の対応する構成と同様に作動する。クロストークキャンセルプロセッサ306は、さらに、対側推定器330,340に結合されるL/RtoSコンバータ364を含み、減算器374及びコンバイナ376は、それぞれL/RtoSコンバータ364、帯域内・外ディバイダ310、及び帯域内・外コンバイナ360と結合される。
L/RtoSコンバータ364は、左の対側キャンセルチャネルSL及び右の対側キャンセルチャネルSRを受信し、側方の対側キャンセルチャネルSSを、左の対側キャンセルチャネルSLと右の対側キャンセルチャネルSRとの差分に基づいて生成する。
減算器374は、左帯域内チャネルTL,Inと側方の対側キャンセルチャネルSSを受信し、左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを、側方の対側キャンセルチャネルSSと右帯域内チャネルTL,Inとの差分に基づいて生成する。
コンバイナ376は、右帯域内チャネルTR,Inと側方の対側キャンセルチャネルSSを受信し、右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを、側方の対側キャンセルチャネルSSと右帯域内チャネルTR,Inとの差分に基づいて生成する。
帯域内・外コンバイナ360は、帯域外チャネルTL,Outと共に左帯域内チャネルCLを結合して左出力チャネルOLを生成し、帯域外チャネルTR,Outと共に右帯域内チャネルCRを結合して右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ306によって生成されたクロストーク処理信号のうちの左のクロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ306によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右のクロストークがキャンセルされたチャネルである。
クロストークのキャンセルの一般的な目標は、対照的なラウドスピーカシステムで聞いているときのクロスチャネル信号を知覚的に取り除くことであり、このとき、全体的なクロスチャネル信号は同様に変換される。つまり、左チャネルは、反対側のチャネルと合計される以前の右チャネルと同様に、ディレイされ、フィルタリングされ、反転され、及び縮小される可能性がある。左・右クロスチャネルシグナルの変換において対称性を仮定すると、図3Dから図3Fは、図3Aから図3Cに示すキャンセルプロセッサに関する処理効率が改善されたクロストークキャンセルプロセッサを示すことができる。特に、クロストーク処理は、左帯域内チャネルTL,In及び右帯域内チャネルTR,Inから生成された側方帯域内チャネルTS,Inに適用される一方、中央帯域内チャネルTM,Inは生成されないか、または側方帯域内チャネルTS,Inに適用されるクロストーク処理をバイパスする。
図3Dは、一実施形態による、クロストークキャンセルプロセッサ308を示す。クロストークキャンセルプロセッサ308は、帯域内・外ディバイダ310、L/RtoM/Sコンバータ378、インバータ320、対側推定器330、減算器380、M/StoL/Rコンバータ382、及び帯域内・外コンバイナ360を含む。
帯域内・外ディバイダ310は、入力チャネルXL,XRを、それぞれ帯域内チャネルTL,In,TR,Inと帯域外チャネルTL,Out,TR,Outに分離する。L/RtoM/Sコンバータ378は、帯域内・外ディバイダ310に結合されて、帯域内チャネルTL,In,TR,Inを受信し、側方帯域内チャネルTS,In及び中央帯域内チャネルTM,Inを生成する。側方帯域内チャネルTS,Inは、左帯域内チャネルTL,Inと右帯域内チャネルTR,Inとの差分に基づいて生成されてもよい。また、中央帯域内チャネルTM,Inは、左帯域内チャネルTL,Inと右帯域内チャネルTR,Inとの合計に基づいて生成されてもよい。
インバータ320及び対側推定器330は、協働して側方対側キャンセルチャネルSSを側方帯域内チャネルTS,Inから作成して帯域内中央のチャネルTM,Inによって生じる対側音響成分を補償する。特に、インバータ320は、側方帯域内チャネルTS,Inを受信して極性を反転させて側方帯域内チャネルTS,In‘を生成する。対側推定器330は、側方帯域内チャネルTS,In‘を受信し、フィルタリングを通過した対側音響成分に一致する反転された側方帯域内チャネルTS,In‘の部分を抽出する。フィルタリングは反転された側方帯域内チャネルTS,In‘で実行されるので、対側推定器330によって抽出された部分は反対側に音響成分によって生じる側方帯域内チャネルTS,Inの反転した部分になる。したがって、対側推定器330によって抽出された部分は、側方対側キャンセルチャネルSSになる。
減算器30は、側方帯域内チャネルTS,In及び側方対側キャンセルチャネルSSを受信し、側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCSを側方帯域内チャネルTS,In及び側方対側チャネルSSとの差分に基づいて生成する。いくつかの実施形態において、インバータ320及び対側推定器330は、異なる順序で実施される。
M/StoL/Rコンバータ382は、中央帯域内チャネルTM,In及び側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCSを受信し、左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCL及び右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを生成する。例えば、左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLは、中央帯域内チャネルTM,Inと側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCSの加算に基づいて生成されてもよく、右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRは、中央帯域内チャネルTM,Inと側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCSとの差分に基づいて生成されてもよい。
帯域内・外コンバイナ360は、帯域外チャネルTL,Outと共に左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを結合して左出力チャネルOLを生成し、帯域外チャネルTR,Outと共に右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを結合して右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ308によって生成されたクロストーク処理信号のうちの左クロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ308によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右クロストークがキャンセルされたチャネルである。
