JP2021172930A - 人工皮革 - Google Patents

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俊 大根田
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Abstract

【課題】 人工皮革の強度を損なうことなく、通気度に優れ快適に使用することができる、自動車内装材用途および衣料用途に好適な人工皮革を提供すること。【解決手段】 極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とで構成されてなり、立毛層を少なくとも1層有してなる人工皮革であって、前記不織布は前記極細繊維からなる繊維束を含み、前記立毛層の直下から厚さ方向に300μmの位置における横断面において、厚さ方向に配向されてなる前記極細繊維の断面数が1000個/mm2〜5000個/mm2であって、さらに、人工皮革の縦断面における前記極細繊維の断面の直径(A)に対する前記繊維束の断面における直径(B)の比(B/A)が2〜5である、人工皮革。【選択図】なし

Description

本発明は、極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とで構成されてなり、立毛層を少なくとも1層有してなる人工皮革に関するものである。
極細繊維と高分子弾性体とからなる人工皮革は天然皮革に対して優れた機械物性や耐久性を有しており、衣服やソファなどの家具、さらには自動車内装材用途等へ採用が拡大している。自動車内装材用途においては、起毛処理を施した人工皮革および表面に樹脂層を塗布した人工皮革が用いられており、表面品位の高級感、優れた機械物性が評価され、主にシート材に採用が増加している。
一方で、良好な表面品位、優れた機械物性を得るためには人工皮革の密度の増加、塗布する樹脂量の増加等の方法が採用されており、空隙の減少や樹脂による閉塞によって通気性が低下し、使用中の快適性が損なわれてしまっている。このような問題を解決すべく種々の検討が実施されている。
例えば特許文献1には、立毛面に断続的な樹脂層を形成して天然のヌバック皮革の触感でありながら、スエード皮革の立毛感および通気性を持ち、更には光沢感を抑えたマットな外観を有する皮革様布帛が提案されている。
また、特許文献2には、少なくとも一面の表層に、極細繊維束を開繊させた極細繊維と表層に局在するように含浸付与された樹脂の層である表層樹脂層とを含むようにした人工皮革が提案されている。
特開2018−123443号公報 特開2017−133114号公報
しかしながら、特許文献1または2に開示された技術は、いずれもその表層が樹脂層を有する人工皮革に関するものであるが、当該樹脂層を除いた人工皮革とする場合には、樹脂層による補強効果がなくなるため、人工皮革の引張強度などの機械的特性が低下する。
そこで本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、人工皮革の強度を損なうことなく、通気度に優れ快適に使用することができる、自動車内装材用途および衣料用途に好適な人工皮革を提供することにある。
本発明者らは、上記の目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、人工皮革の厚さ方向に極細繊維を配向させることで気流の通り道ができることを見出し、人工皮革の通気度を向上できるという知見を得た。さらにこの人工皮革が、優れた強度を達成することが可能であることも判明した。
本発明は、これら知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
本発明の人工皮革は、極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とで構成されてなり、立毛層を少なくとも1層有してなる人工皮革であって、前記の不織布は前記の極細繊維からなる繊維束を含み、前記の立毛層の直下から厚さ方向に300μmの位置における横断面において、厚さ方向に配向されてなる前記の極細繊維の断面数が1000個/mm〜5000個/mmであって、さらに、人工皮革の縦断面における前記の極細繊維の断面の直径(A)に対する前記の繊維束の断面における直径(B)の比(B/A)が2〜5である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、通気度が5cm/(cm・秒)以上である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記の高分子弾性体の人工皮革に占める割合が5質量%以上50質量%以下である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記の人工皮革の見掛け密度が0.2g/cm以上0.6g/cm以下である。
本発明の人工皮革の好ましい態様によれば、前記の人工皮革の厚さが0.5mm以上1mm以下である。
本発明の人工皮革はその強度を損なうことなく、通気度に優れ快適に使用することができ、自動車内装材用途および、衣料用途に好適に用いることができる。
図1は、本発明の人工皮革の縦断面、横断面を説明する概要斜視図である。 図2は、本発明の人工皮革の縦断面を電子顕微鏡観察して得られる写真において、繊維束の外周を囲む線を例示する図である。 図3は、本発明の人工皮革の縦断面を模式的に例示する断面図である。
