JP2021180151A - 燃料電池システム - Google Patents

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Shuya Kawahara
修 保高
Osamu Hodaka
兼仁 井田
Kanehito Ida
斉 明本
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Abstract

【課題】局所ドライアップを解消させることで、出力低下を抑制することが可能となる、燃料電池システムを提供する。【解決手段】局所ドライアップ条件を満たす稼働状態を検出した場合に、ドライアップ解消制御を実施する。具体的には、運転検出部が検出した稼働状態が、高温かつ中負荷状態等の局所ドライアップ条件を満たす場合には、ガス供給制御部が、カソードガス供給部におけるカソードガスの背圧を上昇させる、燃料電池システムとする。【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関する。
水素等のアノードガスと、酸素等のカソードガスとを、化学反応させることによって発電を行う、燃料電池が知られている。
燃料電池は、電気的に接続された2つの電極に、それぞれ、水素等のアノードガス(燃料ガス)と酸素等のカソードガス(酸化剤ガス)を供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換する。
アノードガスとして水素が供給されたアノード(燃料極)では、下記式(1)の反応が進行する。
→ 2H + 2e ・・・(1)
上記式(1)で生じる電子(e)は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後に、カソード(酸化剤極)に到達する。他方で、上記式(1)で生じたプロトン(H)は、水と水和した状態で、電気浸透により、アノードとカソードとに挟まれた電解質膜内を、アノード側からカソード側に移動する。
一方、カソードでは、電解質膜を通過した上記式(1)で生じたプロトン(H)と、カソードガスとして供給された酸素と、外部回路を経由した上記式(1)で生じた電子(e)とが、下記式(2)の反応を進行させる。
2H + 1/2O + 2e → HO ・・・(2)
したがって、電池全体では下記式(3)に示す化学反応が進行し、起電力が生じて、外部負荷に対して電気的仕事がなされる。
+ 1/2O → HO ・・・(3)
このような燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜電極接合体を基本構造とする単セルを、複数積層して構成されている。中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、等の利点を有することから、特にモバイル機器等の携帯用、あるいは電気自動車等の移動体用の電源として期待されている。
ここで、固体高分子電解質型燃料電池の単セルの構成としては、例えば、アノード側セパレーター、アノード側ガス拡散層、アノード側触媒層、電解質膜、カソード側触媒層、カソード側ガス拡散層、及びカソード側セパレーターが、この順に積層された積層体が知られている。
そして、燃料電池が良好な発電状態を維持するために、アノード側触媒層、電解質膜、及びカソード側触媒層からなる膜電極接合体は、適度な湿潤状態を保つことが好ましい。膜電極接合体が、乾燥(ドライアップ)すると、燃料電池の発電性能が低下するだけでなく、燃料電池の劣化が引き起こされる可能性がある。
これに対して、電圧とインピーダンスの変化を観察することで、初期段階でドライアップを検出し、アノードガス圧力を上げることで、膜電極接合体の湿潤状態を回復する技術が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載の技術は、アノード出口が最もドライアップし易いことに注目し、電圧とインピーダンスの変化に基づいて、初期段階でドライアップを検知して、アノードガスである水素の分圧を上昇させる。これにより、ドライアップの拡大を抑制し、燃料電池の出力低下を抑制することができるとされている。
特開2011−100677号公報
しかしながら、本発明者らは、特許文献1に記載の技術は、電膜電極接合体の面内全体のドライアップについては検知できるものの、面内において局所的なドライアップが発生した場合には、電圧やインピーダンスへの影響が見えづらいため、ドライアップの解消が困難となる場合があるとの知見を得た。
