JP2021185917A - 細胞検出方法及びキット - Google Patents

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Abstract

【課題】より簡易なシステムで生体試料中の標的細胞を検出する細胞検出方法を提供する。【解決手段】標的細胞を含む溶液に一本鎖核酸からなるタグ付きの核酸アプタマーを加え、標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合させる工程と、タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の一部の塩基配列を含むトリガー核酸、及びタグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含むマスク核酸からなるトリガー核酸複合体を加え、トリガー核酸を放出させる工程と、放出されたトリガー核酸を含む溶液に、発シグナル分子とシグナル抑制分子とがそれぞれ修飾された核酸A及び核酸B、並びに鋳型核酸が形成するタンデム二本鎖中で、両修飾部位がシグナルを抑制するように近接位に位置する鋳型核酸複合体、及び燃料核酸を加え、核酸サーキットを回転させてシグナルを増幅させる工程と、増幅されたシグナルを検出する工程とを備える、細胞検出方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、生体試料中の標的細胞を検出する細胞検出方法、及び当該方法に使用するためのキットに関し、特に、安価で、診断時間を短縮するとともに、より簡易なシステムで生体試料中の標的細胞を検出する細胞検出方法、及び当該方法に使用するためのキットに関する。
医療現場で癌の判定に使われる代表的な手法として、腫瘍マーカーを用いた生検が含まれる。しかしながら、腫瘍は単クローン性の細胞の集合体ではなく、異なるプロファイルを持った細胞で構成されているため、細胞を採取する場所の違いで判定に異なる結果が生じるなど、その判断指標としての信憑性に懐疑的な意見がでてきている。
進行した癌では、腫瘍細胞が原発腫瘍細胞組織から剥離し、血液やリンパ液の流れに乗り、体内の別の臓器に移動することで癌の転移が起こると考えられている。このように血流に乗って体内を循環している腫瘍細胞は、血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell:CTC)と呼ばれている。近年、単位血液量(体積)あたりのCTCの個数が、癌の予後や治療奏功に深く関与することが明らかとなってきており、腫瘍マーカーに代わる癌の病態診断マーカーとしてCTCが注目されている。血中に存在するCTCの数が、癌の病態に対して高い相関を示すことが確認されており、癌の予後や治療奏功の有用な判断材料として考えられている。しかしながら、1mLの血液中には10億個の血液細胞が存在するのに対し、CTCはわずか数個〜数十個程度しか含まれていないため、CTCの検出は極めて困難である。
現在のところ、CTC数のカウントを原理とする予後診断システムとして米国食品医薬品局(FDA)が承認しているのは、米国ベリデックス社のCell Search Systemのみである。多くの固形腫瘍は細胞膜上にEpCAM(Epithelial Cell Adhesion Molecule、上皮細胞接着分子)を高発現していることが知られている(1細胞あたり約40万個以上)。同システムでは、磁性微粒子上に抗EpCAM抗体が修飾されており、これを介してCTCが磁気微粒子上に捕捉される。捕捉されたCTCを抗サイトケラチン抗体及びDAPIで染色し、セルカウンターでCTC数をカウントする仕組みとなっている(特許文献1)。末梢血7.5mL中の1個のCTCまで再現性よく検出可能であるが、末梢血濃縮に約40分、その後の測定に2〜3時間と比較的長い時間を診断に要する、という課題がある。近年は、術後に開腹状態でCTC数をカウントし、病巣摘出の奏功の確認を行いたいとのニーズが医療現場からあがってきている。しかしながら、Cell Search Systemでは、診断までに合計4時間近く要するため、このニーズに応えることができない。診断時間の短縮が喫緊の課題である。また、抗体を使用し、高価なシステムを利用する必要があるため、診断コストが非常に高く、同システムの普及の妨げになっている。Cell Search Systemに変わる新しい診断方法の開発が望まれている。
Cell Search Systemの磁気微粒子を利用した手法以外にも、CTCを選択的に捕集、捕捉する技術として、CTCと他の末梢血成分の細胞サイズの差(CTC:約30μm、白血球:約8〜20μm程度、赤血球:約8μm、厚さ約2μm、血小板:直径約2〜4μm)を利用してフィルターで分離捕集する手法、誘電泳動特性の違いを利用し、マイクロ流体デバイスで分離捕集する手法、アビジン修飾プレート(プレートリーダー用)にビオチン修飾核酸アプタマーを固定化したものを用いて捕捉する手法などが提案されている。しかし、検出に関しては、いずれの場合においても、分離捕集したCTCを蛍光ラベル化した抗上皮細胞接着分子抗体(抗EpCAM抗体)や抗サイトケラチン抗体で染色し、これを共焦点レーザー顕微鏡、セルカウンター、フローサイトメーターなどで直接細胞を観察する手段がとられている。よって、原理的に標的とするCTCの個数に応じたシグナル量しか得ることができないため、血液1mL中に数十個程度しか存在しないと言われているCTCの検出は非常に困難なものである。また、上記装置や蛍光ラベル化抗体は非常に高価であり、診断コストが高くなる要因となっている。
特許第5701749号 特開2017−079634号公報
上記問題に対し、本発明者らは、一部に塩基対結合して二本鎖を形成するトリガー核酸を含む核酸アプタマー複合体を用い、当該核酸アプタマー複合体からトリガー核酸を放出させて核酸サーキットを回転させることで、蛍光シグナルを増強し、生体試料中の標的細胞を検出する手法を報告している(特許文献2)。
しかしながら、当該手法には、以下のような問題があった。
上述のように、トリガー核酸は、核酸アプタマーの一部と二本鎖を形成している(核酸アプタマーの不活性化)。上記手法は、この不活性化核酸アプタマーと標的細胞の細胞表面物質との競合的結合の結果、核酸アプタマーが活性な構造を取り戻す際にトリガー核酸を放出し、核酸サーキットを回転させる仕組みであった。
ところが、同手法では、不活性な核酸アプタマー構造を安定に形成しつつ、かつ競合結合の結果、活性なアプタマー構造が誘起されるよう、トリガー核酸の最適な結合部位や塩基数の探索が標的となるタンパク質ごとに必要となる、といった問題を有している。
本発明は上記課題を解消するためになされたものであり、安価で、診断時間を短縮するとともに、より簡易なシステムで生体試料中の標的細胞を検出する細胞検出方法、及び当該方法に使用するためのキットを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題の解決のために鋭意研究を重ねた結果、細胞を染色して直接観察するのではなく、標的細胞の存在をきっかけとして反応溶液中に発光性分子を増幅させる仕組みを構築することで、極微量の標的細胞を簡便に検出することができると考え、本発明を見出したものである。
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
生体試料中の標的細胞を検出する細胞検出方法であって、
前記標的細胞を含む溶液に一本鎖核酸からなるタグ付きの核酸アプタマーを加え、前記標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合させる工程と、
前記タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の一部の塩基配列を含むトリガー核酸、及び前記タグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含むマスク核酸からなるトリガー核酸複合体を加え、当該トリガー核酸を放出させる工程と、
放出された前記トリガー核酸を含む溶液に、発シグナル分子とシグナル抑制分子とがそれぞれ修飾された核酸A及び核酸B、並びに鋳型核酸が形成するタンデム二本鎖中で、両修飾部位がシグナルを抑制するように近接位に位置する鋳型核酸複合体、及び燃料核酸を加え、核酸サーキットを回転させてシグナルを増幅させる工程と、
増幅されたシグナルを検出する工程とを備え、
前記鋳型核酸複合体が、N種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第N配列の塩基配列)の鋳型核酸と、当該鋳型核酸と二本鎖を形成し、第1配列〜第P配列に相補的な第1配列〜第P配列の塩基配列を含む核酸A及び第(P+1)配列〜第Q配列に相補的な第(P+1)配列〜第Q配列の塩基配列を含む核酸B(ここで、P、Q、Nは、1<P<P+1<Q<Nを満たす整数である。)とを含み、
前記トリガー核酸が、前記鋳型核酸の第R配列〜第S配列に相補的な第R配列〜第S配列の塩基配列(ここで、R、Sは、1<P+1<R≦Q<S≦Nを満たす整数である。)を含み、
前記燃料核酸が、前記鋳型核酸の第1配列〜第T配列に相補的な第1配列〜第T配列の塩基配列(ここで、Tは、R≦Tを満たす整数である。)を含むことを特徴とする細胞検出方法。
[態様2]
態様1に記載の細胞検出方法において、
前記シグナルを増幅させる工程では、更に、溶液中に放出された前記トリガー核酸及び前記核酸Aを利用して、核酸サーキットを多段的に回転させてシグナルを増幅させることを特徴とする細胞検出方法。
[態様3]
態様1又は2に記載の細胞検出方法において、
前記トリガー核酸と前記鋳型核酸との結合定数が、前記核酸Bと前記鋳型核酸との結合定数よりも高いことを特徴とする細胞検出方法。
[態様4]
態様1〜3のいずれか一に記載の細胞検出方法において、
前記燃料核酸と前記鋳型核酸との結合定数が、前記核酸Aと前記鋳型核酸との結合定数、及び前記トリガー核酸と前記鋳型核酸との結合定数よりも高いことを特徴とする細胞検出方法。
[態様5]
態様1〜4のいずれか一に記載の細胞検出方法に用いるためのキットであって、
前記標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合し、かつ、一本鎖核酸からなるタグ付きの核酸アプタマーと、
発シグナル分子とシグナル抑制分子とがそれぞれ修飾された核酸A及び核酸B、並びに鋳型核酸が形成するタンデム二本鎖中で、両修飾部位がシグナルを抑制するように近接位に位置する鋳型核酸複合体であって、当該鋳型核酸がN種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第N配列の塩基配列)を含み、当該核酸Aが第1配列〜第P配列に相補的な第1配列〜第P配列の塩基配列を含み、当該核酸Bが第(P+1)配列〜第Q配列に相補的な第(P+1)配列〜第Q配列の塩基配列を含む鋳型核酸複合体(ここで、P、Q、Nは、1<P<P+1<Q<Nを満たす整数である。)と、
前記タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の一部の塩基配列であって、かつ、前記鋳型核酸の第R配列〜第S配列に相補的な第R配列〜第S配列の塩基配列を含むトリガー核酸(ここで、R、Sは、1<P+1<R≦Q<S≦Nを満たす整数である。)、及び前記タグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含むマスク核酸からなるトリガー核酸複合体と、
前記鋳型核酸の第1配列〜第T配列に相補的な第1配列〜第T配列の塩基配列を含む燃料核酸(ここで、Tは、R≦Tを満たす整数である。)とを含むことを特徴とするキット。
