JP2021179674A - 操船計算装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】好適または最適な排他的領域(バンパー)設定値を決定でき、その結果として避航支援や自動操船の精度等を高めることができる技術を提供する。【解決手段】操船計算装置1は、船舶の自動避航装置2の機能を実現するための自動避航プログラム3の設定情報を計算する。操船計算装置1は、船舶の周囲に設定される排他的領域についてのパラメータ値として、少なくとも形状およびサイズを異ならせた複数の排他的領域値103を生成し、条件102およびパラメータ値を変えながら、自動避航プログラム(コピー13)を用いたシミュレーション計算を繰り返し実行し、シミュレーション計算の結果に基づいて、パラメータ値に応じた評価値105を計算し、評価値に基づいて、排他的領域の最適値106を決定し、排他的領域の最適値106を自動避航プログラム3に設定する。【選択図】図1

Description

本発明は、避航支援や自動操船のための操船計算等の技術に関する。
海上の操船のための安全基準やパラメータの1つとして、船の周囲に設定される排他的領域(バンパーと記載する場合がある)がある。この排他的領域は、自船と他船との衝突のリスクを計算する際に参照される。この排他的領域を含むモデルは、安全で効率的な操船を実現するために必要な要素である。
避航支援に係わる先行技術例として、特開2020−27343号公報(特許文献1)が挙げられる。特許文献1には、「避航支援装置」として、海域の輻輳状況に応じた現実的な避航操船を可能にする旨が記載されている。特許文献1には、危険度算出部は、自船が避航操船を行った場合の他船に対する衝突危険度を、自船または他船の一方である基準船舶の周囲に設定される楕円状のバンパー領域を用いて算出する旨、閉塞度算出部は、自船が有する避航操船の選択肢が他船との関係でどの程度閉塞されるかを表す閉塞度を算出する旨、バンパーサイズ設定部は、閉塞度算出部で算出された閉塞度に応じて、危険度算出部で用いるバンパー領域のサイズを可変設定する旨が記載されている。
例えば特許文献1に示されるように、避航支援装置の避航操船プログラムは、選好度と衝突危険度から、避航操船空間の効用値を決定する。避航操船空間は、針路の変針角と速力の変速率とを組み合わせた空間であり、効用値は、この空間の位置毎に算出される。例えば、効用値は、針路や速力の変更に伴う操船者の主観的な選好度から、針路や速力の変更に応じた他船に対する客観的な衝突危険度を減算したものである。
特開2020−27343号公報
従来、排他的領域(バンパー)は、例えば、船舶の周囲に楕円状に定められ、そのサイズは、自船および他船の全長および速力等に基づいて定められる。特に、特許文献1の例では、例えば遠洋、近海、湾内といった海域の輻輳状況を考慮して、現実的な避航操船を可能にする旨、具体的には、閉塞度に応じてバンパーのサイズを変更する旨が記載されている。
従来の避航支援装置では、避航操船プログラムの避航動作の核となるバンパーのパラメータ設定値については、人間が操船感覚等に基づいて適宜に調整することで決定されていた。そのように決定されたあるバンパー設定値の場合では、船型や輻輳度等の様々な条件に合致した好適または最適なバンパー形状やサイズではない可能性がある。すなわち、従来技術では、好適または最適なバンパー設定値についての検討が不十分であった。また、従来技術では、好適または最適なバンパー設定値について、定量的な検証等はされていなかった。そのため、避航支援や自動操船の精度等に関して、改善余地がある。
本発明の目的は、避航支援や自動操船のための操船計算等の技術に関して、好適または最適なバンパー設定値を決定でき、その結果として避航支援や自動操船の精度等を高めることができる技術を提供することである。
本発明のうち代表的な実施の形態は、以下に示す構成を有する。一実施の形態の操船計算装置は、船舶の避航支援機能を実現するための自動避航プログラムの設定情報を計算する操船計算装置であって、船舶の周囲に設定される排他的領域についてのパラメータ値として、少なくとも形状およびサイズを異ならせた複数の排他的領域値を生成し、前記パラメータ値を変えながら、前記自動避航プログラムを用いたシミュレーション計算を繰り返し実行し、前記シミュレーション計算の結果に基づいて、前記パラメータ値に応じた評価値を計算し、前記評価値に基づいて、前記排他的領域の最適値を決定し、前記排他的領域の最適値を前記自動避航プログラムに設定する。
本発明のうち代表的な実施の形態によれば、避航支援や自動操船のための操船計算等の技術に関して、好適なバンパーを設定でき、避航支援や自動操船の精度等を高めることができる。
本発明の実施の形態1の操船計算装置を含む、システム全体の構成を示す図である。 実施の形態1で、海域での自船と他船の状況の例を示す図である。 実施の形態1で、避航操船空間および選好度の例を示す図である。 実施の形態1で、衝突危険度およびリスク関数に係わる説明図である。 実施の形態1で、排他的領域の基本構成について示す図である。 実施の形態1で、避航操船空間および衝突危険度の例を示す図である。 実施の形態1で、避航操船空間および効用値の例を示す図である。 実施の形態1で、システム利用サイクルを示す図である。 実施の形態1で、操船計算装置の主な処理のフローを示す図である。 実施の形態1で、排他的領域の形状の例について示す図である。 実施の形態1で、排他的領域のサイズの例について示す図である。 実施の形態1で、排他的領域の偏位の例について示す図である。 実施の形態1の変形例で、排他的領域が複数の部分から構成される例を示す図である。 実施の形態1で、輻輳度を用いる場合の海域の状況の例を示す図である。 実施の形態1で、評価処理に係わる採点手法の例を示す図である。 実施の形態1で、排他的領域の最適値の決定の例を示す図である。 本発明の実施の形態2の操船計算装置を含む、システム全体の構成を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、全図面において同一部には原則として同一符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
図1〜図16を用いて、本発明の実施の形態1の操船計算装置について説明する。本発明者は、課題の解決手段として、以下のような新たな方式を考えた。図1等に示す実施の形態1の操船計算装置1は、自動避航プログラム3における排他的領域(バンパー)の設定値について、コンピュータでのシミュレーションによって、好適または最適な値を決定する。このシミュレーションとは、船舶の物理的な操船運動をシミュレーションする操船シミュレーションと、操船者に代わって操船を行う自動避航プログラムを接続したシミュレーションとを含む。説明上、これらのシミュレーションをまとめて、操船シミュレーションと記載する場合がある。この操船計算装置1は、任意のバンパー初期値101を基に生成したパラメータ値としての各バンパー値103について、操船シミュレーションとそれに伴う評価を繰り返す。操船シミュレーションは、自動避航プログラム3のコピー13において、あるバンパー値103および条件102等の設定に基づいて、後述の効用値等の計算を行わせるものである。評価は、バンパー値103が条件102に応じて好適かどうかに関する定量的評価である。条件102は、海域でのシナリオ(シミュレーションシナリオに相当する)等がある。操船計算装置1は、操船シミュレーションおよび評価の繰り返しから、バンパー設定値の最適解(最適値106)を見出す。その最適値106としてのバンパー設定値111が、実運用の自動避航プログラム3に設定される。また、検証等に基づいて、条件102等の追加や変更がある場合には、さらなるシミュレーションに応じて、バンパー設定値111を更新できる。
