JP2021194302A - 脳磁計 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサを用いて、高精度に計測可能な脳磁計を提供すること。【解決手段】脳磁計M1は、脳磁場を計測する複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aと、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aのそれぞれのポンプ光の方向と同一の方向、且つ頭皮に対し略平行な方向にバイアス磁場を印加するためのバイアス磁場形成用コイル15と、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサの共鳴周波数を脳磁場の周波数帯域に調整するバイアス磁場を発生させるようにバイアス磁場形成用コイルに対する電流を決定し、決定した電流に応じた制御信号を出力する制御装置5と、制御装置により出力された制御信号に応じて、バイアス磁場形成用コイルに電流を出力するコイル電源6と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、脳磁計に関する。
従来、脳磁計として、微小な脳磁場を計測するために超伝導量子干渉計(superconducting quantum interference device, SQUID)が用いられている。近年では、SQUIDに代わり光励起磁気センサを用いた脳磁計が研究されている。光励起磁気センサは、光ポンピングによって励起されたアルカリ金属の原子のスピン偏極を用いることで微小な脳磁場を計測する。例えば、特許文献1は光ポンピング磁力計を利用した脳磁計を開示している。
特許5823195号公報
光励起磁気センサの種類として、一軸型、ポンプ・プローブ型など様々なタイプのものが知られている。一軸型の光励起磁気センサは、ポンプ・プローブ型の光励起磁気センサと比較して感度が低い。そのため、脳磁場を高感度で測定する観点からは、ポンプ・プローブ型の光励起磁気センサが望ましい。一方、ポンプ・プローブ型の光励起磁気センサでは、脳磁場を高精度に計測するために、光励起磁気センサのポンプ光方向に加えるバイアス磁場によって決まる電子スピン磁気共鳴周波数(以下、共鳴周波数)及び感度帯域を調整する必要がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、ポンプ・プローブ型の光励起磁気センサの共鳴周波数を適切に調整することにより、目的とする周波数の脳磁場を高精度に計測可能な脳磁計を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る脳磁計は、脳磁場を計測する複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサと、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサのそれぞれのポンプ光の方向と同一の方向、且つ頭皮に対し略平行な方向にバイアス磁場を印加するためのバイアス磁場形成用コイルと、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサの共鳴周波数を脳磁場の周波数帯域に調整するバイアス磁場を発生させるようにバイアス磁場形成用コイルに対する電流を決定し、決定した電流に応じた制御信号を出力する制御装置と、制御装置により出力された制御信号に応じて、バイアス磁場形成用コイルに電流を出力するコイル電源と、を備える。
本発明の一態様に係る脳磁計では、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサのそれぞれのポンプ光と同一の方向、且つ頭皮に対し略平行な方向にバイアス磁場が印加され、複数の光励起磁気センサの共鳴周波数が脳磁場の周波数帯域に調整される。頭皮から略垂直な方向に脳磁場が生じているため、頭皮に対し略平行な方向であってポンプ光と同一の方向にバイアス磁場が印加されることによって、脳磁場に対して適切な方向にバイアス磁場を印加することができる。そして、本発明の一態様に係る脳磁計では、バイアス磁場によって複数の光励起磁気センサの共鳴周波数が脳磁場の周波数帯域に調整されるので、複数の光励起磁気センサが脳磁場の計測に適した感度に調整される。以上のように、本発明の一態様に係る脳磁計によれば、光励起磁気センサの共鳴周波数を適切に調整することによって、脳磁場を高精度に計測することができる。
バイアス磁場の方向は、被験者の体軸を中心とする同心円の方向であってもよい。このような同心円の方向のバイアス磁場は、容易且つ安定的に発生可能である。バイアス磁場が安定することにより、脳磁場を安定的に計測することができる。
バイアス磁場形成用コイルは、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサのそれぞれを個別に周回するように配置されるコイルシステムであってもよい。このような構成によれば、複数の光励起磁気センサごとにバイアス磁場が印加される。これにより、均一なバイアス磁場を精緻に印加することができる。
バイアス磁場形成用コイルは、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサに含まれる少なくとも2つ以上の光励起磁気センサを囲むように配置されるコイルシステムであってもよい。このような構成によれば、バイアス磁場形成用コイルに囲まれた2つ以上の光励起磁気センサに対し、一括でバイアス磁場が印加される。これにより、簡易な構成によって均一なバイアス磁場を効率的に印加することができる。
複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサは、頭皮に対し垂直な方向且つ同軸上に計測領域及び参照領域を有する軸型グラジオメータであってもよい。このような構成によれば、コモンモードノイズの影響が計測領域の出力結果及び参照領域の出力結果のそれぞれに示されるため、両者の出力結果の差分を取得することによってコモンモードノイズを除去することができる。これにより、脳磁場の計測精度が向上する。