本発明の人工皮革は、極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とで構成されてなり、立毛層を少なくとも1層有してなる人工皮革であって、前記不織布は前記極細繊維からなる繊維束を含み、該立毛層の直下から厚さ方向に300μmの位置における横断面において、厚さ方向に配向されてなる前記極細繊維の断面数が1000個/mm〜5000個/mmであって、さらに、人工皮革の縦断面における前記極細繊維の断面の直径(A)に対する前記繊維束の断面における直径(B)の比(B/A)が2〜5である。以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
なお、本発明の人工皮革の横断面とは、図1に示すように、人工皮革(10)の立毛層(10a)を上にして載置した際、矢印(11)の方向から観察される断面のことを指す。同様に、人工皮革の縦断面とは、横断面と直交する断面、すなわち、図1の矢印(12)の方向から観察される断面のことを指す。
[極細繊維からなる不織布]
本発明の人工皮革は、まず極細繊維からなる不織布を構成要素として含む。
本発明の人工皮革に用いられる極細繊維の種類としては、耐久性、特には機械的強度、耐熱性および耐光性の観点から、並びに、光透過性の観点から合成繊維が好ましく用いられる。
極細繊維として合成繊維を用いる場合には、極細繊維を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、ポリフェニレンスルフィド等を挙げることができる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポチトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸等を挙げることができる。また、ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド12等を挙げることができる。さらに、ポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等を挙げることができる。好ましくは、ポリエステルを極細繊維に用いることにより、耐久性と光透過性を両立しやすくすることができる。
本発明において、ポリエステルで用いられるジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。本発明でいうエステル形成性誘導体とは、これらジカルボン酸の低級アルキルエステル、酸無水物、アシル塩化物などであり、具体的にメチルエステル、エチルエステル、ヒドロキシエチルエステルなどが好ましく用いられる。本発明で用いられるジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体としてより好ましい態様は、テレフタル酸および/またはそのジメチルエステルである。
本発明において、ポリエステルで用いられるジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられ、中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。
極細繊維として合成繊維を用いる場合には、極細繊維を形成するポリマーには種々の目的に応じて、酸化チタン粒子などの無機粒子、潤滑剤、顔料、熱安定剤、紫外線吸収剤、導電剤、蓄熱剤、抗菌剤等を含有することができる。
極細繊維の断面形状としては、加工操業性の観点から、丸断面にすることが好ましい態様であるが、楕円、扁平および三角などの多角形、扇形および十字型、中空型、Y型、T型、およびU型などの異形断面のものを採用することもできる。
この極細繊維は、その平均単繊維直径が0.1〜10μmであることが好ましい。0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であることで、染色後の発色性や堅牢度に優れた効果を奏する人工皮革とすることができる。一方、10μm以下、より好ましくは6μm以下とすることで、緻密でタッチの柔らかい表面品位に優れた人工皮革とすることができる。
なお、本発明における極細繊維の平均単繊維直径は、以下の手順で測定し、算出される値を指す。すなわち、人工皮革の縦断面において、断面に対して垂直な任意の50本の極細繊維の単繊維直径を3ヶ所で測定して、合計150本の単繊維直径の平均値を算出して求められるものである。単繊維直径の算出は、まず単繊維の断面積を測定し、当該断面積となる円の直径を以下の式で算出する。
単繊維直径(μm)=(4×(単繊維の断面積(μm))/π)1/2
さらに、本発明に係る不織布は、前記の極細繊維からなる繊維束を含む。本発明において、極細繊維からなる「繊維束」とは、同一の方向を向いていると見なせる複数の極細繊維の集合体であって、人工皮革の縦断面あるいは横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により500倍で観察した際に、異形度が2以下の円で囲まれる極細繊維の集合体を指す。ここで、「異形度」とは、極細繊維の集合体について、図3に示すようにその集合体に沿うように外周を囲んだ線(21)をSEM画像上で引くようにし、その外周を囲んだ線(21)の外接円の直径を、外周を囲んだ線(21)の内接円の直径で除した値を指すものとする。