また、この操船シミュレーションでは、機械学習を含むAI(人工知能)の利用も可能である。例えば、海域の状況に関する画像を用いた深層学習等も、この操船シミュレーションに適用可能である。より具体的には、バンパーの形状、大きさと言った形状の特徴を入力パラメータとし、操船シミュレーションによって得られた評価値を出力値として、この一部を学習データとして深層学習のような教師付き学習を使って学習させ、残りをテストデータとして検証することで、入力パラメータと出力値の関係、入力から出力を推定する際の精度の値を得ることが出来る。これによりデータに対して最適な機械学習方法を選択し、この機械学習の学習結果を用いて最適解の探索を行うことも出来る。更にこれを発展させることで、航路上の輻輳度や自船の操船性能に応じて、最適なバンパー形状を選ぶような、より多様な入力パラメータと出力の関係についても、統一的に扱うことが出来る可能性を有している。
[システム]
図1は、実施の形態1の操船計算装置1を含む、システム全体の構成を示す。このシステムは、操船計算装置1、自動避航装置2、船舶情報取得装置4、電子海図5、表示装置6、および自動操縦装置7を有する。このシステムは、大別して2つの構成部分を有し、一方は、自動避航プログラムであるプログラム3を含む自動避航装置2であり、他方は、実施の形態1の操船計算装置1である。自動避航装置2等は、実際の船舶に搭載されるか、陸上からの遠隔通信で船舶に連携されることで、避航支援や自動操船を行う装置またはシステムである。なお、自動避航装置2の具体例は、特許文献1にも記載がある。操船計算装置1は、自動避航装置2のプログラム3に適用するためのバンパー設定値111等の情報を、コンピュータ上のシミュレーションによって決定する機能を有する装置またはシステムである。操船計算装置1は、言い換えるとシミュレーション装置である。操船計算装置1と自動避航装置2は、所定の通信インタフェースで通信接続される。ユーザU1は、バンパーの形状、大きさ等を決定する役割を担う人であり、操船計算装置1を操作してシミュレーション等を実行させる。ユーザU2は、自動避航装置2を利用する操船者や監督者等である。
操船計算装置1は、PCやサーバ等の任意のコンピュータシステムで実装できる。操船計算装置1は、図示しないが、プロセッサ、メモリ、補助記憶装置、通信インタフェース装置、入出力インタフェース装置、入力デバイス、および表示装置等の出力デバイス等を備え、それらがバス等を介して相互に接続されている。プロセッサは、CPU、ROM、RAM等で構成される。操船計算装置1は、プロセッサによるソフトウェアプログラム処理等によって実現される機能ブロックとして、シミュレーション計算部11、および評価部12を有する。
予め、自動避航装置2のプログラム3のコピー13が、操船計算装置1のシミュレーション計算部11にシミュレーション用のプログラムとして設定される。シミュレーション計算部11は、そのコピー13のプログラムを用いて、操船シミュレーションを実行する。シミュレーション計算部11は、排他的領域(バンパー)の初期値101と、条件102とを入力として、各バンパー値103での操船シミュレーションの計算を繰り返し実行する。初期値101は、任意の基準バンパー値である。条件102は、海域のシナリオ等である。バンパー値103は、少なくとも形状およびサイズの定義を含む。
評価部12は、シミュレーション計算部11による各シミュレーションの結果について、評価処理を行う。評価部12は、各シミュレーションでのバンパー値104毎に、評価値105を計算する。操船計算装置1は、評価部12による評価値105に基づいて、各バンパー値104のうち、バンパーの最適値106を決定する。操船計算装置1は、決定したバンパーの最適値106を含む情報を、自動避航装置2のプログラム3に設定する。この設定は、操船計算装置1から通信で自動避航装置2に対し自動的な設定更新として実行してもよいし、ユーザU1が確認しながら自動避航装置2に設定操作を行ってもよい。
自動避航装置2は、バンパー設定値111に基づいて、プログラム3による避航支援処理(言い換えると自動避航処理)を行う。自動避航装置2は、PCやサーバ等の任意のコンピュータシステムで実装できる。自動避航装置2は、図示しないが、プロセッサ、メモリ、補助記憶装置、通信インタフェース装置、入出力インタフェース装置、入力デバイス、および出力デバイス等を備え、それらがバス等を介して相互に接続されている。自動避航装置2は、プログラム3による避航支援処理では、バンパー設定値111に基づいて、他船との衝突危険度112を計算する。また、自動避航装置2は、選好度113を計算する。そして、自動避航装置2は、選好度113と衝突危険度112とを用いて、効用値114を計算する。効用値114は、針路等を表す。
自動避航装置2は、得た効用値114を含む情報を、表示装置6の表示画面に表示する。また、自動避航装置2は、得た効用値114に基づいて、自動操縦装置7に、最適な針路等に対応付けられた操船指示を与える。操船指示は、例えば変針角や変速率の情報を含む。自動操縦装置7は、その操船指示に従って、自船の自動操縦を行う。
自動避航装置2は、船舶情報取得装置4から、自船情報および他船の情報を取得する。船舶情報取得装置4は、各種機構を用いて、自船情報と他船情報とを取得する。他船とは、自船周辺の所定の範囲内に存在する単数または複数の他船である。自船情報や他船情報は、針路、速力および位置の情報を含む。船舶情報取得装置4の各種機構は、代表的には、AIS(Automatic Identification System)、レーダ、カメラ、方位センサ、速度センサおよびGPS(Global Positioning System)等がある。これら自船情報、他船情報に関する各種センサの情報収集、情報処理をコンピュータが行い、周囲の他船の位置、進路、速力の情報と言った自動避航装置2が必要な情報を得る。
AISは、船舶間や、船舶と陸上との間で、船舶の位置、針路、速力、および目的地等の船舶情報を、無線通信で交換することで、他船や自船の情報を取得するシステムである。レーダやカメラは、自船の周辺に存在する各他船の相対的な針路、速力および位置を検出する。方位センサは、ジャイロコンパス等であり、自船の針路を検出する。速度センサは、電磁式ログやドップラーログ等であり、自船の速力を検出する。GPSは、自船の位置(緯度および経度等)を検出する。
また、自動避航装置2は、電子海図5の情報を参照し、その情報に基づいて、航路を設定し、その航路に基づいて、自動操縦装置6を制御する。
なお、自動避航装置2のプログラム3については、技術内容詳細を限定するものではなく、各種の技術を適用できる。実施の形態1では、プログラム3は、バンパー設定値を用いて針路等の避航支援情報(例えば効用値114)を生成するコンピュータプログラムであればよい。
操船計算装置1や自動避航装置2の各機能は、主にソフトウェアプログラム処理によって実現されるが、これに限定されず、例えば一部が専用のハードウェアや回路等で実現されてもよい。また、プログラムを含む必要な各種のデータや情報は、操船計算装置1や自動避航装置2の内部のメモリ等に格納されることには限定されない。それらが、外部の装置(例えばデータベースサーバ、カードやディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納されて、通信等を通じて利用する形態としてもよい。なお、図1のシステム構成例では、操船計算装置1と自動避航装置2とが別体であるが、これに限らず、操船計算装置1と自動避航装置2とが一体である形態等も可能である。
[自動避航装置]
図1の自動避航装置2の構成例として、概略的な処理や動作の一例は以下の通りである。自動避航装置2は、所定の制御サイクル毎に所定の処理を繰り返し実行する。自動避航装置2は、船舶情報取得装置4から、自船情報と、所定の範囲内に存在する他船情報とを取得する。次に、自動避航装置2は、選好度113(Pb)を計算する。また、自動避航装置2は、バンパー設定値111を用いて、衝突危険度112(Rk)を計算する。次に、自動避航装置2は、選好度113(Pb)と衝突危険度112(Rk)とを用いて、効用値114(Ut)を計算する。その後、自動避航装置2は、効用値(Ut)に基づいた変針角および変速率(対応する速力)を最適な避航操船方法として操船指示を決定する。