複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサのそれぞれの位置における地磁気に係る磁場を計測する複数の地磁気磁場補正用磁気センサと、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサのそれぞれの位置における変動磁場を計測する複数のアクティブシールド用磁気センサと、地磁気に係る磁場を補正するための地磁気磁場補正コイルと、変動磁場を補正するためのアクティブシールドコイルと、をさらに備え、制御装置は、複数の地磁気磁場補正用磁気センサの計測値に基づいて、地磁気に係る磁場を打ち消す磁場を発生させるように地磁気磁場補正コイルに対する電流を決定し、複数のアクティブシールド用磁気センサの計測値に基づいて、変動磁場を打ち消す磁場を発生させるようにアクティブシールドコイルに対する電流を決定し、決定した電流に応じた制御信号を出力し、コイル電源は、制御装置により出力された制御信号に応じて、地磁気磁場補正コイル及びアクティブシールドコイルに電流をさらに出力してもよい。このような構成によれば、脳磁場を計測する複数の光励起磁気センサのそれぞれの位置における地磁気に係る磁場及び変動磁場が計測される。そして、本脳磁計では、地磁気に係る磁場の複数の計測値に基づいて地磁気に係る磁場を打ち消す磁場を発生させるように地磁気磁場補正コイルに対する電流が決定され、変動磁場の複数の計測値に基づいて変動磁場を打ち消す磁場を発生させるようにアクティブシールドコイルに対する電流が決定され、決定した電流に応じた制御信号が出力される。そして、制御信号に応じた電流が地磁気磁場補正コイル及びアクティブシールドコイルに出力されると、それぞれのコイルにおいて磁場が発生し、複数の光励起磁気センサの位置において、地磁気磁場補正コイルにおいて発生した磁場によって地磁気に係る磁場が打ち消され、アクティブシールドコイルにおいて発生した磁場によって変動磁場が打ち消される。このように、複数の光励起磁気センサの位置における地磁気に係る磁場及び変動磁場が打ち消されることにより、複数の光励起磁気センサは、地磁気に係る磁場の影響及び変動磁場の影響を避けた状態において脳磁場を計測することができる。このような脳磁計によれば、磁気シールドルームを使用せずに高精度に脳磁場を計測することができる。
複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ、複数の地磁気磁場補正用磁気センサ、及び複数のアクティブシールド用磁気センサは、被験者の頭部に装着されるヘルメット型の比透磁率が1に近く磁場分布を乱さない非磁性フレームに固定されていてもよい。このような構成によれば、被験者の頭部の動きに応じて、頭部に装着された非磁性フレーム及び非磁性フレームに固定された各センサが動くため、被験者の頭部が動いた場合においても、複数の光励起磁気センサの位置における地磁気に係る磁場及び変動磁場の補正、及び脳磁場の計測を適切に行うことができる。
高周波数の電磁ノイズを遮蔽するための電磁シールドをさらに備えてもよい。このような構成によれば、脳磁計では計測の対象とならない高周波数の電磁ノイズが複数の光励起磁気センサに侵入することを防止できる。これにより、複数の光励起磁気センサを安定的に動作させることができる。
本発明によれば、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサの共鳴周波数を目的とする脳磁場の周波数へ揃えることにより、高精度に計測可能な脳磁計を提供することができる。
実施形態に係る脳磁計の構成を示す概略図である。 バイアス磁場の方向を示す概要図である。 バイアス磁場形成用コイルの配置例を示す概要図である。 バイアス磁場形成用コイルの配置例に係るバイアス磁場の方向を示す概要図である。 バイアス磁場形成用コイルの他の配置例を示す概要図である。 実施形態に係る脳磁計の動作を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、実施形態に係る脳磁計M1の構成を示す概略図である。脳磁計M1は、磁気ノイズを打ち消す磁場を発生させながら、光ポンピングを利用して脳磁場を計測する装置である。脳磁計M1は、複数のOPM(optically pumped magnetometer)モジュール1と、複数の地磁気磁場補正用磁気センサ2と、複数のアクティブシールド用磁気センサ3と、非磁性フレーム4と、制御装置5と、コイル電源6と、一対の地磁気補正コイル7及び一対の勾配磁場補正コイル8(地磁気磁場補正コイル)と、一対のアクティブシールドコイル9と、ポンプレーザ10と、プローブレーザ11と、アンプ12と、ヒータコントローラ13と、電磁シールド14と、バイアス磁場形成用コイル15と、を備える。
OPMモジュール1は、ポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aと、断熱材1Bと、読み出し回路1Cと、を有する。複数のOPMモジュール1は、例えば頭皮に沿って所定の間隔で配置される。
光励起磁気センサ1Aは、光ポンピングを利用して脳磁場を計測するセンサであり、例えば10fT〜10pT程度の感度を有する。断熱材1Bは、ヒーター(不図示)によって180度に加熱された光励起磁気センサ1Aの熱移動及び熱伝達を防止する。読み出し回路1Cは、光励起磁気センサ1Aの検出結果を取得する回路である。光励起磁気センサ1Aは、アルカリ金属蒸気を封入したセルにポンプ光を照射することによって、アルカリ金属蒸気を励起状態とする。励起状態のアルカリ金属蒸気はスピン偏極状態にあり、磁気を受けると、磁気に応じてアルカリ金属蒸気のスピン偏極軸の向きが変化する。そして、このスピン偏極のポンプ光に対して直交方向に照射されるプローブ光方向の成分の大きさに応じて直線偏光面が回転する。この回転角(磁気旋光角)を検出するため、読み出し回路1Cは、アルカリ金属蒸気を通過したプローブ光をフォトダイオードによって受光し、検出結果を取得する。読み出し回路1Cは、検出結果をアンプ12に出力する。
