JP2021018484A - 周辺状態表現方法、避航動作学習プログラム、避航動作学習システム、及び船舶 - Google Patents
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Abstract
Description
これまでにも衝突危険、効率、避航規則を評価した動的計画法による避航操船やファジィ制御理論を援用した衝突危険度の推論を行う自動避航システムなどを始め、強化学習などを用いるものなど、数多くの自動避航操船アルゴリズムが研究・提案されている。
しかし、これらは複数の船舶の避航にうまく対応できるものではないか、もしくは避航操船アルゴリズムを適用する際に避航判定の計算で一度に一隻のみの船舶しか考慮に入れることができなかった。
また、特許文献2には、出発地点から目的地点までの海域を格子状に任意の間隔に区切った交差部分を複数のノードとして設定し、海気象データと船舶が固有に有する個船データとに基づいて、ノード間におけるコストに係るパラメータの予測値を算出してコスト予測データを生成するコストパラメータ生成手段と、海気象データと個船データとに基づいて、ノード間における船舶安全に関するパラメータについて、算出した予測値又は海気象データの少なくとも一方に基づいて避航予測データを生成する避航支援パラメータ生成手段と、避航予測データ及び安全航行に係る許容限界を示す閾値を表す閾値データに基づいて、出発地点から目的地点において、閾値データが示す範囲を満たすエッジを抽出し、コスト予測データに基づいて、エッジから目的地までの最適航路を探索する航路探索手段とを備える運航支援装置が開示されている。
また、特許文献3には、コンピュータに、特定の船舶の航跡が通過する複数のグリッドそれぞれについて、航跡の進入角および退出角をそれぞれ算出する処理を実行させ、複数のグリッドそれぞれについて設定された判定条件に基づき、進入角および退出角が、判定条件に適合するグリッドを抽出する処理を実行させ、抽出されたグリッドにおける航跡での特定の船舶の位置に対応した、他の船舶との相対距離に基づき、特定の船舶が回避行動を行ったか否かを判定する処理を実行させる回避行動判定プログラムが開示されている。
また、特許文献4には、特定の海域に関する水深値メッシュデータ及び潮汐調和定数メッシュデータに基づいて推測した推算水深値を有する推算水深値メッシュデータを取得して視覚化し、船舶が存在する位置情報及び時刻に対応する推算水深値が危険値に相当している場合に、警報を発し、推算水深値を示す位置が識別されるようにも視覚化する海図情報処理方法が開示されている。
また、特許文献5には、センサ群、3次元視野取得部、異物識別部、異物データベース、解析部、深層学習部、学習部、通信部を有し、船舶の移動経路における異物を探知し、識別し、センサデータを収集し解析した結果を利用して、船舶の衝突回避を支援する衝突回避支援システムが開示されている。
そこで本発明は、自船周辺に存在する他船等の避航対象物の数が増減する場合であっても衝突危険性の程度を適切に表現でき、また、その結果を用いて機械学習により避航動作を学習することができる周辺状態表現方法、避航動作学習プログラム、避航動作学習システム、及び船舶を提供することを目的とする。
請求項1に記載の本発明によれば、グリッド状に分割した自船を含む任意の領域を仮想センサーとして、避航対象物との衝突危険性を各セルにおいて表現することができる。また、避航対象物の数が増減する場合であっても、複数の避航対象物の動的情報を同時に検知して制御入力として利用しやすい形に変換することができる。
請求項2に記載の本発明によれば、どの方位においても自船から領域の端までの距離は同じとなり、各方位において満遍なくセルに指標を割り当てることができる。
請求項3に記載の本発明によれば、任意の形状の領域を仮想センサーとして、避航対象物との衝突危険性を各セルにおいて表現することができる。また、自船の位置も領域内の任意の位置に設定すること、グリッドの疎密を任意に設定すること等もできる。