本発明の人工皮革は、前記の極細繊維からなる繊維束を含む不織布(極細繊維ウエブということがある)の形態をなしていることにより、後述する方法によって表面を起毛した際に均一で優美な外観や風合いを有する人工皮革を得ることができる。
本発明に係る不織布は、前記の繊維束が絡合してなる構造を有することが好ましい。極細繊維が束の状態で絡合していることによって、人工皮革の強度が向上する。このような態様の不織布は、例えば、極細繊維発生型繊維同士をあらかじめ絡合した後に、極細繊維を発現させることによって得ることができる。
不織布の形態としては、長繊維不織布および短繊維不織布のいずれも採用できるが、製品面の立毛本数が多く優美な外観を得やすいことから、短繊維不織布であることが好ましい態様である。
短繊維不織布である場合の極細繊維の繊維長は、25〜90mmであることが好ましい。極細繊維の繊維長を25mm以上、より好ましくは35mm以上、さらに好ましくは40mm以上とすることで、耐摩耗性に優れた人工皮革とすることができる。一方、極細繊維の繊維長を90mm以下、より好ましくは80mm以下、さらに好ましくは70mm以下とすることにより、良好な表面品位と風合いを有する人工皮革となる。
[高分子弾性体]
本発明の人工皮革を構成する高分子弾性体は、常温でゴム弾性を有する高分子化合物のことを示す。高分子弾性体のバインダー効果により、極細繊維が人工皮革から抜け落ちることを防止することができるだけでなく、適度なクッション性を付与することが可能となる。
高分子弾性体としては、ポリウレタン系エラストマー、ポリウレア、ポリアクリル酸、エチレン・酢酸ビニルエラストマー、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマー、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコール等が挙げられ、耐久性と圧縮特性の観点からは、ポリウレタン系エラストマーが好ましく用いられる。高分子弾性体には、複数の高分子弾性体を含有せしめることができる。
本発明で特に好ましく用いられるポリウレタン系エラストマーとしては、ポリウレタンやポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどが挙げられる。
本発明で用いられるポリウレタン系エラストマーとしては、ポリマージオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン系エラストマーが好ましく用いられる。
ポリウレタン系エラストマーの質量平均分子量は、好ましくは50000〜300000の範囲である。質量平均分子量を好ましくは50000以上、より好ましくは100000以上、さらに好ましくは150000以上とすることにより、人工皮革の強度を保持し、また複合繊維の脱落を防ぐことができる。また、質量平均分子量を好ましくは300000以下、より好ましくは250000以下とすることにより、ポリウレタン溶液の粘度の増大を抑えて不織布への含浸を行いやすくすることができる。
高分子弾性体の質量平均分子量および後述するポリマージオールの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより求めることができ、例えば次の条件で測定される。
・機器:東ソー(株)社製HLC−8220
・カラム:東ソーTSKgel α−M
・溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
・温度:40℃
・校正:ポリスチレン
上記のポリマージオールとしては、例えば、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオールおよびフッ素系ジオールを採用することができ、これらを組み合わせた共重合体を用いることもできる。中でも、耐加水分解性の観点からは、ポリカーボネート系ジオールおよびポリエーテル系ジオールを用いることが好ましい態様である。
上記のポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。
また、アルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールおよび2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールなどが挙げられる。本発明では、それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネート系ジオールでも、2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネート系ジオールのいずれも採用することができる。
また、ポリエステル系ジオールとしては、各種低分子量ポリオールと多塩基酸とを縮合させて得られるポリエステルジオールを挙げることができる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジメタノールから選ばれる一種または二種以上を使用することができる。
また、ビスフェノールAに各種アルキレンオキサイドを付加させた付加物も使用可能である。
また、多塩基酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロイソフタル酸から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