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、局所ドライアップを解消させることが可能となる、燃料電池システムを提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため、局所ドライアップの発生機構に注目した。そして、局所ドライアップは、登坂等の高温中負荷となる運転状態が所定時間以上継続した場合等に発生するため、高温中負荷の運転状態等の局所ドライアップ条件を満たす稼働状態を検出した場合に、ドライアップ解消制御を実施すれば、局所ドライアップによる出力低下を抑制できると考え、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
燃料電池システムであって、
燃料電池と、
前記燃料電池にアノードガスを供給するアノードガス供給部と、
前記燃料電池にカソードガスを供給するカソードガス供給部と、
前記アノードガス供給部と、前記カソードガス供給部と、を制御するガス供給制御部と、
前記燃料電池の稼働状態を検出する運転検出部と、
を備え、
前記アノードガスの流れと前記カソードガスの流れは、対向流であり、
前記運転検出部が検出した前記稼働状態が、局所ドライアップ条件を満たす場合には、前記ガス供給制御部は、前記カソードガス供給部におけるカソードガスの背圧を上昇させる、
燃料電池システム。
本発明の燃料電池システムによれば、局所ドライアップを解消させることが可能となる。このため、局所ドライアップによる燃料電池の出力低下を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る燃料電池システムの作用を示す図である。 背圧アップ又はガス循環量アップと入口露点との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、種々変形して実施することができる。
《燃料電池システムの構成》
本発明の燃料電池システムは、燃料電池を備え、アノードガス供給部と、カソードガス供給部と、ガス供給制御部と、運転検出部と、を備える。そして、高温中負荷の運転状態等の局所ドライアップ条件を検出した場合に、ドライアップ解消制御を実施することで、局所ドライアップによる出力低下を抑制することができる。
本発明の燃料電池システムは、例えば、電気自動車に搭載されて、駆動用電源として用いることができる。あるいは、定置型電源として用いてもよい。
<燃料電池>
本発明の燃料電池システムを構成する燃料電池は、特に限定されるものではなく、公知の燃料電池を適用することができる。燃料電池は一般に、多数の単セルが積層されたスタックとなっている。
一般的な燃料電池の単セルは、例えば、アノード側セパレーター、アノード側ガス拡散層、アノード側触媒層、電解質膜、カソード側触媒層、カソード側ガス拡散層、及びカソード側セパレーターが、この順に積層された積層体が、一対のセパレータで挟まれた構造となっている。すなわち、一般的な燃料電池の積層体は、電解質膜の各々の面の側が、アノード(An)又はカソード(Ca)となっている。
(電解質膜)
燃料電池における電解質膜は、アノード側触媒層とカソード側触媒層との間に配置される。電解質膜は、電子及びガスの流通を阻止するとともに、アノードで発生したプロトン(H)を、アノード側触媒層からカソード側触媒層に移動させる機能を有する。
電解質膜は、湿潤状態で良好な電子伝導性を示すものであり、固体高分子電解質型燃料電池の場合には、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いる。
電解質膜としては、例えば、パーフルオロスルホン酸(PFSA)アイオノマー等のスルホン酸基を含む高分子電解質樹脂で形成された、イオン伝導性を有するイオン交換膜が挙げらる。なお、スルホン酸基に限定されるものではなく、例えば、リン酸基やカルボン酸基等、他のイオン交換基(電解質成分)を含む膜であってもよい。
(触媒層)
電解質膜の各々の面に形成される触媒層は、アノード側及びカソード側でそれぞれ異なる働きをする。アノード側触媒層は、アノードガスである水素(H)を、プロトン(H)と電子(e)に分解する機能を有する。一方で、カソード側触媒層は、プロトン(H)と電子(e)と、アノードガスに含まれる酸素(O)から、水(HO)を生成する機能を有する。
