JP2021176005A - ビームステアリング装置及びビームステアリング方法並びにビーム検出システム - Google Patents

ビームステアリング装置及びビームステアリング方法並びにビーム検出システム Download PDF

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盛嗣 坂本
Moritsugu Sakamoto
浩司 小野
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Abstract

【課題】小型化可能でより高い光利用効率を達成するビームステアリング装置及びビームステアリング方法並びにビーム検出システムを提供する。【解決手段】光源2と、偏光回折格子41,42と、偏光制御素子3と、偏光回折格子を回転させる回転機構51,52とを有するビームステアリング装置1’であり、偏光回折格子は、光学異方性材料を含み、複数備えていることが好ましく、偏光回折格子毎に独立して動作可能な駆動機構を備える装置により様々なビーム走査の軌跡を得ることができ、上記課題を解決する。【選択図】図7

Description

本発明は、ビームステアリング装置及びビームステアリング方法並びにビーム検出システムに関する。
レーザービームの伝搬方向を1次元的ないし2次元的に走査することを可能とするビームステアリング装置は自動運転のLiDAR(Light Detection And Ranging)やプロジェクター等、これまでに様々な手法が報告されている。
最も代表的なビームステアリングの手法は、鏡を機械駆動方式または電磁駆動方式で制御するガルバノミラーやMEMSミラーを用いる手法である(例えば下記特許文献1参照)。これらの手法では、鏡の向きを変えながら反射したレーザー光の伝搬方向を変えて、2次元的なビーム走査を可能とする。これらの手法では、ミラーの共振周波数で高速なビーム走査が可能であるという特徴がある。
透過型光学素子を用いたビームステアリング方式についても、先行例がいくつか存在する。
その一例は、2枚のウェッジプリズムを回転機構に組み込んで直列に配列させた構成である(例えば下記特許文献2参照)。ウェッジプリズムは屈折により入射光の伝搬方向を偏向させる機能を持つ。その偏向方向はウェッジプリズムの法線ベクトルと入射するレーザー光の波数ベクトル及び屈折率で決まる。ウェッジプリズムを回転させると、法線ベクトルの方向がそれに追随して回転するため、ビームの屈折方向を連続的に変えることができる。単一のウェッジプリズムでは、回転により描けるレーザー光の軌跡は円軌道に制約されるが、2枚のウェッジプリズムを組み合わせることで、プリズム間距離とウェッジ角に応じたリサージュ図形を描くことができる。
透過型光学素子を用いたビームステアリング方式の先行研究の2つ目の例が、2枚の等方性回折格子を回転機構に組み込んで直列に配列させる構成である(例えば下記特許文献3)。等方性回折格子にレーザー光を入射させると、回折格子の格子周期と入射光の波長に応じた回折角で光の伝搬方向が曲げられる。先述のウェッジプリズムの時と同様に、回転する等方性回折格子を2枚組み合わせれば、回折格子の格子周期・入射光波長・回折格子間距離・回転速度に応じたリサージュ図形が2次元走査されるレーザー光の軌跡として描かれる。回折格子は光の屈折を利用するウェッジプリズムの方式とは異なり、光の回折現象を利用する。光回折においては、光の波長オーダーの位相差を空間的に与えれば良く、比較的薄膜の光学素子でその機能が得らえる。結果、装置の軽量化に利点を持つとともに、装置長を短くしやすく、装置サイズを小型化しやすい。
更に、先行研究の例として、先述の等方性回折格子を回転機構に組み込んで直列に配列させる構成の技術を改善するための技術として、2枚の偏心フレネルレンズを用いた方式が報告されている(例えば下記特許文献4、非特許文献1参照)。偏心フレネルレンズとは、線形な傾斜位相とレンズの放物位相を重ね合わせた位相分布を付与する回折光学素子である。本方式では、互いに放物位相の符号が逆で、傾斜位相の大きさが等しい2枚の偏心フレネルレンズを回転機構に組み込んだものと、集光レンズから成る構成を用いる。2枚の偏心フレネルレンズを透過する光のうち、所望の回折次数(+1次光)の光成分は両レンズの放物位相がキャンセルされて線形位相のみが転写されて回折する。所望の回折次数に相当しない成分(0次光、−1次光及び高次光)については、それぞれ放物位相が完全に打ち消されず、互いに異なる位置に焦点を結ぶように収束・発散する。最後に集光レンズを通すと、所望の回折光(+1次光)も収束光となるが、その他の回折光とは異なる位置に集光する。
国際公開第2015/145681号 米国特許7471450号公報 米国特許9170162号公報 特許第5622571号公報
M. Bawart, N. Bregenzer, S. Bernet, M. Ritsch−Marte, "Dynamic beam−steering by a pair of rotating diffractive elements" Opt. Commun. 460, 125071 (2020).
