JP2021182537A - 宇宙空間用の電界放出カソード型電子源 - Google Patents

宇宙空間用の電界放出カソード型電子源 Download PDF

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Abstract

【課題】宇宙空間における原子状酸素やプラズマイオンによるカソードの劣化や減肉を防止して電界放出カソード型電子源を長寿命化する。【解決手段】電子20を放出するためのカソード12と、該カソード12から電子20を引出すための、電子20が通過する開口窓16Aを有する引出し電極16と、前記カソード12と前記引出し電極16の間に、電子20を前記カソード12から引出すための引出し電圧を印加するための引出し電源18と、を有する宇宙空間用の電界放出カソード型電子源において、電子20を透過させ、電子20より大きな物質を透過させない透過薄膜30を、前記引出し電極16の開口窓16Aに、これを塞ぐように配設する。【選択図】図2

Description

本発明は、宇宙空間用の電界放出カソード型電子源に係り、特に、原子状酸素やプラズマイオンによるカソードの劣化や減肉を防止して長寿命化することが可能な、宇宙空間用の電界放出カソード型電子源、これを用いた宇宙空間用の導電性テザー推進装置及び宇宙空間用電気推進機の中和器に関する。
人工衛星の帯電防止や、テザー推進装置、イオンエンジンを含む電気推進機の中和のために、電子を宇宙空間に放出する電子源が、宇宙開発の様々な用途に使われている。
衛星軌道上に存在するスペースデブリの除去に用いられる導電性テザー推進装置は、導電性の紐であるテザーが地球磁場を横切ることにより発生する誘導起電力によって電流が生じ、地球磁場と作用させることによりローレンツ力を得て推進する推進装置である。この導電性テザー推進装置において、テザーの一端から電子を宇宙のプラズマ中に放出させる電子放出源としては、作動ガスが不要である点や、低電力動作が可能である点から電界放出カソード型電子源が有望である(特許文献1、非特許文献1)。
又、人工衛星などの宇宙構造物の軌道制御、東西南北位置保持、主推進等に用いられている電気推進機、例えばイオンエンジンにおいては、放出された陽イオンビームと電気的に同じ量の電子を宇宙空間に放出して中和し、人工衛星等の宇宙構造物が帯電するのを防止し推力を維持するために中和器が用いられている(特許文献2)。この中和器の電子源としても電界放出カソード型電子源が注目されている(非特許文献2)。
電子源は様々な形態を取り得るが、前記のように電子の放出源としてのカソードを電界放出型カソードとする形態は、ホローカソードなど熱陰極型カソードのようにカソードを加熱するための電源が不要となる。このため、消費電力が厳しく制約される宇宙空間での使用を前提とするイオンエンジンやテザー推進装置の電子源として有力視されている。特に、カーボンナノチューブを電界放出型カソードの表面に用いる形態は、カーボンナノチューブが有する高い電子放出能力、残留ガスに対する耐性、長寿命性といった優れた特性から、イオンエンジンや導電性テザー推進装置への適用技術として注目されている。
一般に、電界放出カソード型の電子源は、図1に例示する如く、基盤10の上に配設された、電子20を放出するカソード12と、電子20が通過する開口窓16Aを有する引出し電極(グリッドまたはゲートとも称する)16と、カソード12と引出し電極16の間に、電子20をカソード12から引出すための高電圧を引出し電圧として印加するための引出し電源18を主要な構成として具備している。図において14は、電界を整形して電子を集束させる効果を得るためのマスクであり、幅Wは電子が放出される領域を示している。
引出し電源18によってカソード12と引出し電極16間に強い電界を発生させ、この強電界によってカソード面から電子20を放出させる。放出された電子20は引出し電極16に向かって流れ、引出し電極16が有する開口窓16Aを抜けて、引出し電極16外部へ放出される。
特開2007−109514号公報 特開平11−280640号公報
島田他「カーボンナノチューブ電界放出カソードにおける原子状酸素対策の有効性評価」第58回宇宙科学技術連合講演会講演集2014年11月12日〜14日 長野ブリックホール 山本他「電界放出型カソードを用いたイオンエンジンの中和特性」平成30年度宇宙科学に関する室内実験シンポジウム講演集 Proceedings of 2019 Symposium on Laboratory Experiment for Space Science. (2019).
