本出願人らは、活性薬剤を含むHSP90標的化コンジュゲート及びかかるコンジュゲートを含む新規粒子を設計した。かかる標的化は、例えば、部位における活性薬剤の量を改善し、対象に対する活性薬剤毒性を低下させることができる。本発明のHSP90標的化コンジュゲートは腫瘍への浸透が深く且つ速く、受容体インターナリゼーションが不要である。HSP90標的化コンジュゲートの蓄積性が高く、滞留時間が長いことにより、化学療法剤、キナーゼ阻害薬、又は免疫腫瘍学的修飾因子など、細胞毒性及び非細胞毒性のペイロードの使用が可能になる。
本明細書で使用されるとき、「毒性」は、物質又は組成物が細胞、組織、生物又は細胞環境にとって有害又は有毒となる能力を指す。低毒性とは、物質又は組成物が細胞、組織、生物又は細胞環境にとって有害又は有毒となる能力の低下を指す。かかる毒性の低下又は低毒性は、標準測定値を基準としたものか、治療を基準としたものか、又は治療がない場合を基準としたものであり得る。
毒性は、更に対象の体重減少を基準として計測されてもよく、ここでは体重の15%超、20%超又は30%超の体重減少が毒性の指標となる。嗜眠及び全身倦怠感を含む患者の症状呈示の尺度など、毒性の他の尺度が計測されてもまたよい。好中球減少又は血小板減少もまた毒性の尺度であり得る。
毒性の薬理学的指標としては、AST/ALT値の上昇、神経毒性、腎損傷、GI障害などが挙げられる。
本コンジュゲートは粒子の投与後に放出される。本標的化薬物コンジュゲートは、活性分子ターゲティングを透過性・貯留性亢進効果(EPR)及び粒子の全体的な体内分布の改善と組み合わせて利用することにより、標的化粒子又はカプセル化された非標的化薬物の投与と比較してより高い有効性及び忍容性を提供する。
加えて、HSP90を過剰発現しない細胞に対する活性薬剤に連結されたHSP90標的化部分を含むコンジュゲートの毒性は、その活性薬剤単独の毒性と比較して低下していると予想される。いかなる特定の理論にも拘束されないが、本出願人らは、この特徴が、コンジュゲートされた活性薬剤の正常細胞における滞留能力が腫瘍細胞と比べて低下していることに起因すると考える。
本発明の目的は、時間空間的薬物送達のための改良された化合物、組成物、及び製剤を提供することである。
更に、本発明の目的は、時間空間的薬物送達のための改良された化合物、組成物、及び製剤を作製する方法を提供することである。
また、本発明の目的は、改良された化合物、組成物、及び製剤をそれを必要としている個体に投与する方法を提供することでもある。
I.コンジュゲート
コンジュゲートは、標的化部分、例えばHSP90に結合することのできる分子にリンカーによって付加された活性薬剤又はそのプロドラッグを含む。本コンジュゲートは、単一の活性薬剤と単一の標的化部分との間のコンジュゲート、例えば、構造X−Y−Z[式中、Xは標的化部分であり、Yはリンカーであり、及びZは活性薬剤である]を有するコンジュゲートであり得る。
一部の実施形態において、本コンジュゲートは、2つ以上の標的化部分、2つ以上のリンカー、2つ以上の活性薬剤、又はこれらの任意の組み合わせを含有する。本コンジュゲートは任意の数の標的化部分、リンカー、及び活性薬剤を有し得る。本コンジュゲートは、構造X−Y−Z−Y−X、(X−Y)n−Z、X−(Y−Z)n、Xn−Y−Z、X−Y−Zn、(X−Y−Z)n、(X−Y−Z−Y)n−Z[式中、Xは標的化部分であり、Yはリンカーであり、Zは活性薬剤であり、及びnは1〜50、2〜20、例えば、1〜5の整数である]を有し得る。X、Y、及びZは出現毎に同じ又は異なってもよく、例えば本コンジュゲートは2種類以上の標的化部分、2種類以上のリンカー、及び/又は2種類以上の活性薬剤を含有し得る。
本コンジュゲートは、単一の活性薬剤に付加された2つ以上の標的化部分を含有し得る。例えば、本コンジュゲートは、複数の標的化部分が各々異なるリンカーを介して付加された活性薬剤を含有し得る。本コンジュゲートは、構造X−Y−Z−Y−X[式中、各Xは、同じであっても又は異なってもよい標的化部分であり、各Yは、同じであっても又は異なってもよいリンカーであり、及びZは活性薬剤である]を有し得る。
本コンジュゲートは、単一の標的化部分に付加された2つ以上の活性薬剤を含有し得る。例えば本コンジュゲートは、複数の活性薬剤が各々異なるリンカーを介して付加された標的化部分を含み得る。本コンジュゲートは、構造Z−Y−X−Y−Z[式中、Xは標的化部分であり、各Yは、同じであっても又は異なってもよいリンカーであり、及び各Zは、同じであっても又は異なってもよい活性薬剤である]を有し得る。
A.活性薬剤
本明細書に記載されるとおりのコンジュゲートは、少なくとも1つの活性薬剤(第1の活性薬剤)を含有する。本コンジュゲートは、第1の活性薬剤と同じであることも又は異なることもある2つ以上の活性薬剤を含有し得る。活性薬剤は、治療用、予防用、診断用、又は栄養用薬剤であってもよい。種々の活性薬剤が当該技術分野において公知であり、本明細書に記載されるコンジュゲートに使用し得る。活性薬剤は、タンパク質又はペプチド、小分子、核酸又は核酸分子、脂質、糖、糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、又はこれらの組み合わせであってもよい。一部の実施形態において、活性薬剤は、抗原、アジュバント、放射性物質、イメージング剤(例えば蛍光部分)又はポリヌクレオチドである。一部の実施形態において、活性薬剤は有機金属化合物である。
特定の実施形態において、本コンジュゲートの活性薬剤は、コンジュゲートの構成成分のモル重量百分率の合計が100%になるようにして約1%〜約10%、又は約10%〜約20%、又は約20%〜約30%、又は約30%〜約40%、又は約40%〜約50%、又は約50%〜約60%、又は約60%〜約70%、又は約70%〜約80%、又は約80%〜約90%、又は約90%〜約99%の所定のモル重量百分率を占める。コンジュゲートの1つ又は複数の活性薬剤の量はまた、1つ又は複数の標的化リガンドに対する比率として表してもよい。例えば、本教示は、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4;1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、又は1:10の活性薬剤対リガンド比を提供する。
一部の実施形態では、活性薬剤は癌療法薬であってもよい。癌療法薬としては、例えば、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)又はFasリガンドなどの細胞死受容体作動薬、又は細胞死受容体に結合し若しくはそれを活性化させ、又は他の方法でアポトーシスを誘導する任意のリガンド又は抗体が挙げられる。好適な細胞死受容体としては、限定はされないが、TNFR1、Fas、DR3、DR4、DR5、DR6、LTβR及びこれらの組み合わせが挙げられる。
化学療法剤、サイトカイン、ケモカイン、及び放射線療法剤などの癌療法薬を活性薬剤として使用することができる。化学療法剤としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、植物性アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害薬、及び他の抗腫瘍剤が挙げられる。かかる薬剤は、典型的には細胞分裂又はDNAの合成及び機能に影響を及ぼす。活性薬剤として使用することのできる療法薬の更なる例としては、モノクローナル抗体及びチロシンキナーゼ阻害薬、例えば特定の種類の癌(例えば、慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍)の分子異常を直接標的とするメシル酸イマチニブが挙げられる。
化学療法剤としては、限定はされないが、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、タキソール及びその誘導体、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、エピポドフィロトキシン類、トラスツズマブ、セツキシマブ、及びリツキシマブ、ベバシズマブ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのいずれも本コンジュゲートの活性薬剤として使用し得る。
本発明で使用される小分子活性薬剤(例えば、抗増殖性(細胞毒性及び細胞増殖抑制性)薬剤)としては、細胞毒性化合物(例えば、広域スペクトル)、血管新生阻害薬、細胞周期進行阻害薬、PBK/m−TOR/AKT経路阻害薬、MAPKシグナル伝達経路阻害薬、キナーゼ阻害薬、タンパク質シャペロン阻害薬、HDAC阻害薬、PARP阻害薬、Wnt/ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害薬、RNAポリメラーゼ阻害薬及びプロテアソーム阻害薬が挙げられる。小分子活性薬剤、一部の実施形態において活性薬剤は、その類似体、誘導体、プロドラッグ、又は薬学的に許容可能な塩である。
広域スペクトル細胞毒としては、限定はされないが、DNA結合薬又はアルキル化薬、微小管安定化剤及び不安定化剤、白金化合物、及びトポイソメラーゼI又はII阻害薬が挙げられる。
例示的DNA結合薬又はアルキル化薬としては、CC−1065及びその類似体、アントラサイクリン類(ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン)及びその類似体、アルキル化剤、例えば、カリケアマイシン類、ダクチノマイシン類(dactinomycines)、マイトマイシン類(mitromycines)、ピロロベンゾジアゼピン類などが挙げられる。
例示的ドキソルビシン類似体としては、コーエン(Cohen)らに対する米国特許出願公開第20140227299号明細書(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)に開示されているネモルビシン代謝産物又は類似体薬物部分が挙げられる。
例示的CC−1065類似体としては、デュオカルマイシンSA、デュオカルマイシンCI、デュオカルマイシンC2、デュオカルマイシンB2、DU−86、KW−2189、ビゼレシン、seco−アドゼレシン、並びに米国特許第5,475,092号明細書;同第5,595,499号明細書;同第5,846,545号明細書;同第6,534,660号明細書;同第6,586,618号明細書;同第6,756,397号明細書及び同第7,049,316号明細書に記載されるものが挙げられる。ドキソルビシン及びその類似体としては、PNU−159682及び米国特許第6,630,579号明細書に記載されるもの並びにコーエン(Cohen)らに対する米国特許出願公開第20140227299号明細書(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)に開示されているネモルビシン代謝産物又は類似体薬物が挙げられる。
カリケアマイシン類としては、米国特許第5,714,586号明細書及び同第5,739,116号明細書に記載されるものが挙げられる。デュオカルマイシン類としては、米国特許第5,070,092号明細書;同第5,101,038号明細書;同第5,187,186号明細書;同第6,548,530号明細書;同第6,660,742号明細書;及び同第7,553,816 B2号明細書;及びリー(Li)ら著、テトラへドロン・レターズ(Tet Letts.)、第50巻、p.2932〜2935、2009年に記載されるものが挙げられる。ピロロベンゾジアゼピン類としては、SG2057及びデニー(Denny)著、エキスパート・オピニオン・オン・セラピューティック・パテンツ(Exp.Opin.Ther.Patents.)、第10巻、第4号、p.459〜474、2000年、アンチキャンサー・エージェンツ・イン・メディシナル・ケミストリー(Anti−Cancer Agents in Medicinal Chemistry)、2009年、第9巻、p.1〜31;国際公開第2011/130613 A1号;欧州特許出願公開第2 789 622 A1号明細書;ブラッド(Blood)、2013年、第122巻、p.1455;ジャーナル・オブ・アンチミクロバイアル・ケモセラピー(J.Antimicrob.Chemother.)、2012年、第67巻、p.1683〜1696;キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)、2004年、第64巻、p.6693〜6699;国際公開第2013041606号;米国特許第8481042号明細書;国際公開第2013177481号;国際公開第2011130613号;国際公開第2011130598号に記載されるものが挙げられる。
例示的微小管安定化剤及び不安定化剤としては、タキサン化合物、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル;メイタンシノイド類、アウリスタチン類及びこれらの類似体、ツブリシンA及びB誘導体、ビンカアルカロイド誘導体、エポチロン類、PM060184及びクリプトフィシン類が挙げられる。
例示的メイタンシノイド類又はメイタンシノイド類似体としては、メイタンシノール及びメイタンシノール類似体、メイタンシン又はDM−1及びDM−4が挙げられ、米国特許第5,208,020号明細書;同第5,416,064号明細書;同第6,333.410号明細書;同第6,441,163号明細書;同第6,716,821号明細書;同第RE39,151号明細書及び同第7,276,497号明細書に記載されるものである。特定の実施形態において、細胞毒性薬剤は、メイタンシノイド、別の一群の抗チューブリン剤(イムノジェン・インコーポレイテッド(ImmunoGen,Inc.);シャリ(Chari)ら著、1992年、キャンサー・リサーチ(Cancer Res.)、第52巻、p.127〜131もまた参照のこと)、メイタンシノイド類又はメイタンシノイド類似体である。好適なメイタンシノイド類の例としては、メイタンシノール及びメイタンシノール類似体が挙げられる。好適なメイタンシノイド類は、米国特許第4,424,219号明細書;同第4,256,746号明細書;同第4,294,757号明細書;同第4,307,016号明細書;同第4,313,946号明細書;同第4,315,929号明細書;同第4,331,598号明細書;同第4,361,650号明細書;同第4,362,663号明細書;同第4,364,866号明細書;同第4,450,254号明細書;同第4,322,348号明細書;同第4,371,533号明細書;同第6,333,410号明細書;同第5,475,092号明細書;同第5,585,499号明細書;及び同第5,846,545号明細書に開示されている。
例示的アウリスタチン類としては、アウリスタチンE(ドラスタチン−10の誘導体としても知られる)、アウリスタチンEB(AEB)、アウリスタチンEFP(AEFP)、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、アウリスタチンF及びドラスタチンが挙げられる。好適なアウリスタチン類はまた、米国特許出願公開第2003/0083263号明細書、同第2011/0020343号明細書、及び同第2011/0070248号明細書;PCT出願国際公開第09/117531号、同第2005/081711号、同第04/010957号;同第02/088172号及び同第01/24763号、及び米国特許第7,498,298号明細書;同第6,884,869号明細書;同第6,323,315号明細書;同第6,239,104号明細書;同第6,124,431号明細書;同第6,034,065号明細書;同第5,780,588号明細書;同第5,767,237号明細書;同第5,665,860号明細書;同第5,663,149号明細書;同第5,635,483号明細書;同第5,599,902号明細書;同第5,554,725号明細書;同第5,530,097号明細書;同第5,521,284号明細書;同第5,504,191号明細書;同第5,410,024号明細書;同第5,138,036号明細書;同第5,076,973号明細書;同第4,986,988号明細書;同第4,978,744号明細書;同第4,879,278号明細書;同第4,816,444号明細書;及び同第4,486,414号明細書(これらの開示は全体として参照により本明細書に援用される)にも記載されている。
例示的ツブリシン化合物としては、米国特許第7,816,377号明細書;同第7,776,814号明細書;同第7,754,885号明細書;米国特許出願公開第2011/0021568号明細書;同第2010/004784号明細書;同第2010/0048490号明細書;同第2010/00240701号明細書;同第2008/0176958号明細書;及びPCT出願国際公開第98/13375号;同第2004/005269号;同第2008/138561号;同第2009/002993号;同第2009/055562号;同第2009/012958号;同第2009/026177号;同第2009/134279号;同第2010/033733号;同第2010/034724号;同第2011/017249号;同第2011/057805号(これらの開示は全体として参照によって本明細書に援用される)に記載される化合物が挙げられる。
例示的ビンカアルカロイド類としては、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びナベルビン(ビノレルビン)が挙げられる。本発明で使用することのできる好適なビンカアルカロイド類はまた、米国特許出願公開第2002/0103136号明細書及び同第2010/0305149号明細書、及び米国特許第7,303,749 B1号明細書(これらの開示は全体として参照により本明細書に援用される)にも開示されている。
例示的エポチロン化合物としては、エポチロンA、B、C、D、E及びF、及びその誘導体が挙げられる。好適なエポチロン化合物及びその誘導体は、例えば、米国特許第6,956,036号明細書;同第6,989,450号明細書;同第6,121,029号明細書;同第6,117,659号明細書;同第6,096,757号明細書;同第6,043,372号明細書;同第5,969,145号明細書;及び同第5,886,026号明細書;及び国際公開第97/19086号;国際公開第98/08849号;国際公開第98/22461号;国際公開第98/25929号;国際公開第98/38192号;国際公開第99/01124号;国際公開第99/02514号;国際公開第99/03848号;国際公開第99/07692号;国際公開第99/27890号;及び国際公開第99/28324号(これらの開示は全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。
例示的クリプトフィシン化合物については、米国特許第6,680,311号明細書及び同第6,747,021号明細書(これらの開示は全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている。
例示的白金化合物としては、シスプラチン(プラチノール(PLATINOL)(登録商標))、カルボプラチン(パラプラチン(PARAPLATIN)(登録商標))、オキサリプラチン(エロキサチン(ELOX ATINE)(登録商標))、イプロプラチン、オルマプラチン、及びテトラプラチンが挙げられる。
例示的トポイソメラーゼI阻害薬としては、カンプトテシン、カンプトテシン、誘導体、カンプトテシン類似体及び非天然カンプトテシン類、例えば、CPT−11(イリノテカン)、SN−38、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、ルビテカン、ギマテカン、カレニテシン、シラテカン、ルートテカン、エキサテカン、ジフロモテカン、ベロテカン、ルートテカン及びS39625などが挙げられる。本発明で使用することのできる他のカンプトテシン化合物としては、例えば、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、第29巻、p.2358〜2363、1986年;ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、第23巻、p.554、1980年;ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、第30巻、p.1774、1987年に記載されるものが挙げられる。
例示的トポイソメラーゼII阻害薬としては、アゾナフィド及びエトポシドが挙げられる。
DNAに作用する更なる薬剤としては、ルルビネクテジン(PM01183)、トラベクテジン(別名エクチナサイジン743又はET−743)及び国際公開第200107711号、国際公開第2003014127号に記載されるとおりの類似体が挙げられる。
血管新生阻害薬としては、限定はされないが、MetAP2阻害薬が挙げられる。
例示的MetAP2阻害薬としては、フマギロール類似体、つまり、ロデスキーニ(Rodeschini)ら著、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(/.Org.Chem.)、第69巻、p.357〜373、2004年及びリュー(Liu)ら著、サイエンス(Science)、第282巻、p.1324〜1327、1998年に記載されるとおり、フマギラミンを含め、MetAP−2がタンパク質からNH2末端メチオニンを取り除く能力を阻害するフマギリンコア構造を含む任意の化合物が挙げられる。「フマギロール類似体」の非限定的な例は、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(/.Org.Chem.)、第69巻、p.357、2004年;ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)、第70巻、p.6870、2005年;欧州特許出願第0 354 787号明細書;ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(/.Med.Chem.)、第49巻、p.5645、2006年;バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー(Bioorg.Med.Chem.)、第11巻、p.5051、2003年;バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー(Bioorg.Med.Chem.)、第14巻、p.91、2004年;テトラへドロン・レターズ(Tet.Lett.)、第40巻、p.4797、1999年;国際公開第99/61432号;米国特許第6,603,812号明細書;同第5,789,405号明細書;同第5,767,293号明細書;同第6,566,541号明細書;及び同第6,207,704号明細書に開示されている。
例示的細胞周期進行阻害薬としては、BMS−387032及びPD0332991などのCDK阻害薬;GSK429286などのRhoキナーゼ阻害薬;AZD7762などのチェックポイントキナーゼ阻害薬;AZD1152、MLN8054及びMLN8237などのオーロラキナーゼ阻害薬;BI 2536、BI6727(ボラセルチブ)、GSK461364、ON−01910(エスチボン)などのPLK阻害薬;及びSB 743921、SB 715992(イスピネシブ)、MK−0731、AZD8477、AZ3146及びARRY−520などのKSP阻害薬が挙げられる。
例示的PI3K/m−TOR/AKTシグナル伝達経路阻害薬としては、ホスホイノシチド3−キナーゼ(PI3K)阻害薬、GSK−3阻害薬、ATM阻害薬、DNA−PK阻害薬及びPDK−1阻害薬が挙げられる。
例示的PI3キナーゼ阻害薬は米国特許第6,608,053号明細書に開示され、BEZ235、BGT226、BKM120、CAL101、CAL263、デメトキシビリジン、GDC−0941、GSK615、IC87114、LY294002、パロミド529、ペリホシン、PF−04691502、PX−866、SAR245408、SAR245409、SF1126、ワートマニン、XL147、XL765、GSK2126458(オミパリシブ)、GDC−0326、GDC−0032(タセリシブ、RG7604)、PF−05212384(ゲダトリシブ、PKI−587)、BAY 80−6946(コパンリシブ)、PF−04691502、PF−04989216、PI−103、PKI−402 VS−5584(SB2343)、GDC−0941、NVP−BEZ235(ダクトリシブ(Dactoslisib))、BGT226、NVP−BKM120(ブパルリシブ)、NVP−BYL719(アルペリシブ)、GSK2636771、AMG−319、GSK2269557、PQR309、PWT143、TGR−1202(RP5264)、PX−866、GDC−0980(アピトリシブ)、AZD8835、MLN1117、DS−7423、ZSTK474、CUDC−907、IPI−145(INK−1197、デュベリシブ)、AZD8186、XL147(SAR245408)、XL765(SAR245409)、CAL−101(イデラリシブ、GS−1101)、GS−9820(アカリシブ)及びKA2237が挙げられる。
例示的AKT阻害薬としては、限定はされないが、AT7867、MK−2206、ペリホシン、GSK690693、イパタセルチブ、AZD5363、TIC10、アフレセルチブ、SC79、AT13148、PHT−427、A−674563、及びCCT128930が挙げられる。
例示的MAPKシグナル伝達経路阻害薬としては、MEK、Ras、JNK、B−Raf及びp38 MAPK阻害薬が挙げられる。
例示的MEK阻害薬は米国特許第7,517,994号明細書に開示されており、GDC−0973、GSK1120212、MSC1936369B、AS703026、R05126766及びR04987655、PD0325901、AZD6244、AZD 8330及びGDC−0973が挙げられる。
例示的B−raf阻害薬としては、CDC−0879、PLX−4032、及びSB590885が挙げられる。
例示的B p38 MAPK阻害薬としては、BIRB 796、LY2228820及びSB202190が挙げられる。
受容体チロシンキナーゼ(RTK)は、無制御な癌細胞の増殖及び血管新生を刺激するシグナル伝達経路に関連することが多い細胞表面受容体である。RTKは、過剰発現するか、又は突然変異を有して受容体の構成的活性化を引き起こすものであり、限定はされないが、VEGFR、EGFR、FGFR、PDGFR、EphR及びRET受容体ファミリー受容体を含め、多数同定されている。例示的RTK特異的標的としては、ErbB2、FLT−3、c−Kit、c−Met、及びHIFが挙げられる。
ErbB2受容体(EGFRファミリー)の例示的阻害薬としては、限定はされないが、AEE788(NVP−AEE 788)、BIBW2992(アファチニブ)、ラパチニブ、エルロチニブ(タルセバ(Tarceva))、及びゲフィチニブ(イレッサ(Iressa))が挙げられる。
2つ以上(more then one)のシグナル伝達経路を標的とする例示的RTK阻害薬(マルチターゲットキナーゼ阻害薬)としては、FGFR、FLT−3、VEGFR−PDGFR及びBcr−Abl受容体を標的とするAP24534(ポナチニブ);FLT−3及びVEGFR−PDGFR受容体を標的とするABT−869(リニファニブ);VEGFR−PDGFR、Flt−1及びVEGF受容体を標的とするAZD2171;VEGFR−PDGFR、FGFR、Flt−3、及びc−Kit受容体を標的とするCHR−258(ドビチニブ)が挙げられる。
例示的キナーゼ阻害薬(inhibtiors)としては、キナーゼATM、ATR、CHK1、CHK2、WEE1、及びRSKの阻害薬が挙げられる。
例示的タンパク質シャペロン阻害薬としては、HSP90阻害薬が挙げられる。例示的HSP90阻害薬としては、17AAG誘導体、BIIB021、BIIB028、SNX−5422、NVP−AUY−922、及びKW−2478が挙げられる。
例示的HDAC阻害薬としては、ベリノスタット(PXD101)、CUDC−101、ドキシノスタット、ITF2357(ジビノスタットギビノスタット、ガビノスタット)、JNJ−26481585、LAQ824(NVP−LAQ824、ダシノスタット)、LBH−589(パノビノスタット)、MC1568、MGCD0103(モセチノスタット)、MS−275(エンチノスタット)、PCI−24781、ピロキサミド(NSC 696085)、SB939、トリコスタチンA、及びボリノスタット(SAHA)が挙げられる。
例示的PARP阻害薬としては、イニパリブ(BSI 201)、オラパリブ(AZD−2281)、ABT−888(ベリパリブ)、AG014699、CEP 9722、MK 4827、KU−0059436(AZD2281)、LT−673、3−アミノベンズアミド、A−966492、及びAZD2461が挙げられる。
例示的Wnt/ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害薬としては、ビスモデギブ(RG3616/GDC−0449)、シクロパミン(11−デオキソジェルビン)(ヘッジホッグ経路阻害薬)、及びXAV−939(Wnt経路阻害薬)が挙げられる。
例示的RNAポリメラーゼ阻害薬としては、アマトキシン類が挙げられる。例示的アマトキシン類としては、a−アマニチン類、β−アマニチン類、γ−アマニチン類、ε−アマニチン類、アマヌリン、アマヌリン酸、アマニンアミド、アマニン、及びプロアマヌリンが挙げられる。
例示的プロテアソーム阻害薬としては、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、ONX 0912、CEP−18770、及びMLN9708が挙げられる。
一実施形態において、本発明の薬物は、非天然カンプトテシン化合物、ビンカアルカロイド、キナーゼ阻害薬(例えば、PI3キナーゼ阻害薬(GDC−0941及びPI−103))、MEK阻害薬、KSP阻害薬、RNAポリメラーゼ(polymerse)阻害薬、PARP阻害薬、ドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、ツブリシン、アウリスタチン又は白金化合物である。具体的な実施形態において、薬物は、SN−38、ビンデシン、ビンブラスチン、PI−103、AZD 8330、アウリスタチンE、アウリスタチンF、デュオカルマイシン化合物、ツブリシン化合物、又はARRY−520の誘導体である。
別の実施形態において、本発明で使用される薬物は、例えば、PI3キナーゼとMEK阻害薬;広域スペクトル細胞毒性化合物と白金化合物;PARP阻害薬と白金化合物;広域スペクトル細胞毒性化合物とPARP阻害薬など、2つ以上の薬物の組み合わせである。
活性薬剤は癌療法薬であってもよい。癌療法薬には、細胞死受容体作動薬、例えばTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)又はFasリガンド、又は細胞死受容体に結合し若しくはそれを活性化させる、又は他の方法でアポトーシスを誘導する任意のリガンド又は抗体が含まれ得る。好適な細胞死受容体としては、限定はされないが、TNFR1、Fas、DR3、DR4、DR5、DR6、LTβR及びこれらの組み合わせが挙げられる。
活性薬剤は、ルルビネクテジン(lurbectidin)及びトラベクテジン(trabectidin)などのDNA副溝結合剤であってもよい。
活性薬剤は、E3ユビキチンリガーゼ阻害薬、デユビキチナーゼ(adeubiquitinase)阻害薬又はNFkB経路阻害薬であってもよい。
活性薬剤は、PTP1B、SHP2、LYP、FAP−1、CD45、STEP、MKP−1、PRL、LMWPTP又はCDC25の阻害薬を含めたホスファターゼ(phopsphatase)阻害薬であってもよい。
活性薬剤は、GAPDH、GLUT1、HK II、PFK、GAPDH、PK、LDH又はMCTの阻害薬など、腫瘍代謝阻害薬であってもよい。
活性薬剤は、EZH2、MLL、DOT1様タンパク質(DOT1L)、ブロモドメイン含有タンパク質4(BRD4)、BRD2、BRD3、NUT、ATAD2、又はSMYD2を含めたエピジェネティックな標的を標的としてもよい。
活性薬剤は、IDO1、IDO2、TDO、CD39、CD73、A2Aアンタゴニスト、STINGアクチベーター、TLRアゴニスト(TLR 1〜13)、ALK5、CBP/EP300ブロモドメイン、ARG1、ARG2、iNOS、PDE5、P2X7、P2Y11、COX2、EP2受容体、又はEP4受容体を標的とする分子(moecules)を含め、癌との闘いを助けるため体の免疫系を標的としてもよい。
活性薬剤は、Bcl−2、IAP、又は脂肪酸シンターゼを標的としてもよい。
一部の実施形態において、活性薬剤は、20−epi−l,25ジヒドロキシビタミンD3、4−イポメアノール、5−エチニルウラシル、9−ジヒドロタキソール、アビラテロン、アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、全tkアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミドクス、アミホスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管新生阻害薬、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリクス、アントラマイシン、抗背側化形態形成タンパク質−1、抗エストロゲン薬、アンチネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、グリシン酸アフィディコリン、アポトーシス遺伝子モジュレータ、アポトーシス調節因子、アプリン酸、ARA−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザシチジン、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、アゼテパ、アゾトマイシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、ベンゾクロリン類、ベンゾデパ、ベンゾイルスタウロスポリン、βラクタム誘導体、β−アレチン、ベタクラマイシンB、ベツリン酸、BFGF阻害薬、ビカルタミド、ビサントレン、塩酸ビサントレン、ビサジリジニルスペルミン、ビスナフィド、ジメシル酸ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、BRC/ABLアンタゴニスト、ブレフレート、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブドチタン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシイミン、カバジタキセル、カクチノマイシン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カルステロン、カンプトテシン、カンプトテシン誘導体、カナリア痘IL−2、カペシタビン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、カレストM3(carest M3)、カルムスチン、アーン700(earn 700)、軟骨由来阻害薬、塩酸カルビシン、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害薬、カスタノスペルミン、セクロピンB、セデフィンゴール、セトロレリクス、クロラムブシル、クロリン類、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シロレマイシン、シスプラチン、cis−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類似体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベシジン816、クリスナトール、メシル酸クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペンタンセラキノン類、シクロホスファミド、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、細胞溶解因子、サイトスタチン、ダカルバジン、ダクリキシマブ、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デヒドロジデムニンB、デスロレリン、デキシホスファミド、デキソルマプラチン、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、デアザグアニン、メシル酸デアザグアニン、ジアジコン、ジデムニンB、ジドクス(didox)、ジエチルノルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、ドロナビノール、ジュアゾマイシン、デュオカルマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エダトレキサート、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロルニチン、塩酸エフロルニチン、エレメン、エルサミトルシン、エミテフール、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、エピルビシン、塩酸エピルビシン、エプリステリド、エルブロゾール、赤血球遺伝子療法ベクター系、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチン類似体、リン酸エストラムスチンナトリウム、エストロゲン作動薬、エストロゲン拮抗薬、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、エキセメスタン、ファドロゾール、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フロクスウリジン、フルアステロン、フルダラビン、リン酸フルダラビン、塩酸フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin hydrochloride)、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホルフェニメクス、ホルメスタン、ホスキドン、フォストリエシン、フォストリエシンナトリウム、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリクス、ゼラチナーゼ阻害薬、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、グルタチオン阻害薬、ヘプスルファム、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒドロキシウレア、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、塩酸イダルビシン、イドキシフェン、イドラマントン、イホスファミド、イルモホシン、イロマスタット、イミダゾアクリドン類、イミキモド、免疫賦活剤ペプチド、インスリン様成長因子−1受容体阻害薬、インターフェロン作動薬、インターフェロンα−2A、インターフェロンα−2B、インターフェロンα−Nl、インターフェロンα−N3、インターフェロンβ−IA、インターフェロンγ−IB、インターフェロン類、インターロイキン類、ヨーベングアン、ヨードドキソルビシン、イプロプラチン、イリノテカン、塩酸イリノテカン、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、三酢酸ラメラリン−N、ランレオチド、ラロタキセル、酢酸ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトルスタチン、レトロゾール、白血病阻害因子、白血球αインターフェロン、酢酸ロイプロリド、ロイプロリド/エストロゲン/プロゲステロン、リュープロレリン、レバミゾール、リアロゾール、塩酸リアロゾール、線状ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド7、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロニダミン、ロソキサントロン、塩酸ロソキサントロン、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、細胞溶解性ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリライシン阻害薬、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害薬、メイタンシン、メイタンシノイド、メルタンシン(DM1)、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルバロン、メルカプトプリン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトクロプラミド、メトプリン、メツレデパ、微細藻類プロテインキナーゼC阻害薬、MIF阻害薬、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトマルシン、マイトマイシン、マイトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトスペル、ミトタン、マイトトキシン線維芽細胞成長因子−サポリン、ミトキサントロン、塩酸ミトキサントロン、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホスホリルリピドa/マイコバクテリウム(myobacterium)細胞壁SK、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害薬、多腫瘍抑制因子1ベースの療法、マスタード抗癌剤、ミカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミコフェノール酸、ミリアポロン、n−アセチルジナリン、ナファレリン、ナグレスチプ、ナロキソン/ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、一酸化窒素モジュレータ、ニトロキシド抗酸化剤、ニトルリン、ノコダゾール、ノガラマイシン、n−置換ベンズアミド、06−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導因子、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、オキシスラン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペグアスパラガーゼ、ペルデシン、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、硫酸ペプロマイシン、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、フェニル酢酸塩、ホスファターゼ阻害薬、ピシバニール、塩酸ピロカルピン、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、塩酸ピロキサントロン、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノーゲンアクチベーター阻害因子、白金(IV)錯体、白金化合物、白金−トリアミン錯体、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、プロピルビス−アクリドン、プロスタグランジンJ2、前立腺癌抗アンドロゲン薬、プロテアソーム阻害薬、プロテインAベースの免疫調節薬、プロテインキナーゼC阻害薬、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害薬、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害薬、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、プルプリン類、ピラゾフリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート、RAFアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、RASファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害薬、RAS阻害薬、RAS−GAP阻害薬、脱メチル化レテリプチン、エチドロン酸レニウムRE 186、リゾキシン、リボプリン、リボザイム、RIIレチンアミド、RNAi、ログレチミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメックス、ルビギノンBl、ルボキシル、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、サイントピン、sarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、SDI 1模倣体、セムスチン、老化由来阻害薬1、センスオリゴヌクレオチド、siRNA、シグナル伝達阻害薬、シグナル伝達モジュレータ、シムトラゼン、単鎖抗原結合タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ボロカプテイトナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合タンパク質、ソネルミン、スパルフォセートナトリウム、スパルホス酸、スパルソマイシン、スピカマイシンD、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害薬、幹細胞分裂阻害薬、スチピアミド、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ストロメライシン阻害薬、スルフィノシン、スロフェヌル、超活性血管作動性腸管ペプチド拮抗薬、スラジスタ、スラミン、スウェインソニン、合成グリコサミノグリカン類、タリソマイシン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフール、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害薬、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、サリドマイド、チアミプリン、チオコラリン、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣体、サイマルファシン、サイモポエチン受容体作動薬、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、エチルエチオプルプリンすず、チラパザミン、チタノ
センジクロリド、塩酸トポテカン、トプセンチン、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害薬、酢酸トレストロン、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、塩酸ツブロゾール、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害薬、チルホスチン類、UBC阻害薬、ウベニメクス、ウラシルマスタード、ウレデパ、泌尿生殖洞由来成長阻害因子、ウロキナーゼ受容体拮抗薬、バプレオチド、バリオリンB、ベラレソール、ベラミン、ベルジン類、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシナート、硫酸ビンレウロシン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、ビンキサルチン、硫酸ビンゾリジン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマー、又は塩酸ゾルビシンであってもよい。
活性薬剤は、1つ以上の金属中心を含む無機化合物又は有機金属化合物であってもよい。一部の例において、化合物は1つの金属中心を含む。活性薬剤は、例えば、白金化合物、ルテニウム化合物(例えば、trans−[RuCl2(DMSO)4]、又はtrans−[RuCl4(イミダゾール)2等)、コバルト化合物、銅化合物、又は鉄化合物であってもよい。
一部の実施形態において、活性薬剤は小分子である。一部の実施形態において、活性薬剤は小分子細胞毒である。一実施形態において、活性薬剤はカバジタキセル、又はその類似体、誘導体、プロドラッグ、若しくは薬学的に許容可能な塩である。別の実施形態において、活性薬剤はメルタンシン(DM1)又はDM4、又はその類似体、誘導体、プロドラッグ、若しくは薬学的に許容可能な塩である。DM1又はDM4は、チューブリンに結合することにより微小管集合を阻害する。DM1の構造を以下に示す:
一部の実施形態において、活性薬剤ZはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)、又はその類似体、誘導体、プロドラッグ、若しくは薬学的に許容可能な塩である。MMAEの構造を以下に示す:
一部の実施形態において、活性薬剤Zは、配列選択的DNA副溝結合架橋剤である。例えば、Zは、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、PBD二量体、又はその類似体、誘導体、プロドラッグ、若しくは薬学的に許容可能な塩であってもよい。PBD及びPBD二量体の構造を以下に示す:
一部の実施形態において、活性薬剤ZはトポイソメラーゼI阻害薬、例えば、カンプトテシン、イリノテカン、SN−38、又はその類似体、誘導体、プロドラッグ、若しくは薬学的に許容可能な塩である。
国際公開第2013158644号、国際公開第2015038649号、国際公開第2015066053号、国際公開第2015116774号、国際公開第2015134464号、国際公開第2015143004号、国際公開第2015184246号(これらの各々の内容は、全体として参照により本明細書に援用される)に開示される任意の細胞毒性部分、例えば、ベンダムスチン、VDA、ドキソルビシン、ペメトレキセド、ボリノスタット、レナリドマイド、ドセタキセル、17−AAG、5−FU、アビラテロン、クリゾチニブ、KW−2189、BUMB2、DC1、CC−1065、アドゼレシン、又はその誘導体/類似体が、本発明のコンジュゲートにおける活性薬剤として使用され得る。
PI3K阻害薬
PI3K/AKT/mTORシグナル伝達ネットワーク(PI3K経路)は、癌の多くの特徴:細胞周期、生存、代謝、運動及びゲノム安定性を制御する。PI3K経路はヒト癌において最も高頻度に変化する経路である。PI3Kの活性化は、PIK3CAの突然変異又は増幅、及び機能喪失型腫瘍抑制因子PTENによって癌と直接関連付けられている。PIK3CA遺伝子は、2番目に高い頻度で突然変異する癌遺伝子である。PTENは、中でも最も高頻度に突然変異する腫瘍抑制遺伝子である。経路阻害薬は異種移植モデルにおいて抗腫瘍有効性を実証するが、毒性が患者の臨床的有益性を制限する。PI3K阻害薬をHSP90標的化部分とコンジュゲートすることにより、低い毒性で腫瘍におけるPI3K阻害が十分となるようにPI3K阻害薬を送達する方法がもたらされる。
PI3K阻害薬を含むコンジュゲートを使用して血液学的悪性腫瘍及び固形腫瘍を治療し得る。一部の実施形態では、PI3K阻害薬を含むコンジュゲートを使用して、結腸直腸癌、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、結腸癌、胃癌、腎癌、肺癌、又は転移性乳癌を含めた乳癌が治療される。一部の実施形態では、PI3K阻害薬を含むコンジュゲートを使用してPIK3CA変異癌又はHER2陽性癌が治療される。
任意のPI3K阻害薬を活性薬剤として使用し得る。一部の実施形態において、PI3K阻害薬は小分子であってもよい。非限定的な例としては、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、BAY 80−6946(コパンリシブ)、PF−04691502、PI−103、BGT226(NVP−BGT226)、アピトリシブ(GDC−0980、RG7422)、デュベリシブ(IPI−145、INK1197)、AZD8186、ピララリシブ(XL147)、PIK−93、イデラリシブ(GS−1101)、MLN1117、VS−5584、SB2343、GDC−0941、BM120、NVP−BKM120、ブパルリシブ、AZD8835、XL765(SAR245409)、GS−9820 アカリシブ、GSK2636771、AMG−319、IPI−549、ペリホシン、アルペリシブ、TGR 1202(RP5264)、PX−866、AMG−319、GDC−0980、GDC−0941、サノフィ(Sanofi)XL147、XL499、XL756、XL147、PF−46915032、BKM
120、CAL 263、SF1126、PX−886、KA2237、二重PI3K阻害薬(例えば、ノバルティス(Novartis)BEZ235)、イソキノリノン、又はその誘導体/類似体が挙げられる。
一部の実施形態において、PI3K阻害薬はPI3Kのデルタ及びガンマアイソフォームの阻害薬であってもよい。一部の実施形態において、PI3K阻害薬はPI3Kのアルファアイソフォームの阻害薬である。他の実施形態において、PI3K阻害薬はPI3Kの1つ以上のアルファ、ベータ、デルタ及びガンマアイソフォームの阻害薬である。PI3K阻害薬の非限定的な例としては、米国特許第9,546,180号明細書(インフィニティ・ファーマシューティカルズ(Infinity Pharmaceuticals))、国際公開第2009088990号(インテリキン・インコーポレイティッド(Intellikine Inc.))、国際公開第2011008302号(インテリキン・インコーポレイティッド(Intellikine Inc.))、国際公開第2010036380号(インテリキン・インコーポレイティッド(Intellikine Inc.))、国際公開第2010/006086号(インテリキン・インコーポレイティッド(Intellikine Inc.))、国際公開第2005113556号(アイコス・コーポレイション(Icos Corp.))、米国特許出願公開第2011/0046165号明細書(インテリキン・インコーポレイティッド(Intellikine Inc.))、又は米国特許出願公開第20130315865号明細書(ファイザー(Pfizer))(これらの各々の内容は、全体として参照により本明細書に援用される)に開示される化合物が挙げられる。
一部の実施形態において、PI3K阻害薬は、オミパリシブ(GSK458)又はその誘導体/類似体、BAY 80−6946(コパンリシブ)又はその誘導体/類似体、PF−04691502又はその誘導体/類似体、PI−103又はその誘導体/類似体、BGT226(NVP−BGT226)又はその誘導体/類似体、アピトリシブ(GDC−0980、RG7422)又はその誘導体/類似体、デュベリシブ(IPI−145、INK1197)又はその誘導体/類似体、AZD8186又はその誘導体/類似体、ピララリシブ(XL147)又はその誘導体/類似体、及びPIK−93又はその誘導体/類似体の群から選択される。
詳細には、本願のコンジュゲートは、オミパリシブ(GSK458)又はその誘導体/類似体、BAY 80−6946(コパンリシブ)又はその誘導体/類似体、PF−04691502又はその誘導体/類似体、又はPI−103又はその誘導体/類似体に結合したHSP90標的化部分を含み得る。
PARP阻害薬
ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)は、一本鎖DNA切断の修復及びプログラム細胞死を含めた幾つもの細胞過程に関わる酵素ファミリーである。小細胞肺癌(SCLC)細胞又はBRCA変異癌細胞などの一部の癌細胞は、普通の細胞よりも一層PARPに依存し、そのためPARP阻害にユニークに感受性を示す。多くのPARP阻害薬には、2つの作用の可能性:PARP機能の阻害又は一本鎖DNA切断へのPARPの捕捉がある。
PARP阻害薬の主な毒性は血液学的なもので(血小板減少症)、時に骨髄抑制が見られる。HSP90媒介性PARP阻害薬を送達すると、腫瘍:血漿比が改善されることによりPARP阻害薬の腫瘍内濃度が増加し、血液学的毒性が低下する。コンジュゲートからのPARP阻害薬の持続放出は継続的な阻害をもたらし、PARP阻害薬単独よりも高い有効性を生み出し得る。
PARP阻害薬を含むコンジュゲートを使用して血液学的悪性腫瘍及び固形腫瘍を治療し得る。BRCA変異癌は二本鎖切断修復機構が障害されているため、唯一のDNA修復機構としてPARPに依存している。PARPの阻害は、BRCA変異癌において二本鎖DNA切断及び細胞死につながる。BRCA1/2タンパク質が低い任意の癌細胞が、PARP阻害に感受性を有し得る。PARPはSCLC細胞で過剰発現し、そのためSCLC細胞はPARP阻害に対する感受性がより高い。一部の実施形態では、PARP阻害薬を含むコンジュゲートを使用して、SCLC、非小細胞肺癌(NSCLC)、トリプルネガティブ乳癌及びBRCA変異乳癌を含む乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、前立腺癌、黒色腫、又は転移性乳癌、転移性卵巣癌、及び転移性黒色腫を含む転移性癌が治療される。
任意のPARP阻害薬を活性薬剤として使用し得る。一部の実施形態において、PARP阻害薬は小分子であってもよい。非限定的な例としては、オラパリブ、ベリパリブ(ABT−888)、ルカパリブ(AG014699又はPF−01367338)、ガネテスピブ、タラゾパリブ(BMN673)、ニラパリブ、イニパリブ(BSI 201)、CEP 9722、E7016、BGB−290、又はその誘導体/類似体が挙げられる。
一部の実施形態において、PARP阻害薬は、オラパリブ又はその誘導体/類似体及びタラゾパリブ又はその誘導体/類似体の群から選択される。本願のコンジュゲートは、オラパリブ又はその誘導体/類似体又はタラゾパリブ又はその誘導体/類似体に結合したHSP90標的化部分を含み得る。
一部の実施形態において、PARP阻害薬又はその誘導体を含むコンジュゲートはPARP阻害薬として不活性であり、PARP阻害活性にリンカー放出を必要とする。かかるコンジュゲートはPARP阻害薬単独よりも高い最大耐量(MTD)を有し得る。リンカーはジスルフィド結合を含んでもよく、これはサイトゾルにおける還元環境で切断されてコンジュゲート中のPARP阻害薬を放出する。例えば、オラパリブ又はその誘導体又はタラゾパリブ又はその誘導体を複素環上のリンカーに結合してPARP阻害機能を不活性化してもよい。PARP阻害薬として不活性化されているオラパリブを含むコンジュゲート(cojugates)及びPARP阻害薬として不活性化されているタラゾパリブを含むコンジュゲートを以下に示す。
オラパリブコンジュゲート:
タラゾパリブコンジュゲート:
PI3K経路における一部のタンパク質は、PARP阻害薬による治療後に上方制御される。PI3K阻害薬はDNA損傷を増加させ、細胞(例えばトリプルネガティブ乳癌細胞及びSCLC細胞)のPARP阻害に対する感受性を高める。従って、PI3K阻害剤とPARP阻害剤との組み合わせは相乗効果を有し、いずれかの薬剤単独の効果を増強する。一部の実施形態では、PI3K阻害薬を含むコンジュゲートとPARP阻害薬を含むコンジュゲートとの組み合わせが投与される。一部の実施形態では、コンジュゲートは2つ以上の活性薬剤を含み、ここでコンジュゲートは少なくとも1つのPARP阻害薬と少なくとも1つのPI3K阻害薬とを含む。
B.HSP90標的化部分
本明細書に記載されるとおりの標的化リガンド(標的化部分とも称される)には、1つ以上のHSP90タンパク質に結合することのできる任意の分子が含まれる。かかる標的化リガンドは、ペプチド、抗体ミメティクス、核酸(例えばアプタマー)、ポリペプチド(例えば抗体)、糖タンパク質類、小分子、炭水化物、又は脂質であってもよい。
標的化部分Xは、限定はされないが、天然化合物(例えば、ゲルダナマイシン及びラディシコール)、及び合成化合物、例えば、ゲルダナマイシン類似体17−AAG(即ち、17−アリルアミノゲルダナマイシン)、プリンスキャフォールドHSP90阻害薬シリーズ、例えば、PU24FC1(ホー・H.(He H.)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、第49巻、p.381、2006年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、BIIB021(ラングレン・K.(Lundgren K.)ら著、モレキュラー・キャンサー・セラピューティクス(Mol.Cancer Ther.)、第8巻、第4号、p.921、2009年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、4,5−ジアリールピラゾール類(チャン・K.M.(Cheung K.M.)ら著、バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorg.Med.Chem.Lett.)、第15巻、p.3338、2005年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、3−アリール,4−カルボキサミドピラゾール類(ブラフ・P.A.(Brough P.A.)ら著、バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorg.Med.Chem.Lett.)、第15巻、p.5197、2005年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、4,5−ジアリールイソオキサゾール類(ブラフ・P.A.(Brough P.A.)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、第51巻、p.196、2008年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、3,4−ジアリールピラゾールレソルシノール誘導体(ディモク・B.W.(Dymock B.W.)ら著、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、第48巻、p.4212、2005年、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、チエノ[2,3−d]ピリミジン(ベルナリス(VERNALIS)らに対する国際公開第2005034950号、この内容は全体として参照により本明細書に援用される)、ジャンニーニ(Giannini)らに対する欧州特許第2655345号明細書(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)の式Iのアリールトリアゾール誘導体、又はHSP90結合リガンドの任意の他の例又はその誘導体/類似体など、任意のHSP90結合部分であってよい。
一部の実施形態において、HSP90結合部分は、3つのヘテロ原子を含む複素環式誘導体であってもよい。マトゥリス(MATULIS)らに対する国際公開第2009134110号(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)は、良好なHSP90結合親和性を実証する4,5−ジアリールチアジアゾールを開示している。これはどちらかと言えば中程度の細胞成長阻害であるものの、本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。別のクラスのアザ複素環付加物、即ちトリアゾール誘導体又はその類似体も、本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。例えば、1,2,4−トリアゾールスキャフォールドは、HSP90阻害特性を有するとの文献が豊富に出ている。バーリソン(BURLISON)ら(シンタ・ファーマシューティカルズ・コーポレイション(Synta Pharmaceuticals Corp.))に対する国際公開第2009139916号(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)は、高いマイクロモル濃度でHSP90を阻害する三環式1,2,4−トリアゾール誘導体を開示している。国際公開第2009139916号に開示される任意の三環式1,2,4−トリアゾール誘導体又はその誘導体/類似体を本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。国際公開第2010017479号及び国際公開第2010017545号(シンタ・ファーマシューティカルズ・コーポレイション(Synta Pharmaceuticals Corp.))に開示される任意の三置換1,2,4−トリアゾール誘導体又はその誘導体/類似体(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)を本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。別の例では、国際公開第2006055760号(シンタ・ファーマシューティカルズ・コーポレイション(Synta Pharmaceuticals Corp.))(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)に開示されるガネテスピブ(旧称STA−9090、又はその高度に可溶性のリン酸塩プロドラッグSTA−1474)と称されるトリアゾロン含有HSP90阻害薬、又はその誘導体/類似体を本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用し得る。
一部の実施形態において、ガネテスピブ又はその誘導体/類似体が標的化部分として使用され得る。ガネテスピブ誘導体/類似体の非限定的な例を以下に示す。
いくつかの実施形態において、オナレスピブ(AT13387)又はその誘導体/類似体は、本発明のコンジュゲートにおける標的化部分として使用され得る。オナレスピブ及びオナレスピブ誘導体/類似体の非限定的な例を以下に示す。
国際公開第2013158644号、国際公開第2015038649号、国際公開第2015066053号、国際公開第2015116774号、国際公開第2015134464号、国際公開第2015143004号、国際公開第2015184246号(これらの内容は全体として参照により本明細書に援用される)に開示される任意のHSP90リガンド又はHSP90阻害薬、又はその誘導体/類似体を本発明のコンジュゲートにおけるHSP90結合部分として使用してもよく、例えば以下である:
式I
式中、R1は、アルキル、アリール、ハロゲン化物、カルボキサミド又はスルホンアミドであってもよく;R2は、アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってもよく、ここでR2が6員アリール又はヘテロアリールであるとき、R2は、それを介してリンカーLが結合するトリアゾール環上の結合点に対して3位及び4位で置換され;及びR3は、SH、OH、−CONHR4、アリール又はヘテロアリールであってもよく、ここでR3が6員アリール又はヘテロアリールであるとき、R3は3又は4位で置換される;
式II
式中、R1は、アルキル、アリール、ハロ、カルボキサミド、スルホンアミドであってもよく;及びR2は、任意選択で置換アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってもよい。かかる化合物の例としては、5−(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)−N−(2−モルホリノエチル)−4−(4−(モルホリノメチル)フェニル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド及び5−(2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)−4−(4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)−N−(2,2,2−トリフルオロエチル)−4H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミドが挙げられる;
式III
式中、X、Y、及びZは、独立に、CH、N、O又はSであってもよく(適切な置換を有する、及び環の対応する原子及び芳香族性の価数を満たす);R1は、アルキル、アリール、ハロゲン化物、カルボキサミド又はスルホンアミドであってもよく;R2は、置換アルキル、シクロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってもよく、ここでリンカーLは直接結合するか、又はこれらの環上の伸びた置換に結合する;R3は、SH、OH、NR4R5及び−CONHR6であってもよく、それにエフェクター部分が結合し得る;R4及びR5は、独立に、H、アルキル、アリール、又はヘテロアリールであってもよく;及びR6は、エフェクター部分が結合し得る最低1つの官能基を有するアルキル、アリール、又はヘテロアリールであってもよい;又は
式IV
式中、R1は、アルキル、アリール、ハロ、カルボキサミド又はスルホンアミドであってもよく;R2及びR3は、独立に、ヒドロキシ、ハロゲン、C1〜C2アルコキシ、アミノ、モノ−及びジ−C1〜C2アルキルアミノのうちの1つ以上によって任意選択で置換されているC1〜C5ヒドロカルビル基;5員〜12員アリール又はヘテロアリール基であり;又は、R2及びR3は、それらが結合している窒素原子と一緒になって4員〜8員単環式複素環基を形成し、そのうち最大5環員がO、N及びSから選択される。かかる化合物の例としては、AT−13387が挙げられる。
HSP90標的化部分は、ガネテスピブ、ルミネスピブ(AUY−922、NVP−AUY922)、デビオ−0932、MPC−3100、オナレスピブ(AT−13387)、SNX−2112、17−アミノ−ゲルダナマイシンヒドロキノン、PU−H71、AT13387、又はその誘導体/類似体であってもよい。
HSP90標的化部分は、SNX5422(PF−04929113)、又は米国特許第8080556号明細書(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2008096218号(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2006117669号(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2008059368号(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2008053319号(ファイザー(Pfizer))、国際公開第2006117669号(ファイザー(Pfizer))、欧州特許第1885701号明細書(ノバルティス(Novartis))、欧州特許第1776110号明細書(ノバルティス(Novartis))、欧州特許第2572709号明細書(ノバルティス(Novartis))、国際公開第2012131413号(デビオファーム(Debiopharm))、又は国際公開第2012131468号(デビオファーム(Debiopharm))(これらの各々の内容は、全体として参照により本明細書に援用される)に開示される任意の他のHSP90阻害薬であってもよい。
HSP90標的化部分はまた、PETイメージング用に124I放射性標識されたHSP90阻害薬であるPU−H71又はその誘導体/類似体であってもよい。
SNX−2112、17−アミノ−ゲルダナマイシンヒドロキノン、PU−H71、又はAT13387を含むコンジュゲートは、以下の構造を有し得る:
いくつかの実施形態では、HSP90標的化部分は、サンサルバミドA誘導体を含む。サンサルバミドA(SanA)は、海洋菌から分離された環状ペンタペプチドでであり、HSP90に結合する。Alexanderら、J Med Chem,vol.52(24):7927(2009)(その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されている任意のジサンサルバミドA誘導体(二量体化されたサンA分子)、例えばAlexanderのFigure1におけるDi−SanA分子を、本開示のコンジュゲートの標的化部分として使用することができる。
特定の実施形態において、本コンジュゲートの1つ又は複数の標的化部分は、コンジュゲートの構成成分のモル重量百分率の合計が100%になるようにして、約0.1%〜約10%、又は約1%〜約10%、又は約10%〜約20%、又は約20%〜約30%、又は約30%〜約40%、又は約40%〜約50%、又は約50%〜約60%、又は約60%〜約70%、又は約70%〜約80%、又は約80%〜約90%、又は約90%〜約99%の所定のモル重量百分率で存在する。本コンジュゲートの標的化部分の量はまた、活性薬剤に対する比率として、例えば、約10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4;1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、又は1:10のリガンド対活性薬剤比で表すこともできる。
C.リンカー
本コンジュゲートは、活性薬剤と標的化部分とをつなぐ1つ以上のリンカーを含有する。リンカーYが1つ以上の活性薬剤と1つ以上の標的化リガンドとに結合することによってコンジュゲートが形成される。リンカーYは、エステル結合、ジスルフィド、アミド、アシルヒドラゾン、エーテル、カルバメート、炭酸塩、及び尿素から独立して選択される官能基によって標的化部分X及び活性薬剤Zに付加される。或いはリンカーは、チオールとマレイミドとの間、アジドとアルキンとの間のコンジュゲーションによってもたらされるような、切断不可能な基によって標的化リガンド又は活性薬物のいずれかに付加されてもよい。リンカーは、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールからなる群から独立して選択され、ここでアルキル、アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリール基の各々は、任意選択で、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換されており、ここでカルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルの各々は、任意選択で、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、エーテル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アミド、カルバメート、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルから各々独立して選択される1つ以上の基によって置換されている。
一部の実施形態において、リンカーは、切断可能である切断可能官能基を含む。切断可能官能基はインビボで加水分解され得るか、又は酵素的に、例えばカテプシンBによって加水分解されるように設計され得る。「切断可能」リンカーとは、本明細書で使用されるとき、物理的又は化学的に切断されることのできる任意のリンカーを指す。物理的切断の例は、光、放射線放射又は熱による切断であり得る一方、化学的切断の例には、酸化還元反応による切断、加水分解、pH依存的切断又は酵素による切断が含まれる。例えば、切断可能官能基はジスルフィド結合又はカルバメート結合であってもよい。
一部の実施形態においてリンカーのアルキル鎖は、任意選択で、−O−、−C(=O)−、−NR、−O−C(=O)−NR−、−S−、−S−S−から選択される1つ以上の原子又は基によって分断されていてもよい。リンカーは、コハク酸、グルタル酸又はジグリコール酸のジカルボン酸誘導体から選択され得る。一部の実施形態において、リンカーYはX’−R1−Y’−R2−Z’であってもよく、及び本コンジュゲートは式Ia:
[式中、Xは上記に定義した標的化部分であり;Zは活性薬剤であり;X’、R1、Y’、R2及びZ’は本明細書に定義するとおりである]に係る化合物であり得る。
X’は存在しないか、又はカルボニル、アミド、尿素、アミノ、エステル、アリール、アリールカルボニル、アリールオキシ、アリールアミノ、1つ以上の天然又は非天然アミノ酸、チオ又はスクシンイミドから独立して選択されるかのいずれかであり;R1及びR2は存在しないか、又はアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ポリエチレングリコール(2〜30単位)で構成されるかのいずれかであり;Y’は存在しないか、置換又は非置換1,2−ジアミノエタン、ポリエチレングリコール(2〜30単位)又はアミドであり;Z’は存在しないか、又はカルボニル、アミド、尿素、アミノ、エステル、アリール、アリールカルボニル、アリールオキシ、アリールアミノ、チオ又はスクシンイミドから独立して選択されるかのいずれかである。一部の実施形態において、リンカーは、1つの活性薬剤分子を2つ以上のリガンドに連結させること、又は1つのリガンドを2つ以上の活性薬剤分子に連結させることを可能にし得る。
一部の実施形態において、リンカーYはAmであり、及び本コンジュゲートは式Ib:
[式中、Aは本明細書で定義され、m=0〜20]に係る化合物であり得る。
式IaのAはスペーサ単位であり、存在しないか、又は以下の置換基から独立して選択されるかのいずれかである。各置換基について、破線は、X、Z又はAの別の独立して選択される単位との置換部位を表し、ここでX、Z、又はAは置換基のいずれの側にも付加され得る:
[式中、z=0〜40、RはH又は任意選択で置換されているアルキル基であり、及びR’は天然又は非天然のいずれかのアミノ酸に見られる任意の側鎖である]。
一部の実施形態において、本コンジュゲートは、式Ic:
[式中、Aは上記に定義され、m=0〜40、n=0〜40、x=1〜5、y=1〜5、及びCは本明細書に定義される分枝状要素である]に係る化合物であり得る。
式IcのCは、リジン、2,3−ジアミノプロパン酸、2,4−ジアミノ酪酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びシステインなどのアミノ酸を含めた、アミン類、カルボン酸類、チオール類、又はスクシンイミド類から選択される、スペーサ単位、リガンド、又は活性薬物を共有結合的に付加するための3〜6個の官能基を含有する分枝状単位である。
コンジュゲートの非限定的な例
活性薬剤としてのDM1
一部の実施形態において、活性薬剤ZはDM1であり、HSP90標的化部分Xはガネテスピブ又はその誘導体/類似体であり、ここで活性薬剤Zと標的化部分Xとは切断可能リンカーによって結合されている。切断可能リンカーは、還元環境であるサイトゾルにおいて活性薬剤の放出が可能なジスルフィド結合を含んでもよい。コンジュゲートの非限定的な例は、化合物1、2、3、及び14である。
活性薬剤としてのMMAE
一部の実施形態において、活性薬剤ZはMMAEであり、HSP90標的化部分Xはガネテスピブ又はその誘導体/類似体であり、ここで活性薬剤Zと標的化部分Xとは切断可能リンカーによって結合されている。切断可能リンカーは、還元環境であるサイトゾルにおいて活性薬剤の放出が可能なジスルフィド結合を含んでもよい。コンジュゲートの非限定的な例は、化合物15及び16である。
活性薬剤としてのPARP阻害薬
一部の実施形態において、活性薬剤ZはPARP阻害薬であり、HSP90標的化部分Xはガネテスピブ又はその誘導体/類似体であり、ここで活性薬剤Zと標的化部分Xとは切断可能リンカーによって結合されている。PARP阻害薬はオラパリブ又はタラゾパリブであってもよい。切断リンカー(cleave linker)はジスルフィド結合を含み得る。
活性薬剤としてのオラパリブ
一部の実施形態において、活性薬剤Zはオラパリブ又はその誘導体/類似体であり、HSP90標的化部分Xはガネテスピブ又はその誘導体/類似体である。コンジュゲートの一般構造を以下に示す:
一部の実施形態において、切断可能リンカーはジスルフィド結合を含み得る。一部の実施形態において、ジスルフィドリンカーはスペーサ及びカルバメート基を含む。コンジュゲートの構造を以下に示す:
式中、Xは水素又は非水素置換基であり、及びRは水素又は非水素置換基である。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、ジスルフィドに隣接するR基は血漿及び腫瘍安定性に大きい影響を与える。Rが水素でないとき、例えばRが−Meであるとき、より徐放性の高いジスルフィドリンカーが徐放プロファイルをもたらす。カルバメート置換基Xが水素でないとき、コンジュゲートの血漿中半減期が改善される。スペーサは腫瘍細胞におけるコンジュゲートの半減期及び質量回復を改善する。スペーサは、限定はされないが、−O−CH2CH2−、
であってもよい。
一部の実施形態において、Rはメチル基であり、コンジュゲートの例は以下の構造
(式中、R’はH又は置換されていてもよい任意の他の置換基、例えばアルキル基である)を有し得る。
R’=Hのとき、コンジュゲートは、以下の構造を有する化合物4である。
一部の実施形態において、R’は水素でなく、かかるコンジュゲートは化合物4よりも高い安定性を有し得る。R’が水素でないコンジュゲートの一つの非限定的な例は、R’=−CH2CH2NMe2の化合物5であり、これは以下の構造を有する。
一部の実施形態において、RはHであり、コンジュゲートは以下の構造
(式中、R’はH又は置換されていてもよい任意の他の置換基、例えばアルキル基である)を有する。
R’=−CH2CH2NMe2のとき、コンジュゲートは以下の構造を有する。
一部の実施形態において、切断可能リンカーはジスルフィド結合及びスペーサを含み得る:
スペーサが
を含むとき、コンジュゲートは以下の構造を有する。
スペーサが
を含むとき、コンジュゲートは以下の構造を有する。
活性薬剤としてのタラゾパリブ
一部の実施形態において、活性薬剤Zはタラゾパリブ又はその誘導体/類似体であり、HSP90標的化部分Xはガネテスピブ又はその誘導体/類似体である。コンジュゲートの一般構造を以下に示す:
コンジュゲートの一つの限定的な例は以下の構造を有する。
活性薬剤としてのPI3K阻害薬
一部の実施形態において、活性薬剤ZはPI3K阻害薬であり、HSP90標的化部分Xはガネテスピブ又はその誘導体/類似体であり、ここで活性薬剤Zと標的化部分Xとはリンカーによって結合されている。PI3K阻害薬はPI−103又はPF−04691502であってもよい。リンカーは、ジスルフィド結合を含む切断可能リンカーであってもよい。コンジュゲートは切断可能なカルバメート基を含んでもよい。コンジュゲートの非限定的な例は、化合物10、11、12、及び13であり、ここで化合物10、12及び13はPI−103及びガネテスピブの誘導体を含み、化合物11はPF−04691502及びガネテスピブの誘導体(derative)を含む。
活性薬剤としてのコパンリシブ
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、ペイロードとしてコパンリシブ又はそのフラグメント/誘導体/類似体を含む。
コパンリシブのフラグメント/誘導体/類似体は、
の構造を有してもよい。
標的化部分は、TM1、TM2、TM3、TM4、TM5、及びTM8などのガネテスピブ誘導体であってもよいが、これらに限定されない。標的化部分はまた、限定するものではないが、TM6及びTM7などのオナレスピブ誘導体であってもよい。コパンリシブ又はその誘導体/類似体を含むコンジュゲートの非限定的な例には、以下が含まれる:
活性薬剤としてのオミパリシブ
いくつかの実施形態では、コンジュゲートはペイロードとしてオミパリシブ又はそのフラグメント/誘導体/類似体を含む。オミパリシブのフラグメント/誘導体/類似体は、構造
を含み得る。
標的化部分は、TM1、TM2、TM3、TM4、TM5、及びTM8などのガネテスピブ誘導体であり得るが、これらに限定されない。標的化部分はまた、TM6及びTM7などであるがこれらに限定されないオナレスピブ誘導体であってもよい。コパンリシブ又はその誘導体/類似体を含むコンジュゲートの非限定的な例には、以下が含まれる:
活性薬剤としてのPI−103
いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、ペイロードとしてPI−103又はそのフラグメント/誘導体/類似体を含む。PI−103フラグメント/誘導体/類似体は、
の構造を含み得る。標的化部分は、TM1、TM2、TM3、TM4、TM5、及びTM8などのガネテスピブ誘導体であり得るが、これらに限定されない。標的化部分はまた、TM6及びTM7などであるがこれらに限定されないオナレスピブ誘導体であってもよい。コパンリシブ又はその誘導体/類似体を含むコンジュゲートの非限定的な例には、以下が含まれる:
D.マスキング部分
本開示はまた、マスキング部分に結合されたコンジュゲートを含む活性化可能な組成物を提供し、ここで、コンジュゲートはHSP90に結合する能力を有する。このようなコンジュゲートは、マスキングされたコンジュゲートと呼ばれる。標的化部分のHSP90への結合は、マスキング部分によって阻害または妨害され得る。例えば、結合は、マスキング部分の存在によって立体的に妨害され得るか、またはマスキング部分の電荷によって阻害され得る。
マスキング部分の切断、コンホメーションの変化、又は化学変換により、マスキングが解除され/コンジュゲートが活性化されてもよい。マスキング/マスキング解除プロセスは、可逆的又は不可逆的であり得る。マスキングされたコンジュゲートが活性化されると、HSP90に結合する能力は、対応するマスキングされていないコンジュゲートに少なくとも匹敵する。
いくつかの実施形態では、マスキング部分は、プロテアーゼの基質を含むペプチド配列を含む。プロテアーゼは腫瘍細胞によって産生され得る。マスキング部分がプロテアーゼにより切断されると、マスキング部分は、コンジュゲートのHSP90への結合をもはや妨害せず、それにより本発明のコンジュゲートを活性化する。マスキング部分は、非治療部位での本発明のコンジュゲートの結合を防ぐ。そのようなコンジュゲートは、改善された生体分布特性をさらに提供することができる。
いくつかの実施形態では、マスキング部分は、MMP1、MMP2、MMP3、MMP8、MMP9、MMP14、プラスミン、PSA、PSMA、カテプシンD、カテプシンK、カテプシンS、ADAM10、ADAM12、ADAMTS、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ11、カスパーゼ12、カスパーゼ13、カスパーゼ14、及びTACEからなる群から選択される酵素の基質であり得るペプチドを含む。例えば、マスキング部分は、プラスミン基質、カスパーゼ基質又はマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)基質(例えば、MMP−1、MMP−2、MMP−9、又はMMP−14の基質)などのプロテアーゼ基質を含み得る。
いくつかの実施形態では、マスキング部分は、腫瘍の化学的環境、例えば、腫瘍の酸性又は還元的環境で切断される切断可能なリンカーによって、コンジュゲートの任意の場所に結合される。マスキングされたコンジュゲートは循環中で安定しており、意図した治療及び/又は診断部位で活性化されるが、正常組織では活性化されない。例えば、切断可能なリンカーは、還元剤によって切断され得る還元可能なジスルフィド結合を形成することができるシステイン−システインペアを含み得る。特に興味深い還元剤には、生理学的条件下でジスルフィド結合を還元することができるタンパク質又は他の薬剤、例えばグルタチオン、チオレドキシン、NADPH、フラビン、及びアスコルビン酸塩などの細胞還元剤が含まれる。別の例では、マスキング部分又はリンカーは酸で切断されて、コンジュゲートが酸性腫瘍微小環境でマスキング解除されてもよい。
E.薬物動態調節ユニット
本発明のコンジュゲートは、タンパク質又は人工タンパク質またはその誘導体/類似体/模倣物の官能基と反応する反応基に結合された少なくとも1つの外部リンカーをさらに含み得るか、又は薬物動態調節ユニットに結合された少なくとも1つの外部リンカーを含み得る。コンジュゲートと反応基又は薬物動態調節ユニットを連結する外部リンカーは、コンジュゲートの放出を可能にする切断可能なリンカーであり得る。したがって、必要に応じてタンパク質又は薬物動態調節ユニットからコンジュゲートを分離することができる。
国際公開第2017/197241号に開示されている任意の反応基又はPMU(ポリマーを含むPMUなど)(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)を、本開示のコンジュゲートに結合させることができる。
F.透過性調節ユニット
本発明のコンジュゲートは、少なくとも1つの透過性調節ユニットをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットはコンジュゲートのペイロードに結合され、透過性調節ユニットはペイロードの細胞膜透過性を調節する。いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットは、ペイロードの透過性を低下させる。理論に拘束されることは望まないが、ペイロードがコンジュゲートから解放されると、ペイロードに結合されている透過性変調ユニットは、ペイロードの細胞膜透過性を低下させ、標的細胞におけるペイロードの保持時間を増加させ、ペイロードの細胞内蓄積、及びその有効性を向上させる。
いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットは、コンジュゲートの透過性又は標的化部分の結合能力に悪影響を及ぼさない。いくつかの実施形態において、透過性調節ユニットは、ペイロードがコンジュゲートから解放された後でのみ、例えば、ペイロードと標的化部分との間の切断可能なリンカーが切断された後にのみ活性になる。
いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットは、コンジュゲートのペイロードに共有結合された官能基である。いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットは、ペイロードの一体部分である。
いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットは、外部リンカーを介してペイロードに結合される。外部リンカーは、切断不可能なリンカーであってもよい。
生体細胞膜を通るペイロードの受動的透過は、分子の物理化学的特性に強く依存している。細胞膜透過に影響を与える重要な要素には、分子の酸−塩基特性(特定のpHで分子の電荷に影響を与える)、その親油性(水性環境と脂質環境の間の分配に影響を与える)、及びその溶解度がある。ペイロードが透過性であるためには、疎水性と親水性の適切なバランスが必要である。いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットは親水性である。いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットは疎水性である。いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットは極性である。いくつかの実施形態では、透過性調節ユニットは、生理学的pHで帯電している。例えば、透過性調節ユニットは、正に帯電、負に帯電、又は複数の電荷の組み合わせであり得る。
透過性調節ユニットの非限定的な例には、ピペラジン官能基などの、少なくとも1つの窒素を有する官能基が含まれる。例えば、化合物38はピペラジン官能基を含む。理論に拘束されることは望まないが、リンカーのアミド結合が切断されてペイロードが解放されると、ピペラジン基はコパンリシブ誘導体ペイロードの透過性を低下させる。
II.粒子
1つ以上のコンジュゲートを含有する粒子は、ポリマー粒子、脂質粒子、固体脂質粒子、無機粒子、又はこれらの組み合わせ(例えば、脂質安定化ポリマー粒子)であり得る。一部の実施形態において、粒子はポリマー粒子であるか、又はポリマーマトリックスを含有する。粒子は、本明細書に記載されるポリマー又はその誘導体若しくは共重合体のいずれかを含有し得る。粒子は、概して1つ以上の生体適合性ポリマーを含有する。ポリマーは生分解性ポリマーであってもよい。ポリマーは、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、又は両親媒性ポリマーであってもよい。一部の実施形態において、粒子は、追加的な標的化部分が付加された1つ以上のポリマーを含有する。
粒子のサイズは目的の適用に合わせて調整することができる。粒子はナノ粒子又はマイクロ粒子であってもよい。粒子は、約10nm〜約10ミクロン、約10nm〜約1ミクロン、約10nm〜約500nm、約20nm〜約500nm、又は約25nm〜約250nmの直径を有し得る。一部の実施形態において、粒子は直径約25nm〜約250nmのナノ粒子である。当業者によれば、複数の粒子が様々なサイズを有し得ることが理解され、及び直径は粒径分布の中位径であるものと理解される。
様々な実施形態において、粒子はナノ粒子であってもよく、即ち、粒子は約1マイクロメートル未満の特性寸法を有し、ここで粒子の特性寸法とは、粒子と同じ体積を有する完全な球の直径である。複数の粒子は平均直径(例えば、複数の粒子の平均直径)によって特徴付けることができる。一部の実施形態において、粒子の直径はガウス型分布を有し得る。一部の実施形態において、複数の粒子は、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約10nm未満、約3nm未満、又は約1nm未満の平均直径を有する。一部の実施形態において、粒子は、少なくとも約5nm、少なくとも約10nm、少なくとも約30nm、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約150nm、又はそれ以上の平均直径を有する。特定の実施形態において、複数の粒子は、約10nm、約25nm、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約500nmなどの平均直径を有する。一部の実施形態において、複数の粒子は、約10nm〜約500nm、約50nm〜約400nm、約100nm〜約300nm、約150nm〜約250nm、約175nm〜約225nmなどの平均直径を有する。一部の実施形態において、複数の粒子は、約10nm〜約500nm、約20nm〜約400nm、約30nm〜約300nm、約40nm〜約200nm、約50nm〜約175nm、約60nm〜約150nm、約70nm〜約130nmなどの平均直径を有する。例えば、平均直径は約70nm〜130nmであり得る。一部の実施形態において、複数の粒子は、約20nm〜約220nm、約30nm〜約200nm、約40nm〜約180nm、約50nm〜約170nm、約60nm〜約150nm、又は約70nm〜約130nmの平均直径を有する。一実施形態において、粒子は40〜120nmのサイズを有し、低い乃至ゼロイオン強度(1〜10mM)でゼータ電位がほぼ0mVであり、ゼータ電位値が+5〜−5mV、及びゼロ/中性又は小さい−ve表面電荷である。
A.コンジュゲート
本粒子は上記に記載したとおりの1つ以上のコンジュゲートを含有する。コンジュゲートは、粒子の内面上、粒子の外面上、又は両方に存在し得る。本粒子は、上記に記載される1つ以上のコンジュゲートと対イオンとによって形成される疎水性イオン対形成複合体又は疎水性イオン対を含み得る。
疎水性イオン対形成(HIP)は、クーロン引力によって一体に保持された一対の逆の電荷のイオン間の相互作用である。HIPは、本明細書で使用されるとき、本発明のコンジュゲートとその対イオンとの間の相互作用を指し、ここで対イオンはH+又はHO−イオンではない。疎水性イオン対形成複合体又は疎水性イオン対は、本明細書で使用されるとき、本発明のコンジュゲートとその対イオンとによって形成された複合体を指す。一部の実施形態において、対イオンは疎水性である。一部の実施形態において、対イオンは疎水性酸又は疎水性酸の塩によって提供される。一部の実施形態において、対イオンは胆汁酸又は塩、脂肪酸又は塩、脂質、又はアミノ酸によって提供される。一部の実施形態において、対イオンは負電荷(アニオン性)である。負電荷対イオンの非限定的な例としては、対イオンスルホコハク酸ナトリウム(AOT)、オレイン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ヒト血清アルブミン(HSA)、硫酸デキストラン、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、アニオン性脂質、アミノ酸、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、一部の実施形態において、HIPは本発明のコンジュゲートの疎水性及び/又は親油性を増加させ得る。一部の実施形態において、本発明のコンジュゲートの疎水性及び/又は親油性の増加は粒子製剤にとって有益となることができ、本発明のコンジュゲートの有機溶媒に対するより高い溶解度をもたらし得る。いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、HIP対を含む粒子製剤は、薬物負荷及び/又は放出プロファイルなど、製剤特性が向上すると考えられる。いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、一部の実施形態において、水溶液に対するコンジュゲートの溶解度の低下に起因して、粒子からの本発明のコンジュゲートの徐放が起こり得る。加えて、いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、コンジュゲートを大型の疎水性対イオンと複合体化すると、ポリマーマトリックス内でのコンジュゲートの拡散が緩徐になり得る。一部の実施形態において、HIPは、対イオンが本発明のコンジュゲートに共有結合的にコンジュゲートすることなく起こる。
いかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、HIPの強度は本発明の粒子の薬物負荷及び放出速度に影響を与え得る。一部の実施形態において、本発明のコンジュゲートのpKaと対イオンを提供する薬剤のpKaとの差の大きさを増加させることにより、HIPの強度が増加し得る。同様にいかなる理論によっても拘束されることを望むものではないが、イオン対形成条件が本発明の粒子の薬物負荷及び放出速度に影響を与え得る。
一部の実施形態において、任意の好適な疎水性酸又はそれらの組み合わせが本発明のコンジュゲートとHIP対を形成し得る。一部の実施形態において、疎水性酸は、カルボン酸(限定はされないが、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸など)、スルフィン酸、スルフェン酸、又はスルホン酸であってもよい。一部の実施形態において、好適な疎水性酸の塩又はそれらの組み合わせを使用して本発明のコンジュゲートとHIP対を形成し得る。疎水性酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、芳香族酸、胆汁酸、高分子電解質の例、それらの水中における解離定数(pKa)及びlogP値は、国際公開第2014/043,625号(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)に開示された。疎水性酸の強度、疎水性酸のpKaと本発明のコンジュゲートのpKaとの差、疎水性酸のlogP、疎水性酸の相転移温度、疎水性酸と本発明のコンジュゲートとのモル比、及び疎水性酸の濃度もまた、国際公開第2014/043,625号(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)に開示された。
一部の実施形態において、HIP複合体を含む及び/又は対イオンを提供してコンジュゲートとHIP複合体を形成する方法によって調製された本発明の粒子は、HIP複合体を有しない又はコンジュゲートとのHIP複合体を形成するいかなる対イオンも提供しない方法によって調製された粒子よりも高い薬物負荷を有し得る。一部の実施形態において、薬物負荷は50%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍増加し得る。
一部の実施形態において、本発明の粒子は、37℃のリン酸緩衝溶液中に置いたとき少なくとも約1分、少なくとも約15分、少なくとも約1時間にわたってコンジュゲートを保持し得る。
一部の実施形態において、本粒子におけるコンジュゲートの重量百分率は、粒子の構成成分の重量百分率の合計が100%になるようにして、少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%である。一部の実施形態において、本粒子におけるコンジュゲートの重量百分率は、粒子の構成成分の重量百分率の合計が100%になるようにして、約0.5%〜約10%、又は約10%〜約20%、又は約20%〜約30%、又は約30%〜約40%、又は約40%〜約50%、又は約50%〜約60%、又は約60%〜約70%、又は約70%〜約80%、又は約80%〜約90%、又は約90%〜約99%である。
一部の例では、コンジュゲートは、約50,000Da未満、約40,000Da未満、約30,000Da未満、約20,000Da未満、約15,000Da未満、約10,000Da未満、約8,000Da未満、約5,000Da未満、約3,000Da未満、2000Da未満、1500Da未満、1000Da未満、又は500Da未満の分子量を有し得る。ある場合には、コンジュゲートは、約1,000Da〜約50,000Da、約1,000Da〜約40,000Da、一部の実施形態において約1,000Da〜約30,000Da、一部の実施形態において約1,000Da及び約50,000Da、約1,000Da〜約20,000Da、一部の実施形態において約1,000Da〜約15,000Da、一部の実施形態において約1,000Da〜約10,000Da、一部の実施形態において約1,000Da〜約8,000Da、一部の実施形態において約1,000Da〜約5,000Da、及び一部の実施形態において約1,000Da〜約3,000Daの分子量を有し得る。コンジュゲートの分子量は、コンジュゲートの式中にある各原子の原子量の和に各原子の数を乗じたものとして計算し得る。これはまた、質量分析法、NMR、クロマトグラフィー、光散乱、粘度、及び/又は当該技術分野において公知の任意の他の方法によって測定してもよい。当該技術分野において、分子量の単位がg/mol、ダルトン(Da)、又は原子質量単位(amu)であり得ることは公知であり、ここで1g/mol=1Da=1amuである。
B.ポリマー
本粒子は1つ以上のポリマーを含有し得る。ポリマーは、以下のポリエステル:本明細書では「PGA」と称される、グリコール酸単位を含むホモポリマー、及び本明細書ではまとめて「PLA」と称される、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、及びポリ−D,L−ラクチドなど、乳酸単位を含むホモポリマー、及び本明細書ではまとめて「PCL」と称される、ポリ(ε−カプロラクトン)など、カプロラクトン単位を含むホモポリマー;及び本明細書ではまとめて「PLGA」と称される、乳酸:グリコール酸の比によって特徴付けられる様々な形態のポリ(乳酸−co−グリコール酸)及びポリ(ラクチド−co−グリコリド)など、乳酸単位とグリコール酸単位とを含む共重合体;及びポリアクリレート類、及びこれらの誘導体のうちのもう一つを含有し得る。例示的ポリマーにはまた、本明細書ではまとめて「PEG化ポリマー」と称される、様々な形態のPLGA−PEG又はPLA−PEG共重合体など、ポリエチレングリコール(PEG)と前述のポリエステル類との共重合体も含まれる。特定の実施形態では、PEG領域がポリマーと共有結合的に会合することにより、切断可能なリンカーによって「PEG化ポリマー」が生じ得る。
本粒子は1つ以上の親水性ポリマーを含有し得る。親水性ポリマーとしては、デンプン及び多糖などのセルロース系ポリマー;親水性ポリペプチド;ポリ−L−グルタミン酸(PGS)、γ−ポリグルタミン酸、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ−L−セリン、又はポリ−L−リジンなどのポリ(アミノ酸);ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、及びポリ(エチレンオキシド)(PEO)などのポリアルキレングリコール類及びポリアルキレンオキシド類;ポリ(オキシエチレン化ポリオール);ポリ(オレフィンアルコール);ポリビニルピロリドン);ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド);ポリ(メタクリル酸ヒドロキシアルキル);ポリ(サッカリド)類;ポリ(ヒドロキシ酸)類;ポリ(ビニルアルコール);ポリオキサゾリン;及びこれらの共重合体が挙げられる。
本粒子は1つ以上の疎水性ポリマーを含有し得る。好適な疎水性ポリマーの例としては、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、及びポリ(乳酸−co−グリコール酸)類などのポリヒドロキシ酸類;ポリ3−ヒドロキシブチレート又はポリ4−ヒドロキシブチレートなどのポリヒドロキシアルカノエート類;ポリカプロラクトン類;ポリ(オルトエステル)類;ポリ無水物類;ポリ(ホスファゼン)類;ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)類;チロシンポリカーボネート類などのポリカーボネート類;ポリアミド類(合成及び天然ポリアミド類を含む)、ポリペプチド類、及びポリ(アミノ酸)類;ポリエステルアミド類;ポリエステル類;ポリ(ジオキサノン)類;ポリ(アルキレンアルキレート)類;疎水性ポリエーテル類;ポリウレタン類;ポリエーテルエステル類;ポリアセタール類;ポリシアノアクリレート類;ポリアクリレート類;ポリメタクリル酸メチル類;ポリシロキサン類;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)共重合体;ポリケタール類;ポリリン酸塩類;ポリヒドロキシバレレート類;ポリアルキレンオキサレート類;ポリアルキレンスクシネート類;ポリ(マレイン酸)類、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
特定の実施形態において、疎水性ポリマーは脂肪族ポリエステルである。一部の実施形態において、疎水性ポリマーは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、又はポリ(乳酸−co−グリコール酸)である。
本粒子は1つ以上の生分解性ポリマーを含有し得る。生分解性ポリマーには、水に不溶性又は難溶性の、体内で化学的又は酵素的に水溶性材料に変換されるポリマーが含まれ得る。生分解性ポリマーには、架橋されたポリマーが水に不溶性又は難溶性になるように加水分解性(hydolyzable)架橋連結基によって架橋された可溶性ポリマーが含まれ得る。
粒子中の生分解性ポリマーとしては、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリアルキレン類、ポリアルキレングリコール類、ポリアルキレンオキシド類、ポリアルキレンテレフタレート(terepthalate)類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルエーテル類、ポリビニルエステル類、ポリハロゲン化ビニル類、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド類、ポリシロキサン類、ポリウレタン類及びこれらの共重合体、アルキルセルロース、例えばメチルセルロース及びエチルセルロースなど、ヒドロキシアルキルセルロース類、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、及びヒドロキシブチルメチルセルロースなど、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、ニトロセルロース類、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩、アクリル酸及びメタクリル酸エステルのポリマー、例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)(poly(hexlmethacrylate))、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)類、ポリ(酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル ポリスチレン及びポリビニルピロリドン(polyvinylpryrrolidone)など、これらの誘導体、これらの線状及び分枝状共重合体及びブロック共重合体、及びこれらのブレンドを挙げることができる。例示的生分解性ポリマーとしては、ポリエステル類、ポリ(オルトエステル)類、ポリ(エチレンイミン)類、ポリ(カプロラクトン)類、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)類、ポリ(ヒドロキシバレレート)類、ポリ無水物類、ポリ(アクリル酸)類、ポリグリコリド類、ポリ(ウレタン)類、ポリカーボネート類、ポリリン酸エステル類、ポリホスファゼン類、これらの誘導体、これらの線状及び分枝状共重合体及びブロック共重合体、及びこれらのブレンドが挙げられる。一部の実施形態において、本粒子は生分解性ポリエステル類又はポリ無水物類、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、及びポリ(乳酸−co−グリコール酸)などを含有する。
本粒子は1つ以上の両親媒性ポリマーを含有し得る。両親媒性ポリマーは、疎水性ポリマーブロックと親水性ポリマーブロックとを含有するポリマーであり得る。疎水性ポリマーブロックは、上記の疎水性ポリマーのうちの1つ以上又はそれらの誘導体若しくは共重合体を含有し得る。親水性ポリマーブロックは、上記の親水性ポリマーのうちの1つ以上又はそれらの誘導体若しくは共重合体を含有し得る。一部の実施形態において両親媒性ポリマーは、疎水性ポリマーから形成された疎水性末端と親水性ポリマーで形成された親水性末端とを含有するジブロックポリマーである。一部の実施形態において、疎水性末端、親水性末端、又は両方に部分が付加されてもよい。本粒子は2つ以上の両親媒性ポリマーを含有し得る。
C.脂質
本粒子は1つ以上の脂質又は両親媒性化合物を含有し得る。例えば、本粒子は、リポソーム、脂質ミセル、固体脂質粒子、又は脂質安定化ポリマー粒子であってもよい。脂質粒子は、1つの脂質又は異なる脂質の混合物で作られていてもよい。脂質粒子は、生理的pHで中性、アニオン性、又はカチオン性であり得る1つ以上の脂質で形成される。脂質粒子は、一部の実施形態において、1つ以上の生体適合性脂質を取り入れる。脂質粒子は2つ以上の脂質の組み合わせを用いて形成されてもよい。例えば、荷電脂質を生理的pHで非イオン性又は非荷電の脂質と組み合わせてもよい。
本粒子は脂質ミセルであってもよい。薬物送達用の脂質ミセルは当該技術分野において公知である。脂質ミセルは、例えば脂質界面活性剤との油中水型エマルションとして形成することができる。エマルションは2つの不混和相のブレンドであり、界面活性剤を加えることにより分散した液滴が安定化する。一部の実施形態において脂質ミセルはマイクロエマルションである。マイクロエマルションは、少なくとも水、油及び脂質界面活性剤が1ミクロン未満、約10nm〜約500nm、又は約10nm〜約250nmの液滴径の透明な熱力学的安定系を作り出して構成される熱力学的安定系である。脂質ミセルは概して、疎水性治療用薬剤、疎水性予防用薬剤、又は疎水性診断用薬剤を含めた疎水性活性薬剤のカプセル化に有用である。
本粒子はリポソームであってもよい。リポソームは、球形の二重層状に配置された脂質が水性媒体を取り囲んで構成される小さい小胞である。リポソームは、小型単層小胞、大型単層小胞、又は多重膜小胞に分類することができる。多重膜リポソームは複数の同心円状の脂質二重層を含有する。リポソームを使用すると、水性の内部又は二重層間に親水性薬剤を捕捉することによるか、又は二重層内に疎水性薬剤を捕捉することにより薬剤をカプセル化し得る。
脂質ミセル及びリポソームは、典型的には水性の中心部を有する。水性の中心部は、水又は水とアルコールとの混合物を含有し得る。好適なアルコールとしては、限定はされないが、メタノール、エタノール、プロパノール(イソプロパノールなど)、ブタノール(n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなど、ペンタノール(アミルアルコール、イソブチルカルビノールなど)、ヘキサノール(1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノールなど)、ヘプタノール(1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール及び4−ヘプタノールなど)又はオクタノール(1−オクタノールなど)又はこれらの組み合わせが挙げられる。
本粒子は固体脂質粒子であってもよい。固体脂質粒子はコロイドミセル及びリポソームの代替を提供する。固体脂質粒子は典型的にはサブミクロンサイズであり、即ち、約10nm〜約1ミクロン、10nm〜約500nm、又は10nm〜約250nmである。固体脂質粒子は、室温で固体の脂質で形成される。固体脂質粒子は水中油型エマルションから、液体油を固体脂質に換えることにより誘導される。
好適な中性及びアニオン性脂質としては、限定はされないが、ステロール類及び脂質、例えば、コレステロール、リン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質、スフィンゴ脂質又はペグ化脂質などが挙げられる。中性及びアニオン性脂質としては、限定はされないが、ホスファチジルコリン(PC)(卵PC、大豆PCなど)、例えば、1,2−ジアシル−グリセロ−3−ホスホコリン類;ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール(PI);糖脂質;スフィンゴリン脂質、例えばスフィンゴミエリン及びスフィンゴ糖脂質(1−セラミジルグルコシド類としても知られる)、例えばセラミドガラクトピラノシド、ガングリオシド類及びセレブロシド類;脂肪酸、ステロール類でカルボン酸基を含有するもの、例えば、コレステロール;1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、例えば、限定はされないが、1,2−ジオレオイルホスホエタノールアミン(dioleylphosphoethanolamine)(DOPE)、1,2−ジヘキサデシルホスホエタノールアミン(DHPE)、1,2−ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、及び1,2−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)が挙げられる。脂質にはまた、脂質の様々な天然の(例えば、組織由来L−α−ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、ダイズ)及び/又は合成の(例えば、飽和及び不飽和1,2−ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1−アシル−2−アシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、1,2−ジヘプタノイル−SN−グリセロ−3−ホスホコリン)誘導体も含まれ得る。