図3Eは、一実施形態に関するクロストークキャンセルプロセッサ312を示す。クロストークキャンセルプロセッサ312は、クロストークキャンセルプロセッサ308のように、同様の処理効率を伴う。クロストークキャンセルプロセッサ312は、帯域内・外ディバイダ310、インバータ320、対側推定器330及び帯域内・外ディバイダ360を含む。クロストークキャンセルプロセッサ312におけるこれらの構成要素は、クロストークキャンセルプロセッサ308において対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークキャンセルプロセッサ312は、さらに、帯域内・外ディバイダ310及びインバータ320に結合されたL/RtoSコンバータ384を含み、M/StoL/Rコンバータ386は対側推定器330に結合され、そしてコンバイナ388、390はM/StoL/Rコンバータ386、帯域内・外ディバイダ310及び帯域内・外コンバイナ360に結合される。L/RtoSコンバータ384は、左帯域内チャネルTL,In及び右帯域内チャネルTR,Inを受信し、左帯域内チャネルTL,In及び右帯域内チャネルTR,Inとの差分に基づいて側方帯域内チャネルTSを作成する。側方帯域内チャネルTS,Inは、インバータ320及び対側推定器330によって処理されて、側方対側キャンセルチャネルSSが生成される。M/StoL/Rコンバータ386は、側方対側キャンセルチャネルSSを対側推定器330及びゼロ中央チャネルから受信し、左対側帯域内チャネルKL及び右対側帯域内チャネルKRを生成する。左対側帯域内チャネルKLは、側方対側キャンセルチャネルSSとゼロ中央チャネルとの合計に基づいて作成されてもよく、右対側帯域内チャネルKRは、ゼロ中央チャネルと側方対側キャンセルチャネルSSとの差分に基づいて生成されてもよい。
コンバイナ388は、右対側帯域内チャネルKR及び左帯域内チャネルTL,Inを受信し、右対側帯域内チャネルKRと左帯域内チャネルTL,Inとを加えることによって右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルTR,Inを生成する。コンバイナ390は、左対側帯域内チャネルKL及び右帯域内チャネルTR,Inを受信し、左対側チャネルKLと右帯域内チャネルTR,Inとを加えることによって右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを生成する。
帯域内・外コンバイナ360は、左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLと共に左帯域外チャネルTL,Outを結合して左出力チャネルOLを生成し、右帯域外チャネルTL,Outと共に右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを結合して右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ312によって生成されたクロストーク処理信号のうち、左のクロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ312によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右のクロストークがキャンセルされたチャネルである。
図3Fは、一実施形態に関するクロストークキャンセルプロセッサ314を示す。クロストークキャンセルプロセッサ314は、クロストークキャンセルプロセッサ312のようであるが、処理効率の向上を含む。クロストークキャンセルプロセッサ314は、帯域内・外ディバイダ310、L/RtoSコンバータ384、インバータ320、対側推定器330及び帯域内・外コンバイナ360を含む。クロストークキャンセルプロセッサ314におけるこれらの構成要素は、クロストークキャンセルプロセッサ312の対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークキャンセルプロセッサ312は、さらに、それぞれ対側推定器330、帯域内・外ディバイダ310及び帯域内・外コンバイナ360に結合された減算器392及びコンバイナ394を含む。減算器392は、帯域内・外ディバイダ310から左帯域内チャネルTL,Inを、対側推定器330から側方キャンセルチャネルSSを受信し、左帯域内チャネルTL,Inと側方キャンセルチャネルSSとの差分に基づいて側方クロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを生成する。コンバイナ394は、帯域内・外ディバイダ310から右帯域内チャネルTR,Inを、対側推定器330から側方対側キャンセルチャネルSSを受信し、右帯域内チャネルTR,Inと側方キャンセルチャネルSSとの合計に基づいて右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを生成する。
帯域内・外コンバイナ360は、左帯域外チャネルTL,Outと共に左のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCLを結合して左出力チャネルOLを生成し、帯域外チャネルTR,Outと共に右のクロストークがキャンセルされた帯域内チャネルCRを結合して右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークキャンセルプロセッサ314によって生成されたクロストーク処理信号のうちの左のクロストークがキャンセルされたチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークキャンセルプロセッサ314によって生成されたクロストーク処理信号のうちの右のクロストークがキャンセルされたチャネルである。
図3Aから図3Fに示すように、クロストークキャンセルプロセッサは、入力チャネルXL,XRから同等の出力チャネルOL,ORを生成することが可能である。Aを、対側推定器330または対側推定器340の機能をカプセル化する線形演算(例えば、フィルタ)とする。図3Aに示すクロストークキャンセルプロセッサ302の出力チャネルOL,ORは、それぞれ式4及び式5によって定義されてもよい。
図3Bに示すクロストークキャンセルプロセッサ304からの出力チャネルOLまたはORは、式6及び式7によって定義されてもよい。
図3Cに示すクロストークキャンセルプロセッサ306からの出力チャネルOL及びORは、式8及び式9によって定義されてもよい。
図3Dに示すクロストークキャンセルプロセッサ308の出力OL及びORは、それぞれ式10及び11によって定義されてもよい。
図3Eに示すキャンセルプロセッサ312からの出力チャネルOL及びORは、それぞれ式12及び13によって定義されてもよい。
図3Fに示すクロストークキャンセルプロセッサ314の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式14及び15によって定義されてもよい。
代数操作を用いると、左出力チャネルOLの式4、6、8、10、12、及び14は同等であり、右出力チャネルORの式5、7、9、11、13、及び15は同等である。
クロストークシミュレーションプロセッサの例
図4Aから図4Fは、クロストークシミュレーションプロセッサの例を示す。クロストークシミュレーションプロセッサは、ヘッドマウンテッドスピーカ130L及び130Rのようなラウドスピーカのリスニング経験を提供する。各クロストークシミュレーションプロセッサは、図2Aから図2Cに示すオーディオ処理システムのクロストークプロセッサ202の例である。
図4Aは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ402を示す。クロストークシミュレーションプロセッサ402は、左チャネルXL及び右チャネルXRを受信し、チャネルXL,XR上でシミュレーションを実行して左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。