アノード側及びカソード側の触媒層は、同様の材料で形成することができる。例えば、白金や白金合金等の触媒を担持した導電性の担体が用いられ、更に具体的には、例えば、導電性物質として機能するカーボンブラック等の炭素粒子に触媒が担持された、触媒担持炭素粒子と、上記した電解質膜の構成成分である、イオン交換基によりプロトン伝導性を発現する電解質成分と、から構成される層が挙げられる。触媒担持炭素粒子が、プロトン伝導性を有するアイオノマー等の電解質成分により被覆されて形成された層であってもよい。
(ガス拡散層)
ガス拡散層は、供給される反応ガスを拡散させて均一にし、隣接する触媒層にガスを行き渡らせる機能を有する。ガス拡散層は、拡散層基材層にマイクロポーラス層が積層された積層体となっていることが一般的であり、マイクロポーラス層(MPL)が、隣接する触媒層に面するように配置される。
ガス拡散層を構成する拡散層基材層は、例えば、カーボンペーパー若しくはカーボンクロス等のカーボン多孔質体、又は金属メッシュ若しくは発泡金属等の金属多孔質体等により、形成することができる。
拡散層基材層の上に存在し、触媒層と隣接するマイクロポーラス層(MPL))は、一般に、炭素粒子と撥水性樹脂とを、主成分として含む層である。
炭素粒子としては、例えば、カーボンブラック、グラフェン、又は黒鉛等の粒子等を挙げることができる。撥水性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系の高分子材料や、ポリプロピレン、ポリエチレン等を挙げることができる。
(セパレーター)
セパレーターは、発電要素となる積層体を両側から挟み込む役割を果たす。そして、アノード側セパレーターには、アノードガスが流れる流路(アノード側流路)が形成されており、カソード側セパレーターには、カソードガスが流れる流路(カソード側流路)が形成されている。
<アノードガス供給部>
アノードガス供給部の構成は、燃料電池にアノードガスを供給することができれば、特に限定されるものではない。一般的には、アノードガスタンクと、アノードガス供給管と、アノードガス排気管と、アノードガス還流管と、主止弁と、可変調圧弁とポンプと、を少なくとも備える。
一般に、燃料電池システムは、アノードガスとして、水素を用いる。アノードガスタンクは、アノードガスとしての水素ガスが貯蔵される貯蔵装置であり、アノードガス供給管を介して、燃料電池におけるアノード側流路に接続されている。アノードガス供給管上には、アノードガスタンクから近い順に、主止弁と可変調圧弁とが設けらる。可変調圧弁は、アノードガスタンクから燃料電池へ供給されるアノードガスの圧力(アノードガス量)を調整するための、調圧弁である。
アノードガス排気管は、燃料電池におけるアノード側流路から排出されるアノードオフガスが流れる流路である。アノードガス還流管は、アノードガス排気管と、アノードガス供給管における可変調圧弁よりも下流側の部位とに接続される。アノード側流路からアノードガス排気管に排出されたアノードオフガスは、アノードガス還流管を経由して、再びアノードガス供給管に導かれる。
このため、燃料電池システムおいて、アノードガスは、発電により消費されつつ、アノードガス排気管、アノードガス還流管、アノードガス供給管の一部、及び、燃料電池におけるアノード側流路を循環することとなる。アノードガス還流管には、流路内でアノードガスを循環させるための駆動力を発生して、アノードガスの流量を調節するために、ポンプが設けられている。
<カソードガス供給部>
カソードガス供給部の構成は、燃料電池にカソードガスを供給することができれば、特に限定されるものではない。一般的には、エアコンプレッサと、カソードガス供給管と、カソードガス排出管と、背圧弁と、を備える。
一般に、燃料電池システムは、カソードガスとして、空気を用いる。エアコンプレッサは、カソードガスである空気を圧縮し、カソードガス供給管を介して、燃料電池のカソード側流路に空気を供給する。したがって、カソードガス供給管は、エアコンプレッサと燃料電池とを接続して、燃料電池にカソードガスを供給する。
カソード側流路から排出されるカソードオフガスは、カソードガス排出管を介して、燃料電池システムの外部に排出される。燃料電池では、発電反応において、水素と酸素とが反応して水が生成する。生成した水は、カソードオフガスとともに燃料電池から排出され、カソードガス排出管を介して、燃料電池システムの外部に排出される。
カソードガス排出管には、背圧弁が設けられており、背圧弁の開度を調節することにより、燃料電池システムの外部に排出されるカソードオフガスの圧力(背圧)を調節し、燃料電池内部のカソードガスの背圧(圧力)を調整することができる。