請求項4に記載の本発明によれば、避航対象物がAISを搭載している場合に避航対象物の情報を、AIS情報を利用して確実に取得することができる。
請求項5に記載の本発明によれば、自船と避航対象物の動的情報をもとに将来衝突する危険のある箇所を計算し、衝突危険性の評価を簡潔に行うことができる。
請求項6に記載の本発明によれば、n次元のベクトルで衝突危険性の程度を表す指標を適切に表現することができる。
請求項7に記載の本発明によれば、衝突危険性の程度を表す指標を簡便に表現することができる。
請求項8に記載の本発明によれば、避航動作を学習させることにより、適切な避航動作結果を得ることができる。
請求項9に記載の本発明によれば、単に衝突を回避するだけでなく、ウェイポイントへの針路も考慮した避航動作結果を得ることができる。
請求項10に記載の本発明によれば、避航対象物の数が増減する場合であっても、グリッド状に分割した自船を含む任意の領域を仮想センサーとして用い、機械学習に利用しやすい形で複数の避航対象物の動的情報を同時に検知して、より適切な避航動作を学習することができる。
請求項11に記載の本発明によれば、どの方位においても自船から領域の端までの距離は同じとなり、各方位において満遍なくセルに指標を割り当てることができる。
請求項12に記載の本発明によれば、任意の形状の領域を仮想センサーとして、避航対象物との衝突危険性を各セルにおいて表現することができる。また、自船の位置も領域内の任意の位置に設定すること、グリッドの疎密を任意に設定すること等もできる。
請求項13に記載の本発明によれば、避航対象物がAISを搭載している場合に避航対象物の情報を、AIS情報を利用して確実に取得することができる。
請求項14に記載の本発明によれば、自船と避航対象物の動的情報をもとに将来衝突する危険のある箇所を計算し、衝突危険性の評価を簡潔に行うことができる。
請求項15に記載の本発明によれば、n次元のベクトルで衝突危険性の程度を表す指標を適切に表現することができる。
請求項16に記載の本発明によれば、衝突危険性の程度を表す指標を簡便に表現することができる。
請求項17に記載の本発明によれば、単に衝突を回避するだけでなく、ウェイポイントへの針路も考慮した避航動作結果を得ることができる。
請求項18に記載の本発明によれば、割り当て結果や学習結果を表示手段により視認することができる。
請求項19に記載の本発明によれば、操船手段は、学習手段の学習結果としての学習済モデルを用いてリアルタイムのシミュレーションを行い、シミュレーションの結果導出した避航動作に従って自船を操船することができる。
請求項20に記載の本発明によれば、コンピュータの学習結果としての学習済モデルを用いてリアルタイムのシミュレーションを行い、シミュレーションの結果導出した避航動作に従って自船を操船することができる。
避航動作学習システムXは、自船が他船や浅瀬、ブイ、流氷等の避航対象物を避けて航行する避航操船を機械学習により学習する。避航動作学習システムXは、船舶に搭載して実際の運航データから避航操船を学習することも、陸上施設に設置してシミュレーションにより避航操船を学習することもできる。
避航動作学習システムXは、グリッド生成手段10と、位置・速度情報取得手段20と、衝突危険性計算手段30と、指標割り当て手段40と、避航学習手段50と、表示手段60を備える。
位置・速度情報取得手段20は、自船の位置及び速度ベクトルを、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)等の測位装置や船速計から取得する。
また、位置・速度情報取得手段20は、避航対象物がAIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)を搭載している場合、避航対象物のAIS情報を受信し、AIS情報に基づき避航対象物の位置と速度ベクトルを定める。これにより、避航対象物がAISを搭載している場合に避航対象物の情報を、AIS情報を利用して確実に取得することができる。なお、位置・速度情報取得手段20は、航行制限区域や浅瀬等の情報を有する電子海図等の地理情報、又はレーダ、赤外線、LiDAR等から避航対象物の情報を取得することもできる。他船がAIS非搭載船の場合、位置・速度情報取得手段20は、レーダ等で計測した他船の位置の時系列データから他船の速度ベクトルを求めることができる。