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、反射型の光学系のため、ビームが往復するだけの空間的スペースを要し、システム全体が大型化するという難点がある。また、高速でのビーム走査のためにはミラーの共振周波数での駆動が必要となるため、走査速度が固定化されてしまうという制約を持つ。このため、反射型の素子ではなく、透過型の光学素子に基づく小型且つビーム走査速度が単一周波数に固定化されないビームステアリング方式が求められる。
また、上記特許文献2に記載の技術は、ウェッジプリズムで偏向角を大きくとるために、ウェッジ角を大きくする必要があり、これはプリズムの厚膜化の要因となる。これは結果的に素子の重量を増加させることに寄与し、回転機構との組み合わせにおいて回転速度の高速化を制約する問題を持つ。さらに、厚膜のウェッジプリズムを多段化させると、必然的に装置長が長くなり、装置サイズの大型化をまねく要因ともなる。
また、上記特許文献3で示す等方性回折格子による回折現象においては、本来必要とする偏向成分以外にも、0次、−1次及び高次の回折光が発生する。これらの回折光はゴーストの発生に寄与することとなり、ビームステアリングにおける性能を低下させる。さらに不要な回折光分のエネルギーロスがあるため、光の利用効率が悪く(理想的な正弦波状回折格子の場合で最大33.9%の回折効率)、消費エネルギーの面でも難点がある。一つの解決方法として、ブレーズ型回折格子を利用することが考えられるが、ブレーズ型回折格子は特定の入射角と波長にのみ最大回折効率が得られるため、回折格子の回転制御で入射角が逐次変化するようなビームステアリング応用においては光強度が一定とならない問題が生じ得る。
また、上記特許文献4及び上記非特許文献1に記載の技術によると、集光位置の違いで不要な回折光の影響を低減することができるものの、この技術は原理上100%の回折効率を得るのは難しく実際のところ69%程度の光利用効率にすぎない。
特に、上記特許文献2〜4に記載の技術では、ラスター図形を描くこともできない。
そこで上記課題に鑑み、本発明の目的は、小型化可能でより高い光利用効率を達成するビームステアリング装置及びビームステアリング方法並びにビーム検出システムを提供することにある。
上記課題を解決する本発明の一観点に係るビームステアリング装置は、光源と、偏光回折格子と、光源と偏光回折格子の間に配置された偏光制御素子と、偏光回折格子を回転させる回転機構と、を有するものである。
本観点において、偏光回折格子を複数備えていることが好ましい。また、この場合において、複数の偏光回折格子毎に独立して回転機構を備えることがより好ましい。また、複数の偏光回折格子同士の距離を可変とするよう、偏光回折格子を光源が発する光の光路に沿って移動させる移動機構を有することがより好ましい。この結果、複数の回折格子により、ラスター図形を含む光線操作が可能となる。
また、本観点において、偏光回折格子は、光学異方性材料を含んで構成されていることが好ましい。この場合において、偏光回折格子は、光反応性側鎖を有する液晶性高分子膜を含むものであり、更に、光反応性側鎖は、光架橋及び光異性化の少なくともいずれかの反応を生ずるものであることが好ましい。
また、本観点において、偏光回折格子を光源が発する光の光路に対して傾斜させる傾斜機構を有することが好ましい。
また、本観点において、偏光回折格子を光源が発する光の光路に沿って移動させる移動機構を有することが好ましい。
また、本発明の他の一観点に係るビームステアリング方法は、円偏光を偏光回折格子に入射しながら偏光回折格子を回転させるものである。
また、本発明の他の一観点に係るビーム検出システムは、光源と、偏光回折格子と、光源と該偏光回折格子の間に配置された偏光制御素子と、偏光回折格子を回転させる回転機構とを有し、対象に対して該光源からの光を照射するビームステアリング装置と、該対象から反射したビームステアリング装置によって照射された光を受光する受光素子と、を有するものである。
以上、本発明により、小型化可能でより高い光利用効率を達成するビームステアリング装置及びビームステアリング方法並びにビーム検出システムを提供することができる。
実施形態1に係るビームステアリング装置1の概略図である。 偏光回折格子の偏光顕微鏡写真及び光学軸分布を示す図である。 光が偏光回折格子を透過したときの回折光の状態の一例を示す模式図である。 位相差Γがπのときの±1次光の回折効率の入射光の楕円率角依存性を示す図である。 偏光回折格子を光路に対して傾斜させるための動作を示す模式図である。 偏光回折格子を光路に沿って移動させるための動作を示す模式図である。 回転機構を備えた偏光回折格子2つを有するビームステアリング装置1’の模式図である。 回転機構を備えた偏光回折格子4つを有するビームステアリング装置1’’の模式図である。 ビームが操作させる位置を定義した座標系を示した図である。 回転機構を備えた偏光回折格子2つを有するビームステアリング装置で得られるビーム走査の軌跡の例を示した図である。 回転機構を備えた偏光回折格子4つを有するビームステアリング装置で得られるビーム走査の軌跡の例を示した図である。 回転機構を備えた偏光回折格子4つを有するビームステアリング装置でラスター図形を描く例を示した図である。(a)は構成例。(b)〜(e)は4枚それぞれの偏光回折格子の回転周波数と格子ベクトル方位の条件に応じたラスター図形の例である。 回転機構を備えた偏光回折格子2つを有するビームステアリング装置において、偏光回折格子間の距離変化およびいずれか一方の偏光回折格子の傾斜により得られるビーム走査の軌跡の例を示した図である。 実施形態2に係るビーム検出システムSの概略図である。 実施例で用いた偏光回折格子の回折特性を示す図である。 互いに異なる周波数で2つの偏光回折格子を回転させた際のビーム走査の軌跡の実施例を示す図である。 4枚の偏光回折格子を用いた系で、系を構成する内2つの偏光回折格子を互いに異なる周波数で回転させた際のビーム走査の軌跡の実施例を示す図である。 4枚の偏光回折格子を用いた系で、系を構成する内2つの偏光回折格子を互いに異なる周波数で回転させながら、第3の偏光回折格子を回転させた際のビーム走査の軌跡の実施例を示す図である。 4枚の偏光回折格子を用いた系で得られるラスター図形に沿ったビーム走査の軌跡の実施例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載された具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