しかしながら、宇宙空間は原子状酸素22やプラズマイオン24の環境下であり、これらがそのまま高速でカソード12へ衝突するため、反応や衝撃によりカソード12が消耗し寿命が短い。又、開口窓16Aでは電場が弱くなるため、カソード12から放出された電子20は加速しながら発散し、その一部は開口窓16Aを通過せずに周辺部の引出し電極16へ衝突損失する。その結果、引出し電極16へ電子20が20%以上流入して損失し、電力の利用効率が悪い。この電力損失を低減するために、引出し電圧を上げることが出来ず、低電圧が必要である。更に、周囲のプラズマイオン24により電子源ポテンシャルが変動し、放出電流が大きく変動するなどの問題点を有していた。
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、宇宙空間における原子状酸素やプラズマイオンによるカソードの劣化や減肉を防止して、電界放出カソード型電子源を長寿命化することを課題とする。
本発明は、電子を放出するためのカソードと、該カソードから電子を引出すための、電子が通過する開口窓を有する引出し電極と、前記カソードと前記引出し電極の間に、電子を前記カソードから引出すための引出し電圧を印加するための引出し電源と、を有する宇宙空間用の電界放出カソード型電子源において、電子を透過させ、電子より大きな物質を透過させない透過薄膜を、前記引出し電極の開口窓に、これを塞ぐように配設することにより前記課題を解決するものである。
ここで、前記透過薄膜が導電性を有することができる。
又、前記透過薄膜を炭素を材料とする炭素系シートとすることができる。
又、前記透過薄膜をセラミックを材料とするセラミック系シートとすることができる。
又、前記透過薄膜が前記セラミック系シートの少なくとも一方の面に導電層を形成したもの、又は、それを積層したものとすることができる。
又、前記引出し電圧を、電子のエネルギー損失が20%以内で前記透過薄膜を透過する10kV以下の加速電圧とすることができる。
本発明は、又、前記電界放出カソード型電子源を備えたことを特徴とする宇宙空間用の導電性テザー推進装置を提供するものである。
本発明は、又、前記電界放出カソード型電子源を備えたことを特徴とする宇宙空間用電気推進機の中和器を提供するものである。
本発明によれば、電子を透過させ、電子より大きな物質を透過させない透過薄膜を、引出し電極の開口部に、これを塞ぐように配設したので、電子より大きな原子、イオンを遮断することができ、宇宙空間における原子状酸素やプラズマイオンがカソードに衝突しないようにして、カソードの劣化や減肉を防止し、電界放出カソード型電子源を長寿命化することができる。
従来の電界放出カソード型電子源の基本的な構成を示す断面図 本発明の第1実施形態の基本的な構成を示す断面図 同じく加速エネルギーと透過薄膜でのエネルギー損失の関係の例を示す図 本発明の第2実施形態の基本的な構成を示す断面図 同じく加速エネルギーと透過薄膜でのエネルギー損失の関係の例を示す図 本発明の第3実施形態の基本的な構成を示す断面図 同じく加速エネルギーと透過薄膜でのエネルギー損失の関係の例を示す図 第3実施形態の変形例で用いるセラミック系シートの構成を示す断面図 本発明の第4実施形態の基本的な構成を示す断面図 同じく加速エネルギーと透過薄膜でのエネルギー損失の関係の例を示す図 本発明に係る電界放出カソード型電子源を用いた導電性テザー推進装置の実施例を示す構成図 本発明に係る電界放出カソード型電子源を中和器に用いたイオンエンジンの実施例を示す構成図
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
本発明の第1実施形態は、図1に示した従来例と同様の構成を有する電界放出カソード型電子源において、図2に示す如く、透過薄膜30を、引出し電極16の開口窓16Aに、これを塞ぐように配設したものである。
カソード12には、例えば高アスペクト比を持つカーボンナノチューブCNTを用いることができる。
本実施形態においては、透過薄膜30により、原子状酸素22やプラズマイオン24が遮断されるので、カソード12が、これらの衝突により劣化や減肉することがない。