また、本発明の燃料電池システムにおいては、アノードガスの流れとカソードガスの流れは、対向流となっている。すなわち、アノードガスとカソードガスとは、燃料電池を構成する電解質膜を挟んで、電解質膜とそれぞれ略並行に、逆向きに流れている。
<運転検出部>
運転検出部の構成は、燃料電池の稼働状態が検出可能なものであれば、特に限定されるものではない。一般的には、配線に、電流センサ及び電圧センサが設けられており、燃料電池の出力電流及び出力電圧を測定可能となっている。本発明においては更に、燃料電池の温度を測定するための温度センサが取り付けられている。加えて、燃料電池の抵抗値を検出するための抵抗測定器が設けられていてもよい。
運転検出部は、電流センサ、電圧センサ、及び温度センサ等が検出した、燃料電池の出力電流、出力電圧、及び温度等に関する測定結果に基づいて、燃料電池の稼働状態が局所ドライアップ条件を満たすか否かを検出することができる。
<ガス供給制御部>
ガス供給制御部は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、一般的には、予め設定された制御プログラムに従って演算などを実行するCPUと、CPUで各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROMと、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAMと、各種信号を入出力する入出力ポート等を備える。
ガス供給制御部は、運転検出部からの検出信号を取得することができる。そして、背圧弁、エアコンプレッサ、主止弁、可変調圧弁、ポンプ等に対して駆動信号を出力することができる。
ガス供給制御部は、上記した背圧弁に駆動信号を出力して、カソードガスの背圧を上昇させることができる。また、可変調圧弁、ポンプ等に対して駆動信号を出力して、燃料電池システムを循環するアノードガスの量を調整することができる。
《局所ドライアップ条件》
従来、電池セルの面内全体のドライアップに対しては、対応方法が提案されている。しかしながら、面内において局所的なドライアップが発生した場合の対応については、未だ提案されていなかった。
電池セルの面内において局所ドライアップが発生すると、燃料電池の出力が低下する。そして、局所ドライアップは、電圧やインピーダンスへの影響が見えづらいため、これら以外の要素で判断する必要がある。
ここで、局所ドライアップは、登坂等の高温かつ中負荷となる運転状態が所定時間以上継続した場合に、発生することが判っている。そこで、本発明の燃料電池システムにおいては、高温かつ中負荷の運転状態を検出した場合に、ドライアップを解消するための制御を実施する。
なお、本発明において「高温かつ中負荷の運転状態」とは、70〜95℃かつ規定最高出力の20〜70%の出力で、燃料電池が稼働していることを意味する。
《燃料電池システムの作用》
本発明の燃料電池システムの作用について、本発明の一実施形態に係る図1を用いて説明する。図1(A)は、定常状態にある燃料電池システムの状態を示す図であり、図1(B)は、局所ドライアップ条件を満たす稼働状態が検出されて、第1の制御を実施したときの燃料電池システムの状態を示す図であり、図1(C)は、更に第2の制御を実施したときの燃料電池システムの状態を示す図である。
<アノードガス供給部の作用>
アノードガス供給部の作用について、図1(A)に示される、定常状態にある燃料電池システムを示す図を用いて説明する。
図1(A)に示される、定常状態にある燃料電池システムにおいては、アノードガスとして湿潤水素ガス(図中では、Wet Hと示す)が用いられ、アノードガス供給管を介して、燃料電池に供給される。
詳細には、アノードガスである湿潤水素ガス(Wet H)は、アノードガスタンクからアノードガス供給管を介して、燃料電池のアノード側流路に供給される。燃料電池に供給されたアノードガスは、電池の発電により消費され、アノード側流路からアノードガス排気管に、アノードオフガスとして排出される。
燃料電池からアノードガス排気管に排出されたアノードオフガスは、アノードガス還流管を経由して、再びアノードガス供給管に導かれる。
すなわち、燃料電池システムおいて、アノードガス供給部は、アノードガス供給管、燃料電池におけるアノード側流路、アノードガス排気管、及びアノードガス還流管等を介して、アノードガスを循環させる作用を有する。