<実施形態1:ビームステアリング装置1>
図1は、本実施形態に係るビームステアリング装置(以下「本装置」という。)1の概略を示す図である。本図で示すように、本装置1は、光源2と、偏光回折格子4と、光源2と偏光回折格子4の間に配置された偏光制御素子3と、偏光回折格子4を回転させる回転機構5から成る。
<光源2>
本装置1において光源2は、文字通り光を発することができるものである。本装置1の光源2が発する光は、限定されるわけではないが、波長λが単一のレーザー光であることが好ましい。レーザー光を発する光源としては、例えば半導体レーザー、全個体レーザー、DPSS(Diode Pumped Solid State)レーザー等を例示することができる。
光源2が発する光の波長λは、後述する式(3)を満たす限りにおいて限定されないが、例えば0.1mm以上1mm以下の波長とすれば、自動車等に搭載するミリ波レーダー等に用いることができる。また、1μm以上10μm以下とすれば、自動運転等に利用するLiDAR等に用いることができる。さらに、300nm以上900nm以下とすれば、レーザープロジェクター等に用いることができる。従って光源2が発する光の波長は、300nm以上1mm以下であることが好ましい。300nm以上10μm以下であることがより好ましい。
<偏光制御素子3>
本装置1において偏光制御素子3は、光源2が発する光の波長λの偏光状態を制御する素子である。具体的には、図1に例示するように、偏光制御素子3は、λ/4板32を含むものであることが好ましく、より好ましくはその前段に偏光子31を備えたものであることが好ましい。尚、λ/4板は、1/4波長板ともいう。
偏光子31によって無偏光を直線偏光に、λ/4板32によって直線偏光を右円偏光又は左円偏光に変換することが可能となる。また、レーザーから射出され直線偏光とした光をその振動方向から0,45,90,135°以外の角度にλ/4板32を向けると楕円偏光に変換することが可能となる。さらに、円偏光を作る方式としては、電気光学変調器や液晶リターダなどの位相差Γが可変な位相子を用いても良い。
偏光子31やλ/4板32、その他の素子によって、偏光制御素子3による偏光回折格子4への入射前の円偏光の楕円率を制御することができる。また、偏光制御素子3により偏光回折格子4への入射前の円偏光の回転方向を制御することで、本装置から射出するビームの光路方向を変更させることができる。
<偏光回折格子4>
本装置1において偏光回折格子4は、偏光回折格子4に入射された円偏光の光路方向を変更させることができるものである。
偏光回折格子4は光学異方性が周期的に変調された構造を有し、より具体的には光学軸の方位が周期的に分布した構造を有し、円偏光を+1次光又は−1次光のいずれかの方向へと回折させる特性を有することがよい。また、偏光回折格子4は±1次光に対する合計の回折効率が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは100%の効率を有するものがよい。また、偏光回折格子4は±1次光の楕円率が95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上、最も好ましくは100%であるものがよい。
偏光回折格子の回折特性について以下に述べる。
偏光回折格子における光学的異方性の空間分布構造は限定するものではなく、必要とされるビームステアリング機能に応じて適宜選択可能であるが、ここでは、図2に示すような1次元方向に対して線形且つ連続的に光学軸が周期的に回転する異方性の分布を有する偏光回折格子について述べる。
偏光回折格子に光を入射させると、空間的に偏光と位相の空間分布が変調されて回折光が発生する(図3)。下記式(1)の左円偏光のJonesベクトル|L>および下記式(2)の右円偏光のJonesベクトル|R>を用いて、偏光回折格子のJones行列は、下記式(3)で定義される。
Figure 2021176005
Figure 2021176005
ここで、TOCは偏光回折格子のJones行列、Γは偏光回折格子の位相差、Λは偏光回折格子の格子周期、tは時間、xは横軸の空間座標、yは縦軸の空間座標、Φは格子ベクトルのx軸からの方位、iは虚数単位を、また、<L|および<R|はそれぞれ|L>および|R>の随伴行列を表す。
また、式(3)から、左円偏光及び右円偏光に対する透過光の複素振幅を求めると下記式(4)および(5)を得ることができる。ここで、式(4)および(5)それぞれの第2項目が+1次光と−1次光の回折光成分に対応し、左円偏光に対する+1次光の回折光強度IL +1および右円偏光に対する−1次光の回折光強度IR -1は下記式(6)および(7)でそれぞれ与えられる。これらの式から、偏光回折格子は、位相差Γがπの時、円偏光の入射に対して100%の回折効率を得ることができる。回折光の伝搬方向は円偏光の回転方向に応じて±1次の方向で反転する。なお、任意の楕円偏光が入射する場合のJonesベクトル|Earb>は下記式(8)のようにあらわされ、±1次光の回折光強度Iarb ±は下記式(9)で求められる。ここで、εとΨは入射偏光の楕円率角と方位角を表している。式(9)より、偏光回折格子の位相差Γがπの時の±1次光の回折効率は入射光の楕円率に応じて±1次光の間の強度比が変わるという特性を持ち、その楕円率角依存性は図4に示すようになる。