クロストークシミュレーションプロセッサ402は、左ヘッドシャドウローパスフィルタ422、左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424、左クロストークディレイ426及び左ヘッドシャドウゲイン428を含み、左入力チャネルXLを生成する。クロストークシミュレーションプロセッサ402は、さらに、右ヘッドシャドウローパスフィルタ432、右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434、右クロストークディレイ436及び右ヘッドシャドウゲイン438を含み、右入力チャネルXRを生成する。クロストークシミュレーションプロセッサ402は、さらに、コンバイナ440及び442、L/RtoMコンバータ444、L/RtoSコンバータ446及びM/StoL/Rコンバータ448を含む。
左ヘッドシャドウローパスフィルタ422及び左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424は、左入力チャネルX L を受信し、聞き手の頭を通過した後の信号の周波数応答をモデル化する変調を適用する。ローパスフィルタ及びハイパスフィルタの両方の使用は、聞き手の頭を通る周波数応答のより正確なモデルの結果を得うる。いくつかの実施形態において、ローパスフィルタ422またはハイパスフィルタ424の一つだけが使用される。左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424の出力は、左クロストークディレイ426に提供され、これは、左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424の出力に時間ディレイを適用する。時間ディレイは、同側の音響成分に対して反対側の音響成分が横断するトランスオーラル距離を表す。周波数応答は、聞き手の頭による音波変調の周波数依存特性を決定するための経験的な実験に基づいて生成することができる。例えば、図1Bを参照するように、右耳125Rに伝わる反対側の音響成分112Lは、トランスオーラル伝搬からの音波変調を表す周波数応答を用いて同じ側の音響成分118Lをフィルタリングすることによって左耳125Lに伝わる同じ側の音響成分118Lから導出することができ、時間ディレイは、増加された反対側の音響成分112Lが右耳125Rに到達するまでに横断する距離(同じ側の音響成分118Rに関する)のモデルである。左ヘッドシャドウゲイン428は、左クロストークディレイ426の出力にゲインを適用して、左クロストークシミュレーションチャネルWLを生成する。
同様に、右インプットチャネルXR、右ヘッドシャドウローパスフィルタ432及び右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434は、右入力チャネルXRを受信し、聞き手の頭の周波数応答のモデルの変調を適用する。右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434の出力は、右クロストークディレイ436に提供され、時間ディレイに適用される。右ヘッドシャドウゲイン438は、右クロストークディレイ436の出力にゲインを適用し、右クロストークシミュレーションチャネルWRを生成する。
いくつかの実施形態において、ヘッドシャドウローパスフィルタ422及び432は、2032Hzのカットオフ周波数を有している。ヘッドシャドウハイパスフィルタ424及び434は、150Hzのカットオフ周波数を有している。クロストークディレイ426及び436は、0.792msのディレイを適用する。ヘッドシャドウゲイン428及び438は、14.4dBのゲインを適用する。ヘッドシャドウフィルタ、クロストークディレイ及び左右の各チャネルのヘッドシャドウゲインの適用は、異なる命令で実行されてもよい。
いくつか実施形態において、ヘッドシャドウフィルタは、ヘッドシャドウゲインと統一される。例えば、ヘッドシャドウローパスフィルタ422及び432は、フィルタリング機能の一部として、ヘッドシャドウゲイン428及び438のゲインを適用することができる。その意味で、信号またはチャネルにフィルタを適用することは、周波数に基づく調整に加えて、ゲインレベルの広帯域調整を含み得る。
コンバイナ440は、右ヘッドシャドウゲイン438及びL/RtoSコンバータ446に結合される。コンバイナ440は、左入力チャネルXL及び右クロストークシミュレーションチャネルWRを受信し、左入力チャネルXLと右クロストークシミュレーションチャネルWRとを加えることによって左クロストークチャネルVLを生成する。入力チャネルXLと右クロストークシミュレーションチャネルWR。コンバイナ442は、左ヘッドシャドウゲイン428及びL/RtoSコンバータ446に結合される。コンバイナ442は、右入力チャネルXR及び左クロストークシミュレーションチャネルWLを受信し、右入力チャネルXRと左クロストークシミュレーションチャネルWLとを加えることによって右クロストークチャネルVRを生成する。
L/RtoSコンバータ446は、左クロストークチャネルVL及び右クロストークチャネルVRを受信し、左クロストークチャネルVLと右クロストークチャネルVRとの差分に基づいて側方クロストークチャネルVSを生成する。
L/RtoMコンバータ444は、M/StoL/Rコンバータ448に結合される。L /RtoMコンバータ444は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRを受信し、左入力チャネルXLと右入力チャネルXRとの合計に基づいて中央チャネルXMを生成する。
M/StoL/Rコンバータ448は、L/RtoMコンバータ444及びL/RtoSコンバータ446に結合される。M/StoL/Rコンバータ448は、側方クロストークチャネルVS及び中央チャネルXMを受信し、左出力チャネルOLと右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、側方クロストークチャネルVSと中央チャネルXMとの合計に基づいて生成され得て、右出力チャネルORは、側方クロストークチャネルVSと中央チャネルXMとの間の差分に基づいて生成され得る。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ402によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ402によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Bは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ404を示している。クロストークシミュレーションプロセッサ404は、クロストークシミュレーションプロセッサ402と同様であるが、向上された処理効率を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ404は、左ヘッドシャドウローパスフィルタ422、左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424、左クロストークディレイ426、左ヘッドシャドウゲイン428、右ヘッドシャドウローパスフィルタ432、右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434、右クロストークディレイ436及び右ヘッドシャドウゲイン438を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ404におけるこれらの構成要素は、クロストークシミュレーションプロセッサ402において対応する構成要素と同様に動作する。クロストークシミュレーションプロセッサ404はさらに、左ヘッドシャドウゲイン428及び右ヘッドシャドウゲイン438に結合されたL/RtoSコンバータ450、L/RtoSコンバータ450に結合されたM/StoL/Rコンバータ452を含み、コンバイナ454及び456はそれぞれ、M/StoL/Rコンバータ452に結合されている。