本発明に係る細胞検出方法の一態様を示す概要図であり、(a)はがん細胞に応答したトリガー核酸の放出、(b)は放出されたトリガー核酸に伴う核酸サーキットの回転とシグナル増幅を示す。 鋳型核酸複合体における発シグナル分子及びシグナル抑制分子が修飾される部位の他の例を示す概要図である。 自己組織化単分子膜上に核酸アプタマーが修飾されたキャリアーの製造方法を示す図である。 担持層上に核酸アプタマーが直接結合しているキャリアーの製造方法を示す図である。 標的細胞捕捉キャリアーで捕捉した標的細胞及び正常細胞の蛍光観察写真である。 OligoAnalyzerによるEpCAMアプタマーの予測される二次元構造を示した図である。 放出されたトリガー核酸に伴う多段階核酸サーキットの回転とシグナル増幅を示す概要図である。 放出されたトリガー核酸に伴う多段階核酸サーキットの回転とシグナル増幅の他の例を示す概要図である。 実施例1における標的細胞及び正常細胞に対するタグ付EpCAMアプタマー及びマスク核酸の結合率を示すグラフである。 実施例1における標的細胞及び正常細胞の蛍光観察写真である。 実施例2における核酸サーキットによる細胞検出実験を示す概要図である。 実施例2における核酸サーキットの回転にともなう発光強度の変化を示すグラフである。 実施例3における燃料核酸の添加量に応じた発光強度の変化を示すグラフである。 実施例4にて使用したマイクロフィルタの概略構成を示す模式図である。 実施例4にて使用したマイクロフィルタデバイスの分解斜視図である。 実施例4にて使用したがん細胞を捕捉する細胞捕捉装置の概略図である。 実施例4にて細胞捕捉装置を用いてマイクロフィルタデバイスに捕捉されたがん細胞の蛍光観察写真である。 実施例4における核酸サーキットの回転にともなう発光強度の変化を示すグラフである。 実施例4における核酸サーキットの回転にともなうセル内の発光の様子を示す写真である。 実施例5におけるトリガー核酸の添加量に応じた発光強度の変化を示すグラフである。
<第1の実施形態>
[細胞検出方法]
本発明の細胞検出方法は、以下の工程を有する。
(工程1)標的細胞を含む溶液に一本鎖核酸からなるタグ付きの核酸アプタマーを加え、標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合させる工程
(工程2)タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の一部の塩基配列を含むトリガー核酸、及びタグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含むマスク核酸からなるトリガー核酸複合体を加え、当該トリガー核酸を放出させる工程
(工程3)放出されたトリガー核酸を含む溶液に、発シグナル分子とシグナル抑制分子とがそれぞれ修飾された核酸A及び核酸B、並びに鋳型核酸が形成するタンデム二本鎖中で、両修飾部位がシグナルを抑制するように近接位に位置する鋳型核酸複合体、及び燃料核酸を加え、核酸サーキットを回転させてシグナルを増幅させる工程
(工程4)増幅されたシグナルを検出する工程
ここで、鋳型核酸複合体は、N種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第N配列の塩基配列)の鋳型核酸と、当該鋳型核酸と二本鎖を形成し、第1配列〜第P配列に相補的な第1配列〜第P配列の塩基配列を含む核酸A及び第(P+1)配列〜第Q配列に相補的な第(P+1)配列〜第Q配列の塩基配列を含む核酸B(ここで、P、Q、Nは、1<P<P+1<Q<Nを満たす整数である。)とを含む。
トリガー核酸は、鋳型核酸の第R配列〜第S配列に相補的な第R配列〜第S配列の塩基配列(ここで、R、Sは、1<P+1<R≦Q<S≦Nを満たす整数である。)を含む。
燃料核酸は、鋳型核酸の第1配列〜第T配列に相補的な第1配列〜第T配列の塩基配列(ここで、Tは、R≦Tを満たす整数である。)を含む。
以下、各工程について、図1を用いて説明する。
(工程1)
工程1では、生体試料中の標的細胞を含む溶液に一本鎖核酸からなるタグ付きの核酸アプタマーを加え、当該核酸アプタマーを標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合させる。
標的細胞は、溶液中に懸濁した状態であってもよいし、後述するキャリアー上に捕捉された状態であってもよい。
標的細胞を懸濁させる溶媒としては、特に制限されないが、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられ、具体的には、D−PBS(−)(ダルベッコPBS(−))を使用できる。
生体試料としては、目的とする標的細胞を含む可能性のあるものであれば、種類は特に限定されない。例えば、生体試料としては、体液又は細胞単離液が挙げられる。
体液としては、血液(血液全体又は血漿)、リンパ液、組織液(組織間液、細胞間液、間質液)、体腔液(関節液、脳脊髄液、漿膜腔液、眼房水等)、消化液(唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液等)、汗、涙等が挙げられ、好ましくは血液(血液全体又は血漿)である。
細胞単離液とは、生体組織を公知の方法で単離・分散し、液体状にしたものを意味する。生体組織としては、特に限定されず、胃、腸、皮膚、肺、乳房、前立腺、精巣、卵巣、子宮、骨髄等、任意の生体組織を適宜対象として使用できる。生体組織の単離・分散のための試薬としては、例えば、トリプシン、パパイン、エラスターゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、又はこれらの混合物などの酵素を含む試薬が挙げられ、生体組織、細胞の種類に応じて適宜使用できる。例えば、トリプシン、コラゲナーゼ等の複数の酵素をセットとして含むCell Isolation Optimizing System(フナコシ株式会社製)などが挙げられる。
生体試料は、特に限定されないが、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット等の哺乳動物に由来するものが使用できる。
標的細胞としては、特に限定されないが、腫瘍細胞、その他の一般的な培養細胞、分化多能性細胞などが挙げられ、好ましくは腫瘍細胞である。腫瘍の種類としては、特に限定されず、脳悪性腫瘍、胃癌、肺癌、乳癌、咽頭癌、食道癌、大腸癌、肝癌、子宮癌、精巣癌、卵巣癌、膀胱癌、前立腺癌、基底細胞癌、悪性リンパ腫、白血病、神経膠腫等が挙げられる。腫瘍細胞としては、原発性腫瘍細胞、転移性腫瘍細胞、血中循環腫瘍細胞等が挙げられ、好ましくは血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell:CTC)である。
本発明の細胞検出方法は、シグナルを増幅して目的とする標的細胞を検出する。よって、生体試料中の標的細胞が低濃度であっても、検出することが可能である。
(工程2)
工程2では、タグ付核酸アプタマーが標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合した溶液中に、タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の一部の塩基配列を含むトリガー核酸、及びタグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含むマスク核酸からなるトリガー核酸複合体を加え、当該トリガー核酸を放出させる。
トリガー核酸複合体のマスク核酸は、トリガー核酸とよりも生体試料中の標的細胞の細胞表面物質と結合したタグ付核酸アプタマーのタグ構造のほうが安定な複合体を形成する。そのため、生体試料中の標的細胞の細胞表面物質に結合した核酸アプタマーのタグ部にトリガー核酸複合体が近接すると、トリガー核酸複合体のマスク核酸とタグ配列の相補結合が形成され、その結果、トリガー核酸がトリガー核酸複合体から放出される。
本発明の細胞検出方法では、アプタマー部位とトリガー放出部位は互いに独立している。トリガー核酸の放出は核酸アプタマーに付与したタグ部上で起こるものであり、この配列は自在に変更可能である。すなわち、本システムは、標的タンパクの情報を、タグの配列情報で置きなおす、任意のいわゆる「バイオバーコード」に変換し、その情報をそれぞれのトリガー核酸を介して増幅するシステムであるといえ、標的タンパクがEpCAMである場合に限定されず、汎用性も非常に高い。
バーコード化やシグナル増幅は、核酸の相補塩基対形成能に基づくものであり、互いに干渉しない配列であれば、複数の標的細胞に対して同時かつ独立にシグナル増幅を行うことも可能である。
(工程3)
工程3では、放出されたトリガー核酸を含む溶液に、発シグナル分子とシグナル抑制分子とがそれぞれ修飾された核酸A及び核酸B、並びに鋳型核酸が形成するタンデム二本鎖中で、両修飾部位がシグナルを抑制するように近接位に位置する鋳型核酸複合体、及び燃料核酸を加え、核酸サーキットを回転させてシグナルを増幅させる。
まず、発シグナル分子と、そのシグナル抑制分子を修飾した2種の核酸プローブを作製する。あらかじめ、互いの修飾部位が近接するような状態でそれらの相補鎖と二本鎖(鋳型核酸複合体)を形成させておく。放出されたトリガー核酸が、その鋳型核酸複合体中のtoehold部位をきっかけとし、鎖交換反応を引き起こす。その結果、シグナル抑制分子修飾プローブが鋳型核酸複合体から放出され、両者の近接が解消されることにより、発シグナル分子からのシグナルが回復する。
ここに燃料となる核酸(燃料核酸)を加えておくと、再びtoehold部位をきっかけとした鎖交換反応が起こり、発シグナル分子修飾プローブのみならずトリガー核酸も再度溶液中に放出され、トリガー核酸がフリーとなって溶液中に浮遊する。
溶液中に浮遊したトリガー核酸が、新たな鋳型核酸複合体と反応しシグナル抑制分子修飾プローブが鋳型核酸複合体から放出され、発シグナル分子プローブとの近接が解消されることにより、発シグナル分子からのシグナルが回復し、核酸サーキットが一巡することとなる。
すなわち、トリガー核酸は再利用可能であり、鋳型核酸複合体及び燃料核酸を過剰に入れておけば、標的細胞が少なく、放出されるトリガー核酸がわずかであっても、当該トリガー核酸が何度も新たな鋳型核酸複合体と反応し発シグナル分子が放出されることで、フリーな発シグナル分子の数が増加するため、強いシグナル応答を得ることができる。一連の反応は等温下で起こすことができる。
(工程4)
工程4では、上述のようにして増幅されたシグナルを検出する。
増幅シグナルは、肉眼又は分光分析装置等で検出することができる。その他にも、電気化学的活性な分子とそのサイレンサーの組み合わせを用いれば、電気化学的な検出も可能である。また、コロイド粒子、ナノ粒子等を修飾したプローブ二本鎖複合体をセンサーチップ上に化学修飾し、トリガーに応答して脱離させる仕組みとすれば、反射光(SPR)、重量(QCM)などの様々な分析法にも応用が可能である。
また、シグナルの検出に際し、シグナル強度が所定の閾値を超えた場合に生体試料中に標的細胞が検出されたと判定するようにしてもよい。これにより、生体試料や標的細胞ごとの検出精度のばらつきを抑えることができる。
[各種核酸材料]
次に、本発明の細胞検出方法に用いられる鋳型核酸複合体、トリガー核酸複合体、燃料核酸、タグ付核酸アプタマーについて説明する。
本発明において、「核酸」の種類は特に限定されず、DNA、RNA又はDNA−RNA複合体のいずれであってもよく、好ましくはDNAである。
鋳型核酸複合体は、N種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第N配列の塩基配列)の鋳型核酸と、当該鋳型核酸と二本鎖を形成し、第1配列〜第P配列に相補的な第1配列〜第P配列の塩基配列を含む核酸A及び第(P+1)配列〜第Q配列に相補的な第(P+1)配列〜第Q配列の塩基配列を含む核酸B(ここで、P、Q、Nは、1<P<P+1<Q<Nを満たす整数である。)とを含む。
トリガー核酸複合体は、トリガー核酸及びマスク核酸からなり、トリガー核酸は鋳型核酸の第R配列〜第S配列に相補的な第R配列〜第S配列の塩基配列(ここで、R、Sは、1<P+1<R≦Q<S≦Nを満たす整数である。)を含み、マスク核酸はタグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含む。
燃料核酸は、鋳型核酸の第1配列〜第T配列に相補的な第1配列〜第T配列の塩基配列(ここで、Tは、R≦Tを満たす整数である。)を含む。
以下では、鋳型核酸複合体における鋳型核酸の塩基配列として、簡便なモデルである4種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第4配列)を例にとって説明し、また、これに合わせてトリガー核酸複合体、燃料核酸、タグ付核酸アプタマーについても説明する。