アノードガス供給部において、燃料電池システムを循環させるアノードガスの量を調整するにあたっては、アノードガス供給管上に設けられた可変調圧弁を用いて、燃料電池へ供給されるアノードガスの圧力(アノードガス量)を調整する方法、又は、アノードガス還流管に設けられたポンプにより、還流管に循環させるアノードガスの流量を調節する方法が採用できる。
<カソードガス供給部の作用>
カソードガス供給部の作用について、図1(A)に示される、定常状態にある燃料電池システムを示す図を用いて説明する。
図1(A)に示される、定常状態にある燃料電池システムにおいては、カソードガスとして乾燥空気(図中では、Dry Airと示す)が用いられ、カソードガス供給管を介して、燃料電池に供給される。
詳細には、カソードガスである乾燥空気(Dry Air)は、エアコンプレッサにより圧縮されて、カソードガス供給管を介して、燃料電池のカソード側流路に供される。
燃料電池に供給された乾燥空気における酸素(O)は、電池の発電により消費され、同時に、水(HO)が生成する。生成した水(HO)は、空気とともに、燃料電池のカソード側流路からカソードガス排気管に、カソードオフガスとして排出される。
このとき、電池の発電により生成した水(HO)は、カソードガスとともにカソード下流側に移動し、その一部は、カソード触媒層、電解質膜、アノード側触媒層からなる膜電極接合体を湿潤させるために消費される。
空気と生成水(HO)とを含むカソードオフガスを、燃料電池システムの外部に排出するにあたっては、カソードガス排出管に設けられた背圧弁を用いて、その開度を調節することによって実施する。背圧弁の開度を減少させて、燃料電池システムの外部に排出させるカソードオフガスの量を減少させた場合には、燃料電池内のカソードガスの背圧(圧力)は、上昇することとなる。
したがって、燃料電池システムおいて、カソードガス供給部は、カソードガス供給管、燃料電池におけるカソード側流路、カソードガス排気管等を介して、カソードガスを燃料電池に供給するとともに、電池反応によって生成した水(HO)を、その一部は膜電極接合体の湿潤に利用しつつ、残りはカソードオフガスとともに燃料電池システムから排出させる作用を有する。
<運転検出部の作用>
本発明の燃料電池システムにおける運転検出部は、燃料電池の稼働状態を検出する作用を有する。
運転検出部は、電流センサ、及び電圧センサから検出信号を取得して、燃料電池の出力電流及び出力電圧を検出するとともに、温度センサにより、燃料電池の温度を検出する。また、抵抗測定器が設けられている場合には、燃料電池にかかる抵抗を検出する。
運転検出部は、電流センサ、電圧センサ、及び温度センサ等が検出した、燃料電池の出力電流、出力電圧、及び温度等に関する測定結果に基づいて、燃料電池の稼働状態が、局所ドライアップ条件を満たすか否かを検出する作用を有する。
<ガス供給制御部の作用>
本発明の燃料電池システムにおけるガス供給制御部は、運転検出部からの検出信号を取得して、燃料電池の稼働状態が局所ドライアップ条件を満たす場合には、局所ドライアップを解消するための制御を開始する。
ガス供給制御部は、先ず、局所ドライアップを解消するための第1の制御を実施し、更に加えて、第1の制御とは異なる、局所ドライアップを更に解消するための第2の制御を実施する場合がある。
ガス供給制御部の作用について、図1(B)及び図1(C)を用いて説明する。図1(B)は、運転検出部が局所ドライアップ条件を満たす稼働状態を検出した場合に、ドライアップを解消するために第1に実施する第1の制御を実施したときの燃料電池システムの状態を示す図である。図1(C)は、第1の制御を実施した後に、局所ドライアップを更に解消するために実施する、第2の制御を実施したときの燃料電池システムの状態を示す図である。
したがって、本発明の燃料電池システムは、ガス供給制御部が第1の制御を開始すると、図1(B)に示される状態となり、更に、第2の制御を実施すると、図1(C)に示される状態へと変化する。
(第1の制御)
ガス供給制御部は、運転検出部が検出した稼働状態が、局所ドライアップ条件を満たす場合に、局所ドライアップを解消するための第1の制御を実施する作用を有する。第1の制御は、カソードガス供給部におけるカソードガスの背圧を上昇させる作用である。
具体的には、ガス供給制御部は、運転検出部が検出した燃料電池の稼働状態が、局所ドライアップ条件を満たす場合に、カソードガス供給部におけるカソードガス排出管に設けられた背圧弁の開度を減少させて、燃料電池システムの外部に排出されるガス(カソードオフガス)の量を少なくして、燃料電池システム内のカソードガスの圧力(背圧)を上昇させる。