また、位置・速度情報取得手段20が取得する避航対象物の位置及び速度ベクトルは、自船に対する相対位置及び相対速度ベクトルであることが望ましいため、位置・速度情報取得手段20は、取得した情報が避航対象物の絶対位置及び対地速度ベクトルである場合にその取得した情報から自船に対する相対位置及び相対速度ベクトルを算出する演算部を備えることが好ましい。
なお、衝突予測位置には、2次元上における一点だけでなく、ある程度の広がりを持った位置(衝突予測範囲)も含む。
このとき避航学習手段50は、自船が事前に指定されたウェイポイント(WP)を目標とするように条件づけられた避航動作を機械学習により学習することが好ましい。これにより、単に衝突を回避するだけでなく、ウェイポイントへの針路も考慮した避航動作結果を得ることができる。
サーバX1は、避航動作学習システムXと、避航動作学習システムXの避航学習手段50が機械学習により学習した避航動作を学習済モデルとして出力する学習済モデル出力手段70を備える。なお、学習済モデルには、グリッド生成手段10が生成した、グリッド状に分割された自船を含む任意の領域の情報も含まれる。出力された学習済モデルは、コンピュータY1の学習済モデル読込部(図示無し)を介して自船(船舶)に搭載された避航動作推論システムYに入力される。
コンピュータY1は、推論位置・速度情報取得手段80と、推論衝突危険性計算手段90と、推論指標割り当て手段100と、学習済モデル110と、推論表示手段120と、結果出力手段130を備える。避航動作推論システムYは、推論衝突危険性計算手段90、推論指標割り当て手段100、及び学習済モデル110で構成される。
推論位置・速度情報取得手段80は、位置・速度情報取得手段20と同様に、自船の位置、速度ベクトル、及びウェイポイントと、避航対象物の位置及び速度ベクトルを取得する。この場合、避航対象物である他船は、複数であってもよい。
推論衝突危険性計算手段90は、衝突危険性計算手段30と同様に、推論位置・速度情報取得手段80が取得した、自船の位置及び速度ベクトルと、避航対象物の位置及び速度ベクトルの情報から、自船と避航対象物との衝突予測位置及び衝突危険度を計算する。
推論指標割り当て手段100は、指標割り当て手段40と同様に、グリッド状に分割された領域の各セルについて、セル中における衝突予測位置の有無及び衝突危険度の少なくとも一方に応じて、セルの衝突危険性の程度を表す指標を少なくとも1つ割り当てる。
学習済モデル110は、学習済モデル出力手段70から出力された学習済モデルを学習済モデル読込部を介して読み込んだものである。これにより学習済モデルが避航動作推論システムYにコピーされる。なお、学習済モデル110は、前記した避航学習手段50と同様の行動設定機能、避航動作演算機能等を有する。
避航動作推論システムYは、入力された学習済モデル110を用いてウェイポイントも考慮してリアルタイムのシミュレーションを行い、シミュレーションの結果として避航動作を導出する。導出された避航動作は、推論表示手段120に表示されるとともに、結果出力手段130から自船の自律航行システム(図示せず)へ送信される。なお、推論表示手段120には、推論指標割り当て手段100の指標割り当て結果も表示させることができる。
自律航行システムは、この避航動作の導出結果に従って操船手段140を制御し自船を操船する。また、導出された避航動作を出力手段130から避航動作学習システムXへ送信し、避航動作学習システムXにおいて、逆強化学習や模倣学習等を行わせてもよい。この際、学習済モデルを評価して今迄の学習済モデルよりも高い報酬が得られるか否かを評価・出力機能で評価して更新用学習済モデルとして出力する。
なお、避航動作学習システムXは、自律船に用いられる自律航行システムとして利用されるが、この自律航行システムは、衝突予防、座礁予防、自動離着桟、自動係船等の機能を有するシステムであり、避航動作推論システムYは、衝突予防機能、座礁予防機能の一部を構成する。また、操船手段140は、舵、オートパイロット等の船アクチュエータである。