好適なカチオン性脂質としては、限定はされないが、TAP脂質とも称されるN−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、例えばメチル硫酸塩が挙げられる。好適なTAP脂質としては、限定はされないが、DOTAP(ジオレオイル−)、DMTAP(ジミリストイル−)、DPTAP(ジパルミトイル−)、及びDSTAP(ジステアロイル−)が挙げられる。リポソームにおける好適なカチオン性脂質としては、限定はされないが、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2−ジアシロキシ−3−トリメチルアンモニウムプロパン、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ(dioloyloxy))プロピル]−Ν,Ν−ジメチルアミン(DODAP)、1,2−ジアシロキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2−ジアルキルオキシ−3−ジメチルアンモニウムプロパン、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3−[N−(N’,N’−ジメチルアミノ−エタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol);2,3−ジオレオイルオキシ−N−(2−(スペルミンカルボキサミド)−エチル)−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸塩(DOSPA)、β−アラニルコレステロール、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ジC14−アミジン、N−ferf−ブチル−N’−テトラデシル−3−テトラデシルアミノ−プロピオンアミジン、N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル−D−グルタメートクロリド(TMAG)、ジテトラデカノイル−N−(トリメチルアンモニオ−アセチル)ジエタノールアミンクロリド、1,3−ジオレオイルオキシ−2−(6−カルボキシ−スペルミル)−プロピルアミド(DOSPER)、及びN,N,N’,N’−テトラメチル−、N’−ビス(2−ヒドロキシルエチル)−2,3−ジオレオイルオキシ−1,4−ブタンジアンモニウムヨウ化物が挙げられる。一実施形態において、カチオン性脂質は、1−[2−(アシルオキシ)エチル]2−アルキル(アルケニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾリニウムクロリド誘導体、例えば、1−[2−(9(Z)−オクタデセノイルオキシ)エチル]−2−(8(Z)−ヘプタデセニル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)、及び1−[2−(ヘキサデカノイルオキシ)エチル]−2−ペンタデシル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DPTIM)であり得る。一実施形態において、カチオン性脂質は、第4級アミンにヒドロキシアルキル部分を含有する2,3−ジアルキルオキシプロピル第4級アンモニウム化合物誘導体、例えば、1,2−ジオレオイル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORI)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル(dimetyl)−ヒドロキシプロピルアンモニウムブロミド(DORIE−HP)、1,2−ジオレイル−オキシ−プロピル−3−ジメチル−ヒドロキシブチルアンモニウムブロミド(DORIE−HB)、1,2−ジオレイルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシペンチルアンモニウムブロミド(DORIE−Hpe)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2−ジパルミチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DPRIE)、及び1,2−ジステリルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DSRIE)であり得る。
好適な固体脂質としては、限定はされないが、高級飽和アルコール類、高級脂肪酸、スフィンゴ脂質、合成エステル類、並びに高級飽和脂肪酸のモノトリグリセリド類、ジトリグリセリド類、及びトリグリセリド類が挙げられる。固体脂質には、セトステアリルアルコールなど、10〜40個、例えば12〜30個の炭素原子を有する脂肪族アルコールが含まれ得る。固体脂質には、ステアリン酸、パルミチン酸、デカン酸、及びベヘン酸など、10〜40個、例えば12〜30個の炭素原子の高級脂肪酸が含まれ得る。固体脂質には、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセロール、パルミトステアリン酸グリセロール、グリセロールトリラウレート、トリカプリン、トリラウリン、トリミリスチン、トリパルミチン、トリステアリン、及び硬化ヒマシ油など、10〜40個、例えば12〜30個の炭素原子を有する高級飽和脂肪酸のモノグリセリド類、ジグリセリド類、及びトリグリセリド類を含めたグリセリド類が含まれ得る。好適な固体脂質には、パルミチン酸セチル、蜜ろう、又はシクロデキストリンが含まれ得る。
両親媒性化合物としては、限定はされないが、0.01〜60(脂質重量/ポリマー重量)、例えば0.1〜30(脂質重量/ポリマー重量)の比で配合される1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、及びジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)などのリン脂質が挙げられる。使用し得るリン脂質としては、限定はされないが、ホスファチジン酸類、飽和脂質及び不飽和脂質の両方を含むホスファチジルコリン類、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファチジルグリセロール類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルイノシトール類、リゾホスファチジル誘導体、カルジオリピン、及びβ−アシル−y−アルキルリン脂質が挙げられる。リン脂質の例としては、限定はされないが、ホスファチジルコリン類、例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC);及びホスファチジルエタノールアミン類、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン又は1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロホスホエタノールアミンが挙げられる。不斉アシル鎖(例えば、6炭素の1つのアシル鎖及び12炭素のもう1つのアシル鎖)を有する合成リン脂質もまた使用し得る。
D.追加の活性薬剤
本粒子は、本コンジュゲート中のものに加えて1つ以上の追加の活性薬剤を含有し得る。追加の活性薬剤は、上記に列挙するとおりの治療用、予防用、診断用、又は栄養用薬剤であってもよい。追加の活性薬剤は、任意の量、例えば、粒子の重量を基準として約0.5%〜約90%、約0.5%〜約50%、約0.5%〜約25%、約0.5%〜約20%、約0.5%〜約10%、又は約5%〜約10%(w/w)で存在し得る。一実施形態において、薬剤は約0.5%〜約10%の負荷w/wで配合される。
E.追加の標的化部分
本粒子は、本コンジュゲートの標的化部分に加え、粒子を特異的な器官、組織、細胞型、又は細胞内コンパートメントに標的化させる1つ以上の標的化部分を含有し得る。追加の標的化部分は、粒子の表面上、粒子の内面上、又は両方に存在し得る。追加の標的化部分は粒子の表面上に固定化されてもよく、例えば、本粒子のポリマー又は脂質に共有結合的に付加されてもよい。一部の実施形態において、追加の標的化部分は、標的化部分が粒子の表面上に配向するように両親媒性ポリマー又は脂質に共有結合的に付加される。
F.粒子の作製方法
様々な実施形態において、粒子を作製する方法は、国際公開第2014/106208号及び国際公開第2016/004043号に開示されている任意の方法を提供することを含み、そのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
III.製剤
一部の実施形態において、組成物がヒト、ヒト患者又は対象に投与される。本開示の目的上、語句「活性成分」は、概して、本明細書に記載されるとおりの送達されるコンジュゲート又はコンジュゲートを含む粒子を指す。
本明細書に提供される医薬組成物の説明は、主としてヒトへの投与に好適な医薬組成物に関するが、当業者は、かかる組成物が概して任意の他の動物、例えば非ヒト動物、例えば非ヒト哺乳類への投与に好適であることを理解するであろう。ヒトへの投与に好適な医薬組成物を様々な動物への投与に好適な組成物にするための改良は十分に理解されており、通常の技能を有する獣医薬理学者は、例えあったとしても単に通常の実験をもってかかる改良を設計及び/又は実施することができる。医薬組成物の投与が企図される対象としては、限定はされないが、ヒト及び/又は他の霊長類;哺乳類、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、及び/又はラットなどの商業的に関連性のある哺乳類;及び/又は鳥類、例えば、家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/又はシチメンチョウなどの商業的に関連性のある鳥類が挙げられる。
本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学の技術分野で公知の又は今後開発される任意の方法によって調製し得る。一般に、かかる調製方法は、活性成分を賦形剤及び/又は1つ以上の他の補助的成分と共にまとめ合わせ、次に、必要である及び/又は望ましい場合にはその製剤を所望の単回又は複数回投与単位に分割し、成形し、及び/又は包装するステップを含む。
本発明に係る医薬組成物は、バルクで、単一単位用量として、及び/又は複数の単一単位用量として調製、包装、及び/又は販売され得る。本明細書で使用されるとき、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む医薬組成物の個別の量である。活性成分の量は、概して対象に投与され得る活性成分の投薬量及び/又はかかる投薬量の好都合な一部、例えばかかる投薬量の2分の1又は3分の1に等しい。
本発明に係る医薬組成物中の活性成分、薬学的に許容可能な賦形剤、及び/又は任意の追加的な成分の相対量は、治療対象のアイデンティティ、大きさ、及び/又は状態に依存するとともに、組成物を投与する経路にも更に依存して変わり得る。例として、本組成物は0.1%〜100%、例えば、0.5〜50%、1〜30%、5〜80%、少なくとも80%(w/w)の活性成分を含み得る。
本発明のコンジュゲート又は粒子は、1つ以上の賦形剤を用いて製剤化することにより、(1)安定性を増加させる;(2)持続又は遅延放出(例えばモノマレイミドのデポー製剤から)を可能にする;(3)体内分布を変化させる(例えば、モノマレイミド化合物を特異的組織又は細胞型に標的化する);(4)インビボでのモノマレイミド化合物の放出プロファイルを変化させることができる。賦形剤の非限定的な例としては、あらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体媒体、分散又は懸濁助剤、界面活性薬剤、等張剤、増粘又は乳化剤、及び保存剤が挙げられる。本発明の賦形剤としてはまた、限定なしに、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリマー、リポプレックス、コアシェルナノ粒子、ペプチド、タンパク質、ヒアルロニダーゼ、ナノ粒子模倣体及びこれらの組み合わせも挙げることができる。従って、本発明の製剤には、1つ以上の賦形剤が、各々一緒になってモノマレイミド化合物の安定性を増加させる量で含まれ得る。
賦形剤
医薬製剤は、薬学的に許容可能な賦形剤を更に含むことができ、賦形剤には、本明細書で使用されるとき、所望の特定の剤形に適するとおりのあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体媒体、分散又は懸濁助剤、界面活性薬剤、等張剤、増粘又は乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などが含まれる。「レミントンの薬学の科学と実践(Remington’s The Science and Practice of Pharmacy)」、第21版、A.R.ジェナーロ(A.R.Gennaro)(リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott,Williams & Wilkins)、メリーランド州ボルチモア(Baltimore,MD)、2006年;全体として参照により本明細書に援用される)が、医薬組成物の製剤化に用いられる様々な賦形剤及びその公知の調製技法を開示している。任意の望ましくない生物学的効果の発生又はその他、医薬組成物の任意の他の1つ又は複数の構成成分との有害な形での相互作用によるなど、任意の従来の賦形剤媒体が物質又はその誘導体と不適合である場合を除き、その使用は本発明の範囲内にあることが企図される。
一部の実施形態において、薬学的に許容可能な賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の純度である。一部の実施形態において、賦形剤はヒトへの使用及び動物への使用が承認されている。一部の実施形態において、賦形剤は米国食品医薬品局によって承認されている。一部の実施形態において、賦形剤は医薬品グレードである。一部の実施形態において、賦形剤は米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の規格に適合している。
医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容可能な賦形剤としては、限定はされないが、不活性希釈剤、分散剤及び/又は造粒剤、界面活性薬剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、潤滑剤、及び/又は油が挙げられる。かかる賦形剤は任意選択で医薬組成物中に含まれ得る。
例示的希釈剤としては、限定はされないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉末糖等、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
例示的造粒剤及び/又は分散剤としては、限定はされないが、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類果肉、寒天、ベントナイト、セルロース及び木産物、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル−ピロリドン)(クロスポビドン)、ナトリウムカルボキシメチルデンプン(デンプングリコール酸ナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロース)、メチルセルロース、アルファ化デンプン(スターチ1500)、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミウニムマグネシウム(ビーガム(登録商標)(VEEGUM(登録商標)))、ラウリル硫酸ナトリウム、第4級アンモニウム化合物等、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
例示的界面活性薬剤及び/又は乳化剤としては、限定はされないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、及びレシチン)、コロイド粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]及びビーガム(登録商標)(VEEGUM(登録商標))[ケイ酸アルミウニムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール類(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、及びモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸重合体、及びカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン[ツイーン(登録商標)(TWEEN(登録商標))20]、ポリオキシエチレンソルビタン[ツイーン(登録商標)60(TWEEN(登録商標)60)]、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン[ツイーン(登録商標)80(TWEEN(登録商標)80)]、モノパルミチン酸ソルビタン[スパン(登録商標)40(SPAN(登録商標)40)]、モノステアリン酸ソルビタン[スパン(登録商標)60(SPAN(登録商標)60)]、トリステアリン酸ソルビタン[スパン(登録商標)65(SPAN(登録商標)65)]、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン[スパン(登録商標)80(SPAN(登録商標)80)])、ポリオキシエチレンエステル類(例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレン[エムワイアールジェイ(登録商標)45(MYRJ(登録商標)45)]、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシメチレン、及びソルトール(登録商標)(SOLUTOL(登録商標)))、スクロース脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類(例えばクレモフォール(登録商標)(CREMOPHOR(登録商標)))、ポリオキシエチレンエーテル類(例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル[ビーアールアイジェイ(登録商標)30(BRIJ(登録商標)30)])、ポリ(ビニルピロリドン)、モノラウリン酸ジエチレングリコール、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、プルロニック(登録商標)F 68(PLUORINC(登録商標)F 68)、ポロキサマー(登録商標)188(POLOXAMER(登録商標)188)、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドキュセートナトリウム等及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
例示的結合剤としては、限定はされないが、デンプン(例えばコーンスターチ及びデンプンペースト);ゼラチン;糖類(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然及び合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモス抽出物、パンワーガム、ガッティガム、イサポール殻の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミウニムマグネシウム(ビーガム(登録商標)(Veegum(登録商標)))、及びカラマツのアラビノガラクタン(arabogalactan));アルギン酸;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート類;ワックス;水;アルコール等;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
例示的保存剤としては、限定はされないが、抗酸化剤、キレート剤、抗微生物性保存剤、抗真菌性保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、及び/又は他の保存剤を挙げることができる。例示的抗酸化剤としては、限定はされないが、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル(acorbyl palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び/又は亜硫酸ナトリウムが挙げられる。例示的キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、及び/又はエデト酸三ナトリウムが挙げられる。例示的抗微生物性保存剤としては、限定はされないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミドウレア、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、及び/又はチメロサールが挙げられる。例示的抗真菌性保存剤としては、限定はされないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及び/又はソルビン酸が挙げられる。例示的アルコール保存剤としては、限定はされないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシ安息香酸塩、及び/又はフェニルエチルアルコールが挙げられる。例示的酸性保存剤としては、限定はされないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及び/又はフィチン酸が挙げられる。他の保存剤としては、限定はされないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluened)(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、グリダント・プラス(登録商標)(GLYDANT PLUS(登録商標))、フェノニップ(登録商標)(PHENONIP(登録商標))、メチルパラベン、ジャーモール(登録商標)115(GERMALL(登録商標)115)、ジャーマベン(登録商標)II(GERMABEN(登録商標)II)、ネオロン(商標)(NEOLONE(商標))、カトン(商標)(KATHON(商標))、及び/又はユーキシル(登録商標)(EUXYL(登録商標))が挙げられる。
例示的緩衝剤としては、限定はされないが、クエン酸塩緩衝溶液、酢酸塩緩衝溶液、リン酸塩緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D−グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、リン酸水素カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張生理食塩水、リンゲル溶液、エチルアルコール等、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
例示的潤滑剤としては、限定はされないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル(glyceryl behanate)、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
例示的油としては、限定はされないが、扁桃油、杏仁油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、クロスグリ種子(black current seed)油、ルリヂサ油、カデ油、カモミール油、キャノーラ油、カラウェー油、カルナウバ、ヒマシ油、桂皮油、ココアバター、ココナツ油、タラ肝油、コーヒー油、トウモロコシ油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、月見草油、魚油、亜麻仁油、ゲラニオール油、ゴード油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、リツェアクベバ油、マカダミアナッツ(macademia nut)油、ゼニアオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、桃仁油、ピーナッツ油、ケシ種子油、カボチャ種子油、菜種油、米糠油、ローズマリー油、ベニバナ油、ビャクダン油、サザンカ(sasquana)油、セイボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター、シリコーン油、ダイズ油、ヒマワリ油、チャノキ油、アザミ油、ツバキ油、ベチバー油、クルミ油、及びコムギ胚芽油が挙げられる。例示的油としては、限定はされないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコーン、セバシン酸ジエチル、ジメチコーン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。
組成物中には、配合者の判断に従い、ココアバター及び坐薬ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び/又は芳香剤などの賦形剤が存在し得る。
投与
本発明のコンジュゲート又は粒子は、治療上有効な結果をもたらす任意の経路によって投与され得る。そのような経路としては、限定はされないが、経腸、胃腸、硬膜外、経口、経皮、硬膜外(硬膜周囲)、脳内(大脳の中に)、脳室内(脳室の中に)、皮膚上(皮膚の上への適用)、皮内(皮膚それ自体の中に)、皮下(皮膚の下に)、鼻腔投与(鼻を通じて)、静脈内(静脈の中に)、動脈内(動脈の中に)、筋肉内(筋肉の中に)、心臓内(心臓の中に)、骨内注入(骨髄の中に)、髄腔内(脊柱管の中に)、腹腔内(腹膜の中への注入又は注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼を通じて)、陰茎海綿体内注射(陰茎の基部の中に)、腟内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身に分布させるための無傷の皮膚を通じた拡散)、経粘膜(粘膜を通じた拡散)、インサフレーション(鼻からの吸い込み)、舌下、唇下、浣腸、点眼薬(結膜上に)、又は点耳薬が挙げられる。具体的な実施形態において、組成物は、それが血液脳関門、血管関門、又は他の上皮性関門を通り抜けることを可能にする方法で投与され得る。
本明細書に記載される製剤は、それを必要としている個体への投与に適切な医薬担体中に有効量のコンジュゲート又は粒子を含有する。本製剤は、非経口的に(例えば注射又は注入によって)投与され得る。本製剤又はその変形例は、経腸、局所(例えば眼に)、又は肺内投与によることを含め、いかなる方法で投与されてもよい。一部の実施形態において本製剤は局所投与される。
A.非経口製剤
本コンジュゲート又は粒子は、注射又は注入などの非経口送達用に溶液、懸濁液又はエマルションの形態で製剤化することができる。本製剤は、全身的に、局部的に、又は治療しようとする器官又は組織に直接、投与することができる。
非経口製剤は、当該技術分野において公知の技法を用いて水性組成物として調製することができる。典型的には、かかる組成物は、注射用製剤、例えば溶液又は懸濁液;注射前に再構成媒体を加えて溶液又は懸濁液の調製に使用するのに好適な固体形態;エマルション、例えば、油中水(w/o)型エマルション、水中油(o/w)型エマルション、及びこれらのマイクロエマルション、リポソーム、又はエマルソームとして調製することができる。
担体は、例えば、水、エタノール、1つ以上のポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、油、例えば植物油(例えば、ピーナッツ油、トウモロコシ油、ゴマ油等)、及びこれらの組み合わせを含有する溶媒又は分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によるか、分散液の場合に必要な粒径の維持によるか及び/又は界面活性剤の使用によって維持することができる。ある場合には、等張剤、例えば、1つ以上の糖類、塩化ナトリウム、又は当該技術分野において公知の他の好適な薬剤が含まれる。
コンジュゲート又は粒子の溶液及び分散液は、限定はされないが、界面活性剤、分散剤、乳化剤、pH改変剤、及びこれらの組み合わせを含めた1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤と好適に混合された水又は別の溶媒若しくは分散媒中に調製することができる。
好適な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性界面活性薬剤であり得る。好適なアニオン性界面活性剤としては、限定はされないが、カルボン酸、スルホン酸及び硫酸イオンを含有するものが挙げられる。アニオン性界面活性剤の例としては、長鎖アルキルスルホネート及びアルキルアリールスルホネートのナトリウム、カリウム、アンモニウム、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、例えばナトリウムビス−(2−エチルチオキシル)−スルホスクシネート;及び硫酸アルキル、例えばラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、限定はされないが、第4級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ポリオキシエチレン及びヤシアミンが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、モノステアリン酸エチレングリコール、ミリスチン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、オレイン酸ポリグリセリル−4、ソルビタンアシレート、スクロースアシレート、ラウリン酸PEG−150、モノラウリン酸PEG−400、モノラウリン酸ポリオキシエチレン、ポリソルベート類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG−1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、ポロキサマー(登録商標)401(Poloxamer(登録商標)401)、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、及びポリオキシエチレン水添タロウアミドが挙げられる。両性界面活性剤の例としては、N−ドデシル−β−アラニンナトリウム、N−ラウリル−β−イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンホアセテート、ラウリルベタイン及びラウリルスルホベタインが挙げられる。
本製剤は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含有し得る。好適な保存剤としては、限定はされないが、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、及びチメロサールが挙げられる。本製剤はまた、1つ又は複数の活性薬剤又は粒子の分解を防ぐ抗酸化剤も含有し得る。
本製剤は、典型的には非経口投与用に再構成時に3〜8のpHに緩衝される。好適な緩衝液としては、限定はされないが、リン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、及びクエン酸塩緩衝液が挙げられる。10%スクロース又は5%デキストロースを使用する場合、緩衝液は不要であり得る。
非経口投与用の製剤中には多くの場合に水溶性ポリマーが使用される。好適な水溶性ポリマーとしては、限定はされないが、ポリビニルピロリドン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒又は分散媒中に必要量の本コンジュゲート又は粒子を、必要に応じて上記に列挙する賦形剤のうちの1つ以上と共に配合し、続いてろ過滅菌することにより調製さてもよい。概して、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙するものからの必要な他の成分を含有する無菌媒体中に様々な滅菌コンジュゲート又は粒子を配合することにより調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、調製方法の例としては、予め滅菌ろ過したその溶液から粒子+任意の追加的な所望の成分の粉末を生じさせる真空乾燥法及び凍結乾燥法が挙げられる。粉末は、粒子が本質的に多孔質となる方法で調製することもでき、これによって粒子の溶解度が高まり得る。多孔質粒子の作製方法は当該技術分野において公知である。
非経口投与用の医薬製剤は、1つ以上のポリマー−薬物コンジュゲートから形成されたコンジュゲート又は粒子の滅菌水溶液又は懸濁液の形態であってもよい。許容可能な溶媒としては、例えば、水、リンゲル溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。本製剤はまた、1,3−ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌溶液、懸濁液、又はエマルションであってもよい。
一部の例では、本製剤は液体形態で配布又は包装される。或いは、非経口投与用の製剤は、例えば好適な液体製剤を凍結乾燥することによって得られる固体として包装されてもよい。この固体は、投与前に適切な担体又は希釈剤で再構成され得る。
非経口投与用の溶液、懸濁液、又はエマルションは、眼球投与に好適なpHを維持するのに必要な有効量の緩衝液で緩衝され得る。好適な緩衝液は当業者に周知であり、有用な緩衝液の幾つかの例は、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、及びリン酸塩緩衝液である。
非経口投与用の溶液、懸濁液、又はエマルションはまた、製剤の等張範囲を調整する1つ以上の等張化剤も含有し得る。好適な等張化剤は当該技術分野において周知であり、幾つかの例としては、グリセリン、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、及び他の電解質が挙げられる。
非経口投与用の溶液、懸濁液、又はエマルションはまた、眼科用薬剤の細菌汚染を防ぐ1つ以上の保存剤も含有し得る。好適な保存剤は当該技術分野において公知であり、ポリヘキサメチレンビグアニジン(PHMB)、塩化ベンザルコニウム(BAK)、安定化オキシクロロ錯体(別名ピュライト(登録商標)(Purite(登録商標))として知られる)、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ソルビン酸、クロルヘキシジン、ベンジルアルコール、パラベン類、チメロサール、及びこれらの混合物が挙げられる。
非経口投与用の溶液、懸濁液、又はエマルションはまた、分散剤、湿潤剤、及び懸濁剤など、当該技術分野において公知の1つ以上の賦形剤も含有し得る。
B.粘膜用局所製剤
本コンジュゲート又は粒子は、粘膜表面への局所投与用に製剤化することができる。局所投与に好適な剤形としては、クリーム、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、スプレー、ゲル、ローション、エマルション、液体、及び経皮パッチが挙げられる。本製剤は、経粘膜、経上皮、又は経内皮投与用に製剤化し得る。本組成物は、1つ以上の化学的浸透促進剤、膜透過剤、膜輸送剤、皮膚軟化剤、界面活性剤、安定剤、及びこれらの組み合わせを含有する。一部の実施形態において、本コンジュゲート又は粒子は、溶液又は懸濁液などの液体製剤、ローション又は軟膏などの半固形製剤、又は固形製剤として投与することができる。一部の実施形態において、本コンジュゲート又は粒子は、点眼薬など、溶液及び懸濁液を含めた液体として、又は眼又は経腟的若しくは経直腸的など、粘膜に対する半固形製剤として製剤化される。
「界面活性剤」は、表面張力を低下させて、それにより製剤の乳化、発泡、分散、展着及び湿潤特性を増加させる界面活性薬剤である。好適な非イオン性界面活性剤としては、乳化ワックス、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ソルビタンエステル類、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、シクロデキストリン類、モノステアリン酸グリセリン、ポロキサマー、ポビドン及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、非イオン性界面活性剤はステアリルアルコールである。
「乳化剤」は、ある液体の別の液体中への懸濁を促進し、且つ油と水との安定した混合物、又はエマルションの形成を促進する界面活性物質である。一般的な乳化剤は、金属せっけん、ある種の動物油及び植物油、及び様々な極性化合物である。好適な乳化剤としては、アカシア、アニオン性乳化ワックス、ステアリン酸カルシウム、カルボマー類、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、パルミトステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxpropyl cellulose)、ヒプロメロース、ラノリン、含水ラノリンアルコール類、レシチン、中鎖トリグリセリド類、メチルセルロース、鉱油及びラノリンアルコール類、一塩基性リン酸ナトリウム、モノエタノールアミン、非イオン性乳化ワックス、オレイン酸、ポロキサマー、ポロキサマー類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ステアリン酸ポリオキシエチレン類、アルギン酸プロピレングリコール、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、無水クエン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル類、ステアリン酸、ヒマワリ油、トラガカント、トリエタノールアミン、キサンタンガム及びこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、乳化剤はステアリン酸グリセロールである。
浸透促進剤の好適なクラスは当該技術分野において公知であり、限定はされないが、脂肪アルコール類、脂肪酸エステル類、脂肪酸、脂肪アルコールエーテル類、アミノ酸、リン脂質、レシチン類、コール酸塩類、酵素、アミン類及びアミド類、錯化剤(リポソーム、シクロデキストリン、変性セルロース、及びジイミド類)、大環状化合物、例えば、大環状ラクトン類、ケトン類、及び無水物及び環状尿素、界面活性剤、N−メチルピロリドン及びその誘導体、DMSO及び関連化合物、イオン化合物、アゾン及び関連化合物、及び溶媒、例えば、アルコール類、ケトン類、アミド類、ポリオール類(例えばグリコール類)が挙げられる。これらのクラスの例は当該技術分野において公知である。
投与
