本発明は、サーマス・アクアティカス(Taq)DNAポリメラーゼ由来の具体例を含む、新規な熱安定性DNAポリメラーゼを提供する。これらのポリメラーゼは、核酸増幅、遺伝子型決定および低頻度対立遺伝子の検出についての既存の方法に対する改善を提示する。また、これらの新規な熱安定性DNAポリメラーゼの使用を含む新規なアッセイフォーマットが提供される。
定義
本発明の理解を支援するために、いくつかの用語を以下に定義する。
本明細書で使用される用語は「オープン」用語として意図される(例えば、用語「含むこと」は、「限定されないが含むこと」として意図されるべきであり、用語「有すること」は、「少なくとも有すること」として意図されるべきであり、用語「含む」は、「限定されないが含む」として意図されるなど)。
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、その冠詞が付した文法上の目的語の1つまたは1つを超えること(例えば、少なくとも1つ)を意味する。
用語「約」および「およそ」とは、一般的に、測定値の性質または精度を与える、測定された量の誤差の許容の程度を意味するものである。誤差の程度の例は、与えられた値または値の範囲の20−25パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。
さらに、「A、BおよびCなどの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、このような構文は、当業者がその慣例表現を理解する意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、限定されないが、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含む)。2つ以上の代替用語を提示する事実上いかなる離接する語および/または句も、明細書または図面において、該用語(複数)の一方、該用語のいずれか、または用語の両方を含む可能性を意図すると理解されるべきであることが、当業者にはさらに理解される。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「B」もしくは「AおよびB」の可能性を含むことが理解される。
「から」、「まで(to)」、「まで(up to)」、「少なくとも」、「より多い」、「より小さい」などのすべての言い回しは、記載された数値を含み、その後に部分範囲に分割することができる範囲を指す。
範囲は、それぞれ個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1−3個のメンバーを有する群は、1、2または3個のメンバーを有する群を意味する。同様に、6個のメンバーを有する群は、1、2、3、4または6個のメンバーを有する群を意味する、などである。
「あり得る」という法動詞は、1つ以上の選択肢の好ましい使用もしくは選択、または同一内に含有されているいくつかの記載の実施形態もしくは特徴のうちの選択を意味する。同一に含有されている特別な実施形態または特徴に関して、選択肢または選択が開示されていない場合、「あり得る」という法動詞は、同一に含有されている記載の実施形態もしくは特徴の態様をどのように作製もしくは使用するのかに関する肯定的行為、または同一に含有されている記載の実施形態もしくは特徴に関する特異的技術を使用するという確定的決定を指す。この後者の文脈において、「あり得る」という法動詞は、「できる」という助動詞と同じ意味および含意を有する。
核酸塩基、ヌクレオシド三リン酸またはヌクレオチドに言及する場合の用語「通常の」または「天然の」とは、記載されるポリヌクレオチドにおいて天然に存在するものを意味する(すなわち、DNAについては、これらは、dATP、dGTP、dCTPおよびdTTPである。)。さらに、dITPおよび7−デアザ−dGTPは、dGTPに代えて頻繁に利用され、7−デアザ−dATPは、配列決定などのインビトロでのDNA合成反応において、dATPに代えて利用することができる。総称して、これらはdNTP類と呼ぶことができる。
核酸塩基、ヌクレオシドまたはヌクレオチドに言及する場合、用語「通常でない」または「修飾された」には、特定のポリヌクレオチドにおいて天然に生じる通常の塩基、ヌクレオシドまたはヌクレオチドの修飾、誘導または類似が含まれる。ある種の通常でないヌクレオチドは、通常のdNTP類と比較して、リボース糖の2’位で修飾される。このようにして、RNAに関して、天然に存在するヌクレオチドはリボヌクレオチド(すなわち、ATP、GTP、CTP、UTP、総称してrNTP類)であるが、本明細書に記載されるように、これらのヌクレオチドは糖の2’位にヒドロキシル基を有し、比較するとdNTPが存在しないため、本明細書で使用するとき、リボヌクレオチドは、DNAポリメラーゼに対する基質として通常でないヌクレオチドである。本明細書で使用するとき、通常でないヌクレオチドには、限定されないが、核酸配列決定のためのターミネーターとして使用される化合物が挙げられる。例示的なターミネーター化合物としては、限定されないが、2’,3’ジデオキシ構造を有し、ジデオキシヌクレオシド三リン酸と呼ばれる化合物が含まれる。ジデオキシヌクレオシド三リン酸ddATP、ddTTP、ddCTPおよびddGTPは、総称してddNTP類と呼ばれる。
用語「ヌクレオチド」は、天然に存在するリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド単量体を指すことに加えて、本明細書において、その関連した構造的変異体を指すものと理解され、文脈が他に明確に示していない限り、ヌクレオチドが使用されている特定の文脈(例えば、相補性塩基へのハイブリダイゼーション)に関して機能的に同等である誘導体および類似体が含まれる。
用語「核酸」および「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用するとき、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む。)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む。)を指し、プリンまたはピリミジン塩基のNグリコシドであるポリヌクレオチドの任意の他のタイプを指す。用語「核酸」、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」間の長さにおける区別は意図されない。これらの用語は互換的に使用される。これらの用語は、分子の一次構造のみを指す。したがって、これらの用語には、二本鎖DNAおよび一本鎖DNA、ならびに二本鎖RNAおよび一本鎖RNAが含まれる。本発明における使用に関して、オリゴヌクレオチドはまた、塩基、糖またはリン酸骨格が修飾されたヌクレオチド類似体、ならびに非プリンまたは非ピリミジンヌクレオチド類似体を含み得る。
オリゴヌクレオチドは、それぞれが参照により本明細書に組み込まれるNarangら、1979、 Meth.Enzymol.68:90−99頁のホスホトリエステル法;Brownら、1979、Meth.Enzymol.68:109−151頁のホスホジエステル法;Beaucageら、1981,、Tetrahedron Lett.、22:1859−1862頁のジエチルホスホラミダイト法;米国特許第4,458,066号の固体支持体法などの方法による直接的な化学合成を含む任意の適切な方法によって調製することができる。オリゴヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドのコンジュゲートの合成方法の総説は、参照により本明細書に組み込まれるGoodchild、1990、Bioconjugate Chemistry 1(3):165−187頁に記載されている。
用語「プライマー」は、本明細書で使用するとき、適切な条件下でDNA合成の開始ポイントとして作用し得るオリゴヌクレオチドを指す。このような条件には、核酸鎖に相補的なプライマー伸長産物の合成を4つの異なるヌクレオシド三リン酸および伸長するための薬剤(例えば、DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)の存在下、適した緩衝液中、適切な温度で誘導させる条件が含まれる。プライマー伸長は、1つ以上のヌクレオチド三リン酸の不存在下でも実施され得、この場合、限定された長さの伸長産物が産生される。本明細書で使用するとき、用語「プライマー」は、1つのオリゴヌクレオチドが隣接位置でハイブリダイズする第2のオリゴヌクレオチドへのライゲーションによって「伸長される」ライゲーション媒介反応において使用されるオリゴヌクレオチドを包含することが意図される。したがって、用語「プライマー伸長」は、本明細書で使用するとき、DNA合成の開始ポイントとしてプライマーを使用する個々のヌクレオシド三リン酸の重合と、伸長産物を形成するための2つのオリゴヌクレオチドのライゲーションの両方を指す。
プライマーは、好ましくは一本鎖DNAである。プライマーの適した長さは、プライマーの意図される使用に依存するが、典型的には、6から50ヌクレオチド、好ましくは15から35ヌクレオチドの範囲である。短いプライマー分子は、一般的に、鋳型と十分に安定なハイブリッド複合体を形成するためにより低い温度を必要とする。プライマーは、鋳型核酸の正確な配列を反映させる必要はないが、鋳型とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。所望の標的配列の増殖のために適切なプライマーの設計は、当該技術分野において周知であり、本明細書において引用されている文献に記載されている。
プライマーは、プライマーの検出または固定化を可能にするが、DNA合成の開始ポイントとして作用するプライマーの基本的な特性を変化させない追加の特徴を組み込み得る。例えば、プライマーは、標的核酸にハイブリダイズしないが、増幅産物のクローニングまたは検出を容易にする追加の核酸配列を5’末端に含んでもよい。ハイブリダイズする鋳型に十分に相補的であるプライマーの領域は、本明細書においてハイブリダイジング領域と称される。プライマーは、変更がプライミングまたは鋳型機能を妨げない限り、DNA以外の修飾された残基を組み込んでもよい。
句「3’−ヌクレオチド識別」とは、プライマーの3’末端のヌクレオチドが化学的に修飾されている場合、デオキシリボヌクレオチドに対してより高い特異性でおよびより低い効率でプライマー伸長反応を触媒するためのDNAポリメラーゼの特性を指す。例えば、3’−ヌクレオチド識別を表示する突然変異したTaq DNAポリメラーゼは、プライマーが、例えばリボヌクレオチドで修飾される場合、デオキシリボヌクレオチドプライマーの選択性と抑制された触媒活性を示す。
用語「3’−ミスマッチ識別」は、完全に相補的な配列をミスマッチ含有(ほぼ相補的な)配列と区別するためのDNAポリメラーゼの特性を指し、この場合、伸長されるべき核酸(例えば、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチド)は、核酸がハイブリダイズする鋳型と比較して、核酸の3’末端にミスマッチを有する。いくつかの実施形態において、伸長されるべき核酸は、完全に相補的な配列に対して3’末端にミスマッチを含む。
用語「低頻度対立遺伝子識別」は、複数の第2の核酸を含む核酸集団において第1の核酸を優先的に複製するためのDNAポリメラーゼの特性を指し、ここで、第1の核酸は、複数の第2の核酸に対して核酸集団中で過少である。典型的には、第1の核酸は、他の比率のうち1:100、1:1,000および1:100,000を含む約1:10から約1:1,000,000の範囲の第1の核酸と第2の核酸の比率で複数の第2の核酸を含有する核酸集団において過少であってもよい。典型的には、排他的ではないが、低頻度対立遺伝子識別を有するポリメラーゼは、本明細書においてさらに詳述されるように、第1の核酸と第2の核酸の間のSNP差を検出するために使用することができる。
句「鋳型識別活性」とは、3’−ヌクレオチド識別、3’−ミスマッチ識別、低頻度対立遺伝子識別およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを有するDNAポリメラーゼを指す。
句「増大された識別活性」とは、3’−ヌクレオチド識別、3’−ミスマッチ識別、および低頻度対立遺伝子識別、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを有するDNAポリメラーゼを指し、ここで、DNAポリメラーゼは、参照DNAポリメラーゼよりも高い活性を示す。例えば、「増大した鋳型識別活性」を有するDNAポリメラーゼ突然変異体は、DNAポリメラーゼ突然変異体が誘導される、天然に存在する野生型DNAポリメラーゼの対応する活性より高い、3’−ヌクレオチド識別、3’−ミスマッチ識別、低頻度対立遺伝子識別およびこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを示す。
「鋳型識別活性アッセイ」とは、1つ以上の変数において異なる2つの鋳型間で識別するポリメラーゼの能力を評価するためのアッセイを指す。3’−ヌクレオチド識別、3’−ミスマッチ識別または低頻度対立遺伝子識別を明らかにするために設計されたアッセイは、鋳型識別活性アッセイの例である。
用語「定量サイクル値」は、Cqと記述され、陽性シグナルが最初に検出される増幅サイクル数を指す。
用語「識別定量サイクル値」は、ΔCqと記述され、第1の参照状態と第2の参照状態の間の計算された差を指し、ここで、第1と第2の参照状態の両方は、ただ1つの変数の点で相違する。例えば、第1と第2の参照状態は、野生型ポリメラーゼおよびポリメラーゼ突然変異体などのポリメラーゼにおいて相違し、ミスマッチプライマー鋳型とマッチプライマー鋳型などのプライマー鋳型ヌクレオチド配列において相違し、または3’−デオキシリボース部分を含有するプライマー鋳型および3’−リボース部分を含有するプライマー鋳型などのプライマー鋳型3’−ヌクレオチドリボース構造において相違する、同一のポリメラーゼ反応を指すことができる。
用語「差異識別定量サイクル値」は、ΔΔCqと記述され、2つの変数において相違するポリメラーゼ反応について、第1の識別定量サイクル値と第2の識別定量サイクル値の間の計算された差を指す。本開示の文脈では、ΔΔCq値は、所与のポリメラーゼ突然変異体が、鋳型識別活性アッセイにおける野生型ポリメラーゼと比較して示す改善の測定値である。好ましいΔΔCq値はアッセイの性質に依存するが、一般的に、好ましいΔΔCq値は少なくとも1.0であり、典型的には1.0よりも大きい。
用語「標的」、「標的配列」、「標的領域」および「標的核酸」は、本明細書で使用するとき、同義であり、増幅され、配列決定されまたは検出されるべきである核酸の領域または配列を指す。
用語「鋳型」は、少なくとも1つの一本鎖領域を含む核酸を指す。「基質」を修飾する場合の「鋳型」なる用語は、プライマーを用いてアニーリングするハイブリダイゼーション反応および/またはポリメラーゼを用いた伸長反応に使用される核酸を指す。
用語「ハイブリダイゼーション」とは、本明細書で使用するとき、相補的塩基対形成のために2つの一本鎖核酸による二重鎖構造の形成を指す。ハイブリダイゼーションは、完全に相補的な核酸鎖間またはミスマッチのマイナー領域を含有する「実質的に相補的な」核酸鎖間で起こり得る。完全に相補的な核酸鎖のハイブリダイゼーションが非常に好ましい条件を「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」または「配列特異的ハイブリダイゼーション条件」と称する。実質的に相補的な配列の安定な二重鎖は、さほどストリンジェントでないハイブリダイゼーション条件下で達成され得る;許容されるミスマッチの程度はハイブリダイゼーション条件を適当に調整することによりコントロールされ得る。核酸技術の当業者は、例えば、オリゴヌクレオチドの長さおよび塩基対組成、イオン強度およびミスマッチ塩基対の頻度を含むいくつかの変数を考慮して、当該技術分野によって提供されているガイドライン(例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrookら、1989、Molecular Cloning−−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.;Wetmur、1991、Critical Review in Biochem.and Mol.Biol.26(3/4):227−259頁;およびOwczarzyら、2008、Biochemistry、47:5336−5353頁を参照されたい。)に従って二重鎖安定性を経験的に決定することができる。
用語「増幅反応」は、鋳型核酸配列のより多いコピーをもたらす、または鋳型核酸の転写をもたらす酵素反応を含む任意の化学反応を指す。増殖反応には、逆転写、リアルタイムPCR(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号を参照されたい;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、1990)を参照されたい。)を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、およびリガーゼ連鎖反応(LCR)(Baranyら,米国特許第5,494,810号を参照されたい。)が含まれる。例示的な「増幅反応条件」または「増幅条件」は、典型的には、2ステップまたは3ステップサイクルのいずれかを含む。2ステップサイクルは、高温変性ステップ、続くハイブリダイゼーション/伸長(またはライゲーション)ステップを含む。3ステップサイクルは、変性ステップ、続くハイブリダイゼーションステップ、その後の別々の伸長ステップまたはライゲーションステップを含む。
「アミノ酸」とは、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質中に組み込むことができる任意の単量体単位を指す。本明細書で使用するとき、用語「アミノ酸」とは、以下の20個の天然のまたは遺伝的にコードされるアルファ−アミノ酸を含む:アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)およびバリン(ValまたはV)。「X」残基が定義されていない場合、これらは「任意のアミノ酸」として定義する。これらの20個の天然アミノ酸の構造は、例えば、参照により組み込まれるStryerら、Biochemistry、5th ed、Freeman and Company(2002)に示されている。セレノシステインおよびピロリジンなどの追加のアミノ酸もまた、遺伝的にコードされ得る(参照により共に組み込まれるStadtman、(1996)、「Selenocysteine」、Annu Rev Biochem.、65:83−100頁、およびIbbaら、(2002)、「Genetic code:introducing pyrrolidine」、Curr Biol.、12(13):R464−R466頁)。また、用語「アミノ酸」には、非天然のアミノ酸、(例えば、修飾された側鎖および/または骨格を有する)修飾アミノ酸、およびアミノ酸類似体が含まれる。例えば、各々が参照により組み込まれるZhangら、(2004)、「Selective incorporation of 5−hydroxytryptophan into proteins in mammalian cells」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101(24):8882−8887頁、Andersonら、(2004)、「An expanded genetic code with a functional quadruplet codon」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、101(20):7566−7571頁、Ikedaら、(2003)、「Synthesis of a novel histidine analogue and its efficient incorporation into a protein in vivo」、Protein Eng.Des.Sel.、16(9):699−706頁、Chinら、(2003)、「An Expanded Eukaryotic Genetic Code」、Science、301(5635):964−967頁、Jamesら、(2001)、「Kinetic characterization of ribonuclease S mutants containing photoisomerizable phenylazophenylalanine residues」、Protein Eng.Des.Sel.、14(12):983−991頁、Kohrerら、(2001)、「Import of amber and ochre suppressor tRNAs into mammalian cells:A general approach to site−specific insertion of amino acid analogues into proteins」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、98(25):14310−14315頁、Bacherら、(2001)、「Selection and Characterization of Escherichia coli Variants Capable of Growth on an Otherwise Toxic Tryptophan Analogue」、J.Bacteriol.、183(18):5414−5425頁、Hamano−Takakuら、(2000)、「A Mutant Escherichia coli Tyrosyl−tRNA Synthetase Utilizes the Unnatural Amino Acid Azatyrosine More Efficiently than Tyrosine」、J.Biol.Chem.、275(51):40324−40328頁、およびBudisaら、(2001)、「Proteins with {beta}−(thienopyrrolyl)alanines as alternative chromophores and pharmaceutically active amino acids」、Protein Sci.、10(7):1281−1292頁を参照されたい。
用語「残基」とは、文脈に応じて「アミノ酸」または「ヌクレオチド」と同義であり、置換え可能である。
本明細書で使用するとき、「ポリメラーゼ」は、ヌクレオチドの重合を触媒する酵素を指す。一般的に、酵素は、核酸鋳型配列にアニーリングされたプライマーの3’末端で合成を開始する。「DNAポリメラーゼ」は、デオキシリボヌクレオチドの重合を触媒する。公知のDNAポリメラーゼとしては、例えば、パイロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)(Pfu)DNAポリメラーゼ(Lundbergら、1991、Gene、108:1)、E.コリDNAポリメラーゼ(LecomteおよびDoubleday、1983、Nucleic Acids Res.、11:7505)、T7DNAポリメラーゼ(Nordstromら、1981、J.Biol.Chem.、256:3112)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Tth)DNAポリメラーゼ(MyersおよびGelfand、1991、Biochemistry、30:7661)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)DNAポリメラーゼ(SteneshおよびMcGowan、1977、Biochim Biophys Acta 475:32)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)(Tli)DNAポリメラーゼ(Vent DNAポリメラーゼとも呼ばれる、Carielloら、1991、Nucleic Acids Res、19:4193)、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)(Tma)DNAポリメラーゼ(DiazおよびSabino、1998、Braz、J.Med.Res.、31:1239)、サーマス・アクアティクス(Thermus aquaticus)(Taq)DNAポリメラーゼ(Chienら、1976、J.Bacteoriol.,127:1550)、パイロコッカス・コダカラエンシス(Pyrococcus kodakaraensis)KOD DNAポリメラーゼ(Takagiら、1997、Appl.Environ.Microbiol.、63:4504)、JDF−3 DNAポリメラーゼ(国際公開第WO0132887号)、およびパイロコッカス属種GB−D(PGB−D)DNAポリメラーゼ(Juncosa−Ginestaら、1994、Biotechniques、16:820)が挙げられる。上記酵素のいずれかのポリメラーゼ活性は、当該技術分野において周知の手段によって決定され得る。