自動避航装置2は、避航操船空間の位置毎に、自船が避航操船を行った場合の他船に対する衝突危険度112を、バンパー設定値111を用いて計算する。避航操船空間とは、現状からの変針角の選択肢と変速率の選択肢とを組み合わせた空間であり、避航操船を行う際に採り得る選択肢を表す。また、自動避航装置2は、避航操船空間の位置毎に、その各位置の選択に伴う操船者の主観的な好みを表す選好度113を計算する。そして、自動避航装置2は、避航操船空間の位置毎に、選好度113から衝突危険度112を減算することで、効用値114を計算する。
自動避航装置2は、予め操船者等のユーザU2によって設定された、電子海図5上の予定航路を記憶する。予定航路は、出発地点と目標地点とを複数のウエイポイント(代表的には変針点)を介して結んだ経路である。電子海図5は、不揮発性記憶装置等に記憶されている。
自動避航装置2は、例えば、効用値114が最大となる変針角および変速率を認識し、その変針角および変速率を含む操船指示を、自動操縦装置7に与える。自動操縦装置7は、その操船指示の変針角に向けて変針するように舵を自動制御するオートパイロットや、その変速率に向けて変速するようにエンジン出力を自動制御する装置等を含む。自動操縦装置7は、自動避航装置2からの針路と速力の情報を受けて、操船指示に応じて、適宜、避航操船を行いながら、次のウエイポイントに向けて自律航行を行う。
表示装置6の表示画面では、例えば、結果の効用値117を表す3次元グラフ、言い換えると避航操船空間の位置毎の効用値(後述の図7)を表示する。
[状況]
図2は、避航支援およびシミュレーションに係わる、海域での自船と他船との衝突に係わる状況の一例を示す。本例では、自船OSは、北に向けて所定の速力で進行しており、他船TSは、西に向けて所定の速力で進行している。自船OSおよび他船TSがそのまま進行を続けると、所定の時間(最近接時間と呼ぶ)後に衝突する可能性がある。この場合、他船TSを右側に見る自船OSに衝突回避義務が生じる。このような場合に、自船OSは、自動避航装置2を用いて、少ないロスで衝突を回避するための避航操船方法(前述の効用値114)を探索する。
[選好度]
図3は、図1の自動避航装置2における選好度113の計算処理結果の一例を示す。図3で、横軸(図示の左右方向)は、変針角[deg]であり、原針路を0degとして左変針60degから右変針60degまでの範囲を示す。変針角を記号Xiでも表す。縦軸(図示の奥行方向)は、変速率[%]であり、船の運航スケジュールから求められる計画速力を100%として0%から100%までの範囲を示す。変速率を記号Xjでも表す。避航操船空間は、この横軸(Xi)および縦軸(Xj)で示される空間であり、避航操船の選択肢を表す空間である。
一方、高さ軸は、図1の選好度113に対応する選好度であり、0から1までの値範囲を有する。この選好度は、1に近づくほど好ましさが増し、0に近づくほど好ましさが減ることを表す。通常、操船者は、他船や陸域等の障害物が存在しない場合、次のウエイポイントに向かう原針路と船の運航スケジュールを守るための計画速力を維持することを好み、針路や速力をできるだけ変化させないことを好む。これは、言い換えると経済性が高い操船である。選好度を記号Pb(Xi,Xj)でも表す。この選好度Pb(Xi,Xj)は、このような操船者の主観を反映して、式1によって定められる。式1の各項は、式2および式3に示される指数関数によって定められる。自動避航装置2は、変針角(Xi)と変速率(Xj)との組み合わせ(対応する図3の避航操船空間での位置)毎に、式1の選好度Pb(Xi,Xj)を計算する。
式1: Pb(Xi,Xj)=Pb(Xi,0)×Pb(0,Xj)
式2: Pb(Xi,1)=exp(−Ac×|ΔCo|)
式3: Pb(0,Xj)=exp(−Av×|ΔV|)
式2の項Pb(Xi,0)を変針選好度ともいう。式3の項Pb(0,Xj)を変速選好度ともいう。変針選好度Pb(Xi,1)は、変針角を0degから量ΔCoで変化させた場合の選好度を表す。一方、変速選好度Pb(X0,j)は、変針角を0degとした場合で、変速率を100%から量ΔVで変化させた場合の選好度を表す。式2および式3における係数Acおよび係数Avは、予め設定される。係数Acは、右変針時と左変針時で異なる値に設定されてもよい。
[衝突危険度]
図4は、図1の自動避航装置2における衝突危険度112の計算処理内容の一例の説明図である。図5は、排他的領域(バンパー)の基本構成についての説明図である。図6は、図1の自動避航装置2における衝突危険度112の計算処理結果の一例を示す。
例えば図2のような状況の場合において、自動避航装置2は、図6のような衝突危険度112を生成する。図6で、横軸および縦軸は、図3と同様の避航操船空間を示す。高さ軸は、図1の衝突危険度112に対応する衝突危険度(Rk)であり、0から1までの値範囲を有する。この衝突危険度は、1に近づくほど危険が増し、0に近づくほど危険が減ることを表す。自動避航装置2は、図6の避航操船空間の位置毎に、図4のような方式を用いて、衝突危険度(Rk)を計算する。
図4には、それぞれ黒領域で示す自船OSと他船TSとの相対関係が示されている。自船OSは、絶対軸上の座標(Xos,Yos)に位置し、所定の針路へ速力Vosで進行する。一方、他船TSは、絶対軸上の座標(Xts,Yts)に位置し、所定の針路へ速力Vtsで進行する。ここで、自船OSまたは他船TSの一方は基準船舶であり、他方は対象船舶である。基準船舶の位置は、相対軸上の原点に定められ、基準船舶の針路は、相対軸上のY軸に定められ、それに直交する軸は、相対軸上のX軸に定められる。本例では、基準船舶が他船TS、対象船舶が自船OSであるが、相対関係であるため、基準船舶が自船OS、対象船舶が他船TSであってもよい。
このような相対軸上で、対象船舶である自船OSは、速力Vosのベクトルと速力Vtsの逆ベクトルとの合成ベクトルで得られる相対針路403へ相対速力Vrで進行する。なお、自船OSの位置、針路、および速力は、図1の船舶情報取得装置4からの自船情報に基づき定められる。また、他船TSの位置、針路、および速力は、船舶情報取得装置4からの他船情報に基づき、他船TSがその針路および速力をそのまま維持するものとして定められる。
図4で、基準船舶である他船TSの周囲には、楕円状の排他的領域(バンパー)400が設定されている。
[排他的領域(バンパー)]
図5には、基準船舶500(自船または他船、例えば自船)の周囲に設定される排他的領域400の例を示す。図5では、説明便宜上のX軸とY軸とから成るX−Y面において、原点(0,0)の位置501に、基準船舶500が配置されており、基準船舶500の進行の方向が例えばY軸(例えば北)である。基準船舶500の外形に対応する形状(本例では五角形)を斜線領域で示す。基準船舶500の外形よりも外側には、楕円形状で示す排他的領域400を有する。本例の排他的領域400は、初期設定値に基づいた基準サイズおよび基準形状を持つバンパー(E0とする)の場合を示す。このバンパーE0は、基準サイズとして、X軸での径(短径)A、およびY軸での径(長径)Bを有する。この基準サイズは、自船の全長(例えば全長503)および速力、他船の全長および速力といった、計算対象となる2隻の船舶の対の情報に基づいて定められる。船舶の全長のみならず、横幅等を用いてもよい。
また、排他的領域400の中心の位置502は、基準船舶500の位置501に合わせた位置としてもよいが、図示のように、基準船舶500の位置501に対してシフト(言い換えるとオフセット、偏位)した位置としてもよい。本例では、バンパーE0の中心の位置502は、基準船舶500の位置501から、X軸で距離C、Y軸で距離Dの分だけシフトした位置に設定されている。この偏位は、船舶の自船の進行方向の右から横切る他船舶の回避義務は自船になると言った交通ルール等が反映されている。バンパーの設定は、形状やサイズだけでなく、このような偏位(言い換えるとシフト位置)の設定も含む。なお、バンパー400の中心の位置は、基準船舶500の重心、進行方向中心点、ブリッジ位置、等に設定してもよい。