本発明は、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート又はコンジュゲートを含有する粒子を、それを必要としている対象に投与することを含む方法を提供する。本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート又はコンジュゲートを含有する粒子は、疾患、障害、及び/又は病態(例えば、作業記憶欠損に関連する疾患、障害、及び/又は病態)の予防又は治療又はイメージングに有効な任意の量及び任意の投与経路を用いて対象に投与され得る。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、及び全身状態、疾患の重症度、詳細な組成物、その投与様式、その活性様式などに応じて対象毎に異なり得る。
本発明に係る組成物は、典型的には、投与の容易さ及び投薬量の均一性のため投薬量単位形態に製剤化される。しかしながら、本発明の組成物の1日の使用総量は主治医が妥当な医学的判断の範囲内で判断し得ることは理解されるであろう。任意の特定の患者についての具体的な治療有効用量、予防有効用量、又は適切なイメージング用量レベルは、治療下の障害及び障害の重症度;用いられる具体的な化合物の活性;用いられる具体的な組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康、性別及び食事;用いられる具体的な化合物の投与タイミング、投与経路、及び排泄速度;治療継続期間;用いられる具体的な化合物と併用して又は同時に使用される薬物;及び医学の技術分野で周知の同様の要因を含め、種々の要因に依存し得る。
一部の実施形態において、本発明における組成物は、1日に約0.0001mg/kg〜約100mg/kg、約0.001mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.005mg/kg〜約0.05mg/kg、約0.001mg/kg〜約0.005mg/kg、約0.05mg/kg〜約0.5mg/kg、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約0.1mg/kg〜約40mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、又は約1mg/kg〜約25mg/kg、約25mg/kg〜約50mg/kg、約50mg/kg〜約100mg/kg、約100mg/kg〜約125mg/kg、約125mg/kg〜約150mg/kg、約150mg/〜約175mg/kg、約175mg/kg〜約200mg/kg、約200mg/kg〜約250mg/kgの対象体重を送達するのに十分な投薬量レベルで1日1回以上投与されることにより、所望の治療上、診断上、予防上、又はイメージング上の効果が達成され得る。所望の投薬量は、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、3日毎、毎週、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に送達されてもよい。一部の実施形態において、所望の投薬量は、複数回の投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回、又はそれ以上の投与)を用いて送達されてもよい。複数回の投与が利用される場合、本明細書に記載されるものなどの分割投与レジメンが用いられてもよい。
本発明のコンジュゲート又は粒子の濃度は医薬組成物中約0.01mg/mL〜約50mg/mL、約0.1mg/mL〜約25mg/mL、約0.5mg/mL〜約10mg/mL、又は約1mg/mL〜約5mg/mLであり得る。
本明細書で使用されるとき、「分割用量」とは、単一単位用量又は1日総用量を2用量以上、例えば単一単位用量の2回以上の投与に分けることである。本明細書で使用されるとき、「単一単位用量」とは、1用量/1回/単一経路/単一接触点、即ち単一投与イベントで投与される任意の治療薬の用量である。本明細書で使用されるとき、「1日総用量」は、24時間の間に与えられる又は処方される量である。これは単一単位用量として投与されてもよい。一実施形態において、本発明のモノマレイミド化合物は分割用量で対象に投与される。モノマレイミド化合物は緩衝液中に製剤化されるのみであってもよく、又は本明細書に記載される製剤に製剤化されてもよい。
剤形
本明細書に記載される医薬組成物は、局所、鼻腔内、気管内、又は注射用(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、心臓内、腹腔内、皮下)など、本明細書に記載される剤形に製剤化することができる。
液体剤形
非経口投与用の液体剤形としては、限定はされないが、薬学的に許容可能なエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、及び/又はエリキシル剤が挙げられる。活性成分に加えて、液体剤形は、限定はされないが、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(詳細には、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ソルビタンのポリエチレングリコール類及び脂肪酸エステル類、及びこれらの混合物を含めた、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含み得る。非経口投与用の特定の実施形態において、組成物は、クレモフォール(登録商標)(CREMOPHOR(登録商標))、アルコール類、油、変性油、グリコール類、ポリソルベート類、シクロデキストリン類、ポリマー、及び/又はこれらの組み合わせなどの可溶化剤と混合されてもよい。
注射剤
注射用製剤、例えば滅菌注射用水性又は油性懸濁液は公知の技術により製剤化することができ、好適な分散剤、湿潤剤、及び/又は懸濁剤を含み得る。滅菌注射用製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤及び/又は溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液、及び/又はエマルション、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であってもよい。利用し得る許容可能な媒体及び溶媒の中には、限定はされないが、水、リンゲル溶液(U.S.P.)、及び等張塩化ナトリウム溶液が含まれる。滅菌固定油は、従来、溶媒又は懸濁媒として用いられている。この目的上、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含め、任意の無刺激性固定油を用いることができる。注射剤の調製には、オレイン酸などの脂肪酸を使用することができる。
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルタでろ過することによって、及び/又は使用前に滅菌水又は他の無菌注射用媒体中に溶解し又は分散させることのできる無菌固体組成物の形態の滅菌剤を配合することによって滅菌し得る。
活性成分の効果を持続させるため、皮下又は筋肉内注射による活性成分の吸収を遅延させることが望ましい場合もある。これは、難水溶性の結晶性又は非晶質材料の液体懸濁物の使用によって達成し得る。このときモノマレイミド化合物の吸収速度はその溶解速度に依存し、ひいては結晶サイズ及び結晶形態に依存し得る。或いは、非経口投与されるモノマレイミド化合物の遅延吸収は、モノマレイミド(monomalimide)を油性媒体中に溶解又は懸濁することにより達成し得る。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中にモノマレイミド化合物のマイクロカプセルカプセル化マトリックスを形成することにより作られる。モノマレイミド化合物とポリマーの比率及び用いられる詳細なポリマーの性質に応じて、モノマレイミド化合物の放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、限定はされないが、ポリ(オルトエステル)類及びポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤は、生体組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロエマルション中にモノマレイミド化合物を封じ込めることにより調製し得る。
肺内
肺内送達に有用であるとして本明細書に記載される製剤はまた、医薬組成物の鼻腔内送達にも使用し得る。鼻腔内投与に好適な別の製剤は、活性成分を含み且つ約0.2μm〜500μmの平均粒子を有する粗末であり得る。かかる製剤は、嗅ぐようにして、即ち鼻の近くに保持した粉末容器から鼻道を介して急速吸入することによって投与され得る。
鼻腔投与に好適な製剤は、例えば、約0.1%(w/w)に過ぎない程度から100%(w/w)に至るまでの活性成分を含むことができ、本明細書に記載される追加的な成分の1つ以上を含み得る。医薬組成物は、頬側投与に好適な製剤として調製され、包装され、及び/又は販売され得る。かかる製剤は、例えば、従来の方法を用いて作製された錠剤及び/又はロゼンジの形態であってもよく、及び例えば約0.1%〜20%(w/w)の活性成分を含有することができ、ここで残りは口腔内で溶解可能な及び/又は分解性の組成物、及び任意選択で、本明細書に記載される追加的な成分の1つ以上が占め得る。或いは、頬側投与に好適な製剤は、活性成分を含む粉末及び/又はエアロゾル化及び/又は微粒化された溶液及び/又は懸濁液を含み得る。かかる粉末化、エアロゾル化、及び/又はエアロゾル化された製剤は、分散時に約0.1nm〜約200nmの範囲の平均粒径及び/又は液滴径を有することができ、さらに、本明細書に記載される任意の追加的な成分の1つ以上を含み得る。
医薬薬剤の製剤化及び/又は製造における一般論については、例えば、レミントン:薬学の科学と実践(Remington:Science and Practice of Pharmacy)、第21版、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams & Wilkins)、2005年(全体として参照により本明細書に援用される)を参照し得る。
コーティング又はシェル
錠剤、糖衣剤、カプセル、丸薬、及び顆粒の固形投薬形態は、コーティング及びシェル、例えば腸溶性コーティング及び医薬品製剤化の技術分野において周知の他のコーティングで調製することができる。コーティングは任意選択で乳白剤を含んでもよく、任意選択で遅延する形で腸管の特定の部分において1つ又は複数の活性成分のみを放出する又はそれを優先的に放出する組成物のコーティングであってもよい。使用し得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物が、ラクトース又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール類などの賦形剤を使用する軟充填及び硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられてもよい。
V.本コンジュゲート及び粒子の使用方法
本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート又は粒子は、適宜、任意の過剰増殖性疾患、代謝疾患、感染症、又は癌を治療するため投与することができる。製剤は、注射により、経口的に、又は局所的に、典型的には粘膜表面に(肺内、鼻腔、経口、頬側、舌下、腟内に、直腸に)又は眼に(眼内に又は経眼的に)投与し得る。
様々な実施形態において、癌を有する対象の治療方法が提供され、この方法は、癌を有する、癌を有する疑いがある、又は癌素因を有する対象に本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート、その塩形態、又はかかるコンジュゲートを含む粒子の治療有効量を投与することを含む。本発明によれば、癌は、制御されない細胞増殖、例えば過剰増殖を特徴とする任意の疾患又は病気を包含する。癌は、腫瘍、例えば固形腫瘍又は任意の新生物を特徴とし得る。
一部の実施形態において、癌は固形腫瘍である。大型薬物分子は固形腫瘍における浸透が限られている。大型薬物分子の浸透は遅い。他方で、本発明のコンジュゲートのような小分子は固形腫瘍に迅速に且つより深く浸透し得る。薬物の浸透深さに関して、大型分子ほど耐久性の高い薬物動態を有するものの、浸透しにくい。本発明のコンジュゲートのような小分子は、より深く浸透する。ドレハー(Dreher)ら(ドレハー(Dreher)ら著、ジャーナル・オブ・ザ・ナショナル・キャンサー・インスティテュート(JNCI)、第98巻、第5号、p.335、2006年(この内容は全体として参照により本明細書に援用される))は、種々のサイズのデキストランの腫瘍異種移植片への浸透を研究した。ドレハー(Dreher)の図6(本願の図1を参照)及び表1に要約されるとおり、分子量が3.3kDa又は10kDaのデキストランは腫瘍組織への迅速な深い浸透(腫瘍の血管表面から>35um)を示した。しかしながら、40kDa、70kDa又は2mDaのサイズのデキストランは3.3kDa又は10kDaデキストランと比べて浸透性がはるかに低かった。70kDaデキストランは腫瘍の血管表面から僅か約15umに達したに過ぎなかった。本発明のコンジュゲートは3.3kDa及び10kDaデキストランと同等の分子量を有し、一方、抗体薬物コンジュゲートは少なくとも70kDaデキストランと同程度に大きい分子量を有する。従って、本発明のコンジュゲートは固形腫瘍の中心部/中央部へと深く迅速に浸透し得る。
一実施形態において、本発明のコンジュゲートは、腫瘍の血管表面から固形腫瘍の少なくとも約25μm、約30μm、約35μm、約40μm、約45μm、約50μm、約75μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、約1000μm、約1100μm、約1200μm、約1300μm、約1400μm又は約1500μm中まで達する。距離ゼロは腫瘍の血管表面として定義され、ゼロより大きい距離はいずれも、最も近い血管表面まで三次元で計測した距離として定義される。
別の実施形態において、本発明のコンジュゲートは腫瘍の中心部に浸透する。腫瘍の「中心部」は、本明細書で使用されるとき、腫瘍の中央範囲を指す。腫瘍の中心範囲の任意の部分から腫瘍の血管表面までの距離は、腫瘍の長さ又は幅の約30%〜約50%である。腫瘍の中心範囲の任意の部分から腫瘍の中心点までの距離は、腫瘍の長さ又は幅の約20%未満である。腫瘍の中心範囲はおよそ腫瘍の中心1/3である。
別の実施形態において、本発明のコンジュゲート本発明のコンジュゲートは固形腫瘍の中間部まで浸透する。腫瘍の「中間部」は、本明細書で使用されるとき、腫瘍の中間範囲を指す。腫瘍の中間範囲の任意の部分から腫瘍の血管表面までの距離は、腫瘍の長さ又は幅の約15%〜約30%である。腫瘍の中間範囲の任意の部分から腫瘍の中心点までの距離は腫瘍の長さ又は幅の約20%〜約35%である。腫瘍の中間範囲はおよそ腫瘍の中心1/3から腫瘍の外側1/3までの間である。
一部の実施形態において、対象は、他の場合であれば本コンジュゲート又は粒子による治療の適応がないものであり得る。一部の実施形態において、方法は、限定はされないが哺乳類癌細胞を含め、癌細胞の使用を含む。一部の例では、哺乳類癌細胞はヒト癌細胞である。
一部の実施形態において、本教示のコンジュゲート又は粒子は癌及び/又は腫瘍成長を阻害することが分かった。それらはまた、細胞増殖を含め、侵襲、及び/又は転移も低減し、従ってそれらは癌の治療に有用なものとなる。
一部の実施形態において、本教示のコンジュゲート又は粒子を使用して腫瘍又は癌の成長を防ぎ、及び/又は腫瘍又は癌の転移を防ぎ得る。一部の実施形態において、本教示の組成物を使用して癌を縮小させ又は破壊し得る。
一部の実施形態において、本明細書に提供されるコンジュゲート又は粒子は癌細胞の増殖の阻害に有用である。一部の実施形態において、本明細書に提供されるコンジュゲート又は粒子は細胞増殖の阻害、例えば、細胞増殖速度の阻害、細胞増殖の予防、及び/又は細胞死の誘導に有用である。一般に、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート又は粒子は癌細胞の細胞増殖を阻害し得るか、又は癌細胞の増殖の阻害及び/又は細胞死の誘導の両方を行い得る。一部の実施形態において、細胞増殖は本発明のコンジュゲート又は粒子による治療後に未治療の細胞と比較して少なくとも約25%、約50%、約75%、又は約90%低下する。一部の実施形態において、細胞周期停止マーカーのホスホヒストンH3(PH3又はPHH3)が本発明のコンジュゲート又は粒子による治療後に未治療の細胞と比較して少なくとも約50%、約75%、約100%、約200%、約400%又は約600%増加する。一部の実施形態において、細胞アポトーシスマーカーの切断型カスパーゼ3(CC3)が本発明のコンジュゲート又は粒子による治療後に未治療の細胞と比較して少なくとも50%、約75%、約100%、約200%、約400%又は約600%増加する。
更には、一部の実施形態において、本発明のコンジュゲート又は粒子は、サイズ(重量、表面積又は容積)の正味の値として計測するか、それとも時間に対する速度として計測するかに関わらず、複数種の腫瘍において腫瘍成長の阻害に有効である。
一部の実施形態において、腫瘍のサイズは本発明のコンジュゲート又は粒子による治療後に約60%以上減少する。一部の実施形態において、腫瘍のサイズは、重量、及び/又は面積及び/又は容積で計測して少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約100%減少する。
本教示の方法によって治療可能な癌は、概して哺乳類に起こる。哺乳類としては、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、フェレット、モルモット ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、及びウシが挙げられる。様々な実施形態において、癌としては、限定はされないが、聴神経腫、急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病(単球性、骨髄芽球性、腺癌、血管肉腫、星状細胞腫、骨髄単球性及び前骨髄球性)、急性T細胞白血病、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、気管支原性癌、子宮頸癌、軟骨肉腫、脊索腫、絨毛癌、慢性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄球性白血病、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、嚢胞腺癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、異常増殖性変化(異形成及び化生)、胚性癌腫、子宮内膜癌、内皮肉腫、上衣腫、上皮癌、赤白血病、食道癌、エストロゲン受容体陽性乳癌、本態性血小板血症、ユーイング腫瘍、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、精巣胚細胞癌、神経膠腫、重鎖病、血管芽細胞腫、ヘパトーマ、肝細胞癌、ホルモン非感受性前立腺癌、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管内皮肉腫(lymphagioendotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ芽球性白血病、リンパ腫(ホジキン及び非ホジキン)、膀胱、乳房、結腸、肺、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、及び子宮の悪性腫瘍及び過剰増殖性障害、T細胞又はB細胞由来のリンパ性悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄性白血病、骨髄腫、粘液肉腫、神経芽細胞腫、非小細胞肺癌、乏突起膠腫、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、膵癌、乳頭腺癌、乳頭癌、松果体腫、真性赤血球増加症、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、皮脂腺癌、セミノーマ、皮膚癌、小細胞肺癌、固形腫瘍(癌腫及び肉腫)、小細胞肺癌、胃癌、扁平上皮癌、滑膜腫、汗腺癌、甲状腺癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、精巣腫瘍、子宮癌、及びウィルムス腫瘍が挙げられる。他の癌としては、原発性癌、転移性癌、中咽頭癌、下咽頭癌、肝癌、胆嚢癌、胆管癌、小腸癌、尿路癌、腎癌、尿路上皮癌、女性生殖器癌、子宮癌、妊娠性絨毛性疾患、男性生殖器癌、精嚢癌、精巣癌、胚細胞腫瘍、内分泌腺腫瘍、甲状腺癌、副腎癌、下垂体癌、血管腫、骨及び軟部組織に由来する肉腫、カポジ肉腫、神経癌、眼癌、髄膜癌(meningial cancer)、膠芽腫、神経腫、神経芽細胞腫、シュワン腫、白血病などの造血器悪性腫瘍に由来する固形腫瘍、転移性黒色腫、再発性又は持続性卵巣上皮癌、卵管癌、原発性腹膜癌、消化管間質腫瘍、結腸直腸癌、胃癌、黒色腫、多形性膠芽腫、非扁平上皮非小細胞肺癌、悪性神経膠腫、上皮性卵巣癌、原発性漿液性腹膜癌、転移性肝癌、神経内分泌癌、難治性悪性腫瘍、トリプルネガティブ乳癌、HER2増幅乳癌、鼻咽腔癌(nasopharageal cancer)、口腔癌、胆道、肝細胞癌、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、非髄様甲状腺癌、再発性多形性膠芽腫、神経線維腫症1型、CNS癌、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、唾液腺癌、粘膜黒色腫、末端性/黒子性黒色腫、傍神経節腫、褐色細胞腫、進行転移性癌、固形腫瘍、トリプルネガティブ乳癌、結腸直腸癌、肉腫、黒色腫、腎癌、子宮内膜癌、甲状腺癌、横紋筋肉腫(rhabdomysarcoma)、多発性骨髄腫、卵巣癌、膠芽腫、消化管間質腫瘍、マントル細胞リンパ腫、及び難治性悪性腫瘍が挙げられる。
一実施形態において、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート又は粒子又は本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート若しくは粒子を含む製剤は、小細胞肺癌の治療に使用される。肺癌を有する患者の約12%〜15%が小細胞肺癌を有する。転移性小細胞肺癌の生存率は低い。生存率は診断後5年で5%未満である。小細胞肺癌の米国での発生は約2万6000〜3万例である。
一部の実施形態において、本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート又は粒子又は本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート若しくは粒子を含む製剤は、HSP90を発現又は過剰発現する腫瘍を有する患者の治療に使用される。
本発明のコンジュゲート又は粒子の特徴は、腫瘍成長を阻害する、例えば遅延させ又は停止させる有効性は維持しつつ、生物にとって比較的低毒性であることである。本明細書で使用されるとき、「毒性」は、物質又は組成物が細胞、組織、生物又は細胞環境にとって有害又は有毒となる能力を指す。低毒性とは、物質又は組成物が細胞、組織、生物又は細胞環境にとって有害又は有毒となる能力の低下を指す。かかる毒性の低下又は低毒性は、標準測定値を基準としたものか、治療を基準としたものか、又は治療がない場合を基準としたものであり得る。例えば、本発明のコンジュゲート又は粒子は、単独で投与した活性薬剤部分Zよりも低い毒性を有し得る。DM1を含むコンジュゲートについては、その毒性は単独で投与したDM1よりも低い。
毒性は、更に対象の体重減少を基準として計測されてもよく、ここでは体重の15%超、20%超又は30%超の体重減少が毒性の指標となる。嗜眠及び全身倦怠感を含む患者の症状呈示の尺度など、毒性の他の尺度が計測されてもまたよい。好中球減少、血小板減少、白血球(WBC)数、全血球(CBC)数もまた、毒性の尺度であり得る。毒性の薬理学的指標としては、アミノトランスフェラーゼ(AST/ALT)値の上昇、神経毒性、腎損傷、GI障害などが挙げられる。一実施形態において、本発明のコンジュゲート又は粒子は対象の体重の有意な変化を引き起こさない。本発明のコンジュゲート又は粒子による治療後に対象の体重減少は約30%、約20%、約15%、約10%、又は約5%未満である。別の実施形態において、本発明のコンジュゲート又は粒子は対象のAST/ALT値の有意な増加を引き起こさない。本発明のコンジュゲート又は粒子による治療後に対象のAST又はALT値は増加が約30%、約20%、約15%、約10%、又は約5%未満である。更に別の実施形態において、本発明のコンジュゲート又は粒子は、本発明のコンジュゲート又は粒子による治療後に対象のCBC又はWBC数の有意な変化を引き起こさない。本発明のコンジュゲート又は粒子による治療後に対象のCBC又はWBC値は低下が約30%、約20%、約15%、約10%、又は約5%未満である。
いくつかの実施形態において、本開示のコンジュゲートは、そのペイロードの活性をマスキングする。各コンジュゲートは、リンカー部分が腫瘍内で切断されて活性なペイロードを解放するまで、それぞれのペイロードの標的活性をブロックする。ペイロードが腫瘍に送達可能になるまで、HSP90プラットフォームを介してペイロードの活性部位をマスキングすることで、毒性が軽減される。例えば、一実施形態では、ペイロードは、PI3K活性を阻害する。ペイロードを含むコンジュゲートは、ペイロードのみと比較して、PI3K阻害活性が少ない。
いくつかの実施形態では、本開示のコンジュゲートは、治療を受けている対象の血中グルコースレベルの有意な増加を引き起こさない。本明細書で使用される「有意な増加」とは、治療前のレベルと比較して25%を超える増加を意味する。いくつかの実施形態では、本開示のコンジュゲートの治療を受けている対象の血中グルコースレベルは、治療前のレベルと比較して、約200%未満、約150%未満、約100%未満、約75%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、又は約10%未満増加する。
一部の実施形態において、本発明のコンジュゲート又は粒子は少なくとも1つの追加の活性薬剤と組み合わされる。活性薬剤は任意の好適な薬物であってもよい。コンジュゲート及び少なくとも1つの追加の活性薬剤は、同時に、逐次的に、又は任意の順序で投与することができる。コンジュゲート及び少なくとも1つの追加の活性薬剤は、適切である限り、異なる用量で、異なる投薬頻度で、又は異なる経路を介して投与され得る。追加の活性薬剤は、癌の治療用薬物など、本明細書に記載される任意の活性薬剤から選択されてもよい。活性薬剤はまた、癌症状緩和薬であってもよい。症状緩和薬の非限定的な例としては、オクトレオチド又はランレオチド;インターフェロン、シプロヘプタジン(cypoheptadine)又は任意の他の抗ヒスタミン薬が挙げられる。一部の実施形態において、本発明のコンジュゲート又は粒子は追加の活性薬剤との薬物相互干渉を有しない。一実施形態において、本発明のコンジュゲート又は粒子はシトクロムP450(CYP)アイソザイムを阻害しない。CYPアイソザイムには、CYP3A4ミダゾラム、CYP3A4テストステロン、CYP2C9、CYP2D6、CYP1A2、CYP2C8、CYP2B6、及びCYP2C19が含まれ得る。追加の活性薬剤は本発明のコンジュゲート又は粒子と同時に投与されてもよい。
別の例では、本発明のコンジュゲート又は粒子を中等用量の化学療法剤、例えばマイトマイシンC、ビンブラスチン及びシスプラチンと組み合わせてもよい(エリス(Ellis)ら著、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー(Br J Cancer)、第71巻、第2号、p.366〜370(1995年)(この内容は全体として参照により本明細書に援用される)を参照)。
さらに別の例において、患者は、最初に、薬学的有効量の非コンジュゲート活性薬剤を受け、その後、同じ活性薬剤を含む薬学的有効量のコンジュゲートを受けてもよい。
本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート若しくは粒子又は本明細書に記載されるとおりのコンジュゲート若しくは粒子を含有する製剤を使用して、治療用、予防用、又は診断用薬剤をそれを必要としている個体又は患者に組織選択的に送達することができる。例えば、本発明のDM1コンジュゲート又は粒子を使用してDM1が選択的な組織に送達される。これらの組織は腫瘍組織であり得る。投薬量レジメンは、最適な所望の反応(例えば、治療的又は予防的反応)がもたらされるように調整し得る。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、数回の分割用量を時間をかけて投与してもよく、又は治療状況の緊急性が指示するところに応じて用量を比例的に減量又は増量させてもよい。投薬量単位形態とは、本明細書で使用されるとき、治療する哺乳類対象への単位投薬量として適した物理的に個別の単位を指す;各単位が、所望の治療薬を生じるように計算された所定の分量の活性化合物を含有する。
様々な実施形態において、粒子中に含まれるコンジュゲートは制御された形で放出される。放出はインビトロ又はインビボであってよい。例えば、米国薬局方及びそのバリエーションに規定されているものを含め、一定の条件下で粒子を放出試験に供することができる。
様々な実施形態において、粒子が放出試験の条件に曝露された後の最初の1時間以内に、粒子中に含まれるコンジュゲートの約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満が放出される。一部の実施形態において、粒子が放出試験の条件に曝露された後の最初の1時間以内に、粒子中に含まれるコンジュゲートの約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、又は約50%未満が放出される。特定の実施形態において、粒子が放出試験の条件に曝露された後の最初の1時間以内に、粒子中に含まれるコンジュゲートの約50%未満が放出される。
コンジュゲートがインビボで放出されることに関して、例えば、対象に投与された粒子中に含まれるコンジュゲートは対象の体から保護されていてもよく、及び体もまた、コンジュゲートが粒子から放出されるまでコンジュゲートから隔離されていてもよい。
従って、一部の実施形態において、本コンジュゲートは、粒子が対象の体に送達されるまで実質的に粒子中に含まれていてもよい。例えば、粒子が対象の体、例えば治療部位に送達される前に粒子から放出されるのは、総コンジュゲートの約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、又は約1%未満である。一部の実施形態において、本コンジュゲートは長期間にわたって放出されてもよく、又はバーストによって放出されてもよい(例えば、多量のコンジュゲートが短時間のうちに放出された後、実質的にコンジュゲートが放出されない時間が続く)。例えば、コンジュゲートは6時間、12時間、24時間、又は48時間かけて放出されてもよい。特定の実施形態において、コンジュゲートは1週間又は1ヵ月間かけて放出される。
V.キット及びデバイス
本発明は、本発明の方法を好都合に及び/又は有効に実行するための種々のキット及びデバイスを提供する。典型的にはキットは、使用者による1又は複数の対象の複数回の治療の実施及び/又は複数回の実験の実施を可能にするのに十分な量及び/又は数の構成要素を含み得る。
一実施形態において、本発明は、本発明のコンジュゲート及び/又は粒子又は本発明のコンジュゲート及び/又は粒子の組み合わせを任意選択で任意の他の活性薬剤と組み合わせて含む、インビトロ又はインビボで腫瘍細胞成長を阻害するためのキットを提供する。
本キットは、包装及び説明書及び/又は製剤組成物を形成するためのデリバリー剤を更に含み得る。デリバリー剤には、生理食塩水、緩衝溶液、又は本明細書に開示される任意のデリバリー剤が含まれ得る。各構成成分の量は、一貫した再現可能な高濃度生理食塩水又は単純緩衝液製剤が実現するように変えることができる。構成成分もまた、ある期間にわたる及び/又は種々の条件下における緩衝溶液中のコンジュゲート及び/又は粒子の安定性を増加させるため変えることができる。
本発明は、本発明のコンジュゲート及び/又は粒子を取り入れ得るデバイスを提供する。これらのデバイスは、それを必要としている対象、例えばヒト患者に即時送達するのに利用可能な安定製剤を含む。一部の実施形態において、対象は癌を有する。
デバイスの非限定的な例としては、ポンプ、カテーテル、針、経皮パッチ、加圧嗅覚器送達デバイス、イオントフォレシスデバイス、多層マイクロ流体デバイスが挙げられる。これらのデバイスを利用することにより、本発明のコンジュゲート及び/又は粒子を単回、複数回又は分割投与レジメン(regiment)に従い送達し得る。デバイスを利用することにより、本発明のコンジュゲート及び/又は粒子を生体組織を通して、皮内に、皮下に、又は筋肉内に送達し得る。
VI.定義
用語「化合物」は、本明細書で使用されるとき、示される構造体のあらゆる立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位元素を含むことが意図される。本願では、化合物はコンジュゲートと同義的に(interechangably)使用される。従って、コンジュゲートもまた、本明細書で使用されるとき、描かれる構造体のあらゆる立体異性体、幾何異性体、互変異性体、及び同位元素を含むことが意図される。
本明細書に記載される化合物は不斉性であり得る(例えば1つ以上の立体中心を有する)。特に指示されない限り、エナンチオマー及びジアステレオマーなど、あらゆる立体異性体が意図される。非対称に置換された炭素原子を含む本開示の化合物は、光学活性形態又はラセミ体形態で分離することができる。光学活性出発物質から光学活性形態をどのように調製するかに関する方法は、ラセミ混合物の分割によるか又は立体選択的合成によるなど、当該技術分野において公知である。オレフィン類、C=N二重結合などの多くの幾何異性体もまた本明細書に記載される化合物に存在してもよく、かかる安定異性体は全て、本開示において企図される。本開示の化合物のシス及びトランス幾何異性体が記載され、異性体の混合物として又は別々の異性体型として分離され得る。
本開示の化合物にはまた、互変異性型も含まれる。互変異性型は、単結合を隣接する二重結合と交換し、同時にプロトンが移動する結果として生じる。互変異性型は、同じ実験式及び全電荷を有する異性体プロトン化状態であるプロトトロピー互変異性体を含む。プロトトロピー互変異性体の例としては、ケトン−エノール対、アミド−イミド酸対、ラクタム−ラクチム対、アミド−イミド酸対、エナミン−イミン対、及びプロトンが複素環式系の2つ以上の位置を占めることができる環状型、例えば、1H−及び3H−イミダゾール、1H−、2H−及び4H−1,2,4−トリアゾール、1H−及び2H−イソインドール、及び1H−及び2H−ピラゾールが挙げられる。互変異性型は平衡状態であり、又は適切な置換によって一つの形態に立体的に固定される。
本開示の化合物にはまた、中間体又は最終化合物中に存在する原子のあらゆる同位元素も含まれる。「同位元素」は、同じ原子番号を有するが、核内の中性子の数が異なる結果として質量数が異なる原子を指す。例えば、水素の同位元素にはトリチウム及び重水素が含まれる。
本開示の化合物及び塩は、常法によって溶媒又は水分子と組み合わせて溶媒和物及び水和物を形成することにより調製し得る。
用語「対象」又は「患者」は、本明細書で使用されるとき、例えば、実験目的、治療目的、診断目的、及び/又は予防目的で粒子を投与し得る任意の生物を指す。典型的な対象としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ハムスター、ラマ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳類)が挙げられる。
用語「治療する」又は「予防する」は、本明細書で使用されるとき、ある疾患、障害及び/又は病態に罹り易い素因があり得るものの、まだその疾患、障害又は病態を有すると診断はされていない動物に疾患、障害又は病態が起こらないように防ぐこと;疾患、障害又は病態を阻害する、例えば、その進行を妨げること;及び疾患、障害、又は病態を軽減する、例えば、疾患、障害及び/又は病態の退縮を生じさせることを含み得る。疾患、障害、又は病態を治療するとは、鎮痛剤が疼痛の原因を治療しないにしてもかかる薬剤の投与によって対象の痛みを治療するなど、特定の疾患、障害、又は病態の少なくとも1つの症状を、例え根底にある病態生理が影響を受けないとしても改善することを含み得る。
「標的」は、本明細書で使用されるとき、標的化されたコンストラクトが結合する部位を意味するものとする。標的はインビボ又はインビトロのいずれであってもよい。特定の実施形態において、標的は、白血病又は腫瘍(例えば、脳、肺(小細胞及び非小細胞)、卵巣、前立腺、乳房及び結腸の腫瘍並びに他の癌腫及び肉腫)に見られる癌細胞であり得る。なおも他の実施形態において、標的は、ハプテン、エピトープ、受容体、dsDNA断片、炭水化物又は酵素など、標的化部分又はリガンドが結合する分子構造を指し得る。標的はある種の組織、例えば、神経組織、腸組織、膵臓組織、肝臓、腎臓、前立腺、卵巣、肺、骨髄、又は乳房組織であってもよい。
本方法又はコンジュゲート又は粒子の標的となり得る「標的細胞」は、概して動物細胞、例えば哺乳類細胞である。本方法を用いて、インビトロで、即ち細胞培養で、又は細胞が動物組織の一部を形成するか若しくは他の形で存在するインビボで、生細胞の細胞機能を改変し得る。従って、標的細胞には、例えば、血液、リンパ組織、消化管の内側を覆う細胞、例えば口腔粘膜及び咽頭粘膜、小腸の絨毛を形成する細胞、大腸の内側を覆う細胞、動物の呼吸器系(鼻道/肺)の内側を覆う細胞(本発明の吸入によって接触させ得る)、真皮/表皮細胞、腟及び直腸の細胞、胎盤の細胞を含めた内臓器官の細胞及びいわゆる血液脳関門等が含まれ得る。一般に、標的細胞は少なくとも1種類のHSP90を発現する。一部の実施形態において、標的細胞は、HSP90を発現し且つ本明細書に記載されるコンジュゲートによって標的化される、及び本コンジュゲートの活性薬剤の放出によって影響を受ける細胞の近傍にある細胞であり得る。例えば、腫瘍に近接しているHSP90を発現する血管が標的であってもよく、一方、その部位で放出される活性薬剤は腫瘍に影響を及ぼすことになる。
用語「治療効果」は当該技術分野で認識されており、薬理活性物質によって引き起こされる動物、詳細には哺乳類、より詳細にはヒトにおける局所又は全身作用を指す。従ってこの用語は、動物、例えばヒトの望ましい身体的又は精神的発達及び状態の増強における疾患、障害又は病態の診断、治癒、緩和、治療又は予防への使用が意図される任意の物質を意味する。
用語「モジュレーション」は、当該技術分野で認識されており、反応の上方制御(即ち活性化又は刺激)、下方制御(即ち阻害又は抑制)、又はこれら2つを組み合わせで又は別々に指す。モジュレーションは、概して、治療される実体にとって内部又は外部であってもよいベースライン又は基準と比較される。