用語「熱安定性ポリメラーゼ」とは、熱に対して安定であり、熱耐性であり、続くポリヌクレオチド伸長反応を達成するのに十分な活性を保持し、二本鎖核酸の変性を達成するのに必要な時間、高温に晒された場合に不可逆的に変性しない(不活性化されない)酵素を指す。核酸変性に必要な加熱条件は、当該技術分野において周知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,683,202号、第4,683,195号および第4,965,188号に例示されている。本明細書において使用するとき、熱安定性ポリメラーゼは、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)などの温度サイクリング反応における使用に適している。本明細書における目的のため、不可逆的変性は、酵素活性の永続的で完全な喪失を指す。熱安定性ポリメラーゼに関して、酵素活性とは、適切な方式でヌクレオチドを組み合わせて、鋳型核酸鎖に相補的なポリヌクレオチド伸長産物を形成する触媒作用を指す。好熱性細菌由来の熱安定性DNAポリメラーゼとしては、例えば、とりわけサーマス・アクアティクス由来のDNAポリメラーゼが挙げられる。
用語「好熱性」とは、RT−PCRおよび/またはPCR反応における逆転写またはアニーリング/伸長ステップのために通常使用される温度(すなわち、45−80℃)で触媒特性を維持する酵素を指す。熱安定性酵素は、核酸変性に必要とされる高温に晒されたとき、不可逆的に不活性化および変性されないものある。好熱性酵素は熱安定性であってもよくまたはそうでなくてもよい。好熱性DNAポリメラーゼは、限定されないが、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、モロニーマウス白血病ウイルスおよびトリ骨髄芽球症ウイルスを含む好熱性種または中等温度好性種由来のDNAまたはRNA依存性であってもよい。
本明細書で使用するとき、十分にストリンジェントな条件下で増幅反応において使用されるとき、プライマーが標的核酸に主としてハイブリダイズすれば、プライマーは標的配列に対して「特異的」である。典型的には、プライマー−標的二重鎖の安定性がプライマーと試料中に見出されるいずれかの他の配列間で形成される二重鎖の安定性より大きい場合、プライマーは標的配列に対して特異的である。当業者は、塩条件並びにプライマーの塩基組成およびミスマッチ位置などの様々な要因がプライマーの特異性に影響を及ぼし、プライマー特異性の定型的な実験的確認が多くの事例で必要とされることを認識する。プライマーが標的配列のみと安定な二重鎖を形成することができるハイブリダイゼーション条件を選択することができる。したがって、適切にストリンジェントな増幅条件下での標的特異的プライマーの使用は、標的プライマー結合部位を含有する標的配列の選択的増幅を可能にする。
用語「非特異的増幅」とは、本明細書で使用するとき、標的配列以外の配列にハイブリダイズし、次に、プライマー伸長のための基質としての機能するプライマーから生じる、標的配列以外の核酸配列の増幅を指す。非標的配列へのプライマーのハイブリダイゼーションは「非特異的ハイブリダイゼーション」と称され、特に、低温、低下したストリンジェンシー、前増幅条件の間に、または単一ヌクレオチド多型(SNP)の場合、真の標的に極めて密接に関連する配列を有する試料中に変異対立遺伝子が存在する状況で起こる傾向がある。
用語「プライマー二量体」は、本明細書で使用するとき、別のプライマーが鋳型として機能するプライマー伸長から生じると考えられる、鋳型非依存的な非特異的増幅産物を指す。プライマー二量体は、しばしば、2つのプライマー、すなわち二量体のコンカタマーであるようであるが、2つを超えるプライマーのコンカタマーもまた生じ得る。用語「プライマー二量体」は、本明細書において、鋳型非依存的な非特異的増幅産物を包括的に包含するために使用される。
用語「反応混合物」とは、本明細書で使用するとき、所与の反応を実施するために必要とされる試薬を含有する溶液を指す。増幅反応を実施するために必要とされる試薬を含有する溶液を指す「増幅反応混合物」は、典型的には、適切な緩衝液中に、オリゴヌクレオチドプライマーおよびDNAポリメラーゼまたはリガーゼを含有する。「PCR反応混合物」は、典型的には、オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ(最も典型的には、熱安定性DNAポリメラーゼ)、dNPTおよび二価の金属陽イオンを適切な緩衝液中に含有する。反応を可能にするために必要とされる全ての試薬を含有していれば、反応混合物は完全と称され、必要な試薬の一部のみを含有していれば、不完全と称される。反応成分は、利便性、保存安定性または成分濃度の用途依存的な調整を可能にする理由で、それぞれが全成分の一部を含有する別個の溶液として通常保存されること、および完全な反応混合物を作製するための反応の前に、反応成分が組み合わされることが、当業者によって理解される。さらに、反応成分は商業化のために別個に梱包されること、および有用な市販のキットは、本発明のブロックされたプライマーを含む反応成分のいずれかの一部を含有し得ることが、当業者によって理解される。
用語「活性化されていない」または「不活化された」とは、本明細書で使用するとき、DNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼのいずれかがそれらの意図された目的のためにそのオリゴヌクレオチドと相互作用することができないため、プライマー伸長反応またはライゲーション反応に参加することができないプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態において、オリゴヌクレオチドがプライマーであるとき、プライマー伸長を妨げるように、プライマーは3’末端でまたは3’末端付近でブロックされるため、活性化されていない状態が生じる。特定の基がプライマーの3’末端にまたは3’末端付近に結合されているとき、DNAポリメラーゼはプライマーに結合することができず、伸長が起こり得ない。しかしながら、活性化されていないプライマーは、実質的に相補的なヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる。
用語「活性化された」とは、本明細書で使用するとき、DNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼとの反応に参加することができるプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを指す。プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドは、実質的に相補的な核酸配列にハイブリダイズした後に活性化された状態になり、切断されて、DNAポリメラーゼまたはDNAリガーゼと相互作用することができるように機能的な3’または5’末端を生成する。例えば、オリゴヌクレオチドがプライマーであり、プライマーが鋳型にハイブリダイズされる場合、例えば、DNAポリメラーゼがプライマーの3’末端に結合し、プライマー伸長を促進することができるように切断酵素によって3’−ブロッキング基はプライマーから除去され得る。
用語「切断ドメイン」または「切断するドメイン」は、本明細書において使用するとき、同義であり、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを切断する切断化合物、例えば切断酵素によって認識される、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドの5’末端と3’末端の間に位置する領域を指す。本発明の目的のために、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドが相補的な核酸配列にハイブリダイズされたときにのみ切断されるが、一本鎖であるときには切断されないように、切断ドメインが設計される。切断ドメインまたは切断ドメインに隣接する配列には、a)ポリメラーゼもしくはリガーゼによるプライマーもしくは他のオリゴヌクレオチドの伸長またはライゲーションを妨げもしくは阻害し、b)変異対立遺伝子を検出するために識別を増大し、またはc)所望されない切断反応を抑制する部分が含まれてもよい。1つ以上のこのような部分を、切断ドメインまたは切断ドメインに隣接する配列に含めることができる。
用語「RNase H切断ドメイン」は、本明細書で使用するとき、1つ以上のリボ核酸残基またはRNase Hに対する基質を与える代替的類似体を含有する切断ドメインの一種である。RNase H切断ドメインは、プライマーまたはオリゴヌクレオチド内のいずれの場所にも位置することが可能であり、好ましくは、分子の3’末端もしくは5’末端にまたはその付近に位置する。
「RNase H1切断ドメイン」は、一般的に、少なくとも3つの連続したRNA残基を含有する。「RNase H2切断ドメイン」は、1つのRNA残基、連続的に連結されたRNA残基の配列、またはDNA残基もしくは他の化学基によって分離されたRNA残基を含有し得る。例えば、RNase H2切断ドメインは、とりわけ2’−フルオロヌクレオシド残基を含み得る。
用語「切断化合物」または「切断剤」とは、本明細書で使用するとき、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチド内の切断ドメインを認識し、切断ドメインの存在に基づいてオリゴヌクレオチドを選択的に切断することができる任意の化合物を指す。本発明において利用される切断化合物は、実質的に相補的な核酸配列にハイブリダイズされる場合のみ、切断ドメインを含むプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを選択的に切断するが、一本鎖であるときは、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを切断しない。切断化合物は、切断ドメイン内または切断ドメインに隣接したプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを切断する。用語「隣接した」とは、本明細書で使用するとき、切断化合物が、切断ドメインの5’末端または3’末端のいずれかでプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを切断することを意味する。本発明において好ましい切断反応は、5’−ホスファート基および3’−OH基を生成する。
好ましい実施形態において、切断化合物は「切断酵素」である。切断酵素は、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドが実質的に相補的な核酸配列にハイブリダイズされる場合、切断ドメインを認識することができるが、相補的な核酸配列を切断しない(すなわち、二重鎖内に一本鎖切断を与える。)。切断酵素はまた、一本鎖である場合、切断ドメインを含むプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドを切断しない。切断酵素の例は、RNase H酵素および他のニック生成酵素である。
用語「ニック生成」とは、本明細書で使用するとき、完全にまたは部分的に二本鎖の核酸の二本鎖部分の一本鎖のみを切断することを指す。核酸にニックが生成される位置は、「ニック生成部位」(NS)と称される。「ニック生成剤」(NA)とは、部分的にまたは完全に二本鎖の核酸にニックを生成する薬剤である。ニック生成剤は、酵素または任意の他の化合物または組成物であり得る。ある種の実施形態において、ニック生成剤は、完全にまたは部分的に二本鎖の核酸の特定のヌクレオチド配列を認識し、認識配列の位置に関して特異的な位置(すなわち、NS)において、完全にまたは部分的に二本鎖の核酸の一つの鎖のみを切断し得る。このようなニック生成剤(「配列特異的なニック生成剤」と称される。)としては、限定されないが、ニック生成エンドヌクレアーゼ(例えば、N.BstNB1)が挙げられる。
したがって、「ニック生成エンドヌクレアーゼ」(NE)は、本明細書で使用するとき、完全にまたは部分的に二本鎖の核酸分子のヌクレオチド配列を認識し、認識配列に関して特異的な位置において、核酸分子の1つの鎖のみを切断するエンドヌクレアーゼを指す。このような事例では、認識部位から切断点までの配列全体が「切断ドメイン」を構成する。
用語「ブロッキング基」とは、本明細書で使用するとき、増幅反応が起こらないように、プライマーまたは他のオリゴヌクレオチドに結合されている化学的部分を指す。例えば、プライマー伸長および/またはDNAライゲーションが起こらない。ブロッキング基がプライマーまたは他のオリゴヌクレオチドから除去されると、オリゴヌクレオチドは、そのために設計されたアッセイ(PCR、ライゲーション、配列決定など)に参加することができる。したがって、「ブロッキング基」は、ポリメラーゼまたはDNAリガーゼによる認識を阻害するあらゆる化学的部分であり得る。ブロッキング基は、切断ドメイン中に取り込まれ得るが、一般的に、切断ドメインの5’または3’側のいずれかに位置される。ブロッキング基は、1つを超える化学的部分から構成され得る。本発明において、「ブロッキング基」は、典型的には、その標的配列へのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション後に除去される。
用語「ブロック型切断性プライマー」とは、プライマーの3’末端でまたはその近傍でブロッキング基が存在するために、ポリメラーゼからのDNA合成のプライミングに対して不活性であるまたは不活性化されているプライマーを指す。ブロック型切断性プライマーは、活性プライマーまたは活性されたプライマーをもたらす切断化合物または切断剤(例えば、切断酵素)によって、プライマーの3’末端でまたはその近傍でブロッキング基を除くことにより適格なプライマーに変換され得る。
RDDDDxブロック型切断性プライマー(「世代1」または「Gen 1」ブロック型切断性プライマーとしても知られている。)は、その3’末端に配列RDDDDx(ここで、RはRNA塩基であり、DはDNA塩基であり、xはC3スペーサー基である。)を有するブロック型切断性プライマーを指す。
RDxxDブロック型切断性プライマー(「世代2」または「Gen 2」ブロック型切断性プライマーとしても知られている。)は、その3’末端に配列RDxxD(ここで、RはRNA塩基であり、DはDNA塩基であり、xはC3スペーサー基である。)を有するブロック型切断性プライマーを指す。
用語「蛍光発生プローブ」は、a)フルオロフォアおよびクエンチャーが結合されており、場合によって、副溝結合部が結合されているオリゴヌクレオチド、またはb)DNA結合試薬、例えばSYBR(商標)Green色素のいずれかを指す。
用語「蛍光標識」または「フルオロフォア」は、約350から900nmの最大蛍光放射を有する化合物を指す。多種多様なフルオロフォアが使用され得、限定されないが:5−FAM(5−カルボキシフルオレセインとも称される;スピロ(イソベンゾフラン−1(3H)、9’−(9H)キサンテン)−5−カルボン酸、3’,6’−ジヒドロキシ−3−オキソ−6−カルボキシフルオレセインとも称される);5−ヘキサクロロ−フルオレセイン;([4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロ−(3’,6’−ジピバロイル−フルオレセイニル)−6−カルボン酸]);6−ヘキサクロロ−フルオレセイン;([4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロ−(3’,6’−ジピバロイルフルオレセイニル)−5−カルボン酸]);5−テトラクロロ−フルオレセイン;([4,7,2’,7’−テトラ−クロロ−(3’,6’−ジピバロイルフルオレセイニル)−5−カルボン酸]);6−テトラクロロ−フルオレセイン;([4,7,2’,7’−テトラクロロ−(3’,6’−ジピバロイルフルオレセイニル)−6−カルボン酸]);5−TAMRA(5−カルボキシテトラメチルローダミン);キサンチリウム、9−(2,4−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス(ジメチル−アミノ);6−TAMRA(6−カルボキシテトラメチルローダミン);9−(2,5−ジカルボキシフェニル)−3,6−ビス(ジメチルアミノ);EDANS(5−((2−アミノエチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸);1,5−IAEDANS(5−((((2−ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸);Cy5(インドジカルボシアニン−5);Cy3(インド−ジカルボシアニン−3);およびBODIPY FL(2,6−ジブロモ−4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−プロピオン酸);Quasar(登録商標)−670色素(Biosearch Technologies);Cal Fluor(登録商標)Orange色素(Biosearch Technologies);Rox色素;Max色素(Integrated DNA Technologies)、ならびにこの適切な誘導体が挙げられる。
本明細書で使用するとき、用語「クエンチャー」は、蛍光ドナーに結合または近接すると該ドナーからの放射を低減させ得る分子または化合物の一部分を指す。クエンチングは、いくつかの任意のメカニズムによって、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動、光誘導型電子移動、項間交差の常磁性促進、デクスター交換結合、および励起子結合、例えば暗複合体の形成によって行われ得る。蛍光は、フルオロフォアによって放射された蛍光がクエンチャーの非存在下での蛍光と比べて少なくとも10%、例えば、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%またはそれ以上低減されている場合、「クエンチ」されている。いくつかの市販のクエンチャーが当該技術分野において公知であり、限定されないが、DABCYL、Black Hole(商標)クエンチャー(BHQ−1、BHQ−2およびBHQ−3)、Iowa Black(登録商標)FQおよびIowa Black(登録商標)RQが挙げられる。これらはいわゆるダーククエンチャーである。これらは、波長が300から900nmの範囲にある内在性の蛍光を有しておらず、事実上、内因的に蛍光性である他のクエンチャー、例えばTAMRAで見られるバックグラウンドの問題が解消される。
用語「ライゲーション」は、本明細書で使用するとき、2つのポリヌクレオチド末端の共有結合をいう。種々の実施形態において、ライゲーションは、第1のポリヌクレオチド(アクセプター)の3’末端と第2のポリヌクレオチド(ドナー)の5’末端との共有結合を伴う。ライゲーションにより、ポリヌクレオチド末端間にホスホジエステル結合の形成がもたらされる。種々の実施形態において、ライゲーションは、ポリヌクレオチド末端の共有結合をもたらす任意の酵素、化学物質または工程によって媒介され得る。特定の実施形態において、ライゲーションはリガーゼ酵素によって媒介される。
「リガーゼ」とは、本明細書で使用するとき、1つのポリヌクレオチドの3’ヒドロキシル基を第2のポリヌクレオチドの5’リン酸基に共有結合させ得る酵素をいう。リガーゼの例としては、E.コリDNAリガーゼ、T4DNAリガーゼなどが挙げられる。
ライゲーション反応は、DNA増幅法において、例えば「リガーゼ連鎖反応」(LCR)(「リガーゼ増幅反応」(LAR)とも称される、参照により本明細書に組み込まれるBarany,Proc.Natl.Acad.Sci.,88:189(1991);およびWu and Wallace,Genomics 4:560(1989)を参照されたい。)において使用され得る。LCRでは、2つの隣接しているオリゴヌクレオチド(これは、独自に標的DNAの一方の鎖にハイブリダイズする。)と相補的な一組の隣接しているオリゴヌクレオチド(これは、反対側の鎖にハイブリダイズする。)の4種類のオリゴヌクレオチドを混合し、この混合物にDNAリガーゼを添加する。標的配列の存在下では、DNAリガーゼは、ハイブリダイズした分子のセットの各々を共有結合させる。重要なことに、LCRでは、2つのオリゴヌクレオチドは、ギャップがない配列と塩基対形成した場合のみ互いにライゲーションされる。変性、ハイブリダイゼーションおよびライゲーションの反復サイクルによりDNAの短鎖セグメントが増幅される。隣接しているオリゴヌクレオチド間の連結部におけるミスマッチはライゲーションを阻害する。他のオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイと同様、この特性により、LCRをSNPなどのバリアント対立遺伝子間の識別に使用することが可能になる。また、LCRは、一塩基変化の検出の向上を得るためにPCRと併用して使用されている。Segev、国際公開第9001069号(1990)を参照されたい。
用語「未修飾形態」は、Taq DNAポリメラーゼとの関連で、宿主細胞においてTaq DNAポリメラーゼを発現する宿主細胞特異的なコドン最適化されたTaq DNAポリメラーゼ遺伝子を定義する目的で本明細書において使用される用語である。用語「未修飾形態」は、天然に存在するポリメラーゼのアミノ酸配列を有する機能性DNAポリメラーゼを指す。用語「未修飾形態」は、組換え形態の機能性DNAポリメラーゼを含む。
用語「突然変異体」は、開示されているDNAポリメラーゼとの関連で、DNAポリメラーゼの対応する天然に存在する形態または未修飾形態と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を含む、典型的には組換えの、ポリペプチドを意味する。
「組換え体」とは、本明細書で使用するとき、組換え法により意図的に修飾されたアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。本明細書において「組換え核酸」という用語は、一般的に、エンドヌクレアーゼによる核酸の操作により、通常、天然には見られない形で、元々はインビトロで生成された核酸を意味する。したがって、直鎖状の単離された突然変異体DNAポリメラーゼ核酸、または通常は結合しないDNA分子をライゲートさせることによりインビトロで形成された発現ベクターは、いずれも本発明の目的の組換え体とみなす。組換え核酸を作製し、宿主細胞中に再導入されると、それは非組換え的に、すなわち、インビトロでの操作よりもむしろ宿主細胞のインビボの細胞機構を使用して複製する;しかしながら、このような核酸は、組換え的に生成されると、その後は非組換え的に複製されるが、それでも本発明の目的の組換え体とみなされることが理解される。「組換えタンパク質」は、組み換え技術を使用して、すなわち、上述した組換え核酸の発現を通じて作製されたタンパク質である。
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合に「作動可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結しており;またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置される場合、コード配列に作動可能に連結している。
用語「ベクター」は、典型的には、二本鎖のDNA断片を指し、外来DNA断片がその中に挿入されていてもよい。または、ベクターは例えば、プラスミド由来であってもよい。ベクターは、宿主細胞内でベクターの自律複製を促進する「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含む。外来DNAは、宿主細胞中に本来存在しないDNAである異種DNAとして定義され、それは例えば、ベクター分子を複製し、選択可能なまたはスクリーニング可能なマーカーをコードする、または導入遺伝子をコードする。ベクターは、外来または異種DNAを適切な宿主細胞に輸送するために使用される。宿主細胞に入ると、ベクターは、宿主の染色体DNAとは独立にまたはそれと同時に複製することができ、ベクターとその挿入DNAの複数のコピーを生成することができる。さらに、ベクターはまた、挿入DNAからmRNA分子への転写を可能にする、または挿入DNAからRNAの複数コピーを複製する、必要な因子を含むことができる。発現ベクターの中には、発現したmRNAの半減期を延ばし、および/またはmRNAからのタンパク質分子への翻訳を可能にする、挿入DNAに隣接した配列因子をさらに含むものもある。このように、挿入DNAによりコードされるmRNAとポリペプチドの多数の分子を迅速に合成することができる。
用語「アフィニティタグ」は、ポリペプチド配列の検出および/または選択を可能にする短いポリペプチド配列を指す。本開示の目的で、組換えDNAポリメラーゼをコードする組換え遺伝子はアフィニティタグを含んでもよい。具体的には、アフィニティタグは、組み換え技術の使用を通じて、DNAポリメラーゼのコード配列のN末端またはC末端のいずれかに典型的に配置される。例示的なアフィニティタグには、とりわけ、ポリヒスチジン(polyhistine)(例えば、(His6))、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、HaloTag(登録商標)、AviTag、カルモジュリンタグ、ポリグルタミン酸タグ、FLAGタグ、HAタグ、Mycタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag3、V5タグ、Xpressタグが含まれる。