Figure 2021176005
Figure 2021176005
Figure 2021176005
上述のとおり、偏光回折格子は位相差Γがπの条件を満たすとき、円偏光の入射に対して±1次光のどちらか一方に100%の回折効率で光を回折させる機能を示す。このため、不要な回折光の発生なくビームを特定方向に偏向させることが可能である。
偏光回折格子をビームステアリング装置に用いるにあたり、±1次光の回折効率が高い偏光回折格子であるのがよい。偏光回折格子において、±1次光の回折効率が最も高い理想的な位相差は上記式(6)および(7)から求められる。
具体的には、該偏光回折格子の場合、5%以上の回折効率、即ち位相差(Γ=2πΔnd/λ)では0.448+2πm〜5.82+2πm(m:自然数)の範囲、好ましくは50%以上の回折効率、即ち位相差(Γ=2πΔnd/λ)では1.57+2πm〜4.71+2πm(m:自然数)の範囲、理想的には100%の回折効率、即ち位相差(Γ=2πΔnd/λ)では3.14+2πm(m:自然数)であるのがよい。
また、所望の回折次数にエネルギーを集中させるために、図4より偏光回折格子4に入射する円偏光の楕円率角の絶対値が26deg以上、好ましくは32deg以上、より好ましくは37deg以上、最も好ましくは45degであるのがよい。
<偏光回折格子の幾何学的手段によるビームステアリング>
本装置1においては、偏光回折格子4を光源が発する光の光路に対して傾斜させる傾斜機構を有していても良い。具体的には、光源が発する光の光路と平行な軸をz軸、該光路と直角をなす面をx−y平面とすると、偏光回折格子4はx軸方向に回転させてもよく、y軸方向に回転させてもよく、x軸およびy軸同時に回転させても良い(図5)。偏光回折格子4をこのように回転させることで、偏光回折格子4は光路に対して偏光回折格子面が傾斜する。本傾斜機構を設けることで見かけの格子周期が短くなり、傾斜方向に対してリサージュ図形を伸長した軌跡を描くことができるといった効果がある。傾斜角は、位相差Γが1.57+2πm〜4.71+2πm(m:自然数)となる範囲であればどのような角度でも十分に高い光利用効率を達成できる。
本装置1においては、偏光回折格子4を光源が発する光の光路に沿って移動させる移動機構を有していても良い(図6)。例えば、偏光回折格子4に入射された円偏光ビームの光路が変更される角度は偏光回折格子4の特性に依存して決まるため、偏光回折格子4を回転させたときの該ビームの走査軌跡は円を描くに過ぎない。しかしながら、光の光路に沿って移動する移動機構を設けることで、走査軌跡円の直径を変化させることができる。すなわち光路に沿って移動させる移動機構を設けることで、二次元的に広い面積範囲においてビーム走査を行うことができる。もちろん、偏光回折格子を複数設けた場合はこれらの組み合わせによってより簡便に広くビーム走査軌跡範囲を得ることができる。
<複数の偏光回折格子>
本装置1において偏光回折格子は複数備えていることが好ましい。具体的には2以上、好ましくは3以上、更に好ましくは4以上である。また、偏光回折格子毎に独立して動作可能な回転機構を備えることが好ましい(図7および図8)。独立して動作可能な回転機構を備える偏光回折格子を2以上とすることで、偏光回折格子を光路に対して傾斜させたり、光路に沿って移動させたりしなくとも、ビームステアリングが可能となる。この構成により装置あるいはシステムの小型化が容易となる。
複数の偏光回折格子の各々には、独立して動作可能な偏光回折格子を光路に対して傾斜させる傾斜機構、光路に沿って移動させる移動機構および光路と並行な軸で回転させる回転機構の少なくともいずれか一つを備えることが好ましい
複数の偏光回折格子から射出したビームに対し、第2の1/4波長板と第2の偏光子から成る円偏光フィルタを設置しても良い(図示せず)。これにより、偏光回折格子の位相差がπからずれて製作された場合により発生する0次光が選択的に除去され、ノイズを低減することができる。
<複数の回転する偏光回折格子を用いたビームステアリング方法>
上述の偏光回折格子の機能をもとに、ビームステアリングの原理について述べる。図7は本実施形態の他の一観点に係るビームステアリング装置1’の概略を示す図である。本装置1’は2枚の偏光回折格子を用いた構成例であり、光源2(レーザー光源)、偏光制御素子3、独立して動作可能な回転機構51を備える第1の偏光回折格子41、独立して動作可能な回転機構52を備える第2の偏光回折格子42で構成される。
レーザー光源から射出されたビームは、最初の偏光制御素子3により左円偏光又は右円偏光に変換されたのちに第1の偏光回折格子41と第2の偏光回折格子42を連続して透過する。ここで、第1の偏光回折格子の格子周期と格子ベクトル方位をΛ1とΦ1、第2の偏光回折格子の格子周期と格子ベクトル方位をΛ2とΦ2とする。2枚の偏光回折格子が十分に(例えば波長オーダーの距離で)隣接していると仮定すると、左円偏光を第1及び第2の偏光回折格子を透過して付与される透過関数Tは式(4)および式(5)それぞれの第2項目のJonesベクトルに掛かる係数の累積となり、下記式(10)で表される。第2の偏光回折格子で付与される位相が式(5)に従うのは、第1の偏光回折格子を透過した際に回折光成分の偏光状態が右回り円偏光に変換されるためである。
Figure 2021176005