L/RtoSコンバータ450は、左クロストークシミュレーションチャネルWL及び右クロストークシミュレーションチャネルWRを受信し、左クロストークシミュレーションチャネルWLと右クロストークシミュレーションチャネルWRとの差分に基づいて側方クロストークシミュレーションチャネルWSを生成する。
M/StoL/Rコンバータ452は、側方クロストークシミュレーションチャネルWS及びゼロ中央チャネルを受信し、左クロストークチャネルDL及び右クロストークチャネルDRを生成する。左クロストークチャネルDLは、側方クロストークシミュレーションチャネルWSとゼロ中央チャネルとの合計に基づいて生成してもよく、右クロストークチャネルDRは、ゼロ中央チャネルと側方クロストークシミュレーションチャネルWSとの差分に基づいて生成してもよい。
コンバイナ454は、右クロストークチャネルDR及び左入力チャネルXLを受信し、右クロストークチャネルDRと左入力チャネルXLとを加えることによって左出力チャネルOLを生成する。コンバイナ456は、左クロストークチャネルDL及び右入力チャネルXRを受信し、左クロストークチャネルDLと右入力チャネルXRとを加えることによって右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ404によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ404によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Cは、一実施形態におけるクロストークシミュレーションプロセッサ406を示す。クロストークシミュレーションプロセッサ406は、クロストークシミュレーションプロセッサ404と同様であるが、向上された処理効率を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ406は、左ヘッドシャドウローパスフィルタ422、左ヘッドシャドウハイパスフィルタ424、左クロストークディレイ426、左ヘッドシャドウゲイン428、右ヘッドシャドウローパスフィルタ432、右ヘッドシャドウハイパスフィルタ434、右クロストークディレイ436、右ヘッドシャドウゲイン438、及びL/RtoSコンバータ450を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ406におけるこれらの構成要素は、クロストークシミュレーションプロセッサ404の対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークシミュレーションプロセッサ406は、さらに、それぞれL/RtoSコンバータ450に結合された減算器458及びコンバイナ460を含む。減算器458は、左入力チャネルXL及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、左入力チャネルXLと側方クロストークシミュレーションチャネルWSとの差分に基づいて左出力チャネルOLを生成する。コンバイナ460は、右入力チャネルXR及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、右入力チャネルXR及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSの合計に基づいて、右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ406によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ406によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
クロストークシミュレーションの一般的な目標は、ヘッドフォンで対称ラウドスピーカシステムを聞く体験を知覚的にシミュレートすることであり、この場合、クロスチャネル信号全体が同じように変換される。つまり、左チャネルは、反対のチャネルに合計される前に、右チャネルと同じようにディレイされ、フィルタリングされ、反転され、及び縮小される可能性がある。左/右のクロスチャネル信号変換において対称性を仮定すると、図4Dから図4Fは、4Aから4Cに示すクロストークシミュレーションプロセッサと比較して向上された処理効率を有するクロストークシミュレーションプロセッサの例を示すことができる。特に、クロストーク処理は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRから生成された側方チャネルXSに適用され、一方、中央チャネルXMは、生成されないか、または側方チャネルXSに適用されるクロストーク処理をバイパスする。
図4Dは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ408を示している。クロストークシミュレーションプロセッサ408は、L/RtoM/Sコンバータ462、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466、側方クロストークディレイ468、側方ヘッドシャドウゲイン470、減算器472及びM/StoL/Rコンバータ474を含む。
L/RtoM/Sコンバータ462は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRを受信し、中央チャネルXM及び側方チャネルXSを生成する。側方チャネルXSは、左入力チャネルXLと右入力チャネルXRとの差分に基づいて生成され得る。中央チャネルXMは、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRの合計に基づいて生成され得る。
側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464及び側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466は、側方チャネルXSを受信し、聞き手の頭部を通過した後の信号の周波数応答をモデル化する変調を適用する。ローパスフィルタとハイパスフィルタの両方の使用は、聞き手の頭を通る周波数応答のより正確なモデルの結果が得られうる。いくつかの実施形態において、ローパスフィルタ464またはハイパスフィルタ466のうちの1つだけが使用される。側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466の出力は、側方クロストークディレイ468に提供され、側方クロストークディレイ468は、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466の出力に時間ディレイを適用する。側方ヘッドシャドウゲイン470は、側方クロストークディレイ426の出力にゲインを適用し、側方クロストークシミュレーションチャネルWSを生成する。ヘッドシャドウフィルタ、クロストークディレイ及び側方チャネルXSのヘッドシャドウフィルタの適用は、異なる命令で実行されてもよい。
減算器472は、L/RtoM/Sコンバータ462及び側方ヘッドシャドウゲイン470に結合される。減算器472は、側方チャネルXS及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、側方チャネルXS及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSの差分に基づいて側方クロストークシミュレーションチャネルGSを生成する。