本発明で用いられるポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびそれらを組み合わせた共重合ジオールを挙げることができる。
ポリマージオールの数平均分子量は、ポリウレタン系エラトマーの分子量が一定の場合、500〜4000の範囲であることが好ましい。数平均分子量を好ましくは500以上、より好ましくは1500以上とすることにより、人工皮革が硬くなることを防ぐことができる。また、数平均分子量を好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下とすることにより、ポリウレタン系エラストマーとしての強度を維持することができる。
本発明で用いられる有機ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートや、ジフェニルメタンジイソシアネート、およびトリレンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートが挙げられ、またこれらを組み合わせて用いることもできる。
鎖伸長剤としては、好ましくはエチレンジアミンやメチレンビスアニリン等のアミン系の鎖伸長剤、およびエチレングリコール等のジオール系の鎖伸長剤を用いることができる。また、ポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを、鎖伸長剤として用いることもできる。
また、高分子弾性体としては、有機溶剤中に溶解させてなる弾性重合体でも、水中に分散させてなる高分子弾性体も、いずれも用いることができる。
本発明で用いられる高分子弾性体は、耐加水分解性等を向上させる目的で架橋剤を併用していてもよい。
また、本発明で用いられる高分子弾性体には、必要に応じてカーボンブラック等の顔料、染料、酸化防止剤、耐光剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、難燃剤、抗菌剤、および防臭剤などの添加剤を配合させることができる。
高分子弾性体が人工皮革に占める割合は5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。高分子弾性体が人工皮革に占める割合によって、人工皮革の表面状態、クッション性、シート強度などを調節することができる。高分子弾性体が人工皮革に占める割合を5質量%以上とすることで、高分子弾性体が極細繊維を強固に把持し、十分なシート強力が得られる。高分子弾性体の割合はより好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、高分子弾性体の割合を50質量%以下とすることで、人工皮革内に十分な空隙が生まれ高い通気度が得られる。高分子弾性体の割合はより好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
高分子弾性体が人工皮革に占める割合を測定する方法としては、極細繊維もしくは高分子弾性体の一方のみを溶出する溶媒に人工皮革を浸漬し、溶出前後の質量から算出することができる。例えば、高分子弾性体が有機溶剤系の場合は、人工皮革をN,N’−ジメチルホルムアミドに浸漬させ、高分子弾性体を溶解させた後に、残存する不織布の質量を測定することで、高分子弾性体の質量を算出し、溶解した高分子弾性体の質量に対して、浸漬前の人工皮革の質量を除することで、高分子弾性体の割合を算出できる。
[人工皮革]
本発明の人工皮革は、前記の不織布と前記の高分子弾性体とで構成されてなる。さらに、本発明に係る人工皮革は、立毛層を少なくとも1層有してなる。
本発明において、「立毛層」とは、前記の高分子弾性体を含浸させた不織布の少なくとも片面について、後述する起毛処理を行って形成した層のことであり、より詳細には、極細繊維同士が交絡しておらず、かつ高分子弾性体によって把持されていない極細繊維であって不織布の外部に向かって起毛されてなる層のことである。
この立毛層は、立毛長さが200μ以上600μm以下であることが好ましい。立毛長さが好ましくは200μm以上、より好ましくは250μm以上であることで、ボリューム感が得られる。一方で、立毛長さが好ましくは600μm以下、より好ましくは550μm以下であることで、極細繊維同士が絡まって毛玉となり、品位の低下を引き起こすことを抑制できる。
なお、本発明の立毛長さは、特開2019−112744に開示されるような方法で測定することができる。
さらに、本発明に係る人工皮革は、前記の立毛層の直下から厚さ方向に300μmの位置における横断面において、厚さ方向に配向されてなる前記の極細繊維の断面数が1000個/mm〜5000個/mmである。厚さ方向に配向されてなる前記の極細繊維の断面数が1000個/mm以上、好ましくは1500個/mm以上、さらに好ましくは2500個/mm以上であることで、厚さ方向に配向した空隙ができ、良好な通気度を得ることができる。一方、極細繊維の断面数が5000個/mm以下、好ましくは4500個/mm以下、さらに好ましくは4000個/mm以下であることで、平面方向に配向した繊維が適度に残存し、機械物性に優れた人工皮革とすることができる。
なお、本発明において、厚さ方向に配向されてなる前記の極細繊維の断面数は、以下のように測定・算出されるものとする。
(1)水を含ませた人工皮革を−10℃まで冷却する。