用語「宿主細胞」とは、細胞培養において増殖させる際の単細胞原核生物と真核生物の両方(例えば、細菌、酵母および放線菌類)、ならびにより高等の植物または動物由来の単細胞を指す。例示的な適した宿主細胞には、E.コリ、S.セレビシエ(S.cerevisiae)およびS.フルギペルダ(S.frugiperda)が含まれる。
本明細書で使用するとき、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウを通じて2つの最適にアラインメントさせた配列を比較することにより決定され、ここで、比較ウィンドウ中の配列部分は、2つの配列の最適アラインメントのための参照配列(付加または欠失を含まない。)と比較して、付加または欠失(すなわちギャップ)を含むことができる。パーセンテージは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定し、一致した位置の数を求め、一致した位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で割り、その結果を100倍して配列同一性のパーセンテージを求めることにより算出される。
用語「同一の」または「同一性」は、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列との関連で、同じである2つ以上の配列または部分配列を指す。比較ウィンドウ、または下記の配列比較アルゴリズムの1つを使用してもしくは手作業でのアラインメントと目視検査により測定するよう指定された領域にわたって、最大の対応となるように比較、アラインメントした場合に、配列が同じであるヌクレオチドまたはアミノ酸残基を特定のパーセンテージで有する場合(例えば、特定の領域にわたって少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の同一性)、配列は互いに「実質的に同一」である。また、これらの定義は試験配列の相補体にも言及する。場合によって、同一性は、少なくとも長さ約50ヌクレオチド、またはより典型的には長さ100から500もしくは1000以上のヌクレオチドの領域にわたって存在する。
用語「類似性」または「類似性パーセント」は、2つ以上のポリペプチド配列との関連で、比較ウィンドウ、または下記の配列比較アルゴリズムの1つを使用してもしくは手作業でのアラインメントと目視検査により測定するよう指定された領域にわたって、最大の対応となるように比較、アラインメントした場合に、保存されたアミノ酸置換により定義されるものと同一または類似のアミノ酸残基を特定の割合(例えば、特定領域にわたって60%の類似性、場合によって65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%の類似性)で有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%または少なくとも55%が互いに類似している場合、配列は互いに「実質的に類似」している。場合によって、この類似性は、少なくとも長さ約50アミノ酸、より典型的には少なくとも長さ約100から500または1000以上のアミノ酸の領域にわたって存在する。
配列比較に関して、典型的には、1つの配列を参照配列とし、試験配列をその参照配列と比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトプログラムパラメータが通常使用されるが、または代替パラメータを指定することもできる。続いて、プログラムパラメータに基づき、配列比較アルゴリズムが参照配列に対する試験配列の配列同一性または類似性のパーセントを算出する。
「比較ウィンドウ」は、本明細書で使用するとき、20から600、一般的には約50から約200、より一般的には約100から約150からなる群から選択される連続する位置の数のいずれか1つのセグメントを指すことを含み、ここでは、2つの配列を最適にアラインメントした後で、配列を同じ数の連続する位置の参照配列と比較してもよい。比較のための配列のアラインメント法は当該技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム(Adv.Appl.Math.、2:482、1970)、NeedlemanおよびWunschの相同性アラインメントアルゴリズム(J.Mol.Biol.、48:443、1970)、PearsonおよびLipmanの類似性検索方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85:2444、1988)、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実行(例えば、GAP、BESTFIT、FASTA,and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)または手作業でのアラインメントおよび目視検査(例えば、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(1995 補遺)を参照されたい)により実施することができる。
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するのに適切なアルゴリズムは、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、それぞれ、Altschulら(Nuc.Acids Res.、25:3389−402頁、1977)およびAltschulら(J.Mol.Biol.、215:403−10頁、1990)に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウエアは、公衆に利用可能なオンラインおよびインターネットデータベース、ならびに米国国立衛生研究所(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)の国立医学図書館内の国立生物工学情報センターを介して公衆に利用可能である。
Taq DNAポリメラーゼ突然変異体の合理的設計
上記で概説したように、天然に存在するDNAポリメラーゼを使用しながら、過去において最も頻繁にプライマーに導入された修飾を伴う、単一ヌクレオチド多型の同一性に基づいて、多くの戦略が、特定の核酸配列を選択的に増幅するポリメラーゼ連鎖反応の識別を改善するために開発されてきた。プライマー核酸の3’末端でのマッチとミスマッチ間を識別するDNAポリメラーゼの能力は限定され、存在する特定の塩基対の同一性により大きく変化する。PCR増幅の選択性を改善するための別の戦略は、鋳型核酸に対してマッチであるプライマーと、鋳型核酸に対して末端ミスマッチを有するプライマー間の識別を改善するためにDNAポリメラーゼの特性を変更することである。本発明は、プライマーの3’末端で塩基対形成をするための改善されたミスマッチ識別を有するDNAポリメラーゼ突然変異体を提供し、次の増幅反応の改善された特異性をもたらす。
rhPCR法は、増幅が開始し得る前に、RNase H2の作用によりブロック解除されなければならないブロック型切断性プライマーを採用する。酵素ブロック解除ステップは、典型的には、SNP部位に配置されている、プライマー内の単一の内部RNA塩基での切断を必要とする。RNase H2は5’側でRNAを切断し、PCRをプライミングすることができる3’−ヒドロキシルを有するプライマーを残す。RNase H2による切断は、プライマーが鋳型にマッチする場合には高効率で生じ、ミスマッチがSNPにより存在する場合には低効率で生じる。したがって、マッチ鋳型は、ミスマッチ鋳型よりも高い効率で増幅される。ミスマッチ鋳型の増幅を可能にする主要なメカニズムは、RNA残基の3’側で基質(すなわち、ブロック型切断性プライマー)の代替の切断から始まり、ミスマッチが存在する場合には不適切なプライミング、プライマーにおけるRNA塩基の保持、およびPCR産物のプライマー配列への変換をもたらし、次に、続くPCRサイクルにおいてマッチとして忠実に複製すると考えられる。rhPCRプロセスの忠実度は、3’−RNA残基を有するプライマーからDNA合成を開始する能力を制限する、DNAポリメラーゼの改善を通じて改善することができる。本発明は、3’−RNA含有プライマーからのDNA合成を開始する能力が減少したDNAポリメラーゼ突然変異体を提供し、次の増幅反応の改善された特異性をもたらす。
本発明は、プライマー核酸の3’末端で塩基同一性について改善された識別を有する新規なDNAポリメラーゼ突然変異体および/または3’RNA残基からプライミング効率を減少させたDNAポリメラーゼ突然変異体を含む。
新規な設計戦略は、天然のDNAポリメラーゼの識別と比較して、プライマーの3’末端塩基で改善された識別を有するDNAポリメラーゼ突然変異体を合理的に設計するために開発され、ミスマッチが存在するまたはRNA残基が存在する場合、DNA合成を開始する能力を制限する。本明細書に記載された方法は、親酵素としてTaq DNAポリメラーゼを採用した;このアプローチは、特に結晶構造が公知である場合、他のDNAポリメラーゼに適用することができる。設計戦略は、天然のDNAポリメラーゼ、およびより少ない程度に、アミノ酸配列が異なる関連したポリメラーゼに関する生物物理学的、生化学的および遺伝情報の理論的分析に基づいて、第1の構成要素を含む。設計戦略は、3’−ヌクレオチド識別を改善するこの場合には、新しい特性を突然変異体ポリメラーゼに合理的に工学的操作する試みにおいて新規な突然変異の効果を予測する際のガイドとして支援するために、公知の遺伝子操作された突然変異体ポリメラーゼの分子生物学的および生化学的分析に基づいて第2の構成要素を含む。
第1の段階において、公開された突然変異の構造−活性相関(SAR)の研究に基づいてTaq DNAポリメラーゼの酵素反応メカニズムを分析し、公知である場合、タンパク質の構造と相関させ、公知でない場合、分子動力学シミュレーションを使用して予測した。酵素触媒メカニズムは、先行技術において報告されている(Patel,P.H.ら、J.Mol.Biol.、2001、308:823−837頁;Li,Y.&Waksman,G.、Protein Sci 2001、10:1225−1233頁)。424位から832位までのC末端に位置したアミノ酸残基は、タンパク質のプライマー伸長触媒活性に関与している。Taq DNAポリメラーゼは、二成分複合体を形成するためのプライマー−鋳型二重鎖に結合する。これは、プライマーの3’末端にポケットにおいて、入ってくる基質のdNTPが結合し得、開いた三重複合体を形成する。dNTPが鋳型ヌクレオチドに相補的である場合、活性部位は立体配座を変化させ、この場合、残基659から671で作られるα−ヘリックスがその部位に向かって回転し、鋳型塩基は、入ってくるdNTPに向かって回転し、ワトソン−クリック塩基対の形成を促進する。この事象は、三重複合体を「閉じて」、プライマーの3’−OH基に近いdNTPのα−リン酸基をもたらす。このヒドロキシル基の酸素は、リンにおける求核攻撃を行い、共有結合を形成し、ピロリン酸が放出される。Taq DNAポリメラーゼの触媒活性は、攻撃するヒドロキシル基の脱プロトン化を促進するために想定されるマグネシウムイオンの存在を必要とする。
改善された3’−ヌクレオチド識別を有するTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の合理的な設計のための1つの基準は、天然のDNAポリメラーゼと比較して、正常なまたは正常に近いポリメラーゼ処理能力を有する新規なポリメラーゼ酵素変異体を提供することである。この理由のため、分析の第1のステップは、コア酵素機能を損なうべきではない変化のために利用可能なアミノ酸の配列スペースを狭くするのに役立つ。例えば、残基D610、D785およびE786は触媒コアを形成する。これらのカルボン酸基は、二価金属イオンに結合し、順番に、入ってくるdNTPおよびプライマーの末端ヌクレオチドに結合し、安定化することが想定される。これらの3つの必須残基の突然変異は、ポリメラーゼを非活性化にする可能性がある。したがって、残基D610、D785およびE786の変更を含む突然変異体ポリメラーゼは、考察から除外された。同様に、相補的な塩基認識の忠実度に影響を及ぼす突然変異体、例えば、相補的dNTPで閉鎖した三重複合体形成に対して開放を促進する残基、および鋳型塩基を考察から除外された。
分析の第1の段階の追加の基準は、プライマーの3’末端ヌクレオチドの近傍でポリメラーゼのアミノ酸残基を同定することであった。この目的のため、先行技術(Eom,S.H.ら、Nature、1996、382:278−281頁;Li,Y.ら、EMBO J.、1998、17:7514−7525頁;Doublie,S.ら、Structure 1999、7:R31−R35頁;Li,Y.ら,Protein Sci 1998、7:1116−1123頁)から利用可能であるTaq DNAポリメラーゼの原子三次元構造を分析のために選択した。プロテインデータバンク(H.M.Bermanら、Nucleic Acids Research、2000、28:235−242頁)から構造をダウンロードした。プライマーおよび鋳型核酸と共結晶されたTaq DNAポリメラーゼの大きなフラグメントの開閉の三重複合体を示すため(Li,Y.ら、EMBO J.、1998、17:7514−7525頁)、PDB ID 2KTQと3KTQの構造を徹底的に分析した。この構造は、活性部位でのプライマー3’末端の位置と、主要なアミノ酸残基との相互作用を示す(図1)。
構造の可視化のために、2’炭素に結合した水素原子は、3’−リボヌクレオチドで修飾されたプライマーについてヒドロキシル基で置換される。プライマーの3’末端でのヌクレオチドの2’炭素に近接しているこれらのアミノ酸残基を追加の分析のために選択した。これらのアミノ酸残基は表2に列挙され、プライマーの3’−末端ヌクレオチドと相互作用する可能性が高い。OHのようなプライマー修飾がリボースの2’炭素原子に結合されるとき、これらの部位の突然変異はポリメラーゼの触媒活性に影響を及ぼし得る。
この基準のさらなる態様は、ポリメラーゼの触媒活性を保持しながら、特異性を高めるためのアプローチに関する。Taq DNAポリメラーゼの特異性を増加させるための1つのアプローチは、結合ポケットのサイズを減少させることであり、それにより、修飾されたプライマーはその中に収まらない。任意の追加の化学基は、3’ヌクレオチドによって占有される空間体積を増加させる。効果的な触媒および求核攻撃のための原子を並べるために、活性部位ポケットは、追加の一又は複数の原子、例えば、RNA残基のOH基の酸素を適合させるために柔軟でなければならない。活性部位の大きさは、隣接アミノ酸をより大きいアミノ酸で置換することによって減少させることができる。さらなる考察は、静電的相互作用およびファンデルワールス相互作用に関与するアミノ酸特性とこれらの側鎖の能力に与えられる。アミノ酸は、正に荷電した側鎖(R、H、K)、負に荷電した側鎖(D、E)、非荷電極性側鎖(S、T、N、Q)、疎水性側鎖(A、V、I、L、M、F、Y、W)および特別な側鎖(C、G、P)の群に分類することができる。群内の突然変異は、保存的であり、既存の特性を維持する可能性が高く、一方、群全体または特別の群のアミノ酸内での突然変異は、酵素活性および/または特異性の実質的な変化をもたらす可能性が高い。
Taq DNAポリメラーゼの3’−ヌクレオチド識別を増加するための別のアプローチは、結合ポケットの柔軟性を低下させる残基置換を採用することである。例としては、芳香族側鎖を用いたアミノ酸脂肪族側鎖の置換を含み、これは、回転異性体の立体構造を変更するために、より高いエネルギー障壁をもたらす。上記で説明したように、触媒コアの残基は、好ましくは変更されず、空間的に触媒コアに近い残基は、変化のために最大の注意が払われる。例えば、表2の3つの非触媒コア残基であるH784、V783およびR573は、側鎖の一般的な物理的特徴を維持しながら、多かれ少なかれ柔軟なアミノ酸について置換されることが本明細書において提案される。これらの残基は、水媒介性水素結合ネットワークを介してプライマーのリボース部分と主要な相互作用を示す。また、R573は、プライマー−鋳型の二重鎖の副溝内のプライマー塩基に結合する。この戦略を使用して、突然変異体ID1からID4を設計した(表3)。次の変異体であるID 5、Q582Kは、重要なH784残基との相互作用およびその残基の位置を変更するように設計された。これは、Q582がオリゴヌクレオチドプライマーからH784の反対側に位置している公知の結晶構造から分かる。Q582Hの置換は、末端プライマーのヌクレオチドに向けてH784をシフトさせ、より多くの制約結合ポケットをもたらし得る。また、末端から2番目のヌクレオチドとの残基582の相互作用はまた影響を受ける可能性がある。
また、入ってくるdNTP分子上にスタックする残基は、ポリメラーゼ活性部位の結合ポケットの大きさに影響を与え得る。例えば、この位置にあるF667の置換は、入ってくるdNTPに対する選択性を変化させることが知られている。例えば、F667Y置換は、Taq DNAポリメラーゼによるジデオキシヌクレオシド三リン酸の取り込みを有意に改善し(Tabor,S.& Richardson,C.C.、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、1995、92:6339−6343頁)、サンガー法ターミネーターDNA配列決定に採用されるDNAポリメラーゼの有用な特性である。突然変異体ID6は、プライマー末端リボヌクレオチドに対してのdNTPを押し、2’ヒドロキシル基を収容する結合ポケットの能力を減少させる試みにおいて、フェニルアラニンからトリプトファンのF667の芳香族側鎖の大きさを増加させ、それにより、3’−RNA残基を含有するこの突然変異体にバイアスをかける。突然変異体ID7は、類似した概念のフレームワークに基づいて設計された。H639は、F667のアミノ酸と相互作用し、H639W突然変異体はまた、入ってくるdNTPに向けてF667を押す場合がある。
追加の突然変異体は、ポリメラーゼの結合ポケットの大きさを効果的に減少させることができると考えられた。突然変異体ID8から16は、「緩和した特異性」突然変異型ポリメラーゼの公表された研究に基づいて、負の推論的分析から設計された。突然変異体は、入ってくるdNTPのリボースに向かってポリメラーゼ特異性を変更し得ることが報告されている。Taq DNAポリメラーゼ変異体が報告されている先行技術は、選択またはスクリーニングにいずれかを介して大きなランダムライブラリーから進化した。Chenらは、Taq DNAポリメラーゼがdNTPとリボース3’炭素原子上の大きな置換を組み合わせることを可能にする突然変異を報告した(Chen,F.ら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、2010、107:1948−1953頁)。この残基は、F667とも相互作用するため、重要であることが見出された。置換L616Aは、フェニルアラニン残基に多くのスペースを与えることによって特異性を減少させる。突然変異体ID8(L616M)は、反対の効果を生じさせるように設計された。メチオニン置換は、ロイシンと比較して、この部位での立体病気を僅かに増加させ得る。この制限は、活性部位が、dNTPまたはプライマーヌクレオチドにおいて余分な置換基を収納する可能性を低くさせてもよく、これは、3’−RNAを含有するプライマーまたは鋳型に対してミスマッチを有するプライマーの活性を減少させることができ、おそらくは鋳型核酸に対して完全なミスマッチを有するプライマーよりも多くの空間を占有する。
類似した概念のフレームワークは、Taq DNAポリメラーゼ突然変異体ID9を設計するために適用された。突然変異I614E、E615Gは、活性部位ポケットを緩和し、そのため、ポリメラーゼは2’−O−メチルリボヌクレオシド三リン酸を用いてプライマーを伸長し得ることが報告された(Fa,M.ら、J.Am.Chem.Soc.、2004、126:1748−1754頁)。これらの突然変異の性質は、本質的には、残基615から614のグルタミン酸のシフトである。したがって、反対方向のシフトであるE615L、L616Eは、活性部位で制約を課し、リボヌクレオチド残基を受け入れないTaq DNAポリメラーゼ突然変異体を生成し得る。
3’−ヌクレオチド識別を増加させるための別のアプローチは、塩基選択の忠実度を増加させ、誤対合の塩基対の取り込みを減少させるアミノ酸置換(すなわち、複製忠実度を改善させる突然変異)を報告したTaq DNAポリメラーゼ研究において同定された、対象とする部位に焦点をあてることである。これらの変化は、同様に、末端プライマーヌクレオチドの修飾に関して、Taq DNAポリメラーゼの選択性に潜在的に影響を及ぼし得る。忠実度を改善することが報告された1つの位置は、F667残基および隣接アミノ酸を伴う(Suzuki,M.ら、J.Biol.Chem.、2000、275:32728−32735頁)。潜在的な対象とする別の部位には、必須アスパラギン酸残基に隣接する残基782から784を含む(Strerath,M.ら、Chem.Bio.Chem.、2007、8:395−401頁)。突然変異体ID10からID13は、これらの位置でアミノ酸の特徴を変更するために設計された。プライマーの末端塩基と相互作用し、入ってくるdNTPの塩基上にスタックするため、F667は特異性に影響を及ぼす;この残基はO−ヘリックスに存在する。残基I665およびA661は、ヘリックスの反対側に位置される。そのものからより大きなアミノ酸への突然変異(A661E、I665W)は、活性部位に向けてO−ヘリックスを移動させることができ、活性ポケットの大きさを限定し、誤対合塩基またはRNA残基(突然変異体ID10:A661E、I665W、F667L)をポリメラーゼが受け入れる能力を制限する。
また、異なるポリメラーゼの突然変異誘発研究から得られたデータは、修飾のための選択位置を助けるために使用することができるが、このデータの使用は、結晶構造の不在下またはポリメラーゼ間の効果が異なる可能性に起因してより困難である。エシェリキア・コリ由来のポリメラーゼI(「E.コリPol」)は、Taq DNAポリメラーゼと比較した場合、活性部位で幾分類似した構造を示し、同一の本質的な触媒残基を維持する。両タンパク質配列は、高度の相同性を示す(Li,Y.ら、EMBO J.、1998、17:7514−7525頁)。したがって、エシェリキア・コリDNAポリメラーゼに関して報告された突然変異はまた、Taq DNAポリメラーゼにおいて対応する位置にアミノ酸位置を外挿することにより考慮された。例えば、三重のアミノ酸置換であるQ879P、V880L、H881Qは、E.コリDNAポリメラーゼの塩基忠実度を改善した(Summerer,D.ら、Angew.Chem.Int.Ed.、2005、44:4712−4715頁)。突然変異体ID14における置換は、このE.コリ残基の三重に対応するように見える、Taq DNAポリメラーゼ活性部位中のQ782、V783、H784での置換を含む。
E.コリDNAポリメラーゼにおけるさらなるいくつかの置換は公知であり、プライマー伸長の特異性を減少または増加する(Minnick,D.T.ら、J.Biol.Chem.、1999、274:3067−3075頁)。突然変異体Q849AおよびR754Aは忠実度を改善させた。これらは、それぞれ、Taq DNAポリメラーゼ活性部位におけるQ754とR659に同等の位置を有する。アルギニン659は、鋳型塩基に相補的な塩基の選択に大きな影響を与える。これは、ポリメラーゼAファミリーにおいて一般的な特徴であるようだ。例えば、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)ポリメラーゼIにおいて、同等の残基はR722である。この残基のヒスチジンへの突然変異は、このポリメラーゼの忠実度を増加させる(Yang,S.W.ら、Nucleic Acids Res.、2002、30:4314−4320頁)。これら2つの残基はまた、研究のために選択された(表3の突然変異体ID15および16)。突然変異体ID17は、突然変異体ID2および3において研究された突然変異の組み合わせを表す。突然変異体ID18は、Q782突然変異の排除により、二重突然変異体(V783L、H784H)に減らされた三重突然変異体ID14(Q782P、V783L、H784Q)の修飾を表す;Q残基に対するあまり柔軟性でないPの置換は、機能を変更する有意な構造摂動を引き起こす可能性があり、突然変異体ID18はこの問題を避けることができる。最初の試験は、H784位の1を超える突然変異が改善されたミスマッチ識別を示したことを指示し、この位置がプライマー特異性を決定するために一般的に重要であることが示唆された。したがって、この部位におけるアミノ酸置換の包括的な研究が行われ、突然変異体ID19−36を含む。