M/StoL/Rコンバータ474は、L/RtoM/Sコンバータ462及び減算器472に結合される。M/StoL/Rコンバータ474は、中央チャネルXM及び側方クロストークチャネルGSを受信し、左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、中央チャネルXMと側方クロストークチャネルGSとの合計に基づいて生成されてもよく、右出力チャネルOLは、中央チャネルXMと側方クロストークチャネルGSとの差分に基づいて生成されてもよい。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ408によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ408によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Eは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ410を示している。クロストークシミュレーションプロセッサ410は、クロストークキャンセルシミュレーション408と同様であり、同等の処理効率を持つ。クロストークシミュレーションプロセッサ410は、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466、側方クロストークディレイ468、及び側方ヘッドシャドウゲイン470を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ410におけるこれらの構成要素は、クロストークシミュレーションプロセッサ408において対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークシミュレーションプロセッサ410は、さらに、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464に結合されたL/RtoSコンバータ476、側方ヘッドシャドウゲイン470に結合されたM/StoL/Rコンバータ478、M/StoL/Rコンバータ478に結合されたコンバイナ408及びM/StoL/Rコンバータ478に結合されたコンバイナ482を含む。L/RtoSコンバータ476は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRを受信し、左入力チャネルXLと右入力チャネルXRとの差分に基づいて側方チャネルXSを生成する。側方チャネルXSは、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466、側方クロストークディレイ468、及び側方ヘッドシャドウゲイン470によって処理されて、側方クロストークシミュレーションチャネルWSを生成する。
M/StoL/Rコンバータ478は、側方クロストークシミュレーションチャネルWS及びゼロ中央チャネルを受信し、左クロストークシミュレーションチャネルWL及び右クロストークシミュレーションチャネルWRを生成する。左クロストークシミュレーションチャネルWLは、側方クロストークシミュレーションチャネルWSとゼロ中央チャネルの合計に基づいて生成され得て、右クロストークシミュレーションチャネルWRは、ゼロ中央チャネルと側方クロストークシミュレーションチャネルWSとの差分に基づいて生成され得る。
コンバイナ480は、左入力チャネルXL及び右クロストークシミュレーションチャネルWRを受信し、左入力チャネルXLと右クロストークシミュレーションチャネルWRとを加えることによって、左出力チャネルOLを生成する。コンバイナ482は、右入力チャネルXR及び左クロストークシミュレーションチャネルWLを受信し、右入力チャネルXRと左クロストークシミュレーションチャネルWLとを加えることによって右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ410によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ410によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Fは、一実施形態に関するクロストークシミュレーションプロセッサ412を示している。クロストークシミュレーションプロセッサ412は、クロストークシミュレーションプロセッサ410と同様であるが、向上された処理効率を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ412は、L/RtoSコンバータ476、側方ヘッドシャドウローパスフィルタ464、側方ヘッドシャドウハイパスフィルタ466、側方クロストークディレイ468及び側方ヘッドシャドウゲイン470を含む。クロストークシミュレーションプロセッサ41におけるこれらの構成要素は、クロストークシミュレーションプロセッサ410において対応する構成要素と同様に動作する。
クロストークシミュレーションプロセッサ412は、さらに、それぞれ側方ヘッドシャドウゲイン470に結合された減算器484及びコンバイナ486を含む。減算器484は、左入力チャネルXL及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、左入力チャネルXLと側方クロストークシミュレーションチャネルWSとの差分に基づいて左出力チャネルOLを生成する。コンバイナ486は、右入力チャネルXR及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSを受信し、右入力チャネルXR及び側方クロストークシミュレーションチャネルWSの合計に基づいて、右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、クロストークシミュレーションプロセッサ412によって生成されたクロストーク処理信号の左クロストークシミュレートチャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーションプロセッサ412によって生成されたクロストーク処理信号の右クロストークシミュレートチャネルである。
図4Aから図4Fに示されるクロストークシミュレーションプロセッサは、入力チャネルXL、XRから同等の出力チャネルOL、またはORを生成することができる。Aをヘッドシャドウローパスフィルタ、ヘッドシャドウハイパスフィルタ、クロストークディレイ、及びヘッドシャドウゲインの機能をカプセル化する線形演算(フィルタ等)とする。図4に示されるクロストークシミュレーションプロセッサ402の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式4及び5によって定義されてもよい。図4Bに示すクロストークシミュレーションプロセッサ404の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式6及び7によって定義されてもよい。図4Cに示すクロストークシミュレーションプロセッサ406の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式8及び9によって定義されてもよい。図4Dに示すクロストークシミュレーションプロセッサ408の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式10及び11によって定義されてもよい。図4Eに示すクロストークシミュレーションプロセッサ410の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式12及び13によって定義されてもよい。図4Fに示すクロストークシミュレーションプロセッサ412の出力チャネルOL及びORは、それぞれ式14及び15によって定義されてもよい。左出力チャネルOLの式4、6、8、10、12、及び14は同等であり、右出力チャネルORの式5、7、9、11、13、及び15は同等である。