光励起磁気センサ1Aは、例えば軸型グラジオメータ(Gradiometer)であってもよい。軸型グラジオメータは、被験者の頭皮(計測箇所)に対し垂直な方向且つ同軸上に計測領域及び参照領域を有する。計測領域とは、例えば、軸型グラジオメータが脳磁場を計測する箇所のうち、被験者の頭皮に最も近接する箇所である。参照領域とは、例えば、軸型グラジオメータが脳磁場を計測する箇所のうち、被験者の頭皮から離れた方向に対し、計測領域から所定の距離(例えば3cm)の箇所である。軸型グラジオメータは、計測領域及び参照領域において計測したそれぞれの結果をアンプ12に出力する。ここで、コモンモードノイズが含まれる場合には、その影響が計測領域の出力結果及び参照領域の出力結果のそれぞれに示される。コモンモードノイズは、計測領域の出力結果及び参照領域の出力結果の差分を取得することによって除去される。コモンモードノイズを除去することにより、例えば1pTの磁気ノイズ環境下で計測した場合、光励起磁気センサ1Aは10fT/√Hz程度の感度を得ることができる。
地磁気磁場補正用磁気センサ2は、光励起磁気センサ1Aに対応する位置において、地磁気に係る磁場を計測するセンサであり、例えば1nT〜100μT程度の感度を有するフラックスゲートセンサにより構成される。光励起磁気センサ1Aに対応する位置とは、光励起磁気センサ1Aが配置された領域の周辺(近傍)の位置である。地磁気磁場補正用磁気センサ2は、光励起磁気センサ1Aに一対一で対応して設けられていてもよいし、一対多(複数の光励起磁気センサ1Aに対して1台の地磁気磁場補正用磁気センサ2)で対応して設けられていてもよい。地磁気磁場補正用磁気センサ2は、地磁気に係る磁場として例えば地磁気及び地磁気の勾配磁場(以下、単に「勾配磁場」という。)を計測し、計測値を制御装置5に出力する。地磁気磁場補正用磁気センサ2の計測値は、向き及び大きさを有するベクトルにより表され得る。地磁気磁場補正用磁気センサ2は、計測及び出力を、所定の時間間隔で継続して行ってもよい。
アクティブシールド用磁気センサ3は、光励起磁気センサ1Aに対応する位置において、変動磁場を計測するセンサであり、例えば数百Hz以下の周波数帯域で100fT〜10nT程度の感度を有し、光励起磁気センサ1Aとは異なる光励起磁気センサにより構成される。光励起磁気センサ1Aに対応する位置とは、光励起磁気センサ1Aが配置された領域の周辺(近傍)の位置である。アクティブシールド用磁気センサ3は、光励起磁気センサ1Aに一対一で対応して設けられていてもよいし、一対多(複数の光励起磁気センサ1Aに対して1台のアクティブシールド用磁気センサ3)で対応して設けられていてもよい。アクティブシールド用磁気センサ3は、変動磁場として例えば200Hz以下のノイズ(交流)成分の磁場を計測し、計測値を制御装置5に出力する。アクティブシールド用磁気センサ3の計測値は、向き及び大きさを有するベクトルにより表され得る。
非磁性フレーム4は、脳磁場の計測対象である被験者の頭皮の全域を覆うフレームであり、グラファイト等の比透磁率が1に近く磁場分布を乱さない非磁性体材料により構成される。非磁性フレーム4は、例えば被験者の頭皮の全域を囲み、被験者の頭部に装着されるヘルメット型のフレームとすることができる。非磁性フレーム4には、被験者の頭皮に近接するように複数の光励起磁気センサ1Aが固定されている。さらに、非磁性フレーム4には、複数の光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置における地磁気に係る磁場を計測可能なように地磁気磁場補正用磁気センサ2が固定され、複数の光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置における変動磁場を計測可能なようにアクティブシールド用磁気センサ3が固定されている。変動磁場は位置による磁場強度のばらつきが静磁場よりも少ないため、非磁性フレーム4には地磁気磁場補正用磁気センサ2の数よりもアクティブシールド用磁気センサ3の数が少なくなるように固定されていてもよい。
制御装置5は、地磁気磁場補正用磁気センサ2及びアクティブシールド用磁気センサ3から出力された計測値に基づいて、各種コイルに対する電流を決定し、電流を出力するための制御信号をコイル電源6に出力する装置である。制御装置5は、複数の地磁気磁場補正用磁気センサ2の計測値に基づいて、地磁気に係る磁場を打ち消す磁場を発生させるように、地磁気磁場補正コイルである地磁気補正コイル7及び勾配磁場補正コイル8に対する電流を決定する。また、制御装置5は、複数のアクティブシールド用磁気センサ3の計測値に基づいて、変動磁場を打ち消す磁場を発生させるようにアクティブシールドコイル9に対する電流を決定する。制御装置5は、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aの共鳴周波数を脳磁場の周波数帯域に調整するバイアス磁場を発生させるようにバイアス磁場形成用コイル15に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した電流に応じた制御信号をコイル電源6に出力する。
具体的には、制御装置5は、複数の地磁気磁場補正用磁気センサ2の計測値の平均値がゼロに近似するように(結果として、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場が発生するように)、地磁気補正コイル7に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した地磁気補正コイル7の電流に応じた制御信号(静磁場補正用制御信号)をコイル電源6に出力する。
また、制御装置5は、複数の地磁気磁場補正用磁気センサ2の計測値の平均値からの偏差が最小になるように(結果として、光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場が発生するように)、勾配磁場補正コイル8に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した勾配磁場補正コイル8の電流に応じた制御信号(静磁場補正用制御信号)をコイル電源6に出力する。