(鋳型核酸複合体)
鋳型核酸が、4種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第4配列)である場合、核酸Aは、第1配列に相補的な第1配列の塩基配列を有し、核酸Bは、第2配列+第3配列に相補的な第2配列+第3配列の塩基配列を有する。
鋳型核酸複合体を構成する鋳型核酸、核酸A及び核酸Bのうち、二つの核酸には発シグナル分子とシグナル抑制分子とがそれぞれ修飾され、両修飾部位がシグナルを抑制するように近接位に位置している。
図1に示す例では、核酸Aの3’末端に発シグナル分子が修飾され、これと近接する位置である核酸Bの5’末端にシグナル抑制分子が修飾されて、発シグナル分子からの発光を抑制している。すなわち、トリガー核酸が鋳型核酸と複合体を形成し、シグナル抑制分子が修飾された核酸Bが放出されることで、核酸Aが修飾する発シグナル分子からのシグナルが回復することとなる。
なお、発シグナル分子及びシグナル抑制分子は、図2(a)に示すように、核酸Bの5’末端に発シグナル分子が修飾され、核酸Aの3’末端にシグナル抑制分子が修飾されていてもよいし、図2(b)に示すように、核酸Aの5’末端に発シグナル分子が修飾され、鋳型核酸の3’末端にシグナル抑制分子が修飾されていてもよいし、図2(c)に示すように、鋳型核酸の3’末端に発シグナル分子が修飾され、核酸Aの5’末端にシグナル抑制分子が修飾されていてもよい。
図2(a)に示す例では、トリガー核酸が鋳型核酸と複合体を形成し、発シグナル分子が修飾された核酸Bが放出されることで、発シグナル分子からのシグナルが回復する。図2(b)に示す例では、燃料核酸が鋳型核酸と複合体を形成し、発シグナル分子が修飾された核酸Aが放出されることで、発シグナル分子からのシグナルが回復する。図2(c)に示す例では、燃料核酸が鋳型核酸と複合体を形成し、シグナル抑制分子が修飾された核酸Aが放出されることで、鋳型核酸に修飾される発シグナル分子からのシグナルが回復する。
いずれの場合においても、上述したように、トリガー核酸に起因する鎖交換反応より核酸Bが放出され、燃料核酸に起因する鎖交換反応によりトリガー核酸と核酸Aとが放出されることにより、核酸サーキットが回転し、発シグナル分子修飾プローブからのシグナルが観測されることとなる。
発シグナル分子としては、肉眼又は分光分析装置等で検出可能な発光シグナルを発する分子、シクロデキストリンに包摂可能であり、電気化学的シグナルを発する分子、又はシクロデキストリンに包摂可能であり、電気化学発光可能な分子であれば、任意の分子を利用可能である。
発光性分子としては、例えば、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、5−カルボキシテトラメチルローダミン(5−TAMRA)、6−カルボキシテトラメチルローダミン(6−TAMRA)、5−(ジメチルアミノ)ナフタレン−1−スルホン酸(DANSYL)、5−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレセイン(5−HEX)、6−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレセイン(6−HEX)、5−カルボキシ−2’,4,7,7’−テトラクロロフルオレセイン(5−TET)、6−カルボキシ−2’,4,7,7’−テトラクロロフルオレセイン(6−TET)、5−カルボキシ−X−ローダミン(5−ROX)、6−カルボキシ−X−ローダミン(6−ROX)、インドカルボシアニン(Cy3)、インドカルボシアニン(Cy3.5)、インドカルボシアニン(Cy5)、インドカルボシアニン(Cy5.5)、4,4−ジフロロ−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン(BODIPY)、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、Texas Red、Texas Red−X、Oregon Green 514(Molecular Probes社)、Bodipy R6G−X(Molecular Probes社)、Rhodamine Red−X(Molecular Probes社)、Bodipy TR−X(Molecular Probes社)、LightCycler 640(Roche社)、Boidipy 630/650−X(Molecular Probes社)などが挙げられ、任意の公知の蛍光色素を利用可能である。
電気化学的シグナルを発する分子としては、例えば、フェロセン、メチレンブルー、ドーノマイシンなどが挙げられ、任意の公知の電気化学的活性分子を利用可能である。
電気化学発光分子としては、例えば、ルテニウムトリスフェナントロリン錯体などが挙げられ、任意の公知の電気化学発光性分子を利用可能である。
シグナル抑制分子としては、発シグナル分子の近傍に存在することによって、発シグナル分子からのシグナルを抑制することが可能な任意の分子を利用可能である。
例えば、消光性分子として、4−(4−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)、N−メチル−N−[4−[2−メトキシ−5−メチル−4−(2−ニトロ−4−メチルフェニルアゾ)フェニルアゾ]フェニル]−4−アミノ酪酸(BHQ1)、N−メチル−N−[4−[2,5−ジメトキシ−4−(4−ニトロフェニルアゾ)フェニルアゾ]フェニル]−4−アミノ酪酸(BHQ2)、4−(2−クロロ−4−ニトロフェニルアゾ)アニリン(Eclipse quencher)、BHQ3などが挙げられ、任意の公知の消光色素を利用可能である。
これらの消光色素の存在により、蛍光色素の蛍光放出が消光色素へのエネルギー移動により抑制され、蛍光色素の蛍光が検出できなくなる。具体的には、DABCYLは、FAM、TET、JOE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン)、HEX、Cy3(Amersham Biosciences社)、TAMRA、Cy3.5(Amersham Biosciences社)、ROX、Texas Redなどの蛍光色素の蛍光放出を消光し、BHQ1は、FAM、Oregon Green 514、TET、Bodipy R6G−X、JOE、HEX、Cy3、Rhodamine Red−X、TAMRAなどの蛍光色素の蛍光放出を消光し、BHQ2、BHQ3及びEclipse quencherは、HEX、Cy3、Rhodamine Red−X、TAMRA、Cy3.5、ROX、Texas Red−X、Bodipy TR−X、LightCycler 640、Boidipy 630/650−X、Cy5(Amersham Biosciences社)などの蛍光色素の蛍光放出を消光する。また、電気化学及び電気化学発光シグナルの抑制分子としては、シクロデキストリン類などの包摂化合物を利用可能である。
(トリガー核酸複合体)
トリガー核酸複合体は、タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の一部の塩基配列からなるトリガー核酸、及びタグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含むマスク核酸から構成される。
鋳型核酸が、4種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第4配列)である場合、トリガー核酸は、第3配列+第4配列に相補的な第3配列+第4配列の塩基配列を有する。
一方、マスク核酸は、トリガー核酸の第3配列+第4配列に相補的な第3配列+第4配列(タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の塩基配列に相補的な塩基配列)を含み、かつ、トリガー核酸よりも長い塩基配列を有している。トリガー核酸よりも長い塩基配列部分(第3配列+第4配列以外の塩基配列部分)は、後述するタグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の塩基配列同様に自由に設計可能である。
このとき、第3配列+第4配列の塩基配列を有するトリガー核酸と鋳型核酸との結合定数は、核酸Bと鋳型核酸との結合定数よりも高くなるように設計される。例えば、トリガー核酸と鋳型核酸との間に形成される水素結合数が、核酸Bと鋳型核酸との間に形成される水素結合数よりも多くなるように設計されることが好ましい。
本発明において、結合定数が高いとは、熱安定性が高いことを意味する。熱安定性は、同じ測定条件下で、二本鎖複合体が一本鎖核酸になる温度(融解温度Tm)を用いて評価することができる。融解温度Tmは、温度条件を変化させながら波長260nmにおける吸光度を測定し、得られた温度−吸光度プロットにおける変曲点から算出する。
(燃料核酸)
鋳型核酸が、4種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第4配列)である場合、燃料核酸は、第1配列〜第3配列に相補的な第1配列〜第3配列の塩基配列を有している。
このとき、第1配列+第2配列+第3配列の塩基配列を有する燃料核酸と鋳型核酸との結合定数は、核酸Aと鋳型核酸との結合定数、及びトリガー核酸と鋳型核酸との結合定数よりも高くなるように設計される。例えば、燃料核酸と鋳型核酸との間に形成される水素結合数は、核酸Aと鋳型核酸との間に形成される水素結合数、及びトリガー核酸と鋳型核酸との間に形成される水素結合数よりも多くなるように設計されることが好ましい。
(タグ付核酸アプタマー)
「アプタマー」(Aptamer)とは、特定の分子と特異的に結合する核酸やペプチドである。通常ランダム配列の巨大ライブラリ中から選び出してくるが、自然界にも存在しておりリボスイッチとして知られている。基礎から薬剤探索などの応用まで幅広く研究されている。リボザイムと複合体化したアプタマーも存在しており、ターゲット分子存在下で自己切断するものが知られている。大きく分けると核酸(DNA、RNA)アプタマー、ペプチドアプタマーの2種に分類される。
核酸アプタマーは進化工学的に得られており、その手法はインビトロ選択法、又はSELEX法として知られている。有機小分子や蛋白質、核酸、細胞、組織、微生物といった様々な標的と特異的に結合するものが存在する。核酸アプタマーは抗体に代わる分子認識が可能な生体物質として、生物工学的応用、薬剤への応用が検討されている。核酸アプタマーは核酸自動合成装置で、化学的に、しかも短時間で合成可能であり、免疫原性もほとんどない点が抗体にはない利点である。核酸アプタマーとしてRNAとDNAとの間に本質的な違いは存在しないが、DNAの方が化学的に安定である。DNA及びRNAアプタマーの両者とも、様々な分子に対して高い親和性と特異性を示す。
核酸アプタマーは化学合成が可能であるため、コストを大幅に下げることができる。
核酸アプタマーは、標的細胞の種類に応じて、当該標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合するものを適宜選択できる。核酸アプタマーは、特に限定されないが、細胞接着分子などの膜タンパク質に対する核酸アプタマーである。
例えば、標的細胞が血中循環腫瘍細胞(CTC)の場合、CTCの細胞表面物質である、上皮細胞接着分子(EpCAM:Epithelial Cell Adhesion Molecule)に対する核酸アプタマーを利用可能である。例えば、Analytical Chemistry,2013,85,p.4141−4149を参照されたい。当該文献には、SYL1、SYL2、SYL3,SYL4及びSYL3Cの5種類の核酸アプタマーが記載されている。その中でも、SYL3の部分配列であるSYL3Cの配列が、EpCAMに対する特異性が高く望ましい。
EpCAMアプタマー(SYL3C):
5’−CACTACAGAGGTTGCGTCTGTCCCACGTTGTCATGGGGGGTTGGCCTG−3’(配列番号8)
CTCの検出には、その他にも以下のような配列を有する核酸アプタマーが利用可能である。(以下、塩基配列の記載において、特に明記しない限り5’から3’の向きに記載する。)
