JP2021177699A - キシロースを優先的に利用するためのキシロース輸送タンパク質変異体とその利用 - Google Patents
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Abstract
【課題】 グルコース存在下でも、カタボライト抑制(グルコース抑制)を受けずに、キシロース等のグルコース以外の糖を細胞内に取込むことができるキシロース輸送タンパク質変異体の提供及びその利用法を課題とする。【解決手段】 グルコース存在下においてもキシロースを輸送可能なキシロース輸送タンパク質変異体であって、下記2つの変異を有するキシロース輸送タンパク質変異体:(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異、(ii)ユビキチン化を阻害する変異。【選択図】なし
Description
本発明は、カタボライト抑制を解除する方法、とくに、キシロースをグルコースより先にあるいは同時に利用させるための方法及びセルロース系バイオマスエタノールの生産性向上、生産効率向上という産業利用に関する。
発酵技術に代表される微生物を用いた有用物質生産は、清酒、焼酎、泡盛、醤油、味噌等の発酵食品から派生し、我が国独自の技術として積み重ねられてきた。特に、移動用燃料用途として、すでにブラジル、米国、中国などで商業化が進んでいる第一世代バイオエタノールは、でんぷんや糖液などの食料品を原料とし、酵母やエタノール生産細菌などの微生物が保有するエタノール発酵性を基本技術として利用している。しかし、世界人口の爆発的増加に伴い、我々の生活に必須である食料や家畜飼料の枯渇が懸念される中、食料供給と直接競合する第一世代バイオエタノールの工業生産の拡大は人類の持続可能な経済活動としては好ましくない。そこで、これまで未利用だった植物細胞壁、例えば、稲稈、麦稈、トウモロコシ穂軸及び茎葉、サトウキビ搾汁残渣(バガス)、間伐材といった農林産物の非可食部位、食品残渣、建築廃材など産業廃棄物に含まれる糖を利用するセルロース系バイオマスエタノール(第二世代バイオエタノール)の工業生産を目指した技術開発が進められてきている。
セルロース系バイオマスエタノールに限らず、エタノールの発酵生産には大きく分けて、2つの重要な要素技術が存在する。第一の要素技術は、セルラーゼと呼ばれる糖化酵素である。セルラーゼは、植物細胞壁の構成成分であるセルロース、ヘミセルロースなどの高分子化合物を、グルコース、キシロース、アラビノース、マンノース等の微生物が利用可能な単糖に分解する酵素の総称である。第二の要素技術は、発酵微生物である。多くの細菌や、酵母、カビといった真核微生物の多くは、生命維持のために糖を利用し、エタノールを発酵生産する代謝経路を持つ。
第一世代バイオエタノールの原料であるでんぷんや糖液が、ほぼグルコースやスクロースといった単純な糖で構成されているのに対し、第二世代バイオエタノールの原料であるセルロース系バイオマス、すなわち植物細胞壁は、セルロース、ヘミセルロース、リグニンといった複数の高分子化合物の集合体であり、セルロースに含まれるグルコースの利用だけでなく、ヘミセルロースに含まれるキシロースやアラビノースといったこれまで未利用であったグルコース以外の糖をエタノールに変換する技術が求められている。これによって、第一世代バイオエタノールに比べ、より地球温暖化ガス排出削減など、環境により配慮したエタノール生産を実現するだけでなく、より高い経済性も期待できる。
出芽酵母Saccharomyces cerevisiae(以下、酵母とする)は、パン酵母として知られる我々に身近な微生物の一つであり、清酒、焼酎、泡盛といった我が国の酒類はこの微生物によってアルコールを生産している。しかし、酵母はグルコースからエタノールを生産することに長けているけれども、基本的にキシロースなどの五単糖を利用することができない。そのため、遺伝子組換え技術を用いて外来遺伝子としてキシロース代謝酵素等を組み込むことにより、キシロースを本来効率的に利用することができない酵母において、速やかにキシロースからエタノール発酵を可能にする技術開発を進めてきた(非特許文献1、特許文献1、特許文献2)。これによって、一種類の微生物で、グルコースとキシロースの両方からエタノール生産が可能になっている。しかし、一般に、微生物はグルコースを優先的に利用し、グルコースが無くなると、他の糖や炭素源を利用できるようになるカタボライト抑制(グルコース抑制ともいわれる)という現象が広く知られている(非特許文献2)。すなわち、グルコース、キシロースの両方を利用できる微生物であっても、先にグルコースを消費し、次にキシロースを消費することになる。これは、セルロース系バイオマスエタノール生産プロセスでは、第一世代バイオエタノールより発酵プロセスに時間がかかる、すなわち生産コストの上昇という問題が生じる。したがって、カタボライト抑制を解除し、グルコースとキシロースを同時にあるいは究極的にはキシロースをグルコースと同時にあるいは先に利用するような技術が求められている。
酵母の場合、細胞外にある糖からエタノールを生産する過程は、すでに多くの研究によって明らかにされている。まず、糖の種類、濃度、親和性の異なる、高度に制御された複数の輸送タンパク質を通じて糖を細胞内へ取り込む。次に、取り込んだ糖を糖代謝酵素により変換する。グルコースの場合、ピルビン酸を経て、クエン酸回路(TCAサイクル)へと流れ、エネルギー生産に使われる。これは解糖系として知られている。エタノールは、ピルビン酸から分離した経路においてアセトアルデヒドの還元によって作られる。一方、キシロースは、キシロース還元酵素(XR)、キシリトール脱水素酵素(XDH)によりキシルロースに、あるいはキシロース異性化酵素(XI)によって直接キシルロースに変換される。次に、キシルロースリン酸化酵素(XKS)によってキシルロース5リン酸に変換される。キシルロース5リン酸は非酸化型ペントースリン酸経路と呼ばれる芳香族アミノ酸や核酸合成にも関与する経路を経て、解糖系に戻され、最終的にクエン酸回路やエタノール代謝経路に流れる(非特許文献3)。そのため、キシロースの効率的な利用には、キシロースの取り込み向上、より比活性の高いキシロースイソメラーゼ(特許文献2)や解糖系の改変によるキシロース代謝向上(特許文献1)、ペントースリン酸経路の最適化(非特許文献1)などが重要な課題として挙げられる。
カタボライト抑制は、この糖代謝経路の制御に関わる生物学的な現象である。すなわち、外界に十分な濃度のグルコースがあるときには、内在性のグルコース代謝以外の輸送タンパク質や代謝遺伝子は遺伝子発現が抑制され、グルコース濃度が低下してはじめてキシロース輸送タンパク質や各種代謝酵素の遺伝子発現が開始される。これがカタボライト抑制の解除である。つまり、グルコースが存在するときには、グルコース代謝遺伝子はオンに、それ以外の糖代謝遺伝子はオフに、他の糖を利用するときには、一部のグルコース代謝遺伝子はオフに、他の糖代謝遺伝子をオンにするという、トグルスイッチのような役割を果たしている。このように、カタボライト抑制は、糖代謝に関わる数多くの複雑に絡み合った遺伝子発現ネットワークによって制御・維持されており、酵母では外界のグルコース濃度に応答するRGT2, Snf3などのグルコースセンサーに始まり、リン酸化酵素Snf1、脱リン酸化酵素Reg1、転写因子Mig1, Msn2/4, Rgt1, Mth1などがネットワークを形成し、カタボライト抑制の機能に重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献2)。そのため、カタボライト抑制というシステムのうち、一つや二つの遺伝子を改変しただけで、望むようなカタボライト抑制の解除ができないであろうことは想像に難くない。例えば、単純に遺伝子発現ネットワークの上位にある転写因子を欠損させることにより、グルコース存在下でもグルコース以外の糖の利用は可能になるかもしれないが、逆にグルコースの利用ができなくなるといった副作用が懸念される。
キシロース輸送タンパク質遺伝子の発現方法には、以下の理由で注意すべきである。そもそもカタボライト抑制が機能しているとき、すなわち、グルコース存在下では、内在性のキシロース輸送タンパク質は発現抑制されているため、外界にあるキシロースを取り込むことができない。つまり、グルコースと同時にキシロースを利用するためには、内在性キシロース代謝酵素遺伝子のプロモーターを使用することは不適切である。その代わり、グルコース存在下で強く発現するようなプロモーター、例えば、酵母における遺伝子発現でよく用いられている解糖系遺伝子のTDH1プロモーター、を利用することが可能である。また、発酵プロセスとしては、必要に応じてキシロースのみ存在する状況でも、やはり、キシロース輸送タンパク質の強い発現が望ましい。そもそも酵母はキシロースを利用できないことから、キシロースしか存在しない状況では、細胞全体の遺伝子発現は低下してしまうため、グルコース存在下に匹敵するような内在性プロモーターの利用は考えにくい。そのような場合には、グルコース・キシロース共発酵においてキシロース利用時期(後半)において強く発現するように設計された人工プロモーターの利用が可能である(特許文献3)。
このように、糖輸送タンパク質の制御はカタボライト抑制の一つの重要な要素であり、本課題を解決するための重要な技術的課題である。酵母には、100種を超える輸送タンパク質がゲノム上にコードされていると言われるが、少なくとも糖の輸送に関わるものとして、18種類(HXT1〜HXT17、GAL2)が知られている。これらの輸送タンパク質は、12回膜貫通型の膜タンパク質で、構造はよく似ているが、輸送する糖の種類、親和性、透過率、発現制御などの特性はそれぞれ異なっている(非特許論文4、非特許文献5)。酵母は、種の進化の過程で、様々な環境に適応しながら生きのびるために、これらの遺伝子を重複させ、機能分化し、カタボライト抑制というシステムを完成させたと考えられる。また、酵母はそのままではキシロースの効率的な利用が出来ない種ではあるが、HXT4, HXT5, HXT7, GAL2などはキシロースをある程度取り込むことができることも知られている(非特許文献6、非特許文献7)。
つまり、カタボライト抑制を解除するためには、少なくとも、キシロースを輸送可能なタンパク質(以下、キシロース輸送タンパク質)をグルコース存在下でも発現させることが必要条件となる。これは、すでに述べたようにグルコース存在下で作動するプロモーターを選択し、遺伝子発現すれば可能であるように思うかもしれない。上記のように、確かに酵母にはキシロース輸送が可能なタンパク質はあるが、これはキシロース輸送のためだけに存在するのではなく、あくまで他の糖、例えばグルコースやガラクトースを輸送するためのものが、キシロースも輸送できるということに過ぎない。輸送可能な糖に対する親和性が異なるのである。結局、グルコースが存在下では、いくらキシロース輸送可能なタンパク質を発現しても、グルコースを優先して輸送してしまうため、グルコースが無くなるまでキシロースは利用できないのである。
糖輸送タンパク質の遺伝子改変によって、輸送される糖の親和性を変化させるという研究がこれまでに行われてきた。一例をあげると、キシロース輸送可能なタンパク質GAL2では、GAL2 (N376F)というアミノ酸置換体はグルコースを輸送せず、キシロースのみ輸送することができる変異体である(非特許文献8)。このGAL2変異体を有する酵母は、キシロース単独で生育することができるようになる。しかし、GAL2 (N376F)変異体の付加的な強制発現によって、キシロースの輸送速度は確かに向上するものの、やはりキシロースを優先的に利用することはできない。カタボライト抑制は、外界の糖濃度の急速な変化に対応するため、細胞膜に存在する糖を取り込むための輸送タンパク質のリサイクル速度が速い。そのため、いくら強いプロモーターにより発現しても期待したほどキシロースは取り込まないのである。このように、カタボライト抑制は、転写制御因子の発現制御レベル、代謝遺伝子の発現制御のレベル、輸送タンパク質の発現制御のレベル、輸送タンパク質の特異性のレベル、輸送タンパク質の安定性のレベルといった異なるレベルで、何重にも制御されている。裏を返せば、糖の利用は生命維持の根源であり、カタボライト抑制はそれを守るための堅牢なシステムである。また、カタボライト抑制の解除は、あくまで糖の利用の順番の変更であり、これによってグルコースの利用が妨げられてはならないことにも留意すべきである。
以上を踏まえて、発明者らは、本特許の課題を解決するために、GAL2 (N376F)変異体をさらに変異させ、細胞膜での安定性を高める必要があると考えた。キシロース輸送にかかる膜タンパク質の安定性は、タンパク質の品質管理システムの一つであるユビキチンによって制御されていると考えられるため、キシロース輸送タンパク質のユビキチン化を阻害する(非ユビキチン化という)変異体を作成し、グルコース存在下で強く遺伝子発現可能なプロモーターによって発現することにより、キシロース輸送タンパク質変異体は長く細胞膜に留まることができ、その結果、カタボライト抑制が解除され、グルコースとキシロースを同時あるいはキシロースを優先して利用することが可能になるという着想に行きついた。さらに、上記で述べたように、個々の糖輸送タンパク質は、特定の糖類(一つに限らない)を輸送する特性を持ち、糖輸送タンパク質の二次構造は進化上保存されている。また、いずれも細胞内ドメインのリシン残基を持つため、これを介して、ユビキチン化によって細胞膜における保持時間が制御されていると考えることは妥当である。よって、特定の糖輸送を促進させるためには、その糖を輸送することができるタンパク質のユビキチン化部位を非ユビキチン化した変異体を導入した微生物を作成することによって、その微生物の糖利用の順序・速度を制御しうる。
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グルコース存在下でも、カタボライト抑制(グルコース抑制)を受けずに、キシロース等のグルコース以外の糖を細胞内に取込むことができるキシロース輸送タンパク質変異体の提供及びその利用法を課題とする。
上記課題に鑑み、発明者らは、酵母におけるキシロース特異的輸送タンパク質GAL2(N376F)のユビキチン化されると推測された部位をアミノ酸置換により欠損させた非ユビキチン変異型GAL2遺伝子を作成した。この変異型遺伝子を、キシロース代謝遺伝子を導入した酵母株に導入し、グルコース存在下で強く発現可能なプロモーターにより発現させた酵母は、グルコース、キシロースを含む培地を用いたエタノール発酵試験において、グルコースよりも優先してキシロースを消費することができることを示した。さらに、非ユビキチン化したGAL2変異体を用いることでエタノール収率も向上することを示したことにより、本課題を解決するに至った。
すなわち、本発明は以下に記載の通りである:
すなわち、本発明は以下に記載の通りである:
本発明の一態様は、
〔1〕グルコース存在下においてもキシロースを輸送可能なキシロース輸送タンパク質変異体であって、下記2つの変異を有するキシロース輸送タンパク質変異体に関する:
(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異、
(ii)ユビキチン化を阻害する変異。
ここで、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔2〕上記〔1〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