[衝突危険度−リスク関数]
図5のようなバンパー400を用いて、図4のように、リスク関数401,402が定義される。リスク関数401,402は、基準船舶である他船TSの位置(Xts,Yts)からバンパー400の外周(各相対軸での方向)に向けて最大値から最小値に順次推移するような関数である。具体的には、リスク関数401は、相対軸のY軸用であり、他船TSの位置となる原点座標では最大値(例えば1.0)となり、バンパー400の外周が位置する最大座標および最小座標では最小値(例えば0)となる。同様に、リスク関数402は、相対軸のX軸用であり、原点座標では最大値(例えば1.0)となり、バンパー400の外周が位置する最大座標および最小座標では最小値(例えば0)となる。本例では、リスク関数401,402は線形で構成されている。
図1の自動避航装置2は、図4のようなバンパー400およびリスク関数401,402に基づいて、対象船舶である自船OSが将来的に通過するバンパー400内の位置に応じたリスク関数401,402の値を算出することで、衝突危険度112を計算する。具体的には、自動避航装置2は、自船OSが相対針路403上を進行した場合の、他船TSの位置(Xts,Yts)を原点とし、他船TSの船首方向をX軸、船測方向をY軸とする総体軸を置き、この相対軸のY軸との交点座標404をみて、交点座標404に対応するリスク関数401の値を、Y軸衝突危険度Ryとして計算する。同様に、自動避航装置2は、相対軸のX軸との交点座標405をみて、交点座標405に対応するリスク関数402の値を、X軸衝突危険度Rxとして計算する。
そして、自動避航装置2は、下記の式4に示すように、Y軸衝突危険度RyかX軸衝突危険度Rxの大きい方の値に、所定の重み付けを行うことで、衝突危険度112を計算する。衝突危険度112を、記号R(Xi,Xj)でも表す。ここで、Xi,Xjは、前述の変針角(Xi)と変速率(Xj)で、前述のRx,Ryを計算した時点から、針路あるいは速度を変更すると仮定すると、自船OSの相対針路が変化するため、Rx,Ryは、それぞれXi,Xjの関数になる。式4で、演算であるmax(Rx,Ry)は、Y軸衝突危険度RyかX軸衝突危険度Rxの大きい方の値をとることを示す。“Tc”は最近接時間であり、“Wt”は予め設定された一定時間である。式4では、最近接時間Tcが短いほど、衝突危険度R(Xi,Xj)が高まるような重み付けがなされている。
式4: R(Xi,Xj)=max(Rx,Ry)×(1−Tc/Wt)
また、実際には、自船に対して所定の範囲内に他船が複数隻(q隻とする。qは2以上の整数)が存在する場合がある。それらの複数隻の他船のうち、衝突に関して最も影響が大きい他船を少なくとも考慮する必要がある。これに伴い、図6の避航操船空間の位置毎に、対象となる他船(すなわち最も影響が大きい他船)も異なり得る。
そこで、実際には、式4の衝突危険度R(Xi,Xj)の代わりに、下記の式5に示す衝突危険度Rk(Xi,Xj)が用いられる。式5の衝突危険度Rk(Xi,Xj)は、避航操船空間の位置毎に、単数または複数の他船のうち最も影響が大きい他船に対する衝突危険度R(Xi,Xj)によって定められる。演算であるmaxは、各他船を表すk=1からqまでの各衝突危険度R(Xi,Xj)のうち、最大の値をとることを示す。
式5: Rk(Xi,Xj)=max{R(Xi,Xj)}
[効用値]
図7は、図1の自動避航装置2における効用値114の計算処理結果の一例を示す。横軸および縦軸は、図3の場合と同様の避航操船空間を示す。高さ軸は、効用値114に対応する効用値であり、0から1までの値範囲を有する。この効用値は、1に近づくほど効果が増し、0に近づくほど効果が減ることを表す。効用値114を記号Ut(Xi,Xj)でも表す。自動避航装置2は、図7の避航操船空間の位置毎に、下記の式6に示されるように、式1の選好度Pb(Xi,Xj)から式5の衝突危険度Rk(Xi,Xj)を減算することで、効用値Ut(Xi,Xj)を計算する。この際、衝突危険度Rk(Xi,Xj)は、詳細には、所定の係数αで重み付けされる。
式6: Ut(Xi,Xj)=Pb(Xi,Xj)−α×Rk(Xi,Xj)
このような演算に伴い、図7の効用値Utは、図3の選好度Pbから図6の衝突危険度R(特にRk)を減算することで得られる。最適な針路等の避航操船方法は、効用値Ut(Xi,Xj)が最大となる方法である。図7の例では、効用値Utの最大値701(対応する位置)は、変針角が18degで、変速率が100%である。すなわち、最適な避航操船方法は、速力を維持して、変針角18degの右変針を行う方法となる。自動避航装置2は、この効用値Utが最大となる避航操船空間の位置(最大値701)に対応する変針角および変速率を、最適な避航操船方法として、自動操縦装置7へ操船指示を与える。
なお、自動避航装置2は、図3の選好度、図6の衝突危険度、図7の効用値といった各情報を、表示装置6の表示画面において、避航操船空間を含む3次元グラフのような態様で表示してもよい。また、操船計算装置1でも、同様に、シミュレーションでの効用値等の情報を、表示画面に表示してもよい。
[操船計算装置]
以上、前提となる自動避航装置2の特にプログラム3の概要に関して説明した。次に、そのプログラム3を用いて操船シミュレーションを行う操船計算装置1について説明する。
[システム利用サイクル]
図8は、本システムの利用に関する概略的なサイクルを示す。(1)図1のユーザU1は、操船計算装置1において事前の操船シミュレーションを、バンパーのパラメータを変更しながら繰り返し実行させる。これにより、操船計算装置1は、その時点でのバンパーの最適値106を決定する。
(2)ユーザU1は、上記(1)で決定したバンパーの最適値106を、実際の自動避航装置2のプログラム3にバンパー設定値111として設定する。実際の船舶の航行の際に、自動避航装置2のプログラム3による自動避航を適用する。自動避航装置2は、その自動避航・避航支援の際のモニタとともに、本船情報、他船情報に関するデータを履歴として記録する。操船計算装置1は、自動避航装置2からその履歴のデータを収集・記録する。ユーザU1および操船計算装置1は、自動避航がうまくいかずユーザU2である操船者が操船権を取って独自に避航動作を行った場合などの失敗事例のデータもあれば収集する。
(3) ユーザU1は、上記(2)の履歴のデータを用いて、自動避航・避航支援機能に係わる検証を行う。検証は、例えばそのバンパー設定値での自動避航装置2の動作結果が適切であったかどうか等の検証である。ユーザU1は、検証結果に基づいて、(1)の操船シミュレーションへのフィードバックを行う。これは、例えばシナリオやバンパーの初期値の見直し、評価の妥当性の確認が挙げられる。
上記のように、PDCA的なサイクルで、シミュレーション等が繰り返される。これにより、実際の航行の経験を活かして、バンパー設定値をより好適または最適な値へ更新してゆくことができる。すなわち、その結果、避航支援機能をより高めることができる。
[操船計算装置−処理フロー]
図9は、操船計算装置1での主な処理のフローを示す。図9のフローは、ステップS1〜S7を有する。ステップS1では、ユーザU1の操作に基づいて、操船計算装置1は、操船シミュレーションに使用するための各種のデータを収集し、分析処理等を行う。収集するデータの例は、海上交通流データがある。海上交通流データは、実海域での船舶の航行のデータである。この海上交通流データは、例えばAISデータやレーダ観測データ等に基づいて得られる。操船計算装置1は、この海上交通流データから、整理や分析処理によって、船種、船型、航跡等を含むデータを得る。