また、学習済モデルを導出する避航動作学習システムXにおける避航動作の学習は、過去の様々な避航動作のデータや、様々な見合い関係のデータに基づいて行ってもよいし、さらに、リアルタイムのシミュレーション結果や人の操船結果を評価して利用し学習済モデルを更新してもよい。また、自船においては、少なくともリアルタイムでシミュレーションした結果としての推論指標割り当て手段100の割り当て結果も推論表示手段120で表示することが好ましい。
実海域における避航操船では、自船1の操船者は通常、DCPA(Distance of Closest Point of Approach:最接近距離)、やTCPA(Time of Closest Point of Approach:最接近点までの時間)を用いて現在の速力と針路から将来的に他船2とどの程度接近するのか、いつごろ最接近距離になるのかといったことを把握する。もしDCPAが十分に短ければ、操船者は他船2を避航するように操船する。
このようにCPAにより得られる情報は避航操船を行う上で非常に有用なものであるが、CPAの値そのものは自船1が一体どの方位へ針路とれば安全になるかまでは示さない。したがって操船者は、十分な離隔距離が確保できるかを実際に自船1の針路を変えてみて逐一確かめる必要がある。これは、CPAを用いた自動避航操船アルゴリズムについても同様である。実際に衝突を避けるためには、将来的な他船2の相対的な運動状態や衝突の可能性などを予測し自船1の操船を行う必要がある。
そこで、こうした将来の状況を勘案した操船を行うため、衝突危険性計算手段30(又は推論衝突危険性計算手段90)は、AISで取得された他船2の位置及び速度ベクトルから自船1と他船2によるOZT(Obstacle Zone by Target:航行妨害ゾーン)を計算し、計算されたOZTを衝突予測位置とすることが好ましい。OZTを用いることにより、自船1の位置、船速、針路といった動的情報と、他船2の位置、船速、方位といった動的情報をもとに将来衝突する危険のある箇所を計算し、交通流の衝突危険性の評価を簡潔に行うことができる。
OZTには、その計算や表現方法にいくつかのバリエーションが存在するが、本実施形態では衝突針路を用いた計算法をベースにしている。OZTは、現在の位置、速力と針路で他船2が進むときに自船1と将来的に衝突する可能性のある範囲として表現される。
将来的に他船2と自船1が衝突する恐れのある自船1の衝突針路COは下式(1)に従って求められる。
このように、本実施形態では、自船1の周辺に存在する他船2の情報を処理するためにOZTを用いている。
そこで、避航動作学習システムXでは、衝突危険性計算手段30が求めたOZTをグリッド生成手段10によってグリッド状に分割された自船1を含む任意の領域(グリッドセンサー)150により検知し、制御入力として利用しやすい形に変換する。領域150におけるセルの数は一定なので、検知する他船2の数が増減しても固定次元のベクトル一つで表現できる。なお、これは避航動作推論システムYにおいても同様である。
グリッド生成手段10は、図4に示すように、自船1を含む任意の領域150をグリッド状に分割することにより、自船1の周囲に仮想センサーであるグリッドセンサーを張り巡らせる。本実施形態では、グリッド生成手段10が自船1を中心とした任意の円形の領域150をグリッド状に分割している。これにより、どの方位においても自船1から領域の端までの距離は同じとなり、各方位において満遍なくセル151に指標を割り当てることができる。領域150の大きさは、例えば、自船1に搭載されたAISの電波が届く距離が約12NM(海里)であることから、その半分の6NMなどとする。
グリッド状に分割された領域150は、角度方向と動径方向を分割された同心円グリッドで構成されており、分割されたそれぞれのセル151毎にOZTとの重なりを判定することで仮想センサーとしてOZTの検知を行う。