式(10)からx軸方向対する位相変調の周期Λx及びy軸方向に対する位相変調の周期Λyは下記式(11)および(12)でそれぞれ与えられる。ここで、回折光の伝搬方向を図9に示す極座標系(r,θ)で定義すると、第2の回折格子から距離d離れた位置でのレーザーの照射位置は下記式(13)で表され、式(13)中の各変数は式(14)〜(17)で表される。尚、Λ’は2枚の偏光回折格子の組み合わせで得られる格子周期、ρは動径距離である。
Figure 2021176005
Figure 2021176005
式(13)を用いて第1及び第2の偏光回折格子を回転させた場合の軌跡の例を図10(a)〜(d)に示す。ここで、第1及び第2の偏光回折格子の回転周波数をそれぞれωおよびω、初期の格子ベクトル方位をδおよびδとし、格子ベクトル方位はΦ=ωt+δおよびΦ=ωt+δと表す。光の波長λは532[nm]、第1の偏光回折格子の格子周期Λと第2の偏光回折格子の格子周期Λはいずれも10[μm]とし、走査軌跡の観測位置を第2の偏光回折格子からd=1[m]と仮定している。
図10(a)に示すように、2つの偏光回折格子の内のどちらか一方のみを回転させると(ω=0[rps]、ω=10[rps])座標中心からずれた位置に単一の円形軌道が描かれる。一方で図10(b)に示すように、第1及び第2の偏光回折格子双方を異なる周波数で回転させる場合、原点を中心としたリサージュ図形が描かれる。ビームが操作する領域の密度は第1および第2の偏光回折格子間の回転周波数や初期の格子ベクトル方位の差に依存し、図10(c)や(d)に示すように高密度なリサージュ図形の描画が可能である。
なお、第1の偏光回折格子41に入射する偏光状態は左円偏光に限定されるものではなく、右円偏光または楕円偏光でも良い。右円偏光の場合は左円偏光を入射させる場合と比べて描画の図形が座標原点に対して鏡像な図形を描く。楕円偏光の場合は座標原点に対して2つの鏡像な位置関係にある2つのビームスポットが同時にリサージュ図形を描く。
また、偏光回折格子の数に応じて描画パターンの自由度の向上が可能である。図8は本実施形態の他の一観点に係るビームステアリング装置1’’の概略図である。本装置1’’は互いに独立して動作可能な回転機構51を備える第1の偏光回折格子41、回転機構52を備える第2の偏光回折格子42、回転機構53を備える第3の偏光回折格子43、回転機構54を備える第4の偏光回折格子44の4つの偏光回折格子を用いた構成となっている。4つの偏光回折格子(41,42,43,44)の格子ベクトル方位をそれぞれΦ=ωt+δ、Φ=ωt+δ、Φ=ωt+δ、Φ=ωt+δと定義し、4つの偏光回折格子に入射する左円偏光が付与される位相は下記式(18)で表される。式(18)から、x軸方向及びy軸方向に対する位相変調の周期Λ、Λは下記式(19)および(20)でそれぞれ与えられる。
Figure 2021176005
Figure 2021176005
式(19)および(20)を用いて、式(13)〜(17)より4つの回転機構を有する偏光回折格子の配列により得られるビーム走査の軌跡を計算した例を図11(a)〜(c)に示す。ここで、光源の波長λは532[nm]、第1から第4の偏光回折格子の格子周期Λ、Λ、Λ、Λはいずれも10[μm]とし、走査軌跡の観測位置を第4の偏光回折格子からd=1[m]と仮定している。
第1および第2の偏光回折格子の格子ベクトル方位をΦ=Φ=π/4と固定し、第3と第4の偏光回折格子の周波数をω=1[rps]、ω=10[rps]で周波数差を与えて時間的に回転させると、図11(a)に示すように、原点を中心とするリサージュ図形が描かれる。一方、第1および第2の偏光回折格子の格子ベクトル方位をΦ=π/4、Φ=5π/4と固定し、第3と第4の偏光回折格子を周波数ω=1[rps]、ω=10[rps]で周波数差を与えて時間的に回転させると、図11(b)に示すように、原点から斜めにシフトした位置を中心とするリサージュ図形が描かれる。即ち、第1および第2の偏光回折格子により第3および第4の偏光回折格子の回転により描かれるリサージュ図形の中心位置を空間的にシフトさせることができる。このシフトされる位置は、第1および第2の偏光回折格子で描画可能なリサージュ図形の範囲内で任意に制御できる。また、図11(c)のように4つの偏光回折格子の回転周波数や初期の格子ベクトル方位を選ぶことで、偏光回折格子を2枚用いる場合と比べて2倍の軌道半径内で相似形のリサージュ図形が描かれる。
さらに、図12(a)に示すように、第1および第2の偏光回折格子の周波数をω1=−ω2、初期の格子ベクトル方位をδ=δ=δ、第3および第4の偏光回折格子の周波数をω=−ω、初期の格子ベクトル方位をδ=δ=δ±π/2とすると、ラスター図形を描くことができる。このとき、第1および第2の偏光回折格子のペアと第3および第4の偏光回折格子のペアはそれぞれ、互いに直交する直線走査を行う役割を担う。
また、図12(b)〜(e)は、偏光回折格子の回転周波数と初期の格子ベクトル方位を変えながら描かれるラスター図形をシミュレーションしたものである。それぞれの条件は各図の下部に記載のとおりであるが、例えば図12(b)は、ω1=1[rps]、ω2=−1[rps]、ω=10[rps]、ω=−10[rps]、δ1=0[rad]、δ2=0[rad]、δ=π/2[rad]、δ=π/2[rad]の条件、図12(e)は、ω1=1[rps]、ω2=−1[rps]、ω=20[rps]、ω=−20[rps]、δ1=π/4[rad]、δ2=π/4[rad]、δ=3π/4[rad]、δ=3π/4[rad]の条件で描かれるラスター図形である。図12(b)〜(e)は互いにラスター図形の走査線密度と方向が異なることが分かる。この結果から、ラスター図形の走査線密度や方向は、上記のラスター図形描画の条件の下で、偏光回折格子の周波数と初期の格子ベクトル方位に応じて様々に制御できる。