設計戦略の第2の構成要素は、改善された3‘−ヌクレオチド識別を有する新規な酵素を同定するために、遺伝子操作されたTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の分子生物学的および生化学的分析を含む。これは、細菌E.コリなどの適切な宿主において天然のTaq DNAポリメラーゼおよび一連の設計された突然変異体の発現を必要とする。発現を最大化するために、Taq DNAポリメラーゼをコードする天然の遺伝子配列のコドンを変更し、この生物のための標準的なコドン使用頻度表を使用して、E.コリにおける発現のために最適化した(Codon usage tabulated from the international DNA sequence databases:status for the year 2000、Nakamura,Y.、Gojobori,T.およびIkemura,T.、(2000)、Nucleic Acids Res.、28:292を参照されたい。)。コドン最適化は、発現されたタンパク質のアミノ酸配列を変更させない。変更されていないTaq DNAポリメラーゼペプチドをコードするコドン最適化遺伝子の組換え形態は、標準的な方法を用いて合成オリゴヌクレオチドから作製された人工遺伝子としてプラスミドベクターに組み込まれ、クローニングされた(実施例1)。この目的のためのプラスミドベクターは、当該技術分野において日常的に利用可能な任意のプラスミドベクターであり得る。特定された所望のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体のシリーズの合成組換え形態(表3、突然変異体ID1−36)は、当業者に周知な技術を使用して、部位特異的突然変異誘発(SDM)の基質として、先に組み込まれたコドン最適化された組換え天然のTaq DNAポリメラーゼの部位特異的突然変異誘発によって調製された(実施例1)。未修飾および突然変異体Taq DNAポリメラーゼは、適切な転写および翻訳制御要素に作動可能に連結された遺伝子の対応する組換え形態を含有する発現ベクターの導入後にE.コリ宿主細胞から調製された。
未修飾Taq DNAポリメラーゼおよび突然変異体Taq DNAポリメラーゼの酵素特性は、プライマー伸長アッセイ、熱安定性、PCRアッセイ、対立遺伝子特異的PCRアッセイ、3’−リボヌクレオチドを有するプライマーを使用する能力、ならびにrhPCRアッセイにおける使用に対するそれらの適合性について評価された。突然変異体Taq DNAポリメラーゼは、酵素特性の4つのカテゴリー:(1)不活性化ポリメラーゼ活性;(2)通常のポリメラーゼ活性;(3)改善された3’−ヌクレオチド識別活性であるが、減少した活性(例えば、減少した処理能力)を有する;ならびに(4)改善された3’−ヌクレオチド識別、および正常なまたは正常に近い活性を有する(例えば、天然のポリメラーゼと同等の処理能力)のうちの1つを示した。
酵素特性の第4のカテゴリーを有する突然変異体Taq DNAポリメラーゼは、同等または増大した3’−ミスマッチ識別(換言すると、野生型Taq DNAポリメラーゼと比較したとき、標準プライマー伸長アッセイおよび対立遺伝子特異的PCRアッセイにおける同等または増大した性能);増大した3’−ヌクレオチド識別(換言すると、野生型Taq DNAポリメラーゼと比較したとき、RNA含有プライマーを含む鋳型から減少したプライマー伸長活性)、および増大した低頻度対立遺伝子識別(例えば、野生型Taq DNAポリメラーゼと比較したとき、rhPCRアッセイにおける改善された特異性)を示した。これらの突然変異体Taq DNAポリメラーゼは、以下の残基位置:(1)A661E;I665W;F667L三重置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID10);(2)V783F単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID2);H784Q単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID3);およびV783L;H784Q二重置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID18)、H784A、単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID20);H784S、単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID21);H784T、単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID22);H784V、単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID24);H784I、単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID26);H784M、単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID27);H784F、単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID29);およびH784Y単一置換突然変異体ペプチド(表3の突然変異体ID30)の1つで突然変異を含む。
このように、新規な設計アルゴリズムは、プライマー中の3’−RNA残基の有無にかかわらずに鋳型を利用する、対立遺伝子特異的PCR、低頻度対立遺伝子検出アッセイおよびrhPCRアッセイにおけるポリメラーゼ活性によってみなされるように、改善された3’−ヌクレオチド識別を有する突然変異体DNAポリメラーゼを予測するために強固なアプローチを提供する。具体的には、残基V783およびH784は、プライマーオリゴヌクレオチドの3’−塩基の状態(例えば、この残基が鋳型とマッチするもしくはマッチしないかどうか、および/またはこの残基はDNAもしくはRNAであるかどうか)を調べるためにポリメラーゼの能力に影響を与える重要な残基として同定された。ポリメラーゼ機能におけるこれらの残基の重要性はこれまで認識されていなかった。実施例において直接試験する突然変異に加えて、本発明はまた、これらの2つの位置で他のアミノ酸置換、またはV783とH784部位の両方に影響を及ぼす二重突然変異を意図する。
これらの突然変異体の特性は、本明細書に示された実施例においてさらに記載される。しかしながら、重要なことには、本明細書において採用される設計戦略は、以前には認識されていないもしくは予期された、または他のアプローチ(例えば、系統学的比較分析またはランダム突然変異誘発を使用した以前の試み)を使用して得られなかった、新規のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体に対する機能的スペースにアクセスすることができる。
残基位置783と784のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の評価
本開示は、残基位置783および/または784の突然変異が、未修飾Taq DNAポリメラーゼと比較して、増大した鋳型識別活性を有する活性なTaq DNAポリメラーゼ突然変異体をもたらすことを実証する。したがって、783または784の個々の位置で全ての考えられる単一アミノ酸置換、ならびに783と784の両方の位置で全ての考えられる二重アミノ酸置換を含む配列スペースの全体は、Taq DNAポリメラーゼに関連する本開示の範囲内にある。したがって、増大した鋳型識別活性も有する19個の単一残基783突然変異体、19個の単一残基784突然変異体(表3、突然変異体ID19−30)および361個の二重残基783/784突然変異体の変異体のセットから選択される活性なTaq DNAポリメラーゼ突然変異体は、本開示の範囲内にある。
Taq DNAポリメラーゼは熱安定性酵素であるため、783と784残基位置で399個の単一および二重置換突然変異体の候補コレクションをスクリーニングする1つの容易なアプローチは、候補Taq DNAポリメラーゼ突然変異体酵素をコードする前処理された試料を用いてPCRアッセイを行うことである。試料は、所望の組換えTaq DNAポリメラーゼ突然変異体遺伝子を発現する組換えDNAで形質転換された個々のコロニーから得られる、選択された個々のコロニーまたは対応する微小培養物(例えば、50μLから1.0mL培養物)であり得る。前処理レジメンは、70−95℃で試料をプレインキュベートするステップ、続く、変性細胞破片を除去するために上清を清澄化するステップを含むことができる。標準的なPCRアッセイ条件下で熱安定性ポリメラーゼ活性を発現する試料について、対応する組換えDNAは、所望の組換えTaq DNAポリメラーゼ突然変異体遺伝子型およびさらなる生化学的分析のために精製されたポリメラーゼタンパク質の配列を確認するためにさらに特徴付けることができる。本開示の目的のために、同等のPCRアッセイ条件下で、野生型のTaq DNAポリメラーゼによって発現される、少なくとも0.01のレベルで熱安定性ポリメラーゼ活性を発現するTaq DNAポリメラーゼ突然変異体は、熱安定性ポリメラーゼ活性を有するようにみなされ得る。
783および784残基位置でTaq DNAポリメラーゼに機能的に相同な他の選択的ポリメラーゼ候補突然変異体の評価
比較系統発生分析ツールは、V783およびH784に対応する残基位置での未修飾Taq DNAポリメラーゼに相同な配列情報を有する他の熱活性ポリメラーゼの配列スペースを同定するために使用することができる。上記で説明したように、比較系統発生分析の強力な予測は、系統発生学的に多様な種全体でDNAポリメラーゼ間に共有する構造配列が機能的な理由のために保存されているということである。Taq DNAポリメラーゼの同定されたV783/H784残基が多様な種由来の野生型ポリメラーゼ中で配列同一性において不変である場合、その観察は、それらの位置でのアミノ酸置換の特異的な変異に対して選択される性質が、本明細書に開示されている工学的に操作されたTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の観察された、増大した鋳型識別活性をもたらすという結論を強く支持する。
実施例11は、Taq DNAポリメラーゼを用いた、広く配列同一性を共有する他種由来の候補野生型DNAポリメラーゼを同定するための比較ウィンドウとして、V783とH784位を包含するTaq DNAポリメラーゼ配列を使用した例示的なBLAST検索を提供する。実施例11においてさらに詳述されるように、BLAST結果は、多様な種由来の事実上すべての同定されたDNAポリメラーゼが、Taq DNAポリメラーゼのV783とH784にオルソロガスな位置でValとHisを維持していたことを明らかにした。このように、BLAST結果は、増大された鋳型識別活性を有するDNAポリメラーゼに対する天然の対抗選択を確認し、これらの特性を有する開示された、工学的に操作されたTaq DNAポリメラーゼ突然変異体は、新規および非自明であるという強力な証拠を提供する。工学的に操作されたTaq DNAポリメラーゼ突然変異体で観察されたものように、同定された非Taq DNAポリメラーゼの各々は、それぞれの未修飾対応物と比較して、工学的に操作された突然変異酵素が生じ得て、増大された鋳型識別活性を有する配列スペースを表す。
比較系統発生分析がより進化の遠い生物の配列スペースにアクセスすることができない場合において、比較生物物理学的結晶学的分析は、Taq DNAポリメラーゼV783とH784に相同な機能を有する関連した配列残基に手がかりを提供することができる。上記で説明したように、Taq DNAポリメラーゼのQ782、V783およびH784残基三重は、改善された塩基忠実度と、Taq DNAポリメラーゼに類似した活性部位構造とを有するE.コリDNAポリメラーゼの対応する三重アミノ酸置換Q879P、V880LおよびH881Qに基づいて、分析のために選択された。逆に、野生型Taq DNAポリメラーゼと比較して、V783およびH784のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の顕著な増大した鋳型識別活性に基づいて、本発明は、E.コリDNAポリメラーゼのV880およびH881での対応する置換が、野生型E.コリDNAポリメラーゼと比較して、増大された鋳型識別活性を有することを意図する。
増大した鋳型識別活性を有する非VH関連ポリメラーゼ突然変異体の同定および特徴付け
DNAポリメラーゼの前述のコレクションは、Taq DNAポリメラーゼのV783およびH784に対応する領域において広範囲に保存された配列を共有する(「VH関連ポリメラーゼ」)。比較生物物理学的分析は、Taq DNAポリメラーゼのV783およびH784として機能的に相同な位置において異なるアミノ酸配列を有する野生型DNAポリメラーゼの同定に有用である(「非VH関連DNAポリメラーゼ」)。本開示は、VH関連DNAポリメラーゼについて開示されたものと同じ方法で、これらの非VH関連DNAポリメラーゼから増大した鋳型識別活性を有する突然変異体ポリメラーゼを工学的に操作することが意図される。増大した鋳型識別活性アッセイによる部位特異的突然変異誘発および分析についての候補非VH残基は、ポリメラーゼ:鋳型の共結晶構造において明らかにされるように、プライマー末端残基のC2’の0.40−0.45nm内のそれらの残基を含む。
5’−エキソヌクレアーゼドメインの欠失を有する部位特異的Taq DNA突然変異体の組み合わせ
本発明は、プライマーオリゴヌクレオチドの3’残基に位置したミスマッチの改善された識別および/またはプライマーオリゴヌクレオチドの3’末端におけるRNA残基の存在に対する識別を示す新規なTaq DNAポリメラーゼ突然変異体を開示する。改善されたミスマッチ識別は、5’−エキソヌクレアーゼ活性を有するドメインを完全に除く、Taq DNAポリメラーゼの「KlenTaq」欠失突然変異体について記載されている(Barnes,W.M.ら、Gene、112:29−35頁、1992)。本発明の新規な突然変異体とKlenTaq 5’−エキソヌクレアーゼドメイン欠失の組み合わせは、ミスマッチ識別におけるさらなる改善をもたらす(実施例18から22)。しかしながら、この組み合わせは、二重突然変異体のこのファミリーの有用性を低減させ得る酵素活性における減少をもたらした。特にいくつかの状況において、特に、アンプリコンサイズが小さく、限定された処理能力が許容され得る場合、これらの突然変異体の増大した識別は利点を有する。
反応混合物
別の態様において、増大した3’ヌクレオチド識別活性を有するポリメラーゼを含む反応混合物が提供される。反応混合物は、さらに、例えば、核酸増幅法(例えば、PCR、RT−PCR、rhPCR)、DNA配列決定手順、またはDNA標識手順において使用するための試薬を含むことができる。例えば、特定の実施形態において、反応混合物は、プライマー伸長反応に適切した緩衝液を含む。反応混合物はまた、鋳型核酸(DNAおよび/またはRNA)、1つ以上のプライマーまたはプローブポリヌクレオチド、ヌクレオシド三リン酸(例えば、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、標識ヌクレオチド、非従来型ヌクレオチドを含む。)、塩(例えば、Mn2+、Mg2+)、および標識(例えば、フルオロフォア)を含有し得る。いくつかの実施形態において、反応混合物は、さらに、二本鎖DNA結合色素、例えば、SYBRグリーン、または二本鎖DNAインターカレーティング色素、例えば、エチジウムブロマイドを含む。いくつかの実施形態において、反応混合物は、プライマー伸長条件下で所定のポリヌクレオチド鋳型にハイブリダイズすることができる5’センスプライマー、または5’センスプライマーと対応する3’アンチセンスプライマーを含むプライマー対を含有する。特定の実施形態において、反応混合物は、さらに、増幅鋳型核酸の検出のための蛍光FRET加水分解プローブ、例えばTaqman(登録商標)またはPrimeTime(登録商標)プローブを含む。いくつかの実施形態において、反応混合物は、一塩基多型または複数のヌクレオチド多型に完全に相補的である2つ以上のプライマーを含有する。いくつかの実施形態において、反応混合物は、アルファ−ホスホロチオエートdNTP、dUTP、dITPおよび/または標識されたdNTP、例えば、フルオレセインまたはシアニン色素ファミリーdNTPを含有する。いくつかの実施形態において、反応混合物は、ブロック型切断性プライマーおよびRNase H2を含有する。
キット
別の態様において、本明細書に記載されるプライマー伸長方法において使用するためのキットが提供される。いくつかの実施形態において、キットは、使用の容易さが意図され、本開示に従って、3’−ヌクレオチド識別が増加した本発明のDNAポリメラーゼを提供する少なくとも1つの容器を含む。また、追加の一又は複数の試薬を提供する1つ以上の追加の容器を含むことができる。このような追加の容器は、例えば、核酸増幅手順(例えば、PCR、RT−PCR、rhPCR)、DNA配列決定手順、またはDNA標識手順において使用するための試薬を含む、上述された方法に従った、プライマー伸長手順において使用するための、当業者によって認識される任意の試薬または他のエレメントを含むことができる。例えば、特定の実施形態において、キットは、さらに、プライマー伸長条件下で所定のポリヌクレオチド鋳型にハイブリダイズすることができる5’センスプライマー、または5’センスプライマーと対応する3’アンチセンスプライマーを含むプライマー対を提供する容器を含む。いくつかの実施形態では、キットは、単一ヌクレオチド多型または複数のヌクレオチド多型に完全に相補的である1つ以上のプライマーを含有する1つ以上の容器を含み、ここで、プライマーは、上述のように複数の反応に有用である。いくつかの実施形態において、反応混合物は、ブロック型切断性プライマーを含有する1つ以上の容器を含有する。いくつかの実施形態において、反応混合物は、RNase H2を含有する1つ以上の容器を含有する。他の非相互排他的な変形形態において、キットは、(従来型および/または非従来型)ヌクレオシド三リン酸を提供する1つ以上の容器を含む。具体的な実施形態において、キットは、アルファ−ホスホロチオエートdNTP、dUTP、dITPおよび/または標識されたdNTP、例えば、フルオレセインまたはシアニン色素ファミリーdNTPを含む。さらに他の非相互排他的な実施形態において、キットは、プライマー伸長反応に適した緩衝液を提供する1つ以上の容器を含む。いくつかの実施形態において、キットは、1つ以上の標識または非標識プローブを含む。プローブの例としては、二重標識されたFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)プローブおよび分子ビーコンプローブが含まれる。別の実施形態において、キットはアプタマーを含有し、例えば、ホットスタートPCRアッセイ用のアプタマーを含有する。
本開示は、増大した鋳型識別活性を有する新規なDNAポリメラーゼを提供するキットを意図する。実施例においてより詳細に示されるように、それぞれのDNAポリメラーゼは、増大した鋳型識別活性の固有の特徴を示すことができる。特定のDNAポリメラーゼは、他の活性(3’ミスマッチ識別および低頻度対立遺伝子識別)と比較して、相対的に大きな3’ヌクレオチド識別を提示し得る。一方、他のDNAポリメラーゼは、その他の活性(3’ヌクレオチド識別および3’ミスマッチ識別)と比較して、相対的に大きな低頻度対立遺伝子識別を提示することができ、さらに他のDNAポリメラーゼは、その他の活性(3’ヌクレオチド識別および3’ミスマッチ識別)と比較して、相対的に大きな低頻度対立遺伝子識別を提示することができる。したがって、キットは、特定のアッセイプラットフォームに対して特定の増大した鋳型識別活性に最適に適合した活性プロファイルを有する特定のDNAポリメラーゼの個々の容器を含むことができる。代替的に、キットは、複数のアッセイプラットフォームに必要とされるように、増大した鋳型識別活性を調整するために最適に適合された活性プロファイルを有する複数のDNAポリメラーゼを含む単一の容器を含むことができる。
本発明は、以下の実施例を参照してさらに例証される。しかしながら、これらの実施例は、上述した実施形態と同様に例示的なものであり、決して本発明の有効範囲を制限するものとして解釈されるべきではないことに留意すべきである。
[実施例1]
サーマス・アクアティカス由来のコドン最適化されたDNAポリメラーゼのクローニングおよび発現
Taq DNAポリメラーゼのアミノ酸配列および遺伝子配列は公知である(表1、配列番号1および2)。コドン使用頻度は生物間で異なるため、Taq DNAポリメラーゼをコードする天然の遺伝子配列のコドンは標準的なコドン使用頻度表を使用して、E.コリにおける発現のために最適化された(Codon usage tabulated from the international DNA sequence databases:status for the year 2000.Nakamura,Y.,Gojobori,T.およびIkemura,T.(2000)Nucleic Acids Res.28:292);同義語コドン変化は、20アミノ酸ストレッチ全体で同一コドンの反復使用を避けるために導入された。Taq DNAポリメラーゼ未修飾ペプチドをコードする組換えコドン最適化遺伝子は、標準的な方法を使用して、合成オリゴヌクレオチドから組み立てられた。遺伝子は3つのフラグメントで作られ、各々はプラスミドベクターにサブクローニングされた;配列を表4に示す(配列番号3−5)。配列同一性をサンガーDNA配列決定によって確認した。3つのTaq DNAポリメラーゼサブフラグメントは、Gibsonアセンブリー法(Gibson,D.G.ら、Nature Methods、343−345頁(2009))を使用して一緒に組み立てられ、末端NdeIとNotI制限部位を使用してプラスミド発現ベクターpET−27b(+)にクローニングされ、最終の全長コドン最適化Taq DNAポリメラーゼ遺伝子(「OptiTaq」と称する。)を作製した。配列をサンガーDNA配列決定により確認した;配列を表4に示す(配列番号6)。新しいコドン最適化遺伝子の翻訳されたアミノ酸配列は、天然のTaq DNAポリメラーゼと同一である(表1、配列番号1)。
[実施例2]
コドン最適化されたTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の生成
Taq DNAポリメラーゼの18個の突然変異体バージョン(表3、MUT ID1−18)は、クローニングされたOptiTaqコドン最適化Taq DNAポリメラーゼの部位特異的突然変異誘発によって作製された。特定の突然変異は、PCR部位特異的突然変異誘発法を使用してOptiTaq配列に導入された(Weiner MPら、Gene.、151(1−2):119−23頁(1994))。それぞれの突然変異誘発反応は、1×KOD PCR緩衝液中の、二本鎖OptiTaqプラスミド(20ng)にアニーリングされた、所望の塩基変化を含有する10pmolの2つの相補性オリゴヌクレオチド(表5)、5U KOD DNAポリメラーゼ(Novagen−EMD Chemicals,San Diego,CA)、1.5mMのMgSO4を採用した。熱サイクルパラメータは、95℃で3分間(95℃で20秒間−55℃で20秒間−70℃で2.5分間)の16サイクル、続く、70℃で4分間の浸漬であった。PCR部位特異的突然変異誘発後、増幅産物を37℃で1時間、10UのDpnI(NEB、Ipswish、MA)で処理し、その後、80℃で20分間不活性化を行った。110分の1の消化材料をXL−1 Blueコンピテント細菌に形質転換した。細菌クローンを単離し、プラスミドDNAを調製し、個々の突然変異をサンガーDNA配列決定により確認した。E.コリにおいて組換えタンパク質を発現するのに適したpET−27b(+)発現ベクターにすべての突然変異体を残存させた。
[実施例3]
組換えTaq DNAポリメラーゼの発現
以下の実施例は、組換えのTaq DNAポリメラーゼ未修飾および突然変異体ペプチドの発現を実証する。実施例1、2および12からの合成遺伝子配列をpET−27b(+)発現ベクター(Novagen、EMD Biosciences、La Jolla、CA)にクローニングした。このベクターは、発現されるペプチドのカルボキシ末端に6個のヒスチジン残基(ともに「His−タグ」を含む)、続いて、終止コドンを配置する。「His−タグ」は、当業者に周知であるNi2+アフィニティークロマトグラフィー法を使用して、組換えタンパク質の迅速であり、簡単な精製の使用を可能にする。代替的に、合成遺伝子は、His−タグなしの天然型で発現され、サイズ排除クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、または当業者に周知でもある他のこのような方法を使用して精製することができた。