また、制御装置5は、複数のアクティブシールド用磁気センサ3の計測値の平均値がゼロに近似するように(結果として、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場が発生するように)、アクティブシールドコイル9に対する電流を決定する。制御装置5は、決定したアクティブシールドコイル9の電流に応じた制御信号(変動磁場補正用制御信号)をコイル電源6に出力する。
また、制御装置5は、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aの共鳴周波数が脳磁場の周波数帯域(例えば、数〜数百Hzの間)に含まれる周波数となるようにバイアス磁場形成用コイル15に対する電流を決定する。特に、約16〜30Hzのβ波、約40〜80Hzのγ波、約数百Hzのhigh-γ波等を選択的に計測する場合、制御装置5は、それぞれの周波数帯域に共鳴周波数が含まれるように、各々3.6nT、8.6nT、28.5nTのバイアス磁場が形成されるようにバイアス磁場形成用コイル15に対する電流を決定する。制御装置5は、決定したバイアス磁場形成用コイル15の電流に応じた制御信号(バイアス磁場印加用制御信号)をコイル電源6に出力する。
また、制御装置5は、アンプ12から出力された信号を利用して、光励起磁気センサ1Aが検出した磁気に関する情報を得る。光励起磁気センサ1Aが軸型グラジオメータである場合、制御装置5は、計測領域の出力結果及び参照領域の出力結果の差分を取得することによって、コモンモードノイズを除去してもよい。なお、制御装置5は、ポンプレーザ10及びプローブレーザ11の照射タイミング、照射時間等の動作を制御してもよい。
制御装置5は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えて構成されている。かかる制御装置5としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートフォン、タブレット端末などが挙げられる。制御装置5は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。
コイル電源6は、制御装置5から出力された制御信号に応じて、所定の電流を地磁気補正コイル7、勾配磁場補正コイル8、アクティブシールドコイル9、及びバイアス磁場形成用コイル15のそれぞれに出力する。具体的には、コイル電源6は、地磁気補正コイル7に係る制御信号に応じて、地磁気補正コイル7に電流を出力する。コイル電源6は、勾配磁場補正コイル8に係る制御信号に応じて、勾配磁場補正コイル8に電流を出力する。コイル電源6は、アクティブシールドコイル9に係る制御信号に応じて、アクティブシールドコイル9に電流を出力する。コイル電源6は、バイアス磁場形成用コイル15に係る制御信号に応じて、バイアス磁場形成用コイル15に電流を出力する。
地磁気補正コイル7は、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に係る磁場のうち、地磁気の磁場を補正するためのコイルである。地磁気補正コイル7は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させて、地磁気のキャンセリングを行う。地磁気補正コイル7は、例えば、一対の地磁気補正コイル7A及び7Bを有する。一対の地磁気補正コイル7A及び7Bは、光励起磁気センサ1Aを挟むように(例えば被験者の左右に)配置される。一対の地磁気補正コイル7A及び7Bは、コイル電源6から供給される電流に応じて、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させる。磁場の方向は、例えば、一方の地磁気補正コイル7Aから他方の地磁気補正コイル7Bに向かう。光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気は、地磁気補正コイル7により発生する逆向きで同程度の大きさの磁場によって打ち消される。このようにして、地磁気補正コイル7は、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気を補正する。
勾配磁場補正コイル8は、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に係る磁場のうち、勾配磁場を補正するためのコイルである。勾配磁場補正コイル8は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させて、勾配磁場のキャンセリングを行う。勾配磁場補正コイル8は、例えば、一対の勾配磁場補正コイル8A及び8Bを有する。一対の勾配磁場補正コイル8A及び8Bは、光励起磁気センサ1Aを挟むように(例えば被験者の左右に)配置される。一対の勾配磁場補正コイル8A及び8Bは、コイル電源6から供給される電流に応じて、光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させる。磁場の方向は、例えば、一方の勾配磁場補正コイル8Aから他方の勾配磁場補正コイル8Bに向かう。光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場は、勾配磁場補正コイル8により発生する逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。このようにして、勾配磁場補正コイル8は、光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場を補正する。