更に、透過薄膜30により従来例に比べて広い幅Wにわたって均一な平行電界となり、引出し電極16へ衝突・流入して損失となる電子はほとんど0となる。従って、透過薄膜30をほぼすべての電子が透過し、引出し電極16への流入損失がない引出し電圧にすることで電源電力損失のないものにすることができる。引出し電圧を上げても電力損失がないため、プラズマによる宇宙空間のポテンシャル変動に対し十分に高い引出し電圧として、引出し電流が変動しない安定したものすることができる。
なお、実際には透過薄膜30を電子が透過する際、電子が透過薄膜30内に捕捉されたり、後方散乱することによる放出電子量の減少はないが、非弾性散乱による電子のエネルギー損失を生じる。膜厚0.32μmのベリリウム(材料密度1.85g/cm3)を用いた場合の加速エネルギー(引出し電圧)と透過薄膜でのエネルギー損失量の算出結果を図3に○印でプロットして示す。加速エネルギー10keV(引出し電圧10kV)以上で電子エネルギー損失が20%以下となる。
この損失において、宇宙空間であり宇宙への輻射冷却のみと仮定し、電子放出の電流密度0.5mA/cm2とした場合の薄膜の温度を算出した結果を同じ図3に△印でプロットして示す。加速エネルギー9keV以上で400℃以下となる。この温度と加速エネルギーの関係は、透過窓指数(透過窓係数とも称する)αを、薄膜膜厚(nm)×材料密度(g/cm3)×電流密度(mA/cm2)と定義すると、αが同じであれば同じ値となる。図3の例では透過窓指数α=296である。
なお、△印のプロットは非弾性散乱がほぼすべてがプラズモン振動つまり熱エネルギーとなったとした場合の最大の温度上昇であるが、実際には2次電子放出としてエネルギー放出され透過薄膜の温度上昇には寄与しないエネルギーがある。
2次電子放出量やそのエネルギー分布は物質や表面状態、膜厚や入射電子エネルギーなどの条件で大きく異なるため、放出エネルギー量を正確に算出することは難しいが、2次電子放出係数や2次電子エネルギー分布を仮定して算出した透過薄膜の温度を、図3中に破線Aで示す。
この2次電子放出を考慮した透過薄膜の温度は、加速エネルギー5keVで400℃、8keVで約330℃でほぼ一定となる温度分布、10kVより低い電圧で最適な電圧値が存在する可能性があることを示している。
また、衛星などの宇宙空間で使用する電源としては大きさ、重量などから10kV以下が好ましく、また透過薄膜は、軽金属からセラミックなどの各種材料の使用が可能であり耐熱温度として500〜1000℃以上のものではあるが、耐久性や耐熱性を考慮し400℃以下が好ましいと考えらえるため、透過窓指数αが300以下となる薄膜膜厚、材料密度、電流密度条件が良く、加速電圧としては10kV以下で電子の透過エネルギーが80%以上となる薄膜膜厚と材料密度条件が好ましい。
本実施形態においては、透過薄膜30として、ベリリウム、アルミ、シリコン、チタンなどの材料密度の小さい金属や、窒化炭素、窒化ケイ素、酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニアなどの高強度、高耐熱のセラミックスを用いることができる。透過窓指数αに示したように、薄膜化可能な材料のほうが電流密度を上げたり、あるいは加速電圧を下げて電源の小型化、高出力化、低コスト化をすることができる。
具体的な条件範囲としては、透過薄膜30の膜厚は0.3nm〜500nm、薄膜材料の密度は1.8g/cm3〜6g/cm3において透過電子の電流密度0.5mA/cm2〜500mA/cm2が実現可能である。
本発明の第2実施形態は、図2に示した第1実施形態と同様の構成を有する電界放出カソード型電子源において、図4に示す如く、炭素系シートであるグラフェンシート31を、引出し電極16の開口窓16Aに、これを塞ぐように配設したものである。
カソード12には、例えば高アスペクト比を持つカーボンナノチューブCNTを用いることができる。
本実施形態においては、グラフェンシート31により、原子状酸素22やプラズマイオン24が遮断されるので、カソード12が、これらの衝突により劣化したり減肉することがない。
更に、グラフェンシート31は導電性を有するので、従来例に比べて広い幅Wにわたって均一な平行電界となり、引出し電極16へ衝突・流入して損失となる電子はほとんど0となる。実際には、グラフェンシート31を透過する際、電子エネルギー損失を生じる。厚さ0.34nmのグラフェンシートを用いた場合の加速エネルギーと透過薄膜でのエネルギー損失の算出結果を図5に○印でプロットして示す。電子の取出エネルギー率(=100%−エネルギー損失%)は、500eVで96.4%、3.5keV以上で99.9%となる。透過窓係数α=37の電流密度50mA/cm2の高い電流密度での透過薄膜の温度算出値を同じ図5に△印でプロットして示すが、500eVで400℃を下回り、3.5keVでは200℃を下回っている。