GAL2、HXT1、HXT2、HXT3、HXT4、HXT5、HXT6、HXT7、HXT8、HXT9、HXT10、HXT11、HXT12、HXT13、HXT14、HXT15、HXT16、および、HXT17からなる群より選択される少なくとも一つのタンパク質の変異体であることを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異が、GAL2のアミノ酸配列における376位のアスパラギン、または、それに相当する位置におけるアスパラギンのフェニルアラニン、チロシン、または、トリプトファンへの置換であることを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕または〔2〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記キシロース輸送タンパク質変異体がGAL2であり、
前記(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異が、N376F、N376Y、N376Wからなる群より選択される少なくとも一つの変異であることを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、44位、287位、310位、566位、もしくは、570位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンからなる群より選択される少なくとも一つのリシンにおけるリシン以外のアミノ酸への置換であることを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔6〕上記〔5〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、および、44位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるリシン以外のアミノ酸への置換を少なくとも含むことを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔7〕上記〔6〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における287位および310位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるリシン以外のアミノ酸の置換をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔8〕上記〔6〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における566位および570位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるリシン以外のアミノ酸への置換をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔9〕上記〔1〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
以下の(1)〜(3)のいずれかのポリペプチドからなることを特徴とする:
(1)配列番号1〜18に示されるいずれか一つのアミノ酸配列において、前記(i)および(ii)の2つの変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は、
(3)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔10〕上記〔1〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、下記(A)〜(C)のいずれかのポリペプチドからなることを特徴とする:
(A)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチド
(B)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は
(C)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。
〔1〕グルコース存在下においてもキシロースを輸送可能なキシロース輸送タンパク質変異体であって、下記2つの変異を有するキシロース輸送タンパク質変異体に関する:
(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異、
(ii)ユビキチン化を阻害する変異。
ここで、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔2〕上記〔1〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
GAL2、HXT1、HXT2、HXT3、HXT4、HXT5、HXT6、HXT7、HXT8、HXT9、HXT10、HXT11、HXT12、HXT13、HXT14、HXT15、HXT16、および、HXT17からなる群より選択される少なくとも一つのタンパク質の変異体であることを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異が、GAL2のアミノ酸配列における376位のアスパラギン、または、それに相当する位置におけるアスパラギンのフェニルアラニン、チロシン、または、トリプトファンへの置換であることを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔4〕上記〔1〕または〔2〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記キシロース輸送タンパク質変異体がGAL2であり、
前記(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異が、N376F、N376Y、N376Wからなる群より選択される少なくとも一つの変異であることを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔5〕上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、44位、287位、310位、566位、もしくは、570位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンからなる群より選択される少なくとも一つのリシンにおけるリシン以外のアミノ酸への置換であることを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔6〕上記〔5〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、および、44位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるリシン以外のアミノ酸への置換を少なくとも含むことを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔7〕上記〔6〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における287位および310位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるリシン以外のアミノ酸の置換をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔8〕上記〔6〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における566位および570位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるリシン以外のアミノ酸への置換をさらに含むことを特徴とする。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔9〕上記〔1〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
以下の(1)〜(3)のいずれかのポリペプチドからなることを特徴とする:
(1)配列番号1〜18に示されるいずれか一つのアミノ酸配列において、前記(i)および(ii)の2つの変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は、
(3)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、
〔10〕上記〔1〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、下記(A)〜(C)のいずれかのポリペプチドからなることを特徴とする:
(A)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチド
(B)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は
(C)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。
また、本発明は別の態様において、
〔11〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のキシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸に関する。
ここで、本発明の核酸は、一実施の形態において、
〔12〕上記〔1〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸であって、下記(a)〜(c)のいずれかの塩基配列からなることを特徴とする:
(a)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列、又は、
(c)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
〔11〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載のキシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸に関する。
ここで、本発明の核酸は、一実施の形態において、
〔12〕上記〔1〕に記載のキシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸であって、下記(a)〜(c)のいずれかの塩基配列からなることを特徴とする:
(a)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列、又は、
(c)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列。
また、本発明は別の態様において、
〔13〕プロモーターの下流に作動可能に連結された上記〔10〕または〔11〕に記載の核酸を含むベクターであって、
宿主細胞において、前記核酸がグルコースの存在下において発現し得ることを特徴とする。
ここで、本発明のベクターは、一実施の形態において、
〔14〕上記〔13〕に記載のベクターであって、
前記プロモーターが、TDH1、TDH2、TDH3、ENO1、ENO2、PGK1、FBA1、ADH1、CDC19、AHP1、TEF1、および、HSP26からなる群より選択される一つのプロモーターであることを特徴とする。
また、本発明は別の態様において、
〔15〕グルコースおよびキシロースの存在下において、グルコースおよびキシロースを同時に消費可能な形質転換体であって、
上記〔13〕または〔14〕に記載のベクターにより形質転換された、形質転換体に関する。
ここで、本発明の形質転換体は、一実施の形態において、
〔16〕上記〔15〕に記載の形質転換体であって、
前記形質転換体が、サッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、カンジダ属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属、および、ハンセヌラ属からなる群より選択される属に属する酵母であることを特徴とする。
また、本発明は別の態様において、
〔17〕グルコースおよびキシロースの存在下、請求項15または16に記載の形質転換体を用いてエタノールを産生する工程を含む、エタノールの生産方法に関する。
〔13〕プロモーターの下流に作動可能に連結された上記〔10〕または〔11〕に記載の核酸を含むベクターであって、
宿主細胞において、前記核酸がグルコースの存在下において発現し得ることを特徴とする。
ここで、本発明のベクターは、一実施の形態において、
〔14〕上記〔13〕に記載のベクターであって、
前記プロモーターが、TDH1、TDH2、TDH3、ENO1、ENO2、PGK1、FBA1、ADH1、CDC19、AHP1、TEF1、および、HSP26からなる群より選択される一つのプロモーターであることを特徴とする。
また、本発明は別の態様において、
〔15〕グルコースおよびキシロースの存在下において、グルコースおよびキシロースを同時に消費可能な形質転換体であって、
上記〔13〕または〔14〕に記載のベクターにより形質転換された、形質転換体に関する。
ここで、本発明の形質転換体は、一実施の形態において、
〔16〕上記〔15〕に記載の形質転換体であって、
前記形質転換体が、サッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、カンジダ属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属、および、ハンセヌラ属からなる群より選択される属に属する酵母であることを特徴とする。
また、本発明は別の態様において、
〔17〕グルコースおよびキシロースの存在下、請求項15または16に記載の形質転換体を用いてエタノールを産生する工程を含む、エタノールの生産方法に関する。
本発明のキシロース輸送タンパク質変異体によれば、グルコース存在下であってもカタボライト抑制(グルコース抑制)を受けずに、キシロース等のグルコース以外の糖を細胞内に取込むことができる。
これにより、当該キシロース輸送タンパク質変異体が発現するように遺伝子導入された形質転換体は、グルコース存在下においてもグルコースとともにキシロースを同時に消費することが可能となる。
これにより、当該キシロース輸送タンパク質変異体が発現するように遺伝子導入された形質転換体は、グルコース存在下においてもグルコースとともにキシロースを同時に消費することが可能となる。
本発明は、一態様において、グルコース存在下においてもキシロースを輸送可能なキシロース輸送タンパク質変異体を提供する。本発明に係るキシロース輸送タンパク質変異体は、下記2つの変異を有するものである:
(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異
(ii)ユビキチン化を阻害する変異
(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異
(ii)ユビキチン化を阻害する変異