(2)ミクロトーム(例えば、大和光機工業株式会社製ミクロトーム「RX−860」など)を用い、人工皮革の厚さ方向に、表面から250μm以上350μm以下の研削量で研削する。なお、最終的な研削量(μm)は、人工皮革の縦断面SEM画像を撮影し、図3に示すように、立毛層を除く表面位置(31a)から研削終了位置(31b)までの距離(31)とする。
(3)研削した横断面について、SEMを用いて500倍で観察し、観察面となす角が90°の極細繊維の断面数を計測した。ここで、「観察面となす角が90°の極細繊維」とは、極細繊維の長手方向の側面が見えない極細繊維のことを指す。
(4)スケールから視野範囲の実面積を求め、1mm当たりの断面数を算出する。5箇所の断面数を求め、その平均値(個/mm)の十の位を四捨五入した値を人工皮革の断面数とした。
本発明の人工皮革は、さらに、人工皮革の縦断面における前記極細繊維の断面の直径(A)に対する前記繊維束の断面における直径(B)の比(B/A)が2〜5である。この比(B/A)が2以上、好ましくは3以上であることで、繊維束を構成する極細繊維の本数が増加し、ニードルパンチによってシートの厚さ方向に配向する極細繊維の本数を増加させることができ、良好な通気度を得ることができる。一方、前記の比(B/A)が5以下好ましくは4以下であることで、繊維束を構成する極細繊維の本数が減少し、より緻密な立毛層となり、より良好な表面品位を得ることができる。
なお、本発明において、前記の、人工皮革の縦断面における前記極細繊維の断面の直径(A)に対する前記繊維束の断面における直径(B)の比(B/A)は、以下のように測定・算出されるものとする。
(1)人工皮革の縦断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により500倍で観察する。
(2)ランダムに10箇所観察を行い、それぞれ5本以上、計100本の繊維束を選択する。
(3)繊維束を形成する極細繊維の本数の最頻値を求める。
(4)極細繊維の本数が最頻値である繊維束について、前記の極細繊維の断面の直径(A)、前記繊維束の断面における直径(B)およびその比(B/A)を算出する。
ここで、極細繊維の断面の直径(A)(μm)は、当該繊維束内の極細繊維の断面積(μm)を画像解析などで測定し、当該断面積となる円の直径(μm)を以下の式で算出したものである。
極細繊維の断面の直径(A)(μm)=(4×(単繊維の断面積(μm))/π)1/2
また、繊維束の断面における直径(B)は、極細繊維の断面の直径(A)を算出した繊維束の外周を囲んだ線の内側の面積を画像解析などで測定し、下記式にて直径(B)を算出する。
繊維束の断面における直径(B)(μm)=(4×(繊維束の外周を囲んだ線で囲まれた面積(μm))/π)1/2
そして、人工皮革の縦断面における前記極細繊維の断面の直径(A)に対する前記繊維束の断面における直径(B)の比(B/A)は、前記の繊維束の断面における直径(B)(μm)を前記の極細繊維の断面の直径(A)(μm)で除して、小数点以下第2位で四捨五入することで算出される。
本発明の人工皮革は、その通気度が5cm/(cm・秒)以上であることが好ましい。通気度が5cm/(cm・秒)以上、より好ましくは7cm/(cm・秒)以上、さらに好ましくは10cm/(cm・秒)以上であることによって、自動車内装材のシート表皮に用いた際に背中側の湿度を低く保つことができ、快適性を向上させることができる。この人工皮革の通気度について、基本的には、通気度がより高いことが上記の観点から好ましいものの、立毛のボリューム感の観点からは40cm/(cm・秒)以下であることが一般的である。
なお、本発明の人工皮革の通気度は、JIS L1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」の8.26「通気性」の8.26.2「A法(フラジール形法)」に準じて、フラジール形試験機により、3点測定を行った値を算術平均して算出される値を指す。
本発明の人工皮革は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.2「単位面積当たりの質量(ISO法)」により測定される目付が、100g/m以上500g/m以下の範囲であることが好ましい。人工皮革の目付を好ましくは100g/m以上、より好ましくは150g/m以上とすることにより、人工皮革に十分な形態安定性と寸法安定性が得られやすくなる。一方、目付を好ましくは500g/m以下、より好ましくは300g/m以下とすることにより、人工皮革に十分な柔軟性が得られやすくなる。
本発明の人工皮革は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.1「厚さ(ISO法)」の6.1.1「A法」で測定される厚さが、0.5mm以上1mm以下の範囲であることが好ましい。人工皮革の厚さを好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.6mm以上とすることにより、一定の密度でも単位面積当たりの極細繊維および高分子弾性体の量が増加し、良好なシート強度を得ることが出来る。一方、厚さを好ましくは1mm以下、より好ましくは0.9mm以下とすることにより気流が人工皮革内を通過する距離が短くなるため、良好な通気度を得ることができる。
また、本発明の人工皮革は、その目付を厚さで除すことで求められる見掛け密度について、0.20g/cm以上0.60g/cm以下であることも好ましい態様である。人工皮革の見掛け密度を好ましくは0.20g/cm以上、さらに好ましくは0.25g/cm以上とすることで、緻密な構造となり良好なシート強度を得ることが出来る。一方で見掛け密度を好ましくは0.60g/cm以下、さらに好ましくは0.55g/cm以下とすることで、適度な空隙による良好な通気度を得ることができる。