更に、第1実施形態の図3で示したと同様に2次電子放出エネルギーを考慮した透過薄膜の温度は図5の破線Bとなり、加速エネルギー2〜4keVにほとんど温度上昇しない領域がある可能性を示している。
以上より、グラフェンシート31を透過薄膜30に適用した場合には、高い電流密度で低加速電圧が可能なため高出力でコンパクトな電子源システムが可能であり、かつグラフェンの温度上昇も低くすることができるため反応や、劣化を抑制し寿命、耐久性に優れたものが可能である。なお、耐久性向上のためにグラフェンシート31を2〜5層、積層しても、厚さが薄いのでほとんど問題ない。
本実施形態においては、透過薄膜として、導電性を有し、強度が高く、薄膜化が可能なグラフェンシート31を用いているので、特に好ましい。
炭素を材料とする炭素系の透過薄膜はグラフェンシートに限定されず、例えばグラファイトやCNTのシートを用いることも可能である。
なお、第2実施形態のグラフェンシート31では、原子状酸素22の濃度が高い場合、反応劣化が懸念される。
そこで、本発明の第3実施形態では、図6に示す如く、第2実施形態のグラフェンシート31の代わりに酸素反応性のないセラミック材料(例えば窒化ケイ素)製のセラミック系シート32を開口窓に配設している。
他の点については第2実施形態と同様であるので説明は省略する。なお、第2実施形態と異なり導電性がないが誘電体としての作用により従来例に比べて広い幅Wにわたって均一な平行電界となる。
本実施形態においては、透過薄膜がセラミック系シート32であるので、原子状酸素22と反応せず、劣化、減肉しない。
なお、セラミック系シート32は、第2実施形態のグラフェンシート31に比べて膜厚が厚くなるため損失は大きくなる。
本実施形態ではセラミック材料として、窒化物の窒化ケイ素(Siなど、SiNと略称)を用いていたが、セラミック材料はこれに限定されない。例えば、窒化物の代わりに酸化物、例えば酸化ケイ素SiOを用いたり、他のセラミック材料を用いることも可能である。
本実施形態で、セラミック系シート32として、厚さ10nmの窒化ケイ素(SiN)を用いた場合の加速エネルギーと透過薄膜でのエネルギー損失の算出結果を図7に○印のプロットで示す。電子の取出エネルギー率は2keVで84.4%〜10keVで98.9%となる。なお強度及び耐久性向上のため、厚さを20〜30nmに増やしても、5kV以上の加速電圧では損失10%以下となる。透過窓係数α=165の電流密度5mA/cm2での透過薄膜の温度を算出した結果(△印のプロット)は2keVで500℃を下回り、4keVで400℃を下回る結果となり、窒化ケイ素の熱衝撃温度800℃を大きき下回る温度である。さらに第1、及び第2実施形態の図3、5で示したと同様に2次電子放出エネルギーを考慮した透過薄膜の温度は図7の破線Cとなり、加速エネルギー5keVで300℃を下回り、7keV辺りに最小温度領域がある可能性を示している。
第3実施形態ではセラミック系シート32に導電性が無いので、高電流では透過薄膜30のチャージアップによる損失が懸念される。そのような問題を解消した本発明の変形例として、図8に示す如く、ドーピングを制御して導電性のあるSiベースを残したセラミック系シート34を透過薄膜30として用いることもできる。
このセラミック系シート34は、例えばベースとなるSi層34aに、透過薄膜30の外側となる面から、例えばイオンビーム又はプラズマによりNドーピングしてSiN層34bを形成した後、例えばエッチング処理により、透過薄膜30の内側となる面からSi層34aを薄膜化して作製することができる。
本実施形態によれば、原子状酸素濃度での劣化抑制とチャージアップによる損失低減を両立させることが可能である。
次に、本発明の第4実施形態を図9に示す。この第4実施形態は、第3実施形態と同様のセラミック系シート32の内側に、更に厚さ数nmの薄い導電性材料、例えばグラフェンシートを接着して、導電層36としたものである。
本実施形態によれば、原子状酸素濃度での劣化抑制とチャージアップによる損失低減を両立させることが可能である。