「非経口投与」は、本明細書で使用されるとき、消化管(経腸)又は非侵襲性局所経路を介する以外の任意の方法による投与を意味する。例えば、非経口投与には、静脈内、皮内、腹腔内、胸膜内、気管内、骨内(intraossiously)、脳内、髄腔内、筋肉内、皮下、結膜下(subjunctivally)への、注射による、及び注入による患者への投与が含まれ得る。
「局所投与」は、本明細書で使用されるとき、皮膚、開口部、又は粘膜への非侵襲性投与を意味する。局所投与は局所的に送達することができ、即ち、治療薬は全身曝露なしに、又は最小限の全身曝露で、送達領域に局所効果をもたらすことができる。一部の局所製剤は、例えば個体の血流への吸着によって全身作用をもたらすことができる。局所投与には、限定はされないが、皮膚及び経皮投与、頬側投与、鼻腔内投与、腟内投与、膀胱内投与、眼投与、及び直腸投与が含まれ得る。
「経腸投与」は、本明細書で使用されるとき、胃腸管を通じた吸収による投与を意味する。経腸投与には、経口及び舌下投与、胃投与、又は直腸投与が含まれ得る。
「肺内投与」は、本明細書で使用されるとき、吸入又は気管内投与による肺内への投与を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「吸入」は、肺胞に空気を取り入れることを指す。空気の取り入れは口又は鼻から行われ得る。
本明細書で同義的に使用されるとおりの用語「十分な」及び「有効な」は、1つ以上の所望の結果を実現するのに必要な量(例えば、質量、容積、投薬量、濃度、及び/又は時間)を指す。「治療有効量」は、少なくとも1つの症状又は特定の病態若しくは障害の計測可能な改善又は妨害を生じさせ、平均余命の計測可能な向上を生じさせ、又は患者のクオリティ・オブ・ライフを概して改善するのに要求される少なくとも最小限の濃度である。従って治療有効量は、具体的な生物学的に活性な分子及び治療する具体的な病態又は障害に依存する。抗体など、多くの活性薬剤の治療有効量は、当該技術分野において公知である。本明細書に記載される化合物及び組成物の、例えば特定の障害を治療するための治療有効量は、十分に医師などの当業者の技能の範囲内にある技法によって決定し得る。
本明細書では同義的に使用されるとおりの用語「生物活性薬剤」及び「活性薬剤」には、限定なしに、身体で局所的又は全身的に作用する生理活性又は薬理活性物質が含まれる。生物活性薬剤は、疾患又は病気の治療(例えば治療用薬剤)、予防(例えば予防用薬剤)、診断(例えば診断用薬剤)、治癒又は緩和に使用される物質、身体の構造又は機能に影響を及ぼす物質、又は所定の生理学的環境に置かれた後に生物学的に活性になる又は活性が高くなるプロドラッグである。
用語「プロドラッグ」は、インビトロ及び/又はインビボで生物学的に活性な形態に変換される、有機小分子、ペプチド、核酸又はタンパク質を含めた薬剤を指す。プロドラッグは、ある状況において親化合物(活性化合物)よりも投与が容易であり得るため有用であり得る。例えば、プロドラッグは経口投与によるバイオアベイラビリティがあり得るが、親化合物はない。プロドラッグはまた、親薬物と比較して医薬組成物中における溶解度が向上したものであり得る。プロドラッグはまた、親よりも毒性が低いものであり得る。プロドラッグは、酵素的過程及び代謝加水分解を含め、様々な機構によって親薬物に変換され得る。ハーパー,N.J.(Harper,N.J.)、1962年、薬物潜在化(Drug Latentiation)、ユッカー(Jucker)編、薬物研究の進歩(Progress in Drug Research)、第4巻、p.221〜294;モロゾウィッチ(Morozowich)ら著、1977年、身体有機成分のプロドラッグ設計への応用(Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design)、E.B.ロシュ(E.B.Roche)編、プロドラッグ及び類似体によるバイオ医薬品特性の設計(Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs)、米国薬剤師会(APhA);アカデミー・オブ・ファーマシューティカル・リサーチ・アンド・サイエンス(Acad.Pharm.Sci.);E.B.ロシュ(E.B.Roche)編、1977年、薬物設計、理論及び応用における薬物のバイオリバーシブル担体(Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application)、米国薬剤師会(APhA);H.バンドゲーアード(H.Bundgaard)編、1985年、プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)、エルゼビア(Elsevier);ワン(Wang)ら著、1999年、ペプチド薬物の送達改善に向けたプロドラッグアプローチ(Prodrug
approaches to the improved delivery of peptide drug)、カレント・ファーマシューティカル・デザイン(Curr.Pharm.Design.)、第5巻、第4号、p.265〜287;パウレッティ(Pauletti)ら著、1997年、ペプチドバイオアベイラビリティの向上:ペプチドミメティクス及びプロドラッグ戦略(Improvement in peptide bioavailability:Peptidomimetics and Prodrug Strategies)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Adv.Drug.Delivery Rev.)、第27巻、p.235〜256;ミズン(Mizen)ら著、1998年、βラクタム系抗生物質の経口送達用プロドラッグとしてのエステルの使用(The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of β−Lactam antibiotics)、ファーマシューティカル・バイオテクノロジー(Pharm.Biotech.)、第11巻、p.345〜365;ガイニョー(Gaignault)ら著、1996年、プロドラッグ及びバイオプリカーサの設計I.担体プロドラッグ(Designing Prodrugs and Bioprecursors I.Carrier Prodrugs)、ザ・プラクティス・オブ・メディシナル・ケミストリー(Pract.Med.Chem.)、p.671〜696;M.アスガルネジド(M.Asgharnejad)、2000年、プロドラッグによる経口薬物輸送の改善(Improving Oral Drug Transport Via Prodrugs)、G.L.アミドン(G.L.Amidon)、P.I.リー(P.I.Lee)及びE.M.トップ(E.M.Topp)編、製剤系の輸送プロセス(Transport Processes in Pharmaceutical Systems)、マルセル・デッカー(Marcell Dekker)、p.185〜218;バラント(Balant)ら著、1990年、種々の投与経路による薬物吸収を改善するためのプロドラッグ(Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ドラッグ・メタボリズム・アンド・ファーマコキネティクス(Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.)、第15巻、第2号、p.143〜53;バリマネ(Balimane)及びシンコ(Sinko)著、1999年、ヌクレオシド類似体の経口吸収におけるマルチトランスポーターの改善(Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Adv.Drug Delivery Rev.)、第39巻、第1−3号、p.183〜209;ブラウン(Browne)著、1997年、ホスフェニトイン(セレビックス)(Fosphenytoin(Cerebyx))、クリニカル・ニューロファーマコロジー(Clin.Neuropharmacol.)、第20巻、第1号、p.1〜12;バンドゲーアード(Bundgaard)著、1979年、薬物のバイオリバーシブル誘導体化−原理と薬物の治療効果の改善に向けた適用性(Bioreversible derivatization of drugs−−principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs)、Arch.Pharm.Chemi.、第86巻、第1号、p.1〜39;H.バンドゲーアード(H.Bundgaard)編、1985年、プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)、ニューヨーク:エルゼビア(Elsevier);フライシャー(Fleisher)ら著、1996年、経口薬物送達の改善:溶解度制限がプロドラッグの使用によって解消される(Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs)、アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Adv.Drug Delivery Rev.)、第19巻、第2号、p.115〜130;フライシャー(Fleisher)ら著、1985年、腸内酵素ターゲティングによる胃腸管吸収の改善に向けたプロドラッグの設計(Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting)、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods Enzymol.)、第112巻、p.360〜81;ファークワー・D(Farquhar D)ら著、1983年、生物学的に可逆的なリン酸塩保護基(Biologically Reversible Phosphate−Protective Groups)、ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(J.Pharm.Sci.)、第72巻、第3号、p.324〜325;ハン・H.K.(Han,H.K.)ら著、2000年、薬物送達を最適化するための標的化プロドラッグ設計(Targeted prodrug design to optimize drug delivery)、製薬科学者協会ファームサイ(AAPS PharmSci.)、第2巻、第1号、p.E6;サヅカ・Y(Sadzuka Y.)、2000年、有効なプロドラッグリポソーム及び活性代謝産物への変換(Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite)、カレント・ドラッグ・メタボリズム(Curr.Drug Metab.)、第1巻、第1号、p.31〜48;D・M・ランバート(D.M.Lambert)、2000年、プロドラッグ担体としての脂質の原理及び応用(Rationale and applications of lipids as prodrug
carriers)、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンシーズ(Eur.J.Pharm.Sci.)、第11巻、補遺2、p.S15〜27;ワン・W(Wang,W.)ら著、1999年、ペプチド薬物の送達改善に向けたプロドラッグアプローチ(Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drugs)、カレント・ファーマシューティカル・デザイン(Curr.Pharm.Des.)、第5巻、第4号、p.265〜87。
用語「生体適合性」は、本明細書で使用されるとき、任意の代謝産物又はその分解産物と共に、概して被投与者にとって非毒性の、且つ被投与者にいかなる重大な有害作用も引き起こさない材料を指す。一般的に言えば、生体適合性材料は、患者への投与時に重大な炎症反応又は免疫反応を誘発しない材料である。
用語「生分解性」は、本明細書で使用されるとき、概して、生理条件下で分解し又は侵食されて、対象によって代謝、排出、又は排泄可能なより小さい単位又は化学種になる材料を指す。分解時間は組成及び形態の関数である。分解時間は数時間〜数週間であり得る。
用語「薬学的に許容可能」は、本明細書で使用されるとき、妥当な医学的判断の範囲内で、米国食品医薬品局などの機関のガイドラインに従い合理的なリスク対効果比に見合った過度の毒性、刺激作用、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症のないヒト及び動物の組織との接触における使用に好適な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。「薬学的に許容可能な担体」は、本明細書で使用されるとき、インビボで組成物の送達を促進する医薬製剤の全ての構成成分を指す。薬学的に許容可能な担体としては、限定はされないが、希釈剤、保存剤、結合剤、滑沢剤、崩壊薬、膨潤剤、充填剤、安定剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
用語「分子量」は、本明細書で使用されるとき、概して材料の質量又は平均質量を指す。ポリマー又はオリゴマーの場合、分子量は、バルクポリマーの相対的平均鎖長又は相対的鎖質量を指し得る。実際には、ポリマー及びオリゴマーの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又は毛細管粘度測定法を含めた様々な方法で推定し又は特徴付けることができる。GPC分子量は、数平均分子量(Mn)とは対照的に、重量平均分子量(Mw)として報告される。毛細管粘度測定法は、特定の一組の濃度、温度、及び溶媒条件を用いた希釈ポリマー溶液から決定される固有粘度として分子量の推定値を提供する。
用語「小分子」は、本明細書で使用されるとき、概して、2000g/mol未満の分子量、1500g/mol未満、1000g/mol未満、800g/mol未満、又は500g/mol未満の有機分子を指す。小分子は非ポリマー性及び/又は非オリゴマー性である。
用語「親水性」は、本明細書で使用されるとき、水と容易に相互作用する強極性基を有する物質を指す。
用語「疎水性」は、本明細書で使用されるとき、水に対する親和性を欠く;撥水して水を吸収しないとともに水中に溶解又は混合しない傾向をもつ物質を指す。
用語「親油性」は、本明細書で使用されるとき、脂質に対する親和性を有する化合物を指す。
用語「両親媒性」は、本明細書で使用されるとき、親水性特性と親油性(疎水性)特性とを合わせ持つ分子を指す。「両親媒性材料」は、本明細書で使用されるとき、疎水性又は高疎水性のオリゴマー又はポリマー(例えば生分解性オリゴマー又はポリマー)と親水性又は高親水性のオリゴマー又はポリマーとを含有する材料を指す。
用語「標的化部分」は、本明細書で使用されるとき、特定の場所に結合する又はそこに局在化する部分を指す。部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸類似体、炭水化物、又は小分子であり得る。場所は、組織、特定の細胞型、又は細胞内コンパートメントであり得る。一部の実施形態において、標的化部分は選択の分子に特異的に結合することができる。
用語「反応性カップリング基」は、本明細書で使用されるとき、第2の官能基と反応して共有結合を形成する能力を有する任意の化学官能基を指す。反応性カップリング基の選択は当業者の能力の範囲内である。反応性カップリング基の例としては、第一級アミン類(−NH2)及びアミン反応性連結基、例えば、イソチオシアネート類、イソシアネート類、アシルアジド類、NHSエステル類、塩化スルホニル類、アルデヒド類、グリオキサール類、エポキシド類、オキシラン類、炭酸塩類、ハロゲン化アリール類、イミドエステル類、カルボジイミド類、無水物類、及びフルオロフェニルエステル類などを挙げることができる。これらの多くはアシル化又はアルキル化のいずれかによってアミン類にコンジュゲートする。反応性カップリング基の例としては、アルデヒド類(−COH)及びアルデヒド反応性連結基、例えば、ヒドラジド類、アルコキシアミン類、及び第一級アミン類を挙げることができる。反応性カップリング基の例としては、チオール基(−SH)及びスルフヒドリル反応基、例えば、マレイミド類、ハロアセチル類、及びピリジルジスルフィド類を挙げることができる。反応性カップリング基の例としては、光反応性カップリング基、例えばアリールアジド類又はジアジリン類などを挙げることができる。カップリング反応には、触媒、熱、pH緩衝液、光、又はこれらの組み合わせの使用が含まれ得る。
用語「保護基」は、本明細書で使用されるとき、所望の官能基をある種の反応条件から保護するため別の所望の官能基に付加され及び/又はそれを置換し、及び所望の官能基を脱保護し又はそれを露出させるため選択的に除去及び/又は置換され得る官能基を指す。保護基は当業者に公知である。好適な保護基としては、グリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)、有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)、1991年に記載されるものを挙げることができる。酸感受性保護基としては、ジメトキシトリチル(DMT)、tert−ブチルカルバメート(tBoc)及びトリフルオロアセチル(tFA)が挙げられる。塩基感受性保護基としては、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、イソブチリル(isobutyrl)(iBu)、ベンゾイル(Bz)及びフェノキシアセチル(pac)が挙げられる。他の保護基としては、アセトアミドメチル、アセチル、tert−アミルオキシカルボニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル、2−(4−ビフェニリル)−2−プロピルオキシカルボニル((2−(4−biphεnylyl)−2−propy!oxycarbonyl)、2−ブロモベンジルオキシカルボニル、tert−ブチル7tert−ブチルオキシカルボニル、l−カルボベンゾキサミド(carbobenzoxamido)−2,2.2−トリフルオロエチル、2,6−ジクロロベンジル、2−(3,5−ジメトキシフェニル)−2−プロピルオキシカルボニル、2,4−ジニトロフェニル、ジチアスクシニル、ホルミル、4−メトキシベンゼンスルホニル、4−メトキシベンジル、4−メチルベンジル、o−ニトロフェニルスルフェニル、2−フェニル−2−プロピルオキシカルボニル、α−2,4,5−テトラメチルベンジルオキシカルボニル、p−トルエンスルホニル、キサンテニル、ベンジルエステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、p−ニトロベンジルエステル、p−ニトロフェニルエステル、フェニルエステル、p−ニトロカーボネート、p−ニトロベンジルカーボネート、トリメチルシリル及びペンタクロロフェニルエステルが挙げられる。
用語「活性化エステル」は、本明細書で使用されるとき、アルキルが良好な脱離基であり、アミノ基を担持する分子による求核攻撃に対する感受性をカルボニルに付与するカルボン酸のアルキルエステルを指す。従って活性化エステルはアミノリシスを起こし易く、アミンと反応してアミドを形成する。活性化エステルはカルボン酸エステル基−CO2R[式中、Rは脱離基である]を含有する。
用語「アルキル」は、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、及びシクロアルキル置換アルキル基を含めた飽和脂肪族基のラジカルを指す。
一部の実施形態において、直鎖又は分枝鎖アルキルはその骨格に炭素原子を30個以下(例えば、直鎖についてC1〜C30、分枝鎖についてC3〜C30)、20個以下、12個以下、又は7個以下有する。同様に、一部の実施形態においてシクロアルキル類はその環構造に3〜10個の炭素原子を有し、例えば環構造に5、6又は7個の炭素を有する。本明細書、実施例、及び特許請求の範囲全体を通じて用いられるとおりの用語「アルキル」(又は「低級アルキル」)は、「非置換アルキル類」及び「置換アルキル類」の両方を含むことが意図され、このうちの後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素を置換する1つ以上の置換基を有するアルキル部分を指す。かかる置換基としては、限定はされないが、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオ酢酸塩、又はチオギ酸塩など)、アルコキシル、ホスホリル、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩(a hosphinate)、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、硫酸塩、スルホン酸塩、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。
炭素の数が特に指定されない限り、「低級アルキル」は、本明細書で使用されるとき、上記に定義するとおりの、但しその骨格構造に1〜10個の炭素、又は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」も同様の鎖長を有する。一部の実施形態において、アルキル基は低級アルキル類である。一部の実施形態において、本明細書においてアルキルとして指定される置換基は低級アルキルである。
当業者は、炭化水素鎖上の置換された部分が、適切な場合にはそれ自体置換されていてもよいことを理解するであろう。例えば、置換アルキルの置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、チオール類、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホン酸塩及びホスフィン酸塩を含む)、スルホニル(硫酸塩、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホン酸塩を含む)、及びシリル基、並びにエーテル類、アルキルチオ類、カルボニル類(ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸塩類、及びエステル類を含む)、−CF3、−CNなどを挙げることができる。シクロアルキル類も同様に置換されていてもよい。
用語「ヘテロアルキル」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、直鎖又は分枝鎖、又は環状炭素を含有するラジカル、又はこれらの組み合わせを指す。好適なヘテロ原子としては、限定はされないが、O、N、Si、P、Se、B、及びSが挙げられ、ここで亜リン酸及び硫黄原子は任意選択で酸化されており、及び窒素ヘテロ原子は任意選択で四級化されている。ヘテロアルキル類は、アルキル基に関して上記に定義したとおり置換されていてもよい。
用語「アルキルチオ」は、硫黄ラジカルが付加された上記に定義するとおりのアルキル基を指す。一部の実施形態において、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、及び−S−アルキニルのうちの1つによって表される。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、及びエチルチオを挙げることができる。用語「アルキルチオ」はまた、シクロアルキル基、アルケン及びシクロアルケン基、及びアルキン基も包含する。「アリールチオ」は、アリール又はヘテロアリール基を指す。アルキルチオ基は、アルキル基に関して上記に定義したとおり置換されていてもよい。
用語「アルケニル」及び「アルキニル」は、長さ及び可能な置換が上記に記載したアルキル類と同様の、但し少なくとも1つのそれぞれ二重結合又は三重結合を含有する不飽和脂肪族基を指す。
用語「アルコキシル」又は「アルコキシ」は、本明細書で使用されるとき、酸素ラジカルが付加されている上記に定義するとおりのアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、及びtert−ブトキシが挙げられる。「エーテル」は、2つの炭化水素が酸素によって共有結合的に連結したものである。従って、当該のアルキルにエーテルを付与するアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、及び−O−アルキニルのうちの1つによって表され得るなど、アルコキシルであるか、又はそれに似ている。アロキシは−O−アリール又はO−ヘテロアリールによって表すことができ、ここでアリール及びヘテロアリールは以下に定義するとおりである。アルコキシ及びアロキシ基は、アルキルに関して上記に記載したとおり置換されていてもよい。
用語「アミン」及び「アミノ」は当該技術分野で認識されており、非置換型及び置換型の両方のアミン、例えば、一般式:
[式中、R9、R10、及びR’10は、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R8を表し、又はR9及びR10は、それらが結合しているN原子と一緒になって、環状構造に4〜8個の原子を有する複素環を完成させ;R8は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環又は多環を表し;及びmは0又は1〜8の範囲の整数である]によって表すことのできる部分を指す。一部の実施形態において、R9又はR10のうちの一方のみがカルボニルであってもよく、例えば、R9、R10及び窒素は一緒になってイミドを形成しない。なおも他の実施形態において、用語「アミン」にはアミド類は包含されず、例えばR9及びR10のうちの一方がカルボニルを表す。更なる実施形態において、R9及びR10(及び任意選択でR’10)は、各々独立して、水素、アルキル又はシクロアルキル(cycloalkly)、アルケニル又はシクロアルケニル、又はアルキニルを表す。従って、用語「アルキルアミン」は、本明細書で使用されるとき、上記に定義するとおりの、(アルキルに関して上記に記載したとおり)置換されている又は置換されていないアルキルが付加されているアミン基を意味し、即ち、R9及びR10のうちの少なくとも一方がアルキル基である。
用語「アミド」は当該技術分野でアミノ置換カルボニルと認識されており、一般式:
[式中、R9及びR10は上記に定義するとおりである]によって表すことのできる部分を含む。
「アリール」は、本明細書で使用されるとき、C5〜C10員の芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族、又は二複素環式環系を指す。広義の「アリール」には、本明細書で使用されるとき、0〜4個のヘテロ原子、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジンなどを含み得る5、6、7、8、9、及び10員単環芳香族基が含まれる。環状構造にヘテロ原子を有するこれらのアリール基はまた、「アリール複素環」又は「ヘテロ芳香族」とも称され得る。芳香環は1つ以上の環位置で、限定はされないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(又は四級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、−CF3、−CN;及びこれらの組み合わせを含めた1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
用語「アリール」にまた、2つ以上の炭素が2つの隣接する環に共通する2つ以上の環式環(即ち「縮合環」)を有する多環式環系も含まれ、ここでこれらの環のうちの少なくとも1つが例えば芳香族であり、他の1つ又は複数の環式環が、シクロアルキル類、シクロアルケニル類、シクロアルキニル類、アリール類及び/又は複素環であってもよい。複素環の例としては、限定はされないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aHカルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3 b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル及びキサンテニルが挙げられる。これらの環の1つ以上は、「アリール」に関して上記に定義したとおり置換されていてもよい。
用語「アラルキル」は、本明細書で使用されるとき、アリール基(例えば、芳香族基又はヘテロ芳香族基)で置換されているアルキル基を指す。
用語「炭素環」は、本明細書で使用されるとき、環の各原子が炭素である芳香環又は非芳香環を指す。
「複素環」又は「複素環式」は、本明細書で使用されるとき、3〜10個の環原子、例えば5〜6個の環原子を含有し、炭素と、各々が非過酸化物酸素、硫黄、及びN(Y)[式中、Yは存在しないか又はH、O、(C1〜C10)アルキル、フェニル又はベンジルである]から選択される1〜4個のヘテロ原子とからなり、及び任意選択で1〜3個の二重結合を含有し、及び任意選択で1つ以上の置換基によって置換されている単環式又は二環式環の環状炭素又は窒素を介して結合した環状ラジカルを指す。複素環の例としては、限定はされないが、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキセパニル、オキセタニル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル及びキサンテニルが挙げられる。複素環式基は、任意選択で、1つ以上の位置においてアルキル及びアリールに関して上記に定義したとおりの1つ以上の置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又はヘテロ芳香族部分、−CF3、及び−CNによって置換されていてもよい。
用語「カルボニル」は当該技術分野で認識されており、一般式:
[式中、Xは結合であるか又は酸素若しくは硫黄を表し、及びR11は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、又はアルキニルを表し、R’11は、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、又はアルキニルを表す]によって表すことができるような部分を含む。式中、Xが酸素であり、及びR11又はR’11が水素でない場合、この式は「エステル」を表す。式中、Xが酸素であり、及びR11か上記に定義するとおりである場合、この部分は本明細書ではカルボキシル基と称され、特にR11が水素である場合、この式は「カルボン酸」を表す。式中、Xが酸素であり、及びR’11が水素である場合、この式は「ギ酸塩」を表す。一般に、上記の式の酸素原子が硫黄に置き換えられる場合、この式は「チオカルボニル」基を表す。式中、Xが硫黄であり、及びR11又はR’11が水素でない場合、この式は「チオエステル」を表す。式中、Xが硫黄であり、及びR11が水素である場合、この式は「チオカルボン酸」表す。式中、Xが硫黄であり、及びR’11が水素である場合、この式は「チオギ酸塩」を表す。他方で、式中、Xが結合であり、及びR11が水素でない場合、上記の式は「ケトン」基を表す。式中、Xが結合であり、及びR11が水素である場合、上記の式は「アルデヒド」基を表す。
用語「モノエステル」は、本明細書で使用されるとき、ジカルボン酸の類似体を指し、ここでカルボン酸の一方はエステルとして官能化され、且つ他方のカルボン酸は遊離カルボン酸又はカルボン酸の塩である。モノエステルの例としては、限定はされないが、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、シュウ酸及びマレイン酸のモノエステルが挙げられる。
用語「ヘテロ原子」は、本明細書で使用されるとき、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を意味する。ヘテロ原子の例は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄及びセレンである。他の有用なヘテロ原子としては、ケイ素及びヒ素が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、用語「ニトロ」は−NO2を意味する;用語「ハロゲン」は−F、−Cl、−Br又は−Iを指示する;用語「スルフヒドリル」は−SHを意味する;用語「ヒドロキシル」は−OHを意味する;及び用語「スルホニル」は−SO2−を意味する。
用語「置換されている」は、本明細書で使用されるとき、本明細書に記載される化合物の許容されるあらゆる置換基を指す。最も広義には、許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分枝状及び非分枝状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、限定はされないが、ハロゲン、ヒドロキシル基、又は任意の数の炭素原子、例えば1〜14個の炭素原子を含む任意の他の有機基が挙げられ、及び任意選択で、線状、分枝状、又は環状構造フォーマットの酸素、硫黄、又は窒素基などの1つ以上のヘテロ原子が挙げられる。代表的な置換基としては、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、置換アルコキシ、フェノキシ、置換フェノキシ、アロキシ、置換アロキシ、アルキルチオ、置換アルキルチオ、フェニルチオ、置換フェニルチオ、アリールチオ、置換アリールチオ、シアノ、イソシアノ、置換イソシアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、スルホニル、置換スルホニル、スルホン酸、ホスホリル、置換ホスホリル、ホスホニル、置換ホスホニル、ポリアリール、置換ポリアリール、C3〜C20環式、置換C3〜C20環式、複素環式、置換複素環式、アミノ酸、ペプチド、及びポリペプチド基が挙げられる。
窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物の水素置換基及び/又は任意の許容される置換基を有し得る。「置換」又は「置換されている」は、かかる置換が置換原子及び置換基の許容される原子価に従うものであり、及びその置換によって安定化合物、即ち、例えば転位、環化、又は脱離による転換が自然に起こることのない化合物がもたらされるという黙示的な条件を含むことが理解される。
広義の態様において、許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分枝状及び非分枝状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示的な置換基としては、例えば本明細書に記載されるものが挙げられる。適切な有機化合物について許容される置換基は1つ以上であってもよく、及び同じであっても又は異なってもよい。窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載される有機化合物の水素置換基及び/又は任意の許容される置換基を有し得る。
様々な実施形態において、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シアノ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロゲン、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ヒドロキシル、ケトン、ニトロ、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、これらの各々は任意選択で1つ以上の好適な置換基によって置換されている。一部の実施形態において、置換基は、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンから選択され、ここでアルコキシ、アリールオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミド、アミノ、アリール、アリールアルキル、カルバメート、カルボキシ、シクロアルキル、エステル、エーテル、ホルミル、ハロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ケトン、リン酸塩、硫化物、スルフィニル、スルホニル、スルホン酸、スルホンアミド、及びチオケトンの各々は、更に1つ以上の好適な置換基によって置換されていてもよい。
置換基の例としては、限定はされないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、チオケトン、エステル、ヘテロシクリル、−CN、アリール、アリールオキシ、ペルハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル類、カルボキサミド、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、アルコキシアルキル、ペルハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキルなどが挙げられる。一部の実施形態において、置換基は、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、及びニトロから選択される。
用語「共重合体」は、本明細書で使用されるとき、概して、2つ以上の異なるモノマーで構成される単一のポリマー材料を指す。共重合体は、任意の形態、例えば、ランダム、ブロック、又はグラフト共重合体であってもよい。共重合体は、キャッピングされた末端基又は酸性末端基を含め、任意の末端基を有し得る。
用語「平均粒径」は、本明細書で使用されるとき、概して、組成物中の粒子の統計的平均粒径(直径)を指す。本質的に球形の粒子の直径は、物理的又は流体力学的直径と称され得る。非球形の粒子の直径は、流体力学的直径を指し得る。本明細書で使用されるとき、非球形の粒子の直径とは、粒子の表面上の2点間の最も大きい直線距離を指し得る。平均粒径は、動的光散乱法などの当該技術分野において公知の方法を用いて計測することができる。第1の粒子集団の統計的平均粒径が第2の粒子集団の統計的平均粒径の20%以内;例えば、15%以内、又は10%以内であるとき、2つの集団は「実質的に等価な平均粒径」を有すると言うことができる。
本明細書で同義的に使用されるとおりの用語「単分散」及び「均一粒径分布」は、粒子、マイクロ粒子、又はナノ粒子の集団が全て同じ又はほぼ同じ粒径を有することを表す。本明細書で使用されるとき、単分散分布とは、分布の90%が平均粒径の5%以内にある粒子分布を指す。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、概してアミノ酸残基のポリマーを指す。本明細書で使用されるとき、この用語はまた、1つ以上のアミノ酸が対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体若しくは修飾された誘導体であるか又は非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーにも適用される。本明細書において一般的に使用されるとおりの用語「タンパク質」は、三次及び/又は四次構造を作り出すのに十分な鎖長のポリペプチドを形成するように互いにペプチド結合によって連結されたアミノ酸のポリマーを指す。用語「タンパク質」は、定義上、小さいペプチドを除外し、小さいペプチドはタンパク質と見なすのに必要な必須の高次構造を欠いている。