BL21(DE3)コンピテントE.コリ細胞(Novagen)を約1ngの各プラスミドで形質転換した。簡単に言えば、プラスミドを氷上で細胞に添加し、ゆっくりと撹拌した。氷上で5分間インキュベートした後、細胞に42℃で30秒間、熱ショックを与え、次いで2分間氷上に戻した。室温でSOC(80μL)を形質転換された細胞に添加し、続いて、250rpmで撹拌しながら37℃で1時間、増殖させた。細胞を37℃で予め温めたLB/Kanプレート(50μg/mLカナマイシンを補充したLuria Broth寒天プレート)上に播種し(20μL)、37℃で終夜置いた。翌朝、1つのコロニーを取り出し、10mLのLB/Kanブロス(50μg/mL)中でlogフェーズ(OD600が0.3−0.9)まで増殖させた(37℃、250rpm)。次に、細胞は、製造業者が推奨するプロトコルに従って、37℃、250rpmでTerrific Broth中で終夜発現(商標)自動導入システム1(Novagen)を導入された。培養容量は、野生型OptiTaqについては100mLであり、突然変異体については200mLであった。増殖飽和は18時間後に達し、培養物をBeckman Avanti(商標)J−25遠心分離機で10分間10,000×gでペレット化した。ペレット(約6g)は、製造業者の指示書に従って、30mLのBugBuster(登録商標)タンパク質発現試薬(Novagen)、30kU rリゾチーム(商標)溶液(Novagen)および1500UのDNase I(Life Technologies、Grand Island、NY)を使用して溶解させ、可溶性タンパク質を放出され、核酸を分解した。細胞破片を除去するために20分間、15,000×gで遠心分離した後、溶解物を75℃で15分間加熱し、DNase Iおよび他の細胞ヌクレアーゼを不活性化した。次に、溶解物は20分間、15,000×gでスピンさせ、変性タンパク質を沈降させた。熱変性ステップおよび遠心分離ステップは、組換え酵素の重要な純度強化を提供する。細菌溶解物の「全体」画分と「可溶性」画分の両方を、1時間、125VでSDS4−20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して分析した。タンパク質を1時間のクマシーブルー染色で可視化し、続いて、タンパク質バンドが消失するまで3−4ラウンド脱染色した。
回収された可溶性タンパク質を、Hisバインドレジン(Novagen)を含有するNi2+アフィニティーカラムに通過させ、200mMイミダゾールを含有する緩衝液(200mMイミダゾール、500mM NaCl、20mM Tris−HCl、pH7.9)を使用して溶出した。次に、精製したタンパク質(約6mL)は、Amicon Ultra−15,PLGC Ultracel−PL Membrane,10KDa濃縮器(EMD Millipore、Billerica、MA)を使用した、Beckman Coulter 6R卓上遠心分離器スウィング型バケットローターにおいて3210×gで約200μLまで濃縮され、透析を行うまで−20℃で保存した。次に、濃縮されたタンパク質は、4℃で終夜、続いて3回×2時間(各時間ともタンパク質溶液の透析緩衝液に対する比は1000倍である。)、保存緩衝液(20mM Tris pH7.5、100mM塩化ナトリウム、1mM DTT、0.1mM EDTA、50%グリセロール、0.1%Triton X−100)に対して透析された。最終精製されたタンパク質を−20℃で保存した。このプロトコルを使用すると、自動導入された100mLの培養物の収率は、OptiTaqについて精製された可溶性タンパク質の約1.2mg/67.6μM/12,168pmolであった。同様の収率は、突然変異体DNAポリメラーゼについて得られた。
タンパク質濃度を決定するために、試料は、1時間、SDS 4−20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用して、公知量のBSA(ウシ血清アルブミン)と一緒に調べられた。タンパク質を1時間のクマシーブルー染色で可視化し、続いて、タンパク質バンドが消失するまで3−4ラウンドの脱染色を行った。バンド強度は、ImageJソフトウエア(国立衛生研究所、ベセスダ、MD)を使用して分析した。
組換えタンパク質調製物の純度および品質を評価するために、各々の組換えタンパク質(野生型OptiTaqおよび各突然変異体)の500ngは、4−20%SDS−PAGEゲル上で分離され、クマシーブルーで染色され、可視化された。組換えタンパク質全ては、97.1kDaの分子量を有するタンパク質について、ゲル上で適切な位置に移動する。調製物は、相対的に高い純度を示し、いくつかの追加種が検出される。ゲル画像を図2A、2B、2Cおよび2Dに示す。同様のゲルは、MUT ID22(H784T)、24(H784V)、30(H784Y)、31(H784W)および35(H784K)について泳動し、所望の組換えタンパク質に対応する単一バンドを可視化した(データ示さず。)。
精製された酵素は、製造業者が推奨するプロトコルに従って、DNaseAlert(商標)とRNaseAlert(登録商標)ヌクレアーゼ検出キット(Integrated DNA Technologies、Coralville、IA)を使用してヌクレアーゼの混入について試験された。すべての酵素調製物は、ヌクレアーゼの混入がないことが判明した。
[実施例4]
PCRにおける18個の突然変異体Taq DNAポリメラーゼの特性の特徴付け
実施例3に記載される18個の突然変異体Taq DNAポリメラーゼ酵素はポリメラーゼ活性と、プライマーオリゴヌクレオチドにおいて3’−RNA残基を識別する能力について特徴付けられた。
精製された野生型タンパク質の単位活性は、市販の非ホットスタートTaq DNAポリメラーゼ、Taq−B DNAポリメラーゼ(Enzymatics、Beverly、MA)と比較して、公知量のOptiTaqと各突然変異体のqPCRにおける性能を比較することによって決定された。定量サイクル値(Cq、正のシグナルが最初に検出される増幅サイクル数)と増幅曲線形状は、両酵素がそれぞれに対して最適以下の範囲内で同様に行われるナノグラム量を決定するために分析された。これらのナノグラム量およびTaq−B DNAポリメラーゼの公知の単位値を使用すると、相対活性単位値は、PCRを支持するのに十分な活性を有する突然変異体DNAポリメラーゼ酵素のすべてに対して外挿することができた。
以下の反応条件を採用した:10μLの最終体積中の1×qPCR緩衝液(20mM Tris pH8.4、50mM KCl、3mM MgCl2、0.01%Triton−X100)、800μM dNTP(それぞれ200μM)、500nM Forプライマー(Hs HPRT F517、配列番号43)、500nM Revプライマー(Hs HPRT R591、配列番号44)、250nMプローブ(Hs HPRT P554、配列番号45)、2×103コピーの線形のクローン化されたプラスミド鋳型(HPRT−targ、配列番号46)。それぞれ反応液に添加されたDNAポリメラーゼの量を次のように変化させた:野生型(OptiTaq)について、反応は、10、1、0.1、0.01、0.001U/μL(10μL反応あたり220、22、2.2、0.22または0.022ng)を使用して設定された。突然変異体ポリメラーゼを同様の濃度で駆動した。また、ポリメラーゼ活性を示すそれらの突然変異体酵素は、より細かく滴定され、10μL反応あたり220、22、10.6、4.8、2.2、1.1、0.48および0.22ngのタンパク質を試験した。酵素希釈液を酵素希釈緩衝液(20mM Tris pH7.5、100mM NaCl、1mM DTT、0.1%Triton−X100、1mg/mL BSA、10%グリセロール)で作製した。反応は、95℃で30秒、続いて[95℃で15秒、続いて60℃で1分間]の60サイクルというサイクリングパラメータを使用して、BIO−RAD CFX384(商標)リアルタイムシステム(BIO−RAD、Hercules、CA)上で384ウェルフォーマットにおいて行った。検出は、蛍光をクエンチされたプローブ(5’−ヌクレアーゼアッセイフォーマット、Taq突然変異体の本シリーズに導入された突然変異は、5‘−ヌクレアーゼドメインに存在しないことに留意されたい。)を使用して達成された。プライマー、プローブおよび鋳型(プラスミドインサート)の配列を表6に示す。
これらの18個のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体を上記で概説したように特徴付けた。結果を表7に要約する。突然変異体ID4、5、9、12、13および17を含む6つの突然変異体は、検出可能なDNAポリメラーゼ活性を示さず、さらに研究されなかった。6つの突然変異体である突然変異体ID6、7、11、14、15および16は、DNAポリメラーゼ活性を有していた;しかしながら、処理能力は、野生型酵素と比較して4−50倍減少した。6つの突然変異体である突然変異体ID1、2、3、8、10および18は、野生型OptiTaqに類似したDNAポリメラーゼ活性を示した。
DNAポリメラーゼ活性を示したこれらの突然変異体Taq DNAポリメラーゼのサブセットは、野生型OptiTaq酵素と比較して、3’−RNA残基と対比して3’−DNAを有するプライマー間を識別する能力について研究された。リアルタイムPCRは、前述のように行われ、10μL反応あたり0.5単位の野生型OptiTaqに等しい各突然変異体DNAポリメラーゼの量を反応において採用した。以下の反応条件を採用した:10μLの最終体積中の1×qPCR緩衝液(20mM Tris pH8.4、50mM KCl、3mM MgCl2、0.01%Triton−X100)、800μM dNTP(それぞれ200μM)、500nM Forプライマー(Hs SFRS9 F569rU、配列番号47)、500nM Revプライマー(Hs SFRS9 R712 rA、配列番号48)、250nMプローブ(Hs SFRS9 P644、配列番号49)、2×103コピーの線形のクローン化されたプラスミド鋳型(SFRS9−targ、配列番号50)。反応は、95℃で30秒、続いて[95℃で15秒、続いて60℃で1分間]の60サイクルというサイクリングパラメータを使用して、BIO−RAD CFX384(商標)リアルタイムシステム(BIO−RAD、Hercules、CA)上で384ウェルフォーマットにおいて行った。検出は、蛍光をクエンチされたプローブ(5’−ヌクレアーゼアッセイフォーマット)を使用して達成された。プライマー、プローブおよび鋳型(プラスミドインサート)の配列を表8に示す。
PCRを支持した12個のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体を上記で概説したように、3’−RNA修飾されたプライマーを使用する能力について試験された。結果を表7に要約する。突然変異体ID1および8は、3’−RNA残基と比較して3’−DNAを有するプライマー間の差を示さなかった。突然変異体ID2、3、6、7、10、11、14、15、16および18は、3’−RNAプライマーを使用して増幅遅延を示した。したがって、本明細書において採用された合理的な設計戦略は成功し、Taq DNAポリメラーゼ突然変異体が同定され、3’−RNA残基からプライミングに対して識別された。RNAプライミングで幾分遅延を示し、高い処理能力を示したそれらの突然変異体は、プライマー3’−残基ミスマッチ識別において改善のために研究された。
[実施例5]
突然変異体Taq DNAポリメラーゼを使用した対立遺伝子特異的PCRにおける改善されたミスマッチ識別
実施例4において研究された18個の突然変異体酵素のうち、突然変異体ID2、3、10および18は、プライマーにおける3’−RNA残基を識別する能力を示し、高い酵素活性/処理能力を保持した。これら4つの突然変異体は、対立遺伝子特異的qPCRアッセイを使用して、野生型OptiTaq DNAポリメラーゼと比較した3’末端DNAミスマッチを識別する能力について研究された。増幅反応は、合成オリゴヌクレオチド鋳型に対して行われ、この場合、リバースプライマーの3’末端に位置するように配置された単一塩基を変化させた(SNP)。この位置で4つの可能な塩基のそれぞれを有する合成鋳型を採用した。3’−末端で4つの可能な塩基のそれぞれを有するリバースプライマーを採用した。すべての対の組み合わせの相対増幅効率をqPCRを使用して評価した。
定量的対立遺伝子特異的リアルタイムPCR(AS−qPCR)は、2×103コピーの103bp合成鋳型(配列番号51−54)を使用して、384ウェルフォーマットにおいて10μL反応体積中で行われた。使用された最終的な反応条件は、20mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、および3mM MgCl2、0.01%Triton X−100、800μM総dNTP、ならびに200nMのユニバーサルフォワードプライマー(配列番号60)、200nMのリバースプライマー(別々の反応が、対立遺伝子特異的プライマー配列番号55−58の各々または対照ユニバーサルプライマー配列番号59について設定された。)および200nMの5’ヌクレアーゼ検出プローブ(配列番号61)であった。各対立遺伝子特異的プライマーは、それぞれのSNP鋳型に基づいて試験された。反応は、0.5U(10.8ng/11.1nM/111fmol)の野生型OptiTaq DNAポリメラーゼまたは0.5Uの、研究された4つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体(MUT ID No.2 V783F、MUT ID NO.3 H784Q、MUT ID NO.10 A661E I665W F667LまたはMUT ID NO.18 V783L H784Q)のうちの1つのいずれかを利用した。増幅は、以下のサイクリングパラメータ:95℃で30秒間の初期変性、続く、95℃で10秒間、その後の60℃で30秒間の60サイクルを使用して、CFX384(商標)C1000(商標)サーモサイクラーシステム(Bio−Rad、Hercules、CA)上で行われた。本実施例で使用されたオリゴヌクレオチド試薬を表9に示す。
最初に、すべての反応を三連で実施した。野生型OptiTaqを使用した場合、同様の結果がすべての複製について得られた。しかしながら、結果は、変異体ポリメラーゼについてより大きな変動を示した。したがって、統計学的に意味のある結果を得るために、各反応は、突然変異体ポリメラーゼについて96回、野生型酵素について81回行われた。ΔCq値は、各ミスマッチ塩基対について得られたCq値−マッチした塩基対について得られたCq値として計算された(ΔCq=Cqミスマッチ−Cqマッチ)。すべての96複製についてのΔCq値を平均し、標準偏差を計算した。結果を表10に示し、図3Aおよび3Bにおいてグラフ的に要約する。リバースプライマーは対立遺伝子特異的プライマーであることに留意されたい。そのため、「Syn Rev T」プライマー(配列番号55)は、鋳型A(配列番号51)に対して完全な一致する、などである。
野生型OptiTaqは、1.4から8.0の範囲で4.2のこの合成アンプリコン系において、AS−qPCRについての平均ΔCqを示した。突然変異体ID2(V783F)は、3.5から17.9の範囲で9.4の平均ΔCqを示した。突然変異体ID3(H784Q)は、4.6から21.2の範囲で9.9の平均ΔCqを示した。突然変異体ID10(A661E、I665W、F667L)は、3.3から19.9の範囲で10.9の平均ΔCqを示した。突然変異体ID18(V783L、H784Q)は、4.9から26.6の範囲で12.4の平均ΔCqを示した。したがって、4つの鋳型塩基と4つの3’−末端プライマー塩基のすべての対の組み合わせにおいて、本発明の突然変異体Taq DNAポリメラーゼは、野生型OptiTaq DNAポリメラーゼよりもミスマッチに対して大きな識別を示した。各ミスマッチ対に対する改善の大きさは、突然変異体と野生型酵素の間の識別の差であるΔΔCqによって定義される(ΔΔCq=ΔCq突然変異体−ΔCq野生型)。ΔΔCq値を計算し、表11に示す。
突然変異体ID2(V783F)は、野生型OptiTaqに比べて5.2の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID3(H784Q)は、野生型OptiTaqに比べて5.7の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID10(A661E、I665W、F667L)は、野生型OptiTaqに比べて6.7の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID18(V783L、H784Q)は、野生型OptiTaqに比べて8.2の平均ΔΔCqを示した。したがって、本発明の突然変異体Taq DNAポリメラーゼのそれぞれは、ミスマッチ識別において野生型OptiTaqと比較して有意な改善を示し、重要なことには、ミスマッチ識別は、可能なすべてのミスマッチ塩基対の組み合わせについて改善された。全体的に、突然変異体ID18(V783L、H784Q)は、AS−PCRアッセイを使用して、この実施例において研究された4つの突然変異体酵素のセット内で最良のSNP識別を示した。
[実施例6]
Taq DNAポリメラーゼ突然変異体によるプライマー3’−RNA残基の識別
18個すべてのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体は、実施例4において3’−RNA残基からプライミングに対して識別する能力についてスクリーニングされた。良好な3’−ミスマッチ識別を示した実施例5のAS−PCRにおいて研究された4つの突然変異体(MUT ID2、3、10および18)は、プライマーにおける3’−末端RNA残基の存在に対して識別する能力について、本実施例においてより詳細に研究され、可能な塩基特異的効果について調べた。増幅反応は、合成オリゴヌクレオチド鋳型に対して行われ、この場合、リバースプライマーの3’末端に位置するように配置された単一塩基を変化させた(SNP)。この位置で4つの可能な塩基のそれぞれを有する合成鋳型を採用した。3’末端で4つの可能なRNA塩基のそれぞれを有するリバースプライマーを採用し、結果は3’末端で4つの可能なDNA塩基のそれぞれを有するプライマーを使用した対照反応と比較された。相対的な増幅効率をqPCRを使用して評価した。
定量的リアルタイムPCR(qPCR)は、2×103コピーの103bp合成鋳型(配列番号51−54)を使用して、384ウェルフォーマットにおいて10μL反応体積中で行われた。使用された最終的な反応条件は、20mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、および3mM MgCl2、0.01%Triton X−100、800μM総dNTP、ならびに200nMのユニバーサルフォワードプライマー(配列番号60)、200nMのリバースプライマー(別々の反応が、4つの3’−RNAプライマー配列番号62−65の各々、4つの3’DNAプライマー配列番号55−58の各々、または対照ユニバーサルプライマー配列番号59について設定された。)および200nMの5’ヌクレアーゼ検出プローブ(配列番号61)であった。各プライマーは、相補性鋳型に基づいてのみ試験された(ミスマッチ条件を試験しなかった。)。反応は、0.5U(10.8ng/11.1nM/111fmol)の野生型OptiTaq DNAポリメラーゼまたは0.5Uの、研究された4つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体(MUT ID No.2 V783F、MUT ID NO.3 H784Q、MUT ID NO.10 A661E I665W F667LまたはMUT ID NO.18 V783L H784Q)のうちの1つのいずれかを利用した。増幅は、以下のサイクリングパラメータ:95℃で30秒間の初期変性、続く、95℃で10秒間、その後の60℃で30秒間の60サイクルを使用して、CFX384(商標)C1000(商標)サーモサイクラーシステム(Bio−Rad、Hercules、CA)上で行われた。本実施例で使用されたオリゴヌクレオチド試薬を表12に示す。合計96複製は、それぞれの対の組み合わせについて行われた。
平均Cq値は96複製セットについて計算された。ΔCq値は、3’−RNAプライマー反応の平均Cq値と、3’−DNAプライマー反応の平均Cq値の間の差として計算された(ΔCq=Cq3’RNA−Cq3’−DNA)。より高いΔCq値は、3’−RNAプライマーからのプライミングに対するより大きな程度の識別を示す。結果を表13に示し、図4においてグラフ的に要約する。
野生型OptiTaqは、3’−DNAプライマーと3’−RNAプライマーの間にいかなる有意な識別も示さなかった。しかしながら、3’−RNAプライマーを使用した場合、4つすべての突然変異体Taq DNAポリメラーゼはプライミング効率の減少を示した。したがって、プライマーにおける3’−RNA残基に対して識別する新規なポリメラーゼを作製する目的は、本明細書に記載されているインテリジェント突然変異誘発設計戦略を使用して達成された。興味深いことに、識別の大きさは、RNAプリン残基(rAまたはrG)よりもRNAピリミジン残基(rCまたはrU)について非常に大きかった。
[実施例7]
突然変異体Taq DNAポリメラーゼを使用したrhPCRにおける改善されたミスマッチ識別
RNase Hに基づくPCR(rhPCR)は、DNA合成をプライミングすることができないブロック型切断性オリゴヌクレオチドを、DNA合成をプライミングし、PCRを開始することができる形態に変換するために酵素RNase H2を採用する。ブロック型切断性オリゴヌクレオチドまたはブロック型切断性プライマーは、(切断部位を含む)オリゴヌクレオチドの3’末端近くの単一のRNA残基を含有し、3’末端でまたはその近傍で修飾され、そのため、プライマーはDNA合成をプライミングすることができず、および/または鋳型機能を喪失し、それにより、プライマー伸長が生じ得るとしてもPCRを支持するのに適さない。この方法は、遺伝子型決定(SNP識別)のために使用され、標的核酸にハイブリダイズする場合、RNA塩基切断部位で塩基対マッチ対ミスマッチを区別するRNase H2の能力に依存する。rhPCRにおいて、SNP識別は、プライマーブロック解除ステップで生じ、プライマー伸長ステップでは生じない(AS−PCRにおいて、識別はプライマー伸長ステップで生じる)。酵素切断戦略、類似したRNase H戦略、ならびにプライマー伸長をブロックしまたは鋳型機能を阻害し、それによりPCRを無効にする方法の例は、「POLYNOMIAL AMPLIFICATION OF NUCLEIC ACIDS」と題するBehlkeらによる米国特許第7,112,406号;「CONTINOUS FLUOROMETRIC ASSAY FOR DETECTING NUCLEIC ACID CLEAVAGE」と題するHanらによる米国特許第5,763,181号;「METHOD OF DETECTING NUCLEOTIDE POLYMORPHISM」と題するSagawaによる米国特許第7,135,291号;「DUAL FUNCTION PRIMERS FOR AMPLIFYING DNA AND METHODS OF USE」と題するBehlkeおよびWalderによる米国特許出願公開第20090068643号;「RNASE H−BASED ASSAYS UTILIZING MODIFIED RNA MONOMERS」と題するWalderらによる米国特許出願公開第20100167353号;ならびにDobosyら、「RNase H−dependent PCR (rhPCR):improved specificity and single nucleotide polymorphism detection using blocked cleavable primers」、BMC Biotechnology.、11:e80(2011)に記載されている。
AS−PCRにおいて、SNPはプライマーの3’末端に位置する。この構成において、ミスプライミング事象(DNA合成が3’末端のミスマッチの存在下で開始される)は、プライマーに存在する塩基の新生DNA鎖への導入、およびそれによるPCRアンプリコンへの導入をもたらす。この事象はPCR産物をプライマー配列に変換し、そのため、増幅されたDNAは、ここで、プライマーにマッチし、もはや元々インプットされた試料の核酸配列にマッチしない。アンプリコン配列は、ここで、プライマーにマッチし、インプットされた試料にマッチしないため、増幅は高効率で進行する。
rhPCRにおいて、RNase H2によるブロック型切断性プライマーの切断は、RNA残基の5’側で生じる;SNPがRNA残基(例えば、SNPを有するRNA塩基対)に位置している場合、プライマー伸長中のDNAポリメラーゼおよびPCRによって取り込まれた最初の塩基はSNP部位であり、インプットされた核酸配列と同一のままである娘産物をもたらす。稀に、非標準RNase H2切断は、SNPを覆うように配置したプライマーの3’末端でRNA残基を残すRNA塩基の3’側で生じる。この場合において、rhPCR反応はAS−PCRのように進行し、プライマーの3’末端はSNP部位に位置し、標的核酸に対してマッチまたはミスマッチのいずれかである。AS−PCRと同様に、ミスマッチの場合において、DNA伸長産物およびPCRアンプリコンの配列はプライマーの配列に変換し、このようにして、増幅中の試料の配列を忠実に複製しない場合がある。この望ましくないミスプライミング事象の頻度を減少させる任意の方法は、rhPCRアッセイにおけるミスマッチ識別を改善する。したがって、rhPCRにおける塩基識別は、主にプライマー切断段階でRNase H2によって媒介されるが、3’−末端ミスマッチおよび/または3’−末端RNA残基に対して識別する改善された能力を有するDNAポリメラーゼの使用は、望ましくない3’−切断事象が生じる場合に伸長を妨げることによって、rhPCRの全体のミスマッチ識別能を改善し得る。本明細書に記載されているDNAポリメラーゼ突然変異体は、野生型Taq DNAポリメラーゼと比較して、3’−ミスマッチが存在する場合にプライミング効率を減少させ(ミスマッチ識別を改善し)、3’−末端RNA残基がプライマーに存在する場合にプライミング効率を減少させる(プライマー3’−RNA残基を識別する)。本実施例は、本発明の新規な突然変異体Taq DNAポリメラーゼが、rhPCRの特異性およびSNP識別を改善することを実証する。