厚さ10nmのSiNと厚さ0.34nmのグラフェンシートを積層した場合の加速エネルギーと透過薄膜でのエネルギー損失の計算結果を図10に〇印のプロットで示す。電子の取出エネルギー率は2keVで79.3%〜10keVで98.9%となる。なお強度、耐久性向上のため、厚さを20〜30nmに増やしても、5kV以上の加速電圧では損失10%以下となる。透過窓係数α=202の電流密度5mA/cm2での透過薄膜の温度を算出した結果(△印のプロット)は、4keVで400℃を下回る結果である。さらに第3実施形態の図7で示したと同様に2次電子放出エネルギーを考慮した透過薄膜の温度は図10の破線Dとなり、加速エネルギー5keVで300℃を下回り、7keV辺りに最小温度領域がある可能性を示している。
なおグラフェンシートの代わりにCNTシートやグラファイトシートを接着したり、ベリリウムBe、アルミニウムAl、シリコンSi、チタンTi等の金属を蒸着して導電層36とすることも可能である。また、よりチャージアップ抑制のために膜の両側に設置したり、セラミック膜の間に挟みこんだり、積層化することも可能である。
前記実施形態を宇宙空間用の導電性テザー推進装置に適用した実施例の模式図を図11に示す。
図において、100は導電性ワイヤ(テザー)、110は本発明に係る電界放出カソード型電子源(FEC)、120は加速用ゲート、122は加速用電源、130は減速用ゲートである。
前記実施形態を宇宙推進用イオンエンジンの中和器に用いた実施例の模式図を図12に示す。
図において、140はマイクロ波を用いたイオン源、142はイオン源用加速電源、150は加速用ゲート、152は加速用電源、160は減速用ゲート、170は本発明に係るFECを用いた中和器、172は中和器用加速電源である。
なお、前記実施形態においては、引出し電圧が、電子のエネルギー損失が20%以内で透過薄膜を透過する10kV以下の加速電圧とされていたが、引出し電圧は、これに限定されない。
カソード12もCNTを用いたものに限定されない。
12…カソード
16…引出し電極
16A…開口窓
18…引出し電源
20…電子
22…原子状酸素
24…プラズマイオン
30…透過薄膜
31…グラフェンシート
32、34…セラミック系シート
34a…Si層
34b…SiN層
36…導電層
100…導電性ワイヤ(テザー)
110…電界放出カソード型電子源(FEC)
140…イオン源
170…中和器(FEC)

Claims (8)

  1. 電子を放出するためのカソードと、
    該カソードから電子を引出すための、電子が通過する開口窓を有する引出し電極と、
    前記カソードと前記引出し電極の間に、電子を前記カソードから引出すための引出し電圧を印加するための引出し電源と、
    を有する宇宙空間用の電界放出カソード型電子源において、
    電子を透過させ、電子より大きな物質を透過させない透過薄膜を、前記引出し電極の開口窓に、これを塞ぐように配設したことを特徴とする宇宙空間用の電界放出カソード型電子源。
  2. 前記透過薄膜が導電性を有することを特徴とする請求項1に記載の宇宙空間用の電界放出カソード型電子源。
  3. 前記透過薄膜が炭素を材料とする炭素系シートであることを特徴とする請求項2に記載の宇宙空間用の電界放出カソード型電子源。
  4. 前記透過薄膜がセラミックを材料とするセラミック系シートであることを特徴とする請求項1に記載の宇宙空間用の電界放出カソード型電子源。
  5. 前記透過薄膜が前記セラミック系シートの少なくとも一方の面に導電層を形成したもの、又は、それを積層したものであることを特徴とする請求項4に記載の宇宙空間用の電界放出カソード型電子源。
  6. 前記引出し電圧は、電子のエネルギー損失が20%以内で前記透過薄膜を透過する10kV以下の加速電圧としたことを特徴とする請求項1又乃至5のいずれかに記載の宇宙空間用の電界放出カソード型電子源。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載の電界放出カソード型電子源を備えたことを特徴とする宇宙空間用の導電性テザー推進装置。
  8. 請求項1乃至6のいずれかに記載の電界放出カソード型電子源を備えたことを特徴とする宇宙空間用電気推進機の中和器。
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