ここで、本明細書において「キシロース輸送タンパク質」とは、12回膜貫通タンパク質の糖輸送体であって、少なくとも一定量のキシロースを細胞内に輸送可能なタンパク質をいう。このようなキシロース輸送タンパク質としては、以下に限定されないが、GAL2、HXT1、HXT2、HXT3、HXT4、HXT5、HXT6、HXT7、HXT8、HXT9、HXT10、HXT11、HXT12、HXT13、HXT14、HXT15、HXT16、および、HXT17を挙げることができる。なお、これらのキシロース輸送タンパク質は、アミノ酸配列が高度に保存されており、互いに類似するアミノ酸配列からなる(図4)。GAL2、HXT1、HXT2、HXT3、HXT4、HXT5、HXT6、HXT7、HXT8、HXT9、HXT10、HXT11、HXT12、HXT13、HXT14、HXT15、HXT16、および、HXT17のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1〜18で示すことができる。また、GAL2のアミノ酸配列に対して、それ以外のキシロース輸送タンパク質のアミノ酸配列の同一性は57%以上である(GAL2のアミノ酸配列をクエリとして、BLASTPにより出芽酵母のタンパク質の相同性検索をおこなった結果表1Aに示す)。なお、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体の好ましい実施の形態において、キシロース輸送タンパク質は、GAL2、HXT4、HXT5、および、HXT7である。
上記に列挙するキシロース輸送タンパク質は、本来、グルコースの存在下では、キシロースよりもグルコースを優先して輸送する。しかしながら、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、上記特徴的な2つの変異を有し、グルコース存在下であってもキシロースを輸送することができる。
ここで、本明細書において「(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異」とは、キシロース輸送タンパク質におけるグルコースの輸送能を喪失または低下させる変異、および/または、キシロースの輸送能を向上させる変異であって、グルコース存在下であってもキシロースを優先的に輸送できる性質を付与する変異をいう。
このような性質を付与する変異としては、GAL2アミノ酸配列(配列番号1)における376位のアスパラギン、または、それに相当する位置におけるアスパラギンの芳香族を有するアミノ酸への置換を挙げることができる。ここで、芳香族を有するアミノ酸とは、具体的にフェニルアラニン、チロシン、または、トリプトファンである。好ましい実施の形態においては、GAL2アミノ酸配列における376位のアスパラギン、または、それに相当する位置におけるアスパラギンのフェニルアラニンへの置換である。
このような性質を付与する変異としては、GAL2アミノ酸配列(配列番号1)における376位のアスパラギン、または、それに相当する位置におけるアスパラギンの芳香族を有するアミノ酸への置換を挙げることができる。ここで、芳香族を有するアミノ酸とは、具体的にフェニルアラニン、チロシン、または、トリプトファンである。好ましい実施の形態においては、GAL2アミノ酸配列における376位のアスパラギン、または、それに相当する位置におけるアスパラギンのフェニルアラニンへの置換である。
ここで、「それ(376位)に相当する位置におけるアスパラギン」とは、GAL2以外のキシロース輸送タンパク質のアミノ酸配列において、GAL2アミノ酸配列における376位のアスパラギンに相当する位置にあるアスパラギン残基を意味する。上述のように、各キシロース輸送タンパク質のアミノ酸配列は高度に保存されており、図4に示すように各アミノ酸配列を公知の手法によりアライメントすることでGAL2の特定のアミノ酸残基に相当するアミノ酸残基を把握することができる。当業者であれば各キシロース輸送タンパク質のアミノ酸配列において、GAL2アミノ酸配列における376位のアスパラギンに相当するアスパラギンを把握することができる。
また、一実施の形態において、キシロース輸送タンパク質変異体がGAL2である場合、(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異が、N376F、N376Y、N376Wからなる群より選択される少なくとも一つの変異とすることができる。
また、一実施の形態において、キシロース輸送タンパク質変異体がGAL2である場合、(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異が、N376F、N376Y、N376Wからなる群より選択される少なくとも一つの変異とすることができる。
また、本明細書において「(ii)ユビキチン化を阻害する変異」とは、キシロース輸送タンパク質のユビキチン化を阻害することにより、当該タンパク質の分解を抑制する性質を付与する変異をいう。
このような性質を付与する変異としては、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、44位、287位、310位、566位、もしくは、570位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンからなる群より選択される少なくとも一つのリシンにおけるリシン以外のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、および、バリン)への置換を挙げることができる。GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、および、44位のリシンは、図3中のサイトAで示される細胞内ドメインにおけるユビキチン化部位に相当する。また、GAL2のアミノ酸配列における287位および310位のリシンは、図3中のサイトBで示される細胞内ドメインにおけるユビキチン化部位に相当する。また、GAL2のアミノ酸配列における566位および570位のリシンは、図3中のサイトCで示される細胞内ドメインにおけるユビキチン化部位に相当する。ユビキチン化を阻害する変異は、ユビキチン化を阻害できる限りにおいて各サイトにおける少なくとも一つのユビキチン化部位において変異を有していればよい。好ましくは各サイトに含まれる全てのユビキチン化部位において変異を有する形態である。また、キシロース輸送タンパク質においては、特に、GAL2のアミノ酸配列におけるサイトAまたはそれに相当する位置において、ユビキチン化が行われる。
よって、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体の好ましい一実施の形態においては、(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、および、44位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるリシン以外のアミノ酸への置換を少なくとも含む。
このような性質を付与する変異としては、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、44位、287位、310位、566位、もしくは、570位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンからなる群より選択される少なくとも一つのリシンにおけるリシン以外のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、および、バリン)への置換を挙げることができる。GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、および、44位のリシンは、図3中のサイトAで示される細胞内ドメインにおけるユビキチン化部位に相当する。また、GAL2のアミノ酸配列における287位および310位のリシンは、図3中のサイトBで示される細胞内ドメインにおけるユビキチン化部位に相当する。また、GAL2のアミノ酸配列における566位および570位のリシンは、図3中のサイトCで示される細胞内ドメインにおけるユビキチン化部位に相当する。ユビキチン化を阻害する変異は、ユビキチン化を阻害できる限りにおいて各サイトにおける少なくとも一つのユビキチン化部位において変異を有していればよい。好ましくは各サイトに含まれる全てのユビキチン化部位において変異を有する形態である。また、キシロース輸送タンパク質においては、特に、GAL2のアミノ酸配列におけるサイトAまたはそれに相当する位置において、ユビキチン化が行われる。
よって、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体の好ましい一実施の形態においては、(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、および、44位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるリシン以外のアミノ酸への置換を少なくとも含む。
ここで(ii)ユビキチン化を阻害する変異について、「それらに相当する位置におけるリシン」とは、GAL2以外のキシロース輸送タンパク質の細胞内のアミノ酸配列において、GAL2アミノ酸配列における各ユビキチン化部位に相当する位置にあるリシン残基を意味する。各キシロース輸送タンパク質のユビキチン化候補部位については、ユビキチン化サイトを検索するWebサービスUbPred(http://www.ubpred.org/.)などを用いて把握することができ、当該サービスにより検索したユビキチン化候補部位(リシン)のスコア結果を表1Bおよび表1Cに示す(スコアは、1に近づくほどユビキチン化される可能性が高いことを示す)。表1Bおよび表1Cにおいて、例えば、スコアが0.6以上、好ましくはスコアが0.8以上、0.85以上、0.9以上のリシン残基をGAL2アミノ酸配列における各ユビキチン化部位に相当するユビキチン化部位として選択することができる。
なお上述のように、特に、GAL2においてはGAL2のアミノ酸配列におけるC末端側のサイトA(27位、37位、および、44位のリシン)においてユビキチン化が行われる。よって、GAL2以外のキシロース輸送タンパク質においても、アミノ酸配列のC末端側のユビキチン化候補部位を好ましくは選択することができる。すなわち、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体の一実施の形態においては、(ii)ユビキチン化を阻害する変異について、「それらに相当する位置におけるリシン」とは、例えば、HXT1のアミノ酸配列における12位、27位、35位、545位、564位のリシン、HXT2のアミノ酸配列における26位、37位、408位、414位、536位のリシン、HXT3のアミノ酸配列における12位、35位のリシン、HXT4のアミノ酸配列における38位、45位、310位、324位のリシン、HXT5のアミノ酸配列における28位、48位、61位、69位、305位のリシン、HXT6のアミノ酸配列における33位、40位、56位、304位、318位、560位、564位のリシン、HXT7のアミノ酸配列における33位、40位、56位、304位、318位、560位、564位のリシン、HXT8のアミノ酸配列における5位、40位、58位、419位、425位のリシン、HXT9のアミノ酸配列におけ29位、36位、277位、300位のリシン、HXT10のアミノ酸配列における14位、22位、26位、401位、546位のリシン、HXT11のアミノ酸配列における29位、36位、264位、277位、300位のリシン、HXT12のアミノ酸配列における167位、HXT13のアミノ酸配列における27位、416位のリシン、HXT14のアミノ酸配列における35位、40位、50位、319位、535位のリシン、HXT15のアミノ酸配列における30位、39位、419位のリシン、HXT16のアミノ酸配列における30位、39位、419位のリシン、または、HXT17のアミノ酸配列における27位、416位のリシンである。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、以下の(1)〜(3)のいずれかのポリペプチドからなる、前記キシロース輸送タンパク質変異体:
(1)配列番号1〜18に示されるいずれか一つのアミノ酸配列において、前記(i)および(ii)の2つの変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は、
(3)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。
(1)配列番号1〜18に示されるいずれか一つのアミノ酸配列において、前記(i)および(ii)の2つの変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は、
(3)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。
また、本発明のキシロース輸送タンパク質変異体は、一実施の形態において、下記(A)〜(C)のいずれかのポリペプチドからなるキシロース輸送タンパク質変異体として特定することができる:
(A)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチド
(B)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は
(C)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。
(A)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチド
(B)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は
(C)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。
また、本発明は別の態様として、キシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸を提供し、当該核酸は一実施の形態において、下記(a)〜(c)のいずれかの塩基配列からなる核酸として特定することができる:
(a)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列、又は、
(c)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列
(a)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列、又は、
(c)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列
上記のように、本発明のキシロース輸送タンパク質の一実施の形態においては、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有する限りにおいて、(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異、および、(ii)ユビキチン化を阻害する変異の他に、さらに1又は数個のアミノ酸あるいは塩基の欠失、置換、付加があってもかまわない。数個のアミノ酸の欠失、置換、付加があるというとき、以下に限定されないが、例えば、2〜114個(例えば、2個、10個、15個、20個、25個、30個、40個、50個、57個、85個など)のアミノ酸の欠失、置換、付加を含む。また、これらの変異型タンパク質およびそれをコードする遺伝子について、(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異、および、(ii)ユビキチン化を阻害する変異が保存されていれば、全体のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも96%の同一性、少なくとも97%の同一性、少なくとも98%の同一性、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するキシロース輸送タンパク質変異体またはそれをコードする核酸も本発明に含まれる。