EpCAMアプタマー(EP166):AACAGAGGGACAAACGGGGGAAGATTTGACGTCGACGACA(配列番号9)(Mol.Cells,37,742−746(2014))
EpCAMアプタマー(EpDT3):GCGACUGGUUACCCGGUCG(配列番号10)(Cancer Sci.,102,991−998(2011))
MUC1アプタマー(MUC1 S1.3):GCAGTTGATCCTTTGGATACCCTGG(配列番号11)(Tumor Biol.,27,289−301(2006))
EGFRアプタマー:GGCGCUCCGACCUUAGUCUCUGUGCCGCUAUAAUGCACGGAUUUAAUCGCCGUAGAAAAGCAUGUCAAAGCCGGAACCGUGUAGCACAGCAGAGAAUUAAAUGCCCGCCAUGACCAG(配列番号12)(Cancer Res.,70,9371−9380(2010))
EGFRアプタマー(TuTu22):TACCAGTGCGATGCTCAGTGCCGTTTCTTCTCTTTCGCTTTTTTTGCTTTTGAGCATGCTGACGCATTCGGTTGAC(配列番号13)(Biochem.Biophys.Res.Commun.,453,681−685(2014))
EGFRvIIIアプタマー(U2):ATCCAGAGTGACGCAGCATTTTGACGCTTTATCCTTTTCTTATGGCGGGATAGTTTCGTGGACACGGTGGCTTAGT(配列番号14)(PLOS ONE,9,e90752(2014))
HER2アプタマー(2−2):GCACGGTGTGGGG(配列番号15)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,110,8170−8175(2013))
HER2アプタマー(S6):TGGATGGGGAGATCCGTTGAGTAAGCGGGCGTGTCTCTCTGCCGCCTTGCTATGGGG(配列番号16)(Bull.Korean Chem.Soc.,30,1827−1831(2009))
HER2アプタマー(Mini):AGCCGCGAGGGGAGGGAUAGGGUAGGGCGCGGCU(配列番号17)(Nucleic.Acid Ther.,21,173−178(2011))
HER2アプタマー(HSB5):AACCGCCCAAATCCCTAAGAGTCTGCACTTGTCATTTTGTATATGTATTTGGTTTTTGGCTCTCACAGACACACTACACACGCACA(配列番号18)(J.Transl.Med.,10,148−158(2012))
ABCG2アプタマー(ABCG2/A12):ACGCTCGGATGCCACTACAGGCCCACCCTCATGGACGTGCTGGTGAC(配列番号19)(J.Cancer Sci.Ther.,4,214−222(2012))
CD71アプタマー(c2.min):GGGGGAUCAAUCCAAGGGACCCGGAAACGCUCCCUUACACCCC(配列番号20)(Mol.Ther.Nucleic Acids,1,e21(2012))
CD44アプタマー(Apt1):GGGAUGGAUCCAAGCUUACUGGCAUCUGGAUUUGCGCGUGCCAGAAUAAAGAGUAUAACGUGUGAAUGGGAAGCUUCGAUAGGAAUUCGG(配列番号21)(Nucleic Acid Ther.,23,401−407(2013))
CD133アプタマー(CD133−A15):CCCUCCUACAUAGGG(配列番号22)(Cancer Lett.,330,84−95(2013))
免疫グロブリンμ重鎖アプタマー(TD05):ACCGGGAGGATAGTTCGGTGGCTGTTCAGGGTCTCCTCCCGGTG(配列番号23)(Mol.Cell.Proteomics,2230−2230(2007))
ヌクレオリンアプタマー(AS1411):GGTGGTGGTGGTTGTGGTGGTGGTGG(配列番号24)(Mol.Cancer Ther.,5,1790−1799(2006))
ピグペンアプタマー(III.1):ATACCAGCTTATTCAATTAGGCGGTGCATTGTGGTGGTAGTATACATGAGGTTTGGTTGAGACTAGTCGCAAGATATAGATAGTAAGTGCAATCT(配列番号25)(J.Biol.Chem.,276,16464−16468(2001))
テナシンCアプタマー(GBI−10):GGCTGTTGTGAGCCTCCTCCCAGAGGGAAGACTTTAGGTTCGGTTCACGTCCCGCTTATTCTTACTCCC(配列番号26)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100,15416−15421(2003))
PTK7アプタマー(sgc8):ATCTAACTGCTGCGCCGCCGGGAAAATACTGTACGGTTAGA(配列番号27)(J.Proteome Res.,7,2133−2139(2008))
Toledo細胞アプタマー(Sgd5):ATACCAGCTTATTCAATTATCGTGGGTCACAGCAGCGGTTGTGAGGAAGAAAGGCGGATAACAGATAATAAGATAGTAAGTGCAATCT(配列番号28)(Clin.Chem.,53,1153−1158(2007))
MEAR細胞アプタマー(TLS11a):ACAGCATCCCCATGTGAACAATCGCATTGTGATTGTTACGGTTTCCGCCTCATGGACGTGCTG(配列番号29)(Anal.Chem.,80,721−728(2008))
CTC以外の腫瘍細胞、例えば、急性骨髄性白血病等の検出には、例えば以下に記載の核酸アプタマーを利用可能である。
Siglec−5アプタマー(K19):AAGGGGTTGGGTGGGTTTATACAAATTAATTAATATTGTATGGTATATTT(配列番号30)(J.Hematol.Oncol.,7,5(2014))
HL60細胞アプタマー(KH1C12):ATCCAGAGTGACGCAGCATGCCCTAGTTACTACTACTCTTTTTAGCAAACGCCCTCGCTTTGGACACGGTGGCTTAGT(配列番号31)(Leukemia,23,235−244(2009))
ビメンチンアプタマー(NAS−24):CTCCTCTGACTGTAACCACGCCTGGGACAGCCACACAGAAGTGTAGACCTCGCGGAATCGGCATAGGTAGTCCAGAAGCC(配列番号32)(Nucleic Acid Ther.,24,160−170(2014))
腫瘍細胞以外の標的細胞、例えば、バクテリア等の検出には、例えば以下に記載の核酸アプタマーを利用可能である。
In1Aアプタマー(A8):ATCCATGGGGCGGAGATGAGGGGGAGGAGGGCGGGTACCCGGTTGAT(配列番号33)(J.Appl.Microbiol.,109,808−817(2010))
本発明に係るタグ付核酸アプタマーは、従来の核酸アプタマーにスペーサー部を介してタグ部が連結されている。
スペーサー部及びタグ部の塩基配列は、自由に設計可能であるが、トリガー核酸複合体におけるトリガー核酸の塩基配列を含み、また、マスク核酸の塩基配列に相補的な塩基配列を含む。
タグ付核酸アプタマーのタグ部の塩基配列の長さは、トリガー核酸の塩基配列よりも長くなるように設計され、タグ部とマスク核酸とが安定的に結合することにより、トリガー核酸複合体からトリガー核酸が放出されるようになっている。
[キット]
本発明の生体試料中の標的細胞を検出する細胞検出方法に用いるキットは、標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合し、かつ、一本鎖核酸からなるタグ付きの核酸アプタマーと、発シグナル分子とシグナル抑制分子とがそれぞれ修飾された核酸A及び核酸B、並びに鋳型核酸とが形成するタンデム二本鎖中で、両修飾部位がシグナルを抑制するように近接位に位置する鋳型核酸複合体であって、当該鋳型核酸がN種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第N配列の塩基配列)を含み、当該核酸Aが第1配列〜第P配列に相補的な第1配列〜第P配列の塩基配列を含み、当該核酸Bが第(P+1)配列〜第Q配列に相補的な第(P+1)配列〜第Q配列の塩基配列を含む鋳型核酸複合体(ここで、P、Q、Nは、1<P<P+1<Q<Nを満たす整数である。)と、タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の一部の塩基配列であって、かつ、鋳型核酸の第R配列〜第S配列に相補的な第R配列〜第S配列の塩基配列を含むトリガー核酸(ここで、R、Sは、1<P+1<R≦Q<S≦Nを満たす整数である。)、及びタグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含むマスク核酸からなるトリガー核酸複合体と、鋳型核酸の第1配列〜第T配列に相補的な第1配列〜第T配列の塩基配列を含む燃料核酸(ここで、Tは、R≦Tを満たす整数である。)とを含む。
本発明のキットは、例えば、上記各種材料をそれぞれ異なる容器に収容するように構成してもよく、例えば、タグ付核酸アプタマーを収容する容器A、トリガー核酸複合体を収容する容器B、鋳型核酸複合体を収容する容器C、燃料核酸を収容する容器Dとして構成してもよい。
キットに含まれるタグ付核酸アプタマー、鋳型核酸複合体、トリガー核酸複合体及び燃料核酸については、上述したとおりである。
本発明のキットは、更に、後述する標的細胞を捕捉するためのキャリアーを含んでもよい。
[キャリアー]
本発明の細胞検出方法において、溶液中の標的細胞はキャリアーに捕捉されていてもよい。
標的細胞をキャリアーへ捕捉するための態様は、特に限定されない。標的細胞に特異的な核酸アプタマー、抗体等を利用可能である。好ましくは、目的とする細胞の細胞表面物質に特異的に結合する核酸アプタマー又は抗体によって、キャリアーに捕捉されている。
本発明の細胞検出方法は、生体試料由来の標的細胞をキャリアーに捕捉する工程を更に含んでもよい。
標的細胞を捕捉するためのキャリアーの態様は特に限定されない。キャリアーとしては、例えば、
(i)元素周期表第10族元素、第11族元素及びこれらの組み合わせから選択される元素を含む担持層と、
(ii)当該担持層上に設けられている自己組織化単分子膜と、
(iii)当該担持層上に直接、又は当該自己組織化単分子膜を介して設けられており、標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合する核酸アプタマー又は抗体と、
を備えたものを利用可能である。
本発明の一態様において、自己組織化単分子膜は、一方の末端基が担持層を構成する元素と結合しており、担持層に結合していない側の末端基の少なくとも一部が、核酸アプタマー又は抗体と結合している。
担持層は、元素周期表第10族元素、第11族元素及びこれらの組み合わせから選択される元素を含む金属基板、又は金属、ガラス、プラスチック、紙などの支持基板の少なくとも一面に上記元素をメッキ、蒸着、スパッタリングなどの公知の方法を用いて成膜したものでよい。また、ニッケル系合金(例えば、ニッケル−コバルト、ニッケル−リンなど)、クロム系合金、スズ系合金などで支持基板をメッキした後に、元素周期表第10族元素、第11族元素及びこれらの組み合わせから選択される元素を電鋳により成膜して、担持層を形成してもよい。いずれの成膜方法において、支持基板は特に限定されず、担持層の少なくとも表面に元素周期表第10族元素、第11族元素及びこれらの組み合わせから選択される元素を有していればよく、特に金、白金、銀、パラジウム、銅及びこれらの組み合わせからなる群から選択される元素を含むことが好ましい。
標的細胞をキャリアーに捕捉するための核酸アプタマーは、特に限定されず、タグ付核酸アプタマーを構成する核酸アプタマーと同一であっても異なっていてもよい。