[人工皮革の製造方法]
次に、本発明の人工皮革の製造方法について説明する。
本発明に係る人工皮革について、これを構成する極細繊維からなる不織布を得る手段としては、極細繊維発現型繊維を用いた不織布を形成することが好ましい態様である。極細繊維発現型繊維をあらかじめ絡合し不織布とした後に、繊維の極細化を行うことによって、極細繊維からなる繊維束を含み、さらにその繊維束が絡合された不織布を容易に得ることができる。
この極細繊維発現型繊維としては、溶剤溶解性の異なる2成分の熱可塑性樹脂を海成分と島成分とし、前記の海成分を、溶剤などを用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の熱可塑性樹脂を、繊維断面を放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。
中でも、海島型複合繊維を用いる場合においては、海成分を除去して島成分間、すなわち極細繊維の繊維束内部に存在する極細繊維間に適度な空隙を付与することができ、人工皮革の縦断面における前記の極細繊維の断面の直径(A)に対する前記の繊維束の断面における直径(B)の比(B/A)をより容易に2〜5の範囲に調整することができるため、より好ましい。
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海成分と島成分の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体を用いる方式と、海成分と島成分の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な単繊維繊度の極細繊維が得られるという観点から、高分子相互配列体を用いる方式による海島型複合繊維が好ましい。
1本の海島型複合繊維を構成する島成分の数(島数)は、島成分が存在する部分の直径、すなわち、極細繊維の平均単繊維直径が前記の範囲を満たすようにした上で、2島以上15島以下であることが好ましい。好ましくは2島以上、さらに好ましくは5島以上であることで、直径(A)と直径(B)との比(B/A)を2以上とすることができる。また、好ましくは15島以下、より好ましくは10島以下とすることで(B/A)を5以下とすることができる。
また、海島複合繊維の繊維軸方向に対して垂直な断面において、海島複合繊維の断面積に占める島成分の面積の割合(島比率)は60%以上95%以下が好ましい。島比率がこのましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上であることで、繊維束内の極細繊維間の空隙が減少し、(B/A)を5以下とすることができる。また、島比率が95%以下、さらに好ましくは90%以下であることで島成分同士の結合による表面品位の悪化を抑制することができる。
ここで、島比率は、海島複合繊維の繊維軸方向に対して垂直な断面を光学顕微鏡、もしくはSEMを用いて1000倍で観察し、以下の式を用いて求めた値である。これを20本の海島複合繊維に対して行い、その平均値の小数点第1位を四捨五入した値を島比率とする。
島比率(%)=100×(島成分の断面積の総和(μm))/(海島複合繊維の断面積(μm))。
本発明の人工皮革を構成する不織布は、前述のように短繊維不織布でも長繊維不織布でも用いることができるが、前記のように短繊維不織布であると、人工皮革の厚さ方向を向く繊維が長繊維不織布に比べて多くなり、起毛した際の人工皮革の表面に高い緻密感を得ることができる。
不織布として、短繊維不織布を用いる場合には、さらに以下に例示するとおり、不織布を形成することができる。
まず、極細繊維発現型繊維を所定長にカットして原綿を得る。このカット前に捲縮加工を施すことも好ましい態様である。なお、捲縮加工もカット加工も、公知の方法を用いることができる。
次に、得られた原綿を、クロスラッパー等により繊維ウエブとし、絡合させて短繊維不織布を形成する。繊維ウエブを絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチやウォータージェットパンチ等を用いることができるが、ニードルバーブによって厚さ方向に繊維を配向させることができる点で、ニードルパンチを用いることが好ましい。
ニードルパンチ処理に用いられるニードルにおいては、ニードルバーブ(切りかき)の数は好ましくは1〜9本である。ニードルバーブを好ましくは1本以上とすることにより、効率的な繊維の絡合が可能となる。一方、ニードルバーブを好ましくは9本以下とすることにより、繊維損傷を抑えることができる。
バーブに引っかかる極細繊維発現型繊維の本数は、バーブの形状と極細繊維発現型繊維の直径によって決定される。そのため、ニードルパンチ工程で用いられる針のバーブ形状は、キックアップが0〜50μmであり、アンダーカットアングルが0〜40°であり、スロートデプスが40〜80μmであり、そしてスロートレングスが0.5〜1.0mmのバーブが好ましく用いられる。
また、パンチング本数は、1000〜8000本/cmであることが好ましい。パンチング本数を好ましくは1000本/cm以上とすることにより、十分に極細繊維を厚さ方向に配向させることができる。一方、パンチング本数を好ましくは8000本/cm以下とすることにより、加工性の悪化、繊維損傷および強度低下を防ぐことができる。