野生型OptiTaq DNAポリメラーゼの性能と突然変異体Taq DNAポリメラーゼ突然変異体ID2、3、10および18の性能を比較する定量的リアルタイムrhPCRを行った。2つの異なるブロック型切断性プライマーの設計が試験され、世代1(Gen1)「RDDDDx」プライマーと世代2(Gen2)「RDxxD」プライマーを含む(「RNASE H−BASED ASSAYS UTILIZING MODIFIED RNA MONOMERS」と題するBehlkeらによる米国特許出願公開第2012/0258455号を参照されたい。)。増幅反応は、実施例5において採用された同じ合成オリゴヌクレオチド鋳型を使用して行われ、この場合、Gen1とGen2のブロック型切断性(rhPCR)プライマーの両方にRNA残基を位置するように配置された単一の塩基を変化させた(SNP部位)。この位置で4つの可能な塩基のそれぞれを有する合成鋳型を採用した。この位置で4つの可能な相補的な塩基のそれぞれを有するリバースプライマーを採用した(RNA塩基)。同じフォワードプライマーを全ての反応に使用した。相対的な増幅効率をリアルタイムPCRを使用して評価した。
定量的rhPCRは、2×106コピーの103bp合成鋳型(配列番号51−54)を使用して、384ウェルフォーマットにおいて10μL反応体積中で行われた。使用された最終的な反応条件は、20mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、3mM MgCl2、0.01%Triton X−100、800μM総dNTP、200nMのユニバーサルフォワードプライマー(配列番号60)、200nMのリバースプライマー、および200nMの5’ヌクレアーゼ検出プローブ(配列番号61)であった。リバースプライマーは、Gen1 RDDDDx構成の対立遺伝子特異的rhPCRプライマー(配列番号66−69)、Gen2 RDxxD構成の対立遺伝子特異的rhPCRプライマー(配列番号70−73)および制御ユニバーサルリバースプライマー(配列番号59)を含んだ。rhPCRブロック型切断性リバースプライマーの各々は、4つのSNP鋳型のそれぞれについて試験された。反応は、0.5U(10.8ng/11.1nM/111fmol)の野生型OptiTaq DNAポリメラーゼまたは0.5Uの4つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体(MUT ID2 V783F;MUT ID3 H784Q;MUT ID10、A661E I665W F667L;またはMUT ID18、V783L H784Q)のうちの1つのいずれかを利用した。P.アビシ(P.abyssi)RNase H2を1μL体積内の各反応液に添加した。対照およびGen1ブロック型切断性RDDDDx rhPCRプライマーを使用した反応は、2.6mU RNase H2/10μL反応(5fmole、0.5nM酵素)を採用した。Gen2ブロック型切断性RDxxD rhPCRプライマーを使用した反応は、rCとrAプライマー(配列番号71と72)については25mM RNase H2 10μL反応(48fmole、4.8nM酵素)、およびrGとrUプライマー(配列番号70と73)については200mU RNase H2/10μL反応(384fmole、38nM酵素)を採用した。サイクリングは、Roche LightCycler(登録商標)480(Roche Applied Science、Indianapolis、IN、USA)上で、以下の95℃で3分間、続いて、95℃で10秒間と60℃で30秒の75サイクルのように行われた。全ての反応を三連で行った。本実施例で使用されたオリゴヌクレオチド試薬を表14に示す。
MUT ID10(A661E、I665W、F667L)は、予想外に、この合成アンプリコン系を使用したrhPCR反応において標的中のSNP部位にプライマーがマッチしたとき、大きな増幅遅延を示した。しかしながら、このポリメラーゼは、rhPCRについてヒトゲノムDNA系を使用したとき、任意の遅延を示さなかった(実施例8および9を参照されたい。)。したがって、MUT ID10は合成系実験において分析から除外された。他の3つの突然変異体ポリメラーゼを使用して生成させたデータを分析し、ΔCq値は、マッチ対ミスマッチのプライマー/鋳型対と比較して計算された。この場合、ΔCq=Cqミスマッチ−Cqマッチである。結果は、Gen1 RDDDDxブロック型切断性プライマーrhPCRプライマーについては表15、およびGen2 RDxxDブロック型切断性プライマーrhPCRプライマーについては表16に示される。
ほとんど全ての場合において、ミスマッチ識別は、野生型OptiTaqと比較して、突然変異体Taq DNAポリメラーゼを使用して行われたrhPCR反応について優れていた。改善の大きさは、ΔΔCq値を調べることによって最も良く見られ、これは、野生型OptiTaqおよび突然変異体を使用して見られる識別の差である(ΔΔCq=ΔCq突然変異体−ΔCq野生型)。これらの結果は、Gen1 RDDDDxプライマーについては表17に、およびGen2 RDxxDプライマーについては表18に示される。Gen1 RDDDDxプライマーを使用した場合、全体の最大の利益は、ミスマッチ塩基が標的核酸において「C」である場合に見られ、最小の利益は、ブロック型切断性プライマーが標的中にミスマッチのTと対になったrGを含有する場合に見られた。最大の改善は、突然変異体Taq DNAポリメラーゼMUT ID18(V783L H784Q)を使用して得られた。MUT ID2(V783F)についての平均ΔΔCqは1.0であった。MUT ID3(H784Q)についての平均ΔΔCqは2.0であった。MUT ID18(V783L、H784Q)についての平均ΔΔCqは3.6であった。突然変異体Taq DNAポリメラーゼを使用して得られた利益は、既に野生型OptiTaqを使用して高ΔCq値を示したGen2 RDxxDプライマーについてより低かった。実施例において研究された3つの突然変異体ポリメラーゼの平均ΔΔCqは0.6、2.1および1.2であった。したがって、Gen2 RDxxDプライマーを使用した場合の最大の利益は、MUT ID3(H784Q)で見られた。
[実施例8]
ヒトゲノムDNA SNPアッセイにおいて突然変異体Taq DNAポリメラーゼを使用したrhPCRにおける改善されたミスマッチ識別
実施例7は、合成アンプリコンrhPCR SNP識別アッセイ系において、本発明の新規な突然変異体Taq DNAポリメラーゼの有用性を実証した。本実施例は、ヒトゲノムDNA rhPCR SNP識別アッセイ系における新規な突然変異体Taq DNAポリメラーゼの有用性を実証し、SMAD7遺伝子(NM_005904、C/T SNP、rs4939827)におけるSNP部位を調べた。アッセイは、コーリエル医学研究所(Camden、NJ、USA)からの標的DNA GM18562(ホモ接合C/C)およびGM18537(ホモ接合T/T)を採用した。2つの異なるブロック型切断性プライマー設計を試験し、世代1(Gen1)「RDDDDx」プライマーと世代2(Gen2)「RDxxD」プライマーを含んだ(「RNASE H−BASED ASSAYS UTILIZING MODIFIED RNA MONOMERS」と題するBehlkeらによる米国特許出願第2012/0258455号を参照されたい。)。
定量的リアルタイムrhPCRは、20ng(標的の6600コピーに相当)のヒトゲノムDNA(GM18562またはGM18537)を含む384ウェルフォーマットにおいて10μLの反応体積中で行われた。反応は、0.5U(10.8ng/11.1nM/111fmol)の野生型OptiTaq DNAポリメラーゼまたは0.5Uの、4つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体(MUT ID2、V783F;MUT ID3、H784Q;MUT ID10、A661E I665W F667L;またはMUT ID18、V783L H784Q)のうちの1つのいずれかを利用した。使用された最終的な反応条件は、20mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、3mM MgCl2、0.01%Triton X−100、800μM総dNTP、200nMのフォワードプライマー(配列番号75−79)、200nMのユニバーサルリバースプライマー(配列番号74)および200nMのSMAD7プローブ(配列番号80)であった。85bpのSMAD7アンプリコンの配列を配列番号81として示す。フォワードプライマーは、RDDDDx構成Gen1対立遺伝子特異的rhPCRプライマー(配列番号76および77)、RDxxD構成Gen2対立遺伝子特異的rhPCRプライマー(配列番号78および79)、ならびに対立遺伝子特異的でない対照ユニバーサルフォワードプライマー(配列番号75)を含んだ。この実施例において採用されたオリゴヌクレオチド試薬を表19に示す。反応は、Gen1 RDDDDxプライマーと対照プライマー(配列番号75−77)について10μL反応あたり2.6mUの濃度(5fmole、0.5nM)、またはGen2 RDxxDプライマー(配列番号78および79)について10μL反応あたり200mUの濃度(384fmole、38.4nM)で1μLのP.a.RNase H2を含んだ。増幅は、以下:95℃で3分間、続く、95℃で10秒間と60℃で30秒間の75サイクルのように、Roche LightCycler(登録商標)480(Roche Applied Science、Indianapolis、IN、USA)上で行われた。全ての反応を三連で行った。
Gen1 RDDDDx rhPCRプライマーを使用した結果を表20に示し、Gen2 RDxxD rhPCRプライマーを使用した結果を表21に示す。全体的に、突然変異体Taq DNAポリメラーゼの使用は、Gen1 RDDDDxプライマーを使用した、このヒトゲノムDNA rhPCRアッセイにおいてSNP識別において小さいが、真の改善を示した。しかしながら、識別の大きな改善は、Gen2 RDxxDプライマーを使用して見られた。Gen2 RDxxDプライマーは、本質的にはより大きなSNP識別を示し、ΔCq値が、ある場合において、マッチとミスマッチ間で40を超える増幅サイクルであるようにこれらのレベルは増加した;qPCR反応がほとんど45−50サイクルを超えて行われず、正のシグナルが70サイクル後までこれらの場合において検出されなかったため、識別のこのレベルは、大部分のユーザーにとって「アッセイよりも大きい」ものとなる(表21)。したがって、新規の突然変異体Taq DNAポリメラーゼの使用は、rhPCR遺伝子型決定アッセイにおけるSNP識別を改善する。
SMAD7 SNP遺伝子型決定アッセイのためのΔCq値は、Gen1 RDDDDxプライマーについては図5Aに、およびGen2 RDxxDプライマーについては図6Aにグラフ的に要約される。実施例8において研究されたrhPCR遺伝子型決定アッセイに関して、MUT ID10(A661E I665W F667L)が、特にGen2 RDxxDプライマーを使用した場合、野生型OptiTaqと比較して最大の改善を示したことに留意することは興味深い。実施例5は、AS−PCRにおける突然変異体Taq DNAポリメラーゼの有用性を実証し、この場合において、MUT ID18(V783L H784Q)の使用は最大の利益を示し、MUT ID3(H784Q)は次の最大の相対的利益を示した。本発明の種々の突然変異体Taq DNAポリメラーゼが異なる増幅アッセイにおいて有用性を有するだけでなく、異なる突然変異体が、使用されるアッセイの性質に応じて様々なレベルの利益を示すことも明らかである。したがって、最大利益が得られるように、特性が異なるアッセイ/応用にマッチし得る突然変異体ポリメラーゼのコレクションを有することは有益である。
[実施例9]
突然変異体Taq DNAポリメラーゼによるrhPCRを使用したゲノムDNAにおける低頻度対立遺伝子の改善された識別
rhPCRにおけるGen2 RDxxDブロック型切断性プライマーの使用は、天然の(野生型)Taq DNAポリメラーゼを使用した野生型ゲノムDNAのバックグラウンドにおいて、1:1,000から1:10,000のレベルでSNPの存在を検出することができる(「RNASE H−BASED ASSAYS UTILIZING MODIFIED RNA MONOMERS」と題するBehlkeらによる米国特許出願第2012/0258455号を参照されたい。)。本実施例は、本発明の突然変異体Taq DNAポリメラーゼがrhPCRアッセイにおいて低頻度対立遺伝子識別を改善することを実証する。
低頻度対立遺伝子の検出実験は、SMAD7遺伝子(NM_005904、C/T SNP、rs4939827)におけるSNP部位の塩基の同一性を検出するように設計され、標的DNAのGM18562(ホモ接合C/C)およびGM18537(ホモ接合T/T)(コーリエル医学研究所、Camden、NJ、USA)を採用した。対照反応は、2ng(660コピー)、0.2ng(66コピー)または0.02ng(6.6コピー)のインプットされた、マッチした標的DNAを使用して設定された。低頻度対立遺伝子の検出反応は、1つの対立遺伝子の2ng(660コピー)、0.2ng(66コピー)または0.02ng(6.6コピー)のインプットされた、マッチした標的DNA+200ng(66,000コピー)の他の(ミスマッチの)遺伝子を使用して設定された。バックグラウンドは、0コピーのマッチした標的DNA+200ng(66,000コピー)のミスマッチの標的DNAを含有した反応において確立された。両方の組み合わせを試験した:過剰GM18537(T/T)の存在下で低頻度対立遺伝子としてGM18562(C/C)および過剰GM18562(C/C)の存在下で低頻度対立遺伝子としてGM18537(T/T)。
定量的リアルタイムrhPCRは、384ウェルフォーマットにおいて10μL反応体積中で行われた。使用された最終的な反応条件は、10mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、3.5mM MgCl2、0.01%Triton X−100、0.8mM dNTP、200nMのSMAD7フォワードプライマーの1つ(配列番号75、78および79)、200nMのSMAD7リバースプライマー(配列番号74)および200nMのSMAD7プローブ(配列番号80)であった。これらのプライマーによって画定される85bpのSMAD7アンプリコンを配列番号81として示す。フォワードプライマーは、未修飾である(対照、配列番号75)、またはブロック型切断性rhPCR Gen2 RDxxD設計を使用してSMAD7 C−対立遺伝子(配列番号78)もしくはSMAD7 T−対立遺伝子(配列番号79)に特異的であったことに留意されたい。反応は、0.5Uの野生型OptiTaq DNAポリメラーゼ、または0.5Uの、研究された4つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体(MUT ID No.2、V783F;MUT ID NO.3、H784Q;MUT ID NO.10、A661E I665W F667L;もしくはMUT ID NO.18、V783L H784Q)のうちの1つのいずれかを利用した。反応は、SMAD7 For rC DxxD(配列番号78)プライマーを使用した場合に10μL反応あたり200mU(384fmole)の濃度のP.アビシRNase H2および対照反応またはSMAD7 For rU DxxD(配列番号79)プライマーを使用した場合に10μL反応あたり500−600mU(960−1152fmole)の濃度のP.アビシRNase H2を含んだ。本実施例で使用されたオリゴヌクレオチド試薬を表22に示す。サイクリングは、Roche LightCycler(登録商標)480(Roche Applied Science、Indianapolis、IN、USA)上で、以下:95℃で3分間、続いて、95℃で10秒間と60℃で30秒の65サイクルのように行われた。全ての反応を三連で行った。
結果を分析し、表23に示す。対照カラムは、マッチしたプライマー/標的反応についてCq値を示し、ミスマッチの標的は存在せず、定量標準曲線を確立する。低頻度対立遺伝子の検出カラムは、66,000コピーのミスマッチ標的の存在下で、マッチしたプライマー/標的の660、66、6または0(バックグラウンド対照)コピーの検出についてのCq値を示す。バックグラウンドと正のシグナル間の少なくとも3サイクル差(ΔCq=3.0以上)低頻度対立遺伝子検出について「陽性な」反応と呼ぶために必要とされる;5サイクル差(ΔCq=5.0以上)が好ましいことが、一般的に想定される。この系において、バックグラウンドは、プライマーにマッチするインプットされていない標的を使用して増幅を行った場合に観察されたシグナルであり、そのため、シグナルは、ミスマッチ標的を起源とする増幅からのみ生じる。
野生型OptiTaq DNAポリメラーゼを使用すると、過剰な「T」バックグラウンドにおける「C」対立遺伝子の検出と過剰な「C」バックグラウンドにおける「T」対立遺伝子の検出はともに、1:1000低頻度対立遺伝子検出事象(66,000コピーのミスマッチ標的の存在下での66コピーのマッチ標的)と呼ぶためのストリンジェンシーのΔCq3.0とΔCq5.0レベルを満たした。1:10,000反応物(66,000コピーのミスマッチ標的の存在下での6コピーのマッチ標的)は、これらのいずれかの基準を満たさなかった。したがって、rhPCRは、このゲノムDNA SNP系において、野生型OptiTaqを使用した1:1000低頻度対立遺伝子検出限界を有した。
対照的に、4つの突然変異体の各々を使用したrhPCRは、「C」と「T」対立遺伝子標的の両方について1:10,000の低頻度対立遺伝子検出限界を示し、ΔCqストリンジェンシーカットオフは3.0であった。MUT ID3(H784Q)は、5.0のより高いΔCqストリンジェンシーカットオフについてのこのゲノムSNP系において、「C」と「T」標的の両方について1:10,000の低頻度対立遺伝子検出限界を示した。他の3つの突然変異体Taq DNAポリメラーゼ(MUT ID No.2、V783F;MUT ID NO.10、A661E I665W F667L;およびMUT ID NO.18、V783L H784Q)は、ΔCqストリンジェンシーカットオフは5.0である、「C」対立遺伝子標的について1:10,000の低頻度対立遺伝子検出限界を示し、ΔCqストリンジェンシーカットオフは3.0である、「T」対立遺伝子標的について1:10,000の低頻度対立遺伝子検出限界を示した。したがって、本発明者らは、本発明の新規な突然変異体Taq DNAポリメラーゼが、野生型DNAポリメラーゼの使用と比較して、rhPCRにおけるブロック型切断性プライマーを使用した、改善された低頻度対立遺伝子検出反応を提供すると結論付ける。
[実施例10]
プライマーの3’末端でのRNA残基のミスマッチまたは存在についての改善された識別を示すTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の配列
実施例5−9において採用されたコドン最適化変異体酵素の完全なアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を以下に示す。これらの配列は、当業者により表1、3、4および5において提供される情報から容易に誘導されるが、明確にするために、最終的に組み立てられた配列を提供する。塩基変化は、核酸置換およびアミノ酸置換について太字の下線を付したフォントで特定される。
配列番号82、突然変異体ID2(V783F)のヌクレオチド配列。
配列番号83、突然変異体ID2(V783F)のアミノ酸配列。
配列番号84、突然変異体ID3(H784Q)のヌクレオチド配列。
配列番号85、突然変異体ID3(H784Q)のアミノ酸配列。
配列番号86、突然変異体ID10(A661E、I665W、F667L)のヌクレオチド配列。
配列番号87、突然変異体ID10(A661E、I665W、F667L)のアミノ酸配列。
配列番号88、突然変異体ID18(V783L、H784Q)のヌクレオチド配列。
配列番号89、突然変異体ID18(V783L、H784Q)のアミノ酸配列。
[実施例11]
追加の野生型VH関連DNAポリメラーゼについてのBLAST検索
比較ウィンドウとしてP812(配列番号90)全体でTaq DNAポリメラーゼ配列G755を使用したBLAST検索は、米国国立衛生研究所(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)の国立医学図書館内の国立生物工学情報センターを介して利用可能なオンラインデータベースを使用して行われた。BLAST検索は、Taq DNAポリメラーゼのV783とH784位での同一性を含む、Taq DNAポリメラーゼとの大規模な配列同一性を共有する他の種由来の多数の野生型DNAポリメラーゼを明らかにした(「VH関連DNAポリメラーゼ」)。これらの熱安定性ポリメラーゼの例示的なリストを表24に示し、推定上の熱感受性ポリメラーゼの同様のリストを表25に示す。1つのポリメラーゼ遺伝子(ファクラミア・ホミニス)を除くすべての同定された野生型ポリメラーゼ遺伝子において、Taq DNAポリメラーゼのV783およびH784に対応するアミノ酸を保存した。しかしながら、例外的な場合、すなわち、ファクラミア・ホミニスの場合には、Ileは、V783に対応するTaq DNAポリメラーゼの残基位置で天然に存在する。しかしながら、この特定の置換を含む突然変異体ID1に対応するTaq DNAポリメラーゼ変異体は、野生型のTaq DNAポリメラーゼのように振る舞う。このようにして、ファクラミア・ホミニスのDNAポリメラーゼは、外見上、この位置でValの強い選択から生じ、ValまたはIle残基のいずれかが存在する場合、野生型活性を維持することが想定される。これらのBLAST結果は、増大した鋳型識別活性を有するDNAポリメラーゼに対して天然の対抗選択を確認し、これらの特性を有する開示された、工学的に操作されたTaq DNAポリメラーゼ突然変異体が新規であり、非自明であるという強力な証拠を提供する。
これらの同定されたDNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼの残基V783とV784を含む領域において、Taq DNAポリメラーゼと大規模な配列相同性を共有する。工学的に操作されたTaq DNAポリメラーゼ突然変異体で観察されたように、同定された非Taq DNAポリメラーゼの各々は、それぞれの未修飾対応物と比較して、増大した鋳型識別活性を有する、工学的に操作された突然変異体酵素が生じ得る配列スペースを表す。非Taq DNAポリメラーゼについて同一のアミノ酸置換に関して得られた増大した鋳型識別活性の大きさは、それぞれ未修飾非Taq DNAポリメラーゼと比較した場合、またはさらには対応するTaq DNAポリメラーゼ突然変異体について観察された増大した鋳型識別活性の大きさと比較して、同一でなくてもよい。それにもかかわらず、この開示の強力な予測は、Taq DNAポリメラーゼの残基V783および/またはH784に相同性を有する非Taq DNAポリメラーゼにおける少なくともいくつかのアミノ酸置換は、それぞれの未修飾対応物と比較して増大した鋳型識別活性を示す。
[実施例12]
H784位で追加のコドン最適化されたTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の生成