細胞をキャリアーに捕捉するための抗体も、特に限定されるわけではない。標的細胞がCTCである場合には、上皮細胞接着分子(EpCAM:Epithelial Cell Adhesion Molecule)に対する抗体を好適に挙げることができる。例えば、abcam製カタログNo.ab32392で入手可能なウサギ抗ヒトEpCAMモノクローナルIgG抗体などを挙げることができる。また、標的細胞がCTCでない場合も、標的細胞表層に発現しているタンパク質を介して、特異的に捕捉することができる。例えば、急性骨髄性白血病を発症している白血球を捕捉する場合、abcam製カタログNo.ab97426を用いればよい。
本発明の細胞検出方法に使用可能なキャリアーの例を図3及び図4に示す。
図3は、アプタマー又は抗体33が自己組織化単分子膜32に化学的に結合した状態で担持層31に設けられている態様である。図4は、アプタマー又は抗体33が担持層31に直接、化学的に結合している態様である。図示した態様において、アプタマー又は抗体33、及び/又は、自己組織化単分子膜32は、チオール結合により担持層31を構成する元素と結合している。
自己組織化単分子膜32は、一方の末端にチオール基を含み、他方の末端にカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、又はN−ヒドロキシスクシンイミド基を含む。これらの官能基で末端が修飾されているポリエチレングリコール膜又はヒドロキシアルカンチオール膜から形成することができる。ヒドロキシアルカンチオールとしては、例えば、ヒドロキシ−EG6−ウンデカンチオール、ヒドロキシ−EG3−ウンデカンチオール、6−メルカプト−1−ヘキサノール(HHT)、スルホベタイン3−ウンデカンチオール(SB3UT、双生イオン型)、ヒドロキシ−EG3−ヘキサデカンチオール(H−EG3HDT)等を好適に挙げることができるが、これらに限定されない。
自己組織化単分子膜32にアプタマー又は抗体33が結合している態様では、自己組織化単分子膜32の末端のカルボキシ基又はヒドロキシ基を活性化するために官能基で修飾した後に、当該官能基をアプタマー又は抗体33で置換してもよい。限定されないが、自己組織化単分子膜32の末端基を修飾する官能基は、N−ヒドロキシスクシンイミド基又はマレイミド基であることが好ましい。
自己組織化単分子膜32の末端がN−ヒドロキシスクシンイミド基の場合、アミノ化アプタマー又は抗体33のアミノ基と反応させて、これらを自己組織化単分子膜32に結合させることができる。自己組織化単分子膜32の末端がアミノ基の場合、例えば化学合成したN−ヒドロキシスクシンイミド化アプタマー、又は、カルボキシ末端をN−ヒドロキシスクシンイミド化した抗体を、自己組織化単分子膜32に結合させることができる。
自己組織化単分子膜32の末端がアミノ基の場合、これを更にマレイミド化して、自己組織化単分子膜32の末端を修飾する官能基をマレイミド基としてもよい。特に限定されないが、具体的には、片方の端にN−ヒドロキシスクシンイミド基を有し、もう一方の端にマレイミド基を有する二価性試薬、例えば、N−(6−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド(EMCS)(例えば、株式会社同仁化学研究所より入手可能)を、末端にアミノ基を有する自己組織化単分子膜32と反応させると、自己組織化単分子膜32の末端を修飾する官能基がマレイミド基となる。この場合、化学合成したチオール化アプタマー、又は、チオール基を有する抗体(システイン残基を有する抗体)を、自己組織化単分子膜32に結合させることができる。
アプタマー又は抗体33で置換されなかった官能基が残存することもある。アプタマーが結合しなかった官能基、例えばN−ヒドロキシスクシンイミド基は水中で分解し、自己組織化単分子膜32の末端としてはヒドロキシ基又はカルボキシ基が残る。自己組織化単分子膜32の末端基がマレイミド基で修飾されている場合には、アプタマーが結合しなかったマレイミド基は自己組織化単分子膜32の末端基として残る。残ったマレイミド基は、一方の末端にSH基を有し、他方の末端がメトキシ基(−OCH)、カルバモイル基(−CONH)、メチルカルバモイル基(−CONHCH)及びヒドロキシ基(−OH)を有するキャッピング剤でキャッピングすることが必要となる。
自己組織化単分子膜32の末端基のうち、アプタマー又は抗体33が結合していない末端基がN−ヒドロキシスクシンイミド基である場合、その全部又は一部は、一方の末端にNH2基を有し、他方の末端がメトキシ基(−OCH)、カルバモイル基(−CONH)、メチルカルバモイル基(−CONHCH)及びヒドロキシ基(−OH)から選択される基を有するキャッピング剤でキャップされていることがより好ましい。
自己組織化単分子膜32の末端基のうち、アプタマー又は抗体33が結合していない末端基がアミノ基である場合、その全部又は一部は、一方の末端にN−ヒドロキシスクシンイミド基を有し、他方の末端がメトキシ基(−OCH)、カルバモイル基(−CONH)、メチルカルバモイル基(−CONHCH)及びヒドロキシ基(−OH)から選択される基を有するキャッピング剤でキャップされていることがより好ましい。
上記のように、アプタマー又は抗体33が結合していない末端基をキャップすることで、標的細胞以外の細胞との非特異的結合を抑制することができ、より確実に標的細胞のみを捕捉することができる。
[本発明の一態様]
以下、本発明の細胞検出方法の一態様について説明するが、特にこれに限定されるものではない。
(i)細胞の非特異的な吸着を抑制するために、まず、基板上にポリエチレングリコール誘導体SAM膜を形成させた後、その上にEpCAMアプタマーを修飾する。
(ii)腫瘍細胞を含むサンプル溶液を修飾基板上に滴下し、標的とする腫瘍細胞を選択的に捕捉する。
(iii)洗浄後、PBS中で調製したタグ付EpCAMアプタマー溶液を基板に滴下する。さらに、これをPBSで洗浄した後、PBS中で調製したトリガー核酸及びマスク核酸が部分的に二本鎖を形成した複合体溶液を滴下する。基板上に捕捉された細胞上のタグ付EpCAMアプタマーにおけるタグ部とマスク核酸との結合に伴い、トリガー核酸が放出される。
(iv)放出されたトリガー核酸がきっかけとなり、シグナル増幅反応が進行する。蛍光や電気化学的ラベル化のみならず、SPR、QCMなどの分析手法が利用できるため、リアルタイムなモニタリングによって速度論的な解析を行うことも可能となる。
各ステップにおける詳細な検討内容は以下のとおりである。
(i)基板上へのアプタマー修飾したキャリアーの製造
担持層として銅基板上に金メッキを施し、自己組織化単分子膜としてヒドロキシアルカンチオール膜を成膜し、核酸アプタマーとして末端アミノ化アプタマーを結合させた、アプタマー修飾されたキャリアーを利用可能である。
自己組織化単分子膜の末端に官能基を導入した後、必要に応じ、末端アミノ化アプタマーとキャッピング剤(メトキシ基(−OCH)、カルバモイル基(−CONH)、メチルカルバモイル基(−CONHCH)基、又はヒドロキシ基(−OH)などを含む)を添加することによって、官能基のキャッピングを行ってもよい。
(ii)腫瘍細胞の基板への捕捉効率の評価
腫瘍細胞を含むサンプル溶液を修飾基板(キャリアー)上に滴下し、標的とする腫瘍細胞を選択的に捕捉する。使用する細胞の核はDAPIで細胞膜はDiDで染色し、蛍光顕微鏡にて細胞を確認する。図5に示すように、腫瘍細胞検出を試みた結果、選択的に腫瘍細胞を捕捉することに成功している。
標的細胞であるMDA−MB−453(ヒト乳癌細胞)及びKATOIII(ヒト胃癌由来細胞)の捕捉は確認されたが、正常細胞であるHEK−293T(ヒト胎児腎由来細胞)では確認されなかった。なお、比較例として、アプタマー修飾していないキャリアー上にMDA−MB−453(ヒト乳癌細胞)を滴下した場合についても腫瘍細胞検出を試みたが、細胞の捕捉は確認されなかった。以上から、標的とするがん細胞の特異的捕捉を確認した。
(iii)腫瘍細胞に応答したトリガー核酸の放出効率の評価
OligoAnalyzerにより、EpCAMアプタマーは、図6に示すように三つのへアピンループを有する構造を形成することが予測されている。タグ付EpCAMアプタマーは、末端からスペーサー部を介してタグ部を連結させる。
細胞上でのトリガー核酸の放出は、タグ付EpCAMアプタマーにおけるタグ部とマスク核酸との結合から確認する。具体的には、まず核をHoechst33342により染色した細胞上にタグ付EpCAMアプタマーを結合させ、洗浄後、そこにFAMを修飾したマスク核酸とトリガー核酸から構成される二本鎖複合体(トリガー核酸複合体)を添加する。FAMで染色された細胞を観察することにより、トリガー核酸の放出効率を評価する。
マスク核酸の標的細胞に対する結合率は、(FAMによる染色細胞数/Hoechst33342による染色細胞数)×100にて算出する。
(iv)トリガー核酸によるシグナル増幅効率の評価
放出された一本鎖をトリガーとして核酸サーキットを回転させてシグナルを増幅させる。条件検討の段階では、実際に腫瘍細胞によって放出されたトリガー核酸ではなく、細胞数個〜数十個から放出されると想定される量(amol〜fmol(pM〜nM)オーダー)のトリガー核酸を用いて実験を行う(体積は、100μL程度とする)。
蛍光色素と、消光色素を修飾した2種の核酸プローブを作製する。あらかじめ、互いの修飾部位が近接するような状態でそれらの相補鎖とタンデム二本鎖複合体(鋳型核酸複合体)を形成させておく(蛍光オフ)。タグ付EpCAMアプタマーが腫瘍細胞に応答し放出されたトリガー核酸は、鋳型核酸複合体末端のtoehold部位をきっかけとし、鎖交換反応を引き起こす。結果、消光色素修飾プローブが鋳型核酸複合体から放出され、蛍光プローブが発光する。ここにサーキットを回転させるための燃料となる核酸(燃料核酸)を加えておくと、再びtoehold部位をきっかけとしたエントロピー駆動型の鎖交換反応が起こり、蛍光プローブのみならずトリガー核酸も再度溶液中に放出され、トリガー核酸が再利用可能となる。鋳型核酸複合体及び燃料核酸を過剰に加えておけば、わずかなトリガー核酸(すなわち、わずかなEpCAM、わずかなCTC)から強いシグナル応答を得ることができる。
(v)血液マトリックス中での腫瘍細胞捕捉実験とその検出実験
血清培地中での実験で得られた最適条件を元に、血液(全血)マトリックス中で腫瘍細胞捕捉実験を行う。実際の患者の血液を想定し、これと同等な腫瘍細胞濃度(10mL中に数個の腫瘍細胞)となるように、血液に対して腫瘍細胞を混合し、これを捕捉実験に用いる。必要があれば、遠心分離により、血球成分と血漿成分とを別け、血球成分を用いる。最適化された条件により実際に腫瘍細胞を捕捉する。洗浄後、溶媒中でタグ付EpCAMアプタマーを一定時間のインキュベーション後、シグナル増幅を実行するためのトリガー核酸複合体、プローブ二本鎖複合体(鋳型核酸複合体)、燃料核酸を最小体積で加え、トリガー核酸の放出、及びシグナル増幅を行う。
本発明は、一態様として、腫瘍細胞に応答しシグナルを増幅する核酸サーキットを回転させる手法を含む。以下に、一態様としてキャリアー上に捕捉された腫瘍細胞の検出シグナルを増幅する方法の概要を記載する。
細胞懸濁液をEpCAMアプタマー修飾キャリアーと接触させ、細胞を捕捉した後、洗浄する。続いて、タグ付EpCAMアプタマー溶液を別途調製し、これをキャリアーと一定時間接触させる。細胞を洗浄後、当該細胞にトリガー核酸及びマスク核酸からなるトリガー核酸複合体を一定時間接触させ、この上澄みを回収する。
キャリアー上に捕捉された標的細胞膜上のEpCAMと結合したタグ付EpCAMアプタマーのタグ部との反応に伴い、トリガー核酸複合体は解離し、マスク核酸がタグ部と結合して、トリガー核酸がこの回収溶液中に一本鎖として遊離する。続いて、蛍光色素と消光色素を修飾した2種の核酸プローブが互いの修飾部位が近接するように(蛍光オフ)、それらの相補鎖とタンデム二本鎖複合体を形成した鋳型核酸複合体を用意し、このプローブ溶液を上記回収した溶液と混合する。
遊離したトリガー核酸が、鋳型核酸複合体末端のtoehold部位をきっかけとし、鎖交換反応を引き起こす。結果、消光色素修飾プローブが鋳型核酸複合体から遊離し、蛍光プローブが発光する。さらに、サーキットを回転させるための燃料核酸溶液をこれに加えることで、燃料核酸がエントロピー駆動型の鎖交換反応を起こし、蛍光プローブのみならずトリガー核酸も遊離する(トリガー核酸の再生)。すなわち、トリガー核酸は、新しい鋳型核酸複合体と次のサーキットを開始することが可能な状態になる。よって、鋳型核酸複合体及び燃料核酸を過剰に加えておけば、このサイクルは何度も繰り返されるため、わずかなトリガー核酸(すなわち、わずかな標的細胞)から強いシグナル応答を得ることができる。同反応を用いれば、PCRのようにサーマルサイクルを必要とせず、等温条件下、酵素フリーでシグナルを増幅させることが可能である。