アクティブシールドコイル9は、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場を補正するためのコイルである。アクティブシールドコイル9は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させて、変動磁場のキャンセリングを行う。アクティブシールドコイル9は、例えば、一対のアクティブシールドコイル9A及び9Bを有する。一対のアクティブシールドコイル9A及び9Bは、光励起磁気センサ1Aを挟むように(例えば被験者の左右に)配置される。一対のアクティブシールドコイル9A及び9Bは、コイル電源6から供給される電流に応じて、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させる。磁場の方向は、例えば、一方のアクティブシールドコイル9Aから他方のアクティブシールドコイル9Bに向かう。光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場は、アクティブシールドコイル9により発生する逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。このようにして、アクティブシールドコイル9は、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場を補正する。
ポンプレーザ10は、ポンプ光を生成するレーザ装置である。ポンプレーザ10から出射されたポンプ光は、ファイバ分岐により、複数の光励起磁気センサ1Aのそれぞれに入射する。
プローブレーザ11は、プローブ光を生成するレーザ装置である。プローブレーザ11から出射されたプローブ光は、ファイバ分岐により、複数の光励起磁気センサ1Aのそれぞれに入射する。
アンプ12は、OPMモジュール1(具体的には、読み出し回路1C)からの出力結果の信号を増幅して、制御装置5に出力する機器又は回路である。
ヒータコントローラ13は、光励起磁気センサ1Aのセルを加熱するためのヒータ(不図示)、及びセルの温度を計測する熱電対(不図示)と接続される調温装置である。ヒータコントローラ13は、熱電対からセルの温度情報を受信し、当該温度情報に基づいてヒータの加熱を調整することにより、セルの温度を調整する。
電磁シールド14は、高周波数(例えば、10kHz以上)の電磁ノイズを遮蔽するシールド部材であり、例えば金属糸を編み込んだメッシュ、又はアルミニウム等の非磁性金属板等により構成される。電磁シールド14は、光励起磁気センサ1A、地磁気磁場補正用磁気センサ2、アクティブシールド用磁気センサ3、非磁性フレーム4、地磁気補正コイル7、勾配磁場補正コイル8、アクティブシールドコイル9、及びバイアス磁場形成用コイル15を囲むように配置される。
バイアス磁場形成用コイル15は、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aのそれぞれのポンプ光の方向と同一の方向、且つ頭皮に対し略平行な方向にバイアス磁場を印加するためのコイルである。バイアス磁場形成用コイル15は、コイル電源6から供給される電流に応じてバイアス磁場を発生させる。バイアス磁場形成用コイル15は、例えば、0.7〜30nTのバイアス磁場を発生させる。
図2は、バイアス磁場の方向を示す概要図である。図2(a)及び(b)は、被験者の頭部に非磁性フレーム4が装着された状態であることを示す。バイアス磁場の方向は、被験者の頭皮に対し、略平行な方向(頭皮から垂直方向に発生する脳磁場に対し垂直方向)であり、例えば図2(a)で示されるように、被験者の体軸AXを中心とする同心円の方向Dである。同心円の方向Dの向きは逆方向でもよい。このような同心円の方向Dのバイアス磁場は、容易且つ安定的に印加することが可能である。また、バイアス磁場の方向は、例えば図2(b)で示されるように、頭頂部を起点とする放射状の方向D´であってもよい。複数の光励起磁気センサ1Aは、それぞれのポンプ光の方向とバイアス磁場の方向D又はD´とが同一方向となるように配置される。
図3は、バイアス磁場形成用コイル15の配置例を示す概要図である。図3は、被験者の頭部に非磁性フレーム4が装着された状態であることを示す。図3において、バイアス磁場形成用コイル15は、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aのそれぞれを個別に周回するように配置されるコイルシステムである。バイアス磁場形成用コイル15が示す矢印は電流の向きである。隣り合う複数の光励起磁気センサ1Aとの間でバイアス磁場の影響を避けるため、複数の光励起磁気センサ1Aは、一定の間隔で配置されてもよい。光励起磁気センサ1Aが軸型グラジオメータである場合、バイアス磁場形成用コイル15は、軸型グラジオメータの計測領域の磁場強度と参照領域の磁場強度とが同一となるようにバイアス磁場を発生させる。
図4は、バイアス磁場形成用コイル15の配置例に係るバイアス磁場の方向を示す概要図である。図4は、図3で示した配置例について、被験者の上側から被験者の頭部を見た場合の図であることを示す。バイアス磁場形成用コイル15は、複数の光励起磁気センサ1Aのそれぞれを個別に周回するように配置されるが、簡略化するために光励起磁気センサ1A(OPMモジュール1)の両端に接した箇所のみ示されている。このようなバイアス磁場形成用コイル15により発生するバイアス磁場の方向は、被験者の体軸AXを中心とする同心円の方向Dである。同心円の方向Dの向きは逆方向でもよい。複数の光励起磁気センサ1Aごとに配置されたバイアス磁場形成用コイル15は、互いに協調して均一なバイアス磁場を印加してもよい。
図5は、バイアス磁場形成用コイル15の他の配置例を示す概要図である。図5は、被験者の頭部に非磁性フレーム4が装着された状態であることを示す。図5において、バイアス磁場形成用コイル15は、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aに含まれる少なくとも2つ以上の光励起磁気センサ1Aを囲むように配置されるコイルシステムである。バイアス磁場形成用コイル15は、らせん状に被験者の頭部の周りに配置され(例えば20周程度)、直列に接続される。図2では、簡略化するために2周分のコイルのみ例示している。バイアス磁場形成用コイル15が示す矢印は電流の向きである。このようなバイアス磁場形成用コイル15により発生するバイアス磁場の方向は、被験者の体軸AXを中心とする同心円の方向Dである。同心円の方向Dの向きは逆方向でもよい。バイアス磁場形成用コイル15は、囲んでいる複数の光励起磁気センサ1Aに対し、均一なバイアス磁場を印加する。