なお、回転機構を備える偏光回折格子の数は、図7および図8に示す構成のように2ないし4に限定されるものではなく、複数備えていることが好ましく、回転機構を備える偏光回折格子の数は2以上を上限無く配列できる。
また、それぞれの偏光回折格子間の間隔を変えることでも描画パターンの自由度を向上可能である。例えば図7に示す2枚の偏光回折格子から成る構成において、第1の偏光回折格子から回折した光は距離dだけ離れて配置された第2の偏光回折格子に入射する際、その入射位置は下記式(21)で記述される。続けて、第2の偏光回折格子で回折されると、再び伝搬方向が偏向し、第2の偏光回折格子から距離d離れた位置において下記式(23)で記述される位置にビームスポットを形成する。式(23)を用いて計算したビームの軌跡を図13(a)および(b)に示す。原点を通らない描画パターンが得られており、円環状の照明が可能となる。
Figure 2021176005
さらに、図5に示すように偏光回折格子を元々の光軸に対して傾斜させることで描画パターンの自由度を向上できる。2枚の偏光回折格子から成る構成(図7)において、第2の偏光回折格子のみx軸方向に角度θだけ傾ける場合、見かけの格子周期が短くなり、回折角が大きくなる。例として第2の偏光回折格子をx軸方向に角度θ傾けると、x軸方向の見かけの格子周期は下記式(24)で表される。式(24)および式(13)〜(17)式から、θ=50[deg]の条件下で計算したビームの軌跡を図12(c)および(d)に示す。第1の偏光回折格子を静止させる場合は横軸方向に対して伸長した楕円軌道が描かれており、第1の偏光回折格子を回転させると同様に横軸方向に対して伸長したリサージュ図形が描かれている。
Figure 2021176005
上記のとおり、本装置1,1’,1’’では、偏光回折格子を駆動させる回転機構、移動機構、傾斜機構の少なくともいずれかを備えていることが好ましい。また、上記の回転機構、移動機構、傾斜機構の少なくともいずれかを制御するための制御装置(図示せず)を備えていることが好ましい。これらを機械的に制御することでより高精度な制御を可能とする。制御装置としては、限定されるわけではないが、いわゆるコンピュータであることが好ましい。
<偏光回折格子4の作製方法>
偏光回折格子4は、光学異方性材料を含んで構成されていることが好ましい。光学異方性材料は、高い光学異方性を確保できる限りにおいて限定されるわけではないが、光学異方性材料は光架橋及び光異性化の少なくともいずれかの反応を生ずる光反応性側鎖を有する光反応性高分子であることが好ましく、液晶性を示す光反応性高分子液晶がより好ましい。
光学異方性材料を含む偏光回折格子4は、公知の方法、例えばWO2016/072436、特願2019−164405、J. Appl. Phys. 94, 1298 (2003)等に記載された方法に従うことで、光学異方性が周期的に変調された構造を有する偏光回折格子4を作製することができる。
他にも偏光回折格子4は、光源3が発する光の波長λよりも短い周期構造を有するサブ波長構造に基づく構造性複屈折を利用した光学異方性材料によって作製されたものでもよい。
<偏光回折格子の回転機構5>
本装置1において、回転機構5は偏光回折格子4を回転させるものであり、複数の回転機構を備える偏光回折格子を備える本装置1’,1’’のような場合には、各偏光回折格子41,42,43,45に対してそれぞれに互いに独立した回転機構51,52,53,54を備えることが好ましい。
該回転機構は、例えば永久磁石を円環状に埋め込んだ浮遊型の回転モータやベアリング式の回転モータ等、公知の様々な形態の機構が適用可能であり、レーザー光の光路上を遮蔽しない限りどのような動作手段でもよく、特に限定されない。
該回転機構の回転速度はミリ秒〜マイクロ秒のオーダーの範囲で、上限値はビームの走査速度を律速する要因となるため、1回転あたり1000ミリ秒以下が好ましく、より好ましくは500ミリ秒以下、さらに好ましくは16ミリ秒以下、最も好ましくは1ミリ秒以下がよい。
また該回転機構による回転動作は等速円運動に限定するものではなく、時間的に周波数が可変であってもよく、不規則に速度が変化してもよい。
<実施形態2:システム>
上記実施形態1では、ビームステアリング装置及びビームステアリング方法に関するものである一方、本装置では、受光装置7を備えさせることでビーム検出システムとして活用することができる。以下具体的に説明する。
図14は、本実施形態に係るビーム検出システムSの概略図である。本システムSでは、上記本装置(1,1’,1’’)の各構成に加え、受光装置7を有する。
本システムSは、本装置内の光源から発せられた光が、本装置内の少なくとも偏光制御素子と偏光回折格子とを通過し、該偏光回折格子を回転させる回転機構によって光路が変更されて本装置から射出されるステップ(S1)と、本装置から射出した光が対象6に照射され、対象6から反射した光を、受光素子を有する受光装置7により検出するステップ(S2)とを備えることにより動作する。
受光装置7は少なくとも本装置から射出される光を検出できる受光素子を有していればよい。受光素子は、例えばフォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトカプラ、フォトセンサー、光電素子等、どのようなものでもよい。
<本装置の特徴>