クロストーク補償プロセッサの例
図5は、一実施形態に関するクロストーク補償プロセッサ500の一例を示す。クロストーク補償プロセッサ500は、図2Aから図2Cに示されるオーディオ処理システムのクロストーク補償プロセッサ204の一例である。クロストーク補償プロセッサ500は、左及び右の入力チャネルを受信し、入力チャネルにクロストーク補償を適用することによって、左及び右の出力チャネルを生成する。特に、クロストーク補償プロセッサ500は、オーディオ信号の側方チャネルにクロストーク補償を適用して、側方チャネルでのクロストーク処理によって引き起こされるスペクトルアーチファクトを補償し、オーディオ信号の中央チャネルは、側方チャネルに適用されるクロストーク補償をバイパスする。
クロストーク補償プロセッサ500は、L/RtoM/Sコンバータ512、側方コンポーネントプロセッサ530、及びM/StoL/Rコンバータ514を含む。L/RtoM/Sコンバータ512は、左入力チャネルXL及び右入力チャネルXRを受信し、入力チャネルXL,XRの合計に基づいて中央チャネルX M を生成し、そして、入力チャネルXL、XRの差分に基づいて側方チャネルXSを生成する。
側方コンポーネントプロセッサ530は、側方フィルタ550(a)、550(b)から550(m)等の複数のフィルタ550を含む。側方コンポーネントプロセッサ530は、空間チャネルXSを処理することによって側方クロストーク補償チャネルZSを生成する。いくつかの実施形態では、クロストーク処理を伴う空間XSの周波数応答プロットは、シミュレーションを通じて得ることができる。周波数応答プロットを分析することにより、クロストーク処理のアーティファクトとして発生する所定のしきい値(例えば、10dB)を超える周波数応答プロットのピークまたはトラフ等のスペクトル欠陥を推定できる。側方クロストーク補償チャネルZSは、推定されたピークまたはトラフを補償するために、側方コンポーネントプロセッサ530によって生成され得る。具体的には、クロストーク処理で適用される特定のディレイ、フィルタリング周波数、及びゲインに基づいて、ピークとトラフとは、周波数応答で上下にシフトし、スペクトルの特定の領域でエネルギーの可変増幅及び/または減衰を引き起こす。側方フィルタ550のそれぞれは、1つまたは複数のピーク及びトラフを調整するように構成することができる。いくつかの実施形態では、側方コンポーネントプロセッサ530は、異なる数のフィルタを含み得る。
いくつかの実施形態において、側方フィルタ550は、式(16)によって定義される伝達関数を有するバイクアッドフィルタを含んでもよい。
ここで、Xは入力ベクトル、Yは出力である。他のトポロジーを使用することもでき、その最大語長と飽和状態に依存する。
このとき、バイクアッドは、実数値の入力と出力を持つ所定の二次フィルタとして使用できる。離散時間フィルタを設計するために、連続時間フィルタが設計され、双一次変換によって離散時間に変換される。さらに、中心周波数と帯域幅の結果として生じるシフトを、周波数ワーピングを使用して補償することができる。
例えば、ピーキングフィルタは、式18で定義されるS平面伝達関数を持ち得る。
ここで、sは複素変数、Aはピークの振幅及びQはフィルタの”品質係数”、そしてデジタルフィルタの係数は、以下によって定義される。
M/StoL/Rコンバータ514は、中央チャネルXM及び側方クロストーク補償チャネルZSを受信し、左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。左出力チャネルOLは、中央チャネルXMと側方クロストーク補償チャネルZSとの合計に基づいて生成され得る。右出力チャネルORは、中央チャネルXMと側方クロストーク補償チャネルZSと差分に基づいて生成され得る。左出力チャネルOLは、クロストーク補償プロセッサ500によって生成されたクロストーク補償信号の左クロストーク補償チャネルであり、右出力チャネルORは、クロストークシミュレーション補償プロセッサ500によって生成されたクロストーク補償信号の右クロストーク補償チャネルである。
クロストーク補償の例
図6〜12Bは、様々なクロストークディレイ及びゲインの結果として、側方(または空間的)及び中央(または非空間的)信号成分によって生じるコムフィルタリングアーチファクトの周波数プロットを示す。中央コンポーネントにおけるスペクトルアーチファクトは、クロストーク処理を側方コンポーネントに適用しながら、中央コンポーネントをクロストーク処理(ここではクロストークキャンセル)から完全に削除することによって削除してもよい。いくつかの実施形態では、クロストーク補償は、側方コンポーネントに補正フィルタを使用して、側方コンポーネントに適用されたクロストーク処理から生じるスペクトルアーチファクトを選択的に除去するために適用される。 結果として得られる信号は、意図された空間クロストーク特性(シミュレーションまたはキャンセル)の大部分を保持しながら、スペクトル的に明確な中央チャネルを示します。
図6〜12Bは、異なるスピーカ角度及びスピーカサイズ構成について、補正フィルタを含むクロストーク補償処理をクロストークがキャンセルされた側方チャネルに選択的に適用しながら、クロストーク補償処理から中央コンポーネントを除去するときの側方チャネル及び中央チャネル上の効果を示す。このように、側方チャネルの周波数応答を選択的に平坦化しながら、変更されていない中央チャネルが実現され、最小限に着色され、最小限にゲイン調整されたクロストーク処理の出力が提供される。補償フィルタは、側方チャネルに独立して実装され、中央チャネルで発生するすべてのコムフィルターのピーク/トラフを回避し、側方チャネルで最も低いコムフィルターのピーク/トラフを除くすべてを補正する。側方チャネルのクロストーク補償のパラメータを、手順に沿って導出するか、耳と手、またはその組み合わせにより調整できる。
図6は、一実施形態に関するクロストークキャンセルが適用された中央及び側方チャネルの周波数プロット600を示す。ライン602は、ホワイトノイズ入力信号である。ライン604は、クロストークキャンセル後の入力信号の中央チャネルである。ライン606は、クロストークキャンセル後の入力信号の側方チャネルである。スピーカ角度が10度で、小型のスピーカを設定する場合、クロストークキャンセルには、1サンプル@48KHzサンプリングレートのクロストークディレイ、−3dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスとで定義される帯域内周波数範囲が含まれ得る。
図7は、一実施形態に関する、側方チャネルに適用されるクロストークキャンセルの周波数プロット700を示す。プロット700に示されるクロストークキャンセルは、側方チャネルのみに適用されることを除き、プロット600に示されるクロストークキャンセルと同様のパラメータを使用する。特に、スピーカ角度が10度で、小型のスピーカを設定する場合、クロストークキャンセルは、1サンプル@48KHzのサンプリングレートのクロストークディレイ、−3dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスによって定義される帯域内周波数範囲を含み得る。ライン702は、ホワイトノイズの入力信号である。ライン706は、クロストークキャンセル後の入力信号の側方チャネルである。線分704は、クロストークキャンセルをバイパスした入力信号の中央チャネルである。周波数プロット700の中央チャネルと側方チャネルには、クロストーク補償は適用されない。