ステップS2では、ユーザU1の操作に基づいて、操船計算装置1は、操船シミュレーションのための評価用シナリオ(シミュレーションシナリオ)を作成し、作成した評価用シナリオを、図1の条件102の1つ(言い換えるとプログラム設定情報の1つ)として、プログラム3のコピー13に設定する。シナリオの例は、海域の種類(例えば遠洋、近海、湾内等)、船種、海上の自船および他船(単数または複数)の輻輳や衝突に係わる状況、言い換えると進行方向や速力等の相対関係、また、実際に過去に海難やニアミスが報告されている海域や状況、また、前述(図8)の自動避航装置2の実際の操船から回収されたデータに基づいたデータ、等を総合したシナリオが挙げられる。
ステップS3では、ユーザU1の操作に基づいて、あるいはシステムによって自動的に、操船計算装置1は、排他的領域のパラメータ値として、形状やサイズや偏位等を様々に異ならせた複数の排他的領域値103を生成し、各回のシミュレーション毎に対応する排他的領域値103を、コピー13に設定する。
ステップS4では、操船計算装置1は、プログラム3のコピー13において、ステップS2のシナリオを含む条件102と、ステップS3の排他的領域値103との組み合わせを様々に変えながら、操船シミュレーション計算を繰り返し実行し、各回のシミュレーションの結果をメモリに保存する。
ステップS5では、操船計算装置1は、操船シミュレーション計算結果における、排他的領域値104毎に、評価値105を計算し、メモリに記憶する。
また、バンパーの最適値の探索に関しては、以下のような処理としてもよい。操船計算装置1は、評価結果の高い排他的領域値104の近傍に、別の複数のパラメータ候補を自動生成し、再び、ステップS4に戻り、操船シミュレーションを繰り返す、と言った再帰的な処理を行うことにより、最適値の探索を行う。言い換えると、操船計算装置1は、複数用意したバンパーパラメータ値について、避航操船プログラムを用いたシミュレーション計算を繰り返し実行し、シミュレーション結果の結果に基づいて、パラメータ値に応じた評価値を計算し、評価値に基づいて、パラメータ値から最適値を決定する。さらに、操船計算装置1は、そのパラメータ値の周辺に新しい複数のパラメータ値を設定し、シミュレーション、評価、および最適値の決定を繰り返すことで、パラメータ値の最適解空間の探索を行う。
ステップS6では、操船計算装置1は、操船シミュレーションを終了するかどうかを確認し、終了する場合にはステップS7へ進み、継続する場合にはステップS3およびステップS2へ戻る。この終了は、例えば、ユーザU1が終了指示操作を行うことでもよいし、予め設定されたシミュレーション終了条件(例えばパラメータ値のすべての組み合わせを試行した場合等)を満たすことでもよい。ステップS3に戻った場合、それまでとは異なるバンパーパラメータ値が設定されて、ステップS4でシミュレーションが同様に行われる。
ステップS7では、操船計算装置1は、それまでにメモリに保持された、各回の操船シミュレーション結果における排他的領域値104毎の各評価値105に基づいて、排他的領域の最適値106を決定する。すなわち、評価値105が最も高い排他的領域値104が選択される。操船計算装置1は、決定した排他的領域の最適値106を、自動避航装置2のプログラム3に排他的領域設定値111として設定する。言い換えると、プログラム3における排他的領域設定値111が更新される。
なお、ステップS2とステップS3の処理が同時並列で行われてもよいし、順次に行われてもよい。また、ステップS2のシナリオと、ステップS3のバンパーのパラメータ値とが所定の関係を持つ場合、操船計算装置1は、その関係を情報として管理・保持する。例えば、シナリオA,B,Cがあり、シナリオAではパラメータ値P1,P2が適用され、シナリオBではパラメータ値P3,P4が適用され、シナリオCではパラメータ値P1〜P4が適用される、といったように、組み合わせの関係が規定されてもよい。
なお、図9の例では、各回のループ内で評価処理(ステップS5)を行っているが、これに限らず、複数回のシミュレーションの結果を得た後、まとめて評価処理を行う形態としてもよい。なお、コピー13は、プログラム3と全く同じということには限られず、操船計算装置1での処理用のプログラム部分が追加された構成等でもよい。
なお、図9の破線枠で示す部分301は、機械学習を含むAIを利用できる範囲を示す。例えば、操船計算装置1は、船舶情報取得装置4(図1)のレーダやカメラ、AIS等の複数のセンサー情報を用いて、確度の高い周囲の他船の情報の推定を行うことが出来る。また、操船計算装置1が収集したデータを、新たなシナリオの自動作成にも利用することが出来る。更に、評価シナリオを用いて、複数の排他的領域値を操船シミュレーター(操船計算装置1)で評価した結果について、シナリオと排他的領域値を入力値、評価値を出力値として、操船シミュレーターの結果を利用して、入力と出力の関係を機械学習し、シナリオ、バンパー形状に対する評価をモデル化して保存する。これにより、ある程度、操船シミュレーターの結果が蓄積されれば、過去のデータに基づいて、操船シミュレーターを介さずに、バンパー形状の評価値を予測することも可能になる。また、操船計算装置1の運用が進み、事例のデータ蓄積が進んだ場合には、様々なケースに対して毎回操船シミュレーターを回して最適解を見つけたとして、適用しなかった他のシナリオの場合に最適か判断がつかないが、実効性の観点から全てのシナリオに当たるわけにはいかない場合、が生じることも十分に考えられる。こうした場合には、操船シミュレーターのシナリオを入力値とし、それに対する排他的領域のパラメータ値を出力値とする学習データを、機械学習でモデル化する。これにより、こうした入力と出力の組がデータとして十分に蓄積されれば、任意のシナリオに対して、最適な排他的領域の形状やサイズが、出力される学習モデルを構築できる。よって、操船計算装置1の広がりによるデータ収集、シナリオの拡大、それに基づく操船シミュレーションによる最適値の決定を蓄積することの利点を、大きく利用できるようになる。
[排他的領域(バンパー)のパラメータ値]
図10〜図12は、図5で示した基本概念の排他的領域(バンパー)に基づいて、図1の操船シミュレーション用のパラメータである排他的領域値103の生成について示す。操船計算装置1は、バンパーを構成する各要素について可変値とすることで、様々な排他的領域値103を生成する。
バンパー(排他的領域値103や排他的領域設定値111)を構成する要素は、形状、サイズ、および偏位等が挙げられる。形状については、図5では楕円状のみであったが、図10のように、各種の形状が挙げられる。図10で、(A)の排他的領域1001は、第1種類として楕円の場合を示す。なお、楕円は径あるいは焦点位置等で定義できる。(B)の排他的領域1002は、第2種類として矩形の場合を示す。(C)の排他的領域1003は、第3種類として船舶外形1100を外側に等倍率で拡大延長した形状(船舶外形延長図形)の場合を示す。本例では、船舶外形1100および排他的領域1003は、単純化された五角形としているが、実際の詳細な船舶外形(例えば曲線を含む形状)を用いてもよい。この形状は、コンピュータ・グラフィクス(CG)等のデータで定義されてもよく、例えば線または領域を構成する点毎に位置座標を持つ。バンパーの形状については、上記例に限らず、多角形、ポリゴン、数式等で表現できる任意の形状でよく、それらのうちシミュレーション性能を考慮して選択した形状を用いればよい。基準船舶形状について1種類のみ示したが、これに限らず、船種や船型に応じて各種の形状が存在する。図10の(D)は、バンパーの形状がポリゴンで構成される例を示す。図形1004は、予め登録されたポリゴンで構成され、X,Y方向の大きさを可変でき、回転角θで回転できる。
サイズについては、図5では楕円の一定の径(A,B)であったが、図11のように、各サイズが挙げられる。図11では、バンパー形状を楕円とする場合における、可変サイズの例を示す。各種の形状毎に同様に各サイズが生成される。船舶形状1100は、対象となる船舶の概略的な形状を表す図形である。バンパー1101は、第1サイズとした場合である。ここでは、サイズのパラメータとして、楕円を構成するY軸の径Bのみを示すが、X軸の径Aについても同様である。径Bに関するパラメータ値の例としてサイズ値b1〜b4を示す。