本装置は、小型素子を直列に配置するだけのシンプルな構成であるため、装置全体の小型化が容易である。また本装置で使用する偏光回折格子は、薄膜素子でその機能を担保できることから、重量面で有利である。重量が軽いことは偏光回折格子を駆動させる点において優位であり、特に偏光回折格子の回転の高速化において優位である。また、複数の偏光回折格子により回折角を累積し、大きな偏向角を得ることができる。また、本装置で使用する偏光回折格子の特性上不要な回折光が発生しないため、ゴースト等の問題を大幅に低減できる。また、光の利用効率が上がるため、省エネルギーの面でも優位である。
ここで、上記実施形態に係るビームステアリング装置に関し、実際に偏光回折格子を作製し、その値からシミュレーションを行うとともに、実際にビームステアリング装置を試作し、その効果を確認した。以下、実施例を用いて具体的に説明するが、該実施例によってのみ限定されるものではない。
<偏光回折格子の作製>
偏光感受性を有する液晶高分子への偏光ホログラム記録により偏光回折格子を作成した。記録材料として、光架橋性の側鎖を有する厚さ3.5μmの高分子液晶膜がTAC(Tri−Acetyle Cellulose)フィルム上に製膜されたものを用いた。なお、今回用いたものは、2軸異方性を有する高分子液晶膜であり、1軸異方性のものよりも斜め入射に対する回折特性の影響が小さいという特徴がある。光学異方性を誘起するために、互いに逆回りの円偏光の360nmレーザー光をコヒーレントに一定の交叉角を与えて記録材料上で重ね合わせて偏光ホログラムを記録した。記録後、130℃で5分間熱処理を施し、次いで冷却することにより、偏光回折格子の光学異方性を誘起した。本実施例では、格子周期が200μmの偏光回折格子を2枚作製した。
<偏光回折格子の特性>
作製した偏光回折格子の回折特性を図15に示す。図15(a)および(b)はそれぞれ第1の偏光回折格子と第2の偏光回折格子の回折効率を入射光の楕円率角に応じてプロットしたものである。本図中の丸印で表すポイントは実測値、実線及び破線は図4に示した位相差がΓ=πの際の理論曲線である。
本図によると作製した偏光回折格子の回折特性は、理論曲線によく一致する測定結果が得られており、理想的な特性が得られていることがわかる。偏光回折格子において重要な特性は、左円偏光と第1の偏光回折格子に透過させた際の回折特性と、右円偏光を第2の偏光回折格子の透過させた際の回折特性の2つである。
図15(a)から、第1の偏光回折格子を透過する左円偏光(楕円率角ε=45deg)の回折効率は96.6%で楕円率角は−44.3degと高い回折効率と楕円率角が得られている。一方で図15(b)から、第2の偏光回折格子を透過する右円偏光(楕円率角ε=−45deg)の回折効率は97.9%で楕円率角は44.3degと、第1の偏光回折格子と同様に高い回折効率と楕円率角が得られている。なお、第1の偏光回折格子に入射する偏光状態は左円偏光に限定するものではなく、例えば右円偏光の場合は上述の場合とは逆回りの円偏光が入射する場合の回折特性が重要となる。この場合についても、図15(a)および(b)の結果から実用的な数値が得られている。
<回転機構>
回転機構は、円環状の永久磁石を保有する偏光回折格子の保持円盤を、外周部に配置したコイルへの交流電流の印加によって浮遊・回転可能な形態のものを用いた。それぞれの回転機構の回転周波数は独立に可変とし、周波数差によりビーム走査の軌跡を制御可能な構成とした。
<撮像>
作製した偏光回折格子を図7の光学系の形態で配置し、ビーム走査の軌跡をカメラの長時間露光により撮像した。DPSS(Diode Pumped Solid−State)レーザー(EO Edmond optics社製、MGL−III−532nm−50mW)から射出された波長532nmのビームを偏光子及び1/4波長板から成る偏光制御素子へと透過させ、左円偏光に変換した。その後、互いに独立した回転機構に保持された第1および第2の偏光回折格子を連続して透過させた。偏光回折格子には厚さ3.5[μm]、格子周期200[μm]のものを用いた。尚、2つの偏光回折格子の間隔は30mmとした。第2の偏光回折格子から900mm離れた地点にCCD(Charge Coupled Device)アレイセンサー(SONY社製α6000)を配置し、長時間露光によりビームの走査軌跡を観察した。
図16は実際に撮像したビーム走査の軌跡の例である。偏光回折格子の高い回折効率により、ゴーストの発生が強く抑制されている。本図はω=0.3[rps]、ω=3[rps]の条件下で撮像したビーム走査の軌跡である。図10(b)と同様のリサージュパターンが得られている。
図8の光学系の形態に基づいて、4枚の偏光回折格子を用いたビーム走査を行った例が図17から図19である。各偏光回折格子間の距離は約5cmとした。偏光回折格子には厚さ3.5[μm]、格子周期37[μm]のものを用いた。この光学系においても、図8の偏光制御素子3を偏光子と1/4波長板で構成している。これにより、偏光回折格子41に入射する前に光源から射出された光を円偏光に変換している。
図17は4枚の偏光回折格子を用いて実際に撮像したビーム走査の軌跡の例である。ビーム走査の軌跡は、第4の偏光回折格子から距離4.7m離れた位置に配置したスクリーンに投影して撮像した。この実験において、第3及び第4の偏光回折格子は時間的に回転させずに固定し(ω=ω=0[rps])、第1及び第2の偏光回折格子は時間的に回転させた。図17(d)〜(f)はそれぞれ、(d) ω=1.0[rps]、ω=1.05[rps]、δ=0、δ=π、(e) ω=1.0[rps]、ω=6.0[rps]、δ=0、δ=π、(f) ω=1.0[rps]、ω=10[rps]、δ=0、δ=π/2の条件で計算したビーム走査の軌跡である。図17(a)〜(c)に示す実験結果と同様のリサージュ図形が描かれていることが分かる。このことから、周波数と初期の格子ベクトル方位に応じて様々なビーム走査の軌跡を描けることを実証できた。