また、本明細書において「グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有する」とは、グルコース、キシロースの同時存在下においてグルコースよりもキシロースを優先して輸送可能な性質をいう。
また、本明細書において「グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有する」とは、グルコース、キシロースの同時存在下においてグルコースよりもキシロースを優先して輸送可能な性質をいう。
本発明は、一態様において、プロモーターの下流に作動可能に連結された核酸を含むベクターであって、宿主細胞において当該核酸がグルコースの存在下において発現し得る、ベクターを提供する。核酸は、上述のキシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸のいずれかを選択することができる。
ここで、「プロモーター」は、宿主細胞がグルコースの存在下にある場合にも当該核酸の発現を促すことのできるプロモーターであれば特に制限されない。以下に限定されないが、好ましくはグルコース存在下であってもキシロース輸送タンパク質変異型の発現を増強できるプロモーターの使用であり、TDH1、TDH2、TDH3、ENO1、ENO2、PGK1、FBA1、ADH1、CDC19、AHP1、TEF1、HSP26などを挙げることができる。また、ターミネーターも特に限定されず、他の遺伝子由来ターミネーターを用いることができる。さらに、プロモーター、キシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸およびターミネーターは、プラスミドなどのベクターの形態で酵母に導入されても良いし、ゲノムDNAに組み込まれても良い。また、プラスミド、ゲノムへの挿入いずれの場合にもコピー数は問わない。ゲノムDNAに組み込む際には、ゲノム中に部位特異的に導入されても良いし、ランダムに導入されても良い。
ここで、「プロモーター」は、宿主細胞がグルコースの存在下にある場合にも当該核酸の発現を促すことのできるプロモーターであれば特に制限されない。以下に限定されないが、好ましくはグルコース存在下であってもキシロース輸送タンパク質変異型の発現を増強できるプロモーターの使用であり、TDH1、TDH2、TDH3、ENO1、ENO2、PGK1、FBA1、ADH1、CDC19、AHP1、TEF1、HSP26などを挙げることができる。また、ターミネーターも特に限定されず、他の遺伝子由来ターミネーターを用いることができる。さらに、プロモーター、キシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸およびターミネーターは、プラスミドなどのベクターの形態で酵母に導入されても良いし、ゲノムDNAに組み込まれても良い。また、プラスミド、ゲノムへの挿入いずれの場合にもコピー数は問わない。ゲノムDNAに組み込む際には、ゲノム中に部位特異的に導入されても良いし、ランダムに導入されても良い。
本発明のキシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸を導入するための宿主酵母は機能的に同等である限り、ゲノム中に存在する遺伝子が改変されていても、改変されていなくてもかまわない。グルコースも同時に消費することを目的とする場合、内在性のキシロース輸送タンパク質が残っていることが望ましく、変異型の導入などにより強化されていてもよい。キシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸を導入するための宿主酵母の作製、及び核酸の導入においては、組換えベクターの種類、形質転換法を問わない。培養液については、グルコースおよびキシロースを含んでいれば、他の炭素源の存在を含め、酵母が生育する限り構成成分に限定されない。
有用物質を生産する場合、少なくともグルコースおよびキシロースを含む培養液を用い、本発明の形質転換体を用いて生産することができる。この場合、当該形質転換体は本発明に示したキシロース輸送タンパク質変異体の遺伝子を有する他に、当該有用物質を生産するために適した遺伝子が導入されたり、変異型遺伝子を有していても可能である。有用物質としては特に限定しないが、エタノール、キシルロース、乳酸、酢酸、プロパノール、イソブタノール、ブタノール、コハク酸、グリセロールが含まれる。特にエタノールが有用物質として得られることが望ましい。これらの物質は例えば酵母が元来有している代謝酵素の反応によって酵母内で生産される物質、あるいはこれらを生産するために必要な酵素遺伝子を遺伝子組換え技術によって酵母に導入することによって生産可能となる物質であり、さらには代謝マップを参考に酵素の発現量などを適切に調節することによってより効率的な生産が可能となる。これらの物質を生産するための研究においては、多くは通常のグルコースを炭素源とした培地を用いて当該物質を生産しているが、これら従来の技術に本発明の成果を適用することにより、キシロースを含む炭素源をこれらの有用物質を生産するために用いることが可能となる。すなわち、本発明の成果はバイオエタノールの生産のみならず、さまざまな化成品の原料の生産にも用いることが可能となる。
本発明のキシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸またはそれを含むベクターを用いて形質転換する酵母宿主としてはサッカロマイセス属(Saccharomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、カンジダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ハンセヌラ属(Hansenula)などが挙げられる。特にサッカロマイセス属(Saccharomyces)が好ましく、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロマイセス・ボウラルディ(Saccharomyces boulardii)などが挙げられる。
培養方法については、当該形質転換体がグルコースおよびキシロースを含む培養液で生育する限り、形態を問わない。培養液は、木質などの天然物を処理することによって得たキシロースを含む前処理液や糖化液であってもよいし、人工的にキシロース他の物質を調合したものでもよい。天然物を処理して得られた液に化学物質を添加した液でもよい。培養条件は当該酵母が生育し、キシロースを代謝し有用物質を生産する限り、温度、pH、通気条件、攪拌速度、培養時間など限定されない。これらの条件を制御する方法にも限定されない。また、前処理や糖化処理の有無や、糖化処理と同時に発酵をすすめるかという工程についても限定されない。発酵後の有用物質の精製処理も制限されない。有用物質の種類などに応じて適切な方法を用いることができる。
以下に本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
(方法と材料)
(1.培地及び培養条件)
酵母の増殖には、YPD培地を用いた。YPD培地は、Bacto酵母エキス(BDバイオサイエンス社)10g、Bactoペプトン(BDバイオサイエンス社)20g、D-(+)-Glucose(以下Glucoseとする。シグマアルドリッチ社)20gを精製水1Lに含む。擬似糖化液を用いたEthanol発酵試験には、一般的なサトウキビバガス糖化液に含まれる糖組成を模倣した液体培地YPDX培地を用いた。YPDX培地は、Bacto酵母エキス10g、Bacto ペプトン20g、Glucose(シグマアルドリッチ社)85g/L、D-(+)-Xylose(以下、Xyloseとする。シグマアルドリッチ社)35g/Lを精製水1Lに含む。野生型酵母株の維持及び管理には、上記のYPD培地1Lに、Bacto寒天(BDバイオサイエンス社)20gを添加した平板培地を用いた。また、遺伝子操作による酵母株の構築、維持及び管理には、以下に記載の抗生物質を各濃度になるように上記組成の培地に適宜添加した。Geneticin(登録商標)(以下、G418とする。サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)200ug/mL、Zeocin(登録商標)(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)200ug/mL、Aureobasidin A(タカラバイオ株式会社)0.5ug/mL。大腸菌 DH5α株(ニッポンジーン株式会社)の増殖のために、調製済みのLB培地としてDifco LB, Miller培地(BDバイオサイエンス社)を用いた。野生型大腸菌株の維持及び管理には、DifcoLB Agar, Miller培地(BDバイオサイエンス社)を用いた。大腸菌 DH5α株を宿主として用いた遺伝子操作を行った形質転換体の構築、維持及び管理には、上記LB培地に抗生物質Ampicillin(和光純薬工業株式会社)100ug/mLを添加した選択培地を用いた。酵母株の培養は、30℃、振とう培養機を用いて、増殖に応じて1〜3日間培養を行った。大腸菌の培養は、36℃、静置で一晩培養を行った。
(1.培地及び培養条件)
酵母の増殖には、YPD培地を用いた。YPD培地は、Bacto酵母エキス(BDバイオサイエンス社)10g、Bactoペプトン(BDバイオサイエンス社)20g、D-(+)-Glucose(以下Glucoseとする。シグマアルドリッチ社)20gを精製水1Lに含む。擬似糖化液を用いたEthanol発酵試験には、一般的なサトウキビバガス糖化液に含まれる糖組成を模倣した液体培地YPDX培地を用いた。YPDX培地は、Bacto酵母エキス10g、Bacto ペプトン20g、Glucose(シグマアルドリッチ社)85g/L、D-(+)-Xylose(以下、Xyloseとする。シグマアルドリッチ社)35g/Lを精製水1Lに含む。野生型酵母株の維持及び管理には、上記のYPD培地1Lに、Bacto寒天(BDバイオサイエンス社)20gを添加した平板培地を用いた。また、遺伝子操作による酵母株の構築、維持及び管理には、以下に記載の抗生物質を各濃度になるように上記組成の培地に適宜添加した。Geneticin(登録商標)(以下、G418とする。サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)200ug/mL、Zeocin(登録商標)(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)200ug/mL、Aureobasidin A(タカラバイオ株式会社)0.5ug/mL。大腸菌 DH5α株(ニッポンジーン株式会社)の増殖のために、調製済みのLB培地としてDifco LB, Miller培地(BDバイオサイエンス社)を用いた。野生型大腸菌株の維持及び管理には、DifcoLB Agar, Miller培地(BDバイオサイエンス社)を用いた。大腸菌 DH5α株を宿主として用いた遺伝子操作を行った形質転換体の構築、維持及び管理には、上記LB培地に抗生物質Ampicillin(和光純薬工業株式会社)100ug/mLを添加した選択培地を用いた。酵母株の培養は、30℃、振とう培養機を用いて、増殖に応じて1〜3日間培養を行った。大腸菌の培養は、36℃、静置で一晩培養を行った。
(2.DNA抽出、PCR、形質転換、塩基配列の決定)
形質転換を行った大腸菌からプラスミドを抽出する場合には、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用い、添付のプロトコルに従い抽出及び精製を行った。酵母株からゲノムDNAを抽出する場合は、Genとるくん(酵母用)High Recovery(タカラバイオ株式会社)を用いて、添付のプロトコルに従い抽出及び精製を行った。特定のDNA断片の増幅は、目的とするDNA断片に合致する一対の塩基配列を遺伝子解析ソフトウェアSnapGene(GSL Biotech社、米国)及びGenetyx(Genetyx株式会社)を用いて設計したものをオリゴDNAとして合成した(ユーロフィンゲノミクス社及びサーモフィッシャーサイエンティフィク社)。合成したオリゴDNAをプライマーとし、DNA polymeraseはQ5 High-Fidelity 2X Master Mix (New England Biolabs社)を用い、添付の反応プロトコルにしたがって、PCR反応を行った。具体的には、PCR反応溶液として、オリゴDNA (5pmol/uL)、鋳型DNA 1ug、Q5 High-Fidelity 2X Master Mix (1U/50uL)を含む溶液を200uL容量のPCRチューブに50-100uL調製した。Pre-denature:95℃、1分、Denature:98℃、10秒、Annealing:(Tm)℃、30秒、Extension:68℃、30秒/kbの3ステップPCR反応をサーマルサイクラー(Veriti Thermal Cycler、Applied Bioscience/サーモフィッシャーサイエンティフィク社)を用いて25〜30サイクルの反応を行った。その際、Annealingの温度はSnapGeneソフトウェアで設計したオリゴDNAのTmに基づいて決定し、また、PCR産物の長さに応じてExtensionの時間を決定した(1kb伸長あたり30秒)。プラスミドベクターの構築は、バックボーンとなるプラスミドベクターを上記PCR反応により直鎖化し、挿入するDNA断片をそれぞれ増幅・精製したものを用いて、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ株式会社)を用い、添付の反応プロトコルにしたがって、15bpの重複配列を介してシームレスに結合することで行った。具体的には、1x In-Fusion HD Enzyme Premix、100ng/反応 直鎖化ベクター、同モル数の挿入DNA断片のIn-Fusion反応溶液を調製し、サーマルサイクラーを用いて、37℃、15分間、50℃、15分間にて反応を行った。なお、本明細書で用いる遺伝子名及び番号は、Saccharomyces Genome Database (SGD, https://www.yeastgenome.org/)を用いた。