Taqポリメラーゼの最初の18個の突然変異体バージョン(表3、Mut ID1−18)の特性を決定した後、Taq DNAポリメラーゼの追加の18個の突然変異体バージョン(表3、Mut ID19−30)は、クローニングされたOptiTaqコドン最適化WT Taq DNAポリメラーゼの部位特異的突然変異誘発によって作製された。完全なセットは、Taqポリメラーゼ中の784位の全ての可能なアミノ酸変化を表す。特定の突然変異は、PCR部位特異的突然変異誘発法を使用してOptiTaq配列に導入された(Weiner MPら、Gene.、151(1−2):119−23頁(1994))。それぞれの突然変異誘発反応は、1×KOD PCR緩衝液中の、二本鎖OptiTaqプラスミド(20ng)にアニーリングされた、所望の塩基変化を含有する10pmolの2つの相補性オリゴヌクレオチド(表26)、5U KOD DNAポリメラーゼ(Novagen−EMD Chemicals、San Diego、CA)、1.5mMのMgSO4を採用した。熱サイクルパラメータは、95℃で3分間(95℃で20秒間−55℃で20秒間−70℃で2.5分間)の16サイクル、続く、70℃で4分間の浸漬であった。PCR部位特異的突然変異誘発後、増幅産物を37℃で1時間、10UのDpnI(NEB、Ipswish、MA)で処理し、その後、80℃で20分間不活性化を行った。消化材料の110分の1をXL−1 Blueコンピテント細菌に形質転換した。細菌クローンを単離し、プラスミドDNAを調製し、個々の突然変異をサンガーDNA配列決定により確認した。E.コリにおいて組換えタンパク質を発現するのに適したpET−27b(+)発現ベクターにすべての突然変異体を残存させた。実施例3に記載したように、Taqポリメラーゼの組換え突然変異体の発現および精製を行った。
[実施例13]
PCRにおいてH784位で変更された18個の突然変異体Taq DNAポリメラーゼの特性の特徴付け
実施例12に記載された18個の突然変異体Taq DNAポリメラーゼ酵素は、ポリメラーゼ活性と、プライマーオリゴヌクレオチドにおいて3’−RNA残基を識別する能力について特徴付けられた。
精製された野生型タンパク質の単位活性は、市販の天然非ホットスタートTaq DNAポリメラーゼ、Taq−B DNAポリメラーゼ(Enzymatics、Beverly、MA)と比較して、公知量のOptiTaqと各突然変異体のqPCRにおける性能を比較することによって決定された。定量サイクル値(Cq、正のシグナルが最初に検出される増幅サイクル数)と増幅曲線形状は、両酵素がそれぞれに対して最適以下の範囲内で同様に行われるナノグラム量を決定するために分析された。これらのナノグラム量およびTaq−B DNAポリメラーゼの公知の単位値を使用すると、相対活性単位値は、PCRを支持するのに十分な活性を有する突然変異体DNAポリメラーゼ酵素のすべてに対して外挿することができた。
以下の反応条件を採用した:10μLの最終体積中の1×qPCR緩衝液(20mM Tris pH8.4、50mM KCl、3mM MgCl2、0.01%Triton−X100)、800μM dNTP(それぞれ200μM)、500nM Forプライマー(Hs HPRT F517、配列番号43)、500nM Revプライマー(Hs HPRT R591、配列番号44)、250nMプローブ(Hs HPRT P554、配列番号45)、2×103コピーの線形のクローン化されたプラスミド鋳型(HPRT−targ、配列番号46)。それぞれ反応液に添加されたDNAポリメラーゼの量を次のように変化させた:野生型(OptiTaq)について、反応は、10、1、0.1、0.01、0.001U/μL(10μL反応あたり220、22、2.2、0.22または0.022ngのタンパク質)を使用して設定された。突然変異体ポリメラーゼを同様の濃度で駆動した。また、ポリメラーゼ活性を示すそれらの突然変異体酵素は、より細かく滴定され、10μL反応あたり220、22、10.6、4.8、2.2、1.1、0.48および0.22ngのタンパク質を試験した。酵素希釈液を酵素希釈緩衝液(20mM Tris pH7.5、100mM NaCl、1mM DTT、0.1%Triton−X100、1mg/mL BSA、10%グリセロール)で作製した。反応は、95℃で30秒、続いて[95℃で15秒、続いて60℃で1分間]の60サイクルというサイクリングパラメータを使用して、BIO−RAD CFX384(商標)リアルタイムシステム(BIO−RAD、Hercules、CA)上で384ウェルフォーマットにおいて行った。検出は、蛍光をクエンチされたプローブ(5’−ヌクレアーゼアッセイフォーマット、Taq突然変異体の本シリーズに導入された突然変異は、5‘−ヌクレアーゼドメインに存在しないことに留意されたい。)を使用して達成された。プライマー、プローブおよび鋳型(プラスミドインサート)の配列を表27に示す。
これらの18個のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体を上記で概説したように特徴付けた。結果を表28に要約する。突然変異体ID19、23、25、28および31から36を含む10個の突然変異体は、検出可能なDNAポリメラーゼ活性を示さず、さらに研究されなかった。4つの突然変異体である突然変異体ID20、21、27および29は、DNAポリメラーゼ活性を有していた;しかしながら、処理能力は、野生型酵素と比較して4−6倍減少した。3つの突然変異体である突然変異体ID24、26および30は、野生型OptiTaqに類似したDNAポリメラーゼ活性を示した。
DNAポリメラーゼ活性の適切なレベルを示したこれらの突然変異体Taq DNAポリメラーゼのサブセットは、野生型OptiTaq酵素と比較して、3’−RNA残基と対比して3’−DNAを有するプライマー間を識別する能力について研究された。リアルタイムPCRは、前述のように行われ、10μL反応あたり0.5単位の野生型OptiTaqに等しい各突然変異体DNAポリメラーゼの量を反応において採用した。以下の反応条件を採用した:10μLの最終体積中の1×qPCR緩衝液(20mM Tris pH8.4、50mM KCl、3mM MgCl2、0.01%Triton−X100)、800μM dNTP(それぞれ200μM)、500nM Forプライマー(Hs SFRS9 F569rU、配列番号47)、500nM Revプライマー(Hs SFRS9 R712 rA、配列番号48)、250nMプローブ(Hs SFRS9 P644、配列番号49)、2×103コピーの線形のクローン化されたプラスミド鋳型(SFRS9−targ、配列番号50)。反応は、95℃で30秒、続いて[95℃で15秒、続いて60℃で1分間]の60サイクルというサイクリングパラメータを使用して、BIO−RAD CFX384(商標)リアルタイムシステム(BIO−RAD,Hercules,CA)上で384ウェルフォーマットにおいて行った。検出は、蛍光をクエンチされたプローブ(5’−ヌクレアーゼアッセイフォーマット)を使用して達成された。プライマー、プローブおよび鋳型(プラスミドインサート)の配列を表29に示す。
PCRを支持した8個のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体を上記で概説したように、3’−RNA修飾されたプライマーを使用する能力について試験された。結果を表28に要約する。突然変異体ID20および22は、3’−RNA残基と比較して3’−DNAを有するプライマー間の差を示さなかった。突然変異体ID21、24、26、27、29および30は、3’−RNAプライマーを使用して増幅遅延を示した。したがって、追加のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体が同定され、3’−RNA残基からプライミングに対して識別された。RNAプライミングで幾分遅延を示し、高い処理能力を示したそれらの突然変異体は、プライマー3’−残基ミスマッチ識別において改善のために研究された。
[実施例14]
H784位で変更された突然変異体Taq DNAポリメラーゼを使用した対立遺伝子特異的PCRにおける改善されたミスマッチ識別
実施例12および13で研究された18個の突然変異体酵素のうち、突然変異体ID21、24、26、27、29および30は、プライマーにおける3’−RNA残基を識別する能力を示し、高い酵素活性/処理能力を保持した。これら6つの突然変異体および追加として突然変異体ID20と22は、対立遺伝子特異的qPCRアッセイを使用して、野生型OptiTaq DNAポリメラーゼと比較した3’末端DNAミスマッチを識別する能力について研究された。増幅反応は、合成オリゴヌクレオチド鋳型に対して行われ、この場合、リバースプライマーの3’末端に位置するように配置された単一塩基を変化させた(SNP)。この位置で4つの可能な塩基のそれぞれを有する合成鋳型を採用した。3’末端で4つの可能な塩基のそれぞれを有するリバースプライマーを採用した。すべての対のプライマー/鋳型組み合わせの相対増幅効率をqPCRを使用して評価した。
定量的対立遺伝子特異的リアルタイムPCR(AS−qPCR)は、2×105コピーの103bp合成鋳型(配列番号51−54)を使用して、384ウェルフォーマットにおいて10μL反応体積中で行われた。使用された最終的な反応条件は、20mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、および3mM MgCl2、0.01%Triton X−100、800μM総dNTP、ならびに200nMのユニバーサルフォワードプライマー(配列番号60)、200nMのリバースプライマー(別々の反応が、対立遺伝子特異的プライマー配列番号55−58の各々または対照ユニバーサルプライマー配列番号59について設定された。)および200nMの5’ヌクレアーゼ検出プローブ(配列番号61)であった。各対立遺伝子特異的プライマーは、それぞれのSNP鋳型に基づいて試験された。反応は、0.5U(10.8ng/11.1nM/111fmol)の野生型OptiTaq DNAポリメラーゼまたは0.5Uの、研究された9つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体(突然変異体ID3(H784Q)(10.8ng/11.1nM/111fmol);突然変異体ID20 H784A(54ng/55.5nM/555fmol);突然変異体ID22 H784T(10.8ng/11.1nM/111fmol);突然変異体ID24 H784V(24ng/24.7nM/246.7fmol);突然変異体ID26 H784I(21.6ng/22.2nM/222fmol);突然変異体ID27 H784M(10.8ng/11.1nM/111fmol);突然変異体ID29 H784F(49.1ng/49.4nM/494.5fmol);突然変異体ID30 H784Y)(24ng/24.7nM/246.7fmol)のうちの1つのいずれかを利用した。増幅は、以下のサイクリングパラメータ:95℃で30秒間の初期変性、続く、95℃で10秒間、その後の60℃で30秒間の60サイクルを使用して、CFX384(商標)C1000(商標)サーモサイクラーシステム(Bio−Rad、Hercules、CA)上で行われた。本実施例で使用されたオリゴヌクレオチド試薬を表30に示す。
最初に、すべての反応を三連で実施した。野生型OptiTaqを使用した場合、同様の結果がすべての複製について得られた。しかしながら、結果は、変異体ポリメラーゼについてより大きな変動を示した。したがって、統計学的に意味のある結果を得るために、各反応は、突然変異体ポリメラーゼについて24回、野生型酵素について21回行われた。ΔCq値は、各ミスマッチ塩基対について得られたCq値−マッチした塩基対について得られたCq値として計算された(ΔCq=Cqミスマッチ−Cqマッチ)。すべての24複製についてのΔCq値を平均し、標準偏差を計算した。結果を表31に示し、図3C、3D、3D、3Fおよび3Gにおいてグラフ的に要約する。リバースプライマーは対立遺伝子特異的プライマーであることに留意されたい。そのため、「Syn Rev T」プライマー(配列番号55)は、鋳型A(配列番号51)に対して完全な一致する、などである。
野生型OptiTaqは、−0.8から8.5の範囲で4.1のこの合成アンプリコン系において、AS−qPCRについての平均ΔCqを示した。突然変異体ID3(H784Q)は、4.6から21.2の範囲で9.9の平均ΔCqを示した。突然変異体ID20(H784A)は、6.3から14.9の範囲で11.2の平均ΔCqを示した。突然変異体ID21(H784S)は、6.6から25.8の範囲で15.3の平均ΔCqを示した。突然変異体ID22(H784T)は、1.5から13.3の範囲で6.6の平均ΔCqを示した。突然変異体ID24(H784V)は、−0.3から10.2の範囲で4.1の平均ΔCqを示した。突然変異体ID26(H784I)は、0.3から11.3の範囲で5.0の平均ΔCqを示した。突然変異体ID27(H784M)は、4.5から16.7の範囲で9.8の平均ΔCqを示した。突然変異体ID29(H784F)は、3.5から13.3の範囲で7.8の平均ΔCqを示した。突然変異体ID30(H784Y)は、5.3から15.7の範囲で8.3の平均ΔCqを示した。したがって、4つの鋳型塩基と4つの3’−末端プライマー塩基のほぼすべての対の組み合わせにおいて、本発明の突然変異体Taq DNAポリメラーゼは、野生型OptiTaq DNAポリメラーゼよりもミスマッチに対して大きな識別を示した。各ミスマッチ対に対する改善の大きさは、突然変異体と野生型酵素の間の識別の差であるΔΔCqによって定義される(ΔΔCq=ΔCq突然変異体−ΔCq野生型)。ΔΔCq値を計算し、表32に示す。
突然変異体ID3(H784Q)は、野生型OptiTaqに比べて4.9の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID20(H784A)は、野生型OptiTaqに比べて7.1の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID21(H784S)は、野生型OptiTaqに比べて11.2の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID22(H784T)は、野生型OptiTaqに比べて2.5の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID24(H784V)は、野生型OptiTaqに比べて−0.2の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID26(H784I)は、野生型OptiTaqに比べて1.0の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID27(H784M)は、野生型OptiTaqに比べて5.7の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID29(H784F)は、野生型OptiTaqに比べて3.6の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID30(H784Y)は、野生型OptiTaqに比べて4.2の平均ΔΔCqを示した。したがって、突然変異体ID24(H784V)を除いて、本発明の突然変異体Taq DNAポリメラーゼのそれぞれは、ミスマッチ識別において野生型OptiTaqと比較して有意な改善を示した。全体的に、突然変異体ID21(H784S)は、AS−PCRアッセイを使用して、この実施例において研究された9つの突然変異体酵素のセット内で最良のSNP識別を示した。
[実施例15]
ヒトゲノムDNA SNPアッセイにおいて突然変異体Taq DNAポリメラーゼを使用したrhPCRにおける改善されたミスマッチ識別
実施例14は、合成アンプリコンrhPCR SNP識別アッセイ系において、本発明の新規な突然変異体Taq DNAポリメラーゼの有用性を実証した。本実施例は、ヒトゲノムDNA rhPCR SNP識別アッセイ系における新規な突然変異体Taq DNAポリメラーゼの有用性を実証し、SMAD7遺伝子(NM_005904、C/T SNP、rs4939827)におけるSNP部位を調べた。アッセイは、コーリエル医学研究所(Camden、NJ、USA)からの標的DNA GM18562(ホモ接合C/C)およびGM18537(ホモ接合T/T)を採用した。2つの異なるブロック型切断性プライマー設計を試験し、世代1(Gen1)「RDDDDx」プライマーと世代2(Gen2)「RDxxD」プライマーを含んだ(RNASE H−BASED ASSAYS UTILIZING MODIFIED RNA MONOMERSと題するBehlkeらによる米国特許出願第2012/0258455号を参照されたい。)。
定量的リアルタイムrhPCRは、20ng(標的の6600コピーに相当)のヒトゲノムDNA(GM18562またはGM18537)を含む384ウェルフォーマットにおいて10μLの反応体積中で行われた。反応は、0.5U(10.8ng/11.1nM/111fmol)の野生型OptiTaq DNAポリメラーゼまたは0.5Uの、9つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体(MUT ID3、H784Q;MUT ID20、H784A;MUT ID21、H784S;MUT ID22、H784T;MUT ID24、H784V;MUT ID26、H784I;MUT ID27 H784M;MUT ID29、H784F;MUT ID30、H784Y)のうちの1つのいずれかを利用した。使用された最終的な反応条件は、20mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、3mM MgCl2、0.01%Triton X−100、800μM総dNTP、200nMのフォワードプライマー(配列番号75−79)、200nMのユニバーサルリバースプライマー(配列番号74)および200nMのSMAD7プローブ(配列番号80)であった。85bpのSMAD7アンプリコンの配列を配列番号81として示す。フォワードプライマーは、RDDDDx構成Gen1対立遺伝子特異的rhPCRプライマー(配列番号76および77)、RDxxD構成Gen2対立遺伝子特異的rhPCRプライマー(配列番号78および79)、ならびに対立遺伝子特異的でない対照ユニバーサルフォワードプライマー(配列番号75)を含んだ。この実施例において採用されたオリゴヌクレオチド試薬を表33に示す。反応は、Gen1 RDDDDxプライマーと対照プライマー(配列番号75−77)について、10μLあたり200mU(384fmole、38.4nM)が使用されるMUT ID21(H784S)を除いて、10μL反応あたり2.6mUの濃度(5fmole、0.5nM)、またはGen2 RDxxDプライマー(配列番号78および79)について10μL反応あたり200mUの濃度(384fmole、38.4nM)で1μLのP.a.RNase H2を含んだ。増幅は、以下:95℃で3分間、続く、95℃で10秒間と60℃で30秒間の95サイクルのように、Roche LightCycler(登録商標)480(Roche Applied Science、Indianapolis、IN、USA)上で行われた。全ての反応を三連で行った。
Gen1 RDDDDx rhPCRプライマーを使用した結果を表34に示し、Gen2 RDxxD rhPCRプライマーを使用した結果を表35に示す。突然変異体Taq DNAポリメラーゼの使用は、Gen1 RDDDDxプライマーを使用したこのヒトゲノムDNA rhPCRアッセイにおけるSNP識別において有意な改善を示したが、増幅効率は、マッチCqの増加によって示されるように、多く場合、減少した。識別における大きな改善は、Gen2 RDxxDプライマーを使用して見られたが、増幅効率は、多くの場合、ここでは同様に喪失した。Gen2 RDxxDプライマーは、本質的にはより大きなSNP識別を示し、ΔCq値が、ある場合において、マッチとミスマッチ間で40を超える増幅サイクルであるようにこれらのレベルは増加した;qPCR反応がほとんど45−50サイクルを超えて行われず、正のシグナルが70サイクル後までこれらの場合において検出されなかったため、識別のこのレベルは、大部分のユーザーにとって「アッセイよりも大きい」ものとなる(表35)。したがって、新規の突然変異体Taq DNAポリメラーゼの使用は、rhPCR遺伝子型決定アッセイにおけるSNP識別を改善する。
SMAD7 SNP遺伝子型決定アッセイのためのΔCq値は、Gen1 RDDDDxプライマーについては図5Bと5Cに、およびGen2 RDxxDプライマーについては図6Bと6Cにグラフ的に要約される。本発明の種々の突然変異体Taq DNAポリメラーゼが異なる増幅アッセイにおいて有用性を有するだけでなく、異なる突然変異体が、使用されるアッセイの性質に応じて様々なレベルの利益を示すことも明らかである。したがって、最大利益が得られるように、特性が異なるアッセイ/応用にマッチし得る突然変異体ポリメラーゼのコレクションを有することは有益である。
[実施例16]
突然変異体Taq DNAポリメラーゼによるrhPCRを使用したゲノムDNAにおける低頻度対立遺伝子の改善された識別
rhPCRにおけるGen2 RDxxDブロック型切断性プライマーの使用は、天然の(野生型)Taq DNAポリメラーゼを使用した野生型ゲノムDNAのバックグラウンドにおいて、1:1,000から1:10,000のレベルでSNPの存在を検出することができる(RNASE H−BASED ASSAYS UTILIZING MODIFIED RNA MONOMERSと題する、Behlkeらによる米国特許出願第2012/0258455号を参照されたい。)。本実施例は、本発明の突然変異体Taq DNAポリメラーゼがrhPCRアッセイにおいて低頻度対立遺伝子識別を改善することを実証する。
低頻度対立遺伝子の検出実験は、SMAD7遺伝子(NM_005904、C/T SNP、rs4939827)におけるSNP部位の塩基の同一性を検出するように設計され、標的DNAのGM18562(ホモ接合C/C)およびGM18537(ホモ接合T/T)(コーリエル医学研究所、Camden、NJ、USA)を採用した。対照反応は、2ng(660コピー)、0.2ng(66コピー)または0.02ng(6.6コピー)のインプットされた、マッチした標的DNAを使用して設定された。低頻度対立遺伝子の検出反応は、1つの対立遺伝子の2ng(660コピー)、0.2ng(66コピー)または0.02ng(6.6コピー)のインプットされた、マッチした標的DNA+200ng(66,000コピー)の他の(ミスマッチの)対立遺伝子を使用して設定された。バックグラウンドは、0コピーのマッチした標的DNA+200ng(66,000コピー)のミスマッチの標的DNAを含有した反応において確立された。両方の組み合わせを試験した:過剰GM18537(T/T)の存在下で低頻度対立遺伝子としてGM18562(C/C)および過剰GM18562(C/C)の存在下で低頻度対立遺伝子としてGM18537(T/T)。
定量的リアルタイムrhPCRは、384ウェルフォーマットにおいて10μL反応体積中で行われた。使用された最終的な反応条件は、10mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、3.5mM MgCl2、0.01%Triton X−100、0.8mM dNTP、200nMのSMAD7フォワードプライマーの1つ(配列番号75、78および79)、200nMのSMAD7リバースプライマー(配列番号74)および200nMのSMAD7プローブ(配列番号80)であった。これらのプライマーによって画定される85bpのSMAD7アンプリコンを配列番号81として示す。フォワードプライマーは、未修飾である(対照、配列番号75)、またはブロック型切断性rhPCR Gen2 RDxxD設計を使用してSMAD7 C−対立遺伝子(配列番号78)もしくはSMAD7 T−対立遺伝子(配列番号79)に特異的であったことに留意されたい。反応は、0.5Uの野生型OptiTaq DNAポリメラーゼ、または0.5Uの、研究された3つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の例(MUT ID20(H784A);MUT ID27(H784M);MUT ID30(H784Y))のうちの1つのいずれかを利用した。反応は、SMAD7 For rC DxxD(配列番号78)プライマーを使用した場合に10μL反応あたり200mU(384fmole)の濃度のP.アビシRNase H2および対照反応またはSMAD7 For rU DxxD(配列番号79)プライマーを使用した場合に10μL反応あたり500−600mU(960−1152fmole)の濃度のP.アビシRNase H2を含んだ。本実施例で使用されたオリゴヌクレオチド試薬を表36に示す。サイクリングは、Roche LightCycler(登録商標)480(Roche Applied Science、Indianapolis、IN、USA)上で、以下:95℃で3分間、続いて、95℃で10秒間と60℃で30秒の65サイクルのように行われた。全ての反応を三連で行った。
結果を分析し、表37に示す。対照カラムは、マッチしたプライマー/標的反応についてCq値を示し、ミスマッチの標的は存在せず、定量標準曲線を確立する。MUT ID NO.3、H784Qを比較のためにデータ分析に含める。低頻度対立遺伝子の検出カラムは、66,000コピーのミスマッチ標的の存在下で、マッチしたプライマー/標的の660、66、6または0(バックグラウンド対照)コピーの検出についてのCq値を示す。バックグラウンドと正のシグナル間の少なくとも3サイクル差(ΔCq=3.0以上)低頻度対立遺伝子検出について「陽性な」反応と呼ぶために必要とされる;5サイクル差(ΔCq=5.0以上)が好ましいことが、一般的に想定される。この系において、バックグラウンドは、プライマーにマッチするインプットされていない標的を使用して増幅を行った場合に観察されたシグナルであり、そのため、シグナルは、ミスマッチ標的を起源とする増幅からのみ生じる。