また、キャリアーとして、赤血球(約7μm)や白血球(約15μm)などの正常細胞の寸法よりも大きな直径(20μm程度)の穴のあいたフィルター状の構造物、平面上に複数の微小なピラーを有する構造物、渦巻状の立体構造物などを用いることで、血液(全血)マトリックス中から標的癌細胞の捕捉を行うことが可能となる。その他、特開2017−083265号公報、特開2017−083266号公報に記載の標的細胞捕捉装置やPCT/JP2020/019715に記載の標的細胞捕捉フィルターを用いることも可能である。必要があれば、遠心分離により、血球成分と血漿成分とを別け、血球成分を用いる。捕捉後、PBSでキャリアーを洗浄し、タグ付EpCAMアプタマーと一定時間接触させて洗浄した後、トリガー核酸及びマスク核酸からなるトリガー核酸複合体及び燃料核酸を混合し、一定時間インキュベーションする。この混合溶液の発光をみることで簡易に血中の微量ながん細胞を検出することが可能となる。
本発明の細胞検出方法により、微量なCTCから多くのシグナルを得ることが可能となる。また、発シグナル反応及びシグナル増幅反応は、細胞上ではなく、トリガー核酸複合体から放出されたトリガー核酸を含む溶液中で起こるため、従来のように細胞一つ一つを直接観察する必要がない。例えば、蛍光色素とその消光色素とを修飾した2種の核酸プローブを用いた場合では、CTCを含む溶液がCTCに応答して発光する仕組みとなっており、目視又は汎用の分光器で簡便に検出できることが予想される。なお、一連の反応はCTCに応答して、等温下、自発的に進行するため、実験者は細胞に対してこれらの試薬を混ぜるだけでよい。その他にも、電気化学的活性な分子とそのサイレンサーの組み合わせを用いれば、電気化学的な検出も可能である。また、コロイド粒子、ナノ粒子等を修飾したプローブ二本鎖複合体をセンサーチップ上に化学修飾し、トリガーに応答して脱離させる仕組みとすれば、SPRやQCMなどの様々な分析法にも応用が可能であり、汎用性の高い手法である。
以上のように、本発明の細胞検出方法は、低コストかつ簡便な操作で迅速にCTC等の標的細胞の検出が行える仕組みとなっている。よって、病院などで行われる患者への予後の経過診断のみならず、職場や学校で行われる定期健診のような場で患者を発見するための診断にも貢献できることが想定される。また、標的細胞の捕捉と検出を既存のシステムよりも迅速に行えるため、癌患者への外科手術中に病巣摘出の奏功を判断するための検査にも利用することが可能である。超高齢社会の進展による医療費の高騰という課題に対しても癌の早期発見による利点は大きく、同総合システムは、社会のニーズに対して時適を得ており、将来性も高い。
<第2の実施形態>
第2の本実施形態に係る細胞検出方法について説明する。なお、上記第1の実施形態と重複する記載については省略する。
本実施形態が上記第1の実施形態と異なる点は、核酸サーキットを多段的に回転させてシグナルを増幅させる点である。
まず、多段階核酸サーキットの材料として、2種の鋳型核酸複合体を準備する。
例えば、第1の鋳型核酸複合体は、6種類のセグメントが連結した配列(第1b配列〜第1d配列+第2配列〜第4配列)を有する第1の鋳型核酸と、第1b配列〜第1d配列に相補的な第1b配列〜第1d配列の塩基配列を含む第1a配列〜第1d配列を有する第1の核酸Aと、第2配列+第3配列に相補的な第2配列+第3配列の塩基配列を有する第1の核酸Bとが二本鎖を形成した複合体である。
第2の鋳型核酸複合体は、5種類のセグメントが連結した配列(第6配列+第5配列+第1a配列〜第1c配列)を有する第2の鋳型核酸と、第6配列に相補的な第6配列の塩基配列を有する第2の核酸Aと、第5配列+第1a配列+第1b配列に相補的な第5配列+第1a配列+第1b配列の塩基配列を有する第2の核酸Bとが二本鎖を形成した複合体である。
それぞれの鋳型核酸複合体において、発シグナル分子は核酸Aの3’末端に修飾され、シグナル抑制分子は核酸Bの5’末端に修飾されているものとする。
また、燃料核酸として、第1の鋳型核酸複合体における第1b配列〜第1d配列+第2配列〜第3配列に相補的な第1b配列〜第1d配列+第2配列〜第3配列の塩基配列を有する第1の燃料核酸、第2の鋳型核酸複合体における第6配列+第5配列+第1a配列+第1b配列に相補的な第6配列+第5配列+第1a配列+第1b配列の塩基配列を有する第2の燃料核酸を準備する。
続いて、多段階核酸サーキットのメカニズムについて説明する。なお、トリガー核酸と発シグナル分子修飾プローブとが溶液中に放出されるまでは、第1の実施形態と同様のプロセスであるためその説明を省略し、2段階目の核酸サーキットから説明する。
図7に示すように、2段階目の核酸サーキットでは、1段階目の核酸サーキットにおいて溶液中に放出された発シグナル分子修飾プローブ(第1の核酸A)をトリガーとして利用し、この核酸サーキットを回転させる。
具体的には、第1の鋳型核酸複合体から放出された発シグナル分子修飾プローブ(第1の核酸A)が、第2の鋳型核酸複合体中のtoehold部位をきっかけとし、鎖交換反応を引き起こす。その結果、シグナル抑制分子修飾プローブ(第2の核酸B)が第2の鋳型核酸複合体から放出され、両者の近接が解消されることにより、発シグナル分子からのシグナルが回復する。
ここに燃料となる核酸(第2の燃料核酸)を加えておくと、再びtoehold部位をきっかけとした鎖交換反応が起こり、発シグナル分子修飾プローブ(第2の核酸A)のみならずトリガーとなった第1の鋳型核酸複合体由来の発シグナル分子修飾プローブ(第1の核酸A)も再度溶液中に放出されて溶液中に浮遊する。
溶液中に浮遊した第1の鋳型核酸複合体由来の発シグナル分子修飾プローブ(第1の核酸A)が、新たな第2の鋳型核酸複合体と反応しシグナル抑制分子修飾プローブ(第2の核酸B)が第2の鋳型核酸複合体から放出され、発シグナル分子プローブ(第2の核酸A)との近接が解消されることにより、発シグナル分子からのシグナルが回復し、2段階目の核酸サーキットが一巡することとなる。
このように、多段階核酸サーキットは、1段階の核酸サーキットと比較して、より短い時間でシグナル強度を増大させることができ、更なる診断時間の短縮を図ることができる。
また、多段階核酸サーキットは、図8に示すようなプロセスを経るようにしてもよい。
図8に示す多段階(自己触媒的)核酸サーキットでは、1種類の鋳型核酸複合体、1種類の燃料核酸を準備する。このプロセスでは、1段階目の鋳型核酸複合体由来の発シグナル分子修飾プローブ(核酸A)と2段階目の鋳型核酸複合体由来の発シグナル分子修飾プローブが共通であり、2段階目において燃料核酸がトリガーとなる2つの核酸Aを一度に溶液中に浮遊させるため、指数関数的にシグナル強度が増大し、最短の診断時間を期待できる。
例えば、鋳型核酸複合体は、7種類のセグメントが連結した配列(第1b配列+第2a配列+第2b配列+第3配列+第1a配列+第1b配列+第2a配列)を有する鋳型核酸と、第1b配列+第2a配列+第2b配列に相補的な第1b配列+第2a配列+第2b配列の塩基配列を含む第1a配列+第1b配列+第2a配列+第2b配列を有する核酸Aと、第3配列+第1a配列+第1b配列に相補的な第3配列+第1a配列+第1b配列の塩基配列を有する核酸Bとが二本鎖を形成した複合体である。発シグナル分子は核酸Aの3’末端に修飾され、シグナル抑制分子は核酸Bの5’末端に修飾されているものとする。
また、燃料核酸は、第1b配列+第2a配列+第2b配列+第3配列+第1a配列+第1b配列に相補的な第1b配列+第2a配列+第2b配列+第3配列+第1a配列+第1b配列の塩基配列を有する。
なお、本多段階サーキットにおいては、トリガー核酸の塩基配列が、核酸Aと同じ塩基配列(第1a配列+第1b配列+第2a配列+第2b配列)となるように調整される。
続いて、多段階核酸サーキットのメカニズムについて説明する。なお、トリガー核酸と発シグナル分子修飾プローブとが溶液中に放出されるまでは、第1の実施形態と同様のプロセスであるためその説明を省略し、2段階目の核酸サーキットから説明する。
図8に示すように、2段階目の核酸サーキットでは、溶液中に放出された発シグナル分子修飾プローブ(核酸A)をトリガーとして利用し、この核酸サーキットを回転させる。
具体的には、1段階目における鋳型核酸複合体から放出されたトリガーとしての発シグナル分子修飾プローブ(核酸A)が、2段階目における鋳型核酸複合体中のtoehold部位をきっかけとし、鎖交換反応を引き起こす。その結果、2段階目における鋳型核酸複合体のシグナル抑制分子修飾プローブ(核酸B)が当該鋳型核酸複合体から放出され、両者の近接が解消されることにより、新たな発シグナル分子修飾プローブからのシグナルが回復する。ここで、1段階目における鋳型核酸複合体由来の発シグナル分子修飾プローブ(核酸A)と2段階目における鋳型核酸複合体由来の発シグナル分子修飾プローブ(核酸A)は共通である。
ここに燃料となる核酸(燃料核酸)を加えておくと、再びtoehold部位をきっかけとした鎖交換反応が起こり、2段階目における鋳型核酸複合体の発シグナル分子修飾プローブ(核酸B)のみならず、トリガーとなった1段階目における鋳型核酸複合体の発シグナル分子修飾プローブ(核酸B)も再度溶液中に放出されて溶液中に浮遊する。
溶液中に浮遊した二つの発シグナル分子修飾プローブ(核酸A)が、新たな二つの鋳型核酸複合体と反応しシグナル抑制分子修飾プローブが鋳型核酸複合体から放出され、発シグナル分子プローブとの近接が解消されることにより、発シグナル分子からのシグナルが回復し、核酸サーキットが一巡することとなる。
このように、この多段階核酸サーキットは、1段階の核酸サーキット及び先に説明した多段階核酸サーキットと比較して、指数関数的にシグナル強度が増大するために更なる診断時間の短縮を図ることができる。また、必要とする材料種が少ないため、製造コストを抑えることもできる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
また、本実施例において使用するタグ付EpCAMアプタマー、トリガー核酸、マスク核酸、鋳型核酸、5−FAM修飾核酸、BHQ1修飾核酸、燃料核酸の塩基配列を下記に示す。
タグ付EpCAMアプタマー:
5’−CACTACAGAGGTTGCGTCTGTCCCACGTTGTCATGGGGGGTTGGCCTGTTTTTTTTTTGTCGATTCCATTCAATACCCTACGTCTCCA−3’(配列番号1)
トリガー核酸:
5’−CATTCAATACCCTACGTCTCCA−3’(配列番号2)
マスク核酸:
5’−TGGAGACGTAGGGTATTGAATGGAATCGAC−3’(配列番号3)
鋳型核酸:
5’−TGGAGACGTAGGGTATTGAATGAGGGCCGTAAGTTAGTTGGAGACGTAGG−3’(配列番号4)
5−FAM修飾核酸:
5’−CCTACGTCTCCAACTAACTTACGG−(5−FAM)−3’(配列番号5)
5−FAM修飾核酸II:
5’−CATTCAATACCCTACGTCTCCAACTAACTTACGG−(5−FAM)−3’(配列番号34)
BHQ1修飾核酸:
5’−(BHQ1)−CCCTCATTCAATACCCTACG−3’(配列番号6)
燃料核酸:
5’−CCTACGTCTCCAACTAACTTACGGCCCTCATTCAATACCCTACG−3’(配列番号7)
なお、タグ付EpCAMアプタマーにおいて、5’−CACTACAGAGGTTGCGTCTGTCCCACGTTGTCATGGGGGGTTGGCCTG(−3’)がEpCAMアプタマーの塩基配列、(5’−)TTTTTTTTTT(−3’)がスペーサー部の塩基配列、(5’−)GTCGATTCCATTCAATACCCTACGTCTCCA−3’がタグ部の塩基配列である。
[実施例1]
以下の手順で標的細胞に対するタグ付EpCAMアプタマーの結合、トリガー核酸の放出の確認を行なった。トリガー核酸の放出は、タグ付EpCAMアプタマーのタグ部上に結合したマスク核酸により確認した。