なお、グリッド生成手段10は、自船1を含む任意の形状の領域をグリッド状に分割し、任意の形状のグリッドセンサーによりOZTの検知を行うこともできる。任意の形状とは、多角形、楕円形、円形、半円形等である。また、グリッドは等間隔に限らず必要に応じて疎密があってもよく、例えば自船1の進行方向にその他の方向よりも広い領域又は密な領域を設定するなど、非対称形とすることもできる。また、自船1の位置を領域内の任意の位置に設定することもできる。
このように、避航動作学習システムXは、グリッド状に分割した自船1を含む任意の領域150を仮想センサーとして、他船2等の避航対象物との衝突危険性を各セル151において表現することができる。なお、これは避航動作推論システムYにおいても同様である。
また、指標割り当て手段40(又は推論指標割り当て手段100)は、衝突危険性計算手段30が算出した衝突危険度が所定の閾値を超える場合はセル151の指標を1とし、それ以外のセル151の指標を0とすることもできる。
また、指標割り当て手段40(又は推論指標割り当て手段100)は、セル151中に衝突予測位置が含まれる場合はセル151の指標としてn次元実数値ベクトルを割り当て、セル151中に衝突予測位置が含まれない場合はセル151の指標としてn次元ゼロベクトルを割り当てることもできる。この場合は、OZTの位置だけでなく、他船2が複数存在することによるOZTの重なりや、自船1との相対速度や相対針路、TCPAやDCPA等についての評価指標を合わせて表現するため、各セル151に対して任意の次元の実数値ベクトルを当てはめる。これにより、n次元のベクトルで衝突危険性の程度を表す指標を適切に表現することができ、OZTの重なりがある場合は、他船2が避航する可能性が高いためOZTから自船1をより離した方がよい等、より適切な避航動作を学習させることができる。なお、各セル151のベクトルの次元は、スカラー値の場合はn=1となる。
また、指標割り当て手段40(又は推論指標割り当て手段100)は、衝突危険度をn次元実数値ベクトルで表現する場合、OZTと一部でも重なった各セル151に対してn次元実数値ベクトルを、それ以外の各セル151に対してn次元のゼロベクトルを割り当てる。これにより、結果的に領域(グリッドセンサー)150の次元×n次元の衝突危険度の表現ベクトルのような入力となる。
なお、指標割り当て手段40(又は推論指標割り当て手段100)がセル151に割り当てる指標は、数値の他、アルファベットや記号で表現することも可能である。
なお、衝突危険性計算手段30(又は推論衝突危険性計算手段90)がOZTを用いずに自船1と他船2との衝突予測位置及び衝突危険度を計算する場合は、指標割り当て手段40(又は推論指標割り当て手段100)は、例えば「DCPAが小さいほど」、又は「TCPAが短いほど」、より大きな危険度の数値を指標としてセル151に割り当てるようにすることができる。
他船2の針路の先にある点線で囲まれた範囲がOZTである。グリッド状に分割された領域150のうち色が付されたセル151が、領域150とOZTとが重なったセル151である。このようにして避航動作学習システムX(又は避航動作推論システムY)は、OZTの情報を一つの固定次元ベクトルとして認識する。なお、同様の方法で、陸地や水深の関係で航行が制限される区域やブイなどの障害物といった類の操船判断に影響を及ぼす避航対象物も、二次元の図形として専有領域を表現できるものを処理できる。
また、画像のように2次元の配列に整形することで、畳込み層などを持つニューラルネットを通して2次元的な特徴量を抽出することも可能であり、より本質的な衝突危険箇所の表現を得ることができる。
避航学習手段50の機械学習には、例えば深層強化学習を用いることができる。深層強化学習は、強化学習と深層学習を組み合わせた機械学習の一手法である。
図5は強化学習のフレームワークを示す図である。強化学習では、学習エージェント(自船1)が、取り巻く環境の状態s(他船2の動向や次に向かうウェイポイント等)を把握、検知し、その条件で取るべき行動a(指示舵角)をシミュレーション又は現実世界を通して学習する。