形質転換を行った大腸菌からプラスミドを抽出する場合には、QIAprep Spin Miniprep Kit(キアゲン社)を用い、添付のプロトコルに従い抽出及び精製を行った。酵母株からゲノムDNAを抽出する場合は、Genとるくん(酵母用)High Recovery(タカラバイオ株式会社)を用いて、添付のプロトコルに従い抽出及び精製を行った。特定のDNA断片の増幅は、目的とするDNA断片に合致する一対の塩基配列を遺伝子解析ソフトウェアSnapGene(GSL Biotech社、米国)及びGenetyx(Genetyx株式会社)を用いて設計したものをオリゴDNAとして合成した(ユーロフィンゲノミクス社及びサーモフィッシャーサイエンティフィク社)。合成したオリゴDNAをプライマーとし、DNA polymeraseはQ5 High-Fidelity 2X Master Mix (New England Biolabs社)を用い、添付の反応プロトコルにしたがって、PCR反応を行った。具体的には、PCR反応溶液として、オリゴDNA (5pmol/uL)、鋳型DNA 1ug、Q5 High-Fidelity 2X Master Mix (1U/50uL)を含む溶液を200uL容量のPCRチューブに50-100uL調製した。Pre-denature:95℃、1分、Denature:98℃、10秒、Annealing:(Tm)℃、30秒、Extension:68℃、30秒/kbの3ステップPCR反応をサーマルサイクラー(Veriti Thermal Cycler、Applied Bioscience/サーモフィッシャーサイエンティフィク社)を用いて25〜30サイクルの反応を行った。その際、Annealingの温度はSnapGeneソフトウェアで設計したオリゴDNAのTmに基づいて決定し、また、PCR産物の長さに応じてExtensionの時間を決定した(1kb伸長あたり30秒)。プラスミドベクターの構築は、バックボーンとなるプラスミドベクターを上記PCR反応により直鎖化し、挿入するDNA断片をそれぞれ増幅・精製したものを用いて、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ株式会社)を用い、添付の反応プロトコルにしたがって、15bpの重複配列を介してシームレスに結合することで行った。具体的には、1x In-Fusion HD Enzyme Premix、100ng/反応 直鎖化ベクター、同モル数の挿入DNA断片のIn-Fusion反応溶液を調製し、サーマルサイクラーを用いて、37℃、15分間、50℃、15分間にて反応を行った。なお、本明細書で用いる遺伝子名及び番号は、Saccharomyces Genome Database (SGD, https://www.yeastgenome.org/)を用いた。
(3.IR-2株の輸送タンパク質の塩基配列とアミノ酸配列)
まず、SGDに登録されている18種の糖輸送タンパク質アミノ酸配列情報を取得した(配列番号1〜18)。発明者らが保有するIR-2株のドラフトゲノム情報(非特許文献9)より、GAL2に該当する遺伝子をTBLASTN検索によって抽出し、GAL2遺伝子であることを確認した。18種の糖輸送タンパク質のアミノ酸配列の比較は、CLUSTALWプログラムを用いて行った(非特許文献10)。
まず、SGDに登録されている18種の糖輸送タンパク質アミノ酸配列情報を取得した(配列番号1〜18)。発明者らが保有するIR-2株のドラフトゲノム情報(非特許文献9)より、GAL2に該当する遺伝子をTBLASTN検索によって抽出し、GAL2遺伝子であることを確認した。18種の糖輸送タンパク質のアミノ酸配列の比較は、CLUSTALWプログラムを用いて行った(非特許文献10)。
(4.GAL2タンパク質のユビキチン化サイトの検索)
ユビキチンはタンパク質の品質管理に関する基本的な生物学的システムの一つで、フォールディング異常などを持つタンパク質の細胞内のリジン残基にユビキチンタンパク質を付与する。そこで、糖輸送タンパク質がユビキチン化の影響を受けるかどうかを調べるために、糖輸送タンパク質のアミノ酸配列を問い合わせとして、ユビキチン化サイトを検索するWebサービスUbPred(http://www.ubpred.org/.)を用いてユビキチン化部位候補を検索した。
ユビキチンはタンパク質の品質管理に関する基本的な生物学的システムの一つで、フォールディング異常などを持つタンパク質の細胞内のリジン残基にユビキチンタンパク質を付与する。そこで、糖輸送タンパク質がユビキチン化の影響を受けるかどうかを調べるために、糖輸送タンパク質のアミノ酸配列を問い合わせとして、ユビキチン化サイトを検索するWebサービスUbPred(http://www.ubpred.org/.)を用いてユビキチン化部位候補を検索した。
(5.GAL2変異体遺伝子の作成)
上記のユビキチン化標的候補部位のリシン残基をアルギニン残基に置換したGAL2変異体遺伝子を以下の通り作成した。まず、野生型IR-2ゲノムを鋳型として、PK131及びPK132をプライマーとしてTDH1プロモーターを、PK133及びPK134を用いてGAL2遺伝子(ORF及びターミネーター)をPCRにより増幅した。また、BB009及びBB010をプライマーとして酵母の選択マーカーとしてG418耐性遺伝子カセットkanMXを含むpUG6プラスミドバックボーンをPCRにより増幅した。3種のDNA断片をInfusion反応により結合し、環状プラスミドpKEF280を構築した(図1)。pKEF280を鋳型として、GAL2(N376F)になる変異を導入するために塩基配列を改変したオリゴDNA、PK135及びPK136をプライマーとしてinverse PCRを行い、同様にinfusion反応により、環状プラスミドpKEF281を構築した。pKEF281はpKEF280中のGAL2遺伝子が野生型からN376F変異を持つ変異体へ入れ替わっただけで、他は同一の配列である。次に、pKEF280を鋳型として、非ユビキチン化変異体遺伝子の作成を行った。ユビキチン化候補部位A、B、Cそれぞれに含まれるリシン残基をアルギニン残基になるように塩基配列を改変したオリゴDNAを用いて、同様にinverse PCRを行い、環状化したプラスミドDNAを構築した。部位Aを非ユビキチン化するためにPK184及びPK185、部位Bを非ユビキチン化するためにPK186及びPK187、部位Cを非ユビキチン化するためにPK188及びPK189をプライマーとして用いた。この変異導入では、オリゴDNAの塩基長が長くなったため、infusion反応で必要な15 bpのオーバーラップ領域を作らず、T4-DNA ligaseによるself-ligationによって環状化を行った。部位AB、部位AC、部位BC及び部位ABCという複数組み合わせた非ユビキチン化GAL2変異体は、上記の方法を繰り返すことで作成した。構築したベクターは、サンガーシーケンス法により正しい塩基配列であることを確認した(ユーロフィンゲノミクスジャパン、東京)。
GPD2遺伝子座に各種GAL2遺伝子を導入するために、上記のプラスミドベクターを鋳型として、オリゴDNA、KO17及びKO19により1回目のover-hang PCRを行い、さらにそれを鋳型としてKO18及びKO20を用いて2回目のover-hang PCRを行うことで、GPD2遺伝子座に相同な50bpの塩基配列を付加した直鎖DNAを作成した。また、内在性GAL2遺伝子を欠損させるため、pUG6を鋳型として、オリゴDNA、KO50及びKO51、KO52及びKO53を用いて同様に50bpの塩基配列を付加した直鎖DNAを作成した。表2Aに使用したオリゴDNAの塩基配列一覧、表2Bにプラスミドベクターの一覧を示す。
上記のユビキチン化標的候補部位のリシン残基をアルギニン残基に置換したGAL2変異体遺伝子を以下の通り作成した。まず、野生型IR-2ゲノムを鋳型として、PK131及びPK132をプライマーとしてTDH1プロモーターを、PK133及びPK134を用いてGAL2遺伝子(ORF及びターミネーター)をPCRにより増幅した。また、BB009及びBB010をプライマーとして酵母の選択マーカーとしてG418耐性遺伝子カセットkanMXを含むpUG6プラスミドバックボーンをPCRにより増幅した。3種のDNA断片をInfusion反応により結合し、環状プラスミドpKEF280を構築した(図1)。pKEF280を鋳型として、GAL2(N376F)になる変異を導入するために塩基配列を改変したオリゴDNA、PK135及びPK136をプライマーとしてinverse PCRを行い、同様にinfusion反応により、環状プラスミドpKEF281を構築した。pKEF281はpKEF280中のGAL2遺伝子が野生型からN376F変異を持つ変異体へ入れ替わっただけで、他は同一の配列である。次に、pKEF280を鋳型として、非ユビキチン化変異体遺伝子の作成を行った。ユビキチン化候補部位A、B、Cそれぞれに含まれるリシン残基をアルギニン残基になるように塩基配列を改変したオリゴDNAを用いて、同様にinverse PCRを行い、環状化したプラスミドDNAを構築した。部位Aを非ユビキチン化するためにPK184及びPK185、部位Bを非ユビキチン化するためにPK186及びPK187、部位Cを非ユビキチン化するためにPK188及びPK189をプライマーとして用いた。この変異導入では、オリゴDNAの塩基長が長くなったため、infusion反応で必要な15 bpのオーバーラップ領域を作らず、T4-DNA ligaseによるself-ligationによって環状化を行った。部位AB、部位AC、部位BC及び部位ABCという複数組み合わせた非ユビキチン化GAL2変異体は、上記の方法を繰り返すことで作成した。構築したベクターは、サンガーシーケンス法により正しい塩基配列であることを確認した(ユーロフィンゲノミクスジャパン、東京)。
GPD2遺伝子座に各種GAL2遺伝子を導入するために、上記のプラスミドベクターを鋳型として、オリゴDNA、KO17及びKO19により1回目のover-hang PCRを行い、さらにそれを鋳型としてKO18及びKO20を用いて2回目のover-hang PCRを行うことで、GPD2遺伝子座に相同な50bpの塩基配列を付加した直鎖DNAを作成した。また、内在性GAL2遺伝子を欠損させるため、pUG6を鋳型として、オリゴDNA、KO50及びKO51、KO52及びKO53を用いて同様に50bpの塩基配列を付加した直鎖DNAを作成した。表2Aに使用したオリゴDNAの塩基配列一覧、表2Bにプラスミドベクターの一覧を示す。
本実施例で使用したオリゴDNA。Oligo DNA No.:オリゴDNAの番号、Names:オリゴDNAの名称、Sequence:オリゴDNAの塩基配列(5’末端から3’末端)、Usage:使用目的。下線は、infusion反応に必要な15bpの相同なオーバーラップ領域、二重下線は、over-hang PCR反応に必要な相同な塩基配列を示す。
使用したプラスミドベクターの名称と含まれる遺伝子。Names:プラスミドベクターの名称、Genes:含まれる遺伝子。Used in:プラスミドベクターが使われた酵母株。GAL2遺伝子の括弧内は、各GAL2変異体の変異アミノ酸の種類とアミノ酸番号を示す。
(6.各種GAL2変異体を導入したキシロース資化酵母株の作成)
予想されたユビキチン化サイト情報に基づいて、当該リシン残基をアルギニンに換えた変異遺伝子を作成した。プラスミドベクターpUG6に挿入された野生型GAL2遺伝子に対し、オリゴDNAに対し、リシン残基をアルギニン残基になるように塩基配列を改変したオリゴDNAを合成し、inverse-PCR法によって直鎖化して増幅した後、T4-DNA ligaseを用いたSelf-ligation法によってプラスミドベクターを再度、環状化した。GAL2変異体によるキシロース消費速度の向上を検証するため、各種GAL2変異体を作成した。親株として用いたKEF279株は、キシロース代謝のために、変異型キシロース異性化酵素を導入したグルコース・キシロース資化遺伝子組換え酵母である。
上記「5.GAL2変異体遺伝子の作成」で作成した各直鎖化DNAを用いて、LiAc法により形質転換を行いた後、抗生物質耐性マーカーを用いて、以下の遺伝子組換え酵母を選択した。
予想されたユビキチン化サイト情報に基づいて、当該リシン残基をアルギニンに換えた変異遺伝子を作成した。プラスミドベクターpUG6に挿入された野生型GAL2遺伝子に対し、オリゴDNAに対し、リシン残基をアルギニン残基になるように塩基配列を改変したオリゴDNAを合成し、inverse-PCR法によって直鎖化して増幅した後、T4-DNA ligaseを用いたSelf-ligation法によってプラスミドベクターを再度、環状化した。GAL2変異体によるキシロース消費速度の向上を検証するため、各種GAL2変異体を作成した。親株として用いたKEF279株は、キシロース代謝のために、変異型キシロース異性化酵素を導入したグルコース・キシロース資化遺伝子組換え酵母である。
上記「5.GAL2変異体遺伝子の作成」で作成した各直鎖化DNAを用いて、LiAc法により形質転換を行いた後、抗生物質耐性マーカーを用いて、以下の遺伝子組換え酵母を選択した。
(7.YPDX擬似糖化液を用いた発酵試験)
非ユビキチン化キシロース輸送タンパク質GAL2変異体のエタノール発酵性能を以下の方法を用いて調べた。
非ユビキチン化キシロース輸送タンパク質GAL2変異体のエタノール発酵性能を以下の方法を用いて調べた。
(1) 接種細胞の調製
あらかじめAureobasidin A含有YPD平板培地に展開しておいた株を、2mLのAureobasidin A含有YPD培地(14mL 試験管)に植菌し、30℃、150rpmで1日間振盪培養を行った(前々培養)。前々培養液全量を20mLのYPD培地(100mLバッフル付きフラスコ)に植菌し、1日間、30℃、135rpm振盪培養を行った(前培養)。前培養液全量を、遠心分離(3,000rpm、5分、4℃)を行い、酵母細胞を集菌し、10mLのYPDX疑似糖化液に再懸濁し、吸光度A600を測定した(Smart Spec、バイオラッド社)。この数値を元に希釈を行い、細胞濃度がODA600=30になるように調製した。
あらかじめAureobasidin A含有YPD平板培地に展開しておいた株を、2mLのAureobasidin A含有YPD培地(14mL 試験管)に植菌し、30℃、150rpmで1日間振盪培養を行った(前々培養)。前々培養液全量を20mLのYPD培地(100mLバッフル付きフラスコ)に植菌し、1日間、30℃、135rpm振盪培養を行った(前培養)。前培養液全量を、遠心分離(3,000rpm、5分、4℃)を行い、酵母細胞を集菌し、10mLのYPDX疑似糖化液に再懸濁し、吸光度A600を測定した(Smart Spec、バイオラッド社)。この数値を元に希釈を行い、細胞濃度がODA600=30になるように調製した。
(2) 発酵試験
100mL三角フラスコに、まず60mLの疑似糖化液YPDXを加え、(1)で調製した細胞懸濁液を7mL接種し、さらに疑似糖化液YPDXを加えて発酵溶液の全量を70mLとした。これによって、発酵試験開始時の発酵溶液中の細胞濃度をODA600=3とした。本発酵試験は、エタノール生産量を最大にするために、微好気条件で行うこととし、サンプリング及び発酵中に発生する二酸化炭素等のガスを排気するため、サンプリング用注射針(テルモ社、21G, 90mm)及び通気用注射針(テルモ社、21G)を貫通したソフトシリコン栓(無通気)を用いて、フラスコを閉栓し、38℃、135rpm、気相インキュベータ(タイテック社、BR-40LF)において72時間振盪培養を行った。
100mL三角フラスコに、まず60mLの疑似糖化液YPDXを加え、(1)で調製した細胞懸濁液を7mL接種し、さらに疑似糖化液YPDXを加えて発酵溶液の全量を70mLとした。これによって、発酵試験開始時の発酵溶液中の細胞濃度をODA600=3とした。本発酵試験は、エタノール生産量を最大にするために、微好気条件で行うこととし、サンプリング及び発酵中に発生する二酸化炭素等のガスを排気するため、サンプリング用注射針(テルモ社、21G, 90mm)及び通気用注射針(テルモ社、21G)を貫通したソフトシリコン栓(無通気)を用いて、フラスコを閉栓し、38℃、135rpm、気相インキュベータ(タイテック社、BR-40LF)において72時間振盪培養を行った。
(3) サンプリング
サンプリング用注射針の上部に三方活栓(テルモ株式会社)を連結し、サンプリング時のみコックを開栓し、2.5mLの注射筒を用いて、培養開始後、1、9、12、15、18、24、36、48時間の各時間に、サンプリング用注射針にシリンジを接続して、余分な空気(酸素)がフラスコ内に流入しないように気をつけて、約0.5mLずつサンプリングを行った。採取した培養液は、すぐさま氷冷し、冷却機付き高速遠心機を用いて、15,000rpm、5分、4℃にて遠心分離を行い、沈殿した菌体を含まない上澄約400uLを、新しいエッペンドルフチューブに移し、HPLC測定までの間、-30℃メディカルフリーザーにて凍結保存した。