まず、核をHoechst33342で染色したMDA−MB−453細胞及びHEK−293T細胞をCell Dissociation Solution(Sigma−Aldrich社製)にて剥離した後、血清培地を5mL加え、遠心分離(1000rpm、1分)をして上澄みを除去した。その後、無血清培地を5mL加え、遠心分離し(1000rpm、1分)、上澄みを除去した(2回)。その後、D−PBS(−)中に5.0mMのMgCl2と4.5mg/mLのグルコースを添加した溶液(以下、BB(Binding Buffer)と呼ぶ)を1mL加え、遠心分離した後、BBを除去した(3回)。再度BBを1mL加えた後、細胞数を1.0×106cell/mLに調製した。
次いで、1μMのCy5(λem=667nm)修飾タグ付EpCAMアプタマー溶液(BB中にて調製、1μMのチミンの20量体、T20を含む)100μLに上述の細胞懸濁液100μLを添加し、氷浴中で30分間インキュベートした。なお、T20は、チューブに非特異的に吸着する犠牲核酸として加えた。その後、細胞を50μLのBBで2回洗浄した。一部の細胞を分取し、蛍光顕微鏡で観察した。
Cy5を修飾していない1μMのタグ付EpCAMアプタマー溶液(BB中にて調製、1μMのチミンの20量体、T20を含む)を用いて上述と同様にタグ付EpCAMアプタマーを結合させ、洗浄した細胞懸濁液50μLに、BB中にて調製した5−FAM(λem=520nm)修飾マスク核酸とトリガー核酸により形成させた1μMトリガー核酸複合体溶液(1μMのT20を含む)50μLを添加した。氷浴中で30分間インキュベートした後、BBで細胞を洗浄し、蛍光顕微鏡で細胞を観察した。
タグ付EpCAMアプタマー及びマスク核酸の標的細胞に対する結合率は、以下の式に基づき算出した。
タグ付EpCAMアプタマーの結合率
=(Cy5による染色細胞数/Hoechst33342による染色細胞数)×100
マスク核酸の結合率
=(FAMによる染色細胞数/Hoechst33342による染色細胞数)×100
それらの結果を図9、図10に示す。ここで、図10(a)はHEK−293T細胞をHoechst33342の蛍光で観察した画像であり、図10(b)はHEK−293T細胞をCy5の蛍光で観察した画像であり、図10(c)はHEK−293T細胞をFAMの蛍光で観察した画像であり、図10(d)は図10(a)〜図10(c)の蛍光観察写真をマージ処理した画像であり、図10(e)はMDA−MB−453細胞をHoechst33342の蛍光で観察した画像であり、図10(f)はMDA−MB−453細胞をCy5の蛍光で観察した画像であり、図10(g)はMDA−MB−453細胞をFAMの蛍光で観察した画像であり、図10(h)は図10(e)〜図10(g)の蛍光観察写真をマージ処理した画像である。
その結果、図9に示すように、タグ付EpCAMアプタマーは、70%以上のMDA−MB−453細胞に十分に結合していることがわかった。一方、HEK−293T細胞には20%程度しか結合していなかった。
また、トリガー核酸複合体を添加した場合、MDA−MB−453細胞については約65%のマスク核酸が結合していることがわかった。一方、HEK−293T細胞については約15%程度しかマスク核酸が結合していなかった。
なお、タグ付EpCAMアプタマーを添加せずに、トリガー核酸複合体のみを添加した場合についても検証したところ、両細胞ともに10%程度しかマスク核酸が結合していなかった。
図10に示すように、タグ付EpCAMアプタマーが結合している細胞とマスク核酸が結合している細胞とは完全に一致したため、特異的にマスク核酸がタグ部に結合していると考えられる。
以上のように、タグ付EpCAMアプタマーは、MDA−MB−453細胞に特異的に結合し、このタグ付EpCAMアプタマーのタグ部にマスク核酸が安定的に結合していることは明らかであり、トリガー核酸複合体からトリガー核酸が放出されていると判断することができる。
[実施例2]
次に、核酸サーキットによるがん細胞の検出を試みた。
図1に示すように、蛍光色素(5−FAM)、消光剤(BHQ1)を修飾した2種の核酸プローブ(それぞれ5−FAM修飾核酸、BHQ1修飾核酸)を作製し、互いの修飾部位が近接するようにして(蛍光オフ)、鋳型核酸複合体を形成した。
がん細胞に応答して放出されたトリガー核酸は、その鋳型核酸複合体末端の突出部位(図1における第4配列)をきっかけとし、鎖交換反応を引き起こす。結果、BHQ1修飾核酸が二本鎖複合体から放出され、5−FAM修飾核酸が発光する設計とした。ここに、核酸サーキットを回転させるための燃料となる核酸(燃料核酸)を加えておくと、新たに出現した突出部位(図1における第2配列)をきっかけとした鎖交換反応が起こり、5−FAM修飾核酸のみならずトリガー核酸も溶液中に放出され、結果、トリガー核酸が再利用可能となる設計とした。
まず、核をHoechst33342で染色したMDA−MB−453細胞をCell Dissociation Solution(Sigma−Aldrich社製)にて剥離した後、血清培地を5mL加え、遠心分離(1000rpm、1分)をして上澄みを除去した。その後、無血清培地を5mL加え、遠心分離し(1000rpm、1分)、上澄みを除去した(2回)。その後、D−PBS(−)中に5.0mMのMgClと4.5mg/mLのグルコースを添加した溶液(BB)を1mL加え、遠心分離した後、BBを除去した(3回)。再度BBを1mL加えた後、細胞数を1.0×10cell/mLに調製した。
次いで、図11に示すように、1μMタグ付EpCAMアプタマー溶液(BB中にて調製、1μMのチミンの20量体、T20を含む)100μLに上述の細胞懸濁液100μLを添加し、氷浴中で30分間インキュベートした。その後、細胞を50μLのBBで2回洗浄した。
そこに、BB中にて調製し、アニーリングした1μMのトリガー核酸複合体溶液(1μMのT20を含む)50μLを添加した後、再度氷浴中で30分間インキュベートした。そこに、50μLのBB(1μMのT20を含む)を加え、卓上遠心機で30秒間遠心分離し、上澄みを50μL回収した(上澄みを回収するチューブは、1μMのT20を入れて95℃で5分間加熱し、溶液を除去して用いた)。その後、回収した溶液を95℃で5分間加熱し、常温(25℃)になるまで放冷した。
別途10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)中でアニーリングを行った後、25℃に保った5−FAM修飾核酸I、BHQ1修飾核酸、鋳型核酸からなる鋳型核酸複合体(200nM)溶液(1μMのT20を含む)100μLに10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)830μLを加えた。
そこに、10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)中で調製した10μMの燃料核酸溶液(1μMのT20を含む)20μL、上記で回収した上澄み(50μL)を加え、25℃にて蛍光測定(SpectrofluorometerFP−8500、JASCO社製)を行った。
また、同様の操作をHEK−293T細胞を用いて行った。
得られた結果を図12に示す。
図12に示すように、MDA−MB−453細胞の上澄みを加えた溶液は、添加後から速やかに発光強度が増加することがわかった。一方で、HEK−293T細胞においては、図10にて確認された非特異的に結合したタグ付EpCAMアプタマーによって放出されたと考えられるトリガー核酸によって増幅されたシグナルが若干確認された。しかしながら、その発光強度には約3.5倍以上の明確な差が確認され、目視でもその差は容易に確認することができた。
[実施例3]
次に、核酸サーキットが正常に回転していることの検証を行った。
上述したように、がん細胞に応答して放出されたトリガー核酸は、その鋳型核酸複合体末端の突出部位をきっかけとして鎖交換反応を引き起こし、その結果、BHQ1修飾核酸が鋳型核酸複合体から放出されて5−FAM修飾核酸が発光するように設計されている。
このとき、発光強度が増加する要因としては、(i)溶液中のトリガー核酸の量に応じて経時的に放出されるBHQ1修飾核酸に起因する発光強度の変化、(ii)トリガー核酸の再利用により、核酸サーキットが回転することで生じる発光強度の変化、が考えられる。
これを検証するため、添加する燃料核酸の量(濃度)を変化させ、経時における発光強度の変化を確認した。
まず、10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)中でアニーリングを行った後、25℃に保った5−FAM修飾核酸I、BHQ1修飾核酸、鋳型核酸からなる鋳型核酸複合体(200nM)溶液(1μMのT20を含む)100μLに10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)830μLを加えた。
そこに、BB中にて調製した40nMのトリガー核酸溶液(1μMのT20を含む)50μLと、10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)中で調製した10μMの燃料核酸溶液(1μMのT20を含む)20μLとを加え、SpectrofluorometerFP−8500(JASCO社製)を用いて25℃にて蛍光測定(励起波長490nm、蛍光波長520nm)を行った。
鋳型核酸複合体、トリガー核酸及び燃料核酸をすべて加えた後の溶液中におけるそれぞれの終濃度は、20nM(鋳型核酸複合体)、2nM(トリガー核酸溶液)、200nM(燃料核酸)である。
同様にして、燃料核酸の終濃度をそれぞれ200nMから100nM、20nM、10nMに変更した場合、燃料核酸を添加しない場合(鋳型核酸複合体及びトリガー核酸の終濃度が、それぞれ20nM、2nMとなるように調製)、トリガー核酸を添加しない場合(鋳型核酸複合体及び燃料核酸の終濃度が、それぞれ20nM、200nMとなるように調製)についても蛍光測定を行った。
得られた結果を図13に示す。
溶液中のトリガー核酸の量に応じて発光強度が変化しているのであれば、燃料核酸の量によらず、その強度は同じ値で飽和するはずであるが、図13で示されるように、燃料核酸の量に応じて発光強度の変化が確認された。これは、燃料核酸により、トリガー核酸が溶液中に再放出されて再利用可能となり、核酸サーキットが回転していることを示している。
また、トリガー核酸がなく、燃料核酸のみを添加した場合では、発光強度の変化は見られず、鋳型核酸と複合体を形成しない、すなわち、5−FAM修飾核酸が放出されないことが確認できた。
[実施例4]
次に、胃食道接合部がん患者の血液を用いて、核酸サーキットの正常な回転検証及び核酸サーキットによるがん細胞の検出を行った。
まず、胃食道接合部がん患者から提供を受けた血液1mLに対して、1μMの5’末端ビオチン化アプタマーを100μL添加した。これを25℃で30分間インキュベートし、細胞懸濁液とした。
また、特許第6781876号を参照して、スピンコータを用いて基板にフォトレジストをコーティングしてフォトマスクを通してUVで露光し、フォトレジスト用現像液を用いて現像を行うことによってマイクロフィルタの鋳型を作製した。この基板にニッケル電鋳を行った後、鋳型からニッケル構造体を取り出した。ニッケル構造体に金めっきを施し、全体を金薄膜で覆うことにより、図14に示す弾性変形可能なマイクロフィルタ40を作製した。作製したマイクロフィルタ40をNeutrAvidin水溶液に浸漬することにより、マイクロフィルタ表面にNeutrAvidinを修飾した。
作製したマイクロフィルタ40を、図15に示す流入部50a及び流出部50bからなるハウジング50に取り付けてマイクロフィルタデバイス51とした。
次に、図16に示すように、細胞懸濁液が貯留された貯留槽52をポンプ53を介してマイクロフィルタデバイス51にチューブで接続した。さらに、マイクロフィルタデバイス51を、当該マイクロフィルタデバイス51を通過した細胞懸濁液の廃液を貯留する廃液槽54に接続した。
ポンプ53の送液速度を3mL/hに設定し、1mLの胃食道接合部がん患者の血液サンプルを貯留槽52からマイクロフィルタデバイス51に送液した。血液を送液後、1mLのPBS(−)を3mL/hの速度で送液し、マイクロフィルタ40の洗浄を行った。