目標を達成(他船2と衝突せず、次のウェイポイントへ到達)した際に学習エージェントが得られる報酬rの設計を適切に行えば、プログラムが自動的に方策π(状態とその状態でとるべき行動)を構築することが可能となる。
報酬は、通常の行動に逐次加点される基礎点と、予め設定された基準を満たす際に得られる成果点(減点を含む)に分ける。基礎点は下式(4)〜(6)により定められる。下式(5)はウェイポイントへ近づく進路に寄せると多く加点されるものである。また、下式(6)は右側への変針・避航を促進するための加点である。
(1)初期地点から−0.1NM(海里)以上南下、もしくは東西へ2.0NM以上逸れた場合に−50
(2)他船2との距離が、設定された安全航過距離である0.3NMよりも短い場合に−50
(3)ウェイポイントへ到着した際に+50
深層強化学習における船体運動モデルは、いわゆる野本の一次遅れの応答モデル(KTモデル)を使用し、舵角の変化は指示舵角による一次遅れの形で計算した。これらを連立させたものが下式(7)であり、4次のルンゲクッタ法により積分計算を行う。
深層強化学習の結果は、対象とした全パターンの問題で衝突せずにウェイポイントへ到達する操船操作を学習することができた。その中で、極端に難易度の高い見合い関係であるケース番号19番(4船の見合い)の初期状態と結果を図8、図9に示す。
図8は初期状態であり、自船1を挟むように両側の他船2A、2Bが交差する進路を示している。これに対応して他船2AのOZTと他船2BのOZTが交差してウェイポイントへ向かう進路を塞いでおり、その交点に右舷前方から左舷に横切るもう一隻の他船2CのOZTが重なっている。
図9は、学習した結果としての航跡を示す図である。右舷手前の横切り船である他船2CのOZTが自船1から約2NMの距離に侵入した時点で避航を開始し、初期状態で左舷にいた他船2Aの後方を通る避航経路をとったことが分かる。
2 他船(避航対象物)
10 グリッド生成手段
20 位置・速度情報取得手段
30 衝突危険性計算手段
40 指標割り当て手段
50 避航学習手段
60 表示手段
150 領域(グリッドセンサー)
151 セル
X 避航動作学習システム
Claims (20)
- 自船を含む任意の領域をグリッド状に分割し、
前記自船の位置と速度ベクトルと他船を含む避航対象物の位置と速度ベクトルの情報から前記自船との衝突予測位置と衝突危険度を計算する衝突危険性計算過程と、
前記グリッド状に分割されたセルについて前記セル中における前記衝突予測位置の有無および/または前記衝突危険度に応じて前記セルの衝突危険性の程度を表す指標を少なくとも1つ割り当てる指標割り当て過程を備えたことを特徴とする、周辺状態表現方法。 - 前記自船を中心とした任意の円形の前記領域を前記グリッド状に分割することを特徴とする、
請求項1に記載の周辺状態表現方法。 - 前記自船を含む任意の形状の前記領域を前記グリッド状に分割することを特徴とする、
請求項1に記載の周辺状態表現方法。 - 前記領域中に存在する前記避航対象物がAIS(自動船舶識別装置)を搭載している場合、前記避航対象物のAIS情報を受信し、前記AIS情報に基づき前記避航対象物の前記位置と前記速度ベクトルを定めることを特徴とする、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の周辺状態表現方法。 - 前記衝突危険性計算過程において、前記自船と前記避航対象物によるOZT(航行妨害ゾーン)を計算し、計算された前記OZTを前記衝突予測位置とすることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の周辺状態表現方法。
- 前記指標割り当て過程において、前記セル中に前記衝突予測位置が含まれる場合は前記セルの前記指標としてn次元実数値ベクトルを、含まれない場合はn次元ゼロベクトルを割り当てることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の周辺状態表現方法。
- 前記セル中に前記衝突予測位置が含まれる場合は前記セルの前記指標を1とし、含まれない場合は0とすることを特徴とする、請求項6に記載の周辺状態表現方法。