排他的領域1101は、第1サイズの場合であり、サイズ値b1を有する。サイズ値b1は、船舶外形1100に対する最小包含楕円(言い換えると外接楕円)とした場合を示す。このサイズ値b1は、概略的には船長1100aに対応させた値である。排他的領域1102は、第2サイズの場合であり、サイズ値b2を有する。サイズ値b2は、サイズ値b1に対し2倍とした場合を示す。同様に、排他的領域1102のサイズ値b3、排他的領域1104のサイズ値b4は、3倍、4倍の場合を示す。これに限らず、より細かい幅で複数のサイズ値を生成してもよい。パラメータ値の数や細かさは、シミュレーション計算性能を考慮して決めればよい。シミュレーション計算部11は、このように、例えば所定の範囲(最小値から最大値までの範囲)内で、複数のサイズ値を生成する。
バンパーのサイズの可変については、図11の例のように線形としてもよいし、非線形としてもよいし、予め規定した関数を用いてもよい。
偏位については、図5では一定の偏位の量(C,D)であったが、図12のように、各種の偏位が挙げられる。図12では、形状が楕円である場合における、偏位の4つの例を示す。偏位は、前述のように、船舶の位置に対する排他的領域のシフト位置である。(A)で、排他的領域1200は、偏位前の領域であり、図示のX−Y面において、基準船舶の位置1201に合わせた原点に位置する。排他的領域1211は、第1偏位の場合を示す。位置1202aは、偏位後の排他的領域1211の中心の位置である。ベクトル1203aは、偏位(方向と距離)を表し、X軸での偏位量c1と、Y軸での偏位量d1とを有する。排他的領域1211の偏位のパラメータ値は、ベクトル1203aあるいは偏位量(c1,d1)等で表せる。また、排他的領域1212は、第2偏位の場合を示し、第1偏位と同じ方向で異なる距離(例えば2倍)とした場合である。この偏位は、ベクトル1203bあるいは偏位量(c2,d2)等で表せる。(A)での偏位は、例えば自船が右へ変針する場合を想定したものである。
同様に、図12の(B)では、(A)に対し異なる方向での偏位の例として第3偏位、第4偏位の場合を示す。(B)での偏位は、例えば自船が左へ変針する場合を想定したものである。排他的領域1213は、第3偏位の場合を示し、ベクトル1203c等で表せる。排他的領域1214は、第4偏位の場合を示し、第2偏位と同じ方向で異なる距離(例えば2倍)とした場合であり、ベクトル1203d等で表せる。
シミュレーション計算部11は、このように、例えば所定の範囲(最小値から最大値までの範囲)内で、複数の偏位のパラメータ値を生成する。最小値は0であり、すなわち偏位無しである。
[バンパー値の生成・設定処理例]
図9のステップS3のバンパー値103の生成・設定処理の例として、以下としてもよい。ステップS3−1で、シミュレーション計算部11は、まず、バンパー形状の種類を設定する。バンパー形状の種類は、例えば、楕円、矩形、五角形等がある。次に、ステップS3−2で、シミュレーション計算部11は、上記設定された種類のバンパー形状に基づいて、設定された範囲内で、その形状における各サイズ値を生成する。
ステップS3の際、ユーザU1が操船計算装置1の表示画面でデフォルトのバンパー形状の種類から使用する種類を選択し、初期値101としてもよい。また、ユーザU1が、予め、操船計算装置1を操作して、基準バンパーの形状、サイズ、および偏位等を設定しておいてもよい。そして、操船計算装置1が、自動的に、基準バンパーを初期値101として、サイズ等を可変することで、各バンパー値103を生成してもよい。
[排他的領域(バンパー)の決定に影響する要素]
排他的領域は、例えば自船の周囲に安全航過距離を確保する目的で設定されている。バンパーの形状やサイズ等の決定に影響する要素としては、以下が挙げられる。括弧[]内は単位を示す。
・船種、船型
・自船および他船の船長:LoA(Length of All)[m]
・自船の速力:True Speed[Kt]
・相対距離[mile]
・閉塞度(避航操船空間閉塞度):BC[%]
・可航領域
・旋回半径
なお、特許文献1には、閉塞度について記載がある。閉塞度は、避航操船空間における輻輳の度合いに対応している。可航領域は、電子海図上の地形、地理的制約に対応する。
衝突予防法をはじめとする海事法令に従った操船を実現するために、バンパーには前述の偏位を設定する場合がある。この偏位を決定するための要素についても、上記と同様に様々な要素がある。
操船計算装置1は、上記のような要素を考慮して作成されたシナリオ等の条件102に基づいて、上記のような要素を考慮して生成された各バンパー値103についての操船シミュレーションを行い、これによってバンパーの最適値106を決定する。
[排他的領域の変形例]
変形例として、排他的領域は、以下のように、複数の部分から構成されてもよい。図13は、ある排他的領域(楕円状の場合)が、複数の種類の領域から構成される例を示す。図13の(A)は、ある排他的領域が、下位概念として2種類の部分から構成される例を示す。第1部分をソフトバンパー、第2部分をハードバンパーと呼ぶ場合がある。ある1つの排他的領域1300は、ソフトバンパーであるバンパー1301と、ハードバンパーであるバンパー1302とのセットで構成されている。バンパー1301のサイズ(例えば径b1301)に対し、バンパー1302のサイズ(例えば径b1302)の方が小さい。第1部分であるソフトバンパーは、十分な可航距離を確保する領域である。十分な可航距離とは、操船者からみて不安を感じるかもしれないが他船の侵入が許容できる領域である。第2部分であるハードバンパーは、限界航過距離を確保する領域である。限界航過距離とは、自船の安全上、決して他船を侵入させたくない領域である。
図13の(B)では、別の構成例を示す。ある1つの排他的領域1310は、安全領域である第1バンパー1311と、注意領域である第2バンパー1312と、危険領域である第3バンパー1313との、3種類の部分のセットで構成されている。安全領域は余裕をもって十分に広く確保された領域であり、注意領域は領域境界線を越えるような他船の侵入があった場合に注意すべき領域であり、危険領域は他船の侵入があった場合に危険な領域である。
操船計算装置1は、あるバンパー設定値111に関して、上記のような複数の種類の部分のセットで構成される場合でも、同様に、それぞれの部分毎に、シミュレーションによって最適値を決定する。
[閉塞度を用いる場合]
操船計算装置1は、上記閉塞度を用いて、バンパーのサイズ等を可変に生成してもよい。具体例は以下の通りである。図14は、海域での状況の例を示す。図14の(A)は、閉塞度が高い状況の例として、湾内で複数の他船が存在する場合を示し、(B)は、閉塞度が低い状況の例として、遠洋で単体の他船が存在する場合を示す。(A)では、自船OSに対し、他船として他船TS1,TS2,TS3,TS4が存在する。自船OSが前方(例えば北)に進行中、例えば他船TS1が右から左へ横切ろうとする状況である。自船OSと他船TS1の状態として、時点t=t1,t2,t3での3つの状態を示す。自船OSは例えば右に変針することで他船TS1との衝突を回避する。自船OSや他船TS1のバンパー1401は、この閉塞度の状況に対応させたサイズを持つ例を示す。距離1410は、時点t3での最近接距離を示す。
(B)では、自船OSに対し、他船として他船TS1が存在し、(A)と同様に、自船OSが前方に進行中、他船TS1が右から左へ横切ろうとする状況である。自船OSは例えば右に変針することで他船TS1との衝突を回避する。自船OSや他船TS1のバンパー1402は、この閉塞度の状況に対応させたサイズを持つ例を示す。距離1420は、時点t3での最近接距離を示す。