図8は、一実施形態に関する中央チャネル及び側方チャネルに適用されるクロストークキャンセルの周波数プロット800を示す。プロット800に示されたクロストークキャンセルは、異なるスピーカ角度及びクロスチャネルディレイが使用されるという点で、プロット600に示されたクロストークキャンセルとは異なる。特に、スピーカの角度が30度で、小型のスピーカを設定する場合、クロストークキャンセルは、3サンプル@48KHzのサンプリングレートのクロストークディレイ、−6.875dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスによって定義される帯域内周波数範囲を含み得る。ライン802は、ホワイトノイズの入力信号である。ライン804は、クロストークキャンセルを伴う入力信号の中央チャネルである。ライン806は、クロストークキャンセルを伴う入力信号の側方チャネルである。
図9は、一実施形態に関する側方チャネルに適用されるクロストークキャンセル及びクロストーク補償の周波数プロット900を示す。プロット900に示すクロストークキャンセルは、プロット800に示すクロストークキャンセルと同様のパラメータを使用するが、側方チャネルにのみ適用される。特に、スピーカの角度が30度で、小型スピーカの設定の場合、クロストークキャンセルは、3サンプル@48KHzのサンプリングレートのクロストークディレイ、−6.875dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスによって定義される帯域内周波数範囲を含み得る。
ライン902は、入力信号のホワイトノイズである。ライン904は、クロストークキャンセル及びクロストーク補償をバイパスする入力信号の中央チャネルである。ライン906は、クロストークキャンセル及びクロストーク補償後の入力信号の側方チャネルである。クロストーク補償は、プロット800のライン806によって示されるクロストークキャンセル側方チャネルからライン906が生成される結果となる。クロストーク補償のため、側方チャネルに2つの側方フィルタが適用される。一般に、クロストーク補償プロセッサにより適用される側方フィルタの数、及びそれらのパラメータは、変化してもよい。
図10は、一実施形態に関する中央チャネル及び側方チャネルに適用されるクロストークキャンセルの周波数プロット1000を示す。プロット1000に示されるクロストークキャンセルは、異なるスピーカ角度及びクロスチャネルディレイが使用されるという点で、プロット600及び800に示されるクロストークキャンセルとは相違する。
特に、スピーカ角度が50度で、小型のスピーカをー設定した場合、クロストークキャンセルには、5サンプル@48KHzサンプリングレートのクロストークディレイ、−8.625dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスで定義される帯域内周波数範囲が含まれ得る。ライン1002は、入力信号のホワイトノイズである。ライン1004は、クロストークキャンセルを伴う入力信号の中央チャネルである。ライン1006は、クロストークキャンセルを伴う入力信号の側方チャネルである。
図11は、一実施形態に関する側方チャネルに適用されるクロストークキャンセル及びクロストーク補償の周波数プロット1100を示す。プロット1100に示されるクロストークキャンセルは、プロット1000に示されるクロストークキャンセルと同様のパラメータを使用するが、側方チャネルにのみ適用される。特に、スピーカ角度が50度で、小型のスピーカを設定する場合、クロストークキャンセルには、5サンプル@48KHzサンプリングレートのクロストークディレイ、−8.625dBのクロストークゲイン、及び350Hzの低周波バイパスと12000Hzの高周波バイパスで定義される帯域内周波数範囲が含まれ得る。
ライン1102は、入力信号のホワイトノイズである。ライン1104は 、クロストークキャンセル及びクロストーク補償をバイパスする入力信号の中央チャネルである。
ライン1106は、クロストークキャンセル及びクロストーク補償後の入力信号の側方チャネルである。クロストーク補償は、プロット1000のライン1006によって示されるクロストークキャンセル側方チャネルからライン1106が生成される結果となる。クロストーク補償のため、4.000Hzの中心周波数、8.0dBのゲイン、及び2.0Qを有する第1ノッチフィルタと、8.800Hzの中心周波数、−2.0dBのゲイン及び2.0Qを有する第2ノッチフィルタと、15.800Hzの中心周波数、1.5dBのゲイン及び2.5Qを有する第3ノッチフィルタと、を含む3つの側方フィルタが側方チャネルに適用される。クロストーク補償プロセッサにより適用される側方フィルタの数、及びそれらのパラメータは、変化してもよい。
処理の例
図12は、一実施形態に関するクロストーク処理及びクロストーク補償のためのプロセス1200のフローチャートを示す。プロセス1200は、より少ないまたは追加のステップを含んでもよく、そしてステップは、異なる順序で実行されてもよい。
オーディオ処理システムは、左チャネル及び右チャネルを含むオーディオ信号を受信する1205。オーディオ信号は、左スピーカ用に混合された左チャネルと、右スピーカ用に混合された右チャネルとを伴うステレオオーディオ信号Xであってもよい。
オーディオ処理システムは、左及び右のチャネルの側方チャネルにクロストーク処理を適用し、クロストーク処理信号を生成する1210。クロストーク処理は、クロストークキャンセルまたはクロストークシミュレーションを含んでもよい。中央チャネル及び側方チャネルは、クロストーク処理をバイパスする。
クロストークキャンセルの場合、オーディオ処理システムは、それぞれ、図3A、3B、3C、3D、3E、及び3Fに示されるクロストークキャンセルプロセッサ302、304、306、308、312、及び314等のクロストークキャンセルプロセッサを含んでもよい。これらのクロストークキャンセルプロセッサは、中央チャネルをバイパスしながら側方チャネルにクロストークキャンセル処理を適用するために異なる方法で動作する。例えば、クロストークキャンセルプロセッサ302、304、及び306は、それぞれインバータ及び対側推定器を、左及び右チャネルから生成された左帯域内チャネルTL、rn及び右帯域内チャネルTR、rnに適用し、さらに、図3Aから3Cを参照して上述したように処理し、中央チャネルをバイパスする一方、側方チャネルにクロストークキャンセル処理が適用される結果を得る。他の実施形態において、クロストークキャンセルプロセッサ308、312、及び314は、それぞれインバータ及び対側推定器を左及び右のチャネルから生成された側方帯域内チャネルTS、rnに適用し、さらに図3Dから3Fを参照して上記したように処理し、中央チャネルをバイパスする一方、側方チャネルにクロストークキャンセル処理が適用される結果を得る。
クロストークシミュレーションの場合、オーディオ処理システムは、それぞれ図4A、4B、4C、4D、4E、及び4Fに示すクロストークシミュレーションプロセッサ402、404、406、408、410、及び412のようなクロストークシミュレーションプロセッサを含んでもよい。これらのクロストークシミュレーションプロセッサは、異なる方法で動作して、クロストークシミュレーション処理を左右のチャネルの側方チャネルに適用する。例えば、クロストークシミュレーションプロセッサ402、404及び406は、それぞれ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、クロストークディレイ、及びゲインを左チャネルXL及び右チャネルXRのそれぞれに適用し、その後、さらに、図4Aから4Cを参照して上記したように処理し、中央チャネルをバイパスする一方、側方チャネルにクロストークシミュレーション処理を適用する結果を得る。他の実施形態において、クロストークシミュレーションプロセッサ408、410及び412は、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、クロストークディレイ及びゲインを左及び右チャネルから生成された側方チャネルXSにそれぞれ適用し、さらに、図4Dから図4Fを参照して上記したように処理し、中央チャネルをバイパスする一方、側方チャネルにクロストークシミュレーション処理を適用する結果を得る。