- コンピュータに、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の周辺状態表現方法における前記衝突危険性計算過程と前記指標割り当て過程を実行させ、
その結果に基づき、前記自船の前記避航対象物に対する避航動作を機械学習により学習させる避航動作学習過程を実行させることを特徴とする、
避航動作学習プログラム。 - 前記避航動作学習過程において、前記自船が事前に指定されたウェイポイントを目標とするように条件づけられた避航動作を前記機械学習により学習させることを特徴とする、請求項8に記載の避航動作学習プログラム。
- 自船を含む任意の領域をグリッド状に分割するグリッド生成手段と、
前記自船の位置と速度ベクトルと、避航対象物の位置と速度ベクトルを取得する位置・速度情報取得手段と、
前記自船の前記位置と前記速度ベクトルと前記避航対象物の前記位置と前記速度ベクトルの情報から前記自船との衝突予測位置と衝突危険度を計算する衝突危険性計算手段と、
前記グリッド状に分割されたセルについて前記セル中における前記衝突予測位置の有無および/または前記衝突危険度に応じて前記セルの衝突危険性の程度を表す指標を少なくとも1つ割り当てる指標割り当て手段と、
前記指標割り当て手段の実行した割り当て結果に基づき、前記自船の前記避航対象物に対する避航動作を機械学習により学習させる避航学習手段とを備えたことを特徴とする避航動作学習システム。 - 前記グリッド生成手段が、前記自船を中心とした任意の円形の前記領域を前記グリッド状に分割することを特徴とする請求項10に記載の避航動作学習システム。
- 前記グリッド生成手段が、前記自船を含む任意の形状の前記領域を前記グリッド状に分割することを特徴とする請求項10に記載の避航動作学習システム。
- 前記位置・速度情報取得手段が、受信した前記避航対象物のAIS(自動船舶識別装置)情報に基づいて前記領域中に存在する前記避航対象物の前記位置と前記速度ベクトルを取得することを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の避航動作学習システム。
- 前記衝突危険性計算手段が、前記AISで取得された前記避航対象物の前記位置と前記速度ベクトルから前記自船と前記避航対象物によるOZT(航行妨害ゾーン)を計算し、計算された前記OZTを前記衝突予測位置とすることを特徴とする請求項13に記載の避航動作学習システム。
- 前記指標割り当て手段が、前記セル中に前記衝突予測位置が含まれる場合は前記セルの前記指標としてn次元実数値ベクトルを、含まれない場合はn次元ゼロベクトルを割り当てることを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の避航動作学習システム。
- 前記指標割り当て手段が、前記セル中に前記衝突予測位置が含まれる場合は前記セルの前記指標を1とし、含まれない場合は0とすることを特徴とする請求項15に記載の避航動作学習システム。
- 前記避航動作学習手段が、前記自船が事前に指定されたウェイポイントを目標とするように条件づけられた避航動作を前記機械学習により学習することを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の避航動作学習システム。
- 前記指標割り当て手段の前記割り当て結果及び/又は前記避航学習手段の学習結果を表示する表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項10から請求項17のいずれか1項に記載の避航動作学習システム。
- 請求項10から請求項18のいずれか1項に記載の避航動作学習システムにより学習された学習済モデルの前記避航動作に従って操船する操船手段を備えたことを特徴とする船舶。
- 請求項8又は請求項9に記載の避航動作学習プログラムにより学習された学習済モデルの前記避航動作に従って操船することを特徴とする船舶。
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