サンプリング用注射針の上部に三方活栓(テルモ株式会社)を連結し、サンプリング時のみコックを開栓し、2.5mLの注射筒を用いて、培養開始後、1、9、12、15、18、24、36、48時間の各時間に、サンプリング用注射針にシリンジを接続して、余分な空気(酸素)がフラスコ内に流入しないように気をつけて、約0.5mLずつサンプリングを行った。採取した培養液は、すぐさま氷冷し、冷却機付き高速遠心機を用いて、15,000rpm、5分、4℃にて遠心分離を行い、沈殿した菌体を含まない上澄約400uLを、新しいエッペンドルフチューブに移し、HPLC測定までの間、-30℃メディカルフリーザーにて凍結保存した。
(8.HPLCによる糖、糖アルコール、有機酸、アルコールの定量)
発酵代謝産物の定量化のために、サンプリングした培養液中に含まれるグルコース、キシロース、キシリトール、グリセロール、酢酸およびエタノールの濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定を行った。測定にはAminex HPX-87Cカラム(バイオラッド社)および Cation H Refill Guard カラム(バイオラッド社)、示差屈折計(日本分光株式会社)を装備したHPLC LC-2000Plusシリーズ(日本分光株式会社)を用いた。5mM H2SO4を移動相として、流速0.6mL/分、温度65℃、投入サンプル量25uLの条件で各成分を分離した。グルコース、キシロース、キシリトール、グリセロール、酢酸およびエタノールを、それぞれ2%(w/v)、1% (w/v)、0.1%(w/v)、0.01%(w/v)の濃度で混合した標準物質溶液を用いて同様に測定を行い、各成分のピーク面積より検量線を取得した。培養液サンプル中に含まれる各物質の濃度は、HPLC測定により得られた面積から、検量線を用いて算出した。定量誤差を低減するために、標準物質溶液は大量調製し、測定において必要容量分をエッペンドルフチューブに分注したものを-30℃メディカルフリーザーにおいて冷凍保存したものを用いた。
発酵代謝産物の定量化のために、サンプリングした培養液中に含まれるグルコース、キシロース、キシリトール、グリセロール、酢酸およびエタノールの濃度を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定を行った。測定にはAminex HPX-87Cカラム(バイオラッド社)および Cation H Refill Guard カラム(バイオラッド社)、示差屈折計(日本分光株式会社)を装備したHPLC LC-2000Plusシリーズ(日本分光株式会社)を用いた。5mM H2SO4を移動相として、流速0.6mL/分、温度65℃、投入サンプル量25uLの条件で各成分を分離した。グルコース、キシロース、キシリトール、グリセロール、酢酸およびエタノールを、それぞれ2%(w/v)、1% (w/v)、0.1%(w/v)、0.01%(w/v)の濃度で混合した標準物質溶液を用いて同様に測定を行い、各成分のピーク面積より検量線を取得した。培養液サンプル中に含まれる各物質の濃度は、HPLC測定により得られた面積から、検量線を用いて算出した。定量誤差を低減するために、標準物質溶液は大量調製し、測定において必要容量分をエッペンドルフチューブに分注したものを-30℃メディカルフリーザーにおいて冷凍保存したものを用いた。
(結果)
(1.酵母株)
本実施例において使用した遺伝子組換え酵母株の名称とその遺伝型を表3に、各株の概要について図2に示す。
(表3の説明)
親株であるIR-2idA30αは2倍体親株IR-2からホモタリズムを欠如し、1倍体を維持するためにHO遺伝子をノックアウトした株である。HO遺伝子の欠損に用いた選択マーカーはCre-loxPリサイクリングにより削除されloxP配列のみが残っている。KEF279は、IR-2idA30αを親株とし、内在性のAldose reductase遺伝子(GRE3/YHR104W)を欠損させ、HSP26プロモーターにより発現するキシロース異性化酵素変異体(特許文献2)とPGK1プロモーターにより発現するxylulokinase遺伝子(XKS1)をAUR1部位に挿入したものである。GRE3は、キシロースをキシリトールに変換するが、キシリトールは、キシロース代謝で重要な役割を果たすXylose異性化酵素(XI)を阻害することが知られており、また、キシリトールが蓄積することにより、エタノール生産効率が低下することが懸念されたため欠損させた。XIはキシロースをキシルロースへ変換する。XKS1は酵母では発現が低く、また機能が不十分であると考えられているxyluloseをリン酸化する酵素である。KEF294は、KEF279を親株とし、野生型GAL2を1コピー追加したもの。KEF295はグルコース非輸送・キシロース輸送向上変異体GAL2を1コピー追加したもの。KEF299は内在性GAL2を欠損させたもの。KEF304〜KEF310は、それぞれ、ユビキチン化部位A, B, C, AB, AC, BC, ABCのリシン残基をアルギニン残基に換えることによって、ユビキチン化を受けない(非ユビキチン化)変異体GAL2を1コピー追加したものである。Stains:株名、Alias:別名、Parent:親株、Genotype:遺伝型(親株との差分)、N/A:該当するものがない。
(1.酵母株)
本実施例において使用した遺伝子組換え酵母株の名称とその遺伝型を表3に、各株の概要について図2に示す。
親株であるIR-2idA30αは2倍体親株IR-2からホモタリズムを欠如し、1倍体を維持するためにHO遺伝子をノックアウトした株である。HO遺伝子の欠損に用いた選択マーカーはCre-loxPリサイクリングにより削除されloxP配列のみが残っている。KEF279は、IR-2idA30αを親株とし、内在性のAldose reductase遺伝子(GRE3/YHR104W)を欠損させ、HSP26プロモーターにより発現するキシロース異性化酵素変異体(特許文献2)とPGK1プロモーターにより発現するxylulokinase遺伝子(XKS1)をAUR1部位に挿入したものである。GRE3は、キシロースをキシリトールに変換するが、キシリトールは、キシロース代謝で重要な役割を果たすXylose異性化酵素(XI)を阻害することが知られており、また、キシリトールが蓄積することにより、エタノール生産効率が低下することが懸念されたため欠損させた。XIはキシロースをキシルロースへ変換する。XKS1は酵母では発現が低く、また機能が不十分であると考えられているxyluloseをリン酸化する酵素である。KEF294は、KEF279を親株とし、野生型GAL2を1コピー追加したもの。KEF295はグルコース非輸送・キシロース輸送向上変異体GAL2を1コピー追加したもの。KEF299は内在性GAL2を欠損させたもの。KEF304〜KEF310は、それぞれ、ユビキチン化部位A, B, C, AB, AC, BC, ABCのリシン残基をアルギニン残基に換えることによって、ユビキチン化を受けない(非ユビキチン化)変異体GAL2を1コピー追加したものである。Stains:株名、Alias:別名、Parent:親株、Genotype:遺伝型(親株との差分)、N/A:該当するものがない。
(2.糖輸送タンパク質ファミリー)
GAL2を含む18種のHXT遺伝子ファミリーは、HXT (hexose transporter)という名前からも分かるように六単糖であるグルコースを輸送するタンパク質のファミリーである。これらの糖輸送タンパク質は、それぞれ異なる糖に対して異なる親和性を示し、機能分化しているが、いずれも12回膜貫通型の膜タンパク質であり、遺伝子重複により進化してきたことが推定される(図3)。グルコースを通さずにキシロースを輸送するGAL2 (N376F)のアミノ酸は、12個ある膜貫通ドメインのうち、8番目(TM8)にあると考えられている(非特許文献3、非特許文献8)。また、この周辺のアミノ酸配列は、18種類のすべての輸送タンパク質で保存されていることが分かる(図4)。このことから、GAL2におけるN376に相当するアミノ酸は、HXT7においてはN370、HXT5においてはN391に相当すると考えられる。このアミノ酸残基が、糖の種類や親和性に重要であるが、異なるアミノ酸に置換した場合の効果は、個々の輸送タンパク質ごとに異なっていることが知られている(非特許文献8)。すなわち、単に、GAL2-N376に相当するアミノ酸は、糖が通過する孔をアミノ酸の大きさによって物理的に制御をしているだけでなく、疎水結合などの物理化学的な作用によって、輸送する糖、その親和性が変化しうることを示唆している。これは、アミノ酸結晶構造解析の結果からも支持される(非特許文献8)。
GAL2を含む18種のHXT遺伝子ファミリーは、HXT (hexose transporter)という名前からも分かるように六単糖であるグルコースを輸送するタンパク質のファミリーである。これらの糖輸送タンパク質は、それぞれ異なる糖に対して異なる親和性を示し、機能分化しているが、いずれも12回膜貫通型の膜タンパク質であり、遺伝子重複により進化してきたことが推定される(図3)。グルコースを通さずにキシロースを輸送するGAL2 (N376F)のアミノ酸は、12個ある膜貫通ドメインのうち、8番目(TM8)にあると考えられている(非特許文献3、非特許文献8)。また、この周辺のアミノ酸配列は、18種類のすべての輸送タンパク質で保存されていることが分かる(図4)。このことから、GAL2におけるN376に相当するアミノ酸は、HXT7においてはN370、HXT5においてはN391に相当すると考えられる。このアミノ酸残基が、糖の種類や親和性に重要であるが、異なるアミノ酸に置換した場合の効果は、個々の輸送タンパク質ごとに異なっていることが知られている(非特許文献8)。すなわち、単に、GAL2-N376に相当するアミノ酸は、糖が通過する孔をアミノ酸の大きさによって物理的に制御をしているだけでなく、疎水結合などの物理化学的な作用によって、輸送する糖、その親和性が変化しうることを示唆している。これは、アミノ酸結晶構造解析の結果からも支持される(非特許文献8)。
(3.GAL2のユビキチン化部位)
UbPred(http://www.ubpred.org/.)を用いたGAL2タンパク質のユビキチン化部位の検索結果を表4に示す。ユビキチン化は細胞質内で起こるため、膜貫通ドメインや細胞外ドメインはユビキチン化されない。そのため、ユビキチン化される可能性があるリシン残基は、GAL2タンパク質細胞内ドメインの3か所に分散していることが判明した(表4)。具体的には、GAL2タンパク質の26位、37位、44位、62位、63位のリシン(以下、ユビキチン化部位UbiAと呼ぶ)、287位、310位のリシン(同、ユビキチン化部位UbiB)、566位、570位のリシン(同、ユビキチン化部位UbiC)である。中でも、UbiAの3つのリシン残基は、スコア0.96以上と、高い確率でユビキチン化されるという推定結果であった。
UbPred(http://www.ubpred.org/.)を用いたGAL2タンパク質のユビキチン化部位の検索結果を表4に示す。ユビキチン化は細胞質内で起こるため、膜貫通ドメインや細胞外ドメインはユビキチン化されない。そのため、ユビキチン化される可能性があるリシン残基は、GAL2タンパク質細胞内ドメインの3か所に分散していることが判明した(表4)。具体的には、GAL2タンパク質の26位、37位、44位、62位、63位のリシン(以下、ユビキチン化部位UbiAと呼ぶ)、287位、310位のリシン(同、ユビキチン化部位UbiB)、566位、570位のリシン(同、ユビキチン化部位UbiC)である。中でも、UbiAの3つのリシン残基は、スコア0.96以上と、高い確率でユビキチン化されるという推定結果であった。
Residue:GAL2タンパク質中のリシン残基のアミノ酸番号、Score:ユビキチン化指標(0〜1の範囲)、Ubiquitinated:ユビキチン化される可能性(high, medium, low)、domain:当該リシン残基が存在する部位、intracellular(細胞内ドメイン)、transmembrane(膜貫通ドメイン)、extracellular(細胞外ドメイン)
(4.GAL2非ユビキチン化変異体のアミノ酸配列)
上記の予測に基づいて、本実施例において作成した遺伝子組換え体が保有する内在性GAL2及び導入した各種GAL2変異体のアミノ酸配列を表5に示す。KEF299(gal2Δ)を除くすべての株は内在する野生型のGAL2を1コピー保有している。内在性GAL2の機能を損なうことなく、グルコース存在下で強い遺伝子発現をすることが知られているTDH1プロモーターによって追加発現させた。たとえ、非ユビキチン化させることによってGAL2タンパク質が膜に長時間滞留できたとしても、キシロースよりグルコースを通すのでは意味がない。そのため、まずグルコースを全く通すことができず、キシロースを効率的に輸送可能な変異体(非特許文献8)を作成し、さらにその上、非ユビキチン化によって膜安定性を高める必要がある。GAL2Xは、野生型GAL2の376番目のアスパラギン残基をフェニルアラニンに置換したもの(N376F)である(図3、中段の★マーク)。各変異体の持つアミノ酸変異は、赤太字で示した箇所である。
上記の予測に基づいて、本実施例において作成した遺伝子組換え体が保有する内在性GAL2及び導入した各種GAL2変異体のアミノ酸配列を表5に示す。KEF299(gal2Δ)を除くすべての株は内在する野生型のGAL2を1コピー保有している。内在性GAL2の機能を損なうことなく、グルコース存在下で強い遺伝子発現をすることが知られているTDH1プロモーターによって追加発現させた。たとえ、非ユビキチン化させることによってGAL2タンパク質が膜に長時間滞留できたとしても、キシロースよりグルコースを通すのでは意味がない。そのため、まずグルコースを全く通すことができず、キシロースを効率的に輸送可能な変異体(非特許文献8)を作成し、さらにその上、非ユビキチン化によって膜安定性を高める必要がある。GAL2Xは、野生型GAL2の376番目のアスパラギン残基をフェニルアラニンに置換したもの(N376F)である(図3、中段の★マーク)。各変異体の持つアミノ酸変異は、赤太字で示した箇所である。
本実施例で作成、使用した株が保有する野生型GAL2及び変異体タンパク質、そのアミノ酸配列と変異を示している。数字はアミノ酸番号、前の数字は野生型のアミノ酸、後ろの数字は変異体のアミノ酸をそれぞれ示している。
(5.YPDX擬似糖化液発酵試験の結果)
GAL2タンパク質が、グルコース存在下でどのようにキシロースを輸送し、エタノール発酵を行うかを明らかにするために、サトウキビバガスをモデルバイオマス原料とし、その糖化液の糖組成を参考に作成した疑似糖化液YPDX(Glucose 85g/L、Xylose 35g/L)を用いた微好気条件下でのエタノール発酵試験の結果を図5〜図15に、代謝物の詳細な濃度については表6〜表16に示す。また、キシロース及びグルコース消費速度の比較のために、各株のキシロース消費のみ、グルコースのみを抜粋してグラフで表示したものを図16〜図17に示す。
GAL2タンパク質が、グルコース存在下でどのようにキシロースを輸送し、エタノール発酵を行うかを明らかにするために、サトウキビバガスをモデルバイオマス原料とし、その糖化液の糖組成を参考に作成した疑似糖化液YPDX(Glucose 85g/L、Xylose 35g/L)を用いた微好気条件下でのエタノール発酵試験の結果を図5〜図15に、代謝物の詳細な濃度については表6〜表16に示す。また、キシロース及びグルコース消費速度の比較のために、各株のキシロース消費のみ、グルコースのみを抜粋してグラフで表示したものを図16〜図17に示す。