図1(B)は、運転検出部が検出した結果が局所ドライアップ条件を満たす場合に、ガス供給制御部が第1の制御を実施したときの燃料電池システムの状態を示す図である。図1(B)に示されるように、ガス供給制御部が第1の制御を実施すると、燃料電池システムの外部に排出されるカソードオフガスの量が少なくなるため、燃料電池システム内のカソードガスの圧力(背圧)は上昇する。
このとき、カソードオフガスとともに燃料電池システムから排出される、カソードで生成した水(HO)の量も同時に減少することとなり、その結果、膜電極接合体の湿潤状態が回復し、局所ドライアップを解消することができる。
(第2の制御)
更に、本発明の燃料電池システムにおけるガス供給制御部は、局所ドライアップを更に解消するための第2の制御を実施する場合がある。第2の制御は、アノードガス供給部におけるアノードガスの循環量を増加させる作用である。
具体的には、ガス供給制御部が、運転検出部からの検出信号を取得し、燃料電池の稼働状態が局所ドライアップ条件を満たす場合に、上記した第1の制御を実施しつつ、あるいは、第1の制御を実施した後に、アノードガス供給部におけるアノードガス供給管上に設けられた可変調圧弁の開度を増加させて、燃料電池へ供給されるアノードガスの圧力(アノードガス量)を増加させるとともに、アノードガス還流管に設けられたポンプにより、還流管に循環させるアノードガスの流量を増加させる。
図1(C)は、第1の制御を実施した後に、局所ドライアップを更に解消するために実施する、第2の制御を実施したときの燃料電池システムの状態を示す図である。図1(C)に示されるように、ガス供給制御部が第2の制御を実施すると、燃料電池システムを循環する燃料であるアノードガスの量が多くなるため、局所ドライアップを更に解消することができる。
すなわち、第1の制御に第2の制御を追加することにより、局所ドライアップを良好に抑制し、それによって、燃料電池の出力低下を抑制することができる。
以下、実験結果を示して、本発明を更に詳細に説明する。
《実験例》
燃料電池を作製し、アノードガスの循環量、カソードガスの流量、アノードガスの圧力、カソードガスの圧力、について、単独又は組み合わせで変更し、それぞれの場合において、アノード入口の露点を測定した。結果を、図2に示す。
図2において、横軸は、実施した変更のバリエーションであり、縦軸は、アノード入口の露点を示す。横軸における変更の内容は、以下に示す通りである。
・Ref:何の変更も実施していない場合
・Ca圧力アップ:カソードガスの背圧を上昇させた場合(本発明の第1の制御)
・AirSt比アップ:カソードガスである空気の流量を上昇させた場合
・An圧力アップ:アノードガスの背圧を上昇させた場合
・AnSt比アップ:アノードガスの循環量を増加させた場合(本発明の第2の制御)
なお、燃料電池の稼働状態が、局所ドライアップ条件を満たす場合に、アノード入口の露点が高いほど、電圧低下が起こりにくいことが知られている。例えば、電圧低下が少ない順に、アノード入口の露点は以下のようになる。
80℃>60℃>45℃>32℃
図2により、本発明の第1の制御であるカソードガスの背圧を上昇させる制御を実施すれば、燃料電池の局所ドライアップを抑制できることから、出力低下を抑制することができ、更に、本発明の第2の制御であるアノードガスの循環量を増加させる制御を実施することで、燃料電池の局所ドライアップを更に抑制することができることから、出力低下を更に抑制できることが判る。

Claims (1)

  1. 燃料電池システムであって、
    燃料電池と、
    前記燃料電池にアノードガスを供給するアノードガス供給部と、
    前記燃料電池にカソードガスを供給するカソードガス供給部と、
    前記アノードガス供給部と、前記カソードガス供給部と、を制御するガス供給制御部と、
    前記燃料電池の稼働状態を検出する運転検出部と、
    を備え、
    前記アノードガスの流れと前記カソードガスの流れは、対向流であり、
    前記運転検出部が検出した前記稼働状態が、局所ドライアップ条件を満たす場合には、前記ガス供給制御部は、前記カソードガス供給部におけるカソードガスの背圧を上昇させる、
    燃料電池システム。
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