野生型OptiTaq DNAポリメラーゼを使用すると、過剰な「T」バックグラウンドにおける「C」対立遺伝子の検出と過剰な「C」バックグラウンドにおける「T」対立遺伝子の検出はともに、1:1000低頻度対立遺伝子検出事象(66,000コピーのミスマッチ標的の存在下での66コピーのマッチ標的)と呼ぶためのストリンジェンシーのΔCq3.0とΔCq5.0レベルを満たした。1:10,000反応物(66,000コピーのミスマッチ標的の存在下での6コピーのマッチ標的)は、これらのいずれかの基準を満たさなかった。したがって、rhPCRは、このゲノムDNA SNP系において、野生型OptiTaqを使用した1:1000低頻度対立遺伝子検出限界を有した。
対照的に、4つの突然変異体の各々を使用したrhPCRは、「C」と「T」対立遺伝子標的の両方について1:10,000の低頻度対立遺伝子検出限界を示し、ΔCqストリンジェンシーカットオフは3.0であった。MUT ID3(H784Q)は、5.0のより高いΔCqストリンジェンシーカットオフについてのこのゲノムSNP系において、「C」と「T」標的の両方について1:10,000の低頻度対立遺伝子検出限界を示した。他の3つの突然変異体Taq DNAポリメラーゼ(MUT ID20(H784A);MUT ID27(H784M);MUT ID30(H784Y))は、ΔCqストリンジェンシーカットオフは5.0である、「C」対立遺伝子標的について1:10,000の低頻度対立遺伝子検出限界を示し、ΔCqストリンジェンシーカットオフは3.0である、「T」対立遺伝子標的について1:10,000の低頻度対立遺伝子検出限界を示した。したがって、本発明者らは、本発明の新規な突然変異体Taq DNAポリメラーゼが、野生型DNAポリメラーゼの使用と比較して、rhPCRにおけるブロック型切断性プライマーを使用した、改善された低頻度対立遺伝子検出反応を提供すると結論付ける。
[実施例17]
プライマーの3’末端でのRNA残基のミスマッチまたは存在についての改善された識別を示すTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の配列
実施例11−15において採用されたコドン最適化変異体酵素の完全なアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を以下に示す。これらの配列は、当業者により表1、3、4および26において提供される情報から容易に誘導されるが、明確にするために、最終的に組み立てられた配列を提供する。塩基変化は、核酸置換およびアミノ酸置換について太字の下線を付したフォントで特定される。
配列番号146、突然変異体ID20(H784A)のヌクレオチド配列。
配列番号147、突然変異体ID20(H784A)のアミノ酸配列。
配列番号148、突然変異体ID21(H784S)のヌクレオチド配列。
配列番号149、突然変異体ID21(H784S)のアミノ酸配列。
配列番号150、突然変異体ID22(H784T)のヌクレオチド配列。
配列番号151、突然変異体ID22(H784T)のアミノ酸配列。
配列番号152、突然変異体ID24(H784V)のヌクレオチド配列。
配列番号153、突然変異体ID24(H784V)のアミノ酸配列。
配列番号154、突然変異体ID26(H784I)のヌクレオチド配列。
配列番号155、突然変異体ID26(H784I)のアミノ酸配列。
配列番号156、突然変異体ID27(H784M)のヌクレオチド配列。
配列番号157、突然変異体ID27(H784M)のアミノ酸配列。
配列番号158、突然変異体ID29(H784F)のヌクレオチド配列。
配列番号159、突然変異体ID29(H784F)のアミノ酸配列。
配列番号160、突然変異体ID30(H784Y)のヌクレオチド配列。
配列番号161、突然変異体ID30(H784Y)のアミノ酸配列。
[実施例18]
5’エキソヌクレアーゼ活性を排除するように修飾されたコドン最適化されたTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の生成
表3のいくつかの突然変異体の5’エキソヌクレアーゼ活性を排除した追加のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体を作製した。5’−エキソヌクレアーゼ活性を欠損したTaq DNAポリメラーゼは、従前、「KlenTaq」と命名された(Barnes,W.M.、Gene 112:29−35頁、1992)。TaqポリメラーゼのN末端5’エキソヌクレアーゼドメインの欠失は、酵素のミスマッチ識別性を向上させる(Barnes,W.M.、Gene 112:29−35頁、1992)。本研究は、本発明のTaq DNAポリメラーゼ突然変異体で見られる特異性改善が5’−エキソヌクレアーゼ活性を排除した突然変異と組み合わせられたかどうかを特徴付けた。本明細書に示された実施例は、例示することを意図し、決して特許請求の範囲を限定するものではない。特定の突然変異は、PCR部位特異的突然変異誘発法を使用してOptiTaq配列に導入された(Weiner MPら、Gene.、151(1−2):119−23頁(1994))。各突然変異誘発反応は、5’エキソヌクレアーゼドメインを除いて、DNAポリメラーゼを含有するプラスミドの周囲を増幅するために、10pmolの2つのオリゴヌクレオチド(表38)を採用した。これらのプライマーは、増幅後の再ライゲーション可能にする5’リン酸を含有するように製造された。簡単には、これらのプライマーは、1×KOD PCR緩衝液中の、先に特徴付けられた突然変異体DNAポリメラーゼ(MUT ID2、3、10、18、21および30)(それぞれ20ng)、5U KOD DNAポリメラーゼ(Novagen−EMD Chemicals、San Diego、CA)、1.5mMのMgSO4を含有する二本鎖プラスミドにアニーリングされた。熱サイクルパラメータは、95℃で3分間(95℃で20秒間−55℃で20秒間−70℃で2分間)の25サイクル、続く、70℃で4分間の浸漬であった。PCR部位特異的突然変異誘発後、増幅産物を37℃で1時間、10UのDpnI(NEB、Ipswish、MA)で処理し、その後、80℃で20分間不活性化を行った。消化材料の6分の1をT4 DNAリガーゼ(NEB、Ipswich、MA)とともに、16℃で20分間ライゲートし、続く、65℃で10分間不活性化を行った。ライゲートされた消化材料の15分の1をXL−1 Blueコンピテント細菌に形質転換した。細菌クローンを単離し、プラスミドDNAを調製し、5’エキソヌクレアーゼドメインの欠失をサンガーDNA配列決定により確認した。E.コリにおいて組換えタンパク質を発現するのに適したpET−27b(+)発現ベクターにすべての突然変異体を残存させた。実施例3に記載したように、Taqポリメラーゼの組換え突然変異体の発現および精製を行った。
[実施例19]
PCRにおける7つの5’−エキソヌクレアーゼ欠失突然変異体Taq DNAポリメラーゼの特性の特徴付け
実施例18に記載された7つの突然変異Taq DNAポリメラーゼ酵素は、ポリメラーゼ活性について特徴付けられた。
精製された野生型タンパク質の単位活性は、市販の非ホットスタートTaq DNAポリメラーゼ、Taq−B DNAポリメラーゼ(Enzymatics、Beverly、MA)と比較して、公知量のOptiTaqと各突然変異体のqPCRにおける性能を比較することによって決定された。定量サイクル値(Cq、正のシグナルが最初に検出される増幅サイクル数)と増幅曲線形状は、両酵素がそれぞれに対して最適以下の範囲内で同様に行われるナノグラム量を決定するために分析された。これらのナノグラム量およびTaq−B DNAポリメラーゼの公知の単位値を使用すると、相対活性単位値は、PCRを支持するのに十分な活性を有する突然変異体DNAポリメラーゼ酵素のすべてに対して外挿することができた。また、試験が行われ、ポリメラーゼが最適活性を示すMgCl2濃度を決定した。
以下の反応条件を採用した:10μLの最終体積中の1×qPCR緩衝液(20mM Tris pH8.4、50mM KCl、0.01%Triton−X100)、800μM dNTP(それぞれ200μM)、500nM Forプライマー(Hs HPRT F517、配列番号43)、500nM Revプライマー(Hs HPRT R591、配列番号44)、250nM RNase H2切断性プローブ(Hs HPRT RN2プローブ、配列番号164)、20mUパイロコッカス・アビシRNase H2、2×103コピーの線形のクローン化されたプラスミド鋳型(HPRT−targ、配列番号46)。MgCl2をそれぞれの場合において3、4または5mMで試験した。それぞれ反応液に添加されたDNAポリメラーゼの量を次のように変化させた:野生型(OptiTaq)について、反応は、10、1、0.1、0.01、0.001U/μL(10μL反応あたり220、22、2.2、0.22または0.022ngのタンパク質)を使用して設定された。突然変異体ポリメラーゼを同様の濃度で駆動した。また、ポリメラーゼ活性を示すそれらの突然変異体酵素は、より細かく滴定され、10μL反応あたり220、22、10.6、4.8、2.2、1.1、0.48および0.22ngのタンパク質を試験した。ポリメラーゼ希釈液を酵素希釈緩衝液(20mM Tris pH7.5、100mM NaCl、1mM DTT、0.1%Triton−X100、1mg/mL BSA、10%グリセロール)で作製した。反応は、95℃で30秒、続いて[95℃で15秒、続いて60℃で1分間]の60サイクルというサイクリングパラメータを使用して、BIO−RAD CFX384(商標)リアルタイムシステム(BIO−RAD、Hercules、CA)上で384ウェルフォーマットにおいて行った。検出は、蛍光をクエンチされたプローブ(P.a.RNase H2酵素の作用によって切断される。)を使用して達成された。プライマー、プローブおよび鋳型(プラスミドインサート)の配列を表39に示す。
これらの7つのTaq DNAポリメラーゼ5’−エキソヌクレアーゼ欠失突然変異体を上記で概説したように特徴付けた。結果を表40に要約する。7つ全ての突然変異体はDNAポリメラーゼ活性を有していた;しかしながら、突然変異体ID38、39、40、41、42および43における処理能力は、野生型酵素と比較して10−50倍減少した。1つの突然変異体ID37(OptiTaq KlenTaq)は、野生型OptiTaqとほぼ同一であるDNAポリメラーゼ活性を示した。したがって、ポリメラーゼ特異性を改善する点突然変異と一緒に、Taq DNAポリメラーゼの5’−エキソヌクレアーゼドメインの完全な欠失の組み合わせはすべて、酵素活性と処理能力を有意に損なった。
[実施例20]
5’−エキソヌクレアーゼドメインの欠失も有する突然変異体Taq DNAポリメラーゼを使用した対立遺伝子特異的PCRにおける改善されたミスマッチ識別
実施例18および19において研究された7つの突然変異体酵素のうち、突然変異体ID37、38、39、40、41、42および43は、特徴付けするには十分な酵素活性/処理能力を保持した。これら7つの突然変異体は、対立遺伝子特異的qPCRアッセイを使用して、野生型OptiTaq DNAポリメラーゼと比較した3’末端DNAミスマッチを識別する能力について研究された。増幅反応は、合成オリゴヌクレオチド鋳型に対して行われ、この場合、リバースプライマーの3’末端に位置するように配置された単一塩基を変化させた(SNP)。この位置で4つの可能な塩基のそれぞれを有する合成鋳型を採用した。3’末端で4つの可能な塩基のそれぞれを有するリバースプライマーを採用した。相対増幅効率をqPCRを使用して評価した。
定量的対立遺伝子特異的リアルタイムPCR(AS−qPCR)は、2×105コピーの103bp合成鋳型(配列番号51−54)を使用して、384ウェルフォーマットにおいて10μL反応体積中で行われた。使用された最終的な反応条件は、20mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、実施例19において各ポリメラーゼについて最適となるように決定された量MgCl2、0.01%Triton X−100、800μM総dNTP、ならびに200nMのユニバーサルフォワードプライマー(配列番号60)、200nMのリバースプライマー(別々の反応が、対立遺伝子特異的プライマー配列番号55−58の各々または対照ユニバーサルプライマー配列番号59について設定された。)および200nMのRNase H2切断性プローブ(配列番号165)であった。また、20mUパイロコッカス・アビシRNase H2を各反応に含めた。各対立遺伝子特異的プライマーは、それぞれのSNP鋳型に基づいて試験された。反応は、0.5U(10.8ng/11.1nM/111fmol)のOptiTaq KlenTaq DNAポリメラーゼ(突然変異体ID37)または0.5Uの、研究された6つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体(突然変異体ID38(108ng/111nM/1110fmol);突然変異体ID39(216ng/222nM/2220fmol);突然変異体ID40(360ng/370nM/3700fmol);突然変異体ID41(1060ng/555nM/5550fmol);突然変異体ID42(1060ng/555nM/5550fmol);突然変異体ID43(216ng/222nM/2220fmol))のうちの1つのいずれかを利用した。増幅は、以下のサイクリングパラメータ:95℃で30秒間の初期変性、続く、95℃で10秒間、その後の60℃で30秒間の60サイクルを使用して、CFX384(商標)C1000(商標)サーモサイクラーシステム(Bio−Rad、Hercules、CA)上で行われた。本実施例で使用されたオリゴヌクレオチド試薬を表41に示す。
最初に、すべての反応を三連で実施した。野生型OptiTaqを使用した場合、同様の結果がすべての複製について得られた。しかしながら、結果は、変異体ポリメラーゼについてより大きな変動を示した。したがって、統計学的に意味のある結果を得るために、各反応は、突然変異体ポリメラーゼについて24回、野生型酵素について21回行われた。ΔCq値は、各ミスマッチ塩基対について得られたCq値−マッチした塩基対について得られたCq値として計算された(ΔCq=Cqミスマッチ−Cqマッチ)。すべての24複製についてのΔCq値を平均し、標準偏差を計算した。結果を表42に示し、図7A、7Bおよび7Cにおいてグラフ的に要約する。リバースプライマーは対立遺伝子特異的プライマーであることに留意されたい。そのため、「Syn Rev T」プライマー(配列番号55)は、鋳型A(配列番号51)に対して完全な一致する、などである。
OptiTaq KlenTaq突然変異体ID37は、3.9から14.7の範囲で9.8のこの合成アンプリコン系において、AS−qPCRについての平均ΔCqを示した。突然変異体ID38(A661E、I665W、F667L KlenTaq)は、7.9から17.4の範囲で11.9の平均ΔCqを示した。突然変異体ID39(V783F KlenTaq)は、6.9から17.1の範囲で11.3の平均ΔCqを示した。突然変異体ID40(H784Q KlenTaq)は、7.9から18.2の範囲で11.9の平均ΔCqを示した。突然変異体ID41(V783L H784Q KlenTaq)は、5.8から15.8の範囲で10.5の平均ΔCqを示した。突然変異体ID42(H784S KlenTaq)は、8.3から15.8の範囲で11.9の平均ΔCqを示した。突然変異体ID43(H784Y KlenTaq)は、6.5から15.5の範囲で11.2の平均ΔCqを示した。したがって、4つの鋳型塩基と4つの3’−末端プライマー塩基のすべての対の組み合わせにおいて、本発明の突然変異体Taq DNAポリメラーゼは、OptiTaqまたはOptiTaq KlenTaq DNAポリメラーゼよりもミスマッチに対して大きな識別を示した。各ミスマッチ対に対する改善の大きさは、突然変異体と野生型KlenTaq酵素の間の識別の差であるΔΔCqによって定義される(ΔΔCq=ΔCq突然変異体KlenTaq−ΔCqOptiTaq KlenTaq)。ΔΔCq値を計算し、表43に示す。
突然変異体ID38(A661E、I665W、F667L KlenTaq)は、OptiTaq KlenTaqに比べて1.7の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID39(V783F KlenTaq)は、OptiTaq KlenTaqに比べて2.0の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID40(H784Q KlenTaq)は、OptiTaq KlenTaqに比べて2.1の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID41(V783L H784Q KlenTaq)は、OptiTaq KlenTaqに比べて0.7の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID42(V784S KlenTaq)は、OptiTaq KlenTaqに比べて2.1の平均ΔΔCqを示した。突然変異体ID43(H784Y KlenTaq)は、OptiTaq KlenTaqに比べて2.0の平均ΔΔCqを示した。したがって、本発明の突然変異体Taq DNAポリメラーゼのそれぞれは、5’−エキソヌクレアーゼドメインの完全な欠失を有するが、他の第2の突然変異を含まないOptiTaq KlenTaqと比較してミスマッチ識別において有意な改善を示した。全体的に、突然変異体ID40および42(H784Q KlenTaqおよびH784S KlenTaq)は、AS−PCRアッセイを使用して、この実施例において研究された突然変異体酵素のセット内で最良のSNP識別を示した。
[実施例21]
ヒトゲノムDNA SNPアッセイにおいて突然変異体KlenTaq DNAポリメラーゼを使用したrhPCRにおける改善されたミスマッチ識別
実施例20は、合成アンプリコンrhPCR SNP識別アッセイ系において、本発明の新規な突然変異体Taq DNAポリメラーゼの有用性を実証した。本実施例は、ヒトゲノムDNA rhPCR SNP識別アッセイ系における新規な突然変異体Taq DNAポリメラーゼの有用性を実証し、SMAD7遺伝子(NM_005904、C/T SNP、rs4939827)におけるSNP部位を調べた。アッセイは、コーリエル医学研究所(Camden、NJ、USA)からの標的DNA GM18562(ホモ接合C/C)およびGM18537(ホモ接合T/T)を採用した。1つのブロック型切断性プライマー設計、世代1(Gen1)「RDDDDx」プライマー(RNASE H−BASED ASSAYS UTILIZING MODIFIED RNA MONOMERSと題するBehlkeらによる米国特許出願第2012/0258455号を参照されたい。)を試験した。
定量的リアルタイムrhPCRは、20ng(標的の6600コピーに相当)のヒトゲノムDNA(GM18562またはGM18537)を含む384ウェルフォーマットにおいて10μLの反応体積中で行われた。反応は、0.5U(10.8ng/11.1nM/111fmol)のOptiTaq KlenTaqDNAポリメラーゼまたは0.5Uの、3つのTaq DNAポリメラーゼ突然変異体(突然変異体ID40(360ng/370nM/3700fmol);突然変異体ID41(1060ng/555nM/5550fmol);突然変異体ID43(216ng/222nM/2220fmol))のうちの1つのいずれかを利用した。使用された最終的な反応条件は、20mM Tris−HCL(25℃でpH8.4)、50mM KCL、3mM MgCl2、0.01%Triton X−100、800μM総dNTP、200nMのフォワードプライマー(配列番号75−79)、200nMのユニバーサルリバースプライマー(配列番号74)および200nMのRNase H2切断性SMAD7プローブ(配列番号166)であった。85bpのSMAD7アンプリコンを配列番号81として示す。フォワードプライマーは、RDDDDx構成Gen1対立遺伝子特異的rhPCRプライマー(配列番号76および77)、および対立遺伝子特異的でない対照ユニバーサルフォワードプライマー(配列番号75)を含んだ。この実施例において採用されたオリゴヌクレオチド試薬を表44に示す。反応は、10μL反応あたり2.6mU(5fmole、0.5nM)の濃度で1μLのP.a.RNase H2を含んだ。増幅は、以下:95℃で3分間、続く、95℃で10秒間と60℃で30秒間の95サイクルのように、Roche LightCycler(登録商標)480(Roche Applied Science、Indianapolis、IN、USA)上で行われた。全ての反応を三連で行った。
Gen1 RDDDDx rhPCRプライマーを使用した結果を表45に示す。突然変異体Taq DNAポリメラーゼの使用は、Gen1 RDDDDxプライマーを使用したこのヒトゲノムDNA rhPCRアッセイにおけるSNP識別において有意な改善を示したが、増幅効率は、マッチCqの増加によって示されるように、多く場合、減少した。したがって、新規な突然変異体KlenTaq DNAポリメラーゼの使用は、rhPCR遺伝子型決定アッセイにおいてSNP識別を改善する。
[実施例22]
プライマーの3’末端でのRNA残基のミスマッチまたは存在についての改善された識別を示すTaq DNAポリメラーゼ突然変異体の配列
実施例18−21において採用されたコドン最適化変異体酵素の完全なアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を以下に示す。これらの配列は、当業者により表1、3、4、26および38において提供される情報から容易に誘導されるが、明確にするために、最終的に組み立てられた配列を提供する。塩基変化は、核酸置換およびアミノ酸置換について太字の下線を付したフォントで特定される。
配列番号167、突然変異体ID37(OptiTaq KlenTaq)のヌクレオチド配列。
配列番号168、突然変異体ID37(OptiTaq KlenTaq)のアミノ酸配列。
配列番号169、突然変異体ID38(A661E、I665W、F667L KlenTaq)のヌクレオチド配列。
配列番号170、突然変異体ID38(A661E、I665W、F667L KlenTaq)のアミノ酸配列。
配列番号171、突然変異体ID39(V783F KlenTaq)のヌクレオチド配列。
配列番号172、突然変異体ID39(V783F KlenTaq)のアミノ酸配列。
配列番号173、突然変異体ID40(H784Q KlenTaq)のヌクレオチド配列。
配列番号174、突然変異体ID40(H784Q KlenTaq)のアミノ酸配列。
配列番号175、突然変異体ID41(V783L H784Q KlenTaq)のヌクレオチド配列。
配列番号176、突然変異体ID41(V783L H784Q KlenTaq)のアミノ酸配列。
配列番号177、突然変異体ID42(H784S KlenTaq)のヌクレオチド配列。
配列番号178、突然変異体ID42(H784S KlenTaq)のアミノ酸配列。
配列番号179、突然変異体ID43(H784Y KlenTaq)のヌクレオチド配列。
配列番号180、突然変異体ID43(H784Y KlenTaq)のアミノ酸配列。
参照による組み込み
それぞれ個々の刊行物、特許、特許出願または受託番号データが具体的におよび個別に参照により組み込まれることが示されたかのように、本明細書に記載のすべての刊行物、特許、特許出願、受託番号データは、本明細書にその全体が参照により組み込まれる。受託番号データの引用および参照の場合において、対応するDNAポリメラーゼアミノ酸配列およびヌクレオチド配列は、このような配列が配列番号により開示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書中のいずれもの定義を含む本出願が支配する。
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態だけを説明する目的のためであり、限定することを意図するものではない。本明細書中の実質的に、任意の複数および/または単数の用語の使用に関して、当業者は、文脈および/または適用に適切であるように複数から翻訳することができる。様々な単数/複数の置換は、明瞭にするために本明細書に明確に記載されてもよい。
本発明は、特定の実施形態を参照にして記載されてきたが、様々な変更を行うことができ、同等物が本発明の範囲から逸脱することなく置換されていてもよいことは、当業者によって理解される。さらに、多くの修飾は、その範囲から逸脱することなしに本発明の教示に特定の状況または材料を適合させるようにして行ってもよい。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態または実施例に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を包含することが意図される。