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、及び「オリゴヌクレオチド」は、線状又は環状コンホメーションの、及び一本鎖又は二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを指して同義的に使用される。これらの用語は、ポリマーの長さに関する限定と解釈されてはならない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの公知の類似体、並びに塩基、糖及び/又はリン酸部分(例えばホスホロチオエート骨格)が修飾されたヌクレオチドを包含し得る。一般に、特記されない限り、特定のヌクレオチドの類似体は同じ塩基対合特異性を有する;即ち、Aの類似体はTと塩基対合し得る。用語「核酸」は、一続きの少なくとも2つの塩基−糖リン酸モノマー単位を指す専門用語である。ヌクレオチドは核酸ポリマーのモノマー単位である。この用語には、メッセンジャーRNA、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部又はウイルスに由来する遺伝物質の形態のデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)が含まれる。アンチセンス核酸は、DNA及び/又はRNA配列の発現を妨げるポリヌクレオチドである。用語の核酸は、一続きの少なくとも2つの塩基−糖リン酸の組み合わせを指す。天然核酸はリン酸骨格を有する。人工核酸は他のタイプの骨格を含有し得るが、天然核酸と同じ塩基を含有し得る。この用語にはまた、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、及び天然核酸のリン酸骨格の他の変形例も含まれる。
タンパク質、ポリペプチド又は核酸の「機能的断片」は、配列が完全長タンパク質、ポリペプチド又は核酸と同一でないが、なおも完全長タンパク質、ポリペプチド又は核酸のとおりの少なくとも1つの機能を保持しているタンパク質、ポリペプチド又は核酸である。機能的断片は、対応する天然分子より多い、少ない、又は同じ数の残基を有することができ、及び/又は1つ以上のアミノ酸又はヌクレオチド置換を含有することができる。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸とのハイブリダイズ能力)を決定する方法は当該技術分野において周知である。同様に、タンパク質機能を決定する方法も周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルタ結合法、電気泳動移動度シフト、又は免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA切断はゲル電気泳動によってアッセイすることができる。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、免疫共沈降、2ハイブリッドアッセイ又は例えば遺伝的若しくは生化学的相補性によって決定することができる。例えば、フィールズ(Fields)ら著、1989年、ネイチャー(Nature)、第340巻、p.245〜246;米国特許第5,585,245号明細書及び国際公開第98/44350号を参照のこと。
本明細書で使用されるとき、用語「リンカー」は、ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄等)を含有し且つ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15,16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50原子長であり得る炭素鎖を指す。リンカーは、限定はされないが、水素原子、アルキル、アルケニル、アルキニル(alkynl)、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロゲン、アリール、複素環式、芳香族複素環式、シアノ、アミド、カルバモイル、カルボン酸、エステル、チオエーテル、アルキルチオエーテル、チオール、及びウレイド基を含め、様々な置換基によって置換されていてもよい。当業者は、これらの基の各々も同様に置換されていてもよいことを認識するであろう。リンカーの例としては、限定はされないが、pH感受性リンカー、プロテアーゼ切断可能ペプチドリンカー、ヌクレアーゼ感受性核酸リンカー、リパーゼ感受性脂質リンカー、グリコシダーゼ感受性炭水化物リンカー、低酸素感受性リンカー、光切断可能リンカー、熱不安定性リンカー、酵素切断可能リンカー(例えば、エステラーゼ切断可能リンカー)、超音波感受性リンカー、及びX線切断可能リンカーが挙げられる。
用語「薬学的に許容可能な対イオン」は薬学的に許容可能なアニオン又はカチオンを指す。様々な実施形態において、薬学的に許容可能な対イオンは薬学的に許容可能なイオンである。例えば、薬学的に許容可能な対イオンは、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グロクロン酸塩(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(即ち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))から選択される。一部の実施形態において、薬学的に許容可能な対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、及び乳酸塩から選択される。詳細な実施形態において、薬学的に許容可能な対イオンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、及びリン酸塩から選択される。
用語「薬学的に許容可能な塩」は、本組成物に使用される化合物中に存在し得る酸性基又は塩基性基の塩を指す。塩基性の性質の本組成物に含まれる化合物は、様々な無機酸及び有機酸と種々の塩を形成することが可能である。かかる塩基性化合物の薬学的に許容可能な酸付加塩の調製に使用し得る酸は、非毒性の酸付加塩を形成するもの、即ち、薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩であり、限定はされないが、硫酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グロクロン酸塩(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(即ち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))である。アミノ部分を含む本組成物に含まれる化合物は、上述の酸に加え、様々なアミノ酸と薬学的に許容可能な塩を形成し得る。酸性の性質の本組成物に含まれる化合物は、様々な薬理学的に許容可能なカチオンと塩基性塩を形成する能力を有する。かかる塩の例としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、特に、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩、亜鉛塩、カリウム塩、及び鉄塩が挙げられる。
本明細書に記載される化合物が酸付加塩として得られる場合、その酸性塩の溶液を塩基性化することにより遊離塩基を得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、塩基化合物から酸付加塩を調製する従来手順に従い遊離塩基を好適な有機溶媒中に溶解し、その溶液を酸で処理することにより、付加塩、特に薬学的に許容可能な付加塩を作製することができる。当業者は、非毒性の薬学的に許容可能な付加塩の調製に用い得る様々な合成方法を認識しているであろう。
薬学的に許容可能な塩は、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2,2−ジクロロ酢酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、2−オキソグルタル酸、4−アセトアミド安息香酸、4−アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸、カンファー−10−スルホン酸、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸(proprionic acid)、ピログルタミン酸、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、チオシアン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、及びウンデシレン酸から選択される酸から誘導され得る。
用語「生物学的に利用可能」は当該技術分野で認識されており、それ、又は投与量の一部が、それを投与する対象又は患者によって吸収され、取り込まれ、又は他の形で生理学的に利用可能であることを可能にする本発明の一形態を指す。
以下の実施例は本発明を限定するのでなく、例示するよう意図されることが理解されるであろう。前述の説明及び例の様々な他の実施例及び変形例が、当業者には本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本開示を読んだ後に明らかであろうとともに、かかる実施例又は変形例は全て添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本明細書に引用する全ての刊行物及び特許は、本明細書によって全体として参照により援用される。
(実施例)
実施例1:コンジュゲートの合成
本発明のコンジュゲートは、任意の好都合な方法を用いて調製し得る。合理的な手法では、本コンジュゲートは、その個別の構成成分、標的化部分、場合によってはリンカー、及び活性薬剤部分から構築される。これらの構成成分は、当該技術分野において公知のとおり、互いに官能基を介して共有結合的に結合させることができ、ここでかかる官能基は構成成分上に存在してもよく、又は1つ以上のステップ、例えば酸化反応、還元反応、開裂反応などを用いて構成成分上に導入されてもよい。医薬コンジュゲートの作製のため構成成分を共に共有結合的に結合するのに使用し得る官能基としては、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アミノなどが挙げられる。共有結合性の連結をもたらすように修飾される種々の構成成分の特定の一部分は、当該構成成分の所望の結合活性を有害に妨げることが実質的にないように選択されることになり、例えば活性薬剤部分については、十分な大きさの所望の薬物活性が確保されるように、標的結合活性に影響を及ぼさない領域が修飾されることになる。必要及び/又は所望に応じて、構成成分上の特定の部分が当該技術分野において公知のとおり遮断基を使用して保護されてもよく、例えば、グリーン及びワッツ(Green & Wuts)著、「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、1991年を参照のこと。
或いは、コンジュゲートは、候補コンジュゲートの大規模ライブラリを作製する公知のコンビナトリアル方法を用いて作製することができ、次にはライブラリがスクリーニングされて、薬物動態プロファイルを有する二機能性の分子が同定され得る。或いは、コンジュゲートは、医薬品化学並びに標的化部分及び活性薬剤部分に関する公知の構造−活性関係を用いて作製してもよい。詳細には、この手法は、どこで2つの部分をリンカーにつなぎ合わせるべきかに関する洞察を提供するであろう。
化合物3の合成
DMF(50mL)中の2,4−ジヒドロキシ−5−イソプロピル−ベンゼンカルボジチオ酸(3.20g、14.0mmol)の溶液に、2−クロロ酢酸ナトリウム(2.61g、22.4mmol)及び炭酸ナトリウム(4.45g、42.0mmol)を加え、溶液中に窒素を通してバブリングすることにより溶液を脱気した。この混合物を室温で3時間撹拌し、次にDMF(10mL)中の4−(4−アミノベンジル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(4.08g、14.0mmol)の溶液を加えた。得られた混合物を80℃で3時間撹拌した。この反応混合物を氷水に注ぎ入れ、酢酸エチル(3×100ml)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を減圧除去すると、3A(5.20g、10.7mmol、76%収率)が得られた。
THF(80mL)中の3A(5.20g、10.7mmol)の溶液に、カルボニルジイミダゾール(2.00g、13.9mmol)を加えた。この反応物を室温で2時間撹拌し、次に飽和塩化アンモニウム(200ml)の溶液に注ぎ入れ、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を減圧除去すると、3B(4.30g、8.37mmol、78%収率)が得られ、これを精製なしに次にステップに使用した。LCMS M/Z=512.3(M+1)。
エタノール(50mL)中の3B(4.30g、8.37mmol)の溶液に、ヒドラジン水和物(1.26g、25.1mmol)を加えた。この混合物を室温で16時間撹拌し、溶媒を減圧除去した。エタノール(20mL)を残った残渣に加え、得られた固体をろ去し、エタノール(10mL)で洗浄し、乾燥させると、3C(2.86g、5.61mmol、67%収率)が得られた。LCMS M/Z=510.2(M+1)。
メタノール(20mL)中の3C(2.86g、5.61mmol)の溶液に、MeOH(5mL)中の4N HClの溶液を加えた。溶液を室温で16時間撹拌し、溶媒を減圧下で除去し、得られた固体をメタノール(2×5mL)で洗浄して乾燥させると、3Dの塩酸塩(1.90g、4.26mmol、75%収率)が得られた。LCMS M/Z=410.1(M+1)。
化合物17の合成
バイアルに、17A(10.0mg、19.6umol)を入れ、DMF(1mL)に溶解した。17B(8.2mg、23.5umol)を加え、溶液を室温で30分撹拌し、次いでDIPEA(10.2μL、3.00当量)を加えて2時間撹拌した。
別のバイアルに、17C(18.7mg、23.5umol)を入れ、1,1,1−トリフルオロエタノール(0.4mL)に懸濁し、次いでテトラメチルジシロキサン(50μL)を加え、その後、0.4mLのTFE中のHCl(12M)を0.015mL加えた。15分後、溶媒を蒸発させ、次に0.5mLのDMFを加えた。脱保護された17C溶液を溶液に加えた。
1時間後、粗製物を分取HPLC(0〜95%MeCN/水、0.1%酢酸)によって精製した。純粋な画分をプールし、凍結させて凍結乾燥した。3.4mg(14%)の白色凍結乾燥粉末が得られた(3.18分、M+H=1170)。
化合物17Dの合成
4−メルカプト安息香酸(10.0g、64.9mmol)を0℃でTHF(500ml)中の水素化アルミニウムリチウム(3.69g、97.3mmol)の溶液に加えた。次に混合物を室温に加温し、16時間撹拌し、次に2M HClでpH=2にクエンチした。この水溶液をジエチルエーテル(3×500mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて溶媒を減圧除去すると17Dが得られ、これを更なる精製なしに使用した(6.70g、43%純度、20.6mmol、31%収率)。
メタノール(80mL)中の17D(6.00g、43%純度、18.4mmol)の溶液に、2,2’−ジチオジピリジン(11.3g、51.4mmol)を加えた。この反応物を室温で3時間撹拌し、次に溶媒を減圧除去した。得られた混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(8:1〜6:1石油エーテル:酢酸エチル)によって精製すると、17E(2.00g、8.02mmol、43%収率)が得られた。LCMS M/Z=250(M+1)。
化合物9の合成
17E(1.00g、4.01mmol)をジクロロメタン(10mL)及びトリエチルアミン(410mg、4.00mmol)に溶解させた。この溶液を0℃でジクロロメタン(5mL)中のトリホスゲン(476mg、1.60mmol)の溶液に滴下して加えた。次にこの溶液を室温に加温し、3時間撹拌した。ジクロロメタン(10mL)及びトリエチルアミン(410mg、4.00mmol)中のHOBt(542mg、4.01mmol)の溶液をゆっくりと加え、この混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を2N HCl(20ml)、水(3×20mL)、及びブライン(20mL)で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧濃縮すると、17B(850mg、2.07mmol、51%収率)が得られた。LCMS M/Z=411.0(M+1)。
17C合成
バイアルに、カルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(37mg、183umol)及びジクロロメタン(0.5mL)を入れた。S−トリチル−L−システインアミド(53mg、147umol)をバイアルに入れ、ジクロロメタン(0.5mL)に懸濁した。S−トリチル−L−システインアミド溶液をカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)溶液に加えた。20分後、溶媒を蒸発させて、次に0.5mL DMFを加えた。T−1817(25mg、61umol)をバイアルに入れ、DMF(1mL)に懸濁した。カルバメート溶液を加え、続いてジイソプロピルエチルアミン(24mg、183umol、32uL)を加えた。溶液を室温で一晩撹拌した。粗製物を分取HPLC(40〜95%MeCN/水、0.1%酢酸)によって精製した。純粋な画分をプールし、凍結させて凍結乾燥した。21mg(43%)の白色凍結乾燥粉末が得られた(3.86分、M+H=799)。
化合物18の合成
CDI(9.2mg、57umol)をバイアルに入れ、DMF(1mL)に溶解した。18A(30.0mg、57umol)及びDIPEA(7.4mg、57umol、10uL)を添加し、反応物を2時間撹拌した。BT−1132(26.3mg、57umol)をバイアルに固体として加え、反応物を室温で一晩撹拌した。反応物を酢酸エチル(30mL)で希釈し、有機相を水中の1M HClで洗浄し(2×20mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空下で除去し、残留物をDMFに再懸濁し、逆相カラム(5〜60%アセトニトリル/水―0.2%AcOH)にかけた。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。18(15.1mg、収率24%)がオフホワイトの固体」として単離された。
化合物19の合成
バイアルにPI−103(20.0mg、52.0umol)及びDCM(2mL)を入れ、次にDIPEA(27.2uL、3.00当量)を加え、続いてカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(12.6mg、62.4umol)を加えた。30分後、0.5mLのDMFを追加し、DCMを蒸発させた。T−1818(29.0mg、62.4umol)をDIPEA(30uL)を含むDMF(0.5mL)の溶液として加えた。1時間後、粗生成物を分取HPLC(30〜85%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。20mg(45%)の化合物19が白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.83分、M+H=840)。
化合物20の合成
バイアルにPI−103(50.0mg、130umol)とDCM(5mL)を入れ、次にDIPEA(68uL、3.00当量)を加え、その後、カルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(31.4mg、156umol)を加えた。30分後、1.0mLのDMFを添加し、その後DCMを蒸発させた。T−1847(61.7mg、156umol)をDIPEA(70uL)を含むDMF(0.5mL)の溶液として追加した。1時間後、粗生成物を分取HPLC(30〜85%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。42mg(41%)の化合物20が白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.87分、M+H=770)。
化合物21の合成
バイアルにPI−103(20.0mg、52.0umol)及びDCM(2mL)を入れ、次にDIPEA(27.2uL、3.00当量)を加え、続いてカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(12.6mg、62.4umol)を加えた。30分後、0.5mLのDMFを追加し、DCMを蒸発させた。21A(23.1mg、62.4umol)をDIPEA(30uL)を含むDMF(0.5mL)の溶液として追加した。1時間後、粗生成物を分取HPLC(40〜95%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。14mg(36%)の化合物21が白色の凍結乾燥粉末として得られた(5.15分、M+H=745)。
化合物22の合成
22A(30.0mg、52.1umol)をバイアルに入れ、DMF(2.0mL)に溶解した。HATU(19.8mg、52.1umol)及びDIPEA(20.2mg、156umol、27.2uL)を添加し、反応物を2分間撹拌した後、17A(28mg、54.7umol)を添加した。反応物を室温で10分間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(0〜95%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。20.6mg(37%)の化合物22が白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.95分、M+H=1069)。
化合物22Aの合成
BT−1132(160.00mg、346.66umol)をバイアルに入れ、DMF(2.00mL)に溶解した。テトラヒドロピラン−2,6−ジオン(39.55mg、346.66umol)及びDIPEA(134.4mg、1.04mmol、182uL)を加え、反応物を室温で2時間撹拌した。粗反応物を分取HPLC(5〜65%MeCN/水、0.2%酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。148mgの22A(74%)がオフホワイトの凍結乾燥粉末として得られた(2.73m、M+H=576)。
化合物23の合成
23A(15.4mg、27.4umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(10.4mg、27.4umol)及びDIPEA(17.7mg、137umol、23.9uL)を加え、反応物を2分間撹拌した後、17A(14.7mg、28.7umol)を添加した。反応物を室温で10分間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(0〜95%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。8.0mg(25%)の化合物23が白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.98分、M+H=1056)。
化合物23Aの合成
BT−1132(50.00mg、108.33umol)をバイアルに入れ、DMF(3.00mL)に溶解した。DIPEA(56.00mg、433.32umol、75.47uL)、続いてDSC(30.53mg、119.16umol)を加え、室温で30分間撹拌した。DMAP(13.23mg、108.33umol)及び2−アミノ酢酸tert−ブチル(36.32mg、216.66umol、HCl)を加えた。反応物を60℃に加熱し、1時間撹拌してから室温に冷却した。反応物をMTBE(40mL)及び水中1N HCl(40mL)で希釈した。有機相を収集し、水相をMTBE(2×20mL)で抽出した。有機相を飽和重炭酸ナトリウム(3×20mL)で洗浄し、ブライン(1×20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発乾固させた。粗材料(3.23m、M+H=619m/z)を次のステップに直接移した。
粗生成物をトリフルオロ酢酸(2.98g、26.14mmol、2.00mL)に再懸濁し、室温で1時間撹拌した後、蒸発乾固させた。残留物をトルエン(2×5mL)に再懸濁し、蒸発乾固させた。残りの残留物をDMFで再構成し、分取HPLC(ACN/水w/0.1%TFA)にかけた。純粋な物質を含有する画分を収集し、蒸発させて、15.4mgの化合物23A(25%)をオフホワイトの粉末として得た(2.62m、M+H=563)。
化合物24の合成
バイアルにPI−103(46.3mg、120umol)及びDCM(5mL)を入れ、次にDIPEA(37uL、3.00当量)を加え、続いてカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)を添加した。30分後、0.5mLのDMFを追加し、DCMを蒸発させた。24A(33.0mg、70.7umol)をDMF(0.5mL)溶液として加えた。1時間後、粗生成物を分取HPLC(30〜85%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。14mg(36%)の化合物24が白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.51分、M+H=841)。
24A合成
T−1817(100mg、244umol)及び2−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)酢酸(145mg、488umol)をバイアルに入れ、DMF(5.0 mL)に溶解した。DIPEA(94.7mg、733umol、128uL)、続いてHATU(184mg、488umol)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(10〜90%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。168mg(81%)の化合物24Bが白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.61分、M+H=689)。
24B(87mg、126umol)をバイアルに入れ、2mLの20%DMF溶液中のピペリジンに溶解した。溶液を室温で90分間撹拌し、次に逆相クロマトグラフィー(水中5〜30%のアセトニトリル及び0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。48mg(81%)の化合物24Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた。
化合物25の合成
25A(19.0mg、41.1umol)及びT−1817(25.2mg、61.6umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。DIPEA(15.9mg、123umol、21.5uL)、続いてHATU(23.2mg、61.6umol、1.50当量)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(30〜85%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。7.0mg(19%)の化合物25が白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.69分、M+H=854)。
25A合成
PI−103(50.0mg、144umol)をバイアルに入れ、DMFに溶解した(5.0mL)。無水グルタル酸(49.1mg、431umol)を加え、続いてNaH(10.0mg、430umol、3.00当量)を加え、反応物を室温で6時間撹拌した。無水グルタル酸(49.1mg、431umol)を加え、続いてNaH(10.0mg、430umol、3.00当量)を加えた。2時間後、粗生成物を逆相カラム(5〜60%MeCN/水、2%酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。38mg(57%)の化合物25Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた(4.13分、M+H=463)。
化合物26の合成
26B(15mg、26.6umol)をDMF(1mL)に溶解させて、次に溶液をDMF(0.5mL)中の26A(29.7mg、31.9umol)に加え、0.2M NaOAc(0.5mL)溶液を加えた。30分後、粗製物を分取HPLC(40〜95%MeCN/水、0.1%酢酸)によって精製した。純粋な画分をプールし、凍結させて凍結乾燥した。23.5mg(64%)の白色凍結乾燥粉末が得られた。
化合物27の合成
27A(50mg、70.7umol)及びT−1815(25.1mg、70.7umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。DIPEA(45.7mg、353umol、61.7uL)、続いてHATU(26.9mg、70.7umol)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(5〜30%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。26mg(39%)の化合物27が白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.72分、M+H=818)。
化合物27Aの合成
トリフェニルホスフィン(1.86g、7.08mmol)を窒素雰囲気下で丸底フラスコに入れ、乾燥テトラヒドロフラン(40mL)に溶解した。溶液を、アセトニトリル/ドライアイス浴で−40℃に冷却した。30分の冷却後、DIAD(1.14g、7.08mmol、1.11mL)を約30分かけて滴下した。溶液は白い沈殿物のスラリーになり、−40℃で10分間撹拌した後、27B(500mg、1.42mmol)及び4−(3−ヒドロキシプロピル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(1.04g、4.25mmol)を加えた。反応物を1時間撹拌し続けた後、反応物を冷却浴から引き上げ、室温まで温め、3日間撹拌した。boc保護された生成物を水(150mL)との反応から沈殿させ、真空濾過により単離した。固体をTFA(7.45g、65.34mmol、5mL)及びジクロロメタン(5mL)に再懸濁し、一晩撹拌した。生成物をMTBE(100mL)で沈殿させ、濾過により単離して、211mgの化合物27A(42%)をオフホワイトの固体として得た(2.23m、M+H=480)。
化合物28の合成
28A(30mg、32.9umol)及びT−1815(11.7mg、32.9umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。DIPEA(4.3mg、32.9umol、5.7uL)、続いてHATU(12.5mg、32.9umol)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(5〜30%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。15mg(37%)の化合物28が白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.80分、M+H=1022)。
化合物28Aの合成
化合物27A(200mg、282.65umol、2TFA)及び化合物28B(125.34mg、282.65umol)をDMF(5mL)に溶解した。ヒューニッヒ塩基(73.06mg、565.30umol、98.46uL)を1分かけて滴下した。反応物を室温で15分間撹拌してから、水(10mL)でクエンチした。生成物が沈殿し、それを濾過して、boc保護された化合物28Aを単離した。固体をトリフルオロ酢酸(5.96g、52.27mmol、4mL)に再溶解し、室温で1時間撹拌した。反応物をトルエン(2×5mL)で希釈し、蒸発させた。残りの残留物をMeOH(2mL)に再懸濁し、化合物28AをMTBE(20mL)で沈殿させた。230mgの化合物28A(89%)を淡褐色固体として単離した。
化合物28Bの合成
4−(4−ヒドロキシフェニル)ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(5g、17.96mmol)及びカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(1.81g、8.98mmol)を丸底フラスコに入れ、室温でTHF(17.96mL)に溶解した。完全に溶解したら、ヒューニッヒ塩基(6.96g、53.89mmol、9.39mL)を滴下した。反応物は30分間透明のままであった。1時間後、沈殿物が形成し始めた。溶液を濾過して沈殿物を除去し、溶媒を蒸発させた。生成物をシリカゲルカラム(0〜35%B、ヘプタン/酢酸エチル)で単離して、2.0lgの化合物28B(25%)を黄色の結晶性固体(3.78m、M+H=444)として得た。
化合物29の合成
28A(77mg、70.2umol)及びT−1816(28.8mg、70.2umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。DIPEA(45.3mg、350umol、61uL)、続いてHATU(26.7mg、70.2umol)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(15〜40%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。47mg(55%)の化合物29が白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.89分、M+H=1077)。
化合物30の合成
30A(80mg、87.64umol、TFA)、HATU(36.65mg、96.40umol)及びT−1818(66.77mg、96.40umol、2TFA)をバイアルに入れ、DMF(5mL)に溶解した。ヒューニッヒ塩基(90.61mg、701.12umol、122.12uL)を室温で滴下した。反応物を室温で30分間撹拌し、分取HPLC(15〜30%B、MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により単離した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥して、32.9mgの化合物30(26%)を白色の凍結乾燥粉末(2.58m、M+H=1091)として得た。
化合物30Aの合成
バイアルにカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(43.87mg、217.64umol)及び4−ヒドロキシ安息香酸tert−ブチル(48.31mg、248.74umol)を入れ、無水テトラヒドロフラン(2.00mL)に溶解した。室温で、ヒューニッヒ塩基(80.37mg、621.84umol、108.31uL)を1分かけて溶液に滴下した。さらに30分間撹拌した後、ヒューニッヒ塩基(80.37mg、621.84umol、108.31uL)のアリコートを添加し、続いてDMF(5mL)中の27A(100mg、124.37umol、2TFA)のスラリーをゆっくりと添加した。反応物を一晩撹拌し、翌日、水(20mL)でクエンチした。tert−ブチル保護された生成物が沈殿し、上澄みをデカントした。残りの残留物をACN(8mL)に溶解し、水(12mL)で再沈殿させた。固体を濾過し、濾紙上で30分間放置して乾燥させた。次に、固体をトリフルオロ酢酸(2.98g、26.14mmol、2mL)に溶解し、2時間撹拌した。溶媒を真空で除去し、生成物をMTBE(10mL)で粉砕して、79.9mgの化合物30A(85%)をオフホワイトの固体(2.52m、M+H=644)として得た。
化合物31の合成
28A(100mg、91.13umol、2TFA)、T−1885(49.58mg、91.13umol、HCl)、HATU(34.65mg、91.13umol)、及びHOBT(36.94mg、273.38umol)をバイアルに入れ、DMF(4mL)に溶解してから、ヒューニッヒ塩基(117.77mg、911.27umol、158.73uL)を滴下した。カップリングを室温で30分間撹拌した後、分取HPLC(15〜30%B、MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥して、27.3mgの化合物31(24%)を白色の凍結乾燥粉末(2.69m、M+H=1174)として得た。
化合物32の合成
T−1816(48.15mg、117.33umol)、32A(122.01mg、117.33umol、3TFA)及びHATU(44.61mg、117.33umol)をバイアルに入れ、DMF(5mL)に溶解した。ヒューニッヒ塩基(121.31mg、938.6umol、163uL)を1分かけて滴下し、反応物を室温で30分間撹拌した後、生成物を分取HPLC(15〜30%B、MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で単離した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥して、17.3mgの化合物32(13%)を白色の凍結乾燥粉末として得た。
化合物32Aの合成