ニードルパンチ処理後の極細繊維発現型繊維からなる不織布の、目付を厚さで除して計算される見掛け密度は、0.15〜0.45g/cmであることが好ましい。見掛け密度を好ましくは0.15g/cm以上とすることにより、人工皮革基材が十分な形態安定性と寸法安定性が得られる。一方、見掛け密度を好ましくは0.45g/cm以下とすることにより、高分子弾性体を付与するための十分な空間を維持することができる。
前記の不織布には、繊維の緻密感向上のために、温水やスチーム処理による熱収縮処理を施すことも好ましい態様である。
次に、前記の不織布に水溶性樹脂の水溶液を含浸し、乾燥することにより水溶性樹脂を付与することもできる。不織布に水溶性樹脂を付与することにより、繊維が固定されて寸法安定性が向上される。なお、本発明に係る人工皮革の製造方法においては、水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられるが、不織布の補強効果が高く、水に溶出にしにくいことから、PVAを用いることが好ましい。
さらに、得られた不織布を溶剤で処理して極細繊維を発現させる。極細繊維の発現処理は、例えば、溶剤中に海島型複合繊維からなる不織布を浸漬させて海成分を溶解除去することにより行うことができる。
極細繊維発現型繊維が海島型複合繊維の場合における、海成分を溶解除去する溶剤としては、海成分がポリエチレン、ポリプロピレンあるいはポリスチレンの場合においては、トルエンやトリクロロエチレンなどの有機溶剤を用いることができる。また、海成分が共重合ポリエステルやポリ乳酸樹脂の場合においては、水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を用いることができる。また、海成分がPVAの場合においては、熱水を用いることができる。
そして、前記の不織布に、高分子弾性体の溶剤液を含浸し、凝固することで、この高分子弾性体を付与する。高分子弾性体を不織布に固定する方法としては、高分子弾性体の溶液を不織布に含浸させ、湿式凝固または乾式凝固する方法があり、使用する高分子弾性体の種類により適宜選択することができる。
以上の工程によって、人工皮革を得ることができるが、さらに製造効率の観点から、得られた人工皮革を厚さ方向に半裁することが好ましい。
そして、この人工皮革あるいは半裁された人工皮革の表面に、起毛処理を施し、立毛層を形成する。起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。
起毛処理を施す際、起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を付与することができる。また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によって人工皮革から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなるので、好ましい。
また、必要に応じて、染色加工を施すこともできるし、さらにその後に各種の樹脂仕上げ加工を施すことができる。
次に、実施例を挙げて本発明の人工皮革についてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[評価方法]
実施例で用いた評価方法とその測定条件について説明する。ただし、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
(1)厚さ方向に配向されてなる極細繊維の断面数、人工皮革の縦断面における極細繊維の断面の直径(A)、繊維束の断面における直径(B)
ミクロトームとして、大和光機工業株式会社製ミクロトーム「RX−860」を、走査型電子顕微鏡(SEM)として、株式会社キーエンス製「VHX−D500」を用い、上記の方法に従って、測定を行った。
(2)人工皮革の通気度
フラジール形試験機として、テクステスト社製「FX3300型」を用い、上記の方法に従って、測定を行った。
(3)人工皮革のシート強度
人工皮革から幅が20mmで、長さが200mmの試験片を切り出し、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の6.3「引張強さ及び伸び率(ISO法)」の6.3.1「標準時」において、インストロン型引張試験機(インストロン社製シングルコラム卓上型試験機「3343」)で、つかみ間隔を100mmとし、引張速度を200mm/分として引っ張り、破断時の強さをシート強度とした。50N/cm以上を良好なシート強度とした。
(4)表面品位
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、下記の評価を視覚で判別を行い、最も多かった評価を表面品位とした。評価が同数となった場合は、より高い評価をその人工皮革の表面品位とすることとした。本発明の良好なレベルは「AまたはB」とした。
・A:非常に緻密である。
・B:緻密である。
・C:粗い。
・D:非常に粗い。
<実施例1>
(不織布)
島成分としてポリエチレンテレフタレート(PET)を、また海成分としてポリスチレンを用い、島数が9島の海島型複合用口金を用いて、島比率90%で溶融紡糸した後、延伸、捲縮付与し、その後、51mmにカットし、平均単繊維直径5.5μmの海島型複合繊維の原綿を得た。この海島型複合繊維の原綿を用いて、カード、クロスラッパー工程を経て積層ウエブを形成し、3000本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施して見掛け密度0.24g/cm、厚さ2.1mmの不織布を得た。