次に、図6を参照しながら、実施形態に係る脳磁計M1を用いた脳磁場測定方法について説明する。図6は、脳磁計M1の動作を示すフローチャートである。
地磁気磁場補正用磁気センサ2は、静磁場である、地磁気に係る磁場を計測する(ステップS11)。地磁気磁場補正用磁気センサ2は、光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置において、地磁気及び勾配磁場を計測し、計測値を制御装置5に出力する。
制御装置5及びコイル電源6は、地磁気補正コイル7に対する電流を制御する(ステップS12)。制御装置5は、地磁気磁場補正用磁気センサ2の計測値に基づいて、光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に対し逆向き且つ同程度の磁場を発生させるように、地磁気補正コイル7に対する電流を決定する。より具体的には、制御装置5は、例えば複数の地磁気磁場補正用磁気センサ2の計測値の平均値がゼロに近似するように、地磁気補正コイル7に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した電流に応じた制御信号をコイル電源6に出力する。コイル電源6は、制御装置5により出力された制御信号に応じて、所定の電流を地磁気補正コイル7に出力する。地磁気補正コイル7は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させる。光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気は、地磁気補正コイル7により発生する、逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。
制御装置5及びコイル電源6は、勾配磁場補正コイル8に対する電流を制御する(ステップS13)。制御装置5は、地磁気磁場補正用磁気センサ2の計測値に基づいて、光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させるように、勾配磁場補正コイル8に対する電流を決定する。より具体的には、制御装置5は、例えば複数の地磁気磁場補正用磁気センサ2の計測値の平均値からの偏差が最小になるように、勾配磁場補正コイル8に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した電流に応じた制御信号をコイル電源6に出力する。コイル電源6は、制御装置5により出力された制御信号に応じて、所定の電流を勾配磁場補正コイル8に出力する。勾配磁場補正コイル8は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させる。光励起磁気センサ1Aの位置における勾配磁場は、勾配磁場補正コイル8により発生する逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。
制御装置5は、補正後の静磁場(地磁気に係る磁場)の計測値が基準値以下であるかどうかを判定する(ステップS14)。補正後の静磁場の計測値とは、地磁気補正コイル7及び勾配磁場補正コイル8によって静磁場が補正された後、地磁気磁場補正用磁気センサ2により計測された値である。基準値は、光励起磁気センサ1Aが正常に動作する磁場の大きさであり、例えば1nTとすることができる。静磁場の計測値が基準値以下ではない場合(ステップS14において「NO」)、ステップS11に戻る。静磁場の計測値が基準値以下である場合(ステップS14において「YES」)、ステップS15に進む。
アクティブシールド用磁気センサ3は、変動磁場を計測する(ステップS15)。アクティブシールド用磁気センサ3は、光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置において、変動磁場を計測し、計測値を制御装置5に出力する。
制御装置5及びコイル電源6は、アクティブシールドコイル9に対する電流を制御する(ステップS16)。制御装置5は、アクティブシールド用磁気センサ3の計測値に基づいて、光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場に対し逆向き且つ同程度の大きさの磁場を発生させるように、アクティブシールドコイル9に対する電流を決定する。より具体的には、制御装置5は、例えば複数のアクティブシールド用磁気センサ3の計測値の平均値がゼロに近似するように、アクティブシールドコイル9に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した電流に応じた制御信号をコイル電源6に出力する。コイル電源6は、制御装置5により出力された制御信号に応じて、所定の電流をアクティブシールドコイル9に出力する。アクティブシールドコイル9は、コイル電源6から供給される電流に応じて磁場を発生させる。光励起磁気センサ1Aの位置における変動磁場は、アクティブシールドコイル9により発生する逆向き且つ同程度の大きさの磁場によって打ち消される。
制御装置5は、補正後の変動磁場の計測値が基準値以下であるかどうかを判定する(ステップS17)。補正後の変動磁場の計測値とは、アクティブシールドコイル9によって変動磁場が補正された後、アクティブシールド用磁気センサ3によって計測された値である。基準値は、脳磁場を計測することができるノイズレベルであり、例えば1pTとすることができる。変動磁場の計測値が基準値以下ではない場合(ステップS17において「NO」)、ステップS15に戻る。変動磁場の計測値が基準値以下である場合(ステップS17において「YES」)、ステップS18に進む。