(A)のバンパー1401は、高い閉塞度に伴い、基準サイズのバンパーと比較して小さいサイズが設定されている。一方、(B)のバンパー1402は、低い閉塞度に伴い、基準サイズのバンパーと比較して大きいサイズが設定されている。(A)のようにバンパー1401のサイズが小さい場合、図4のようなリスク関数の幅が狭まることから、衝突危険度が高くなる変針角の範囲も図6の例に比べて狭まる。その結果、効用値を決める選好度および衝突危険度のうち、選好度の影響が相対的に高まる。効用値が最大となる変針角は、図7の例に対し、0deg側にシフトする。(B)のようにバンパー1402のサイズが大きい場合、リスク関数の幅が広がることから、衝突危険度が高くなる変針角の範囲も図6の例に比べて広がる。その結果、効用値を決める選好度および衝突危険度のうち、衝突危険度の影響が相対的に高まる。効用値が最大となる変針角は、図7の例に対し、0degから離れる側にシフトする。
シナリオの一要素として例えば上記輻輳度が含まれる。操船計算装置1は、その輻輳度を含むシナリオに応じて、好適なバンパーのサイズを、操船シミュレーションによって決定する。
[バンパー設定方式]
操船計算装置1でのバンパー設定および操船シミュレーションの際に、計算対象となる各船に対するバンパー値103の適用の方式として、以下の方式が挙げられる。いずれの方式も可能である。
(1)計算対象となる自船と他船との対において、一方の基準船舶(例えば自船)のみにバンパーを設定する方式。
(2)計算対象となる自船と他船との対において、両方の各船舶に各バンパーを設定する方式。
また、各船舶に各バンパーが設定される場合、各船舶に同じバンパーが設定される場合と、各船舶に応じた異なるバンパーが設定される場合とのいずれの方式も適用可能である。
また、操船計算装置1でのバンパー設定および操船シミュレーションの際に、計算対象となる各船に関して、効用値等を計算する方式として、以下の方式が挙げられる。いずれの方式も可能である。
(1)計算対象となる自船と他船との対において、一方の基準船舶(例えば自船)のみについて、効用値等を計算する方式。この場合、他方の船舶(例えば他船)については、設定されたシナリオでの所定のレーン等に沿って航行するものとされる。すなわち、他方の船舶については、衝突回避や最適針路選択等のインテリジェンスを持たないと仮定される。
(2)計算対象となる自船と他船との対において、両方の各船舶について、それぞれ効用値等を計算する方式。この場合、各船舶がインテリジェンスを持ち、状況に応じて針路を変える等、相互作用を生じる。
[評価]
次に、図1の操船計算装置1の評価部12による評価処理(図9のステップS5)の例について説明する。評価部12は、シミュレーション計算部11によるシミュレーション計算結果に伴うバンパー値104毎に、評価値105としてスコアを計算する。評価部12は、評価処理のためのプログラム(操船評価プログラム)等で構成される。各バンパー値104は、前述のように、形状、サイズ、および偏位等を規定する各パラメータ値で構成されている。また、各バンパー値104は、各回のシミュレーションで適用されるシナリオ等の条件との関係を持つ。また、各回のシミュレーション結果では、バンパー値104毎に、前述の効用値114等が計算されている。評価部12は、バンパー値104毎の効用値114等を参照して、スコアを計算する。
なお、評価部12の評価処理のためのプログラムを、シミュレーション計算部11のプログラム(コピー13)内に入れ込んでおく形態としてもよい。その場合、シミュレーション計算に伴ってスコアが計算および記録される。
評価部12の評価処理の内容詳細については限定しない。以下では、評価処理の一例を示す。以下の評価処理は、Auto Grading Systemによる、安全性と経済性とを加味した評価方式の場合である。Auto Grading Systemは、一例として、以下のような採点項目および採点手法を持つ。
採点項目の例として、「他船・障害物の航過」、「速力」、「航行禁止区域」がある。各採点項目における採点手法および基準は以下の通りである。「他船・障害物の航過」採点項目についての採点手法は、他船等の障害物との「距離」と、自船からみた「相対方位変化率」とに基づいて、「衝突危険領域」を数値化し、減点のスコアリングを行うというものである。「速力」採点項目についての採点手法は、航路内他、予め設定した速力からの逸脱時間を数値化し、減点のスコアリングを行うというものである。「航行禁止区域」採点項目についての採点手法は、航行禁止区域に、進入していた時間を数値化し、減点のスコアリングを行うというものである。
図15は、上記「他船・障害物の航過」採点項目に関する採点手法についての説明図である。図15のグラフは、海域での衝突に係わる状況として、図2や図14の例のように、自船に対し他船が横切る状況に対応する。図15のグラフは、横軸が上記「距離」Dist[NM]であり、縦軸が上記「相対方位変化率」(Bow Crossing Bearing change rate)[deg/min]である。一点鎖線で示す領域1501は危険領域であり、破線で示す領域1502は注意領域であり、それら以外の領域は安全領域である。実線で示す領域1503は、危険領域および注意領域を包含する領域(「衝突危険領域」)であり、他船が危険領域または注意領域に侵入した場合に減点するという領域である。
上記採点方式について補足すると、船舶同士の衝突は、自船に対し他船の方位変化が無いまま近づいた場合に発生する。そのような考え方に基づいて、距離が一定以上保たれ、かつ方位変化が大きいことを、「安全な避航」と定義する。この方式では、「安全な避航」である場合(グラフでの安全領域)には、評価値を高くし、「安全な避航」から離れる場合(グラフでの領域1503)には、評価値を低くする。図15のようなグラフは、実際の操船者のヒアリング結果(言い換えると感覚や経験)の集計に基づいている。プログラム3および評価処理は、このようなグラフのデータが反映される。これにより、バンパーを含むモデルを用いたコンピュータによる自動的な避航支援は、操船者の感覚等に照らしても問題無いものとなる。
[最適値の決定]
図16は、図1の操船計算装置1の評価部12によるバンパーの最適値106の決定処理(図9のステップS7)の例を示す。図16のグラフの横軸は、バンパー値におけるサイズのパラメータ値(例えばs1,s2,……)であり、下側に対応するバンパーのイメージを示す。縦軸は、サイズに応じたスコアであり、ここでは0から100までの値範囲を示す。スコアは、例えば図示のような曲線となる。例えばバンパー最適点1601として示すように、サイズが値s6の場合に、スコアが最大値(例えば100)となる。本例ではサイズの場合を示したが、同様に、形状や偏位との組み合わせでの排他的領域値104について、評価が可能である。
操船計算装置1は、図16の例のような、シミュレーションおよび評価で得た、排他的領域値104、評価値105、および最適値106における、バンパーの形状、サイズ、および偏位等を含む情報を、操船計算装置1の表示画面に表示する。ユーザU1は、表示画面で、それらの情報を確認できる。最適値106の情報を表示する際には、図5のような形式の表示としてもよい。
[自動避航プログラム設定]
上記シミュレーションで得たバンパーの最適値106をプログラム3に設定する際には、バンパーの最適値106のみならず、シナリオ等の条件102とのセットで設定されてもよい。例えば、状況Aではバンパー値A、状況Bではバンパー値B、といったように、複数のバンパーの最適値106がプログラム3にバンパー設定値111として設定されてもよい。その場合、自動避航装置2は、プログラム3に従った避航支援の際に、状況に応じて異なるバンパーの最適値106を適用する。
[効果等]
上記のように、実施の形態1の操船計算装置1によれば、好適または最適なバンパー設定値(図1の最適値106)が決定できるので、その結果として自動避航装置2による避航支援や自動操船の精度等を高めることができる。プログラム3を含む自動避航装置2によって、より安全かつ経済的な避航操船が可能となる。
(実施の形態2)