マイクロフィルタデバイス51からマイクロフィルタ40を取り出し、マイクロフィルタ40上に捕捉された細胞の固定化と膜透過の処理を行った。ブロッキングバッファーで処理した後、サイトケラチン(Cytokeratin)とCD45の一次抗体を結合させた。その後、Alexa Fluor488とAlexa Fluor594がそれぞれ修飾されたCytokeratinとCD45の二次抗体、核染色用のDAPIの混合溶液に浸漬し細胞の免疫染色を行った。
免疫染色した細胞を共焦点レーザー倒立顕微鏡(ニコン C2+)で観察した。DAPI及びCytokeratinのいずれにおいても陽性となった細胞をがん細胞とし、それらの個数を測定した。マイクロフィルタデバイス51を用いて捕捉したがん細胞の蛍光観察写真を図17に示す。
三つのマイクロフィルタデバイス51にそれぞれ1mLの血液を送液した結果、平均6個のがん細胞が捕捉されていることが確認された。
続けて、胃食道接合部がん患者の血液サンプルを用いた核酸サーキットの検証を行った。
まず、1μMのチミンの20量体、T20を含む水溶液1mLをマイクロチューブに加え、5分間95℃で加熱後、溶液を除去し、チューブ表面にT20を吸着させ、表面処理したマイクロチューブを複数作製した。
表面処理のみ行ったマイクロチューブを用い、5μMのタグ付EpCAMアプタマー溶液(BB中にて調製、1μMのチミンの20量体、T20を含む)を調製した。続けて、がん細胞の捕捉洗浄後、固定化や透過処理を行う前のマイクロフィルタ(上記の捕捉がん細胞の計数に用いたマイクロフィルタとは別途作製し、同じ患者の血液1mLを通液したマイクロフィルタ)上に5μMタグ付EpCAMアプタマー溶液を40μL滴下し、インキュベーター中にて4℃にて30分間インキュベートした。溶液を除去し、40μLのBBを滴下し、除去した。これをもう一度繰り返した。
また、表面処理のみ行ったマイクロチューブを用い、1μMのトリガー核酸複合体溶液(BB中にて調製、1μMのチミンの20量体、T20を含む)を調製した。続けて、1μMのトリガー核酸複合体溶液をEpCAMアプタマー溶液を滴下したマイクロフィルタ上に40μL滴下した後、再度4℃にて30分間インキュベートした。その後、溶液(上澄み)40μLを回収した(上澄みを回収するチューブには、表面処理のみを行なったマイクロチューブを用いた)。これを95℃にて10分間加熱し、30分間室温で静置した。
さらに、表面処理のみ行ったマイクロチューブを用い、10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)中でアニーリングを行った後、25℃に保った5−FAM修飾核酸I、BHQ1修飾核酸、鋳型核酸からなる鋳型核酸複合体(それぞれ順に200nM、300nM、200nm)溶液(1μMのT20を含む)100μLに10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)840μLを加えた溶液を調製した。
さらに、表面処理のみ行ったマイクロチューブを用い、10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)中で調製した10μMの燃料核酸溶液(1μMのT20を含む)20μLと、トリガー核酸複合体溶液を滴下した後に回収した上澄み(40μL)と、調製した鋳型核酸複合体溶液とを混合し、SpectrofluorometerFP−8500(JASCO社製)を用いて25℃にて蛍光測定(励起波長490nm、蛍光波長520nm)を行った。
また、がん細胞の捕捉洗浄後、固定化や透過処理を行う前のマイクロフィルタ上に5μMのタグ付EpCAMアプタマー溶液を滴下しなかった以外は同様にして調製した溶液についても蛍光測定を行った。
得られた結果を図18に示す。
また、燃料核酸溶液とトリガー核酸複合体溶液を滴下した後に回収した上澄みと調製した鋳型核酸複合体溶液とを混合してから1時間経過した後、3cmの距離からUVハンディーランプ(6W)にて254nmの光を照射しながら溶液の写真を撮影した。
その結果を図19に示す。
図18及び図19に示されるように、タグ付EpCAMアプタマー溶液を滴下した場合では、時間の経過とともに発光強度の増加が確認されたが、タグ付EpCAMアプタマー溶液を滴下しなかった場合では、ほとんど発光強度の変化が見られなかった。また、これらの発光強度の違いは、視覚的にもはっきりと確認することができた。
以上から、本発明の核酸サーキットが、実際のがん患者においてもがん細胞の検出に有効であることがわかる。
[実施例5]
次に、図8に示す多段階核酸サーキットが正常に回転していることの検証を行った。
なお、図8において、第1a配列は5−FAM修飾核酸IIにおける(5’−)CATTCAATAC(−3’)、第1b配列は5−FAM修飾核酸IIにおける(5’−)CCTACG(−3’)、第2a配列は5−FAM修飾核酸IIにおける(5’−)TCTCCA(−3’)、第2b配列は5−FAM修飾核酸IIにおける(5’−)ACTAACTTACGG(−3’)に対応している。
まず、1μMのチミンの20量体、T20を含む水溶液1mLをマイクロチューブに加え、5分間95℃で加熱後、溶液を除去し、チューブ表面にT20を吸着させ、表面処理したマイクロチューブを複数作製した。
次に、表面処理のみ行ったマイクロチューブを用い、10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)中でアニーリングを行った後、25℃に保った5−FAM修飾核酸II、BHQ1修飾核酸、鋳型核酸からなる鋳型核酸複合体(それぞれ順に200nM、300nM、220nM)溶液(1μMのT20を含む)を100μL調製した。そこに、次工程で加えるトリガー核酸溶液の体積に応じて840〜890μLの10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)を加えた。
また、表面処理のみ行ったマイクロチューブを用い、10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)中で調製した10μMの燃料核酸溶液(1μMのT20を含む)20μLと、鋳型核酸複合体溶液と、表面処理のみ行ったマイクロチューブを用い、10mMのTris−HCl緩衝液(1mMのEDTA、12.25mMのMgClを含む)中で調製した1μMのトリガー核酸溶液10〜20μL、50nMのトリガー核酸溶液4〜40μL又は2nMのトリガー核酸溶液10μLを加えて総計1mLとし、トリガー核酸の終濃度が20nM、10nM、2nM、1nM、200pM、20pMであるサンプルを準備した。また、これとは別に、トリガー核酸溶液を添加しなかった以外は同様にしてサンプルを準備した。
これらサンプルについて、SpectrofluorometerFP−8500(JASCO社製)を用いて25℃にて蛍光測定(励起波長490nm、蛍光波長520nm)を行った。
得られた結果を図20に示す。
図20に示されるように、トリガー核酸の終濃度が20pM〜2nMである場合、発光強度がシグモイド曲線を描くようにして増大している。これは、溶液中に鋳型核酸複合体がトリガー核酸よりも十分に多く含まれている場合、1段階目の核酸サーキットにおいて溶液中に放出されたトリガー核酸及び5−FAM修飾核酸IIが再度鋳型核酸複合体と鎖交換反応を引き起こして多段的に核酸サーキットを回転させるためである。
以上から、図8に示される多段階核酸サーキットが、最短の診断時間で、指数関数的に発光強度を増大させることが確認された。
31 担持層
32 自己組織化単分子膜
33 アプタマー又は抗体
40 マイクロフィルタ
50 ハウジング
50a 流入部
50b 流出部
51 マイクロフィルタデバイス
52 貯留槽
53 ポンプ
54 廃液槽

Claims (5)

  1. 生体試料中の標的細胞を検出する細胞検出方法であって、
    前記標的細胞を含む溶液に一本鎖核酸からなるタグ付きの核酸アプタマーを加え、前記標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合させる工程と、
    前記タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の一部の塩基配列を含むトリガー核酸、及び前記タグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含むマスク核酸からなるトリガー核酸複合体を加え、当該トリガー核酸を放出させる工程と、
    放出された前記トリガー核酸を含む溶液に、発シグナル分子とシグナル抑制分子とがそれぞれ修飾された核酸A及び核酸B、並びに鋳型核酸が形成するタンデム二本鎖中で、両修飾部位がシグナルを抑制するように近接位に位置する鋳型核酸複合体、及び燃料核酸を加え、核酸サーキットを回転させてシグナルを増幅させる工程と、
    増幅されたシグナルを検出する工程とを備え、
    前記鋳型核酸複合体が、N種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第N配列の塩基配列)の鋳型核酸と、当該鋳型核酸と二本鎖を形成し、第1配列〜第P配列に相補的な第1配列〜第P配列の塩基配列を含む核酸A及び第(P+1)配列〜第Q配列に相補的な第(P+1)配列〜第Q配列の塩基配列を含む核酸B(ここで、P、Q、Nは、1<P<P+1<Q<Nを満たす整数である。)とを含み、
    前記トリガー核酸が、前記鋳型核酸の第R配列〜第S配列に相補的な第R配列〜第S配列の塩基配列(ここで、R、Sは、1<P+1<R≦Q<S≦Nを満たす整数である。)を含み、
    前記燃料核酸が、前記鋳型核酸の第1配列〜第T配列に相補的な第1配列〜第T配列の塩基配列(ここで、Tは、R≦Tを満たす整数である。)を含むことを特徴とする細胞検出方法。
  2. 請求項1に記載の細胞検出方法において、
    前記シグナルを増幅させる工程では、更に、溶液中に放出された前記トリガー核酸及び前記核酸Aを利用して、核酸サーキットを多段的に回転させてシグナルを増幅させることを特徴とする細胞検出方法。
  3. 請求項1に記載の細胞検出方法において、
    前記トリガー核酸と前記鋳型核酸との結合定数が、前記核酸Bと前記鋳型核酸との結合定数よりも高いことを特徴とする細胞検出方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞検出方法において、
    前記燃料核酸と前記鋳型核酸との結合定数が、前記核酸Aと前記鋳型核酸との結合定数、及び前記トリガー核酸と前記鋳型核酸との結合定数よりも高いことを特徴とする細胞検出方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞検出方法に用いるためのキットであって、
    前記標的細胞の細胞表面物質に特異的に結合し、かつ、一本鎖核酸からなるタグ付きの核酸アプタマーと、
    発シグナル分子とシグナル抑制分子とがそれぞれ修飾された核酸A及び核酸B、並びに鋳型核酸が形成するタンデム二本鎖中で、両修飾部位がシグナルを抑制するように近接位に位置する鋳型核酸複合体であって、当該鋳型核酸がN種類のセグメントが連結した配列(第1配列〜第N配列の塩基配列)を含み、当該核酸Aが第1配列〜第P配列に相補的な第1配列〜第P配列の塩基配列を含み、当該核酸Bが第(P+1)配列〜第Q配列に相補的な第(P+1)配列〜第Q配列の塩基配列を含む鋳型核酸複合体(ここで、P、Q、Nは、1<P<P+1<Q<Nを満たす整数である。)と、
    前記タグ付核酸アプタマーにおけるタグ部の一部の塩基配列であって、かつ、前記鋳型核酸の第R配列〜第S配列に相補的な第R配列〜第S配列の塩基配列を含むトリガー核酸(ここで、R、Sは、1<P+1<R≦Q<S≦Nを満たす整数である。)、及び前記タグ部の塩基配列に相補的な塩基配列を含むマスク核酸からなるトリガー核酸複合体と、
    前記鋳型核酸の第1配列〜第T配列に相補的な第1配列〜第T配列の塩基配列を含む燃料核酸(ここで、Tは、R≦Tを満たす整数である。)とを含むことを特徴とするキット。

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