オーディオ処理システムは、クロストーク補償処理を側方チャネルに適用し1215、クロストーク補償信号を生成する。側方チャネルに適用されるクロストーク補償処理は、側方チャネルに適用されるクロストーク処理によって引き起こされるスペクトル欠陥を調整する。中央チャネルは、クロストーク補償処理をバイパスしてもよい。オーディオ処理システムは、図5に示されるようなクロストーク補償プロセッサ500を含んでもよい。クロストーク補償プロセッサ500は、図5において入力XL及びXRとして示されるクロストーク処理の出力を受信し、チャネルXL及びXRから中央チャネルXM及び側方チャネルXSを生成する。側方チャネルXSは側方チャネルプロセッサ530によって処理される一方、中央チャネルXMは、この処理をバイパスする。
オーディオ処理システムは、クロストーク処理信号とクロストーク補償信号とを用いて、左出力チャネルと右出力チャネルを生成する1220。また、左出力チャネル及び右出力チャネルは、クロストーク処理及びクロストーク補償処理をバイパスした中央チャネルを用いて生成してもよい。例えば、左出力チャネルは、側方チャネルに適用されたクロストーク処理及びクロストーク補償処理の結果と、クロストーク処理及びクロストーク補償処理をバイパスする中央チャネルとの合計に基づいて生成されてもよい。また、右出力チャネルは、クロストーク処理及びクロストーク補償処理をバイパスした中央チャネルと、側方チャネルに適用されたクロストーク処理及びクロストーク補償処理の結果との差分に基づいて生成されてもよい。
いくつかの実施形態において、クロストーク処理信号及びクロストーク補償信号のそれぞれは、左及び右のチャネルを含んでもよく、これらは、左及び右のアウトチャネルをそれぞれ生成するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、クロストーク補償は、図2Aのオーディオ処理システム200が示すように、クロストーク処理の後に実行されてもよい。ここでは、クロストーク処理信号は、クロストーク補償処理の入力として使用され、クロストーク補償処理の出力は、左出力チャネル及び右出力チャネルの生成に使用される。
いくつかの実施形態では、クロストーク処理とクロストーク補償は並行して実行され、図2Bのオーディオ処理システム210が示すように、それらの左出力チャネルは(例えば、コンバイナ206によって)結合されて左出力チャネルを生成し、それらの右出力チャネルは結合されて右出力チャネルを生成するようになっている。
いくつかの実施形態では、図2Cのオーディオ処理システム214によって示されるように、クロストーク補償は、クロストークキャンセルの前に実行される。ここでは、クロストーク補償された信号は、クロストーク処理への入力として使用され、クロストーク処理の出力は、左出力チャネル及び右出力チャネルを生成するために使用される。
いくつかの実施形態では、クロストーク補償処理を行わず、クロストーク処理の左及び右の出力チャネルを使用して、それぞれ左出力チャネルOL及び右出力チャネルORを生成する。
音声処理システムは、左出力チャネルを左スピーカに、右出力チャネルを右スピーカに提供する1225。クロストーク処理がクロストークキャンセルの場合、左スピーカと右スピーカは、それぞれスピーカ110Lと110Rであってもよい。また、クロストーク処理がクロストークシミュレーションである場合、左スピーカ及び右スピーカは、それぞれ、ヘッドフォン130L及び130Rであってもよい。
コンピュータの例
図13は、一実施形態に関するコンピュータ1300のブロック図である。コンピュータ1300は、オーディオシステムを実装する回路の一例である。図示されているのは、チップセット1304に結合された少なくとも1つのプロセッサ1302である。チップセット1304は、メモリ制御ハブ1320と、入力/出力(I/0)制御ハブ1322とを含む。メモリ制御ハブ1320には、メモリ1306及び画像アダプタ1312が結合され、画像アダプタ1312には、表示装置1318が結合されている。記憶装置1308、キーボード1310、ポインティングデバイス1314、及びネットワークアダプタ1316は、1/0コントローラハブ1322に結合されている。コンピュータ1300は、様々なタイプの入力デバイスまたは出力デバイスを含んでもよい。コンピュータ1300の他の実施形態は、異なるアーキテクチャを有する。例えば、メモリ1306は、いくつかの実施形態では、プロセッサ1302に直接結合されている。
記憶装置1308は、ハードドライブ、CD−ROM(Compact Disk Read-Only Memory)、DVD、またはソリッドステートメモリデバイスなどの1つまたは複数の非一時的なコンピュータ可読ストレージメディアを含む。メモリ1306は、プロセッサ1302が使用する命令及びデータを保持する。ポインティングデバイス1314は、キーボード1310と組み合わせて、コンピュータシステム1300にデータを入力するために使用される。グラフィックスアダプタ1312は、画像やその他の情報を表示装置1318に表示する。いくつかの実施形態では、表示装置1318は、ユーザの入力及び選択を受け取るためのタッチスクリーン機能を含む。ネットワークアダプタ1316は、コンピュータシステム1300をネットワークに結合する。コンピュータ1300のいくつかの実施形態は、図13に示されたものとは異なる及び/または他の構成要素を有する。
コンピュータ1300は、本明細書で説明する機能を提供するためのコンピュータプログラムモジュールの実行に適合されている。例えば、いくつかの実施形態は、本明細書で説明したクロストーク処理またはクロストークキャンセル処理を実行するように構成された1つまたは複数のモジュールを含むコンピューティングデバイスを含んでもよい。本明細書では、「モジュール」という用語は、指定された機能性を提供するために使用されるコンピュータプログラム命令及び/または他の論理を指す。したがって、モジュールは、ハードウェア、ファームウェア、及び/またはソフトウェアで実装することができる。一実施形態では、実行可能なコンピュータプログラム命令で形成されたプログラムモジュールは、記憶装置1308に格納され、メモリ1306にロードされ、プロセッサ1302によって実行される。
本開示を読めば、当業者は本明細書に開示された原理のさらに追加的な代替実施形態を理解できるであろう。このように、特定の実施形態及びアプリケーションを図示及び説明してきたが、開示された実施形態は、本明細書に開示された正確な構造及び構成要素に限定されないことを理解されたい。当業者にとって明らかであると思われる様々な修正、変更、及びバリエーションが本明細書に記載された範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された方法及び装置の配置、動作、及び詳細においてなされ得る。
本明細書に記載されているステップ、操作、またはプロセスのいずれも、1つまたは複数のハードウェアまたはソフトウェアモジュールを単独で、または他のデバイスと組み合わせて実行または実装することができる。一実施形態では、ソフトウェアモジュールは、コンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読媒体(例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体)を含むコンピュータプログラム製品で実装され、このコンピュータプログラム製品は、記載されたステップ、操作、またはプロセスのいずれかまたはすべてを実行するためにコンピュータプロセッサによって実行することができる。