(6.KEF279株(親株)のキシロース消費)
親株であるKEF279は、キシロース異性化酵素を導入した株で、グルコース消費によって濃度が低下するとキシロースを消費することができる(図5、表6)。内在性の野生型GAL2を1コピー保有している。カタボライト抑制によってグルコースを優先的に消費するため、グルコース濃度が低下してからキシロースが消費される。グルコースは発酵18時間の時点で、ほぼゼロとなるが、キシロースは48時間時点でもまだわずかに残っており、キシロース全量を消費するためには48時間以上が必要であることが分かる。
親株であるKEF279は、キシロース異性化酵素を導入した株で、グルコース消費によって濃度が低下するとキシロースを消費することができる(図5、表6)。内在性の野生型GAL2を1コピー保有している。カタボライト抑制によってグルコースを優先的に消費するため、グルコース濃度が低下してからキシロースが消費される。グルコースは発酵18時間の時点で、ほぼゼロとなるが、キシロースは48時間時点でもまだわずかに残っており、キシロース全量を消費するためには48時間以上が必要であることが分かる。
(7.野生型GAL2の追加発現はキシロース消費速度に影響を及ぼさない)
KEF294は、野生型GAL2を追加で導入し、TDH1プロモーターによってグルコース消費期(0〜18時間)に発現させた株である(図6、表7)。本来、グルコース消費期に発現していない野生型GAL2を発現させても、グルコースとキシロースが同時に高濃度で存在するため、野生型GAL2が優先的に輸送するのはキシロースではなく、グルコースであるため、キシロースの消費速度はグルコース濃度が下がるまでは速くならない。また、グルコース輸送に関しては、GAL2よりも他のHXT1等の糖輸送タンパク質が優勢であるため、GAL2が発現したとしても、グルコースの輸送速度には大きな影響はない。むしろ、グルコース濃度が下がった発酵後半ではTDH1プロモーターの活性は著しく低下するため、キシロースの輸送速度もそれほど早くならない。その結果、コントロール株であるKEF279と比較すると、グルコース輸送はやや遅くなり、キシロース輸送はやや速くなる程度で、ほぼ同程度の結果となっている。
KEF294は、野生型GAL2を追加で導入し、TDH1プロモーターによってグルコース消費期(0〜18時間)に発現させた株である(図6、表7)。本来、グルコース消費期に発現していない野生型GAL2を発現させても、グルコースとキシロースが同時に高濃度で存在するため、野生型GAL2が優先的に輸送するのはキシロースではなく、グルコースであるため、キシロースの消費速度はグルコース濃度が下がるまでは速くならない。また、グルコース輸送に関しては、GAL2よりも他のHXT1等の糖輸送タンパク質が優勢であるため、GAL2が発現したとしても、グルコースの輸送速度には大きな影響はない。むしろ、グルコース濃度が下がった発酵後半ではTDH1プロモーターの活性は著しく低下するため、キシロースの輸送速度もそれほど早くならない。その結果、コントロール株であるKEF279と比較すると、グルコース輸送はやや遅くなり、キシロース輸送はやや速くなる程度で、ほぼ同程度の結果となっている。
(8.グルコース非輸送・キシロース輸送向上変異体GAL2(N376F)の発現はキシロース消費速度を向上させる)
KEF295株は、グルコースを取り込まず、キシロースを優先的に輸送する変異体GAL2(N376F)をTDH1プロモーターによって発現する株である(図7、表8)。KEF294と異なり、発現したGAL2(N376F)は、グルコース輸送ができないため、グルコースの輸送速度はやや低下し、その代わりキシロースの消費速度はわずかに向上した。
KEF295株は、グルコースを取り込まず、キシロースを優先的に輸送する変異体GAL2(N376F)をTDH1プロモーターによって発現する株である(図7、表8)。KEF294と異なり、発現したGAL2(N376F)は、グルコース輸送ができないため、グルコースの輸送速度はやや低下し、その代わりキシロースの消費速度はわずかに向上した。
(9.内在性GAL2の欠損はキシロース消費速度を低下させる)
KEF299株は、内在性のGAL2が実際に機能しているかどうかを検証するために、内在性GAL2を欠損させた株である(図8、表9)。発酵試験の結果、内在性GAL2を1コピー持つKEF279株に比べて、グルコース消費は僅かに早くなり、キシロース消費は明らかに遅くなった。このことから、GAL2は酵母株において、一定の役割を果たしていることが明らかになった。しかし、キシロースを輸送するのは、GAL2だけでないことも示している。すでに述べたように、酵母におけるキシロース輸送は、GAL2以外にもHXT4、HXT5、HXT7なども可能であることが知られている(非特許文献6、非特許文献7)。したがって、GAL2が存在しなくても、グルコース濃度が一定以下まで下がり、キシロース輸送可能な糖輸送タンパク質によって代償される。しかし、この結果が示すようにGAL2欠損によって、キシロース資化性能は低下する。
KEF299株は、内在性のGAL2が実際に機能しているかどうかを検証するために、内在性GAL2を欠損させた株である(図8、表9)。発酵試験の結果、内在性GAL2を1コピー持つKEF279株に比べて、グルコース消費は僅かに早くなり、キシロース消費は明らかに遅くなった。このことから、GAL2は酵母株において、一定の役割を果たしていることが明らかになった。しかし、キシロースを輸送するのは、GAL2だけでないことも示している。すでに述べたように、酵母におけるキシロース輸送は、GAL2以外にもHXT4、HXT5、HXT7なども可能であることが知られている(非特許文献6、非特許文献7)。したがって、GAL2が存在しなくても、グルコース濃度が一定以下まで下がり、キシロース輸送可能な糖輸送タンパク質によって代償される。しかし、この結果が示すようにGAL2欠損によって、キシロース資化性能は低下する。
(10.部位AはGAL2ユビキチン化の主要な標的である)
KEF304〜KEF306株は、それぞれユビキチン化部位A、B、Cを個別に破壊した変異体を持つ株である(図9〜11、表10〜12)。非ユビキチン化GAL2変異体は、いずれもユビキチン化部位のアミノ酸置換以外にGAL2(N376F)変異を保有しているため、以下のデータの比較のためにはKEF295株を参照とする。発酵試験の結果、部位Aを非ユビキチン化したKEF304株はキシロース輸送速度が著しく向上し、36時間時点で1.0g/Lを下回り、48時間以内にキシロース全量を消費した。また、部位Bを非ユビキチン化したKEF305株は、コントロールであるKEF295株とほぼ同程度のキシロース消費傾向を示し、部位Cを非ユビキチン化したKEF306株は、むしろキシロース消費速度は低下した。以上のことから、GAL2タンパク質のリサイクリングに関わるユビキチン結合部位は部位Aのリシン残基であることが推察される。
KEF304〜KEF306株は、それぞれユビキチン化部位A、B、Cを個別に破壊した変異体を持つ株である(図9〜11、表10〜12)。非ユビキチン化GAL2変異体は、いずれもユビキチン化部位のアミノ酸置換以外にGAL2(N376F)変異を保有しているため、以下のデータの比較のためにはKEF295株を参照とする。発酵試験の結果、部位Aを非ユビキチン化したKEF304株はキシロース輸送速度が著しく向上し、36時間時点で1.0g/Lを下回り、48時間以内にキシロース全量を消費した。また、部位Bを非ユビキチン化したKEF305株は、コントロールであるKEF295株とほぼ同程度のキシロース消費傾向を示し、部位Cを非ユビキチン化したKEF306株は、むしろキシロース消費速度は低下した。以上のことから、GAL2タンパク質のリサイクリングに関わるユビキチン結合部位は部位Aのリシン残基であることが推察される。
(11.部位A欠損を含む株はキシロース消費速度を向上させる)
部位Aの非ユビキチン化GAL2変異体は、キシロース消費性能の向上に資することが明らかになった。部位B及び部位Cは明瞭なキシロース消費性能の向上は認められなかったが、部位Aと組み合わせて部位B,Cを非ユビキチン化することで、さらにGAL2タンパク質が細胞膜上で安定になり、より高いキシロース消費性能を示す可能性があった。そこで、次に、非ユビキチン化部位A、B、Cを組み合わせて非ユビキチン化したGAL2変異体を発現する株の発酵試験の結果を示す(図12〜図15、表13〜16)。KEF307株は部位ABを、KEF308株は部位ACを、KEF309株は部位BCを、KF310株は部位ABCすべてを非ユビキチン化した変異体GAL2を持つ株である。部位Aを非ユビキチン化したKEF307、KEF308、KEF310はいずれも、12時間〜24時間のキシロース消費時期における傾きが部位Aのみを非ユビキチン化したKEF304株に等しく、キシロース消費性能の向上が認められた。一方、部位BCを非ユビキチン化したKEF309株は、KEF295株よりもキシロース消費が遅くなった。これらの結果から、GAL2タンパク質における3か所のユビキチン化標的部位候補の中で部位AがGAL2タンパク質の安定性に重要な役割を果たしていることを示唆している。部位B及び部位Cの非ユビキチン化は単独ではGAL2タンパク質の膜での安定性、キシロース消費速度に影響しない。また、部位Aの非ユビキチン化と組み合わせても、部位Aを単独で非ユビキチン化したKEF304株と同定度ないしやや劣る。しかし、以下に示す通り、グルコース消費性能の低下の効果に差異があり、また、エタノール収率においては、組み合わせたほうがより高くなるというキシロース消費速度向上以外に何らかの役割を果たしていることが明らかになった。
部位Aの非ユビキチン化GAL2変異体は、キシロース消費性能の向上に資することが明らかになった。部位B及び部位Cは明瞭なキシロース消費性能の向上は認められなかったが、部位Aと組み合わせて部位B,Cを非ユビキチン化することで、さらにGAL2タンパク質が細胞膜上で安定になり、より高いキシロース消費性能を示す可能性があった。そこで、次に、非ユビキチン化部位A、B、Cを組み合わせて非ユビキチン化したGAL2変異体を発現する株の発酵試験の結果を示す(図12〜図15、表13〜16)。KEF307株は部位ABを、KEF308株は部位ACを、KEF309株は部位BCを、KF310株は部位ABCすべてを非ユビキチン化した変異体GAL2を持つ株である。部位Aを非ユビキチン化したKEF307、KEF308、KEF310はいずれも、12時間〜24時間のキシロース消費時期における傾きが部位Aのみを非ユビキチン化したKEF304株に等しく、キシロース消費性能の向上が認められた。一方、部位BCを非ユビキチン化したKEF309株は、KEF295株よりもキシロース消費が遅くなった。これらの結果から、GAL2タンパク質における3か所のユビキチン化標的部位候補の中で部位AがGAL2タンパク質の安定性に重要な役割を果たしていることを示唆している。部位B及び部位Cの非ユビキチン化は単独ではGAL2タンパク質の膜での安定性、キシロース消費速度に影響しない。また、部位Aの非ユビキチン化と組み合わせても、部位Aを単独で非ユビキチン化したKEF304株と同定度ないしやや劣る。しかし、以下に示す通り、グルコース消費性能の低下の効果に差異があり、また、エタノール収率においては、組み合わせたほうがより高くなるというキシロース消費速度向上以外に何らかの役割を果たしていることが明らかになった。
(12.非ユビキチン化によってグルコース消費性能が低下する)
発酵期間中のキシロース消費、グルコース消費を株ごとに比較するために、図4〜図14のそれぞれの代謝プロファイルのみ抜粋したものを図16〜図17に示す。この結果から容易に分かるように、部位Aを非ユビキチン化したKEF304株、KEF307株、KEF308株、KEF310株は、参照株であるKEF295よりキシロース資化性能が向上していることが分かる。特に、KEF304株は、24時間でほぼすべてのキシロースを消費し終わっており、KEF279株では48時間かかっていた発酵時間を約半分に短縮していることが分かる。一方、グルコース消費速度は、キシロース消費が早くなった株で顕著に低下が認められた。つまり、キシロース消費とグルコース消費はトレードオフの関係にある。その理由は次のように考えられる。一細胞の大きさは、基本的に一定である。つまり、細胞膜の面積も一定である。一定の表面積に、異なる糖輸送性能を持つ糖輸送タンパク質を、いつ、どのくらい発現させるかによって、糖の利用の仕方、すなわち糖消費の速度は変わりうる。特に高濃度のグルコース、キシロースが存在する発酵初期においては、HXT1などのグルコース輸送性能の高い糖輸送タンパク質が大部分を占めていると考えられる。これによって、大量のグルコースを取込み、増殖しながらエタノールを盛んに生産することができる。本実施例で示したように、グルコース存在下で強い遺伝子発現が可能なTDH1プロモーターを用いたことで、非ユビキチン化GAL2変異体を強制的に大量に細胞膜に送り込んでいる。しかも、このGAL2変異体は、非ユビキチン化によって細胞膜での保持時間は延長されており、しかもグルコースを輸送することができない。その結果、HXT1など他のグルコースに特化した膜輸送タンパク質の細胞膜での存在比率を下げた結果、グルコース輸送速度が低下したと考えられる。このように、セルロース系エタノール生産においては、グルコースとキシロースという異なる種類の糖を同時に利用し、同時に消費し終えることが理想であり、キシロース消費だけでなく、グルコース消費についても考慮する必要がある。部位Aの非ユビキチン化を行ったGAL2変異体はいずれもキシロースの消費速度が向上しているが、すでに述べたように、キシロースの消費速度だけ見ればKEF304株が最も早いが、グルコース消費速度を合わせて考慮すると、発酵24時間時点で残している糖の総量はKEF310株がもっとも少ないことが分かる。
発酵期間中のキシロース消費、グルコース消費を株ごとに比較するために、図4〜図14のそれぞれの代謝プロファイルのみ抜粋したものを図16〜図17に示す。この結果から容易に分かるように、部位Aを非ユビキチン化したKEF304株、KEF307株、KEF308株、KEF310株は、参照株であるKEF295よりキシロース資化性能が向上していることが分かる。特に、KEF304株は、24時間でほぼすべてのキシロースを消費し終わっており、KEF279株では48時間かかっていた発酵時間を約半分に短縮していることが分かる。一方、グルコース消費速度は、キシロース消費が早くなった株で顕著に低下が認められた。つまり、キシロース消費とグルコース消費はトレードオフの関係にある。その理由は次のように考えられる。一細胞の大きさは、基本的に一定である。つまり、細胞膜の面積も一定である。一定の表面積に、異なる糖輸送性能を持つ糖輸送タンパク質を、いつ、どのくらい発現させるかによって、糖の利用の仕方、すなわち糖消費の速度は変わりうる。特に高濃度のグルコース、キシロースが存在する発酵初期においては、HXT1などのグルコース輸送性能の高い糖輸送タンパク質が大部分を占めていると考えられる。これによって、大量のグルコースを取込み、増殖しながらエタノールを盛んに生産することができる。本実施例で示したように、グルコース存在下で強い遺伝子発現が可能なTDH1プロモーターを用いたことで、非ユビキチン化GAL2変異体を強制的に大量に細胞膜に送り込んでいる。しかも、このGAL2変異体は、非ユビキチン化によって細胞膜での保持時間は延長されており、しかもグルコースを輸送することができない。その結果、HXT1など他のグルコースに特化した膜輸送タンパク質の細胞膜での存在比率を下げた結果、グルコース輸送速度が低下したと考えられる。このように、セルロース系エタノール生産においては、グルコースとキシロースという異なる種類の糖を同時に利用し、同時に消費し終えることが理想であり、キシロース消費だけでなく、グルコース消費についても考慮する必要がある。部位Aの非ユビキチン化を行ったGAL2変異体はいずれもキシロースの消費速度が向上しているが、すでに述べたように、キシロースの消費速度だけ見ればKEF304株が最も早いが、グルコース消費速度を合わせて考慮すると、発酵24時間時点で残している糖の総量はKEF310株がもっとも少ないことが分かる。