図18は第1〜第3の偏光回折格子を時間的に回転させて撮像したビーム走査の軌跡である。ビーム走査の軌跡は、第4の偏光回折格子から距離4.7m離れた位置に配置したスクリーンに投影して撮像した。第3の偏光回折格子の格子ベクトル方位φの回転に伴って、第1及び第2の偏光回折格子の回転で描かれるリサージュ図形が連続的に円運動をしていることが分かる。このことから、偏光回折格子を3枚以上回転させることで、リサージュ図形の空間的なシフトが可能であることを実証できた。
図19はラスター図形の光線走査の実証実験の結果である。図8の光学系の形態に基づいて、図12(c)と同じ条件となるように、第1及び第2の偏光回折格子を互いに逆回りに1[deg]毎、第3及び第4の偏光回折格子を互いに逆回りに20[deg]毎回転させた。また、第1と第2の偏光回折格子の初期の格子ベクトル方位をφ=φ=0[deg]、第3と第4の偏光回折格子の初期の格子ベクトル方位をφ=φ=90[deg]とした。ビーム走査の軌跡は、第4の偏光回折格子から距離4.7m離れた位置に配置したスクリーンに投影して撮像した。図12(c)と同様のラスター図形が描かれていることが分かる。このことから、4枚の偏光回折格子を用いてラスター図形を描けることを実証できた。
図15に示したように、実際に作成した偏光回折格子は96.6%以上の回折効率を有し、図16に示したように不要な回折光が発生せず、高い光利用効率が得られていることがわかる。また、偏光子、1/4波長板、回転機構に保持された2枚の偏光回折格子の組み合わせによるビームステアリング装置の全長は、概ね50mm程度であり、本装置は従来技術と比較して小型化が可能であることを実証できた。
以上、本実施例によって、本発明の効果を確認することができた。本発明は使用する偏光回折格子の枚数や回転周波数の組み合わせに応じて様々なビーム走査の軌跡を得ることができる。
本発明は、ビームステアリング装置及びビームステアリング方法として産業上の利用可能性がある。より具体的に説明すると以下のとおりである。
自動運転の普及に向けて、車外の環境情報を逐次取得するためのライダー(レーザー光を2次元的にスキャンする光源付帯システム)の開発が勢力的に行われている。本発明は、小型システムで高速にビームステアリングを可能とし、また光利用効率が高いことからライダーへの適用の可能性が高いと期待される。
また、プロジェクター用途も期待される。一般的な映像の表示周波数である60Hz程度を超える回転駆動と半導体レーザー光源の出力時間制御を組み合わせれば、任意の画像を被写体上に投影することができる。
本発明では4枚の偏光回折格子を利用することで、リサージュ図形のみならず、ラスター図形に沿った光線走査が可能である。ラスタースキャンはディスプレイにおける映像出力の標準規格や、LiDARにおける計測画像の再構成に対して親和性が高く、実用上の有用性がある。また、本発明によれば従来法において光学素子の枚数を増やしたときに発生してしまう不要な光を低減できる。これらの観点から、本発明装置は、ディスプレイやLiDARなどにおいて有用である。
発明について自動運転技術分野や表示分野などを例に挙げたが、ビームステアリング方式の用途展開は医療分野、セキュリティー分野、加工分野なども想定でき、これらに限定されない。
1,1’,1’’,1’’’・・・ビームステアリング装置
2・・・光源
3・・・偏光制御素子
4,41,42,43,44・・・偏光回折格子
5,51,52,53,54・・・回転機構
6・・・対象
7・・・受光装置
S・・・ビーム検出システム

Claims (12)

  1. 光源と、
    偏光回折格子と、
    前記光源と前記偏光回折格子の間に配置された偏光制御素子と、
    前記偏光回折格子を回転させる回転機構と、を有する
    ビームステアリング装置。
  2. 前記偏光回折格子を複数備えている
    請求項1記載のビームステアリング装置。
  3. 前記複数の偏光回折格子により、ラスター図形を含む光線走査を可能とする
    請求項2記載のビームステアリング装置。
  4. 前記偏光回折格子は、光学異方性材料を含んで構成されている
    請求項1記載のビームステアリング装置。
  5. 前記偏光回折格子を前記光源が発する光の光路に対して傾斜させる傾斜機構を有する
    請求項1記載のビームステアリング装置。
  6. 前記偏光回折格子を前記光源が発する光の光路に沿って移動させる移動機構を有する
    請求項1記載のビームステアリング装置。
  7. 複数の前記偏光回折格子毎に独立して前記回転機構を備える
    請求項2記載のビームステアリング装置。
  8. 複数の前記偏光回折格子同士の距離を可変とするよう、前記偏光回折格子を前記光源が発する光の光路に沿って移動させる移動機構を有する
    請求項2記載のビームステアリング装置。
  9. 前記偏光回折格子は、光反応性側鎖を有する液晶性高分子膜を含む
    請求項4記載のビームステアリング装置。
  10. 前記光反応性側鎖は、光架橋及び光異性化の少なくともいずれかの反応を生ずるものである
    請求項9記載のビームステアリング装置。
  11. 円偏光を偏光回折格子に入射しながら前記偏光回折格子を回転させるビームステアリング方法。
  12. 光源と、
    偏光回折格子と、
    前記光源と前記偏光回折格子の間に配置された偏光制御素子と、
    前記偏光回折格子を回転させる回転機構と、を有し、
    対象に対して前記光源からの光を照射するビームステアリング装置と、
    前記対象から反射した前記ビームステアリング装置によって照射された光を受光する受光素子と、
    を有するビーム検出システム。

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