(極細繊維の発現)
この不織布を96℃の熱水で収縮させた後、濃度12質量%のPVA水溶液を含浸し、温度110℃の熱風で10分間乾燥することで、不織布の質量に対するPVA質量割合が26質量%の不織布を得た。この不織布をトリクロロエチレン中で海成分を溶解除去し、極細繊維からなる不織布を得た。
(人工皮革)
この極細繊維からなる不織布を、固形分濃度12%に調整したポリウレタンのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液に含浸し、DMF濃度30質量%の水溶液中でポリウレタンを凝固せしめた。その後、PVAおよびDMFを熱水で除去し、110℃の熱風で10分間乾燥することで、人工皮革を得た。
そして、得られた人工皮革を厚さ方向に半裁し、半裁面をサンドペーパー番手240番のエンドレスサンドペーパーで研削し、立毛層を形成した。
こうして得られた人工皮革を液流染色機にて、130℃の条件下で染色を行ったのちに、乾燥機にて乾燥を行い、シートの極細繊維の質量に対するポリウレタン質量が23質量%、厚さが0.75mm、密度が0.32g/cmの人工皮革を得た。
この人工皮革は通気度が15cm/(cm・秒)、かつシート強度が100N/cmであり、通気性と強度を両立した良好な表面品位を有する人工皮革であった。
<実施例2>
(不織布)
島比率を70%として溶融紡糸し、延伸、捲縮付与し、その後、51mmにカットし、平均単繊維直径5.5μmの海島型複合繊維の原綿を得た。この海島型複合繊維の原綿を用いた以外は実施例1と同様にして人工皮革を得た。
この人工皮革は通気度が12cm/(cm・秒)、かつシート強度が80N/cmであり、通気性と強度を両立した良好な表面品位を有する人工皮革であった。
<実施例3>
(人工皮革)
極細繊維からなる不織布に含浸するポリウレタンのDMF溶液を増加させることで、シートの極細繊維に対するポリウレタン質量を36質量%とした以外は実施例1と同様にして人工皮革を得た。
この人工皮革は通気度が12cm/(cm・秒)、かつシート強度が80N/cmであり、通気性と強度を両立した良好な表面品位を有する人工皮革であった。
<実施例4>
(人工皮革)
エンドレスサンドペーパーで研削する際に、人工皮革の厚さを0.55mmとした以外は実施例1と同様にして人工皮革を得た。
この人工皮革は通気度が17cm/(cm・秒)、かつシート強度が60N/cmであり、通気性と強度を両立した良好な表面品位を有する人工皮革であった。
<実施例5>
(人工皮革)
エンドレスサンドペーパーで研削する際に、人工皮革の厚さを0.45mmとした以外は実施例1と同様にして人工皮革を得た。
この人工皮革は通気度が22cm/(cm・秒)、かつシート強度が40N/cmであり、シート強度は劣るものの、表面品位と通気性は良好である人工皮革であった。
<比較例1>
(不織布)
島数が16島の海島型複合用口金を用いて溶融紡糸した後、延伸、捲縮付与し、その後、51mmにカットすることで、平均単繊維直径5.5μmの海島型複合繊維の原綿を得た。この海島型複合繊維の原綿を用いた以外は実施例1と同様にして人工皮革を得た。
この人工皮革は通気度が5cm/(cm・秒)、かつシート強度が80N/cmであり、表面品位と通気性に乏しい人工皮革であった。
<比較例2>
(不織布)
積層ウェブを形成した後、5000本/cmのパンチ本数でニードルパンチを施した以外は実施例1と同様にして人工皮革を得た。
この人工皮革は通気度が22cm/(cm・秒)、かつシート強度が40N/cmであり、表面品位と通気性は良好であるが強度に乏しい人工皮革であった。
Figure 2021172930
10 人工皮革
10a 立毛層
10b 基層
11 横断面を観察する方向を示す矢印
12 縦断面を観察する方向を示す矢印
21 繊維束の外周を囲む線
31 研削量
31a 立毛層を除く表面位置
31b 研削終了位置

Claims (5)

  1. 極細繊維からなる不織布と高分子弾性体とで構成されてなり、立毛層を少なくとも1層有してなる人工皮革であって、前記不織布は前記極細繊維からなる繊維束を含み、前記立毛層の直下から厚さ方向に300μmの位置における横断面において、厚さ方向に配向されてなる前記極細繊維の断面数が1000個/mm〜5000個/mmであって、さらに、人工皮革の縦断面における前記極細繊維の断面の直径(A)に対する前記繊維束の断面における直径(B)の比(B/A)が2〜5である、人工皮革。
  2. 通気度が5cm/(cm・秒)以上である、請求項1に記載の人工皮革。
  3. 前記高分子弾性体の人工皮革に占める割合が5質量%以上50質量%以下である、請求項1または2に記載の人工皮革。
  4. 前記人工皮革の見掛け密度が0.2g/cm以上0.6g/cm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の人工皮革。
  5. 前記人工皮革の厚さが0.5mm以上1mm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の人工皮革。
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