(13.非ユビキチン化GAL2変異体を発現させることでエタノール収率を向上させることができる)
非ユビキチン化GAL2変異体を発現する酵母のエタノール収率を以下に示す(図18、表17)。エタノール収率(Yield)は、投入した糖(グルコース及びキシロース)に対して、どれだけのエタノールを生産したかという、生産効率の指標の一つである。理論エタノール収率は、すべての糖をエタノールに変換した場合の最大値であり、グルコースからエタノール、キシロースからエタノールのいずれにおいても0.51g-ethanol/g-sugarであることが知られている。エタノール収率の上位4株は、いずれも部位Aを非ユビキチン化したGAL2変異体を持つKEF304, KEF307, KEF308及びKEF310であり、最も高いエタノール収率を示したのはKEF310であった。この結果から、非ユビキチン化GAL2変異体を発現する酵母は、これまで示したようにグルコース存在下でもキシロースを速やかに消費することで、発酵プロセスの短縮を可能にし、キシロース消費速度やエタノール生産性(productivity)を向上するのみならず、エタノール収率を向上させる効果があることが明らかになった。
非ユビキチン化GAL2変異体を発現する酵母のエタノール収率を以下に示す(図18、表17)。エタノール収率(Yield)は、投入した糖(グルコース及びキシロース)に対して、どれだけのエタノールを生産したかという、生産効率の指標の一つである。理論エタノール収率は、すべての糖をエタノールに変換した場合の最大値であり、グルコースからエタノール、キシロースからエタノールのいずれにおいても0.51g-ethanol/g-sugarであることが知られている。エタノール収率の上位4株は、いずれも部位Aを非ユビキチン化したGAL2変異体を持つKEF304, KEF307, KEF308及びKEF310であり、最も高いエタノール収率を示したのはKEF310であった。この結果から、非ユビキチン化GAL2変異体を発現する酵母は、これまで示したようにグルコース存在下でもキシロースを速やかに消費することで、発酵プロセスの短縮を可能にし、キシロース消費速度やエタノール生産性(productivity)を向上するのみならず、エタノール収率を向上させる効果があることが明らかになった。
微好気条件下において、グルコースとキシロースを含む擬似糖化液を用いて行ったエタノール発酵試験において、各時間において、発酵溶液に含まれる代謝成分のHPLC分析の結果。KEF279:親株、KEF294:野生型GAL2を導入した株、KEF295:変異型GAL2(N376F)を導入した株、KEF299:内在性GAL2を欠損させた株、KEF304〜KEF310:非ユビキチン化GAL2変異体を追加した株。Hr:発酵開始からの時間、Glucose, Xylose, Xylitol, Glycerol, Acetate及びEthanolの数値は各時間における各成分の濃度(g/L)。n.d.は、HPLCの検出限界以下であることを示す。
本実施例で使用した酵母株のエタノール収率。グルコースからエタノール、キシロースからエタノールのいずれも理論エタノール収率は0.51である。これは、栄養源である糖をすべて消費し、細胞内外に代謝副産物を滞留せず、また、細胞増殖も行わない(糖を細胞体を作ることに用いない)で、投入した糖をすべてエタノールに変換したときの数値。
(14.結語)
本実施例では、グルコース非輸送・キシロース輸送可能なGAL2(N376)変異体に、非ユビキチン化したGAL2変異体を作成し、グルコース存在下で発現させることによって、従来技術では不可能であった、カタボライト抑制を解除し、グルコース・キシロース同時消費あるいはキシロース消費を優先的に行うことを可能にする技術を開発した。エタノール発酵プロセス時間の短縮のためには、グルコース、次いで、キシロースといった二相性でも、キシロース、次いで、グルコースという二相性でもなく、同時に消費し、かつ短時間ですべての糖を消費し終えることが肝要である。非ユビキチン化GAL2変異体の導入は、グルコース、キシロースの同時消費を可能にするが、本実施例で用いた疑似糖化液の糖濃度では、先にキシロースを消費し終えるほどまでにキシロース消費性能が向上してしまった。実際のセルロース系エタノール発酵の工業生産においては、グルコース濃度とキシロース濃度の比率は一定でなく、本実施例で用いた疑似糖化液よりもキシロースが多い場合も、少ない場合も存在するだろう。KEF304株、KEF307株、KEF308株、KEF310株はキシロース消費性能だけみれば、ほぼ同程度の速度を持つが、発酵24時間時点でのグルコース・キシロースを合わせた糖の消費性能を見ると、KEF310株が最も高い。また、エタノール収率もKEF310が最も高かった。したがって、実際に、工業利用を行う際には、使用するセルロース系バイオマス原料にどの比率でグルコース、キシロースを含むかによって、グルコース、キシロースを同時に消費し終える、しかもカタボライト抑制によって二相性を示す株よりも早く発酵プロセスを終了するという理想的な同時発酵に適した株を選択する必要があるだろう。本実施例で示したように、すでにキシロースを先に消費し終えるだけの性能が非ユビキチン化変異体にはあることが示された。本実施例で使用したプロモーターは酵母では最強のものであるため、この非ユビキチン化GAL2変異体のプロモーターを変更し、発現強度を適当なものに変えることによって、任意のグルコース・キシロース濃度の糖化液に対して、グルコース・キシロースを同時に消費し、発酵期間を短縮することが可能になる。
本実施例では、グルコース非輸送・キシロース輸送可能なGAL2(N376)変異体に、非ユビキチン化したGAL2変異体を作成し、グルコース存在下で発現させることによって、従来技術では不可能であった、カタボライト抑制を解除し、グルコース・キシロース同時消費あるいはキシロース消費を優先的に行うことを可能にする技術を開発した。エタノール発酵プロセス時間の短縮のためには、グルコース、次いで、キシロースといった二相性でも、キシロース、次いで、グルコースという二相性でもなく、同時に消費し、かつ短時間ですべての糖を消費し終えることが肝要である。非ユビキチン化GAL2変異体の導入は、グルコース、キシロースの同時消費を可能にするが、本実施例で用いた疑似糖化液の糖濃度では、先にキシロースを消費し終えるほどまでにキシロース消費性能が向上してしまった。実際のセルロース系エタノール発酵の工業生産においては、グルコース濃度とキシロース濃度の比率は一定でなく、本実施例で用いた疑似糖化液よりもキシロースが多い場合も、少ない場合も存在するだろう。KEF304株、KEF307株、KEF308株、KEF310株はキシロース消費性能だけみれば、ほぼ同程度の速度を持つが、発酵24時間時点でのグルコース・キシロースを合わせた糖の消費性能を見ると、KEF310株が最も高い。また、エタノール収率もKEF310が最も高かった。したがって、実際に、工業利用を行う際には、使用するセルロース系バイオマス原料にどの比率でグルコース、キシロースを含むかによって、グルコース、キシロースを同時に消費し終える、しかもカタボライト抑制によって二相性を示す株よりも早く発酵プロセスを終了するという理想的な同時発酵に適した株を選択する必要があるだろう。本実施例で示したように、すでにキシロースを先に消費し終えるだけの性能が非ユビキチン化変異体にはあることが示された。本実施例で使用したプロモーターは酵母では最強のものであるため、この非ユビキチン化GAL2変異体のプロモーターを変更し、発現強度を適当なものに変えることによって、任意のグルコース・キシロース濃度の糖化液に対して、グルコース・キシロースを同時に消費し、発酵期間を短縮することが可能になる。
Claims (17)
- グルコース存在下においてもキシロースを輸送可能なキシロース輸送タンパク質変異体であって、下記2つの変異を有するキシロース輸送タンパク質変異体:
(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異、
(ii)ユビキチン化を阻害する変異。 - 請求項1に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
GAL2、HXT1、HXT2、HXT3、HXT4、HXT5、HXT6、HXT7、HXT8、HXT9、HXT10、HXT11、HXT12、HXT13、HXT14、HXT15、HXT16、および、HXT17からなる群より選択される少なくとも一つのタンパク質の変異体である、キシロース輸送タンパク質変異体。 - 請求項1または2に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異が、GAL2のアミノ酸配列における376位のアスパラギン、または、それに相当する位置におけるアスパラギンのフェニルアラニン、チロシン、または、トリプトファンへの置換である、キシロース変異タンパク質変異体。 - 請求項1または2に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記キシロース輸送タンパク質変異体がGAL2であり、
前記(i)グルコース透過性低下またはキシロース透過性向上の性質を付与する変異が、N376F、N376Y、N376Wからなる群より選択される少なくとも一つの変異である、キシロース輸送タンパク質変異体。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、44位、287位、310位、566位、もしくは、570位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンからなる群より選択される少なくとも一つのリシンにおけるリシン以外のアミノ酸への置換である、キシロース輸送タンパク質変異体。 - 請求項5に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における27位、37位、および、44位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるアルギニンへの置換を少なくとも含む、キシロース輸送タンパク質変異体。 - 請求項6に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における287位および310位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるアルギニンへの置換をさらに含む、キシロース輸送タンパク質変異体。 - 請求項6に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
前記(ii)ユビキチン化を阻害する変異が、GAL2のアミノ酸配列における566位および570位のリシン、または、それらに相当する位置におけるリシンにおけるアルギニンへの置換をさらに含む、キシロース輸送タンパク質変異体。 - 請求項1に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、
以下の(1)〜(3)のいずれかのポリペプチドからなる、前記キシロース輸送タンパク質変異体:
(1)配列番号1〜18に示されるいずれか一つのアミノ酸配列において、前記(i)および(ii)の2つの変異を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(2)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は、
(3)上記(1)のポリペプチドを構成するアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。 - 請求項1に記載のキシロース輸送タンパク質変異体であって、下記(A)〜(C)のいずれかのポリペプチドからなるキシロース輸送タンパク質変異体:
(A)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチド
(B)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド、又は
(C)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチド。 - 請求項1〜9のいずれか一項に記載のキシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸。
- 請求項1に記載のキシロース輸送タンパク質変異体をコードする核酸であって、下記(a)〜(c)のいずれかの塩基配列からなる核酸:
(a)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードする塩基配列、
(b)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列のうちの1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列、又は、
(c)配列番号42〜48に示されるいずれか一つのアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、グルコース存在下においてキシロースを輸送可能な性質を有するポリペプチドをコードする塩基配列。 - プロモーターの下流に作動可能に連結された請求項11または12に記載の核酸を含むベクターであって、
宿主細胞において、前記核酸がグルコースの存在下において発現し得る、ベクター。 - 請求項13に記載のベクターであって、
前記プロモーターが、TDH1、TDH2、TDH3、ENO1、ENO2、PGK1、FBA1、ADH1、CDC19、AHP1、TEF1、および、HSP26からなる群より選択される一つのプロモーターである、ベクター。 - グルコースおよびキシロースの存在下において、グルコースおよびキシロースを同時に消費可能な形質転換体であって、
請求項13または14に記載のベクターにより形質転換された、形質転換体。 - 請求項15に記載の形質転換体であって、
前記形質転換体が、サッカロマイセス属、クルイベロマイセス属、カンジダ属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属、および、ハンセヌラ属からなる群より選択される属に属する酵母である、形質転換体。 - グルコースおよびキシロースの存在下、請求項15または16に記載の形質転換体を用いてエタノールを産生する工程を含む、エタノールの生産方法。
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CA3047840A1 (en) * | 2016-12-21 | 2018-06-28 | Creatus Biosciences Inc. | Method and organism expressing metschnikowia xylose transporters for increased xylose uptake |
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