制御装置5及びコイル電源6は、バイアス磁場形成用コイル15に対する電流を制御する(ステップS18)。制御装置5は、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aの共鳴周波数を脳磁場の周波数帯域に調整するバイアス磁場を発生させるようにバイアス磁場形成用コイル15に対する電流を決定する。制御装置5は、決定した電流に応じた制御信号をコイル電源6に出力する。コイル電源6は、制御装置5により出力された制御信号に応じて、所定の電流をバイアス磁場形成用コイル15に出力する。バイアス磁場形成用コイル15は、コイル電源6から供給される電流に応じてバイアス磁場を発生させる。
光励起磁気センサ1Aは、脳磁場を計測する(ステップS19)。ここまでに光励起磁気センサ1Aの位置における静磁場(地磁気に係る磁場)及び変動磁場が所定の基準値以下になるように打ち消されているため、光励起磁気センサ1Aは、静磁場(地磁気に係る磁場)の影響及び変動磁場の影響を避けた状態で脳磁場を計測することができる。また、複数の光励起磁気センサ1Aが脳磁場の計測に適した感度になるとともに、当該感度が複数の光励起磁気センサ1Aの間で揃えられる。これにより、高精度に計測可能な脳磁計を提供することができる。
[作用効果]
次に、上述した実施形態に係る脳磁計の作用効果について説明する。
本実施形態に係る脳磁計M1は、脳磁場を計測する複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aと、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aのそれぞれのポンプ光の方向と同一の方向、且つ頭皮に対し略平行な方向にバイアス磁場を印加するためのバイアス磁場形成用コイル15と、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサの共鳴周波数を脳磁場の周波数帯域に調整するバイアス磁場を発生させるようにバイアス磁場形成用コイルに対する電流を決定し、決定した電流に応じた制御信号を出力する制御装置5と、制御装置により出力された制御信号に応じて、バイアス磁場形成用コイルに電流を出力するコイル電源6と、を備える。
本実施形態に係る脳磁計M1では、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aのそれぞれのポンプ光と同一の方向、且つ頭皮に対し略平行な方向にバイアス磁場が印加され、複数の光励起磁気センサ1Aの共鳴周波数が脳磁場の周波数帯域に調整される。頭皮から略垂直な方向に脳磁場が生じているため、頭皮に対し略平行な方向であってポンプ光と同一の方向にバイアス磁場が印加されることによって、脳磁場に対して適切な方向にバイアス磁場を印加することができる。そして、本実施形態に係る脳磁計M1では、バイアス磁場によって複数の光励起磁気センサ1Aの共鳴周波数が脳磁場の周波数帯域に調整されるので、複数の光励起磁気センサ1Aが脳磁場の計測に適した感度に調整される。以上のように、本実施形態に係る脳磁計M1によれば、光励起磁気センサ1Aの共鳴周波数を適切に調整することによって、脳磁場を高精度に計測することができる。
バイアス磁場の方向は、被験者の体軸を中心とする同心円の方向であってもよい。このような同心円の方向のバイアス磁場は、容易且つ安定的に印加することが可能である。バイアス磁場が安定することにより、脳磁場を安定的に計測することができる。
バイアス磁場形成用コイル15は、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aのそれぞれを個別に周回するように配置されるコイルシステムであってもよい。このような構成によれば、複数の光励起磁気センサ1Aごとにバイアス磁場が印加される。これにより、均一なバイアス磁場を精緻に印加することができる。
バイアス磁場形成用コイル15は、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aに含まれる少なくとも2つ以上の光励起磁気センサ1Aを囲むように配置されるコイルシステムであってもよい。このような構成によれば、バイアス磁場形成用コイル15に囲まれた2つ以上の光励起磁気センサ1Aに対し、一括でバイアス磁場が印加される。これにより、簡易な構成によって均一なバイアス磁場を効率的に印加することができる。
複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aは、頭皮に対し垂直な方向且つ同軸上に計測領域及び参照領域を有する軸型グラジオメータであってもよい。このような構成によれば、コモンモードノイズの影響が計測領域の出力結果及び参照領域の出力結果のそれぞれに示されるため、両者の出力結果の差分を取得することによってコモンモードノイズを除去することができる。これにより、脳磁場の計測精度が向上する。
複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置における地磁気に係る磁場を計測する複数の地磁気磁場補正用磁気センサ2と、複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置における変動磁場を計測する複数のアクティブシールド用磁気センサ3と、地磁気に係る磁場を補正するための地磁気磁場補正コイルと、変動磁場を補正するためのアクティブシールドコイル9と、をさらに備え、制御装置5は、複数の地磁気磁場補正用磁気センサ2の計測値に基づいて、地磁気に係る磁場を打ち消す磁場を発生させるように地磁気磁場補正コイルに対する電流を決定し、複数のアクティブシールド用磁気センサ3の計測値に基づいて、変動磁場を打ち消す磁場を発生させるようにアクティブシールドコイル9に対する電流を決定し、決定した電流に応じた制御信号を出力し、コイル電源6は、制御装置5により出力された制御信号に応じて、地磁気磁場補正コイル及びアクティブシールドコイル9に電流をさらに出力してもよい。このような構成によれば、脳磁場を計測する複数の光励起磁気センサ1Aのそれぞれの位置における地磁気に係る磁場及び変動磁場が計測される。そして、本脳磁計M1では、地磁気に係る磁場の複数の計測値に基づいて地磁気に係る磁場を打ち消す磁場を発生させるように地磁気磁場補正コイルに対する電流が決定され、変動磁場の複数の計測値に基づいて変動磁場を打ち消す磁場を発生させるようにアクティブシールドコイル9に対する電流が決定され、決定した電流に応じた制御信号が出力される。