32B(69.71mg、211.99umol、HCl)及びDSC(52.50mg、204.92umol)をバイアルに入れ、DMF(5mL)に溶解した。ヒューニッヒ塩基(91.33mg、706.63umol、123.08uL)を1分かけて滴下し、反応物を室温で一晩撹拌した。これとは別に、T−2026(100mg、141.33umol、2TFA)をDMF(1mL)に溶解し、予備活性化溶液に滴下した。反応物を室温で一晩撹拌し続けた。反応物をDI水(15mL)で希釈すると、boc保護された生成物が沈殿した。固体を濾過し、真空下で乾燥させた。残留物をトリフルオロ酢酸(1.99g、17.42mmol、1.33mL)に再懸濁し、室温で2時間撹拌した。反応物をMTBEで20mLに希釈し、3日間撹拌した。沈殿した生成物を濾過し、真空下に置いて、黄色の油として143.7mgの化合物32A(68%)を得た。
化合物32Bの合成
ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(1g、5.37mmol)及び4−ヒドロキシベンズアルデヒド(1.31g、10.74mmol)を丸底フラスコに入れ、THF(30mL)及び酢酸(6.45g、107.38mmol、6.14mL)に懸濁した。イミン形成を室温で1時間撹拌した後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(5.69g、26.85mmol)を添加した。反応物を40℃に加熱し、一晩撹拌した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム(50mL)で中和し、MTBE(50mL)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、蒸発させる前に無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。残りの残留物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテル中の2M HCl(5mL)で沈殿させた。生成物を濾過し、真空下に置いた。固体を数滴のMeOHを含むDCMに再懸濁し、シリカゲルカラムにかけた(0〜8%DCM/MeOH)。純粋な画分をプールし、蒸発させて、1.15gの32B(65%)をオフホワイトの固体として得た。
化合物33の合成
バイアルにT−1816(39.22mg、95.56umol)、33A(111.9mg、106.18umol、3TFA)及びHATU(40.37mg、1106.18umol)を入れ、内容物をDMF(5mL)に溶解した。ヒューニッヒ塩基(109.78mg、849.43umol、148uL)を1分かけて滴下し、反応物を室温で30分間撹拌しました。生成物を分取HPLC(15〜30%B、MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により単離した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥して、48.79mgの化合物33(32%)を白色の凍結乾燥粉末(2.67m、M+H=1105)として得た。
化合物33Aの合成
33B(64.95mg、211.99umol、HCl)及びDSC(52.50mg、204.9umol、TFA)をバイアルに入れ、DMF(5mL)に溶解した。ヒューニッヒ塩基(91.33mg、706.63umol、123.08uL)を1分かけて滴下し、活性化を室温で一晩撹拌した。これとは別に、27A(100mg、141.33umol、2TFA)をDMF(1mL)に溶解し、1分かけて滴下し、反応を室温で一晩続けた。反応物を水(14mL)で希釈し、boc保護された生成物を沈殿させた。固体を濾過し、トリフルオロ酢酸(1.99g、17.42mmol、1.33mL)に再懸濁した。脱保護を2時間続けた後、MTBE(20mL)で生成物を沈殿させた。溶媒をデカントし、固体を真空下に置いて、残留溶媒を除去した。142.4mgの化合物33Aは(76%)オフホワイトの固体であった(2.26m、M+H=713)。
化合物33Bの合成
ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチル(1.00g、5.37mmol)及び4−ヒドロキシ−3−メチル−ベンズアルデヒド(1.46g、10.74mmol)を丸底フラスコに入れ、THF(30mL)及び酢酸(6.45g、107.40mmol、6.14mL)に懸濁した。イミン形成は、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(5.69g、26.85mmol)の添加前に、室温で1時間進行した。反応物を40℃に加熱し、一晩撹拌した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム(50mL)で中和し、MTBE(50mL)で抽出した。有機相をブラインで洗浄し、蒸発させる前に無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。残りの残留物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテル(5mL)中の2M HClで沈殿させた。生成物を濾過し、真空下に置いて乾燥させた。固体を数滴のメタノールを含むDCMに再懸濁し、シリカゲルカラム(DCM中の0〜9%MeOH)にかけた。純粋な画分をプールし、蒸発させて、536mgの化合物33B(29%)をオフホワイトの固体(2.82m、M+H=307)として得た。
化合物34の合成
34A(172mg、172.21umol、3TFA)、HATU(65.48mg、172.21umol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(69.81mg、516.62umol)、及びT−1816(70.68mg、172.21umol)をバイアルに入れてDMF(5mL)に溶解した。ヒューニッヒ塩基(178.05mg、1.38mmol、239.96uL)を1分かけて滴下し、反応物を室温で30分間撹拌した。生成物を分取HPLC(15〜35%B、MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により単離した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥して、70mgの化合物34(31%)を白色の凍結乾燥粉末(2.90m、M+H=1049)として得た。
化合物34Aの合成
N−[(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル−フェニル)メチル]カルバミン酸tert−ブチル(61.01mg、211.99umol、HCl)及びDSC(52.50mg、204.92umol)をバイアルに入れ、DMF(5mL)に溶解した。ヒューニッヒ塩基(91.33mg、706.63umol、123.08uL)を加え、反応物を室温で一晩撹拌した。別途、T−2026(100mg、141.33umol、2TFA)をDMF(1mL)に溶解し、1分間かけて滴下し、反応物を室温で一晩撹拌し続けた。反応物を水(14mL)で希釈し、生成物を沈殿させた。固体を濾過し、トリフルオロ酢酸(1.99g、17.42mmol、1.33mL)に再懸濁し、室温で2時間撹拌した。生成物をMTBE(20mL)で沈殿させた。溶媒をデカントし、固体を真空下に置いて、残留溶媒を除去した。172.4mgの化合物34A(96%)がオフホワイトの固体として得られた(2.46m、M+H=657)。
化合物35の合成
35A(58.61mg、73.74umol、2TFA)及び35B(64mg、73.74uL)をバイアルに入れ、DMF(4mL)及びPBS(pH7.4、2mL)に溶解した。反応物を室温で2時間撹拌した。生成物を分取HPLC(15〜55%B、MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により単離した。65.9mgの化合物35(57%)が白色の凍結乾燥粉末(6.99m、M+H=1211)として得られた。
化合物35Aの合成
T−1818(250mg、360.96umol、2TFA)及び4−((4−メトキシベンジル)チオ)−4−メチルペンタナール(172.06mg、721.91umol)をバイアルに入れ、THF(5mL)及び酢酸(440.17mg、7.33mmol、360.80uL)に懸濁した。イミン形成を室温で1時間撹拌してから、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(382.51mg、1.80mmol)を添加した。反応物を40℃に加熱し、一晩撹拌した。反応物を飽和重炭酸ナトリウム(20mL)で中和し、MTBE(3×20mL)で抽出した。有機相を合わせ、ブラインで洗浄し、蒸発させる前に無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。残りの残留物をメタノールに溶解し、ジエチルエーテル中の2M HCl(5mL)で沈殿させた。生成物を濾過し、真空下に置いて、残留溶媒を除去した。次に、固体をトリフルオロ酢酸(5.10mL)に溶解し、続いてチオアニソール(292.23mg、2.35mmol、275.69uL)及びトリフルオロメタンスルホン酸(407.87mg、2.72mmol、241.34uL)を加えた。反応物を室温で15分間撹拌した後、生成物を分取(10〜50%B、MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により単離した。純粋な画分をプールし、蒸発させて、312.3mgの化合物35A(85%)をオフホワイトの固体として得た(2.99m、M+H=567)。
化合物35Bの合成
27A(150mg、211.99umol、2TFA)、T−1842(87.02mg、211.99umol)、ヒューニッヒ塩基(82.19mg、635.97umol、110.77uL)、及びDMAP(25.90mg、211.99umol)をバイアルに入れ、DMF(2.12mL)に溶解し、室温で一晩撹拌した。反応物を15mLのMTBEで希釈し、生成物を沈殿させた。MTBEをデカントし、残留物をDMSO(3mL)に溶解し、TFA(100uL)でスパイクしてから、分取HPLC(15〜75%B、MeCN/水、0.1%TFA)で精製した。純粋な画分を合わせ、凍結し、凍結乾燥して、64mgの化合物35B(40%)を白色の凍結乾燥粉末(2.96m、M+H=756)として得た。
化合物36の合成
27A(40mg、56.5umol)及びT−1885(31.6mg、62.2umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(32.0mg、84.8umol)、続いてDIPEA(21.9mg、170umol、29.5uL)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗製物を分取HPLC(20〜70%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。28mg(51%)の化合物36が白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.73分、M+H=970)。
化合物37の合成
27A(40mg、56.5umol)及び37A(47.1mg、62.2umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(32.0mg、84.8umol)に続いてDIPEA(21.9mg、170umol、29.5uL)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(10〜70%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。55mg(73%)の化合物37が白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.81分、M+H=1105)。
37A合成
バイアルに2−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル(40mg、240umol)とDCM(2mL)を入れ、DIPEA(93mg、722umol、125uL)、続いてカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(58.2mg、289umol)を追加した。30分後、T−1818(134mg、289umol)を加えた。1時間後、水酸化ナトリウム(29.6mg、740umol)を加えた。30分後、さらに水酸化ナトリウム(29.6mg、740umol)を追加した。3時間後、粗生成物をTFAで酸性化し、次に分取HPLC(20〜70%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。133mg(71%)の化合物37Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.17分、M+H=643)。
化合物38の合成
38A(47mg、60.9umol)及びT−1818(42.3mg、73.1umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(34.5mg、91.4umol)、続いてDIPEA(23.6mg、183umol、31.8uL)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(10〜70%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。48mg(59%)の化合物38が白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.89分、M+H=1105)。
38A合成
バイアルに2−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル(41.6mg、250umol)及びDCM(2mL)を入れ、次にDIPEA(80.9mg、625umol、108uL)、続いてカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(50.4mg、250umol)を加えた。30分後、27A(100mg、209umol)をDMF(2mL)に加えた。1時間後、水酸化ナトリウム(75mg、1.88mmol)を水(1mL)に加えた。3時間後、粗生成物をTFAで酸性化し、次に逆相クロマトグラフィー(10〜50%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。356mg(73%)の化合物38Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.73分、M+H=659)。
化合物39の合成
38A(40mg、51.8umol)及びT−1817(32.6mg、62.2umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(25.4mg、67.4umol)、続いてDIPEA(20.1mg、155umol、27uL)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(10〜70%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。28mg(42%)の化合物39が白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.71分、M+H=1050)。
化合物40の合成
38A(40mg、51.8umol)とBT−1132(35.8mg、62.2umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(25.4mg、67.4umol)、続いてDIPEA(20.1mg、155umol、27uL)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(10〜70%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。18mg(28%)の化合物40が白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.14分、M+H=1102)。
化合物41の合成
41A(33mg、48umol)及びT−1815(23.6mg、57.6umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(23.5mg、62.4umol)、続いてDIPEA(18.6mg、144umol、25uL)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(10〜70%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。22mg(42%)の化合物41が白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.26分、M+H=967)。
41A合成
バイアルにN−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]カルバミン酸tert−ブチル(24.4mg、103umol)及びDCM(2mL)を入れ、DIPEA(33.3mg、257umol、45uL)、続いてカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(20.8mg、103umol)を加えた。30分後、41B(45mg、85.8umol)を添加した。3時間後、粗生成物をTFA(5mL)で酸性化し、室温で2時間撹拌した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(10〜45%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。33mg(55%)の化合物41Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.77分、M+H=574)。
41B合成
50mL丸底フラスコに27B(165mg、284umol)を入れ、フラスコを窒素下に置き、25mL THFを加えた。炭酸ナトリウム(200mg)を懸濁液に加え、続いてN−(3−ヒドロキシプロピル)カルバミン酸tert−ブチル(149mg、851umol)及びトリフェニルホスフィン(298mg、1.14mmol)を加えた。溶液を、アセトニトリル/ドライアイス浴で−40℃に冷却した。15分の冷却後、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(172mg、851umol、167uL)を、溶液が乳白色になるまで15分かけて滴下した。添加後、反応物を冷浴から取り出し、室温まで温め、不活性雰囲気下で撹拌を続けた。90分後、トリフェニルホスフィン(297mg、1.14mmol)を追加し、溶液を−40℃に冷却してから、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(172mg、851umol、167uL)を追加した。添加後、反応物を冷浴から引き上げ、室温まで温め、不活性雰囲気下で撹拌を続けた。1時間後、反応物を水(40mL)で希釈すると、白色の沈殿物が形成された。固体を濾過により収集し、トリフルオロ酢酸(1.49g、13.1mmol、1.00mL)に溶解した。溶液を室温で15分間撹拌した。粗生成物を水で希釈し、逆相クロマトグラフィー(10〜50%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。142mg(79%)の化合物41Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.05分、M+H=411)。
化合物42の合成
42A(13mg、17.8umol)及びT−1816(8.8mg、21.4umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(10.1mg、26.7umol)、続いてDIPEA(6.9mg、53.5umol、9.3uL)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(20〜75%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。11mg(55%)の化合物27が白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.34分、M+H=1008)。
42A合成
バイアルにN−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]カルバミン酸tert−ブチル(17.6mg、74.1umol)及びDCM(2mL)を入れ、次にDIPEA(24.0mg、185umol、32uL)、その後カルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(14.9mg、74.1umol)を加えた。30分後、42B(35mg、61.8umol)を加えた。2時間後、DIPEA(24.0mg、185umol、32uL)を加え、溶液を室温で2日間撹拌した。DMF(1mL)を加え、懸濁液を60℃に加温した。2時間後、TFA(20uL)を添加すると、ほぼ完全に均一な溶液が得られた。1時間後、DIPEA(20ul)を添加すると、溶液は透明になった。DIPEAを加え(50マイクロL)、溶液を60℃で16時間撹拌した。水を加え、固体を濾過し、TFA(5mL)で溶解し、室温で2時間撹拌した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(10〜45%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。13mg(28%)の化合物42Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.63分、M+H=616)。
42B合成
50mL丸底フラスコに27B(165mg、284umol)を入れ、フラスコを窒素下に置き、25mL THFを加えた。炭酸ナトリウム(200mg)を懸濁液に加え、続いてN−(3−ヒドロキシプロピル)−N−イソプロピル−カルバミン酸tert−ブチル(185mg、851umol)及びトリフェニルホスフィン(298mg、1.14mmol)を加えた。溶液を、アセトニトリル/ドライアイス浴で−40℃に冷却した。15分の冷却後、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(172mg、851umol、167uL)を、溶液が乳白色の色になるまで15分かけて滴下した。添加後、反応物を冷浴から引き上げ、室温まで温め、不活性雰囲気下で撹拌を続けた。90分後、トリフェニルホスフィン(297mg、1.14mmol)を追加し、溶液を−40℃に冷却してから、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(172mg、851umol、167uL)を追加した。添加後、反応物を冷浴から引き上げ、室温まで温め、不活性雰囲気下で撹拌を続けた。1時間後、反応物を水(40mL)で希釈すると、白色の沈殿物が形成された。固体を濾過により収集し、トリフルオロ酢酸(1.49g、13.1mmol、1.00mL)に溶解した。溶液を室温で15分間撹拌した。粗生成物を水で希釈し、逆相クロマトグラフィー(10〜50%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。86mg(66%)の化合物41Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.39分、M+H=453)。
化合物43の合成
43A(18mg、25.1umol)及びT−1818(14mg、30.1umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(14.2mg、37.7umol)、続いてDIPEA(9.7mg、75.4umol、13uL)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(20〜75%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。29mg(86%)の化合物43が白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.08分、M+H=1049)。
43A合成
バイアルに2−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル(13mg、78umol)及びDCM(2mL)を入れ、次にDIPEA(25.2mg、195umol、34uL)、次いでカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(15.7mg、78umol)を加えた。30分後、43B(35mg、65umol)を追加した。1時間後、水酸化ナトリウム(26mg、650mmol)を水(1mL)に加えた。3時間後、粗生成物をTFAで酸性化し、次に逆相クロマトグラフィー(10〜45%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。18mg(38%)の化合物43Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.86分、M+H=603)。
43Bの合成
50mLの丸底フラスコに27B(800mg、1.38mmol)を入れ、フラスコを窒素下に置き、次に25mLのTHFを加えた。炭酸ナトリウム(200mg)を懸濁液に加え、続いてN−(3−ヒドロキシプロピル)−N−メチル−カルバメート(781mg、4.13mmol)及びトリフェニルホスフィン(1.44g、5.50mmol)を加えた。溶液を、アセトニトリル/ドライアイス浴で−40℃に冷却した。15分の冷却後、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(835mg、4.13mmol、810uL)を、溶液が乳白色になるまで15分かけて滴下した。添加後、反応物を冷浴から引き上げ、室温まで温め、不活性雰囲気下で撹拌を続けた。90分後、トリフェニルホスフィン(1.44g、5.50mmol)を添加し、溶液を−40℃に冷却してから、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(835mg、4.13mmol、810uL)を添加した。添加後、反応物を冷浴から引き上げ、室温まで温め、不活性雰囲気下で撹拌を続けた。1時間後、反応物を水(25mL)で希釈すると、白色の沈殿物が形成された。固体を濾過により収集し、トリフルオロ酢酸(7.24g、63.5mmol、4.86mL)に溶解した。溶液を室温で15分間撹拌した。粗生成物を水で希釈し、逆相クロマトグラフィー(10〜50%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。663mg(89%)の化合物43Bが白色の凍結乾燥粉末として得られた(1.77分、M+H=425)。
化合物44の合成
44A(26mg、44.3umol)及びT−1816(21.8mg、53.1umol)をバイアルに入れ、DMF(1.0mL)に溶解した。HATU(21.7mg、57.5umol)、続いてDIPEA(17.2mg、133umol、23uL)を加え、反応物を室温で3時間撹拌した。粗生成物を分取HPLC(20〜75%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)により精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。7mg(14%)の化合物44が白色の凍結乾燥粉末として得られた(3.22分、M+H=980)。
44A合成
バイアルに、N−[2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]カルバミン酸tert−ブチル(18.5mg、78.0umol)及びDCM(2mL)、次にDIPEA(25.2mg、195umol、34uL)、続いてカルボノクロリド酸(4−ニトロフェニル)(15.7mg、78.0umol)を加えた。30分後、43B(35mg、65umol)を加えた。2時間後、DMF(1mL)を加え、溶液を室温で2日間撹拌した。懸濁液を60℃まで加温した。4時間後、DIPEA(25.2mg、195umol、34uL)を加え、溶液を60℃で2時間撹拌した。水を加え、固体を濾過し、TFA(1.5mL)で溶解し、室温で2時間撹拌した。粗生成物を逆相クロマトグラフィー(10〜45%MeCN/水、0.1%トリフルオロ酢酸)で精製した。純粋な画分をプールし、凍結し、凍結乾燥した。26mg(57%)の化合物44Aが白色の凍結乾燥粉末として得られた(2.40分、M+H=588)。
実施例2:コンジュゲートを使用したインビトロ試験
HER2分解アッセイ:
BT474(乳がん)細胞を1ウェルあたり12,000細胞でプレーティングし、37℃、5%CO2で20〜24時間インキュベートした。細胞のインキュベーション後、化合物をDMSOで5mMのストック濃度に再構成した。次に、DMSOに10ポイント希釈した化合物プレートを用意した。次に、2uLのこれらの希釈液を細胞に添加して、5uMから0.0003uMの最終使用濃度にした。化合物及び細胞を16時間インキュベートした。次に、培地を除去し、細胞を洗浄し、溶解し、ELISAによってヒト総EbB2/Her2レベルを分析した。
HSP90結合:
HSP90へのコンジュゲートの結合を、HSP90αアッセイキットで研究した。HSP90αアッセイキットは、蛍光偏光を使用してHSP90α阻害剤を同定するように設計されている。このアッセイは、精製された組換えHSP90αへの結合に対する蛍光標識ゲルダナマイシンの競合に基づいている。HSP90αアッセイキットの鍵は、蛍光標識されたゲルダナマイシンである。蛍光標識されたゲルダナマイシンは、HSP90α酵素を含む試料とインキュベートされ、蛍光偏光の変化を生成する。この変化は、蛍光リーダーを使用して測定できる。
NCI−H460腫瘍細胞の細胞毒性アッセイ:
NCI−H460細胞(非小細胞肺癌)をウェルあたり500個の細胞でプレーティングし、37℃、5%CO2で20〜24時間インキュベートした。細胞のインキュベーション後、化合物をDMSOで200uMのストック濃度に再構成した。次に、RPMI+10%FBS+0.25%DMSOでの10ポイント希釈を含む化合物プレートを用意した。次に5uLの希釈液を加えて、10uMから0.0005uMの最終使用濃度範囲にした。次に、化合物及び細胞を48時間インキュベートした。次に、Cell Titer−Gloにより細胞を分析し、ATPレベル及び阻害率を計算した。
実施例3:コンジュゲートを使用したインビボ試験
H1975異種移植研究:
メス無胸腺ヌードマウスの右後腹部に、マウスあたり5×106個のH1975細胞(非小細胞肺癌)を移植した。腫瘍が50mm3〜150mm3の体積に達したら、それらをランダムに10の2つのグループに分け、114.4mm3のグループ平均開始腫瘍体積を得た。次に、マウスをビヒクル対照又は12.5mg/kgのコンジュゲート38で処置した。すべての用量は、3週間にわたり週に2回静脈内投与され、合計5回の投与が行われた。マウスの腫瘍体積を測定した。最終的な研究測定は19日目に行われ、その時点でビヒクル制御腫瘍体積がIACUC限界に近づいたために研究を終了した。図1に示すように、研究の終わりに、12.5mg/kgで週2回投与されたコンジュゲート38は、そのビヒクル対照と比較して70.8%の腫瘍成長阻害を達成することができた。
H460マウス腫瘍PK:
H460担癌マウスにおける96及び144時間でのコンジュゲート化されたペイロード及び非コンジュゲート化ペイロードの蓄積。コンジュゲート38を25mg/kgで静脈内投与した。
コンジュゲート38は、ゼノグラフ腫瘍組織に蓄積及び保持された。これは図2に示すように、コパンリシブ単独又はガネテスピブ単独よりも優れた有効性をもたらす活性な形態で、ペイロードであるコパンリシブを放出した。
LS174t結腸がんモデル
LS17t結腸腫瘍異種移植モデルを使用した別の研究では、コンジュゲート38で有意な腫瘍増殖阻害が観察されている。図3Aに示すように、コンジュゲート38は、それぞれ単独でのPI3K阻害剤(コパンリシブ)又はHSP90阻害剤(ガネテスピブ)の有効性の欠如とは対照的に、優れた有効性を示した。驚くべきことに、コンジュゲート38は、コパンリシブとガネテスピブを含む併用療法よりもはるかに効果的であった。
コンジュゲート38の蓄積及び保持を、この腫瘍異種移植モデルで試験した。コンジュゲート38は、強力で持続的な薬力学的反応を示した。図4に示すように、コンジュゲート38は腫瘍異種移植片に残り、活性PI3K阻害剤のペイロードを96時間以上放出した。コパンリシブ自体ははるかに短い腫瘍保持時間を有する。pAKT(S473)の大幅な減少によって示されるように、PI3Kの阻害は48時間にわたって増加する(図5)。
その他のインビボモデル
PIK3A変異は、乳がん、子宮内膜がん、及び結腸がんの約15%〜30%で発生する。LSl74tモデルに加えて、一般的なPIK3CA変異を有する他の異種移植モデルをテスト用に選択した。ある研究では、SKOV3(卵巣癌)腫瘍異種移植片を有するマウスを、25mg/kgのコンジュゲート38及び6mg/kgのコパンリシブのIV用量で処置した。用量は最大耐量に基づいて選択された。平均腫瘍体積の変化を図3Bに示す。別の研究では、BT474(乳癌)腫瘍異種移植片を有するマウスを、25mg/kgのコンジュゲート38及び6mg/kgのコパンリシブのIV用量で処置した。平均腫瘍体積変化を図3Cに示す。試験したすべての異種移植モデルにおいて、コンジュゲート38をコパンリシブと比較すると、腫瘍増殖阻害の統計的に有意な増加が見られた。
実施例4:正常組織毒性を低減するためのペイロードのマスキング
この実施例では、複数のペイロードに由来する本開示のコンジュゲートは、それらのそれぞれのインビトロ機能アッセイにおいて、HSP90ターゲティングを依然として保持しながら、活性が有意に低いことが判明した。それぞれのペイロードの活性は、リンカー部分が腫瘍内で切断され、ブロック解除された活性なペイロードを解放するまでブロックされる。HSP90プラットフォームを介して、ペイロードが腫瘍に送達可能になるまでペイロードの活性部位をマスキングすることで、毒性が軽減される。
PI3K経路を標的とする阻害剤の既知の潜在的用量制限副作用は、高血糖症である。この研究では、コンジュゲート38を試験して、そのPI3K阻害剤ペイロードの副作用を低減できるかどうかを確認した。
無細胞PI3K酵素アッセイでは、図6に示すように、コンジュゲート38はそのPI3K酵素阻害剤ペイロードよりも活性がはるかに低かった。したがって、PI3K酵素阻害剤ペイロードをHSP90標的化リガンドにコンジュゲートすると、PI3K酵素阻害がマスキングされる。
マウスのインビボ試験では、PI3K阻害剤(コパンリシブ)及びコンジュゲート38の投与後にグルコースレベルをモニタリングした。図7に示すように、コンジュゲート38で処置したマウスは、PI3K阻害剤ペイロードで処理したマウスよりもグルコース濃度が低かった。したがって、PI3K酵素阻害剤ペイロードをHSP90標的化リガンドに結合させると、マウスのグルコース増加の正常組織活性が減少した。コンジュゲート38は、PI3K阻害剤のみの投与後に観察されたグルコースレベルの増加を緩和することができ、選択的送達がPI3K阻害剤のみと比較して治療ウィンドウを拡大できることを示している。
これらのデータは、腫瘍におけるHSP90標的化リガンドの優先的な蓄積を活用することにより、PI3K阻害剤を選択的に送達して、マウスで高血糖を誘発せずに複数の腫瘍モデルで有効性につながる深い経路阻害を達成できることを示している。
いくつかのさらなる研究では、HSP90結合リガンドと他のペイロードを含むコンジュゲートを試験した。コンジュゲート45は、標的化部分としてのガネテスピブ誘導体及びペイロードとしてのタラゾパリブ(PARP阻害剤)を含む。コンジュゲート46は、標的化部分としてのガネテスピブ誘導体及びペイロードとしてのウリキセルチニブ(ERK1/2阻害剤)を含む。コンジュゲート47は、標的化部分としてのガネテスピブ誘導体及びペイロードとしてのTAK−733(MEK阻害剤)を含む。
図8Aは、コンジュゲート45とそのペイロード(タラゾパリブ)の活性を比較している。図8Bはコンジュゲート46とそのペイロード(ウリキセルチニブ)の活性を比較している。図8Cはコンジュゲート47とそのペイロードTAK−733の活性を比較している。データはさらに、ペイロードをHSP90結合リガンドに付加すると、ペイロードの標的活性がブロックされることを裏付けている。HSP90リガンドのHSP90結合は影響を受けない。次の表に示すように、コンジュゲートはHSP90に対して高い親和性を保持する。
もう1つの研究では、コンジュゲート48(ガネテスピブ誘導体及びSN−38を含むコンジュゲート)によって引き起こされるDNA損傷を、コンジュゲート48のペイロードであるSN−38によって引き起こされるDNA損傷と比較した。SN−38とそのプレドラッグであるイリノテカン(カンプトテシンの類似体)は、トポイソメラーゼIの阻害剤であり、DNAを傷つけるDNA損傷を強力に引き起こす。図9に示すように、イリノテカンは中程度のレベルのDNA損傷活性を示し、ガネテスピブは予測どおりに何も示さなかった。コンジュゲート48は、100uMまで無視できるレベルのDNA損傷を示したが、SN−38は、1uMでもDNA損傷を示した。SN−38のHSP90リガンドへのコンジュゲート化により、リンカー切断が生じる腫瘍に選択的に送達可能になるまで、SN−38の活性がマスキングされる。
したがって、本開示のコンジュゲートは、広範囲のペイロードをマスキングして正常組織毒性を低減しつつ、リンカー切断時に強力なペイロードを放出する。
実施例5:ペイロード及びコンジュゲートの透過性の決定
ペイロード及び/又はコンジュゲートが細胞に入り込む能力を試験するために、Caco−2細胞(ヒト上皮性結腸腺癌細胞株)を使用する細胞単層アッセイを利用した。
実験手順:組織培養フラスコで培養したCaco−2細胞をトリプシン処理し、培地に懸濁させ、その懸濁液をミリポア96ウェルCaco−2プレートのウェルにアプライした。細胞を増殖させ、3週間分化させ、2日おきに摂食させた。頂端部から側底部(A→B)への透過性については、試験薬剤を頂端部(A)側に添加し、透過量を側底部(B)側で決定する。側底部から頂端部への(B→A)透過性の場合、試験薬剤をB側に追加し、透過量をA側で決定する。
化合物27Aを、Caco−2透過性アッセイで試験し、透過性が非常に低いことが示された。AからBへの方向における平均透過率(Papp)は、0.00320×10−6cm/秒であり、BからAへの方向における0.0162×10−6cm/秒であることが見出された。