図17を用いて、本発明の実施の形態2の操船計算装置について説明する。バンパーを用いた避航操船の計算の方式(プログラム等)は、実施の形態1および特許文献1のような例に限定されない。実施の形態2では、実施の形態1および特許文献1の例とは異なる方式に適用する場合を示す。実施の形態2では、その方式として、バンパーを用いて、先に、衝突危険領域(衝突のリスクがあるエリア)を計算し、次に、次の目的地(言い換えると、与えられる次のウエイポイント)に至る、経路探索を行って、中間的なウエイポイントに向かう針路とそこに至る速力を計算する。中間的なウエイポイントとは、言い換えると、中間的な目的地、目標値、暫定的なウエイポイントであり、あくまでも危険回避するために置かれる中間的な目標である。この方式は、直線的に目的地に向かうと衝突のリスクがある場合に、一時的に、このような衝突回避のための暫定的なウエイポイントを1つないし複数置いて、そこに向かうという方式である。
図17は、実施の形態2の操船計算装置1を含む、システム全体の構成を示す。図17の構成は、図1の構成に対し、方式の違いに対応して、自動避航装置2の自動避航プログラム3の内容が異なり、それに対応して、操船計算装置1でのシミュレーションの内容が異なる。この自動避航プログラム3は、内容として、バンパー設定値111を用いた衝突危険領域112bの計算、最適経路探索113bの計算、および次の暫定ウエイポイントへの針路114bの計算を含む。最適経路探索113bは、衝突危険領域112bを回避した最適経路の探索である。最適経路とは、言い換えると、避航のための暫定ウエイポイントから構成される経路である。衝突危険領域112bと最適経路探索113bの計算は繰り返し行われる。
以下、実施の形態2で、自動避航プログラム3におけるバンパー設定値111を用いた計算の方式について説明する。前述(図3〜図7)の好ましさモデルは、衝突危険度112、選好度113、および効用値114を都度で逐次計算することで、針路および速力を決めるプログラムである。それに対し、実施の形態2では、自動避航装置2のプログラム3は、同様のロジックを利用して、以下のステップS201〜S203の処理を行う。
ステップS201で、自動避航装置2は、バンパー設定値111を用いて、衝突危険領域112bを判定する。ステップS202で、自動避航装置2は、衝突危険領域112bを回避した最適航路(それを構成する暫定ウエイポイント)を探索する。ステップS203で、自動避航装置2は、次の暫定ウエイポイントへの針路および速力を出力する。
より具体的には以下のような処理例が挙げられる。自動避航装置2は、ファストタイムシミュレーションを利用して、ステップS201〜S203の逐次計算の繰り返しを行うことで、最適航路(言い換えると暫定ウエイポイントの列)を得ることが可能である。ステップS201で、自動避航装置2は、与えられたバンパー設定値111をパラメータ値として、最も影響の大きい他船の位置及び針路速力ならびに自船の位置及び針路速力を利用して前述の衝突危険度(Rx,Ry)を計算するロジックを利用して、衝突危険領域112bを判定する。
ステップS202で、自動避航装置2は、ステップS201で得た衝突危険領域112bを避けてなるべく次のウエイポイントに向かうような次の暫定ウエイポイントを設定する。この設定での次の暫定ウエイポイントは、例えば、効用が最も高い針路に、現在の速力で一定時間(例えば1分)進んだ位置、といったものである。自動避航装置2は、ファストタイムシミュレーションで、ある時間後の状況を計算し、そこまでシミュレーション上で船を進める。他船もそれぞれ針路速力を変えず進む。自動避航装置2は、これを暫定ウエイポイントとして記録する。自動避航装置2は、ステップS201,S202の計算を繰り返し、次のウエイポイントにたどり着くまで計算を進める。記録された暫定ウエイポイントの列が、これから進む航路(次の暫定ウエイポイントへの針路114b)になる。
上記のように、実施の形態2の操船計算装置1によれば、自動避航プログラム3の方式に応じて、実施の形態1と同様に、好適または最適なバンパー設定値が決定できる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
1…操船計算装置、2…避航支援装置、3…プログラム、4…船舶情報取得装置、5…電子海図、6…表示装置、7…自動操縦装置、11…シミュレーション計算部、12…評価部、101…排他的領域(バンパー)の初期値、102…条件、103…排他的領域値、104…排他的領域値、105…評価値、106…排他的領域の最適値、111…排他的領域設定値、112…衝突危険度、113…選好度、114…効用値。

Claims (9)

  1. 船舶の避航支援機能を実現するための自動避航プログラムの設定情報を計算する操船計算装置であって、
    船舶の周囲に設定される排他的領域についてのパラメータ値として、少なくとも形状およびサイズを異ならせた複数の排他的領域値を生成し、
    前記パラメータ値を変えながら、前記自動避航プログラムを用いたシミュレーション計算を繰り返し実行し、
    前記シミュレーション計算の結果に基づいて、前記パラメータ値に応じた評価値を計算し、
    前記評価値に基づいて、前記排他的領域の最適値を決定し、
    前記排他的領域の最適値を前記自動避航プログラムに設定する、
    操船計算装置。
  2. 請求項1記載の操船計算装置において、
    前記シミュレーション計算の条件の1つとして、海域での自船および他船の衝突に係わる状況を含むシナリオを作成し、
    前記シナリオに応じた前記シミュレーション計算を実行する、
    操船計算装置。
  3. 請求項1記載の操船計算装置において、
    自船と他船との距離と、相対方位変化率とに基づいて、衝突危険領域を数値化し、前記衝突危険領域に基づいて、前記評価値を計算する、
    操船計算装置。
  4. 請求項1記載の操船計算装置において、
    前記排他的領域についての前記パラメータ値の生成の際には、前記船舶の位置に対して前記排他的領域の偏位した位置についての複数の値を生成する、
    操船計算装置。
  5. 請求項1記載の操船計算装置において、
    前記自動避航プログラムは、前記排他的領域の設定値を用いて、自船が避航操船を行った場合の他船に対する衝突危険度を計算する、
    操船計算装置。
  6. 請求項5記載の操船計算装置において、
    前記避航操船プログラムは、
    現状からの変針角の選択肢と変速率の選択肢とを組み合わせた空間を避航操船空間として、前記避航操船空間の位置毎に、単数または複数の他船のうち最も影響が大きい他船に対する前記衝突危険度を計算し、
    前記避航操船空間の位置毎に、操船者の主観的な好みを表す選好度を計算し、
    前記避航操船空間の位置毎に、前記選好度から前記衝突危険度を減算することで、効用値を計算する、
    操船計算装置。
  7. 請求項1記載の操船計算装置において、
    前記自動避航プログラムは、
    前記排他的領域の設定値を用いて、他船の排他的領域と他船の針路および速力、ならびに自船の針路および速力に基づいて、衝突危険領域を判定し、
    ファストタイムシミュレーションに基づいて、前記衝突危険領域を回避する最適経路を探索し、
    前記最適経路に対応した針路および速力を出力する、
    操船計算装置。
  8. 請求項1記載の操船計算装置において、
    前記排他的領域の最適値を含む情報を、表示画面に表示する、
    操船計算装置。
  9. 請求項2記載の操船計算装置において、
    前記シナリオを含む条件を入力とし、前記排他的領域の最適値を出力とするデータを、機械学習を用いて学習し、
    前記学習に基づいて、前記シナリオを含む条件に対応する入力から、前記排他的領域の最適値を出力する、
    操船計算装置。
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