そして、制御信号に応じた電流が地磁気磁場補正コイル及びアクティブシールドコイル9に出力されると、それぞれのコイルにおいて磁場が発生し、複数の光励起磁気センサ1Aの位置において、地磁気磁場補正コイルにおいて発生した磁場によって地磁気に係る磁場が打ち消され、アクティブシールドコイル9において発生した磁場によって変動磁場が打ち消される。このように、複数の光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に係る磁場及び変動磁場が打ち消されることにより、複数の光励起磁気センサ1Aは、地磁気に係る磁場の影響及び変動磁場の影響を避けた状態において脳磁場を計測することができる。このような脳磁計M1によれば、磁気シールドルームを使用せずに高精度に脳磁場を計測することができる。
複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ1A、複数の地磁気磁場補正用磁気センサ2、及び複数のアクティブシールド用磁気センサ3は、被験者の頭部に装着されるヘルメット型の比透磁率が1に近く磁場分布を乱さない非磁性フレーム4に固定されていてもよい。このような構成によれば、被験者の頭部の動きに応じて、頭部に装着された非磁性フレーム4及び非磁性フレーム4に固定された各センサが動くため、被験者の頭部が動いた場合においても、複数の光励起磁気センサ1Aの位置における地磁気に係る磁場及び変動磁場の補正、及び脳磁場の計測を適切に行うことができる。
高周波数の電磁ノイズを遮蔽するための電磁シールド14をさらに備えてもよい。このような構成によれば、脳磁計M1では計測の対象とならない高周波数の電磁ノイズが複数の光励起磁気センサ1Aに侵入することを防止できる。これにより、複数の光励起磁気センサ1Aを安定的に動作させることができる。
1A…光励起磁気センサ、2…地磁気磁場補正用磁気センサ、3…アクティブシールド用磁気センサ、4…非磁性フレーム、5…制御装置、6…コイル電源、7…地磁気補正コイル、8…勾配磁場補正コイル、9…アクティブシールドコイル、14…電磁シールド、15…バイアス磁場形成用コイル。

Claims (8)

  1. 脳磁場を計測する複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサと、
    前記複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサのそれぞれのポンプ光の方向と同一の方向、且つ頭皮に対し略平行な方向にバイアス磁場を印加するためのバイアス磁場形成用コイルと、
    前記複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサの共鳴周波数を脳磁場の周波数帯域に調整するバイアス磁場を発生させるように前記バイアス磁場形成用コイルに対する電流を決定し、決定した電流に応じた制御信号を出力する制御装置と、
    前記制御装置により出力された前記制御信号に応じて、前記バイアス磁場形成用コイルに電流を出力するコイル電源と、
    を備える、脳磁計。
  2. 前記バイアス磁場の方向は、被験者の体軸を中心とする同心円の方向である、請求項1記載の脳磁計。
  3. 前記バイアス磁場形成用コイルは、前記複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサのそれぞれを個別に周回するように配置されるコイルシステムである、請求項1又は2記載の脳磁計。
  4. 前記バイアス磁場形成用コイルは、前記複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサに含まれる少なくとも2つ以上の前記光励起磁気センサを囲むように配置されるコイルシステムである、請求項1又は2記載の脳磁計。
  5. 前記複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサは、前記頭皮に対し垂直な方向且つ同軸上に計測領域及び参照領域を有する軸型グラジオメータである、請求項1〜4のいずれか一項記載の脳磁計。
  6. 前記複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサのそれぞれの位置における地磁気に係る磁場を計測する複数の地磁気磁場補正用磁気センサと、
    前記複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサのそれぞれの位置における変動磁場を計測する複数のアクティブシールド用磁気センサと、
    前記地磁気に係る磁場を補正するための地磁気磁場補正コイルと、
    前記変動磁場を補正するためのアクティブシールドコイルと、
    をさらに備え、
    前記制御装置は、前記複数の地磁気磁場補正用磁気センサの計測値に基づいて、前記地磁気に係る磁場を打ち消す磁場を発生させるように前記地磁気磁場補正コイルに対する電流を決定し、前記複数のアクティブシールド用磁気センサの計測値に基づいて、前記変動磁場を打ち消す磁場を発生させるように前記アクティブシールドコイルに対する電流を決定し、決定した電流に応じた制御信号を出力し、
    前記コイル電源は、前記制御装置により出力された前記制御信号に応じて、前記地磁気磁場補正コイル及び前記アクティブシールドコイルに電流をさらに出力する、
    請求項1〜5のいずれか一項記載の脳磁計。
  7. 前記複数のポンプ・プローブ型の光励起磁気センサ、前記複数の地磁気磁場補正用磁気センサ、及び前記複数のアクティブシールド用磁気センサは、被験者の頭部に装着されるヘルメット型の比透磁率が1に近く磁場分布を乱さない非磁性フレームに固定されている、請求項6記載の脳磁計。
  8. 高周波数の電磁ノイズを遮蔽するための電磁シールドをさらに備える、請求項6又は7記載の脳磁計。

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